以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2には、本発明の一実施形態による連続鋳造設備1の全体構成が示されている。本実施形態による連続鋳造設備1は、溶鋼から鋳片を連続的に鋳造する設備である。この連続鋳造設備1は、鋳込装置2と、複数の取鍋6と、レードルターレット8と、複数のタンディッシュ10と、第1タンディッシュカー12と、第1タンディッシュデッキ13と、第2タンディッシュカー14と、第2タンディッシュデッキ15と、ダミーバー16と、ダミーバーカー18と、第1デッキ20と、第2デッキ21と、を備える。
鋳込装置2は、溶鋼から鋳片を形成する装置であり、鋳込床100の下に設置されている。この鋳込装置2は、鋳込床100に開口した鋳込口101を通じて受け入れた溶鋼から鋳片を連続的に形成する。この鋳込装置2は、鋳型3と、図略の冷却装置と、送り装置4とを有する。
鋳型3は、溶鋼から鋳片を成型するための型である。鋳型3は、鋳込口101から下方に延びる成型空間を囲むように鋳込床100の床面(上面)近傍からその床下に亘って埋め込まれている。鋳型3は、その上端の開口である鋳込口101を通じて成型空間に注湯された溶鋼を鋳片に成型する。また、鋳型3は、当該鋳型3内の成型空間で成型された鋳片を当該鋳型3の下方へ抜き出せるように下端が開口している。
図略の冷却装置は、鋳型3内に注湯された溶鋼を固化させるために鋳型3を冷却するものであり、鋳込床100下に設けられている。
送り装置4は、鋳込床100の床下に設置され、鋳型3内の成型空間で成型された鋳片をその成型空間から下方へ引き抜くとともにその鋳片を下流側へ送るための装置である。具体的に、鋳込床100の床下には、鋳型3内の成型空間に繋がる送り通路102が構成されており、送り装置4は、鋳型3内の成型空間から引き出した鋳片をこの送り通路102を通して下流側へ送る。
送り通路102は、鋳型3内の成型空間の下端から真下に延びる領域と、その領域の下端から下側へ向かいつつ徐々に水平方向に近づくように湾曲して延びる領域と、その湾曲した領域の後端から水平方向に沿って鋳型3から遠ざかるように延びる領域とを有する。送り装置4は、送り通路102を挟んでその両側に配置されるとともに送り通路102が延びる方向に沿って間隔を空けて配置された複数の送りローラ22を有する。また、送り装置4は、送りローラ22をその軸心回りに回転可能に支持する図略のロールスタンドと、当該送り装置4が有する前記複数の送りローラ22のうちのいくつかの送りローラ22を回転駆動する図略のローラ駆動装置を有する。送り装置4では、複数の送りローラ22によって鋳片を両側から挟み込むとともに、その鋳片を送り通路102の下流側(鋳型3から遠ざかる側)へ送るように前記ローラ駆動装置により送りローラ22を回転させる。
取鍋6は、鋳造の材料の溶鋼が入れられる容器である。本実施形態の連続鋳造設備1は、この取鍋6内に満たされた溶鋼をタンディッシュ10へ注湯するための取鍋ノズル24と、その取鍋ノズル24を通じた取鍋6からの溶鋼の吐出の可否及び吐出流量を制御するために取鍋6に設けられた図略のスライドバルブとを備えている。取鍋ノズル24は、取鍋6の底部に着脱可能に取り付けられている。スライドバルブの開度は油圧によって制御されるため、当該スライドバルブには図略の油圧ホースが接続されるようになっている。
レードルターレット8は、注湯位置A(図2参照)にある取鍋6と取鍋待機位置Bにある別の取鍋6とを入れ替えるための装置である。注湯位置Aは、取鍋ノズル24からタンディッシュ10へ溶鋼が注湯されるように取鍋6が配置される位置であり、鋳込口101の上方の位置である。この注湯位置Aは、後述する鋳込位置Dに配置されたタンディッシュ10の上方の位置である。取鍋待機位置Bは、タンディッシュ10へ溶鋼を注湯している取鍋6とは別の取鍋6であって溶鋼が満たされたものが待機する位置である。レードルターレット8は、注湯位置Aに配置された取鍋6内の溶鋼をタンディッシュ10へ注湯し切ってその取鍋6が空になったときに、その取鍋6を溶鋼が満たされて取鍋待機位置Bに配置された別の取鍋6と入れ替えるように構成されている。
具体的には、レードルターレット8は、水平方向に延びるとともに、その一端部と他端部とにそれぞれ取鍋6を保持する部分を有するアーム8aを備えている。アーム8aは、その一端部と他端部との間の中央の位置Cを通る縦軸回りに回転可能となっている。レードルターレット8は、アーム8aの一端部によって保持した取鍋6を注湯位置Aに配置するとともに、溶鋼が満たされた別の取鍋6をアーム8aの他端部によって取鍋待機位置Bで保持し、注湯位置Aの取鍋6が空になった時点でアーム8aを180度回転させることによって、空になった取鍋6を取鍋待機位置Bに移動させるとともに溶鋼が満たされた別の取鍋6を注湯位置Aに移動させる。このように、注湯位置Aの取鍋6が空になる毎に溶鋼が満たされた別の取鍋6と入れ替えることにより、鋳込位置Dのタンディッシュ10へ継続して溶鋼を注湯できるようになっている。
タンディッシュ10は、鋳込位置Dにおいて取鍋6から注湯された溶鋼を受け、その溶鋼を一時的に滞留させることによってその溶鋼中の介在物を析出させて除去するための容器である。また、タンディッシュ10は、受けた溶鋼を鋳込口101へ注湯するように構成されている。このタンディッシュ10は、上側が開口して溶鋼を受けるタンディッシュ本体30と、そのタンディッシュ本体30の上側の開口を覆うように当該タンディッシュ本体30を覆うタンディッシュカバー31とを有する。タンディッシュカバー31には、貫通孔が設けられている。前記取鍋ノズル24は、この貫通孔を通してタンディッシュ10内の空間に挿入される。
また、本実施形態の連続鋳造設備1は、タンディッシュ10が受けた溶鋼をそのタンディッシュ10から鋳込口101を通して鋳型3内の成型空間へ注湯するためのタンディッシュノズル26と、そのタンディッシュノズル26を通じた溶鋼の注湯の可否及び注湯流量を制御するためにタンディッシュ10に設けられた図略のスライドバルブとを備えている。タンディッシュノズル26は、タンディッシュ10の底部に着脱可能に取り付けられている。
前記鋳込位置Dは、前記注湯位置Aに配置された取鍋6の下方で且つ鋳型3の上方(鋳込口101の上方)の位置である。より具体的には、前記鋳込位置Dは、前記注湯位置Aに配置された取鍋6のノズル24がタンディッシュ10内の空間に挿入されるとともにそのタンディッシュ10のノズル26が鋳込口101を通って鋳型3内の成型空間に挿入される位置である。
タンディッシュ10は、鋳込位置Dにおいてある程度の期間に亘って鋳造に使用されると、タンディッシュノズル26の損傷やその他の不具合が生じるため、定期的なメンテナンスを必要とする。このタンディッシュ10のメンテナンス時には、鋳込位置Dにあるタンディッシュ10を別のタンディッシュ10と交換する。また、連続鋳造設備の操業では、鋳造する鋼種を途中で変更する場合がある。鋼種の変更時には、その変更前に鋳込位置Dにおいて鋳造に使用されていたタンディッシュ10を別のタンディッシュ10と交換する。
従って、本実施形態の連続鋳造設備1は、複数のタンディッシュ10を備えている。そして、鋳込位置Dにおいて鋳造に使用されているタンディッシュ10のメンテナンス時期が来れば、そのタンディッシュ10を鋳込位置Dから移動させてメンテナンスを行う一方、そのタンディッシュ10の替わりにメンテナンス済みの別のタンディッシュ10を鋳込位置Dに配置して鋳造を続けるようになっている。また、鋳造する鋼種の変更時には、それまでの鋼種の鋳造を停止するとともにそれまで鋳込位置Dにおいて鋳造に使用されていたタンディッシュ10を鋳込位置Dから移動させる一方、別のタンディッシュ10を鋳込位置Dに配置して変更後の鋼種の鋳造を開始するようになっている。連続鋳造設備1が備える複数のタンディッシュ10には、図2に示すように、第1タンディッシュカー12に搭載される第1タンディッシュ10aと、第2タンディッシュカー14に搭載される第2タンディッシュ10bとが含まれる。
第1タンディッシュカー12は、搭載した第1タンディッシュ10aを鋳込位置Dと第1待機位置Eとの間で搬送するための装置である。第1待機位置Eは、鋳込位置Dに配置される前の第1タンディッシュ10aが待機する位置である。この第1待機位置Eは、鋳込床100の上面に沿う特定の移動方向D1に沿って鋳込位置Dから離れた位置である。
鋳込位置Dにおいて鋳造に使用されている第1タンディッシュ10aのメンテナンス時期が来たときには、その第1タンディッシュ10aを第1タンディッシュカー12によって鋳込位置Dから第1待機位置Eへ搬送し、その第1待機位置Eからメンテナンス作業を行うための作業場へクレーン等によってさらに搬送するようになっている。また、メンテナンス済みの第1タンディッシュ10aは、第1待機位置Eにおいて第1タンディッシュカー12に搭載されて待機し、鋳造に使用されるときに第1タンディッシュカー12によって鋳込位置Dへ搬送されるようになっている。
第1タンディッシュカー12は、第1タンディッシュ10aを搭載して鋳込場104と第1待機場106との間で鋳込床100の上面に沿う特定の移動方向D1に沿って鋳込床100上を移動する。鋳込場104は、鋳込口101(鋳型3)が設けられた鋳込床100上の場所であり、第1タンディッシュ10aを搭載した第1タンディッシュカー12がこの鋳込場104上に位置することによって第1タンディッシュ10aが鋳込位置Dに配置される。
第1待機場106は、その上に位置する第1タンディッシュカー12に搭載された第1タンディッシュ10aが第1待機位置Eに配置される鋳込床100上の場所である。第1タンディッシュカー12は、鋳込場104と第1待機場106との間で移動することにより第1タンディッシュ10aを鋳込位置Dと第1待機位置Eとの間で搬送する。
第2タンディッシュカー14は、搭載した第2タンディッシュ10bを鋳込位置Dと第2待機位置Fとの間で搬送するための装置である。第2待機位置Fは、鋳込位置Dに配置される前の第2タンディッシュ10bが待機する位置である。この第2待機位置Fは、鋳込床100の上面に沿う前記移動方向D1に沿って鋳込位置Dから前記第1待機位置Eと反対側へ離れた位置である。
鋳込位置Dにおいて鋳造に使用されている第2タンディッシュ10bのメンテナンス時期が来たときには、その第2タンディッシュ10bを第2タンディッシュカー14によって鋳込位置Dから第2待機位置Fへ搬送し、その第2待機位置Fからメンテナンス作業を行うための作業場へクレーン等によってさらに搬送するようになっている。また、メンテナンス済みの第2タンディッシュ10bは、第2待機位置Fにおいて第2タンディッシュカー14に搭載されて待機し、鋳造に使用されるときに第2タンディッシュカー14によって鋳込位置Dへ搬送されるようになっている。本実施形態では、第1タンディッシュ10aが鋳込位置Dに配置されて鋳造に使用されているとき(図5参照)には、第2タンディッシュ10bが第2待機位置Fにおいて待機し、逆に、第2タンディッシュ10bが鋳込位置Dに配置されて鋳造に使用されているとき(図8参照)には、第1タンディッシュ10aが第1待機位置Eにおいて待機するようになっている。
第2タンディッシュカー14は、第2タンディッシュ10bを搭載して前記鋳込場104と第2待機場108との間で前記移動方向D1に沿って鋳込床100上を移動する。第2タンディッシュ10bを搭載した第2タンディッシュカー14が鋳込場104上に位置することによって第2タンディッシュ10bが鋳込位置Dに配置される。第2待機場108は、その上に位置する第2タンディッシュカー12に搭載された第2タンディッシュ10bが第2待機位置Fに配置される鋳込床100上の場所である。第2タンディッシュカー14は、鋳込場104と第2待機場108との間で移動することにより第2タンディッシュ10bを鋳込位置Dと第2待機位置Fとの間で搬送する。
第1待機場106、鋳込場104及び第2待機場108を通る鋳込床100上には、第1及び第2タンディッシュカー12,14がその上に乗る一対のレール110が敷設されている。一対のレール110は、前記移動方向D1、換言すれば第1待機位置Eと鋳込位置Dと第2待機位置Fとを結ぶ方向に直線的に延びている。
第1及び第2タンディッシュカー12,14は、同様に構成されており、図1に示すように、タンディッシュカー本体32と、複数の車輪33とをそれぞれ有する。タンディッシュカー本体32は、その上にタンディッシュ10が載置されてそのタンディッシュ10を保持するものである。車輪33は、タンディッシュカー本体32の底部に設けられ、一対のレール110上に乗っている。タンディッシュカー本体32には、各車輪33を回転駆動させる図略の駆動装置が設けられている。この駆動装置によって回転させられた各車輪33がレール110上を転動することにより、第1及び第2タンディッシュカー12,14は、一対のレール110に沿って前記移動方向D1に移動し、タンディッシュ10を搬送するようになっている。
第1タンディッシュデッキ13は、作業者がその上に乗って第1タンディッシュ10a及び取鍋6に関する各種作業を行うためのものである。第1タンディッシュデッキ13上で行われる作業は、例えば、取鍋ノズル24の開口作業、第1タンディッシュ10a内の溶鋼の検温作業、取鍋6に対する取鍋ノズル24の着脱作業、取鍋6に設けられたスライドバルブへの油圧ホースの接続作業などである。第1タンディッシュデッキ13は、第1タンディッシュカー12のタンディッシュカー本体32上に設置されており、第1タンディッシュカー12が移動するのに伴ってその第1タンディッシュカー12とともに移動する。
第1タンディッシュデッキ13は、第1タンディッシュカー12に搭載された第1タンディッシュ10aの周囲を概ね囲むように構成されている。また、第1タンディッシュデッキ13は、作業者がその上に乗る搭乗面を有する。具体的には、第1タンディッシュデッキ13は、略水平に配置された床板13a(図1参照)を有し、この床板13aの上面が搭乗面となっている。床板13aの上面(搭乗面)は、第1タンディッシュカー12に搭載された第1タンディッシュ10aのタンディッシュカバー31の上面と同じ高さに位置する。床板13aは、その上面上と第1タンディッシュ10aのタンディッシュカバー31の上面上との間を作業者が往来可能となるようにタンディッシュカバー31に隣接して配置されている。なお、作業者が躓くのを防止するためには、床板13aの上面がタンディッシュカバー31の上面と完全に同じ高さに位置することが好ましいが、作業者が通常の歩行により床板13aの上面上とタンディッシュカバー31の上面上とのうちの一方から他方へ支障なく移動できる程度の僅かな高さのずれは許容される。
また、第1タンディッシュデッキ13は、床板13a上からの作業者の転落等を防止するための複数の手摺柵13bを有する。この複数の手摺柵13bには、第1タンディッシュカー12の移動方向D1における床板13aの両端部のそれぞれに設けられた一対の端部手摺柵13cと、第1タンディッシュカー12が鋳込場104に配置されたときに後述のダミーバーカー18の進入スペース120側を向く端部に設けられた進入スペース側手摺柵13dとが含まれる。これらの各手摺柵13c,13dは、それらが設けられた床板13aの端部の端縁に沿って延びている。進入スペース側手摺柵13dは、第1タンディッシュカー12が鋳込場104に配置されたときに第1タンディッシュデッキ10aの進入スペース120側にはデッキがないため、床板13aの進入スペース120側の端部上を閉鎖することによって床板13aから進入スペース120側への転落を防止する。
第1タンディッシュカー12の移動方向D1に沿う方向における進入スペース側手摺柵13dの一端部とその一端部側に位置する一方の端部手摺柵13cとの間には、作業者が通ることが可能なスペースが設けられている。また、同様に、第1タンディッシュカー12の移動方向D1に沿う方向における進入スペース側手摺柵13dの他端部とその他端部側に位置する他方の端部手摺柵13cとの間にも、作業者が通ることが可能なスペースが設けられている。
第2タンディッシュデッキ15は、作業者がその上に乗って第2タンディッシュ10b及び取鍋6に関する各種作業を行うためのものである。第2タンディッシュデッキ15上で行われる作業は、第1タンディッシュデッキ13上で行われる作業と同様の作業である。第2タンディッシュデッキ15は、第2タンディッシュカー14のタンディッシュカー本体32上に設置されており、第2タンディッシュカー14が移動するのに伴ってその第2タンディッシュカー14とともに移動する。
第2タンディッシュデッキ15は、第2タンディッシュカー14に搭載された第2タンディッシュ10bの周囲を概ね囲むように構成されている。第2タンディッシュデッキ15の構成は、第1タンディッシュデッキ13の構成と同様である。第2タンディッシュデッキ15は、略水平に配置された床板15aを有し、この床板15aの上面に作業者が乗るようになっている。すなわち、この床板15aの上面が作業者の搭乗面となっている。床板15aの上面は、第2タンディッシュカー14に搭載された第2タンディッシュ10bのタンディッシュカバー31の上面と実質的に同じ高さに位置する。
また、第2タンディッシュデッキ15は、第1タンディッシュデッキ13の複数の手摺柵13bと同様の複数の手摺柵15bを有する。この複数の手摺柵15bには、第1タンディッシュデッキ13の一対の端部手摺柵13c及び進入スペース側手摺柵13dと同様に構成及び配置された一対の端部手摺柵15c及び進入スペース側手摺柵15dが含まれる。
ダミーバー16(図1及び図10参照)は、鋳型3内の成型空間への溶鋼の注湯開始前に鋳込口101を通じて上方から前記成型空間に挿入され、前記成型空間に溶鋼が注湯されたときにその溶鋼が前記成型空間から下方へ流出するのを阻止するように前記成型空間の下部の開口を塞ぐ。また、このダミーバー16は、前記成型空間において溶鋼から成型された鋳片の下端に繋がり、その状態で送り装置4によって下流側へ送られることにより、鋳片を前記成型空間から下方へ引き抜くために寄与する。ダミーバー16は、一連となるように連結された多数のセグメントからなり、互いに連結されたセグメント同士が曲折可能となっていることにより送り通路102内においてその送り通路102の湾曲した形状に沿うようになっている。ダミーバー16は、送り通路102の下流側の端部から送り出された後、鋳片から切り離される。
ダミーバーカー18は、鋳片から切り離されたダミーバー16を再び鋳型3内の前記成型空間へ上方から挿入可能な挿入位置116(図10参照)へ搬送する装置である。このダミーバーカー18は、鋳片から切り離されたダミーバー16を搭載して、第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動方向D1に対して直交する後述の配置方向D2に沿って鋳込床100上を移動する。ダミーバーカー18は、当該ダミーバーカー18にダミーバー16が搭載される位置からダミーバー16の前端が鋳込口101上に配置される挿入位置116に当該ダミーバー16が配置される鋳込位置D近傍の位置まで移動する。
鋳込床100上には、第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動方向D1と直交する方向に沿ってダミーバーカー18用の一対のレール112が敷設されている。ダミーバーカー18は、この一対のレール112上に乗った車輪18aを有する台車部18bと、その台車部18b上に設けられていてダミーバー16を保持する保持部18cとを有する。台車部18bの車輪18aがレール112上を転動することにより、ダミーバーカー18は、レール112に沿って移動し、前記のようにダミーバー16を搬送する。台車部18bは、前記移動方向D1に沿う方向において前記保持部18cよりも広い幅を有する。このため、台車部18bは、保持部18cよりも両側に突出している。台車部18bが前記のように広い幅を有することにより、当該台車部18bの幅方向における車輪18a間の間隔を拡大するとともにそれらの車輪18aが乗る一対のレール112間の間隔を拡大することができる。その結果、前記送り装置4の直上にレール112やそのレール112を受ける梁等の障害物が配置されるのが回避されている。
第1デッキ20と第2デッキ21は、作業者がその上で待機したり、鋳造時に鋳込場104にある第1タンディッシュカー12の第1タンディッシュデッキ13上からの退避経路又は鋳込場104にある第2タンディッシュカー14の第2タンディッシュデッキ15上からの退避経路を構成したりするものである。第1デッキ20と第2デッキ21は、第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動領域に対してレードルターレット8と反対側に配置され、第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動領域に近接するように配置されている。第1デッキ20と第2デッキ21は、第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動方向D1に沿って並んで鋳込床100上に設置されている。また、第1デッキ20と第2デッキ21は、図2及び図10に示すように、ダミーバーカー18の進入スペース120をそれらの間にあけるように第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動方向D1に沿う方向において互いに離間して配置されている。
第1デッキ20は、第1タンディッシュカー12の移動領域に対してその第1タンディッシュカー12の移動方向D1と直交する配置方向D2における一方側の位置で鋳込床100上に設置されている。第1デッキ20は、第1デッキ鋳込時隣接部42(図5及び図8参照)と、第1デッキ待機時隣接部44とを有する。
第1デッキ鋳込時隣接部42は、第1タンディッシュカー12が鋳込場104にあるとき(図5参照)に第1タンディッシュデッキ13上と第1デッキ20上との間の作業者の往来を許容するように前記配置方向D2において第1タンディッシュデッキ13に隣接する。また、第1デッキ鋳込時隣接部42は、第2タンディッシュカー12が鋳込場104にあるとき(図8参照)に第2タンディッシュデッキ15上と第1デッキ20上との間の作業者の往来を許容するように前記配置方向D2において第2タンディッシュデッキ15に隣接する。具体的には、この第1デッキ鋳込時隣接部42は、第1タンディッシュカー12が鋳込場104にあるときに前記配置方向D2において第1タンディッシュデッキ13の進入スペース側手摺柵13dの第1待機場106側の端部と第1待機場106側の端部手摺柵13cとの間の部分に隣接する。また、この第1デッキ鋳込時隣接部42は、第2タンディッシュカー14が鋳込場104にあるときに前記配置方向D2において第2タンディッシュデッキ15の進入スペース側手摺柵15dの第2待機場108側の端部と第2待機場108側の端部手摺柵15cとの間の部分に隣接する。
第1デッキ待機時隣接部44は、第1タンディッシュカー12が第1待機場106にあるときに第1タンディッシュデッキ13上と第1デッキ20上との間の作業者の往来を許容するように前記配置方向D2において第1タンディッシュデッキ13に隣接する部分である。この第1デッキ待機時隣接部44は、第1タンディッシュカー12の移動方向D1に沿う方向において互いに離れた2か所に設けられている。具体的には、この2か所の第1デッキ待機時隣接部44は、第1タンディッシュカー12が第1待機場106にあるときに第1タンディッシュデッキ13のうち進入スペース側手摺柵13dの一端部とその一端部側の一方の端部手摺柵13cとの間の部分と進入スペース側手摺柵13dの他端部とその他端部側の他方の端部手摺柵13cとの間の部分とにそれぞれ隣接する。
第1デッキ20は、第1床板32と、2つの第1支柱34と、を有する。
第1床板32は、その上に作業者が乗るものであり、鋳込床100から上方へ離れた位置で略水平に配置されている。第1床板32は、第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動方向D1に沿って延びている。前記第1デッキ鋳込時隣接部42及び前記第1デッキ待機時隣接部44は、それぞれ、この第1床板32上の部分である。第1床板32は、作業者が乗る上面(床面)を有している。この第1床板32の上面は、第1デッキ20の搭乗面に相当する。当該第1床板32の上面は、第1タンディッシュデッキ13の床板13aの上面と実質的に同じ高さに位置する(図6及び図7参照)。
2つの第1支柱34は、鋳込床100上に立設されて第1床板32を下から支えるものである。2つの第1支柱34は、第1タンディッシュカー12の移動方向D1に沿って互いに離間して配置され、鋳込床100上に立設されている。
また、前記第1床板32は、2つの第1支柱34のうち最もダミーバーカー18の進入スペース120寄りの第1支柱34から進入スペース120側へ張り出す第1張出部32aを有する。この第1張出部32aが前記第1デッキ鋳込時隣接部42を構成する。最も進入スペース120寄りの第1支柱34の進入スペース120側で且つ第1張出部32aの下方はスペースになっている。このスペースにダミーバーカー18の台車部18bの幅方向において保持部18cよりも第1支柱34側に突出した部分が進入するようになっている。
また、本実施形態の連続鋳造設備1は、第1デッキ20に設けられた手摺柵35と第1階段36を備えている。
手摺柵35は、第1デッキ20の第1床板32上からの作業者の転落等を防止するためのものである。この手摺柵35は、第1床板32の周縁部にその縁部が延びる方向に沿って設けられている。この手摺柵35は、第1デッキ鋳込時隣接部42上のスペース、2か所の第1デッキ待機時隣接部44上のスペース及び第1階段36が接続されるスペースは空け、それ以外の第1床板32の周縁部上に設けられている。
第1階段36は、第1デッキ20の第1床板32と鋳込床100との間を上り下りするためのものである。この第1階段36は、第1タンディッシュカー12の移動方向D1に沿う方向における第1床板32の両端部のうち鋳込場104から遠い方の端部に設けられ、その端部から第1タンディッシュカー12の移動領域と反対側(第1待機場106と反対側)へ下りられるようになっている。
第2デッキ21は、第2タンディッシュカー14の移動領域に対して、第1デッキ20が第1タンディッシュカー12の移動領域に対して設けられた一方側と同じ側の位置に配置され、鋳込床100上に設置されている。第2デッキ21は、第2デッキ鋳込時隣接部46と、第2デッキ待機時隣接部48とを有する。
第2デッキ鋳込時隣接部46は、第2タンディッシュカー14が鋳込場104にあるときに第2タンディッシュデッキ15上と第2デッキ21上との間の作業者の往来を許容するように前記配置方向D2において第2タンディッシュデッキ15に隣接する。また、第2デッキ鋳込時隣接部46は、第1タンディッシュカー12が鋳込場104にあるときに第1タンディッシュデッキ13上と第2デッキ21上との間の作業者の往来を許容するように前記配置方向D2において第1タンディッシュデッキ13に隣接する。具体的には、この第2デッキ鋳込時隣接部46は、第2タンディッシュカー14が鋳込場104にあるときに前記配置方向D2において第2タンディッシュデッキ15の進入スペース側手摺柵15dの第2待機場108側の端部と第2待機場108側の端部手摺柵15cとの間の部分に隣接する。また、この第2デッキ鋳込時隣接部46は、第1タンディッシュカー12が鋳込場104にあるときに前記配置方向D2において第1タンディッシュデッキ13の進入スペース側手摺柵13dの第2待機場108側の端部と第2待機場108側の端部手摺柵13cとの間の部分に隣接する。
第2デッキ待機時隣接部48は、第2タンディッシュカー14が第2待機場108にあるときに第2タンディッシュデッキ15上と第2デッキ21上との間の作業者の往来を許容するように前記配置方向D2において第2タンディッシュデッキ15に隣接する部分である。この第2デッキ待機時隣接部48は、第2タンディッシュカー14の移動方向D1に沿う方向において互いに離れた2か所に設けられている。具体的には、この2か所の第2デッキ待機時隣接部48は、第2タンディッシュカー14が第2待機場108にあるときに第2タンディッシュデッキ15のうち進入スペース側手摺柵15dの一端部とその一端部側の一方の端部手摺柵15cとの間の部分と進入スペース側手摺柵15dの他端部とその他端部側の他方の端部手摺柵15cとの間の部分とにそれぞれ隣接する。
第2デッキ21は、前記配置方向D2に沿って鋳込位置Dに向かって第1デッキ20と左右対称となるように構成されている(図2及び図3参照)。第2デッキ21は、第2床板37と、2つの第2支柱38とを有する。この第2床板37と2つの第2支柱38の配置及び構成は、第1デッキ20の第1床板32と2つの第1支柱34を左右反転させたものの配置及び構成に相当する。第2床板37は、作業者が乗る上面(床面)を有している。この第2床板37の上面は、第2デッキ21の搭乗面に相当する。この第2床板37の上面は、第2タンディッシュデッキ15の床板15aの上面と実質的に同じ高さに位置する(図4参照)。第2床板37は、2つの第2支柱38のうち最もダミーバーカー18の進入スペース120寄りの第2支柱38から進入スペース120側へ張り出す第2張出部37aを有する。この第2張出部37aが前記第2デッキ鋳込時隣接部46を構成する。
第2張出部37aの進入スペース120側の端縁が第2デッキ21の進入スペース120側の端縁になっている。この第2張出部37aの端縁と第1張出部32aの進入スペース120側の端縁との間のスペースが、ダミーバーカー18の保持部18cの進入スペースとなっている。
最も進入スペース120寄りの第2支柱38の進入スペース120側で且つ第2張出部37aの下方はスペースになっている。このスペースにダミーバーカー18の台車部18bの幅方向において保持部18cよりも第2支柱38側に突出した部分が進入するようになっている。
また、本実施形態の連続鋳造設備1は、第2デッキ21に設けられた手摺柵39と第2階段40を備えている。
手摺柵39は、第1デッキ20に設けられた手摺柵35と対称となるように配置及び構成されている。
第2階段40は、第2デッキ21の第2床板37と鋳込床100との間を上り下りするためのものである。この第2階段40は、第2タンディッシュカー14の移動方向D1に沿う方向における第2床板37の両端部のうち鋳込場104から遠い方の端部に設けられ、その端部から第2タンディッシュカー14の移動領域と反対側(第2待機場108と反対側)へ下りられるようになっている。
また、本実施形態の連続鋳造設備1は、図2に示すように、第1待機位置Eで待機している第1タンディッシュ10aを加熱するための第1加熱装置52と、第2待機位置Fで待機している第2タンディッシュ10bを加熱するための第2加熱装置54とをさらに備える。冷えたタンディッシュ10が鋳込位置Dに配置された場合には、取鍋6から注湯される溶鋼がそのタンディッシュ10内で固まり、タンディッシュ10から鋳型3へ溶鋼を注湯できなくなる。このため、第1タンディッシュ10aが第1待機位置Eで待機しているときには、その第1タンディッシュ10aを第1加熱装置52によって加熱しておき、その後、その第1タンディッシュ10aが鋳込位置Dに配置されたときに溶鋼が固まるのを防止している。同様の理由により、第2タンディッシュ10bが第2待機位置Fで待機しているときには、その第2タンディッシュ10bを第2加熱装置54によって加熱する。
第1加熱装置52は、鋳込床100上において第1待機場106を挟んで第1デッキ20と反対側に設置され、第1待機場106に隣接して配置されている。また、第2加熱装置54は、鋳込床100上において第2待機場108を挟んで第2デッキ21と反対側に設置され、第2待機場108に隣接して配置されている。
第1加熱装置52は、図12に示すように、第1待機場106に隣接して鋳込床100上に立設された加熱装置本体52aと、その加熱装置本体52aに水平軸回りに回動可能となるように取り付けられたアーム状のノズル52bとを有する。この第1加熱装置52は、ノズル52bから火炎を噴き出すように構成されており、そのノズル52bから噴き出した火炎を第1待機位置Eで待機している第1タンディッシュ10a内の空間へ吹き入れることによって当該第1タンディッシュ10aを加熱する。ノズル52bは、加熱装置本体52aから第1待機場106へ向かって略水平に延びて第1タンディッシュ10a内の空間へ火炎を吹き入れる吹入姿勢P1と、その吹入姿勢P1から上方へ回動した退避姿勢P2とを取り得る。
また、第2加熱装置54の構成は、第1加熱装置52の構成と同様である。
また、本実施形態の連続鋳造設備1は、送り装置4による鋳片の送り速度、第1タンディッシュ10aに設けられたスライドバルブにより制御される第1タンディッシュ10aから鋳込口101への溶鋼の注湯流量、及び、第2タンディッシュ10bに設けられたスライドバルブにより制御される第2タンディッシュ10bから鋳込口101への溶鋼の注湯流量のうちの少なくとも1つを調節するために操作される第1操作装置62及び第2操作装置64をさらに備える。この第1及び第2操作装置62,64は、いわゆるペンダントスイッチである。
第1操作装置62は、操作位置(図8及び図9参照)と退避位置(図10及び図11参照)との間で移動可能となるように第1デッキ20の第1張出部32aに取り付けられている。操作位置は、第1操作装置62が作業者によって操作される位置であり、第1デッキ20と第2デッキ21との間のダミーバーカー18の進入スペース内で鋳込位置Dに隣接した位置である。退避位置は、第1操作装置62とダミーバーカー18との干渉が回避される位置であり、ダミーバーカー18の進入スペースから外れた位置である。
この第1操作装置62は、操作スイッチを有するボックス状の操作装置本体62aと、その操作装置本体62aを第1デッキ20の第1張出部32aから吊り下げる吊下部62bとを有する。
吊下部62bは、第1張出部32aから下方に延びるようにその第1張出部32aに取り付けられた部分と、その部分の下端から水平方向に延びる部分と、その部分からさらに下方に延びて操作装置本体62aに接続された部分とを有する。吊下部62bのうち第1張出部32aに取り付けられた部分は、第1張出部32aに対して縦軸回りに旋回可能となっている。この吊下部62bが旋回することにより、第1操作装置62は、図5のようにダミーバーカー18の進入スペース内に張り出して作業者が鋳込位置Dの近傍において操作装置本体62aの操作スイッチを操作可能な操作位置と、前記進入スペースの外側でダミーバーカー18と干渉しない退避位置との間で移動可能となっている。
第2操作装置64は、第1操作装置62と同様、第1デッキ20と第2デッキ21との間のダミーバーカー18の進入スペース内の操作位置とその進入スペースの外側の退避位置との間で移動可能となるように第2デッキ21の第2張出部37aに取り付けられている。この第2操作装置64の構成は、第1操作装置62の構成と同様である。
本実施形態では、第1デッキ20と第2デッキ21が、第1タンディッシュカー12が鋳込場104にあるときに第1タンディッシュデッキ13と隣接するとともに第2タンディッシュカー14が鋳込場104にあるときに第2タンディッシュデッキ15と隣接する鋳込時隣接部42,46をそれぞれ有し、この第1デッキ20に鋳込床100と当該第1デッキ20との間を上り下りするための第1階段36が設けられているとともに、第2デッキ21に鋳込床100と当該第2デッキ21との間を上り下りするための第2階段40が設けられている。このため、鋳込位置Dにおいて第1タンディッシュ10aからその鋳込位置D近傍の鋳込床100上に溶鋼が漏出した場合には、第1タンディッシュデッキ13上の作業者は、第1デッキ20上を経由して第1階段36を下りるか、もしくは、第2デッキ21上を経由して第2階段40を下りることにより、漏出した溶鋼による影響が及ばない鋳込位置Dから離れた鋳込床100上へ退避することができる。
また、本実施形態では、作業者は、鋳込位置Dや第1及び第2待機位置E,Fでの作業が生じるまでの間、また、第1及び第2タンディッシュカー12,14の移動時に、第1デッキ20上又は第2デッキ21上で待機することができる。第1及び第2待機位置E,Fでの作業としては、例えば第1及び第2加熱装置52,54による第1及び第2タンディッシュ10a,10bの加熱を消火した後、タンディッシュカバー31の加熱口への保温カバーの装着作業等がある。鋳込位置Dでの作業としては、取鍋6のスライドバルブへの油圧ホースの接続や取鍋ノズル24の開口作業、タンディッシュ10内の空間への保温材の投入作業などがある。
作業者は、第1及び第2待機位置E,Fで加熱されたタンディッシュ10の温度低下を防止するため、そのタンディッシュ10が鋳込位置Dへ配置されたら鋳造を開始できるようにするための準備を迅速に行う必要がある。このため、作業者は、第1待機位置E及び第2待機位置Fから迅速に鋳込位置Dへ移動する必要があるが、本実施形態では、第1待機位置Eでの作業後、第1タンディッシュデッキ13上から鋳込床100に降りることなく第1デッキ20へ渡り、第1タンディッシュカー12が鋳込場104へ移動した後、第1デッキ20上から第1タンディッシュデッキ13上に再び渡ることができる。また、第2待機位置Fでの作業後、第2タンディッシュ15上から鋳込床100に降りることなく第2デッキ21上へ渡り、第2タンディッシュカー14が鋳込場104へ移動した後、第2デッキ21上から第2タンディッシュデッキ15上に再び渡ることができる。従って、作業者は、迅速に鋳込位置Dへ移動できる。また、階段の上り下りの回数を削減でき、その階段の上り下りに費やす労力を削減できる。
また、本実施形態では、前記作業に必要な資材、例えば取鍋ノズル24、取鍋ノズル24の開口作業に用いる酸素開口パイプ、保温材、検温装置等を第1及び第2デッキ20,21上に置いておくことが可能であり、前記作業の都度、必要な資材を鋳込床100上から階段を通って運び上げなくてもよい。従って、作業者にとって利便性が高い。
また、本実施形態では、第1デッキ20と第2デッキ21は、ダミーバーカー18がダミーバー16を鋳型3内の成型空間へ上方から挿入するための挿入位置116へ搬送するための進入スペースをそれらのデッキ20,21間にあけるように互いに離間して配置されている。このため、第1及び第2デッキ20,21により作業者の利便性を高めつつ、ダミーバーカー18と第1及び第2デッキ20,21との干渉を生じることなく当該ダミーバーカー18によりダミーバー16を前記挿入位置116へ搬送して鋳型3内の成型空間に上方から挿入可能な構成を実現できる。
また、第1デッキ20と第2デッキ21との間に前記進入スペース120が確保されていることにより、第1及び第2デッキ20,21との干渉回避のためにダミーバーカー18のうちダミーバー16を保持する保持部18cの高さが制約を受けない。このため、前記配置方向D2に沿う方向における保持部18cの長さを拡大する替わりに保持部18cの高さを拡大して、長さの大きいダミーバー16を保持するために必要な保持部18c上の距離を確保することができる。仮に前記配置方向D2に沿う方向における保持部18cの長さを拡大する場合には、同方向におけるダミーバーカー18の長さが拡大するので、それに応じて同方向における鋳込床100の全長を増大せざるを得ない。しかしながら、本実施形態では保持部18cの長さを拡大しなくても、保持部18cの高さを大きくすることにより長さの大きいダミーバー16を保持できるので、鋳込床100の全長の増大を抑制できる。
また、ダミーバーカー18が進入スペース120に進入していない状態において、その進入スペース120を、鋳込床100の床下の送り装置4にメンテナンス等のために上方からアクセスするためのスペースとして利用することができる。このため、例えば、送り装置4の構成部材であるロールスタンドの交換のために天井クレーンにより上方から前記進入スペース120を通って床下の送り装置4にアクセスすることができる。すなわち、天井クレーンにより進入スペース120を通って床下の送り装置4からのロールスタンドの吊り上げ及び床下の送り装置4へのロールスタンドの吊り下しを行うことができる。
また、本実施形態では、第1デッキ20と第2デッキ21との間にダミーバーカー18の保持部18cの進入スペースが確保されているので、ダミーバーカー18との干渉を回避するために第1及び第2デッキ20,21の高さを増大させる必要がない。このため、第1タンディッシュデッキ13の搭乗面、第2タンディッシュデッキ15の搭乗面、第1デッキ20の搭乗面及び第2デッキ21の搭乗面を、同じ高さの位置にすることが可能となっている。このため、作業者が、第1タンディッシュデッキ13の搭乗面上と第1デッキ20の搭乗面上とを往来するとき、第1タンディッシュデッキ13の搭乗面上と第2デッキ21の搭乗面上とを往来するとき、第2タンディッシュデッキ15の搭乗面上と第2デッキ21の搭乗面上とを往来するとき、及び、第2タンディッシュデッキ15の搭乗面上と第1デッキ20の搭乗面上とを往来するときに、躓きにくくすることができる。
また、本実施形態では、第1タンディッシュデッキ13の搭乗面は、第1タンディッシュ10aのタンディッシュカバー31の上面と同じ高さに位置し、第2タンディッシュデッキ15の搭乗面は、第2タンディッシュ10bのタンディッシュカバー31の搭乗面と同じ高さに位置する。このため、第1タンディッシュ10aが第1待機位置Eで待機しているとき及び第2タンディッシュ10bが第2待機位置Fで待機しているときに第1タンディッシュ10a及び第2タンディッシュ10bのタンディッシュカバー31上で行う作業のために作業者がそのタンディッシュカバー31上へ移動するときに躓きにくくすることができる。すなわち、作業者が、第1デッキ20と第1タンディッシュデッキ13との間の境界に加えて第1タンディッシュ10aのタンディッシュカバー31と第1タンディッシュデッキ13との間の境界でも躓きにくくすることができる。また、作業者が、第2デッキ21と第2タンディッシュデッキ15との間の境界に加えて第2タンディッシュデッキ10bのタンディッシュカバー31と第2タンディッシュデッキ15との間の境界でも躓きにくくすることができる。
また、本実施形態では、第1デッキ20の第1床板32がダミーバーカー18の進入スペース120寄りの第1支柱34から進入スペース120側へ張り出して第1デッキ鋳込時隣接部42を構成する第1張出部32aを有する。また、第2デッキ21の第2床板37が前記進入スペース120寄りの第2支柱38から進入スペース120側へ張り出して第2デッキ鋳込時隣接部46を構成する第2張出部37aを有する。このため、鋳込場104に第1タンディッシュカー12又は第2タンディッシュカー14があるときのそのタンディッシュカー上のタンディッシュデッキと第1及び第2デッキ20,21との間のアクセス経路を確保できる。しかも、ダミーバーカー18のうち第1張出部32a及び第2張出部37aよりも下側に位置する台車部18bを前記進入スペース120よりも幅広にすることによりダミーバーカー18の安定性を確保しつつ、その台車部18bの幅方向の両側部を第1及び第2張出部32a,37aの下方のスペースに進入させて第1及び第2デッキ20,21との干渉を回避できる。
さらに、第1及び第2張出部32a,37aよりも下側においてスペースの幅を大きく確保できるため、送り装置4のメンテナンス時にそのスペースから鋳込床100の床下の送り装置4へのアクセスしやすさを向上できる。具体的には、このスペースの幅を大きく確保できることにより、ダミーバーカー18の移動用の一対のレール112間の間隔を広げることが可能になる。仮に一対のレール112間の間隔が小さい場合には、これらのレール112を支持するための梁を送り装置4の上方でその近傍の位置に配置せざるを得ず、この梁及び一対のレール112は、鋳込床100の床下の送り装置4へ上方からアクセスするとき、例えば送り装置4のロールスタンドを交換するために天井クレーンにより鋳込床100の床下からロールスタンドを搬出し、新しいロールスタンドを床下に搬入するときの障害になる。これに対し、前記のように一対のレール112間の間隔を広げることが可能であることにより、鋳込床100の床下からのロールスタンドの搬出及び床下へのロールスタンドの搬入のための領域を一対のレール112間に大きく確保できるとともに、それらのレール112を支持する梁を天井クレーンによるロールスタンドの搬出及び搬入の障害にならない位置に配置することが可能になる。よって、本実施形態では、送り装置4へのアクセスしやすさ、具体的には送り装置4のロールスタンドを交換するために天井クレーンで鋳込床100の床下からロールスタンドを搬出し、新しいロールスタンドを床下に搬入する作業のしやすさを向上できる。
また、本実施形態では、第1及び第2操作装置62,64が第1デッキ20と第2デッキ21との間のダミーバーカー18の進入スペース内の操作位置と、ダミーバーカー18の進入スペースから外れた退避位置との間で移動可能となるように対応するデッキ20,21に取り付けられている。よって、作業者が、送り装置4による鋳片の送り速度、第1タンディッシュ10aから鋳込口101への溶鋼の注湯流量又は第2タンディッシュ10bから鋳込口101への溶鋼の注湯流量を調節するために第1及び第2操作装置62,64を操作するときには、鋳造時であるので、ダミーバーカー18が第1デッキ20と第2デッキ21との間の進入スペースに進入しておらず、その状態で第1及び第2操作装置62,64を前記操作位置に配置することによって鋳込口101に近づけることができる。このため、鋳込口101での溶鋼の状態を見ながら送り速度を調節しやすくすることができる。また、ダミーバーカー18がダミーバー16を挿入位置116に搬送するために前記進入スペースに進入するときには、第1及び第2操作装置62,64を前記退避位置に配置することによって第1及び第2操作装置62,64とダミーバーカー18との干渉を回避できる。
また、本実施形態では、第1待機位置Eで待機している第1タンディッシュ10aを第1加熱装置52によって加熱することができるとともに、第2待機位置Fで待機している第2タンディッシュ10bを第2加熱装置54によって加熱することができる。このため、第1待機位置Eから鋳込位置Dに第1タンディッシュ10aを移動させてその第1タンディッシュ10aに取鍋6から溶鋼が注湯されたときにその溶鋼が第1タンディッシュ10a内で固まってしまうのを防ぐことができるとともに、第2待機位置Fから鋳込位置Dに第2タンディッシュ10bを移動させてその第2タンディッシュ10bに取鍋6から溶鋼が注湯されたときにその溶鋼が第2タンディッシュ10b内で固まってしまうのを防ぐことができる。
さらに、本実施形態では、第1加熱装置52が第1待機場106を挟んで第1デッキ20と反対側にあるので、作業場となる第1デッキ20側のスペースが第1加熱装置52によって占有されるのを防ぐことができる。また、仮に第1待機場106から第1デッキ20を越えた先の場所に第1加熱装置52を設置した場合には、第1加熱装置52から第1待機位置Eの第1タンディッシュ10aへ熱を供給するためのアーム状のノズル52bを第1デッキ20の上を横断して第1タンディッシュ10aへ届かせることになり、第1デッキ20上の通行を阻害する。これに対し、本実施形態では、第1加熱装置52が第1待機場106を挟んで第1デッキ20と反対側にあるので、ノズル52bが第1デッキ20上を横断するのを回避できる。また、第2加熱装置54が第2待機場108を挟んで第2デッキ21と反対側にあるので、第1加熱装置52の場合と同様の理由により、作業場となる第2デッキ21側のスペースが第2加熱装置54によって占有されるのを防ぐことができるとともに、第2タンディッシュ10bへ熱を供給するためのノズルが第2デッキ21上を横断するのを回避できる。
本発明による連続鋳造設備は、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による連続鋳造設備に以下のような構成を採用可能である。
第1タンディッシュカーの移動方向に沿う方向における第1階段の位置及び第2タンディッシュカーの移動方向に沿う方向における第2階段の位置は、必ずしも前記のような位置に限定されない。すなわち、第1階段及び第2階段は、ダミーバーカーに干渉しない範囲で、もっと鋳込場寄りの位置に設置されてもよい。
第1タンディッシュデッキは、第1タンディッシュカーに搭載された第1タンディッシュの周囲を概ね囲むように構成されたものに必ずしも限定されず、第2タンディッシュデッキは、第1タンディッシュカーに搭載された第2タンディッシュの周囲を概ね囲むように構成されたものに必ずしも限定されない。例えば、第1タンディッシュデッキは、第1タンディッシュに対して第1デッキ側に隣接する領域のみに設けられてもよい。同様に、第2タンディッシュは、第1タンディッシュに対して第2デッキ側に隣接する領域のみに設けられてもよい。
また、本発明における操作装置は、必ずしも第1デッキと第2デッキの両方に設けられている必要はなく、第1デッキと第2デッキのいずれか一方のみに操作装置が取り付けられていてもよい。
また、操作装置は、前記のような旋回式のものではなく、スライドすることによってダミーバーカーの進入スペース内の操作位置と進入スペース外の退避位置とを取り得るように第1デッキ及び/又は第2デッキに取り付けられるものであってもよい。
また、連続鋳造設備は、ダミーバーカーを必ずしも備えていなくてもよい。すなわち、本発明による連続鋳造設備は、鋳片から切り離されたダミーバーを挿入位置に搬送して鋳型内の空間に上方から挿入する形態のものに必ずしも限定されず、鋳型内の空間に下方からダミーバーを挿入する形態のものも含む。
ダミーバーカーを備えていない形態の連続鋳造設備では、第1デッキと第2デッキは互いに繋がっていてもよい。すなわち、第1デッキと第2デッキとの間にダミーバーカーの進入スペースが設けられていなくてもよい。
また、第1及び第2タンディッシュデッキ上の進入スペース側手摺柵の一端部とその一端部側の一方の端部手摺柵との間及び進入スペース側手摺柵の他端部とその他端部側の他方の端部手摺柵との間には、それぞれ、それらの手摺柵間のスペースを閉鎖するためのチェーンを架設してもよい。また、第1デッキの第1デッキ鋳込時隣接部上のスペースを閉鎖するためのチェーンをそのスペースの両側の手摺柵間に架設するとともに、第1デッキ待機時隣接部上のスペースを閉鎖するためチェーンをそのスペースの両側の手摺柵間に架設してもよい。また、同様に、第2デッキの第2デッキ鋳込時隣接部上のスペースを閉鎖するためのチェーンをそのスペースの両側の手摺柵間に架設するとともに、第2デッキ待機時隣接部上のスペースを閉鎖するためのチェーンをそのスペースの両側の手摺柵間に架設してもよい。これらのチェーンは、それが閉鎖するスペースを通る必要がある状況のときには、取り外してそのスペースを通行可能とし、通る必要がないときにはそのスペースを当該チェーンによって閉鎖するようにする。このようにすることが安全上の観点から好ましい。