JP2020005356A - 回転電機の固定子および回転電機 - Google Patents
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Abstract
【課題】コイル接合時の絶縁被膜の剥離を抑制することができ、絶縁信頼性が高い回転電機の固定子と、回転電機を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の回転電機の固定子は、円筒状の固定子鉄心と、固定子鉄心の周方向に配置された複数のスロットと、導体および導体の表面に形成された絶縁被膜を有し、スロットに挿入された固定子コイルとを備え、固定子コイルは、互いに接合された第1のコイル(400)および第2のコイル(401)を有し、第1のコイルおよび第2のコイルは、絶縁被膜の一部が剥離されて導体が露出した剥離部(405,406)を有し、第1のコイルおよび第2のコイルの剥離部同士が固定子の端部において接合されており、第1のコイルおよび第2のコイルの剥離部の少なくとも一方の端部(407)が、互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする。【選択図】図8
Description
本発明は、回転電機の固定子および回転電機に関する。
車両駆動用として用いられる回転電機は小型軽量化・高出力化が求められている。従来は丸線状導体コイルに絶縁被膜を被覆した丸線コイルが使用されていたが、近年は占積率向上による出力向上が見込まれる平角線も用いられるようになり、平角線固定子を用いた巻線方式が採用されている。
平角線固定子を用いた巻線方式は、U字形状に成形された平角線を固定子鉄心に挿入し、固定子鉄心から突き出した平角線直線部を周方向にそれぞれねじることにより、異なるスロットの平角線との接続を行う。その際に、スター結線の場合、各相の巻線同士を接続する中性線が必要となるが、中性線は上記U字コイルとは形状が大幅に異なり、コイル上を這いまわすなど形状が複雑になる。
特許文献1には、周方向に並んだ複数のスロットを有する固定子鉄心と、絶縁被膜を備えた矩形断面の導体で形成され、上記スロットに挿入される固定子巻線と、を備える回転電機の固定子において、上記固定子巻線は、略U字形状に成形されたセグメントコイルを複数接続して成る第1、第2および第3の相巻線と、第1のスロットと第2のスロットとに跨る連続した一本の導体で形成され、上記第1の相巻線と上記第2の相巻線とを繋ぐ第1の中性線と、第3のスロットから引き出されて上記第3の相巻線と上記第1の中性線とを接続する第2の中性線と、を備えることを特徴とする回転電機の固定子が開示されている。特許文献1によれば、中性線の這い回し形状が簡素化でき、中性線の接続作業の作業性向上や接続部の信頼性向上を図ることができるとされている。
特許文献2には、周方向に並んだ複数のスロットが形成された固定子鉄心、および該固定子鉄心の上記スロット内に挿入された絶縁被膜付き固定子コイルを有する固定子と、上記固定子鉄心に対して所定隙間を介して回転可能に配置された回転子と、を備える回転電機において、上記固定子コイルは、矩形断面の導体を予め略U字形状に成形したセグメントコイルが複数接続された複数相の主コイルと、上記スロットから引き出されて交流端子が取り付けられる口出し線を含み、各々の上記主コイルの一方の端部に接続される第1の副コイルと、上記スロットから引き出される中性線を含み、各々の上記主コイルの他方の端部に接続される第2の副コイルと、を備え、上記口出し線および上記中性線は、複数の直線部および屈曲部から構成された折り曲げ構造の導体で構成されており、上記口出し線は、上記スロットからコイルエンド方向に斜めに立ち上がると共にコイルエンドに沿って径方向に折り曲げられた第1導体部と、コイルエンド上をコイルエンドに沿って湾曲するように径方向に折り曲げられた第2導体部とを有し、上記中性線は、コイルエンドにおいて上記中性線の軸方向高さが変化する領域が径方向に折り曲げられ、上記直線部および上記屈曲部が形成されている導体領域に絶縁膜を形成したことを特徴とする回転電機が開示されている。
特許文献2によれば、平角状導体コイルからなる中性線は複数の直線部および屈曲部から構成された折り曲げ構造の導体で構成されており、上記中性線は軸方向の高さが変化する領域が径方向に折り曲げられているため、コアバックやコイルエンドの小型化を図ることができる。とされている。
しかしながら、上述した特許文献1および特許文献2の構造は、ともに2本のコイルを接合する中性線構造であり、コイル先端の絶縁被膜を剥離し、部分的に導体を露出させた第1のコイルの導体部と、コイル中間部の絶縁被膜を部分的に剥離して導体を露出された第2コイルの導体部を熱接合する構造であるが、熱接合部近傍で2本のコイルの絶縁被膜が接触する構造であるため、接合時の熱変形で絶縁被膜が圧迫されて絶縁被膜が剥離する恐れがある。
中性線接合部は導体が露出しているため、次工程にて絶縁膜塗装を施し、導体部に絶縁塗膜を設けて絶縁化する必要がある。導体部に絶縁塗膜を塗装する際は、加熱した導体を粉体中に投入して導体の表面に塗膜を設けるが、絶縁被膜が剥離した場合、導体から剥離した絶縁被膜は外気にさらされることにより温度が低下するため絶縁塗膜が表面を被覆しなくなる。一方で、絶縁被膜が剥離していた場合、剥離した被膜に覆われた導体部にも絶縁塗膜が被覆されない。そのため、中性線接合部の電気的安全性を十分に確保できないといった問題があった。
本発明は、上記事情に鑑み、コイル接合時の絶縁被膜の剥離を抑制することができ、絶縁信頼性が高い回転電機の固定子と、回転電機を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、円筒状の固定子鉄心と、固定子鉄心の周方向に配置された複数のスロットと、導体および導体の表面に形成された絶縁被膜を有し、上記スロットに挿入された固定子コイルとを備える回転電機である。固定子コイルは、互いに接合された第1のコイルおよび第2のコイルを有し、第1のコイルおよび第2のコイルは、絶縁被膜の一部が剥離されて導体が露出した剥離部を有する。第1のコイルおよび第2のコイルは、この剥離部同士が固定子鉄心の端部において接合されている。そして、第1のコイルおよび第2のコイルの剥離部の少なくとも一方の端部が、互いに異なる位置に配置されている。
また、本発明の第2の態様は、固定子と、固定子に空隙を置いて回転自在に配置された回転子とを有する回転電機であり、固定子が上述した本発明の固定子であることを特徴とする。
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
本発明によれば、コイル接合時の絶縁被膜の剥離を抑制することができ、絶縁信頼性が高い回転電機の固定子と、回転電機を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。ただし、ここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
[回転電機]
まず始めに、本実施例の回転電機の概略を説明する。本実施例の回転電機は、小型化・高出力化が可能な平角線を用いることから自動車の走行に使用するのが好適な回転電機である。回転電機を使用する自動車には、エンジンと回転電機の両方を備えるハイブリッドタイプの電気自動車(HEV)と、エンジンを用いないで回転電機のみで走行する電気自動車(EV)とがあるが、以下に説明する回転電機はいずれのタイプにも適用できる。以下では、ハイブリッドタイプの自動車に用いられる回転電機を例に説明する。
まず始めに、本実施例の回転電機の概略を説明する。本実施例の回転電機は、小型化・高出力化が可能な平角線を用いることから自動車の走行に使用するのが好適な回転電機である。回転電機を使用する自動車には、エンジンと回転電機の両方を備えるハイブリッドタイプの電気自動車(HEV)と、エンジンを用いないで回転電機のみで走行する電気自動車(EV)とがあるが、以下に説明する回転電機はいずれのタイプにも適用できる。以下では、ハイブリッドタイプの自動車に用いられる回転電機を例に説明する。
図1は実施例1の回転電機の一例の断面図である。本実施例の回転電機100は、永久磁石内蔵型の三相電機モータである。具体的には、固定子コイル(固定子巻線)110が固定子鉄心111に巻回され、固定子コイル110に三相交流電流が供給されると回転子120が回転する電動機として作動する。またエンジンによって回転電機100が駆動されると、三相交流を発電する発電機として作動する。つまり、自動車の走行状態によって、上記機能を選択的に利用することができる。
図1に示すように、回転電機100は、ハウジング130と、ハウジング130に固定されている固定子112を有する。この固定子112は前述のように固定子巻線110と固定子鉄心111を備えている。この固定子鉄心111の内側には、回転子120が空隙140を介して回転自在に配設されている。回転子120は回転子鉄心121と永久磁石150と、非磁性体の当て板160とを備えている。回転子鉄心121は、円柱状のシャフト170に固定されている。なお、以下の記載では、シャフト170の軸心J方向を「軸方向」、軸心Jを中心として回転する方向を「周方向」、軸心Jを中心とした放射方向を「径方向」と称する。
ハウジング130は、軸受10A,10Bが設けられたエンドブラケット180を有し、シャフト170はこれらの軸受10A、10Bにより回転自在に保持されている。シャフト170には、回転子120の極の位置や回転速度を検出するレゾルバ190が設けられている。
図2は図1のA−A線断面図である。なお、図2ではハウジング130、固定子コイル110の記載を省略している。固定子鉄心111には、軸方向に伸びる複数のスロット200が、周方向に等間隔に配置されている。スロット200の数は、たとえば本実施例では48個である。スロット200には固定子コイル110が収容される。
なお、各スロット200内には、図示していないが絶縁紙(いわゆるスロットライナー)が配置されている。絶縁紙は、スロット200に挿入される固定子コイル110の相互間および固定子コイル110とスロット200の内面との間に配設されて、固定子コイル110間や固定子コイル110とスロット200の内面との間の絶縁耐圧の向上を図っている。なお、絶縁紙は、例えば耐熱ポリアミド紙の絶縁シートであり、厚さは0.1〜0.5mm程度である。
回転子鉄心121には、直方体形状の磁石挿入孔が外周部近傍において周方向に等間隔に配置されている。各磁石挿入孔には、永久磁石150が埋め込まれ、接着剤などで固定されている。磁石挿入孔の円周方向の幅は、永久磁石150の円周方向の幅よりも大きく形成されており、永久磁石150の両側には磁気的空隙151が形成されている。この磁気的空隙151は接着剤を埋め込んでもいいし、樹脂で永久磁石150と一体に固めても良い。
永久磁石150の磁化方向は径方向を向いており、界磁極ごとに磁化方向の向きが反転している。すなわち、ある磁極を形成するための永久磁石150の固定子側の面がN極、シャフト側の面がS極であったならば、隣の磁極を形成する永久磁石150の固定子側の面はS極、シャフト側の面はN極となっている。本実施形態では、8個の永久磁石150が円周方向に等間隔で磁極毎に交互に磁化方向が変わるように磁化されて配置されており、回転子120は8極を形成している。
なお、永久磁石150は、磁化したあとに回転子鉄心121の磁石挿入孔に埋め込んでもよいし、磁化する前に回転子鉄心121の磁石挿入孔に挿入し、その後に強力な磁界を与えて磁化するようにしてもよい。
ただし、磁化後の永久磁石150は、磁力が強力であり、固定子112に永久磁石150を固定する前に磁石を着磁すると、永久磁石150の固定時に回転子鉄心121との間に強力な吸引力が生じ、この吸引力が作業の妨げになる。また、強力な吸引力により、永久磁石150に鉄粉などのごみが付着する恐れがある。そのため、永久磁石150を回転子鉄心121の磁石挿入孔に挿入したあとに磁化するほうが、回転電機100の生産性を向上するうえで望ましい。
[回転電機の固定子]
図3は図1の固定子の斜視図である。固定子112は、ハウジング130の内周側に固定され、円筒状の固定子鉄心111と、この固定子鉄心111に装着される固定子コイル110とを有している。固定子鉄心111の軸方向の一方の端部には、複数の固定子コイル110がU字形状をなすコイルエンド110aが形成される。一方、固定子鉄心111の反対側の端部には、固定子コイル110同士の溶接部分が円状に並んだ溶接側コイルエンド110bが形成される。溶接側コイルエンドは、例えばTIG(Tungsten Inert Gas)によって溶接されている。なお、図3において、出力取出し線の図示は省略した。コイルエンド110a側に引き出された符号400,401,402,403を付した巻線は中性線である。
図3は図1の固定子の斜視図である。固定子112は、ハウジング130の内周側に固定され、円筒状の固定子鉄心111と、この固定子鉄心111に装着される固定子コイル110とを有している。固定子鉄心111の軸方向の一方の端部には、複数の固定子コイル110がU字形状をなすコイルエンド110aが形成される。一方、固定子鉄心111の反対側の端部には、固定子コイル110同士の溶接部分が円状に並んだ溶接側コイルエンド110bが形成される。溶接側コイルエンドは、例えばTIG(Tungsten Inert Gas)によって溶接されている。なお、図3において、出力取出し線の図示は省略した。コイルエンド110a側に引き出された符号400,401,402,403を付した巻線は中性線である。
図3に示す固定子鉄心111は、積層された電磁鋼板500(厚さ:0.05mm〜1mmからなり、打ち抜き加工またはエッチング加工で成形され、積層されたのちに溶接により固定されている。この溶接によって積層された電磁鋼板500は接合され、ハウジング130への圧入時の締付力による電磁鋼板500の変形が抑制されることになる。
固定子鉄心111は、上述した円筒状のハウジング130の内側に焼嵌めにより嵌合固定される。具体的な組立て方としては、例えば、先ず固定子鉄心111を配置しておき、この固定子鉄心111に、あらかじめ加熱して熱膨張により内径を広げておいたハウジング130を嵌め込む。次に、ハウジング130を冷却して内径を収縮させることで、その熱収縮により固定子鉄心111の外周部を締め付ける。
固定子鉄心111は、運転時における固定子112のトルクによる反作用によってハウジング130に対して空転しないように、ハウジング130の内径寸法を固定子鉄心111の外径寸法よりも所定値だけ小さくなるように設定する。その結果、焼嵌め嵌合により固定子鉄心111がハウジング130内に強固に固定される。常温における固定子鉄心111の外径とハウジング130の内径との差は締め代と呼ばれ、この締め代を回転電機100の最大トルクを想定して設定することで、ハウジング130は所定の締付力により固定子鉄心111を保持することができる。なお、固定子鉄心111は焼嵌めにより嵌合固定する場合に限定されることはなく、圧入によりハウジング130に嵌合固定することとしても良い。
[固定子コイル]
次に、固定子コイルについて説明する。図4は図3の固定子コイルのセグメントの模式図である。本実施例では、固定子コイル110には平角線が用いられ、分布巻の方式で巻かれている。分布巻とは、複数のスロット200を跨いで離間したスロット200に固定子コイル110が収納される巻線方式である。断面が矩形状の平角線を、予めフォーム成型などを用いてU字形状に成型し、そして、その固定子コイル110を絶縁紙300が設けられたスロット200の軸方向に沿って挿入し、U字部の直線部を複数のスロット200を跨いで離れた2つのスロット200に挿入している。
次に、固定子コイルについて説明する。図4は図3の固定子コイルのセグメントの模式図である。本実施例では、固定子コイル110には平角線が用いられ、分布巻の方式で巻かれている。分布巻とは、複数のスロット200を跨いで離間したスロット200に固定子コイル110が収納される巻線方式である。断面が矩形状の平角線を、予めフォーム成型などを用いてU字形状に成型し、そして、その固定子コイル110を絶縁紙300が設けられたスロット200の軸方向に沿って挿入し、U字部の直線部を複数のスロット200を跨いで離れた2つのスロット200に挿入している。
その後、固定子鉄心111の軸方向反対側に突出した直線導体部110cを捻り成形し、その端部を同様に捻り成形した他の固定子コイル110の端部と溶接する(図4のX部分)。このように複数の固定子コイル110を固定子鉄心111のスロット200に挿入し、それらを接続することで1つの相巻線が形成される。
上述した固定子コイル110の成形方法は一例を述べただけであり、固定子コイル110は型を用いてU字形状に成形してもよいし、固定子コイル110をスロット200に挿入したのちにU字形状に成形しても良い。
図5は図3の固定子コイルの結線構造を示す模式図である。固定子コイル110は、図5に示すようなスター結線の構成で接続されている。本実施例では、2つのスター結線が並列接続された2スター構成の固定子コイル110が採用されている。すなわち、U1相、V1相およびW1相のスター結線と、U2相、V2相およびW2相のスター結線とを備えており、U1およびU2相の口出し線は交流端子41Uにより1つに纏められ、V1およびV2相の口出し線は交流端子41Vにより1つに纏められ、W1およびW2相の口出し線は交流端子41Wにより1つに纏められている。N1およびN2はそれぞれのスター結線の中性点である。
図6は図5の符号Aで示した部分の巻線の概略形状を表す図である。中性線400はスロット200内に収納される直線導体部400b、400c、コイルエンド部400d、400e、400fからなる。また、中性線401はスロット200内に収納される直線導体部401b、401c、コイルエンド部401dからなる。U1−W1相巻線の中性線400の一端は、U相巻線の固定子コイル110(U)に接続され、他端はW相巻線の固定子コイル110(W)に接続されている。またV1相巻線の中性線401の一端はV相巻線の固定子コイル110(V)に接続されている。なお、もう一方の中性線部402、403は、スロット200の這回し位置やコイル形状は異なるものの、接続される相巻線は同様の構成であるため省略する。
固定子コイル110にはエナメル等の絶縁被膜が施されているので、U字形状の2つの端部の絶縁被膜をあらかじめ除去して剥離部を形成しておくと接続が容易になる。絶縁被膜の除去方法としては、例えば薬品を用いて化学的に除去する方法などいくつか存在するが、本実施形態では固定子コイルを治具に固定した状態で、プレスに取り付けた金属部品で固定子コイル表面の絶縁被膜を削りとる方法を取っている。このとき、絶縁被膜のみを除去しても良いし、導体部を含めて絶縁被膜を除去して剥離部を形成しても良い。一方、必ずしも剥離する必要はなく、剥離せずに絶縁被膜を炭化させながら圧力をかけて接続する方法もある。
固定子コイル110と同様に、中性線400、401も溶接して接続する。中性線接続部400a、401aの絶縁被膜はあらかじめ除去しておくと接続が容易になる。なお、中性線接続部400a、401aの接続は、固定子鉄心111のスロット200に挿入する前に実施しても良いし、挿入後に実施しても良い。
図7は固定子鉄心の一端側に引き出された中性線の形状を示す図である。なお、その他の巻線については図示を省略した。スロット200に挿入された直線導体部110c(図4)は、固定子鉄心111から引き出され、固定子鉄心111のスロット200に挿入されるその他の巻線に沿って這いまわされ、直線導体部110cが挿入されるスロット200へと入り込む。一方、中性線400は、スロット200から直線導体部110cが引き出され、固定子鉄心111のスロット200に挿入されるそのほかの巻線に沿って這いまわされた後に、中性線401に接続される。接続には、ロウ付けやTIG溶接などが用いられる。
図8は図7の中性線の模式図である。図8に示すように、2本のコイル400,401(第1の中性線400および第2の中性線401)が接合されている。図8では、中性線400は、固定子コイルの2つの相を接続し、中性線401は、中性線400に接合される。中性線400は、コイルの途中部分に剥離部405が設けられている。一方、中性線401は、コイルの先端に剥離部406が設けられている。2本の中性線400,401は、絶縁被膜が剥離された剥離部405,406の溶接部408で溶接されて接合されている。溶接部408は、剥離部405,406を合わせた全周に設けられている。
図8では、中性線401の剥離部406の先端と反対側の端部407(点線部分)と、中性線400の剥離部405の、中性線401の先端と遠い方の端部407(点線部分)の位置がずれて配置されている。剥離部405,406の端部407は、それぞれの剥離部の全周で同じ位置となっている。したがって、剥離部405のどの面の端部407も、剥離部406のどの面の端部とも、中性線400,401の長さ方向において同じ距離だけずれている。このような構成とすることで、中性線400,401の溶接時の絶縁被膜の剥離を防止することができる。
図9は従来の中性線の模式図である。図9に示すように、従来の構成では、中性線400´,401´の剥離部405´,406´の一方の端部407´が同じ位置で配置されている。このような場合、中性線400´,401´の熱接合時に、絶縁被膜の剥離が生じる。
以下に、従来の構成で絶縁被膜の剥離が生じる機構と、本実施例の構成が絶縁被膜の剥離を防止できる理由について詳述する。図10は従来の中性線の溶接方法を示す模式図である。図10では、2本の中性線400´,401´の端部407´が同じ位置に配置している(図9(A))。このような状態で、剥離部405´,406´に電極410を押し当てて(図9(B))、熱をかけると、剥離部405´,406´の変形によって中性線400´,401´の端部407´付近(図9(C)中の点線部分)の絶縁被膜が圧迫される。この結果、絶縁被膜の剥離をまねく。
図11は実施例1の中性線の溶接方法を示す模式図である。本実施例では、先にも述べたように、中性線400,401の剥離部405,406の端部407を、中性線400,401の長手方向にずらして配置している。このように構成することで、剥離部405,406に電極410を押し当て(図10(B))、熱をかけても、端部407付近には空間があるため、絶縁被膜は圧迫されず、剥離しない(図10(C))。
2本の中性線401,402のずらす長さ(ずれ距離)は、中性線溶接時に中性線の絶縁被膜が剥離しないような長さであれば特に限定は無いが、例えば以下のように設定することができる。L1を中性線400の剥離部405の長さ、L2を中性線401の剥離部406の長さ、L3を中性線400,401の端部407のズレ距離、L4を絶縁被膜で覆われたコイルの幅、L5を剥離部(導体部)の幅とすると、L1>L2かつL3>(L4−L5)×2の関係とすることが好ましい。なお、L1とL2の大小関係はL2>L1としても良いが、望ましくはL1>L2である。
また、L1=L2であり、端部407からL1、L2の3/4の位置を溶接部408とする場合、L3=L1×1/4とすることが好ましい。L3をこのように設定することで、コイルの絶縁被膜の剥離を防止することができる。
本発明では、中性線400,401の剥離部405,406の少なくとも一方の端部が、互いにずれて配置されていればよい。中性線400,401の剥離部405,406の端部407のずらし方としては、例えば端部407が所定の距離ずれるように中性線400,401を配置してもよいし、剥離部405,406の長さが異なる中性線400,401を用意してもよい。前者の場合は、中性線400,401を同じ型で作製することができる。このため、生産性の観点で有利である。
なお、溶接部408は他のコイルと絶縁する必要があり、例えば絶縁ワニスのような樹脂や絶縁塗料、チューブ状の絶縁部材で覆う必要がある。ただし、他のコイルとの距離が十分ある場合は上記の対策は必要としない場合もある。
図12は実施例2の中性線の模式図である。図12に示すように、中性線401,402の一方の端部407のみではなく、他方の端部409(中性線401の先端409と、中性線400の、中性線401の先端と近い側の端部409)の位置もずらしてもよい。このようにすることで、一方の端部407をずらす場合よりも、さらに絶縁被膜の剥離を防止することができる。
図13は実施例3の中性線の模式図である。図13に示すように、中性線401,402の一方の端部407の位置が同じであっても、剥離部405,406の長さを変えることで、剥離部405,406の他方の端部の位置をずらすことができる。このような構成であっても、熱接合部分と絶縁被膜との距離を離すことができ、実施例1および実施例2と同様の効果を得ることができる。
また、本実施例では溶接部408が中性線402の先端付近になるように中性線401,402を溶接している。ここで、中性線402の先端付近とは、剥離部406の長さ方向中央部よりもコイル先端側の領域である。このように溶接部408を中性線402の先端付近にすることで、溶接時の熱が中性線402のコイル先端部から放熱されやすくなる。その結果、剥離部の端部407側の絶縁被膜への熱影響を抑制することができる。
上述した実施例1〜3では、図3に示す固定子112のコイルエンド110aの中性線の溶接に本発明を適用しているが、コイルエンド110bのTIG溶接部にも本発明を適用することができる。TIG溶接部は、材料費低減と製品のコンパクト化の観点から、コイルの長さを短くすることが求められている。しかし、コイルの長さを短くすると、溶接時の加熱位置と剥離部の端部との位置が近くなるので、絶縁被膜の剥離が生じやすくなる。しかしながら、本発明を適用して、加熱位置から剥離部の端部の位置を離すことで、絶縁被膜の剥離を防止することができる。
以上、説明したように、本発明によれば、コイル接合時の絶縁被膜の剥離を抑制することができ、絶縁信頼性が高い回転電機の固定子と、回転電機を提供することができることが示された。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
100…回転電機、110…固定子コイル、110a,110b…コイルエンド、111…固定子鉄心、112…固定子、120…回転子、121…回転子鉄心、130…ハウジング、140…空隙、150…永久磁石、151…磁気的空隙、160…当て板、170…シャフト、10A,10B…軸受、180…エンドブラケット、190…レゾルバ、200…スロット、300…絶縁紙、400,401,402,403…中性線、400a,401a…中性線接続部、400b,400c,401b,401c…中性線直線導体部、400d,400e,400f,401d…コイルエンド部、405,405´,406,406´…剥離部、407,407´,409…剥離部の端部、408,408´…溶接部、41U,41V,41W…交流端子、N1,N2…中性点、500…電磁鋼板。
Claims (10)
- 円筒状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心の周方向に配置された複数のスロットと、導体および前記導体の表面に形成された絶縁被膜を有し、前記スロットに挿入された固定子コイルとを備え、
前記固定子コイルは、互いに接合された第1のコイルおよび第2のコイルを有し、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは、前記絶縁被膜の一部が剥離されて前記導体が露出した剥離部を有し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの前記剥離部同士が前記固定子鉄心の端部において接合されており、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの前記剥離部の少なくとも一方の端部が、互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする回転電機の固定子。 - 前記第1のコイルは、前記固定子コイルの2つの相を接続する第1の中性線であり、前記第2のコイルは、前記第1の中性線に接合される第2の中性線であり、
前記第2の中性線は、先端に前記剥離部を有し、
前記第2の中性線の前記剥離部の前記先端と反対側の端部と、前記第1の中性線の前記第2の中性線の先端と遠い側の端部とが、互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。 - 前記第2の中性線の前記先端と、前記第1の中性線の前記第2の中性線の先端と近い側の端部とが、互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機の固定子。
- 前記第1のコイルは、前記固定子コイルの2つの相を接続する第1の中性線であり、前記第2のコイルは、前記第1の中性線に接合される第2の中性線であり、
前記第2の中性線は、先端に前記剥離部を有し、
前記第2の中性線の前記剥離部の前記先端と、前記第1の中性線の前記第2の中性線の先端と近い側の端部とが、互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。 - 前記第1の中性線の剥離部の長さL1、前記第2の中性線の剥離部の長さL2、
前記第1の中性線の剥離部の端部と前記第2の中性線の剥離部の端部との間の長さL3、前記絶縁被膜で覆われた前記固定子コイルの幅L4および前記固定子コイルの前記剥離部の前記導体の幅L5が、L1>L2かつL3>(L4−L5)×2を満たすことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。 - 前記第1の中性線の剥離部の長さL1、前記第2の中性線の剥離部の長さL2、前記第1の中性線の剥離部の端部と前記第2の中性線の剥離部の端部との間の長さL3が、L1=L2であり、前記第1の中性線と前記第2の中性線の接合部が、前記端部から3/4L1の位置である時に、L3=L1×1/4を満たすことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
- 前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは、前記固定子の、前記固定子コイルが中性線によって接合される端部と反対側の端部で接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
- 前記剥離部の端部は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルのそれぞれの全周において同じ位置にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
- 前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは、前記剥離部の一部において、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルを合わせた全周が接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
- 固定子と、前記固定子に空隙を置いて回転自在に配置された回転子とを有し、
前記固定子が、請求項1から4のいずれか1項に記載の固定子であることを特徴とする回転電機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018120631A JP2020005356A (ja) | 2018-06-26 | 2018-06-26 | 回転電機の固定子および回転電機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018120631A JP2020005356A (ja) | 2018-06-26 | 2018-06-26 | 回転電機の固定子および回転電機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2020005356A true JP2020005356A (ja) | 2020-01-09 |
Family
ID=69100703
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018120631A Pending JP2020005356A (ja) | 2018-06-26 | 2018-06-26 | 回転電機の固定子および回転電機 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2020005356A (ja) |
-
2018
- 2018-06-26 JP JP2018120631A patent/JP2020005356A/ja active Pending
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