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Description
本発明は、チタンまたはチタン合金にて構成される金属粉末を使用してグリーン体が成形され、このグリーン体が焼結段階で圧縮され固化される粉末冶金によるチタン部材の製造方法、およびチタン部材に関する。
寸法が正確なチタン部材(以下、「チタン部材」は、チタン(純チタン)または少なくとも1種のチタン合金にて構成される部材を意味する。)の異なる種類の粉末冶金による製造方法が知られており、公知の方法では、まずグリーン体が形成され、そのグリーン体が焼結工程において圧縮され固化される。グリーン体の製造は、特に積層造形方法、金属射出成形方法、押出方法および無加圧粉冶金製造方法等の様々な方法によって行われる。
チタン部材の粉末冶金による製造方法は、チタン素材の優れた特性のために経済的で無駄の少ない製造方法であり、その重要性が益々高まっている。チタン素材の良好な生体適合性および高い比強度は、特に医療技術および航空宇宙飛行の応用領域で重要な役割を果たす。経済的に最も重要な全チタン市場の50%超の売り上げ数を締める合金はTi6Al4Vである。
粉末冶金処理されたチタン部材の製造では、通常、次の段階が実施される。
a)成形
b)脱脂
c)焼結
a)成形
b)脱脂
c)焼結
成形の目的は、チタン粉末粒子を所定形状で可能な限り気密にパッキング(成形)することである。また、この段階では、採用される方法に応じて、少なくとも1回の脱脂段階で除去する必要がある添加剤が使われる。さらにこの脱脂段階に続く、通常は最終段階である焼結段階で粉末粒子は材料輸送によって固化される。
チタンの高反応性のために各加工段階では、それぞれに適応した工程条件にて進行しなければならない。欧州特許第1119429号明細書では、ゲルリング他がチタン部材の焼結のための必須工程条件を検討している。また、脱脂および焼結を共通の炉コンセプトで組み合わせた実施はブリュームにより欧州特許出願公開第1496325号明細書で説明されている。
チタンは2つの結晶変態を有する。純チタンおよび常圧で最高882.5℃の温度まで利用可能な六方晶系のα相、および、純チタンおよび常圧で上記の温度超で生じる立方体中心のβ相である。チタン合金をα−Ti、(α+β)−Tiおよびβ−Ti合金に分割するために室温での異なる相の存在が利用される。Ti6Al4Vは、例えば(α+β)−合金であり、室温で両相が構造内で安定して存在する。チタンおよびチタン合金の焼結工程でチタン部材を従来の方法で所望の密度である97%より大きくなるように製造するためには、通常、焼結時間が約2〜5時間の場合に約1100〜1400℃の焼結温度が必要とされる。これは純チタンおよびTi6Al4Vにとっては、大きなβ粒成長を促すβ相領域の材料が処理されることを意味する。
欧州特許第1119429号明細書では、ゲルリング他が、設定された構造が約150μmのβ−粒子サイズを有することを説明している。層状の(α+β)−構造の異なる構造の大きさの記述のためにここでは図1に示されるシェニャフスキー他の文献による命名法が利用される。その中では以下のような命名がなされている。
D:一次β相結晶粒子サイズ
d:平行αラメラコロニーの大きさ
t:αラメラの幅
D:一次β相結晶粒子サイズ
d:平行αラメラコロニーの大きさ
t:αラメラの幅
変形工程とは異なり、粉末冶金経路上では成形が第1工程段階で行われる。その後の工程段階である焼結工程では、すでに成形された高密度のチタン部材が生成される。典型的な加工処理とは異なり、工程段階が逆の順序(1.成形、2.材料固化)であるために粉末冶金処理において金属の構造、および、それとともにその素材特性が成形段階前の温度や機械による加工で精緻化あるいは最適化されにくい。チタンやチタン合金にて構成されるチタン部材の製造のための粉末冶金工法のために、工法に基づく逆工程は、すなわち、公知の焼結工法中で設定された構造への非常に制限された影響と組み合わされ、制限された要因を示す。より具体的に図2には、従来技術で通常使用される(粉末粒子サイズが45μm以下の)チタン粉末の標準的な設定構造および従来技術で典型的に使用される焼結条件で焼結されるTi6Al4Vのサンプルが示される。この図2には、公知の粉末冶金によって製造され焼結されるチタン部材が典型的な層状のα相およびβ相にて構成される、平均約190μmの1次β相結晶粒子サイズ(D)を有する混合構造である(α+β)構造が示されている。
粉末冶金的に処理される小さな粒子サイズのチタンおよびチタン合金の製造は米国特許第4601874号明細書でマルティー他によって説明されている。S、P、B、As、Se、Te、Yおよびランタニドの混合により固化工程中に、目標とされるように用いられるチタン粉末より2桁小さい粒子サイズを有する素材が生成される。この方法の欠点は、チタンおよびチタン合金の使用が、厳密に規制された市場分野で広まっていることにある。この使用目的のために素材の化学的組成およびその機械的特性が規範によって規制されている。そのため、例えばASTM規格のF2885およびASTM規格のF2889では、Ti6Al4Vあるいは純チタンの素材組成および機械的特性が定められている。
微粒チタンあるいはそのようなチタン合金を粉末冶金によって製造するための方法は、国際公開第2012/148471号に記載されている。この文献では、チタン(合金)粉末にて構成されるグリーン体が325mesh(44μm未満)の粒子サイズで製造され、続いて複数段階の圧縮および粒子変形工程が施される。第1段階では、水素雰囲気中で1100〜1500℃で、例えば実施例では工程温度として常に1200℃とされる温度でグリーン体が焼結される。その際にβ相のチタン素材が生成される。続いて水素雰囲気中で実施される制御された冷却段階で相の変形が保持され、そこではβ粒の中で再構築が行われ、それが微小なα粒、β粒およびδ相の相混合物を生成する。その後それに続く工程で水素を排除する必要があり、具体的には真空を導入することによって行われる。このような処置の場合、特に水素の使用が問題となる。なぜなら、完成したチタン部材から水素のガスを排出することは困難であるとともに、排除が不完全になってしまう場合があるためである。そして、素材の構造の中に留まった水素は、その素材特性および素材の安定性に不利な影響を及ぼす。また、完成したチタン部材からの残余水素ガスの放出もまた全く望まれないものである。
シェニャフスキー他3名、Microstructure andMechanical Properties of High Strength Two−Phase Titanium Alloys. Materials Science/Metals and Nonmetals、「Titanium Alloys−Advances in Properties Control」、2013年
本発明で一般的に追及される目的は、粉末冶金によって製造され焼結されたチタン部材の場合に、構造を操作し素材特性を最適化する可能性を生じさせることである。
特に直接焼結工程にて素材特性を特殊な応用にも適合させるように設定でき、焼結工程で焼結後のさらなる温度的処置段階のための最適な起点を生じさせることが実現されるべきである。そのため、例えば、合目的的に焼結条件の設定により高い延性を有する主に球状の構造を生成することが可能であるべきである。
本発明は、チタンまたはチタン合金にて構成される金属粉末を使用してグリーン体が成形され、このグリーン体が焼結段階で圧縮され固化される粉末冶金によるチタン部材の製造方法において、前記グリーン体の形成のために、ASTM規格のB822−10に準拠したレーザ光散乱を使って測定された平均粒子サイズが25μm未満でチタンまたはチタン合金にて構成される金属粉末が使用され、前記焼結段階は、最高1100℃までの焼結温度で、常圧に対して低減された圧力の雰囲気中で実施される。
チタンまたはチタン合金にて構成される金属粉末は、最大粒子サイズが30μm未満である。
前記焼結段階は、10
−3
mbar以下の圧力である真空中で実施される。
好ましくは、前記焼結段階は、10
−5
mbar以下の圧力である真空中で実施される。
さらに、前記焼結段階は、不活性ガス雰囲気で300mbar以下の圧力で実施される。
また、前記グリーン体の形成には、平均粒子サイズが20μm未満の金属粉末が使用される。
好ましくは、前記グリーン体の形成には、平均粒子サイズが10μm未満の金属粉末が使用される。
より好ましくは、前記グリーン体の形成には、平均粒子サイズが5μm未満の金属粉末が使用される。
また、焼結段階は、5時間以下の焼結時間で実施される。
好ましくは、前記焼結段階は、3.5時間以下の焼結時間で実施される。
より好ましくは、前記焼結段階は、3時間以下の焼結時間で実施される。
より好ましくは、前記焼結段階は、2.5時間以下の焼結時間で実施される。
また、前記焼結段階は、少なくとも1時間の焼結時間で実施される。
好ましくは、前記焼結段階は、少なくとも2時間の焼結時間で実施される。
また、焼結温度は、最高1050℃までである。
好ましくは、焼結温度は、最高1000℃までである。
より好ましくは、焼結温度は、最高950℃までである。
また、焼結温度は、少なくとも860℃である。
また、前記焼結段階では、焼結温度がチタンまたはチタン合金のβトランザス温度未満に設定される。
また、前記焼結段階後の前記チタン部材は、材料密度が97%より高い。
好ましくは、前記焼結段階後の前記チタン部材は、材料密度が98%より高い。
より好ましくは、前記焼結段階後の前記チタン部材は、材料密度が99%以上である。
また、前記焼結段階で950℃未満の焼結温度が選択された場合、前記チタン部材の材料密度を97%より高くするために、前記焼結段階後のさらなる段階で前記チタン部材に圧力、または、圧力および温度が加えられる。
前記さらなる段階は、冷間等方加圧法および熱間等方加圧法のうちの少なくとも一方である。
また、前記焼結段階後のチタン部材に熱的後処理を施す。
前記熱的後処理は、熱間等方加圧法、焼入れおよび均一急速焼入れのうちの少なくとも1種である。
また、粉末冶金によるチタン部材の製造方法によって製造されたチタン部材であって、平均粒子サイズが30μm未満である球状α構造を有する。
また、粉末冶金によるチタン部材の製造方法によって製造されたチタン部材であって、平均粒子サイズが30μm未満である球状α構造および平均一次β相粒子サイズが90μm未満である層状(α+β)構造を有する。
また、粉末冶金によるチタン部材の製造方法によって製造されたチタン部材であって、平均一次β相粒子サイズが120μm未満である層状(α+β)構造を有する。
本発明の方法の実施および焼結工程における素材特性への影響の可能性の生成のための前提は、チタンまたはチタン合金にて構成される平均粉末サイズが25μm未満である金属粉末、いわゆる微粒子の使用である。そのような本発明の方法のために使用される微粒子では、最大粒子サイズが特に30μm未満であることが好ましい。このような微粒子の最大粒子サイズが限界値とされる。それでもまだこのような一工程量でこの限界値を超える粒子サイズの微粒子が僅かに生じる可能性がある。その場合にはその限界値を超えた粒子の量は、最大で1〜5重量%とすることが好ましい。
平均粒子サイズはより小さい方が好ましいため、20μm未満が好ましく、さらに好ましくは10μm未満であり、より好ましくは5μm未満である。金属粒子の粒子サイズが小さいほど、従来適用されてきた比較的高い焼結温度より明らかに低い焼結温度であっても最終密度を大きくしやすい。
本発明の実質的な粒子サイズおよびそれらの配分のための測定は、2010年に公開されたASTM(American Society for Testing and Materials:米国試験材料協会)規格のB822−10に準拠したレーザ光散乱を使った粒子サイズ検査によって行われる。粒子サイズの配分は、重量%およびD10/D50/D90に従って決定され、D50が平均粒子サイズを表す。具体的には、ここで提示された粒子サイズは、ベックマン・コールター製の粒子サイズ分析器COULTER LS(COULTERは登録商標)を使った測定とASTM規格のB822−10に準拠したフラウンホーファー理論を応用した評価の比較によって決定された。
本発明における粒子サイズは、球状粒子の場合には粒子径とする。非球体粒子の場合には粒子サイズは設計された最大粒子寸法に相当する。
縮小された粒子サイズとすることによって、固化されていない粒子の中で焼結工程に提供される表面およびそれとともに貯蔵された表面エネルギーも増大する。このエネルギーの削減が焼結工程を駆動させる力となっているため、焼結工程は僅かな温度エネルギーにて実施可能である。
グリーン体形状のための前記寸法の微粒子の適用によるさらなる利点は、体積単位毎により多くの粉末粒子が導入されうることである。これは図3に示されるように、拡大された表面の他に体積単位毎の粒子の接触点の数を増加させる。この図3は概略図であり、(球状粒子を例として)粒子サイズを半分にすることによる、定義された所定の体積を充填するための粒子数への影響が示される。
粒子の接触点はそれらの側の出発点であり、拡散工程によって駆動される焼結工程のための必須条件である。このような接触点の数の体積単位毎の増加によって、焼結工程の出発条件の改善を促すことができる。
平均粒子サイズが25μm未満の微粒子を使用した本発明では、理想的な充填密度の観察において、前述した利点以外にさらに、図4で理想化されて示されるように、粉末粒子同士によって囲まれた空洞の体積を減少できる。図4では、概略図で互いに画定し合う粒子間の空洞の縮小が(球状粒子を例とした)粒子サイズを半分に縮小した例によって示される。この空洞は、焼結工程後に得られるチタン部材(上述したように、チタン部材は、チタン(純チタン)、または少なくとも1種のチタン合金にて構成される部材を意味する。)に求められる高い材料密度を、焼結工程中の素材輸送によって達成するためにできるだけ閉鎖されなければならないため、より少なく調節される体積が決定的な理由となる。
焼結段階は、通常は、低減された圧力環境で行われる。例えば、10−3mbar以下、特に10−5mbar以下の圧力環境である真空で行われる。なお、例えばより低減された300mbar以下の圧力である不活性ガス雰囲気でも実施可能である。不活性ガスは例えばアルゴンが適用可能である。
焼結温度は、1100℃未満の温度が適用される。特に最高1050℃、最高1000℃、最高950℃であってもよい。しかし焼結温度は、良好な焼結結果を達成するために860℃未満にしない方が好ましい。また、焼結温度は、均一に保持してもよい。ただし特に温度が焼結工程中に変化してもよい。なお、焼結温度は、焼結されるべき工作物にもたらされた温度を示す。工作物から離間して測定された工程温度では工作物にもたらされた焼結温度と異なることがあるため、焼結設備に応じてその制御装置内で適合した工程温度が選択されるべきである。
焼結の持続時間は、3.5時間以下が好ましく、3時間以下、2.5時間以下にしてもよい。ただし、通常、良好な結果を達成するためには少なくとも1時間、好ましくは2時間以上の焼結時間が必要である。
焼結段階後、本発明の方法で製造されたチタンまたはチタン合金から成るチタン部材は、通常、最終密度が97%以上となることが好ましい。なお、例えば98%より大きい最終密度や、99%以上の最終密度となることもある。
球状構造を得るためにチタン部材は、βトランザス温度未満(例えばβトランザス温度より30℃低い温度)で焼結される。
そこでβトランザス温度未満の950℃の焼結温度および3時間未満の焼結時間での第1の試みで最終密度が97%より大きいチタン部材が製造された。このチタン部材は、平均10.1μmで最大サイズ29μmのα粒子サイズである球状構造である。この素材の構造は、図5に示される。これらの粒子サイズは使用される粉末粒子の寸法の範囲内である。
Ti6Al4Vのβトランザス温度は、非特許文献1や参考文献1(J.リンデマン、チタン合金、コットブス・ブランデンブルグ工科大学冶金学および材料技術学科演習、2012年によると985〜1015℃の領域にある。これらの文献中に示された温度が比較的に広範囲であるのは、チタン合金中の合金要素の配分に起因するとともに、環境圧力がさらなる影響因子となっている。そのため、参考文献2(A.Huang,D.Hu,M.H.Loretto,J.Mei,X.Wu、The influence of pressure on solid−state transformations in 77−46Al−8Nb、Scripta Materialia、Vol56、No.4、2007年、p.253−324)においては、増加するプロセス圧力(1500bar)によってTi46Al8Nb合金ではαトランザス温度の低減が観測されると記載されている。
本発明では、工程条件によって圧力変化によるβトランザス温度の最大20℃のみの変移が見られることを前提としている。
二峰性構造の生成のためにβトランザス温度に近いが、これを下回る温度にて、チタン部材が焼結される。
そのようにして、Ti6Al4V合金の縮小された一次β相粒子サイズを有する多くの応用のためにも有利な層状構造が生成されるために、チタン部材が1000℃の焼結温度で焼結されることにより、図6に示される第1サンプルが製造された。この焼結温度は、焼結された合金の中に形成された構造という観点での得られたサンプルの調査が示したように、僅かではあるがβトランザス温度未満であった。また、球状α構造および層状(α+β)構造の僅かな部分にて二峰性構造が構成され、平均β粒子サイズは81μmである。
密度測定はASTM規格のB962、および、ASTM規格のB311の基準に従って行われる。また、粒子サイズは、ASTM規格のE112の基準に従って測定される。
一次β相粒子において可能な限り小さな粒子サイズの層状構造を生成のために、チタン部材はほとんどの時間、βトランザス温度未満で焼結されるとともに、30分未満の維持時間で、好ましくは20分以下の維持時間で、より好ましくは10分未満である最小限の維持時間で、相毎にβトランザス温度超でも焼結されるため、層状構造を生成するために完全にβ相が存在するが、一次β相粒子は90μm未満である。最小限の維持時間でβトランザス温度超での焼結はいずれも1015℃を超える温度で行われた。この温度はいずれも1080℃未満に抑えられ、好ましくは1040℃未満であり、より好ましくは1020℃以下が選択される。
1100℃未満、特に主にβトランザス温度未満の焼結温度での焼結条件の合目的的な設定による焼結される材料中の相組成への上記で表された影響の可能性にこそ、本発明の処置の特別な利点がある。この可変性のための前提は、十分に気密なチタン部材がβトランザス温度未満で製造されうることであり、それは、粒子サイズが30μm未満の微粒子の使用により可能となる。
本発明の方法に従ってチタンあるいはチタン合金から成る粉末冶金の形態が、1100℃を超える通常の焼結温度や1200℃を超える通常の焼結温度を下回り、好ましくはβトランザス温度未満で焼結されることで、良好な構造的特性および素材特性を備えたチタン部材が得られることが証明された。また、従来技術での通常の焼結温度と比較して明らかに低く設定された焼結温度で、97%より大きい高密度の最終のチタン部材が得られることが示された。特に本発明の方法は、焼結工程中でチタン部材の構造を変化させ、粒子サイズを著しく縮小し、それによってチタン部材の機械的特性、例えば引張強さ、延性および疲労強度を最適化できる。
また、本発明の範囲内で、例えば焼結のために特に低い温度である950℃未満等の温度も選択され、焼結段階で所望の材料密度(>97%)が完成したチタン部材で達成されていない場合には、そのチタン部材のさらなる圧縮を後工程である加圧工程で行うことができ、例えば冷間等方加圧法(Cold Isostatic Pressing:CIP)または熱間等方加圧法(Hot Isostatic Pressing:HIP)等の圧力や温度の作用によって高密度化される。すなわち、例えば材料密度が焼結後に97%未満である場合には、焼結後に実施される加圧段階によって材料密度が97%より大きくなるように圧縮されて高密度化される。
さらに本発明の方法によって製造されたチタン部材は、焼結段階後、さらに素材特性に影響を与えるために少なくとも1種の熱的後処理を施してもよい。このような熱的後処理としては、例えば、熱間等方加圧法(HIP)、焼入れ(Quench)および均一急速焼入れ(Uniform Rapid Quench)等がある。
従来から適用される焼結温度に対して低減された焼結温度は、エコロジー的利点、経済的利点および工程技術的利点を奏する。すなわち、焼結工程において要する熱エネルギーをより少なくでき、省コストで、工程時間の短縮にも繋がる。また、従来の温度に対して低減された焼結温度で実施される方法では熱壁炉概念が適用可能であり、工程温度が1100℃より高く設計された通常の冷壁炉である炉よりも低コスト化できる。
平均粒子サイズが25μm未満、好ましくは最大粒子サイズが30μm未満である微粒子と、従来技術と比較して低く設定された焼結温度から成る合目的的な組み合わせは、構造や素材特性の独特な操作を可能にする。
Claims (29)
- チタンまたはチタン合金にて構成される金属粉末を使用してグリーン体が成形され、このグリーン体が焼結段階で圧縮され固化される粉末冶金によるチタン部材の製造方法において、
前記グリーン体の形成のために、ASTM規格のB822−10に準拠したレーザ光散乱を使って測定された平均粒子サイズが25μm未満でチタンまたはチタン合金にて構成される金属粉末が使用され、
前記焼結段階は、最高1100℃までの焼結温度で、常圧に対して低減された圧力の雰囲気中で実施される
ことを特徴とする粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - チタンまたはチタン合金にて構成される金属粉末は、最大粒子サイズが30μm未満である
ことを特徴とする請求項1記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、10−3mbar以下の圧力である真空中で実施される
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、10 −5 mbar以下の圧力である真空中で実施される
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、不活性ガス雰囲気で300mbar以下の圧力で実施される
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記グリーン体の形成には、平均粒子サイズが20μm未満の金属粉末が使用される
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記グリーン体の形成には、平均粒子サイズが10μm未満の金属粉末が使用される
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記グリーン体の形成には、平均粒子サイズが5μm未満の金属粉末が使用される
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、5時間以下の焼結時間で実施される
ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、3.5時間以下の焼結時間で実施される
ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、3時間以下の焼結時間で実施される
ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、2.5時間以下の焼結時間で実施される
ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、少なくとも1時間の焼結時間で実施される
ことを特徴とする請求項1ないし12いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階は、少なくとも2時間の焼結時間で実施される
ことを特徴とする請求項1ないし12いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 焼結温度は、最高1050℃までである
ことを特徴とする請求項1ないし14いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 焼結温度は、最高1000℃までである
ことを特徴とする請求項1ないし14いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 焼結温度は、最高950℃までである
ことを特徴とする請求項1ないし14いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 焼結温度は、少なくとも860℃である
ことを特徴とする請求項1ないし17いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階では、焼結温度がチタンまたはチタン合金のβトランザス温度未満に設定される
ことを特徴とする請求項1ないし18いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階後の前記チタン部材は、材料密度が97%より高い
ことを特徴とする請求項1ないし19いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階後の前記チタン部材は、材料密度が98%より高い
ことを特徴とする請求項1ないし19いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階後の前記チタン部材は、材料密度が99%以上である
ことを特徴とする請求項1ないし19いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階で950℃未満の焼結温度が選択された場合、前記チタン部材の材料密度を97%より高くするために、前記焼結段階後のさらなる段階で前記チタン部材に圧力、または、圧力および温度が加えられる
ことを特徴とする請求項1ないし21いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記さらなる段階は、冷間等方加圧法および熱間等方加圧法のうちの少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項23記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記焼結段階後の前記チタン部材に熱的後処理を施す
ことを特徴とする請求項1ないし24いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 前記熱的後処理は、熱間等方加圧法、焼入れおよび均一急速焼入れのうちの少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項25記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法。 - 請求項1ないし26いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法によって製造されたチタン部材であって、
平均粒子サイズが30μm未満である球状α構造を有する
ことを特徴とするチタン部材。 - 請求項1ないし26いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法によって製造されたチタン部材であって、
平均粒子サイズが30μm未満である球状α構造および平均一次β相粒子サイズが90μm未満である層状(α+β)構造を有する
ことを特徴とするチタン部材。 - 請求項1ないし26いずれか一記載の粉末冶金によるチタン部材の製造方法によって製造されたチタン部材であって、
平均一次β相粒子サイズが120μm未満である層状(α+β)構造を有する
ことを特徴とするチタン部材。
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