最初に、図1を参照し、本発明の実施形態に係る作業機械を含む作業監視システムSYSについて説明する。図1は、作業監視システムSYSの構成例を示す図である。作業監視システムSYSは、作業機械を操作する操作者の状態を監視するシステムである。操作者の状態は、例えば、操作者の疲労状態を含む。作業機械は、掘削機(ショベル)、リフティングマグネット機、クレーン、フォークリフト等を含む。
図1の例では、作業監視システムSYSは、ショベル100、支援装置200及び管理装置300を含む。作業監視システムSYSを構成するショベル100、支援装置200及び管理装置300はそれぞれ1台であってもよく複数台であってもよい。図1の例では、作業監視システムSYSは、1台のショベル100と、1台の支援装置200と、1台の管理装置300とで構成されている。
ショベル100は、主に、下部走行体1及び上部旋回体3で構成されている。下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられている。アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
ブーム4、アーム5及びバケット6は、作業機構としてのアタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成する。ブーム4は、ブームシリンダ7により駆動される。アーム5は、アームシリンダ8により駆動される。バケット6は、バケットシリンダ9によりそれぞれ駆動される。
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が搭載されている。上部旋回体3において、キャビン10の後方には、ショベルの動力源としてのエンジン11が搭載されている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上部旋回体3には測位装置P1及び通信装置T1が取り付けられている。
キャビン10内には、運転席110及びコンソール120が設置されている。更に、キャビン10内には、コントローラ30及び情報取得装置C1が設置されている。
コントローラ30は、様々な演算を実行する演算装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置を含むマイクロコンピュータである。コントローラ30の各種機能は、例えば、CPUが不揮発性記憶装置に格納されたプログラムを実行することで実現される。
情報取得装置C1は、作業機構を操作する操作者の姿勢に関する情報を取得し、取得した情報をコントローラ30に出力するように構成されている。本実施形態では、情報取得装置C1は、運転席110に座る操作者を撮影できるようにキャビン10のピラー、側壁又は天井等の運転席110から離れた位置に取り付けられたカメラ等の撮像装置である。この場合、操作者は、撮像装置が操作者の姿勢に関する情報を取得するのを支援できるボディスーツを着用していてもよい。ボディスーツは、例えば、所定形状(例えば円形)の複数のマーカが等間隔で表面に配置された布地で形成されている。ボディスーツは、典型的には、操作者の身体に密着する布地で形成されるが、身体に密着しない布地で形成されていてもよい。また、ボディスーツは、全身を覆うものであってもよく、上半身を覆うものであってもよい。撮像装置は、例えば、複数のマーカの位置関係に基づいて操作者の姿勢に関する情報を取得する。なお、情報取得装置C1は、3Dスキャナ、LIDAR等の光学測距装置であってもよい。また、情報取得装置C1は、撮像装置又は光学測距装置等の非接触型の装置ばかりでなく、操作者が着用する伸縮センサを内蔵したボディスーツ、又は、操作者に取り付けられる加速度センサ等のウェアラブルセンサのような接触型の装置であってもよい。或いは、情報取得装置C1は、運転席110に取り付けられたシートベルトの張力を検出するセンサであってもよい。
測位装置P1は、上部旋回体3の位置及び向きを測定するように構成されている。測位装置P1は、例えばGNSSコンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。
通信装置T1は、ショベル100の外部にある外部機器との通信を制御するように構成されている。本実施形態では、通信装置T1は、衛星通信網、携帯電話通信網、インターネット網等を介した外部機器との通信を制御する。また、通信装置T1は、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、無線LAN等の近距離無線通信網を介した支援装置200との通信を制御してもよい。
支援装置200は、携帯端末装置であり、例えば、作業現場にいる作業者等が携帯するタブレットPC、スマートフォン、ウェアラブルPC、スマートグラス等である。
管理装置300は、管理サーバ等の固定端末装置であり、例えば、作業現場外の管理センタ等に設置されるコンピュータである。管理装置300は、例えば、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン等の可搬性のコンピュータであってもよい。
図2は、ショベル100の駆動系の構成例を示す。図2において、機械的動力伝達系は二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは太破線、電気駆動・制御系は点線でそれぞれ示される。
ショベル100の駆動系は、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、操作圧センサ29及びコントローラ30を含む。
エンジン11は、エンジンコントロールユニット(以下、「ECU74」とする。)により制御される。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に接続されている。メインポンプ14及びパイロットポンプ15はエンジン11の動力により駆動される。
メインポンプ14は、作動油ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節する。
パイロットポンプ15は、各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ショベル100に搭載される油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2A(以下、集合的に「油圧アクチュエータ」とする。)のそれぞれに対応する流量制御弁を含む。コントロールバルブ17は、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。
操作装置26は、油圧アクチュエータを操作するために用いられる。本実施形態では、操作装置26は、操作レバー26A、走行ペダル26B及び走行レバー26Cを含む。操作レバー26Lは、アーム開閉操作及び旋回操作に関する左操作レバー26ALと、ブーム昇降操作及びバケット開閉操作に関する右操作レバー26ARとを含む。走行ペダル26Bは、左クローラの前進・後進操作に関する左走行ペダル26BLと、右クローラの前進・後進操作に関する右走行ペダル26BRとを含む。走行レバー26Cは、左走行ペダル26BLと連動する左走行レバー26CLと、右走行ペダル26BRと連動する右走行レバー26CRとを含む。
操作装置26は、作動油ライン27を介してコントロールバルブ17に接続されている。具体的には、コントロールバルブ17内にある流量制御弁のパイロットポートに接続されている。
操作装置26は、作動油ライン28を介して操作圧センサ29に接続されている。操作圧センサ29は、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいて操作装置26のそれぞれの操作内容(例えば、レバー操作の有無、レバー操作方向、レバー操作量等)を検出する。但し、操作装置26の操作内容の検出は、操作レバー26Aの傾きを検出する傾きセンサ等、圧力センサ以外の他のセンサを用いて行われてもよい。
コントローラ30は、情報取得装置C1が取得した操作者の姿勢に関する情報に基づいて操作者の状態に関する情報を導き出すように構成されている。本実施形態では、コントローラ30は、推定部30aを有する。
推定部30aは、情報取得装置C1が取得した操作者の姿勢に関する情報に基づいて操作者の状態を推定する。本実施形態では、推定部30aは、情報取得装置C1が取得した操作者の姿勢に関する情報に基づいて操作者の疲労状態を推定する。例えば、推定部30aは、情報取得装置C1が取得した操作者の上体の姿勢に関する情報に基づいて操作者の上体の重心位置を推定する。そして、所定時間にわたる操作者の上体の重心位置の分布に基づいて操作者の疲労状態を推定する。但し、推定部30aは、情報取得装置C1が取得した操作者の姿勢に関する情報に基づいて操作者の全身の重心位置を推定し、所定時間にわたる操作者の全身の重心位置の分布に基づいて操作者の疲労状態を推定してもよい。
情報取得装置C1としてボディスーツが採用された場合、推定部30aは、近距離無線通信等を介してボディスーツに埋め込まれた複数の伸縮センサの出力を受け、操作者の全身又は上体の姿勢に関する情報を導き出す。そして、操作者の全身又は上体の姿勢に関する情報に基づいて操作者の全身又は上体の重心位置を推定する。なお、伸縮センサは、例えば、ボディスーツを構成する繊維の抵抗値の変化を繊維の伸縮として検出するように構成されている。
情報取得装置C1としてシートベルトの張力を検出するセンサが採用された場合、推定部30aは、例えば、張力の最大値に基づいて操作者の全身又は上体の重心位置を推定してもよい。また、張力の変動回数に基づいて操作者の全身又は上体の重心位置の移動回数を推定してもよい。
また、コントローラ30は、導き出した操作者の状態に関する情報に基づいて外部機器C2を制御するように構成されていてもよい。本実施形態では、コントローラ30は、機器制御部30bを有する。
外部機器C2は、表示装置130(図5参照。)、音声出力装置、香り発生装置、レギュレータ13、ゲートロック弁50(図3参照。)、パイロット圧制御弁51(図3参照。)及び通信装置T1の少なくとも1つを含む。
機器制御部30bは、推定部30aが推定した操作者の疲労状態に基づいて外部機器C2を制御する。例えば、機器制御部30bは、推定部30aにより操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定された場合に、操作者が疲労している旨を報知する。具体的には、機器制御部30bは、音声出力装置に対して制御指令を出力し、操作者が疲労している旨の情報を音声出力装置から出力させる。音声出力装置は、ショベル100の周辺で作業する作業者等に向けて音声を出力してもよく、キャビン10内の操作者に向けて音声を出力してもよい。また、機器制御部30bは、操作者が疲労している旨の情報を表示装置130に表示させてもよい。表示装置130は、音声出力装置と同様に、ショベル100の周辺で作業する作業者が視認できるように構成されていてもよい。
或いは、機器制御部30bは、推定部30aにより操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定された場合に、通信装置T1を通じ、操作者が疲労している旨の情報を支援装置200及び管理装置300の少なくとも1つに向けて送信してもよい。この場合、機器制御部30bは、作業内容に関する情報及び作業環境に関する情報の少なくとも1つを関連付けて送信してもよい。操作者の疲労と作業内容又は作業環境との関係を管理者等が分析できるようにするためである。作業内容に関する情報は、例えば、操作圧センサ29の出力等を含む。作業環境に関する情報は、例えば、掘削対象(土砂等)の硬さに関する情報、及び、外気温に関する情報等の少なくとも1つを含む。掘削対象(土砂等)の硬さに関する情報は、例えば、ブームシリンダ7のボトム側油室の圧力等に基づいて導き出されてもよい。この構成により、管理者等は、操作者の今後の作業内容又は作業時間等を適切に変更できる。例えば、管理者等は、各操作者が疲労状態になるまでの時間を把握し、各操作者に対する作業配分を決定できる。
或いは、機器制御部30bは、推定部30aにより操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定された場合に、図示しないアクチュエータを利用して運転席110の座面の前後方向における傾斜を変化させてもよい。操作者の着座姿勢を変化させることで、操作者の疲労を軽減させるためである。
或いは、機器制御部30bは、情報取得装置C1が取得した操作者の上体の姿勢に関する情報に基づいて香りを発生させてもよい。例えば、機器制御部30bは、推定部30aにより操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定された場合に、香り発生装置に制御指令を出力し、香りを発生させてもよい。香りは、操作者をリラックスさせるための芳香であってもよく、操作者を覚醒させるための香りであってもよい。また、機器制御部30bは、操作者をリラックスさせるための音楽を音声出力装置から出力させてもよく、操作者を覚醒させるための音楽を音声出力装置から出力させてもよい。
或いは、機器制御部30bは、推定部30aにより操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定された場合に、ショベル100の動きを制限してもよい。作業の中止又は休憩を操作者に促すためである。例えば、機器制御部30bは、レギュレータ13に制御指令を出力してメインポンプ14の吐出量を制限することで、掘削アタッチメントの動きを鈍化させてもよい。或いは、機器制御部30bは、ゲートロック弁50に制御指令を出力し、操作装置26に供給される作動油の流量を遮断することで、すなわち、操作装置26を無効状態とすることで、掘削アタッチメントの動きを停止させてもよい。或いは、機器制御部30bは、パイロット圧制御弁51に制御指令を出力し、操作装置26が生成するパイロット圧を調整することで、掘削アタッチメントの動きを制限してもよい。或いは、操作レバー26Aがフォースフィードバック機能を備えている場合、機器制御部30bは、推定部30aにより操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定された場合に、操作レバー26Aに関する操作反力を大きくしてもよい。操作レバー26Aを操作し難くすることで、作業の中止を操作者に促すためである。
或いは、機器制御部30bは、推定部30aにより操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定された場合に、ショベル100の動作モードをアシストモードに切り換えてもよい。アシストモードは、例えば、操作レバー26Aの操作量の揺動に起因する油圧アクチュエータの粗い動きを滑らかにする動作モードであってもよい。この場合、機器制御部30bは、パイロット圧制御弁51に制御指令を出力し、操作装置26が生成するパイロット圧を調整することで、パイロット圧の揺動を抑制してもよい。
或いは、機器制御部30bは、通信装置T1を介して支援装置200又は管理装置300から制限指令を受けた場合に、ショベル100の動きを制限してもよい。この構成により、例えば、管理センタにいる管理者は、操作者が疲労している旨の情報を受けた場合に、ショベル100に向けて制限指令を送信することで、ショベル100の動きを遠隔操作で制限できる。
次に、図3を参照し、ショベル100の制御系について説明する。図3は、ショベル100に搭載される制御系の構成例を示す図である。
コントローラ30は蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。蓄電池70はエンジン11によって駆動される発電機11aによって充電される。蓄電池70の電力は、情報取得装置C1、電装品72及びエンジン11のスタータ11b等にも供給される。スタータ11bは蓄電池70からの電力で駆動されてエンジン11を始動させる。
エンジン11はECU74により制御される。ECU74は、エンジン11の状態を示す各種データをコントローラ30に向けて送信する。コントローラ30は、一時記憶部(揮発性記憶装置)にこのデータを蓄積する。
エンジン11に設けられた水温センサ11cは、冷却水温のデータをコントローラ30に向けて送信する。レギュレータ13は、斜板傾転角に関する情報をコントローラ30に向けて送信する。吐出圧センサ14bは、メインポンプ14の吐出圧に関する情報をコントローラ30に向けて送信する。
メインポンプ14が吸入する作動油が貯蔵されたタンクとメインポンプ14との間の管路CLには、油温センサ14cが設けられている。油温センサ14cは、管路CLを流れる作動油の温度に関する情報をコントローラ30に向けて送信する。
操作圧センサ29は、例えば、操作レバー26Aが操作されたときにコントロールバルブ17に作用するパイロット圧に関する情報をコントローラ30に向けて送信する。
エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルである。本実施形態では、エンジン回転数調整ダイヤル75はSPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードを含む4段階以上の多段階でエンジン回転数の切り換えができるよう構成されている。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数の設定状態に関する情報をコントローラ30に向けて送信する。
SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数が利用される。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数が利用される。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数が利用される。アイドリングモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数が利用される。そして、エンジン11は、その回転数がエンジン回転数調整ダイヤル75で設定されたエンジン回転数と同じになるように制御される。
ゲートロック弁50は、パイロットポンプ15と操作装置26との間を繋ぐパイロットラインPL1の連通状態と遮断状態とを切り換えできるように構成されている。パイロットラインPL1が連通状態のとき、操作装置26は有効状態となり、パイロットラインPL1が遮断状態のとき、操作装置26は無効状態となる。操作装置26の有効状態は、操作装置26に対する操作がショベル100の動きに反映される状態を意味し、操作装置26の無効状態は、操作装置26に対する操作がショベル100の動きに反映されない状態を意味する。本実施形態では、ゲートロック弁50は、ゲートロックレバーGLが引き上げられたときにパイロットラインPL1を連通状態とし、ゲートロックレバーGLが押し下げられたときにパイロットラインPL1を遮断状態とする。また、ゲートロック弁50は、コントローラ30からの制御指令に応じてパイロットラインPL1の連通状態と遮断状態とを切り換えできるように構成されていてもよい。
情報取得装置C1は、操作装置26が有効状態のときに作業機構を操作する操作者の上体の姿勢に関する情報を取得するように構成されていてもよい。例えば、情報取得装置C1は、操作レバー26Aが有効状態のときに限り、掘削アタッチメントを操作する操作者の上体の姿勢に関する情報を取得するように構成されていてもよい。この場合、情報取得装置C1は、操作レバー26Aが無効状態のときには、操作者の上体の姿勢に関する情報を取得しないように構成されていてもよい。或いは、情報取得装置C1は、操作レバー26Aが無効状態のときに取得した操作者の上体の姿勢に関する情報がコントローラ30によって利用されないように構成されていてもよい。具体的には、情報取得装置C1は、操作レバー26Aが無効状態のときに取得した操作者の上体の姿勢に関する情報を消去してもよい。
また、情報取得装置C1は、操作者による操作が行われている最中に、すなわち操作レバー26Aが操作状態のときに、操作者の上体の姿勢に関する情報を取得するように構成されていてもよい。この場合、情報取得装置C1は、操作者による操作が行われていないときには、すなわち操作レバー26Aが非操作状態のときには、操作者の上体の姿勢に関する情報を取得しないように構成されていてもよい。或いは、情報取得装置C1は、操作レバー26Aが非操作状態のときに取得した操作者の上体の姿勢に関する情報がコントローラ30によって利用されないように構成されていてもよい。具体的には、情報取得装置C1は、操作レバー26Aが非操作状態のときに取得した操作者の上体の姿勢に関する情報を消去してもよい。
パイロット圧制御弁51は、コントロールバルブ17内の流量制御弁のパイロットポートと操作装置26とを繋ぐパイロットラインPL2における作動油の圧力であるパイロット圧を調整できるように構成されている。本実施形態では、パイロット圧制御弁51は、コントローラ30からの制御指令に応じてパイロット圧を調整できるように構成されている。この構成により、コントローラ30は、操作レバー26Aの操作量に対する流量制御弁の変位量を制限できる。そのため、油圧アクチュエータの動きを制限でき、ひいては、掘削アタッチメントの動きを制限できる。
次に、図4〜図6を参照し、キャビン10内に設置された運転席110に座る操作者の上体姿勢の変化について説明する。図4は、キャビン10内に設置された運転席110に座る操作者の側面図であり、図4(A)及び図4(B)を含む。図4(A)は、作業開始時の操作者の状態を示し、図4(B)は、長時間の作業が行われた後の操作者の状態を示す。図5は、キャビン10内に設置された運転席110の上面図であり、図4(A)における操作者の上体の重心位置CG1と、図4(B)における操作者の上体の重心位置CG2とを示している。図6は、操作者の上体の重心位置CGが分布する範囲を説明する図であり、図6(A)及び図6(B)を含む。図6(A)は、運転席110の上面図であり、図6(B)は、重心位置CGのX座標の頻度分布を示す。
運転席110は操作者が着座するシート112と背もたれ114を含む。本実施形態では、運転席110はリクライニングシートであり、背もたれ114の傾斜角度が調節可能である。運転席110の左右両側にはアームレスト116(左アームレスト116L及び右アームレスト116R)が配置されている。アームレスト116は回動可能となるように構成されている。
コンソール120は、左コンソール120L及び右コンソール120Rを含む。左コンソール120Lは、運転席110の左側に配置され、右コンソール120Rは、運転席110の右側に配置されている。運転席110及びコンソール120は、キャビン10の床面に固定されたレール上を移動可能に設置されている。したがって、操作者は、キャビン10のフロントガラスに対し、運転席110及びコンソール120を好みの位置に移動させて固定することができる。また、運転席110のみを前後にスライドさせることができ、コンソール120の位置に対する運転席110の位置を調節することもできる。
左コンソール120Lの前側には左操作レバー26ALが設けられ、右コンソール120Rの前側には右操作レバー26ARが設けられている。運転席110に座る操作者は、左手で左操作レバー26ALを把持して左操作レバー26ALを操作し、且つ、右手で右操作レバー26ARを把持して右操作レバー26ARを操作する。
運転席110の前方の床面には走行ペダル26Bが配置されている。運転席110に座る操作者は、左足で左走行ペダル26BLを操作して左側走行用油圧モータ1Lを駆動し、右足で右走行ペダル26BRを操作して右側走行用油圧モータ1Rを駆動する。
左走行ペダル26BLの近傍には、左走行レバー26CLが設置されている。運転席110に座る操作者は、左手で左走行レバー26CLを操作することで、左足で左走行ペダル26BLを操作したときと同様に、左側走行用油圧モータ1Lを駆動できる。また、右走行ペダル26BRの近傍には、右走行レバー26CRが設置されている。運転席110に座る操作者は、右手で右走行レバー26CRを操作することで、右足で右走行ペダル26BRを操作したときと同様に、右側走行用油圧モータ1Rを駆動できる。
キャビン10の右前部には、ショベル100の作業条件及び動作状態等の情報を表示する表示装置130が配置されている。運転席110に座る操作者は表示装置130に表示された情報を確認しながらショベル100による作業を行うことができる。
運転席110の左側(すなわち、キャビン10の乗降用ドアがある側)には、ゲートロックレバーGLが設けられている。図4(A)、図4(B)及び図5は、ゲートロックレバーGLが引き上げられたときの状態を示している。操作者は、ゲートロックレバーGLを引き上げることで、エンジン11の起動が許可され、ショベル100を操作できるようになる。一方、操作者は、ゲートロックレバーGLを押し下げることで、エンジン11を起動不可とすることができる。したがって、操作者は、運転席110に座ってゲートロックレバーGLを引き上げない限り、ショベル100を作動させることができない。この構成により、ショベル100は、ゲートロックレバーGLが押し下げられた状態にある限り、操作者の身体の一部が操作レバー26Aに誤って接触してしまったとしても掘削アタッチメントが動いてしまうのを防止できる。
図4〜図6に示すように、操作者の上体の重心位置CGは、操作者が疲れていないときと疲れているときとで異なる場合が多い。図4〜図6の例では、操作者が疲れていないときの第1時点における操作者の上体の重心位置CG1は、操作者が疲れているときの第2時点における操作者の上体の重心位置CG2よりも前側(+X側)にある。なお、ショベル100の前後軸に平行なX軸は、シート112の座面の後端を原点Oとしている。
より具体的には、図6(A)に示すように、操作者が疲れていないときの重心位置CG1は、分布範囲ER1内に位置し、操作者が疲れているときの重心位置CG2は、分布範囲ER2内に位置する。図6(A)の例では、分布範囲ER1は、午前の作業開始時から3時間が経過するまでの期間で1分毎に推定された重心位置CG1の分布範囲を示す。分布範囲ER2は、午前に比べて操作者の疲労が大きいと考えられる午後の作業開始時から3時間が経過するまでの期間で1分毎に推定された重心位置CG2の分布範囲を示す。なお、図6(A)の破線は、運転席110に座っている操作者の臀部及び大腿部の位置を表している。
図6(B)の実線は、午前の3時間で推定された180個の重心位置CG1のX座標の頻度分布を示し、破線は、午後の3時間で推定された180個の重心位置CG2のX座標の頻度分布を示す。操作者が疲れていないときの重心位置CG1のX軸方向における変動範囲W1は、例えば図6(B)に示すように、操作者が疲れているときの重心位置CG2のX軸方向における変動範囲W2よりも小さいという特性を有する。また、操作者が疲れていないときの重心位置CG1の最大頻度F1は、例えば図6(B)に示すように、操作者が疲れているときの重心位置CG2の最大頻度F2よりも大きいという特性を有する。但し、図6(B)に示すような特性は、操作者に応じて異なる。また、上述の説明は、主に、重心位置CGのX軸方向における推移に関する特性に関するが、重心位置CGのY軸方向における推移に関する特性、及び、重心位置CGのZ軸方向における推移に関する特性にも同様に適用される。
そこで、コントローラ30は、このような特性を利用して操作者の疲労状態を推定するように構成されている。
図7は、コントローラ30が操作者の疲労状態を推定する処理(以下、「推定処理」とする。)の一例のフローチャートである。コントローラ30は、所定の制御周期毎に(例えば1分毎に)繰り返しこの推定処理を実行する。
最初に、コントローラ30は、操作者の上体の重心位置CGを推定する(ステップST1)。本実施形態では、コントローラ30の推定部30aは、情報取得装置C1としてのカメラが取得した操作者の画像に画像処理を適用して操作者の上体の重心位置CGを推定する。重心位置CGは、例えば、基準座標系における3次元座標である。基準座標系は、例えば、カメラの中心を原点とする直交座標系である。
推定部30aは、所定の条件を満たす場合には、操作者の上体の重心位置CGの推定を省略してもよい。所定の条件は、例えば、「旋回動作中であること」を含む。旋回動作中においては、操作者は、旋回軸回りの角加速度の影響を受け、上体姿勢が変化し易いためである。すなわち、旋回動作中における上体姿勢の変化と、疲労による上体姿勢の変化とを区別できないためである。この場合、推定部30aは、例えば、操作圧センサ29の出力に基づいて旋回動作中であるか否かを判定してもよい。同じ理由により、所定の条件は、「掘削中であること」及び「走行中であること」等の少なくとも1つを含んでいてもよい。
その後、コントローラ30は、重心位置CGの推移に基づいて疲労状態を推定する(ステップST2)。本実施形態では、コントローラ30の推定部30aは、今回推定した重心位置CGを含む過去の複数の重心位置CGの推移に基づいて疲労状態を推定する。
具体的には、推定部30aは、直近の所定時間(例えば直近の30分間)における、分布範囲ER2に属する重心位置CGの数(頻度)を導き出し、その頻度に基づいて操作者の疲労状態を推定する。例えば、頻度が高いほど疲労が大きいという前提の下で、現在の疲労状態が予め設定された複数のレベルの何れに属するかを決定する。特定の分布範囲に属する重心位置CGの頻度は、所定のリセット条件が満たされた場合に、リセットされてもよい。所定のリセット条件は、例えば、「シートベルトが外されたこと」、「エンジン11がオフされたこと」及び「ゲートロックレバーGLが押し下げられたこと」の少なくとも1つを含む。
また、推定部30aは、所定時間における重心位置CGの移動距離、移動距離別の頻度、又は、移動が発生する時間間隔等に基づいて操作者の疲労状態を推定してもよい。
分布範囲ER2は、不揮発性記憶装置に予め記憶されている三次元範囲である。本実施形態では、操作者毎に更新可能に記憶されている。コントローラ30は、例えば、ショベル100の起動時に個人ID又はパスワード等を操作者に入力させることで操作者を識別する。コントローラ30は、運転席に座っている操作者が持っている携帯電話、スマートフォン等の携帯情報端末と近距離無線通信を行うことで、操作者を識別してもよい。この構成により、コントローラ30は、操作者が交替した場合にも適切に対応できる。
その後、コントローラ30は、推定した疲労状態が所定レベルに達しているか否かを判定する(ステップST3)。本実施形態では、推定部30aは、現在の疲労状態のレベルが所定レベルに達しているか否かを判定する。
次に、図8を参照し、情報取得装置C1の別の構成例について説明する。図8は、キャビン10内に設置された運転席110に座る操作者の側面図であり、図4(A)に対応する。図8の例では、情報取得装置C1として、操作者に装着される複数の加速度センサASが追加的に採用されている点で、図4の例と異なる。
図8の例では、加速度センサASは、頭部加速度センサAS1、肩部加速度センサAS2、胸部加速度センサAS3、上腕部加速度センサAS4、前腕部加速度センサAS5、腹部加速度センサAS6、大腿部加速度センサAS7、及び、脚部加速度センサAS8を含む。上腕部加速度センサAS4は、左上腕部加速度センサAS4L及び右上腕部加速度センサAS4Rを含む。前腕部加速度センサAS5は、左前腕部加速度センサAS5L及び右前腕部加速度センサAS5Rを含む。大腿部加速度センサAS7は、左大腿部加速度センサAS7L及び右大腿部加速度センサAS7Rを含む。脚部加速度センサAS8は、左脚部加速度センサAS8L及び右脚部加速度センサAS8Rを含む。なお、図8は、右上腕部加速度センサAS4R、右前腕部加速度センサAS5R、右大腿部加速度センサAS7R及び右脚部加速度センサAS8Rの図示を省略している。また、図8の例では、頭部加速度センサAS1がヘルメットに取り付けられ、肩部加速度センサAS2、胸部加速度センサAS3、上腕部加速度センサAS4、前腕部加速度センサAS5、腹部加速度センサAS6、大腿部加速度センサAS7、及び、脚部加速度センサAS8が作業服に取り付けられている。
コントローラ30は、加速度センサASの出力に基づいて操作者の全身又は上体の姿勢に関する情報を導き出す。そして、操作者の全身又は上体の姿勢に関する情報に基づいて操作者の全身又は上体の重心位置CGを推定する。その上で、コントローラ30は、操作者の全身又は上体の重心位置CGの推移に基づいて操作者の疲労状態を推定する。
上述のように、本発明の実施形態に係る作業機械としてのショベル100は、作業機構としての掘削アタッチメントと、掘削アタッチメントを操作するための操作レバー26Aと、操作レバー26Aが有効状態のときに掘削アタッチメントを操作する操作者の上体の姿勢に関する情報を取得する情報取得装置C1と、情報取得装置C1が取得した操作者の上体の姿勢に関する情報に基づいて操作者の状態に関する情報を導き出す演算装置としてのコントローラ30と、を備えている。この構成により、ショベル100は、操作者の疲労状態をより正確に推定できる。疲労の進行に伴う操作者の上体姿勢の崩れを疲労状態の推定に利用できるためである。
作業機械は、リフティングマグネット機、クレーン又はフォークリフト等であってもよい。この場合、作業機構は、リフティングマグネット機における吸着機構、クレーンにおけるワイヤ巻き取り機構、又は、フォークリフトにおけるリフト機構等を含む。
コントローラ30は、望ましくは、情報取得装置C1が取得した操作者の上体の姿勢に関する情報から、操作者の上体の重心位置CGを推定する。その上で、コントローラ30は、操作者の上体の重心位置CGの推移に基づいて操作者の疲労状態を推定する。この構成により、コントローラ30は、操作者の疲労状態をより正確に推定できる。操作者の上体の重心位置の変化を、疲労の進行に伴う操作者の上体姿勢の崩れとして把握することで、操作者の上体の重心位置の変化を疲労状態の推定に利用できるためである。
コントローラ30は、望ましくは、情報取得装置C1が取得した操作者の上体の姿勢に関する情報に基づいて操作者の疲労状態を推定し、操作者の疲労状態が所定レベルに達したと推定した場合に、操作者が疲労している旨を報知する。この構成により、コントローラ30は、操作者が疲労していることを確実に管理者等に知らせることができる。また、コントローラ30は、操作者が疲労していることを自覚していない場合であっても、操作者が疲労しているという客観的な判断結果を操作者に知らせることができる。
情報取得装置C1は、撮像装置又は光学測距装置であってもよく、ウェアラブルセンサであってもよく、運転席110に取り付けられたシートベルトの張力を検出するセンサであってもよい。この構成により、運転席110の座面に埋め込まれた検出器のように、座り心地に悪影響を及ぼすことはない。また、情報取得装置C1は、運転席110の交換等の必要がないため、既に出荷されている作業機械にも容易に取り付けられ得る。
コントローラ30は、情報取得装置C1が取得した操作者の上体の姿勢に関する情報に基づいて香りを発生させてもよい。この構成により、コントローラ30は、例えば、操作者の疲労を和らげることができる。或いは、コントローラ30は、疲労により散漫となっている操作者の集中力を回復させることができる。
コントローラ30は、情報取得装置C1が取得した操作者の上体の姿勢に関する情報に基づいて作業機構としての掘削アタッチメントの動きを制限してもよい。この構成により、コントローラ30は、作業の中止若しくは中断、又は、休憩を操作者に促すことができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。