JP2020015083A - 薄スラブ連続鋳造の流動制御装置及び薄スラブの連続鋳造方法 - Google Patents

薄スラブ連続鋳造の流動制御装置及び薄スラブの連続鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ファンネル鋳型を有する薄スラブ鋳造において鋳型内で電磁攪拌を行い、鋳片の割れ発生及び鋳片表面近傍の介在物を低減することのできる、薄スラブ連続鋳造の流動制御装置及び薄スラブ鋳造の連続鋳造方法を提供する。【解決手段】薄スラブを連続鋳造するための鋳型1と、鋳型内の溶鋼に旋回流7を形成する電磁攪拌装置3と、電磁攪拌装置3より下方に配置して鋳型内に直流磁場を印加するための電磁ブレーキ4を備え、電磁攪拌装置3と電磁ブレーキ4を鋳造中も固定置きとする。電磁攪拌装置3は、旋回流7の向きを正逆切り替えるように電流の方向を切り替えることができる。凝固シェル前面の流速の絶対値が0.3m/s内で周期的に変化する振動撹拌を付与すると好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、薄スラブ連続鋳造の流動制御装置及び薄スラブの連続鋳造方法に関するものである。
スラブ厚が150mm以下、さらには40〜100mmの薄スラブ(薄鋳片)を鋳造する薄スラブ連続鋳造方法が知られている。鋳造された薄スラブは、加熱された後、4段から7段程度の小規模な圧延機で圧延される。薄スラブ鋳造に用いる連続鋳造鋳型としては、ファンネル鋳型(漏斗状鋳型)を用いる方法と矩形の平行鋳型を用いる方法が採用されている。薄スラブの連続鋳造では、高速鋳造によって生産性を確保することが必要であり、工業的には5〜6m/分、最高では8〜9m/分の高速鋳造が可能となっている(非特許文献1参照)。
薄スラブ鋳造においては、上述のように鋳造厚みが一般的に150mm以下、さらには100mm以下と薄く、一方鋳造幅は1.5m程度とアスペクト比が高く、かつ、鋳造速度が5m/分と高速鋳造でスループットも250mm厚鋳造と同等レベルまで高くなってきた。加えて、鋳型への溶鋼注湯を容易にするため、ファンネル鋳型(漏斗状鋳型)が用いられることが多く、鋳型内流動はより複雑する。そのため、一般的にノズル吐出流整流化ならびにメニスカス部の鎮静化を行うことが一般的である。ノズル吐出流を制動するため、電磁石を鋳型長辺に配置し流動を制動する方法(直流磁場発生装置(以下電磁ブレーキともいう。))も提案されている(特許文献1参照)。
一般的に、矩形断面のスラブ連続鋳造や断面形状が長方形、正方形のブルームあるいはビレット連続鋳造においては、湯面近傍の溶鋼温度均一化、および凝固均一化さらには、凝固シェルへの介在物捕捉防止を目的として、水平断面内で旋回撹拌を付与する鋳型内電磁撹拌が適用されている。例えば特許文献2では、矩形断面の鋳型内において、水平断面内で旋回流を形成するに際し、旋回流の撹拌流速、流動方向を周期的に時間変化させ振動撹拌流を形成する発明が開示されている。また特許文献3では、浸漬ノズル吐出孔における磁束密度が電磁撹拌装置の最大磁束密度の50%以下の位置に浸漬ノズルの吐出孔を設置する方法が開示されている。
特許文献4では、鋳型内電磁攪拌によって付与される流動を前提とした鋳型として、長辺壁と浸漬ノズルとのクリアランスを広げるため、長辺壁の一部を鋳型の外側に向けて湾曲状に広げる発明が開示されているが、あくまで通常の鋳片厚みを有する連続鋳造を対象としており、薄スラブ連続鋳造を対象としていない。
特開2001−47196号公報 特開2002−283017号公報 特開2001−47201号公報 特開2011−224635号公報
第5版鉄鋼便覧 第1巻製銑・製鋼 第454〜456頁 岡野忍ら著「鉄と鋼」61(1975),2982頁
中炭素鋼、特に、亜包晶鋼のように、δ/γ変態に伴う不均一凝固を生じやすい鋼種の鋳造においては、鋳造初期の凝固シェルに凝固不均一を生じやすい。特に薄スラブ鋳造においては鋳造速度が高速であるため、縦割れが発生し易い。そのため薄スラブ鋳造においても、高塩基度パウダーを用いることで鋳型内緩冷却化する対策が一般的である。しかしながら、パウダーの不均一流入やメニスカスでの不均一が生じた場合、それによる不均一凝固は避けられない。そのため、溶鋼/凝固シェル界面において凝固シェル成長を制御できる手段があれば好ましい。
薄スラブ鋳造においても、通常の連続鋳造と同じ目的で、湯面近傍においてC断面内で旋回流を付与することができれば湯面近傍の溶鋼温度均一化、および凝固均一化さらには、凝固シェルへの介在物捕捉防止が図れ、好ましいといえる。しかしながら、薄スラブ鋳造において、一般的なスラブ連続鋳造において用いられる鋳型内電磁撹拌は使用されない。これは、鋳型厚みが薄いため、旋回流の形成が困難と想定されること、及び、薄スラブ鋳造において一般的に用いられるファンネル鋳型内で旋回撹拌を付与すると、幅中央部と短辺部で厚みが異なるため、湯面レベル形状の凹凸が生じ、かえって初期凝固不均一やパウダー巻き込みならびに凝固シェルへの介在物捕捉を誘発する等の問題を引き起こすと考えられたこと、さらには、薄スラブ連続鋳造は鋳造速度が高速であるために鋳型のオッシレーションも高速であり、鋳型振動装置の振動部分に電磁攪拌装置と電磁ブレーキとをともに搭載することが困難であること等によると思われる。
本発明は、ファンネル鋳型を有する薄スラブ鋳造において鋳型内で電磁攪拌を行い、鋳片の割れ発生を防止するとともに、鋳片表面近傍の介在物を低減することのできる、薄スラブ連続鋳造の流動制御装置及び薄スラブの連続鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明ではまず、薄スラブの連続鋳造において電磁ブレーキと鋳型内の電磁攪拌をともに搭載することのできる装置構成を案出した。さらに、凝固シェル界面に振動撹拌を付与することで上記鋳片割れ問題が解決できないか考えた。振動攪拌とは、鋳型内電磁攪拌で鋳型内溶鋼に旋回流を形成し、旋回流の流動方向を周期的に反転させるに際し、周期を比較的短い周期とする攪拌パターンを意味している。
本発明は上記着想に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)ファンネル部を有し、厚みが150mm以下の薄スラブを連続鋳造するための鋳型と、鋳型内の溶鋼に旋回流を形成する電磁攪拌装置と、電磁攪拌装置より下方に配置して鋳型内に直流磁場を印加するための直流磁場発生装置を備え、
前記直流磁場発生装置と前記電磁撹拌装置は前記鋳型に搭載されず、鋳造中も固定置きであることを特徴とする薄スラブ連続鋳造の鋳型内流動制御装置。
(2)上記(1)に記載の鋳型内流動制御装置を用いる連続鋳造方法であって、
前記電磁攪拌装置は、形成する旋回流の向きを一方方向とその逆方向に切り替えるように電流の方向を切り替えることができ、一方方向と逆方向の電流の駆動時間tonが5秒以下となる振動攪拌を形成することを特徴とする薄スラブの連続鋳造方法。
(3)前記電磁撹拌装置を用いて、前記振動攪拌を行うに際し、凝固シェル前面の流速の絶対値が0.3m/s内で周期的に変化する振動撹拌を付与することを特徴とする上記(2)に記載の薄スラブの連続鋳造方法。
(4)振動攪拌での停止時間toffが下記(1)式を満足することを特徴とする上記(2)または(3)に記載の薄スラブの連続鋳造方法。
0.01秒≦toff≦0.5秒 (1)
メニスカス部の短辺厚みが150mm以下の薄スラブ鋳造において、直流磁場発生装置(電磁ブレーキ)と電磁攪拌装置をともに用いて鋳型内電磁撹拌を付与することができ、介在物捕捉の防止や初期凝固の均一化等、表面品位がすぐれた鋳片の鋳造が可能となる。その結果、表面、内部品位ともに優れた鋳片の鋳造が可能となる。
メニスカス部の短辺厚みが150mm以下の薄スラブ鋳造において、直流磁場発生装置を用いてノズル吐出流を整流化しつつ、湯面レベルを乱すことなく凝固界面のみに振動撹拌を付与することができ、介在物捕捉の防止や初期凝固の均一化等、表面品位がすぐれた鋳片の鋳造が可能となる。その結果、表面、内部品位ともに優れた鋳片の鋳造が可能となる。
鋳型内電磁攪拌の攪拌持続時間と溶鋼流速の関係を示す図である。 本発明の薄スラブ連続鋳造の鋳型内流動制御装置の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図、(c)は側面断面図である。 (A)〜(C)は鋳型内溶鋼の旋回流の状況を示す図であり、(A)は正方向旋回時、(B)は停止時、(C)は逆方向旋回時である。(D)は電磁攪拌の時間パターンを示す図である。 電磁攪拌のパターンによる品質状況を示す図であり、(A)は割れ指数、(B)は介在物個数指数に関するものである。 振動攪拌付与に際し、toffを固定してコイル電流およびton+toffを変化させたときの凝固シェル前面流速への影響を示す図である。 振動攪拌付与に際し、toffを固定してコイル電流、ton+toffを変化させたときの、凝固シェル前面流速が(A)割れ指数、(B)介在物個数指数へ及ぼす影響を示す図である。 振動攪拌付与に際し、tonを固定してton+toffを変化させたときの、(A)割れ指数、(B)介在物個数指数への影響を示す図である。
薄スラブではない通常の鋳片厚みの連続鋳造において、鋳型内の電磁攪拌と電磁ブレーキをともに搭載する場合、鋳型、電磁攪拌装置、電磁ブレーキのいずれも、振動フレームの振動する側に搭載する。従って、電磁攪拌装置、電磁ブレーキについても、鋳型の振動とともに振動することとなる。ところが、薄スラブの連続鋳造において、電磁撹拌装置3と電磁ブレーキ4を鋳型1の振動フレームに搭載した場合、薄スラブ連続鋳造は鋳型オッシレーションも高速(短周期)であるため、高速鋳造時の鋳型振動負荷があまりにも大きくなるので、搭載することができない。また、電磁ブレーキ4のみ地上置きとし電磁撹拌装置3のみ鋳型振動フレームに搭載した場合、両者に通電すると互いに電磁力が作用するため、振動ができないことがわかった。そのため、本発明では、電磁撹拌装置3、電磁ブレーキ4は鋳型振動フレームには搭載せず、鋳造中においても固定置き(地球置き)とすることにより、問題を解決し、薄スラブ連続鋳造においてはじめて、鋳型内の電磁攪拌と電磁ブレーキの併用を可能とすることができた。
本発明ではさらに、上述のように、凝固シェル界面に振動撹拌を付与することで上記問題が解決できないか考えた。
発明者らは、矩形断面内での攪拌流動の特性を明らかにするため、電磁流体解析を行った。注入流のない条件で攪拌を印加して旋回流を形成した直後の流動挙動を解析した。その結果を図1に示す。ここで、1/4幅が攪拌流の上流側に3/4幅が攪拌流の下流側に相当する。図1に示すように、電磁撹拌の電源を投入後、立ち上がり段階(攪拌を印加し5秒程度までの時間帯)においては幅方向どの部位においてもほぼ同じ流速を保持しつつ流速が増加し、幅方向に異なる位置での流速は同じであり、ある一定時間を超えた段階から誘起された流れが干渉しあい乱れが生じることがわかる。そこで、その乱れが生じる前に流れの方向を切り替えることで、湯面レベルを乱すことなく、幅方向一様な攪拌流を付与できる可能性があると着想した。凝固界面のみに振動撹拌を付与する。振動攪拌とは、鋳型内電磁攪拌で鋳型内溶鋼に旋回流を形成し、旋回流の流動方向を周期的に反転させるに際し、周期を比較的短い周期とする攪拌パターンを意味している。
薄スラブ連続鋳造においては、従来、鋳型内の電磁攪拌で旋回流を形成することが難しいと考えられていた。これに対し発明者らは、鋳型銅板厚みDCu、鋳片厚みT、電磁攪拌装置の交流電流周波数f(Hz)、溶鋼の電気伝導度σ、銅板電気伝導度σCuを下記(3)−a式、(3)−b式を満足するように調整するにより、鋳型内の鋳片厚みが150mm以下、鋳造幅が2m以下の鋼の薄スラブ鋳造においても、鋳型内溶鋼に旋回流を形成可能であるとの知見を得ている。ここで、ω=2πf:角速度(rad/sec)、μ:真空の透磁率(N/A2)である。
Cu≦√(2/σCuωμ) (3)−a
√(1/2σωμ)≦T (3)−b
そこで、上記(3)−a式、(3)−b式を満たすように、鋳型内の電磁攪拌条件を設定することとした。鋳型銅板材質はES40A、鋳型銅板厚みDCuは25mmとし、電磁攪拌装置に通電する交流磁場の周波数fを12Hzとした条件で通電し、鋳造した。溶鋼の電気伝導度σ=6.5×105S/m、銅板電気伝導度σCu=1.9×107S/m、真空の透磁率μ=4π×10-7N/A2である。
図2に本発明の鋳型内流動制御装置の模式図を示す。幅中央部は短辺部に対してクリアランスを50mm大きくしたファンネル部6を有する鋳型1(ファンネル鋳型)を用い、鋳型の長辺背面には電磁撹拌装置3を、その下部には電磁ブレーキ4を設置した。図2(B)において、鋳型1の外形を一点鎖線で表示し、鋳型1の開口部で形成される鋳造空間5を実線で表示している。電磁撹拌装置3のコア高さLは200mm、電磁ブレーキ4のコア高さは250mmとした。
電磁撹拌装置3によって、図2(A)に示すようにメニスカス近傍で水平断面内に旋回流7を形成することができ、湯面での撹拌流の流速は最大0.35m/秒の旋回流7が付与できる。なお、電磁撹拌装置3の設置位置は、コアの上端が鋳型内の湯面の位置(鋳型上端から100mm下方)と一致するようにした。さらに、電磁撹拌装置3への電流の供給については、印加する交流電流の周波数で時間変化するだけでなく、図3に示すように、その周期とは別に駆動時間tonと停止時間toffを設定でき、かつ電流の位相を切り替えることによって旋回流の撹拌方向を正逆切り替えた。図3において、(D)は横軸が時間、縦軸が電磁攪拌装置の溶鋼駆動力(正負を有する)を示し、時間の経過とともに溶鋼旋回流の駆動方向を切り替える様子を示している。(D)においてaの時間帯では鋳型内に図3(A)に示す向きに旋回流7が流れ、bの時間帯では鋳型内の旋回流は停止し(図3(B))、cの時間帯では図3(C)に示す向きに旋回流7が流れ、時間帯のaとcでは旋回流7の向きが逆になることが示されている。時間帯a、cの時間が駆動時間ton、時間帯bの時間が停止時間toffである。ton+toffが半周期、その2倍が1周期となる。図1の結果から明らかなように、tonが5秒以下の場合が、本発明でいう振動攪拌に対応する。
電磁ブレーキ4については、鋳片全幅にわたって0.2Tの磁場を厚み方向に印加した。なお、電磁撹拌装置3と電磁ブレーキ4を鋳型1の振動フレームに搭載した場合、高速鋳造時の鋳型振動負荷があまりにも大きくなるため、好ましくない。また、電磁ブレーキ4のみ地上置きとし電磁撹拌装置3のみ鋳型振動フレームに搭載した場合、両者に通電すると互いに電磁力が作用するため、振動ができないことがわかった。そのため、本発明では電磁撹拌装置3、電磁ブレーキ4は鋳型振動フレームには搭載せず地球置きとしている。
転炉での精錬と還流式真空脱ガス装置での処理、並びに合金添加により、0.1%C鋼を溶製した。そして、上記本発明の鋳型内流動制御装置を有する薄スラブ連続鋳造装置により、幅1200mm、厚み100mmの鋳片を、鋳造速度5m/分で鋳造した。なお、鋳型内溶鋼表面に添加する連続鋳造用パウダーとしては、塩基度1.3、1300℃での粘度1poiseのパウダーを用いた。
鋳片の表面割れについては、鋳造後の鋳片表面を観察し、割れ個数×割れ長さの総和を求め、鋳片表面の単位面積あたりの個数密度を求めた。次いで、電磁攪拌を印加しない条件(電磁力off)での割れの個数密度で規格化し、「割れ指数(−)」とした。割れ指数については低いほど好ましいものの0.2以下を好ましい条件とした。鋳片表層下の介在物については、鋳片表面から2mmまでを対象に、0.5mmごと段削りを行い、1200mm幅×400mm長さの範囲に観察される目視介在物個数を求め、2mmまでの値の総和をとるとともに鋳片表面の単位面積当たりの個数密度を求めた。次いで、電磁力を印加しない条件(電磁力off)での介在物の個数密度で規格化し、「介在物個数指数(−)」とした。なお、介在物個数指数については低いほど好ましいものの0.3以下を好ましい条件とした。
まず、電磁撹拌を印加しない条件(電磁力off)で鋳造を行った。次に、電磁撹拌を印加するに際し、連続して通電する条件(連続攪拌)で鋳型内に旋回流を形成し、鋳造を行った。さらに、電磁攪拌による旋回流の向きを時間とともに切り替える、振動撹拌の実験を行った。振動攪拌では、駆動時間tonは2秒、停止時間toffは0.1秒とし、かつ撹拌方向を切り替えつつ鋳造を行った。
図4(A)は縦軸に割れ指数、図4(B)は縦軸に介在物個数指数を表示している。いずれも、電磁攪拌を印加せず(電磁力off)、連続攪拌、振動攪拌それぞれの結果を示している。割れ指数について見ると、電磁力offの条件では、鋳造後の鋳片表面、特に幅中央部で縦割れが観察された。連続攪拌では割れは減少したもののまだ発生しているのに対し、振動撹拌の条件では、大幅に低減した。介在物個数指数については、連続攪拌、振動攪拌のいずれも、電磁力offに対して良好に改善が見られている。
オッシレーションマークの観察結果について説明する。電磁力offの条件では、電磁ブレーキを印加することで、湯面レベル変動は±5mm以内に安定していた。連続攪拌の条件では、鋳片を観察すると、鋳片表面に観察されるオシレーションマークが幅中央部で盛り下がっており、鋳造中の湯面レベル形状がフラットでないことを示しているものと思われる。一方、振動攪拌の条件では、オシレーションマークが幅方向にフラットであった。
次に、振動攪拌において、振動撹拌の条件と鋳片品質との関係を検討するための実験を行った。コイルに印加する電流を3水準変化した。撹拌1は定常時の撹拌流速が0.25m/sの条件、撹拌2は撹拌流速が0.35m/sの条件、撹拌3は定常時の撹拌流速が0.15m/sの条件である。
各撹拌条件において、停止時間toffを0.1秒で固定し、駆動時間tonを0.5秒ごとに増やして鋳造を行った。凝固シェル前面流速については、鋳造した鋳片の幅中央部の凝固組織を調査し鋳片表面から内部に向けて成長しているデンドライトの傾き角、すなわち、長辺表面の垂線に対する角度を測定するとともに、その傾き方向について調査した。デンドライトの傾き角と傾き方向から、非特許文献2に基づき、当該部位における溶鋼の流速と流れ方向の評価を行い、凝固シェル前面流速とした。図5は、横軸をton+toffとし、縦軸を上記評価した凝固シェル前面流速として、鋳型内溶鋼の攪拌流速の評価を行った結果を示したものである。
図6は振動撹拌の条件(凝固シェル前面流速)と鋳片品質との関係を示したもので、(A)は縦軸が割れ指数、(B)は縦軸が介在物個数指数、いずれも横軸は図5の縦軸に示した凝固シェル前面流速である。なお、振動攪拌条件は上記図5の場合と同じであり、横軸を凝固シェル前面流速とし、各指数との関係をプロットした。
さらに、撹拌1の条件において、駆動時間tonを2秒で固定し、停止時間toffについて0.1秒から1秒まで変化させた試験での割れ指数と介在物個数指数の結果を図7に示す。各試験条件での鋳片のオシレーションマークの形状についても観察した。
まず、鋳片凝固組織の観察結果について説明する。連続撹拌の条件ではデンドライトの傾く方向は鋳片厚み方向に対して左右いずれか一方向に傾くのに対し、振動撹拌の条件では鋳片厚み方向にその傾き角は一定ではなく変化していることが観察された。撹拌2の条件で最も傾き角が大きく、また、その変化も大きかった。それぞれの撹拌条件で観察されたデンドライト傾角の最大値から推定した凝固シェル前面流速とton+toffの関係をプロットしたのが図5である。撹拌1の条件ではton+toffが3秒以降の条件でおよそ定常状態の撹拌流速に到達していることがわかる。撹拌2の条件では2.4秒、撹拌3の条件では4秒でそれぞれ定常状態の流速に到達していることがわかった。
次に、撹拌条件と割れ指数との関係について説明する。図6(A)から明らかなように凝固シェル前面流速によって割れ指数はきれいに整理できた。すなわち、凝固シェル前面流速が0.3m/秒以下で0.06m/秒以上とすることで割れ指数が小さくなった。0.3m/秒より超えると割れ指数が増加した理由としては、流速が変化することで湯面形状を変化させることになり、0.3m/秒をこえるとその影響が大きくなったことによると思われる。また、0.06m/秒未満で割れ指数改善が不十分だった理由は、湯面近傍の溶鋼温度均一化、および凝固均一化のための旋回流が不十分だったことによると思われる。そのため、まず、割れ指数改善の観点から、最大流速は0.3m/秒以下の条件とすることが好ましい。同じ観点から、最低流速は0.06m/秒以上とすることが好ましい。さらに、最大流速は0.25m/秒以下とすることがより好ましく、最低流速は0.1m/秒以上とすることがより好ましい。図6(A)の結果の中で特筆すべきは撹拌2で凝固シェル前面流速が0.15m/秒付近の条件において割れ指数が0となったことである。この条件はton時間を1秒とし、高サイクルで撹拌方向を周期的に変化させた条件である(図5の「○」参照)。図5から明らかなように、ton+toffが同一であれば撹拌2の条件で最も撹拌流速が高い、すなわち高推力の電磁力が付与されていることになる。この理由については明らかでないが、流速0から加速する現象が凝固均一化に作用していると考えると、凝固シェル前面が電磁撹拌コイル前面を通過する際、ton+toffが短時間であれば、加速域が数回繰り返されることになる。以上から、最大流速が0.3m/秒以下の条件で、ton+toffが短い周期で振動撹拌を付与することが好ましいといえる。
また図7(A)に示すように、停止時間toffが0.5秒以下で割れがほぼみられなくなった。前述したように、流速0から加速する現象が凝固均一化に作用していると考えると、停止時間は明らかに無駄な時間であり短いほうが好ましいことは明らかである。その臨界値として、停止時間toffが0.5秒以下であれば、たえず時間変化する流動が付与された効果によるものと考えられる。
次に、図6(B)に示すように、介在物個数指数については凝固シェル前面流速増大とともに単調に減少した。撹拌1、撹拌2、撹拌3ともに凝固シェル前面流速としては、0.1m/秒以上の条件で連続攪拌と同程度の介在物改善がはかれている。したがって、介在物個数指数改善の観点からは、最低流速が0.1m/秒以上とすることが好ましいといえる。そのなかでも撹拌2で凝固シェル前面流速が0.15m/秒付近の条件で介在物個数指数がより低値を示しているのは図6(A)と同様である。
加えて、toff時間との関係については、図7(B)に示すように、toffが短いほど介在物個数指数が少なく、toffが0.5秒以下であることが好ましい。toffは短いほど好ましいことは明らかであるが、撹拌方向を切り替えるにあたり、通電を一旦停止する時間が必要となる。電磁撹拌装置において使用される周波数は一般的に商用周波数以下であることから、toffを0.01秒以上とした。
以上より、湯面レベルを乱すことなく凝固界面のみに振動撹拌を付与することができ、介在物捕捉の防止や初期凝固の均一化等、表面すぐれた鋳片の鋳造が可能となる。
図1に示す鋳型内流動制御装置を有する、薄スラブ連続鋳造装置を用いて、0.1%C鋼(亜包晶鋼)を連続鋳造した。電磁撹拌装置3、電磁ブレーキ4は鋳型振動フレームには搭載せず、鋳造中においても固定置き(地球置き)としている。ファンネル部6を有する鋳型1を用いた。鋳型上端から100mmの位置をメニスカス部とした。鋳造空間5の形状としては、メニスカス部での幅Wは1200mm、メニスカス部の短辺厚みTは100mmとし、幅中央部は50mm拡大してファンネル部6とし、メニスカス部のファンネル部厚みT=150mmとした。鋳型下端では鋳造空間5の形状を矩形形状とした。パウダーは塩基度(質量比)1.3、1300℃での粘度は1poiseのパウダーを用いた。鋳造速度はすべての条件で4m/分とした。
電磁撹拌装置3はコア上端がメニスカスレベル(鋳型上端から100mmの位置)に合わせた位置とし、コア高さLは200mmとした。湯面での撹拌流の流速は最大0.35m/秒の旋回流が付与できる。電磁撹拌装置3は電磁ブレーキ4の上方に設置した。電磁ブレーキ4のコア高さは200mmとした。なお、すべての条件で電磁ブレーキとして幅方向に磁束密度が0.3Tに分布する均一な直流磁界を厚み方向に付与した。
本装置を用いて、様々な撹拌条件にて鋳造を行い、鋳片内介在物個数、割れの発生状況との関係を調査解析した。具体的には、ton時間、toff時間に加え、撹拌流速を振った実験を行い結果を比較した。「撹拌1」は最大流速が0.25m/秒の条件、「撹拌2」は最大流速が0.35m/秒の条件、「撹拌3」は最大流速が0.15m/秒の条件である。また、「連続」は最大流速が0.30m/秒の条件で、連続して一方向に旋回流を形成するものである。
表面割れについては、鋳造後の鋳片表面を観察し、割れ個数×割れ長さの総和を求め、鋳片表面の単位面積あたりの個数密度を求めた。次いで、電磁攪拌装置の電磁力を印加しない条件(電磁力off、比較例)での割れの個数密度で規格化し、「割れ指数(−)」とした。
鋳片表層下の介在物については、鋳片表面から2mmまでを対象に、0.5mmごと段削りを行い、1200幅×400mm長さの範囲に観察される目視介在物個数を求め、2mmまでの値の総和をとるとともに鋳片表面の単位面積当たりの個数密度を求めた。次いで、電磁力を印加しない条件(電磁力off、比較例)での介在物の個数密度で規格化し、「介在物個数指数(−)」とした。鋳片のデンドライトの傾き角と傾き方向から、非特許文献2に基づき、当該部位における溶鋼の流速と流れ方向の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2020015083
薄スラブの連続鋳造において、鋳型内で電磁攪拌と電磁ブレーキをともに作動させることで、鋳片割れを低減することができた。さらに、振動攪拌を行う発明の方法を用いることで、ファンネル鋳型を用いた薄スラブ鋳造において、0.1%C鋼を表面割れを発生することなく鋳造できた。さらに、介在物個数についても大幅に低減することができた。
本発明ベースは、攪拌条件を「連続」とし、電磁力をかけ続け、攪拌流を一方向に形成した条件である。本発明ベースでは、比較例よりも割れ指数、介在物個数指数ともに低減した。しかしながら、割れがあることは防止することはできなかった。次に振動撹拌の条件について、詳細に調査した。
本発明1、2は撹拌2の条件において、toff時間を0.1秒とし、ton時間を振った条件であるが、ともに割れに関しては本発明ベースよりも良好な結果が得られたが、本発明1では介在物個数指数が若干高くなった。凝固シェル前面の攪拌流速がやや遅いことが影響したと考えられる。特に本発明2の条件においては、割れがみられず、介在物個数指数が最も少ない結果をえることができた。
本発明3、本発明4は撹拌1の条件でtoff時間を0.1秒とし、ton時間を振って調査した結果である。ともに割れに関しては本発明ベースよりも良好な結果が得られ、介在物個数指数に関しては本発明ベースと同等の結果であった。
本発明5は撹拌1の条件でtoff時間を0.5秒とし、ton時間を1.9秒とし調査した結果である。割れに関して本発明ベースよりも良好な結果が得られた。また、本発明4と比較するとton時間はほぼ同じでtoff時間のみ異なるが、両者はほぼ同じ結果がえられ、この範囲のtoff時間の影響は小さいことがあわせて確認することができた。本発明2〜5は、凝固シェル前面の攪拌流速が0.14〜0.17m/秒で、本発明において好ましい流速である0.10〜0.25m/秒の範囲にあるため、割れ指数も介在物個数指数も特に良好な結果が得られた。
本発明6は撹拌3の条件でtoff時間を0.1秒とし、ton時間を2.3秒とし調査した結果である。割れに関しては本発明ベースよりも良好な結果が得られたが、凝固シェル前面流速が0.1m/秒未満とやや遅いため、介在物個数指数は若干劣る結果となった。
本発明7,8は撹拌1の条件でton時間を2秒とし、toff時間を振って調査した結果である。ともに、割れに関しては本発明ベースよりも良好な結果が得られたが、本発明2〜5と比較すると割れ指数、介在物個数指数ともに劣る結果となった。
以上のべたように、鋳片周方向にわたって一様に振動撹拌流を付与することができ、表面品位が良好な鋳片の製造が可能となった。
1 鋳型
2 浸漬ノズル
3 電磁攪拌装置
4 電磁ブレーキ
5 鋳造空間
6 ファンネル部
7 旋回流

Claims (4)

  1. ファンネル部を有し、厚みが150mm以下の薄スラブを連続鋳造するための鋳型と、鋳型内の溶鋼に旋回流を形成する電磁攪拌装置と、電磁攪拌装置より下方に配置して鋳型内に直流磁場を印加するための直流磁場発生装置を備え、
    前記直流磁場発生装置と前記電磁撹拌装置は前記鋳型に搭載されず、鋳造中も固定置きであることを特徴とする薄スラブ連続鋳造の鋳型内流動制御装置。
  2. 請求項1に記載の鋳型内流動制御装置を用いる連続鋳造方法であって、
    前記電磁攪拌装置は、形成する旋回流の向きを一方方向とその逆方向に切り替えるように電流の方向を切り替えることができ、一方方向と逆方向の電流の駆動時間tonが5秒以下となる振動攪拌を形成することを特徴とする薄スラブの連続鋳造方法。
  3. 前記電磁撹拌装置を用いて、前記振動攪拌を行うに際し、凝固シェル前面の流速の絶対値が0.3m/s内で周期的に変化する振動撹拌を付与することを特徴とする請求項2に記載の薄スラブの連続鋳造方法。
  4. 前記電磁撹拌装置を用いて、前記振動攪拌を行うに際し、振動攪拌の停止時間toffが下記(1)式を満足することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の薄スラブの連続鋳造方法。
    0.01秒≦toff≦0.5秒 (1)
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