JP2023126228A - Iii族窒化物単結晶の切断方法 - Google Patents

Iii族窒化物単結晶の切断方法 Download PDF

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靖彦 下間
Yasuhiko Shimoma
清貴 三浦
Seiki Miura
雅弘 清水
Masahiro Shimizu
克生 松井
Katsuo Matsui
晃直 中村
Akinao Nakamura
徹 永島
Toru Nagashima
玲子 岡山
Reiko Okayama
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Abstract

【課題】切断により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能な、III族窒化物単結晶の切断方法を提供する。【解決手段】第1及び第2の面を有するIII族窒化物単結晶の切断方法であって、(i)単結晶に対して透過性を有する波長のレーザービームを、第1の面に照射する工程であって、(ia)第1の面から所定の深さにおいてレーザービームが集光するように、レーザービームを第1の面から単結晶に入射させること、(ib)レーザービームの集光点と単結晶とを面内方向に相対的に移動させること、及び、(ic)集光点の軌跡に沿った改質領域および改質領域から伸長するクラックを単結晶中に形成させることを含む工程と、(ii)クラックを起点として単結晶を分離する工程とを含み、レーザービームの集光点が通る位置における単結晶中のSi濃度が5×1018atom/cm3以下である、III族窒化物単結晶の切断方法。【選択図】図1

Description

本発明は、III族窒化物単結晶の新規な切断方法に関する。
窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウムといったIII族窒化物半導体は広範囲のバンドギャップエネルギーの値を有しており、それらのバンドギャップエネルギーは、それぞれ6.2eV程度、3.4eV程度、0.7eV程度である。これらのIII族窒化物半導体は任意の組成の混晶半導体をつくることが可能であり、その混晶組成によって、上記のバンドギャップの間の値を取ることが可能である。
したがって、III族窒化物半導体を用いることにより、原理的には赤外光から紫外光までの広範囲な発光素子を作ることが可能となる。特に、アルミニウム系III族窒化物半導体(主に窒化アルミニウムガリウム混晶)を用いた発光素子によれば、紫外領域等の短波長での発光が可能となる。
III族窒化物半導体(例えばアルミニウム系III族窒化物半導体)を用いた発光素子は、従来の半導体発光素子と同様に、基板上に厚さが数ミクロン程度の半導体単結晶の薄膜(具体的にはn型半導体層、発光層、p型半導体層となる薄膜)を順次積層することにより製造可能である。このような半導体単結晶の薄膜を形成する方法としては、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属気相成長(MOCVD:Metalorganic Chemical Vapor Deposition)法等の結晶成長方法が知られている。
現在、III族窒化物半導体発光素子の製造にあたっては、基板としての結晶品質、紫外光透過性、量産性およびコストの観点から、サファイア基板が一般的に採用されている。しかし、サファイア基板上にIII族窒化物半導体発光素子を形成した場合、サファイア基板と半導体発光素子の各層を構成するIII族窒化物(例えば窒化アルミニウムガリウム等)との間の格子定数や熱膨張係数等の違いに起因して、結晶欠陥(ミスフィット転位)やクラック等が生じ、素子の発光性能を低下させる原因になる。
これらの問題を解決するためには、素子を構成するIII族窒化物半導体薄膜に近い格子定数および熱膨張係数を有する基板を採用することが望ましい。III族窒化物半導体薄膜を成長させるための基板としては、III族窒化物単結晶基板が最も適しているといえる。例えばアルミニウム系III族窒化物半導体薄膜を形成する基板としては、窒化アルミニウム単結晶基板や窒化アルミニウムガリウム単結晶基板が最適である。
III族窒化物単結晶を基板として用いるには、機械的強度の観点から該単結晶が或る程度(例えば10μm以上。)の厚さを有することが好ましい。MOCVD法はMBE法に比べて結晶成長が速いため、III族窒化物単結晶基板の製造に適しているといえる。またMOCVD法よりもさらに結晶成長の速いIII族窒化物単結晶の成長方法として、ハイドライド気相エピタキシー(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法(特許文献1~3参照)および物理気相成長(PVT:Physical Vapor Transport)法が知られている。MOCVD法やHVPE法によるIII族窒化物単結晶の成長は、III族原料ガスと、窒素源ガスとを反応器中に供給し、両者のガスを加熱されたベース基板上で反応させることにより行われる。PVT法は本質的に昇華法であり、PVT法による窒化アルミニウム単結晶の成長は、例えば、窒素雰囲気中で窒化アルミニウム原料を加熱して昇華させ、生じた蒸気をベース基板上で窒化アルミニウム結晶として再析出させることにより行われる。
ベース基板上に成長されたIII族窒化物単結晶を板状に切断することによりウェハが得られ、該ウェハを研磨して表面のダメージ層を除去することによりIII族窒化物単結晶基板が得られる。III族窒化物単結晶を板状に切断(スライス)する手段としては、ワイヤーソウが一般的に用いられている(特許文献4参照)。
国際公開2013/191140号パンフレット 特開2002-332586号公報 特許第4453973号公報 国際公開2016/076270号パンフレット 特開2016-111143号公報
しかしながら、ワイヤーソウによる切断においては、ワイヤーソウの刃の厚みに応じて、III族窒化物単結晶のうち無視できない量(厚みにして例えば約数百μm)が失われる。
また、切断の際に切断面近傍に形成されるダメージ層は、当該切断面上に成長されるIII族窒化物単結晶の結晶品質に悪影響を及ぼす。したがって単結晶切断後に切断面を研磨する際には、表面の凹凸だけでなくダメージ層をも除去する必要がある。そのため切断後の研磨においても無視できない量のIII族窒化物単結晶が失われている。
本発明の第1の課題は、切断により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能な、III族窒化物単結晶の切断方法を提供することである。
本発明の第2の課題は、III族窒化物単結晶を切断して得たベース基板上にIII族窒化物単結晶層を気相成長させるにあたり、切断後の研磨により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能な、III族窒化物単結晶積層体の製造方法を提供することである。
特許文献5には、第一の面、第二の面、第一の面から第二の面に至るc軸、及びc軸に直交するc面を有する六方晶SiC単結晶インゴットからウェハを生成する方法であって、(i)インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を第一の面から生成するウェハの厚みに相当する深さに位置づけると共に、集光点とインゴットとを相対的に移動してレーザービームを第一の面に照射し、第一の面に平行な改質層および該改質層から伸長するクラックを形成して分離起点を形成する分離起点形成ステップと、(ii)分離起点からウェハの厚みに相当する板状物をインゴットから剥離して単結晶ウェハを生成するウェハ剥離ステップと、を上記順に備え、(i)分離起点形成ステップは、(i-a)第一の面の垂線に対してc軸がオフ角分傾き、第一の面とc面との間にオフ角が形成される方向と直交する方向にレーザービームの集光点を相対的に移動して直線状の改質層を形成する改質層形成ステップと、(i-b)該オフ角が形成される方向に集光点を相対的に移動して所定量インデックスするインデックスステップと、を含むことを特徴とするウェハの生成方法が記載されている。特許文献5に記載のウェハの生成方法によれば、インゴットから効率よくウェハを生成できると主張されている。
III族窒化物単結晶の切断をワイヤーソウに代えて例えば特許文献5に記載のようにレーザー照射により行うことができれば、切断の際に失われるIII族窒化物単結晶を低減できると考えられる。しかしながら、本発明者らがAlN単結晶等のIII族窒化物単結晶について特許文献5に記載の方法と類似のやり方でレーザー照射による切断を試みたところ、所望の深さにレーザーを集光しても、集光点にクラックが発生しない場合があることが判明した。
本発明者らは、III族窒化物単結晶にレーザーを照射した際に集光点にクラックを発生させるには、III族窒化物単結晶中の特定の不純物の濃度が重要であることを見出した。さらに本発明者らは、該特定の不純物の濃度が高いIII族窒化物単結晶層と、該特定の不純物の濃度が低いIII族窒化物単結晶層との積層体に対して、当該2つの層の境界近傍にレーザーを集光すると、後者の層に選択的にクラックが発生することを見出した。
本発明は、次の[1]~[15]の形態を包含する。
[1] III族窒化物単結晶の切断方法であって、
前記単結晶は、第1の面、及び、該第1の面と反対側の第2の面を有し、
前記方法は、
(i)前記単結晶に対して透過性を有する波長のレーザービームを、前記第1の面に照射する工程であって、
(ia)前記第1の面から所定の深さにおいて前記レーザービームが集光するように、前記レーザービームを前記第1の面から前記単結晶に入射させることと、
(ib)前記レーザービームの集光点と前記単結晶とを、前記第1の面の面内方向に相対的に移動させることと、
(ic)前記集光点の軌跡に沿った改質領域、及び、該改質領域から伸長するクラックを、前記単結晶中に形成させることと
を含む工程と、
(ii)前記工程(i)の後、前記クラックを起点として、前記単結晶を、前記第1の面を有する板状体である第1の部分と、前記第2の面を有する第2の部分とに分離する工程と
を含み、
前記レーザービームの集光点が通る位置において、前記単結晶中のSi濃度が5×1018atom/cm以下であることを特徴とする、III族窒化物単結晶の切断方法。
[2] 前記III族窒化物単結晶は、
前記第1の面を有する第1の層と、
前記第2の面を有する第2の層と
を含み、
前記第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)と、前記第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)とが異なっている、[1]に記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[3] 前記第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)が、前記第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)より低い、[2]に記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[4] 前記工程(i)において、前記集光点は、前記第1の層および前記第2の層のうち、前記C、O、及びSiの合計濃度がより低い方の層中に位置決めされる、[2]又は[3]に記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[5] 前記工程(i)において、前記改質領域は、前記単結晶中に複数形成される、[1]~[4]のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[6] 前記工程(i)において、前記レーザービームのエネルギーが時間的に変調される、[1]~[5]のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[7] 前記工程(i)において、前記レーザービームがパルスレーザーである、[1]~[5]のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[8] 前記工程(i)において、前記パルスレーザーのパルスエネルギーが時間的に変調される、[7]に記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[9] 前記パルスエネルギーの変調周波数が、0.01~100kHzの範囲内であって、且つ前記パルスレーザーの繰り返し周波数の1/2倍以下である、[8]に記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[10] 前記III族窒化物単結晶が窒化アルミニウム単結晶である、[1]~[9]のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[11] (iii)前記工程(ii)の後、前記第2の部分の分離面を研磨する工程をさらに含む、[1]~[10]のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[12] (iv)前記工程(ii)の後、前記第1の部分の分離面を研磨する工程をさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶の切断方法。
[13] (A)III族窒化物単結晶をレーザービーム照射で切断してベース基板を得る工程と、
(B)前記ベース基板を1200~1800℃で加熱処理する工程と、
(C)前記ベース基板上に、気相成長法によりIII族窒化物単結晶層を成長させる工程と、を上記順に含むことを特徴とする、III族窒化物単結晶積層体の製造方法。
[14] (D)前記工程(B)の後、前記工程(C)の前に、前記ベース基板の切断面を研磨する工程をさらに含む、[13]に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法。
[15] 前記工程(A)が、[1]~[12]のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶の切断方法により行われる、[13]又は[14]に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法。
本発明の第1の態様に係るIII族窒化物単結晶の切断方法によれば、切断により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能である。
本発明の第2の態様に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法によれば、III族窒化物単結晶を切断して得たベース基板上にIII族窒化物単結晶層を気相成長させるにあたり、切断後の研磨により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能である。
一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶の切断方法S10を説明するフローチャートである。 (A)切断方法S10において切断されるIII族窒化物単結晶10を模式的に説明する平面図である。(B)は図2(A)のA-A断面図である。 (A)工程S1におけるレーザー照射の態様を模式的に説明する断面図である。(B)図3(A)におけるレーザー照射によって生じる改質領域RM及びクラックC1を模式的に説明する断面図である。 (A)工程S1における集光点FSの移動の形態の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。(B)図4(A)のB-B断面図である。(C)図4(A)のC-C断面図である。 (A)工程S1における集光点FSの移動の形態の他の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。(B)図5(A)のB-B断面図である。(C)図5(A)のC-C断面図である。(D)図5(A)のD-D矢視図である。 (A)工程S1における集光点FSの移動の形態の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。(B)工程S1における集光点FSの移動の形態の他の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。 (A)工程S1における集光点FSの移動の形態の他の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。(B)は、図7(A)のB-B断面図である。 時間的に変調されたレーザーエネルギーの波形を模式的に説明する図である。(A)正弦波状に変調されたレーザーエネルギーの波形を模式的に説明するグラフである。(B)三角波状に変調されたレーザーエネルギーの波形を模式的に説明するグラフである。(C)方形波状に変調されたレーザーエネルギーの波形を模式的に説明するグラフである。 (A)工程S1を経た単結晶10を模式的に説明する断面図である。(B)工程S2後の第1の部分20及び第2の部分30を模式的に説明する断面図である。(C)工程S2における引っ張り力の印加を説明する図である。 工程S2におけるせん断力の印加を説明する図である。 工程S2におけるねじり力の印加を説明する図である。 他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶の切断方法S20を説明するフローチャートである。 (A)切断方法S20において切断されるIII族窒化物単結晶110を模式的に説明する平面図である。(B)図13(A)のA-A断面図である。 (A)工程S21におけるレーザー照射の態様を模式的に説明する断面図である。(B)図14(A)におけるレーザー照射によって生じる改質領域RM及びクラックC1を模式的に説明する断面図である。 (A)工程S21を経た単結晶110を模式的に説明する断面図である。(B)は工程S22後の第1の部分120及び第2の部分130を模式的に説明する断面図である。 他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶の切断方法S30を説明するフローチャートである。 (A)分離工程S22を経た後の第1の部分120及び第2の部分130を模式的に説明する断面図である。(B)工程S33を経た後の第1の部分120’、及び、工程S34を経た後の第2の部分130’を模式的に説明する断面図である。 反射型の球面収差補正手段を用いる光学系の一例を模式的に説明する断面図である。 一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S100を説明するフローチャートである。 製造方法S100の各工程を断面図を用いて模式的に説明する図である。 他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S200を説明するフローチャートである。 製造方法S200の各工程を断面図を用いて模式的に説明する図である。 他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S300を説明するフローチャートである。 製造方法S300の各工程を断面図によって模式的に説明する図である。 他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S400を説明するフローチャートである。 製造方法S400の各工程を断面図によって模式的に説明する図である。 比較参考例1におけるレーザー照射後のAlN単結晶層1の断面の光学顕微鏡写真である。 参考例1におけるレーザー照射後のAlN単結晶層2の断面の光学顕微鏡写真である。 参考例2におけるレーザー照射後の積層体試料1の断面の光学顕微鏡写真である。 参考例3におけるレーザー照射後の積層体試料1の断面の光学顕微鏡写真である。 参考例4におけるレーザー照射後のAlN単結晶層4の断面の光学顕微鏡写真である。 (A)実施例1における照射工程後の積層体試料1をAlN単結晶層3の側から平面視で観察した光学顕微鏡写真である。(B)実施例1における照射工程後の積層体試料1の、集光点の軌跡と直交する断面の光学顕微鏡写真である。 実施例2における照射工程後の積層体試料1の、集光点の軌跡に直交する断面の光学顕微鏡写真である。
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図面は必ずしも正確な寸法を反映したものではない。また図では、一部の符号およびハッチングを省略することがある。本明細書においては特に断らない限り、数値A及びBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。また要素E及びEについて「E及び/又はE」という表記は「E若しくはE、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとし、要素E、…、E(Nは3以上の整数)について「E、…、EN-1、及び/又はE」という表記は「E、…、EN-1、若しくはE、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとする。
<1.III族窒化物単結晶の切断方法(1)>
図1は、一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶の切断方法S10(以下において「切断方法S10」又は単に「方法S10」ということがある。)を説明するフローチャートである。図1に示すように、切断方法S10は、照射工程S1と、分離工程S2とを有する。
(III族窒化物単結晶10)
図2(A)は、方法S10において切断されるIII族窒化物単結晶10(以下において単に「単結晶10」ということがある。)を模式的に説明する平面図であり、図2(B)は図2(A)のA-A断面図である。図2(A)及び(B)に示すように、単結晶10は、第1の面10a、及び、第1の面10aとは反対側の第2の面10bを有している。一の実施形態において、単結晶10は、組成式AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるIII族窒化物単結晶である。一の好ましい実施形態において、単結晶10は、組成式AlGa1-xN(0≦x≦1)で表されるIII族窒化物単結晶である。一の好ましい実施形態において、単結晶10はAlN単結晶またはGaN単結晶である。一の典型的な実施形態において、単結晶10はAlN単結晶である。単結晶10は、MOCVD法やHVPE法等の気相成長法により成長された単結晶であってもよく、PVT法により成長された単結晶であってもよい。
(照射工程S1)
照射工程S1(以下において単に「工程S1」ということがある。)は、III族窒化物単結晶10に対して透過性を有する波長のレーザービームLBを、第1の面10aに照射する工程である。レーザービームLBは、パルスレーザーであってもよく、CW(連続波)レーザーであってもよいが、光強度の観点からレーザービームLBとしてはパルスレーザーを好ましく用いることができる。
本明細書において、ある波長のレーザービームが単結晶に対して「透過性を有する」とは、当該波長(レーザービームがパルスレーザーである場合には、その中心周波数に対応する波長。)の光をコリメート光として当該単結晶に入射させた場合における、下記式(1)を満たす吸光係数βが20cm-1未満であることを意味する。
A=βL …(1)
(式(1)中、Aは吸光度を表し、βは吸光係数(単位:cm-1)を表し、Lは単結晶中の光路長(単位:cm)を表す。)
吸光度Aは下記式(2)で表される。
A=-log10(I/I) …(2)
(式(2)中、Iは透過光強度(単位:W/m)を表し、Iは入射光強度(単位:W/m)を表す。)
吸光係数の測定にあたっては、当該単結晶中における多光子吸収等の非線形光学現象が無視できる強度の入射光を用いるものとする。III族窒化物単結晶に対するそのような強度は例えば1W/m未満である。単結晶中の光路が2つ以上の異なる領域D、…、Dを通る場合には、当該波長のレーザービームが「単結晶に対して透過性を有する」とは、当該領域D、…、Dの吸光係数β、…、βがいずれも20cm-1未満であることを意味する。
そのようなレーザービームLBの波長(レーザービームがパルスレーザーである場合には、中心周波数に対応する波長。)は、単結晶10の吸収スぺクトルに表れる長波長側の吸収端よりも長い波長とすることができる。例えば単結晶10がAlN単結晶である場合には、レーザービームLBの波長は具体的には例えば210nm超1500nm以下とすることができる。そのような発光波長を有するレーザーの例としては、チタンサファイアレーザー、Nd:YVOレーザー、Nd:YAGレーザー(高調波レーザーを含む)等を挙げることができる。また例えば単結晶10がGaN単結晶である場合には、レーザービームLBの波長は具体的には例えば365nm超1500nm以下とすることができる。そのような発光波長を有するレーザーの例としては、チタンサファイアレーザー、Nd:YVOレーザー、Nd:YAGレーザー(高調波レーザーを含む)等を挙げることができる。
工程S1は、(ia)第1の面10aから所定の深さdにおいてレーザービームLBが集光するように、レーザービームLBを第1の面10aから単結晶10に入射させること、(ib)レーザービームLBの集光点FSと単結晶10とを、第1の面10aの面内方向に相対的に移動させること、及び、(ic)集光点FSの軌跡に沿った改質領域RM、及び、該改質領域RMから伸長するクラックCを、単結晶10中に形成させることを含む。
図3(A)は、工程S1におけるレーザー照射の態様を模式的に説明する断面図であり、図2(B)に対応する図である。図3(B)は、図3(A)におけるレーザー照射によって生じる改質領域RM及びクラックC1を模式的に説明する断面図である。図の可読性のため、図3(A)及び図3(B)においては単結晶10の断面にハッチングを施していない。以下においても同様に、図の可読性のためハッチングを省略することがある。
図3(A)に示すように、レーザービームLBは、レンズL1及び球面収差補正プレートCP1を経て第1の面10aから単結晶10内部に入射し、第1の面10aから所定の深さdに位置決めされた集光点FSにおいて集光した後、第2の面10bから単結晶10外部に出射する(上記(ia))。レンズL1によりレーザービームLBが集光され、球面収差補正プレートCP1によりレンズL1の球面収差が補正される。球面収差補正プレートCP1としては、球面収差補正用位相パターンを備える公知の球面収差補正プレートや、球面収差補正用位相パターンを表示可能な透過型液晶空間光位相変調器を特に制限なく用いることができる。なお、後述するように、レーザービームLBのエネルギー(レーザービームLBとしてパルスレーザーを用いる場合にはそのパルスエネルギー(1パルスあたりのエネルギー)。)を時間的に変調してもよい。
このレーザー照射により、図3(B)に示すように、単結晶10中の集光点FS近傍に、改質領域RM、及び、該改質領域RMから伸長するクラックC1が形成される(上記(ic))。典型的な実施形態において、改質領域RMは通常、先細の形状を有しており、クラックC1は通常、レーザービームLBの光軸(照射方向:図3(A)(B)紙面上下方向)に交差する面方向に伸長する。原理によって限定されることを意図するものではないが、改質領域RM及びクラックC1は、レーザービームLBの照射により、集光点FS近傍において単結晶10が局所的に急激に加熱されることにより形成されると考えられる。集光点FS近傍における急激な局所的加熱は、集光によって光強度が局所的に高くなることにより、多光子イオン化(又はトンネルイオン化)及びそれに引き続いて発生するアバランシェイオン化により集光点FS近傍にプラズマ電子が発生することに起因すると考えられる。またクラックC1が改質領域RMからレーザービームLBの光軸に交差する面方向に伸長することは、集光点FS近傍における温度勾配が面内方向(レーザービームLBの光軸に直交する方向)には略等方的になり、したがって熱応力も面内方向には略等方的になること、及び、プラズマ電子が存在する領域は集光点FS近傍の多光子イオン化(又はトンネルイオン化)が起きた点(開始点)から光源方向(図3(A)紙面上側)に向けてレーザー光のエネルギーを吸収しつつ略柱状または略円錐状に伸長するため、集光点FS近傍では光軸方向に大きな熱応力勾配が発生すること、に起因すると考えられる。
クラックC1の確実な形成をより容易にする観点からは、第1の面10aは、c面、又は、c面からm軸および/またはa軸方向に傾斜した傾斜c面であることが好ましい。該傾斜c面のm軸方向への傾斜角は好ましくは0.00°以上1.00°以下、a軸方向への傾斜角は好ましくは0.00°以上1.00°以下(ただしm軸方向への傾斜角およびa軸方向への傾斜角のうち少なくとも一方は0.00°超)である。ただし、上記の通りクラックC1はレーザービームLBの光軸と交差する面方向に伸長するため、第1の面10aは、c面や傾斜c面以外の面、例えばa面やm面であってもよい。
工程S1においては、レーザービームLBの集光点FSが通る位置において、単結晶10中のSi(ケイ素)濃度が5.0×1018atom/cm以下である必要がある。該Si濃度は好ましくは2.0×1018atom/cm以下であり、一の実施形態において7.0×1017atom/cm以下であり得る。各集光点FSの位置における単結晶10中のSi濃度が上記上限値以下であることにより、各集光点FSの近傍に改質領域RMおよび該改質領域RMから伸長するクラックC1を確実に形成させることが可能になる。原理によって限定されることを意図するものではないが、III族窒化物単結晶中、III族元素に代えてSi原子が入ったサイトにおいて熱応力が緩和されることにより、急激な局所的加熱によるクラック発生が抑制されると考えられる。上記Si濃度の下限値は特に制限されるものではないが、例えば1.0×1014atom/cm以上であり得る。
工程S1において、レーザービームLBの集光点FSが通る位置における単結晶10中のC(炭素)、O(酸素)、及びSiの合計濃度は、好ましくは2.5×1019atom/cm未満、より好ましくは1.0×1019atom/cm未満である。各集光点FSの位置におけるC、O、及びSiの合計濃度が上記上限値以下であることにより、各集光点FSの近傍に改質領域RMおよび該改質領域RMから伸長するクラックC1を確実に形成させることがより容易になる。上記C、O、Siの合計濃度の下限値は特に制限されるものではないが、例えば1.0×1015atom/cm以上であり得る。
レーザービームLBを連続的または断続的に照射しながら、集光点FSを単結晶10に対して相対的に第1の面10aの面内方向に連続的または断続的に移動させること(上記(ib))により、集光点FSの軌跡に沿って、一体に連続した又は複数の改質領域RM、及び改質領域RMから伸長するクラックC1が形成される(上記(ic))。このようにして複数の位置から伸長したクラックC1、C1、…が分離の起点として作用する。集光点FSを単結晶10に対して相対的に移動させるにあたっては、単結晶10を固定してレーザービームLBの光軸を移動してもよく、レーザービームLBの光軸を固定して単結晶10を移動してもよく、単結晶10及びレーザービームLBの光軸の両方を移動してもよい。ただし、レーザービームLBの光軸のぶれを抑制する観点からは、レーザービームLBの光軸を固定して、単結晶10を移動する態様を好ましく採用できる。単結晶10を移動するにあたっては、例えばX-Yステージ上に単結晶10を配置する態様を好ましく採用できる。
図4(A)は、工程S1における集光点FSの移動の形態の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。図4(B)は、図4(A)のB-B断面図である。図4(C)は、図4(A)のC-C断面図である。図4(A)~(C)においては、図面の可読性のため、一部の引き出し線および符号、ならびにハッチングを省略している。図4(A)は、集光点FSの深さdを保ったまま、矢印Aの向きに集光点FSを一定間隔で移動してはレーザー照射を行うことを繰り返した場合における集光点FSの軌跡(分布)を、単結晶10の平面図に重ねて示している。この場合、図4(B)に示すように、レーザー照射が行われた位置に対応して、すなわち、各集光点の近傍に、改質領域RM、RM、…、及び各改質領域RMから伸長するクラックC1、C1、…、が形成される。複数の異なる位置から伸長するクラックC1、C1、…、が相互に近接して形成されることにより、後述する分離工程S2における分離が容易になる。
図4(A)では、矢印A方向における集光点FSの軌跡が離散的である例を挙げたが、分離工程S2における分離をより容易にする観点からは、集光点FSの移動は連続的に行うことが好ましい。すなわち、連続的にレーザー照射を行いながら、集光点FSを単結晶10に対して連続的に移動することが好ましい。本明細書において「連続的にレーザー照射を行う」とは、連続的にCWレーザー照射を行う場合だけでなく、連続的にパルスレーザー照射を行う(レーザー光源のパルス発振を連続的に行い、その出力光を照射する)場合も包含する概念である。一般にパルスレーザーは短時間の発光を極めて高速に繰り返し、その発光間隔は集光点FS及び/又は単結晶10の巨視的な移動速度に対して十分短いので、連続的にパルスレーザー照射を行いながら集光点FSを単結晶10に対して移動した際の集光点FSの軌跡は連続であるものとみなせる。図5(A)は、そのような集光点FSの移動の形態の他の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。図5(B)は、図5(A)のB-B断面図である。図5(C)は、図5(A)のC-C断面図である。図5(D)は、図5(A)のD-D矢視図である。図5(A)~(D)においては、図面の可読性のため、一部の引き出し線および符号、ならびにハッチングを省略している。図5(A)は、矢印Aの方向に移動された集光点FSの軌跡を、太線として単結晶10の平面図に重ねて示している。図5(A)においては、レーザー照射を行いながら、単結晶10に対して矢印Aの方向に集光点FSを連続的に移動している。すなわち、集光点FSが単結晶10内部を第1の面10の面内方向に直線的に走査するようにレーザービームLBの光軸を単結晶10に対して連続的に移動しながら、連続的にレーザー照射を行っている。集光点FSを単結晶に対して連続的に移動する速度は、例えば1~1000μm/sとすることができる。
分離工程S2における分離を容易にする観点からは、クラックC1、C1、…は、面内方向の略全域にわたって分布するように形成されることが好ましい。図6(A)は、工程S1におけるそのような集光点FSの移動の形態の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。図6(A)は、矢印Aの方向に移動された集光点FSの軌跡(分布)を、単結晶10の平面図に重ねて示している。図6(A)においては、第1の面10a上に一定間隔の格子点を設定し、各格子点が集光点FSとなるようにレーザー照射を行っている。隣接する格子点の間の間隔Wsは、直線状に形成された改質領域RMの片側からクラックC1が第1の面10aの面内方向に伸長する幅Wc(図5(C)参照)に対して、Ws≦2Wcを満たすように選択される。
クラックC1の伸長幅Wcは、例えば図5(A)に示すように集光点FSで単結晶10内部を直線状に走査した試料について、集光点FSの軌跡に交差する断面(図5(C))を光学顕微鏡で観察することにより知ることができる。なお、図5(A)に示すように集光点FSの軌跡が単結晶10の周縁部に交差するように走査を行うと、単結晶10の側面(図5(D)すなわち図5(A)のD-D矢視図)には、断面(図5(C))と同様に改質領域RM及びクラックC1が表れる。したがって、クラックC1の伸長幅Wcは、例えば図5(A)に示すように集光点FSの軌跡が単結晶10の周縁部に交差するように集光点FSで単結晶10内部を走査した試料の側面(端面)を光学顕微鏡で観察することによっても知ることができる。
図6(B)は、工程S1における集光点FSの移動の形態の他の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。図6(B)は、矢印Bの方向に移動された集光点FSの軌跡を、太線として単結晶10の平面図に重ねて示している。図6(B)においては、集光点FSが単結晶10内部を第1の面10の面内方向に直線状に走査するようにレーザービームLBの光軸を移動しながら、連続的にレーザー照射を行っている。そして1本の直線の走査が終わると、直前に走査した直線から一定の間隔Wsだけ離れた次の直線の走査を行っている。図6(A)の場合と同様に、隣接する走査線の間の間隔Wsは、直線状に形成された改質領域RMの片側からクラックC1が第1の面10aの面内方向に伸長する幅Wc(図5(C)参照)に対して、Ws≦2Wcを満たすように選択される。
図6(A)及び(B)では、集光点FSが単結晶10内部を離散的または連続的に直線状に移動する例を示したが、集光点FSは曲線状に移動してもよい。図7(A)は、そのような集光点FSの移動の形態の他の一例を、単結晶10の平面図を用いて模式的に説明する図である。図7(B)は、図7(A)のB-B断面図である。図7(A)は、集光点FSの軌跡を、太線として単結晶10の平面図に重ねて示している。図7においては、集光点FSが単結晶10内部を第1の面10の面内方向に同心円状に走査するようにレーザービームLBの光軸を移動しながら、連続的にレーザー照射を行っている。そして1つの円の走査が終わると、直前に走査した円から一定の間隔Wsだけ離れた次の円の走査を行っている。隣接する走査線の間隔Wsは、直線状に形成された改質領域RMの片側からクラックC1が第1の面10aの面内方向に伸長する幅Wc(図5(C)参照)に対して、Ws≦2Wcを満たすように選択される。集光点FSをこのように曲線的に移動することによっても、図7(B)に示すように複数の異なる位置から伸長するクラックC1、C1、…、が相互に近接して形成される。
図7では、集光点FSが単結晶10内部を同心円状に移動する例を示したが、集光点FSを曲線状に移動する形態は当該形態に限定されるものではない。例えば集光点FSを螺旋状に移動することも可能である。集光点FSの軌跡の形状如何に関わらず、第1の面10aの平面視透視(図6(A)及び(B)、並びに図(7)参照。)において第1の面10a内のいずれの位置についても距離Wc以内にいずれかの集光点FSが存在するように照射を行うことにより、クラックC1、C1、…を第1の面10aの面内方向の略全域にわたって分布するように形成させることができる。
レーザービームLBがパルスレーザーであって、1パルスあたりのエネルギー(パルスエネルギー)を時間的に変調しない場合には、パルスエネルギーは好ましくは1~100μJ、より好ましくは5~90μJであり、一の実施形態において10~80μJであり得る。パルスエネルギーが上記下限値以上であることにより、集光点FS近傍に改質領域RMおよびクラックC1をより確実に形成させることが可能になる。またパルスエネルギーが上記上限値以下であることにより、改質領域RMの厚みを適正な範囲内に留めることが容易になる。パルス幅は例えば10fs~100psとすることができ、パルスの繰り返し周波数は例えば10Hz~1MHzとすることができる。
集光点FSの軌跡が離散的である場合、すなわち例えば図6(A)に示すようにレーザービーム照射中は集光点FSを単結晶10に対して固定し、1つの集光点の照射が終了した後に集光点を移動して次の集光点の照射を行う場合には、各集光点におけるレーザービームLBの積算照射量は好ましくは0.1~100mJ、より好ましくは1~50mJである。各集光点の積算照射量が上記下限値以上であることにより、集光点FS近傍に改質領域RMおよびクラックC1をより確実に形成させることが可能になる。また各集光点の積算照射量が上記上限値以下であることにより、改質領域RMの厚みを適正な範囲内に留めることが容易になる。
集光点FSの軌跡が連続的である場合、すなわち例えば図6(B)や図7(A)に示すようにレーザービームLBを照射しながら集光点FSを単結晶10に対して相対的に移動する場合であって、レーザービームLBとしてパルスレーザーを用いる場合には、レーザービームLBの平均出力P(W)(P=Ef;Eはパルスエネルギー(J)、fはパルスの繰り返し周波数(Hz)を表す。)の、集光点FSの移動速度v(m/s)に対する比(P/v)が、1.0×10~1.0×10J/mであることが好ましく、1.0×10~1.0×10J/mであることがより好ましい。比P/vが上記下限値以上であることにより、集光点FS近傍に改質領域RMおよびクラックC1をより確実に形成させることが可能になる。また比P/vが上記上限値以下であることにより、改質領域RMの厚みを適正な範囲内に留めることが容易になる。またレーザービームLBのパルスエネルギーE(J)のパルス幅τ(s)に対する比E/τ(W)の、集光点FSの移動速度v(m/s)に対する比E/vτが、1.0×10~1.0×1017J/mであることが好ましく、1.0×1010~1.0×1015J/mであることがより好ましい。比E/vτが上記下限値以上であることにより、集光点FS近傍に改質領域RMおよびクラックC1をより確実に形成させることが可能になる。また比E/vτが上記上限値以下であることにより、改質領域RMの厚みを適正な範囲内に留めることが容易になる。
一の好ましい実施形態において、レーザービームLBの照射中に、レーザービームLBのエネルギー(レーザービームLBがパルスレーザーである場合にはパルスエネルギー。以下において単に「レーザーエネルギー」ということがある。)を時間的に変調することができる。原理によって限定されることを意図するものではないが、レーザービームの照射中、プラズマ電子の存在領域は、プラズマ電子と光電場との相互作用により移動し得る。例えばレーザーにより誘起されるプラズマ電子の電子温度を1eV、電子密度を1018cm-3と仮定すると、デバイ長は10nmのオーダとなる。単結晶10中の音速を10cm/sと仮定すると、プラズマ電子の存在領域が移動する時間スケールは10psのオーダとなる。レーザービームLBとして例えばパルス幅1ps未満のパルスレーザー(例えばフェムト秒レーザー。)を用いる場合には、プラズマ電子の存在領域が移動する時間スケールに対してレーザービームLBのパルス幅が十分短いので、プラズマ電子の存在領域の移動を無視して温度上昇を考えることができる。これに対して、プラズマ電子の存在領域が移動する時間スケールに対してレーザービームLBの時間スケールが無視できない場合には、物質の加熱とプラズマ電子の存在領域の移動とが同時に起こる。さらに、プラズマ電子による逆制動放射および/または共鳴吸収に由来してレーザー光の吸収および/または反射も起こるため、吸収係数の温度依存性により集光点FS近傍から離れた箇所に光励起領域(高温領域)が発生し、改質領域RM及びクラックC1の形状が不均一になる場合や、本来意図されない位置に改質領域RM及びクラックC1が形成される場合がある。レーザーエネルギーを時間的に変調することにより、このような温度変化に伴う光励起領域の移動現象を抑制することが可能になるので、改質領域RM及びクラックC1をより均一に形成すること、及び、意図されない位置における改質領域RM及びクラックC1の形成を低減ないし抑制することが可能になる。
レーザーエネルギーを時間的に変調することは、パルス幅1ps以上のパルスレーザー(例えばピコ秒レーザー。)を用いる場合において特に好ましい。これらの場合においては物質の加熱とプラズマ電子の存在領域の移動とが同時に起こり得るからである。しかしながら、プラズマ電子による逆制動放射および/または共鳴吸収に由来するレーザー光の吸収および/または反射はパルス幅1ps未満のパルスレーザー(例えばフェムト秒レーザー。)を用いる場合においても起きるので、レーザーエネルギーを時間的に変調することはパルス幅1ps未満のパルスレーザーを用いる場合においても好ましい。
レーザーエネルギーを時間的に変調することは、集光点FSを単結晶10に対して連続的に移動させる(集光点FSの軌跡が連続的である)場合に特に好ましい。集光点FSを単結晶10に対して連続的に移動させる(集光点FSの軌跡が連続的である)場合には、現在の集光点FS近傍における光励起領域の形成が、隣接する既に加熱された領域の影響を受けやすいからである。しかしながら、上記説明した温度変化に伴う光励起領域の移動現象は、集光点FSを単結晶10に対して離散的に移動させる場合にも起き得るので、レーザーエネルギーを時間的に変調することは集光点FSを単結晶10に対して断続的に移動させる(集光点FSの軌跡が離散的である)場合においても好ましい。
レーザーエネルギーを時間的に変調することは、レーザーエネルギーを時間的に周期的に変化させることにより好ましく行うことができる。例えば、レーザー発振器に設けられた音響光学素子(不図示)に、時間的に周期的に変動する電圧(変動電圧)を印加することにより、レーザーエネルギーを時間的に周期的に変化させることができる。変動電圧源としては、任意波形発生器(シグナルジェネレータ)、公知の発振回路(例えばCR発振回路、LC発振回路、リングオシレータ等の帰還型発振回路;及び、非安定マルチバイブレータ、ブロッキング発振回路等の弛張型発振回路等。)等の公知の変動電圧源を特に制限なく用いることができる。レーザーエネルギーを時間的に変調する際の波形は特に制限されない。図8(A)~(C)は、時間的に変調されたレーザーエネルギーの波形を模式的に説明する図である。レーザーエネルギーは、例えば図8(A)に示すように正弦波状に変調されてもよく、また例えば図8(B)に示すように三角波状に変調されてもよく、また例えば図8(C)に示すように方形波状に変調されてもよい。また例えば、飽和正弦波、飽和三角波、鋸波等の他の波形でレーザーエネルギーが時間的に変調されてもよい。一の実施形態において、レーザーエネルギーの時間的変調は、レーザーエネルギーを最大値と最小値との間で周期的に変化させることにより好ましく行うことができる。レーザーエネルギーの最小値は例えば最大値の1/2倍以下又はゼロとすることができる。
レーザーエネルギーを時間的に周期的に変化させる周波数(変調周波数)は特に制限されるものではないが、例えば好ましくは0.01~100kHz、より好ましくは0.05~50kHzとすることができ、一の実施形態において0.1~10kHzとすることができる。変調周波数が上記下限値以上であることにより、温度変化に伴う光励起領域の移動現象を抑制して、改質領域RM及びクラックC1をより均一に形成すること、及び、意図されない位置における改質領域RM及びクラックC1の形成を低減ないし抑制することが容易になる。また変調周波数が上記上限値以下であることにより、変調領域RM及びクラックC1を確実に形成させることが容易になる。
レーザービームLBとしてパルスレーザーを用いる場合、レーザーエネルギーの変調周波数はレーザーパルスの繰り返し周波数の1/2倍以下であることが好ましく、例えば好ましくはレーザーパルスの繰り返し周波数の1/3倍以下、より好ましくは1/4倍以下、さらに好ましくは1/5倍以下とすることができ、一の実施形態において1/10倍以下であり得る。レーザーエネルギーの変調周波数がレーザーパルスの繰り返し周波数に対して十分低いことにより、温度変化に伴う光励起領域の移動現象を抑制して、改質領域RM及びクラックC1をより均一に形成すること、及び、意図されない位置における改質領域RM及びクラックC1の形成を低減ないし抑制することが容易になる。同様の観点から、レーザーパルスの繰り返し周波数は、レーザーエネルギーに時間的変調をかける連続波形(例えば正弦波、三角波、方形波等。以下において「変調波形」ということがある。)のn+1次以上の高調波成分の強度がいずれも該変調波形の基本波の強度の15%未満、より好ましくは10%未満となる最小の整数nについて、該変調波形の基本波の周波数の2n倍以上であることが好ましい。
レーザービームLBとしてパルスレーザーを用い、レーザーエネルギーを時間的に変調する場合、平均パルスエネルギー(変調1周期分(図8(A)~(C)参照。)のパルスエネルギーの平均値)は好ましくは1~100μJ、より好ましくは5~90μJであり、一の実施形態において10~80μJであり得る。平均パルスエネルギーが上記下限値以上であることにより、集光点FS近傍に改質領域RMおよびクラックC1をより確実に形成させることが可能になる。また平均パルスエネルギーが上記上限値以下であることにより、改質領域RMの厚みを適正な範囲内に留めることが容易になる。
(分離工程S2)
分離工程S2(以下において単に「工程S2」ということがある。)は、照射工程S1の後、上記クラックC1、C1、…を起点として、単結晶10を、第1の面10aを有する板状体である第1の部分20と、第2の面10bを有する第2の部分30とに分離する工程である。
図9は、工程S2の一態様を説明する図である。図9(A)は、工程S1を経た単結晶10を模式的に説明する断面図であり、図9(B)は工程S2後の第1の部分20及び第2の部分30を模式的に説明する断面図である。図9(A)には、改質領域RM、RM、…、及び該改質領域から伸長するクラックC1、C1、…が表れている。この単結晶10に対して図9(A)紙面上下方向に引っ張り力を加えることにより、クラックC1を起点として単結晶10を破断させ、単結晶10を、第1の面10aを有する第1の部分20と、第2の面10bを有する第2の部分30とに分離することができる(図9(B))。図9(B)において、第1の部分20の分離面(切断面)20c、及び、第2の部分30の分離面(切断面)30cには、改質領域RMが表れている。
図9(C)は、工程S2における引っ張り力の印加を説明する図である。工程S2において、単結晶10に対して引っ張り力を加えることは、例えば、第1の面10a及び第2の面10bにそれぞれ(例えば接着剤や吸盤等により)部材41、42を固定し、該部材41、42を反対方向に引っ張る(矢印F)ことにより行うことができる。部材41及び42に逆方向の引っ張り力を加えることは、部材41を固定して部材42を駆動することにより行ってもよく、部材42を固定して部材41を駆動することにより行ってもよく、部材41及び部材42の両方を駆動することにより行ってもよい。単結晶10に対して引っ張り力を加えることにより、単結晶10内部に引っ張り応力を生じさせ、クラックC1を起点として単結晶10を破断させることができる。
上記説明では、単結晶に引っ張り力を加えることによりクラックC1を起点として単結晶10を破断させる形態を例に挙げたが、分離工程S2は当該形態に限定されない。例えば、単結晶10にせん断力を加えることによりクラックC1を起点として単結晶10を破断させることも可能である。図10は、工程S2におけるせん断力の印加を説明する図である。工程S2において単結晶10に対してせん断力を加えることは、例えば、第1の面10aに当接させた部材41と、第2の面10bに当接させた部材42とで単結晶10を挟みつけながら、部材41及び42に単結晶10との接触面における垂直抗力に交差する方向であって且つ逆方向の引っ張り力(矢印F)を加えることにより行うことができる。部材41及び42に逆方向の引っ張り力を加えることは、部材41を固定して部材42を駆動することにより行ってもよく、部材41を固定して部材42を駆動することにより行ってもよく、部材41及び42の両方を駆動することにより行ってもよい。単結晶10に対してせん断力を加えることにより、単結晶10内部にせん断応力を生じさせ、クラックC1を起点として単結晶10を破断させることができる。
また例えば、単結晶10にねじり力を加えることによりクラックC1を起点として単結晶10を破断させることも可能である。図11は、工程S2におけるねじり力の印加を説明する図である。工程S2において単結晶10に対してねじり力を加えることは、例えば、第1の面10aに当接させた部材41と、第2の面10bに当接させた部材42とで単結晶10を挟みつけながら、部材41及び42に逆方向のトルク(矢印N)を加えることにより行うことができる。部材41及び42に逆方向のトルクを加えることは、部材41を固定して部材42を駆動することにより行ってもよく、部材41を固定して部材42を駆動することにより行ってもよく、部材41及び42の両方を駆動することにより行ってもよい。単結晶10に対してねじり力を加えることにより、単結晶10内部にせん断応力を生じさせ、クラックC1を起点として単結晶10を破断させることができる。
また例えば、単結晶10内部に熱応力を発生させることによりクラックC1を起点として単結晶10を破断させることも可能である。例えば、レーザー照射後の単結晶10を単結晶10と反応しないガス(例えば窒素、アルゴン、水素、酸素、二酸化炭素、アンモニア、又はそれらの混合ガス等。)の雰囲気下で100~1800℃に加熱することにより、単結晶10内部に熱応力を発生させ、クラックC1を起点として単結晶10を破断させることができる。
工程S1及びS2を経ることにより、切断方法S10が完了する。切断方法S10は、ワイヤーソウ等の刃によって単結晶10を切断するのではなく、レーザー照射によって単結晶10中に生じさせたクラックC1を起点として単結晶10を破断させるので、切断方法S10によれば、切断により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能である。
<2.III族窒化物単結晶の切断方法(2)>
図12は、他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶の切断方法S20(以下において「切断方法S20」又は単に「方法S20」ということがある。)を説明するフローチャートである。図12に示すように、切断方法S20は、照射工程S21と、分離工程S22とを有する。
(III族窒化物単結晶110)
図13(A)は、方法S20において切断されるIII族窒化物単結晶110(以下において単に「単結晶110」ということがある。)を模式的に説明する平面図であり、図13(B)は図13(A)のA-A断面図である。図13(A)及び(B)に示すように、単結晶110は、第1の面110a、及び、第1の面110aとは反対側の第2の面110bを有している。一の実施形態において、単結晶110は、組成式AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるIII族窒化物単結晶である。一の好ましい実施形態において、単結晶110は、組成式AlGa1-xN(0≦x≦1)で表されるIII族窒化物単結晶である。一の好ましい実施形態において、単結晶110はAlN単結晶またはGaN単結晶である。一の典型的な実施形態において、単結晶110はAlN単結晶である。単結晶110は、MOCVD法やHVPE法等の気相成長法により成長された単結晶であってもよく、PVT法により成長された単結晶であってもよい。また図13(B)に示すように、単結晶110は、第1の面110aを有する第1の層111と、第2の面110bを有する第2の層112とを有している。第1の層111と第2の層112とは、不純物濃度、具体的にはC、O、及びSiの合計濃度において異なっている。第1の層111と第2の層112とは、同一の組成式で表される単結晶層であってもよく、異なる組成式で表される単結晶層であってもよい。一の典型的な実施形態において、第1の層111と第2の層112とは、同一の組成式で表される単結晶層である。第1の層111と第2の層112とは、同一の成長方法により成長された単結晶層であってもよく、異なる成長方法により成長された単結晶層であってもよい。
(照射工程S21)
照射工程S21(以下において「工程S21」ということがある。)は、単結晶110に対して透過性を有する波長のレーザービームLBを、第1の面110aに照射する工程である。レーザービームLBの詳細については、切断方法S10に関連して上記説明した通りである。工程S21は、(ia)第1の面110aから所定の深さdにおいてレーザービームLBが集光するように、レーザービームLBを第1の面110aから単結晶110に入射させること、(ib)レーザービームLBの集光点FSと単結晶110とを、第1の面110aの面内方向に相対的に移動させること、及び、(ic)集光点FSの軌跡に沿った改質領域RM、及び、該改質領域RMから伸長するクラックCを、単結晶110中に形成させることを含む。上記(ia)(ib)及び(ic)の詳細については、単結晶10に代えて単結晶110が用いられること以外は、切断方法S10に関連して上記説明した通りである。
図14(A)は、工程S21におけるレーザー照射の態様を模式的に説明する断面図であり、図3(A)に対応する図である。図14(B)は、図14(A)におけるレーザー照射によって生じる改質領域RM及びクラックC1を模式的に説明する断面図であり、図3(B)に対応する図である。図14(A)に示すように、工程S21において集光点FSは、第1の層111中に位置決めされる。
図14(A)に示すように、レーザービームLBは、レンズL1及び球面収差補正プレートCP1を経て第1の面110aから単結晶110内部に入射し、第1の層111中に位置決めされた集光点FS(第1の面110aからの深さd)において集光した後、第2の面110bから単結晶110外部に出射する(上記(ia))。このレーザー照射により、図14(B)に示すように、単結晶110中の集光点FS近傍に、改質領域RM、及び、該改質領域RMから伸長するクラックC1が形成される(上記(ic))。典型的な実施形態において、改質領域RMは通常、先細の形状を有しており、クラックC1は通常、レーザービームLBの光軸(照射方向:図3(A)(B)紙面上下方向)に交差する方向に伸長する。
クラックC1の確実な形成をより容易にする観点からは、第1の面110aは、c面、又は、c面からm軸および/またはa軸方向に傾斜した傾斜c面であることが好ましい。該傾斜c面のm軸方向への傾斜角は好ましくは0.00°以上1.00°以下、a軸方向への傾斜角は好ましくは0.00°以上1.00°以下(ただしm軸方向への傾斜角およびa軸方向への傾斜角のうち少なくとも一方は0.00°超)である。ただし、上記の通りクラックC1はレーザービームLBの光軸と交差する面方向に伸長するため、第1の面110aは、c面や傾斜c面以外の面、例えばa面やm面であってもよい。
レーザービームLBを連続的または断続的に照射しながら、集光点FSを単結晶110に対して相対的に第1の面110aの面内方向に連続的または断続的に移動させること(上記(ib))により、集光点FSの軌跡に沿って、一体に連続した又は複数の改質領域RM、及び改質領域RMから伸長するクラックC1が形成される(上記(ic))。このようにして複数の位置から伸長したクラックC1、C1、…が分離の起点として作用する。
切断方法S10に関連して上記説明したように、第1の層111中のSi濃度は5.0×1018atom/cm以下である必要がある。第1の層111中のSi濃度は好ましくは2.0×1018atom/cm以下であり、一の実施形態において7.0×1017atom/cm以下であり得る。各集光点FSの位置における単結晶10中のSi濃度が上記上限値以下であることにより、各集光点FSの近傍に改質領域RMおよび該改質領域RMから伸長するクラックC1を確実に形成させることが可能になる。第1の層111中のSi濃度の下限値は特に制限されるものではないが、例えば1.0×1014atom/cm以上であり得る。第2の層112中のSi濃度は特に制限されるものではなく、第1の層111中のSi濃度以下であってもよいが、第1の層111中のSi濃度より高いことが好ましく、好ましくは1.0×1017atom/cm超である。第2の層112中のSi濃度が第1の層111中のSi濃度よりも高いことにより、第1の層111と第2の層112との界面近傍に集光点FSを位置決めした場合であっても、第1の層111に選択的にクラックC1を発生させることが容易になる。第2の層112中のSi濃度の上限値は特に制限されるものではないが、例えば1.0×1020atom/cm以下であり得る。
単結晶110において、集光点FSが位置決めされる第1の層111中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)は、第2の層112中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)より低くなっている。集光点が位置決めされる第1の層111中のC、O、及びSiの合計濃度が第2の層112中のC、O、及びSiの合計濃度より低いことにより、第1の層111と第2の層112との界面近傍に集光点FSを位置決めした場合であっても、第1の層111に選択的にクラックC1を発生させることが可能になる。第1の層111中のC、O、及びSiの合計濃度は、好ましくは2.5×1019atom/cm未満、より好ましくは1.0×1019atom/cm未満である。第1の層111中のC、O、及びSiの合計濃度が上記上限値以下であることにより、各集光点FSの近傍に改質領域RMおよび該改質領域RMから伸長するクラックC1を確実に形成させることがより容易になる。第1の層111中のC、O、Siの合計濃度の下限値は特に制限されるものではないが、例えば1.0×1015atom/cm以上であり得る。第2の層112中のC、O、及びSiの合計濃度は、第1の層111中のC、O、及びSiの合計濃度より高い限りにおいて特に制限されるものではないが、例えば1.0×1018atom/cm以上であり得る。第2の層112中のC、O、及びSiの合計濃度が上記下限値以上であることにより、第1の層111と第2の層112との界面近傍に集光点FSを位置決めした場合であっても、第1の層111に選択的にクラックC1を発生させることがより容易になる。第2の層112中のC、O、及びSiの合計濃度の上限値は特に制限されるものではないが、例えば1.0×1020atom/cm以下であり得る。
上記範囲内の不純物濃度を有する第1の層111は、例えばHVPE法により成長することができる。また上記範囲内の不純物濃度を有する第2の層112は、例えばPVT法により成長することができる。
工程S21における集光点FSの移動の形態については、切断方法S10に関連して上記説明した通りである。
(分離工程S22)
分離工程S22(以下において単に「工程S22」ということがある。)は、照射工程S21の後、上記クラックC1、C1、…を起点として、単結晶110を、第1の面110aを有する板状体である第1の部分120と、第2の面110bを有する第2の部分130とに分離する工程である。
図15(A)は、工程S21を経た単結晶110を模式的に説明する断面図であり、図15(B)は工程S22後の第1の部分120及び第2の部分130を模式的に説明する断面図である。図15(A)には、改質領域RM、RM、…、及び該改質領域から伸長するクラックC1、C1、…が表れている。切断方法S10に関連して上記説明したように、この単結晶110に外力を加えて単結晶110内部に引っ張り応力またはせん断応力を生じさせることにより、クラックC1を分離起点として単結晶110を破断させ、単結晶110を、第1の面10aを有する第1の部分120と、第2の面10bを有する第2の部分130とに分離することができる(図15(B))。図15(B)において、第1の部分120の分離面(切断面)120c、及び、第2の部分130の分離面(切断面)130cには、改質領域RMが表れている。図15(B)に示すように、第1の部分120は第1の層111の一部111’からなる。第2の部分130は、第1の層111の他の一部111''(以下において「残留層111''」ということがある。)と、第2の層112とを備える。
工程S21及びS22を経ることにより、切断方法S20が完了する。このような切断方法S20によっても、切断により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能である。また切断方法S20においては、照射工程S21において第1の層111に選択的にクラックC1が形成されるので、分離工程S22において第2の部分130の表面に第1の層111の一部(残留層)111''を安定的に残すことが可能である。このような切断方法S20によれば、第2の部分130の分離面130cを研磨した後、該分離面上に新たなIII族窒化物単結晶層を成長させる場合に、第2の層112の厚さを維持したまま該新たなIII族窒化物単結晶層の成長を行うことが容易になる。
<3.III族窒化物単結晶の切断方法(3)>
上記説明では、分離工程S22の後に第1の部分120の分離面120c及び第2の部分130の分離面130cを研磨しない形態の切断方法S20を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。図16は、他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶の切断方法S30(以下において「切断方法S30」又は単に「方法S30」ということがある。)を説明するフローチャートである。図16に示すように、切断方法S30は、切断工程S21及び分離工程S22に加えて、研磨工程S33をさらに有する点において、上記説明した切断方法S20(図12参照)と異なっている。切断工程S21及び分離工程S22については、切断方法S20に関連して上記説明した通りである。
(研磨工程S33)
研磨工程S33(以下において単に「工程S33」ということがある。)は、分離工程S22の後、第1の部分120の分離面120c及び/又は第2の部分130の分離面130cを研磨する工程である。図17(A)は、分離工程S22を経た後の第1の部分120及び第2の部分130を模式的に説明する断面図である。図17(B)は、工程S33を経た後の第1の部分120’及び第2の部分130’を模式的に説明する断面図である。工程S33において、第1の部分120の分離面120cを研磨することにより、第1の部分120の分離面120cに表れていた改質領域RMが取り除かれ、研磨面120c’となる。また第2の部分130の分離面130cを研磨することにより、第2の部分130の分離面130cに表れていた改質領域RMが取り除かれ、研磨面130c’となる。
工程S33における研磨の条件としては、公知の条件を特に制限なく採用することができる。改質領域RMを取り除くため、工程S33における研磨は化学的機械的研磨(CMP)により完了することが好ましい。CMPには公知の方法を採用することができる。研磨剤としては、シリカ、アルミナ、セリア、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド等の材質を含む研磨剤を用いることができる。また、研磨剤の性状は、アルカリ性、中性、または酸性のいずれでもよい。研磨速度を高めるために酸化剤等の添加剤を研磨剤に配合してもよい。研磨パットとしては市販のものを使用することができ、その材質および硬度は特に制限されない。
工程S33における研磨は、例えばすべてCMPにより行ってもよい。また例えば、鏡面研磨ラッピング等の他の研磨手段による研磨の後にCMPによる研磨を行ってもよい。
第1の部分120の分離面120c近傍に残留する改質領域RMの厚み、及び、第2の部分130の分離面130c近傍に残留する改質領域RMの厚みは、ワイヤーソウによる切断により生じるダメージ層の厚みよりも薄いため、工程S33における研磨量は、ワイヤーソウによる切断後の研磨量よりも少なく済ませることができる。工程S33における研磨量は、厚さにして例えば10~200μmとすることができる。また工程S33において第2の部分130の分離面130cを研磨するにあたっては、第1の層111に由来する残留層111''を全て取り除いてもよく、残留層111''の一部を研磨後の第2の部分130’の分離面130c’に残してもよい。
工程S21乃至S33を経ることにより、切断方法S30が完了する。このような切断方法S30によっても、切断により失われるIII族窒化物単結晶の量を低減することが可能である。また切断方法S30においては、照射工程S21において第1の層111に選択的にクラックC1が形成されるので、分離工程S22において第2の部分130の表面に第1の層111の一部111''を安定的に残すことが可能である。このような切断方法S30によれば、第2の部分130’の研磨面130c’上に新たなIII族窒化物単結晶層を成長させる場合に、第2の層の厚さを維持したまま該新たなIII族窒化物単結晶層の成長を行うことが容易になる。
上記説明では、研磨工程S33において第1の部分120の分離面120c及び第2の部分130の分離面130cの両方を研磨する形態の切断方法S30を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。研磨工程においては、第1の部分120の分離面120cのみを研磨してもよく、第2の部分130の分離面130cのみを研磨してもよい。
上記説明では、照射工程S21において集光点FSが第1の層111中に位置決めされ、第1の層111中のC、O、及びSiの合計濃度が、第2の層112中のC、O、及びSiの合計濃度より低い形態の切断方法S20及びS30を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、照射工程において集光点FSが第1の層中に位置決めされ、第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度が、第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度より高い形態の、III族窒化物単結晶の切断方法とすることも可能である。また例えば、照射工程において集光点FSが第2の層中に位置決めされ、第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度が、第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度より低い形態の、III族窒化物単結晶の切断方法とすることも可能である。また例えば、照射工程において集光点FSが第2の層中に位置決めされ、第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度が、第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度より高い形態の、III族窒化物単結晶の切断方法とすることも可能である。また例えば、照射工程において集光点FSが第1の層と第2の層との界面に位置決めされ、第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度が、第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度より低い形態の、III族窒化物単結晶の切断方法とすることも可能である。また例えば、照射工程S21において集光点FSが第1の層111と第2の層112との界面に位置決めされ、第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度が、第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度より高い形態の、III族窒化物単結晶の切断方法とすることも可能である。ただし、集光点FSの近傍により確実にクラックを発生させる観点からは、集光点FSは第1の層中に位置決めされることが好ましい。また、集光点FSを位置決めした層に選択的にクラックを発生させる観点からは、集光点は、第1の層および第2の層のうち、C、O、及びSiの合計濃度がより低い方の層中に位置決めされることが好ましい。
上記説明では、透過光の位相を補正することによりレンズL1の球面収差を補正する球面収差補正用位相パターンを備えた、透過型の球面収差補正プレートCP1を介してレーザービームLBを照射する形態の切断方法S10、S20、S30を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、レーザービームLBを集光するレンズL1の球面収差を補正しない形態のIII族窒化物単結晶の切断方法とすることも可能である。ただし、クラックをより確実に形成させる観点、及び、改質領域の厚みを低減する観点からは、レーザービームLBを集光するレンズが球面収差を有するレンズである場合には、球面収差を補正する手段を講じることが好ましい。また例えば、透過光ではなく反射光の位相を補正することによりレンズL1の球面収差を補正する、反射型の球面収差補正手段を用いることも可能である。図18は、反射型の球面収差補正手段を用いる光学系の一例を模式的に説明する断面図である。図18において、レーザービームLBは、コリメート光として球面収差補正ミラーCM1に入射し、球面収差補正ミラーCM1、ミラーM1及びM2によって順に反射され、レンズL2及びL3によってビーム径を調整された後、ミラーM3によって反射され、レンズL1によって集光される。球面収差補正ミラーCM1は、反射光の位相を補正することによりレンズL1の球面収差を補正する、球面収差補正用位相パターンを備える。このような球面収差補正ミラーCM1としては、例えば、球面収差補正用位相パターンを表示可能な公知の反射型液晶空間光位相変調器を用いることができる。そのような空間光位相変調器は、例えば浜松ホトニクス社製LCOS-SLM(X10468/X13267/X13138シリーズ)として商業的に入手可能である。また例えば、球面収差補正用位相パターン以外の手段により球面収差を補正することも可能である。なお、そもそも球面収差を有しないレンズを用いてレーザービームLBを集光する場合には、球面収差の補正は不要である。
<4.III族窒化物単結晶積層体の製造方法(1)>
図19は、一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S100(以下において「製造方法S100」ということがある。)を説明するフローチャートである。図20は、製造方法S100の各工程を断面図を用いて模式的に説明する図である。図19に示すように、製造方法S100は、切断工程S101と、熱処理工程S102と、研磨工程S103と、成長工程S104とをこの順に有している。
(切断工程S101)
切断工程S101(以下において単に「工程S101」ということがある。)は、III族窒化物単結晶10をレーザービーム照射で切断してベース基板20を得る工程である。切断工程S101は、上記説明したIII族窒化物単結晶の切断方法S10によって行われる(図1~10参照)。製造方法S100においては、切断方法S10によって得られた第1の部分20をベース基板20として用いる。
(熱処理工程S102)
熱処理工程S102(以下において単に「工程S102」ということがある。)は、ベース基板20を1200~1800℃で加熱処理(サーマルアニーリング)する工程である。切断工程S101後のベース基板20の切断面20c近傍には、レーザービーム照射によって形成された改質領域RMが残存している。本発明者らは、改質領域RMの組成自体は、元の単結晶10に由来する他の領域と違いがないことを確認している。例えば元の単結晶が組成式AlNで表されるならば、改質領域RMも組成式AlNで表される。すなわち改質領域RMは、急激な局所的加熱により元の単結晶10より原子配列の秩序性が局所的に低下した領域である。切断工程S101後のベース基板20を加熱処理(サーマルアニーリング)することにより、レーザービーム照射によって局所的に低下した原子配列の秩序性を回復させ、改質領域RMを縮小ないし消失させることができる(ベース基板20’、図20参照)。
工程S102における処理温度は上記の通り1200~1800℃であり、好ましくは1300~1750℃、より好ましくは1400~1700℃である。工程S102における処理温度が上記下限値以上であることにより、改質領域RMにおける原子配列の秩序性を回復させ、改質領域を縮小ないし消失させることが可能になる。また工程S102における処理温度が上記上限値以下であることにより、III族窒化物単結晶の分解を抑制することができる。
工程S102において上記の処理温度を維持する時間(処理時間)は、好ましくは1~300分間、より好ましくは5~60分間である。工程S102における処理時間が上記下限値以上であることにより、改質領域を縮小ないし消失させることが容易になる。また工程S102における処理時間が上記上限値以下であることにより、III族窒化物単結晶の分解を抑制することができる。
工程S102における加熱処理は、III族窒化物単結晶のサーマルアニーリングに用いられる公知の雰囲気中で行うことができる。工程S102において用いることのできる雰囲気ガスの例としては、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス、水素ガス、及びそれらの混合ガス等を挙げることができる。
(研磨工程S103)
研磨工程S103(以下において単に「工程S103」ということがある。)は、工程S102を経たベース基板20’の切断面20cを研磨する工程である。工程S103を経ることにより、切断面20cの表面粗さが低減されるほか、工程S102後も改質領域RMが残存している場合には残存する改質領域RMが取り除かれる(以下において、工程S103後の切断面20cを「切断面20c’」ということがある。)。熱処理工程S102後のベース基板20’においては改質領域RMが縮小ないし消失しているので、工程S103における研磨量は、従来のワイヤーソウによる切断後のソウマーク及びダメージ層の除去を目的とした研磨における研磨量よりも少ない研磨量で十分である。工程S103における研磨量は、例えば厚さにして5~100μmとすることができる。
工程S103における研磨の条件としては、公知の条件を特に制限なく採用することができる。改質領域RMを取り除く観点からは、工程S103における研磨は化学的機械的研磨(CMP)により完了することが好ましい。CMPには公知の方法を採用することができる。研磨剤としては、シリカ、アルミナ、セリア、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド等の材質を含む研磨剤を用いることができる。また、研磨剤の性状は、アルカリ性、中性、または酸性のいずれでもよい。研磨速度を高めるために酸化剤等の添加剤を研磨剤に配合してもよい。研磨パットとしては市販のものを使用することができ、その材質および硬度は特に制限されない。
工程S103における研磨は、例えばすべてCMPにより行ってもよい。また例えば、鏡面研磨ラッピング等の他の研磨手段による研磨の後にCMPによる研磨を行ってもよい。
また工程S103において、ベース基板20’の切断面20cの研磨に加えて、第1の面10aの研磨を行ってもよい。
(成長工程S104)
成長工程S104(以下において単に「工程S104」ということがある。)は、工程S103を経たベース基板20''上に、気相成長法によりIII族窒化物単結晶層50(以下において「単結晶層50」ということがある。)を成長させる工程である。単結晶層50を成長させる気相成長法としては、MOCVD法、HVPE法等の公知の気相成長法を特に制限なく採用できる。また単結晶層50を構成するIII族窒化物は、ベース基板20''を構成するIII族窒化物(元の単結晶10を構成するIII族窒化物)と同一の組成式で表されるIII族窒化物であってもよく、異なる組成式で表されるIII族窒化物であってもよい。
工程S104において、単結晶層50は、ベース基板20''の切断面20c’上に成長される。工程S102及びS103を経たことにより、ベース基板20''の切断面20c’近傍の改質領域RMが取り除かれているので、切断面20c’上に単結晶層50を成長させる場合であっても、結晶品質の良好な単結晶層50を成長させることが可能である。
工程S103~S104を経ることにより、ベース基板20''と、ベース基板20''上に成長された単結晶層50とを備えるIII族窒化物単結晶積層体200が得られる(図20参照)。製造方法S100によれば、切断工程S101において単結晶10の切断をレーザー照射によって行うので、単結晶10の切断をワイヤーソウ等の従来の方法によって行う場合と比較して、単結晶10を切断する際に失われるIII族窒化物単結晶の量を低減できる。さらに、製造方法S100によれば、熱処理工程S102において研磨に依らずに改質領域RMを縮小ないし消失させることができるので、単結晶10を切断して得たベース基板20を研磨する際に失われるIII族窒化物単結晶の量も低減することが可能である。
上記説明では、成長工程S104においてベース基板20''の切断面20c’上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態の製造方法S100を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、成長工程S104においてベース基板20''の第1の面10a上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。
上記説明では、切断工程S101の後、ベース基板20の切断面20cを研磨することなく熱処理工程S102を行う形態の製造方法S100を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、ベース基板20の切断面20cの表面粗さを低減するための研磨を、切断工程S101の後、熱処理工程S102の前に行ってもよい。ただし、熱処理工程S102においては、改質領域RMにおける原子配列の秩序性の回復に伴って、切断面20cの表面形状が変化し得る。そのため、ベース基板20(20’、20'')の合計の研磨量をより低減する観点、及び、処理コスト低減の観点からは、切断工程S101の後、ベース基板20の切断面20cを研磨することなく熱処理工程S102を行うことが好ましい。
<5.III族窒化物単結晶積層体の製造方法(2)>
上記説明では、III族窒化物単結晶10をレーザー照射で切断することにより得られる第1の部分20及び第2の部分30のうち、第1の部分20をベース基板20として用いる形態の製造方法S100を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、第2の部分30をベース基板として用いる形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。図21は、そのような他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S200(以下において「製造方法S200」ということがある。)を説明するフローチャートである。図22は、製造方法S200の各工程を断面図を用いて模式的に説明する図である。図21に示すように、製造方法S200は、切断工程S201と、熱処理工程S202と、研磨工程S203と、成長工程S204とをこの順に有している。
(切断工程S201)
切断工程S201(以下において単に「工程S201」ということがある。)は、III族窒化物単結晶10をレーザービーム照射で切断してベース基板30を得る工程である。切断工程S201は、上記説明したIII族窒化物単結晶の切断方法S10によって行われる(図1~8参照)。製造方法S200においては、切断方法S10によって得られた第2の部分30をベース基板30として用いる。
(熱処理工程S202)
熱処理工程S202(以下において単に「工程S202」ということがある。)は、ベース基板30を1200~1800℃で加熱処理(サーマルアニーリング)する工程である。切断工程S201後のベース基板30の切断面30c近傍には、レーザービーム照射によって形成された改質領域RMが残存している。切断工程S201後のベース基板30を加熱処理(サーマルアニーリング)することにより、レーザービーム照射によって局所的に低下した原子配列の秩序性を回復させ、改質領域RMを縮小ないし消失させることができる(ベース基板30’、図22参照)。熱処理工程S202における加熱処理の条件は、上記説明した製造方法S100における熱処理工程S102の条件と同様とすることができ、その好ましい態様についても上記同様である。
(研磨工程S203)
研磨工程S203(以下において単に「工程S203」ということがある。)は、工程S202を経たベース基板30’の切断面30cを研磨する工程である。工程S203を経ることにより、切断面30cの表面粗さが低減されるほか、工程S202後も改質領域RMが残存している場合には残存する改質領域RMが取り除かれる(以下において、工程S203後の切断面30cを「切断面30c’」ということがある。)。熱処理工程S202後のベース基板30’においては改質領域RMが縮小ないし消失しているので、工程S203における研磨量は、従来のワイヤーソウによる切断後のソウマーク及びダメージ層の除去を目的とした研磨における研磨量よりも少ない研磨量で十分である。工程S203における研磨量その他の研磨条件は、上記説明した製造方法S100における研磨工程S103の条件と同様とすることができ、その好ましい態様についても上記同様である。なお工程S203において、ベース基板30’の切断面30cの研磨に加えて、第2の面10bの研磨を行ってもよい。
(成長工程S204)
成長工程S204(以下において単に「工程S204」ということがある。)は、工程S203を経たベース基板30''上に、気相成長法によりIII族窒化物単結晶層50を成長させる工程である。単結晶層50を成長させる気相成長法としては、MOCVD法、HVPE法等の公知の気相成長法を特に制限なく採用できる。また単結晶層50を構成するIII族窒化物は、ベース基板30''を構成するIII族窒化物(元の単結晶10を構成するIII族窒化物)と同一のIII族窒化物であってもよく、異なるIII族窒化物であってもよい。
工程S204において、単結晶層50は、ベース基板30''の切断面30c’上に成長される。工程S202及びS203を経たことにより、ベース基板30''の切断面30c’近傍の改質領域RMが取り除かれているので、切断面30c’上に単結晶層50を成長させる場合であっても、結晶品質の良好な単結晶層50を成長させることが可能である。
工程S203~S204を経ることにより、ベース基板30''と、ベース基板30''上に成長された単結晶層50とを備えるIII族窒化物単結晶積層体300が得られる(図22参照)。製造方法S200によれば、切断工程S201において単結晶10の切断をレーザー照射によって行うので、単結晶10の切断をワイヤーソウ等の従来の方法によって行う場合と比較して、単結晶10を切断する際に失われるIII族窒化物単結晶の量を低減できる。さらに、製造方法S200によれば、熱処理工程S202において研磨に依らずに改質領域RMを縮小ないし消失させることができるので、単結晶10を切断して得たベース基板30を研磨する際に失われるIII族窒化物単結晶の量も低減することが可能である。
上記説明では、成長工程S204においてベース基板30''の切断面30c’上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態の製造方法S200を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、成長工程S204においてベース基板30''の第2の面10b上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。
上記説明では、切断工程S201の後、ベース基板30の切断面30cを研磨することなく熱処理工程S202を行う形態の製造方法S100を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、ベース基板30の切断面30cの表面粗さを低減するための研磨を、切断工程S201の後、熱処理工程S202の前に行ってもよい。ただし、熱処理工程S202においては、改質領域RMにおける原子配列の秩序性の回復に伴って、切断面30cの表面形状が変化し得る。そのため、ベース基板30(30’、30'')の合計の研磨量をより低減する観点、及び、処理コスト低減の観点からは、切断工程S201の後、ベース基板30の切断面30cを研磨することなく熱処理工程S202を行うことが好ましい。
<6.III族窒化物単結晶積層体の製造方法(3)>
上記説明では、切断工程S101、S201において、III族窒化物単結晶10の切断を切断方法S10によって行う形態の製造方法S100、S200を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、切断工程において、上記説明した切断方法S20によってIII族窒化物単結晶110を切断する形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。図23は、そのような他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S300(以下において「製造方法S300」ということがある。)を説明するフローチャートである。図24は、製造方法S300の各工程を断面図によって模式的に説明する図である。図23に示すように、製造方法S300は、切断工程S301と、熱処理工程S302と、研磨工程S303と、成長工程S304とをこの順に有している。
(切断工程S301)
切断工程S301(以下において単に「工程S301」ということがある。)は、III族窒化物単結晶110をレーザービーム照射で切断してベース基板120を得る工程である。工程S301は、上記説明したIII族窒化物単結晶の切断方法S20によって行われる(図12~15参照)。製造方法S300においては、切断方法S20によって得られた第1の部分120をベース基板120として用いる。
(熱処理工程S302)
熱処理工程S302(以下において単に「工程S302」ということがある。)は、ベース基板120を1200~1800℃で加熱処理(サーマルアニーリング)する工程である。切断工程S301後のベース基板120の切断面120c近傍には、レーザービーム照射によって形成された改質領域RMが残存している。切断工程S301後のベース基板120を加熱処理(サーマルアニーリング)することにより、レーザービーム照射によって局所的に低下した原子配列の秩序性を回復させ、改質領域RMを縮小ないし消失させることができる(ベース基板120’、図24参照)。熱処理工程S302における加熱処理の条件は、上記説明した製造方法S100における熱処理工程S102の条件と同様とすることができ、その好ましい態様についても上記同様である。
(研磨工程S303)
研磨工程S303(以下において単に「工程S303」ということがある。)は、工程S302を経たベース基板120’の切断面120cを研磨する工程である。工程S303を経ることにより、切断面120cの表面粗さが低減されるほか、工程S302後も改質領域RMが残存している場合には残存する改質領域RMが取り除かれる(以下において、工程S303後の切断面120cを「切断面120c’」ということがある。)。熱処理工程S302後のベース基板120’においては改質領域RMが縮小ないし消失しているので、工程S303における研磨量は、従来のワイヤーソウによる切断後のソウマーク及びダメージ層の除去を目的とした研磨における研磨量よりも少ない研磨量で十分である。工程S303における研磨量その他の研磨条件は、上記説明した製造方法S100における研磨工程S103の条件と同様とすることができ、その好ましい態様についても上記同様である。なお工程S303において、ベース基板120’の切断面120cの研磨に加えて、第1の面110aの研磨を行ってもよい。
(成長工程S304)
成長工程S304(以下において単に「工程S304」ということがある。)は、工程S303を経たベース基板120''上に、気相成長法によりIII族窒化物単結晶層50を成長させる工程である。単結晶層50を成長させる気相成長法としては、MOCVD法、HVPE法等の公知の気相成長法を特に制限なく採用できる。また単結晶層50を構成するIII族窒化物は、ベース基板120''を構成するIII族窒化物(元の単結晶110の第1の層111を構成するIII族窒化物)と同一のIII族窒化物であってもよく、異なるIII族窒化物であってもよい。
工程S304において、単結晶層50は、ベース基板120''の切断面120c’上に成長される。工程S302及びS303を経たことにより、ベース基板120''の切断面120c’近傍の改質領域RMが取り除かれているので、切断面120c’上に単結晶層50を成長させる場合であっても、結晶品質の良好な単結晶層50を成長させることが可能である。
工程S303~S304を経ることにより、ベース基板120''と、ベース基板120''上に成長された単結晶層50とを備えるIII族窒化物単結晶積層体400(以下において「積層体400」ということがある。)が得られる(図24参照)。製造方法S300によれば、切断工程S301において単結晶110の切断をレーザー照射によって行うので、単結晶110の切断をワイヤーソウ等の従来の方法によって行う場合と比較して、単結晶110を切断する際に失われるIII族窒化物単結晶の量を低減できる。さらに、製造方法S300によれば、熱処理工程S302において研磨に依らずに改質領域RMを縮小ないし消失させることができるので、単結晶110を切断して得たベース基板120を研磨する際に失われるIII族窒化物単結晶の量も低減することが可能である。なお、製造方法S300によって製造された積層体400もまた1つのIII族窒化物単結晶であるので、積層体400を新たな原料として製造方法S300を繰り返し行うことも可能である。
上記説明では、成長工程S304においてベース基板120''の切断面120c’上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態の製造方法S300を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、成長工程S304においてベース基板120''の第1の面110a上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。
上記説明では、切断工程S301の後、ベース基板120の切断面120cを研磨することなく熱処理工程S302を行う形態の製造方法S300を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、ベース基板120の切断面120cの表面粗さを低減するための研磨を、切断工程S301の後、熱処理工程S302の前に行ってもよい。ただし、熱処理工程S302においては、改質領域RMにおける原子配列の秩序性の回復に伴って、切断面120cの表面形状が変化し得る。そのため、ベース基板120(120’、120'')の合計の研磨量をより低減する観点、及び、処理コスト低減の観点からは、切断工程S301の後、ベース基板120の切断面120cを研磨することなく熱処理工程S302を行うことが好ましい。
<7.III族窒化物単結晶積層体の製造方法(4)>
上記説明では、III族窒化物単結晶110をレーザー照射で切断することにより得られる第1の部分120及び第2の部分130のうち、第1の部分120をベース基板として用いる形態の製造方法S300を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、第2の部分130をベース基板として用いる形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。図25は、そのような他の一の実施形態に係るIII族窒化物単結晶積層体の製造方法S400(以下において「製造方法S400」ということがある。)を説明するフローチャートである。図26は、製造方法S400の各工程を断面図によって模式的に説明する図である。図25に示すように、製造方法S400は、切断工程S401と、熱処理工程S402と、研磨工程S403と、成長工程S404とをこの順に有している。
(切断工程S401)
切断工程S401(以下において単に「工程S401」ということがある。)は、III族窒化物単結晶110をレーザービーム照射で切断してベース基板130を得る工程である。工程S401は、上記説明したIII族窒化物単結晶の切断方法S20によって行われる(図12~15参照)。製造方法S400においては、切断方法S20によって得られた第2の部分130をベース基板130として用いる。
(熱処理工程S402)
熱処理工程S402(以下において単に「工程S402」ということがある。)は、ベース基板130を1200~1800℃で加熱処理(サーマルアニーリング)する工程である。切断工程S401後のベース基板130の切断面130c近傍には、レーザービーム照射によって形成された改質領域RMが残存している。切断工程S401後のベース基板130を加熱処理(サーマルアニーリング)することにより、レーザービーム照射によって局所的に低下した原子配列の秩序性を回復させ、改質領域RMを縮小ないし消失させることができる(ベース基板130’、図26参照)。熱処理工程S402における加熱処理の条件は、上記説明した製造方法S100における熱処理工程S102の条件と同様とすることができ、その好ましい態様についても上記同様である。
(研磨工程S403)
研磨工程S403(以下において単に「工程S403」ということがある。)は、工程S402を経たベース基板130’の切断面130cを研磨する工程である。工程S403を経ることにより、切断面130cの表面粗さが低減されるほか、工程S402後も改質領域RMが残存している場合には残存する改質領域RMが取り除かれる(以下において、工程S403後の切断面130cを「切断面130c’」ということがある。)。熱処理工程S402後のベース基板130’においては改質領域RMが縮小ないし消失しているので、工程S403における研磨量は、従来のワイヤーソウによる切断後のソウマーク及びダメージ層の除去を目的とした研磨における研磨量よりも少ない研磨量で十分である。工程S403における研磨量その他の研磨条件は、上記説明した製造方法S100における研磨工程S103の条件と同様とすることができ、その好ましい態様についても上記同様である。なお工程S403において、ベース基板130’の切断面130cの研磨に加えて、第2の面110bの研磨を行ってもよい。本実施形態においては、研磨工程S403において、ベース基板130''の表面に、切断工程S401後のベース基板130が有していた残留層111''の一部111''r(以下において「研磨残留層111''r」ということがある。)が残される(図26参照)。
(成長工程S404)
成長工程S404(以下において単に「工程S404」ということがある。)は、工程S403を経たベース基板130''上に、気相成長法によりIII族窒化物単結晶層50を成長させる工程である。単結晶層50を成長させる気相成長法としては、MOCVD法、HVPE法等の公知の気相成長法を特に制限なく採用できる。工程S404において、単結晶層50は、ベース基板130の切断面130c’上に成長される。単結晶層50を構成するIII族窒化物は、ベース基板130''の切断面130c’を構成するIII族窒化物(元の単結晶110の第1の層111を構成するIII族窒化物)と同一のIII族窒化物であってもよく、異なるIII族窒化物であってもよい。工程S402及びS403を経たことにより、ベース基板130の切断面130c’近傍の改質領域RMが取り除かれているので、切断面130c’上に単結晶層50を成長させる場合であっても、結晶品質の良好な単結晶層50を成長させることが可能である。
工程S403~S404を経ることにより、ベース基板130''と、ベース基板130''上に成長された単結晶層50とを備えるIII族窒化物単結晶積層体500(以下において「積層体500」ということがある。)が得られる(図26参照)。製造方法S400によれば、切断工程S401において単結晶110の切断をレーザー照射によって行うので、単結晶110の切断をワイヤーソウ等の従来の方法によって行う場合と比較して、単結晶110を切断する際に失われるIII族窒化物単結晶の量を低減できる。さらに、製造方法S400によれば、熱処理工程S402において研磨に依らずに改質領域RMを縮小ないし消失させることができるので、単結晶110を切断して得たベース基板130を研磨する際に失われるIII族窒化物単結晶の量も低減することが可能である。なお、製造方法S400によって製造された積層体500もまた1つのIII族窒化物単結晶であるので、積層体500を新たな原料として製造方法S400を繰り返し行うことも可能である。
上記説明では、研磨工程S403において、ベース基板130''の切断面130c’に、切断工程S401後のベース基板130が有していた残留層111''の一部(研磨残留層)111''rを残す形態の製造方法S400を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、研磨工程S403において、切断工程S401後のベース基板130が有していた残留層111''を全て取り除く形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。かかる形態において、単結晶層50を構成するIII族窒化物は、ベース基板130''の切断面130c’を構成するIII族窒化物(元の単結晶110の第2の層112を構成するIII族窒化物)と同一のIII族窒化物であってもよく、異なるIII族窒化物であってもよい。
上記説明では、成長工程S404においてベース基板130''の切断面130c’上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態の製造方法S400を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、成長工程S404においてベース基板130''の第2の面110b上にIII族窒化物単結晶層50を成長させる形態のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法とすることも可能である。
上記説明では、切断工程S401の後、ベース基板130の切断面130cを研磨することなく熱処理工程S402を行う形態の製造方法S400を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、ベース基板130の切断面130cの表面粗さを低減するための研磨を、切断工程S401の後、熱処理工程S402の前に行ってもよい。ただし、熱処理工程S402においては、改質領域RMにおける原子配列の秩序性の回復に伴って、切断面130cの表面形状が変化し得る。そのため、ベース基板130(130’、130'')の合計の研磨量をより低減する観点、及び、処理コスト低減の観点からは、切断工程S401の後、ベース基板130の切断面130cを研磨することなく熱処理工程S402を行うことが好ましい。
以下の実施例において、III族窒化物単結晶中のC、O、及びSi濃度は、それぞれ二次イオン質量分析法により測定した。実施例2を除いてレーザー照射はTi:サファイアパルスレーザー(中心波長:800nm、繰り返し周波数:1kHz、パルス幅:110fs)を用いて行った。レーザービームは対物レンズ(倍率50倍、開口数NA=0.8)を用いて集光した。対物レンズの球面収差の補正は、球面収差補正用位相パターンを表示した反射型液晶空間光位相変調器(浜松ホトニクス社製LCOS-SLM)を用いて行った。光学系の概要を図18に示している。
<試料>
以下の実施例においては、次のIII族窒化物単結晶試料を用いた。
AlN単結晶層1: 厚さ:530μm、C濃度:1.4×1019atom/cm、O濃度:3.9×1018atom/cm、Si濃度:1.2×1019atom/cm、C、O、Si合計濃度:3.0×1019atom/cm、吸光係数β(波長800nm):8cm-1、成長方法:PVT法、主面:c面
AlN単結晶層2: 厚さ:520μm、C濃度:1.7×1019atom/cm、O濃度:3.7×1018atom/cm、Si濃度:6.5×1017atom/cm、C、O、Si合計濃度:2.1×1019atom/cm、吸光係数β(波長800nm):8cm-1、成長方法:PVT法、主面:c面
AlN単結晶層3: 厚さ:520μm、C濃度:3.0×1016atom/cm未満、O濃度:6.2×1017atom/cm、Si濃度:1.1×1017atom/cm、C、O、Si合計濃度:7.6×1017atom/cm未満、吸光係数β(波長800nm):6cm-1、成長方法:HVPE法、主面:c面
AlN単結晶層4: 厚さ:510μm、C濃度:3.0×1016atom/cm未満、O濃度:1.6×1016atom/cm、Si濃度:4.9×1016atom/cm、C、O、Si合計濃度:9.5×1016atom/cm未満、吸光係数β(波長800nm):5cm-1、成長方法:HVPE法、主面:c面
積層体試料1: AlN単結晶層1と、AlN単結晶層1上に成長されたAlN単結晶層3とからなる単結晶積層体
積層体試料2: AlN単結晶層2と、AlN単結晶層2上に成長されたAlN単結晶層4とからなる単結晶積層体
<参考例>
(比較参考例1)
AlN単結晶層1の内部でレーザービームが集光するように、積層体試料1のAlN単結晶層1の側からレーザー照射(パルスエネルギー30μJ、1000パルス)を行った。照射終了後、照射時の光軸を含む断面で積層体試料1を切断し、該断面を光学顕微鏡(倍率20倍)で観察した。結果を図27に示す。図27紙面上下方向がレーザービームの光軸方向であり、レーザービームは図27紙面上側から紙面下側に向かって照射された。AlN単結晶層1中に改質領域が形成されたことは確認されたが、クラックの発生は観察されなかった。
(参考例1)
AlN単結晶層2の内部でレーザービームが集光するように、積層体試料2のAlN単結晶層2の側からレーザー照射(パルスエネルギー30μJ、1000パルス)を行った。照射終了後、照射時の光軸を含む断面で積層体試料2を切断し、該断面を光学顕微鏡(倍率20倍)で観察した。結果を図28に示す。図28紙面上下方向がレーザービームの光軸方向であり、レーザービームは図28紙面上側から紙面下側に向かって照射された。改質領域、及び、改質領域からレーザービームの光軸に交差する方向に伸長するクラックがAlN単結晶層2中に形成されたことが確認された。クラックの発生位置を図中に白抜き矢印で示している。
(参考例2)
AlN単結晶層1とAlN単結晶層3との界面にレーザービームが集光するように、積層体試料1のAlN単結晶層3の側からレーザー照射(パルスエネルギー10μJ、1000パルス)を行った。照射終了後、照射時の光軸を含む断面で積層体試料1を切断し、該断面を光学顕微鏡(倍率10倍)で観察した。結果を図29に示す。図29紙面上下方向がレーザービームの光軸方向であり、レーザービームは図29紙面上側から紙面下側に向かって照射された。改質領域、及び、改質領域からレーザービームの光軸に交差する方向に伸長するクラックがAlN単結晶層3中に形成されたことが確認された。クラックの発生位置を図中に白抜き矢印で示している。
(参考例3)
AlN単結晶層3とAlN単結晶層3との界面にレーザービームが集光するように、積層体試料1のAlN単結晶層1の側からレーザー照射(パルスエネルギー10μJ、1000パルス)を行った。照射終了後、照射時の光軸を含む断面で積層体試料1を切断し、該断面を光学顕微鏡(倍率10倍)で観察した。結果を図30に示す。図30紙面上下方向がレーザービームの光軸方向であり、レーザービームは図30紙面上側から紙面下側に向かって照射された。改質領域、及び、改質領域からレーザービームの光軸に交差する方向に伸長するクラックがAlN単結晶層3中に形成されたことが確認された。クラックの発生位置を図中に白抜き矢印で示している。
(参考例4)
AlN単結晶層4の内部でレーザービームが集光するように、積層体試料2のAlN単結晶層4の側からレーザー照射(パルスエネルギー30μJ、500パルス)を行った。照射終了後、照射時の光軸を含む断面で積層体試料1を切断し、該断面を光学顕微鏡(倍率20倍)で観察した。結果を図31に示す。図31紙面上下方向がレーザービームの光軸方向であり、レーザービームは図31紙面上側から紙面下側に向かって照射された。改質領域、及び、改質領域からレーザービームの光軸に交差する方向に伸長するクラックがAlN単結晶層4中に形成されたことが確認された。クラックの発生位置を図中に白抜き矢印で示している。
以上、Si濃度が5×1018atom/cmを超えるAlN単結晶層1にレーザービームを集光してもクラックは発生しなかったが、Si濃度が5×1018atom/cm以下であるAlN単結晶層2、3、及び4にはレーザービーム照射によりクラックが発生することが確認された。
<実施例1>
(照射工程)
積層体試料1を、AlN単結晶層3が上側になるようにX-Yステージ上に配置し、AlN単結晶層3とAlN単結晶層1との界面近傍にレーザービームが集光するように、積層体試料1の上方からレーザービーム(パルスエネルギー50μJ)を照射した。レーザービームの光軸を固定し、レーザービームを連続的に照射しながらX-Yステージを速度500μm/sでX方向に連続的に駆動することにより、AlN単結晶層3中を集光点で面内方向に直線状に走査した。1本の直線の走査が終了する度に、X-YステージをY方向に70μm移動し、次の直線の走査を行うことを、積層体試料1の上面の全体にわたって繰り返した。照射後の積層体試料1を、上面(AlN単結晶層3の側)から光学顕微鏡により観察した。結果を図32(A)に示す。図32(A)において暗線として見えている部分が、集光点が通った部分(改質領域)である。また照射後の積層体試料1を、集光点の軌跡と直交する断面で切断し、該断面を光学顕微鏡により観察した。結果を図32(B)に示す。図32(B)から、AlN単結晶層3中において選択的にクラックが発生していること、及び、隣接する直線状の改質領域から延びるクラック同士が繋がっていることが理解される。
(分離工程)
図11に示すように、照射後の積層体試料1を積層方向に挟みつけながらねじり力を加えることにより、クラックを起点として積層体試料1を破断させ、積層体試料1を、AlN単結晶層3の一部からなる板状体である第1の部分と、AlN単結晶層1を有する第2の部分とに分離させることができた。
<実施例2>
(照射工程)
レーザー光源としてフェムト秒レーザーに代えてパルスエネルギーを時間変調したピコ秒レーザーを用い、掃引速度を1mm/sとした以外は実施例1と同様にして、実施例1と同様の積層体試料1に対してレーザー照射を行った実施例である。レーザー光源として、中心波長1064nm、パルス幅10ps(ピコ秒)、繰り返し周波数1kHzのNd:YVOピコ秒レーザーを用い、集光には倍率50倍、開口数0.8の対物レンズを用いた。任意波形発生器(SIGLENT製型式SDG5082)により生成した正弦波の電圧信号をピコ秒レーザー装置(EKSPLA製型式Atlantic 532-40)内部の音響光学素子に入力することにより、レーザー光のパルスエネルギーを図8(A)に示すように正弦波状に時間変調(変調周波数:100Hz、平均パルスエネルギー:10μJ)した。照射後の積層体試料1を、集光点の軌跡に直交する断面で切断し、該断面を光学顕微鏡により観察した。結果を図33に示す。図33にはレーザー照射痕が表れている。レーザー照射痕は、均一な形状の改質領域RMが整列した形状を有していた。また、隣接する改質領域RMを連結するように均一にクラックが形成されていた。
(分離工程)
レーザー照射後の積層体試料1を窒素雰囲気下で800℃に加熱し、積層体試料1内部に熱応力を発生させることで、クラックを起点として積層体試料1を破断させ、積層体試料1を、AlN単結晶層3の一部からなる板状体である第1の部分と、AlN単結晶層1を有する第2の部分とに分離させることができた。
10、110 III族窒化物単結晶
10a、110a 第1の面
10b、110b 第2の面
20、120 第1の部分
30、130 第2の部分
20c、30c、120c、130c 分離面(切断面)
20c’、30c’、120c’、130c’ 研磨面
41、42 (分離工程補助)部材
50 III族窒化物単結晶層
111 第1の層
112 第2の層
111’ 第1の層の一部
111'' 第1の層の他の一部(残留層)
111''r 研磨残留層
LB レーザービーム
L1 (集光)レンズ
CP1 球面収差補正プレート
CM1 球面収差補正ミラー
FS 集光点
M1、M2、M3 ミラー
RM 改質領域
C1 クラック

Claims (14)

  1. (A)III族窒化物単結晶をレーザービーム照射で切断してベース基板を得る工程と、
    (B)前記ベース基板を1200~1800℃で加熱処理する工程と、
    (C)前記ベース基板上に、気相成長法によりIII族窒化物単結晶層を成長させる工程と
    を上記順に含むことを特徴とする、III族窒化物単結晶積層体の製造方法。
  2. (D)前記工程(B)の後、前記工程(C)の前に、前記ベース基板の切断面を研磨する工程
    をさらに含む、請求項に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法。
  3. 前記工程(A)において、前記単結晶は、第1の面、及び、該第1の面と反対側の第2の面を有し、
    前記工程(A)が、III族窒化物単結晶の切断方法であって、
    (i)前記単結晶に対して透過性を有する波長のレーザービームを、前記第1の面に照射する工程であって、
    (ia)前記第1の面から所定の深さにおいて前記レーザービームが集光するように、前記レーザービームを前記第1の面から前記単結晶に入射させることと、
    (ib)前記レーザービームの集光点と前記単結晶とを、前記第1の面の面内方向に相対的に移動させることと、
    (ic)前記集光点の軌跡に沿った改質領域、及び、該改質領域から伸長するクラックを、前記単結晶中に形成させることと
    を含む工程と、
    (ii)前記工程(i)の後、前記クラックを起点として、前記単結晶を、前記第1の面を有する板状体である第1の部分と、前記第2の面を有する第2の部分とに分離する工程と
    を含み、
    前記レーザービームの集光点が通る位置において、前記単結晶中のSi濃度が5×10 18 atom/cm 以下であることを特徴とする、III族窒化物単結晶の切断方法により行われる、
    請求項1又は2に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法。
  4. 前記工程(A)において、前記III族窒化物単結晶は、
    前記第1の面を有する第1の層と、
    前記第2の面を有する第2の層と
    を含み、
    前記第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)と、前記第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)とが異なっている、
    請求項に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  5. 前記第1の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)が、前記第2の層中のC、O、及びSiの合計濃度(単位:atom/cm)より低い、
    請求項に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  6. 前記工程(i)において、前記集光点は、前記第1の層および前記第2の層のうち、前記C、O、及びSiの合計濃度がより低い方の層中に位置決めされる、
    請求項4又は5に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  7. 前記工程(i)において、前記改質領域は、前記単結晶中に複数形成される、
    請求項3~6のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  8. 前記工程(i)において、前記レーザービームのエネルギーが時間的に変調される、
    請求項3~7のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  9. 前記工程(i)において、前記レーザービームがパルスレーザーである、
    請求項3~7のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  10. 前記工程(i)において、前記パルスレーザーのパルスエネルギーが時間的に変調される、
    請求項に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  11. 前記パルスエネルギーの変調周波数が、0.01~100kHzの範囲内であって、且つ前記パルスレーザーの繰り返し周波数の1/2倍以下である、
    請求項10に記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  12. 前記工程(A)において、前記III族窒化物単結晶が窒化アルミニウム単結晶である、
    請求項3~11のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  13. 前記工程(A)において、前記III族窒化物単結晶の切断方法が、
    (iii)前記工程(ii)の後、前記第2の部分の分離面を研磨する工程
    をさらに含む、請求項3~12のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
  14. 前記工程(A)において、前記III族窒化物単結晶の切断方法が、
    (iv)前記工程(ii)の後、前記第1の部分の分離面を研磨する工程
    をさらに含む、請求項3~13のいずれかに記載のIII族窒化物単結晶積層体の製造方法
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