JP2020007400A - ポリカーボネートジオールおよびそれを用いた水系ポリウレタン分散体 - Google Patents
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Abstract
Description
疎水性であるポリウレタンを安定に水中に分散させるために、水系ポリウレタン分散体に用いるポリウレタンに親水性基、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、3級アミノ基等を導入する方法が知られている。この方法において、ポリウレタンを構成するジオール成分として、分散性が高いジヒドロキシカルボン酸を用いることが多く、工業的に入手が容易なジメチロールプロピオン酸を用いることが一般的である(特許文献2〜4)。
(1) 重合反応条件下において、ジメチロールプロピオン酸のカルボキシル基と水酸基が反応し、エステル結合が多量に副生するため、このカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンは耐久性が低い。
(2) 開始剤のジメチロールプロピオン酸のみにカルボン酸を含有するため、分子量を1000以上に伸ばした場合にカルボキシル基が不足する可能性がある。またポリカーボネートジオール1分子中のカルボキシル基の含有量を任意に調整することができない。
(3) カーボネート結合間の平均炭素数が3であるために、ポリウレタンにした時に柔軟性が低下する。
(4) 開環重合で得られた分子量分布の狭いブロック重合体であるために、同一のポリカーボネート骨格の構造単位が規則的に連続する構造となり、水素結合による凝集力が強く、ポリウレタン水分散体に用いた場合に、凝集力が高く、貯蔵安定性に劣る。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
工程1:カルボキシル基前駆体基を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2:工程1で得られたポリカーボネートジオールのカルボキシル基前駆体基をカルボキシル基に変換する変換工程
工程1−1:保護したカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2−1:工程1−1で得られたポリカーボネートジオールのカルボキシル基の保護基を脱離させる脱保護工程
工程1−2:不飽和結合を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2−2:工程1−2で得られたポリカーボネートジオールの不飽和結合に対して、カルボキシル基導入化合物を反応させてカルボキシル基を導入するカルボキシル基導入工程
本発明のポリカーボネートジオールは、2種以上のカーボネート構造単位を含むランダム共重合体よりなる、数平均分子量(Mn)が500〜5000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.6以上のポリカーボネートジオールであって、カルボキシル基を含む構造単位を有し、該ポリカーボネートジオールの原料ジヒドロキシ化合物の2つの水酸基間に存在する炭素原子に由来して、該ポリカーボネートジオールのカーボネート構造単位に導入された炭素原子の数の平均値(以下、この値を「平均炭素数」と称す。)が3.5〜10.0であることを特徴とする。
本発明における平均炭素数とは、ポリカーボネートジオールの原料として使用したジヒドロキシ化合物に由来して、ポリカーボネートジオールの構造単位に導入されたジヒドロキシ化合物の2つの水酸基の間の平均炭素数を表す。例えば、構造単位に導入されたジヒドロキシ化合物において、1,6−ヘキサンジオールの炭素数は6、1,4−ブタンジオールの炭素数は4、ジメチロールプロピオン酸の炭素数は3となる。ここで炭素数は、ジヒドロキシ化合物の2つの水酸基の間の炭素原子の数であり、2つの水酸基の間の連結基に含有するヘテロ原子や、2つの水酸基の間の連結基から分岐した炭素鎖は考慮しない。平均炭素数はポリカーボネートジオールの構造単位に導入されたジヒドロキシ化合物の炭素数と、該ジヒドロキシ化合物の全ジヒドロキシ化合物に対するモル比率から計算する。ポリカーボネートジオールの構造単位の同定とモル比率の分析には、1H−NMRを用いる。具体的な方法は、後述の実施例の項に記載される通りである。
平均炭素数が上記下限未満のジヒドロキシ化合物でポリカーボネートジオールを構成した場合、カーボネート結合間の距離が短くなり、カーボネート結合の極性により凝集力が高まる。凝集力が高まることにより、耐薬品性、耐アルカリ性、耐水性や耐熱性などが向上するものの、柔軟性が失われるため、低温特性や加工適性に劣るものとなる。
一方、平均炭素数が上記上限を超えるジヒドロキシ化合物でポリカーボネートジオールを構成した際、カーボネート結合間の距離が長くなり、カーボネート結合の極性による凝集力が低下する。凝集力の低下により、柔軟性が向上し、低温特性や加工適性に優れるものの、耐薬品性、耐アルカリ性、耐水性や耐熱性などに劣るものとなる。
これに対して、平均炭素数を上記範囲にすることで、得られるポリウレタンの耐薬品性、低温特性、耐熱性、保存安定性、柔軟性等がバランスよく優れたものとなる。
本発明のポリカーボネートジオールは、2種以上のカーボネート構造単位を含むランダム共重合体であることを特徴とする。
本発明のポリカーボネートジオールがランダム共重合体であることにより、カーボネート結合の間隔が不規則となり、水素結合による分子同士の凝集力が低下するため、このポリカーボネートジオールを用いて得られるポリウレタンの低温特性、柔軟性が良好となる。また凝集力が弱まるため、ポリウレタン溶液やポリウレタン水分散体などに用いた際には、保存安定性が向上する。
本発明のポリカーボネートジオールは、カルボキシル基を含む構造単位を含むことを特徴とする。
ポリウレタンは本来疎水性であるが、本発明のポリカーボネートジオールが、極性基であるカルボキシル基を含む構造単位を有することで、本発明のポリカーボネートジオールを用いてカルボキシル基を有するポリウレタンを得ることができ、このポリウレタンを水中に安定に分散させることができ、得られるポリウレタン水分散体の保存安定性を高めることができる。
この分散安定性を十分発揮するためにはポリカーボネートジオール中のカルボキシル基含有量を適切な範囲にすることが重要である。カルボキシル基含有ポリカーボネートジオール中のカルボキシル基含有量は、ポリカーボネートジオールの酸価(mg/g−KOH)によって表すことができ、好ましい酸価は後述の通りである。
本発明のポリカーボネートジオールの数平均分子量は500〜5000である。この数平均分子量の上限としては4000以下、さらに3000以下、特に2000以下が好ましい。また下限としては500以上、さらに700以上、特に1000以上が好ましい。数平均分子量が上記下限未満であると、ハードセグメント(ウレタン結合とウレタン結合の距離が短い構造単位)にカルボキシル基が導入されたポリウレタンが形成され、ポリウレタンが固くなったり、風合いが落ちる可能性がある。また、上記上限を超えるとポリカーボネートジオールの粘度が上がり、ポリウレタン合成の際のハンドリングを損なったり、水中でポリウレタン水分散体を十分に撹拌できず分散不良となったり、ポリウレタン水分散体の貯蔵安定性が悪くなったりする。
なお、ここで、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、酸価と水酸基価から算出される値であり、具体的な算出方法は、後述の実施例の項に示される通りである。
本発明のポリカーボネートジオールは分子量分布(Mw/Mn)が1.6以上であることを特徴とする。本発明のポリカーボネートジオールの分子量分布(Mw/Mn)の下限は好ましくは1.7以上、より好ましくは1.8以上であり、上限は3.0以下が好ましく、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.2以下である。ポリカーボネートジオールの分子量分布(Mw/Mn)が上記上限を超える場合、含有する高分子成分が増加するために、ポリカーボネートジオールの粘度や融点が上昇し、ポリウレタン合成時のハンドリング性等が低下する傾向がある。また、分子量分布が上記下限未満のポリカーボネートジオールは、含有する高分子量成分が少ないために、ポリウレタンを合成した際に機械強度が低下したり、柔軟性が低下したり、耐薬品性が低下する可能性がある。また低分子量のオリゴマーが少なく、分子量が揃った成分で構成されているために分子同士の凝集力が強く、ポリウレタン溶液やポリウレタン水分散体などに用いた際には、保存安定性が低下する問題がある。また分子量分布が上記下限未満のポリカーボネートジオールを合成するには、高価な環状モノマーを用いた開環重合やオリゴマーを除くなどの高度な精製操作が必要になり、工業プロセスとしての経済性が低い場合がある。
本発明のポリカーボネートジオールの酸価の上限としては100mg/g−KOH以下が好ましく、80mg/g−KOH以下がさらに好ましく、60mg/g−KOH以下がさらに好ましい。酸価の下限としては1mg/g−KOH以上が好ましく、5mg/g−KOH以下がさらに好ましく、10mg/g−KOH以上が特に好ましい。ポリカーボネートジオールの酸価が上記上限を超えると、カルボキシル基の割合が多すぎて凝集することで、得られるポリウレタンの分散を阻害したり、また酸成分が多すぎて、得られるポリウレタンの耐久性、耐加水分解性、耐候性、透明性、色調が低下することがある。ポリカーボネートジオールの酸価が上記下限未満であると、得られるポリウレタンの疎水性が高まることで凝集し、水中への分散が進行せず、ポリウレタン水分散体の貯蔵安定性が悪くなる。
ポリカーボネートジオールの酸価の測定方法は、後述の実施例の項に示される通りである。
本発明のポリカーボネートジオールは、下記式(A)で表される構造単位(以下、「構造単位(A)」と称す場合がある。)と、下記式(B)で表される構造単位(以下、「構造単位(B)」と称す場合がある。)とを含むことが好ましい。
上記範囲よりも構造単位(A)が多く、構造単位(B)が少ないと、カルボキシル基を有する構造単位(B)を導入することによる水分散性の向上効果を十分に得ることができず、得られるポリウレタン水分散体の保存安定性が悪くなる傾向があり、逆に構造単位(B)が多く、構造単位(A)が少ないと、カルボキシル基が多すぎて凝集することで、得られるポリウレタンの分散を阻害したり、また酸成分が多すぎて、得られるポリウレタンの耐久性、耐加水分解性、耐候性、透明性、色調が低下することがある。
本発明のポリカーボネートジオールはカーボネート結合が多く存在するが、エステル結合が少量含まれてもよい。
ポリカーボネートジオール1分子あたりにおける、カーボネート結合数とエステル結合数の合計に対するエステル結合数の割合を「エステル結合率」と表記した場合、本発明のポリカーボネートジオールのエステル結合率は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、0%であることが最も好ましい。エステル結合が存在すると得られるポリウレタンの柔軟性が向上することがあるが、上記上限を超えて存在する場合、得られるポリウレタンの耐薬品性、耐加水分解性、耐熱性が低下する傾向がある。ポリカーボネートジオールのエステル結合率は、後述の実施例の項に記載の方法で測定、算出することができる。
以下に、上記のような特徴を有する本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造方法について説明する。
工程1:カルボキシル基前駆体基を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2:工程1で得られたポリカーボネートジオールのカルボキシル基前駆体基をカルボキシル基に変換する変換工程
製造方法1:下記工程1−1,2−1をこの順で行うカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造方法。
工程1−1:保護したカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2−1:工程1−1で得られたポリカーボネートジオールのカルボキシル基の保護基を脱離させる脱保護工程
製造方法2:下記工程1−2,2−2をこの順で行うカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造方法。
工程1−2:不飽和結合を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2−2:工程1−2で得られたポリカーボネートジオールの不飽和結合に対して、カルボキシル基導入化合物を反応させてカルボキシル基を導入するカルボキシル基導入工程
以下に製造方法1について説明する。
製造方法1は下記反応式で表される。
以下に製造方法2について説明する。
製造方法2は下記反応式で表される。
カルボキシル基導入化合物についても、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また不飽和結合反応基を反応させる工程において、反応を加速するために添加剤や溶媒などを用いてもよく、メルカプト基を含有する化合物を用いる場合には3級アミンの添加が反応を加速する場合がある。
この方法は、下記式(X)で表される構造単位を有するポリカーボネートジオールに、メルカプト基を有する化合物を反応させて、下記式(D2)で表される構造単位を有するカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールを製造する方法であり、下記反応式で表される。
<1−9−3−1.通常ジヒドロキシ化合物>
製造方法1及び2において、構造単位(A)の導入に用いるジヒドロキシ化合物b(以下、「通常ジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)は、前述の保護基Xで保護されたカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物aや不飽和結合を有するジヒドロキシ化合物eなどのカルボキシル基前駆体基を有するジヒドロキシ化合物との組み合わせにおいて、得られるポリカーボネートジオールの平均炭素数が前述の範囲となる組み合わせで用いられる。
本発明で用いる通常ジヒドロキシ化合物としては、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド等が挙げられる。これらの中でも、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビドが好ましく、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが特に好ましく、とりわけ好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールである。これらの通常ジヒドロキシ化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造方法において、原料となるカーボネート化合物はジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどが挙げられる。その中で、反応性の観点からジアリールカーボネートを含むことが好ましい。
本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールは、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを、エステル交換触媒の存在下にエステル交換反応により重縮合することにより製造することができる。
エステル交換触媒としては、一般にエステル交換能があるとされている化合物であれば制限なく用いることができる。
本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造における、エステル交換反応の反応温度としては、200℃以下が好ましい。その理由としては、ポリカーボネートジオールの色調悪化やアリル末端の副生およびTHFの副生を抑制できるからである。反応温度はより好ましくは190℃以下であり、更に好ましくは180℃以下である。一方、反応温度の下限は、通常130℃以上であり、好ましくは140℃以上であり、更に好ましくは150℃以上である。反応温度が低くなりすぎると、フェノール、メタノールなどのカーボネート化合物由来の副生物の残存量が増加したり、所定の分子量まで重合が進行しなかったりする。
本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造において、エステル交換反応時の最低反応圧力としては、特に限定されないが、通常1.0kPa以下であり、好ましくは0.5kPa以下である。一方、反応圧力の下限は、通常0.01kPa以上であり、好ましくは0.02kPa以上であり、更に好ましくは0.03kPa以上である。反応圧力が低くなるにつれて、反応時間が短くなり、得られるカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの色調の悪化を抑制する傾向にあり、反応圧力が高くなるにつれて、重合速度の安定化や原料の留去の抑制などにより、カルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの分子量の制御が容易になる傾向にある。
本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造において、エステル交換反応の反応時間としては、特に限定されないが、通常12時間以下であり、好ましくは10時間以下であり、更に好ましくは8時間以下である。一方、反応時間の下限は、通常0.5時間以上であり、好ましくは1時間以上であり、更に好ましくは1.5時間以上である。反応時間が長くなるにつれて、フェノール、メタノールなどのカーボネート化合物由来の副生物の残存量を低減できる傾向にあり、反応時間が短くなるにつれて、得られるカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの色調の悪化を抑制できる傾向にある。
本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造において、エステル交換反応に使用される反応器の形状は特に限定されないが、槽型、管型および塔型などの反応器を使用することができる。また重合反応は、バッチ式または連続式に行うことができるが、本発明では製品の安定性等から連続式で行うことが好ましい。
本発明のカルボキシル基含有ポリカーボネートジオール(以下、「ポリカーボネートジオール1」と称す場合がある。)は、カルボキシル基を含まないポリカーボネートジオール(以下、「ポリカーボネートジオール2」と称す場合がある。)と共にポリウレタン化反応に供することが、ポリウレタン化反応時のカルボキシル基の量を調整ができる点と、得られるポリウレタンの柔軟性と耐久性が向上できる点で好ましい。
この場合、ポリカーボネートジオール1とポリカーボネートジオール2を含むポリカーボネートジオール組成物としてポリウレタン化反応に供される。
本発明のポリカーボネートジオール又はポリカーボネートジオール組成物(以下「ポリカーボネートジオール(組成物)」と記載する。)を用いてポリウレタンやポリウレタン水分散体を製造することができる。製造されたポリウレタンは、本発明の別の形態である。
例えば、ポリカーボネートジオール(組成物)とポリイソシアネート及び鎖延長剤を常温から200℃の範囲で反応させることにより、ポリウレタンを製造することができる。
また、ポリカーボネートジオール(組成物)と過剰のポリイソシアネートとをまず反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤を用いて重合度を挙げて、ポリウレタンを製造することができる。
ポリカーボネートジオール(組成物)を用いてポリウレタンを製造する際に使用されるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、及びm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリウレタンを製造する際に用いられる鎖延長剤は、後述するイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する場合において、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、通常、ポリオール及びポリアミン等を挙げることができる。
ポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
これらの鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類、一個のアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルフォリン等の脂肪族モノアミン類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応において、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒又は酢酸、リン酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の酸系触媒、トリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジオクチルチンジネオデカネートなどのスズ系の化合物、さらにはチタン系化合物などの有機金属塩などに代表される公知のウレタン重合触媒を用いる事もできる。ウレタン重合触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)と、必要に応じてポリカーボネートジオール1及びポリカーボネートジオール2以外のポリオール(以下、「その他のポリオール」とも称する。)を併用してもよい。
ここで、その他のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール1及びポリカーボネートジオール2以外のポリカーボネートジオールが挙げられる。例えば、ポリエーテルポリオールとの併用では、本発明のポリカーボネートジオールの特徴である柔軟性を更に向上させたポリウレタンとすることができる。
本発明において、ポリウレタンの製造には、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)を変性して使用することも出来る。ポリカーボネートジオール(組成物)の変性方法としては、ポリカーボネートジオール(組成物)にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させてエーテル基を導入する方法や、ポリカーボネートジオール(組成物)をε−カプロラクトン等の環状ラクトンやアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物並びにそれらのエステル化合物と反応させてエステル基を導入する方法がある。エーテル変性では、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等により変性することで、ポリカーボネートジオール(組成物)の粘度が低下し、取扱い性等が改善するため好ましい。特に、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)では、エチレンオキシドやプロピレンオキシド変性することによって、ポリカーボネートジオール(組成物)の結晶性が低下し、低温での柔軟性が改善すると共に、エチレンオキシド変性の場合は、エチレンオキシド変性ポリカーボネートジオール(組成物)を用いて製造されたポリウレタンの吸水性や透湿性が増加する為に人工皮革・合成皮革等としての性能が向上することがある。しかし、エチレンオキシドやプロピレンオキシドの付加量が多くなると、変性ポリカーボネートジオール(組成物)を用いて製造されたポリウレタンの機械強度、耐熱性、耐薬品性等の諸物性が低下するので、ポリカーボネートジオール(組成物)に対する付加量としては、ポリカーボネートジオール(組成物)の重量に対して、5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。また、エステル基を導入する方法では、ε−カプロラクトンにより変性することで、ポリカーボネートジオール(組成物)の粘度が低下し、取扱い性等が改善するため好ましい。ポリカーボネートジオール(組成物)に対するε−カプロラクトンの付加量としては、ポリカーボネートジオール(組成物)の重量に対して、5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。ε−カプロラクトンの付加量が50重量%を超えると、変性ポリカーボネートジオール(組成物)を用いて製造されたポリウレタンの耐加水分解性、耐薬品性等が低下する。
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応は溶剤を用いてもよい。
好ましい溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
これらの中で好ましい有機溶剤は、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、酢酸エチル、及びトルエン等である。
また、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)、ポリジイソシアネート、及び前記の鎖延長剤が配合されたポリウレタン組成物から、水分散液のポリウレタンを製造することもできる。
上述の反応試剤を用いてポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用できる。
その例としては、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)、必要に応じて用いられるその他のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」と称する場合がある)や、まず本発明のポリカーボネートジオール(組成物)、その他のポリオール及びポリイソシアネートを反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、「二段法」と称する場合がある)等がある。
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)、その他のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法である。
一段法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)とその他のポリオールとの総水酸基数と、鎖延長剤の水酸基数とアミノ基数との総計を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。
また、鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)とその他のポリオールとの総水酸基数から、ポリイソシアネートのイソシアネート基数を引いた数を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。鎖延長剤の使用量が多すぎると、得られるポリウレタンが溶媒に溶けにくく加工が困難になる傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンが軟らかすぎて十分な強度や硬度、弾性回復性能や弾性保持性能が得られない場合や、耐熱性が悪くなる場合がある。
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、主に以下の方法がある。
(a)予め本発明のポリカーボネートジオール(組成物)及びその他のポリオールと、過剰のポリイソシアネートとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリカーボネートジオール(組成物)及びその他のポリオール)の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤を加えることによりポリウレタンを製造する方法。
(b)予めポリイソシアネートと、過剰のポリカーボネートジオール(組成物)及びその他のポリオールとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリカーボネートジオール(組成物)及びその他のポリオール)の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤として末端がイソシアネート基のポリイソシアネートを反応させてポリウレタンを製造する方法。
二段法によるポリウレタン製造は以下に記載の(1)〜(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず直接ポリイソシアネートとポリカーボネートジオール(組成物)とその他のポリオールとを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応に使用する。
(2)(1)の方法でプレポリマーを合成し、その後溶媒に溶解し、以降の鎖延長反応に使用する。
(3) 初めから溶媒を使用し、ポリイソシアネートとポリカーボネートジオール(組成物)とその他のポリオールとを反応させ、その後鎖延長反応を行う。
二段法(a)の方法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、ポリカーボネートジオール(組成物)とその他のポリオールとの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは1.0当量を超える量、より好ましくは1.2当量、更に好ましくは1.5当量であり、上限が好ましくは10.0当量、より好ましくは5.0当量、更に好ましくは3.0当量の範囲である。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の数1当量に対して、下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、更に好ましくは0.8当量であり、上限が好ましくは5.0当量、より好ましくは3.0当量、更に好ましくは2.0当量の範囲である。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに使用したポリカーボネートジオール(組成物)とその他のポリオールとの総水酸基の数を1当量とした場合、プレポリマーに使用したイソシアネート基の当量を加えた総当量として、下限が好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量であり、上限が好ましくは1.0当量未満、より好ましくは0.99当量、更に好ましくは0.98当量の範囲である。
触媒としては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
安定剤としては、例えば2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネート、N,N′−ジ−2−ナフチル−1,4−フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施してもよい。
本発明のポリカーボネートジオール(組成物)を用いて、水系ポリウレタン分散体を製造する事も可能であり、従来のポリカーボネートジオールと比較して、より分散性の高い水系ポリウレタン分散体を作ることができる。加えて、その水系ポリウレタン分散体は保管中に凝集することが少ないために保存安定性に優れる。
その場合、ポリカーボネートジオール(組成物)を含むポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物とを混合してプレポリマーを形成し、親水性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタン分散体とする。プレポリマー形成と鎖延長反応工程に使用する原料、添加剤、触媒、溶媒などは前述ポリウレタン製造と同等のものを使用することができる。
ここで、その他のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、本発明のポリカーボネートジオール1及びポリカーボネートジオール2以外のポリカーボネートジオールが挙げられる。例えば、ポリエーテルポリオールとの併用では、本発明のポリカーボネートジオールの特徴である柔軟性を更に向上させたポリウレタンとすることができる。
このようにして製造された水系ポリウレタン分散体は、様々な用途に使用する事が可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
有機溶剤および/又は水を使用し、本発明のポリカーボネートジオール(組成物)を用いて製造したポリウレタン溶液および水系ポリウレタン分散体の保存安定性は、該溶液もしくは該分散体中のポリウレタンの濃度(以下、「固形分濃度」と称する場合がある)を1〜80重量%に調整し、特定の温度条件で保管した上で、該溶液もしくは該分散体の変化の有無を目視などで測ることができる。
本発明のポリカーボネートジオール(組成物)を用いて製造したポリウレタンには、熱安定剤、光安定剤、着色剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着防止剤、難燃剤、老化防止剤、無機フィラー等の各種の添加剤を、ポリウレタンの特性を損なわない範囲で、添加、混合することができる。
これらの添加剤の添加量は、ポリウレタンに対する重量比として、下限が、好ましくは0.01重量%、より好ましくは0.05重量%、更に好ましくは0.1重量%、上限は、好ましくは10重量%、より好ましくは5重量%、更に好ましくは1重量%である。添加剤の添加量が少な過ぎるとその添加効果を十分に得ることができず、多過ぎるとポリウレタン中で析出したり、濁りを発生したりする場合がある。
ポリウレタンを使用してフィルムを製造する場合、そのフィルムの厚さは、下限が好ましくは10μm、より好ましくは20μm、更に好ましくは30μm、上限は好ましくは1000μm、より好ましくは500μm、更に好ましくは100μmである。
フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向があり、また、薄過ぎるとピンホールを生じたり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向がある。
ポリウレタンの分子量は、その用途に応じて適宜調整され、特に制限はないが、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として5万〜50万であることが好ましく、10万〜30万であることがより好ましい。Mwが上記下限よりも小さいと十分な強度や硬度が得られない場合があり、上記上限よりも大きいと加工性などハンドリング性を損なう傾向がある。
<2−16−1.室温引張試験における引張破断伸度・強度>
ポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度60%で測定した引張破断伸度及び破断強度が以下の範囲であることが好ましい。
また、破断強度の下限は好ましくは30MPa、より好ましくは40MPa、更に好ましくは50MPaであり、上限は好ましくは200MPa、より好ましくは100MPa、更に好ましくは80MPaである。破断強度が上記下限未満では加工性などハンドリング性を損なう傾向があり、上記上限を超えると柔軟性が損なわれる場合がある。
ポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度60%で測定した100%モジュラス(100%M)の下限が好ましくは1.0MPa、より好ましくは2.0MPa、更に好ましくは3.0MPaであり、上限は好ましくは20MPa、より好ましくは10MPa、更に好ましくは8MPaである。100%モジュラスが上記下限未満では硬度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。更に、ポリウレタンの300%モジュラス(300%M)の下限は好ましくは5MPa、より好ましくは8MPa、更に好ましくは10MPaである。上限は好ましくは100MPa、より好ましくは50MPa、更に好ましくは30MPaである。300%モジュラスが上記下限未満では硬度が不足する場合がある。300%モジュラスが上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などのハンドリング性を損なったりする場合がある。
<2−18−1.耐オレイン性>
ポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、オレイン酸に浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、オレイン酸に浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、200%以下が好ましく、150%以下がより好ましく、120%以下が更に好ましく、100%以下が特に好ましく、80%以下が最も好ましい。 この重量変化率が上記上限超過では、十分な耐オレイン酸性が得られない場合がある。
ポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、エタノールに浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、エタノールに浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましく、35%以下が特に好ましく、30%以下が最も好ましい。
この重量変化率が上記上限超過では、十分な耐エタノール性が得られない場合がある。
ポリウレタンは、耐溶剤性に優れ、良好な柔軟性、機械強度を有することから、フォーム、エラストマー、弾性繊維、塗料、繊維、粘着剤、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料、活性エネルギー線硬化性重合体組成物等に広く用いることができる。
特に、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、接着剤、弾性繊維、医療用材料、床材、塗料、コーティング剤等の用途に、本発明の一形態であるポリウレタンを用いると、耐溶剤性、柔軟性、機械強度の良好なバランスを有するため、人の皮膚に触れたり、コスメティック用薬剤や消毒用のアルコールが使われたりする部分において耐久性が高く、また柔軟性も十分で、かつ物理的な衝撃などにも強いという良好な特性を付与することができる。また、耐熱性が必要とされる自動車部材等の自動車用途や、耐候性が必要とされる屋外用途に好適に使用できる。
ポリウレタンは、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料、水系ウレタン塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等に適用できる。
ポリウレタンは、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム、ガラス繊維サイジング等に使用可能である。
ポリウレタンを弾性繊維として使用する場合のその繊維化の方法は、紡糸できる方法であれば特に制限なく実施できる。例えば、一旦ペレット化した後、溶融させ、直接紡糸口金を通して紡糸する溶融紡糸方法が採用できる。ポリウレタンから弾性繊維を溶融紡糸により得る場合、紡糸温度は好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以上235℃以下である。
ポリウレタンは、医療用材料としての使用が可能であり、血液適合材料として、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管、人工弁等、また、使い捨て素材としてカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋、人工腎臓ポッティング材料等に使用できる。
ポリウレタンは、末端を変性させることによりUV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物、光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
本発明のポリカーボネートジオール(組成物)を用いて、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加反応させることによりウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造することができる。その他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等を併用する場合は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリイソシアネートに、更にこれらのその他の原料化合物も付加反応させることにより製造することができる。
また、その際の各原料化合物の仕込み比は、目的とするウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの組成と実質的に同等、ないしは同一とする。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおける全イソシアネート基の量と水酸基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に当モルである。
また、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時に、反応系に(メタ)アクリロイル基を含む場合には、重合禁止剤を併用することができる。このような重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、反応温度は通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は通常120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。反応温度が120℃以下であると、アロハナート化反応等の副反応が起き難くなるために好ましい。また、反応系に溶剤を含む場合には、反応温度はその溶剤の沸点以下であることが好ましく、(メタ)アクリレートが入っている場合には(メタ)アクリロイル基の反応防止の観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5〜20時間程度である。
本発明のポリカーボネートジオール(組成物)は、ポリエステル系エラストマーとして使用することができる。ポリエステル系エラストマーとは、主として芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと、主として脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントとから構成される共重合体である。本発明のポリカーボネートジオール(組成物)をソフトセグメントの構成成分として使用すると、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルを用いた場合に比べて、耐熱性、耐水性等の物性が優れる。また、公知のポリカーボネートジオールと比較しても、溶融時の流動性、つまりブロー成形、押出成形に適したメルトフローレートを有し、且つ機械強度その他の物性とのバランスに優れたポリカーボネートポリエステルエラストマーとなり、繊維、フィルム、シートをはじめとする各種成形材料、例えば、弾性糸及びブーツ、ギヤ、チューブ、パッキンなどの成形材料に好適に用いることができる。具体的には、耐熱性、耐久性を要求される自動車、家電部品等などのジョイントブーツや、電線被覆材等の用途に有効に適用することが可能である。
上述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物(以下、単に「活性エネルギー線硬化性重合体組成物」と称する場合がある。)について説明する。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、該組成物の計算網目架橋点間分子量が500〜10,000であることが好ましい。
複数種の多官能化合物が反応するような多官能化合物混合系組成物では、組成物中に含まれる全活性エネルギー線反応基数に対する上記単一系の各々の計算網目架橋点間分子量の平均値が組成物の計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物4モルと分子量300の3官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、組成物中の全活性エネルギー線反応基数は2×4+3×4=20個となり、組成物の計算網目架橋点間分子量は{(1000/2)×8+(300/3)×12}×2/20=520となる。
上記のことから、分子量WAの単官能性化合物MAモルと、分子量WBのfB官能性化合物MBモルと、分子量WCのfC官能性化合物MCモルとの混合物では、組成物の計算網目架橋点間分子量は下記式で表せる。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性オリゴマーの含有量は、得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
前記溶剤は、例えば活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗膜を形成するためのコーティング方式に応じて、活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度の調整を目的に使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、本発明の効果が得られる範囲において公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、イソブタノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、活性エネルギー線硬化性重合体組成物の固形分100重量部に対して200重量部未満で使用可能である。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、これに活性エネルギー線を照射することにより硬化膜とすることができる。
上記組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等が使用可能である。装置コストや生産性の観点から電子線又は紫外線を利用することが好ましく、光源としては、電子線照射装置、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプ、太陽光等が適している。
複数層の硬化膜を有する積層体を得る方法としては、全ての層を未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法、下層を活性エネルギー線にて硬化、あるいは半硬化させた後に上層を塗布し、再度活性エネルギー線で硬化する方法、及びそれぞれの層を離型フィルムやベースフィルムに塗布した後、未硬化あるいは半硬化の状態で層同士を貼り合わせる方法等の公知の方法を適用可能であるが、層間の密着性を高める観点から、未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。未硬化の状態で積層する方法としては、下層を塗布した後に上層を重ねて塗布する逐次塗布や、多重スリットから同時に2層以上の層を重ねて塗布する同時多層塗布等の公知の方法を適用可能であるが、この限りではない。
硬化膜は、インキ、エタノール等の一般家庭汚染物に対する耐汚染性及び硬度に優れる膜とすることが可能であり、硬化膜を各種基材への被膜として用いた積層体は、意匠性及び表面保護性に優れたものとすることができる。
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、1層塗布により簡便に薄膜状の樹脂シートを製造することが可能となることが期待される。
上記の硬化膜及び積層体は、塗装代替用フィルムとして用いることができ、例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電等の各種部材等に有効に適用することが可能である。
以下の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール及びポリウレタンの評価方法は下記の通りである。
<構造単位(A)と構造単位(B)のモル比率>
ポリカーボネートジオールをCDCl3に溶解し、400MHz 1H−NMR(ブルカー社製 AVANCE400)を測定し、各成分のシグナル位置より、構造単位(A)と構造単位(B)のモル比率を求めた。
上記で求めた構造単位(A)と構造単位(B)のモル比率と、構造単位(A)及び構造単位(B)の原料として用いたジヒドロキシ化合物の2つの水酸基の間の炭素原子の数とから、平均炭素数を算出した。
JIS K1557−1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法で自動滴定によりポリカーボネートジオールの水酸基価を測定した。
JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠してポリカーボネートジオールの酸価を測定した。
数平均分子量は上記の酸価と水酸基価から算出した。上記水酸基価の滴定測定において、酸価の値が影響を与えている点を考慮し、数平均分子量の計算には下記の酸価補正水酸基価を用い、下記式により数平均分子量を求めた。
酸価補正水酸基価=水酸基価+酸価
数平均分子量=2×56.1/[酸価補正水酸基価×10−3]
下記条件によるGPC測定によりポリカーボネートジオールのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)をそれぞれ求めて、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
装置 :東ソー社製 HLC−8220
カラム :TSKgel superHZM−N
(6.0mmI.D.×15cmL×3本)
レファレンスカラム:superH−RC(6.0mmI.D.×15cmL×1本)
溶離液 :THF(テトラヒドロフラン)
流速 :1.0mL/min
カラム温度:40℃
RI検出器:RI(装置 HLC−8220内蔵)
ポリカーボネートジオールをCDCl3に溶解し、400MHz 1H−NMR(ブルカー社製 AVANCE400)を測定し、各成分のシグナル位置より、ポリカーボネートジオール1分子あたりにおける、カーボネート結合数とエステル結合数を求めた。カーボネート結合数とエステル結合数の合計に対するエステル結合数の割合をエステル結合率として算出した。
<イソシアネート基濃度>
ジ−n−ブチルアミン/トルエン(重量比:2/25)混合溶液20mLをアセトン90mLで希釈した後に0.5規定の塩酸水溶液で滴定を行い、中和に要する塩酸水溶液量を測定し、ブランク値とした。その後、反応溶液を1〜2g抜出し、ジ−n−ブチルアミン/トルエンの混合溶液20mLを加えて室温で30分間撹拌した後、ブランク測定と同様にアセトン90mLで希釈し、0.5規定の塩酸水溶液で滴定して中和に要する塩酸水溶液量を測定し、残存するアミンの量を定量した。中和に要する塩酸水溶液の容量から下記の式でイソシアネート基の濃度を求めた。
イソシアネート基濃度(重量%)=A×42.02/D
A:本測定に用いた試料に含有するイソシアネート基(molモル)
A=(B−C)×0.5/1000×f
B:ブランク測定に要した0.5規定の塩酸水溶液の量(mL)
C:本測定に要した0.5規定の塩酸水溶液の量(mL)
f:塩酸水溶液の力価
D:本測定に用いた試料(g)
ポリウレタンの分子量は、ポリウレタンの濃度が0.14重量%になるようにジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」(カラム:TskgelGMH−XL・2本)〕を用い、標準ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)を測定した。
JISK6301に準じ、幅10mm、長さ100mm、厚み約50μmの短冊状としたポリウレタン試験片を、引張試験機〔オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III−100」〕を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃(相対湿度60%)で引張試験を実施し、試験片が100%および300%伸長した時点の応力、並びに破断した時点の伸度(破断伸度)及び応力(破断強度)を測定した。
ポリウレタン溶液を9.5milのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、50℃で5時間、100℃で0.5時間、真空条件100℃で0.5時間、80℃で15時間の順で乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムから3cm×3cmの試験片を切り出し、試験溶剤をそれぞれ50mL入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して、各々の試験溶剤毎、下記温度で下記時間浸漬した後の重量を測定し、浸漬前の試験片の重量と浸漬後の試験片の重量との重量変化率(%)(=(浸漬後の試験片の重量−浸漬前の試験片の重量)/浸漬前の試験片の重量×100)を算出した。ここで、重量変化率が0%に近いほうが耐溶剤性が良好であることを示す。
耐オレイン酸性:試験片をオレイン酸中に80℃で16時間浸漬した。
耐エタノール性:試験片をエタノール中に室温で1時間浸漬した。
ポリウレタン水分散体(ポリウレタン濃度:30重量%)を20℃下に静置し、1週間おきに該ポリウレタン水分散体の変化を目視で確認した。保管開始からポリウレタン水分散体に沈殿や凝集などの変化が確認された期間を基に、以下のように評価した。
保管開始から1週間以内に変化あり:×
保管開始から1か月以内変化あり:△
保管開始から1か月以上変化ない:○
温度計、冷却管を備えた500mL4つ口フラスコに磁気撹拌子を入れ、窒素雰囲気とした後、ジメチロールプロピオン酸20.0gおよびジメチルホルムアミド150mLを投入した。氷浴にて内温を5℃以下に冷却したまま、炭酸カリウム20.9g、ベンジルブロミド24.0g添加した後、20℃に昇温して5時間撹拌した。ベンジルブロミドの消失を1H−NMRにて確認した後、氷浴にて内温を10℃以下に保ちながら脱塩水250mLを滴下した。得られた反応混合物を酢酸エチル250mLで抽出し、得られた有機相を脱塩水200mLで3回洗浄した後、エバポレーターで濃縮した。得られた濃縮液200mLに対して、ヘプタン30mLを添加して析出した固体を濾別した。得られた固体を減圧乾燥し、カルボキシル基をベンジル保護したジメチロールプロピオン酸(化合物1−A)の白色固体19.8gを得た(ベンジルブロミドに対する収率は63%)。
攪拌機、留出液トラップおよび圧力調整装置を備えた50mL反応管に、1,4−ブタンジオール:179.2g、工程Aで得たカルボキシル基をベンジル保護したジメチロールプロピオン酸(化合物1−A):49.5g、ジフェニルカーボネート:434.3g、酢酸マグネシウム4水和物:10mgを入れ、反応管中を窒素置換した。攪拌下、内温を160℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけて圧力を24kPaまで下げた後、フェノールを系外へ除去しながら90分間反応させた。次いで、圧力を0.4kPaまで120分間かけて下げた。さらに、30分で170℃まで温度を上げてフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら、5時間反応させて、ポリカーボネートジオール1−Bを242g得た。1H−NMRで分析したところ、生成物中の1,4−ブタンジオール由来の構造単位と化合物1−A由来の構造単位のモル比は89:11であった。
磁気撹拌子を備えた1Lナスフラスコに、工程Bで得たとポリカーボネートジオール1−B:120gと2−ブタノン:600mLを入れて溶解し、窒素雰囲気下、5%Pdカーボン粉末NXAタイプ(50%含水品)(エヌ・エーケムキャット製)6gを加えた。20℃で撹拌しながら減圧脱気し、水素ガスを注入した風船から水素ガスを導入した。その後、水素雰囲気下を保ったまま、20℃で3時間撹拌し1H−NMRにてベンジル基の消失を確認して反応を停止した。PTFEフィルターによって、Pdカーボン粉末を濾別して得られたポリカーボネートジオール溶液に0.085%リン酸水溶液0.17mLを添加して撹拌した。その後、減圧下(温度:40℃、圧力:30hPa)で撹拌しながら2−ブタノンを留去して、カルボキシル基含有ポリカーボネートジオール1−1含有組成物を得た。
酸価:48.9mg/g−KOH
数平均分子量:1578
分子量分布(Mw/Mn):1.85(Mw:5124、Mn:2770)
構造単位(A1):構造単位(B1)=90:10(モル比)
平均炭素数:3.9
エステル結合率:0%
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに1,6−ヘキサンジオール(16HD):331.1g、フマル酸ジエチル:179.0g、チタンテトラn−ブトキサイド:1.45gを入れ、窒素ガス置換した。攪拌下、内温を120℃まで昇温して、留出するエタノールを除去しながら1時間常圧で反応を行い、2時間かけて圧力を10kPaまで下げた。フマル酸ジエチルのモル量の2倍に相当するエタノールが留出したことを確認し、フマル酸ビス(ヒドロキシヘキシル)(化合物2−A)と1,6−ヘキサンジオール(16HD)の混合物の溶液を得た。
工程Dで得たフマル酸ビス(ヒドロキシヘキシル)(化合物2−A)と1,6−ヘキサンジオール(16HD)の混合物の溶液にジエチルカーボネート(DEC):1810.5gを加え、100〜180℃に6時間で昇温すると共に、エタノールを留出させながら常圧で反応を行い、次いで5時間かけて10kPaへと減圧を行った。その後、1kPaへと減圧を行い、残ったモノマーを留出させ、不飽和結合を有するポリカーボネートジオール2−Bを得た。
工程Eの反応液を90℃まで冷却をした後、トリエチルアミン:36.7g、2−メルカプト酢酸:16.7gを加え、90℃で3時間加熱を行った。得られた反応液を1kPaへと減圧を行い、残ったモノマーを留出させて、カルボキシル基含有ポリカーボネートジオール1−2を得た。
酸価:13.1mg/g−KOH
数平均分子量:1774
分子量分布(Mw/Mn):1.80(Mw:5892、Mn:3273)
構造単位(A2):構造単位(B2)=97:3(モル比)
平均炭素数:6.3
エステル結合率:5.7%
[参考例1]
化合物1−Aを用いずに、実施例I−1の工程Bと同様の手法でポリカーボネートジオールを合成した。
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに1,4−ブタンジオール(14BD):380.7g、ジフェニルカーボネート:819.2g、酢酸マグネシウム4水和物:18mgを入れ、工程Bと同様にして、カルボキシル基を含有しないポリカーボネートジオール2−1を得た。
得られたポリカーボネートジオール2−1は、下記式(A1)で表される構造単位のみで構成されるものであり、その分析結果は次の通りであった。
酸価:0.01mg/g−KOH以下
数平均分子量:1496
平均炭素数:4.0
エステル結合率:0%
[実施例II−1]
熱電対と冷却管を設置したセパラブルフラスコに、実施例I−1で得られたカルボキシル基含有ポリカーボネートジオール1−1:69.8g、参考例1で得られたポリカーボネートジオール2−1:111.1g、N−メチルピロリドン100g、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下H12MDI、東京化成工業株式会社製):53.9gを加え、80℃まで昇温した。その後、ウレタン化触媒としてネオスタンU−830(以下U−830、日東化成株式会社製):12mgを添加し、オイルバスを100℃まで昇温し、さらに4時間程度撹拌した。イソシアネート基の濃度を分析し、イソシアネート基が理論量消費されたことを確認した。その後、トリエチルアミン:5.5gを加えて、さらに60℃で1時間加熱してプレポリマー液(以下、PP液と略す。)を得た。
このポリウレタン水分散体をガラス板上に均一膜厚に塗布し、乾燥機で乾燥しポリウレタンフィルムを得た。
このポリウレタン水分散体およびポリウレタンフィルムの物性の評価結果を表1に示す。
カルボキシル基含有ポリカーボネートジオール1−1の替わりにジメチロールプロピオン酸を用いて、ポリウレタン水分散体中に含有するカルボキシル基のモル量が実施例II−1で製造したポリウレタン水分散体と同等になるように、組成を決めて合成を行った。
このポリウレタン水分散体をガラス板上に均一膜厚に塗布し、乾燥機で乾燥しポリウレタンフィルムを得た。
このポリウレタン水分散体およびポリウレタンフィルムの物性の評価結果を表1に示す。
実施例II−1のポリウレタンは、比較例1のポリウレタンに比べて引張試験における100%M、300%Mの値が小さく柔軟性が高い。また、実施例II−1のポリウレタンは、比較例1のポリウレタンに比べて引張試験における破断伸度の値が大きく強度が高い。
また、実施例II−1のポリウレタンは、比較例1のポリウレタンに比べて耐溶剤性試験における重量変化率が小さく、耐溶剤性が高い。
更に実施例II−1のウレタン水分散体は凝集することなく長期間保存でき、保存安定性が高い。
Claims (25)
- 2種以上のカーボネート構造単位を含むランダム共重合体よりなる、
数平均分子量(Mn)が500〜5000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.6以上のポリカーボネートジオールであって、
カルボキシル基を含む構造単位を有し、
該ポリカーボネートジオールの原料ジヒドロキシ化合物の2つの水酸基間に存在する炭素原子に由来して、該ポリカーボネートジオールのカーボネート構造単位に導入された炭素原子の数の平均値(以下、この値を「平均炭素数」と称す。)が3.5〜10.0であることを特徴とするポリカーボネートジオール。 - 前記平均炭素数が3.5〜7.0である請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
- 酸価が1mg/g−KOH以上、100mg/g−KOH以下である請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール。
- 前記式(A)で表される構造単位と前記式(B)で表される構造単位との割合が、モル比率で、式(A)で表される構造単位:式(B)で表される構造単位=50:50〜99:1である請求項4に記載のポリカーボネートジオール。
- 前記式(A)で表される構造単位と前記式(B)で表される構造単位との割合が、モル比率で、式(A)で表される構造単位:式(B)で表される構造単位=80:20〜99:1である請求項5に記載のポリカーボネートジオール。
- 前記式(A)におけるR1が炭素数4〜6の脂肪族炭化水素基である請求項4ないし6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール。
- 前記式(B)におけるL1が単結合である請求項4ないし7のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール(以下、「ポリカーボネートジオール1」と称す。)と、カルボキシル基を含まないポリカーボネートジオール(以下、「ポリカーボネートジオール2」と称す。)を含むポリカーボネートジオール組成物。
- 前記ポリカーボネートジオール2が前記式(A)で表される構造単位を含むポリカーボネートジオールである請求項12に記載のポリカーボネートジオール組成物。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール、或いは請求項12又は13に記載のポリカーボネートジオール組成物を用いたポリウレタン。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール、或いは請求項11又は12に記載のポリカーボネートジオール組成物と、イソシアネート及び鎖延長剤とを用いた水系ポリウレタン分散体。
- 請求項14に記載のポリウレタンを用いた人工皮革または合成皮革。
- 請求項14に記載のポリウレタンを用いた塗料またはコーティング剤。
- 請求項14に記載のポリウレタンを用いた弾性繊維。
- 請求項14に記載のポリウレタンを用いた水系ポリウレタン塗料。
- 請求項14に記載のポリウレタンを用いた粘着剤または接着剤。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール、或いは請求項12又は13に記載のポリカーボネートジオール組成物を用いた活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
- 下記工程1,2をこの順で行うカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造方法。
工程1:カルボキシル基前駆体基を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2:工程1で得られたポリカーボネートジオールのカルボキシル基前駆体基をカルボキシル基に変換する変換工程 - 下記工程1−1,2−1をこの順で行うカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造方法。
工程1−1:保護したカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2−1:工程1−1で得られたポリカーボネートジオールのカルボキシル基の保護基を脱離させる脱保護工程 - 下記工程1−2,2−2をこの順で行うカルボキシル基含有ポリカーボネートジオールの製造方法。
工程1−2:不飽和結合を有するジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを反応させてポリカーボネートジオールを得る重合工程
工程2−2:工程1−2で得られたポリカーボネートジオールの不飽和結合に対して、カルボキシル基導入化合物を反応させてカルボキシル基を導入するカルボキシル基導入工程
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