JP2020001183A - 射出成形機の成形支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 樹脂の種類にマッチングした最適(的確)な温調温度を設定可能にして、加熱筒の効率化及び安定化を高めるとともに、成形条件全体の調整幅を広げて、可塑化品質の向上と高い成形品質を確保する。【解決手段】 加熱筒4の内部へ樹脂材料Rを供給する材料供給部5の温調を行う温調部6と、樹脂の種類を入力可能な基本データ入力部Fi,温調部6による最適な温調温度Trを樹脂の種類毎に設定した温調温度データテーブルDT及び成形条件の設定時に基本データ入力部Fiから樹脂の種類が入力されたなら温調温度データテーブルDTから入力された樹脂の種類に対応する温調温度Trを読み出すことにより温調部6の温調温度Trとして設定する温度設定処理部Fcsを有するデータ処理部F,並びに当該温調温度Trをディスプレイ7に表示処理する出力処理機能部Fdを有する成形機コントローラ10とを備える。【選択図】 図1

Description

本発明は、可塑化した溶融樹脂をスクリュにより金型に射出充填して成形する射出成形機に対する成形支援を行う際に用いて好適な射出成形機の成形支援装置に関する。
一般に、射出成形機は、可塑化した溶融樹脂をスクリュにより金型に射出充填して成形を行うため、溶融樹脂の溶融状態を適正な状態に維持できるか否かは、望ましい成形品質を確保する上で重要な要素となる。特に、可塑化が過度に進行した場合、樹脂分解率が高くなり、溶融樹脂の変質(炭化等)や無用なガス発生の原因になるなどの不具合を招く。このような不具合は、溶融樹脂に係わる成形条件や滞留時間等と密接に関係し、成形条件が不適合の場合や滞留時間が長期化した場合には、可塑化が過度に進行することにより樹脂分解率が高まるリスクを生じる。したがって、加熱筒内における溶融樹脂の状態を把握して必要な対応処理を行うための技術も、例えば、特許文献1に開示される射出成形機及び特許文献2に開示される可塑化シミュレーション装置により提案されている。
一方、加熱筒内における溶融樹脂の状態は、加熱筒の内部に送り込まれる樹脂材料(ペレット材料)自身の温度(樹脂材料温度)にも影響を受けるため、加熱筒(スクリュ)手前の材料供給部に付設した、樹脂材料を温調する温調部の温度を安定化或いは調整を可能にした技術も提案されている。
従来、この種の技術としては、特許文献3に開示される射出成形機のホッパフランジ及び特許文献4に開示される射出成形機のホッパ下温調部の温度調整装置が知られている。特許文献3に開示のホッパフランジは、ホッパフランジの温度を速やかに上昇安定させ、ホッパ下部の温度を上げることで可塑化能力の向上と、安定した樹脂の可塑化を実現することを目的としたものであり、具体的には、ホッパフランジの前段に棒状のヒータと、ホッパフランジの後段に冷却水配管と、ホッパフランジの中央位置に熱電対とを設置し、ホッパフランジの温度を制御できるようにして、その温度を70℃から130℃の範囲において制御するものである。また、特許文献4に開示の温度調整装置は、ホッパ下部温調部に設けられた冷却用穴と管で接続された温度調整装置本体を有し、かつこの温度調整装置本体は、冷却媒体のタンク、ポンプ、ラジエータ、該ラジエータに対向して冷風を送るモータで駆動されるファンを有し、ポンプの駆動により、冷却媒体がホッパ下温調部と温度調整装置本体間を循環するとともに、ホッパ下温調部には温度センサが設けられ、射出成形機を制御する制御装置により、温度センサで検出した温度が設定温度より高い場合には、ファンにより循環する冷却媒体を冷却し、ホッパ下温調部の温度をフィードバック制御するものである。
特開2005−022260号公報 特開2015−123668号公報 特開2006−272600号公報 特開2005−28868号公報
しかし、上述した従来の材料供給部における温調部の温度を安定化或いは調整可能にした技術は、次のような問題点もあった。
第一に、材料供給部(材料落下口,ホッパ)の温調は、樹脂材料を加熱筒の内部に供給する際の前段における予備加熱の観点からの温調であり、後段の加熱筒処理における効率化或いは安定化を考慮したものである。したがって、基本的には、材料供給部に対する独立した温調制御、即ち、設定した目標温度(温調温度)を安定かつ正確に維持する観点からの温調制御となるため、必ずしも的確な温調温度が設定されるとはいえず、加熱筒処理に対する効率化及び安定化を図る観点からは更なる改善の余地があった。
第二に、加熱筒における加熱温度の設定は、通常、ノズル部,ヘッド部,前部,中間部,後部にそれぞれ付設した各加熱部(バンドヒータ)に対して設定し、加熱筒の軸方向に所定の温度分布を得ている。したがって、加熱筒側に影響する材料供給部から供給される樹脂材料自身の温度、即ち、材料供給部に付設した温調部による温調温度を、全体の成形条件や加熱筒側の温度制御、更には樹脂の種類等と連携させることにより、より最適化すれば、加熱筒内における樹脂の溶融状態もより最適化することができる。しかし、従来の温調部では、このような連携思想が存在しないため、成形条件全体の調整幅を広げ、かつ調整の緻密化を図ることは困難であり、結局、高度の可塑化品質、更には成形品質を高めるには限界あった。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の成形支援装置の提供を目的とするものである。
本発明は、上述した課題を解決するため、可塑化した溶融樹脂をスクリュ3により金型2に射出充填して成形する射出成形機Mに対する成形支援を行う射出成形機の成形支援装置1を構成するに際して、加熱筒4の内部へ樹脂材料Rを供給する材料供給部5の温調を行う温調部6と、少なくとも樹脂の種類を入力可能な基本データ入力部Fi,温調部6による最適な温調温度Trを樹脂の種類毎に設定した温調温度データテーブルDT及び少なくとも成形条件の設定時に基本データ入力部Fiから樹脂の種類が入力されたなら温調温度データテーブルDTから入力された樹脂の種類に対応する温調温度Trを読み出すことにより温調部6の温調温度Trとして設定する温度設定処理部Fcsを有するデータ処理部F,並びに当該温調温度Trを少なくともディスプレイ7に表示処理する出力処理機能部Fdを有する成形機コントローラ10とを備えてなることを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、材料供給部5には、加熱筒4に付設したホッパ5h又は材料供給装置Prm,加熱筒4の材料落下口5dの少なくとも一方又は双方を含ませることができるとともに、樹脂材料Rには、ペレット材料Rpを適用できる。また、温調温度データテーブルDTには、温調温度Trの上限値Truを設定することができるとともに、基本データ入力部Fiには、温調温度Trの少なくとも下限値Trmをマニュアルにより入力可能な温調温度マニュアル入力機能を設けることができる。さらに、基本データ入力部Fiは、成形条件に係わる成形条件データDm及びスクリュ3の形態に係わるスクリュデータDsを少なくとも含む基本データDoを入力させることができる。一方、データ処理部Fには、基本データDoに基づいて、加熱筒4内における溶融樹脂の固相率Xcを演算する固相率演算式データDcを設定できるとともに、基本データDo及び固相率演算式データDcに基づく演算処理により計量終了時における溶融樹脂の推定固相率Xcsを求める固相率演算処理部Fcpを設けることができる。他方、スクリュデータDsには、スクリュ表面3fの材質の種類に係わるデータを含ませることができ、これにより、データ処理部Fには、基本データDoに基づいて成形時におけるスクリュ表面3fの樹脂分解率Xrを求める分解率演算式データDrを設定できるとともに、基本データDo及び分解率演算式データDrに基づく演算処理により推定樹脂分解率Xrsを求める分解率演算処理部Fcrを設けることができる。また、データ処理部Fには、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsの度合を判定処理し、この判定処理の結果を出力する判定処理部Fcjを設けることができるとともに、出力処理機能部Fdには、判定処理部Fcjから出力した判定処理の結果を表示する判定結果表示部8jを含むデータ表示部8を設けることができる。さらに、データ処理部Fには、分解率演算式データDrによる演算処理に用いる剪断発熱量Eに係わるデータに基づいて推定上昇温度ΔTusを求める上昇温度演算式データDwを設定できるとともに、上昇温度演算式データDwに基づく演算処理により推定上昇温度ΔTusを求める上昇温度演算処理部Fctを設けることができる。したがって、出力処理機能部Fdには、上昇温度演算処理部Fctにより求めた推定上昇温度ΔTusをディスプレイ7に表示する上昇温度表示部8fuを設けることができる。一方、データ処理部Fには、少なくとも成形条件データにおける樹脂材料Rの少なくとも一部の形状データ,及び成形サイクル時間データに基づいて、温調温度Trを樹脂材料温度Troに変換する樹脂温度変換式データを設定できるとともに、この樹脂温度変換式データに基づく変換処理により樹脂材料温度Troを求める樹脂温度変換処理機能を設けることができる。このため、出力処理機能部Fdには、この樹脂温度変換処理機能により求めた樹脂材料温度Troをディスプレイ7に表示する樹脂材料温度表示部8toを設けることができる。
このような本発明に係る射出成形機の成形支援装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 加熱筒4の内部へ樹脂材料Rを供給する材料供給部5の温調を行う温調部6による最適な温調温度Trを樹脂の種類毎に設定した温調温度データテーブルDT及び少なくとも成形条件の設定時に基本データ入力部Fiから樹脂の種類が入力されたなら温調温度データテーブルDTから入力された樹脂の種類に対応する温調温度Trを読み出すことにより温調部6の温調温度Trとして設定する温度設定処理部Fcsを設けたため、特に、樹脂の種類にマッチングした最適(的確)な温調温度Trを設定可能となり、加熱筒4における処理全体の効率化及び安定化をより高めることができる。
(2) 温調部6における温調温度Trは、少なくともディスプレイ7に表示処理するため、オペレータは、温調温度Trを確認し、可塑化品質をより高める観点から、成形支援装置1における成形条件の変更等の支援機能を利用し、又はマニュアルにより任意に、温調温度Trを変更(調整)可能となる。即ち、成形条件の変更に、温調温度Trの変更を加えることができるため、成形条件全体の調整幅を広げることができ、もって、可塑化品質の更なる向上による高い成形品質を確保できる。
(3) 好適な態様により、材料供給部5に、加熱筒4に付設したホッパ5h又は材料供給装置Prm,加熱筒4の材料落下口5dの少なくとも一方又は双方を含ませれば、これら三つの材料供給手段を、温調部6による温調対象として選択できるため、射出成形機Mの構造等に制限されることなく、実施の柔軟性及び容易性を高めることができる。特に、加熱筒4の加熱温度や成形サイクル時間等の変更が困難な場合に有益な調整手段(設定変更手段)となる。
(4) 好適な態様により、樹脂材料Rに、ペレット材料Rpを適用すれば、広く普及し、かつ円柱形等の定形性を有するペレット材料Rpを対象にできるため、温調されるペレット材料Rp自身の温度を容易かつ正確に推定可能となり、温調温度Trの設定も的確に行うことができる。
(5) 好適な態様により、温調温度データテーブルDTに、温調温度Trの上限値Truを設定すれば、温調温度Trの制御を、上限値Truと下限値Trmの設定により制御する場合の重要性の高い一方(上限値Tru)の温調温度を自動で設定可能になるため、各種制御方式を採用する場合であっても、温調温度(目標温度)に対する的確な制御を行うことができる。
(6) 好適な態様により、基本データ入力部Fiに、温調温度Trの少なくとも下限値Trmをマニュアルにより入力可能な温調温度マニュアル入力機能を設ければ、上限値Truを自動で設定する場合における下限値Trmをマニュアル入力により任意に設定できるとともに、必要に応じて、温調温度Tr(上限値Truと下限値Trm)全体のマニュアル設定を容易に行うことができる。
(7) 好適な態様により、基本データ入力部Fiに、成形条件に係わる成形条件データDm及びスクリュ3の形態に係わるスクリュデータDsを少なくとも含む基本データDoを入力させる機能を持たせれば、加熱筒4内における溶融樹脂の溶融状態を把握する十分なデータを収集できるため、必要とする樹脂(溶融樹脂)の溶融状態を示す的確な推定固相率Xcsや推定樹脂分解率Xrs等を確実に得ることができる。
(8) 好適な態様により、データ処理部Fに、基本データDoに基づいて、加熱筒4内における溶融樹脂の固相率Xcを演算する固相率演算式データDcを設定するとともに、基本データDo及び固相率演算式データDcに基づく演算処理により計量終了時における溶融樹脂の推定固相率Xcsを求める固相率演算処理部Fcpを設ければ、基本データDoに基づいて得られる推定固相率Xcsにより、樹脂の可塑化不足を的確(定量的)に把握できるため、当該可塑化不足に対する適切な対策を講じることができる。特に、経験などの人的判断が不要になるため、経験の浅い初心者オペレータであっても成形品の歩留まり率や成形品質を高めることが可能になり、より望ましい成形(生産)を行うことができる。しかも、樹脂材料Rの種類毎の物性(溶融特性等)を、推定固相率Xcsの演算に反映できるため、より的確(正確)な推定固相率Xcsを得ることができる。
(9) 好適な態様により、スクリュデータDsに、スクリュ表面3fの材質の種類に係わるデータを含ませれば、スクリュ表面3fの金属材質による溶融樹脂に対する触媒効果や接着し易さによる劣化要因を、演算処理に反映できるため、溶融状態に対する、より的確(正確)な推定を行うことができる。
(10) 好適な態様により、データ処理部Fに、基本データDoに基づいて成形時におけるスクリュ表面3fの樹脂分解率Xrを求める分解率演算式データDrを設定するとともに、基本データDo及び分解率演算式データDrに基づく演算処理により推定樹脂分解率Xrsを求める分解率演算処理部Fcrを設ければ、固相率演算式データDcの演算処理に利用する基本データDoを、分解率演算式データDrの演算処理にも利用できるなど、推定樹脂分解率Xrsを容易に求めることができる。しかも、演算処理により容易に得れる推定樹脂分解率Xrsにより、溶融樹脂の劣化状態を的確に把握することができる。この結果、推定固相率Xcsによる溶融状態の一方側(可塑化不足側)の限界点に加え、推定樹脂分解率Xrsによる溶融状態の他方側(可塑化過度側)の限界点の双方により、溶融状態の適正範囲を設定可能となり、成形性及び成形品質の安定化及び高度化を図ることができる。
(11) 好適な態様により、データ処理部Fに、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsの度合を判定処理し、この判定処理の結果を出力する判定処理部Fcjを設ければ、オペレータは、判断の難しい溶融樹脂の溶融状態を容易に把握できるため、必要な対応処理を迅速に行うことができる。
(12) 好適な態様により、出力処理機能部Fdに、判定処理部Fcjから出力した判定処理の結果を表示する判定結果表示部8jを含むデータ表示部8を設ければ、オペレータは、視覚的手段により判定処理の結果を確認できるため、経験の浅い初心者オペレータであっても、溶融樹脂の溶融状態が適正であるか否かを容易かつ確実に確認できるとともに、成形条件の設定変更などの必要な対策を迅速に講じることができ、成形品生産の効率化及び能率化を図ることができる。
(13) 好適な態様により、データ処理部Fに、分解率演算式データDrによる演算処理に用いる剪断発熱量Eに係わるデータに基づいて推定上昇温度ΔTuを求める上昇温度演算式データDwを設定するとともに、上昇温度演算式データDwに基づく演算処理により推定上昇温度ΔTusを求める上昇温度演算処理部Fctを設ければ、分解率演算式データDrによる演算処理に用いる剪断発熱量Eに係わるデータを、上昇温度演算式データDwの演算処理にも利用できるため、推定上昇温度ΔTusを容易に求めることができる。
(14) 好適な態様により、出力処理機能部Fdに、上昇温度演算処理部Fctにより求めた推定上昇温度ΔTusをディスプレイ7に表示する上昇温度表示部8fuを設ければ、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsに係わる情報に加え、推定上昇温度ΔTusに係わる情報も併せて確認できるため、溶融樹脂の溶融状態をより的確に把握することができる。
(15) 好適な態様により、データ処理部Fに、少なくとも成形条件データにおける樹脂材料Rの少なくとも一部の形状データ,及び成形サイクル時間データに基づいて、温調温度Trを樹脂材料温度Troに変換する樹脂温度変換式データを設定するとともに、この樹脂温度変換式データに基づく変換処理により樹脂材料温度Troを求める樹脂温度変換処理機能を設ければ、得られる温調温度Trに基づき樹脂材料温度Troを推定できるため、樹脂材料温度Tro自体の温度状態、更にはこの温度状態に基づく樹脂の溶融状態、即ち、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsや推定上昇温度ΔTus等との関係に係わる情報を的確に把握することができる。
(16) 好適な態様により、出力処理機能部Fdに、データ処理部Fにおける樹脂温度変換処理機能により求めた樹脂材料温度Troをディスプレイ7に表示する樹脂材料温度表示部8toを設ければ、樹脂材料温度Troを目視により容易に確認できるとともに、他の情報、即ち、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsや推定上昇温度ΔTus等と比較した情報確認を容易に行うことができる。
本発明の好適実施形態に係る射出成形機の成形支援装置における処理系(制御系)のブロック系統図、 同成形支援装置を備える射出成形機の機械的構造を示す構成図、 同射出成形機に用いる樹脂材料であるペレット材料の模式的斜視図、 同成形支援装置に備える固相率演算処理部の演算機能を説明するためのスクリュの原理図、 同成形支援装置に備える固相率演算処理部の演算機能を説明するためのスクリュの位置に対する固相率の変化特性図、 同樹脂分解率の基礎となる金属に対する樹脂の接着し易さを種類別に示す一覧表、 同成形支援装置に備える樹脂分解率演算処理部により演算する樹脂分解率の基礎となる樹脂の劣化原理説明図、 同樹脂分解率の基礎となる金属に対する樹脂の分解し易さを種類別に示す一覧表、 同成形支援装置における推定上昇温度と実測上昇温度の関係を示す相関特性図、 同成形支援装置に備える判定処理部の機能説明図、 同成形支援装置におけるデータ表示部の画面図、 同成形支援装置の有効性を説明するための樹脂の種類をパラメータとした実測樹脂材料温度と推定樹脂材料温度の関係を示す相関特性図、 同成形支援装置の有効性を説明するための樹脂の上昇温度に対する樹脂温度のバラツキの関係を示す特性図、 同成形支援装置の有効性を説明するための樹脂温度安定性を示す指標に対する樹脂温度のバラツキの関係を示す特性図、 同成形支援装置に備える温調温度データテーブルの基礎となる樹脂の種類毎に検証した温調温度に対する樹脂材料温度のバラツキの関係を示す特性図、 同成形支援装置を用いた成形支援の処理手順を示すフローチャート、 同成形支援装置に備える出力処理機能部により表示する判定メッセージの一例を示す表示画面図、
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る成形支援装置1の理解を容易にするため、同成形支援装置1を利用できる射出成形機Mの概要について、図2を参照して説明する。
図2は、射出成形機M、特に、型締装置を省略した射出装置Miを示す。射出装置Miにおいて、4は加熱筒であり、この加熱筒4の前端部にはヘッド部4hを介してノズル4nを取付ける。ノズル4nは加熱筒4内部の溶融樹脂を仮想線で示す金型2に対して射出する機能を有する。また、加熱筒4の後端上部にはホッパ5hを備えるとともに、このホッパ5hの下端開口と加熱筒4の内部間には、加熱筒4を貫通する材料落下口5dを形成する。これにより、ホッパ5hと加熱筒4の内部は、材料落下口5dを介して連通し、ホッパ5h内に仮想線で示す樹脂材料Rは、材料落下口5dを通して加熱筒4の内部に供給される。なお、ホッパ5hを例示したが、ホッパ5hの代わりに図2に示す材料供給装置Prmであってもよい。材料供給装置Prmを使用する場合には、図2において、加熱筒4のホッパ取付部からホッパ5hを取外し、代わりに材料供給装置Prmを付設する。材料供給装置Prmは、別途配した材料タンクに収容された樹脂材料Rを、投入アダプタにより定量ずつ材料落下口5dに投入する機能を備える。したがって、ホッパ5h又は材料供給装置Prm,及び材料落下口5dは、加熱筒4の内部へ樹脂材料Rを供給する本実施形態の材料供給部5を構成する。
一方、ホッパ5hの外周面には、ホッパ5hの内部に収容した樹脂材料Rを加熱するヒータ6hを付設するとともに、材料落下口5dの周囲における加熱筒4には、ウォータージャケット6jを形成する。そして、ヒータ6hは、温調ドライバ6dの給電回路6deに接続するとともに、ウォータージャケット6jは、温調ドライバ6dの温調水循環回路6dwに接続する。温調水循環回路6dwは、温調された水媒体(温水又は冷却水)をウォータージャケット6jに循環させることにより、材料落下口5dを通過するペレット材料Rpを温調(加熱又は冷却)することができる。さらに、給電回路6de及び温調水循環回路6dwはコントローラ本体22にそれぞれ接続する。これにより、コントローラ本体22から温調ドライバ6dには、給電回路6de及び温調水循環回路6dwに対する制御指令が付与される。また、温調温度Trは図示を省略した温度センサにより検出され、この検出信号は温調ドライバ6dに付与される。したがって、ヒータ6h,ウォータージャケット6j及び温調ドライバ6dは材料供給部5の温調を行う温調部6を構成する。
また、材料供給装置Prmにもヒータ等を用いた材料温調部6pが付設されるため、この材料温調部6pを、温調ドライバ6dの給電回路6deに接続する。これにより、材料温調部6pに対する温度制御も射出成形機Mにおける後述するコントロール本体22により可能になるとともに、特に、ヒータ6h及びウォータージャケット6jに対する温調制御と一体の温調制御が可能になる。
樹脂材料Rには、図3に示す円柱形のペレット材料Rpを適用する。このようなペレット材料Rpを適用すれば、広く普及し、かつ円柱形等の定形性を有するペレット材料Rpを対象にできるため、温調されるペレット材料Rp自身の温度を容易かつ正確に推定可能となり、温調温度Trの設定も的確に行うことができる。
なお、本実施形態では、ホッパ5h又は材料供給装置Prm,及び材料落下口5dを材料供給部5としたが、ホッパ5h,材料落下口5d,材料供給装置Prmのいずれか一つを材料供給部5としてもよいし、ホッパ5hと材料落下口5d、或いは材料供給装置Prmと材料落下口5dの双方を材料供給部5としてもよい。したがって、材料供給部5に付設する温調部6も、ホッパ5h又は材料供給装置Prm,材料落下口5dの一方又は双方を温調対象とすることができる。例えば、例示の構成からヒータ6h,材料温調部6pを除去又は非使用とし、ウォータージャケット6jのみを温調部6による温調対象としたり、ウォータージャケット6jを非使用とし、材料温調部6p又はヒータ6hのみを温調部6による温調対象としてもよい。これにより、ホッパ5h又は材料供給装置Prm,材料落下口5dの各材料供給手段を、温調部6による温調対象として選択できるため、射出成形機Mの構造等に制限されることなく、実施の柔軟性及び容易性を高めることができる。特に、加熱筒4の加熱温度や成形サイクル時間等の変更が困難な場合に有益な調整手段(設定変更手段)となる。
他方、加熱筒4の内部にはスクリュ3を回動自在及び進退自在に装填する。このスクリュ3の外周面には、螺旋状のフライト部3mpが形成され、さらに、スクリュ表面3fには、耐久性等を考慮した所定の表面素材(金属)によるコーティング処理が施されている。このスクリュ3は、前側から後側に、メターリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを有している。一方、スクリュ3の後端部は、スクリュ駆動部9に結合する。スクリュ駆動部9は、スクリュ3を回転させるスクリュ回転機構9r及びスクリュ3を前進及び後退させるスクリュ進退機構9mを備える。なお、スクリュ回転機構9r及びスクリュ進退機構9mの駆動方式は、例示の場合、電動モータを用いた電気方式を示しているが、油圧回路を用いた油圧方式であってもよく、その駆動方式は問わない。そして、スクリュ回転機構9r及びスクリュ進退機構9mは給電ドライバ9dに接続するとともに、この給電ドライバ9dはコントローラ本体22に接続する。これにより、コントローラ本体22から給電ドライバ9dに、スクリュ回転機構9r及びスクリュ進退機構9mに対する制御指令が付与される。また、スクリュ3の速度及び位置等の物理量は、図示を省略した速度センサ及び位置センサ等により検出され、この検出信号は給電ドライバ9dに付与される。
さらに、加熱筒4は、前側から後側に、加熱筒前部4f,加熱筒中部4m,加熱筒後部4rを有し、各部4f,4m,4rの外周面には、前部加熱部11f,中部加熱部11m,後部加熱部11rをそれぞれ付設する。同様に、ヘッド部4hの外周面には、ヘッド加熱部11hを付設するとともに、ノズル4nの外周面には、ノズル加熱部11nを付設する。これらの各加熱部11f,11m,11r,11h,11nはバンドヒータ等により構成できる。したがって、ノズル加熱部11n,ヘッド加熱部11h,前部加熱部11f,中部加熱部11m,後部加熱部11rは、加熱群部11を構成する。そして、この加熱群部11はヒータドライバ11dに接続するとともに、ヒータドライバ11dはコントローラ本体22に接続する。これにより、コントローラ本体22からヒータドライバ11dに、各加熱部11f,11m,11r,11h,11nに対する制御指令が付与され、また、加熱温度は、図示を省略した温度センサ(熱電対等)により検出され、この検出信号はヒータドライバ11dに付与される。
一方、図1には、射出成形機Mの全体制御を司る成形機コントローラ10を示す。成形機コントローラ10は、CPU及び内部メモリ10m等のハードウェアを内蔵したコンピュータ機能を有するコントローラ本体22を備えるとともに、コントローラ本体22には、ディスプレイ7を接続する。ディスプレイ7は、必要な情報表示を行うことができるとともに、タッチパネル7tが付設され、このタッチパネル7tを用いて、入力,設定,選択等の各種入力操作を行うことができる。また、コントローラ本体22には、各種アクチュエータを駆動(作動)するドライバ群24を接続する。このドライバ群24には、図2に示した前述の給電回路6de及び温調水循環回路6dwを含む温調ドライバ6d,給電ドライバ9d及びヒータドライバ11dが含まれる。
したがって、成形機コントローラ10は、HMI制御系及びPLC制御系を包含し、内部メモリ10mには、PLCプログラム及びHMIプログラムを格納する。PLCプログラムにより、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等が実行されるとともに、HMIプログラムにより、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等が実行される。
次に、このような射出成形機Mに利用できる本実施形態に係る成形支援装置1の構成について、図1〜図16を参照して説明する。
本実施形態に係る成形支援装置1は、図1に示す成形機コントローラ10及び周辺アクチュエータにより構成される。このため、成形機コントローラ10の内部メモリ10mには、成形支援装置1を機能させるアプリケーションプログラムによる支援プログラムPsを格納する。
成形支援装置1は、基本的に、加熱筒4内における樹脂の溶融状態を最適な状態に維持するための基本的機能を備える。加えて、本実施形態では、この加熱筒4に供給されるペレット材料Rpを温調する温調部6の温調温度Trを最適化することにより、当該基本的機能を、より最適化する成形支援装置1を構築しようとするものである。
このため、本実施形態に係る成形支援装置1の理解を容易にするため、最初に、成形支援装置1の基本的機能について説明する。
基本的機能を備える成形支援装置1は、図1に示すように、少なくとも成形条件に係わる成形条件データDm及びスクリュ3の形態に係わるスクリュデータDsを含む基本データDoを入力するための基本データ入力部Fiを備える。この基本データ入力部Fiは、ディスプレイ7に付設したタッチパネル7tを用いることができる。即ち、ディスプレイ7には、図示を省略した入力画面が表示されるため、タッチパネル7tを介して必要な数値の入力や選択等を行うことができる。
この場合、成形条件データDmには、射出成形機Mにより成形するための成形条件に係わる各種データ、具体的には、メルトフローレート,スクリュ回転数,計量時間,背圧,計量位置,前部温度,中部温度,後部1温度,後部2温度,成形サイクル時間等の各種物理量に係わる基本的なデータ、更には使用する各種樹脂材料R…、即ち、各種ペレット材料Rp…に係わるデータなど、成形条件に関係する複数の各種データが含まれる。なお、各ペレット材料Rp…に係わるデータには、溶融特性などのペレット材料Rp…毎の各種物性が含まれる。このように、成形条件データDmに、使用するペレット材料Rp…(樹脂材料R…)に係わるデータを含ませれば、後述する推定固相率Xcsの演算に、ペレット材料Rp…毎の物性(溶融特性等)を反映できるため、より的確(正確)な推定固相率Xcsを得ることができる。
また、スクリュデータDsには、スクリュ3の形態に係わる各種データ、具体的には、スクリュ外径,スクリュフライト幅,固体とスクリュの摩擦係数,スクリュ溝深さ,スクリュ幅方向長さ,スクリュリード,フライト係数,スクリュフライトのねじれ角,ピッチ数等の各種ディメンションに係わるデータ、更にはスクリュ表面3fの材質の種類に係わるデータなど、スクリュに関係する複数の各種データが含まれる。特に、スクリュ表面3fの材質の種類に係わるデータを含ませれば、スクリュ表面3fの金属材質による溶融樹脂に対する触媒効果や接着し易さによる劣化要因を、演算処理に反映できるため、溶融状態に対する、より的確(正確)な推定を行うことができる。
このように、基本データ入力部Fiに、成形条件に係わる成形条件データDm及びスクリュ3の形態に係わるスクリュデータDsを少なくとも含む基本データDoを入力させる機能を持たせれば、加熱筒4内における溶融樹脂の溶融状態を把握する十分なデータを収集できるため、必要とする樹脂(溶融樹脂)の溶融状態を示す的確な推定固相率Xcsや推定樹脂分解率Xrs等を確実に得ることができる。
一方、成形支援装置1は、データ処理部Fを備える。データ処理部Fには、内部メモリ10mを用いた演算式データ設定部Fsを含み、この演算式データ設定部Fsには、固相率演算式データDc,分解率演算式データDr及び上昇温度演算式データDwを設定する。固相率演算式データDcは、前述した基本データDoに基づいて加熱筒4内における溶融樹脂の固相率Xcを演算するための演算式に係わるデータであり、分解率演算式データDrは、前述した基本データDoに基づいて成形時におけるスクリュ表面3fの樹脂分解率Xrを演算するための演算式に係わるデータであり、上昇温度演算式データDwは、分解率演算式データDrによる演算処理に用いる剪断発熱量Eに係わるデータに基づいて上昇温度ΔTuを求めるための演算式に係わるデータである。
次に、固相率演算式データDcの基礎となる固相率Xcを求めるための固相率演算式,分解率演算式データDrの基礎となる樹脂分解率Xrを求めるための分解率演算式,及び上昇温度演算式データDwの基礎となる上昇温度ΔTuを求めるための上昇温度演算式について、それぞれ具体的に説明する。
最初に、固相率演算式について説明する。図4は、固相率Xcの演算機能を説明するためのスクリュ3の原理図を示す。図4中、3はスクリュ、4は加熱筒をそれぞれ示すとともに、31はスクリュ溝底、32はスクリュフライト、33はメルトフィルム、34はソリッドベッド、35はメルトプールをそれぞれ示す。また、Cxは現位置における固体の幅、Cwはピッチ幅からフライト幅を引いた長さをそれぞれ示す。
本実施形態で用いる固相率演算式の一例を[式101]に示す。
固相率Xc=Cx/Cw
=(Cx´/Cw)・(1−ka・Φi) … [式101]
ただし、Φi=f(Tq,Tc)・Φe
[式101]に示すように、固相率Xcは、基本的に、Cx/Cwにより求めることができる。なお、[式101]中、Cx´は1ピッチ前の固体の幅、kaは調整係数、Φiは射出における溶融速度、Φeは押出における溶融速度、Tqは計量時間、Tcは成形サイクル時間をそれぞれ示す。
一般に、押出成形機のように連続運転する加熱筒を備える溶融機構では、可塑化状態を予測する理論式として、1978年にTadmorにより提唱された公知のモデル式が広く利用されている。
一方、射出成形機Mでは、間欠運転(射出→計量→待機)が行われるため、押出成形機の場合とは異なる射出位置やスクリュ停止時間などの射出条件が含まれる。したがって、公知のモデル式をそのまま射出成形機Mに適用することはできない。このため、本実施形態で用いる固相率演算式は、押出成形機に適用可能なモデル式を射出成形機Mに適用可能なモデル式に変換、即ち、押出成形機に適用可能なモデル式を、[式101]に示したf(Tq,Tc)・Φeのように、計量時間Tqとサイクル時間Tcを含む関数式に、樹脂材料が溶ける速度Φe(溶融速度を示唆する量であって単位は無次元)に乗じて得るΦiを固相率演算式に利用したものである。
これにより、[式101]に示す演算式を用いれば、押出成形機に適用可能なモデル式が、射出成形機Mに適用可能なモデル式に変換されるため、スクリュ3を収容した加熱筒4内の溶融樹脂における溶融割合(溶融度合)を示す固相率Xcとして求めることが可能となる。したがって、この固相率演算式により得られる固相率Xcは、入力された基本データDoに基づいて得られる推定した固相率Xc、即ち、推定固相率Xcsとして利用できる。
さらに、この推定固相率Xcsに対しては、実際に得られる溶融樹脂の固相率、即ち、実測した固相率に合致するか否かの検証を行うとともに、調整を行った後、ほぼ合致する固相率演算式を本実施形態における固相率演算式データDcとして設定することが望ましい。
なお、[式101]における(1−ka・Φi)の項は、0に近づくほど、即ち、速度Φiが早いほど、固相率Xcは0に近づき、加熱筒4内の溶融樹脂は完全に溶融されていることを示唆している。実施形態では、さらに、固相率Xcから溶融していない固体がどの程度残っているのかを算出し、成形時の樹脂温度の振れ方との相関を考察した。メルトフィルム33の厚さは、一般に、剪断発熱の算出に用いられるが、実測値と計算値では大きく乖離するため、本実施形態では、完全溶融時の固相率(調整値)を指定し、固体相と液体相とに分離することにより液体相のみが剪断発熱を生じるものとして計算した。この結果、実測値にほぼ合致することを確認できた。
図5は、固相率演算式から得られたスクリュ3の位置に対する固相率Xcの変化を示している。図5の横軸はスクリュピッチ番号を示し、数字が大きくなるほどノズル側に近づく。また、縦軸は固相率Xcを示し、固相率Xcが0に近づくほど完全溶融状態に近づき、固相率Xcが0のときは完全溶融状態となる。図5中、Xcsで示す位置における固相率Xcを、計量終了時における溶融樹脂の推定固相率Xcsと見做している。
推定固相率Xcsは、実用上、必ずしも0である必要はない。この判断基準は、「0.06」に選定することが望ましく、この数値は実験の結果により適切値であることを確認できた。これにより、推定固相率Xcsが、「Xcs≦0.06」の場合には、良好な溶融状態にあると判断できるとともに、「Xcs>0.06」の場合には、溶融が不十分(可塑化不足)と判断できる。このように、推定固相率Xcsの大きさは、溶融樹脂の可塑化不足などの溶融状態を示す指標となる。なお、推定固相率Xcsとは、溶融樹脂の溶融レベルを示すものであるため、未溶融ポリマ分率を用いてもよい。
このように、演算式データ設定部Fsに、基本データDoに基づいて、加熱筒4内における溶融樹脂の固相率Xcを演算する固相率演算式データDcを設定すれば、後述する固相率演算処理部Fcpにより、基本データDo及び固相率演算式データDcに基づく演算処理により計量終了時における溶融樹脂の推定固相率Xcsを求めることができるため、得られる推定固相率Xcsにより、樹脂の可塑化不足を的確(定量的)に把握でき、もって、当該可塑化不足に対する適切な対策を講じることができる。特に、経験などの人的判断が不要になるため、経験の浅い初心者オペレータであっても成形品の歩留まり率や成形品質を高めることが可能になり、より望ましい成形(生産)を行うことができる。しかも、ペレット材料Rp…の種類毎の物性(溶融特性等)を、推定固相率Xcsの演算に反映できるため、より的確(正確)な推定固相率Xcsを得ることができる。
次に、分解率演算式について説明する。本実施形態で用いた分解率演算式の一例を[式102]に示す。
樹脂分解率Xr=E・Wa・kb … [式102]
ただし、E=f(W,L,σ,γ,ζ)
Wa∝f(Φm,Φc,Qs)
[式102]は、基本的にTadmorのモデル式をベースにしたものであり、射出成形機Mにおける樹脂分解率Xrを求める演算式となる。[式102]中、EはTadmorのモデル式から算出した剪断発熱量〔MJ〕であり、完全溶融位置からスクリュ3の先端までの剪断発熱量を積算した総剪断発熱量である。Waは溶融樹脂と金属の接着仕事〔MJ/平方メートル〕、kbは金属の触媒効果を考慮した調整係数をそれぞれ示す。
また、剪断発熱量Eの算出において、Wはピッチ幅からフライト幅を引いた長さ、Lはスクリュ螺旋長さ、σは剪断応力、γは剪断速度、ζは無次元深さをそれぞれ示すととともに、接着仕事Waの算出において、Φmは母材金属の仕事関数、Φcは母材金属の上にコーティングした金属の仕事関数、Qsは最表面金属に付着している酸素量をそれぞれ示す。なお、酸素量QsはX線分析装置(EDX装置)により測定可能である。この接着仕事Waは、溶融樹脂と金属の接着し易さを示すものであり、図6に、スクリュ表面3fの金属に対する溶融樹脂の接着し易さを種類別に示した。
加えて、金属の触媒効果(酸化誘導時間)は、溶融樹脂に対する劣化要因となるため、この触媒効果を係数kbに反映させた。一般に、ポリマー(樹脂)を加熱した場合、水素が引き抜かれることにより、ポリマーラジカル活性種になることが知られている。ポリマーラジカル活性種の場合、この状態ではポリマーの分子量低下までには至らないが、金属に接触した場合、触媒作用を起こすことにより、空気中の酸素とラジカルに結び付き、溶融樹脂の分解が促進される現象を生じる。図7(a)〜(c)は、この現象を模式化して示している。図7(a)は、高分子(ポリマー)45が熱により活性化(熱分解)した状態を示す。この状態で金属種により触媒活性が行われた場合、図7(b)に示すように、活性化したポリマー45に酸素46が結び付く酸化現象を生じる。そして、さらに進行した場合には、図7(c)に示すように、ポリマー45の酸化分解により低分子化する現象を生じる。図8は、スクリュ表面3fの金属に対する溶融樹脂の分解し易さを種類別に示した。
[式102]の分解率演算式に基づく樹脂分解率Xrの演算結果には、溶融樹脂の滞留時間、接着仕事、酸化誘導時間、スクリュ形状などが考慮されるため、この分解率演算式により得られる樹脂分解率Xrは、入力された基本データDoに基づいて得られる推定した樹脂分解率Xr、即ち、推定樹脂分解率Xrsとして利用できる。このような分解率演算式データDrを設定すれば、前述した固相率演算式データDcの演算処理に利用する基本データDoを、分解率演算式データDrの演算処理にも利用できるなど、推定樹脂分解率Xrsを容易に求めることができる。
また、実験(実証)の結果、推定樹脂分解率Xrsは、0.00が維持できている限りにおいて、劣化が生じないことを確認できた。したがって、0.00よりも大きい値の場合、溶融樹脂は劣化状態(劣化状態に移行するリスクが高い場合を含む)にあることを把握できる。即ち、推定樹脂分解率Xrsが、「Xrs=0.00」の場合には、劣化のない良好な溶融状態にあると判断できるとともに、「Xrs>0.00」の場合には、劣化状態又は劣化状態に移行するリスクが高いと判断できる。このように、推定樹脂分解率Xrsの大きさは、可塑化が過度に進行することにより生じる溶融樹脂の劣化状態を示す指標として用いることができる。
このように、演算式データ設定部Fsに、基本データDoに基づいて成形時におけるスクリュ表面3fの樹脂分解率Xrを求める分解率演算式データDrを設定すれば、後述する分解率演算処理部Fcrにより、基本データDo及び分解率演算式データDrに基づく演算処理を行うことにより推定樹脂分解率Xrsを求めることができるため、固相率演算式データDcの演算処理に利用する基本データDoを、分解率演算式データDrの演算処理にも利用できるなど、推定樹脂分解率Xrsを容易に求めることができる。
しかも、演算処理により容易に得れる推定樹脂分解率Xrsにより、溶融樹脂の劣化状態を的確に把握できるため、推定固相率Xcsによる溶融状態の一方側(可塑化不足側)の限界点に加え、推定樹脂分解率Xrsによる溶融状態の他方側(可塑化過度側)の限界点の双方により、溶融状態の適正範囲を設定可能となり、成形性及び成形品質の安定化及び高度化を図ることができる。
次に、上昇温度演算式について説明する。上昇温度演算式データDwの基礎なる上昇温度演算式の一例を[式103]に示す。
上昇温度ΔTu=E/(Q・Cm) … [式103]
[式103]中、E〔MJ〕には前述した樹脂分解率Xrを求める[式102]における剪断発熱量Eを利用できる。なお、Qは可塑化能力、Cmは溶融比熱(樹脂比熱)を示す。
このように、上昇温度ΔTuを求めるには、前述した剪断発熱量Eに係わるデータを利用できるため、推定上昇温度ΔTusを容易に求めることができる。即ち、推定上昇温度ΔTusを求めるには、完全溶融位置からスクリュ先端までの剪断発熱量Eを、可塑化能力Qと樹脂比熱Cmを除して求めることができる。なお、溶融樹脂は水のようなニュートン流体としてではなく、水飴のような指数側流体として扱った。
前述した固相率Xc及び樹脂分解率Xrは、樹脂の上昇温度ΔTuとも密接に関係する。したがって、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsに係わる情報に加え、推定固相率Xcsと推定樹脂分解率Xrsに関連する情報として、推定上昇温度ΔTusを溶融樹脂の溶融状態に係わる情報として表示すれば、推定上昇温度ΔTusに係わる情報も併せて確認できるため、オペレータ(ユーザー)は、当該溶融状態をより的確に把握することができる。
図9には、推定上昇温度ΔTusと実測上昇温度の相関特性を示す。この特性は、樹脂として、ABS樹脂を使用したものであり、推定上昇温度ΔTusは、全てにおいて危険値p=0.01を下回っており、十分な相関性を確認できた。
他方、データ処理部Fは、成形機コントローラ10(コントロール本体22及び内部メモリ10m)を用いた演算処理機能部Fcを備える。この演算処理機能部Fcは、前述した固相率演算式データDc,分解率演算式データDr及び上昇温度演算式データDwを利用した演算処理を行うことができる。
したがって、この演算処理機能部Fcには、少なくとも、基本データDo及び固相率演算式データDcに基づく演算処理により計量終了時における溶融樹脂の固相率Xc、即ち、推定固相率Xcsを求めるための固相率演算処理部Fcp,基本データDo及び分解率演算式データDrに基づく演算処理により溶融樹脂の樹脂分解率Xr、即ち、推定樹脂分解率Xrsを求める分解率演算処理部Fcr,及び上昇温度演算式データDwに基づく演算処理により推定上昇温度ΔTusを求める上昇温度演算処理部Fctが含まれる。
さらに、演算処理機能部Fcには、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsの度合を判定処理し、この判定処理の結果に対応する支援メッセージデータDhを出力する判定処理部Fcjを備える。
図10は、判定処理のための判定基準を示している。図10中、判定結果「01」は、「Xcs≦0.06」かつ「Xrs=0.00」の場合である。この場合、溶融状態は十分な状態にあり、かつ劣化状態にもないため、良好な成形環境にあると判断できる。判定結果「02」は、「Xcs≦0.06」かつ「Xrs>0.00」の場合である。この場合、溶融状態は十分な状態にあるが、劣化状態になる可能性があると判断できる。判定結果「03」は、「Xcs>0.06」かつ「Xrs=0.00」の場合である。この場合、可塑化不足を生じる可能性があるが、劣化状態にはならないと判断できる。判定結果「04」は、「Xcs>0.06」かつ「Xrs>0.00」の場合である。この場合、可塑化不足を生じる可能性があると同時に、劣化状態になる可能があると判定できる。
加えて、判定処理部Fcjには、判定結果「01」〜「04」に対応する支援メッセージデータDhを出力する機能を備える。具体的には、判定結果「01」の場合は、支援メッセージmrを出力し、判定結果「02」の場合は、支援メッセージm1を出力し、判定結果「03」の場合は、支援メッセージm2を出力し、判定結果「04」の場合は、支援メッセージm3を出力する。なお、具体的な、支援メッセージの内容については、後述する成形支援装置1を用いた成形支援方法において説明する。
また、成形支援装置1には、図1に示す出力処理機能部Fdを備える。この出力処理機能部Fdは、いわば判定結果の出力を利用するための処理機能であり、上述した支援メッセージmr,m1,m2…をディスプレイ7に表示する表示機能を備える。この支援メッセージmr,m1,m2,m3には、判定処理の結果を示す判定メッセージmrj,m1j,m2j,m3j及びこの判定メッセージm1j,m2j,m3jに対応して、対策を行うための対策メッセージm1p,m2p,m3pを含ませる(図17参照)。したがって、内部メモリ10mには、支援メッセージmr,m1,m2,m3に対応する支援メッセージデータDhが格納されている。
なお、判定結果を利用する他の処理機能としては、図示を省略したが、推定固相率Xcsに係わるデータや推定樹脂分解率Xrsに係わるデータを、対策メッセージm1p,m2p…に対応する補正データとして利用し、対応する成形条件を自動で補正する自動補正処理に利用することも可能である。
さらに、出力処理機能部Fdには、図11に示すデータ表示部8を備え、このデータ表示部8には、温調温度表示部8t,樹脂状態表示部8f,判定結果表示部8jを設ける。この場合、温調温度表示部8tには、さらに、ホッパ温度表示部(又は材料温調部温度表示部)8th,材料落下口温度表示部8tr,樹脂材料温度表示部8toを設けるとともに、樹脂状態表示部8fには、推定樹脂分解率表示部8fp,推定固相率表示部8fc,推定上昇温度表示部8fuを設ける。これらの各表示部には、各物理量が数値表示される。そして、判定結果表示部8jの中にメッセージ表示部8jmが設けられる。
以上が、成形支援装置1の基本的機能となる。この基本的機能は、加熱筒4内における樹脂の溶融状態を最適な状態に維持するための機能となるが、一方、加熱筒4に供給されるペレット材料Rpの状態(温調状態)も加熱筒4における樹脂の溶融状態に密接に関係する。
このため、本実施形態に係る成形支援装置1では、要部の構成として、このような基本的機能を更に最適化する観点から、ペレット材料Rpの温調状態を最適化しようとするものであり、以下、要部の構成について具体的に説明する。
まず、図1に示すように、基本データ入力部Fiにより入力する成形条件データDmには、注目データとして成形サイクル時間Tcに係わるデータDmcが含まれる。また、ペレット材料Rp…(樹脂材料R…)の種類を入力可能な樹脂選択部(選択リスト)Dmsを設けるとともに、温調部6の温度(温調温度)を入力可能な温調温度入力部Dmtを設ける。この場合、温調温度入力部Dmtは、マニュアル入力を想定したものである。本実施形態では、上記樹脂選択部Dmsにより樹脂が選択されれば、温調温度Trは自動で設定されるが、マニュアル操作によっても任意に入力できる点を考慮したものである。特に、温調温度Trを制御するに際し、上限値Truと下限値Trmを設定して制御する場合には、上限値Truを、樹脂選択部(選択リスト)Dmsにより選択したペレット材料Rp…(樹脂材料R…)の種類により自動で設定し、下限値Trmをマニュアル操作に設定することができる。なお、この場合にも、上限値Truと下限値Trmの双方をマニュアル操作に設定することができる。したがって、基本データ入力部Fiには、温調温度Trの下限値Trm(必要により上限値Tru)をマニュアルにより入力可能な温調温度マニュアル入力機能を備えている。
さらに、内部メモリ10mには温調温度データテーブルDTを設けるとともに、演算処理機能部Fcとして、温度設定処理部Fcsを設ける。温調温度データテーブルDTは、前述した温調部6による最適な温調温度Trを樹脂の種類毎に設定したものである。この場合、温調温度Trは、温調温度Tr自体を直接設定してもよいし、前述のように、温調温度Trの制御範囲となる上限値Truと下限値Truを選定し、上限値Truを温調温度データテーブルDTに設定し、下限値Trmを、上述した基本データ入力部Fiにおける温調温度マニュアル入力機能により設定してもよい。
このように、温調温度データテーブルDTに、温調温度Trの上限値Truを設定すれば、温調温度Trの制御を、上限値Truと下限値Trmの設定により制御する場合の重要性の高い一方(上限値Tru)の温調温度を自動で設定可能になるため、各種制御方式を採用する場合であっても、温調温度(目標温度)に対する的確な制御を行うことができるとともに、基本データ入力部Fiに、温調温度Trの少なくとも下限値Trmをマニュアルにより入力可能な温調温度マニュアル入力機能を設ければ、上限値Truを自動で設定する場合における下限値Trmをマニュアル入力により任意に設定できるとともに、必要に応じて、温調温度Tr(上限値Truと下限値Trm)全体のマニュアル設定を容易に行うことができる。
また、温度設定処理部Fcsは、後述する成形条件の設定時に基本データ入力部Fiから樹脂の種類が入力(選択)されたなら、入力された樹脂の種類に対応する温調温度Tr(又は上限値Tru)を温調温度データテーブルDTから読み出すことにより、温調部6の温調温度Trとして設定する機能を備える。なお、この温調温度Trには、前述したように、ホッパ5hに付設したヒータ6hによる温調温度Trh又は材料供給装置Prmの材料温調部6pによる温調温度,材料落下口5dに付設したウォータージャケット6jによる温調温度Trdの、少なくとも一方又は双方が含まれる概念である。
次に、この温調温度データテーブルDTと温度設定処理部Fcsについて、図1〜図3及び図12〜図15を参照して具体的に説明する。
前述したTadmorにより提唱された公知のモデル式には、[式104]で示すように、樹脂材料R、即ち、一般に広く使用されるペレット材料Rpの樹脂材料温度Troに係わる項が存在している。
Figure 2020001183
ここで、δはメルトフィルム厚、kmは融体の熱伝導率、Tbは加熱筒温度、Tmoは融点、Troは樹脂材料温度、Va,Vbは溶融速度を示唆する係数、Xはソリッドベッド幅、Vbxはスクリュ幅方向のシリンダ周速成分、Csは固体比熱、ρmは液体密度、λは溶融潜熱である。
したがって、射出成形機Mにおける温調部6の温調に係わる情報を、射出成形機Mにおける可塑化状態を予測するモデル式に反映できれば、より現実に近い溶融状態をシミュレーションすることができる。
このため、本実施形態では、最初に、図2に示す材料落下口5dの中央位置におけるペレット材料Rpの温度(樹脂材料温度Tro)の実測値と、ペレット材料Rpの真ん中の温度の推定値の相関性を検証した。この場合、実測値は、材料落下口5dの中央位置に熱電対を配置して温度の測定を行った。一方、推定値は、演算式[式105]を用いて推定した。
Tro(x,t)=f(Trx,Try,X,α,Tc) … [式105]
ここで、Tro(x,t)は、成形サイクル時間Tcを考慮したペレット材料Rpの温度、即ち、推定した樹脂材料温度であり、[式104]のTroに該当する。なお、Trxは、図3に示す円柱形状のペレット材料Rpの片面が材料落下口5dとホッパ5h(又は材料供給装置Prm)の境界位置に接している時の温度、Tryは、反対側の面がスクリュ3の入口3iの近傍の加熱筒4に成形サイクル時間Tcだけ接している時の温度、αはペレット材料Rpの熱伝導率knを熱容量で除した樹脂材料の固有値である。
そして、樹脂の種類毎に、試験条件(成形条件)を異ならせ、[式105]から得られる樹脂材料温度Troの推定値を求めるとともに、前述した実測条件、即ち、図2に示す材料落下口5dの中央位置におけるペレット材料Rpの温度の実測値を求めた。この相関グラフを図12に示す。実施形態では、樹脂の種類として、「PP(ポリプロピレン)」、「GPPS(汎用ポリスチレン)」、「POM(ポリアセタール)」、「ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)」の4種類を用いた。
図12から明らかなように、80℃付近の推測樹脂材料温度Tros及び実測樹脂材料温度Tromは、他の温度と比較して点在度合が目立つが、全体的な実測値と推測値の相関係数は0.98となる。即ち、概ね、1:1の右肩上がりのグラフを示しており、[式105]の妥当性が実証できた。したがって、ペレット材料Rpの温度は、材料落下口5dの温調温度Trd及びホッパ5hの温調温度Trh(又は材料供給装置Prmの温調温度)、更には、成形条件及び樹脂の物性値に依存する[式105]により推定が可能である。
さらに、ペレット材料Rpの温度変化に伴う樹脂温度安定性評価を行った。図13は、加熱筒4における樹脂の上昇温度ΔTu〔℃〕に対する樹脂温度のバラツキ〔%〕を示したグラフである。図13から明らかなように、上昇温度ΔTuが、0に近付くほど、樹脂温度のバラツキが最小となるV字状の曲線グラフが得られた。また、上昇温度ΔTuが負側に大きいほど、未溶融樹脂が増加し、上昇温度ΔTuが正側に大きいほど、炭化物が増加する結果が得られた。
したがって、不安定要素が増加するに伴い、樹脂温度のバラツキが大きくなることから、このバラツキをより少なくするには、未溶融樹脂,炭化物,樹脂の上昇温度ΔTuのそれぞれが0に近いことが最適な溶融状態を得る条件となることがわかる。即ち、前述した推定固相率Xcs,推定樹脂分解率Xrs,推定上昇温度ΔTusは、それぞれ推定により得ることができるため、計算による樹脂温度安定性を示す指標として、f(Xcs,Xrs,ΔTus)となる無次元関数を作成し、樹脂温度のバラツキ〔%〕(実測値)との相関性を考察した。
図14に、f(Xcs,Xrs,ΔTus)と樹脂温度のバラツキの相関グラフを示す。図14に示す相関グラフは、f(Xcs,Xrs,ΔTus)から計算された値と樹脂温度のバラツキとの相関係数は、0.67(p=2.37E−24)を示している。したがって、計算により、樹脂温度のバラツキを予想することが可能であると推察される。
そこで、ホッパ5h(又は材料供給装置Prm)と材料落下口5dの温度、即ち、温調温度Trh及び/又はTrdを成形条件として設定し、温調温度(Trh,Trd)を、40〔℃〕,60〔℃〕,80〔℃〕に変化させることにより、樹脂温度のバラツキを実測するとともに、f(Xcs,Xrs,ΔTus)に対し、ホッパ5h(又は材料供給装置Prm)と材料落下口5dの温調温度(Trh,Trd)を成形条件として入力可能にすることにより樹脂温度のバラツキを計算した。
図15に、各ペレット材料Rp…の種類毎の結果を示す。図15(a)はペレット材料Rpとして「PP」を使用し、材料落下口5dの温調温度Trdとホッパ5h(又は材料供給装置Prm)の温調温度Trhを同一にすることを条件に温度を変動させた場合、図15(b)はペレット材料Rpとして「GPPS」を使用し、材料落下口5dの温調温度Trdとホッパ5h(又は材料供給装置Prm)の温調温度Trhを同一にすることを条件に温度を変動させた場合、図15(c)はペレット材料Rpとして「ABS」を使用し、ホッパ5h(又は材料供給装置Prm)の温調温度trhを80〔℃〕一定にして材料落下口5dの温調温度Trdを変動させた場合、図15(d)はペレット材料Rpとして「POM」を使用し、ホッパ5h(又は材料供給装置Prm)の温調温度Trhを80〔℃〕一定にして材料落下口5dの温調温度Trdを変動させた場合をそれぞれ示す。
図15から明らかなように、「PP」では、材料落下口5d及びホッパ5h(又は材料供給装置Prm)における温調温度Tr(Trd,Trh)が高くなれば、樹脂温度のバラツキは大きくなるが、計算では、60〔℃〕における樹脂温度のバラツキが最も大きくなった。「GPPS」,「ABS」,「POM」に関しては、計算値と実測値がほぼ一致している。したがって、温調温度Tr(Trd,Trh)は計算することが可能になるとともに、樹脂の種類毎に、適切な温調温度Tr(Trd,Trh)、更には材料落下口5dとホッパ5h(又は材料供給装置Prm)の温調温度TrdとTrhの組合わせが可能になることを確認できた。
本実施形態に係る成形支援装置1では、温調温度データテーブルDTにより、樹脂の種類毎に適切な温調温度Trd,Trhを設定し、樹脂の種類を選択(入力)すれば、温度設定処理部Fcsにより、材料落下口5dとホッパ5h(又は材料供給装置Prm)の適切な温調温度Trd,Trhをいわば自動で設定できるようにしたものである。
さらに、出力処理機能部Fdには、当該温調温度Tr(Trd,Trh)を少なくともディスプレイ7に表示処理する機能を持たせている。この機能に基づく温調温度表示部8tを図11に示す。また、データ処理部Fには、少なくとも成形条件データDmにおける樹脂材料Rの少なくとも一部の形状データDmp,及び成形サイクル時間データDmcに基づいて、温調温度Tr(Trd,Trh)をペレット材料Rpの温度(樹脂材料温度Tro)に変換する樹脂温度演算式データを設定するとともに、この樹脂温度演算式データに基づく演算処理により樹脂材料温度Troを求める樹脂温度演算処理機能を設ける。これにより、得られる温調温度Trに基づき樹脂材料温度Troを推定できるため、樹脂材料温度Tro自体の温度状態、更にはこの温度状態に基づく樹脂の溶融状態、即ち、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsや推定上昇温度ΔTus等との関係に係わる情報を的確に把握することができる。
そして、出力処理機能部Fdには、このデータ処理部Fにおける樹脂温度変換処理機能により求めた樹脂材料温度Troをディスプレイ7に表示する樹脂材料温度表示部8toを設け、樹脂材料温度表示部8toにより得られた樹脂材料温度Troを表示する。これにより、樹脂材料温度Troを目視により容易に確認できるとともに、他の情報、即ち、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsや推定上昇温度ΔTus等と比較した情報確認を容易に行うことができる。
次に、本実施形態に係る成形支援装置1を用いた成形支援方法について、各図を参照しつつ図16に示すフローチャートを参照して説明する。
成形支援装置1は、基本的に、生産開始前における成形条件の設定時に利用することができる。なお、この成形支援処理に係わる動作は、内部メモリ10mに格納された支援プログラムPsにより実行される。
まず、オペレータは通常の設定手順に従って、射出成形機Mにおける成形条件の設定処理を行う(ステップS1)。この場合、成形条件の設定処理には、通常の成形条件に係わる情報、即ち、射出成形機Mを運転するための通常の各種情報(条件)を設定する。
一方、成形条件の設定処理が終了し、本実施形態に係る成形支援装置1を利用する場合には、所定の支援開始キー(不図示)をONにし、成形支援装置1を立ち上げれば、支援プログラムPsが実行される(ステップS2)。これにより、ディスプレイ7には、図示を省略した入力画面が表示される(ステップS3)。
そして、表示された入力画面に対応するタッチパネル7t(基本データ入力部Fi)を利用して、予め設定された成形条件に係わる成形条件データDm及びスクリュ3の形態に係わるスクリュデータDsを含む前述した基本データDoを入力する(ステップS4)。具体的には、直接的な数値入力又はウィンドウ表示からの選択入力により行うことができる。また、特に、本実施形態に関連して使用する樹脂の種類を、樹脂選択部Dmsの樹脂リストから選択する(ステップS5)。これにより、温調温度データテーブルDTから、選択した樹脂に対応する温調温度Trd,Trhが読み出され、温調部6の温調温度Tr(Trd,Trh)として温度設定処理部Fcsに設定される(ステップS6)。さらに、図11に示す温調温度表示部8tに表示される(ステップS7)。なお、この場合、成形条件やスクリュ等に係わるデータが既に登録されている場合には、この時点の入力は不要である。そして、基本データDoの入力処理が終了したなら、データの誤入力や入力漏れがないかなどを確認し、確認キー(不図示)をONにする。
これにより、固相率演算処理部Fcpにおいては、入力された基本データDoと固相率演算式データDcに基づく演算処理が行われる(ステップS8)。この演算処理により、基本データDoに基づく推定固相率Xcsが算出されるため、得られた推定固相率Xcsは、内部メモリ10m内に少なくとも一時登録される。また、分解率演算処理部Fcrにおいて、入力された基本データDoと分解率演算式データDrに基づく演算処理が行われる(ステップS9)。この演算処理により、基本データDoに基づく推定樹脂分解率Xrsが算出されるため、得られた推定樹脂分解率Xrsは、内部メモリ10m内に少なくとも一時登録される。さらに、上昇温度演算処理部Fctにおいて、上昇温度演算式データDwに基づく演算処理が行われる(ステップS10)。この演算処理により、推定上昇温度ΔTusが算出されるため、得られた推定上昇温度ΔTusは、内部メモリ10m内に少なくとも一時登録される。そして、得られた推定固相率Xcs,推定樹脂分解率Xrs,推定上昇温度ΔTusは、図11に示す樹脂状態表示部8fに表示される(ステップS11)。このように、推定固相率Xcs及び推定樹脂分解率Xrsに係わる情報に加え、推定上昇温度ΔTusに係わる情報も一緒に表示されるため、推定上昇温度ΔTusに係わる情報も併せて確認できる。したがって、オペレータは、樹脂の溶融状態をより的確に把握することができる。
また、推定固相率Xcs及び推定樹脂分解率Xrsが得られたなら、判定処理部Fcjにおいて、図10に示した判定基準に従って、推定固相率Xcsと推定樹脂分解率Xrsの度合を判定処理する(ステップS12)。そして、この判定処理の結果に基づいて、この結果に対応する図10に示す支援メッセージmr,m1,m2,m3が選択されるとともに、選択された支援メッセージmr…に対応する支援メッセージデータDhが出力するこれにより、出力処理機能部Fdでは、判定処理部Fcjから出力した支援メッセージデータDhに基づく選択された図17に示す支援メッセージmr,m1,m2又はm3を、メッセージ表示部8jに表示する(ステップS13)。
図17(a)〜(d)は、メッセージ表示部8jにおける支援メッセージmr,m1,m2…の一例を示している。例示の場合、必要に応じ、上段に、判定処理の結果を示す判定メッセージm1j,m2j…を表示し、下段に、この判定メッセージm1j,m2j…に対応して対策を行うための対策メッセージm1p,m2p…を表示した。
具体的には、支援メッセージmrの場合、図17(a)に示すように、例えば、判定メッセージmrjとして「適正範囲です」の文字が表示される。例示の場合、対策メッセージは表示されないが、必要により適正範囲であっても必要な対策メッセージ、即ち、変更することにより、更に良くするためのメッセージ等を表示することができる。また、支援メッセージm1の場合、図17(b)に示すように、判定メッセージm1jとして、例えば、「樹脂に炭化を生じる可能性があります」の文字を表示し、対策メッセージm1pとして、例えば、「Tm,Tr,Pr,Rmを下げ、又はTcを短くしてください」(Tm:加熱用の設定温度,Tr:温調温度,Pr:背圧,Rm:回転数,Tc:成形サイクル時間)の文字を表示した。同様に、支援メッセージm2の場合、図17(c)に示すように、判定メッセージm2jとして、例えば、「未溶融樹脂を生じる可能性があります」の文字を表示し、対策メッセージm2pとして、例えば、「Tm,Tr,Pr,Rmを上げ、又はTcを長くしてください」の文字を表示した。さらに、支援メッセージm3の場合は、図17(d)に示すように、対策メッセージm3pとして、例えば、「成形条件を見直してください」を表示し、成形条件に対する、いわば全面的な再設定を促す。例示の場合、判定メッセージは個別に表示されないが、判定メッセージは実質的に対策メッセージm3pに含まれる。
このように、演算処理機能部Fcに、推定固相率Xcs及び/又は推定樹脂分解率Xrsの度合を判定処理し、この判定処理の結果に対応する支援メッセージデータDhを出力する判定処理部Fcjを設けるとともに、出力処理機能部Fdに、判定処理部Fcjから出力した支援メッセージデータDhに基づく支援メッセージmr,m1,m2…をディスプレイ7のメッセージ表示部8jに表示する機能を設ければ、オペレータは、判断の難しい樹脂の溶融状態を容易に把握でき、必要な対応処理を迅速に行うことができる。
特に、支援メッセージmr,m1,m2…に、判定処理の結果を示す判定メッセージmrj,m1j,m2j…及びこの判定メッセージm1j,m2j…に対応して対策を行うための対策メッセージm1p,m2p…を含ませれば、視覚的手段により判定処理の結果を確認できるため、経験の浅い初心者オペレータであっても、樹脂の溶融状態が適正であるか否かを容易かつ確実に確認できるとともに、成形条件の設定変更などの必要な対策を迅速に講じることができ、成形品生産の効率化及び能率化を図ることができる。
この結果、メッセージ表示部8jに、適正メッセージmr以外の支援メッセージm1,m2又はm3が表示されたなら、表示された支援メッセージm1,m2又はm3、即ち、判定メッセージm1j…及び対策メッセージm1p…に従って、成形条件の変更処理を行う(ステップS14,S15)。例えば、支援メッセージm2(判定メッセージm2j,対策メッセージm2p)が表示されたなら、「未溶融樹脂を生じる可能性があります」(判定メッセージm2j)及び「Tm,Tr,Pr,Rmを上げ、又はTcを長くしてください」(対策メッセージm2p)に従って、設定温度Tm,背圧Pr,回転数Rmの一又は二以上を大きくするための設定変更を行うとともに、成形サイクル時間Tcを長くするための設定変更を行えばよい。
この場合、変更する度合は、オペレータの判断により行うことができる。この際、前述したように、推定固相率Xcs及び推定樹脂分解率Xrsを数値表示又はグラフィック表示等により視覚的に表示するようにすれば、オペレータは、適正範囲を外れている度合を確認できるため、これに応じて、成形条件の変更度合を判断することができる。
特に、成形条件の変更には、温調温度Tr(Trd,Trh)も含ませることができる。したがって、成形環境や各種条件等により加熱筒4の加熱温度や成形サイクル時間等の変更が困難な場合には、温調温度Tr(Trd,Trh)を変更することができる。この場合の変更は、図1に示した基本データ入力部Fiにおけるマニュアル操作により任意に入力できる温調温度入力部Dmtを利用することができる。なお、この場合の変更は、温調温度表示部8tの表示に反映される。さらに、変更する度合等は、樹脂状態表示部8f及び判定結果表示部8jの表示を確認して行うことができる。
このように、本実施形態では、温調温度Tr(Trd,Trh)を変更が可能なため、加熱筒4の加熱温度や成形サイクル時間等の変更が困難な場合には有益な調整手段(設定変更手段)となる。
そして、成形条件の変更処理が終了したなら、不図示の再処理キーをONにすることにより、推定固相率Xcs及び推定樹脂分解率Xrsの再演算処理が行われ、再判定処理が行われる(ステップS16,S8…)。
他方、ステップS14において、メッセージ表示部8jに、適正メッセージmrが表示されれば、溶融状態は十分な状態にあり、かつ劣化状態にもないため、良好な成形環境にあることを確認できる。したがって、次の段階への移行が可能となるため、不図示の終了キーをONして、支援プログラムPsの実行を終了させる(ステップS14,S17)。即ち、成形支援装置1の利用を終了させることができる。
このように、本実施形態に係る成形支援装置によれば、加熱筒4の内部へ樹脂材料Rを供給する材料供給部5の温調を行う温調部6による最適な温調温度Trを樹脂の種類毎に設定した温調温度データテーブルDT及び少なくとも成形条件の設定時に基本データ入力部Fiから樹脂の種類が入力されたなら温調温度データテーブルDTから入力された樹脂の種類に対応する温調温度Trを読み出すことにより温調部6の温調温度Trとして設定する温度設定処理部Fcsを設けたため、特に、樹脂の種類にマッチングした最適(的確)な温調温度Trを設定可能となり、加熱筒4における処理全体の効率化及び安定化をより高めることができる。また、温調部6における温調温度Trは、少なくともディスプレイ7に表示処理するため、オペレータは、温調温度Trを確認し、可塑化品質をより高める観点から、成形支援装置1における成形条件の変更等の支援機能を利用し、又はマニュアルにより任意に、温調温度Trを変更(調整)可能となる。即ち、成形条件の変更に、温調温度Trの変更を加えることができるため、成形条件全体の調整幅を広げることができ、もって、可塑化品質の更なる向上による高い成形品質を確保できる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,材料,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、樹脂材料Rに、ペレット材料Rpを適用した例を上げたが、ペレット材料Rpに類似する樹脂材料など、必ずしもペレット材料Rpに限定されるものではない。また、基本データDoとして、成形条件データDm及びスクリュデータDsを例示したが、他のデータを含めてもよいし、例示のデータの一部であってもよい。さらに、基本データ入力部Fiとして、ディスプレイ7のタッチパネル7tを例示したが、基本データDoを記憶する外部メモリのデータを転送したり、通信手段により送信する場合、全データを予め内部メモリ10mに登録し、この全データから基本データDoを選択する場合など、各種入力手段を基本データ入力部Fiとして適用できる。一方、固相率演算式データDc及び分解率演算式データDrは、一例であり、固相率Xc及び樹脂分解率Xrを求めることができる他の演算式データを排除するものではない。
本発明に係る成形支援装置は、可塑化した溶融樹脂をスクリュにより金型に射出充填して成形を行う各種射出成形機に利用することができる。
1:成形支援装置,2:金型,3:スクリュ,3f:スクリュ表面,4:加熱筒,5:材料供給部,5h:ホッパ,5d:材料落下口,6:温調部,6p:材料温調部,7:ディスプレイ,8:データ表示部,8j:判定結果表示部,8fu:上昇温度表示部,8to:樹脂材料温度表示部,10:成形機コントローラ,M:射出成形機,R:樹脂材料,Rp:ペレット材料,F:データ処理部,Fi:基本データ入力部,Fd:出力処理機能部,Fcs:温度設定処理部,Fcp:固相率演算処理部,Fcr:分解率演算処理部,Fcj:判定処理部,Fct:上昇温度演算処理部,Tr:温調温度,DT:温調温度データテーブル,Dm:成形条件データ,Ds:スクリュデータ,Do:基本データ,Dc:固相率演算式データ,Dr:分解率演算式データ,Dw:上昇温度演算式データ,Xc:固相率,Xr:樹脂分解率,Xcs:推定固相率,Xrs:推定樹脂分解率,ΔTus:推定上昇温度,材料供給装置Prm

Claims (15)

  1. 可塑化した溶融樹脂をスクリュにより金型に射出充填して成形する射出成形機に対する成形支援を行う射出成形機の成形支援装置であって、加熱筒の内部へ樹脂材料を供給する材料供給部の温調を行う温調部と、少なくとも樹脂材料の種類を入力可能な基本データ入力部,前記温調部による最適な温調温度を樹脂材料の種類毎に設定した温調温度データテーブル及び少なくとも成形条件の設定時に前記基本データ入力部から樹脂材料の種類が入力されたなら前記温調温度データテーブルから入力された樹脂材料の種類に対応する温調温度を読み出すことにより前記温調部の温調温度として設定する温度設定処理部を有するデータ処理部,並びに当該温調温度を少なくともディスプレイに表示処理する出力処理機能部を有する成形機コントローラとを備えてなることを特徴とする射出成形機の成形支援装置。
  2. 前記材料供給部には、前記加熱筒に付設したホッパ又は材料供給装置,前記加熱筒の材料落下口の少なくとも一方又は双方を含むことを特徴とする請求項1記載の射出成形機の成形支援装置。
  3. 前記樹脂材料は、ペレット材料であることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の成形支援装置。
  4. 前記温調温度データテーブルには、前記温調温度の上限値を設定することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の成形支援装置。
  5. 前記基本データ入力部は、前記温調温度の少なくとも下限値をマニュアルにより入力可能な温調温度マニュアル入力機能を備えることを特徴とする請求項4記載の射出成形機の成形支援装置。
  6. 前記基本データ入力部は、成形条件に係わる成形条件データ及びスクリュの形態に係わるスクリュデータを少なくとも含む基本データを入力する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の成形支援装置。
  7. 前記データ処理部は、前記基本データに基づいて、前記加熱筒内における溶融樹脂の固相率を演算する固相率演算式データを設定した演算式データ設定部と、前記基本データ及び前記固相率演算式データに基づく演算処理により計量終了時における溶融樹脂の推定固相率を求める固相率演算処理部を有する演算処理機能部とを備えることを特徴とする請求項6記載の射出成形機の成形支援装置。
  8. 前記スクリュデータには、スクリュ表面の材質の種類に係わるデータを含むことを特徴とする請求項6記載の射出成形機の成形支援装置。
  9. 前記演算式データ設定部には、前記基本データに基づいて成形時におけるスクリュ表面の樹脂分解率を求める分解率演算式データを設定するとともに、前記演算処理機能部には、前記基本データ及び前記分解率演算式データに基づく演算処理により推定樹脂分解率を求める分解率演算処理部を有することを特徴とする請求項8記載の射出成形機の成形支援装置。
  10. 前記演算式データ設定部には、前記分解率演算式データによる演算処理に用いる剪断発熱量に係わるデータに基づいて推定上昇温度を求める上昇温度演算式データを設定するとともに、前記演算処理機能部には、前記上昇温度演算式データに基づく演算処理により推定上昇温度を求める上昇温度演算処理部を備えることを特徴とする請求項9記載の射出成形機の成形支援装置。
  11. 前記出力処理機能部は、前記上昇温度演算処理部により求めた推定上昇温度を前記ディスプレイに表示する上昇温度表示部を備えることを特徴とする請求項10記載の射出成形機の成形支援装置。
  12. 前記データ処理部には、少なくとも前記成形条件データにおける前記樹脂材料の少なくとも一部の形状データ,及び成形サイクル時間データに基づいて、前記温調温度を樹脂材料温度に変換する樹脂温度変換式データを設定するとともに、この樹脂温度変換式データに基づく変換処理により当該樹脂材料温度を求める樹脂温度変換処理機能を備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の成形支援装置。
  13. 前記出力処理機能部は、前記樹脂温度変換処理機能により求めた前記樹脂材料温度を前記ディスプレイに表示する樹脂材料温度表示部を備えることを特徴とする請求項12記載の射出成形機の成形支援装置。
  14. 前記演算処理機能部は、前記推定固相率及び/又は前記推定樹脂分解率の度合を判定処理し、この判定処理の結果を出力する判定処理部を備えることを特徴とする請求項9記載の射出成形機の成形支援装置。
  15. 前記出力処理機能部は、前記判定処理部から出力した判定処理の結果を表示する判定結果表示部を備えることを特徴とする請求項14記載の射出成形機の成形支援装置。
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