JP2020011463A - インクジェット記録用前処理液、インクジェット記録装置及び画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクノズルの詰まりを抑制しつつ、形成される画像の画質を向上できるインクジェット記録用前処理液の提供。【解決手段】インクジェット記録用前処理液は、露光によってスルホン酸を発生する光酸発生剤を含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録用前処理液、インクジェット記録装置及び画像形成方法に関する。
インクジェット記録装置においては、商業印刷用途でのラインエンジンシステムにより、印刷用塗工紙に対して従来のオフセット印刷並の画質を実現することが要求されている。このような用途においては、カール及び裏抜けを抑制しつつドット再現性を向上させることが重要となる。また、オンデマンド印刷、POP(Point of purchase)広告及びサイングラフィックス市場においては、全面に白色液を塗工した透明フィルムを記録媒体として用い、インクジェット記録装置により高画質な画像を形成する技術の需要が急増している。このような用途においては、吸収性に乏しい記録媒体に対して高画質かつ堅牢性に優れる画像を形成することが要求される。
このような要求に対し、例えば、記録媒体を事前に前処理する方法、印刷直後に記録媒体を加熱する方法、速乾性のインクを用いる方法、及び紫外線硬化型インクを用いる方法が検討されている。しかしながら、記録媒体を事前に前処理する方法では、工程数の増加により時間及びコストが増大する傾向にある。また、印刷直後に記録媒体を加熱する方法、及び速乾性のインクを用いる方法では、インクノズルの詰まりが発生し易くなる傾向にある。更に、紫外線硬化型インクを用いる方法では、吐出されたインクが十分に平坦化する前にインクが硬化する場合があるため、印刷表面での凹凸が発生する傾向があり、かつ形成されるインク層の厚さが増大する傾向がある。
そこで、インクジェット記録装置に前処理液を吐出する部材を設け、インクを吐出する直前にインクジェット記録用前処理液を記録媒体に吐出する方法が提案されている。このインクジェット記録用前処理液の有効成分としては、例えば、カチオン性高分子化合物、酸成分及び金属イオンが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。これらの文献によれば、記録媒体表面で上述の有効成分及びインク中の顔料が凝集反応を生じ、その結果、記録媒体に対する顔料の定着が促進されることで形成される画像の画質が向上するとされている。
WO2003/043825 特開2003−55886号公報 特開2002−019263号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載のインクジェット記録用前処理液は、インクノズルの詰まりを誘発する傾向にあることが本発明者の検討により判明した。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクノズルの詰まりを抑制しつつ、形成される画像の画質を向上できるインクジェット記録用前処理液を提供することである。
本発明のインクジェット記録用前処理液は、露光によってスルホン酸を発生する光酸発生剤を含有する。
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体の画像形成領域に画像を形成するインクジェット記録装置であって、前記記録媒体の前記画像形成領域に、上述のインクジェット記録用前処理液を吐出する前処理部と、前記インクジェット記録用前処理液が吐出された前記記録媒体の前記画像形成領域を露光する露光部と、露光された前記記録媒体の前記画像形成領域にインクを吐出することで前記画像を形成する記録ヘッドとを備える。
本発明の画像形成方法は、記録媒体の画像形成領域に画像を形成する方法であって、前記記録媒体の前記画像形成領域に、上述のインクジェット記録用前処理液を吐出する前処理液吐出工程と、前記インクジェット記録用前処理液が吐出された前記記録媒体の前記画像形成領域を露光する露光工程と、露光された前記記録媒体の前記画像形成領域にインクを吐出することで前記画像を形成するインク吐出工程とを備える。
本発明のインクジェット記録用前処理液、インクジェット記録装置及び画像形成方法は、インクノズルの詰まりを抑制しつつ、形成される画像の画質を向上できる。
本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の一例の要部を示す側面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。図面において、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は、図面の明瞭化及び簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。各成分は、特に断りのない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
以下、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アルコキシ基、アリール基、及び複素環基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。アルキル基の炭素原子数としては、例えば、1以上20以下である。炭素原子数1以上20以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、直鎖状又は分枝鎖状のヘキシル基、直鎖状又は分枝鎖状のヘプチル基、直鎖状又は分枝鎖状のオクチル基、直鎖状又は分枝鎖状のノニル基、直鎖状又は分枝鎖状のデシル基、及び直鎖状又は分枝鎖状のイコシル基が挙げられる。
アルケニル基及びアルキニル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。アルケニル基及びアルキニル基の炭素原子数としては、例えば、2以上20以下である。炭素原子数2以上20以下のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ペンタデセニル基、及びイコセニル基が挙げられる。炭素原子数2以上20以下のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基及びイコシニル基が挙げられる。
シクロアルキル基は、非置換である。シクロアルキル基の炭素原子数としては、例えば、3以上20以下である。炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基及びシクロイコシル基が挙げられる。
シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基は、各々、非置換である。シクロアルケニル基としては、例えば、上述のシクロアルキル基について、炭素−炭素結合のうち少なくとも1つを炭素−炭素二重結合に置き換えた基が挙げられる。シクロアルキニル基としては、例えば、上述のシクロアルキル基について、炭素−炭素結合のうち少なくとも1つを炭素−炭素三重結合に置き換えた基が挙げられる。
アルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。アルコキシ基の炭素原子数としては、例えば、1以上20以下である。炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、及びn−デシルオキシ基が挙げられる。
アリール基は、非置換である。アリール基の炭素原子数としては、例えば、6以上14以下である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられる。
複素環基は、非置換の1価の基であり、例えば、炭素原子とヘテロ原子(例えば、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のうち少なくとも1個)とを含む。複素環基の環員数としては、例えば、3以上20以下である。環員数3以上20以下の複素環基の具体例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、及びフェナントロリニル基が挙げられる。
粉体(例えば、顔料分散体)の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製の「Zetasizer nano−ZS(ゼータサイザー ナノZS)」)を用いて測定した値である。
<第1実施形態:インクジェット記録用前処理液>
本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録用前処理液(以下、前処理液と記載することがある)は、露光によってスルホン酸を発生する光酸発生剤(以下、光酸発生剤と記載することがある)を含有する。前処理液は、光酸発生剤に加え、溶媒としての水及び水溶性有機溶剤を更に含有することが好ましい。前処理液は、任意成分として、界面活性剤を更に含有してもよい。前処理液は、必要に応じてその他の成分を更に含有してもよい。
本実施形態に係る前処理液の使用方法の一例について説明する。まず、インクジェット記録装置を用いた画像形成において、記録媒体の画像形成領域にインクを吐出して画像を形成する直前に、記録媒体の画像形成領域に前処理液を吐出する。次に、前処理液が吐出された記録媒体の画像形成領域を露光する。これにより、画像形成領域において、前処理液中の光酸発生剤からスルホン酸を発生させる。次に、記録媒体の画像形成領域にインクを吐出することで画像を形成する。この際、画像形成領域では、前処理液から発生したスルホン酸とインク中の顔料とが凝集反応を生じる。その結果、記録媒体への顔料の定着が促進されて画像の画質が向上する。画質の向上としては、例えば、画像濃度の増大と、フェザリング(インクの滲み)及びカラーブリードの抑制とが挙げられる。なお、カラーブリードとは、異なる色のインク(ドット)が隣接する境界部(ドット間)で生じる画質劣化現象である。カラーブリードが起こった画像では、隣接するドットにおいて、一方のインクの顔料が他方のインクに混ざり、画像が不鮮明になる。
また、本実施形態に係る前処理液は、従来の前処理液(例えば、酸成分又は金属イオンを有効成分とする前処理液)と比較し、インクノズルの詰まりを抑制できる。ここで、インクジェット記録装置で前処理液を吐出すると、吐出した前処理液の一部がミスト状に拡散して記録ヘッドのノズル面に付着する場合がある。このように記録ヘッドのノズル面に前処理液が付着した場合、従来の前処理液では、ノズル面において前処理液とインク中の顔料との凝集反応が生じてインクノズルが詰まるおそれがある。これに対し、本実施形態に係る前処理液は、酸成分を露光により発生する成分であり、それ自体が顔料と凝集反応を生じる成分ではない。そのため、本実施形態に係る前処理液は、もし記録ヘッドのノズル面に付着したとしてもインクノズルを詰まらせ難い。このように、本実施形態に係る前処理液は、光酸発生剤を含有することで、インクノズルの詰まりを抑制しつつ、形成される画像の画質を向上できる。
[光酸発生剤]
光酸発生剤は、露光によってスルホン酸を発生する化合物である。光酸発生剤としては、例えば、トリアリールスルホニウム塩誘導体、ジアリールヨードニウム塩誘導体、スルホニルジアゾメタン誘導体、N−ヒドロキシフタルイミドのスルホン酸エステル誘導体及び下記一般式(I)又は(II)で表される化合物(以下、それぞれ光酸発生剤(I)又は(II)と記載することがある)が挙げられる。
Figure 2020011463
一般式(I)及び(II)中、R1は、各々独立に、第1置換基で置換されていてもよいアルキル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基、第2置換基で置換されていてもよいアリール基、第2置換基で置換されていてもよい複素環基、フッ素原子、ニトロ基又はシアノ基を表す。R2は、水素原子、第1置換基で置換されていてもよいアルキル基、第1置換基で置換されていてもよいアルケニル基、第1置換基で置換されていてもよいアルキニル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルケニル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルキニル基、第2置換基で置換されていてもよいアリール基、第2置換基で置換されていてもよい複素環基、アシルアミド基、スルホニルアミド基又はハロゲン原子を表す。第1置換基は、フッ素原子又はアリール基である。第2置換基は、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、又はアルキルアミノ基である。Xは、水素原子又はメチル基を表す。複数のXは、互いに同一でも異なっていてもよい。カルボニル基のγ位の炭素原子に結合しているXが存在する場合、γ位の炭素原子に結合しているXのうち少なくとも1つは水素原子である。Yは、水素原子又はメチル基を表す。pは、1以上3以下の整数を表す。qは、0以上3以下の整数を表す。rは、1又は2を表す。
光酸発生剤としては、光酸発生剤(I)又は(II)が好ましい。光酸発生剤(I)又は(II)は、露光によりスルホン酸(HOSO21)を発生する。そのため、光酸発生剤(I)又は(II)は、R1の構造を変更することによって発生する酸の強度を調整することができる。光酸発生剤(I)又は(II)は、ノニオン性化合物であるため、有機溶剤との相溶性に優れ、後述する水溶性有機溶剤に対して任意の割合で溶解させることができる。また、光酸発生剤(I)又は(II)において、OSO21で表される1価の基は、橋かけ環炭化水素環構造の橋頭位の炭素原子(以下、炭素原子(α)と記載することがある)に結合している。この炭素原子(α)は、橋かけ環炭化水素構造の橋頭位に位置するため、2分子求核置換反応(SN2反応)の対象にならない。また、炭素原子(α)は、橋かけ環炭化水素構造の橋頭位に位置するため、カルボカチオンとなった場合に分子歪みで不安定となる。そのため、炭素原子(α)は、1分子求核置換反応(SN1反応)の対象に全くならないか、又は極めて対象となり難い。このように、光酸発生剤(I)又は(II)は、OSO21で表される1価の基が炭素原子(α)に結合していることにより、露光しない限りは熱及び求核剤に対して比較的安定である。そのため、光酸発生剤として光酸発生剤(I)又は(II)を用いることで、前処理液の保存安定性を向上させることができる。
1で表されるアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましい。R1で表されるアルキル基は、上述の通り第1置換基で置換されていてもよい。
1における第1置換基としては、フッ素原子又はフェニル基が好ましい。
1で表されるシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上10以下のシクロアルキル基が好ましい。R1で表されるシクロアルキル基は、上述の通り第2置換基で置換されていてもよい。
1で表されるアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましい。R1で表されるフェニル基は、上述の通り第2置換基で置換されていてもよい。
1で表される複素環基としては、環員数5以上10以下の複素環基が好ましい。R1で表される複素環基は、上述の通り第2置換基で置換されていてもよい。
1における第2置換基としては、フッ素原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のフルオロアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基、カルボキシル基、炭素原子数2以上5以下のアルキルカルボニル基、又は炭素原子数1以上5以下のアルキルアミノ基が好ましく、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシ基、カルボキシル基、メチルカルボニル基又はジメチルアミノ基が好ましい。
1は、第1置換基で置換されていてもよい炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルキル基又は炭素原子数1以上5以下のフルオロアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1以上5以下のパーフルオロアルキル基を表すことが更に好ましく、トリフルオロメチル基を表すことが特に好ましい。
2で表されるアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数2以上5以下のアルケニル基及び炭素原子数2以上5以下のアルキニル基が好ましい。R2で表されるアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、上述の通り第1置換基で置換されていてもよい。
2における第1置換基としては、フッ素原子又はフェニル基が好ましい。
2で表されるシクロアルキル基、シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基としては、炭素原子数5以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数5以上10以下のシクロアルケニル基、及び炭素原子数5以上10以下のシクロアルキニル基が好ましい。R2で表されるシクロアルキル基、シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基は、上述の通り第2置換基で置換されていてもよい。
2で表されるアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R2で表されるアリール基は、上述の通り第2置換基で置換されていてもよい。
2で表されるアシルアミド基は、RA−(C=O)−NH−*で表される基である(RAは、アルキル基又はアリール基を表す。*は、結合部位を表す)。R2で表されるアシルアミド基としては、例えば、炭素原子数2以上10以下のアシルアミド基が挙げられる。R2で表されるアシルアミド基としては、アセチルアミド基、プロピオニルアミド基、n−ブチリルアミド基、イソブチリルアミド基、ピバロイルアミド基、又はベンゾイルアミド基が好ましい。
2で表されるスルホニルアミド基は、RB−(SO2)−NH−*で表される基である(RBは、アルキル基又はアリール基を表す。*は、結合部位を表す)。R2で表されるスルホニルアミド基としては、炭素原子数1以上10以下のスルホニルアミド基が挙げられる。R2で表されるスルホニルアミド基としては、メシルアミド基、n−プロパンスルホニルアミド基、n−ブタンスルホニルアミド基、i−ブタンスルホニルアミド基、t−ブタンスルホニルアミド基、又はベンゼンスルホニルアミド基が好ましい。
2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
2は、第1置換基で置換されていてもよい炭素原子数1以上5以下のアルキル基、又は第2置換基で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上10以下のアリール基を表すことがより好ましく、メチル基、又はフェニル基を表すことが更に好ましい。
Yは、水素原子を表すことが好ましい。
pは、2を表すことが好ましい。qは、1を表すことが好ましい。rは、1を表すことが好ましい。
光酸発生剤(I)又は(II)としては、下記化学式(II−1)又は(II−2)で表される化合物(以下、光酸発生剤(II−1)又は(II−2)と記載することがある)が好ましい。
Figure 2020011463
光酸発生剤(I)又は(II)は、例えば、下記一般式(I’)又は(II’)で表されるヒドロキシ化合物に対するJone’s酸化によって合成することができる。
Figure 2020011463
一般式(I’)及び(II’)中、R1、R2、X、Y、p、q及びrは、各々、一般式(I)及び(II)と同義である。
光酸発生剤として用いることのできるトリアリールスルホニウム塩誘導体としては、例えば、下記一般式(S−1)、(S−2)又は(S−3)で表される化合物が挙げられる。光酸発生剤として用いることのできるジアリールヨードニウム塩誘導体としては、例えば、下記化学式(I−1)若しくは(I−2)、又は一般式(I−3)で表される化合物が挙げられる。光酸発生剤として用いることのできるスルホニルジアゾメタン誘導体としては、例えば、下記化学式(A−1)で表される化合物が挙げられる。光酸発生剤として用いることのできるN−ヒドロキシフタルイミドのスルホン酸エステル誘導体としては、例えば、下記化学式(A−2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2020011463
一般式(S−1)及び(S−2)において、W-は、PF6 -又はSbF6 -を表す。一般式(S−3)及び(I−3)において、Z-は、CF3SO3 -又はC49SO3 -を表す。
前処理液における光酸発生剤の含有割合としては、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
[水]
水は、前処理液の主溶媒としての役割を果たす。前処理液は、水を主溶媒として含有することで、環境負荷を抑制することができる。前処理液が水を含有する場合、その含有割合としては、60質量%以上95質量%以下が好ましく、80質量%以上90質量%以下がより好ましい。
[水溶性有機溶剤]
水溶性有機溶剤は、前処理液における光酸発生剤の溶解性を向上させ、かつ液体成分の揮発を抑制することで粘性を安定化させる。水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ―ル、テトラエチレングルコール等のグリコール化合物;グリセリン;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールのエーテル化合物;アセテート化合物;チオジグリコール;ラクタム化合物(例えば、2−ピロリドン又はN−メチル−2−ピロリドン)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
前処理液は、水溶性有機溶剤として、グリセリン及びラクタム化合物のうち少なくとも一方を含有することが好ましく、グリセリン及びラクタム化合物を含有することがより好ましく、グリセリン及び2−ピロリドンを含有することが更に好ましい。
前処理液が水溶性有機溶剤を含有する場合、その合計含有割合としては、2質量%以上40質量%以下が好ましく、7質量%以上25質量%以下がより好ましい。
前処理液がグリセリンを含有する場合、その含有割合としては、1質量%以上25質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
前処理液がラクタム化合物を含有する場合、その含有割合としては、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
前処理液は、溶媒として、水、グリセリン及びラクタム化合物のみを含有することが好ましい。前処理液の溶媒における水、グリセリン及びラクタム化合物の合計含有割合としては、90質量%が好ましく、99質量%がより好ましい。
[界面活性剤]
界面活性剤は、記録媒体に対する前処理液の濡れ性を向上させる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤(例えば、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物である日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」)がより好ましい。
前処理液が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、0.01質量%以上2.00質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.50質量%以下がより好ましい。
[前処理液の調製方法]
前処理液は、光酸発生剤と、必要に応じて添加される界面活性剤等の任意成分とを溶剤に添加することにより調製することができる。
<第2実施形態:インクジェット記録装置>
本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体の画像形成領域に画像を形成するインクジェット記録装置であって、記録媒体の画像形成領域に、第1実施形態に係る前処理液を吐出する前処理部と、前処理液が吐出された記録媒体の画像形成領域を露光する露光部と、露光された記録媒体の画像形成領域にインクを吐出することで画像を形成する記録ヘッドとを備える。第2実施形態に係るインクジェット記録装置は、第1実施形態に係る前処理液を用いることで、インクノズルの詰まりを抑制しつつ、形成される画像の画質を向上できる。
以下、第2実施形態に係るインクジェット記録装置の一例について、図面を参照しつつ説明する。図1は、インクジェット記録装置1の要部を示す側面図である。インクジェット記録装置1は、記録媒体(図示略)の画像形成領域に前処理液を吐出する前処理部2と、前処理液が吐出された記録媒体の画像形成領域を露光する露光部3と、露光された記録媒体の画像形成領域にインクを吐出することで画像を形成する4個の記録ヘッド4(具体的には、第1記録ヘッド4a、第2記録ヘッド4b、第3記録ヘッド4c及び第4記録ヘッド4d)と、記録媒体を搬送する搬送ベルト5とを少なくとも備える。4個の記録ヘッド4は、それぞれ異なるインク(例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインク)を吐出する。インクジェット記録装置1は、例えば、外部コンピューターから受信した画像データ及び印刷条件(具体的には、両面印刷の有無等)に基づいて、記録媒体上にフルカラー画像を形成する。
搬送ベルト5は、例えば無端ベルトの一部であり、記録媒体を一方向(図1では右方向)に搬送する。前処理部2、露光部3及び記録ヘッド4(具体的には、第1記録ヘッド4a、第2記録ヘッド4b、第3記録ヘッド4c及び第4記録ヘッド4d)は、記録媒体の搬送方向に沿ってこの順番で搬送ベルト5の上方に配設されている。インクジェット記録装置1は、搬送ベルト5で記録媒体を搬送しながら、記録媒体の画像形成領域が前処理部2、露光部3又は記録ヘッド4の直下に搬送された際に、画像形成領域への前処理液の吐出、露光又はインクの吐出をそれぞれ行う。以上、図面を参照しつつインクジェット記録装置1を説明した。
但し、図1に示したのは第2実施形態に係るインクジェット記録装置の一例に過ぎない。具体的には、第2実施形態に係るインクジェット記録装置の備える記録ヘッドの数は、1個のみでもよく(即ち、インクジェット記録装置は、モノクロ画像形成用であってもよい)、2個、3個又は5個以上であってもよい。また、第2実施形態に係るインクジェット記録装置は、搬送ベルトを備えていなくてもよい。この場合、インクジェット記録装置は、移動可能な前処理部、移動可能な露光部及び移動可能な記録ヘッドを備えるとよい。即ち、インクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する代わりに、前処理部、露光部及び記録ヘッドを記録媒体の画像形成領域の上方に順位移動させることで、画像形成領域への前処理、露光及びインクの吐出を行ってもよい。更に、インクジェット記録装置は、前処理部、露光部、記録ヘッド及び搬送ベルト以外の他の部材を更に備えてもよい。インクジェット記録装置が備える他の部材としては、例えば、記録媒体を搬送ベルトに供給する供給部、画像が形成された記録媒体に後処理(例えば、乾燥処理等)を行う後処理部、インク吐出後の記録ヘッドをクリーニングするクリーニング部、電子制御部(例えば、CPU又はメモリー)、入力部(例えば、キーボード、マウス又はタッチパネル)、及び通信部が挙げられる。以下、記録媒体、前処理部、露光部及び記録ヘッドの詳細を説明する。
[記録媒体]
記録媒体としては、シート状の部材であれば材質、形状及び厚さは限定されない。記録媒体としては、例えば、印刷用紙(例えば、コート紙又はグラビア紙)、布帛(例えば、ポリエステル生地)、及び樹脂フィルム(例えば、ポリエステル生地)が挙げられる。第2実施形態に係るインクジェット記録装置は、第1実施形態に係る前処理液を用いて前処理を行うため、樹脂フィルム及びコート紙のような液体の吸収性の低い記録媒体、又はポリエステル生地のような撥水性の高い生地に対しても高画質な画像を形成することができる。
[前処理部]
前処理部は、記録媒体の画像形成領域に前処理液を吐出する。前処理液を吐出する方法としては、特に限定されないが、例えば、ピエゾ方式、サーマルインクジェット方式及びスプレー方式が挙げられる。
前処理液の吐出量としては、記録媒体に応じて適宜変更することができるが、例えば、記録媒体の画像形成領域1mm2に対して1nL以上10nL以下とすることができる。
[露光部]
露光部は、前処理液が吐出された記録媒体の画像形成領域を露光する。これにより、記録媒体の画像形成領域において、前処理液中の光酸発生剤から酸成分を発生させる。露光光としては、例えば、400nmより短波長の光を含む露光光を用いることができる。露光波長としては、300nm以上400nm以下が好ましく、350nm以上400nm以下がより好ましい。露光光としては、例えば、等圧水銀灯の共鳴線(313nm及び254nm)、KrFエキシマレーザー光(248nm)、及びArFエキシマレーザー光(193nm)を用いてもよい。露光線量としては、例えば、1mJ/cm2以上100mJ/cm2以下とすることができる。
[記録ヘッド]
記録ヘッドは、露光された記録媒体の画像形成領域にインクを吐出することで画像を形成する。吐出されたインク中の顔料は、画像形成領域中の酸成分と凝集反応を生じる。これにより、インク中の顔料の画像形成領域への定着が促進され、高画質な画像が形成される。記録ヘッドとしては、特に限定されず、一般的なインクジェット記録装置が備える記録ヘッド(例えば、ラインヘッド方式の記録ヘッド又はシリアルヘッド方式の記録ヘッド)を用いることができる。
(インク)
記録ヘッドから吐出するインクとしては、一般的なインクジェット記録装置に使用されるインク(例えば、水性インク)を用いることができる。水性インクは、例えば、水性媒体と、顔料粒子とを含む。顔料粒子は、水性媒体中において、互いに分散して存在する。顔料粒子は、各々、顔料コアのみからなる粒子であってもよく、顔料コアと、顔料コアの表面の少なくとも一部分を被覆する被覆樹脂とを含む粒子であってもよい。水性インクは、界面活性剤及び水溶性有機溶剤のうち少なくとも一方を更に含有してもよい。
(顔料コア)
顔料コアは、顔料を含有する。顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ34、36、43、61、63、及び71が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド122、及び202が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、及び15:3が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、23、及び33が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック7が挙げられる。
水性インクが顔料コアを含有する場合、その含有割合としては、4質量%以上8質量%以下が好ましい。顔料コアの含有量を4質量%とすることで、所望の画像濃度を有する画像を形成し易くなる。一方、顔料コアの含有量を8質量%以下とすることで、記録媒体に対する水性インクの浸透性を確保し易くなる。また、顔料コアの含有量を8質量%以下とすることで、水性インク中での顔料コアの流動性を確保し易くなり、その結果、所望の画像濃度を有する画像を形成し易くなる。
顔料コアの体積中位径(D50)としては、水性インクの色濃度、色相、及び安定性の観点から、30nm以上200nm以下が好ましく、70nm以上130nm以下がより好ましい。
界面活性剤は、記録媒体に対する水性インクの濡れ性を向上させる。水性インクにおける界面活性剤の種類及び含有量としては、前処理液において例示した界面活性剤の種類及び含有量と同様とすることができる。
水溶性有機溶剤は、液体成分の揮発を抑制して水性インクの粘性を安定化させる。水性インクにおける水溶性有機溶剤の種類及び含有量としては、前処理液において例示した水溶性有機溶剤の種類及び含有量と同様とすることができる。
前処理液及び水性インクは、それぞれ同1種類の水溶性有機溶剤を同一の含有割合で含有することが好ましい。また、前処理液及び水性インクは、同1種類の界面活性剤を同一の含有割合で含有することが好ましい。このように、前処理液及び水性インクの組成を近づけることで、記録媒体に吐出された前処理液及び水性インクが混ざり易くなり、その結果、前処理液中の光酸発生剤から発生した酸成分と水性インク中の顔料との凝集反応が促進される。
<第3実施形態:画像形成方法>
本発明の第3実施形態に係る画像形成方法は、記録媒体の画像形成領域に画像を形成する方法であって、記録媒体の画像形成領域に、第1実施形態に係る前処理液を吐出する前処理液吐出工程と、前処理液が吐出された記録媒体の画像形成領域を露光する露光工程と、露光された記録媒体の画像形成領域にインクを吐出することで画像を形成するインク吐出工程とを備える。第3実施形態に係る画像形成方法は、第1実施形態に係る前処理液を用いることで、インクノズルの詰まりを抑制しつつ、形成される画像の画質を向上できる。
第3実施形態に係る画像形成方法には、例えば、第2実施形態に係るインクジェット記録装置を用いることができる。第3実施形態に係る画像形成方法における記録媒体及びインクは、第2実施形態に係るインクジェット記録装置と同様の記録媒体及びインクを用いることができる。以下、各工程について説明する。
[前処理液吐出工程]
本工程では、記録媒体の画像形成領域に、第1実施形態に係る前処理液を吐出する。前処理液の吐出方法としては、特に限定されないが、例えば、第2実施形態に記載の前処理部を用いて吐出する方法が挙げられる。
[露光工程]
本工程では、前処理液が吐出された記録媒体の画像形成領域を露光する。これにより、前処理液中の光酸発生剤から酸成分を発生させる。露光方法としては、特に限定されないが、例えば、第2実施形態に記載の露光部を用いて露光する方法が挙げられる。
[インク吐出工程]
本工程では、露光された記録媒体の画像形成領域にインクを吐出することで画像を形成する。インクを吐出する方法としては、特に限定されないが、例えば、第2実施形態に記載の記録ヘッドを用いて吐出する方法が挙げられる。
第3実施形態に係る画像形成方法は、前処理液吐出工程、露光工程及びインク吐出工程以外の他の工程を更に備えていてもよい。他の工程としては、例えば、画像が形成された記録媒体に後処理(例えば、乾燥処理等)を行う後処理工程、及びインク吐出後の記録ヘッドをクリーニングするクリーニング工程が挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
[光酸発生剤の準備]
以下の方法により、第1実施形態で説明した光酸発生剤(II−1)及び(II−2)を準備した。
(光酸発生剤(II−1))
ナス型フラスコに、2,2−ジメチル−3−フェニルヒドロキシメチル[2.2.1]ビシクロヘプタン−1−トリフラ−ト0.272g(0.719mmol)を溶解させたアセトン溶液30mLを投入した。氷冷しながら、アセトン溶液にJone’s試薬(無水クロム酸(CrO3)の硫酸溶液(0.1mol/L))を徐々に滴下した。滴下量は合計15mLとした。滴下後、反応溶液に沈殿したクロム(III)をろ過により除去した。ろ過後の反応溶液から、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを留去した。これにより得られた溶液を飽和食塩水30mLに投入した。得られた混合液(水層)に含まれる生成物に対し、ジエチルエーテル(有機層)による溶媒抽出を行った。具体的には、ジエチルエーテルを30mL投入し、有機層を抽出した。抽出後、生成物が含まれる有機層に無水硫酸マグネシウム0.5gを投入することで乾燥させた。乾燥後の有機層からロータリーエバポレーターでジエチルエーテルを留去した。得られた留去後の溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ベンゼン)で単離・精製することにより3−ベンゾイル−2,2−ジメチル[2.2.1]ビシクロヘプタン−1−トリフラ−ト(光酸発生剤(II−1))を得た。光酸発生剤(II−1)の収量は0.181g、収率は67%であった。
(光酸発生剤(II−2))
ナス型フラスコに、2,2−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ)メチル[2.2.1]ビシクロヘプタン−1−トリフラ−ト0.315g(0.996mmol)を溶解させたアセトン溶液30mLを投入した。氷冷しながら、アセトン溶液にJone’s試薬(無水クロム酸(CrO3)の硫酸溶液(0.1mol/L))を徐々に滴下した。滴下量は合計18mLとした。滴下後、反応溶液に沈殿したクロム(III)をろ過により除去した。ろ過後の反応溶液から、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを留去した。これにより得られた溶液を飽和食塩水30mLに投入した。得られた混合液(水層)に含まれる生成物に対し、ジエチルエーテル(有機層)による溶媒抽出を行った。具体的には、ジエチルエーテルを30mL投入し、有機層を抽出した。抽出後、生成物が含まれる有機層に無水硫酸マグネシウム0.5gを投入することで乾燥させた。乾燥後の有機層からロータリーエバポレーターでジエチルエーテルを留去した。得られた留去後の溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ベンゼン)で単離・精製することにより3−アセチル−2,2−ジメチル[2.2.1]ビシクロヘプタン−1−トリフラ−ト(光酸発生剤(II−2))を得た。光酸発生剤(II−2)の収量は0.219g、収率は70%であった。
イオン性の光酸発生剤として、東洋合成工業株式会社製「TPS−TF」を準備した。この化合物は、下記式(s−1)で表される化合物であった。また、比較例において用いる酸成分として、富士フイルム和光純薬株式会社製「塩化マグネシウム六水和物」を準備した。
Figure 2020011463
[前処理液の調製]
光酸発生剤としての光酸発生剤(II−1)0.5gと、水溶性有機溶剤としてのグリセリン10.0g及び2−ピロリドン5.0gと、界面活性剤としての日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」0.1gとをイオン交換水に添加し、全量を100.0gに調製した。これにより、前処理液(A−1)を得た。
以下の点を変更した以外は、前処理液(A−1)の調製と同様に操作し、前処理液(A−2)及び(A−3)と、前処理液(B−1)とを調製した。具体的には、前処理液(A−2)及び(A−3)の調製では、光酸発生剤の種類及び使用量を下記表1に示す通りに変更した。また、前処理液(B−1)では、光酸発生剤の代わりに酸成分を使用した。
各前処理液に用いた光酸発生剤又は酸成分の種類及び使用量を下記表1に示す。下記表1中、「II−1」及び「II−2」は、それぞれ光酸発生剤(II−1)及び(II−2)を示す。「−」は、該当する成分を使用していないことを示す。
Figure 2020011463
[ブラックインクの調製]
カーボンブラック90g(三菱ケミカル株式会社製「#990」、窒素吸着比表面積:250m2/g、DBP吸油量:112mL/100g)を、2.5規定の過硫酸ナトリウム溶液3000mLに添加した。この反応液を温度60℃にて速度300rpmで攪拌し、10時間反応させることにより酸化処理を行った。その後、反応液を濾過し、酸化処理後のカーボンブラックを濾別した。濾別した酸化処理後のカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液100mLに投入することで中和し、その後、限外濾過を行った。得られた中和後のカーボンブラックを水洗した後に乾燥させ、その後、固形分30質量%となるように純水中に分散させて充分に攪拌することにより、ブラック顔料分散液を得た。このブラック顔料分散液における顔料分散体(顔料コア)の体積中位径(D50)は、103nmであった。
上述のブラック顔料分散液20.0g(固形分換算値6.0g)と、水溶性有機溶剤としてのグリセリン10.0g及び2−ピロリドン5.0gと、界面活性剤としての日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」0.1gとをイオン交換水に添加し、全量を100.0gに調製した。これにより、ブラックインクを得た。
[イエローインクの調製]
顔料分散体「TB−416 Yellow(大日精化工業株式会社製)」20.0g(固形分換算2.0g)と、水溶性有機溶剤としてグリセリン10.0g及び2−ピロリドン5.0gと、界面活性剤として日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」0.1gとをイオン交換水に添加し、全量100.0gに調製した。これにより、イエローインクを得た。
<評価>
上述の前処理液(A−1)〜(A−3)及び(B−1)について、保存安定性と、インクノズルの詰まりと、形成される画像の画質とを評価した(実施例1〜3及び比較例1)。更に、前処理液を用いずに画像形成を行い、インクノズルの詰まりと、形成される画像の画質とを評価した(比較例2)。評価は、温度20℃、湿度30%RHの環境下で行った。評価結果を下記表2に示す。
(評価機)
画像形成に用いる評価機としては、搬送ユニット(ベルトコンベア)と、4つの記録ヘッド(それぞれラインヘッド)とを備えるインクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作機)の改造機を用いた。この試作機の記録ヘッドは、解像度600dpi(=150dpi×4列)、ノズル数2400個(=600個×4列)、液滴量11pL、駆動周波数20kHzのピエゾ型ヘッドであった。試作機の4つの記録ヘッドは、それぞれ長手方向が紙の搬送方向に直交するように配設されていた。4つの記録ヘッドの間隔は、50mmであった。改造においては、4つの記録ヘッドよりも搬送方向上流側に露光部(UV照射装置、ウシオ電機株式会社製「UniJet(登録商標)A360」)を追加し、更に露光部よりも搬送方向上流側に前処理部を追加した。露光条件は、波長385nm、照射線量60mJ/cm2とした。前処理部としては、上述の記録ヘッドと同型のピエゾ型ヘッドを用いて前処理液を吐出するように設定した。前処理液の吐出量は、記録媒体の画像形成領域1mm2に対して3.4nLに設定した。
4つの記録ヘッドのうち、2つの記録ヘッドからそれぞれ上述のブラックインク又はイエローインクが吐出されるように設定した。なお、残りの2つの記録ヘッドは使用しなかった。
[ノズル詰まり]
上述の評価機を用いてA4の記録用紙に印字率100%で10000枚の連続印刷を行った。その後、評価機の不吐出ピン数を数え、ノズル詰まりのレベルを次のように定義した。
A(良好):不吐出ピン数が5個以下
B(不良):不吐出ピン数が5個超
[保存安定性]
各前処理液100gについて、pHを測定した後、60℃で1ヶ月保管処理し、その後、pHを再度測定した。pHの測定結果から、保存安定性を下記式より求めた。
保存安定性=保管処理前のpH−保管処理後のpH
A(良好):保存安定性(pH変化)の絶対値が0.3以内
B(不良):保存安定性(pH変化)の絶対値が0.3超
[画像評価]
上述の評価機を用いて以下の記録媒体に画像を形成し、画像濃度、フェザリング及びカラーブリードを評価した。
(記録媒体)
評価に用いる記録媒体として、以下を用意した。
コート紙A:王子製紙株式会社製「PODグロスコート(ビジネスコートグロス)」、坪量100g/m2
コート紙B:王子製紙株式会社製「OKトップコート+」、坪量104.7g/m2
グラビア紙:王子製紙株式会社製「スペースDX」、坪量56.5g/m2
コート紙C:セイコーエプソン株式会社製「スーパーファイン紙(インクジェット用マットコート紙)」、坪量102g/m2
透明ポリエステルフィルム(PEsフィルム):東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)U10」、厚み100μm
ポリエステル生地(PEs生地):株式会社色染社製「ポリエステルタフタ」、目付71.8g/m2
(画像濃度)
60℃にて1ヶ月保存処理した各前処理液、又は保存処理前の各前処理液で各記録媒体を前処理した後に、評価機を用いて2cm×2cmの黒色ソリッド画像を形成した。解像度は600dpiとした。形成した黒色ソリッド部の画像濃度をX−Rite社製「反射型カラー分光測色濃度計」で測定した。画像濃度は、測定値が大きいほど高濃度の画像であることを示す。画像濃度の評価においては、以下の基準によって良好(A)又は不良(B)と判定した。
記録媒体がコート紙A、コート紙B、グラビア紙又はコートCの場合の基準を以下に示す。保存処理前、又は保存処理後の前処理液をそれぞれ用いた場合の2つの画像濃度に基づき、「いずれの画像濃度も1.3以上、かつ画像濃度差が0.1未満」を良好(A)、「少なくとも一方の画像濃度が1.3未満、或いは画像濃度差が0.1以上」を不良(B)と判定した。
記録媒体がPEsフィルムの場合の基準を以下に示す。保存処理前、又は保存処理後の前処理液をそれぞれ用いた場合の2つの画像濃度に基づき、「いずれの画像濃度も2.0以上、かつ画像濃度差が0.1未満」を良好(A)、「少なくとも一方の画像濃度が2.0未満、或いは画像濃度差が0.1以上」を不良(B)と判定した。
記録媒体がPEs生地の場合の基準を以下に示す。保存処理前、又は保存処理後の前処理液をそれぞれ用いた場合の2つの画像濃度に基づき、「いずれの画像濃度も2.0以上、かつ画像濃度差が0.1未満」を良好(A)、「少なくとも一方の画像濃度が2.0未満、或いは画像濃度差が0.1以上」を不良(B)と判定した。
(フェザリング)
60℃で1ヶ月保存処理した前処理液、又は保存処理しない前処理液で各記録媒体を前処理した後に、評価機を用いて幅1mmの黒色細線を形成して肉眼で観察した。解像度は600dpiとした。フェザリングの評価においては、保存処理前の前処理液、及び保存処理後の前処理液のいずれを用いても黒色細線の周囲に滲み(フェザリング)が発生していない場合を良好(A)、保存処理後の前処理液を用いると滲みが発生した場合を不良(B)と判定した。
(カラーブリード)
60℃で1ヶ月保存処理した前処理液、又は保存処理しない前処理液で各記録媒体を前処理した後に、評価機を用いて4cm×4cmの黒ソリッド画像と、4cm×4cmのイエローソリッド画像とを、互いに隣接するように形成し、その境界部を肉眼で観察した。解像度は600dpiとした。カラーブリードの評価においては、保存処理前の前処理液、及び保存処理後の前処理液のいずれを用いても黒ソリッド画像及びイエローソリッド画像の境界において混色が確認されなかった場合を良好(A)、保存処理後の前処理液を用いると混色が確認された場合を不良(B)と判定した。
下記表2において、「−」は、該当する評価を行っていないことを示す。
Figure 2020011463
実施例1〜3で用いた前処理液(A−1)〜(A−3)は、露光によってスルホン酸を発生する光酸発生剤を含有していた。その結果、表2に示すように、実施例1〜3では、インクノズルの詰まりを抑制しつつ、高画質の画像を形成することができた。
一方、比較例1で用いた前処理液(B−1)は、露光によってスルホン酸を発生する光酸発生剤を含有していなかった。具体的には、前処理液(B−1)は、光酸発生剤を含有せず、代わりに酸成分を含有していた。そのため、表2に示すように、比較例1では、高画質の画像を形成することができず、かつインクノズルの詰まりが発生した。これは、比較例1で前処理液に用いた酸成分は、酸性度及びその使用量が十分ではないため、形成される画像を高画質化できなかったと判断される。また、比較例1では、吐出された前処理液(B−1)の一部がミストとなって拡散することで記録ヘッドのノズル面に付着し、ノズル面において酸成分及び顔料の凝集反応が生じたためであると判断される。なお、比較例1において、より酸性度の高い酸成分を使用するか、又は酸成分の使用量を増大させた場合、形成される画像の画質を向上させることはできるが、インクノズルの詰まりが更に発生し易くなると判断される。
また、比較例2では、前処理液を用いなかった。そのため、表2に示すように、比較例2では、十分に高画質な画像を形成することはできなかった。
以上のことから、本発明に係る前処理液、インクジェット記録装置及び画像形成方法は、インクノズルの詰まりを抑制しつつ、形成される画像の画質を向上できると判断される。
なお、実施例1及び2で用いた前処理液(A−1)及び(A−2)は、実施例3で用いた前処理液(A−3)よりも保存安定性に優れていた。これは、前処理液(A−1)及び(A−2)は、第1実施形態に記載の一般式(I)又は(II)で表されるノニオン性化合物であり、上述の通り熱及び求核剤に対して安定であるためと判断される。
以上のことから、本発明に係る前処理液、インクジェット記録装置及び画像形成方法は、前処理液における光酸発生剤として一般式(I)又は(II)で表される化合物を用いることで、保存安定性についても向上できると判断される。
本発明に係る前処理液、インクジェット記録装置及び画像形成方法は、画像形成に利用することがきる。
1 インクジェット記録装置
2 前処理部
3 露光部
4 記録ヘッド
4a 第1記録ヘッド
4b 第2記録ヘッド
4c 第3記録ヘッド
4d 第4記録ヘッド
5 搬送ベルト

Claims (8)

  1. 露光によってスルホン酸を発生する光酸発生剤を含有する、インクジェット記録用前処理液。
  2. 前記光酸発生剤は、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物である、請求項1に記載のインクジェット記録用前処理液。
    Figure 2020011463
    (前記一般式(I)及び(II)中、
    1は、各々独立に、第1置換基で置換されていてもよいアルキル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基、第2置換基で置換されていてもよいアリール基、第2置換基で置換されていてもよい複素環基、フッ素原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、
    2は、水素原子、第1置換基で置換されていてもよいアルキル基、第1置換基で置換されていてもよいアルケニル基、第1置換基で置換されていてもよいアルキニル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルケニル基、第2置換基で置換されていてもよいシクロアルキニル基、第2置換基で置換されていてもよいアリール基、第2置換基で置換されていてもよい複素環基、アシルアミド基、スルホニルアミド基又はハロゲン原子を表し、
    前記第1置換基は、フッ素原子又はアリール基であり、
    前記第2置換基は、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、又はアルキルアミノ基であり、
    Xは、水素原子又はメチル基を表し、
    複数のXは、互いに同一でも異なっていてもよく、
    カルボニル基のγ位の炭素原子に結合しているXが存在する場合、前記γ位の炭素原子に結合しているXのうち少なくとも1つは水素原子であり、
    Yは、水素原子又はメチル基を表し、
    pは、1以上3以下の整数を表し、
    qは、0以上3以下の整数を表し、
    rは、1又は2を表す。)
  3. 前記一般式(I)及び(II)中、
    1は、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上5以下のフルオロアルキル基を表し、
    2は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、
    pは、2を表し、
    qは、1を表し、
    rは、1を表す、請求項2に記載のインクジェット記録用前処理液。
  4. 前記光酸発生剤は、下記化学式(II−1)で表される化合物である、請求項3に記載のインクジェット記録用前処理液。
    Figure 2020011463
  5. 水及び水溶性有機溶剤を更に含有する、請求項1〜4の何れか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
  6. 前記光酸発生剤の含有割合は、0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項1〜5の何れか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
  7. 記録媒体の画像形成領域に画像を形成するインクジェット記録装置であって、
    前記記録媒体の前記画像形成領域に、請求項1〜6の何れか一項に記載のインクジェット記録用前処理液を吐出する前処理部と、
    前記インクジェット記録用前処理液が吐出された前記記録媒体の前記画像形成領域を露光する露光部と、
    露光された前記記録媒体の前記画像形成領域にインクを吐出することで前記画像を形成する記録ヘッドとを備える、インクジェット記録装置。
  8. 記録媒体の画像形成領域に画像を形成する方法であって、
    前記記録媒体の前記画像形成領域に、請求項1〜6の何れか一項に記載のインクジェット記録用前処理液を吐出する前処理液吐出工程と、
    前記インクジェット記録用前処理液が吐出された前記記録媒体の前記画像形成領域を露光する露光工程と、
    露光された前記記録媒体の前記画像形成領域にインクを吐出することで前記画像を形成するインク吐出工程とを備える、画像形成方法。
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