以下、実施形態の治療システム、キャリブレーション方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における治療システム1の一例を示す図である。例えば、治療システム1は、治療装置10と、端末装置20と、医用画像処理装置100とを備える。これらの装置は、ネットワークNWを介して接続される。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ端末、無線通信網、無線基地局、専用回線などを含む。なお、図1に示す各装置の全ての組み合わせが相互に通信可能である必要はなく、ネットワークNWの一部には、ローカルなネットワークが含まれてもよい。
治療装置10は、被検体OBを中心とした周囲360度の任意の方向から、第1の放射線をビーム(以下、治療ビームBを称する)として被検体OBに照射する装置である。被検体OBは、例えば、治療ビームBによる治療を受ける患者である。第1の放射線は、例えば、重粒子線、電子線、陽子線、中性子線といった粒子放射線や、X線、γ線といった電磁放射線を含む。また、治療装置10は、被検体OBの位置を確認するために、第2の放射線を照射して、被検体OBの断層画像を生成する。第2の放射線は、例えば、X線などの電磁放射線を含む。以下、一例として、第1の放射線(治療ビームB)が「重粒子線」であり、第2の放射線が「X線」であるものとして説明する。
端末装置20は、例えば、治療装置10の整備や維持、保守、点検、手入れといったメンテナンスを行うユーザ(以下、メンテナンス作業者Uと称する)によって利用される。例えば、端末装置20は、スマートフォンなどの携帯電話、タブレット端末、各種パーソナルコンピュータなどの、入力装置、表示装置、通信装置、記憶装置、および演算装置を備える端末装置であってよい。端末装置20の通信装置は、NIC(Network Interface Card)などのネットワークカード、無線通信モジュールなどを含む。
医用画像処理装置100は、医用画像処理装置100は、被検体OBである患者の呼吸や心拍の動きによって移動するターゲットを追跡し、適切なタイミングで治療装置10に、追跡したターゲットに対して治療ビームBを照射させる。ターゲットは、例えば、肺や肝臓などの器官である。このターゲットの追跡は、治療段よりも前の段階に、X線などで撮像した被検体OBの断層画像と、治療段階時に被検体OBを撮像した透視画像とに基づいて行われる。
また、医用画像処理装置100は、治療段階時における被検体OBの位置と、治療計画を計画した時の被検体OBの位置との位置ずれを導出し、その導出した位置ずれに関する情報を、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)に提供してよい。
図2は、第1の実施形態における治療装置10の外観図である。第1の実施形態における治療装置10は、例えば、寝台11と、アーム部11aと、複数の放射線源(放射線照射口)12と、2つの検出器13−1および13−2と、照射門14と、センサ15と、治療装置側制御部16とを備える。2つの検出器13−1および13−2は、「検出部」の一例である。
複数の放射線源12と、2つの検出器13−1および13−2と、照射門14とは、回転ガントリーGと呼ばれる、リング形状(トーラス形状)の筐体に設置される。例えば、治療装置10が設置された部屋(以下、治療室と称する)を表す3次元空間の鉛直方向をZf、水平方向のうち一方をXf、他方をYfとして表した場合、回転ガントリーGは、Yf方向を回転軸とし、その回転軸周りに360度回転可能に設置される。回転ガントリーGは、「撮像系」の一例であり、回転ガントリーGに設置された複数の放射線源12と、2つの検出器13−1および13−2とのそれぞれは「撮像機器」の一例である。照射門14は、「粒子線源」の一例である。
寝台11には、被検体OBが固定される。アーム部11aは、一端が治療室の床などに固定され、他端が寝台11に固定され、寝台11を治療室の床などから離した状態で回転ガントリーGの外側から内側に、または内側から外側に移動させる。
複数の放射線源12は、例えば、回転ガントリーGの周方向に所定間隔で配置される。各放射線源12は、例えば、回転ガントリーGの内周側にX線を照射する。これにより、例えば、回転ガントリーGの内側に寝台11が移動すると、寝台11に固定された被検体OBに対して、360度の互いに異なる複数の方向からX線が照射される。なお、X線を発生させる放射線発生装置(不図示)は、治療室の外に設置されてよい。
検出器13−1および13−2は、例えば、放射線源12によって照射されたX線を検出する。例えば、検出器13−1および13−2は、フラット・パネル・ディテクタ(FPD;Flat Panel Detector)、イメージインテンシファイア、カラーイメージインテンシファイアなどの矩形形状の検出器を含む。検出器13−1および13−2は、例えば、検出したX線に基づくアナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を透視画像TIとして医用画像処理装置100に出力する。透視画像TIは、二次元の画像であり、被検体OBの一つの断層画像である。なお、回転ガントリーGに設置される検出器は2つに限られず、3つ以上であってもよい。
照射門14は、回転ガントリーGの周方向のある位置に配置される。照射門14は、回転ガントリーGの内周側に治療ビームBを照射する。なお、図1の例では、回転ガントリーGに1つの照射門14が設置されていることを示しているがこれに限られない。例えば。回転ガントリーGには、複数の照射門が設置されてもよい。治療ビームBを発生させる放射線発生装置(不図示)は、治療室の外に設置されてよい。
センサ15は、被検体OBが患者である場合、その患者の呼吸による患部の動きを位相として検出するセンサである。例えば、センサ15は、圧力センサである。この場合、センサ15は、患者の身体に取り付けられてよい。センサ15は、検出した患者の呼吸の位相を波形として示した情報を医用画像処理装置100に出力する。
治療装置側制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアプロセッサが、ROM(Read Only Memory)などの記憶装置(不図示)に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、治療装置側制御部16は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェア(回路部:circuitry)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
治療装置側制御部16は、医用画像処理装置100による制御を受けて、複数の放射線源12、検出器13−1および13−2、および照射門14を動作させる。また、治療装置側制御部16は、医用画像処理装置100による制御を受けて、回転ガントリーGを回転させる。
図3は、第1の実施形態における医用画像処理装置100の構成の一例を示す図である。第1の実施形態における医用画像処理装置100は、例えば、通信部102と、入力部104と、表示部106と、医用画像処理装置側制御部110と、記憶部130とを備える。
通信部102は、例えば、NICなどの通信インターフェースを含む。通信部102は、ネットワークNWを介して治療装置10や端末装置20と通信し、各種情報を受信する。通信部102は、受信した情報を医用画像処理装置側制御部110に出力する。また、通信部102は、医用画像処理装置側制御部110による制御を受けて、ネットワークNWを介して接続された治療装置10や端末装置20に情報を送信してよい。通信部102は、「出力部」の一例である。
入力部104は、例えば、医者や看護師などのユーザから入力操作を受け付け、受け付けた入力操作に基づく信号を医用画像処理装置側制御部110に出力する。例えば、入力部104は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネルなどにより実現される。また、入力部104は、例えば、マイクなどの音声入力を受け付けるユーザインターフェースによって実現されてもよい。入力部104がタッチパネルである場合、後述する表示部106は入力部104と一体として形成されてよい。
表示部106は、各種の情報を表示する。例えば、表示部106は、医用画像処理装置側制御部110によって生成された画像を表示したり、操作者からの入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを表示したりする。例えば、表示部106は、LCD(Liquid Crystal Display)や、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどである。表示部106は、「出力部」の他の例である。
医用画像処理装置側制御部110は、例えば、第1取得部112と、第2取得部114と、画像処理部116と、治療ビーム照射制御部118と、情報出力制御部120と、キャリブレーション処理部122とを備える。治療装置側制御部16および治療ビーム照射制御部118は、「照射制御部」の一例である。
これらの構成要素は、CPUやGPU等のハードウェアプロセッサが、記憶部130に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの複数の構成要素のうち一部または全部は、LSI、ASIC、FPGA等のハードウェア(回路部:circuitry)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。また、上記のプログラムは、予め記憶部130に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体が医用画像処理装置100のドライブ装置に装着されることで記憶媒体から記憶部130にインストールされてもよい。
記憶部130は、例えば、ROM、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、レジスタ等の記憶装置によって実現される。フラッシュメモリやHDD、SSDなどは、非一過性の記憶媒体である。これらの非一過性の記憶媒体は、NAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置等のネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。記憶部130には、例えば、四次元断層画像データ132や、治療計画データ134などが格納される。これらについては後述する。
四次元断層画像データ132は、例えば、三次元のボリュームデータである三次元断層画像(CT画像)を時系列にn個並べたものである。三次元断層画像は、例えば、治療計画の段階で撮像される。n個および時系列画像の時間間隔を乗算して求められる期間は、例えば、呼吸位相が1周期分変化する期間をカバーするように設定される。呼吸位相は、患者が域を吐き切ってから息を吸い込み、再度息を吐き切るまでを一周期とした位相である。例えば、n=10である。例えば、n個の三次元断層画像のうち少なくとも1つには、その画像領域内に、患部である腫瘍の輪郭や治療ビームBを照射したくない臓器の輪郭などを示す領域が医者などの入力操作によって設定されており、その他の三次元断層画像には、医者などが入力操作で設定した輪郭の領域と同じ領域がデフォーマブルレジストレーションによって自動的に設定されている。デフォーマブルレジストレーションとは、時系列の三次元ボリュームデータに対して、ある時点の三次元ボリュームデータについて指定された位置情報(上記の場合臓器の輪郭など)を、他の時点の三次元ボリュームデータに展開する処理である。
治療計画データ134は、治療計画の段階において立案(計画)された治療計画を示すデータである。治療計画とは、例えば、被検体OBである患者ごとに、その患者がどの位置にいるときに、どの方向から治療ビームBを照射するのかという治療ビームBの照射方向や、治療ビームBを照射する際の治療ビームBの強さなどが決められた計画である。このような治療計画は、ゲーテッド照射法や追尾照射法などの治療法に基づいて計画されてよい。
第1取得部112は、例えば、通信部102を介して検出器13−1および13−2から透視画像TIを取得する。例えば、治療時には、検出器13−1および13−2によりリアルタイムで透視画像TIが生成されるため、第1取得部112は、時系列に連続した透視画像TIを取得する。
第2取得部114は、回転ガントリーGに設置された複数の撮像機器のうち、一つ以上の撮像機器の位置または向き(治療室の三次元空間における位置または向き)を示す位置情報を取得する。例えば、撮像機器の三次元の位置または向きは、レーザトラッカによって計測される。この際、レーザトラッカの位置は、治療室の三次元空間において原点とする物標(例えば回転ガントリーGの回転軸など)を基準とした相対位置として決められるものとする。
本実施形態では、一例として、レーザトラッカによって位置または向きが計測される撮像機器を検出器13−1および13−2として説明する。なお、レーザトラッカによって位置または向きが計測される撮像機器は、放射線源12であってもよい。例えば、検出器13−1および13−2の位置および向きを計測する場合、医師や看護師などの医療従事者は、検出器13−1および13−2の検出面の3箇所以上に、レーザ光を反射しやすいプローブ(例えば反射板など)を設け、そのプローブをレーザトラッカによって計測することで、複数のプローブの相対位置を求める。そして、医療従事者は、複数のプローブの相対位置に基づいて検出器13−1および13−2の位置および向きを導出する。レーザトラッカによって位置または向きが計測される撮像機器は、「第1撮像機器」の一例である。
第2取得部114は、レーザトラッカによって撮像機器の三次元位置が計測された場合、通信部102を介してレーザトラッカから撮像機器の三次元位置を示す位置情報を取得する。また、医師などが入力部104に位置情報を入力した場合、第2取得部114は、入力部104に入力された情報を、撮像機器の三次元位置を示す位置情報として取得してよい。なお、撮像機器の位置または向きは、レーザトラッカによって計測されるものに限られず、例えば、ステレオカメラや接触型のセンサを利用して計測されてもよい。
画像処理部116は、被検体OBの位置決めを行う。例えば、画像処理部116は、記憶部130に記憶された各被検体OBの四次元断層画像データ132に含まれる各呼吸位相の三次元断層画像に基づいて、DRR(Digitally Reconstructed Radiograph)を生成する。DRRとは、三次元断層画像(三次元ボリュームデータ)に対して、仮想的な放射線源から放射線が照射されたと仮定した場合に、この放射線源に対応して三次元ボリュームデータから生成される仮想的な透視画像である。
例えば、画像処理部116は、四次元断層画像データ132に含まれる各呼吸位相の三次元断層画像と、第1取得部112により取得された検出器13−1側の透視画像TIおよび検出器13−2側の透視画像TIとに基づいて、3D−2Dレジストレーションと呼ばれる手法により、現在被検体OBに照射されているX線の照射方向と同方向からの視点で三次元断層画像を見た時のDRRを生成する。画像処理部116は、DRRを生成する際、レイキャスティング法を利用して三次元断層画像をレンダリングすることで、二次元の仮想的な断層画像であるDRRを生成してよい。この際、画像処理部116は、三次元断層画像の各要素値を積分し、その積分値をDRRの各要素の要素値としてもよいし、三次元断層画像の各要素値の最大値をDRRの各要素の要素値としてもよい。
例えば、画像処理部116は、各呼吸位相の三次元断層画像に対応したDRRの中から、呼気位相の三次元断層画像に対応したDRRをテンプレート画像として選択する。呼気位相とは、被検体OBである患者が息を吐き切った状態で撮像された断層画像である。
画像処理部116は、テンプレート画像として選択したDRRと、第1取得部112により逐次取得された透視画像TIと比較し、ターゲット(臓器など)の位置のマッチングを行う。画像処理部116は、DRRと透視画像TIとにおいて互いにターゲットの位置がマッチングする場合、DRRの元となった三次元断層画像の呼吸位相(呼気位相)と、現在の患者の呼吸位相とが合致すると判定し、治療ビームBの照射を許可する。この際、画像処理部116は、更に、予めターゲットの位置が予め決められた照射領域内である場合に、治療ビームBの照射を許可してもよい。照射領域は、例えば、医療従事者が任意に決定してよい。
治療ビーム照射制御部118は、画像処理部116によって治療ビームBの照射が許可されると、画像処理部116によって位置が決められた被検体OBに対して、照射門14に治療ビームBを照射させる。例えば、治療ビーム照射制御部118は、治療計画データ134が示す治療計画から治療ビームBの照射角度や治療ビームBの強さなどの情報を抽出し、抽出した各種情報を治療装置側制御部16に出力する。これを受けて、治療装置側制御部16は、回転ガントリーGを回転させたり、照射門14に治療ビームBを照射させたりする。
情報出力制御部120は、例えば、治療ビームBの照射許可の有無などに応じて、表示部106に画像を表示させたり、通信部102に情報を送信させたりする。
キャリブレーション処理部122は、回転ガントリーGのキャリブレーションを行う。図4は、キャリブレーション処理部122の構成の一例を示す図である。キャリブレーション処理部122は、例えば、第1導出部122aと、第2導出部122bと、較正部122cとを備える。
以下、キャリブレーション処理部122の各構成要素の処理についてフローチャートを用いて説明する。図5は、キャリブレーションの処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、第1周期で繰り返し行われてよい。第1周期は、例えば、1ヶ月、或いは数か月程度の期間である。
まず、医療従事者などは、レーザトラッカなどを利用して検出器13−1および13−2の位置および向きを導出する(ステップS100)。
次に、第2取得部114は、検出器13−1および13−2の三次元空間における位置および向きを示す位置情報を取得する(ステップS102)。これによって、キャリブレーション時には、三次元空間における検出器13−1および13−2の位置および向きが既知の情報として扱われる。
次に、医療従事者などは、透視画像TIに映り込むように、回転ガントリーGの内側に、4つ以上のマーカが埋め込まれたファントムを設置する(ステップS104)。ファントムは、例えば、キューブ形状のアクリル製のケースである。
マーカは、例えば、鉄球やワイヤといったX線を減衰させる何らかの物体であってよい。4つ以上のマーカのうち少なくとも1つ以上のマーカは、ファントムの中の3次元空間において、他の3つ以上のマーカの其々が存在する平面(2次元空間)と異なる平面に存在するようにファントムに埋め込まれる。これによって、ファントムに埋め込まれたマーカの其々を頂点としたときに形成される空間が3次元空間となる。これらのマーカの位置と、互いの位置関係とは、予め既知であるものとする。
なお、医療従事者などは、ファントムを設置する代わりに、寝台11やアーム部11aなどの治療装置10に付随する物体を、回転ガントリーGの内側に配置してもよい。
次に、医療従事者などは、ファントムの設置が完了したことを入力部104に対して入力する。これを受けて、治療装置10の治療装置側制御部16は、複数の放射線源12の中から2つの放射線源12を選択し、その選択した2つの放射線源12に、互いに異なる複数の方向からX線を照射させる(ステップS106)。
図6は、2つの放射線源12から放射線を照射させる様子を模式的に示す図である。図中の12−1は、選択された2つの放射線源12のうち一方の放射線源を表し、12−2は、選択された2つの放射線源12のうち他方の放射線源を表している。また、破線r−1は、放射線源12−1から照射されたX線を表し、破線r−2は、放射線源12−2から照射されたX線を表している。PHは、ファントムを表し、MKは、マーカを表している。14aは、照射門14から照射される治療ビームBの照射口(重粒子源)を表している。
例えば、治療装置側制御部16は、回転ガントリーGの回転軸回りの角度が、ある角度θ1となるように回転ガントリーGを回動させ、放射線源12−1および12−2の其々にX線を照射させる。次に、治療装置側制御部16は、回転ガントリーGの回転軸回りの角度を、角度θ1から所定角(例えば15度)ずらした角度θ2となるように回転ガントリーGを回動させ、放射線源12−1および12−2の其々にX線を照射させる。回転ガントリーGを回動させる際、X線を利用して撮像されるファントムPH(マーカMK)の位置は不変とする。このように、治療装置側制御部16は、所定角度幅ごとに回転ガントリーGを回転させながら、放射線源12−1および12−2の其々にX線を照射させることを繰り返すことで、検出器13−1および13−2の其々に、複数の方向からファントムPHを撮像した透視画像TIを生成させる(ステップS108)。例えば、360度の全方向のなかで、15度ずつ角度を変更しながら放射線源12−1および12−2の其々によってX線が照射された場合、検出器13−1および13−2の其々は、24枚(2つの検出器の画像を合せて合計48枚)の透視画像TIを生成する。
次に、第1取得部112は、通信部102を介して検出器13−1および13−2から複数の透視画像TIを取得する(ステップS110)。
次に、第1導出部122aは、第1取得部112により取得された複数の透視画像TIのそれぞれについて、マーカMKの位置を導出する(ステップS112)。
例えば、第1導出部122aは、予め用意されたテンプレート画像と、透視画像TIとをテンプレートマッチングさせることで、マーカMKの位置を導出する。テンプレート画像には、事前にマーカMKを撮影した画像や、シミュレーションで生成した画像などが用いられてよい。また、第1導出部122aは、マーカMKの形状が既知である場合、透視画像TIに対して、マーカMKの形状を抽出するための形状フィルタをラスタスキャンなどによって走査し、形状フィルタとの一致度合が大きい位置をマーカMKの位置として導出してもよい。
次に、第2導出部122bは、透視画像TIから導出されたマーカMKの位置と、第2取得部114により取得された位置情報とに基づいて、未知パラメータである放射線源12−1および12−2の其々の三次元位置を導出する(ステップS114)。なお、レーザトラッカなどによって位置または向きが計測される撮像機器が放射線源12である場合、第2導出部122bは、未知パラメータである検出器13−1および13−2の位置および向きを導出してよい。第2導出部122bによって三次元位置が導出される撮像機器は、「第2撮像機器」の一例である。
例えば、回転ガントリーGを回転させながら、多方向からマーカMKを撮像する際には、撮像対象であるマーカMKの三次元位置は未知であるものの、その位置は不変である。そのため、透視画像TI間で各物体の三次元位置を共通のパラメータで表現することができる。例えば、第2導出部122bは、バンドル調整といった、多視点画像間で互いに対応する特徴点に基づいて三次元位置と撮像系のパラメータとを導出する手法を適用して、放射線源12−1および12−2の其々の位置を導出してよい。バンドル調整と呼ばれる手法は、推定した撮像系のパラメータでマーカMKを画像上に再投影したときに、その再投影したマーカMKの位置が、画像から検出されたマーカの位置となるべく一致するように全ての未知パラメータを調整する手法である。
図7は、バンドル調整手法により放射線源12の三次元位置を導出する方法を説明するための図である。例えば、ファントムPHに埋め込まれるマーカMKの数をN個とした場合、図示の例のように、各マーカMKの三次元位置は、Xi(→)=(Xi,Yi,Zi)tと表現される。「i」は、1〜Nの中の任意の自然数を表し、tは、転置を表し、(→)は、ベクトルであることを表している。また、M種類の角度で撮像することで得られたM組の透視画像TIから導出された各マーカMKの位置は、xij(→)=(xij,yij)tと表現される。「j」は、1〜Mの中の任意の自然数を表している。
各マーカMKの三次元位置Xi(→)を、j番目の透視画像TIの平面に射影する射影行列をPj(→)とした場合、i番目のマーカMKがj番目の透視画像TI上に投影されるべき位置は、xij(〜)(→)=(xij(〜),yij(〜))tと表現される。(〜)は、チルダ記号を表している。例えば、第2導出部122bは、数式(1)を解くことで、j番目の透視画像TI上に投影されるi番目のマーカMKの位置(画像上での二次元位置)xij(〜)(→)を導出する。
例えば、第2導出部122bは、バンドル調整として、各マーカMKの投影されるべき位置xij(〜)(→)と、導出した各マーカMKの位置xij(→)との差分(ずれ)の二乗和の総和(以下、再投影誤差と称する)が最小となるような各種パラメータを探索する。
例えば、第2導出部122bは、j番目の透視画像TIを撮像したときの検出器13の基底ベクトルRj(→)=(uj,vj,wj)と、検出器13の検出面の中心位置(透視画像TIの中心位置)Cj(→)=(cx j,cy j,cz j)tと、放射線源12の三次元位置Tj(→)=(lx j,ly j,lz j)tとに基づいて、射影行列Pj(→)を導出する。検出器13の検出面の中心位置Cj(→)は、透視画像TIの幅をw、高さをhとしたときの((w−1)/2,(h−1)/2)の三次元位置である。
例えば、第2導出部122bは、数式(2)に基づいて、上述したパラメータを用いて射影行列Pj(→)を導出する。
数式(2)におけるfは、放射線源12の三次元位置から、検出器13の三次元位置までの距離を表し、suおよびsvは、透視画像TIのそれぞれの軸(u,v)の画素ピッチを表しており、xcおよびycは、光軸wが検出器13の検出面との交差したときの画像上での交点位置を表している。距離fは、数式(3)のように表現することができ、交点位置(xc,yc)は、数式(4)のように表現することができる。
第2導出部122bは、数式(5)に基づいて、再投影誤差を導出する。上述したように、三次元空間における検出器13−1および13−2の位置および向きが既知であるため、最適化するパラメータは、放射線源12の三次元位置Tj(→)、およびマーカMKの三次元位置Xi(→)となる。
例えば、第2導出部122bは、放射線源12の三次元位置Tj(→)、およびマーカMKの三次元位置Xi(→)の2種類のパラメータの最適化を、粒子群最適化と呼ばれる最適化手法を用いて行ってよい。粒子群最適化とは、昆虫の大群の振る舞いに倣った最適化手法であり、粒子に探索空間位置と速度の情報を持たせることで、粒子間で通信しながら自身の位置・速度を更新しながら最適な位置を探す手法である。なお、本実施形態では、検出器13の位置および向きを既知としたが、例えば、放射線源12の三次元位置を既知とした場合、第2導出部122bは、最適化するパラメータに、検出器13の検出面の中心位置(透視画像TIの中心位置)Cj(→)と、基底ベクトルRj(→)と、マーカMKの三次元位置Xi(→)とを採用してよい。このように、既知のパラメータが、検出器13の位置または放射線源12のいずれかであっても、回転ガントリーGに設置された各撮像機器の位置を推定することができる。なお、既知とするパラメータは、検出器13の位置および向きと、放射線源12の位置とのいずれかであってもよいし、これらを組み合わせたパラメータであってもよい。
次に、第2導出部122bは、導出した放射線源12(12−1、12−2)の三次元位置Tj(→)を、次回以降の処理において参照される放射線源12の基準位置として記憶部130に記憶させる(ステップS116)。これによって、本フローチャートの処理が終了する。放射線源12の基準位置は、例えば、第1周期よりも短い第2周期で行われるキャリブレーション時に参照されるパラメータである。第2周期は、例えば、1日、或いは数日程度の期間である。
以下、第2周期で行うキャリブレーションについてフローチャートを用いて説明する。図8は、キャリブレーションの処理の他の例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、第2周期で繰り返し行われる。
まず、医療従事者などは、透視画像TIに映り込むように、回転ガントリーGの内側に、4つ以上のマーカが埋め込まれたファントムを設置する(ステップS200)。
次に、医療従事者などは、ファントムの設置が完了したことを入力部104に対して入力する。これを受けて、治療装置10の治療装置側制御部16は、複数の放射線源12の中から2つの放射線源12を選択し、その選択した2つの放射線源12に、互いに異なる複数の方向からX線を照射させる(ステップS202)。
次に、検出器13−1および13−2は、複数の方向からファントムPHを撮像した透視画像TIを生成する(ステップS204)。
次に、第1取得部112は、通信部102を介して検出器13−1および13−2から複数の透視画像TIを取得する(ステップS206)。
次に、第1導出部122aは、第1取得部112により取得された複数の透視画像TIのそれぞれについて、マーカMKの位置を導出する(ステップS208)。
次に、第2導出部122bは、透視画像TIから導出されたマーカMKの位置と、第2取得部114により取得された位置情報とに基づいて、未知パラメータである放射線源12−1および12−2の其々の三次元位置を導出する(ステップS210)。
次に、較正部122cは、第2導出部122bにより導出された放射線源12−1および12−2の其々の三次元位置と、記憶部130に記憶された放射線源12−1および12−2の其々の基準位置との差分を導出し、その差分が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS212)。
なお、既知のパラメータが放射線源12−1および12−2の其々の三次元位置である場合、記憶部130には、第1周期のキャリブレーションで導出された検出器13−1および13−2の其々の三次元位置が基準位置、三次元向きが基準向きとして記憶される。この場合、S210の処理として、第2導出部122bにより、未知パラメータである検出器13−1および13−2の其々の三次元位置および三次元向きが導出されることになる。従って、較正部122cは、既知のパラメータが放射線源12−1および12−2の其々の三次元位置である場合、第2導出部122bにより導出された検出器13−1および13−2の其々の三次元位置と基準位置との差分と、第2導出部122bにより導出された検出器13−1および13−2の其々の三次元向きと基準向きとの差分とをそれぞれ導出し、各差分が閾値以上であるか否かを判定してよい。
情報出力制御部120は、較正部122cによって差分が閾値以上であると判定された場合、治療装置10を利用する医療従事者などに向けて、メンテナンスが必要であることを表すアラームを出力する(ステップS214)。
例えば、情報出力制御部120は、表示部106に、図9に例示するような画像をアラームとして表示させる。図9は、表示部106に表示させる画面の一例を示す図である。図示の例のように、表示部106の画面には、メンテナンスが必要であることを示す文字や画像が表示されてよい。
また、情報出力制御部120は、アラームとして、通信部102を介して端末装置20にメンテナンスを依頼するメールやプッシュ通知を出力してもよい。
一方、較正部122cは、差分が閾値未満であると判定した場合、基準位置(または基準向き)との差分に基づいて、キャリブレーションを行う(ステップS216)。
例えば、較正部122cは、基準位置(または基準向き)との差分を補正量とし、その補正量を基に、DRRをアフィン変換などの幾何学的に変換することをキャリブレーションとして行ってよい。また、較正部122cは、基準位置(または基準向き)との差分を補正量とし、その補正量を基にDRRをアフィン変換する代わりに、或いは加えて、透視画像TIをアフィン変換することをキャリブレーションとして行ってもよい。
また、較正部122cは、キャリブレーションとして、基準位置(または基準向き)との差分を補正量とし、その補正量を基に、DRRが生成される際に参照されるパラメータを補正してもよい。このパラメータには、例えば、回転ガントリーGに設置された各撮像機器の位置や向きが含まれる。より具体的には、上記パラメータには、検出器13−1および13−2の位置および/または向きと、放射線源12の位置とが含まれる。
また、較正部122cは、治療装置10が放射線源12や検出器13の位置を自動調節する調整機構を備える場合、その調整機構を制御して、各撮像機器の位置や向きを調整してもよい。このようなキャリブレーションによって、精度のよいDRRを生成することができる。
なお、上述した説明では、治療装置10が回転ガントリーGを採用した治療装置であるものとしたがこれに限られない。例えば、治療装置10は、放射線源12などの撮像機器の位置が固定式(固定ポート式)の治療装置であってもよい。
また、再投影誤差がある方向では小さく、ある方向では大きいような統計がある場合、キャリブレーション処理部122は、再投影誤差が小さくなる方向から撮像された透視画像TIを基にキャリブレーションを行ってよい。
以上説明した第1の実施形態によれば、ある物体に対して、互いに異なる複数の方向から放射線を照射する一以上の放射線源12と、放射線源12により照射された放射線を、互いに異なる位置で検出する複数の検出器13とを撮像機器として含む回転ガントリーGと、複数の検出器13の其々により検出された放射線に基づく複数の透視画像TIを取得する第1取得部112と、放射線源12または検出器13の位置情報を取得する第2取得部114と、第1取得部112により取得された複数の透視画像TIのそれぞれにおいて、ファントムPH内のマーカMKの位置を導出する第1導出部122aと、第1導出部122aにより導出された透視画像TI上でのマーカMKの位置と、第2取得部114により取得された位置情報が示す放射線源12の三次元位置または検出器13の三次元位置および三次元向きとに基づいて、位置情報が取得されていない方の撮像機器の三次元位置などを導出する第2導出部122bと、第2導出部122bによる導出結果に基づいて、回転ガントリーGのキャリブレーションを行う較正部122cとを備えることによって、マーカの三次元位置が既知でない場合、或いは、既知としたマーカの三次元位置に誤差が含まれる場合であっても、治療装置10の撮像系を高精度にキャリブレーションすることができる。この結果、治療時に、被検体の位置を高精度に決定することができると共に、対象物を精度良く追跡することができる。
一般的に、放射線治療を行うときには、充分な出力の放射線を患者の患部の位置に正確に照射しなければならない。そのために、治療計画時に取得した患者の画像と、放射線照射時に撮影した患者の画像との照合によって患者を位置決めし、呼吸で動く患部に対しては位置決め後にX線による透視画像TIから患部を追跡して、放射線を照射する。この患者を位置決めや患部追跡を高精度に行うために撮像系がキャリブレーションされている必要があるが、マーカの三次元位置が既知でない場合、或いは、既知としたマーカの三次元位置に誤差が含まれる場合、被検体の位置を高精度に決定することができなかったり、対象物を精度良く追跡することができなかったりする場合がある。
特に、キャリブレーションを行う際に、ファントムPHを架台に設定して撮像することから、既知としたマーカの三次元位置に想定よりも大きい誤差が生じやすい。例えば、回転ガントリーGを採用せず、放射線源12などの撮像機器の位置が固定式の治療装置の場合、治療室の床に直方体形状の架台を設置し、その架台の上にファントムPHを載置することが考えられ得る。しかしながら、本実施形態のように、回転ガントリーGを採用した治療装置10の場合、放射線源12が治療室の床に敷き詰めているため、直方体形状の架台を床に設置することが難しい場合がある。そのため、例えば、放射線源12が敷き詰められた位置から離れた位置に、L字形状の架台を設置する場合がある。この際、L字形状の架台は、L字の端部のうち一方が床に接地され、他方が宙に浮いた状態となるように床に設置される。例えば、ファントムPHは、L字形状の架台の端部のうち宙に浮いた方の端部に載置される。L字形状の架台には、力のモーメントによって、宙に浮いた方の端部が鉛直方向下向きにたわむような微小な歪みが生じ得る。このような場合、ファントムPHの位置の誤差は、本来想定した誤差よりも大きいものとなりやすい。また、架台を用意せずに、寝台11などにファントムPHを載置した場合であっても、床から寝台までに繋がるアーム部11aの寸法誤差などが積分されることで、ファントムPHの位置の誤差は、本来想定した誤差よりも大きいものとなりやすい。このように治療室にファントムPHを設置する場合には、ファントムPHの位置に誤差が生じやすい。ファントムPHの位置に誤差が生じると、検出器13の三次元位置および三次元向きと、放射線源12の三次元位置にも誤差が含まれることになるため、キャリブレーションの精度が低下しやすい。
これに対して、本実施形態では、レーザトラッカなどを利用して予め回転ガントリーGに設けられたいずれかの撮像機器の三次元位置を計測しておくことによって、マーカMKの位置を既知とせずとも、未知の撮像機器の三次元位置を導出することができる。この結果、治療装置10の撮像系を高精度にキャリブレーションすることができ、被検体の位置を高精度に決定することができると共に、対象物を精度良く追跡することができる。
なお、上述した医用画像処理装置100は、CPUやGPUなどのプロセッサと、ROMやRAM、HDD、フラッシュメモリなどの記憶装置とを備え、記憶装置には、プロセッサを、ある物体に対して、互いに異なる複数の方向から放射線を照射する一以上の放射線源12と、放射線源12により照射された放射線を、互いに異なる位置で検出する複数の検出器13とを撮像機器として含む回転ガントリーGと、複数の検出器13の其々により検出された放射線に基づく複数の透視画像TIを取得する第1取得部112と、放射線源12または検出器13の位置情報を取得する第2取得部114と、第1取得部112により取得された複数の透視画像TIのそれぞれにおいて、ファントムPH内のマーカMKの位置を導出する第1導出部122aと、第1導出部122aにより導出された透視画像TI上でのマーカMKの位置と、第2取得部114により取得された位置情報が示す放射線源12の三次元位置または検出器13の三次元位置および三次元向きとに基づいて、位置情報が取得されていない方の撮像機器の三次元位置などを導出する第2導出部122bと、第2導出部122bによる導出結果に基づいて、回転ガントリーGのキャリブレーションを行う較正部122cとして機能させるためのプログラムが記憶された汎用的な装置によって実現されてもよい。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、患者の治療計画に基づいて、キャリブレーション時に位置の導出対象とする透視画像TIを選別する点で上述した第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と共通する点については説明を省略する。なお、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ部分については同一符号を付して説明する。
図10は、治療計画データ134の一例を示す図である。例えば、治療計画データ134は、患者ごとに、治療日時と、治療時に照射する治療ビームBの照射角度θといった治療計画が対応付けられた情報である。
第2の実施形態における第1導出部122aは、第1取得部112により取得された複数の透視画像TIの中から、マーカMKの位置の導出対象とする透視画像TIを選択し、選択した透視画像TIにおいて、マーカMKの位置を導出する。
例えば、第2周期のキャリブレーションの実施タイミングを各日の早朝とした場合、第1導出部122aは、治療計画において治療が予定された複数の患者の中から、キャリブレーションの後に治療が予定された患者を選択する。例えば、治療計画が図10に例示したものであり、第2周期のキャリブレーションの実施タイミングが「2020年6月1日の早朝」であった場合、第1導出部122aは、その日に治療が予定された患者A、B、Cを選択する。そして、第1導出部122aは、選択した患者A、B、Cのそれぞれに対応付けられた治療ビームBの照射角度θを基にマーカMKの位置の導出対象とする透視画像TIを選択する。
図11および図12は、治療計画に基づく透視画像TIの選択方法を説明するための図である。例えば、回転ガントリーGの回転軸回りに角度において、回転軸心を通る水平方向Xfから、照射門14の治療ビームBの照射方向までの角度を、治療ビームBの照射角度θとした場合、第1導出部122aは、その角度θに回転ガントリーGを回動させたときに放射線源12−1および12−2の其々によって照射されたX線を基に生成された透視画像TIを選択する。例えば、患者Aの場合、治療ビームBの照射角度θが90度であるため、第1導出部122aは、図12に示すように、マーカMKを含むファントムPHが回転ガントリーGの内側に配置され、真上から患者Aに治療ビームBを照射する角度に回転ガントリーGを回動させたときに放射線源12−1および12−2の其々によって照射されたX線によりマーカMKが撮像された透視画像TIを選択する。これによって、その日の治療で使用されない治療ビームBの照射方向についてはキャリブレーションを省略することができる。
以上説明した第2の実施形態によれば、患者の治療計画に基づいて、キャリブレーション時に位置の導出対象とする透視画像TIを選別するため、360度の全方向でキャリブレーションする場合と比べて、キャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ある物体に対して、互いに異なる複数の方向から放射線を照射する一以上の放射線源12と、放射線源12により照射された放射線を、互いに異なる位置で検出する複数の検出器13とを撮像機器として含む回転ガントリーGと、複数の検出器13の其々により検出された放射線に基づく複数の透視画像TIを取得する第1取得部112と、放射線源12または検出器13の位置情報を取得する第2取得部114と、第1取得部112により取得された複数の透視画像TIのそれぞれにおいて、ファントムPH内のマーカMKの位置を導出する第1導出部122aと、第1導出部122aにより導出された透視画像TI上でのマーカMKの位置と、第2取得部114により取得された位置情報が示す放射線源12の三次元位置または検出器13の三次元位置および三次元向きとに基づいて、位置情報が取得されていない方の撮像機器の三次元位置などを導出する第2導出部122bと、第2導出部122bによる導出結果に基づいて、回転ガントリーGのキャリブレーションを行う較正部122cとを備えることによって、マーカの三次元位置が既知でない場合、或いは、既知としたマーカの三次元位置に誤差が含まれる場合であっても、治療装置10の撮像系を高精度にキャリブレーションすることができる。この結果、治療時に、被検体の位置を高精度に決定することができると共に、対象物を精度良く追跡することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。