JP2019527234A - スピロ−ラクタムnmda受容体修飾因子及びその使用 - Google Patents

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Abstract

本開示は、NMDA受容体活性の調節において効力を有する化合物を開示する。そのような化合物は、鬱病及び関連障害などの状態の治療に使用することができる。経口投与製剤及び静脈内製剤を含む化合物の他の薬学的に許容される投与形態も開示する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月1日に出願の米国仮特許出願第62/369,456号明細書の優先権及び利益を主張するものであり;その内容は、その全体が本明細書において参照によりここに援用される。
N−メチル−d−アスパルテート(「NMDA」)受容体は、とりわけ、興奮性アミノ酸であるグルタメート及びグリシンならびに合成化合物NMDAに応答性であるシナプス後イオンチャンネル型受容体である。NMDA受容体は、受容体チャネル(receptor associated channel)を介したシナプス後神経細胞に対する二価及び一価のイオンの両方の流れを制御する(Foster et al.,Nature 1987,329:395−396;Mayer et al.,Trends in Pharmacol.Sci.1990,11:254−260)。NMDA受容体は、発達中における神経構造及びシナプス結合の特定に関与しており、ならびに、経験依存的シナプス修飾に関与している可能性がある。加えて、NMDA受容体はまた、長期増強及び中枢神経障害に関与していると考えられている。
NMDA受容体は、記憶獲得、記憶及び学習などの多くのより高次の認知機能、ならびに、特定の認知経路及び疼痛の知覚の基礎をなすシナプス可塑性において重要な役割を果たす(Collingridge et al.,The NMDA Receptor,Oxford University Press,1994)。加えて、NMDA受容体の一定の特性は、これらが、意識そのものの基礎をなす脳内における情報処理に関与し得ることを示唆している。
NMDA受容体は、幅広い範囲のCNS障害に関与していると見られているために特に関心を集めている。例えば、脳卒中又は外傷性傷害によって引き起こされる脳虚血の最中に、過剰量の興奮性アミノ酸であるグルタメートが、損傷を受けたニューロン又は酸素が欠乏しているニューロンから放出される。この過剰量のグルタメートがNMDA受容体に結合するとリガンド依存性イオンチャネルが開口し;次いで、カルシウム流入によって細胞内のカルシウムレベルが高まって生化学カスケードが活性化され、これにより、タンパク質の分解及び細胞死がもたらされる。興奮毒性として知られるこの現象はまた、低血糖症及び心停止から癲癇等の他の障害に付随する神経損傷の原因であると考えられている。加えて、ハンチントン病、パーキンソン病、ならびに、ジスキネジア及びLドーパ誘発ジスキネジア及びアルツハイマー病などのパーキンソン関連疾患の慢性神経変性における同様の関与を示す一次報告が存在している。NMDA受容体の活性化が脳卒中後痙攣の原因であることが分かっており、癲癇の一定のモデルにおいては、NMDA受容体の活性化が発作の発生に必要であることが分かっている。動物麻酔薬PCP(フェンシクリジン)によるNMDA受容体Ca++チャネルの遮断が統合失調症に似た精神病性状態をヒトにおいてもたらすために、NMDA受容体の神経精神医学的な関与もまた認識されている(Johnson,K.and Jones,S.,1990においてレビューされている)。さらに、NMDA受容体はまた、一定のタイプの空間学習に関連付けられている。
NMDA受容体は、シナプス後膜に埋まった数々のタンパク質鎖からなると考えられている。これまでに発見されたサブユニットの最初の2つのタイプは、おそらくほとんどのアロステリック結合部位を含有する大きな細胞外領域、Ca++が透過可能である孔又はチャネルを形成するようにループ及び折りたたみ構造とされた数々の膜貫通領域、ならびに、カルボキシル末端領域を形成する。チャネルの開閉は、細胞外表面に存在するタンパク質のドメイン(アロステリック部位)に対する種々のリガンドの結合によって制御される。リガンドの結合は、タンパク質の全体的構造における立体構造変化に影響を与え、これが最終的に、チャネルの開口、部分開口、部分閉口又は閉口に反映されると考えられている。
NMDA受容体を修飾し、及び、薬学的利益を提供することが可能である、新規であると共に、より特異的及び/又は強力な化合物に対する要求が、本技術分野において継続して存在している。加えて、医学技術分野においては、このような化合物の経口による送達が可能な形態に対する要求が継続して存在している。
本開示は、NMDA調節剤とすることができる化合物を含む。より詳細には、本開示は、以下の式を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩及び/もしくは立体異性体を提供する。
であって、式中:
XはO又はNRであり;
は、H、C〜Cアルキル、フェニル、−C(O)−C〜Cアルキル及びC(O)−O−C〜Cアルキルからなる群から選択され;
は、H、C〜Cアルキル、フェニル、−C(O)−C〜Cアルキル及びC(O)−O−C〜Cアルキルからなる群から選択され;
pは1もしくは2であり;
は、各出現について、H、C〜Cアルキル、−S(O)−C〜Cアルキル、−NR、C〜Cアルコキシ、シアノ及びハロゲンからなる群から独立して選択され;
wは、0、1又は2であり、
は、H、C〜Cアルキル、フェニル−C(O)R31及び−C(O)OR32からなる群から選択され;
31及びR32は、各々独立して、H、C〜Cアルキル、−C〜Cシクロアルキル及びフェニルであり;
は、各出現について、H、ハロゲン、フェニル及びC〜Cアルキルからなる群から独立して選択され;
及びRは、各々独立して、各出現について、H、C〜Cアルキル及びフェニルからなる群から選択され、又は、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、4〜6員複素環を形成し;
ここで、前記C〜Cアルキルのいずれかは、各出現について独立して、−C(O)NR、−NR、ヒドロキシ、S(O)−C〜Cアルキル、SH、フェニル及びハロゲンから各々独立して選択される1個、2個又は3個の置換基によって任意に置換されていることが可能であり、ここで、前記フェニルのいずれかは、各出現について独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、−C(O)−O−C〜Cアルキル、−C(O)−C〜Cアルキル、メチル及びCFから各々独立して選択される1個、2個又は3個の置換基によって任意に置換されていることが可能である。
本明細書においてはまた、開示の化合物及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物が提供されている。このような組成物は、患者に対する、経口投与、非経口投与、局所投与、膣内投与、直腸内投与、舌下投与、点眼投与、経皮投与又は鼻噴投与に好適であることが可能である。
種々の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、一定のNR2サブタイプを発現するNMDA受容体に結合する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は1種のNR2サブタイプのみに結合し、他のものには結合しない。開示の化合物は、他のタンパク質目標及び/又は他のNMDA受容体サブタイプを調節することができることを理解すべきである。
他の態様においては、治療を必要とする患者において、自閉症、不安、うつ病、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、精神病性障害、精神病性症状、引きこもり、強迫性障害、恐怖症、心的外傷後ストレス症候群、行動障害、衝動制御傷害、物質乱用障害、睡眠障害、記憶障害、学習障害、尿失禁、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードライヒ病、ダウン症、脆弱X症候群、結節性硬化症、オリーブ橋小脳萎縮症、レット症候群、脳性麻痺、薬物誘発性視神経炎、静脈鬱血性網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、認知症、エイズ認知症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、痙性麻痺、間代性筋痙攣、筋痙攣、トゥレット症候群、癲癇、幼児痙攣、脳虚血、脳卒中、脳腫瘍、外傷性脳損傷、心停止、脊髄症、脊髄傷害、末梢神経障害、線維筋痛症、急性神経障害性疼痛及び慢性神経障害性疼痛からなる群から選択される状態を治療する方法が提供されている。このような方法は、患者に、薬学的に有効な量の開示の化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩、立体異性体、N−オキシド及び水和物を投与するステップを含み得る。
いくつかの実施形態において、開示の方法は神経障害性疼痛の治療を含み、ここで、神経障害性疼痛は、ヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、脳卒中、後虚血、慢性的背痛、帯状疱疹後神経痛、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィ、複合性局所疼痛症候群、脊髄傷害、座骨神経痛、幻肢痛、糖尿病ニューロパシー及びがん化学療法誘発性神経障害性疼痛からなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、開示の方法は、うつ病の治療を含む。例えば、うつ病は、大うつ病性障害、気分変調性障害、精神病性うつ病、分娩後うつ病、季節性感情障害、双極性障害、気分障害、又は、慢性な医学的状態によって引き起こされるうつ病の1種以上を含み得る。他の実施形態において、開示の方法は統合失調症を治療し得る。このような統合失調症は、例えば、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張病型統合失調症、未分化型統合失調症、残存型統合失調症、統合失調症後抑うつ又は単純な統合失調症であり得る。
本開示は一般に、例えば、NMDA受容体アンタゴニスト、アゴニスト、又は、部分アゴニスト等のNMDA受容体を修飾可能である化合物、ならびに、本開示の化合物を用いる組成物及び/又は方法に関する。本開示の化合物は、他のタンパク質目標及び/又は特異的NMDA受容体サブタイプを修飾し得ることが認識されるべきである。
本明細書において用いられる、「アルキル」という用語は、本明細書において、それぞれC〜Cアルキル、C〜Cアルキル及びC〜Cアルキルと称される1〜6、1〜4又は1〜3個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖基などの、飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素を指す。例えば、「C〜Cアルキル」とは、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素を指す。C〜Cアルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル及びネオペンチルが挙げられる。他の例において、「C〜Cアルキル」とは、1〜4個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素を指す。C〜Cアルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルが挙げられる。例示的なアルキル基としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びヘキシルが挙げられる。
本明細書において用いられる、「アルコキシ」という用語は、酸素原子に結合したアルキル基(アルキル−O−)を指す。アルコキシ基は、1〜6個又は2〜6個の炭素原子を有していることが可能であり、本明細書においては、それぞれ、C〜Cアルコキシ及びC〜Cアルコキシと称される。例示的なアルコキシ基としては、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロポキシ及びtert−ブトキシが挙げられる。
本明細書において用いられる、「カルボニル」という用語は、ラジカル−C(O)−又はC=Oを指す。
本明細書において用いられる、「シアノ」という用語は、ラジカル−CNを指す。
本明細書において用いられる、「シクロアルキル」という用語は、単環式飽和又は部分不飽和炭化水素環(炭素環)系であって、例えば、各環が完全に飽和されているか、又は、1つ以上の不飽和単位を含有しているが、環が芳香族ではないものを指す。シクロアルキルはその環系中に3〜6個又は4〜6個の炭素原子を有していることが可能であり、本明細書において、それぞれ、C〜Cシクロアルキル又はC〜Cシクロアルキルと称される。例示的なシクロアルキル基としては、これらに限定されないが、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロブチル及びシクロプロピルが挙げられる。
本明細書において用いられる、「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)を指す。
本明細書において用いられる、「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外のいずれかの元素の原子を指し、例えば、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、硫黄(S)、リン(P)及びセレニウム(Se)が挙げられる。
本明細書において用いられる、「複素環」又は「ヘテロシクロアルキル」という用語は、技術分野において認識されており、飽和又は部分不飽和3〜8員環構造であって、環系が、窒素、酸素及び/又は硫黄などの1、2又は3個のヘテロ原子を含むものを指す。複素環は、1つ以上のフェニル、部分不飽和又は飽和環に縮合していることが可能である。複素環の例としては、これらに限定されないが、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニルが挙げられる。
本明細書において用いられる、「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシ」という用語は、ラジカル−OHを指す。
本明細書において用いられる、「オキソ」という用語は、ラジカル=O(二重結合酸素)を指す。
本明細書において用いられる、「アミノ酸」という用語は、以下のαアミノ酸のいずれか1種を含む:イソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リシン、アスパルテート、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタメート、スレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、アルギニン、セリン、ヒスチジン及びチロシン。アミノ酸はまた、βアミノ酸などの他の技術分野において認識されているアミノ酸を含むことが可能である。
本明細書において用いられる、「化合物」という用語は、記載の文脈に基づく別段の理解がない限り、又は、1種の特定の形態の化合物、すなわち、化合物自体、その特定の立体異性体及び/もしくは同位体標識化化合物、もしくは、薬学的に許容可能な塩、水和物、エステルもしくはN−オキシドに明確に限定されていない限り、化合物自体、及び、その薬学的に許容可能な塩、水和物、エステル及びN−オキシド(その種々の立体異性体及びその同位体標識化形態を含む)を指す。化合物は、化合物の立体異性体及び/もしくは同位体標識化化合物の薬学的に許容可能な塩、又は、水和物、エステルもしくはN−オキシドを指すことが可能であることが理解されるべきである。
本開示の化合物は1つ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含有していることが可能であり、従って、幾何異性体及び鏡像異性体又はジアステレオマーなどの立体異性体として存在することが可能である。「立体異性体」という用語は、本明細書において用いられる場合、化合物のすべての幾何異性体、鏡像異性体及び/又はジアステレオマーから構成される。例えば、化合物が特定のキラル中心と共に示されている場合、化合物の同じキラル中心及び他のキラル中心についてこのようなキラリティーを伴わずに示されている化合物であって、すなわち、例えばべた塗り又は点線のくさび形の結合で三次元的に示されているのではなく、「平坦」又は「直線」の結合で二次元的に示されている化合物は、本開示の範囲に含まれる。立体特異的化合物は、不斉炭素原子を中心とした置換基の立体配置に応じて符号「R」又は「S」によって示され得る。本開示は、これらの化合物の種々の立体異性体のすべて及びその混合物を包含する。鏡像異性体又はジアステレオマーの混合物は、命名において「(±)」と示されることが可能であるが、構造はキラル中心を暗示的に示すことが可能であることを、当業者は認識するであろう。例えば包括的な化学構造等の化学構造の図示は、別段の記載がない限り、特定されている化合物のすべての立体異性形態を包含することが理解される。
本開示の化合物の個々の鏡像異性体及びジアステレオマーは、不斉もしくはステレオジエン中心を含む市販されている出発材料から合成により調製可能であり、又は、ラセミ混合物の調製、これに続く当業者に周知である分割方法によって調製可能である。これらの分割方法は以下により例示される:(1)鏡像異性体の混合物の不斉補助基への結合、得られるジアステレオマー混合物の再結晶又はクロマトグラフィによる分離、及び、助剤からの光学的に純粋な生成物の遊離;(2)光学的に活性な分割剤による塩形成;(3)キラル液体クロマトグラフィカラムにおける光学鏡像異性体混合物の直接的な分離;又は、(4)立体選択的化学物質又は酵素試薬を用いる速度論的分割。ラセミ混合物はまた、キラル−フェーズガスクロマトグラフィ又はキラル溶剤中における化合物の結晶化などの周知の方法によって、構成成分である鏡像異性体に分割が可能である。新しい立体中心の形成中に、又は、既存の立体中心の転移中に単一の反応体において立体異性体の一様ではない混合物が形成される化学反応又は酵素反応である立体選択的合成が、技術分野において周知である。立体選択的合成は、エナンチオ選択的及びジアステレオ選択的形質転換の両方を含む。例えば、Carreira and Kvaerno,Classics in Stereoselective Synthesis,Wiley-VCH:Weinheim,2009を参照のこと。
炭素−炭素二重結合周囲の置換基の配列、又は、シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル周囲の置換基の配列からもたらされる幾何異性体もまた、本開示の化合物中において存在可能である。符号
は、本明細書に記載されているとおり単結合、二重結合又は三重結合であり得る結合を示す。炭素−炭素二重結合周囲の置換基は「Z」又は「E」立体配置として示され、ここで、「Z」及び「E」という用語は、IUPAC基準に従って用いられる。別段の規定がある場合を除き、二重結合を示す構造は、「E」及び「Z」異性体の両方を含む。
あるいは、炭素−炭素二重結合周囲の置換基は「シス」又は「トランス」と称することが可能であり、ここで、「シス」は二重結合の同一側にある置換基を表し、及び、「トランス」は二重結合の反対側にある置換基を表す。炭素環周囲の置換基の配列はまた、「シス」又は「トランス」と示すことが可能である。「シス」という用語は環面の同一側にある置換基を表し、及び、「トランス」という用語は環面の反対側にある置換基を表す。環面の同一側及び反対側の両方に置換基が位置されている化合物の混合物は、「シス/トランス」と示されている。
本開示はまた、自然界において通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって1個以上の原子が置換されていることを除き、本明細書において言及されている化合物と同等である同位体標識化化合物を包含する。本明細書に記載の化合物に取り入れることが可能である同位体の例としては、それぞれ、H(「D」)、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体が挙げられる。例えば、本明細書に記載の化合物は、1個以上のH原子が重水素で置換されていることが可能である。
一定の同位体標識化化合物(例えば、H及び14Cで標識化されたもの)は、化合物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用であることが可能である。三重水素化(すなわち、H)及び炭素−14(すなわち、14C)同位体が、調製及び検出性の容易さから特に好ましい可能性がある。さらに、重水素(すなわち、H)などのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性(例えば、インビボ半減期の増加又は要求投与量の低減)によって一定の治療的利点をもたらす可能性があり、従って、ある状況下においては好ましい可能性がある。同位体標識化化合物は一般に、同位体標識化試薬を非同位体標識化試薬の代わりに置換することによる、例えば実施例の項におけるもの等の本明細書に開示のものと同様の手法に従うことによって調製することが可能である。
本明細書において用いられる、「薬学的に許容可能な」及び「薬理学的に許容可能な」という用語は、動物又はヒトに適切に投与された場合に、悪影響を及ぼす、アレルギー性等の有害反応をもたらすことがない化合物、分子化合物、組成物、材料及び/又は剤形を指す。ヒトへの投与については、調製物は、FDA生物学的製剤基準局(FDA Office of Biologics)基準によって要求されている無菌性、発熱原性、一般的な安全性、及び、純度基準を満たすべきである。
本明細書において用いられる、「薬学的に許容可能なキャリア」及び「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、薬学的投与に適合する溶剤、分散媒体、コーティング、等張剤及び吸収遅延剤等のいずれか及びすべてを指す。薬学的に許容可能なキャリアとしては、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水又は水/油エマルジョンなど)、及び、種々のタイプの湿潤剤を挙げることが可能である。組成物はまた安定剤及び防腐剤を含んでいることが可能である。
本明細書において用いられる、「医薬組成物」という用語は、1種以上の薬学的に許容可能なキャリアと一緒に配合された本明細書に開示の少なくとも1種の化合物を含む組成物を指す。医薬組成物はまた、補足的、追加的、又は、増強的な治療機能を提供する他の有効な化合物を含有していることが可能である。
本明細書において用いられる、「個体」、「患者」及び「被検体」という用語は、同義的に用いられ、好ましくはマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ又は霊長類、及び、より好ましくはヒト等の哺乳動物を含むいずれかの動物を含む。本開示に記載されている化合物は、ヒトなどの哺乳動物に投与可能であるが、例えば、飼育動物(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)及び実験動物(例えば、ラット、マウス、テンジクネズミ等)獣医学的治療が必要とされる動物などの他の哺乳動物にも投与可能である。本開示に記載の方法で治療される哺乳動物は、好ましくは、例えば疼痛又はうつ病の治療が所望される哺乳動物である。
本明細書において用いられる、「治療」という用語は、その1種以上の症状を含む状態、疾病、障害等の向上をもたらす、例えば緩和、軽減、修飾、寛解又は排除等のいずれかの効果を含む。治療は、障害の治癒、改善、又は、少なくとも部分的な寛解であることが可能である。
「障害」という用語は、別段の定めがある場合を除き、用語「疾病」、「状態」又は「疾患」と同義的に称され、また、用いられる。
本明細書において用いられる、「修飾」という用語は、拮抗作用(例えば、阻害)、アゴニズム、部分的拮抗作用及び/又は部分的アゴニズムを指し、また、含む。
本明細書において用いられる、「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医によって求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発させることとなる化合物(例えば開示の化合物)の量を指す。本開示に記載の化合物は、疾病を治療するために治療的有効量で投与可能である。化合物の治療的有効量は、うつ病などの疾病症状の緩和をもたらす量などの所望の治療的及び/又は予防的効果を達成するために必要とされる量であることが可能である。
本明細書において用いられる、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本開示の化合物中に存在し得る酸性基又は塩基性基のいずれかの塩を指し、この塩は、薬学的投与に適合性である。当業者には公知であるとおり、本開示の化合物の「塩」は、無機酸又は有機酸及び塩基から由来するものであり得る。
塩の例としては、これらに限定されないが:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、ウンデカン酸塩等が挙げられる。塩の他の例としては、Na、NH 及びNW (ここで、WはC1〜4アルキル基であることが可能である)などの好適なカチオンと化合した本開示の化合物のアニオン等が挙げられる。治療用途のために、本開示の化合物の塩は薬学的に許容可能であることが可能である。しかしながら、薬学的に許容可能ではない酸及び塩基の塩もまた、例えば薬学的に許容可能な化合物の調製又は精製において使用し得る。
塩基性の性質である本組成物中に含まれる化合物は、種々の無機酸及び有機酸と広く多様な塩を形成することが可能である。このような塩基性化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩の調製に用いられることが可能である酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち、特にこれらに限定されないが、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))を含む、薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩を形成するものである。
酸性の性質である本組成物中に含まれる化合物は、種々の薬理学的に許容可能なカチオンと塩基塩を形成することが可能である。このような塩の例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、ならびに、特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩及び鉄塩が挙げられる。
塩基性又は酸性部分を含む本組成物中に含まれる化合物はまた、種々のアミノ酸と薬学的に許容可能な塩を形成することが可能である。本開示の化合物は、例えば、1個のアミノ及び1個のカルボン酸基等の酸性基及び塩基性基の両方を含有可能である。このような事例において、化合物は、酸付加塩、双性イオン又は塩基塩として存在可能である。
本明細書に開示の化合物は、水、エタノール等などの薬学的に許容可能な溶剤と溶媒和形態ならびに非溶媒和形態で存在することが可能であり、本開示は、溶媒和及び非溶媒和形態の両方を包含することが意図されている。いくつかの実施形態において、化合物はアモルファスである。一定の実施形態において、化合物は単一の異形体である。種々の実施形態において、化合物は異形体の混合物である。特定の実施形態において、化合物は結晶形態である。
本明細書において用いられる、「プロドラッグ」という用語は、インビボで形質転換されて、開示の化合物、又は、化合物の薬学的に許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物をもたらす化合物を指す。形質転換は、種々のメカニズム(エステラーゼ、アミダーゼ、脱リン酸化酵素、酸化性及び/又は還元性新陳代謝によるものなど)によって、種々の場所(腸管腔中、又は、腸、血液もしくは肝臓への移動中など)で生じることが可能である。プロドラッグは技術分野において周知である(例えば、Rautio,Kumpulainen et al.,Nature Reviews Drug Discovery 2008,7,255を参照のこと)。例えば、本明細書に記載の化合物、又は、化合物の薬学的に許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物がカルボン酸官能基を含有する場合、プロドラッグは、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル(β−ジメチルアミノエチルなど)、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキル、ピペリジノ−(C〜C)アルキル、ピロリジノ−(C〜C)アルキル又はモルホリノ(C〜C)アルキルなどの基によるカルボン酸基の水素原子の置換によって形成されるエステルであることが可能である。
同様に、本明細書に記載の化合物がアルコール官能基を含有する場合、プロドラッグは、(C〜C)アルカノイルオキシメチル、1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル(C〜C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C〜C)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシニル、(C〜C)アルカノイル、α−アミノ(C〜C)アルカノイル、アリールアシル及びα−アミノアシル又はα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで、各α−アミノアシル基は、天然L−アミノ酸、P(O)(OH)、−P(O)(O(C〜C)アルキル)又はグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態の水酸基の除去により得られるラジカル)から独立して選択される)などの基によるアルコール基の水素原子の置換によって形成されることが可能である。
本明細書に記載の化合物にアミン官能基が組み込まれている場合には、プロドラッグは、例えば、アミド又はカルバメート、N−アシルオキシアルキル誘導体、(オキソジオキソレニル)メチル誘導体、N−マンニッヒ塩基、イミン又はエナミンの形成によって形成されることが可能である。加えて、第二級アミンは代謝的に開裂されて生理的に活性な第一級アミンを生成することが可能であり、又は、第三級アミンは代謝的に開裂されて生理的に活性な第一級もしくは第二級アミンを生成することが可能である。例えば、Simplicio,et al.,Molecules 2008,13,519、及び、引用されている文献を参照のこと。
別段の定義がない限り、本明細書において用いられているすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野における当業者によって通例理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書を通して、組成物及びキットが特定のコンポーネントを有する、含む(including)、もしくは、含む(comprising)と記載されている場合、又は、プロセス及び方法が特定のステップを有する、含む(including)、もしくは、含む(comprising)と記載されている場合、追加的に、言及されているコンポーネントから基本的に構成されている、又は、構成されている本開示の組成物及びキットが存在しており、ならびに、言及されているプロセスステップから基本的に構成されている、又は、構成されている本開示に係るプロセス及び方法が存在していることが意図されている。
本出願において、エレメントもしくはコンポーネントが、列挙されているエレメントもしくはコンポーネントのリストに含まれている、及び/又は、このリストから選択されると記載されている場合、このエレメントもしくはコンポーネントは、列挙されているエレメントもしくはコンポーネントのいずれか1つであることが可能であり、又は、エレメントもしくはコンポーネントは、列挙されているエレメントもしくはコンポーネントの2つ以上からなる群から選択されることが可能であると理解されるべきである。
さらに、本明細書に記載の組成物又は方法のエレメント及び/又は特性は、本明細書において明示的であっても暗示的であっても、本開示の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で多様に組み合わせることが可能であると理解されるべきである。例えば、特定の化合物が参照されている場合、文脈から別段の理解がされない限りにおいては、この化合物は、本開示の組成物の種々の実施形態において、及び/又は、本開示の方法において用いられることが可能である。換言すると、本出願においては、実施形態は、明解かつ簡潔な適用が記載及び図示可能であるよう記載及び描写されているが、実施形態は、本教示及び開示から逸脱することなく様々に組み合わされ、又は、分離されることが可能であるよう意図され、及び、認識されることとなる。例えば、本明細書において記載及び描写されているすべての特性は、本明細書において記載及び描写された本開示のすべての態様に適用可能であることが認識されるであろう。
冠詞物品「a」及び「an」は、文脈が不適切でない限り、本開示において、その冠詞に係る1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の文法上の目的語を指すために用いられる。一例として、「1つの(an)エレメント」は、1つのエレメント又は2つ以上のエレメントを意味する。
「及び/又は」という用語は、本開示において、別段の記載がない限り、「及び」又は「又は」を意味するために用いられる。
「少なくとも1つの」という表記は、文脈及び使用から別段の理解がなされない限り、表記後の言及されている対象の各々の個々に含むと共に、2つ以上の言及されている対象の種々の組み合わせを含むと理解されるべきである。3つ以上の言及されている対象に関連する「及び/又は」という表記は、文脈から別段の理解がなされない限り、同一の意味を有すると理解されるべきである。
「を含む(include)」、「を含む(includes)」、「を含む(including)」、「を有する(have)」、「を有する(has)」、「を有する(having)」、「を含有する(contain)」、「を含有する(contains)」又は「を含有する(containing)」という用語であって、これらと文法的に等しい語を含むものの使用は一般に、文脈より別段の特定的な規定又は理解がなされない限り、例えば、言及されていない追加のエレメント又はステップを排除しないオープンエンド形式であり、及び、非限定的であるとして理解されるべきである。
「約」という用語が定量値に先行して用いられている場合には、本開示はまた、別段の特定的な規定がない限りは、特定の定量値自体を含む。本明細書において用いられる、「約」という用語は、別段の定め又は推論がある場合を除き、公称値から±10%の偏差を指す。
組成物中のコンポーネント又は材料の量に関して割合が記載されている場合、別段の定めがある場合を除き、又は、文脈から別段の理解がある場合を除き、割合は、重量を基準とした割合であると理解されるべきである。
例えばポリマーの分子量が記載されており、これが絶対値ではない場合、別段の定めがある場合を除き、又は、文脈から別段の理解がある場合を除き、分子量は、平均分子重量であると理解されるべきである。
ステップの順番又は一定の動作を行う順番は、本開示が実施可能であり続ける限りにおいては重要ではないと理解されるべきである。しかも、2つ以上のステップ又は動作は同時に実施可能である。
本明細書における種々の箇所で、置換基は群又は範囲で開示されている。記載は、このような群及び範囲の構成要素の個々のサブコンビネーションの各々及びすべてを含むことが特定的に意図されている。例えば、「C1〜6アルキル」という用語は、C、C、C、C、C、C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C及びC〜Cアルキルを個々に開示することが特定的に意図されている。他の例として、0〜40の範囲内の整数は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40を個々に開示することが特定的に意図され、ならびに、1〜20の範囲内の整数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20を個々に開示することが特定的に意図されている。追加の例では、「1〜5個の置換基で任意に置換され」という句は、0、1、2、3、4、5、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜5、2〜4、2〜3、3〜5、3〜4及び4〜5個の置換基を含んでいることが可能である化学基を個々に開示することを特定的に意図していることが包含されている。
例のいずれか及びすべて、又は、例えば「などの」もしくは「を含む(including)」等の本明細書における例示的な言語の使用は単に本開示のより良い例示を意図するものであり、特許請求されていない限りにおいては本開示の範囲について限定を提起するものではない。本明細書における言語はいずれも、いずれかの特許請求されていない構成要素を本開示の実施に必須であると示すものと理解されるべきではない。
さらに、可変要素に定義が付随していない場合には、この可変要素は、文脈から別段の異なる理解がない限り、本開示における他の箇所に見出されるとおり定義される。加えて、いずれかの構造又は化合物中において複数出現している場合、可変要素及び/又は置換基(例えば、C〜Cアルキル、R、R、w等)の各々の定義は、同一の構造又は化合物中における他の箇所の定義からは独立している。
本明細書における式及び/又は化合物中の可変要素及び/又は置換基の定義は、複数の化学基を含む。本開示は、以下の実施形態を含む:例えば、i)可変要素及び/又は置換基の定義は本明細書に記載の化学基から選択される単一の化学基であり;ii)定義は、本明細書に記載されているものから選択される2つ以上の化学基の集合であり;ならびに、iii)化合物は、可変要素及び/又は置換基であって、(i)又は(ii)によって定義されている可変要素及び/又は置換基の組み合わせにより定義される。
本開示の種々の態様が明確にするために表題下及び/又は項中に本明細書に記載されているが;しかしながら、特定の一つの項に記載されている本開示のすべての態様、実施形態又は特性はその特定の項に限定されるべきではなく、むしろ、本開示の態様、実施形態又は特性のいずれかに適用可能であることが理解される。
化合物
開示の化合物は、式:
を有する化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩及び/もしくは立体異性体であって、式中:
XはO又はNRであり;
は、H、C〜Cアルキル、フェニル、−C(O)−C〜Cアルキル及びC(O)−O−C〜Cアルキルからなる群から選択され;
は、H、C〜Cアルキル、フェニル、−C(O)−C〜Cアルキル及びC(O)−O−C〜Cアルキルからなる群から選択され;
pは1もしくは2であり;
は、各出現について、H、C〜Cアルキル、−S(O)−C〜Cアルキル、−NR、C〜Cアルコキシ、シアノ及びハロゲンからなる群から独立して選択され;
wは、0、1又は2であり、
は、H、フェニル、C〜Cアルキル、−C(O)R31及びC(O)OR32からなる群から選択され;
31及びR32は、各々独立して、H、C〜Cアルキル、−C〜Cシクロアルキル及びフェニルであり;
は、各出現について、H、ハロゲン、フェニル及びC〜Cアルキルからなる群から独立して選択され;ならびに
及びRは、各々独立して、各出現について、H、C〜Cアルキル及びフェニルからなる群から選択され、又は、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、4〜6員複素環を形成し;
ここで、前記C〜Cアルキルのいずれかは、各出現について独立して、−C(O)NR、−NR、ヒドロキシ、S(O)−C〜Cアルキル、SH、フェニル及びハロゲンから各々独立して選択される1個、2個又は3個の置換基によって任意に置換されていてもよく、ならびに、ここで、前記フェニルのいずれかは、各出現について独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、−C(O)−O−C〜Cアルキル、−C(O)−C〜Cアルキル、メチル及びCFから各々独立して選択される1個、2個又は3個の置換基によって任意に置換されていてもよい。
一定の実施形態において、Rは−C(O)−O−C〜Cアルキルであることが可能である。例えば、Rはtert−ブチルオキシカルボニルであることが可能である。
一定の実施形態において、Rは、ベンジル又は1個、2個もしくは3個のフッ素により任意に置換されているC〜Cアルキルであることが可能である。例えば、Rはメチルとすることができ;一方で、いくつかの実施形態においては、R
とすることができる。
いくつかの実施形態において、RはHであることが可能である。
一定の実施形態において、Rは−C(O)−C〜Cアルキルであることが可能であり、ここで、−C(O)−C〜Cアルキルは:
によって表されることが可能であり、式中、R及びRは、各出現について、水素及びC〜Cアルキルからなる群から独立して選択されることが可能である。
いくつかの実施形態において、Rはベンジルであることが可能である。
一定の実施形態において、XはOであることが可能であり;一方で、一定の実施形態においては、XはNRであることが可能である。
一定の実施形態において、RはHであることが可能である。
一定の実施形態において、Rは、ベンジル又は1個、2個もしくは3個のフッ素により任意に置換されているC〜Cアルキル、−C(O)−C〜Cアルキル又はC(O)−O−C〜Cアルキルであることが可能である。例えば、Rは、メチル又は
であることが可能である。
いくつかの実施形態において、Rはベンジルであることが可能である。
一定の実施形態において、Rは−C(O)−C〜Cアルキルであることが可能であり、ここで、−C(O)−C〜Cアルキルは:
によって表されることが可能であり、式中、R及びRは、各出現について、水素及びC〜Cアルキルからなる群から独立して選択されることが可能である。
いくつかの実施形態において、Rは、−C(O)−O−C〜Cアルキル、例えば、tert−ブチルオキシカルボニルであることが可能である。
一定の実施形態において、pは1であり;一方で、一定の実施形態においては、pは2である。
ある実施形態では、Rは、Hであってもよい。
ある実施形態では、Rは、
からなる群から選択することができる。ここで、式中、R及びRは、各出現について、水素及びC〜Cアルキルからなる群から独立して選択されることが可能である。
特定の実施形態では、R、R及び/又はRは、独立して、アミノ酸又はアミノ酸の誘導体、例えば、HN−CH(アミノ酸側鎖)−C(O)NHで表されるアルファ「アミノアミド」とすることができる。特定の実施形態では、アミノ酸又はアミノ酸誘導体のアミノ基の窒素原子は、本明細書に記載の化学式中の環窒素である。そのような実施形態では、アミノ酸のカルボン酸又はアミノアミド(アミノ酸誘導体)のアミド基は環構造内にはない、すなわち環原子ではない。特定の実施形態において、アミノ酸又はアミノ酸誘導体のカルボン酸基は、本明細書に開示される化学式中の環窒素とアミド結合を形成し、それによってアミノアミドを提供し、ここで、アミノアミドのアミノ基は、環構造、すなわち環原子ではない。特定の実施形態では、R、R及び/又はRは、独立して、アルファアミノ酸、アルファアミノ酸誘導体及び/又は他のアミノ酸もしくはアミノ酸誘導体、例えばベータアミノ酸もしくはベータアミノ酸誘導体、例えば、ベータアミノアミドとすることができる。
いくつかの実施形態では、化合物は、実施例に記載されている化合物から選択され、その薬学的に許容される塩及び/又は立体異性体を含む。特定の実施形態において、開示されている化合物は、式:
を有するものである。
本開示の化合物及びその配合物は複数のキラル中心を有していてもよい。各キラル中心は独立して、R、Sであり得、又は、R及びSのいずれかの混合物であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、キラル中心は、約100:0〜約50:50(「ラセミ体」)、約100:0〜約75:25、約100:0〜約85:15、約100:0〜約90:10、約100:0〜約95:5、約100:0〜約98:2、約100:0〜約99:1、約0:100〜50:50、約0:100〜約25:75、約0:100〜約15:85、約0:100〜約10:90、約0:100〜約5:95、約0:100〜約2:98、約0:100〜約1:99、約75:25〜25:75、及び、約50:50のR:S比を有し得る。1種以上の異性体(すなわち、R及び/又はS)に係る大きな比を含む本開示の化合物の配合物は、開示の化合物又は化合物の混合物のラセミ配合物に対して高い治療的特徴を有し得る。いくつかの事例において、化学式は、べた塗り又は点線のくさびにさらに結合している記述子「−(R)−」又は「−(S)−」を含有する。この記述子は、3個の他の置換基に結合しており、及び、示されているR又はS立体配置を有するメチン炭素(CH)を示すことが意図されている。
開示の化合物は、NMDA受容体における効率的なカチオンチャネル開口をもたらし得、例えば、NMDA受容体のグルタメート部位又はグリシン部位又は他の修飾部位に結合又は会合してカチオンチャネルの開口を補助する。本開示の化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストとしての作用を介してNMDA受容体の制御(活性化又は不活性化)に用いられ得る。
本明細書に記載の化合物は、いくつかの実施形態において、特定のNMDA受容体サブタイプに結合し得る。例えば、開示の化合物は1種のNMDAサブタイプに結合し、他のものには結合しなくてもよい。他の実施形態において、開示の化合物は、1種又は2種以上のNMDAサブタイプに結合し得、及び/又は、一定の他のNMDAサブタイプに対して有する結合活性は実質的に少なくてもよい(又は、実質的になくてもよい)。
本明細書に記載の化合物はNMDA受容体に結合し得る。開示の化合物は、NMDA受容体に結合して一定の投薬範囲にわたってアゴニスト様活性(促進)をもたらし得、及び/又は、NMDA受容体に結合して一定の投薬範囲にわたってアンタゴニスト様活性(阻害)をもたらし得る。いくつかの実施形態において、開示の化合物は、既存のNMDA受容体修飾因子の活性の10倍以上の効力を有し得る。
本開示の化合物は高い治療指数を有し得る。本明細書において用いられる、治療指数とは、個体群の50%に毒性をもたらす投与量(すなわち、TD50)と個体群の50%に最小限の効果をもたらす投与量(すなわち、ED50)との比を指す。それ故、治療指数=(TD50):(ED50)。いくつかの実施形態において、開示の化合物は、少なくとも約10:1、少なくとも約50:1、少なくとも約100:1、少なくとも約200:1、少なくとも約500:1又は少なくとも約1000:1の治療指数を有し得る。
組成物
他の態様においては、開示の化合物及び任意に薬学的に許容可能な賦形剤を含む薬学配合物又は医薬組成物が提供されている。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1種以上の本開示の化合物のラセミ混合物を含む。
製剤は、薬学技術分野において公知である、投与を必要とし得る患者に活性薬剤を投与するためのものなどの、使用のための多様な形態のいずれかで調製可能である。例えば、本開示の医薬組成物は、以下に適用するものを含む固体又は液体形態における投与のために配合可能である:(1)例えば水薬(水性又は非水溶液又は懸濁液)、錠剤(例えば、口腔吸収、舌下吸収及び/又は体内吸収を目的とするもの)、ボーラス、粉末、顆粒、及び、舌への適用のためのペースト等の経口投与;(2)例えば無菌溶液又は懸濁液又は持効性配合物としての例えば皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内又は硬膜外注射による非経口投与;(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏剤又は徐放パッチ又はスプレーとしての局所投与;(4)例えば膣座薬、クリーム又はフォームとしての膣内又は直腸内投与;(5)舌下投与;(6)点眼投与;(7)経皮投与;又は(8)鼻噴投与。
例えば、本開示の医薬組成物は、眼、すなわち、眼球への送達に好適であることが可能である。関連する方法は、薬学的に有効な量の開示の化合物、又は、開示の化合物を含む医薬組成物を、必要としている患者であって、例えば患者の眼に投与するステップを含むことが可能であり、ここで、投与は、局所的、結膜下に、テノン嚢下、硝子体内、眼球後、眼球周囲、前房内及び/又は全身的であることが可能である。
配合物中の本明細書に記載の開示の化合物の量は、個々の疾病状態、年齢、性別及び体重などの要因に応じて様々であり得る。投与計画は、最適な治療応答がもたらされるよう調節し得る。例えば、単一ボーラスで投与し得、経時的に複数回に分けた投与量で投与し得、又は、投与量は、治療状況の緊急性によって示されるとおり比例的に低減もしくは増加させ得る。投与の容易さ、及び、投与量の均一性のために、投与量単位形態の非経口組成物を配合することが特に有利である。本明細書において用いられる、投与量単位形態とは、治療されるべき哺乳類の被検体への単一投与量として好適である物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要とされる薬学キャリアと共に所望の治療効果がもたらされるよう算出された所定の量の有効な化合物を含有する。
投与量単位形態の内訳は、(a)選択される化合物の固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに、(b)個体における感受性の治療のためのこのような有効な化合物に係る調剤技術分野における固有の限界によって指定され、及び、これらに直接的に応じる。
治療的組成物は、典型的には、製造及び保管の条件下で無菌及び安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は、高薬物濃度に好適な他の秩序構造として配合可能である。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、及び、これらの好適な混合物を含有する分散体媒体、又は、溶剤であることが可能である。適切な流動度は、例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより、分散体の場合には要求される粒径の管理を行うことにより、及び、界面活性剤を用いることにより維持可能である。多くの事例において、例えば、糖質、マンニトールやソルビトールなどのポリアルコール又は塩化ナトリウム等の等張剤が組成物に含まれていることが好ましいであろう。注射組成物の持続的な吸収は、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチン等の吸収を遅らせる薬剤を組成物中に含有させることによってもたらすことが可能である。
化合物は、例えば緩効性ポリマーを含む組成物中における、持続放出型配合物で投与可能である。この化合物は、急速な放出から化合物を保護することとなるキャリアと共に調製可能であり(徐放性配合物など)、移植及びマイクロカプセル送達系が含まれる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸及びポリ乳酸、ポリグリコールコポリマー(PLG)などの生分解性、生体適合性ポリマーを用いることが可能である。このような配合物を調製するための多くの方法が当業者に一般に公知である。
無菌注射溶液は、化合物を、必要とされる量で、上記に列挙された処方成分の1種又はその組み合わせと共に適切な溶剤中において混和させ、必要に応じて、その後ろ過滅菌を行うことにより調製可能である。一般に、分散体は、有効な化合物を、基本的な分散体媒体、及び、上記に列挙された必要とされる他の処方成分を含有する無菌ビヒクルに混和させることにより調製される。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、活性処方成分と、既述のその無菌−ろ過溶液からのいずれかの追加の所望される処方成分との粉末をもたらす真空乾燥及び凍結乾燥である。
いくつかの実施態様では、化合物は、化合物の溶解度を高める1種以上の追加の化合物とともに製剤化することができる。
治療的に効果的な投与量の本明細書に記載の化合物を投与することによる治療を必要とする患者における状態を治療する方法が提供されている。いくつかの実施形態において、状態は、精神的な状態であり得る。例えば、精神病を治療し得る。他の態様において、神経系状態を治療し得る。例えば、中枢神経系、末梢神経系、及び/又は、眼に影響を及ぼす状態を治療し得る。いくつかの実施形態においては、神経変性疾病を治療し得る。
いくつかの実施形態において、この方法は、自閉症、不安、うつ病、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、精神病性障害、精神病性症状、引きこもり、強迫性障害(OCD)、恐怖症、心的外傷後ストレス症候群、行動障害、衝動制御傷害、物質乱用障害(例えば、禁断症状、アヘン剤中毒、ニコチン中毒及びエタノール中毒)、睡眠障害、記憶障害(例えば、欠損、喪失、又は、新しい記憶の形成能力の低下)、学習障害、尿失禁、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードライヒ病、ダウン症、脆弱X症候群、結節性硬化症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳性麻痺、薬物誘発性視神経炎、静脈鬱血性網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、認知症、エイズ認知症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、痙性麻痺、間代性筋痙攣、筋痙攣、幼児痙攣、トゥレット症候群、癲癇、脳虚血、脳卒中、脳腫瘍、外傷性脳損傷、心停止、脊髄症、脊髄傷害、末梢神経障害、急性神経障害性疼痛、及び慢性神経障害性疼痛を患う患者を治療するために化合物を投与するステップを含む。
いくつかの実施形態においては、加齢、統合失調症、特別学習障害、発作、脳卒中後痙攣、脳虚血、低血糖症、心停止、癲癇、レヴィー小体痴呆、偏頭痛、エイズ認知症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、初期アルツハイマー病及びアルツハイマー病に伴う記憶障害を治療するための方法が提供されている。
一定の実施形態においては、統合失調症を治療する方法が提供されている。例えば、妄想型統合失調症、解体型統合失調症(すなわち、破瓜型統合失調症)、緊張病型統合失調症、未分化型統合失調症、残存型統合失調症、統合失調症後抑うつ、及び、単純な統合失調症を本明細書に開示の方法及び組成物を用いて治療し得る。統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、及び、妄想又は幻覚を伴う精神病性障害などの精神病性障害もまた、本明細書に開示の化合物及び組成物を用いて治療し得る。
妄想型統合失調症は、妄想又は幻聴が存在するが、思考障害、解体行動又は情動の平板化が伴わないと特徴付けられ得る。妄想は被害妄想及び/又は誇大妄想であり得るが、これらに追加して、嫉妬、狂信又は身体化などの他のテーマも存在し得る。解体型統合失調症は、思考障害及び平坦な情動が一緒に存在すると特徴付けられ得る。緊張病型統合失調症は、患者が、ほぼ不動であるか、又は、興奮した無意味な行動を示すと特徴付けられ得る。症状は、緊張病性昏迷及びろう屈症を含むことが可能である。未分化型統合失調症は、精神病性症状が存在するが、妄型想、解体型又は緊張型に係る判断基準には満たしていないと特徴付けられ得る。残存型統合失調症は、陽性症状が低レベルでのみ存在すると特徴付けられ得る。統合失調症後抑うつは、いくらかの低レベルの統合失調症状がいまだ存在し得る統合失調症疾患の後遺症において、うつ病エピソードが生じると特徴付けられ得る。単純統合失調症は、精神病性エピソードの履歴を伴わない、顕著な陰性症状の潜行性で進行性の発生と特徴付けられ得る。
いくつかの実施形態においては、特にこれらに限定されないが、双極性障害、境界人格障害、薬物中毒症及び薬物誘発性精神病を含む他の精神障害に存在し得る精神病性症状を治療するための方法が提供されている。種々の実施形態においては、例えば妄想障害に存在し得る妄想(例えば、「奇異でない妄想」)を治療するための方法が提供されている。
種々の実施形態においては、特にこれらに限定されないが、社交不安障害、回避性人格障害及び統合失調症型人格障害を含む状態における引きこもりを治療するための方法が提供されている。
いくつかの実施形態において、本開示は、治療を必要としている患者におけるシナプス機能不全に関連する神経発達障害を治療するための方法を提供し、ここで、この方法は一般的に、患者に、治療的有効量の開示の化合物、又は、開示の化合物を含む医薬組成物を投与するステップを含む。一定の実施形態において、シナプス機能不全に関連する神経発達障害は、脳萎縮性高アンモニア血症(cerebroatrophic hyperammonemia)としても知られているレット症候群、MECP2重複症候群(例えば、MECP2障害)、CDKL5症候群、脆弱X症候群(例えば、FMR1障害)、結節性硬化症(例えば、TSC1障害及び/又はTSC2障害)、神経線維腫症(例えばNF1障害)、アンゲルマン症候群(例えばUBE3A障害)、PTEN過誤腫症候群、フェラン−マクダーミド症候群(例えばSHANK3障害)又は幼児痙攣であることが可能である。特定の実施形態において、神経発達障害は、ニューロリジン(例えば、NLGN3障害及び/又はNLGN2障害)及び/又はニューレキシン(例えば、NRXN1障害)における突然変異によって引き起こされる可能性がある。
いくつかの実施形態においては、神経障害性疼痛を治療するための方法が提供されている。神経障害性疼痛は急性又は慢性的であることが可能である。いくつかの場合において、神経障害性疼痛は、ヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、脳卒中、後虚血、慢性的背痛、帯状疱疹後神経痛、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィ、複合性局所疼痛症候群、脊髄傷害、座骨神経痛、幻肢痛、糖尿病末梢神経障害(「DPN」)などの糖尿病ニューロパシー及びがん化学療法誘発性神経障害性疼痛などの状態に関連していることが可能である。一定の実施形態において、疼痛緩和を高め、及び、患者に鎮痛をもたらす方法もまた提供されている。
さらなる方法は、必要としている患者における自閉症及び/又は自閉症スペクトラム障害を治療する方法であって、有効量の化合物を患者に投与するステップを含む方法を含む。いくつかの実施形態において、必要としている患者における自閉症の症状を低減するための方法が提供されており、この方法は、有効量の開示の化合物を患者に投与するステップを含む。例えば、投与に際して、化合物は、アイコンタクトの回避、社会化の失敗、注意欠陥、不機嫌、多動性、異常な音に対する感受性、不相応な発語、睡眠の中断及び固執などの自閉症の1つ以上の症状の発生率を低減させ得る。このような発生率の低減は、未治療の個体における発生率に対して計測され得る。
また、本明細書においては、細胞における自閉症目的遺伝子発現の修飾方法であって、細胞に有効量の本明細書に記載の化合物を接触させるステップを含む方法が提供されている。自閉症遺伝子発現は、例えばABAT、APOE、CHRNA4、GABRA5、GFAP、GRIN2A、PDYN及びPENKから選択され得る。一定の実施形態においては、シナプス可塑性関連障害を患っている患者におけるシナプス可塑性を修飾する方法であって、患者に有効量の化合物を投与するステップを含む方法が提供されている。
いくつかの実施形態において、必要としている患者において、アルツハイマー病を治療する方法、又は、例えば、初期アルツハイマー病を例えば伴う記憶喪失を治療する方法であって、化合物を投与するステップを含む方法が提供されている。また、本明細書においては、アルツハイマー病アミロイドタンパク質(例えば、βアミロイドペプチド、例えばアイソフォームAβ1−42)をインビトロ又はインビボ(例えば細胞内)で修飾する方法であって、タンパク質を有効量の化合物と接触させるステップを含む方法が開示されている。例えば、いくつかの実施形態において、化合物は、このようなアミロイドタンパク質の能力をブロックして、海馬切片ならびにアポトーシス神経細胞死における長期の強化作用を阻害し得る。いくつかの実施形態において、開示の化合物は、必要としているアルツハイマー患者に神経保護特性を提供し得、例えば、後期のアルツハイマー関連神経細胞死に治療効果をもたらし得る。
一定の実施形態において、開示の方法は、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリッグ病)、多発性硬化症、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、認知症及び/又はパーキンソン病などの他の状態によって誘発される精神病又は情動調節障害(「PBA」)を治療するステップを含む。このような方法は、本開示の他の方法と同様に、薬学的に有効な量の開示の化合物を必要としている患者に対する投与を含む。
いくつかの実施形態において、方法本明細書に記載の化合物を投与するステップを含むうつ病の治療方法が提供されている。いくつかの実施形態において、この治療は、挙動又は運動協調性に影響を与えることなく、かつ、発作活性を誘発又は促進させることなく、うつ病又はうつ病の症状を緩和させ得る。本態様によって治療されることが予期される例示的なうつ病状態としては、これらに限定されないが、大うつ病性障害、気分変調性障害、精神病性うつ病、分娩後うつ病、月経前症候群、月経前不快気分障害、季節性感情障害(SAD)、双極性障害(bipolar disorder)(又は双極性障害(manic depressive disorder))、気分障害、ならびに、がん又は慢性疼痛などの慢性的医学的状態、化学療法、慢性的ストレス及び心的外傷後ストレス障害によって引き起こされるうつ病が挙げられる。加えて、いずれかの形態のうつ病を患う患者は、度々不安を経験する。不安に関連する種々の症状としては、とりわけ、不安、パニック、心臓の動悸、息切れ、疲労、吐き気及び頭痛が挙げられる。不安又はそのいずれかの症状は、本明細書に記載の化合物を投与することにより治療し得る。
また、本明細書においては、治療抵抗性の患者であって、例えば、少なくとも1種、又は、少なくとも2種の他の化合物又は療法の適切な過程に対して応答を示さない、及び/又は、応答を示していない精神的又は中枢神経系状態を患っている患者における状態を治療するための方法が提供されている。例えば、本明細書においては、治療抵抗性の患者におけるうつ病を治療する方法が提供されており、この方法は、a)任意に、患者を治療抵抗性と識別するステップ、及び、b)有効な投与量の化合物を前記患者に投与するステップを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、患者の急性治療に用いられ得る。例えば、化合物は、本明細書に開示されている状態の特定のエピソード(例えば重篤なエピソード)を治療するために患者に投与され得る。
また、本明細書においては、1種以上の他の活性薬剤との組み合わせで化合物を含む併用治療が提供されている。例えば、化合物は、三環系抗うつ剤(MAO−I、SSRI)、ならびに、二重及び三重取り込み阻害剤及び/又は抗不安薬などの1種以上の抗うつ剤と組み合わされ得る。化合物との組み合わせで用いられ得る例示的な薬物としては、アンフラニル(Anafranil)、アダピン(Adapin)、アベンチル(Aventyl)、エバビル(Elavil)、ノルプラミン(Norpramin)、パメロール(Pamelor)、ペルトフラン(Pertofrane)、シネカン(Sinequan)、スルモンチル(Surmontil)、トフラニル(Tofranil)、ビバクチル(Vivactil)、パルネート(Parnate)、ナルジル(Nardil)、マルプラン(Marplan)、セレキサ(Celexa)、レキサプロ(Lexapro)、ルボックス(Luvox)、パキル(Paxil)、プロザック(Prozac)、ゾロフト(Zoloft)、ベルブトリン(Wellbutrin)、エフェキソール(Effexor)、レメロン(Remeron)、シンバルタ(Cymbalta)、デシレル(Desyrel)(トラゾドン)及びルジオミル(Ludiomill)が挙げられる。他の例において、化合物は、抗精神病薬と組み合わされ得る。抗精神病薬の非限定的な例としては、ブチロフェノン、フェノチアジン、チオキサンテン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、イロペリドン、ゾテピン、セルチンドール、ルラシドン及びアリピプラゾールが挙げられる。化合物と、1種以上の上記の療法との組み合わせを、いずれかの好適な状態の治療に用い得、及び、抗うつ剤又は抗精神病薬としての使用に限定はされないことが理解されるべきである。
以下の実施例は、単なる例示を目的として提供されており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
以下の略語が本明細書において用いられており、表記されている定義を有する:Acはアセチル(−C(O)CH)であり、AIDSは後天性免疫不全症候群であり、Boc及びBOCはtert−ブトキシカルボニルであり、BocOは二炭酸ジ−tert−ブチルであり、Bnはベンジルであり、Cbzはカルボキシベンジルであり、DCMはジクロロメタンであり、DIPEAはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドであり、DMSOはジメチルスルホキシドであり、ESIは電気スプレー電離であり、EtOAcは酢酸エチルであり、hは時間であり、HATUは2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸であり、HIVはヒト免疫不全ウイルスであり、HPLCは高速液体クロマトグラフィであり、LCMSは液体クロマトグラフィ/質量分光測定であり、LiHMDSはヘキサメチルジシラザンリチウムであり、NMDARはN−メチル−d−アスパラギン酸受容体であり、NMRは核磁気共嗚であり、Pd/Cはパラジウム炭素であり、RTは室温(例えば約20℃〜約25℃)であり、TEAはトリエチルアミンであり、TLCは薄層クロマトグラフィであり、TFAはトリフルオロ酢酸であり、THFはテトラヒドロフランであり、及び、TMSはトリメチルシリルである。
実施例1:例示的化合物の合成
1,4−ビス(t−ブトキシカルボニル)ピペラジン−2−カルボン酸(1)の合成:
ピペラジン−2−カルボン酸二塩化水素化物(SM1)(5g、24.6mmol)の1,4−ジオキサン(40mL)中の撹拌溶液に、5NのNaOH溶液(3.5g、88.6mmol)及びBoc−無水物(12.9mL、56.6mmol)を0℃で添加し、反応混合物をRTで16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、揮発物を減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物を水(50mL)中に溶解し、EtO(2×100mL)で抽出した。有機層を1N HCl溶液で酸性化し、EtOAc(2×100mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これをn−ペンタンで倍散させて、化合物1(6g、74%)を白色の固体として得た。
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 12.91(br s,1H),4.42(d,J=24.8Hz,1H),4.35−4.27(dd,J=20.4,13.6Hz,1H),3.82(s,1H),3.66(d,J=13.2Hz,1H),2.99−2.79(m,2H),2.79(br s,1H),1.37(s,18H).
LCMS(m/z):329.3[M−1]
1,4−ジ−tert−ブチル2−メチルピペラジン−1,2,4−トリカルボキシレート(2)の合成:
化合物1(6g、18.2mmol)のDMF(30mL)中の撹拌溶液に、KCO(3g、21.8mmol)及びMeI(1.7mL、27.2mmol)を0℃で添加し、反応混合物をRTで16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×100mL)で抽出した。組み合わせた有機層をクエン酸(50mL)、塩水(50mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを10%EtOAc/ヘキサンにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物2(5g、82%)を白色の固体として得た。
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 4.56(d,J=28.8Hz,1H),4.32−4.22(dd,J=24.8,14.0Hz,1H),3.82(br s,1H),3.82−3.66(m,4H),3.14−2.82(m,3H),1.37(s,18H).
LCMS(ESI):m/z 145.0[(M+1)−2Boc].
ジ−tert−ブチル1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−5,8−ジカルボキシレート(EE−1及びEE−2)の合成:
化合物2(1g、2.91mmol)の乾燥THF(20mL)中の撹拌溶液に、LiHMDS(THF中に1.0M)(10.2mL、10.2mmol)、パラホルムアルデヒド(69mg、2.32mmol)を、−78℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を氷水(20mL)で失活させ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層を塩水溶液(2×10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して粗化合物を得、これを、30%EtOAc/ヘキサンにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、ラセミEE(320mg、32%)を白色の固体として得た。ラセミ体をキラルHPLC精製により分離して、それぞれ75mgのEE−1及びEE−2を得た。
EE−1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.98(s,1H),3.78(d,J=12.8Hz,1H),3.67−3.60(m,1H),3.51(d,J=13.6Hz,1H),3.41−3.30(m,4H),3.07(br s,1H),1.39(s,18H).
LCMS(ESI):m/z 340.1[M−1];
UPLC:99.74%
EE−2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.99(s,1H),3.78(d,J=12.8Hz,1H),3.65−3.61(m,1H),3.51(d,J=13.6Hz,1H),3.40−3.30(m,4H),3.07(br s,1H),1.39(s,18H).
LCMS(ESI):m/z 340.1[M−1];
UPLC:99.04%
実施例2:例示的化合物の合成
4−(t−ブトキシカルボニル)ピペラジン−2−カルボン酸(1)の合成
ピペラジン−2−カルボン酸(SM)(5g、24.6mmol)の1,4−ジオキサン:水(1:1、100mL)中の撹拌懸濁液に、NaHCO(3.1g、36.9mmol)、続いて、Boc−無水物(5.6mL、24.6mmol)を0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTに温め、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(50mL)で希釈し、EtO(2×100mL)で抽出した。水性層を2N HCl溶液で酸性化し、n−BuOHで抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、化合物1(5g、88%)を白色の固体として得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ 10.18(br s,1H),4.08(br s,1H),3.81−3.71(m,2H),3.63(t,J=6.5Hz,1H),3.17−3.15(m,2H),2.91−2.86(m,1H),1.36(s,9H),1.31−1.26(m,0.5H),0.87−0.84(m,0.5H).
LCMS(ESI):m/z 229.0[(M−1)].
1−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4−(t−ブトキシカルボニル)ピペラジン−2−カルボン酸(2)の合成:
化合物1(5g、21.7mmol)のEtOAc(70mL)中の撹拌溶液に、飽和NaHCO溶液(70mL)を添加し、続いて、Cbz−Cl(3.7mL、26.1mmol)を0℃で滴下した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。水性層を2N HCl溶液で酸性化し、EtOAcで抽出した。組み合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して粗材料を得、これを50%EtOAc:n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物2(4g、50%)を粘性のシロップ剤として得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ 13.06(br s,1H),7.37−7.30(m,5H),5.12−5.05(m,2H),4.57−4.53(m,1H),4.38−4.32(m,1H),3.86−3.76(m,2H),3.18−3.08(m,2H),2.83(br s,1H),1.37(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 363.1[M−1]
1−ベンジル4−(tert−ブチル)2−メチルピペラジン−1,2,4−トリカルボキシレート(3)の合成:
化合物2(4g、10.9mmol)のDMF(40mL)中の撹拌溶液に、KCO(1.82g、13.2mmol)及びMeI(1mL、16.5mmol)を0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(20mL)で希釈し、EtO(2×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗材料を、10%EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物3(3.2g、77%)を粘性のシロップ剤として得た。
H−NMR:(400MHz,CDCl):δ 7.36−7.31(m,5H),5.21−5.11(m,2H),4.78(s,0.5H),4.66−4.50(m,1.5H),4.02−3.88(m,2H),3.68(s,3H),3.24(br s,1H),3.08(dd,J=13.6,3.2Hz,1H),2.83(br s,1H),1.44(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 279.3[(M+1)−Boc]
5−ベンジル8−(tert−ブチル)1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−5,8−ジカルボキシレート(4)の合成:
化合物3(3.2g、8.46mmol)のTHF(30mL)中の撹拌溶液に、パラホルムアルデヒド(203mg、6.77mmol)を、RTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物を−78℃に冷却し、LiHMDS(THF中に1M)(33.8mL、23.2mmol)を添加し、RTで12時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を氷水(10mL)で失活させ、EtOAc(2×20mL)で抽出した。組み合わせた有機層を水(2×15mL)、続いて、塩水溶液(2×10mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮して粗材料を得、これを、40%EtOAc/ヘキサンにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物4(640mg、20%)を粘性のシロップ剤として得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ 8.04(s,1H),7.37−7.31(m,5H),5.14−5.07(m,2H),4.07−4.01(m,1H),3.83−3.73(m,2H),3.72−3.41(m,4H),3.09(br s,1H),1.40(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 376.5[(M+1)]
tert−ブチル1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−8−カルボキシレート(EB−1及びEB−2)の合成:
化合物4(600mg、1.6mmol)のEtOAc(10mL)中の撹拌溶液に、10%Pd/C(180mg)を、RTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで4時間、H雰囲気下で撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過した。有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮して粗材料を得、これを、4%MeOH/DCMにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、EB(320mg、粗化合物)を白色の固体として得た。ラセミ体をキラルHPLC精製により分離して、それぞれ80mgのEB−1及びEB−2を得た。
EB−1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.89(s,1H),3.53(d,J=12.8Hz,1H),3.39−3.35(m,1H),3.21(s,1H),3.17−3.11(m,1H),3.06(d,J=5.2Hz,1H),2.98(d,J=5.2Hz,1H),2.92−2.87(m,1H),2.59−2.53(m,1H),1.38(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 240.1[(M−1)]
HPLC:98.30%
EB−2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.89(s,1H),3.53(d,J=12.8Hz,1H),3.39−3.35(m,1H),3.21(s,1H),3.17−3.11(m,1H),3.06(d,J=5.2Hz,1H),2.98(d,J=5.2Hz,1H),2.92−2.87(m,1H),2.59−2.53(m,1H),1.38(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 240.1[(M−1)]
HPLC:99.94%
tert−ブチル5−(O−ベンジル−N−((ベンジルオキシ)カルボニル)−L−トレオニル)−1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−8−カルボキシレート(5)の合成
Int−A(1.7g、4.98mmol)のDCM(50mL)中の撹拌溶液に、N−メチルモルホリン(2.51g、24.89mmol)、1−ホスホン酸無水プロパン溶液(酢酸エチル中に50wt.%)(7.9g、24.89mmol)及びラセミtert−ブチル1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−8−カルボキシレート(EB−ラセミ)(1g、4.15mmol)を、0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(50mL)で希釈し、DCM(3×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮して粗材料を得、これを、10%MeOH/DCMにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、ラセミ化合物5(700mg、30%)をオフホワイトの固体として得た。ラセミ体をキラルHPLC精製により分離して、それぞれ80mgの化合物5−F1及び化合物5−F2を得た。
化合物5−F1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.99(s,1H),7.42−7.24(m,11H),5.04(t,J=14.0Hz,2H),4.55−4.48(m,3H),3.80−3.71(m,4H),3.43(d,J=14.0Hz,1H),3.43(d,J=4.0Hz,1H),3.32−3.30(m,2H),3.00(br s,1H),1.40(s,9H),1.12(d,J=6.4Hz,3H).
化合物5−F2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.96(s,1H),7.35−7.25(m,11H),5.08−5.01(dd,J=16.8,12.8Hz,2H),4.69−466(dd,J=8.8,5.6Hz,1H),3.54(d,J=12.0Hz,1H),3.44(d,J=12.0Hz,1H),3.86−3.74(m,4H),3.43(m,1H),3.39(d,J=5.4Hz,1H),3.29−3.27(m,2H),2.94(br s,1H),1.39(s,9H),1.12(d,J=6.4Hz,3H).
tert−ブチル5−(L−トレオニル)−1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−8−カルボキシレート(EC−1)の合成:
化合物5−F1(140mg、0.25mmol)のメタノール(10mL)中の撹拌溶液に、10%Pd/C(45mg)を、RTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで48時間、H雰囲気下で撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過した。有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮して粗材料を得、これを分取HPLCにより精製して、EC−1(12mg)を白色の固体として得た。
EC−1:
H−NMR:(400MHz,DO):δ 4.51(d,J=13.6Hz,1H),4.40−4.28(m,2H),4.18(s,2H),4.42(d,J=14.0Hz,1H),3.22(d,J=14.0Hz,2H),3.13−3.05(m,1H),2.92(br s,1H),1.51(s,9H),1.33(d,J=6.8Hz,3H).
LCMS(ESI):m/z 343.1[(M+1)]
HPLC:95.90%
キラルHPLC:99.00%
tert−ブチル5−(L−トレオニル)−1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−8−カルボキシレート(EC−2)の合成:
化合物5−F2(70mg、0.12mmol)のメタノール(3mL)中の撹拌溶液に、10%Pd/C(23mg)をRTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで12時間、H雰囲気下で撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過した。有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮して粗材料を得、これをペンタン/エーテルで倍散させて、EC−2(23mg、59%)をオフホワイトの固体として得た。
EC−2:
H−NMR:(400MHz,DO):δ 4.52−4.49(m,1H),4.38−4.30(m,2H),4.22−4.16(s,2H),3.22(d,J=14.4Hz,2H),3.12−3.01(m,3H),1.52(s,9H),1.31(d,J=6.8Hz,3H).
LCMS(ESI):m/z 343.1[(M+1)]
HPLC:91.00%
キラルHPLC:98.20%
実施例3:例示的化合物の合成
エチル1,4−ジベンジルピペラジン−2−カルボキシレート(1)の合成:
Int−A(20g、83.2mmol)及びトリエチルアミン(23.0mL、166.4mmol)のトルエン(300mL)中の溶液に、エチル2,3−ジブロモプロパノエート(SM)(12.1mL、83.2mmol)を40℃でゆっくりと添加した。反応混合物を80℃に加熱し、4時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をRTとし、揮発物を減圧下で蒸発させた。得られた粗材料を5%〜30%EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物1(21.2g、75%)を明るい緑色のシロップ剤として得た。
H−NMR:(500MHz,CDCl3):δ 7.33−7.7.22(m,10H),4.17−4.15(q,J=7.0Hz,2H),3.90(d,J=13.5Hz,1H),3.59−3.54(m,2H),3.42(d,J=13.5Hz,1H),3.31−3.29(m,1H),2.76−2.62(m,2H),2.48−2.38(m,4H),1.25(t,J=7.0Hz,3H).
LCMS(m/z):339[M+1]
5,8−ジベンジル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EA−1及びEA−2)の合成:
化合物1(1.5g、4.43mmol)のTHF(15mL)中の溶液に、パラホルムアルデヒド(133mg、4.43mmol)及びLiHMDS(THF中に1M)(13.3mL、13.3mmol)を−10℃で添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、ラセミ化合物2(800mg、56%)を白色の固体として得た。ラセミ体をキラルHPLC精製により分離して、350mgのEA−1及び350mgのEA−2を得た。
EA−1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 8.01(s,1H),7.34−7.20(m,10H),3.74(d,J=13.6Hz,1H),3.55−3.52(m,2H),3.45(d,J=13.2Hz,1H),3.39(d,J=13.2Hz,1H),2.96(d,J=6.0Hz,1H),2.74−2.72(m,1H),2.59(d,J=10.8Hz,1H),2.49(s,1H),2.35(d,J=10.8Hz,1H),2.26−2.20(td,J=14.8,2.8Hz,1H),2.11−2.05(td,J=14.8,2.8Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z 321[(M
HPLC:98.68%
EA−2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 8.01(s,1H),7.34−7.21(m,10H),3.74(d,J=13.6Hz,1H),3.55−3.52(m,2H),3.45(d,J=13.2Hz,1H),3.39(d,J=13.2Hz,1H),2.96(d,J=6.0Hz,1H),2.74−2.72(m,1H),2.59(d,J=10.8Hz,1H),2.49(s,1H),2.35(d,J=10.8Hz,1H),2.26−2.20(td,J=14.8,2.8Hz,1H),2.11−2.05(td,J=14.8,2.8Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z 321[(M
HPLC:99.03%
5−ベンジル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(ED−1)の合成:
EA−1(270mg、0.84mmol)の1,2−ジクロロエタン(3mL)中の溶液に、1,2−ジクロロエタン(2mL)中の1−クロロエチルクロロホルメート(132mg、0.92mmol)を0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物を加熱還流し、1時間撹拌した。反応混合物をRTとし、揮発物を減圧下で蒸発させた。粗材料をメタノール(5mL)中に溶解し、再度1時間加熱還流した。反応混合物をRTとし、氷水(5mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で抽出した。水性層をNaHCO溶液で塩基性化し、10%MeOH/DCMで抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗材料をエーテル及びペンタンで倍散させて、ED−1(140mg、72%)をオフホワイトの固体として得た。
ED−1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.98(s,1H),7.31−7.20(m,5H),3.71(d,J=13.6Hz,1H),3.49(d,J=6.0Hz,1H),3.36(d,J=13.6Hz,1H),3.07(d,J=5.6Hz,1H),2.96(d,J=6.0Hz,1H),2.91−2.84(m,2H),2.69−2.66(m,1H),2.57−2.53(m,1H),2.40−2.36(td,J=11.2,3.2Hz,1H),2.09−2.03(td,J=11.2,3.2Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z 231[(M
HPLC:99.18%
キラルHPLC:99.41%
5−ベンジル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(ED−2)の合成:
EA−2(270mg、0.84mmol)の1,2−ジクロロエタン(4mL)中の溶液に、1,2−ジクロロエタン(2mL)中の1−クロロエチルクロロホルメート(132mg、0.92mmol)を0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物を加熱還流し、1時間撹拌した。反応混合物をRTとし、揮発物を減圧下で蒸発させた。粗材料をメタノール(5mL)中に溶解し、再度1時間加熱還流した。反応混合物をRTとし、氷水(5mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で抽出した。水性層をNaHCO溶液で塩基性化し、10%MeOH/DCMで抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗材料をエーテル及びペンタンで倍散させて、ED−2(110mg、56%)をオフホワイトの固体として得た。
ED−2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.99(s,1H),7.31−7.20(m,5H),3.71(d,J=13.6Hz,1H),3.49(d,J=6.0Hz,1H),3.36(d,J=13.6Hz,1H),3.07(d,J=6.0Hz,1H),2.96(d,J=6.0Hz,1H),2.91−2.84(m,2H),2.69−2.66(m,1H),2.57−2.53(m,1H),2.40−2.36(td,J=11.2,3.2Hz,1H),2.09−2.03(td,J=11.2,3.2Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z 231[(M
HPLC:99.50%
キラルHPLC:99.18%
5−ベンジル−8−メチル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EG−1)の合成:
ラセミED(1.6g、6.92mmol、ラセミ体)の1,2−ジクロロエタン(20mL)中の撹拌溶液に、パラホルムアルデヒド(415mg、13.8mmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(872mg、13.8mmol)及び酢酸(0.8mL、13.8mmol)を0℃で添加した。反応混合物をRTで16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物を10%MeOH/DCM中に溶解し、NaHCO溶液で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、ラセミEG(550mg、33%)をオフホワイトの固体として得た。ラセミ体をキラルHPLC精製により分離して、それぞれ170mgのEG−1及びEG−2を得た。
EG−1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 8.04(s,1H),7.31−7.22(m,5H),3.74(d,J=13.2Hz,1H),3.52(d,J=6.0Hz,1H),3.38(d,J=13.6Hz,1H),3.03(d,J=6.0Hz,1H),2.76(d,J=10.8Hz,1H),2.47−2.42(m,1H),2.30(d,J=10.8Hz,1H),2.23(d,J=2.8Hz,1H),2.22−(d,J=3.2Hz,1H),2.17(s,3H),1.98−1.92(td,J=10.8,2.8Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z246.0[(M+1]
HPLC:99.12%
EG−2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 8.04(s,1H),7.31−7.22(m,5H),3.74(d,J=13.2Hz,1H),3.52(d,J=6.0Hz,1H),3.38(d,J=13.6Hz,1H),3.03(d,J=6.0Hz,1H),2.76(d,J=10.8Hz,1H),2.47−2.43(m,1H),2.30(d,J=10.8Hz,1H),2.23(d,J=2.8Hz,1H),2.22−(d,J=3.2Hz,1H),2.17(s,3H),1.98−1.92(td,J=10.8,2.8Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z 246.0[(M+1]
HPLC:98.20%
8−メチル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EH−1)の合成:
EG−1(70mg、0.28mmol)のメタノール(3mL)中の撹拌溶液に、10%Pd/C(23mg)を、RTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで4時間、H雰囲気下で撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、減圧下で濃縮した。得られた粗材料をペンタンで倍散させて、EH−1(35mg、79%)を白色の固体として得た。
EH−1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.81(s,1H),3.10(d,J=5.2Hz,1H),2.99(d,J=5.2Hz,1H),2.82−2.79(m,2H),2.66−2.60(m,1H),2.56−2.50(m,1H),2.41−2.39(m,1H),2.18(d,J=10.4Hz,1H),2.14(s,3H),2.02−1.97(m,1H).
LCMS(ESI):m/z 156.1[(M+1)]
HPLC:93.30%
キラルHPLC:99.00%
8−メチル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EH−2)の合成:
EG−2(70mg、0.28mmol)のメタノール(3mL)中の撹拌溶液に、10%Pd/C(23mg)をRTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで4時間、H雰囲気下で撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、減圧下で濃縮した。得られた粗材料をペンタンで倍散させて、EH−2(30mg、68%)を白色の固体として得た。
EH−2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.81(s,1H),3.10(d,J=5.2Hz,1H),2.99(d,J=5.2Hz,1H),2.82−2.79(m,2H),2.66−2.60(m,1H),2.56−2.50(m,1H),2.41−2.39(m,1H),2.18(d,J=10.4Hz,1H),2.14(s,3H),2.02−1.97(m,1H).
LCMS(ESI):m/z 156.1[(M+1)]
HPLC:95.20%
キラルHPLC:92.30%
ベンジル((2S,3R)−3−(ベンジルオキシ)−1−(8−メチル−1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−5−イル)−1−オキソブタン−2−イル)カルバメート(6)の合成
Int−B(2.21g、6.44mmol)のDCM(30mL)中の撹拌溶液に、N−メチルモルホリン(2.6g、25.81mmol)、1−ホスホン酸無水プロパン溶液(酢酸エチル中に50wt.%)(8.2g、25.81mmol)及びラセミtert−ブチル1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−8−カルボキシレート(EH)(1g、6.45mmol)を、0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(50mL)で希釈し、10%MeOH/DCM(3×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮して粗材料を得、これを10%MeOH/DCMにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、ラセミ化合物6(350mg、12%)をオフホワイトの固体として得た。ラセミ体をキラルHPLC精製により分離して、130mgの化合物6−F1及び60mgの化合物6−F2を得た。
化合物6−F1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.87(s,1H),7.35−7.24(m,11H),5.08−5.00(m,2H),4.56−4.46(m,3H),3.91(d,J=12.4Hz,1H),3.73−3.71(m,1H),3.22(d,J=5.2Hz,1H),3.17(d,J=4.8Hz,1H),3.04−2.99(m ,1H),2.77(d,J=11.6Hz,1H),2.64(d,J=12.0Hz,1H),2.18−2.13(m,4H),1.88−1.83(m,1H),1.11(d,J=6.4Hz,3H).
化合物6−F2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.88(s,1H),7.42(d,J=9.2Hz,1H),7.35−7.25(m,10H),5.08−5.01(m,2H),4.63−4.44(m,3H),3.97(d,J=12.8Hz,1H),3.85−3.82(m,1H),3.23(d,J=5.2Hz,1H),3.07(d,J=4.4Hz,1H),3.05−3.02(m ,1H),2.77(d,J=12.0Hz,1H),2.69(d,J=11.6Hz,1H),2.120−2.13(m,4H),1.98 −1.91(m,1H),1.12(d,J=6.4Hz,3H).
5−(L−トレオニル)−8−メチル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EJ−1)の合成:
化合物6−F1(130mg、0.27mmol)のメタノール(5mL)中の撹拌溶液に、10%Pd/C(43mg)をRTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで48時間、H雰囲気下(風船圧力)に撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過した。得られた粗材料をエーテル及びペンタンで倍散させて、EJ−1(35mg、51%)をオフホワイトの固体として得た。
EJ−1:
H−NMR:(400MHz,DO):δ 4.51−4.47(m,1H),4.40−4.34(m,1H),4.16(s,1H),3.55(d,J=14.0Hz,1H),3.15(d,J=12.0Hz,1H),3.12−3.05(m,2H),2.93(d,J=12.0Hz,1H),2.32(d,J=12.0Hz,1H),2.27(s,3H),2.12−2.05(td,J=12.0,3.6Hz,1H),1.32(d,J=6.8Hz,3H).
LCMS(ESI):m/z 257.1[(M+1)]
HPLC:97.70%
キラルHPLC:83.80%
5−(L−トレオニル)−8−メチル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EJ−2)の合成:
化合物6−F2(60mg、0.12mmol)のメタノール(5mL)中の撹拌溶液に、10%Pd/C(20mg)をRTで窒素雰囲気下に添加した(風船圧力)。反応混合物をRTで48時間、H雰囲気下で撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過した。得られた粗材料をエーテル及びペンタンで倍散させて、EJ−2(20mg、62%)をオフホワイトの固体として得た。
EJ−2:
H−NMR:(400MHz,DO):δ 4.56−4.52(m,1H),4.38−4.33(m,1H),4.18(s,1H),3.44(d,J=14.4Hz,1H),3.22(d,J=10.8Hz,1H),3.13(d,J=14.0Hz,1H),3.10−3.02(m,1H),2.96−2.93(m,1H),2.36(d,J=13.2Hz,1H),2.32(s,3H),2.19−2.12(td,J=12.0,3.6Hz,1H),1.32(d,J=6.8Hz,3H).
LCMS(ESI):m/z 257.1[(M+1)]
HPLC:92.09%
キラルHPLC:79.20%
実施例4:例示的化合物の合成
エチル1,4−ジベンジルピペラジン−2−カルボキシレート(1)の合成:
Int−A(20g、83.2mmol)及びトリエチルアミン(23.0mL、166.4mmol)のトルエン(300mL)中の溶液に、エチル2,3−ジブロモプロパノエート(SM)(12.1mL、83.2mmol)を、40℃でゆっくりと添加した。反応混合物を80℃に加熱し、4時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をRTとし、揮発物を減圧下で蒸発させた。得られた粗材料を、5〜30%EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物1(21.2g、75%)を明るい緑色のシロップ剤として得た。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ 7.33−7.7.22(m,10H),4.17−4.15(q,J=7.0Hz,2H),3.90(d,J=13.5Hz,1H),3.59−3.54(m,2H),3.42(d,J=13.5Hz,1H),3.31−3.29(m,1H),2.76−2.62(m,2H),2.48−2.38(m,4H),1.25(t,J=7.0Hz,3H).
LCMS(m/z):337[M−1]
5,8−ジベンジル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(2)の合成:
化合物1(25g、73.9mmol)のTHF(200mL)中の溶液に、パラホルムアルデヒド(2.21g、73.9mmol)及びLiHMDS(THF中に1M)(295mL、295.8mmol)を−10℃で添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物を水(200mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、ラセミ化合物2(19g、80%)を白色の固体として得た。
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 8.01(s,1H),7.34−7.20(m,10H),3.74(d,J=13.6Hz,1H),3.55−3.52(m,2H),3.45(d,J=13.2Hz,1H),3.39(d,J=13.2Hz,1H),2.96(d,J=6.0Hz,1H),2.74−2.72(m,1H),2.59(d,J=10.8Hz,1H),2.49(s,1H),2.35(d,J=10.8Hz,1H),2.26−2.20(td,J=14.8,2.8Hz,1H),2.11−2.05(td,J=14.8,2.8Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z 321[(M
HPLC:98.68%
5−ベンジル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(3)の合成:
化合物2(19g、59.19mmol)の1,2−ジクロロエタン(100mL)中の溶液に、1,2−ジクロロエタン(100mL)中の1−クロロエチルクロロホルメート(9.31g、65.11mmol)を、0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物を加熱還流し、1時間撹拌した。反応混合物をRTとし、揮発物を減圧下で蒸発させた。粗材料をメタノール(100mL)中に溶解し、再度1時間加熱還流した。反応混合物をRTとし、氷水(100mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で抽出した。水性層をNaHCO溶液で塩基性化し、10%MeOH/DCMで抽出した。組み合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗材料をエーテル及びn−ペンタンで倍散させて、ラセミ3(7.5g、55%)を明るい煉瓦色の固体として得た。
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 7.99(s,1H),7.31−7.20(m,5H),3.71(d,J=13.6Hz,1H),3.49(d,J=6.0Hz,1H),3.36(d,J=13.6Hz,1H),3.07(d,J=6.0Hz,1H),2.96(d,J=6.0Hz,1H),2.91−2.84(m,2H),2.69−2.66(m,1H),2.57−2.53(m,1H),2.40−2.36(td,J=11.2,3.2Hz,1H),2.09−2.03(td,J=11.2,3.2Hz,1H).
LCMS(ESI):m/z 231[(M
HPLC:99.50%
tert−ブチル((2S,3R)−1−(5−ベンジル−1−オキソ−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−8−イル)−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)カルバメート(4)の合成:
ラセミ3(1.5g、6.5mmol)のDMF(20mL)中の撹拌溶液に、Int−B(1.42g、6.5mmol)及びHATU(2.96g、7.8mmol)を0℃で窒素雰囲気下に添加した。10分間撹拌した後、DIPEA(2.26mL、13mmol)を0℃で滴下した。反応混合物をRTとし、3時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、水で洗浄した(3×100mL)。組み合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを、MeOH/DCMにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、ラセミ化合物4(1.8g、64%)をオフホワイトの固体として得た。
8−(L−トレオニル)−5−ベンジル−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EL−1及びEL−2)の合成:
ラセミ化合物4(1.8g、4.17mmol)のDCM(30mL)中の撹拌溶液に、TFA(3.3mL、41.7mmol)を0℃で添加した。反応混合物をRTとし、2時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、揮発物を減圧下で濃縮した。粗材料をEtO(2×50mL)で洗浄し、TFA塩として得た。この塩をDCM(30mL)中に懸濁させ、続いて、TEA(1当量)で中和した。反応混合物を減圧下で濃縮して、EL(1g、ラセミ粗化合物)を黄色のシロップ剤として得た。ラセミ体をキラルHPLC精製により分離して、300mgのEL−1及び3000mgのEL−2を得た。
EL−1:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 8.19(s,1H),7.34−7.24(m,5H),4.63−4.58(m,1H),4.41−3.90(td,2H),3.75(d,J=13.6Hz,1H),3.57−3.42(m,4H),3.13−3.00(m,2H),2.86−2.84 (m,1H),2.51−2.48(m,1H),2.21−2.08(m,1H),1.92−1.81(m,2H),0.97(d,J=6.0Hz,3H).
LCMS(ESI):m/z 333.3[M+1]
HPLC:97.22%
キラルHPLC:99.60%
EL−2:
H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ 8.17(s,1H),7.34−7.24(m,5H),4.64−4.52(m,1H),4.27−4.08(m,1H),3.81(d,J=12.8Hz,1H),3.70(d,J=12.8Hz,2H),3.52−3.44(m,4H),3.19(d,J=12.8Hz,2H),2.93(d,J=5.6Hz,1H),2.32−2.20(m,1H),1.86−1.81(m,2H),0.99(d,J=6.4Hz,3H).
LCMS(ESI):m/z 333.3[M+1]
HPLC:98.70%
キラルHPLC:99.60%
8−(L−トレオニル)−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EK−1)の合成:
EL−1(300mg、0.91mmol)のメタノール(10mL)中の撹拌溶液に、含水率50%の10%Pd/C(120mg)をRTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで48時間、H雰囲気下に撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、パッドをMeOH(150mL)で洗浄した。得られたろ液を減圧下で濃縮して300mgの粗生成物を得、これを、分取HPLCにより、EK−1(108mg、49%)を白色の引湿性固体として得た。
EK−1:
H−NMR:(400MHz,DO):δ 4.03−3.97(m,3H),3.93−3.86(m,1H),3.80−3.60(m,2H),3.49−3.33(m,2H),3.27−3.15(m,1H),3.01−2.95(m,1H),1.26−1.23(m,3H).
LCMS(ESI):m/z243.2[M+1]
HPLC:95.62%
8−(L−トレオニル)−2,5,8−トリアザスピロ[3.5]ノナン−1−オン(EK−2)の合成:
EL−2(300mg、0.91mmol)のメタノール(10mL)中の撹拌溶液に、含水率50%の10%Pd/C(120mg)をRTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで48時間、H雰囲気下に撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、パッドをMeOH(150mL)で洗浄した。得られたろ液を減圧下で濃縮して300mgの粗生成物を得、これを分取HPLCにより精製して、EK−2(106mg、49%)を白色の引湿性の固体として得た。
EK−2:
H−NMR:(400MHz,DO):δ 4.06−4.03(m,3H),3.90−3.81(m,2H),3.73−3.67(m,1H),3.49−3.46(m,1H),3.36−3.32(m,1H),3.27−3.25(m,1H),3.05−3.00(m,1H),1.31−1.27(m,3H).
LCMS(ESI):m/z 243.2[M+1]
HPLC:97.39%
実施例5:上記の手法に従って、以下の化合物を調製した、又は、調製する。第1の欄中の化合物は、第2の欄中の化合物由来の異なる立体異性体、例えば異なる鏡像異性体及び/又は異なるジアステレオマーであることが認識されるべきである。
























実施例6:例示的化合物の合成
4−(t−ブトキシカルボニル)ピペラジン−2−カルボン酸(1)の合成:
ピペラジン−2−カルボン酸(SM)(20g、153.7mmol)の1,4−ジオキサン:水(1:1、400mL)中の撹拌懸濁液に、0℃で窒素雰囲気下に、NaHCO(19.37g、230.5mmol)を添加し、続いて、Boc−無水物(42.3mL、184.47mmol)を添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、減圧下で揮発物を低減させた(200mL)。化合物1の得られた粗材料(200mL、約35g)を、さらなる精製をまったく行うことなく次のステップで用いた。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ 10.18(br s,1H),4.08(br s,1H),3.81−3.71(m,2H),3.63(t,J=6.5Hz,1H),3.17−3.15(m,2H),2.91−2.86(m,1H),1.36(s,9H),1.31−1.26(m,0.5H),0.87−0.84(m,0.5H).
LCMS(ESI):m/z 229.0[(M−1)]
1−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4−(t−ブトキシカルボニル)ピペラジン−2−カルボン酸(2)の合成:
化合物1(35g、0.152mol)の1,4−ジオキサン:水(1:1、500mL)中の撹拌溶液に、0℃で、NaHCO(25.56g、0.304mol)を添加し、続いて、Cbz−Cl(トルエン中に50%)(62mL、0.182mol)を滴下した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(100mL)で希釈し、EtOAc(100mL)で洗浄した。水性層を1N HCl溶液で酸性化し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を塩水溶液(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、化合物2(46g、83%)を粘性のシロップ剤として得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ 13.06(br s,1H),7.37−7.30(m,5H),5.12−5.05(m,2H),4.57−4.53(m,1H),4.38−4.32(m,1H),3.86−3.76(m,2H),3.18−3.08(m,2H),2.83(br s,1H),1.37(s,9H).
LCMS(ESI):m/z363.1[M−1]
1−ベンジル4−(tert−ブチル)2−メチルピペラジン−1,2,4−トリカルボキシレート(3)の合成:
化合物2(46g、0.126mol)のDMF(460mL)中の撹拌溶液に、KCO(21g、0.151mol)及びMeI(12mL、0.189mol)を0℃で窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTとし、16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応を水(1L)で希釈し、EtO(2×300mL)で抽出した。組み合わせた有機層を水(100mL)及び塩水溶液(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗材料を、10%EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物3(25g、52%)を白色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.36−7.31(m,5H),5.21−5.11(m,2H),4.78(s,0.5H),4.66−4.50(m,1.5H),4.02−3.88(m,2H),3.68(s,3H),3.24(br s,1H),3.08(dd,J=13.6,3.2Hz,1H),2.83(br s,1H),1.44(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 279.3[(M+1)−Boc]
1−ベンジル4−(tert−ブチル)2−メチル2−(シアノメチル)ピペラジン−1,2,4−トリカルボキシレート(4)の合成:
化合物3(5g、13.22mmol)のTHF(50mL)中の撹拌溶液に、LiHMDS(THF中に1M)(20mL、19.84mmol)を−78℃、窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を−20℃に温め、1時間撹拌した。再度、反応混合物を−78℃に冷却し、ブロモアセトニトリル(1.4mL、19.84mmol)を添加し、RTに温め、16時間撹拌した。反応混合物をNHCl溶液(200mL)で失活させ、EtOAc(2×200mL)で抽出した。組み合わせた有機層を塩水溶液(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して粗材料を得、これを20%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するcombi−flashクロマトグラフィにより精製して、化合物4(1.5g、27%)を粘性のシロップ剤として得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 7.42−7.28(m,5H),5.13(br s,2H),4.00(br d,J=14.3Hz,2H),3.85(br s,1H),3.73−3.53(m,3H),3.40(br s,3H),3.22(s,1H),3.17(d,J=5.3Hz,1H),1.39(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 418.5[(M+1)]
tert−ブチル1−オキソ−2,6,9−トリアザスピロ[4.5]デカン−9−カルボキシレート(EM、EN)の合成:
化合物4(1.5g、3.59mmol)のMeOH(20mL)中の撹拌溶液に、Ra−NiをRTで窒素雰囲気下に添加した。反応混合物をRTで16時間、H雰囲気下で撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた粗材料を、5%MeOH/DCMにより溶出するカラムクロマトグラフィにより精製して、ラセミEM及びEN(600mg)を白色の固体として得た。ラセミ混合物をキラルHPLC精製により分離して、210mgのEM及び220mgのENを得た。
EM:
H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 7.77(br s,1H),3.68−3.49(m,2H),3.26−3.16(m,1H),3.14−3.04(m,1H),2.87(br d,J=13.0Hz,3H),2.57−2.52(m,1H),2.14(br s,1H),2.07−1.97(m,1H),1.89−1.78(m,1H),1.39(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 254.3[(M−1)]
EN:
H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 7.77(br s,1H),3.68−3.49(m,2H),3.26−3.16(m,1H),3.14−3.04(m,1H),2.87(br d,J=13.0Hz,3H),2.57−2.52(m,1H),2.14(br s,1H),2.07−1.97(m,1H),1.89−1.78(m,1H),1.39(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 254.3[(M−1)]
tert−ブチル6−ベンジル−1−オキソ−2,6,9−トリアザスピロ[4.5]デカン−9−カルボキシレート(MO、MP)の合成:
ラセミEM及びEN(200mg、0.784mmol)のCHCN(2mL)中の撹拌溶液に、KCO(162mg、2.35mmol)及びBnBr(0.1mL、0.86mmol)を室温で添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。出発材料が消費された後(TLCによる)、反応混合物をEtOAc(20mL)で希釈し、セライトパッドを通してろ過した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、粗材料を40%EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、100mgのMO及びMPを混合物として得た。ラセミ化合物をキラルHPLC精製により分離して、MO及びMPを得た。
MO:
H NMR(500MHz,DMSO−d):δ 7.90(s,1H),7.38(d,J=7.5Hz,2H),7.28(t,J=7.5Hz,2H),7.23−7.18(m,1H),3.69(br d,J=8.1Hz,2H),3.44(d,J=13.3Hz,1H),3.26(br d,J=4.6Hz,1H),3.19−3.13(m,2H),3.00−2.72(m,2H),2.44(br d,J=11.6Hz,1H),2.16−2.05(m,2H),1.87(dd,J=7.2,12.5Hz,1H),1.39(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 346.3[(M+1)]
MP:
H NMR(500MHz,DMSO−d):δ 7.90(s,1H),7.38(d,J=7.5Hz,2H),7.28(t,J=7.5Hz,2H),7.23−7.18(m,1H),3.69(br d,J=8.1Hz,2H),3.44(d,J=13.3Hz,1H),3.26(br d,J=4.6Hz,1H),3.19−3.13(m,2H),3.00−2.72(m,2H),2.44(br d,J=11.6Hz,1H),2.16−2.05(m,2H),1.87(dd,J=7.2,12.5Hz,1H),1.39(s,9H).
LCMS(ESI):m/z 346.3[(M+1)]
実施例7:上記の手法に従って、以下の化合物を調製した、又は、調製する。第1の欄中の化合物は、第2の欄中の化合物由来の異なる立体異性体、例えば異なる鏡像異性体及び/又は異なるジアステレオマーであることが認識されるべきである。
















実施例8
この実施例は、ポジティブ情動性学習(positive emotional learning)(PEL)テストを実証する。実験は、Burgdorf et al.,“The effect of selective breeding for differential rates of 50-kHz ultrasonic vocalizations on emotional behavior in rats,”Devel.Psychobiol.,51:34-46(2009)に記載のとおり実施した。ラットの50kHz超音波発声(快不快尺度USV)は、ポジティブ情動状態の研究について有効性が立証されたモデルであり、遊び(rough−and−tumble play)によってもっとも誘発される。50kHz超音波発声はラットの報酬性及び欲求社会的行動に正に相関しており、ならびに、ポジティブ情動状態を反映することが既に分かっている。
PELアッセイは、社会的刺激、異種特異的な遊び(rough−and−tumble play)刺激に対する、ポジティブな(快不快尺度)50kHz超音波発声(USV)の取得を計測する。異種特異的な遊び(rough−and−tumble play)刺激は実験者の右手で与えた。テスト化合物又はビヒクル陰性対照(0.9%無菌生理食塩水中の0.5%カルボキシルメチルセルロースナトリウム)を投与した1時間後に、動物には3分間の異種特異的な遊び(rough−and−tumble play)を与え、これは、交互する15秒間ブロックの異種特異的な遊びと、15秒間の無刺激とみなされる。高周波超音波発声(USV)を記録し、Burgdorf et al.,“Positive emotional learning is regulated in the medial prefrontal cortex by GluN2B-containing NMDA receptors,”Neuroscience,192:515-523(2011)によって既に記載されているとおり、Avasoft SASlab Pro(Germany)を用いてソノグラムにより分析した。各無刺激期間の最中に生じた周波数変調50kHz USVを定量化してPELを計測した。動物は、テスト以前には遊び刺激に対して習慣化していなかった。ポジティブ情動性学習は、くすぐり無条件刺激(UCS)治験に先行する条件刺激(CS)治験中に計測した。動物に、6回のCS及び6回のUCS治験(各々が15秒間の治験)(合計で3分間)を与えた。
以下の表に所見を要約する。各実験にはそれ自体のビヒクル群が含まれているため、例示的(典型的)ビヒクルスコアを示す。最大の効果(15秒間当たりの50kHz USVの平均数)は、^: <6.0; *: 6.0-7.6; **: 7.7-10; ***: 10.1-20と報告されている。
実施例9
アッセイを、Moskal et al.,“GLYX−13:a monoclonal antibody−derived peptide that acts as an N−methyl−D−aspartate receptor modulator,”Neuropharmacology,49,1077−87,2005に記載のとおり実施した。これらの研究は、[H]MK−801結合の増加による計測で、NMDAR2A、NMDAR2B、NMDAR2C又はNMDAR2D発現HEK細胞膜におけるNMDAR活性化を促進するようテスト化合物が作動するかを測定するよう設計した。
このアッセイにおいて、300μgのNMDAR発現HEK細胞膜抽出タンパク質を、飽和濃度のグルタメート(50μM)及び様々な濃度のテスト化合物(1×10−15M〜1×10−7M)又は1mMのグリシンの存在下に、15分間、25℃でプレインキュベートした。0.3μCiの[H]MK−801(22.5Ci/mmol)を添加した後、再度、反応を15分間、25℃でインキュベートした(非平衡状態)。結合及び遊離[H]MK−801を、Brandel製の装置を用いる急速ろ過により分離した。
データの分析において、フィルタ上に残った[H]MK−801のDPM(崩壊/分間)を、テスト化合物の各濃度について、又は、1mMのグリシンについて計測した。リガンドの各濃度(N=2)についてのDPM値を平均化した。GraphPadプログラムを用いてモデル化したDPM値の最良適合曲線からベースライン値を決定し、次いで、対数(アゴニスト)対応答(3種のパラメータ)アルゴリズムを、データセット中のすべての点から差し引いた。次いで、%最大[H]MK−801結合を、1mMのグリシンのものと比較して算出した:すべてのベースラインを差し引いたDPM値を、1mMのグリシンに係る平均値により除した。次いで、EC50及び%最大活性を、GraphPadプログラムを用いてモデル化した最大[H]MK−801結合データの最良適合曲線、及び、対数(アゴニスト)対応答(3種のパラメータ)アルゴリズムから得た。
以下の表に、野生型NMDARアゴニストNMDAR2A、NMDAR2B、NMDAR2C及びNMDAR2Dに係る結果、ならびに、化合物が、アゴニストではない(−)か、アゴニストである(+)か、又は、強アゴニストである(++)かを要約する。ここで、欄Aは1mMのグリシンに比した%最大[H]MK−801結合に基づいており(−=0;<100%=+;及び、>100%=++);及び、欄Bはlog EC50値に基づいていた(0=−;≧1×10−9M(例えば−8)=+;及び、<1×10−9M(例えば−10)=++)。

実施例10
スプラーグドーリーラットに、以下の表中に示した化合物を2mg/kgで含有する通常生理食塩水配合物を用いて、静脈内投薬した(1%NMP及び99%通常生理食塩水配合物で送達した、アスタリスク(「」)を付した化合物を除く)。以下の表にIV薬物動態学の結果を要約する。
他の実験において、スプラーグドーリーラットに、以下の表に示した化合物を10mg/kgで含有する通常生理食塩水配合物を用いて、経口投与で投薬した(1%NMP及び99%通常生理食塩水配合物で送達した、アスタリスク(「」)を付した化合物を除く)。血漿、脳及びCSFサンプルを、種々の時点で24時間の期間にわたって分析した。以下の表に経口薬物動態学の結果を要約する。
実施例11
非臨床インビボ薬理学研究(ポーソルトアッセイ)を行って抗うつ剤様効果を計測した。陰性対照(0.9%無菌生理食塩水ビヒクル中の0.5%カルボキシルメチルセルロースナトリウム)及び陽性対照(フルオキセチン)をテスト化合物に対する比較に示す。本研究では、5分間の水泳テストの最中におけるラットの応答(無動時間の短縮)による評価で、ポーソルト強制水泳テストにおける各化合物の効果の評価を行った。
オスの2〜3月齢のスプラーグドーリーラットを用いた(Harlan,Indianapolis,IN)。ラットは、ハコヤナギのチップを敷いたLuciteのケージ中に入れ、12:12明暗サイクル(午前5時に点灯)で飼育し、ならびに、研究を通して、Purina lab chow(米国)及び水道水を無制限に与えた。
ポーソルト強制水泳テストのラットにおける使用への適応は、以下に記載されているとおり行った:Burgdorf et al.,(The long-lasting antidepressant effects of rapastinel (GLYX-13)are associated with a metaplasticity process in the medial prefrontal cortex and hippocampus.Neuroscience 308:202-211,2015)。第1日目(習慣化)に、動物を30cmまで水道水(23±1℃)で満たした高さ46cm×直径20cmの透明なガラスチューブ中に15分間入れ、その後のテスト日には5分間入れた。テスト前に、陽性対照フルオキセチンを3回(24時間、5時間及び1時間)投薬した。動物を、投薬から1時間又は24時間後にテスト化合物又はビヒクルでテストした。動物に、5分間テストの1日前に15分間の習慣化のセッションを受けさせた。投薬から1時間後にテストした化合物サブセットを、投薬から1週間後に、同一の動物群で再度テストした。動物1匹毎に換水した。動物を動画で記録し、動物の頭を水面上に維持するために必要とされる最低限の量の労力と定義される浮いている時間を、高い検者間信頼性(ピアソンのr>.9)を有する条件を知らされていない実験者によってオフラインでスコア化した。
テスト化合物に対する結果を以下の表に示す。投与量レベルでテストした各化合物を示す。各実験に係る有意性対ビヒクル群にマークを付す。「Yes」とした化合物は、示されている投与量レベルでビヒクルと比して統計的に有意(p≦0.05)であることが見出された。「No」とした化合物は、ビヒクルと比して統計的に有意ではなかった。データをテスト化合物及びビヒクル群(群当たりNおよそ8)について平均化した。ビヒクルで治療した群に比したテスト化合物で治療した群に係る浮遊の減少率を示す。
均等性
当業者は、単に日常的な実験を利用することで、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等性を認識することとなるか、又は、確認することが可能となる。このような均等性は以下の特許請求の範囲によって包含されていることが意図されている。
参照による援用
本明細書において言及されているすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト及び他の文献の全内容は、その全体が参照により、本明細書において明確に援用されている。

Claims (34)

  1. によって表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩及び/もしくは立体異性体。
    式中:
    XはO又はNRであり;
    は、H、C〜Cアルキル、フェニル、−C(O)−C〜Cアルキル及びC(O)−O−C〜Cアルキルからなる群から選択され;
    は、H、C〜Cアルキル、フェニル、−C(O)−C〜Cアルキル及びC(O)−O−C〜Cアルキルからなる群から選択され;
    pは1もしくは2であり;
    は、各出現について、H、C〜Cアルキル、−S(O)−C〜Cアルキル、−NR、C〜Cアルコキシ、シアノ及びハロゲンからなる群から独立して選択され;
    wは、0、1又は2であり;
    は、H、C〜Cアルキル、フェニル、−C(O)R31及びC(O)OR32からなる群から選択され;
    31及びR32は各々、H、C〜Cアルキル、−C〜Cシクロアルキル及びフェニルからなる群から独立して選択され;ならびに
    は、各出現について、H、ハロゲン、フェニル及びC〜Cアルキルからなる群から独立して選択され;ならびに
    及びRは、各々独立して、各出現について、H、C〜Cアルキル及びフェニルからなる群から選択され、又は、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、4〜6員複素環を形成し;
    ここで、前記C〜Cアルキルのいずれかは、各出現について独立して、−C(O)NR、−NR、ヒドロキシ、S(O)−C〜Cアルキル、SH、フェニル及びハロゲンから各々独立して選択される1個、2個又は3個の置換基によって任意に置換されており、ならびに、前記フェニルのいずれかは、各出現について独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、−C(O)−O−C〜Cアルキル、−C(O)−C〜Cアルキル、メチル及びCFから各々独立して選択される1個、2個又は3個の置換基によって任意に置換されている。
  2. が−C(O)−O−C〜Cアルキルである請求項1に記載の化合物。
  3. が−C(O)−C〜Cアルキルである請求項1に記載の化合物。
  4. が、ベンジル又は1個、2個もしくは3個のフッ素により任意に置換されているC〜Cアルキルである請求項1に記載の化合物。
  5. がHである請求項1に記載の化合物。
  6. が:
    からなる群から選択される置換基により表され、式中、R及びRは、各出現について、水素及びC〜Cアルキルからなる群から各々独立して選択される請求項3に記載の化合物。
  7. がtert−ブチルオキシカルボニルである請求項2に記載の化合物。
  8. がベンジルである請求項4に記載の化合物。
  9. がメチルである請求項4に記載の化合物。

  10. である請求項4に記載の化合物。
  11. XがOである請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
  12. XがNRである請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
  13. がHである請求項12に記載の化合物。
  14. が、ベンジル又は1個、2個もしくは3個のフッ素により任意に置換されているC〜Cアルキルである請求項12に記載の化合物。
  15. が−C(O)−C〜Cアルキルである請求項12に記載の化合物。
  16. が−C(O)−O−C〜Cアルキルである請求項12に記載の化合物。
  17. がメチルである請求項14に記載の化合物。
  18. がベンジルである請求項14に記載の化合物。

  19. である請求項14に記載の化合物。
  20. が:
    からなる群から選択される置換基により表され、式中、R及びRは、各出現について、水素及びC〜Cアルキルからなる群から各々独立して選択される請求項15に記載の化合物。
  21. がtert−ブチルオキシカルボニルである請求項16に記載の化合物。
  22. pが1である請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物。
  23. pが2である請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物。
  24. がHである請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物。
  25. が:
    からなる群から選択され、式中、R及びRは、各出現について、水素及びC〜Cアルキルからなる群から各々独立して選択される請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物。
  26. からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容可能な塩及び/もしくは立体異性体。
  27. 実施例5の表及び実施例7の表に記載の化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容可能な塩及び/もしくは立体異性体。
  28. 請求項1〜27のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
  29. 経口投与、非経口投与、局所投与、膣内投与、直腸内投与、舌下投与、点眼投与、経皮投与又は鼻噴投与に適する請求項28に記載の医薬組成物。
  30. うつ病、アルツハイマー病、注意欠陥障害、統合失調症又は不安の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、治療的有効量の請求項1〜27のいずれか一項に記載の化合物又は請求項28もしくは29に記載の医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む方法。
  31. 急性神経障害性疼痛又は慢性神経障害性疼痛の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、治療的有効量の請求項1〜27のいずれか一項に記載の化合物又は請求項28もしくは29に記載の医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む方法。
  32. 前記神経障害性疼痛が慢性又は急性である請求項31に記載の方法。
  33. 前記神経障害性疼痛が、ヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、脳卒中、後虚血、慢性的背痛、帯状疱疹後神経痛、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィ、複合性局所疼痛症候群、脊髄傷害、座骨神経痛、幻肢痛、糖尿病ニューロパシー及びがん化学療法誘発性神経障害性疼痛からなる群から選択される請求項31に記載の方法。
  34. シナプス機能不全に関連する神経発達障害の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、治療的有効量の請求項1〜27のいずれか一項に記載の化合物又は請求項28もしくは29に記載の医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む方法。
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