JP2019513007A - ナノポアシーケンシングのためのポリメラーゼ−鋳型複合体 - Google Patents

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Abstract

本開示は、100mMを超える高い濃度の塩の中で鋳型依存的DNA合成を触媒するポリメラーゼの処理能力を亢進する方法および組成物を提供する。0.8〜2.2マイクロモルのレベルのヌクレオチドの存在下および35〜45℃の高い温度、例えばポリメラーゼの融点またはその付近の温度における活性DNA合成と適合性のあるポリメラーゼ−鋳型複合体の構築を亢進する方法および組成物も開示される。鋳型とポリメラーゼの複合体はナノポアシーケンシングに用いることができる。【選択図】なし

Description

[001]本開示は一般にDNAシーケンシングの処理能力を改善するための方法および組成物に関し、より詳細には温度、ヌクレオチド濃度、および/またはポリメラーゼ濃度を調整することによってDNAシーケンシング反応におけるシーケンシング収率を亢進することに関する。
[002]ナノポアは、核酸の配列および構造を検討するための標識不要な基盤技術として最近注目されてきた。データは典型的には印加電場が電圧固定増幅器によって制御された単一のポアにわたって印加される際にDNA配列が決定されるとともにイオン電流の時系列として報告される。数十万個の分子を大きなバンド幅および空間分解能で調べることができる。
[003]信頼できるDNA解析ツールとしてのナノポアの成功に対する重大な障害は、処理能力または平均読み取り長である。例えば、ポリメラーゼによる鋳型の効率的な結合が、高いシーケンシング収率のために重要である。この、およびその他の望ましい特性は、ポリメラーゼを修飾して鋳型依存的シーケンシング反応から得られる配列情報の量を増加させることによって亢進することができる。さらに、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成に有利な(またはこれを安定化させる)条件を提供することによっても、処理能力を増大させることができる。しかし、シーケンシング反応を行うことができる数多くの条件が変動するので、ナノポアに基づくシーケンシング等のある種のシーケンシング反応を最適化する特定の変数(条件)は、概して見つかりにくいままであった。
[004]本明細書において、ナノポアに基づくシーケンシング等のシーケンシング反応を最適化するために用いることができる方法および組成物が提供される。ある例示態様では、高い塩濃度を用いてシーケンシング反応を亢進する方法および組成物が提供される。例えば一態様では、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製する方法が提供される。この方法は、(a)ポリメラーゼを提供するステップと、(b)高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼをポリヌクレオチド鋳型と接触させ、それによりポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するステップとを含む。
[005]別の態様では、鋳型−ポリメラーゼ複合体の処理能力を増大させる方法が提供され、この方法は、高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中で鋳型−ポリメラーゼ複合体を形成させるステップを含み、鋳型−ポリメラーゼ複合体の処理能力は、同様に高い濃度の塩を含む溶液中、ヌクレオチドの存在下で形成された場合の同じ鋳型−ポリヌクレオチド複合体の処理能力より大きい。例えば、処理能力は鋳型とポリメラーゼの会合の速度がより速いことによって増大し、および/または処理能力はポリメラーゼからの鋳型の解離の速度がより遅いことによって増大する。
[006]別の態様では、鋳型依存的DNA合成を実施する方法が提供され、この方法は、(a)高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を提供するステップと、(b)ヌクレオチドを溶液に添加することによって鋳型依存的DNA合成を開始するステップとを含む。
[007]別の態様では、高い塩濃度におけるナノポアシーケンシングの方法が提供され、この方法は、(a)高い濃度の塩を含む溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を提供するステップであって、溶液がヌクレオチドを実質的に含まないステップと、(b)ポリメラーゼ−鋳型複合体をナノポアと組み合わせてナノポアシーケンシング複合体を形成させるステップと、(c)タグ付きヌクレオチドをナノポアシーケンシング複合体に提供して高い塩濃度で鋳型の鋳型依存的ナノポアシーケンシングを開始するステップと、(d)ナノポアを利用して、ヌクレオチドのそれぞれがポリメラーゼと会合しつつヌクレオチドのそれぞれが組み込まれている間に、タグ付きヌクレオチドのそれぞれと会合したタグを検出し、それによりポリヌクレオチド鋳型の配列を決定するステップとを含む。
[008]上記の種々の態様のそれぞれにおいて、ポリメラーゼはバリアントポリメラーゼ、例えば配列番号2のポリメラーゼに少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリメラーゼであってよい。さらに、ナノポアはモノマーナノポア、例えばOmpGナノポアであってよく、またはナノポアはオリゴマーナノポア、例えばα−ヘモリシンナノポアであってよい。さらに、塩の高い濃度は例えば少なくとも100mMの塩濃度として定義される。
[009]別の態様では保存または反応組成物が提供され、保存または反応組成物は少なくとも100mMの塩の溶液中にポリメラーゼ−鋳型複合体を含む。いくつかの実施形態では、組成物はヌクレオチドを実質的に含まない。
[0010]ある他の例示態様では、低いヌクレオチド濃度および高い温度を用いてシーケンシング反応を亢進する方法および組成物が提供される。例えば一態様では、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製する方法が提供され、この方法は、例えばポリメラーゼを提供するステップと、次にポリメラーゼを溶液中でポリヌクレオチド鋳型と接触させ、それによりポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するステップとを含む。溶液は低い濃度のヌクレオチドを含み、高い温度を有している。
[0011]別の態様では、鋳型−ポリメラーゼ複合体の処理能力を増大させる方法が提供される。この方法は、溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップを含み、この溶液は低い濃度のヌクレオチドを含み、高い温度を有している。このような方法では、高温溶液中で形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力は対照である室温のポリメラーゼ−鋳型複合体溶液から得られる処理能力より大きい。
[0012]別の態様では、ポリヌクレオチド鋳型のナノポアに基づくシーケンシングの方法が提供される。この方法は溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップを含み、この溶液は高い温度で低い濃度のヌクレオチドを含む。形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体はナノポアと合わされ、ナノポア−シーケンシング複合体を形成する。タグ付きヌクレオチドがナノポアシーケンシング複合体に提供され、鋳型の鋳型依存的ナノポアシーケンシングが高い温度で開始される。ナノポアを利用して、タグ付きヌクレオチドのそれぞれがポリメラーゼと会合しつつタグ付きヌクレオチドのそれぞれが組み込まれている間に、タグ付きヌクレオチドのそれぞれと会合したタグが検出され、それによりポリヌクレオチド鋳型の配列が決定される。ナノポアはモノマーナノポア、例えばOmpGナノポアであってよく、またはマルチマーナノポア、例えばα−ヘモリシン系ナノポアであってよい。
[0013]低いヌクレオチド濃度と高い温度を含む上記の態様のそれぞれにおいては、この方法には、溶液をポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼで飽和させるステップがさらに含まれてよい。ポリメラーゼは例えば配列番号2として示されるアミノ酸配列と85%、90%、95%、98%またはそれ以上の配列同一性を有するポリメラーゼ等のポリメラーゼバリアントであってよい。ある態様では、ヌクレオチドの低い濃度は0.8μM〜2.2μMであり、1.2μM等である。ある態様では高い温度は室温を超え、35℃〜45℃等である。ある態様においては、高い温度は40℃である。
[0014]DNAポリメラーゼによる単一ヌクレオチド組み込みに必要な最小限の触媒ステップの説明図である。反応は遊離のDNAポリメラーゼ酵素(E)の二重鎖プライマー/鋳型DNA複合体(DNA)への結合によって開始し、二元の酵素−DNA複合体(E・DNA)が生じる。kon.DNAは酵素と鋳型との会合速度を意味し、koff.DNAは酵素−DNA複合体からの酵素の解離速度を意味する。kon.DNAとkoff.DNAの速度によって決定される平衡によって、ポリメラーゼ−鋳型複合体の静的処理能力が定義される。したがって、酵素の静的処理能力は、会合速度kon.DNAの増大および/または解離速度koff.DNAの減少によって増大させることができる。Mg2+等の二価カチオンの存在下における正しいヌクレオチド(dNTP)の会合によって、酵素−DNA−dNTP三元複合体の形成が促進される(E・DNA・dNTP・Mg2+)。kon.ヌクレオチドは酵素のヌクレオチド結合の速度を意味し、koff.ヌクレオチドは酵素−鋳型複合体からのヌクレオチドの解離速度を意味する。ポリメラーゼが鋳型を延長している間のkon.DNAとkoff.DNAによって決定される平衡によって、ポリメラーゼの複製処理能力が定義される。したがって、ポリメラーゼの複製処理能力は、DNA会合の速度kon.DNAの増大および/またはDNA解離の速度koff.DNAの減少によって増大させることができる。dNTPの結合によって、三元複合体中の酵素の第1のコンフォメーション変化が誘導される。進入するdNTPのα−ホスフェートと鋳型/プライマー末端の3’−OHとの間にホスホジエステル結合が形成され、プライマー末端に追加のヌクレオチド塩基が産生される(E・DNAn+1・PP)。反応によりピロホスフェート(PP)およびプロトンが発生する。第2のコンフォメーション変化によりPPの放出が可能になり、ヌクレオチド組み込みのサイクルが完了する。 [0015]FRET置換アッセイで用いる例示的な鋳型を示す説明図である。 [0016]種々の塩濃度における鋳型とポリメラーゼとの会合の速度に対する、ポリホスフェートヌクレオチドの存在下においてポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させることの効果の例示的な結果を示すグラフである。実施例3を参照する。 [0017]図3に示す蛍光シグナルについての会合曲線を示す一連のグラフである。実施例3を参照する。 [0018]ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成の阻害に対する、ブロックされたヌクレオチドの効果の結果を示す一連のグラフである。FRETアッセイで得られた蛍光シグナルを図5Aに示す。実施例4.1を参照する。 ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成の阻害に対する、ブロックされたヌクレオチドの効果の結果を示す一連のグラフである。解離曲線を図5Bに示す。実施例4.1を参照する。 [0019]Mg2+(◆)または20μMのd6Ps(ポリホスフェートヌクレオチド;■)の存在下に形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体の形成およびポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度に対するヌクレオチドの効果の例示的な結果を示す一連のグラフである。FRETアッセイで得られた蛍光シグナルを図6Aに示す。実施例4.2を参照する。 Mg2+(◆)または20μMのd6Ps(ポリホスフェートヌクレオチド;■)の存在下に形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体の形成およびポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度に対するヌクレオチドの効果の例示的な結果を示す一連のグラフである。解離曲線を図6Bに示す。実施例4.2を参照する。 [0020]Ca2+の非存在下(◆)または存在下(■)に形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体の形成およびポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度に対する、ヌクレオチド(d6Ps)の効果の例示的な結果を示す一連のグラフである。FRETアッセイで得られた蛍光シグナルを図7Aに示す。実施例4.3を参照する。 Ca2+の非存在下(◆)または存在下(■)に形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体の形成およびポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度に対する、ヌクレオチド(d6Ps)の効果の例示的な結果を示す一連のグラフである。解離曲線を図7Bに示す。実施例4.3を参照する。 [0021]Mg2+(■)、20μMのポリホスフェートヌクレオチド(△)の存在下、またはMg2+および20μMのポリホスフェートヌクレオチドの両方の非存在下(◆)において複合体が形成された場合の、ポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度の例示的な結果を示す一連のグラフである。FRETアッセイで得られた蛍光シグナルを図8Aに示す。実施例4.4を参照する。 Mg2+(■)、20μMのポリホスフェートヌクレオチド(△)の存在下、またはMg2+および20μMのポリホスフェートヌクレオチドの両方の非存在下(◆)において複合体が形成された場合の、ポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度の例示的な結果を示す一連のグラフである。解離曲線を図8Bに示す。実施例4.4を参照する。 [0022]dNTPs(■)またはd6Ps(◆)の存在下において複合体が形成された場合の、ポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度の例示的な結果を示す一連のグラフである。FRETアッセイで得られた蛍光シグナルを図9Aに示す。実施例4.5を参照する。 dNTPs(■)またはd6Ps(◆)の存在下において複合体が形成された場合の、ポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度の例示的な結果を示す一連のグラフである。解離曲線を図9Bに示す。実施例4.5を参照する。 [0023]室温におけるポリメラーゼの鋳型への静的結合を示す未変性5%TBEゲルの画像である。ポリメラーゼ濃度はヌクレオチドの非存在下で鋳型濃度に対して増大(0、1倍、4倍、および8倍)させている。4倍および8倍のポリメラーゼ濃度で、バンドシフトは多数のポリメラーゼが鋳型上の多数の位置に非特異的結合をしていることを示している。実施例5を参照する。 [0024]40℃におけるポリメラーゼの鋳型への静的結合を示す未変性5%TBEゲルの画像である。図10Aと同様に、ポリメラーゼ濃度は鋳型濃度に対して増大(0、1倍、4倍、および8倍)させているが、1.2μMのヌクレオチド(ポリホスフェート)が存在している。4倍および8倍の濃度でバンドシフトを欠くことは、40℃においてポリメラーゼが鋳型DNAの3’末端に特異的に結合していることを示している。実施例5を参照する。 [0025]40℃におけるポリメラーゼ−鋳型結合と鋳型の延長との相関を示す図である。より詳細には、図11Aは0、1倍、2倍、4倍、6倍、および8倍のポリメラーゼ濃度の鋳型への結合を示す未変性5%TBEゲルの画像である。示されるように、40℃で1.2μMのヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼの増大は鋳型結合の増大をもたらす。 図11Bは、図11Aに示す結合の後の鋳型の延長を示す未変性5%TBEゲルの画像である。ポリメラーゼ濃度を増大させた際の下のバンドから上のバンドへのバンド強度のシフトによって証明されるように、ポリメラーゼの濃度を増大させると鋳型の延長が増大する(延長は10μMのヌクレオチドの存在下で起こる)。 図11Cは鋳型の結合(図11Aから)と鋳型の延長(図11B)との相関を示すグラフである。示されるように、結合%は延長%に直接相関する(勾配=1)。実施例6を参照する。 [0026]40℃で低レベル(1.2μM)のヌクレオチドの存在下におけるポリメラーゼ−鋳型複合体の形成の後の鋳型の延長を示す一連のグラフである。図12Aは、鋳型に対するポリメラーゼの濃度を増大(0、1倍、2倍、4倍、6倍、8倍、および1倍)させた際のFRETアッセイで得られた蛍光シグナルの振幅曲線を示す図である。示されるように、結合におけるポリメラーゼ濃度の増大により、(対照と比較して増大した濃度におけるシグナル振幅の増大によって証明されるように)延長が増大する。 図12Bは、図12Aにおけるデータについての蛍光シグナルの振幅の定量(即ちフルオロフォア単独(▲)と比較したフルオロフォア−消光剤(延長反応)(■))を示す図である。 図12Cは、フルオロフォア−消光剤の蛍光振幅(延長反応)をフルオロフォア単独の蛍光振幅と比較することによって決定された、ポリメラーゼ濃度を増大させることによるポリメラーゼの延長%(◆)を示す図である。 図12Dは、ゲルに基づくアッセイ(上記参照)とプレートリーダー(FRET)アッセイとの間の鋳型延長比較を示す図である。示されるように、ゲルに基づくアッセイまたはプレートリーダーに基づくアッセイによって測定された鋳型延長%の間には良好な相関がある。図12A〜12Dは、実施例中の実施例7を参照する。 [0027]40℃におけるポリメラーゼ−鋳型結合と結合条件を変化させた場合の解離を示す一連のグラフである。図13Aは、示された結合条件についてのFRETアッセイで得られた蛍光シグナルの振幅曲線を示す図である。 図13Bは、1.2μM dNpCpp(ブロッキングヌクレオチド)/3mM Sr+2(◆)、1.2μM dNpCppのみ(■)、1.2μM ポリホスフェートヌクレオチドのみ(▲)、またはヌクレオチド/Srなし(×)についての解離曲線を示す図である。示されるように、Sr+2はポリメラーゼ−鋳型の解離に影響しない。ポリホスフェートヌクレオチド(▲)の濃度が低いと解離レベルが最小になる。実施例8を参照する。 [0028]高いヌクレオチド濃度(36μM)の存在下および非存在下における40℃でのポリメラーゼ複合体の形成および30℃での解離に対する塩濃度の影響を示すグラフである。図14Aは、ヌクレオチドの存在下(■)(最終濃度10μM)およびヌクレオチドの非存在下(対照)(◆)における75mM KGluでのFRETアッセイから得られた解離曲線を示す図である。 図14Bは、ヌクレオチドの存在下(■)(最終濃度10μM)およびヌクレオチドの非存在下(対照)(◆)における380mM KGluでのFRETアッセイから得られた解離曲線を示す図である。示されるように、時間ゼロで結合している鋳型の量は、ヌクレオチドの非存在下において約2倍良好である。したがって、両方の塩濃度で、高いヌクレオチド濃度(結合の間、10μM+)の存在により、ポリメラーゼ−鋳型の結合は減少する。実施例9を参照する。
[0029]本特許のファイルは少なくとも1つのカラー図を含んでいる。カラー図を含む本特許または本特許公開のコピーは要望により、かつ必要な手数料の支払いによって、特許庁から提供される。
[0030]本明細書において別段の定めがない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第2版、John Wiley and Sons、New York(1994)、およびHale&Marham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial、NY(1991)により、本発明で使用する用語の多くの一般的な辞書が当業者に与えられる。本明細書において説明する方法および材料と類似または等価である任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を説明する。当技術分野の定義および用語について、Sambrookら、1989年、およびAusubel FMら、1993年が実施者らに特に向くものである。方法、プロトコルおよび試薬は様々であり得るので、本発明は、記載する特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されないことを理解するべきである。
[0031]数の範囲は、範囲を定める数を含める。本明細書において約という用語は、値のプラスまたはマイナス10パーセント(10%)を意味するよう使用する。例えば「約100」は、90〜110の間の任意の数を指す。
[0032]別段に示されていない限り、核酸は5’〜3’の配向でそれぞれ左から右に書き、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの配向でそれぞれ左から右に書く。
[0033]本明細書において示している見出しは、本発明の様々な態様または実施形態を限定するものではなく、本発明は、明細書を全体として参照することによって理解され得る。したがって、直下で定義する用語は、明細書を全体として参照することによってより充分に定義される。
[0034]本明細書において参照する全ての特許および刊行物は、このような特許および刊行物で開示されている全ての配列を含めて、参照によって明示的に組み入れられる。
定義
[0035]本明細書において用語「処理能力」は、鋳型に付着したままで複数の修飾反応を行うポリメラーゼの能力を指す。「修飾反応」には、それだけに限らないが、重合、およびエキソヌクレアーゼ的切断が含まれる。いくつかの実施形態では、「処理能力」は、成長しているDNA鎖から酵素の解離に干渉することなく一連の重合ステップを行うDNAポリメラーゼの能力を指す。典型的には、DNAポリメラーゼの「処理能力」は、成長しているDNA鎖からDNAポリメラーゼの解離に先立ってポリメラーゼによって成長しているDNA鎖に組み込まれる、即ち重合されるヌクレオチドの数(例えば、20nt、300nt、0.5〜1kb、またはそれ以上)によって測定される。DNAポリメラーゼによるDNA合成の処理能力は、単一の鋳型結合事象の間にDNA鋳型から解離する前にポリメラーゼがDNAの中に組み込むことができるヌクレオチドの数として定義される。ポリメラーゼの処理能力が増大すれば、DNA合成の全体の効率が増大する。「処理能力」は、ポリメラーゼの性質、DNA鋳型の配列、および反応条件、例えば、塩濃度、温度、または特定のタンパク質の存在に依存し得る。本明細書において用いる「高い処理能力」という用語は、鋳型との会合/解離あたり20nt超(例えば、40nt超、60nt超、80nt超、100nt超、120nt超、140nt超、160nt超、180nt超、200nt超、220nt超、240nt、260nt超、280nt超、300nt超、320nt超、340nt超、360nt超、380nt超、400nt超、またはそれ以上)の処理能力を指す。ポリメラーゼの処理能力が高ければ、ポリメラーゼが鋳型から解離する前に組み込まれ得るヌクレオチドの数が増大し、したがって得られる配列(読み取り長)が長くなる。処理能力は本明細書およびWO01/92501A1(MJ Bioworks,Inc.、Improved Nucleic Acid Modifying Enzymes、2001年12月06日公開)において定義された方法に従って測定することができる。処理能力は静的処理能力および複製処理能力を包含する。
[0036]本明細書において用語「静的処理能力」は、ヌクレオチド組み込みがない場合、即ちポリヌクレオチドの合成がない場合に、ポリメラーゼと鋳型との会合の速度、kon.DNAおよびポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離の速度、koff.DNAによって決定される、ポリメラーゼ−鋳型複合体の永続性を指す。静的処理能力はポリヌクレオチド合成がない場合に定義される。
[0037]本明細書において用語「複製処理能力」は、ヌクレオチド組み込みの間、即ちポリヌクレオチドの合成がある場合に、ポリメラーゼと鋳型との会合の速度、kon.ヌクレオチドおよびポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離の速度、koff.ヌクレオチドによって決定される、ポリメラーゼ−鋳型複合体の永続性を指す。
[0038]本明細書において用いる用語「会合速度」は、所与のポリメラーゼに関して用いる場合、本明細書ではポリメラーゼが鋳型と会合する速度を指す。会合速度は、定義された反応条件の組においてポリメラーゼと核酸鋳型との会合の時定数(「kon.DNA」)と解することができる。ポリメラーゼの解離の時定数を測定するためのいくつかの例示的なアッセイを以下にさらに述べる。いくつかの実施形態では、解離の時定数は時間の逆数、例えばsec−1またはmin−1の単位で測定することができる。
[0039]用語「解離速度」は、所与のポリメラーゼに関して用いる場合、本明細書ではポリメラーゼ−鋳型複合体の鋳型からポリメラーゼが解離する速度を指す。解離速度は、定義された反応条件の組において核酸鋳型からのポリメラーゼの解離の時定数(「koff.DNA」)と解することができる。ポリメラーゼの解離の時定数を測定するためのいくつかの例示的なアッセイを以下にさらに述べる。いくつかの実施形態では、解離の時定数は時間の逆数、例えばsec−1またはmin−1の単位で測定することができる。
[0040]用語「安定性」は、ポリメラーゼ−鋳型複合体に関して用いる場合、本明細書では鋳型のポリメラーゼへの会合、およびポリメラーゼからの解離の速度によって決定される、ポリメラーゼ−鋳型複合体の永続性を指す。
[0041]本明細書において用語「読み取り長」は、ポリメラーゼが鋳型からの解離の前に鋳型依存的に核酸鎖の中に組み込むヌクレオチドの数を指す。
[0042]本明細書において用語「高い塩濃度」は、少なくとも100mM、1Mまでの塩、即ち1価の塩の濃度を指す。
[0043]本明細書において用語「耐塩性」は、例えば100mMの塩より大きい高い塩濃度を含む溶液中でポリメラーゼ活性を保つポリメラーゼ酵素に関して用いられる。
[0044]本明細書において用語「ヌクレオチドを実質的に含まない」は、少なくとも99.9%ヌクレオチドを含まない溶液を指す。
[0045]本明細書において用いる用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、鎖内で共有結合したヌクレオチドモノマーからなるポリマー分子を相互交換可能に指す。一本鎖DNA(ssデオキシリボ核酸、ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、およびRNA(リボ核酸)はポリヌクレオチドの例である。
[0046]用語「アミノ酸」は、本明細書において最も広義にはポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は一般構造HN−C(H)(R)−COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は天然由来のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はD−アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はL−アミノ酸である。「標準アミノ酸」は、天然由来のペプチドにおいて一般に見出される20種の標準的なL−アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」は、合成により調製されるものであるか天然源から得られるものであるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書において用いる「合成アミノ酸」は化学修飾アミノ酸を包含し、化学修飾アミノ酸には、それだけに限らないが塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換体が含まれる。ペプチドのカルボキシ末端および/またはアミノ末端アミノ酸を含めたアミノ酸は、それらの活性に悪影響を及ぼすことなく、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または、他の化学物質での置換によって修飾することができる。アミノ酸はジスルフィド結合に関与することができる。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸、および/またはペプチドのアミノ酸残基を指すことができる。その用語が遊離アミノ酸またはペプチドの残基のいずれを指すかは、その用語が使用される文脈から明らかになる。本明細書においては、全てのアミノ酸残基配列は、左右の配向がアミノ末端からカルボキシ末端への従来の方向である式によって示されていることに留意されたい。
[0047]本明細書において用語「ナノポアシーケンシング複合体」または「ナノポア複合体」は、例えばポリヌクレオチドまたはタンパク質等のポリマーと会合したポリメラーゼ等の酵素に連結されたナノポアを指す。ナノポアシーケンシング複合体は膜、例えば脂質二重層の中に存在し、ここでポリマー成分、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸を同定するように機能する。
[0048]本明細書において用語「ポリメラーゼ−鋳型複合体」は、ポリマー、例えばポリヌクレオチド鋳型と会合/カップリングしたポリメラーゼを指す。
[0049]本明細書において用語「複合化ポリメラーゼ」は、ポリメラーゼ−鋳型複合体においてポリヌクレオチド鋳型と会合したポリメラーゼを指す。
[0050]本明細書において用語「ヌクレオチド」は、糖部分(ペントース)、ホスフェート、および含窒素複素環塩基からなるDNAまたはRNAのモノマー単位を指す。塩基はグリコシド炭素(ペントースの1’炭素)を介して糖部分に連結され、その塩基と糖の組合せがヌクレオシドである。ヌクレオシドがペントースの3’位または5’位に結合したホスフェート基を含む場合、それはヌクレオチドと呼ばれる。作用的に連結されたヌクレオチドの配列は、本明細書において典型的には「塩基配列」または「ヌクレオチド配列」と呼ばれ、本明細書においては、左から右への配向が5’末端から3’末端への従来の方向である式によって表わされている。
[0051]本明細書において用語「ヌクレオチドアナログ」は、ヌクレオシドトリホスフェートのアナログ、例えば一般的な核酸塩基であるアデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、およびチミジンの(S)グリセロールヌクレオシドトリホスフェート(gNTPs)を指す(Horhotaら、Organic Letters、8:5345〜5347(2006))。
[0052]本明細書において用語「タグ」は、原子もしくは分子、または原子もしくは分子の集団であってよい検出可能な部分を指す。タグは光学的、電気化学的、磁気的、または静電的(例えば誘導的、容量的)特徴を提供し、その特徴はナノポアを利用して検出することができる。
[0053]本明細書において用語「タグ付きヌクレオチド」は、その末端ホスフェートにタグが付けられたヌクレオチドを指す。
[0054]本明細書において用語「ブロックされたヌクレオチド」は、プライマー延長をブロックする修飾された組み込み不能なヌクレオチドを指す。dNpCppは「ブロックされたヌクレオチド」の例である。
[0055]本明細書において用語「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する(即ち、ポリメラーゼ活性)酵素を指す。ポリメラーゼという用語は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、および逆転写酵素を包含する。「DNAポリメラーゼ」はデオキシヌクレオチドの重合を触媒する。「RNAポリメラーゼ」はリボヌクレオチドの重合を触媒する。「逆転写酵素」はRNA鋳型に相補的なデオキシヌクレオチドの重合を触媒する。本明細書において用いる用語「ポリメラーゼ」およびそのバリアントは、ヌクレオチド(そのアナログを含む)の核酸鎖への重合を触媒することができる任意の酵素を含む。必ずしもそうとは限らないが典型的には、そのようなヌクレオチドの重合は鋳型依存的な様式で起こり得る。
[0056]本明細書において用語「鋳型DNA分子」および「鋳型鎖」は相互交換可能に用いられ、例えばプライマー延長反応においてDNAポリメラーゼによって相補的な核酸鎖がそれから合成される核酸の鎖を指す。
[0057]本明細書において用語「試料ポリヌクレオチド」は、試料、例えば生物学的試料から得られたポリヌクレオチドを指す。
[0058]用語「鋳型依存的合成」は、目的の鋳型鎖に相補的な新たなDNA鎖の合成(例えばDNAポリメラーゼによるDNA合成)を含むプロセスを指す。用語「鋳型依存的合成」は、典型的には新たに合成されたポリヌクレオチドの鎖の配列が相補的な塩基対形成によって規定されるRNAまたはDNAのポリヌクレオチドの合成を指す(例えばWatson,J.D.ら、Molecular Biology of the Gene、第4版、W.A.Benjamin,Inc.、Menlo Park、Calif.(1987)を参照されたい)。
[0059]本明細書において用語「ナノポア」は、膜に形成された、または他の方法で膜に与えられたチャネルまたは通路を指す。膜は脂質二重層等の有機膜であっても、ポリマー材料で形成された膜等の合成膜であってもよい。ナノポアは、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路または電界効果トランジスター(FET)回路等の検出回路、または検出回路に連結された電極に隣接して、またはその近傍に配置してもよい。いくつかの例においては、ナノポアは、0.1nm〜約1000nmの桁の特徴的な幅または直径を有する。いくつかのナノポアはタンパク質である。OmpGおよびα−ヘモリシンはタンパク質ナノポアの例である。
[0060]用語「アルファ−ヘモリシン」、「α−ヘモリシン」、「aHL」、「αHL」、「a−HL」および「α−HL」は相互交換可能に用いられ、本明細書において自己組織化して7量体の含水膜貫通ナノポアチャネルを形成するタンパク質を指す。
[0061]本明細書において用語「OmpG」は、外膜プロテインGモノマーナノポアを指す。
[0062]本明細書において用語「ナノポアシーケンシング」は、ナノポアを利用してポリヌクレオチドの配列を決定する方法を指す。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの配列は鋳型依存的な方式によって決定される。
[0063]本明細書において用語「モノマーナノポア」は、単一のサブユニットからなるナノポアタンパク質を指す。OmpGはモノマーナノポアの例である。
[0064]本明細書において用語「オリゴマーナノポア」は、多数の同一のサブユニット、多数の異なったサブユニット、または同一のおよび異なったサブユニットの混合物からなってもよいナノポアを指す。同一のサブユニットからなるナノポアは「ホモオリゴマーナノポア」と称される。2つまたはそれ以上の異なったポリペプチドサブユニットを含むナノポアは「ヘテロオリゴマーナノポア」と称される。α−ヘモリシンはオリゴマーナノポアの例である。
[0065]本明細書において用語「野生型」は、天然由来の供給源から単離された際に、その遺伝子または遺伝子産物の特性を有する遺伝子または遺伝子産物(例えばタンパク質)を指す。
[0066]本明細書において用語「親の」または「親」は、それに対して修飾、例えば置換、挿入、欠失、および/または切り詰めを行ってそのバリアントが作成されるタンパク質、例えばナノポアまたは酵素を指す。この用語は、それに対してバリアントが比較され、整列されるポリペプチドをも指す。親は天然由来(野生型)のポリペプチドであってもよく、任意の好適な手段で調製されたそれらのバリアントであってもよい。
[0067]本明細書において用語「変異」は、それだけに限らないが、置換、挿入、(切り詰めを含む)欠失を含む、親配列に導入された変更を指す。変異の結果には、それだけに限らないが、親配列には見出されない新しい特性、特質、機能、表現型、または形質の創造が含まれる。
[0068]本明細書において用語「バリアント」は、親タンパク質と比較して改変された特徴、例えば改変された処理能力を示す修飾タンパク質、例えばバリアントPol6ポリメラーゼを指す。
[0069]本明細書において用語「精製された」は、それが含有される試料の重量に対して少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%の濃度で存在するポリペプチドを意味する。
命名法
[0070]本明細書および特許請求の範囲において、アミノ酸残基の従来の1文字コードおよび3文字コードを使用する。
[0071]参照を容易にするため、本出願のポリメラーゼバリアントは、以下の命名法を用いて記載する。元のアミノ酸:位置:置換したアミノ酸。この命名法によれば、例えば、242位におけるセリンのアラニンによる置換は、
Glu585LysまたはE585K
として示される。
[0072]複数の変異はプラス記号によって分ける。即ち、
Glu585Lys+Leu731LysまたはE585K+L731K
は、それぞれ585位および731位における、グルタミン酸をリシンに、またロイシンをリシンに置換する変異を表わす。
[0073]1つまたは複数の代替アミノ酸残基を所与の位置に挿入する場合には、これはE585K/RまたはE585KもしくはE585Rとして示される。
例示実施形態
[0074]ある例示実施形態では、本開示は高い濃度の塩の存在下における鋳型依存的ポリヌクレオチド合成の間にポリメラーゼの処理能力を亢進する方法および組成物を提供する。他の例示実施形態では、本開示は低いヌクレオチド濃度および高い温度の存在下における鋳型依存的ポリヌクレオチド合成の間にポリメラーゼの処理能力を亢進する方法および組成物を提供する。提供される方法および組成物は、DNA増幅およびシーケンシングを含む鋳型依存的DNA合成の方法に適用可能である。シーケンシング方法には、単一DNA分子のナノポアシーケンシング等の単一ポリヌクレオチド分子のシーケンシングバイシンセシスが含まれる。
[0075]図1に示すように、DNAポリメラーゼ等のポリメラーゼの処理能力は、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成および酵素によるdNTPの組み込みに直接関連する。これらのパラメーターの下で、ポリメラーゼの全体の処理能力は静的処理能力および複製処理能力に依存する。ポリメラーゼの静的処理能力および/または複製処理能力が増大すれば、ポリメラーゼの全体の処理能力が増大する。図1に示すように、静的処理能力はポリメラーゼの鋳型との会合速度(kon,DNA)および解離速度(koff,DNA)によって決定される。静的処理能力はポリヌクレオチド合成の非存在下で決定される。したがって、ポリメラーゼと鋳型の会合の速度が大きく(または速く)、および/またはポリメラーゼの鋳型からの解離の速度が小さく(または遅く)なれば、ポリメラーゼの静的処理能力が大きくなる。
[0076]複製処理能力はヌクレオチドの存在下で決定され、ヌクレオチドとポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼとの会合および解離の速度に基づく。したがって、ヌクレオチドと複合体のポリメラーゼとの会合の速度が大きく(または速く)、および/または複合体のポリメラーゼからのヌクレオチドの解離の速度が小さく(または遅く)なれば、ポリメラーゼの複製処理能力が大きくなる。複製処理能力は、ヌクレオチドおよびMg2+等の二価カチオンの存在下等の重合条件下におけるヌクレオチドのポリメラーゼ−鋳型複合体との会合速度(kon.ヌクレオチド)および解離速度(koff.ヌクレオチド)によって決定される。ポリメラーゼの静的処理能力は、ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成するポリメラーゼと鋳型との会合の増大によって、および/またはポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離の減少によって、増大させることができる。
[0077]例示的なアッセイでは、本明細書の実施例に記載したように、所与のポリメラーゼの鋳型との会合および鋳型からの解離の速度は、ポリメラーゼを蛍光標識等の標識をされたオリゴヌクレオチド(図2)と所定の条件下でインキュベートすることによって測定することができる。オリゴヌクレオチドがポリメラーゼと結合していない場合にはオリゴヌクレオチドの蛍光標識の蛍光は消光される。ポリメラーゼがオリゴヌクレオチドに結合すれば、オリゴヌクレオチド標識の消光が打ち消され、蛍光が増大する。反応混合物に未標識の競合オリゴヌクレオチドを添加することによってブロッキングが開始される。ポリメラーゼが蛍光標識されたオリゴヌクレオチドから解離するとともに、競合オリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、ポリメラーゼがさらに結合することを阻害する。反応混合物の蛍光は競合オリゴヌクレオチドの添加の後、種々の時点で測定される。観察された蛍光(RFU、即ち相対蛍光単位)は、時間(X軸)に対してグラフ化(Y軸)される。種々の条件下においてポリメラーゼの会合速度および解離速度を比較するため、それぞれの反応混合物の蛍光が種々の時点で測定される並行した別々の反応において酵素を用いることができ、その後で任意の好適な方法によってそれぞれの酵素の解離速度を計算し、比較することができる。
[0078]公開された方法には、ポリメラーゼ−鋳型複合体を安定化させるためにヌクレオチドが用いられてきたことから、ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるための鋳型のポリメラーゼへの結合がヌクレオチドの存在下に行われることが記載されている。例えば、米国特許第20150167072号には、ポリメラーゼ−鋳型複合体を安定化させるための精製プロセスにヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含ませる、ポリメラーゼ−鋳型複合体の精製のための方法が提供されている。同様に、米国特許第20150368626号には、1つまたは複数のヌクレオチドの存在下にポリメラーゼを核酸鋳型と接触させるステップを含む、核酸シーケンシングを実施するための方法が提供されている。
[0079]驚くべきことに、本出願人は高い塩濃度においてヌクレオチドが鋳型のポリメラーゼへの結合を妨げることによってポリメラーゼ−鋳型複合体の形成に影響することを確定した(実施例4)。さらに本出願人は、(極めて低い濃度以外における)ヌクレオチドの存在下で鋳型のポリメラーゼへの結合によってポリメラーゼからの鋳型の解離速度が増大することを確定した(実施例5および10)。ポリメラーゼ−鋳型複合体の静的処理能力に対するヌクレオチドの影響は、典型的にはポリメラーゼ−鋳型複合体の安定剤として含まれるCa2+等の二価カチオンによって低減されない。
[0080]ポリメラーゼ−鋳型複合体の静的処理能力に対する高レベルのヌクレオチドの不安定化効果は、高い塩濃度で起こる合成を必要とする条件、例えばナノポアシーケンシングにおけるポリヌクレオチドの鋳型依存的合成において顕著である。ナノポアシーケンシングにおいては、高い塩濃度によってイオン電流に基づくナノポア測定のシグナル/ノイズ比が増大される。しかし、高い塩濃度によってポリメラーゼ−DNA鋳型複合体は不安定化され、重合反応が低下している間にポリメラーゼターンオーバー速度が高くなり、配列ヌクレオチド付加の検出が低下し、即ち処理能力または配列読み取り長が低下する。
[0081]したがって、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼを提供するステップと、高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼをポリヌクレオチド鋳型と接触させるステップとを含む、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製する方法が提供される。ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは野生型でもよく、高い塩濃度でポリメラーゼ活性を保持しているバリアントポリメラーゼでもよい。本明細書に記載した組成物および方法で用いられるポリメラーゼの例には、本明細書の他の箇所に記載した耐塩性ポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するPol6ポリメラーゼである。
[0082]高レベルのヌクレオチドはポリメラーゼ−鋳型結合に悪影響があるものの、本出願人はまた驚くべきことに、結合の際の低レベルのヌクレオチドが高温における結合の開始とともにポリメラーゼ−鋳型結合の改善およびそれによる処理能力の改善をもたらすことを見出した。例えば、Pol6の融点はおよそ40℃であり、鋳型が結合すると融点はおよそ43℃である。ポリメラーゼを40℃で鋳型に結合させることにより、本明細書に提供する方法および組成物によってポリメラーゼの3’末端への特異的結合および結合していないか鋳型の非特異的部位に結合したポリメラーゼの変性が促進される。本出願人は、結合の改善が鋳型の延長の改善と付随していることも確定した(実施例6〜10)。
[0083]したがって、ある例示実施形態では、低レベルのヌクレオチドの存在下および高い温度においてポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するための方法が提供される。さらに、反応溶液はポリメラーゼで飽和されていてもよい。ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは野生型でもよく、低いヌクレオチド濃度および高い温度でポリメラーゼ活性を保持しているバリアントポリメラーゼでもよい。ある例示実施形態では、ポリメラーゼは耐塩性であってよい。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するPol6ポリメラーゼである。本明細書に記載した方法および組成物において有用なポリメラーゼ、ならびに本発明のその他の特色、使用、および態様について以下に述べる。
ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼ
[0084]ある例示実施形態では、本明細書に記載したポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼはDNAポリメラーゼであってよく、細菌DNAポリメラーゼ、真核DNAポリメラーゼ、古細菌DNAポリメラーゼ、ウイルスDNAポリメラーゼ、およびファージDNAポリメラーゼを含んでよい。
[0085]ある例示実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、天然産生のポリメラーゼおよびその任意のサブユニットおよび切り詰め、ミュータントポリメラーゼ、バリアントポリメラーゼ、組み換え、融合もしくは他の操作されたポリメラーゼ、化学的修飾ポリメラーゼ、合成分子、ならびに鋳型依存的ポリヌクレオチド合成を行う能力を保持した任意のアナログ、ホモログ、誘導体またはそれらの断片であってよい。任意選択でポリメラーゼは、1つまたは複数のアミノ酸の他のアミノ酸による置き換え、ポリメラーゼからの1つまたは複数のアミノ酸の挿入もしくは欠失、または2つ以上のポリメラーゼの部分の連結を含む1つまたは複数の変異を含むミュータントポリメラーゼであってよい。
[0086]いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するために用いるポリメラーゼは、高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中で鋳型依存的DNA合成を触媒することができる耐塩性ポリメラーゼである。ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させることができる高い塩濃度は、少なくとも100mMの塩、例えば100mMのグルタミン酸カリウム(K−glu)の塩濃度として定義される。
[0087]耐塩性ポリメラーゼは野生型であってもよく、もともと耐塩性のポリメラーゼのバリアントであってもよい。いくつかの実施形態では、耐塩性ポリメラーゼは、高度好塩菌に属するものを含むタイプB DNAポリメラーゼ、ならびに例えば参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014/0113291号「Salt−tolerant DNA Polymerases」に記載されたそれらのバリアントである。
[0088]他の実施形態では、耐塩性ポリメラーゼは、もともと耐塩性ではないが耐塩性になるように修飾されたポリメラーゼであってよい。
[0089]ある例示実施形態では、遅いkoff,DNA、速いkon,DNAに加えて、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは高い塩濃度でDNA重合を行うことができ、またDNAのシーケンシングにおいて有用な1つまたは複数の所望の特徴、例えば遅いkoff,ヌクレオチド、速いkon,ヌクレオチド、高い忠実度、低いエキソヌクレアーゼ活性、DNA鎖置換、kchem、増大した安定性、増大した処理能力、耐塩性、およびナノポアへの結合との適合性を有することができる。ある例示実施形態では、ポリメラーゼは4、5、6、7または8ホスフェートを有するポリホスフェート、例えばクアドラホスフェート、ペンタホスフェート、ポリホスフェート、ヘプタホスフェートまたはオクタホスフェートヌクレオチドを組み込む能力、シーケンシング精度、ならびに長い読み取り長、即ち長い連続読み取りを有する。
[0090]ある例示実施形態では、ポリメラーゼは室温を超える温度で機能するポリメラーゼ、例えば約30℃超で機能するポリメラーゼであってよい。他の例示実施形態では、ポリメラーゼは40℃またはそれ以上の温度で機能し得る。そのようなポリメラーゼには、そのような温度で機能する本明細書に記載した任意のポリメラーゼが含まれてよい。
[0091]ある例示実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、増大した処理能力を有するように操作されたポリメラーゼである。そのような例示的ポリメラーゼは、ポリヌクレオチド(例えばDNA)をシーケンシングするためのポリメラーゼの所望の特徴の1つまたは複数に影響を与えまたはそれを亢進する追加の修飾をさらに含んでもよい。
[0092]ある例示実施形態では、操作されたポリメラーゼは、それから誘導された親Pol6と比較して増大した処理能力を示すバリアントPol6ポリメラーゼであってよい。例えば、親ポリペプチドは野生型Pol6ポリペプチドである。ポリメラーゼ−鋳型複合体のバリアントPol6ポリペプチドは野生型親クロストリジウムファージphiCPV4野生型配列(配列番号1)核酸コーディング領域プラスHisタグ、配列番号1、タンパク質コーディング領域)から誘導することができ、他から入手可能である(National Center for BioinformaticsまたはGenBank Accession Numbers AFH27113)。野生型親Pol6ポリメラーゼは、増大した処理能力を有するバリアントポリメラーゼを提供するための出発点として用いられるクロストリジウムからの親Pol6のホモログであってもよい。
[0093]当業者には理解されるように、本明細書に提供する組成物および方法の範囲を無効にしない限り、クロストリジウムファージsp.株phiCPV4と高度にホモロジーを有する他のポリメラーゼを親Pol6として用いることができる。クロストリジウムファージからの親Pol6のホモログは、クロストリジウムファージからのPol6(配列番号1)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有することができる。例えば、バリアントPol6はクロストリジウムファージからの親Pol6と少なくとも70%同一であるクロストリジウムファージのホモログから誘導することができる。
[0094]他の例示実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のバリアントPol6ポリメラーゼはバリアント親Pol6から誘導することができるバリアントPol6ポリペプチドである。いくつかの例示実施形態では、バリアント親Pol6ポリメラーゼは配列番号2のPol6ポリメラーゼである。他の実施形態では、バリアント親Pol6ポリメラーゼは、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を除去/減少させる修飾を含む(例えば参照により明示的に本明細書に組み込まれる2016年2月29日出願の米国特許仮出願第62/301,475号「Exonuclease Defficient Polymerases」)。さらに他の実施形態では、ポリメラーゼは、ポリメラーゼがヌクレオチドを核酸鎖(例えば成長する核酸鎖)の中に組み込む速度を低減するように変異させることができる。いくつかの例では、ヌクレオチドが核酸鎖の中に組み込まれる速度は、例えば鋳型核酸鎖のメチル化等によって立体障害を生じるようにヌクレオチドおよび/または鋳型鎖を機能化することによって低減させることができる。いくつかの例では、速度はメチル化ヌクレオチドを組み込むことによって低減する。他の実施形態では、親ポリペプチドは、ナノポアシーケンシングにおいて用いるポリメラーゼの所望の特徴を改善するために追加の変異が導入されたPol6バリアントである。ある例示実施形態では、バリアントPol6は配列番号2の親Pol6と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有することができる。
[0095]ある例示実施形態では、DNA結合部位における1つまたは複数のアミノ酸の修飾は置換、欠失または挿入の1つまたは複数であってよく、この修飾はバリアントポリメラーゼのポリメラーゼ活性を保持し、親Pol6に対してPol−DNA複合体からのポリヌクレオチドの解離の速度が減少している。アミノ酸修飾は、配列番号2のアミノ酸残基V173、N175、N176、N177、I178、V179、Y180、S211、Y212、I214、Y338、T339、G340、G341、T343、H344、A345、D417、I418、F419、K420、I421、G422、G434、A436、Y441、G559、T560、Q662、N563、E566、E565、D568、L569、I570、M571、D572、N574、G575、L576、L577、T578、F579、T580、G581、S582、V583、T584、Y596、E587、G588、E590、F591、V667、L668、G669、Q670、L685、C687、C688、G689、L690、P691、S692、A694、L708、G709、Q717、R718、V721、I734、I737、M738、F739、D693、L731、F732、T733、T287、G288、M289、R290、T291、A292、S293、S294、I295、Y342、V436、S437、G438、Q439、E440、E585、T529M、S366A、A547F、N545L、Y225L、およびD657Rに対応する1つまたは複数のアミノ酸残基において行うことができる。
[0096]いくつかの例示実施形態では、ポリメラーゼ活性を有するバリアントPol6酵素は配列番号2の全長親Pol6の配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号2のアミノ酸残基V173、N175、N176、N177、I178、V179、Y180、S211、Y212、I214、Y338、T339、G340、G341、T343、H344、A345、D417、I418、F419、K420、I421、G422、G434、A436、Y441、G559、T560、Q662、N563、E566、E565、D568、L569、I570、M571、D572、N574、G575、L576、L577、T578、F579、T580、G581、S582、V583、T584、Y596、E587、G588、E590、F591、V667、L668、G669、Q670、L685、C687、C688、G689、L690、P691、S692、A694、L708、G709、Q717、R718、V721、I734、I737、M738、F739、D693、L731、F732、T733、T287、G288、M289、R290、T291、A292、S293、S294、I295、Y342、V436、S437、G438、Q439、E440、E585、T529M、S366A、A547F、N545L、Y225L、およびD657Rに対応するアミノ酸の1つまたは複数において修飾を有する。
[0097]いくつかの例示実施形態では、DNA結合部位の1つまたは複数のアミノ酸の変異は陽性荷電したアミノ酸への置換である。例えば、配列番号2のアミノ酸残基V173、N175、N176、N177、I178、V179、Y180、S211、Y212、I214、Y338、T339、G340、G341、T343、H344、A345、D417、I418、F419、K420、I421、G422、G434、A436、Y441、G559、T560、Q662、N563、E566、E565、D568、L569、I570、M571、D572、N574、G575、L576、L577、T578、F579、T580、G581、S582、V583、T584、Y596、E587、G588、E590、F591、V667、L668、G669、Q670、L685、C687、C688、G689、L690、P691、S692、A694、L708、G709、Q717、R718、V721、I734、I737、M738、F739、D693、L731、F732、T733、T287、G288、M289、R290、T291、A292、S293、S294、I295、Y342、V436、S437、G438、Q439、E440、およびE585に対応するアミノ酸の任意の1つまたは複数を、K、R、H、Y、F、Wおよび/またはTに変異させることができる。
[0098]いくつかの例示実施形態では、DNA結合部位の1つまたは複数のアミノ酸の変異はKへの置換である。例えば、バリアントPol6ポリメラーゼはアミノ酸置換G438K、E565K、E585K、L731K、およびM738Kの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの例示実施形態では、バリアントPol6ポリメラーゼは置換E585Kを含む。他の例示実施形態では、Pol6ポリメラーゼは置換E585K+L731Kを含む。さらに他の実施形態では、Pol6ポリメラーゼは置換E585K+M738Kを含む。他の実施形態では、DNA結合部位の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つのアミノ酸またはそれ以上が変異される。
[0099]ある例示実施形態では、DNA結合部位の1つまたは複数のアミノ酸の変異は、T529M、S366A、A547F、N545L、Y225L、またはD657Rの1つまたは複数を含む置換である。例えば、バリアントポリメラーゼには以下の置換、T529M、S366A、A547F、N545L、Y225L、およびD657Rが含まれてよい。ある例示実施形態では、バリアントポリメラーゼは配列番号14として示されるアミノ酸配列と約70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上同一のアミノ酸配列である一方、配列番号14において同定される置換の1つまたは複数を保持している(例えばそこで同定される全ての置換を保持している)。
[00100]ある例示実施形態では、得られるバリアントPol6酵素はポリメラーゼ活性を保持し、同じ変異を欠く親ポリメラーゼで示される解離の速度に対して低減したPol−DNA複合体からのポリヌクレオチドの解離の速度を示す。いくつかの例示実施形態では、親Pol6の修飾により、親Pol6の大きくとも2分の1である鋳型からの解離の速度を有するバリアントPol6ポリメラーゼが産生される。親Pol6の修飾により、親Pol6の大きくとも3分の1である、親Pol6の大きくとも4分の1である、親Pol6の大きくとも5分の1である、親Pol6の大きくとも6分の1である、親Pol6の大きくとも7分の1である、親Pol6の大きくとも8分の1である、親Pol6の大きくとも9分の1である、親Pol6の大きくとも10分の1である、鋳型からの解離の速度を有するバリアントPol6ポリメラーゼが産生され得る。
[00101]野生型親Pol6をコードするDNA配列は、当技術で周知の種々の方法を用いて、問題のPol6を産生する任意の細胞または微生物から単離される。野生型クロストリジウムphiCPV4(即ち野生型Pol6)をコードするDNA配列の例は本明細書において配列番号3のヌクレオチド28〜2220として、および配列番号5のヌクレオチド421〜2610として提供される。野生型Pol6に加えて、配列番号3はその5’末端にヒスチジンタグ(His:HHHHHH、配列番号9)をコードするヌクレオチドを含む。配列番号5はその5’末端にヒスチジンタグ(His(配列番号9))およびSpyCathcerペプチドSGDYDIPTTENLYFQGAMVDTLSGLSSEQGQSGDMTIEEDSATHIKFSKRDEDGKELAGATMELRDSSGKTISTWISDGQVKDFYLYPGKYTFVETAAPDGYEVATAITFTVNEQGQVTVNGKATKGDAHI(配列番号10)をコードするヌクレオチドを含む。ある例示実施形態では、バリアントポリメラーゼのいずれをも含む本明細書で同定したポリメラーゼのいずれも、SpyCathcerペプチド(配列番号10)に直接または間接的に連結される。
[00102]DNA配列はゲノム起源、ゲノムおよび合成の混合起源、合成およびcDNAの混合起源、またはゲノムおよびcDNAの混合起源であってよく、標準的な手法に従って合成、ゲノム、またはcDNA起源の断片(必要に応じてDNA配列全体の種々の部分に対応する断片)をライゲーションすることによって調製される。DNA配列は、例えば米国特許第4,683,202号またはR.K.Saikiら(1988)に記載されたように特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によっても調製される。
高い塩濃度におけるポリメラーゼ−鋳型複合体の形成
[00103]ある例示実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体は少なくとも100mMで1Mまでの塩、例えばKCl、K−gluまたは他の1価の塩の高い塩濃度の存在下で形成させることができる。高い塩濃度は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800mM、900mMまたはそれ以上であってよい。典型的な塩には金属元素の塩が含まれる。高い塩溶液には、カリウム塩、ナトリウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マンガン、亜鉛、およびリチウムの1つまたは複数が含まれ得る。塩には当業者には公知の金属元素の重炭酸塩、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、臭酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シアン化物、酸化物またはリン酸塩も含まれ得る。いくつかの実施形態では、塩はグルタミン酸カリウム(K−glu)、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(KSO)、硝酸カリウム(KNO)、塩化セシウム(CsCl)、または硝酸セシウム(CsNO)である。いくつかの実施形態では、高い塩溶液にはK−Glu(グルタミン酸カリウム)または他の1価の塩が含まれる。さらに、本発明において有用な塩には塩の混合物またはブレンドが含まれ得る。本発明において用いることができるミネラル塩のブレンドには、K−GluとKCl、K−GluとKSO、K−GluとKNO、K−GluとCsCl、K−GluとCsNO、K−GluとKNO、K−GluとCsCl、K−GluとCsNO、K−GluとCsCl、K−GluとCsNO、KClとKSO、KClとKNO、KClとCsCl、KClとCsNO、KSOとKNO、KSOとCsCl、KSOとCsNO、KNOとCsCl、KNOとCsNO、およびCsClとCsNOが含まれる。上記の塩はシーケンシング重合反応において50〜1Mの範囲、100〜800mMの範囲、200〜700mMの範囲、300〜600mMの範囲、400〜500mMの範囲の濃度で用いられる。いくつかの実施形態では、高い塩濃度は少なくとも150mMで500mMまでであってよい。いくつかの実施形態では、高い塩濃度は少なくとも500mM塩である。
[00104]高い塩濃度における複合ポリメラーゼ、例えばバリアントPol6ポリメラーゼの重合の速度は少なくとも1塩基/秒、少なくとも5塩基/秒、少なくとも10塩基/秒、少なくとも20塩基/秒、少なくとも30塩基/秒、少なくとも40塩基/秒、少なくとも50塩基/秒またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、複合ポリメラーゼ、例えばバリアントPol6ポリメラーゼの重合の速度は、100mM塩で少なくとも1塩基/秒、200mM塩で1塩基/秒、300mM塩で少なくとも1塩基/秒、400mM塩で少なくとも1塩基/秒、500mM塩で少なくとも1塩基/秒、600mM塩で少なくとも1塩基/秒、700mM塩で少なくとも1塩基/秒、800mM塩で少なくとも1塩基/秒、800mM塩で少なくとも1塩基/秒、900mM塩で少なくとも1塩基/秒、1M塩で少なくとも1塩基/秒である。いくつかの実施形態では、複合ポリメラーゼ、例えばバリアントPol6ポリメラーゼの重合の速度は、100mM塩で1〜10塩基/秒、200mM塩で1〜10塩基/秒、300mM塩で1〜10塩基/秒、400mM塩で1〜10塩基/秒、500mM塩で1〜10塩基/秒、600mM塩で1〜10塩基/秒、700mM塩で1〜10塩基/秒、800mM塩で1〜10塩基/秒、800mM塩で1〜10塩基/秒、900mM塩で1〜10塩基/秒、または1M塩で1〜10塩基/秒である。
[00105]いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するための高い濃度の塩を含む溶液は、ポリメラーゼ−鋳型複合体安定剤をさらに含む。ポリメラーゼ−鋳型複合体安定剤の例には、限定なしにCa2+が含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するために提供される溶液は、例えば100mM〜500mMのK−gluの高い濃度の塩を含む。ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するための溶液は、ヌクレオチドを実質的に含まない。
[00106]ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成は、当技術で公知の種々の方法に従ってアッセイすることができる。例えば、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成は実施例3に記載した方法に従って決定することができる。
[00107]したがって、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼを提供するステップと、高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼをポリヌクレオチド鋳型と接触させるステップとを含む、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製する方法が提供される。ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは野生型でもよく、高い塩濃度でポリメラーゼ活性を保持しているバリアントポリメラーゼであってもよい。本明細書に記載した組成物および方法で用いることができるポリメラーゼの例には、本明細書の別の箇所に記載した耐塩性ポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するPol6ポリメラーゼである。
高い温度および低いヌクレオチド濃度におけるポリメラーゼ−鋳型複合体の形成
[00108]ある例示実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体は高い温度および低いヌクレオチド濃度の存在下で形成させることができる。例えば、ある例示実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製する方法が提供され、本方法は、(a)ポリメラーゼを提供するステップと、(b)低い濃度のヌクレオチドを含み、高い温度である溶液中でポリメラーゼをポリヌクレオチド鋳型と接触させ、それによりポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するステップとを含む。
[00109]温度に関しては、例えばポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるための溶液の温度は室温より高く、即ち約20℃を超えてよい。例えば高い温度は約30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃またはそれ以上であってよい。ある例示実施形態では、高い温度は38℃、39℃、40℃、41℃、または42℃である。ある例示実施形態では、高い温度はポリメラーゼまたはポリメラーゼ−鋳型複合体の融点または融点付近である。
[00110]本明細書に記載したある例示実施形態では、その中でポリメラーゼ−鋳型複合体が形成される反応溶液は高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まないが、他の例示実施形態では溶液は低い濃度のヌクレオチドを含む。例えば低いヌクレオチド濃度は0.5μM〜2.5μMの範囲であってよい。他の例示実施形態では、ヌクレオチド濃度は0.8μM〜2.2μM、例えば約0.8μM、0.9μM、1.0μM、1.1μM、1.2μM、1.3μM、1.4μM、1.5μM、1.6μM、1.7μM、1.8μM、1.9μM、2.0μM、2.1μM、または2.2μMである。低い濃度のヌクレオチドに加えて、溶液は本明細書に記載したように高い温度であってよい。例として、その中でポリメラーゼ−鋳型が形成される反応溶液は約0.8μM〜2.2μMの濃度で鋳型ヌクレオチドを含んでよく、溶液の温度は約38℃〜42℃である。
[00111]ポリメラーゼの鋳型への結合を促進するため、ある例示実施形態では、ポリメラーゼは鋳型の濃度と等しいか、鋳型の濃度よりモル過剰であってよい。例えば、ポリメラーゼは鋳型の濃度の1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上であってよい。言い換えれば、ある例示実施形態では、反応溶液はポリメラーゼで飽和されていてもよい。
[00112]本明細書に記載した組成物および方法に用いられるポリメラーゼ−複合体のポリメラーゼの例には、本明細書に記載した種々のポリメラーゼが含まれる。これらには、例えば、本明細書に記載したバリアントポリメラーゼに加えて本明細書に記載した高温に適したポリメラーゼのいずれかが含まれる。実施例10〜14に記載したようなある例示実施形態では、ポリメラーゼは配列14として示される配列を含む。他の例示実施形態では、複合体のポリメラーゼは、配列番号2として示されるアミノ酸配列に少なくとも70%またはそれ以上の同一性を有する。ある例示実施形態では、ポリメラーゼまたはバリアントポリメラーゼは、SpyCatcherペプチド(配列番号10)に直接または間接的に連結されて融合ペプチドを形成することができる。例として、配列番号14として示される配列またはそれに70%またはそれ以上の同一性を有する配列は、配列10として示される配列に直接または間接的に結合される。ポリメラーゼおよびSpyCatcherペプチドは、例えば当技術で公知の任意のリンカーペプチドによって結合できる。
[00113]ポリメラーゼ複合体を形成させるため、例えばポリメラーゼ、鋳型、およびヌクレオチドは所望の温度で反応溶液中で相互に接触させる。次いで複合体を溶液中で形成させる。例えば、シーケンシングを開始する前に反応溶液を約10、15、20、25、30分またはそれ以上インキュベートすることができる。ポリメラーゼ−鋳型複合体が形成され、シーケンシングが開始されると、例えば追加のヌクレオチドを溶液に添加し、それにより溶液中のヌクレオチドの濃度を上昇させる。即ち、シーケンシングが開始すれば、本明細書に記載したいくつかの利点、例えばポリメラーゼ−鋳型複合体形成の増大および処理能力の亢進を達成するために低いヌクレオチド濃度を維持する必要はない。例えば、ヌクレオチドの濃度は約5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、または15μMに上げてよい。ある例示実施形態では、反応溶液は本明細書に記載したように高い塩濃度を含んでもよい。
[00114]塩を増加させたポリメラーゼ−鋳型複合体形成の評価と同様、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成は当技術で公知の種々の方法に従ってアッセイすることができる。例えば、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成は実施例3に記載した方法に従って(即ちFRETアッセイを用いて)決定することができる。本明細書に記載した方法および組成物を用いれば、例えばポリメラーゼ−鋳型複合体の形成は、低いヌクレオチドを欠き、かつ/または室温もしくはそれより低い温度で行った対照と比べて約10%、15%、20%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上増大され得る。
[00115]ある例示実施形態では、本明細書において鋳型−ポリメラーゼ複合体の処理能力を増大させる方法が提供され、本方法は本明細書に記載した低い濃度のヌクレオチドを含み本明細書に記載した高い温度を有する溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップを含む。溶液はポリメラーゼで飽和されていてもよい。高温溶液中および低ヌクレオチド溶液中で形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力は、対照である室温のポリメラーゼ−鋳型複合体溶液から得られる処理能力より大きい。例えば、本明細書に記載した方法および組成物を用いれば、処理能力は、低いヌクレオチドを欠き、かつ/または室温もしくはそれより低い温度で行った対照と比べて約10%、15%、20%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上増大され得る。
鋳型ポリペプチド
[00116]本明細書に提供する方法および組成物は、種々の異なった種類の、一本鎖DNAを含む核酸鋳型、発生期の鎖、および二本鎖生成物;二本鎖DNA;一本鎖RNA;二本鎖RNA;DNA−RNAハイブリッド;修飾された、欠失した、非天然の、合成の、および/または稀なヌクレオシドを含む核酸;ならびにそれらの誘導体、模倣体、および/または組合せに適用可能である。
[00117]本発明の鋳型核酸は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、一本鎖DNAヘアピン、DNA/RNAハイブリッド、重合剤の結合のための認識部位を有するRNA、ならびにRNAヘアピンを含む任意の好適なポリヌクレオチドを含んでよい。さらに、標的ポリヌクレオチドは、イントロン、規制領域、アレレ、バリアントもしくは変異等の細胞のゲノムの特定の部分;ゲノム全体;またはそれらの任意の部分であってよい。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチドはmRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、アンチセンスRNAまたはRNAiであってもよく、これらから誘導されてもよい。
[00118]本発明の鋳型核酸は、PNA、修飾オリゴヌクレオチド(例えば240−O−メチル化オリゴヌクレオチド等の、生物学的RNAまたはDNAに典型的でないヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド)、修飾ホスフェート主鎖等の非天然核酸を含んでよい。核酸は例えば一本鎖または二本鎖であってよい。
[00119]本明細書の方法において鋳型核酸を産生させるために用いる核酸(標的核酸)は、本明細書に提示する方法に修正可能な実質的に任意の種類の核酸であってよい。いくつかの例では、標的核酸それ自体が鋳型核酸として直接用いることができる断片を含む。典型的には、標的核酸は断片化され、鋳型として用いるためにさらに処理される(例えばアダプターでライゲーションされ、および/または環化される。例えば、標的核酸はDNA(例えばゲノムDNA、mtDNA、その他)、RNA(例えばmRNA、siRNA、その他)、cDNA、ペプチド核酸(PNA)、増幅核酸(例えばPCR、LCR、または全ゲノム増幅(WGA)による)、断片化および/またはライゲーションによる修飾に供する核酸、全ゲノムDNAもしくはRNA、またはそれらの誘導体(例えば化学修飾、標識化、再コード化、タンパク質結合、または他の方法で改変された)であってよい。
[00120]鋳型核酸は直鎖状、環状(環状冗長シーケンシング(CRS)のための鋳型を含む)、一本鎖もしくは二本鎖、および/または一本鎖領域を有する二本鎖(例えばステムループ構造)であってよい。鋳型核酸は環境試料(例えば海洋水、アイスコア、土壌試料、その他)、培養試料(例えば一次細胞培養または細胞株)、病原体(例えばウイルスまたは細菌)に感染した試料、組織もしくは生検試料、法医学試料、血液試料、または生命体、例えば動物、植物、細菌、真菌、ウイルスその他からの別の試料から精製または単離されてよい。そのような試料は、タンパク質、脂質、および非標的核酸等の種々の他の成分を含んでもよい。ある実施形態では、鋳型核酸は生命体からの完全なゲノム試料である。他の実施形態では、鋳型核酸は生物学的試料から抽出された全RNAまたはcDNAライブラリーである。
[00121]高い塩の濃度でポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力を増大させることに加えて、本明細書に提供される方法および組成物を用いて、次善の濃度のコファクター、次善のpHレベル、および/もしくは次善の温度から生じる、またはポリヌクレオチドの合成に必要な必須のヌクレオチド以外の化学的または生物学的阻害物質の存在を含む、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成に対する悪影響を相殺できることが考えられる。例えば、ポリメラーゼ−鋳型複合体はヌクレオチドの非存在下で、次善のpHおよび/または温度で形成させることができる。
[00122]本明細書に提供される方法に従って調製されたポリメラーゼ−鋳型複合体は、DNA増幅を含む鋳型依存的DNA合成法、および鋳型依存的DNAシーケンシングに用いることができる。
[00123]いくつかの実施形態では、(a)高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を提供するステップと、(b)ヌクレオチドを溶液に添加することによって鋳型依存的DNA合成を開始するステップとを含む、鋳型依存的DNA合成を行う方法が提供される。他の例示実施形態では、(a)低いヌクレオチド濃度を含む溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を提供するステップであって、溶液が高い温度であるステップと、(b)その後、ヌクレオチドを溶液に添加することによって鋳型依存的DNA合成を開始するステップとを含む、鋳型依存的DNA合成を実施する方法が提供される。
[00124]ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは野生型でもよく、高い塩濃度および/または高い温度でポリメラーゼ活性を保持しているバリアントポリメラーゼであってもよい。本明細書に記載した組成物および方法で用いられるポリメラーゼの例には、本明細書の他の箇所に記載した耐塩性および耐高温性ポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するPol6ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、塩の高い濃度は100mM塩より大きく、例えば100mM K−gluより大きい。
[00125]図1を参照して述べたように、ポリメラーゼの処理能力は、複合ポリメラーゼの静的処理能力を増大させること、および/または複合ポリメラーゼの複製処理能力を増大させることによって、増大させることができる。いくつかの実施形態では、高い塩濃度を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させることによって、ポリメラーゼ−鋳型複合体の静的処理能力を増大させる方法が提供される。高い塩濃度の存在およびヌクレオチドの非存在下において調製した場合、ポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力の増大は、同じ高い塩濃度でヌクレオチドの存在下に調製した場合のポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力より大きい。いくつかの実施形態では、処理能力はポリメラーゼと鋳型の会合の速度が速いこと、および/またはポリメラーゼの鋳型からの解離の速度が遅いことによって増大する。塩の高い濃度は100mM塩より大きく、例えば100mM K−gluより大きい。
[00126]いくつかの実施形態では、低濃度のヌクレオチドを含む高い温度の溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させることによってポリメラーゼ−鋳型複合体の静的処理能力を増大させる方法が提供される。さらに、溶液は本明細書に記載したようにポリメラーゼで飽和されていてもよい。そのような溶液中で調製した場合、ポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力の増大は、室温で高濃度のヌクレオチドを含む溶液中で調製した場合のポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力より大きい。
ナノポアシーケンシング複合体−ポリメラーゼのナノポアへの付着
[00127]ポリメラーゼを利用するナノポアシーケンシングは、ポリメラーゼ−鋳型複合体をナノポアに連結することによって形成されるナノポアシーケンシング複合体によって達成される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体は引き続いてナノポアに連結されてナノポアシーケンシング複合体を形成し、続いてこれが脂質二重層に挿入される。他の実施形態では、ナノポアが最初に脂質二重層に挿入され、続いてポリメラーゼ−鋳型複合体がナノポアに付着される。ナノポアシーケンシング複合体を構築する方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれる2016年1月21日出願の米国仮出願第62/281,719号「Nanopore Sequencing Complexes」に記載されている。
[00128]ナノポアを通るイオン電流の測定は、脂質膜に再構成されたナノポアを横切って行われる。いくつかの例では、ナノポアは(例えばエレクトロポレーションによって、拡散によって)膜に挿入される。ナノポアは電気刺激、圧刺激、液体流刺激、気泡刺激、超音波処理、音響、振動、またはそれらの任意の組合せ等の刺激シグナルによって挿入することができる。いくつかの例では、膜は泡を利用して形成され、ナノポアは電気刺激を利用して膜に挿入される。他の実施形態では、ナノポアはそれ自体で膜に挿入される。脂質二重層を構築し、脂質二重層中にナノポアを形成させ、核酸分子をシーケンシングする方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれるPCT特許公開WO第2011/097028号およびWO第2015/061510号に見られる。
[00129]ポリメラーゼ−鋳型複合体は、ナノポアが脂質膜中に挿入される前に、またはナノポアが脂質膜中に挿入された後に、ナノポアに付着させることができる。ある例示実施形態では、ポリメラーゼをナノポアに、例えばα−ヘモリシンのモノマーの1つまたは複数に付着させ、その後で鋳型を添加してポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させる。
[00130]ナノポアシーケンシング複合体のナノポアには、限定はないが生物学的ナノポア、固相ナノポア、およびハイブリッド生物学的−固相ナノポアが含まれる。Pol6ナノポアシーケンシング複合体の生物学的ナノポアには、E.coli,sp.、Salmonella sp.、Shigella sp.、およびPseudomonas sp.からのOmpG、ならびにS.aureus sp.からのα−ヘモリシン、M.smegmatis sp.からのMspAが含まれる。ナノポアは野生型ナノポア、バリアントナノポア、または修飾バリアントナノポアであってよい。
[00131]バリアントナノポアは、親酵素の特徴に対して変更された特徴を有するように操作されてもよい。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年10月28日出願の米国特許出願第14/924,861号「alpha−Hemolysin Variants with Altered Characteristics」を参照されたい。
[00132]他のバリアントナノポアは、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれる2016年6月30日出願の米国仮特許出願第62/357,230号「Long Lifetime Alpha−Hemolysin Nanopores」に記載されている。他の例示実施形態では、α−ヘモリシンナノポアのα−ヘモリシンは、参照により全体として本明細書に組み込まれる2016年3月31日出願の米国仮特許出願第62/316,236号「Nanopore Protein Conjugates and Uses Thereof」に記載されているように修飾されてよい。
[00133]いくつかの例示実施形態では、野生型酵素に対して特徴が改変される。いくつかの実施形態では、ナノポアシーケンシング複合体のバリアントナノポアは、それが誘導された親ナノポアのイオン電流ノイズを低減するように操作される。改変された特徴を有するバリアントナノポアの例は、狭窄部位に1つまたは複数の変異を有するOmpGナノポアであり(参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年9月22日出願の米国仮特許出願第62/222,197号「OmpG Variants」)、これは親OmpGに対してイオンノイズレベルを低減する。イオン電流ノイズの低減により、これらのOmpGナノポアバリアントをポリヌクレオチドおよびタンパク質の単一分子センシングに用いることができる。他の実施形態では、バリアントOmpGポリペプチドをさらに変異させて分子アダプターを結合させることができ、この分子アダプターはポアの中に存在している間にポアを通る分析物質、例えばヌクレオチド塩基の動きを遅くしてそれにより分析物質の同定の精度を改善する(2005年12月30日にオンラインで発表されたAstierら、J Am Chem Soc 10.1021/ja057123+)。
[00134]修飾されたバリアントナノポアは、典型的にはそのサブユニットがサブユニット間相互作用に影響するように操作されたマルチマーナノポアである(参照により全体として本明細書に組み込まれる、それぞれ2015年9月24日および2015年10月22日出願の米国仮特許出願第62/232,175号および第62/244,852号「Alpha−Hemolysin Variants」)。改変されたサブユニット相互作用を利用して、それによってモノマーがオリゴマー化して脂質二重層中でマルチマーナノポアを形成する配列および順序を特定することができる。この手法により、ナノポアを形成するサブユニットの化学量論を制御することができる。オリゴマー化の間のサブユニットの相互作用のシーケンスを決定するためにそのサブユニットを修飾することができるマルチマーナノポアの例は、aHLナノポアである。
[00135]いくつかの例示実施形態では、単一のポリメラーゼがそれぞれのナノポアに付着される。他の実施形態では、2つ以上のポリメラーゼがモノマーナノポアに、またはオリゴマーナノポアのサブユニットに付着される。
付着の手段
[00136]Pol6−DNA鋳型複合体等のポリメラーゼ−鋳型複合体は、任意の好適な方法でナノポアに付着させることができる。ポリメラーゼ−ポリマー複合体のナノポアへの付着は、SpyTag/SpyCatcherペプチドシステム(Zakeriら、PNAS109:E690〜E697(2012))、未変性化学ライゲーション(Thapaら、Molecules 19:14461〜14483(2014))、ソルターゼシステム(WuおよびGuo、J Carbohydr Chem 31:48〜66(2012));Heckら、Appl Microbiol Biotechnol 97:461〜475(2013))、トランスグルタミナーゼシステム(Dennlerら、Bioconjug Chem 25:569〜578(2014))、ホルミルグリシン連結(Rashidianら、Bioconjug Chem 24:1277〜1294(2013))、または当技術で公知の他の化学ライゲーション手法を用いて達成することができる。
[00137]ポリメラーゼ−鋳型複合体は、複合体のポリメラーゼ部分をナノポアに連結することによって、ナノポアに付着させることができる。いくつかの例では、ポリメラーゼ、例えばバリアントPol6ポリメラーゼは、Solulink(商標)化学を用いてナノポアに連結される。Solulink(商標)はHyNic(6−ヒドラジノ−ニコチン酸、芳香族ヒドラジン)と4FB(4−ホルミルベンゾエート、芳香族アルデヒド)との反応であってよい。いくつかの例では、ポリメラーゼはClick化学(例えばLifeTechnologies社から入手可能)を用いてナノポアに連結される。
[00138]いくつかの例では、亜鉛フィンガー変異をナノポア分子に導入し、次いで分子(例えばDNA中間分子)を用いてPol6ポリメラーゼをナノポア、例えばα−ヘモリシンの亜鉛フィンガー部位に連結する。
[00139]さらに、ポリメラーゼ−鋳型複合体、例えばPol6−DNA鋳型複合体は、付着部位においてナノポアに付着されるリンカー分子を用いて、ナノポア、例えばaHL、OmpGに付着させることができる。いくつかの例では、ポリメラーゼ−鋳型複合体、例えばPol6−DNA鋳型複合体は、分子ステープルを用いてナノポアに付着される。いくつかの例では、分子ステープルは3つのアミノ酸配列(リンカーA、B、Cと表わされる)を含む。リンカーAはナノポアモノマーから延長でき、リンカーBはポリメラーゼ単独からまたはポリメラーゼ−DNA複合体のポリメラーゼから延長でき、次いでリンカーCは(例えばリンカーAとリンカーB両方の周囲に巻きつくことによって)リンカーAとリンカーBを結合し、それによりポリメラーゼ−鋳型複合体、例えばPol6−DNA鋳型複合体をナノポアに連結することができる。リンカーCはリンカーAまたはリンカーBの部分になるように構成してもよく、それによりリンカー分子の数が減少する。
[00140]バリアントPol6ポリメラーゼをナノポアに付着させるために用いられる他のリンカーは、直接の遺伝子連結(例えば(GGGGS)1−3アミノ酸リンカー(配列番号19))、トランスグルタミナーゼ媒介連結(例えばRSKLG(配列番号20))、ソルターゼ媒介連結、およびシステイン修飾による化学的連結である。本明細書において有用と考えられる特定のリンカーは、(GGGGS)1−3(配列番号19)、N末端上のK−tag(RSKLG(配列番号20))、ΔTEV部位(12〜25)、ΔTEV部位+SpyCatcherのN末端(12〜49)である。
[00141]膜中でポリメラーゼ−鋳型複合体、例えばPol6−DNA鋳型複合体をナノポアに付着させる例示的な方法は、リンカー分子をナノポアに付着させるステップ、または付着部位を有するようにナノポアを変異させ、次いでポリメラーゼ−ポリヌクレオチド複合体を付着部位または付着リンカーに付着させるステップを含む。ナノポアが膜中に挿入された後でポリメラーゼ−ポリヌクレオチド複合体が付着部位または付着リンカーに付着される。いくつかの例では、ポリメラーゼ−ポリヌクレオチド複合体は、膜中に挿入されバイオチップのウェルおよび/または電極の上に配置された複数のナノポアのそれぞれに付着される。
[00142]いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、リンカーペプチドを含む融合タンパク質として発現する。ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、SpyCatcherポリペプチドを含む融合タンパク質として発現することができ、これはSpyTagペプチドを含むナノポアに共有結合することができる(Zakeriら、PNAS109:E690〜E697(2012))。
[00143]ポリメラーゼ−鋳型複合体、例えばPol6−DNA鋳型複合体は、例えばPCT/US2013/068967(WO2014/074727として公開;Genia Technologies,Inc.)、PCT/US2005/009702(WO2006/028508として公開;President and Fellows of Harvard College)、およびPCT/US2011/065640(WO2012/083249として公開;Columbia University)に記載された方法を用いてナノポアに付着されてよい。
バイオチップ
[00144]本明細書に記載されたように調製された1つまたは複数のポリメラーゼ−鋳型複合体をそれぞれ含むナノポアを、膜、例えば脂質二重層に挿入し、ナノポアに基づくセンサー、例えばバイオチップの集積回路等の検知回路の検知電極に隣接して、またはその近傍に配置してもよい。ナノポアは膜中に挿入し、バイオチップのウェルおよび/または検知電極の上に配置してもよい。複数のナノポアセンサーをアレイとして提供してもよい。バイオチップおよびバイオチップを作成する方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれるPCT/US2014/061854(WO2015/061511として公開、Genia Technologies,Inc.)に記載されている。
[00145]バイオチップは、親Pol6に対して増大した処理能力を有するポリメラーゼをそれぞれ有するナノポアを含んでよい。バリアントPol6には、本明細書に記載した修飾/置換のいずれかが含まれ得る。例えば、バリアントポリメラーゼは、配列番号2のアミノ酸残基V173、N175、N176、N177、I178、V179、Y180、S211、Y212、I214、Y338、T339、G340、G341、T343、H344、A345、D417、I418、F419、K420、I421、G422、G434、A436、Y441、G559、T560、Q662、N563、E566、E565、D568、L569、I570、M571、D572、N574、G575、L576、L577、T578、F579、T580、G581、S582、V583、T584、Y596、E587、G588、E590、F591、V667、L668、G669、Q670、L685、C687、C688、G689、L690、P691、S692、A694、L708、G709、Q717、R718、V721、I734、I737、M738、F739、D693、L731、F732、T733、T287、G288、M289、R290、T291、A292、S293、S294、I295、Y342、V436、S437、G438、Q439、E440、E585、T529M、S366A、A547F、N545L、Y225L、およびD657Rに対応する1つまたは複数のアミノ酸残基における修飾を含んでよい。
[00146]いくつかの例示実施形態では、修飾はアミノ酸K、R、H、Y、F、W、および/またはTに対する置換である。いくつかの実施形態では、置換はKに対する置換である。いくつかの実施形態では、バリアントPol6は置換E585Kを含む。他の実施形態では、バリアントPol6は2つのアミノ酸E585K+L731Kの置換を含む。さらに他の実施形態では、バリアントPol6は2つのアミノ酸E585K+L731Kの置換を含む。他の例示実施形態では、バリアントPol6はT529M、S366A、A547F、N545L、Y225L、および/もしくはD657Rまたはそれらの組合せにおいて1つまたは複数の置換を含んでよい。例えば、ポリメラーゼバリアントはT529M+S366A+A547F+N545L+Y225L+D657R置換のそれぞれを含んでよい。ある例示実施形態では、アミノ酸置換は、His6タグ(配列番号9)および配列番号4のポリメラーゼで与えられるSpyCatcherペプチドを含む親Pol6ポリメラーゼ内で行うことができる。
[00147]ある例示実施形態では、得られるバリアントPol6ポリメラーゼは、それらの親Pol6ポリメラーゼに対して増大した処理能力を有する。いくつかの実施形態では、バリアントPol6ポリメラーゼは高い塩濃度で増大した処理能力を有する。いくつかの実施形態では、増大した処理能力は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800mMまたはそれ以上の高い塩濃度で保持される。いくつかの実施形態では、処理能力の増大は、100mMより大きい高い塩濃度で示される。処理能力の増大は、親Pol6の大きくとも2分の1である鋳型解離速度の減少を含む。親Pol6の修飾により、親Pol6の大きくとも3分の1である、親Pol6の大きくとも4分の1である、親Pol6の大きくとも5分の1である、親Pol6の大きくとも6分の1である、親Pol6の大きくとも7分の1である、親Pol6の大きくとも8分の1である、親Pol6の大きくとも9分の1である、親Pol6の大きくとも10分の1である鋳型からの解離速度を有するバリアントPol6ポリメラーゼを産生することができる。いくつかの実施形態では、バリアントPol6ポリメラーゼは低いヌクレオチド濃度および高い温度で増大した処理能力を有する。ある例示実施形態では、ポリメラーゼは高い温度、例えば本明細書に記載したように室温を超える温度で増大した処理能力を有する。
[00148]膜、例えば脂質二重層の中にナノポアのアレイを含む実施形態については、シーケンシングナノポア複合体の密度は高くてよい。高密度アレイは、1mmあたり約500ナノポアシーケンシング複合体以上のPol6ナノポアシーケンシング複合体の密度を有する膜表面を有するという点で特徴付けられる。いくつかの実施形態では、表面は1mmあたり約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約2000、約3000、約4000、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、約10000、約20000、約40000、約60000、約80000、約100000、または約500000ナノポアシーケンシング複合体の離散したナノポアシーケンシング複合体の密度を有する。いくつかの実施形態では、表面は1mmあたり少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約3000、少なくとも約4000、少なくとも約5000、少なくとも約6000、少なくとも約7000、少なくとも約8000、少なくとも約9000、少なくとも約10000、少なくとも約20000、少なくとも約40000、少なくとも約60000、少なくとも約80000、少なくとも約100000、または少なくとも約500000ナノポアシーケンシング複合体の離散したナノポアシーケンシング複合体の密度を有する。
[00149]本明細書に提供するナノポアシーケンシング方法は、ヌクレオチドとの相互作用の間にポアを通過する電流を測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、核酸分子をシーケンシングするステップは、(例えば、分子がナノポアを通って移動する方向が逆転しないように)直流の印加を必要とすることがある。しかし、直流を用いて長い時間にわたってナノポアセンサーを操作することは、電極の組成を変化させ、ナノポアにわたるイオン濃度の平衡を変化させ、その他の望ましくない影響を及ぼすことがある。交流(AC)波形を適用することによって、これらの望ましくない影響を避け、以下に述べるようにある利点を得ることができる。タグ付きヌクレオチドを利用する本明細書に記載した核酸シーケンシング方法は、AC印加電圧と完全な適合性があり、したがって前記の利点を達成するために用いることができる。
[00150]膜貫通タンパク質ポアを通るイオン電流を測定するための好適な条件は当技術で公知であり、その例を本明細書の実験の部に提供する。この方法は、膜とポアにわたって印加される電圧で行われる。用いる電圧は典型的には−400mV〜+400mVである。用いる電圧は、好ましくは−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mv、−20mVおよび0mVから選択される下限ならびに+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mVおよび+400mVから独立に選択される上限を有する範囲である。用いる電圧は、より好ましくは100mV〜240mVの範囲、最も好ましくは160mV〜240mVの範囲である。印加する電位の増大を用いることによって、本発明のポアによる異なったヌクレオチドの間の差を増大させることが可能である。AC波形およびタグ付きヌクレオチドを用いる核酸のシーケンシングは、参照により全体として本明細書に組み込まれる2013年11月6日出願の米国特許公開第2014/0134616号「Nucleic Acid Sequencing Using Tags」に記載されている。US2014/0134616に記載されたタグ付きヌクレオチドに加えて、糖または非環式部分を欠くヌクレオチドアナログ、例えば4つの共通の核酸塩基、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミジンの(S)−グリセロールヌクレオシドトリホスフェート(gNTPs)を用いてシーケンシングを実施することができる(Horhotaら、Organic Letters、8:5345〜5347(2006))。
ポリヌクレオチドをシーケンシングする方法
[00151]本明細書の他の箇所に述べたように、本明細書に記載したPol6ナノポアシーケンシング複合体のバリアントPol6ポリメラーゼを用いて特徴付けされる分子は、荷電したまたは極性のポリマー分子等の荷電したまたは極性の分子を含む種々の型であってよい。特定の例には、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)分子が含まれる。DNAは一本鎖DNA(ssDNA)または二本鎖DNA(dsDNA)分子であってよい。リボ核酸は逆転写され、次いでシーケンシングされ得る。
[00152]ある例示実施形態では、本明細書に提供される方法に従って、即ち高い塩濃度およびヌクレオチドの非存在下で調製されたポリメラーゼ−鋳型複合体を用いて高い塩濃度で核酸をシーケンシングする方法が提供される。ポリメラーゼ−鋳型複合体は続いてナノポアに付着されてナノポアシーケンシング複合体を形成し、これがポリヌクレオチド配列を検出する。他の例示実施形態では、本明細書に提供される方法、例えば低いヌクレオチド濃度を用い、高い温度で、過剰のポリメラーゼの存在下でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップに従って調製されたポリメラーゼ−鋳型複合体を用いて核酸をシーケンシングする方法が提供される。ポリメラーゼ−鋳型複合体は続いてナノポアに付着されてナノポアシーケンシング複合体を形成し、これがポリヌクレオチド配列を検出する。
[00153]本明細書に提供される組成物および方法に従って調製されたポリメラーゼ−鋳型複合体を含むナノポアシーケンシング複合体は、ポリヌクレオチドのシーケンシングに酵素を利用する当技術で公知の他のナノポアシーケンシングプラットフォームを用いて高い塩濃度で核酸の配列を決定するために用いることができる。同様に、提供される組成物および方法に従って調製されたポリメラーゼ−鋳型複合体を含むナノポアシーケンシング複合体は、ポリヌクレオチドのシーケンシングに酵素を利用する当技術で公知の他のナノポアシーケンシングプラットフォームを用いて例えば高い温度で核酸の配列を決定するために用いることができる。例えば、本明細書に記載した方法に従って調製されたポリメラーゼ−鋳型複合体を含むナノポアシーケンシング複合体は、Oxford Nanopore(Oxford、UK)、Illumina(San Diego、CA)、およびStratos Genomics(Seattle、WA)のナノポアシーケンシングバイエクスパンジョンのヘリカーゼおよびエキソヌクレアーゼに基づく方法に従って核酸をシーケンシングするために用いることができる。
[00154]いくつかの例示実施形態では、核酸のシーケンシングは、本明細書に記載した方法に従って調製されたポリメラーゼ−鋳型複合体を含むナノポアシーケンシング複合体を調製するステップと、PCT/US2013/068967(参照により全体として本明細書に組み込まれる2013年11月7日出願の「Nucleic Acid Sequencing Using Tags」)に記載されているようにタグ付きヌクレオチドを用いて高い塩濃度でポリヌクレオチド配列を決定するステップとを含む。例えば、ヌクレオチド塩基がポリメラーゼと会合したポリヌクレオチドの鎖に相補的な鎖の中に組み込まれ、ヌクレオチドのタグがナノポアによって検出されるので、1つまたは複数の検知電極に隣接した、または検知近傍にある膜(例えば脂質二重層)の中に存在するナノポアシーケンシング複合体によって、高い塩濃度におけるポリメラーゼによるタグ付きヌクレオチドの組み込みを検出することができる。本明細書に示したように、ポリメラーゼ−鋳型複合体はナノポアと会合することができる。
[00155]タグ付きヌクレオチドのタグは、ナノポアによって検出できる化学基または分子を含み得る。タグ付きヌクレオチドを提供するために用いられるタグの例は、少なくともPCT/US2013/068967の段落[0414]〜[0452]に記載されている。ヌクレオチドは異なったヌクレオチドの混合物、例えばタグ付きdNTPsの混合物から組み込むことができ、ここでNはアデノシン(A)、シチジン(C)、チミジン(T)、グアノシン(G)またはウラシル(U)である。あるいは、ヌクレオチドは個別のタグ付きdNTPsの交互の溶液、即ちタグ付きdATP、タグ付きdCTP、続いてタグ付きdGTP等から組み込むことができる。ポリヌクレオチド配列の決定は、タグがナノポアを通して流れもしくはそれに隣接している際に、タグがナノポア中に存在する際に、および/またはタグがナノポアに提示される際に、ナノポアがタグを検出することによって起こり得る。それぞれのタグ付きヌクレオチドのタグは、これだけに限らないがヌクレオチドのホスフェート(例えばγホスフェート)、糖または含窒素塩基部分を含む任意の位置でヌクレオチド塩基に連結することができる。いくつかの場合には、ヌクレオチドタグの組み込みの間にタグがポリメラーゼと会合している際に、タグが検出される。タグは、ヌクレオチドの組み込みおよび引き続くタグの開裂および/または放出の後でナノポアを通してタグが移動するまで、検出を続けることができる。いくつかの場合には、ヌクレオチド組み込み事象によってタグ付きヌクレオチドからタグが放出され、タグはナノポアを通過して検出される。タグはポリメラーゼによって放出され、またはこれだけに限らないがポリメラーゼの付近に位置する酵素による開裂を含む任意の適当な方式で開裂され/放出され得る。それぞれの型のヌクレオチド(即ちアデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシル)から固有のタグが放出されるので、組み込まれた塩基(即ちA、C、G、TまたはU)をこのようにして同定することができる。いくつかの状況では、ヌクレオチド組み込み事象によってタグは放出されない。そのような場合には、組み込まれたヌクレオチドに連結されたタグはナノポアを利用して検出される。いくつかの例では、タグはナノポアを通って、またはその近傍を移動することができ、ナノポアを利用して検出することができる。
[00156]したがって、一態様では、ナノポアシーケンシング複合体を利用して高い塩濃度で試料、例えば生物学的試料からのポリヌクレオチドをシーケンシングする方法が提供される。試料のポリヌクレオチドは高い塩濃度を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼと合わされて、ナノポアシーケンシング複合体のポリメラーゼ−鋳型複合体部分が提供される。一実施形態では、試料のポリヌクレオチドは試料のssDNA鎖であり、これがDNAポリメラーゼと合わされてポリメラーゼ−DNA複合体、例えばPol6−DNA複合体が提供される。
[00157]いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド試料のナノポアシーケンシングは、例えば100mMを超える高い塩濃度を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体、例えばPol6−鋳型またはバリアントPol6−鋳型複合体を提供し、ポリメラーゼ−鋳型複合体をナノポアに付着させてナノポア−シーケンシング複合体を形成させ、ヌクレオチドを提供して鋳型依存的鎖合成を開始させることによって実施される。シーケンシング複合体のナノポア部分は、本明細書の他の箇所に記載したように、検知電極に隣接した、またはその近傍にある膜の中に存在する。得られるナノポアシーケンシング複合体は、本明細書の他の箇所に記載したように、試料DNAのヌクレオチド塩基の配列を高い塩濃度で決定することができる。他の実施形態では、ナノポアシーケンシング複合体は二本鎖DNAの配列を決定する。他の実施形態では、ナノポアシーケンシング複合体は一本鎖DNAの配列を決定する。さらに他の実施形態では、ナノポアシーケンシング複合体は逆転写産生物をシーケンシングすることによって、RNAの配列を決定する。
[00158]いくつかの実施形態では、高い塩濃度におけるナノポアシーケンシングの方法が提供される。この方法は、(a)例えば少なくとも100mMの高い濃度の塩を含みヌクレオチドを含まない溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を提供するステップと、(b)ポリメラーゼ−鋳型複合体をナノポアと組み合わせてナノポア−シーケンシング複合体を形成させるステップと、(c)タグ付きヌクレオチドをナノポアシーケンシング複合体に提供して少なくとも100mM塩の高い塩濃度で鋳型依存的ナノポアシーケンシングを開始するステップと、(d)ナノポアを利用して、ヌクレオチドのそれぞれの組み込みの間にタグ付きヌクレオチドのそれぞれと会合したタグを検出し、鋳型の配列を決定するステップとを含む。ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは野生型でもよく、高い塩濃度でポリメラーゼ活性を保持しているバリアントポリメラーゼでもよい。本明細書に記載した組成物および方法で用いられるポリメラーゼの例には、本明細書の他の箇所に記載した耐塩性ポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するPol6ポリメラーゼである。
[00159]いくつかの実施形態では、核酸試料をナノポアシーケンシングする方法が提供される。この方法は、本明細書に提供されるバリアントPol6ポリメラーゼを含むナノポアシーケンシング複合体を用いるステップを含む。一実施形態では、この方法は、タグ付きヌクレオチドをPol6ナノポアシーケンシング複合体に提供し、高塩条件下で重合反応を実施して鋳型依存的の様式でヌクレオチドを組み込むステップと、組み込まれたヌクレオチドのそれぞれのタグを検出して鋳型DNAの配列を決定するステップとを含む。
[00160]一実施形態では、タグ付きヌクレオチドが本明細書に提供されるバリアントPol6ポリメラーゼを含むPol6ナノポアシーケンシング複合体に提供され、高塩の条件下で前記ナノポアシーケンシング複合体のバリアントPol6酵素を利用して重合反応を実施して、核酸試料からの一本鎖核酸分子に相補的な成長する鎖の中にタグ付きヌクレオチドを組み込み、ナノポアを利用して個別のタグ付きヌクレオチドの組み込みの間に前記個別のタグ付きヌクレオチドと会合したタグを検出し、タグはヌクレオチドがバリアントPol6ポリメラーゼと会合している間に前記ナノポアを利用して検出される。
[00161]一態様では、高い温度および低いヌクレオチド濃度でナノポアシーケンシング複合体を利用して試料、例えば生物学的試料からのポリヌクレオチドをシーケンシングする方法が提供される。例えば、試料ポリヌクレオチドは、高い温度および低いヌクレオチド濃度を有する溶液中でポリメラーゼと合わされる。一実施形態では、試料ポリヌクレオチドは試料ssDNA鎖であり、これはDNAポリメラーゼと合わされてポリメラーゼ−DNA複合体、例えばPol6−DNA複合体が提供される。温度は本明細書に記載したように約40℃等、室温を超えてよい。ヌクレオチド濃度は本明細書に記載したように例えば約1.2μMでよい。さらに、溶液は高濃度のポリメラーゼを含んでよく、ポリメラーゼで飽和されていてもよい。ポリメラーゼは本明細書に記載したようにバリアントポリメラーゼであってよい。
[00162]ある例示態様では、ポリヌクレオチド鋳型のナノポアに基づくシーケンシングの方法が提供される。この方法は、低濃度のヌクレオチドを含む溶液中で本明細書に記載したようにポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップであって、溶液が室温を超える等の高い温度を有するステップを含む。例えば、温度は本明細書に記載したように約40℃であってよい。この方法は、形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体をナノポアと組み組み合わせてナノポア−シーケンシング複合体を形成させるステップを含む。次いでタグ付きヌクレオチドがナノポア−シーケンシング複合体に提供され、鋳型の鋳型依存的ナノポアシーケンシングが高い温度で開始され得る。ナノポアを利用して、タグ付きヌクレオチドのそれぞれがポリメラーゼと会合しつつタグ付きヌクレオチドのそれぞれが組み込まれている間に、タグ付きヌクレオチドのそれぞれと会合したタグが検出され、それによりポリヌクレオチド鋳型の配列が決定される。ある例では、ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップは、溶液をポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼで飽和させるステップを含む。ヌクレオチド濃度は0.8μM〜2.2μM、例えば約1.2μMであってよい。温度は例えば約35℃〜45℃、例えば約40℃であってよい。
[00163]ポリヌクレオチドをシーケンシングするための本発明のナノポアシーケンシング複合体とともにタグ付きヌクレオチドの使用を含むシーケンシング方法の他の実施形態は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2014/074727に提供されている。
[00164]AC波形およびタグ付きヌクレオチドを用いる核酸のシーケンシングは、参照により全体として本明細書に組み込まれる2013年11月6日出願の米国特許公開第2014/0134616号「Nucleic Acid Sequencing Using Tags」に記載されている。US2014/0134616に記載されたタグ付きヌクレオチドに加えて、糖または非環式部分を欠くヌクレオチドアナログ、例えば5つの共通の核酸塩基、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、およびチミジンの(S)−グリセロールヌクレオシドトリホスフェート(gNTPs)を用いてシーケンシングを実施することができる(Horhotaら、Organic Letters、8:5345〜5347(2006))。
試薬、保存溶液、およびキット
[00165]DNAシーケンシングまたは増幅、例えばナノポアシーケンシングのためのシーケンシング試薬も提供され、試薬は高い濃度の塩を含みヌクレオチドを実質的に含まない溶液中にポリメラーゼ−鋳型複合体を含む。ある例示実施形態では、試薬は低レベルのヌクレオチドを含む溶液中にポリメラーゼおよび鋳型を含み、本明細書に記載したように溶液を高い温度に加温してポリメラーゼ−鋳型複合体の形成を開始および/または亢進することができる。そのような実施形態では、溶液はポリメラーゼで飽和されていてもよい。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、野生型または高い塩濃度でポリメラーゼ活性を保持しているバリアントポリメラーゼ、例えば配列番号1、2、4、6、7、8および14のいずれかのPol6であるポリメラーゼを含む。本明細書に記載した組成物および方法で用いられるポリメラーゼの例には、本明細書の他の箇所に記載した耐塩性および/または耐高温性ポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するPol6ポリメラーゼである。
[00166]いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ−鋳型複合体のポリメラーゼは、配列番号2の全長親ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を有するPol6ポリメラーゼであり、配列番号2のアミノ酸V173、N175、N176、N177、I178、V179、Y180、S211、Y212、I214、Y338、T339、G340、G341、T343、H344、A345、D417、I418、F419、K420、I421、G422、G434、A436、Y441、G559、T560、Q662、N563、E565、E566、D568、L569、I570、M571、D572、N574、G575、L576、L577、T578、F579、T580、G581、S582、V583、T584、Y596、E587、G588、E590、F591、V667、L668、G669、Q670、L685、C687、C688、G689、L690、P691、S692、A694、L708、G709、Q717、R718、V721、I734、I737、M738、F739、D693、L731、F732、T733、T287、G288、M289、R290、T291、A292、S293、S294、I295、Y342、V436、S437、G438、Q439、E440、およびE585、T529M、S366A、A547F、N545L、Y225L、およびD657Rに対応するアミノ酸残基の1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換はK、R、Y、F、W、および/またはTに対するものである。いくつかの実施形態では、シーケンシング試薬は配列番号6、配列番号7、配列番号8および/または配列番号14のバリアントPol6ポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、シーケンシング試薬は本明細書に提供するバリアント耐塩性または耐熱性Pol6ポリメラーゼの任意の1つをコードするポリヌクレオチドを含む。
[00167]別の例示実施形態では、保存溶液が提供される。保存溶液は高い濃度の塩を含む溶液中にポリメラーゼ−鋳型複合体を含む。いくつかの実施形態では、塩の高い濃度は100mM塩より大きく、例えば100mM K−gluより大きい。別の例示実施形態では、保存溶液は低レベルのヌクレオチドを含む溶液中にポリメラーゼおよび鋳型を含み、本明細書に記載したように該溶液を高温に加温してポリメラーゼ−鋳型複合体の形成を開始および/または亢進することができる。保存溶液は、例えばポリメラーゼで飽和されていてもよい。
[00168]別の態様では、DNAシーケンシングのためのシーケンシング試薬を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは高い濃度の塩を含みヌクレオチドを含まない溶液中にポリメラーゼ−鋳型複合体を含む。いくつかの実施形態では、キットは緩衝液および/またはヌクレオチドをさらに含む。ある例示実施形態では、キットは低レベルのヌクレオチドを含む溶液中にポリメラーゼおよび鋳型を含み、本明細書に記載したように溶液を高い温度に加温してポリメラーゼ−鋳型複合体の形成を開始および/または亢進することができる。そのような実施形態では、溶液はポリメラーゼで飽和されていてもよい。キットの溶液は緩衝液を含んでもよい。キットのポリメラーゼは、例えば野生型ポリメラーゼまたは本明細書に記載したバリアントポリメラーゼのいずれかのようなバリアントポリメラーゼであってよい。
[00169]以下の実験開示において、以下の略語が適用される。eq(当量)、M(モル)、μM(マイクロモル)、N(規定)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、μmol(マイクロモル)、nmol(ナノモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、kg(キログラム)、μg(マイクログラム)、L(リットル)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、cm(センチメーター)、mm(ミリメーター)、μm(マイクロメーター)、nm(ナノメーター)、℃(摂氏度)、h(時間)、min(分)、sec(秒)、msec(ミリ秒)。
実施例1:定方向変異誘発
Pol6 ミュータント
[00170]WT−Pol6(配列番号2)をコードする配列番号3のDNAを、市販の供給源(DNA 2.0、Menlo Park、California)から購入した。シーケンシングによって配列を確認した。
[00171]部位特異的変異誘発を行って、親バリアントPol6−44−X1(配列番号4)の想定されるヌクレオチド/DNA結合部位の1つまたは複数のアミノ酸を変異させた。Pol6−44−X1は以下の置換:S366A T529M A547F D44A(配列番号4)を含むように野生型Pol6から誘導した。Pol6−67−X2は以下の変異:S366A T529M A547F N545L Y225L D657R Y242Aを含むように野生型Pol6から誘導した(配列番号14を参照されたい)。
[00172]44−X1のようなPol6バリアントは、N末端Hisタグ(配列番号4における下線を施した配列を参照されたい)およびSpyCatcherドメイン(配列番号4の太字イタリック配列)を有する融合タンパク質として発現させた。
変異誘発のプロトコル
[00173]NEB塩基チェンジャープロトコルを用いてそれぞれの変異誘発反応のためのプライマーを設計し、96ウェルプレートフォーマットでIDTに発注した。
[00174]NEBから購入したT4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)を用いて高スループット(HTP)のフォーマットで、フォワードおよびリバースプライマーを5’ホスホリル化した。典型的な25μlの反応は、15μlの10μMプライマー、5μlの5倍反応緩衝液(NEBより)、1.25μlのPNK酵素、3.75μlの水を含んでいた。反応は37℃で30分行い、酵素は65℃、20分で熱失活させた。
[00175]NEB製のQ5 DNAポリメラーゼを用いてPCR変異誘発を行った。典型的な25μlの反応は、5μlのQ5緩衝液、5μlのGCエンハンサー、0.5μlの10mM dNTPs、1.25μlの10μMホスホリル化変異誘発フォワードおよびリバースプライマー、0.25μlのQ5ポリメラーゼおよび1μlの5ng/ml野生型Pol6鋳型、即ちHis−Pol6、ならびに10.75μlの水を含んでいた。
[00176]PCRが完了すれば、25μlのPCR混合物に0.5μlのDpn1を加え、37℃で1時間インキュベートした。次いで、Dpn1で処理したPCR産生物2.5μlに2.5μlのBlunt/TAリガーゼマスターミックスを加え、反応混合物を室温で1時間インキュベートした。その後、20μlの96ウェルBL21DE3細胞(EMD Millipore)に1μlのライゲーション混合物を加え、氷上で5分インキュベートした。
[00177]PCRサーモサイクラーを用いて42℃で正確に30秒、細胞に熱ショックを与え、氷上に2分放置した。その後、細胞に80μlのSOCを加えて、次いで振盪せずに37℃で1時間インキュベートした。細胞に100μlのアリコットのSOCまたは超純水を加え、次いで50〜100μg/mlのカナマイシンを含む48ウェルLB−寒天プレート上に播種した。細胞を37℃で一夜増殖させた。
実施例2:発現および精製
[00178]親ポリメラーゼPol6−44−X1(配列番号4)およびPol6−67−X2(配列番号14)のバリアントを、以下に示すように高スループット法を用いて発現させ、精製した。
[00179]発現プラスミドpD441ベクター中のバリアントをコードするDNAをコンピテント大腸菌(E.coli)に形質転換し、形質転換した細胞のグリセロールストックを作成した。グリセロールストックの微小な採取物から出発し、0.2%のグルコースおよび100μg/mlのカナマイシンを含むLB中でおよそ8時間、1mlの開始培養物を増殖させる。25μlの対数期開始培養物を、96ディープウェルプレートの発現培地(0.2%のグルコース、50mMのリン酸カリウム、5mMのMgCl、および100μg/mlのカナマイシンを添加したTerrific Broth(TB)自己誘導培地)1mlの中に移す。プレートを、250〜300rpmで振盪しながら28℃で36〜40時間インキュベートした。
[00180]次いで細胞を4℃で30分間、3200×gにて遠心分離して収集した。デカントして培地を除き、細胞ペレットを200μlの予め冷却した細胞溶解緩衝液(20mMのリン酸カリウム(pH7.5)、100mMのNaCl、0.5%のTween20、5mMのTCEP、10mMのイミダゾール、1mMのPMSF、1倍のBug Buster、100μg/mlのリゾチーム、およびプロテアーゼ阻害剤)中で再懸濁させ、穏やかに撹拌しながら室温で20分インキュベートした。次いで10倍ストックから20μlを最終濃度100μg/mlのDNase、5mMのMgCl、100μg/mlのRNase Iに加え、氷上で5〜10分インキュベートして溶解液を生成させた。溶解液に200μlの1Mリン酸カリウム(pH7.5)(最終濃度は400μlの溶解液中、約0.5Mのリン酸カリウムとなる)を添加し、4℃で10分間、およそ1500rpmで遠心分離することによりPallフィルタープレート(部品番号5053、3ミクロンフィルター)でろ過した。次いで澄明な溶解液を平衡化した96ウェルHis−Purコバルトプレート(Pierce部品番号90095)に添加し、15〜30分間結合させた。
[00181]流出液(FT)を、500×Gで3分間遠心分離することによって収集した。次いでFTを400μlの洗浄バッファー1(0.5Mのリン酸カリウム(pH7.5)、1MのNaCl、5mMのTCEP、20mMのイミダゾール、および0.5%のTween20)で3回洗浄した。次いでFTを400μlの洗浄バッファー2(50mMのトリス(pH7.4)、200mMのKCl、5mMのTCEP、0.5%のTween20、20mMのイミダゾール)で2回洗浄した。
[00182]Pol6を200μlの溶出緩衝液(50mMのトリス(pH7.4)、200mMのKCl、5mMのTCEP、0.5%のTween20、300mMのイミダゾール、25%のグリセロール)を用いて溶出させ、1〜2分のインキュベーション後に収集した。溶離液を2〜3回、同じHis−Purプレートに再び添加して、溶離液中に濃縮したPol6を得る。精製したポリメラーゼは、SDS−PAGEで評価した場合に95%超の純度である。タンパク質濃度は、Nanodropによって評価した場合に約3μM(0.35mg/ml)であり、260/280比は0.6である。
実施例3:鋳型会合実験
[00183]ポリメラーゼ−鋳型複合体の会合を、ShortCy5Template(/5Cy5/AGA GTG ATA GTA TGA TTA TGT AGA TGT AGG ATT TGA TAT GTG AGT AGC CGA ATG AAA CCT T/iSpC3/TT GGT TTC ATT CGG)(配列番号12および21)およびShortBHQ2Primer(TTT TCA TAA TCA TAC TAT CAC TCT /BHQ2/−3)(配列番号13)を用いてアッセイした。
[00184]ポリメラーゼ−鋳型複合体の会合は、以下の条件でアッセイした。(A)2倍のPol6−44X1ポリメラーゼ(配列番号4)をMg2+のみの存在下で、50nMのShortCy5Template(配列番号12および21)とともに32、55、および85分、プレインキュベートし、その時間にポリホスフェートヌクレオチドを加えることによってポリヌクレオチド合成を開始した。(B)2倍のPol6−44X1ポリメラーゼ(配列番号4)をポリホスフェートヌクレオチドのみの存在下で、50nMのShortCy5Template(配列番号12および21)とともに32、55、および85分、プレインキュベートし、その時間にMgClを加えることによってポリヌクレオチド合成を開始した。(C)2倍のPol6−44X1ポリメラーゼ(配列番号4)をMgClおよびポリホスフェートヌクレオチド単独の非存在下で、50nMのShortCy5Template(配列番号12および21)とともに32、55、および85分、プレインキュベートし、その時間にMgClおよびポリホスフェートヌクレオチドを加えることによってポリヌクレオチド合成を開始した。
[00185]K−gluの濃度を75mM K−glu、150mM K−glu、および300mM K−gluと増加させた3つのアッセイ条件のそれぞれについて、ポリメラーゼ−鋳型複合体形成のレベルを測定した。
[00186]648nm(590〜50)nmにおける励起および668nm(675〜50)における発光を用いて、反応を開始した後のそれぞれの場合における蛍光を測定し、1分間、0.1秒ごとに測定した。
[00187]結果を図3(A〜C)および対応する図4A〜Cに示す。より詳細には、図3は上に述べたアッセイ条件のそれぞれについて32分、55分および85分で得られた蛍光シグナルを示す。シグナルの振幅(RFUで表わす)は、DNA−Pol6複合体のレベルを表わす。シグナルの振幅についての数値を計算し、対応する図4(A〜C)に表わした。ここで図4A、4B、および4Cは、それぞれアッセイ条件A、B、およびCで得られた蛍光シグナルの振幅を示す。菱形(◆)は75mM K−gluで測定されたシグナル振幅を表わし、(■)は150mM K−gluで測定されたシグナル振幅を表わし、三角(△)は300mM K−gluで測定されたシグナル振幅を表わす。
[00188]図3および図4に示すデータは、75mMおよび150mMのK−gluで形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体のレベルはインキュベーション条件に依存せず、即ちMg2+のみの存在下またはヌクレオチドと合わせた場合のDNAのPol6とのプレインキュベーションはPol6への鋳型結合には影響しなかったということを示している。しかし、300mM K−gluという高い塩濃度では、複合体がヌクレオチドのみの存在下で形成された場合にDNAのPol6への結合が減少した。500mM K−gluの塩濃度においても同じ影響が見られた(データは示していない)。
[00189]これらのデータは、高い塩濃度においてはヌクレオチドがDNA鋳型のポリメラーゼへの結合を妨げ、それによりポリメラーゼ−鋳型複合体のレベルを低減させていることを示している。
実施例4:鋳型解離実験
[00190]この例(4.1〜4.5)は、鋳型−ポリメラーゼ複合体からの鋳型の解離に対するヌクレオチドの影響を示す。
[00191]高い塩濃度、例えば500mM K−gluにおけるポリメラーゼ−鋳型複合体からの鋳型の解離の速度(koff)に対する二価金属イオン、即ちMg2+、および/またはヌクレオチドの影響を、以下のようにして決定した。75mM K−gluの存在下にポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させた。時間=0で塩の濃度を500mMに上昇させ、引き続く複合体の解離を、実施例3に記載したFRETアッセイに従う以下の5つのアッセイ条件下でポリヌクレオチド合成を開始することによって、15、30、45、60、75、90、120、150、180、210、および240分で決定した。
4.1.ブロックされたヌクレオチドはポリメラーゼ−鋳型複合体の形成を阻害する
[00192]2倍濃度のPol6−44X1(配列番号4)を、75mM K−gluの塩濃度で、5mMのMgClの存在下(A(i))または5mMのMgCl+0.1μMのdnpCpp(ブロックされたヌクレオチド)の存在下(A(ii))で、ShortCy5Template(配列番号12および21)とともにプレインキュベートして、鋳型−DNA複合体を形成させた。時間=0で塩を加えて最終濃度を500mM KGluとした。種々の時間間隔でポリホスフェートを加えた後に、鋳型−DNA複合体からの鋳型の解離を決定した。
[00193]図5Aに、A(i)およびA(ii)で与えられた条件下に検出されたポリメラーゼ−鋳型複合体のレベルに対応する蛍光シグナルを示す。
[00194]図5Bに、Mg2+の存在下(◆)、または5mMのMg2++0.1μMのdnpCppの存在下(■)で複合体を形成させた場合のポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離のプロットを示す。5A(i)および(ii)に示す蛍光シグナルの計算された振幅を、時間の関数としてRFUでプロットしている。
[00195]データは、ブロックされたヌクレオチドが鋳型のポリメラーゼへの結合を阻害することを示している。
4.2.ヌクレオチドの存在下のポリメラーゼ−鋳型複合体の形成により、ポリメラーゼからの鋳型の解離の速度が時間とともに増大する
[00196]2倍濃度のPol6−44X1(配列番号4)を、ShortCy5Template(配列番号12および21)とともにプレインキュベートした。5mMのMgClの存在下に結合を進行させ、続いて20μMのポリホスフェートヌクレオチド(図6A(i))を加えて反応を開始させた。または50μMのポリホスフェートヌクレオチドの存在下に結合が起こり、続いてMg2+(図6A(ii))を加えて反応を開始させた(両方の例においてポリホスフェートの最終濃度は20μMであることに注意されたい)。時間=0分で塩を加えて最終濃度を500mM KGluとした。種々の時間間隔でポリホスフェート(6A(i))またはMgCl(6A(ii))を加えた後に、鋳型−DNA複合体からの鋳型の解離を決定した。
[00197]データを図6A(i)および(ii)、ならびに図6Bに示す。より詳細には、図6Aは6A(i)および6A(ii)で与えられた条件下に検出されたポリメラーゼ−鋳型複合体のレベルに対応する蛍光シグナルを示す。図6Bは、Mg2+のみの存在下(◆)、またはポリホスフェートヌクレオチドの存在下(■)で複合体を形成させた場合のポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離のプロットを示す。6A(i)および(ii)に示す蛍光シグナルの計算された振幅は、時間の関数としてプロットしている。
[00198]これらのデータは、50μMのポリホスフェートの存在下にポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させることにより、ポリメラーゼ−鋳型複合体がMg2+の存在下およびポリホスフェートの非存在下に形成された場合よりも大きな鋳型からのポリメラーゼの解離の速度がもたらされることを示している。
4.3.Ca 2+ はポリメラーゼ−鋳型複合体のヌクレオチド依存的不安定化、即ち解離を改善しない
[00199]2倍濃度のPol6−44X1(配列番号4)を、ShortCy5Template(配列番号12および21)とともにプレインキュベートした。50μMのポリホスフェートの存在下に結合を進行させ、続いて5mMのMgCl(図7A(i))を加えて反応を開始させた。または50μMのポリホスフェート+0.5mMのCa2+の存在下に結合が起こり、続いて5mMのMg2+(図7A(ii))を加えて反応を開始させた。時間=0分で塩を加えて最終濃度を500mM KGluとした。種々の時間間隔でMgCl(7A)を加えた後に、鋳型−DNA複合体からの鋳型の解離を決定した。
[00200]データを図7A(i)および(ii)、ならびに図7Bに示す。より詳細には、図7Aは7A(i)および7A(ii)で与えられた条件下に検出されたポリメラーゼ−鋳型複合体のレベルに対応する蛍光シグナルを示す。図7Bは、ポリホスフェートの存在下(◆)、またはポリホスフェート+Ca2+の存在下(■)で複合体を形成させた場合のポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離のプロットを示す。7A(i)および(ii)に示す蛍光シグナルの計算された振幅は、時間の関数としてプロットしている。
[00201]図7Bに示すように、Ca2+の効果は複合体の解離に影響しない。図7Bはまた、ヌクレオチドの存在下の鋳型結合の後の複合体の解離の速い速度は、Ca2+の非存在下または存在下のいずれで起こっても同様であることを示している。
4.4.Mg 2+ はポリヌクレオチド合成の間のポリメラーゼ−鋳型複合体のヌクレオチド依存的不安定化、即ち解離を改善しない
[00202]2倍のPol6−44X1ポリメラーゼ(配列番号4)を、ShortCy5Template(配列番号12および21)とともにプレインキュベートした。Mg2+およびポリホスフェートの非存在下に結合を進行させ、続いてMg2+およびポリホスフェートを加えて反応を開始させた(図8A(i))。Mg2+の存在下に続いてポリホスフェートを加えて反応を開始させた(図8A(ii))。またはポリホスフェートの存在下に続いてMg2+を加えた(図8A(iii))。時間=0分で塩を加えて最終濃度を500mM KGluとした。種々の時間間隔でMg2+およびポリホスフェート、ポリホスフェートのみ、またはMg2+のみを加えた後に、鋳型−ポリメラーゼ複合体からの鋳型の解離を決定した。
[00203]データを図8A(i)、8A(ii)、8A(iii)、および図8Bに示す。より詳細には、図8A(i)〜(iii)は、それぞれ8.4A(i)、8.4A(ii)および8.4A(iii)で与えられた条件下に検出されたポリメラーゼ−鋳型複合体のレベルに対応する蛍光シグナルを示す。図8Bは、ポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離のプロットを示す。8A(i)、(ii)、および(iii)に示す蛍光シグナルの計算された振幅は、時間の関数としてプロットしている。図8A(i)および(ii)のデータは、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成は、Mg2+の存在下(ii)、またはMg2+とヌクレオチドの両方の非存在下で起こっても同様であることを示している。図8A(iii)に示すデータは、ヌクレオチドが鋳型の結合を阻害していることを示している。図8Bは、Mg2+の存在下(■)、またはMg2+およびヌクレオチドの非存在下(◆)で形成された場合、複合体の解離の速度は同様であることを示している。図8B(△)はまた、ポリホスフェートの存在下における複合体の形成によって複合体の解離の速度が増大すること、即ちヌクレオチドは時間とともにポリメラーゼ−鋳型複合体を不安定化することを示している。
4.5.ヌクレオチドトリホスフェートはポリホスフェートと比較して鋳型−ポリメラーゼの解離の速度を増大させる
[00204]2倍濃度のPol6−44X1ポリメラーゼ(配列番号4)を、DNA鋳型、即ちShortCy5Template(配列番号12および21)とともにプレインキュベートした。ポリホスフェートの存在下に結合を進行させ、続いてMg2+を加えて反応を開始させた(図9A(i))。またはトリホスフェートヌクレオチドの存在下に続いてMg2+を加えてポリヌクレオチド合成を開始させた(条件9A(ii))。時間=0分で塩を加えて最終濃度を500mM KGluとした。種々の時間間隔でMg2+(9A)を加えた後に、鋳型−DNA複合体からの鋳型の解離を決定した。
[00205]データを図9A(i)および9A(ii)、ならびに図9Bに示す。より詳細には、図9A(i)〜(ii)は、それぞれ5.5A(i)および5.5A(ii)で与えられた条件下に検出されたポリメラーゼ−鋳型複合体のレベルに対応する蛍光シグナルを示す。図9Bは、ポリメラーゼ−鋳型複合体からのポリメラーゼの解離のプロットを示す。9A(i)および(ii)に示す蛍光シグナルの計算された振幅は、時間の関数としてプロットしている。
[00206]図9A(i)および(ii)のデータは、ポリメラーゼ−鋳型複合体の形成は、dNTPまたはポリホスフェートヌクレオチドのいずれの存在下で起こっても同様であることを示している。図9Bは、dNTPヌクレオチドの存在下で形成された場合(■)、複合体の解離の速度はポリホスフェートヌクレオチドの存在下の場合(◆)よりも大きいことを示している。
[00207]以上まとめると、データはトリホスフェートヌクレオチドの存在下の鋳型−ポリメラーゼ複合体の形成は、ポリホスフェートと比較してより大きい鋳型解離速度をもたらすことを示している。この効果は、鋳型依存的DNA重合の間の低い処理能力および低下したシーケンシング寿命をもたらすことが予想される。
実施例5:ポリメラーゼの鋳型への結合に対する温度およびヌクレオチドの影響
[00208]この例は、低濃度のヌクレオチドの存在下および非存在下における、鋳型−ポリメラーゼ複合体からの鋳型の会合に対する温度の影響を示す。
[00209]Pol6−67 X2(配列番号14)の種々の希釈物(0倍、1倍、4倍、8倍)を、1.2μMのポリホスフェートヌクレオチドの存在下に40℃で、または1.2μMのポリホスフェートヌクレオチドの非存在下に室温で、30分、100nMの蛍光ヘアピンDNA鋳型(配列番号15および22)とともにプレインキュベートした。12μLの予備結合した鋳型−Pol複合体を5%の未変性TBEゲルに装荷し、100V、4℃で60分運転した。BioradのChemiDoc XRS+イメージングシステムを用い、SYBR−Greenフィルターを用いてイメージングを行った。
[00210]図10Aに示すように、20℃で4倍および8倍のポリメラーゼ濃度でバンドシフトが生じ、したがって多数のポリメラーゼが鋳型上の多数の場所に非特異的に結合していることが示された。対照的に、温度を40℃に上昇させ、1.2μMのポリホスフェートヌクレオチドを添加するとバンドシフトは生じず(図10B参照)、したがって鋳型の3’末端へのポリメラーゼの特異的結合が示された。したがって、1.2μMのポリホスフェートの添加および昇温は、ポリメラーゼ−鋳型結合に好ましい効果を有する。
実施例6:鋳型の延長に対する温度およびヌクレオチドの影響(延長ゲルアッセイ)
[00211]この例は、(高い温度および低いヌクレオチドレベルにおける)鋳型に結合したポリメラーゼの百分率と、(高い温度および高いヌクレオチド濃度における)鋳型の延長との間の相関を示す。
[00212]Pol6−67 X2の種々の希釈物(0倍、1倍、2倍、4倍、8倍)を、1.2μMのポリホスフェートヌクレオチドの存在下に40℃で30分、300mMの蛍光ヘアピンDNA鋳型(配列番号15および22)とともにプレインキュベートした。結合緩衝液は75mMのK−Glu、20mMのHepes(pH7.5)、5mMのTCEP、および8%のトレハロースを含むHepes緩衝液であった。
[00213]結合ゲルについては、12μLの予備結合した鋳型−Pol複合体を5%の未変性TBEゲルに装荷し、100V、4℃で60分運転した。BioradのChemiDoc XRS+イメージングシステムを用い、SYBR−Greenフィルターを用いてイメージングを行った。
[00214]延長反応については、予備結合したポリメラーゼ−鋳型複合体に10μMのポリホスフェートヌクレオチド、5mMのMgCl(それぞれ最終)および20倍のChase鋳型(配列番号16)を加えて反応を開始させた。反応は30℃で5分行った。5分後、ホルムアミド+50mM EDTAを用いて反応を停止させ、95℃で5分加熱した。次いで12μLの試料を15% TB尿素ゲルに180Vで180分装荷し、BioradのChemiDoc XRS+イメージングシステムを用い、SYBR−Greenフィルターを用いてイメージングを行った。
[00215]図11Aに示すように、低い(1.2μM)ポリホスフェートヌクレオチドの存在下、40℃で、ポリメラーゼの濃度を増大させると鋳型結合が増大する。図11Bでポリメラーゼの濃度の増大による下のバンドから上のバンドへのバンド強度のシフトによって証明されるように、延長反応の間、ヌクレオチドの濃度を10μMに調節した場合に、ポリメラーゼの濃度が増大すれば鋳型延長の増大がもたらされる。1倍のポリメラーゼで活性画分は26%の延長を示す一方、8倍のポリメラーゼで活性画分は40℃で66%の延長を示す(図11B)。結合百分率を延長百分率と比較すると、直接の相関が存在する(図11C参照、勾配=1)。したがって、活性画分は延長前の鋳型へのポリメラーゼの結合に大きく依存している。
実施例7:鋳型の延長に対する温度およびヌクレオチドの影響(FRETアッセイ)
[00216]この例は、FRETアッセイ(実施例3に記載)を用いる40℃におけるポリメラーゼ−鋳型複合体の形成および延長ならびに鋳型の延長を示す。
[00217]LongHP−Cy5−ExoR鋳型(配列番号17および22)の当モル量を、クールダウンアニーリングプロトコルを用いてQuencher Primer(配列番号18)とともにアニールした。LongHP−Cy5−ExoR鋳型(配列番号17および22)のみを(同じ最終濃度で)1倍TEで希釈した対照を作成し、これもクールダウンアニーリングプロトコルに通した。
[00218]Pol6−67 X2の種々の希釈物(0倍、1倍、2倍、4倍、6倍、8倍)を、1.2μMのポリホスフェートヌクレオチドの存在下に40℃で30分、50mMのアニールした鋳型−プライマーペアまたは鋳型対照のみとともにプレインキュベートした。結合緩衝液は75mMのK−Glu、20mMのHepes(pH7.5)、5mMのTCEP、および8%のトレハロースを含むHepes緩衝液であった。
[00219]上記の反応は96ウェルのハーフエリア黒色プレートで行った。75mMのK−Glu、20mMのHepes、5mMのTCEP、5mMのMgCl、10μMのNucs、20倍のChase(最終濃度)を含む試薬Bをプレートリーダー(BMG FLUOstar Omega)に注入して反応を開始し、蛍光を10分間、1秒ごとに測定した。用いた励起フィルターは590〜50nm、用いた発光フィルターは675〜50である。
[00220]図12A〜12Cに、40℃で低レベルのヌクレオチド(1.2μM)の存在下でのポリメラーゼ−鋳型形成の後の鋳型の延長を示す。図12Aおよび図12Bに示すように、ポリメラーゼ−鋳型形成の後、ポリメラーゼ濃度の増大によって延長の増大がもたらされ、これは増大したポリメラーゼ濃度におけるフルオロポア消光剤の増大したシグナル振幅によって証明される。例えば0倍のポリメラーゼにおいては鋳型のポリメラーゼへの結合は起こらず、したがって蛍光シグナルは完全に消光される。しかし、ポリメラーゼ−鋳型形成の間のポリメラーゼの濃度を増大させると、消光されるシグナルは少なくなる(これは蛍光振幅の増大に対応している)(図12Aおよび12B)。対照のフルオロポアのみでは、種々のポリメラーゼ濃度にわたって最大蛍光のままである(即ち100%飽和)(図12Aおよび12B)。図12Cに示すように、(フルオロポアのみの100%飽和の百分率として決定される)延長百分率も、複合体が高い温度で低レベルのヌクレオチドの存在下に形成される場合には、ポリメラーゼ−鋳型形成の間のポリメラーゼ濃度の増大によって延長反応の間の延長の増大がもたらされることを示している。
[00221]図12Dに、2つの独立の実験、即ち1つはゲルに基づくアッセイ、他はプレートリーダーアッセイ(FRETアッセイ)から得られた鋳型の延長の量を比較する。図は直線の勾配が1に近いことを示し、したがってゲルに基づくアッセイおよびプレートリーダーに基づくアッセイによって測定された鋳型延長百分率の間に良好な相関があることを証明している。
実施例8:ポリメラーゼ−鋳型解離に対する結合条件の影響
[00222]この例は、FRETアッセイ(実施例3に記載)を用いるポリメラーゼ−鋳型複合体の解離に対するSr+2および/またはヌクレオチドの影響を示す。
[00223]6倍濃度のPol6−67X2(配列番号14)をLong−HP−Cy5−ExoR鋳型(配列番号17および22)とプレインキュベートした。結合は30分、40℃で、(13A(i))1.2μMのdNpCpp、3mMのSrCl、もしくは(13A(ii))1.2μMのdNpCpp、もしくは(13A(iii))1.2μMのポリホスフェートの存在下、または(13A(iv))SrCl、ヌクレオチドの非存在下に進行させた。時間=0分で塩を加えて最終濃度を300mM KGluとし、追加して最終濃度を20倍とした。種々の時間間隔でポリホスフェートおよびMgClを加えた後に、鋳型−DNA複合体からの鋳型の解離を決定した。
[00224]図13Aおよび13Bに示すように、Sr+2は鋳型からのポリメラーゼの解離には最小の影響を有する。さらに、低濃度のポリホスフェートヌクレオチドは最良の結合条件である。他のデータ(示していない)は、Sr+2がポリメラーゼ−鋳型結合に顕著な影響を何ら有していないことを示している。
実施例9:ヌクレオチドおよび塩の添加の影響
[00225]この例は、高い塩濃度の存在下でのポリメラーゼ−鋳型結合に対する高いヌクレオチド濃度の影響を示す。
[00226]6倍濃度のPol6−67X2(配列番号14)をLong−HP−Cy5−ExoR鋳型(配列番号17および22)とプレインキュベートした。結合は30分、40℃で、36μMのポリホスフェートの存在下または非存在下に進行させた。時間=0分で塩を加えて、2mMのビオチン、20倍のChase鋳型、および1mMのSrClとともに最終濃度を75mM(図14A)または380mM KGlu(図14B)とした。種々の時間間隔でそれぞれMg2+のみまたは36μMのポリホスフェートおよびMg2+を加えた後に、鋳型−DNA複合体からの鋳型の解離を決定した。
[00227]図14Aおよび図14Bに示すように、高いレベルのヌクレオチド(結合の間、36μM)の存在下に、75KGluおよび380KGluの両方の塩濃度によって、最初の鋳型結合の33%の低減がもたらされた。Pol6−67X2については、ポリホスフェートの存在または非存在における鋳型−ポリメラーゼの解離速度に顕著な差は見られない。
実施例10:ポリメラーゼのナノポアへの付着
[00228]この例は、バリアントポリメラーゼのナノポア、例えばα−ヘモリシン、OmpGへの付着の方法を提供する。
[00229]実施例2に従ってSpyCatcher HisTag(配列番号4)を含むPol6バリアントを発現し、コバルトアフィニティカラムを用いて精製した。ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させ、精製し、ナノポアに付着させて、ナノポアシーケンシング複合体を形成させた。ナノポアシーケンシング複合体を形成させる方法およびナノポアシーケンシング複合体を精製する方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれる2016年1月21日出願の米国仮出願「Nanopore Sequencing Complexes」第62/281,719号、および2015年11月25日出願の米国仮出願「Purification of Polymerase Complexes」第62/260,194号に記載されている。ナノポアシーケンシング複合体は、バリアントポリメラーゼをナノポアに連続的に結合させて酵素−ナノポア複合体を形成し、次いで鋳型を会合させてナノポアシーケンシング複合体を形成させることによって形成することができる。あるいは、ナノポアシーケンシング複合体は、最初に鋳型をバリアントポリメラーゼと会合させることによって鋳型−酵素複合体を形成し、次いで鋳型−酵素複合体をナノポアに付着させることによって形成することができる。
[00230]ポリメラーゼは任意の好適な手段でナノポアに連結することができる。例えば、PCT/US2013/068967(WO2014/074727として公開;Genia Technologies,Inc.)、PCT/US2005/009702(WO2006/028508として公開;President and Fellows of Harvard College)、およびPCT/US2011/065640(WO2012/083249として公開;Columbia University)を参照されたい。
[00231]バリアントpol6 DNAポリメラーゼはリンカー分子を介してタンパク質ナノポア(例えばα−ヘモリシン、OmpG)と連結される。特に、生理学的条件下で自発的に共有結合性のイソペプチド連結を形成するSpyTagおよびSpyCatcherシステムが用いられる。例えばLiら、J Mol Biol.2014年1月23日、426(2)、309〜17を参照されたい。
実施例11:ナノポアシーケンシング
[00232]ナノポアに結合したバリアントPol6ポリメラーゼがタグ付きヌクレオチドに結合し、それによりポリメラーゼが付着しているナノポアにおけるブロックされたチャネル電流の検出を可能にする能力を決定した。バリアントPol6ポリメラーゼの処理能力の増大を、バリアント酵素の修飾を欠く親Pol6のそれと比較した。
[00233]バリアントPol6ポリメラーゼをDNA鋳型と接触させてバリアントPol6−DNA複合体を形成させ、続いてこれを、バイオチップとも称される半導体センサーチップのウェルの上で脂質二重層に埋め込まれたナノポアに付着させる。PCT/US2014/061853(「Methods for Forming Lipid Bilayers on Biochips」、2014年10月22日出願)に記載されているように、脂質二重層を形成させ、バリアントPol6ポリメラーゼ−DNA複合体が付着したナノポア、即ちバリアントPol6ナノポアシーケンシング複合体を挿入する。
[00234]あるいは、ナノポアを脂質二重層に埋め込み、バリアントPol6−DNA複合体をインサイチュで付着させる。
[00235]タグが3μMのT−T30、3μMのC−T30、3μMのG−T30、および3μMのA−T30からなる30チミンヌクレオチド(T30)のポリマーであるタグ付きヌクレオチドの混合物を、静的条件(500mMのKGlu、3mMのCaCl、20mMのHEPES、pH8.0)下で、0.834μl/秒の速度でナノポアに流す。
[00236]ピークツーピーク210mVの交流を25Hzで印加し、ナノポアに結合したポリメラーゼによってヌクレオチド塩基がコピーされたDNA鎖に組み込まれる際の、ヌクレオチドタグの捕捉を評価する。
[00237]バリアントPol6の処理能力を非修飾の親Pol6のそれと比較して、読み取り長および/もしくはポリヌクレオチドの合成速度の増大、ならびに/またはシーケンシングエラーの低減を決定する。
配列
配列番号1−野生型Pol6(DNAポリメラーゼ(クロストリジウムファージphiCPV4);GenBank:AFH27113.1)
配列番号2−Pol6(Hisタグあり)
配列番号3−Pol6 Hisタグあり(DNA配列)
配列番号4−Pol6−44−X1 Hisタグ/SpyCatcherあり
配列番号5−Pol6−44−X1 Hisタグ/SpyCatcherあり(DNA配列)
配列番号6−Pol6−44−X1 Hisタグ/SpyCatcherあり+配列番号2のE585K、これは配列番号6のE715Kに対応する。
配列番号7−Pol6−44−X1 Hisタグ/SpyCatcherあり+配列番号2のE585K+L731K、これは配列番号6のE715K+L861Kに対応する。
配列番号8−Pol6−44−X1 Hisタグ/SpyCatcherあり+配列番号2のE585K+M738K、これは配列番号6のE715K+M868Kに対応する。
配列番号9−His6タグ
配列番号10−SpyCatcher
配列番号11−SpyTag
配列番号12および21−Cy5−標識フルオロゲンDNA鋳型
配列番号13−Black Hole Quencher(登録商標)、色素標識消光剤オリゴヌクレオチド
配列番号14−Pol6−67 X2(Hisタグあり、T529M−S366A−A547F−N545L−Y225L−D657R Y242A)
配列番号15および22−−蛍光ヘアピンDNA鋳型
配列番号16−−Chase鋳型
配列番号17および22−LongHP−Cy5−ExoR
配列番号18−Quencher Primer

Claims (15)

  1. ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製する方法であって、
    (a)ポリメラーゼを提供するステップ、および、
    (b)0.8μM〜2.2μMの濃度のヌクレオチドを含む35℃〜45℃の温度の溶液中で前記ポリメラーゼをポリヌクレオチド鋳型と接触させ、それにより前記ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するステップ、
    を含む、前記方法。
  2. 前記溶液を、前記ポリメラーゼ−鋳型複合体の前記ポリメラーゼで飽和させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 鋳型−ポリメラーゼ複合体の処理能力を増大させる方法であって、
    0.8μM〜2.2μMの濃度のヌクレオチドを含む35℃〜45℃の温度の溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップを含み、
    ここで、前記高温溶液中で形成された前記ポリメラーゼ−鋳型複合体の処理能力が、対照である室温のポリメラーゼ−鋳型複合体溶液から得られる処理能力より大きいものである、前記方法。
  4. 前記ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップが、前記溶液を前記ポリメラーゼ−鋳型複合体の前記ポリメラーゼで飽和させるステップを含むものである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させた後、前記溶液中のヌクレオチドの濃度を上昇させるステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記ポリメラーゼ−鋳型複合体の前記ポリメラーゼが配列番号14として示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、98%もしくはそれ以上の配列同一性を有し、またはこれと同一である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. ポリヌクレオチド鋳型のナノポアに基づくシーケンシングのための方法であって、
    0.8μM〜2.2μMの濃度のヌクレオチドを含む溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップであって、前記溶液が高い温度を有するステップ、
    前記形成されたポリメラーゼ−鋳型複合体をナノポアと組み合わせて、ナノポア−シーケンシング複合体を形成させるステップ、
    タグ付きヌクレオチドを前記ナノポアシーケンシング複合体に提供して、35℃〜45℃の高い温度で前記鋳型の鋳型依存的ナノポアシーケンシングを開始するステップ、および、
    前記ナノポアを利用して、前記タグ付きヌクレオチドのそれぞれが前記ポリメラーゼと会合しつつ前記タグ付きヌクレオチドのそれぞれが組み込まれている間に、前記タグ付きヌクレオチドのそれぞれと会合したタグを検出し、それにより前記ポリヌクレオチド鋳型の配列を決定するステップ、
    を含む、前記方法。
  8. 前記ポリメラーゼ−鋳型複合体を形成させるステップが、前記溶液を前記ポリメラーゼ−鋳型複合体の前記ポリメラーゼで飽和させるステップを含むものである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記ポリメラーゼ−鋳型複合体の前記ポリメラーゼが配列番号14として示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、98%もしくはそれ以上の配列同一性を有し、またはこれと同一である、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記ポリメラーゼがSpyCatcher配列(配列番号10)に直接または間接的に連結されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製する方法であって、
    (a)ポリメラーゼを提供するステップ、および、
    (b)少なくとも100mMの濃度の塩を含みヌクレオチドを含まない溶液中で前記ポリメラーゼをポリヌクレオチド鋳型と接触させ、それにより前記ポリメラーゼ−鋳型複合体を調製するステップ、
    を含む、前記方法。
  12. 鋳型−ポリメラーゼ複合体の処理能力を増大させる方法であって、
    前記方法が、少なくとも100mMの濃度の塩を含みヌクレオチドを含まない溶液中で鋳型−ポリメラーゼ複合体を形成させるステップを含み、
    ここで、前記鋳型−ポリメラーゼ複合体の処理能力が同様に高い濃度の塩を含む溶液中、ヌクレオチドの存在下で形成された場合の同じ鋳型−ポリヌクレオチド複合体の処理能力より大きいものである、前記方法。
  13. 鋳型依存的DNA合成を行う方法であって、
    (a)少なくとも100mMの濃度の塩を含みヌクレオチドを含まない溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を提供するステップ、および、
    (b)ヌクレオチドを前記溶液に添加することによって前記鋳型依存的DNA合成を開始するステップ、
    を含む、前記方法。
  14. 高い塩濃度におけるナノポアシーケンシングのための方法であって、
    (a)少なくとも100mMの濃度の塩を含む溶液中でポリメラーゼ−鋳型複合体を提供するステップであって、前記溶液がヌクレオチドを実質的に含まないステップ、
    (b)前記ポリメラーゼ−鋳型複合体をナノポアと組み合わせてナノポア−シーケンシング複合体を形成させるステップ、
    (c)タグ付きヌクレオチドを前記ナノポアシーケンシング複合体に提供して、前記高い塩濃度で前記鋳型の鋳型依存的ナノポアシーケンシングを開始するステップ、および、
    (d)前記ナノポアを利用して、前記ヌクレオチドのそれぞれが前記ポリメラーゼと会合しつつ前記ヌクレオチドのそれぞれが組み込まれている間に、前記タグ付きヌクレオチドのそれぞれと会合したタグを検出し、それにより前記ポリヌクレオチド鋳型の配列を決定するステップ、
    を含む、前記方法。
  15. 少なくとも100mMの塩の溶液中にポリメラーゼ−鋳型複合体を含む、保存または反応組成物。
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