上述された本発明の特性、特徴および利点、および、それらが達成される様式は、図面を参照して更に詳細に説明される実施例に関する以下の説明に基づいて明瞭化され、且つ、更に良好に理解され得る。
以下において、本発明は、図面を参照して好適な実施形態に基づいて更に詳細に説明される。各図において、同一の参照番号は、同一もしくは同様の要素を表す。各図は、本発明の種々の実施形態の概略的表現である。各図中に示された要素は、必ずしも縮尺通りには示されない。代わりに、各図中に示された種々の要素は、それらの機能および概略的な目的が当業者に理解可能となる如き様式で再現される。各図中に示された機能的ユニットと各要素との間の接続および結合は、直接的な接続もしくは結合としても実現され得る。機能的ユニットは、ハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして実現され得る。
以下においては、光を走査する種々の技術が記述される。以下に記述される技術は、たとえば、光の2次元走査を可能とし得る。走査とは、異なる放出角度における光の反復的な放出を表し得る。この目的のために、光は偏向ユニットにより偏向され得る。走査とは、光による、周囲における種々の点の反復的な走査を指し得る。たとえば、周囲における種々の点の個数、および/または、種々の放出角度の値が、画像領域を決定し得る。
種々の例において、光の走査は、少なくとも1つの可動要素の異なる自由度に従う2つの運動の時間的重畳、および、選択的には空間的重畳により行われ得る。これにより、種々の例においては、重畳図形がトレースされ得る。一定の場合、上記重畳図形はリサージュの図形とも称される。該重畳図形は、異なる放出角度が実施される順序を記述し得る。
種々の例においては、レーザ光を走査させ得る。此処では、たとえば、可干渉性または非干渉性のレーザ光が使用され得る。偏光された、または、偏光されないレーザ光を使用することが可能である。たとえば、レーザ光をパルス化様式で使用することが可能である。たとえば、フェムト秒またはピコ秒またはナノ秒の範囲のパルス幅を有する短いレーザ・パルスが使用され得る。たとえば、パルス継続時間は、0.5〜3ナノ秒の範囲内であり得る。レーザ光は、700〜1800nmの範囲内の波長を有し得る。簡潔さのために、以下においては基本的にレーザ光に対して参照が為されるが、本明細書中で記述される種々の例は、たとえば、広帯域の光源またはRGB光源などの他の光源からの光の走査に対しても使用され得る。此処で、RGB光源とは、色空間が、たとえば、赤、緑、青、または、シアン、マゼンタ、イエロー、黒などの幾つかの異なる色の重畳により網羅される可視スペクトルにおける一般的な光源を表している。
種々の例において、本明細書で以下においては単にファイバと称される1つのファイバ形状要素または複数のファイバ形状要素の可動端部は、レーザ光の走査に対して使用される。
種々の形式のファイバが使用され得る。たとえば、ガラスファイバとも称される光ファイバが使用され得る。但し、このことは必須ではない。実際、此処では、ファイバはガラスから作成される必要はない。ファイバは、たとえば、プラスチック、ガラス、ケイ素、または、別の材料から作成され得る。たとえば、ファイバは、石英ガラスから作成され得る。たとえば、ファイバは、70GPaの弾性係数、または、40GPa〜80GPaの範囲内、好適には60〜75GPaの範囲内の弾性係数を有し得る。たとえば、ファイバは140GPa〜200GPaの範囲内の弾性係数を有し得る。たとえば、ファイバは、4%までの材料の伸びを可能とし得る。幾つかの例において、ファイバは、導入されたレーザ光が伝搬され且つ縁部(光学的導波路)における全反射により囲繞されたコアを有する。但し、ファイバは、コアを有する必要はない。種々の例においては、いわゆるシングルモード光ファイバ(シングルモード・ファイバ)またはマルチモード光ファイバ(マルチモード・ファイバ)が使用される。此処で記述される種々のファイバは、たとえば、円形の断面を有し得る。たとえば、此処で記述される種々のファイバは、50μm以上、選択的には150μm以上、更に選択的には500μm以上、更に選択的には1mm以上である直径を有することが可能である。但し、直径は、1mm未満、選択的には500μm未満、更に選択的には150μm未満でもあり得る。たとえば、此処で記述される種々のファイバは、屈曲または湾曲され得るべく、すなわち、撓曲的であり得るべく設計され得る。この目的の為に、此処で記述されるファイバの材料は、一定の弾性を有し得る。故に、ファイバは、スプリング要素とも称され得る。ファイバは、たとえば、3mm〜12mmの範囲内、選択的には4mm〜8mmの範囲内の長さを有し得る。
たとえば、ファイバの可動端部は、1次元において、または、2次元において移動され得る。この目的のために、ひとつ以上のアクチュエータが使用され得る。たとえば、ファイバの可動端部は該ファイバの締着手段に対して傾斜されることが可能であり、これは、ファイバの湾曲に帰着する。これは、運動の第1自由度に対応し得、該自由度は、横モード(transverse mode)(または、一定の場合には揺動モード(wiggle mode))と称され得る。代替的または付加的に、ファイバの可動端部は、ファイバ軸心に沿って捻ることが可能である(捩れモード(torsion mode))。これは、運動の第2自由度に対応し得る。ファイバの可動端部の運動によれば、レーザ光が種々の角度にて放出されることを達成し得る。この目的のために、偏向ユニットが配備され得る。これにより、レーザ光により周囲が走査され得る。可動端部の運動の程度に依存して、種々のサイズの画像領域が実現され得る。
此処で記述される種々の例においては、各々の場合に、横モードに対して代替的または付加的に捩れモードを誘起することが可能であり、すなわち、捩れモードおよび横モードの時間的または空間的な重畳が可能である。但し、この時間的および空間的な重畳は、排除もされ得る。他の例においては、運動の他の自由度が実現され得る。
本明細書中に記述される種々の例において、ファイバは、偏向ユニットに対するホルダとして使用される。上記偏向ユニットは、此処では、たとえば接着剤により、ファイバの可動端部に対して堅固にまたは静止的に取付けられ得る。但し、上記プロセスにおいて、レーザ光は、1つ以上のファイバを通る以外の光路を用いて偏向ユニットに到達し得る。換言すると、ファイバは、必ずしも、偏向ユニットに至る途中にて、レーザ光に対する光学的導波路としては使用されない。レーザ光が偏向ユニットに対し、ファイバを通して到達するのでなければ、少なくとも1つのファイバへのレーザ光の複雑で精巧な結合が回避され得る。これに加え、たとえば、局所的なTEM00モードだけでなく、代替的または付加的に他のモードを備えて成るレーザ光を使用し得る。これにより、たとえば、レーザ・ダイオードなどの特に小寸のレーザを使用することが可能とされ得る。
たとえば、上記偏向ユニットは、プリズムまたはミラーとして実現され得る。たとえば、上記ミラーは、たとえばシリコン・ウェハまたはガラス基板などのウェハにより実現され得る。たとえば、上記ミラーは、0.05μm〜0.1mmの範囲内の厚みを有し得る。たとえば、上記ミラーは、25μmまたは50μmの厚みを有し得る。たとえば、上記ミラーは、25μm〜75μmの範囲内の厚みを有し得る。たとえば、上記ミラーは、正方形、長方形、または、円形であるべく設計され得る。たとえば、上記ミラーは、3mm〜12mm、特に8mmの直径を有し得る。
概略的に、光の走査に対する斯かる技術は、非常に多様な応用分野において使用され得る。例としては、内視鏡およびRGB投射器およびプリンタが挙げられる。種々の例においては、LIDAR技術が使用され得る。LIDAR技術は、周囲における物体の空間的に解像された距離測定を実施するために使用され得る。たとえば、LIDAR技術は、ファイバの可動端部、物体、および、検出器の間におけるレーザ光の伝搬時間の測定を含み得る。
LIDAR技術に関する種々の例が記述されてきたが、本出願は、LIDAR技術に限定されない。たとえば、本明細書中に記述される態様は、ファイバの可動端部によるレーザ光の走査、ならびに、他の用途に対して適用され得る。例としては、たとえば、投射器における画像データの投射が挙げられ、たとえば、此処ではRGB光源が使用され得る。
種々の例は、レーザ光の走査は、放出角度に関して高い精度を以て実施することが好適であり得るという認識に基づく。たとえば、LIDAR技術に関し、距離測定の空間的分解能は、放出角度の不正確さにより制限され得る。典型的に、レーザ光の放出角度が高い正確さで(低い正確さで)決定され得るほど、更に高い(更に低い)空間的分解能が達成される。
以下においては、特に堅牢なファイバ走査器を提供する技術が記述される。種々の例において、ファイバ走査器は、締着手段と偏向ユニットとの間に配置された少なくとも2つのファイバを備えて成る。1つより多いファイバを使用することにより、たとえば、その様にしなければ個々のファイバにおいて生ずる材料張力などの負荷が、1つより多いファイバに亙り分散されることが達成され得る。これにより、特に長寿命のファイバ走査器が提供され得る。これに加え、上記ファイバ走査器によれば、外部の干渉的な影響が特に良好に吸収され得ることが達成され得、たとえば、加速度はレーザ光の走査に関して比較的に小さな影響のみを有し得る。
図1は、種々の例に係るファイバ走査器100に関する態様を示している。図1は、ファイバ走査器100の非誘起の非作動状態を示している。ファイバ走査器100は、数が3つのファイバ101〜103を備えて成る。ファイバ101〜103の各々は、締着手段141と偏向ユニット142との間に配置される。ファイバ101〜103は直線状であり、すなわち、非作動状態においてそれらは湾曲部または屈曲部を有さない。
たとえば、締着手段141は、フェルールにより実現され得る。種々のファイバ101〜103が挿入される数個のボアを有する単一のフェルールを使用することが可能である。但し、他の例においては、締着手段141が、たとえば1つのファイバ101〜103毎に1個のフェルールとして、複数のフェルールにより実現されることも可能である。そのとき、種々のフェルールは、たとえば、相互に接着されるべく、相互に対して接続されることが可能である。
たとえば、ファイバ走査器100は、(図1において不図示である)アクチュエータを備えて成ることが可能である。たとえば、該アクチュエータは、締着手段141に隣接して配置され得る。たとえば、上記アクチュエータは、たとえば圧電式屈曲アクチュエータとして、圧電式アクチュエータとして実現され得る。但し、たとえば磁界コイルなどの、他のアクチュエータを使用することも可能である。特に、此処で、上記アクチュエータは、個々のファイバ101〜103を結合様式で誘起することが可能である。たとえば、この目的のために、全てのファイバ101〜103に対して運動を伝達する適切な誘起技術が提供され得る。このことは、個々のファイバ101〜104の別体的な誘起が、可能では無いこと、または、限られた程度までのみ可能であり得ることを意味する。このことは、たとえば、圧電式屈曲アクチュエータは、締着手段141を通して導かれる力の流れを介して全てのファイバ101〜104を一体的に誘起するという点において達成され得る。対応して、このことは、全てのファイバ101〜104に対して接続された磁性材料に対し、磁界コイルの共通の磁界により力の流れが付与されるという点において達成され得る。斯かる技術は、エネルギ効率的でスペース節約的な誘起が可能であるという利点を有する。これに加え、上記結合に依れば、個々のアクチュエータが、位相が一貫した様式で作動されるべきことが回避されることで、実施形態を簡素化することが可能である。結合式の誘起により、特に、連動式捩れモード、および/または、連動式横モードが誘起され得る。
上記アクチュエータは、運動の自由度を誘起する直接的な力作用に対して構成され得、すなわち、たとえば、静電的な交差指型の構造による比較対照実施形態においてそうであるパラメトリック誘起の使用が回避され得る。
たとえば、締着手段141は、基部プレートまたはフレームに対して取付けられ得る。斯かる例において、偏向ユニット142に隣接して配置されたファイバ101〜103の各端部は、可動端部を実現し得る。このことは、上記アクチュエータは、ファイバ101〜103のひとつ以上の自由度の運動を誘起するように構成され得ることを意味する。たとえば、上記アクチュエータは、ファイバ101〜103の捩れモードを誘起するように構成され得る。代替的もしくは付加的に、上記アクチュエータは、ファイバ101〜103の横モードを誘起するように構成され得る。ファイバ101〜103の可動端部の運動により、偏向ユニット142が移動されることが達成され得る。たとえば、偏向ユニット142は、シフトおよび/または傾斜され得る。これにより、光が走査され得る。
単純な例において、ファイバ101〜103の3つの長手軸心101〜103は、ひとつの平面内に配置され得る。但し、以下において相当に詳細に説明される如く、図1の例において3つのファイバ101〜103はひとつの平面内には配置されない。
図1においては、数が3つのファイバ101〜103が表される。但し、概略的に、ファイバ走査器100は、更に少ない数、または、たとえば4つ以上などの、更に多い数のファイバを有することも可能である。
複数のファイバ101〜103を使用することにより、ファイバ101〜103の運動に起因する応力が、個々のファイバ101〜103に亙り分散されることが達成され得る。これにより、個々のファイバ101〜103の材料は比較的に小さい応力を吸収すべきことが達成され得る。これに加え、締着手段141とファイバ101〜103の各々との間の接続箇所は比較的に小さい応力を伝達すべきことが達成され得る。斯かる様式において、ファイバ走査器100の有効寿命が伸ばされ得る。
図1の例において、ファイバ101〜103は、相互に対して平行に配置される。このことは、各々の場合において対合的である各ファイバの長手軸心111〜113は、相互に約0°の角度を囲繞することを意味する。概略的に、各々の場合において対合的であるファイバ101〜103の長手軸心111〜113は、相互に、45°以下、選択的には10°以下、更に選択的には1°以下の角度を囲繞することが可能である。
この様にして、特に、ファイバ走査器100は、ファイバ101〜103の長手軸心111〜113に直交する比較的に小さい広がりを有することを達成し得る。これに加え、種々の空間方向において、ファイバ101〜103の特に対称的な運動の誘起が達成され得る。
ファイバ101〜103を相互に対して実質的に平行に配置することにより、ファイバ111〜113が同一の長さ211を有することが可能である。たとえば、図1においては、全てのファイバ101〜103が同一の長さ211を有する実施形態が示される。たとえば、長さ211は、2mm〜20mmの範囲内、選択的には3mm〜10mmの範囲内、更に選択的には4mm〜7mmの範囲内であり得る。概略的に、ファイバ101〜103は、互いに、10%以下、選択的には2%以下、更に選択的には0.1%以下だけ異なるそれぞれの長さ211を有することが可能である。
ファイバ101〜103が実質的に同一の長さ211を有することから、以下の効果が達成され得る:ファイバ101〜103の横モードが誘起されたとき、偏向ユニット142の傾斜は生じず、または、大きな傾斜は生じず、代わりに、長手軸心111〜113に対して直交する偏向ユニット142のシフトが生ずる。このことは、たとえば、外部の影響に起因して横モードが不都合に誘起されても、偏向ユニット142により偏向される(図1では不図示の)光の放出角度には、それほどの変化はもたらされないことを意味する。これにより、ファイバ走査器100は特に、外部の影響に関して堅牢であり得る。
図2は、種々の例に係るファイバ走査器100に関する態様を示している。図2の例に係るファイバ走査器100は、基本的に、図1の例に係るファイバ走査器100に対応する。図2において、偏向ユニット142は更に、相当に詳細に示される。図2はまた、ファイバ走査器100の非作動状態も示している。
偏向ユニット142は、たとえば、締着手段141に対応して、フェルールなどとして実現され得るエンドピース144を備えて成る。エンドピース144上には、ミラー145が取付けられる。このことは、エンドピース144がミラー145の背面上に配置されることを意味する。図2からは、ファイバ101〜103は締着手段141とエンドピース144との間に延在することが明らかである。エンドピース144は、ミラー145とファイバ101〜103との間に取付けられる。図2からは、ファイバ101〜103は、ミラー145の背面から離間して、すなわち、締着手段141に向けて延在することも明らかである。これにより、従来のMEMS取付けにおける取付具における如く、相当のスペースを必要とするフレーム状構造が回避され得る。偏向ユニット142は、エンドピース144により、ファイバ101〜103に対して接続され得る。これにより、二部材式の製造が可能であることから、従来のMEMS取付具における如き複雑で一体的な背面の構造化は生じ得ない。
特に、ミラー145は、長手軸心111〜113に関し、または、概略的に、図2の場合には中央軸心220に関し、約45°の傾斜を有する。概略的に、中央軸心220に関する、または、特に長手軸心111〜113に関する傾斜は、30°〜50°の範囲内であり得る。これにより、図2の例における如く、ミラー145により光146が偏向されることを達成し得る。ファイバ101〜103の捩れモードを誘起することにより、光146は捩れ角度に対応する種々の角度にて偏向されることを達成し得る。これは、略々、潜望鏡の機能に対応する。光146の放出角度は、ミラー145の回転および傾斜により設定される。捩れモードが使用されるなら、回転のみが存在する。
捩れモードによる潜望鏡的な走査は、ミラー145が検出器の開口としても使用されるなら、検出器の開口のサイズは走査角度に依存しないという利点を有し、実際、入射光とミラー145との間の角度は走査角度に依存しない。このことは、ミラーを傾斜させることにより、検出器の開口のサイズが、故に測定の感度が、走査角度の関数として変化するという比較対照の実施形態とは異なるものである。
図2の例においては、光146が偏向ユニット142に向けてファイバ101〜103を通しては導かれない、という状況展開が示される。特に、図2においては、光146のビーム経路はファイバ101〜103の長手軸心111〜113に平行に延伸し、且つ、ミラーによる偏向の後または前における光146の付加的なビーム経路は、ファイバ101〜103の長手軸心111〜113に対して直交して延伸するという状況展開が示される。概略的に、光146のビーム経路は中央軸心220に対して平行に延伸し得る。但し、光146が、偏向ユニット142に向けて、少なくとも、ファイバ101〜103のうちの少なくとも1つを通して導かれるという他の実施形態も想起可能である。この目的のために、たとえば、光は、ファイバ101〜103のうちの1つ以上のファイバ内へと、偏向ユニット142から離れた端部にて結合されることが可能である。斯かる状況展開において、偏向ユニット142は、たとえば、レンズおよび/またはプリズムとして実現され得る。たとえば、屈折率分布型(GRIN)レンズが使用され得る。
図3は、種々の例に係るファイバ走査器100に関する態様を示している。此処で、図3は、図1からの断面線X−X’に沿う断面図である。図3は、ファイバ走査器100の非作動状態も示している。
図3の例において、ファイバ101〜103は、中央軸心220に関して回転対称的に配置される(図3の例において、回転対称性は点線により示される)。特に、3回回転対称性が示される。回転対称性の存在は、たとえば、ファイバ101〜103の系は、回転により、それ自体と重畳され得ることを意味する。回転対称性の次数は、360°の回転角度毎にファイバ101〜103の系がそれ自体と重畳され得る回数を表す。概略的に、回転対称性は、n回であり得、その場合、nはファイバ走査器において使用されるファイバの数を表す。
高次の回転対称配置によれば、以下の効果が達成され得る:ファイバ101〜103の捩れモードを誘起するときの非線形性が、減少もしくは排除され得る。このことの妥当性は、以下の例により示され得る。たとえば、3つのファイバ101〜103は、長手軸心101〜103および中央軸心220が全てひとつの平面内に位置する如き様式で配置され得る。そのとき、回転対称性は、2回である(図3の例における如き3回ではない)。斯かる場合、直交する複数の横モード(中央軸心220に対して直交する異なる方向)は、異なる慣性モーメントの故に、異なる周波数を有する。結果として、たとえば、低周波の横モードの方向は、捩れモードが誘起されるときのファイバ101〜103の回転と一体的に回転する。これによると、パラメトリック振動子が形成される、と言うのも、固有周波数は、回転角度の関数として、故に、時間の関数として変化するからである。パラメトリック振動子の異なる状態間におけるエネルギの移行は、非線形性に帰着する。高次の回転対称性の使用によれば、パラメトリック振動子の形成が阻止され得る。好適には、各ファイバは、捩れ角度に対する固有周波数の依存性が生じない様に配置され得る。
ファイバ101〜103の捩れモードが誘起されたときに非線形性を回避することにより、捩れモードにより光146の特に大きな走査角度が達成され得ることを達成することが可能である。たとえば、120°以上、選択的には160°以上の捩れ角度が生成され得る。
図4は、種々の例に係るファイバ走査器100に関する態様を示している。特に、図4は、ファイバ走査器100のファイバ101〜103の運動の自由度に関する態様を示している。特に、図4は、捩れモード301に関する態様を示している。
図4の例は、基本的に図3の例に対応する(その場合、図3においてはファイバ101〜103の非作動状態が示され、図4においてファイバ101〜103の非作動状態は点線により示される)。
図4においては、捩れモード301が示される。捩れモード301は、中央軸心220の回りにおけるファイバ101〜103の捻り(twisting)に対応する。結果として、個々のファイバ101〜103もまた、それらの長手軸心111〜113に沿って捻られる。故に、複数のファイバ101〜103は、(I)中央軸心220に沿って相互内へと、および、(II)各々の場合に、それらの長手軸心111〜113に沿って個別的に、捻られる。故に、捩れモード301は、ファイバ101〜103の連動式捩れモード301とも称され得る。このことは、特に、相互に関するファイバ101〜103の幾何学的配置により、すなわち、特に、相互に接近したファイバ101〜103の平行配置、すなわち、それらの長さと比較して特に小さいファイバ101〜103間の距離により、促進される。この連動式捩れモード301は、ファイバ103の平行運動性と称され得る。捩れモード301によれば、たとえば、偏向ユニット142のミラー145は回動され得ることから、光146は種々の角度にて放出される。
中央軸心220に沿う相互内への各ファイバの捻り量、および、それらの長手軸心に沿うファイバ101〜103の捻り量は、締着手段141までの距離が大きいほど、且つ、捩れ角度が大きいほど、増大する。たとえば、捩れモード301の捩れ角度が、ファイバ101〜103間の角度距離(3回回転対称性の故に、図4の例においては120°)より大きいならば、ファイバ101〜103の相互内への長手方向の重畳に依る完全捻りが存在する。故に、概略的に、捩れモード301の捩れ角度は、360°/nより大きくされ得、その場合にnは回転対称性の次数を記述する。これにより、ファイバ101〜103の相互内への捻りが促進される。この平行運動性によれば、同時的に低い非線形効果および低いスペース要件を以て、大きな走査角度が許容される。
図5は、種々の例に係るファイバ走査器100に関する態様を示している。特に、図5は、ファイバ走査器100のファイバ101〜103の運動の自由度に関する態様を示している。特に、図5は、横モード302に関する態様を示している。
図5の例は、基本的に図3の例に対応する(その場合、図3においてはファイバ101〜103の非作動状態が示され、図5においてファイバ101〜103の非作動状態は点線により示される)。
図5においては、横モード302が示される。横モード302は、中央軸心220に直交するファイバ101〜103の偏向に対応する。横モード301によれば、たとえば、偏向ユニット142のミラー145は、中央軸心220に関してシフトされ得ると共に、幾つかの例においては傾斜され得ることから、光146は、傾斜の場合には種々の角度にて放出される。
図6および図7は、種々の例に係るファイバ走査器100に関する態様を示している。特に、図6および図7は、ファイバ走査器100のファイバ101〜103の運動の自由度に関する態様を示している。特に、図6および図7は、横モード302に関する態様を示している。
図6においては、ファイバ走査器100の非作動状態が示される。図7においては、ファイバ走査器100の偏向状態が示される。図7からは、ファイバ101〜103の可動端部の偏向の場合においてさえも、偏向ユニット142の傾斜は生じないことが明らかである。このことは、偏向状態における光146の偏向は、実質的に、ファイバ走査器100の非作動状態における光146の偏向に対応することを意味する。これは真実である、と言うのも、ファイバ101〜103は同一の長さ211を有するからである。
これにより、(たとえば、ファイバ走査器100が配置される自動車が走行する非平坦な地面に起因する)横モード302の不都合な誘起は、光146の走査に関して影響を有さず、または、それほどの影響を有さないことが達成され得る。たとえば、この目的のために、たとえば、中央軸心220に直交する偏向ユニット142の広がり、特にミラー145の広がりは、横モード302の典型的な大きさよりも大きく寸法決定され得る。たとえば、ミラー145は、2mm未満、選択的には4mm未満、更に選択的には7mm未満の半径を有し得る。典型的に、捩れモード301は、外部の影響によれば、横モード302よりも実質的に更に非効率的に励起されることから、ファイバ走査器100は、外部の影響に関して特に安定的である。
図8は、種々の例に係るファイバ走査器100の運動の自由度301、302に関する態様を示している。特に、図8は、運動の自由度301、302のスペクトルを示している。
図8においては、捩れモードの固有周波数311が示され、横モード302の固有周波数312も示される。たとえば、上記アクチュエータは、固有周波数311において、または、それに接近して、捩れモード301を誘起するように構成されることが可能である(共振または半共振走査)。
図8の例においては、捩れモード301の最低次の固有周波数311は、横モード302の最低次の固有周波数312より小さいことが明らかである。故に、特に捩れモード301は、運動系の基本モードを構成し得る。このことは、たとえば、隣接するファイバ101〜103間の距離210が比較的に大きく寸法決定されることから達成され得る(図3を比較されたい)。これにより、ファイバ101〜103の慣性モーメントは、実際に増大される。距離210を増大することにより、特に横モード301の固有周波数311が増大されるが、捩れモード302の固有周波数312は、変化されず、もしくは、それほど変化されない。これにより、距離210の適切な寸法決定により、捩れモード301は、特に、横モード302の固有周波数312と比較して、特に低い固有周波数311を有することが達成され得る。たとえば、距離210は、長さ211の2%〜50%の範囲内、選択的には10%〜40%の範囲内、更に選択的には12%〜20%の範囲内であり得る。特に、斯かる技術によれば、ファイバ101〜104の最低周波数の誘起は、捩れモード301であり得る。
捩れモード301に対する比較的に低い固有周波数311の使用は、以下の効果を有し得る:(たとえば、ファイバ走査器100が配置される自動車が走行する非平坦な地面に起因する)不都合な外部影響は、比較的に非効率的にのみ捩れモード301を誘起し得る。これは真実である、と言うのも、不都合な外部影響は、種々のファイバ101〜103に関する締着手段141の領域における同相運動に対応し、多くの場合、締着手段141の領域における捻りは、生じず、または、僅かのみ生じるからである。しかも、横モード302の固有周波数312の範囲における更に高い周波数成分は、比較的に希にしか生じない。故に、対応するファイバ走査器100は、外部干渉に関して特に堅牢である。
図8の例において、捩れモード301と横モード302との間の縮退は排除される。これは真実である、と言うのも、各共振曲線は、両方の振幅が有意な値(たとえば、それぞれの最大値に関し5%超、または、10%超など)を有する重畳領域を有さないからである。捩れモード301と横モード302との間の縮退の排除は、たとえば、距離210に関する各長さ211の適切な寸法決定により達成され得る。たとえば、偏向ユニット142の直径、または、平衡錘の配備の如き、他のシステム・パラメータも変更され得る。縮退の排除により、異なる自由度の運動の間における結合に起因する非線形効果は、減少または回避され得る。
図9においては、捩れモード301と横モード302との間の縮退が排除されないという例が示される。図9は、その他の点では、実質的に図8に対応する。斯かる例は、たとえば、重畳図形による光146の2次元走査を可能とするために、横モード302100捩れモード301の時間的または空間的に重畳された誘起が所望されるならば、特に好適であり得る。
上記においては、数が3つのファイバ101〜104によるファイバ走査器が記述されたが、更に多数本のファイバを有するファイバ走査器100に対する対応例も実現され得る。たとえば、図10においては、ファイバ走査器100が4つのファイバ101〜104を有するという例が示される。此処で、ファイバ101〜104は、4回回転対称性を以て、中央軸心220に関して回転対称的に配置される。ファイバ101〜104は、正方形の角隅部に配置される。図10の状況展開においても、ファイバ101〜104の中央軸心220の回りにおける各ファイバの捻り、および、個別的なファイバ101〜104のそれぞれの(図10においては示されず、図面の平面に直交する)長手軸心の回りにおけるそれらの捻りが生ずるという、連動式捩れモード301が誘起され得る。故に、概略的に、ファイバ101〜104間の角度距離(4回対称性の故に、図10の例においては90°)は、たとえば、90°超、選択的には120°超、更に選択的には160°超であり得る捩れ角度よりも小さくされ得る。
当然乍ら、上述された実施例の各特徴、および、本発明の各態様は、相互に組み合わされ得る。特に、各特徴は、記述された組み合わせにおいてだけでなく、本発明の有効範囲から逸脱せずに、他の組み合わせにても使用され得、もしくは、単独でも採用され得る。