JP2020001106A - 電動工具およびその制御方法、制御プログラム - Google Patents

電動工具およびその制御方法、制御プログラム Download PDF

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啓之 伊夫伎
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啓之 伊夫伎
充典 杉浦
Michinori Sugiura
充典 杉浦
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Abstract

【課題】簡単な動作によって、最適なモータ制御条件を設定することが可能な電動工具およびその制御方法、制御プログラムを提供する。【解決手段】電動工具10は、モータ16、トリガスイッチ12、スイッチング回路(ゲート回路13およびFETアレイ14)、制御部20を備えている。トリガスイッチ12は、操作量に応じてモータ16の回転速度を設定する。ゲート回路13およびFETアレイ14は、複数のスイッチング素子14aを有し、モータ16に対して電力を供給する。制御部20は、トリガスイッチ12において設定された回転速度に基づいてモータ16を回転駆動させるようにゲート回路13およびFETアレイ14を制御するとともに、第1作業において取得されたモータ16に関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される予定であって第1作業と同種の第2作業におけるモータ16の制御条件を設定する。【選択図】図1

Description

本発明は、電動工具およびその制御方法、制御プログラムに関する。
電動工具は、通常、工場出荷時に設定されたモータ制御パラメータをそのまま使用して、ネジ締め、ドリル加工等の各種作業が実施される。このため、ドリル加工やテクスネジ締め加工等において、様々な加工部材(金属や欅などの硬い材料、石膏や杉などの柔らかい材料、天然無垢木材のような不均質材、石膏ボードや集成材などの均質材)に対して、いずれも中庸の作業性しか得られないという問題があった。
例えば、特許文献1には、所定のサンプルモードにおいて学習動作を実施し、モータの使用状況を学習して制御情報(例えば、モータによる締め付け時間、電流制限値、回転数等)として記憶することで、ユーザごとに最適な駆動モードを実現できる電動工具について開示されている。
特開2013−022681号公報
しかしながら、上記従来の電動工具では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された電動工具では、所定のサンプルモードにおいて学習動作を実施して取得される制御情報に基づいて、実際の作業時に最適な駆動条件となるようにモータを駆動している。
しかし、学習動作を実施するために、実際の作業を実施する前に、所定のサンプルモードに設定する必要があり、使用者にとって面倒であった。
本発明の課題は、簡単な動作によって、最適なモータ制御条件を設定することが可能な電動工具およびその制御方法、制御プログラムを提供することにある。
第1の発明に係る電動工具は、直流モータと、速度設定部と、スイッチング回路と、制御部と、を備えている。速度設定部は、操作量に応じて直流モータの回転速度を設定する。スイッチング回路は、複数のスイッチング素子を有し、直流モータに対して電力を供給する。制御部は、速度設定部において設定された回転速度に基づいて直流モータを回転駆動させるようにスイッチング回路を制御するとともに、第1作業において取得された直流モータに関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される予定であって第1作業と同種の第2作業における直流モータの制御条件を設定する。
ここでは、例えば、ネジ締め、ドリル加工等の各種作業で使用される電動工具を用いて、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業において取得された直流モータに関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される第2作業における直流モータの制御条件を最適化する。
すなわち、本発明の電動工具では、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業における作業時に取得された直流モータに関する回転速度、電流値等の特性値を用いて、次に同種の作業が実施される第2作業が最適な制御条件で実施されるように、第2作業用の制御条件が設定される。
ここで、電動工具を用いた同種の作業としては、例えば、ネジ締め、ネジ緩め、ドリル加工等が含まれる。また、同種の加工材料としては、例えば、金属、木材、樹脂、ゴム等の各種材料が含まれる。
また、第1作業と第2作業とは、連続して実施される同種の一連の作業のうち、最初の作業と2番目の作業に限定されるものではなく、例えば、5番目の作業と6番目の作業等のように、単に、前後関係にある作業であればよい。
そして、制御条件の最適化は、1回ずつの作業ごとに繰り返し実施されてもよいし、一連の作業の最初の作業と2番目の作業との間にのみ実施されてもよいし、作業が所定回数に達するごとに実施されてもよい。
さらに、直流モータに関する特性値としては、例えば、直流モータを回転駆動させる速度設定部の操作量、これに対応する直流モータの目標回転速度、実際の回転速度、バッテリ電圧、直流モータを流れる電流値、直流モータの温度等が含まれる。
これにより、電動工具を用いて、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業において取得された直流モータに関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される第2作業における直流モータの制御条件を最適化することができる。
よって、直流モータの制御条件を最適化する学習動作のために特別なモードに設定変更することなく、簡単な動作によって、一連の作業を連続して実施する中において、直流モータの制御条件を最適化することができる。
第2の発明に係る電動工具は、第1の発明に係る電動工具であって、直流モータの実際の回転速度を検出する検出部を、さらに備えている。特性値には、速度設定部の操作量に対する直流モータの目標回転速度と、検出部において検出された実際の回転速度との差分が含まれる。
ここでは、直流モータの制御条件の最適化制御で使用される特性値として、速度設定部の操作量に対する直流モータの目標回転速度と、検出部において検出された実際の回転速度との差分を用いる。
具体的には、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分が大きい場合には、その差分を小さくするために、直流モータの制御条件を大きく調整する。一方、差分が小さい場合には、その差分をさらに小さくするために、直流モータの制御条件を若干調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさに応じて、第2作業を実施する際の直流モータの制御条件を最適化することができる。
第3の発明に係る電動工具は、第2の発明に係る電動工具であって、制御部は、第2作業を実施する際に、差分の大きさに応じて、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える。
ここでは、上述した第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分を用いた直流モータの最適化制御において、差分の大きさに応じて、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える。
具体的には、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分が大きい場合には、その差分を小さくするために、例えば、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾きを大きく調整する。一方、差分が小さい場合には、その差分をさらに小さくするために、例えば、テーブルの傾きを若干調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさに応じて、例えば、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾き等を調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
第4の発明に係る電動工具は、第2または第3の発明に係る電動工具であって、制御部は、第2作業を実施する際に、差分の大きさに応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する。
ここでは、上述した第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分を用いた直流モータの最適化制御において、差分の大きさに応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲイン(速度帰還制御における比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン等)を調整する。
具体的には、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分が大きい場合には、その差分を小さくするために、例えば、スイッチング回路に出力される制御ゲインを大きく調整する。一方、差分が小さい場合には、その差分をさらに小さくするために、例えば、制御ゲインを若干調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさに応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
なお、制御ゲインによる調整は、上述した速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾き等を調整する制御と組み合わせて実施されてもよいし、単独で実施されてもよい。
第5の発明に係る電動工具は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る電動工具であって、直流モータに接続された回路に流れる電流を測定する電流測定部を、さらに備えている。
ここでは、直流モータに接続された回路に流れる電流を、電流測定部を用いて測定する。
これにより、上述した第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分に基づく最適化制御以外に、平均電流や電流リップル等の電流値に基づく最適化制御を実施することができる。
第6の発明に係る電動工具は、第5の発明に係る電動工具であって、特性値には、電流測定部において測定された電流値に基づいて算出される平均電流および電流リップルの少なくとも一方が含まれる。
ここでは、直流モータの制御条件の最適化制御で使用される特性値として、電流測定部において測定された電流値に基づいて算出される平均電流および電流リップルの少なくとも一方を用いる。
これにより、第1作業において取得された平均電流および電流リップルの少なくとも一方の値に応じて、第2作業を実施する際の直流モータの制御条件を最適化することができる。
第7の発明に係る電動工具は、第6の発明に係る電動工具であって、制御部は、第2作業を実施する際に、平均電流および電流リップルの少なくとも一方に応じて、速度設定部の操作量に対応する直流モータの目標回転速度を示すテーブルを書き換える。
ここでは、上述した第1作業において取得された平均電流および電流リップルの少なくとも一方を用いた直流モータの最適化制御において、平均電流および/または電流リップルの値に応じて、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える。
これにより、第1作業において取得された直流モータに接続された回路に流れる電流の平均電流および/または電流リップルの値に応じて、例えば、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾き等を調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
第8の発明に係る電動工具は、第6または第7の発明に係る電動工具であって、制御部は、第2作業を実施する際に、平均電流および電流リップルの少なくとも一方に応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する。
ここでは、上述した第1作業において取得された平均電流および電流リップルの少なくとも一方を用いた直流モータの最適化制御において、平均電流および/または電流リップルの値に応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータに接続された回路に流れる電流の平均電流および/または電流リップルの値に応じて、例えば、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
なお、制御ゲインによる調整は、上述した速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾き等を調整する制御と組み合わせて実施されてもよいし、単独で実施されてもよい。
第9の発明に係る電動工具は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る電動工具であって、制御部は、第1作業において取得された直流モータの特性値に基づいて、加工材料の材質を推定する。
ここでは、第1作業において取得された直流データの特性値から、ネジ締め、ネジ緩め、ドリル加工等の対象となる加工材料の材質を推定する。
具体的には、例えば、上述した速度設定部の操作量に対する直流モータの目標回転速度に対する検出部において検出された実際の回転速度の差分がマイナス側に大きい場合には、加工材料が硬い材料であると推定される。逆に、差分がプラス側に大きい場合には、加工材料が柔らかい材料であると推定される。
これにより、目標回転速度に対する実際の回転速度の差分、直流モータの平均電流、電流リップル等の特性値のうちの1つまたは複数を用いて加工材料の材質を推定することで、第2作業時におけるより最適な制御条件を設定することができる。
第10の発明に係る電動工具は、第9の発明に係る電動工具であって、加工材料の材質には、硬さ、均質性が含まれる。
ここでは、推定される加工材料の材質として、材料の硬さ、均質性が挙げられる。
これにより、同種の作業を連続して実施する際に、作業対象となる材料の材質の硬さ、均質性を考慮した上で、第2作業時における直流モータの最適な制御条件を設定することができる。
第11の発明に係る電動工具は、第1から第10の発明のいずれか1つに係る電動工具であって、直流モータに関する特性値を保存する記憶部を、さらに備えている。
ここでは、上述した直流モータの最適化制御に用いられる特性値を、記憶部に保存する。
これにより、速度設定部の操作量に対する直流モータの目標回転速度と、直流モータの実際の回転速度との差分、平均電流、電流リップル等の記憶部に保存された各種特性値を用いて、第2作業時における直流モータの最適化制御を実施することができる。
第12の発明に係る電動工具は、第1から第11の発明のいずれか1つに係る電動工具であって、直流モータの制御条件を初期条件に戻すリセットスイッチを、さらに備えている。
ここでは、連続して実施される一連の同種の作業が終了し、別の種類の作業が開始される際には、リセットスイッチを操作して直流モータの制御条件を初期条件にリセットする。
これにより、連続して実施された同種の作業から別の作業へ移行する際に、前の作業の最適化された制御条件を消去して、初期条件に戻した上で、再度、最適化制御を実施することができる。
第13の発明に係る電動工具は、第1から第12の発明のいずれか1つに係る電動工具であって、制御部は、第1作業において取得される特性値に基づいて、第2作業における直流モータの制御条件を、ファジィ推論を用いて設定する。
ここでは、上述した直流モータの最適化制御を、ファジィ推論を用いて実施する。
これにより、上述した第1作業において取得された目標回転速度と実際の回転速度との差分、平均電流および電流リップル等を用いた直流モータの最適化制御を、ファジィ推論を用いて実施することで、作業対象となる加工材料の材質等に応じて制御条件を最適化することができる。
第14の発明に係る電動工具の制御方法は、第1から第13の発明のいずれか1つに係る電動工具の制御方法であって、請求項1から13のいずれか1項に記載の電動工具の制御方法であって、以下のステップを備えている。第1作業において、予め設定された制御条件にて直流モータを回転駆動させるステップ。第1作業において、直流モータに関する特性値を取得するステップ。第1作業において取得された特性値に基づいて、第1作業に続いて実施され第1作業と同種の第2作業における直流モータの制御条件を調整するステップ。第2作業において、調整された制御条件によって直流モータを回転駆動させるステップ。
ここでは、例えば、ネジ締め、ドリル加工等の各種作業で使用される電動工具を用いて、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業において取得された直流モータに関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される第2作業における直流モータの制御条件を最適化する。
すなわち、本発明の電動工具では、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業における作業時に取得された直流モータに関する回転速度、電流値等の特性値を用いて、次に同種の作業が実施される第2作業が最適な制御条件で実施されるように、第2作業用の制御条件が設定される。
ここで、電動工具を用いた同種の作業としては、例えば、ネジ締め、ネジ緩め、ドリル加工等が含まれる。また、同種の加工材料としては、例えば、金属、木材、樹脂、ゴム等の各種材料が含まれる。
また、第1作業と第2作業とは、連続して実施される同種の一連の作業のうち、最初の作業と2番目の作業に限定されるものではなく、例えば、5番目の作業と6番目の作業等のように、単に、前後関係にある作業であればよい。
そして、制御条件の最適化は、1回ずつの作業ごとに繰り返し実施されてもよいし、一連の作業の最初の作業と2番目の作業との間にのみ実施されてもよいし、作業が所定回数に達するごとに実施されてもよい。
さらに、直流モータに関する特性値としては、例えば、直流モータを回転駆動させる速度設定部の操作量、これに対応する直流モータの目標回転速度、実際の回転速度、バッテリ電圧、直流モータを流れる電流値、直流モータの温度等が含まれる。
これにより、電動工具を用いて、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業において取得された直流モータに関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される第2作業における直流モータの制御条件を最適化することができる。
よって、直流モータの制御条件を最適化する学習動作のために特別なモードに設定変更することなく、簡単な動作によって、一連の作業を連続して実施する中において、直流モータの制御条件を最適化することができる。
第15の発明に係る電動工具の制御方法は、第14の発明に係る電動工具の制御方法であって、特性値には、速度設定部の操作量に対する直流モータの目標回転速度と、直流モータの実際の回転速度との差分が含まれる。
ここでは、直流モータの制御条件の最適化制御で使用される特性値として、速度設定部の操作量に対する直流モータの目標回転速度と、検出部において検出された実際の回転速度との差分を用いる。
具体的には、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分が大きい場合には、その差分を小さくするために、直流モータの制御条件を大きく調整する。一方、差分が小さい場合には、その差分をさらに小さくするために、直流モータの制御条件を若干調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさに応じて、第2作業を実施する際の直流モータの制御条件を最適化することができる。
第16の発明に係る電動工具の制御方法は、第15の発明に係る電動工具の制御方法であって、第2作業において、差分の大きさに応じて、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える。
ここでは、上述した第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分を用いた直流モータの最適化制御において、差分の大きさに応じて、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える。
具体的には、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分が大きい場合には、その差分を小さくするために、例えば、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾きを大きく調整する。一方、差分が小さい場合には、その差分をさらに小さくするために、例えば、テーブルの傾きを若干調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさに応じて、例えば、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾き等を調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
第17の発明に係る電動工具の制御方法は、第15または第16の発明に係る電動工具の制御方法であって、第2作業において、差分の大きさに応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する。
ここでは、上述した第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分を用いた直流モータの最適化制御において、差分の大きさに応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲイン(速度帰還制御における比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン等)を調整する。
具体的には、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分が大きい場合には、その差分を小さくするために、例えば、スイッチング回路に出力される制御ゲインを大きく調整する。一方、差分が小さい場合には、その差分をさらに小さくするために、例えば、制御ゲインを若干調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータの目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさに応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
なお、制御ゲインによる調整は、上述した速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾きを調整する制御と組み合わせて実施されてもよいし、単独で実施されてもよい。
第18の発明に係る電動工具の制御方法は、第14から第17の発明のいずれか1つに係る電動工具の制御方法であって、特性値には、直流モータに接続された回路に流れる電流を測定する電流測定部において測定された電流値に基づいて算出される平均電流および電流リップルの少なくとも一方が含まれる。
ここでは、直流モータの制御条件の最適化制御で使用される特性値として、電流測定部において測定された電流値に基づいて算出される平均電流および電流リップルの少なくとも一方を用いる。
これにより、第1作業において取得された平均電流および電流リップルの少なくとも一方の値に応じて、第2作業を実施する際の直流モータの制御条件を最適化することができる。
第19の発明に係る電動工具の制御方法は、第18の発明に係る電動工具の制御方法であって、第2作業において、平均電流および電流リップルの少なくとも一方に応じて、速度設定部の操作量に対応する直流モータの目標回転速度を示すテーブルを書き換える。
ここでは、上述した第1作業において取得された平均電流および電流リップルの少なくとも一方を用いた直流モータの最適化制御において、平均電流および/または電流リップルの値に応じて、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える。
これにより、第1作業において取得された直流モータに接続された回路に流れる電流の平均電流および/または電流リップルの値に応じて、例えば、速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾き等を調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
第20の発明に係る電動工具の制御方法は、第18または第19の発明に係る電動工具の制御方法であって、第2作業において、平均電流および電流リップルの少なくとも一方に応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する。
ここでは、上述した第1作業において取得された平均電流および電流リップルの少なくとも一方を用いた直流モータの最適化制御において、平均電流および/または電流リップルの値に応じて、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する。
これにより、第1作業において取得された直流モータに接続された回路に流れる電流の平均電流および/または電流リップルの値に応じて、例えば、スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整することで、最適な条件にて第2作業を実施することができる。
なお、制御ゲインによる調整は、上述した速度設定部の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブルの傾き等を調整する制御と組み合わせて実施されてもよいし、単独で実施されてもよい。
第21の発明に係る電動工具の制御方法は、第14から第20の発明のいずれか1つに係る電動工具の制御方法であって、第1作業において取得された直流モータの特性値に基づいて、加工材料の材質を推定するステップを、さらに備えている。
ここでは、第1作業において取得された直流データの特性値から、ネジ締め、ネジ緩め、ドリル加工等の対象となる加工材料の材質を推定する。
具体的には、例えば、上述した速度設定部の操作量に対する直流モータの目標回転速度に対する検出部において検出された実際の回転速度の差分がマイナス側に大きい場合には、加工材料が硬い材料であると推定される。逆に、差分がプラス側に大きい場合には、加工材料が柔らかい材料であると推定される。
これにより、目標回転速度に対する実際の回転速度の差分、直流モータの平均電流、電流リップル等の特性値のうちの1つまたは複数を用いて加工材料の材質を推定することで、第2作業時におけるより最適な制御条件を設定することができる。
第22の発明に係る電動工具の制御方法は、第21の発明に係る電動工具の制御方法であって、加工材料の材質には、硬さ、均質性が含まれる。
ここでは、推定される加工材料の材質として、材料の硬さ、均質性が挙げられる。
これにより、同種の作業を連続して実施する際に、作業対象となる材料の材質の硬さ、均質性を考慮した上で、最適な制御条件を設定することができる。
第23の発明に係る電動工具の制御プログラムは、第1から第13の発明のいずれか1つに係る電動工具の制御プログラムであって、以下のステップを備えた電動工具の制御方法をコンピュータに実行させる。第1作業において、予め設定された制御条件にて直流モータを回転駆動させるステップ。第1作業において、直流モータに関する特性値を取得するステップ。第1作業において取得された特性値に基づいて、第1作業に続いて実施され第1作業と同種の第2作業における直流モータの制御条件を調整するステップ。第2作業において、調整された制御条件によって直流モータを回転駆動させるステップ。
ここでは、例えば、ネジ締め、ドリル加工等の各種作業で使用される電動工具を用いて、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業において取得された直流モータに関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される第2作業における直流モータの制御条件を最適化する。
すなわち、本発明の電動工具では、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業における作業時に取得された直流モータに関する回転速度、電流値等の特性値を用いて、次に同種の作業が実施される第2作業が最適な制御条件で実施されるように、第2作業用の制御条件が設定される。
ここで、電動工具を用いた同種の作業としては、例えば、ネジ締め、ネジ緩め、ドリル加工等が含まれる。また、同種の加工材料としては、例えば、金属、木材、樹脂、ゴム等の各種材料が含まれる。
また、第1作業と第2作業とは、連続して実施される同種の一連の作業のうち、最初の作業と2番目の作業に限定されるものではなく、例えば、5番目の作業と6番目の作業等のように、単に、前後関係にある作業であればよい。
そして、制御条件の最適化は、1回ずつの作業ごとに繰り返し実施されてもよいし、一連の作業の最初の作業と2番目の作業との間にのみ実施されてもよいし、作業が所定回数に達するごとに実施されてもよい。
さらに、直流モータに関する特性値としては、例えば、直流モータを回転駆動させる速度設定部の操作量、これに対応する直流モータの目標回転速度、実際の回転速度、バッテリ電圧、直流モータを流れる電流値、直流モータの温度等が含まれる。
これにより、電動工具を用いて、同種の加工材料に対して同種の作業を連続して行う際に、第1作業において取得された直流モータに関する特性値に基づいて、第1作業に続いて実施される第2作業における直流モータの制御条件を最適化することができる。
よって、直流モータの制御条件を最適化する学習動作のために特別なモードに設定変更することなく、簡単な動作によって、一連の作業を連続して実施する中において、直流モータの制御条件を最適化することができる。
本発明に係る電動工具によれば、簡単な動作によって、最適なモータ制御条件を設定することができる。
本発明の一実施形態に係る電動工具の構成を示す制御ブロック図。 (a)は、図1の電動工具の記憶部に保存されているトリガスイッチの操作量と目標回転速度との関係を示すテーブル。(b)は、そのグラフ。 図1の電動工具を用いた最適化制御の流れを示すフローチャート。 図3のフローチャートの初期設定の処理の流れを示すフローチャート。 (a)〜(c)は、図1の電動工具のモータ制御条件の最適化処理にフィジィ推論を適用した場合において、第1作業時に取得される3つの特性値(速度偏差、電流リップル、平均電流)と加工材料の性質(硬さ、均質性)とに関するメンバシップ関数を示すグラフ。 (a)は、目標速度テーブルの傾きの変更に関するメンバシップ関数を示すグラフ。(b)は、PIゲインの変更に関するメンバシップ関数を示すグラフ。 (a)〜(c)は、図5(a)〜図5(c)のメンバシップ関数を示すグラフの特性値に具体的な数値を当てはめた例を示すグラフ。 (a),(b)は、図6(a)および図6(b)のメンバシップ関数に具体的な数値を当てはめて図形化した例を示すグラフ。
本発明の一実施形態に係る電動工具10について、図1〜図8(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
ここで、本実施形態では、電動工具10を用いて、ネジ締め、ネジ緩め、穴あけ等のドリル加工等のうち、例えば、ドリル加工の作業等、同種の作業を連続して実施する際のモータの最適化制御について、以下で説明する。
本実施形態に係る電動工具10は、バッテリ11から電力を供給されるブラシレスモータ(モータ16)によって、先端部分に装着されたドライバ、ドリル等の先端工具を回転駆動させる。そして、電動工具10は、図1に示すように、バッテリ(電源部)11、トリガスイッチ(速度設定部)12、スイッチング回路(ゲート回路13、FET(Field Effect Transistor)アレイ14)、電流検出抵抗15、モータ16、磁極位置検出回路17、リセットスイッチ18、および制御部20を備えている。
バッテリ(電源部)11は、例えば、電動工具10の把持部分に装着される交換可能な充電池であって、電動工具10の電源として使用される。また、バッテリ11は、図1に示すように、FETアレイ14と制御部20とに接続されており、それぞれに電力を供給する。
なお、図示は省略したが、電動工具10の駆動装置内には、バッテリ11の電圧を所定の定電圧Vcc(例えば、5V)に降圧した定電圧電源を生成する定電圧電源装置が設けられている。定電圧電源(Vcc)は、制御部20を含む当該駆動装置内の所定の回路を動作させるための電源として用いられる。
トリガスイッチ(速度設定部)12は、電動工具10のモータ16を、操作量(引込み量)に応じた回転速度で回転駆動させるための操作部分であって、図1に示すように、可変抵抗器を含む。可変抵抗器は、その一端が定電圧Vccに、他端がグランドラインに接続されている。トリガスイッチ12は、いわゆるポテンショメータとして構成されており、定電圧Vccを電源として、トリガスイッチ12の操作量に応じた電圧(トリガ操作量信号)を、制御部20のトリガ操作量信号入力ポートに入力する。
ゲート回路13は、FETアレイ14とともにスイッチング回路を構成し、図1に示すように、FETアレイ14内の各スイッチング素子14aを個々にオン/オフさせるために設けられている。そして、ゲート回路13に含まれる6つのゲートドライバ13aは、制御部20によって制御される。
FETアレイ14は、図1に示すように、モータ16の各相の端子とバッテリ11の正極側とを接続するハイサイドスイッチと、同じくモータ16の各相の端子とバッテリ11の負極側とを接続するローサイドスイッチと、を含む6つのスイッチング素子14aからなるハーフブリッジ回路として構成されている。
また、FETアレイ14を構成するスイッチング素子14aは、nチャネルのFETによって構成されている。各スイッチング素子14aには、ゲート−ソース間に閾値以上の駆動電圧を印加することで、各スイッチング素子14aをオンさせるゲート回路13が接続されている。
電流検出抵抗15は、モータ16に流れる電流を検出するために設けられており、図1に示すように、後述する電流演算部25と接続されている。
モータ16は、図1に示すように、3相(U相、V相、W相)ブラシレスモータによって構成されており、各相の端子は、FETアレイ14を介して、直流電源としてのバッテリ11に接続されている。そして、モータ16は、3つのコイル16aと3つのホールIC(またはホール素子)16bと回転子16cとを有している。
コイル16aは、3相(U相、V相、W相)の各相ごとに設けられており、ロータ側の回転子16cに近接する位置であって、ステータ側に配置されている。
ホールIC16bは、磁極位置検出回路17において検出されたモータ16の回転位置に応じて(すなわち、モータ16が所定回転する毎に)、制御部20へパルス信号を出力する。
回転子16cは、ドリル等の先端工具が装着され、図1に示すように、一対のN極と一対のS極とを含む永久磁石が埋め込まれて構成されており、3つのコイル16aに対して対向配置されている。
磁極位置検出回路17は、図1に示すように、3つのホールIC16bの出力信号に基づいて、3相(U相、V相、W相)のコイル16aと回転子16cとの位置関係を検出する。そして、磁極位置検出回路17は、検出した結果を、制御部20(現在速度演算部23)へ送信する。
リセットスイッチ18は、例えば、電動工具10の外面に設けられたボタン式のスイッチであって、使用者によって操作されると、図1に示すように、補正係数演算部24に対して、リセット信号を送信する。
制御部20は、電動工具10のモータ16を回転駆動する際の制御条件に従って、モータ16の回転駆動を制御する。
本実施形態の電動工具10では、制御部20が、モータ16の回転位置を検出する磁極位置検出回路17からのパルス信号に基づいてモータ16の回転位置、現在速度を演算する。そして、制御部20は、現在の回転速度がトリガスイッチ12の操作量よって定まる目標回転速度と一致するように、モータ16をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
ここで、制御部20は、トリガスイッチ12が操作されてON状態になると、モータ16に含まれるホールIC16bからの検出信号に基づいて、ゲート回路13を介してFETアレイ14内の各スイッチング素子14aをON/OFFさせる。これにより、制御部20は、モータ16の各相のコイル16aへの通電電流を制御して、モータ16を所定の方向へ所定の回転速度になるように回転駆動させる。そして、制御部20は、ゲート回路13に対して、各スイッチング素子14aを駆動するための制御信号を入力する。
制御部20に取り込まれたトリガ操作量信号は、テーブル参照部21において、トリガスイッチ12の操作量に対応する目標回転速度を示す目標回転速度テーブル(図2(a)および図2(b))を参照して、目標回転速度に変換される。
図2(a)は、トリガスイッチ12の操作量に対する目標回転速度の関係を示す目標回転速度テーブルの一例を示す。トリガスイッチ12の操作量に対するモータ16の目標回転速度は、図2(b)のグラフに示すように、操作量が増加するに従って、増加(一部不変)するように設定される。
本実施形態の電動工具10では、このような構成により、使用者がトリガスイッチ12を引き込んでいくと(例えば、少量引くと)、可変抵抗器からのトリガ操作量信号に従って目標回転速度が設定される。そして、制御部20は、目標回転速度でモータ16を回転させるように、モータ16のPWM制御を開始する。すなわち、トリガスイッチ12の操作量が大きいほど回転速度が大きくなるように(つまり、駆動デューティ比が高くなるように)、FETアレイ14の駆動デューティ比を調整する。
より具体的には、制御部20は、図1に示すように、テーブル参照部21、操作量演算部22、現在速度演算部(検出部)23、補正係数演算部24、電流演算部25、記憶部26、およびPWM信号生成部27を備えている。
テーブル参照部21は、記憶部26に保存された目標回転速度テーブル(グラフ)(図2(a)および図2(b)参照)を参照して、現在のトリガスイッチ12の操作量に対応する目標回転速度を求める。そして、テーブル参照部21は、操作量演算部22へ目標回転速度を送信する。
また、テーブル参照部21は、後述する補正係数演算部24からテーブル補正係数を受信して、目標回転速度テーブル(例えば、グラフの傾き等)を補正する。なお、目標回転速度テーブルの補正処理については、後段にて詳述する。
操作量演算部22は、テーブル参照部21から受信したトリガスイッチ12の操作量に対応するモータ16の目標回転速度を受信して、目標回転速度でモータ16を回転させるように、PWM信号生成部27へデューティ比を送信する。また、操作量演算部22は、現在速度演算部23から受信した実際のモータ16の回転速度と目標回転速度との差分を算出し、記憶部26へ送信する。
現在速度演算部(検出部)23は、磁極位置検出回路17と接続されており、磁極位置検出回路17から受信した検出結果に基づいて、現在のモータ16の実際の回転速度を演算する。そして、現在速度演算部23は、演算した実際の回転速度を、操作量演算部22へ送信する。
補正係数演算部24は、テーブル参照部21から受信したトリガスイッチ12の操作量に対応するモータ16の目標回転速度と、現在速度演算部23から受信した実際のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)を、記憶部26から読み出す。そして、補正係数演算部24は、目標回転速度テーブルを補正するための補正係数を演算して、テーブル参照部21へ送信する。さらに、補正係数演算部24は、上記補正係数と、フィードバック制御用に調整された制御ゲインとを、操作量演算部22へ送信する。
本実施形態の電動工具10では、現在の作業(第1作業)に続いて実施される同種の作業(第2作業)用の制御条件を最適化するために、補正係数演算部24から出力されるテーブル補正用の補正係数、フィードバック制御用の制御ゲインを用いる。
電流演算部25は、FETアレイ14と電流検出抵抗15との間に接続されており、モータ16を流れる電流を演算する。そして、電流演算部25は、演算した結果から算出される特性値(後述する平均電流および電流リップル)を、記憶部26へ送信する。
記憶部26は、操作量演算部22から受信した速度偏差、電流演算部25から受信した平均電流および電流リップル、および後述する電動工具10の制御プログラムを保存する。
PWM信号生成部27は、テーブル参照部21から受信した目標回転速度と現在速度演算部23から受信した実際のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)に、PI補償を加えて算出された操作量(PWM出力のデューティ)を、スイッチング回路(ゲート回路13およびFETアレイ14)へ出力する。
また、PWM信号生成部27は、現在の作業(第1作業)において取得された各特性値(上記差分(速度差分)の大きさ、平均電流、電流リップル等)を用いて、現在の作業(第1作業)に続いて実施される作業(第2作業)におけるモータ16の制御条件を最適化する。なお、第2作業の制御条件の最適化処理については、後段にて詳述する。
ここで、連続して実施されていた同種の作業(例えば、ドリル加工)の作業から、別の種類の作業(例えば、ネジ締め、ネジ緩め)へ移行する際には、使用者によってリセットスイッチ18が操作される。これにより、リセットスイッチ18から補正係数演算部24に対してリセット信号が送信され、後述する目標回転速度テーブルの補正(書き換え)、制御ゲインの調整等の第2作業用の最適化制御がリセットされ、初期状態へ戻される。
<目標回転速度と現在の回転速度とに基づく操作量の算出>
本実施形態の電動工具10では、以下のような制御(比例制御、積分制御、微分制御等)によって、トリガスイッチ12の操作量(駆動デューティ比)を算出する。
比例制御(P制御)は、目標回転速度と現在のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)に、比例制御ゲインKPを掛けたものを操作量とする制御であって、以下の数式(1)によって操作量を算出する。
操作量=比例制御ゲインKP×偏差N0 ・・・・・(1)
積分制御(I制御)は、目標回転速度と現在のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)の累積値に、積分制御ゲインKIを掛けたものを操作量とする制御であって、以下の数式(2)によって操作量を算出する。
操作量=積分制御ゲインKI×(今回の偏差N0+前回の偏差N1+前々回の偏差N2) ・・・・・(2)
微分制御(D制御)は、目標回転速度と現在のモータ16の回転速度との今回の差分(速度偏差)と前回の差分(速度偏差)との差分に、微分制御ゲインKDを掛けたものを操作量とする制御であって、以下の数式(3)によって操作量が算出される。
操作量=微分制御ゲインKD×(今回の速度偏差N0−前回の速度偏差N1) ・・・・・(3)
比例+積分制御(PI制御)は、上述した比例制御と積分制御とを組み合わせた制御であって、比例制御の数式(1)と積分制御の数式(2)とを用いてそれぞれ求められた操作量を足し算し、現在の操作量に加減算することで、操作量を算出する。
比例+積分+微分制御(PID制御)は、比例制御と積分制御と微分制御とを組み合わせた制御であって、比例制御と積分制御と微分制御との数式(1)〜(3)を用いてそれぞれ求められた操作量を足し算し、現在の操作量に加減算することで、操作量を算出する。
ここで、積分制御(I制御)は、目標速度に対する誤差を少なくする制御であって、速度精度を向上させるために行われる。微分制御は、制御の応答性を向上させるもので、電動工具10の使用時における急激な負荷変動に対応するために行われる。
なお、比例制御ゲインKP、積分制御ゲインKI、および微分制御ゲインKDは、予め実験等によって最適な値を求めておく必要がある。
<モータ16の最適化制御>
本実施形態の電動工具10では、図3に示すフローチャートに従って、現在、実施された作業(第1作業)に続いて実施される同種の作業(第2作業)におけるモータ16の最適化制御を実施する。
すなわち、図3のフローチャートに示すように、ステップS1では、例えば、電動工具10に充電済みのバッテリ11が接続されると、初期設定が行われる。
ステップS1の初期設定は、図4に示すフローチャートに従って実施される。初期設定では、上述した制御ゲインKP,KI,KDや、トリガスイッチ12の操作量と目標回転速度と関係式をデフォルト値に設定したり、カウンタをクリアしたりする処理を含め、制御部20の動作に必要な各種の初期化処理が行われる。
具体的には、図4に示すように、ステップS11では、目標回転速度テーブルをリセットして、デフォルト設定されたテーブルに戻す。
次に、ステップS12では、前回、前々回の作業において取得された特性値に基づいて調整された操作量をリセットする。
次に、ステップS13では、制御ゲインをリセットする。具体的には、上述したKP=0.80、KI=0.02として、初期設定の処理を終了する。
続いて、図3に示すフローチャートのステップS2では、ステップS1の初期設定後、制御部20は、トリガスイッチ12がON状態となる(つまり、トリガスイッチ12が操作される)まで待機し、トリガスイッチ12が操作されると、ステップS3へ進む。
次に、ステップS3では、ステップS2においてトリガスイッチ12が操作されると、制御部20は、トリガスイッチ12の操作量を読み出す。つまり、トリガスイッチ12で抵抗分圧された電位を、A/Dコンバータ(図示せず)を介して制御部20へ取り込む。
次に、ステップS4では、トリガスイッチ12の操作量と目標回転速度との関係を示すテーブル(図2(a)参照)を参照して、モータ16の目標回転速度を求める。なお、モータ16の目標回転速度の算出は、トリガスイッチ12の操作量と目標回転速度との関係式を用いて行われてもよい。
次に、ステップS5では、制御部20が、モータ16の現在の回転速度を求める。より詳細には、制御部20の現在速度演算部23において、磁極位置検出回路17から受信したホールIC16bの信号周期等を用いて、モータ16の現在の回転速度を演算する。
次に、ステップS6では、制御部20が、目標回転速度テーブルを参照して得られたトリガスイッチ12の操作量に対応する目標回転速度と、現在速度演算部23において算出された現在のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)を算出する。より詳細には、制御部20の操作量演算部22において、テーブル参照部21から取得した目標回転速度と、現在速度演算部23から取得した現在のモータ16の回転速度との差分を演算し、記憶部26に送信する。そして、記憶部26では、この差分の値が、最適化制御を実施する際に用いられる特性値の1つとして保存される。
次に、ステップS7では、制御部20が、現在のモータ16の回転速度と目標回転速度との差分(速度偏差)に、PI(比例積分)補償を加える等して、操作量(駆動デューティ比)を算出し、PWM信号生成部27を介して、ゲート回路13へ出力する。
なお、ステップS7では、連続して実施される同種の作業中に1つ前の作業が終了しており、記憶部26に目標回転速度テーブルおよび制御ゲインの調整後のテーブルおよび値が保存されている場合には、調整後のテーブルおよび制御ゲインを用いて、ゲート回路13への出力が設定される。
本実施形態の電動工具10では、このような処理により、連続して実施される同種の作業において1つ前の作業(第1作業)で取得された特性値を用いて、目標回転速度テーブルおよび制御ゲインを調整することで、続いて実施される作業(第2作業)時のモータ16の制御条件を、1つ前の作業(第1作業)よりも適したものにすることができる。
そして、これらの処理を1つの作業(第1作業)が実施されるごとに、同種の次の作業(第2作業)のために繰り返し実施することで、ドリル加工等の同種の作業を繰り返し実施する際のモータ16の制御条件を最適化することができる。
次に、ステップS8では、トリガスイッチ12が操作された状態(ON状態)が継続されている場合には、ステップS2へ戻って、再度、操作量の読み出しからの処理を繰り返し実施する。一方、ステップS8において、トリガスイッチ12が開放された状態(OFF状態)になっている場合には、ステップS9において、制御部20のPWM信号生成部27が、操作量Duty=0とする信号を、ゲート回路13へ出力し、モータ16の回転を停止させる。
次に、ステップS10では、モータ16の回転を停止させた後、続いて実施される同種の作業(第2作業)を実施する際のモータ16の制御条件を最適化するために、目標回転速度テーブルおよび制御ゲインを調整する。
ステップS10において目標回転速度テーブルおよび制御ゲインの調整を実施した後、再び、ステップS2以降の処理を繰り返し実施する。
<目標回転速度テーブルおよび制御ゲインの調整>
本実施形態の電動工具10では、1つ前の作業(第1作業)に続いて連続して実施される同種の作業(第2作業)を実施する際のモータ16の制御条件を最適化するために、目標回転速度テーブルおよび制御ゲインの調整を行う。そして、本実施形態では、この目標回転速度テーブルおよび制御ゲインの調整に、例えば、ファジィ理論が適用される。以下では、モータ16の最適化制御にファジィ理論を適用した場合の例を挙げて説明する。
まず、1つ前の作業(第1作業)における一連の動作から取得されたモータ16に関する特性値(差分(速度偏差)、平均電流、電流リップル)と加工材料の性質との関係について、図5(a)〜図5(c)に示すメンバシップ関数を設定する。
なお、図5(a)および図5(c)に示すメンバシップ関数は、加工材料の硬さ(柔らかさ)を、硬さ(柔らかさ)の度合い(0〜1.0)で示したものである。また、図5(b)に示すメンバシップ関数は、加工材料の均質性(不均質性)を、均質性(不均質性)の度合い(0〜1.0)で示したものである。
このようにファジィ推論のメンバシップ関数を用いることで、加工材料の特性(硬さ、均質性)を、実際の作業中に取得された特性値(差分、平均電流、電流リップル)と結びつけることができる。
本実施形態では、モータ16の最適化制御を実施する際に、目標回転速度と実際のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)、モータ16を流れる平均電流、電流リップルという3つの特性値を組み合わせて用いている。
具体的には、図5(a)は、目標回転速度と実際のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)について、加工材料の硬さ(実線)および柔らかさ(破線)との関係をメンバシップ関数によって示している。
すなわち、図5(a)に示す速度偏差のメンバシップ関数は、加工材料が所定の硬さ(1.0)までは、加工時の抵抗が大きいため、速度偏差は−20%まで直線的に小さくなる。同様に、メンバシップ関数は、加工材料が所定の柔らかさ(1.0)までは、加工時の抵抗が小さいため、速度偏差は、+20%まで直線的に大きくなる。
図5(b)は、電流リップルについて、加工材料の均質性(実線)および不均質性(破線)との関係をメンバシップ関数によって示している。
すなわち、図5(b)に示す電流リップルのメンバシップ関数は、加工材料の均質性が高ければ、加工時における抵抗のバラツキが小さいため、電流リップルの値は20%以下となり、加工材料の不均質性が高ければ、加工時の抵抗のバラツキが大きくなるため、電流リップルは20%以上となる。
図5(c)は、モータ16の平均電流について、加工材料の柔らかさ(実線)および硬さ(破線)との関係をメンバシップ関数によって示している。
すなわち、図5(c)に示す平均電流のメンバシップ関数は、図5(a)と同様に加工材料の硬さを示す関数であって、加工材料が所定の柔らかさ(1.0)までは、加工時の抵抗が小さいため、平均電流は、20Aから10Aまで直線的に小さくなる。同様に、メンバシップ関数は、加工材料が所定の硬さ(1.0)までは、加工時の抵抗が大きいため、平均電流は、20Aから30Aまで直線的に大きくなる。
本実施形態の電動工具10では、加工材料の特性(硬さ、均質性)から、目標回転速度テーブルと制御ゲインの調整方法について、下記の8つのファジィ推論のルール(1)〜(8)を制定する。
(1)「もし、加工材料がかなり硬くて、不均質であれば、目標回転速度テーブルの傾きを下げる」
(2)「もし、加工材料がかなり硬くて、均質であれば、目標回転速度テーブルはそのまま」
(3)「もし、加工材料がかなり硬くて、不均質であれば、制御ゲイン(PIゲイン)を下げる」
(4)「もし、加工材料がかなり硬くて、均質であれば、制御ゲイン(PIゲイン)を上げる」
(5)「もし、加工材料が柔らかくて、均質であれば、目標回転速度テーブルの傾きを上げる」
(6)「もし、加工材料が柔らかくて、不均質であれば、目標回転速度テーブルの傾きを上げる」
(7)「もし、加工材料が柔らかくて、均質であれば、制御ゲイン(PIゲイン)はそのまま」
(8)「もし、加工材料が柔らかくて、不均質であれば、制御ゲイン(PIゲイン)はそのまま」
なお、上記8つのファジィ推論のルール(1)〜(8)のうち、「もし、〜ならば」を前件部、「〜する」を後件部とする。
次に、後件部について、図6(a)および図6(b)に示すメンバシップ関数を設定する。
図6(a)に示すメンバシップ関数は、図5(a)〜図5(c)に示す3つの特性値と加工材料の特性との関係を示すメンバシップ関数に基づいて、目標回転速度テーブルのグラフの傾きを「下げる」(一点鎖線)、「そのまま」(実線)、「上げる」(破線)という処理を関数として示したものである。
図6(b)に示すメンバシップ関数は、図5(a)〜図5(c)に示す3つの特性値と加工材料の特性との関係を示すメンバシップ関数に基づいて、制御ゲイン(PIゲイン)を「下げる」(一点鎖線)、「そのまま」(実線)、「上げる」(破線)という処理を関数として示したものである。
ここで、実際に取得された各特性値の一例として、「速度偏差:−13%、電流リップル:5%、平均電流:25A」とした場合の、目標回転速度テーブルおよび制御ゲイン(PIゲイン)の調整方法を定量的に説明する。
まず、目標回転速度と実際のモータ16の回転速度との差分(速度偏差)は、−13%であるから、図7(a)に示すメンバシップ関数によって、「かなり硬い」要素の適合度は0.6ポイント、「柔らかい」要素の適合度は0.1ポイントとなる。
同様に、電流リップルは、5%であるから、図7(b)に示すメンバシップ関数によって、「均質」要素の適合度は1.0ポイントとなる。そして、平均電流は、25Aであるから、図7(c)に示すメンバシップ関数によって、「かなり硬い」要素の適合度が0.5ポイントとなる。
これにより、本実施形態の電動工具10では、先の作業(第1作業)において取得された上述した3つの特性値(差分(速度偏差)、平均電流、電流リップル)を用いて、加工材料の材質(硬さ、均質性)を推測することができる。
次に、先に制定したファジィ推論のルール(1)〜(8)に加工材料の特性を適用する。
なお、同じ要素で2つの異なる適合度となった場合は、大きい方の数値が採用され、異なる要素間では小さい方の数値が採用されるものとする。
ルール(1)では、上述したように、メンバシップ関数よって「かなり硬い」要素の適合度は、0.6ポイントと0.5ポイントの2つが得られていたため、大きい方の0.6ポイントが採用される。そして、「不均質」要素の適合度は、0ポイントであった。
両要素の小さい方の数値は、0ポイントとなるので、「目標回転速度テーブルの傾きは何もしない」となる。
(1)「もし、かなり硬くて(0.6(>0.5))、不均質(0)であれば、目標回転速度テーブルの傾きを下げる」
−>何もしない
以下、ルール(2)〜(8)についても、同様の操作を繰り返す。
(2)「もし、かなり硬くて(0.6(>0.5))、均質(1)ならば、目標回転速度テーブルはそのまま」
−>目標回転速度テーブルの傾きはそのまま(0.6のまま)
(3)「もし、かなり硬くて(0.6(>0.5))、不均質(0)であれば、制御ゲイン(PIゲイン)を下げる」
−>何もしない
(4)「もし、かなり硬くて(0.6(>0.5))、均質(1)であれば、制御ゲイン(PIゲイン)を上げる」
−>制御ゲイン(PIゲイン)を上げる(0.6まで上げる)
(5)「もし、柔らかくて(0.1)、均質(1)であれば、目標回転速度テーブルの傾きを上げる」
−>目標回転速度テーブルの傾きを上げる(0.1上げる)
(6)「もし、柔らかくて(0.1)、不均質(0)であれば、目標回転速度テーブルの傾きを上げる」
−>何もしない
(7)「もし、柔らかくて(0.1)、均質(1)であれば、制御ゲイン(PIゲイン)はそのまま」
−>制御ゲイン(PIゲイン)はそのまま(0.1のまま)
(8)「もし、柔らかくて(0.1)、不均質(0)であれば、制御ゲイン(PIゲイン)はそのまま」
−>何もしない
次に、図8(a)および図8(b)に示すように、各ルール(1)〜(8)の後件部の数値を図形化する。
ルール(2)の後件部は、「目標回転速度テーブルはそのまま」適合度0.6ポイントであるから、メンバシップ関数「目標速度テーブル傾きの変更」の「そのまま」の高さ0.6のところに線を引く。
同様に、ルール(4)、(5)、(7)ついても、メンバシップ関数に線を引く。ルール(1)、(3)、(6)については、前件部が0のため、何もしない。
最後に斜線部の合成図形を数値化する。これを非ファジィ化(脱ファジィ化)という。具体的には、合成図形(斜線部分)の重心を求めて数値とする。
「目標回転速度テーブルの傾きの調整」については、図8(a)に示すように、×1.0に0.6の重み、×(1.0+1.25)/2に0.1の重みであるから、その重心は、
1+0.125/7=1.018
となる。
同様に、「制御ゲイン(PIゲイン)の調整」については、図8(b)に示すように、重心が1.429となる。
よって、続いて実施される次の同種の作業(第2作業)においてトリガスイッチ12が操作された際には、前回の作業(第1作業)において取得された特性値に基づいて、目標回転速度テーブルの傾きを1.018倍、制御ゲイン(PIゲイン)を1.429倍とする。
本実施形態の電動工具10では、以上のように、それまでの作業(第1作業)において得られた作業履歴(特性値)に基づいて、次回の同種の作業(第2作業)用に設定される制御条件(パラメータ)を調整(最適化)する。
これにより、使用者は、例えば、ドリル加工等の同種の作業を繰り返す場合において、最適化された制御条件で後の作業を実施することができる。よって、作業効率が向上して使い易く、電動工具10の消費電力を低減することができる。
また、モータ16の制御条件が各作業に適した条件に自動的に書き換えられていくため、作業ミス(失敗)が減少し、作業の歩留りを向上させ、加工材料のロスを低減することができる。
さらに、本最適化制御における演算処理は、連続して実施される作業と作業の空き時間中に実行される。このため、制御部20への負荷は軽く、低コストで実現することができる。
さらにまた、例えば、ドリル加工の作業からネジ締めの作業に作業内容が切り替わる場合には、使用者は、リセットスイッチ18を操作することで、それまでに蓄積された学習内容が破棄されて初期状態(例えば、工場出荷時)へ戻すことができる。よって、別の種類の作業(ネジ締め)を実施する際には、改めて、最初の作業によって得られた各特性値を用いて、続いて実施されるネジ締めの作業(第2作業)の制御条件を最適化することができる。この結果、各種作業において、作業を実施するごとに、各種作業に適した制御条件を設定していくことができる。
また、本実施形態の電動工具10では、同種の作業を連続して実施する際において、一連の作業中に取得されたデータ(トリガスイッチ12の操作量、モータドライバへの操作量Duty、バッテリ電圧、モータ速度、モータ電流、モータ温度等)を用いて、加工材料の材質(硬さ、均質性など)を類推することができる。よって、加工材料の材質に合わせて最適化された制御条件(制御パラメータ)を、続いて実施される作業(第2作業)に向けて自動的に設定することができる。
この結果、使用者は、同種の作業を繰り返し実施する場合において、学習モード等の特別なモード設定等を行うことなく、通常の作業を繰り返し実施するだけで、自動的に最適な制御条件(制御パラメータ)によって、快適に作業を行うことができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、トリガスイッチ12の操作量に対する目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさ、平均電流および電流リップルを含む各特性値を用いて、目標回転速度テーブルの調整および制御ゲインの調整の両方を実施する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記各特性値に基づいて、速度テーブルの書き換え、および制御ゲインの調整のいずれか一方のみを実施する構成であってもよい。
(B)
上記実施形態では、第1作業において取得されたトリガスイッチ12の操作量に対する目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさ、平均電流および電流リップルという3つの特性値に基づいて、続いて実施される第2作業用の制御条件を最適化する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記目標回転速度と実際の回転速度との差分の大きさ、平均電流および電流リップルのうち、少なくとも1つに基づいて、第2作業用の制御条件の最適化する制御であってもよい。
あるいは、上記実施形態で説明した3つの特性値以外の別の特性値に基づいて、電動工具のモータの制御条件を最適化してもよい。
(C)
上記実施形態では、トリガスイッチ12が操作されてON状態になってからOFF状態になるまでの作業を第1作業とし、この第1作業に続いて実施されるトリガスイッチ12が操作されてON状態になってからOFF状態になるまでの作業を第2作業とし、第1作業において取得された差分等に基づいて、第2作業用のモータ制御条件の最適化を、毎回の作業ごとに繰り返し実施する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、数回分の作業を第1作業とし、その後に実施される第2作業用の制御条件を、数回分の作業において取得された差分の平均値等に基づいて、最適化してもよい。
あるいは、第2作業用の制御条件の最適化は、毎回の第1作業終了後に実施するだけでなく、所定回数ごとに第1作業を設定し、その後の第2作業用の制御条件の最適化を実施してもよい。
(D)
上記実施形態では、第2作業用の最適化制御として、目標回転速度テーブルの傾きに調整、および制御ゲインの調整を実施する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、第2作業用の最適化制御としては、上述した制御に限らず、他の制御によって第2作業用の制御条件を最適化してもよい。
(E)
上記実施形態では、第2作業用の最適化制御を実施する際に、ファジィ推論を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の電動工具のモータの制御方法では、ファジィ推論の使用は必須ではなく、これ以外の方法によって実施されてもよい。
(F)
上記実施形態では、先の作業(第1作業)において取得された特性値(速度偏差、平均電流、電流リップル)を用いて、加工材料の硬さ、均質性等の材質を推定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明において推定される加工材料の材質としては、硬さおよび均質性以外の材質であってもよい。
(G)
上記実施形態では、モータ16として、ブラシレスモータを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリガスイッチの操作量に応じて回転駆動されるブラシレスモータ以外の直流モータを用いてもよい。
(H)
上記実施形態では、本発明を、電動工具10および電動工具10の制御方法として実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態において説明した電動工具10の制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラムとして、本発明を実現してもよい。
この制御プログラムは、図1に示す記憶部26に保存されていればよく、CPUによって読み出されることで、上述した制御方法をコンピュータに実行させることができる。
本発明の電動工具は、簡単な動作によって、最適なモータ制御条件を設定することができるという効果を奏することから、各種作業において使用される電動工具に対して広く適用可能である。
10 電動工具
11 バッテリ(電源部)
12 トリガスイッチ(速度設定部)
13 ゲート回路(スイッチング回路)
14 FETアレイ(スイッチング回路)
14a スイッチング素子
15 電流検出抵抗
16 モータ(直流モータ)
16a コイル
16b ホールIC
16c 回転子
17 磁極位置検出回路
18 リセットスイッチ
20 制御部
21 テーブル参照部
22 操作量演算部
23 現在速度演算部(検出部)
24 補正係数演算部
25 電流演算部(電流測定部)
26 記憶部
27 PWM信号生成部

Claims (23)

  1. 直流モータと、
    操作量に応じて前記直流モータの回転速度を設定する速度設定部と、
    複数のスイッチング素子を有し、前記直流モータに対して電力を供給するスイッチング回路と、
    前記速度設定部において設定された回転速度に基づいて前記直流モータを回転駆動させるように前記スイッチング回路を制御するとともに、第1作業において取得された前記直流モータに関する特性値に基づいて、前記第1作業に続いて実施される予定であって前記第1作業と同種の第2作業における前記直流モータの制御条件を設定する制御部と、
    を備えている電動工具。
  2. 前記直流モータの実際の回転速度を検出する検出部を、さらに備えており、
    前記特性値には、前記速度設定部の前記操作量に対する前記直流モータの目標回転速度と、前記検出部において検出された前記実際の回転速度との差分が含まれる、
    請求項1に記載の電動工具。
  3. 前記制御部は、前記第2作業を実施する際に、前記差分の大きさに応じて、前記速度設定部の前記操作量と前記目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える、
    請求項2に記載の電動工具。
  4. 前記制御部は、前記第2作業を実施する際に、前記差分の大きさに応じて、前記スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する、
    請求項2または3に記載の電動工具。
  5. 前記直流モータに接続された回路に流れる電流を測定する電流測定部を、さらに備えている、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の電動工具。
  6. 前記特性値には、前記電流測定部において測定された電流値に基づいて算出される平均電流および電流リップルの少なくとも一方が含まれる、
    請求項5に記載の電動工具。
  7. 前記制御部は、前記第2作業を実施する際に、前記平均電流および前記電流リップルの少なくとも一方に応じて、前記速度設定部の操作量に対応する前記直流モータの目標回転速度を示すテーブルを書き換える、
    請求項6に記載の電動工具。
  8. 前記制御部は、前記第2作業を実施する際に、前記平均電流および前記電流リップルの少なくとも一方に応じて、前記スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する、
    請求項6または7に記載の電動工具。
  9. 前記制御部は、前記第1作業において取得された前記直流モータの前記特性値に基づいて、加工材料の材質を推定する、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の電動工具。
  10. 前記加工材料の材質には、硬さ、均質性が含まれる、
    請求項9に記載の電動工具。
  11. 前記直流モータに関する前記特性値を保存する記憶部を、さらに備えている、
    請求項1から10のいずれか1項に記載の電動工具。
  12. 前記直流モータの制御条件を初期条件に戻すリセットスイッチを、さらに備えている、
    請求項1から11のいずれか1項に記載の電動工具。
  13. 前記制御部は、前記第1作業において取得される前記特性値に基づいて、前記第2作業における前記直流モータの制御条件を、ファジィ推論を用いて設定する、
    請求項1から12のいずれか1項に記載の電動工具。
  14. 請求項1から13のいずれか1項に記載の電動工具の制御方法であって、
    前記第1作業において、予め設定された前記制御条件にて前記直流モータを回転駆動させるステップと、
    前記第1作業において、前記直流モータに関する前記特性値を取得するステップと、
    前記第1作業において取得された前記特性値に基づいて、前記第1作業に続いて実施され前記第1作業と同種の前記第2作業における前記直流モータの前記制御条件を調整するステップと、
    前記第2作業において、調整された前記制御条件によって前記直流モータを回転駆動させるステップと、
    を備えた電動工具の制御方法。
  15. 前記特性値には、前記速度設定部の前記操作量に対する前記直流モータの目標回転速度と、前記直流モータの実際の回転速度との差分が含まれる、
    請求項14に記載の電動工具の制御方法。
  16. 前記第2作業において、前記差分の大きさに応じて、前記速度設定部の前記操作量と前記目標回転速度との関係を示すテーブルを書き換える、
    請求項15に記載の電動工具の制御方法。
  17. 前記第2作業において、前記差分の大きさに応じて、前記スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する、
    請求項15または16に記載の電動工具の制御方法。
  18. 前記特性値には、前記直流モータに接続された回路に流れる電流を測定する電流測定部において測定された電流値に基づいて算出される平均電流および電流リップルの少なくとも一方が含まれる、
    請求項14から17のいずれか1項に記載の電動工具の制御方法。
  19. 前記第2作業において、前記平均電流および前記電流リップルの少なくとも一方に応じて、前記速度設定部の操作量に対応する前記直流モータの目標回転速度を示すテーブルを書き換える、
    請求項18に記載の電動工具の制御方法。
  20. 前記第2作業において、前記平均電流および前記電流リップルの少なくとも一方に応じて、前記スイッチング回路に出力される制御ゲインを調整する、
    請求項18または19に記載の電動工具の制御方法。
  21. 前記第1作業において取得された前記直流モータの前記特性値に基づいて、加工材料の材質を推定するステップを、さらに備えている、
    請求項14から20のいずれか1項に記載の電動工具の制御方法。
  22. 前記加工材料の材質には、硬さ、均質性が含まれる、
    請求項21に記載の電動工具の制御方法。
  23. 請求項1から13のいずれか1項に記載の電動工具の制御プログラムであって、
    前記第1作業において、予め設定された前記制御条件にて前記直流モータを回転駆動させるステップと、
    前記第1作業において、前記直流モータに関する前記特性値を取得するステップと、
    前記第1作業において取得された前記特性値に基づいて、前記第1作業に続いて実施され前記第1作業と同種の前記第2作業における前記直流モータの前記制御条件を調整するステップと、
    前記第2作業において、調整された前記制御条件によって前記直流モータを回転駆動させるステップと、
    を備えた電動工具の制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラム。
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