JP2020007191A - Iii族窒化物単結晶基板及びiii族窒化物単結晶積層体の製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物単結晶基板及びiii族窒化物単結晶積層体の製造方法 Download PDF

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【課題】 結晶方位が周囲の単結晶領域と異なるグレイン領域を有するIII族窒化物単結晶基板における該グレイン領域が低減された高品質のIII族窒化物単結晶基板の製造方法を提供する。【解決手段】 結晶方位が周囲の単結晶領域と異なるグレイン領域を有するIII族窒化物単結晶基板の該グレイン領域の少なくとも一部の領域に物理的作用を加えて該領域の結晶配列を変化させる第一改質工程、次いで前記第一改質工程により変化させた結晶配列をさらに変化させる第二改質工程を含むことを特徴とするIII族窒化物単結晶基板の製造方法を提供する。また、上記方法にてIII族窒化物単結晶基板を得、次いで、得られた該III族窒化物単結晶基板に、III族窒化物単結晶層を積層するIII族窒化物単結晶積層体の製造方法も提供する。【選択図】 図1

Description

本発明は、高品質のIII族窒化物単結晶基板の製造方法に関する。詳しくは、結晶方位が周囲の単結晶領域と異なるグレイン領域を有するIII族窒化物単結晶基板における該グレイン領域が低減された高品質のIII族窒化物単結晶基板の製造方法に関する。
窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム等のIII族窒化物単結晶は任意の組成の混晶半導体をつくることが可能であり、その混晶組成によって、バンドギャップエネルギーを変えることが可能である。このため、III族窒化物単結晶を用いることで原理的には赤外光から紫外光までの広範囲な発光素子の製造が可能である。近年ではアルミニウムを含むアルミニウム系III族窒化物単結晶を用いた発光素子の開発が精力的に進められている。
現在、III族窒化物単結晶を使用した発光素子の製造にあたっては、基板としての結晶品質、紫外光透過性、量産性やコストの観点からサファイア基板が一般的に採用されている。しかし、サファイア基板上にIII族窒化物単結晶を成長する場合には、サファイア基板と、発光が起こる素子層を形成する窒化アルミニウムガリウム等のIII族窒化物単結晶層との間の格子定数や熱膨張係数の違いに起因して、応力や転位、クラック等が生じ、発光素子の性能を低下させる原因になる。このため、素子層の格子定数および熱膨張係数に近い基板を採用することが望ましく、アルミニウム系III族窒化物単結晶を用いた素子層を形成する基板として、窒化アルミニウムや窒化アルミニウムガリウム等のIII族窒化物単結晶基板が好適に用いられている。
上記のIII族窒化物単結晶基板上に素子層を形成する場合、素子層は基板の結晶品質を引き継ぐことが一般的に知られている。例えば、III族窒化物単結晶基板に転位が存在する場合には、該基板上に成長した素子層にも転位が引き継がれるため、単位面積もしくは単位体積当たりの転位密度は該基板と素子層でおおむね同程度となる。そして、転位密度が低いほど高い内部量子効率を有する素子層を得ることができるため、III族窒化物単結晶基板の転位密度は極力低いことが好ましい。
また、III族窒化物単結晶基板には、その製造過程に起因して、結晶方位が周辺部と異なるグレイン領域が存在する場合がある(特許文献1参照)。該グレイン領域を含むIII族窒化物単結晶基板上に素子層を成長した場合、グレイン領域上の素子層は結晶方位がずれた状態で成長することになり、素子層内に多量の転位が発生するだけでなく、結晶方位のずれに起因する局所的な応力も発生する。このため、グレイン領域上に形成した発光素子は、他の領域と比べてその発光効率や素子寿命が著しく低下する。さらに、グレイン領域上の成長表面の結晶方位が異なることに起因して、素子層の成長条件が周辺部の最適成長条件と異なるため、このようなIII族窒化物単結晶基板上に素子層を形成した場合、該グレイン領域上には、他の領域と同様の本来形成されるべき素子層内部のpn接合や量子井戸構造が得られなくなる。そうすると、グレイン領域上に形成した発光素子は、素子そのものが機能を発揮しなくなる。このような傾向は、グレイン領域の結晶方位ズレや複雑さの程度が増すにしたがって顕著になる。このような理由で、グレイン領域のないIII族窒化物単結晶基板が望まれている。
特許2017−122028号公報
III族窒化物単結晶基板に含まれるグレイン領域は、基板の形態に加工する前の一形態であるバルク単結晶の内部に局在している。グレイン領域の発生は、バルク単結晶の結晶成長時に成長系内から混入する異物や、結晶成長条件の不適合や結晶成長条件の揺らぎ等、様々な原因によって導入されるものと考えられている。III族窒化物単結晶の成長途中に、その成長の前線(すなわち単結晶成長表面)において前記原因によりグレイン領域が発生すると、それ以降は、グレイン領域をバルク結晶内部に残しながら成長することになり、結果として、グレイン領域がバルク結晶内部に残留することとなる。すなわち、バルク結晶の成長中に発生したグレイン領域が一旦発生してしまうと、成長途中にグレイン領域を消滅させることは困難となる。
そのようなグレイン領域を含むバルク結晶は、切断加工や研削加工、研磨加工等の加工工程を実施してウェハの形態、すなわちIII族窒化物単結晶基板となるが、当然、III族窒化物単結晶基板にはグレイン領域が局所的に存在することになる。このようなIII族窒化物単結晶基板を使用して該基板上に別のIII族窒化物単結晶層を形成しても、グレイン領域は別のIII族窒化物単結晶層に引き継がれることになる他、前述の通り、III族窒化物単結晶基板上に素子層を形成した場合には、性能低下や故障をもたらすことになる。
すなわち、本発明の目的は、III族窒化物単結晶基板の上に形成する素子の性能低下をもたらすグレイン領域が低減された高品質のIII族窒化物単結晶基板の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために、III族窒化物単結晶のグレイン領域を構成するIII族窒化物結晶の構造について調査した。その結果、グレイン領域を構成する元素は、III族窒化物単結晶基板を構成する単結晶部分と同様であることが分かった。さらに、グレイン領域は、III族窒化物単結晶基板の単結晶の領域の中に一定の区画を伴って存在する結晶方位が周辺の単結晶領域と異なる領域であり、グレイン領域の中に一つの任意方向の結晶方位ズレを起こしている場合から、複数の任意方向の結晶方位ズレを起こしている場合まで、多様な存在形態を示すものであることが明らかになった。また、グレイン領域の結晶方位ズレの方向や区画の大きさは任意であり、グレイン領域内に多数の結晶方位ズレを有している場合は、多結晶の状態と認識してもよいものであることが明らかになった。また、グレイン領域と周辺の単結晶領域の境界(区画)には結晶方位ズレに伴って転位が存在することが明らかになった。
上記知見を元にさらに検討を進めた結果、III族窒化物単結晶に含まれるグレイン領域に、外部より物理的作用を加えることで、グレイン領域のIII族窒化物結晶の原子配列を一時的に乱す第一改質工程を導入した後、該グレイン領域の原子配列をさらに変化させる第二改質工程を導入することにより、グレイン領域の結晶方位ズレを大幅に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、結晶方位が周囲の単結晶領域と異なるグレイン領域を有するIII族窒化物単結晶基板の該グレイン領域の少なくとも一部の領域に物理的作用を加えて該領域の結晶配列を変化させる第一改質工程、次いで前記第一改質工程により変化させた結晶配列をさらに変化させる第二改質工程を含むことを特徴とするIII族窒化物単結晶基板の製造方法である。
上記本発明のIII族窒化物単結晶基板の製造方法は、以下の態様を好適に採りうる。
(1)前記第一改質工程における物理的作用が前記グレイン領域の少なくとも一部の領域にレーザー光を照射するものであること。
(2)前記レーザー光の照射エネルギーが、III族窒化物単結晶基板のバンドギャップエネルギーよりも小さいこと。
(3)前記第二改質工程が、III族窒化物単結晶基板を1200℃以上に加熱することによること。
(4)前記グレイン領域を有するIII族単結晶窒化物基板に含まれるシリコン、炭素、酸素不純物の合計が1×1016cm−3以上1×1021cm−3以下であること。
(5)前記グレイン領域を有するIII族単結晶窒化物基板の厚さが50μm以上であること。
(6)前記グレイン領域を有するIIII族単結晶窒化物基板が窒化アルミニウムであること。
(7)前記第一改質工程により、前記グレイン領域のX線ロッキングカーブ半値幅を100秒以上に改質すること。
さらに第二の本発明は、上記の製造方法にてIII族窒化物単結晶基板を得、次いで、得られた該III族窒化物単結晶基板に、III族窒化物単結晶層を積層するIII族窒化物単結晶積層体の製造方法である。上記第二の本発明における製造方法では、III族窒化物単結晶基板の表面を研磨した後に、III族窒化物単結晶層を積層することが好ましい。
本発明によれば、III族窒化物単結晶基板に存在するグレイン領域を低減することができ、該III族窒化物単結晶基板上に形成するIII族窒化物単結晶層の品質を良好なものとすることができる。このため、III族窒化物単結晶層を使用して得た素子層の性能低下や歩留低下を抑制することが可能となる。
本発明の製造方法を示す概略図である。 III族窒化物単結晶基板(単結晶窒化アルミニウム基板)のグレイン領域を含む反射X線トポグラフ像の一例である。
以下、本発明によるグレイン領域を低減した高品質のIII族窒化物単結晶基板の製造方法を、図1に示した一実施形態に即しながら順に説明する。
(III族窒化物単結晶基板)
本発明の製造方法におけるIII族窒化物単結晶基板10には、基板面内に少なくとも1つ以上のグレイン領域10aと、該グレイン領域10aを取り囲むように単結晶領域10bが存在する。
本発明の製造方法におけるIII族窒化物単結晶基板10は、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、インジウムを任意の割合で含む窒化物単結晶であり、単独のIII族元素の窒化物から混晶までを含む。本発明の効果がより高く得られるのはアルミニウムを主成分とする窒化物単結晶もしくは、窒化ガリウム単結晶であり、特に高い効果が得られるのは窒化アルミニウム単結晶である。
III族窒化物単結晶基板10の厚さは特に制限されないが、あまり薄すぎると、第一改質工程において物理的作用を加えた際に局所的に応力が発生するため、その応力によりIII族窒化物単結晶基板が破損する虞があり、物理的強度を確保する観点から、50μm以上が好ましく、100μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。一方III族窒化物単結晶基板10の厚さが厚すぎる場合には、III族窒化物単結晶基板に含まれるグレイン領域の表面から裏面全体に物理的作用を加えることが困難になる傾向にあるため、2000μm以下が好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましい。
従って、上記III族窒化物単結晶基板10の厚さは、好ましくは、50μm以上2000μm以下、より好ましくは、100μm以上1000μm以下、特にこの好ましくは200μm以上600μm以下の範囲にあることが良い。
III族窒化物単結晶基板10の大きさについては、特に制限されるものではなく、所望の用途に応じて適宜決定すれば良い。本発明の製造方法により製造される第二改質後III族窒化物単結晶基板12上にIII族窒化物単結晶層14を積層し、得られたIII族窒化物単結晶基板10上に素子層を形成して、発光素子とする場合には、該基板の大きさが大きい方が生産性の観点から好ましい。従って、III族窒化物単結晶基板10の面積としては100mm以上であることが好ましい。
III族窒化物単結晶基板10の面方位についても任意の面方位のものを使用することができるが、一般的には、c面(III族極性面)、−c面(窒素極性面)、m面、a面等の特定の面方位を有するIII族窒化物単結晶基板を使用することが可能である。面方位に関連して、前記の特定結晶面から結晶軸を意図的に傾斜させた基板、すなわちオフ角を設けたIII族窒化物単結晶基板も使用することが可能である。
本発明の製造方法の効果を得るためには、III族窒化物単結晶基板10に含まれるシリコン、炭素、酸素不純物の合計が1×1016cm−3以上1×1021cm−3以下であることが好ましい。この理由の詳細は明らかではないが、低濃度であるほど、第一改質工程101後にIII族窒化物単結晶基板にクラックが発生しやすい傾向があるためである。また、高濃度であるほど、第二改質工程102後に第2改質後III族窒化物単結晶基板12上に成長するIII族窒化物単結晶層14との不純物濃度差の影響で格子定数差によるひずみが発生しやすくなる。したがって、不純物の下限値はより好ましくは5×1016cm−3以上、さらに好ましくは1×1017cm−3以上であり、上限値はより好ましくは1×1020cm−3以下、さらに好ましくは5×1019cm−3以下である。
従って、III族窒化物単結晶基板10に含まれるシリコン、炭素、酸素不純物の合計が、より好ましくは、5×1016以上1×1020cm−3以下、特に好ましくは1×1017cm−3以上5×1019cm−3以下の範囲にあることが良い。
本発明の製造方法において、後述する第二改質工程によって、第一改質後のグレイン領域11a内の原子配列は、単結晶領域10bの結晶配列に倣って原子が再配列し、第二改質後グレイン領域12aとなるものと推測される。従って本発明の製造方法の効果を得るためには、III族窒化物単結晶基板10のグレイン領域10a周辺にあたる単結晶領域10bの結晶配向性が良好であることが好ましい。当該部の結晶配向性はX線オメガロッキングカーブにより規定することができ、III族窒化物単結晶の(101)面方位のX線オメガロッキングカーブの半値幅が100秒以下、より好ましくは50秒以下、さらに好ましくは30秒以下であることが好ましい。本半値幅は値が小さい方が結晶配向性が良好であることを示し、本測定には、ゲルマニウム単結晶(220)を4回回折により単色化したX線源を用いることが好ましい。また、X線照射領域を絞ることにより、グレイン領域の結晶は配向性を評価することも可能である。測定原理上の下限値はおよそ10秒である。
(グレイン領域)
III族窒化物単結晶基板10に含まれるグレイン領域10aは、結晶方位が周囲の単結晶領域と異なる領域である。グレイン領域10aの構成元素は前述の通りIII族窒化物単結晶基板の単結晶領域10b(すなわち、周囲の単結晶領域)と同様である。一方で、該グレイン領域10aは、III族窒化物単結晶基板10の単結晶領域10bの中に一定の区画を伴って存在する結晶方位が周辺の単結晶領域10bと異なる領域である。グレイン領域10aの形状は特定の形状を有することは稀であり、不定形であることが多い。グレイン領域10aの内部は、一つの任意方向の結晶方位ズレを起こしている場合から、複数の任意方向の結晶方位ズレを起こしている場合まで、多様な存在形態を示す。また、グレイン領域10a内部における結晶方位ズレの方向や区画の大きさに特定の決まった状態はなく、多数の結晶方位ズレを有している場合は、多結晶の状態と認識される。また、グレイン領域10aと周辺の単結晶領域10bの境界(区画)にはグレイン領域10aの結晶方位ズレに伴って転位が存在する。
このようなグレイン領域10aは、X線トポグラフ像や複屈折率分布、偏光観察、後方電子線回折スペクトルを測定することにより容易に検知することが可能である。中でも広い観測視野で解像度よくグレイン領域を明瞭に確認できる手段はX線トポグラフ像である。図2は、III族窒化物単結晶基板(単結晶窒化アルミニウム基板)の(114)面回折を用いた反射X線トポグラフ像の一例である。
上記反射X線トポグラフ像はIII族窒化物単結晶基板の表面付近の情報であるが、単結晶領域10bからはX線回折による均一な回折コントラスが観測されるのに対し、グレイン領域10aからは結晶方位ズレのためにX線回折条件を満たさなくなり、単結晶領域のような回折コントラストが観測されなくなる。また、結晶方位ズレが軽度の場合である場合には、グレイン領域10aからの回折が得られるが、単結晶領域10bとは異なる強度の回折となる。このため、グレイン領域10aと単結晶領域10bの境界がコントラスト差として検知できる。また、さらには、グレイン領域10aが多結晶の状態である場合には回折コントラストが得られる部分と回折コントラストが得られない部分が複雑に交錯した状態となる。このようにグレイン領域の結晶方位の方向と大きさに応じて、いくつかの典型的な観測パターンが見られるが、反射X線トポグラフ像を取得することにより、単結晶領域の中に異質の結晶の状態を有する領域としてグレイン領域を認識される。すなわち、本発明の製造方法におけるグレイン領域は、反射X線トポグラフ像において、その周辺の領域とは異なるコントラストを示す領域として決めることができる。
グレイン領域10aの面積についても、III族窒化物単結晶基板表面の反射X線トポグラフ像の画像解析によってグレイン領域を特定し、容易に面積を特定することが可能となるが、本発明の製造方法の効果が得られるのは、個別のグレイン領域10aの面積が100mm以下であり、50mm以下であるとさらに本発明の効果が得られやすい。また、III族窒化物単結晶基板表面の総面積に対する、グレイン領域の面積の総和の百分率が、40%以下であると本発明の効果が得られやすい。
画像解析の方法としては、反射X線トポグラフ像をトレーシングペーパーや透明樹脂シート等、もしくは市販の画像表示ソフトを用いて基板外周形状と前記グレイン領域の外周形状をトレースした後、トレースした形状を画像解析で面積を割り出す方法が好適に使用可能である。
(第一改質工程)
本発明の製造方法において、第一改質工程とは、III族窒化物単結晶基板10に含まれるグレイン領域10aに外部より物理的作用を加えることで、グレイン領域のIII族窒化物結晶の原子配列を一時的に乱す工程である。物理的作用とは具体的には、レーザー照射やイオン打ち込み等により、グレイン領域10aおよび、グレイン領域の境界に物理的なエネルギーを加えることを意味する。本発明の製造方法では上記グレイン領域に物理的作用を加えることで結晶方位ズレの存在する状態から、結晶配向性が低下した状態、もしくは非晶質に近い状態に変化させる。なお、III族窒化物単結晶基板10に複数のグレイン領域を有する場合には、各々のグレイン領域に対して上記第一改質工程を実施する。
上記グレイン領域は、単結晶基板表面から内部にかけても存在するため、本発明の効果をより良好に得るためには、単結晶基板の最表面と表面近傍だけでなく、表面より深さ1μm以上の深さの内部に物理的作用を加えて原子配列を乱すことが好ましい。このため、レーザー照射による場合、レーザー光がIII族窒化物単結晶基板10の内部において物理的作用が加わるように、III族窒化物単結晶基板10のバンドギャップエネルギーに相当する波長よりも長い波長を有するレーザー光を照射し、適宜、グレイン領域内部にレーザー光が集光されるよう、適切な開口数の対物レンズを保有した光学系を用いることが好ましい。III族窒化物単結晶基板がアルミニウムを主成分とする場合に最適な光源の例としては、チタンサファイアレーザー(波長800nm)、YAGレーザーおよびその高調波レーザー(基本波長1064nm、第二高調波波長532nm、第三高調波波長355nm、第四高調波波長266nm)、アルゴンレーザー(波長514nmもしくは波長488nm)、窒化物固体レーザー(波長405nm他)、XeFエキシマーレーザー(波長351nm)、XeClエキシマーレーザー(波長308nm)、KrFエキシマーレーザー(波長248nm)等の公知のレーザー光源を使用することができる。
また、上記物理的作用を加える物理エネルギーとしては、III族窒化物単結晶基板10のバンドギャップエネルギーよりも小さいエネルギーを有するレーザー光を用いることが好ましい。すなわち、III族窒化物単結晶基板10のバンドギャップエネルギーよりも小さいエネルギーを有するレーザー光は、III族窒化物単結晶基板に吸収されにくいために、レーザー光の集光点をグレイン領域の深い位置から、浅い位置まで任意の深さに制御できる。このため、該基板表面付近だけではなく、該基板表面より内部においても、多光子吸収のメカニズムによって物理的作用を加えることが可能である。この特徴を応用して、レーザー照射開始時には、レーザー照射側から最も遠いグレイン領域に焦点を合わせて物理的作用を加え、その後焦点を段階的にレーザー照射側に近い方向へ移動させることによって、グレイン領域全体に渡って物理的作用を加えることも可能となる。
また、レーザー光源には連続発振のレーザー及び、パルス発振のレーザーを制限なく用いることができ、パルスレーザーを用いる場合には、パルス幅をミリ秒単位、マイクロ秒単位、ナノ秒単位、ピコ秒単位、フェムト秒単位等、任意のものから選択することができ、また発振周波数も任意のものから選択することができる。これにより、III族窒化物結晶に1パルスあたりに時間に与えるエネルギー量を高めることや、エネルギー照射後に発生する熱エネルギーの放出時間(冷却時間)を適宜調整することが可能となり、効率よくグレイン領域の原子配列を改質することが可能となる。
照射するレーザーの出力はIII族窒化物単結晶基板の組成やレーザーの照射面積(集光面積)によって異なるが、0.1W以上100W以下であることが好ましい。レーザー強度が強すぎる場合には、III族窒化物結晶そのものが瞬間的に加わったエネルギーによって蒸発(アブレーション)を起こしたり、III族窒化物単結晶基板内にクラックを発生させたりする傾向がある。また、レーザー強度が弱すぎる場合には、第一改質工程の効果が得られにくい傾向にある。このため、照射するレーザーの出力としては、より好ましくは、0.5W以上10W以下、特に好ましくは1.0W以上5.0W以下の範囲にあることが良い。
イオン打ち込みによる場合、打ち込むイオンのエネルギーを50keV以上に高めるか、内部へイオンが到達する目的で打ち込み角度を表面から1〜10°の範囲で傾斜させ、より好ましくは5〜8°の範囲で傾斜させる。しかしながら、イオン打ち込みの場合には、注入するイオンがグレイン領域内に残留し、局所的に不純物濃度が高い領域が形成されることとなり、場合によっては不純物起因による局所的に応力が高い領域が形成される。このため、物理的作用の印加手段としてはレーザーを用いることがより好ましい。
いずれの改質手段によっても、本発明の目的はグレイン領域が低減されたIII族窒化物単結晶基板を提供することであり、III族窒化物単結晶基板を上面方向から見た場合、上記グレイン領域に物理的作用を加える範囲については、グレイン領域全体が改質される範囲で加える。通常グレイン領域に物理的作用加えた場合には、加えた部位から物理的エネルギーが伝播するため、必ずしもグレイン領域全体に直接的に物理的作用を加える必要はない。確実に改質する観点から、第一改質後グレイン領域11aの面積は、元のグレイン領域10aの面積と同程度の範囲で改質することが好ましいが、前記グレイン領域よりも広い範囲もしくは狭い範囲で改質してもよい。この場合には第一改質後グレイン領域11aの面積は、グレイン領域10aの面積に対して好ましくは±50%以内になるように第一改質工程を実施する。
第一改質後グレイン領域11aの深さについては、前記の通り、表面と表面近傍だけでなく、内部に物理的作用を加えて原子配列を乱すことが好ましい。前記の第一改質後グレイン領域11aの面積範囲に対して、深さ1μm以上の範囲に物理的作用を加えることが好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、最も好ましい実施形態は、表面近傍から反対の表面(裏面)に貫通するように第一改質後グレイン領域を設けることである。この理由は、第二改質工程において結晶配列が回復する際に、単結晶領域とは異なる結晶方位ズレを有する部位に倣うことを回避するためである。
第一改質後グレイン領域11aの状態は、物理的作用によりIII族窒化物結晶の原子配列が乱れた状態となっており、X線トポグラフ測定ではX線回折条件を満たさなくなるため、当該部分を明瞭に検知することができる。また、第一改質工程前にX線オメガロッキングカーブ測定が可能であったグレイン領域10aの場合、第一改質工程後にはX線オメガロッキングカーブ半値幅が大きくなり、概ね100秒以上の値になるが、場合によってはさらにブロードなハロー様のピークとなる。また、当該部分は単結晶領域とは異なる屈折率になるため、偏光観察によっても観察することが可能であり、2枚の偏光板を互いに直交方向に挿入した光学顕微鏡観察によって、さらに容易に観察することが可能である。
(第二改質工程)
本発明の製造方法において、第二改質工程102は、第一改質工程101により変化させた結晶配列をさらに変化させる工程である。具体的には、第一改質工程101において物理的作用により原子配列が乱れた第一改質後グレイン領域11aの原子配列を再配列させて、結晶配列を再構築させる工程である。かかる工程を経ることで、III族窒化物単結晶基板に当初存在していたグレイン領域10aを低減或いは消失させることが可能である。ここで、第二改質工程における結晶配列をさらに変化させる方法として具体的には、第一改質工程を経たIII族窒化物単結晶基板を熱処理する方法が挙げられる。第二改質工程における熱処理によって、第一改質後のグレイン領域11a内の原子配列は、単結晶領域10bの結晶配列に倣って原子の再配列が進行し、第二改質後グレイン領域12aとなる。
上記第二改質工程における熱処理の温度はIII族窒化物単結晶の結晶配列が再構築するのに十分な温度であれば良く、その温度はIII族窒化物単結晶の種類に依存し適宜決定すれば良い。上記熱処理温度は、1200℃以上2000℃以下の範囲であることが好ましい。熱処理時の温度が低いと第二改質工程の効果が得られず、温度が高いとIII族窒化物単結晶基板が分解するおそれがある。従って、熱処理温度は、より好ましくは、1300℃以上1800℃以下、特に好ましくは1400℃以上1700℃以下の範囲にあることが良い。加熱方式も公知の抵抗加熱方式や高周波誘導加熱方式、光加熱方式を使用することができる。なお、熱処理により第二改質工程を行う場合、前記第一改質工程を施したグレイン領域に対し、局所的に加熱処理を行っても或いはホットウォール形式でIII族窒化物単結晶基板全体を均一に加熱することにより行ってもよい。
熱処理の保持時間は、適宜調整すればよいが1分〜600分の範囲である。昇温と降温に費やす時間も特に制限はないが、短時間である場合には、III族窒化物単結晶基板内部における熱膨張の差異が発生して、破損が生じる虞がある。このため、1000℃/分以下であることが好ましく、より好ましくは100℃/分以下、さらに好ましくは50℃/分以下とする。一方で、長時間であると前記破損のリスクは減少するが実用上の観点から1℃/分以上であることが好ましく、より好ましくは10℃/分以上、さらに好ましくは20℃/分以上とする。熱処理の雰囲気は、III族窒化物単結晶基板の材質や、熱処理炉の材質にも依存するが、真空雰囲気、窒素雰囲気、希ガス等の不活性雰囲気を好適に使用することができる。
第二改質後グレイン領域12aは、III族窒化物結晶の原子配列が再配列された状態となっており、X線トポグラフ測定でX線回折条件を満たす状態となっているため、当該部分を画像として明瞭に検知することができる。また、当該部分は原子再配列により単結晶領域の状態に近づくため、偏光観察では第二改質後グレイン領域と単結晶領域との境界の判別が難しくなる。
詳細なX線トポグラフ測定によっては、第二改質後グレイン領域12aの内部に、基板面に対する水平断面積として1mm以下の小さなひずみや転位を伴う領域が観測されることもある。しかしながら、面積としては当初のグレイン領域10aよりも小さく、結晶配列も改善されているため、第二改質工程102の後に行われる成膜工程103において、第二改質後III族窒化物単結晶基板12上に形成されるIII族窒化物単結晶層14の結晶品質への影響は小さくなる。また、前記第二改質後グレイン領域12aに小さなひずみや転位を伴う領域が残留していたとしても、第一改質工程101と第二改質工程102をさらに繰り返すことにより、当該第二改質後グレイン領域12aをさらに小さく改質することで、成膜工程103への影響をさらに最小限にとどめることも可能である。
第二改質後グレイン領域12aの結晶配列の状態は、当該領域の局所的な(101)面方位のX線オメガロッキングカーブの測定により定量化することができ、X線オメガロッキングカーブピークも明瞭に観測されるようになる。第二改質後グレイン領域12aのX線オメガロッキングカーブ半値幅は100秒未満の値になり、場合によって50秒以下、さらには30秒以下、もしくは単結晶領域10bと同程度に回復する。
本発明の第一改質工程、および第二改質工程により、グレイン領域の低減に寄与するが、III族窒化物単結晶基板に転位が集中した領域が存在する場合や、グレイン自体がIII族窒化物単結晶の極性が反転した領域である場合でも、本発明の第一改質工程および第二改質工程を加えることにより、転位の減少や極性反転領域の改善に寄与する。
(成膜工程)
第二改質工程102で得た第二改質後III族窒化物単結晶基板12は、該基板上に良好な結晶品質を有するIII族窒化物単結晶層14を形成する成膜工程を施すことにより、III族窒化物単結晶積層体13を得ることができる。
III族窒化物単結晶積層体13を得るための成長手法としては、物理的気相輸送(Pysical Vapor Transport)法、有機金属気相成長(MOCVD)法、ハイドライド気相成長(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy)法、液相法、アモノサーマル法等、公知のIII族窒化物単結晶の成長手法を用いることが可能である。これらの方法を適宜選択することにより、III族窒化物単結晶層14として発光ダイオードやレーザーダイオードのような発光素子、フォトダイオードのような受光素子、電界効果トランジスターや高電子移動度トランジスターのような電子デバイス、さらには、厚さ100μmを超えるようなIII族窒化物単結晶厚膜を形成することもできる。いずれの場合においても、第一改質工程および第二改質工程を経たことにより、当初存在していたIII族窒化物単結晶基板に含まれるグレイン領域の結晶方位ズレは改善されているため、良好な結晶品質の前記III族窒化物単結晶層が得られ、素子性能や歩留の低下に貢献する。
(追加可能な工程)
第二改質工程102で得た第二改質後III族窒化物単結晶基板12上にIII族窒化物単結晶層14を形成するにあたり、III族窒化物単結晶層14の積層前に第二改質後III族窒化物単結晶基板12の表面を適宜平坦化加工、凹凸加工等を実施することが可能である。
平坦化加工を実施する場合には、機械研磨による平面出しや、表面の研磨ダメージ層を除去するために化学的機械的研磨(CMP)等、公知の研磨加工を用いることが可能である。使用する研磨剤は、シリカ、アルミナ、セリア、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド等の材質を含む研磨剤を用いることができる。また、研磨剤の性状は、アルカリ性、中性、または酸性のいずれでもよい。中でも、窒化アルミニウムは、窒素極性面(−c面)の耐アルカリ性が低いため、強アルカリ性の研磨剤よりも、弱アルカリ性、中性または酸性の研磨剤、具体的には、pH9以下の研磨剤を用いることが好ましい。もちろん、窒素極性面に保護膜を設置すれば強アルカリ性の研磨剤も問題なく使用することも可能である。研磨速度を高めるために酸化剤等の添加剤を追加することも可能であり、研磨パットの材質や硬度は市販のものを使用することができる。
前記第二改質後III族窒化物単結晶基板表面に凹凸加工を行う際には、一般的なリソグラフを用いたマスクパターンの形成と、それに続くドライエッチング加工を用いる。これらには公知のメタルマスク、レジストマスク、インプリントマスク等を使用可能である。表面の凹凸を設けることにより、成膜工程103における第二改質後III族窒化物単結晶基板表面の凸部にIII族窒化物単結晶層の成長領域を制約することにより、より高品質なIII族窒化物単結晶層の成長が可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(III族窒化物単結晶基板)
III族窒化物単結晶基板10として厚さ450μm、直径35mmの両面CMP研磨の単結晶窒化アルミニウム基板を用いた。表面はc面(Al極性面)であり、m面方向に0.25°、a面方向に0.01°のオフ角を有していた。二次イオン質量分析法により測定したシリコン、酸素および炭素の不純物濃度は、それぞれ5×1017cm−3、1×1019cm−3、1.5×1019cm−3であり、不純物濃度の合計は2.55×1019cm−3であった。また、単結晶窒化アルミニウム基板のグレイン領域以外の領域において、ゲルマニウム単結晶(220)を4回回折により単色化したX線源として用いたX線オメガロッキングカーブ測定を行ったところ、窒化アルミニウムの(101)面方位のX線オメガロッキングカーブの半値幅は12秒であった。
単結晶窒化アルミニウム基板に含まれるグレイン領域の位置と大きさを特定するため、窒化アルミニウムの(114)面回折を用いた反射X線トポグラフ像を取得した。反射X線トポグラフ像の測定には、パナリティカル社製高分解能薄膜X線回折装置X‘Pert MRD Proを使用した。Cuターゲットを用いたX線管球に加速電圧45kV、フィラメント電流40mAの条件で特性X線を発生させ、ラインフォーカスでX線ビームを取り出した。発生したX線ビームはX線ゲーベルミラーモジュールにより単色化した。このとき、X線ミラーモジュールの入口に1/2°発散スリット(横制限スリット)と50μm幅の縦制限スリットを装着し、X線ビームをトリミングした後に、測定ステージ上に設置した対象物である窒化アルミニウム単結晶基板に照射した。単結晶窒化アルミニウム基板の(114)面から回折したCuKα1線を半導体二次元検出器(Pixcel 3D)にて検出した。単結晶窒化アルミニウム基板全面について前記測定を行って、基板全体の反射X線トポグラフ像を画像化した。画像化した反射X線トポグラフ像は図2に示されるとおりであった。
その結果、単結晶窒化アルミニウム基板の面内に2か所のグレイン領域が存在することを確認した。単結晶領域10bからはX線回折による均一な回折コントラスが観測されるのに対し、1ヵ所目のグレイン領域は、結晶方位ズレの程度が大きいためにX線回折条件を満たさず、反射X線トポグラフ像の状態としては、黒抜けの状態(回折X線が欠損した状態)になっていた。2か所目のグレイン領域は、結晶方位ズレの程度が軽度であるため、回折コントラストが観測され、グレイン領域と単結晶領域の境界がコントラスト差として認識できる状態であった。いずれのグレイン領域の形状も、特に窒化アルミニウムの結晶構造である六方晶が反映されたものではなく、不定形の形状を有していた。
グレイン領域の面積の算出のため、該反射X線トポグラフ像の画像解析を行った。実際の反射X線トポグラフ像は、X線が窒化アルミニウム基板表面付近で回折したX線を画像化しているものであり、実際の形状基板と全く同一の形状を反映しない場合がある。そこで、グレイン領域の算出には、反射X線トポグラフ像の直径35mmに相当する最外周を取り囲む全体に対する、各グレイン領域の面積の割合を画像解析により算出し、次いで、該グレイン領域の割合に直径35mmの基板面積962mmを乗じることにより実施した。また、画像解析に際しては単結晶領域とグレイン領域、両者の境界を明確化するため、トポグラフ像のコントラスト境界をトレーシングした後、グレイン領域の面積に換算した。また、トポグラフ像の取得に際して、X線検出器に起因する規則的なコントラストは該領域の算出に影響がないように除外した。その結果、1ヵ所目のグレイン領域の面積は9mmと見積もられ、2ヵ所目のグレイン領域の面積は0.8mmと見積もられた。
(第一改質工程)
次いで、該単結晶窒化アルミニウム基板の第一改質工程を実施した。第一改質工程には、波長800nmのチタンサファイアレーザーを用いた。レーザー出力は2.5mW、周波数10kHz、バルス幅は1ns、集光部スポット系はφ20μmに設定した。該単結晶窒化アルミニウム基板へのレーザー照射前に、別の試験基板でレーザー照射試験を行い、レーザー照射による改質領域を調査したところ、面内方向については焦点位置からφ100μmの範囲、深さ方向については焦点位置から上下に30μmの範囲に渡って改質領域が分布していた。2カ所のグレイン領域へのレーザー照射は単結晶窒化アルミニウム基板の表面(Al極性面)側から照射し、照射開始時には、レーザー照射側から遠い側、すなわち裏面(N極性面)から10μm上方位置にグレイン領域に焦点を合わせて物理的作用を加え、グレイン領域の同一面内全体にレーザーを照射した後、焦点をレーザー照射面に近い方向へ40μm移動させ、再びグレイン領域の同一面内全体にレーザーを照射した。これを焦点位置を40μmずつ表面に移動しながらサイクル繰り返すことにより、深さ方向を含めたグレイン領域全体に渡って物理的作用を加え、グレイン領域の原子配列を改質した。
第一改質後グレイン領域11aの範囲を特定するため、前記と同様に窒化アルミニウムの(114)面回折のX線トポグラフ測定を行ったところ、1ヵ所目のグレイン領域については、元の黒抜けの領域に加えてその周辺も、レーザー照射領域は結晶配列が乱されたことに起因して回折が弱まっていることが確認された。2ヵ所目のグレイン領域についても、改質前よりも回折が弱まり、周辺部とのコントラスト差がより明確になった。一方、グレイン領域から単結晶領域側にもより広い範囲でレーザー照射を行ったため、境界部分のコントラスト差は改質前よりも不明瞭になった。
さらに、前記と同様の画像解析により第一改質後グレイン領域の面積を見積もった。ここでは、元のグレイン領域から単結晶領域側のコントラストの変化が見られた領域も含めて見積もった。第一改質工程により境界部分が不明瞭になっていたため、面積を算出する際には、当初のグレイン領域の境界と、グレイン領域から単結晶領域側において改質の影響が及び始めた部分、すなわち単結晶領域におけるコントラスト変化が現れた部分との中間を第一改質後グレイン領域の境界とした。その結果、第一改質後グレイン領域の面積は、1ヵ所目の第一改質後グレイン領域については、元のグレイン領域10aの面積に対して24%広い領域となっており、2ヵ所目の第一改質後グレイン領域については、元のグレイン領域10aの面積に対して41%広い領域となっていた。また、1ヵ所目の第一改質後グレイン領域については、その面積が広いため、照射X線を絞ることによりX線オメガロッキングカーブを測定が可能であり、結晶配列の乱れに起因して半値幅は4860秒になっていた。2ヵ所目の第一改質グレイン領域については、その面積が狭く同様の測定が困難であった。
(第二改質工程)
次にタングステン製ヒーター素線からなる雰囲気制御電気炉を使用して、第二改質工程を実施した。第一改質工程後の単結晶窒化アルミニウム基板を該電気炉内のタングステン製サセプタ上に設置し、電気炉内部の真空排気を行った後、純度99.999%の窒素ガスを充填した。さらに真空排気と窒素充填を合計3回繰り返し、電気炉内部の酸素や水分を低減した。窒素ガスとアルゴンガス(純度99.999%)の混合ガス(混合比率1:1)を流量200ml/分にて流通した状態で、室温から1650℃まで60分で昇温した。その後、1650℃で30分間保持した後、加熱を中止して基板を放冷し、電気炉から第二改質工程後の単結晶窒化アルミニウム基板を取り出した。
次いで、該単結晶窒化アルミニウム基板の反射X線トポグラフ像を測定した。その結果、1ヵ所目のグレイン領域は、第二改質工程を経て周辺の単結晶領域と同様の回折コントラストが得られたが、グレイン領域の中心付近に面積0.3mmの小さな回折コントラストの欠損がみられた。結晶配列の再配列がみられた部分のX線オメガロッキングカーブは15秒であった。2ヵ所目のグレイン領域は、第二改質工程を経ることにより第二改質後グレイン領域全体が周辺の単結晶領域の回折コントラストと同様の回折を示すようになり、結晶配列が回復したことを確認した。
(成膜工程)
第二改質後の単結晶窒化アルミニウム基板の表面(Al極性面)側に新たなIII族窒化物単結晶層を成長する前に、該表面を化学的機械研磨により平坦化処理を行った。化学的機械研磨直前の研削処理は行わず、単結晶窒化アルミニウム基板を対アルカリ性ワックスを使用して定盤に張り付けた後、ウレタン製研磨パッドとアルカリ性シリカスラリーを用いて化学的機械研磨を実施した。研磨後の単結晶窒化アルミニウム基板の表面は、観察視野2×2μmの原子間力顕微鏡観察でステップとテラスを有する表面状態となり、算術平均粗さ(Ra)は0.08nmであった。次いで、該基板の表面を弱アルカリ性洗剤を供給しながらスクラブ洗浄を実施した後、超純水でリンスして、スピン乾燥にて残留水分を除去した。
次いで、該基板上に発光素子層を形成するため、有機金属気相成長装置内に設置し、該基板上にn−AlGaN層、量子井戸層、p−AlGaN層、p−GaN層を順次形成した。さらに、公知のリソグラフ工程とドライエッチング工程、電極蒸着とアニール工程を用いて、素子1つあたり□1mm×1mmの区画となるようにn−AlGaN層上とp−GaN層上にそれぞれn電極とp電極を形成した。グレイン領域を改質したことによるLEDの故障発生を確認することを目的としたため、切断は行わず、単結晶窒化アルミニウム基板上に形成したLED素子が形成された状態で、プローブテスターにて通電テストを実施した。通電テストは、該基板のグレイン領域上に形成された各素子に、まず、パルス幅10μ秒の電流650mAを、1kHzにて1秒間のパルス電流を印加し、次いで直流連続通電を行った。直流連続通電において、印加電圧を3Vとした際の電流値が10μA以下であり、かつ−5V印加した際の電流値が−1μA以下のものを良品として、良品・不良品の判別を行い、LEDの故障率すなわち、パルス印加を行っても劣化しなかった発光素子の割合を算出した。
その結果、1ヵ所目のグレイン領域上に形成された素子9個のうち1個が故障し、故障率は11%であった。また2ヵ所目のグレイン領域を含むLED素子1個の故障は見られなかった。単結晶領域に形成された素子の故障率は7%であった。
(比較例1)
実施例1と同様の単結晶窒化アルミニウム基板を使用し、かつ実施例1で示した第一改質工程と第二改質工程を適用せずに、実施例1と同様の研磨を実施した後、実施例1と同一の成長バッチにてMOCVD法によりLED素子層を成長した比較例である。その結果、単結晶領域に形成された素子の故障率は9%であったが、グレイン領域に形成された素子10個全数が故障した。
(比較例2)
実施例1と同様の単結晶窒化アルミニウム基板を使用し、かつ実施例1で示した第一改質工程を実施せずに第二改質工程のみを実施し、実施例1と同様の研磨を実施した後、実施例1と同一の成長バッチにてMOCVD法によりLED素子層を成長した比較例である。その結果、単結晶領域に形成された素子の故障率は8%であったが、グレイン領域に形成された素子10個全数が故障した。
10 III族窒化物単結晶基板
10a グレイン領域
10b 単結晶領域
101 第一改質工程
11 第一改質後III族窒化物単結晶基板
11a 第一改質後グレイン領域
11b 改質手段(物理的作用)
102 第二改質工程
12 第二改質後III族窒化物単結晶基板
12a 第二改質後グレイン領域
103 成膜工程
13 III族窒化物単結晶積層体
14 III族窒化物単結晶層

Claims (10)

  1. 結晶方位が周囲の単結晶領域と異なるグレイン領域を有するIII族窒化物単結晶基板の該グレイン領域の少なくとも一部の領域に物理的作用を加えて該領域の結晶配列を変化させる第一改質工程、
    次いで前記第一改質工程により変化させた結晶配列をさらに変化させる第二改質工程
    を含むことを特徴とするIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  2. 前記第一改質工程における物理的作用が前記グレイン領域の少なくとも一部の領域にレーザー光を照射するものである請求項1記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  3. 前記レーザー光の照射エネルギーが、III族窒化物単結晶基板のバンドギャップエネルギーよりも小さい請求項2記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  4. 前記第二改質工程が、III族窒化物単結晶基板を1200℃以上に加熱することによる請求項1記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  5. 前記グレイン領域を有するIII族単結晶窒化物基板に含まれるシリコン、炭素、酸素不純物の合計が1×1016cm−3以上1×1021cm−3以下である請求項1記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  6. 前記グレイン領域を有するIII族単結晶窒化物基板の厚さが50μm以上である請求項1記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  7. 前記グレイン領域を有するIII族単結晶窒化物基板が窒化アルミニウムである請求項1記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  8. 前記第一改質工程により、前記グレイン領域のX線ロッキングカーブ半値幅を100秒以上に改質する請求項1記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法にてIII族窒化物単結晶基板を得、次いで、得られた該III族窒化物単結晶基板に、III族窒化物単結晶層を積層するIII族窒化物単結晶積層体の製造方法。
  10. III族窒化物単結晶層を積層する前に前記III族窒化物単結晶基板の表面の研磨を行う請求項9記載の積層体の製造方法。
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