JP2007535959A - アルツハイマー病のためのkcnj6の診断および治療使用 - Google Patents

アルツハイマー病のためのkcnj6の診断および治療使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2007535959A
JP2007535959A JP2007512204A JP2007512204A JP2007535959A JP 2007535959 A JP2007535959 A JP 2007535959A JP 2007512204 A JP2007512204 A JP 2007512204A JP 2007512204 A JP2007512204 A JP 2007512204A JP 2007535959 A JP2007535959 A JP 2007535959A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
kcnj6
protein
disease
gene
seq
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2007512204A
Other languages
English (en)
Inventor
フオン・デア・カンマー,ハインツ
ポールナー,ヨハネス
Original Assignee
エボテツク・ニユーロサイエンシーズ・ゲー・エム・ベー・ハー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by エボテツク・ニユーロサイエンシーズ・ゲー・エム・ベー・ハー filed Critical エボテツク・ニユーロサイエンシーズ・ゲー・エム・ベー・ハー
Publication of JP2007535959A publication Critical patent/JP2007535959A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6893Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids related to diseases not provided for elsewhere
    • G01N33/6896Neurological disorders, e.g. Alzheimer's disease
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2800/00Detection or diagnosis of diseases
    • G01N2800/28Neurological disorders
    • G01N2800/2814Dementia; Cognitive disorders
    • G01N2800/2821Alzheimer

Abstract

本発明は、アルツハイマー病患者におけるKCNJ6遺伝子およびこの蛋白質産物の異常調節を開示する。この発見を基に、本発明は、被検者においてアルツハイマー病を診断および予後判断するための、ならびに被検者がアルツハイマー病を発現するリスクが増大した状態にあるかどうか判定するための方法を提供する。さらに、本発明は、KCNJ6遺伝子およびこの対応する遺伝子産物を使用してアルツハイマー病および関連神経変性疾患を治療および予防するための治療および予防方法を提供する。神経変性疾患の変調剤のスクリーニング方法も開示する。

Description

本発明は、被検者において神経変性疾患の進行を診断、予後判定、およびモニターする方法に関する。さらに、神経変性疾患の変調剤を治療的制御およびスクリーニングする方法を提供する。本発明は、医薬組成物、キットおよび組換え動物モデルも開示する。
神経変性疾患、特にアルツハイマー病(AD)は、患者の生命に対して強力に衰弱させる影響力を有する。さらに、これらの疾患は、非常に多くの健康的、社会的および経済的負担となる。ADは、全痴呆症例の約70%を占める最も一般的な神経変性疾患であり、おそらく、65歳より高齢の人口の約10%および85歳より高齢の人口の45%以下に影響を及ぼす最も荒廃的な加齢性神経変性状態である(最近の総説については、Vickersら、Progress in Neurobiology 2000、60:139−165参照)。現在、これは、米国、欧州および日本において推定1200万例にのぼる。この状況は、先進国における老人数の人口統計学的増加(団塊の世代の高齢化)に伴って不可避的に悪化するであろう。ADに罹患している個体の脳において発生する顕著な神経病理学的特徴は、アミロイド−β蛋白から成る老人斑、ならびに異常な線維状構造の出現および神経原線維変化(neurofibrillary tancles)の形成と同時に起こる重大な細胞骨格変化である。
アミロイド−β蛋白は、異なる種類のプロテアーゼによるアミロイド前駆体蛋白(APP)の分解から発生する。β/γ−セクレターゼによる分解は、異なる長さのAβペプチドを形成する。それは、典型的には、短くより可溶性で、40のアミノ酸およびより長い42のアミノ酸からなるゆっくりと凝集するペプチドであり、細胞外では急速に凝集し、特長的なアミロイド斑を形成する。(Selkoe、Physiological Rev 2001、81:741−66;Greenfieldら、Frontiers Bioscience 2000、5:D72−83)。AD患者の脳において二つのタイプの斑、広汎性斑および神経炎性斑を検出することができ、後者のものが、古典的で最も優勢なタイプである。これらは、主として大脳皮質および海馬体において見出される。神経炎性斑は、50μmから200μmの直径を有し、不溶性線維性アミロイド、死滅ニューロンのフラグメント、小神経膠細胞および神経膠星状細胞ならびに他の成分、例えば神経伝達物質、アポリポ蛋白E、グリコサミノグリカン、α1−アンチキモトリプシンなどから成る。脳における毒性Aβ沈着の発生は、ADの経過の非常に初期に開始し、これは、ADの病状を導くこの後の破壊的プロセスにとって重要な役割を果たす因子であると論じられている。ADの他の顕著な病理学的特徴は、神経原線維変化(NFT)、およびニューロピルスレッドと記載されている(Braak and Braak、Acta Neuropathol 1991、82:239−259)異常神経突起である。NFTは、ニューロン内部で発生し、ならびに互いに絡み合う対になったらせん状フィラメントを形成する化学的に改変されたタウから成る。NFTの形成に沿って、ニューロンの喪失を観察することができる(Johnson and Jenkins、J Alzheimers Dis 1996、1:38−58;Johnson and Hartigan、J Alzheimers Dis 1999、1:329−351)。神経原線維変化の出現およびこれらの増加数は、ADの臨床的重症度とよく相関する(Schmittら、Neurology 2000、55:370−376)。
ADは、記憶形成の早期欠損を伴い、最終的にはより高度な認知機能の完全侵食を導く、進行性疾患である。認知障害としては、数ある中でも、記憶障害、失語症、認知不能、および実行機能の喪失が挙げられる。ADの病因の独特な特徴は、変性プロセスに対する特定の脳領域および神経細胞の副次集団の選択的脆弱性である。具体的に言うと、側頭葉領域および海馬体は、この疾病の進行中、初期に、より重度に影響を受ける。一方、前頭皮質、後頭皮質および小脳内のニューロンは、主として無傷のままであり、神経変性から防護される(Terryら、Annals of Neurology 1981、10:184−92)。
ADの発症年齢は、50年の範囲内で様々であり、早発性ADは、65歳より若い年齢の人に発生し、晩発性のADは、65歳より高齢の者に発生する。全AD症例の約10%が早発性ADに罹患しており、家族性、遺伝性症例は、1から2%に過ぎない。
現在、ADには治療法がなく、ADの進行を停止させる有効な治療も、生前にADを高い確率で診断する有効な治療さえもない。個体にAD発現の素因を作る幾つかのリスク因子、中でも最も顕著なところではアポリポ蛋白E遺伝子(ApoE)の3つの異なる既存対立遺伝子(イプシロン2、3および4)のうちのイプシロン4対立遺伝子、は特定されている(Strittmatterら、Proc Natl Acad Sci USA 1993、90:1977−81;Roses、Ann NY Acad Sci 1998、855:738−43)。染色体21上のアミロイド前駆体蛋白(APP)、染色体14上のプレセニリン−1および染色体1上のプレセニリン−2についての遺伝子の遺伝子欠損に起因する早発性ADの例は稀にあるが、一般的な形態の晩発性散発性ADは、これまで知られていなかった原因に起因するものである。神経変性疾患の晩発性で複合的な病因は、治療薬および診断薬の開発に厖大な難題を投げかけている。可能性のある薬物ターゲットおよび診断用マーカーのプールを拡大することが重要である。従って、本発明の目的は、神経疾患の病因への洞察をもたらすこと、ならびにとりわけこれらの疾患の治療の診断および開発に適する方法、材料、薬剤、組成物および動物モデルを提供することである。この目的は、独立クレームの特徴によって解決された。従属クレームは、本発明の好ましい実施態様を定義している。
本発明は、ヒトアルツハイマー病脳サンプルにおける、G蛋白結合内向き整流カリウムイオンチャネルサブファミリーJメンバー6(KCNJ6)もしくはATP感受性カリウムチャネル(K(ATP)2という名でもある)、またはKir3.2、BIR1もしくはGIRK2をコードする遺伝子の、およびKCNJ6の蛋白質産物の、検出および異常調節された差次的発現に基づく。
機能的カリウムイオン(K)チャネルは、ホモまたはヘテロメリック四量体を形成する幾つかのサブユニットから成る膜貫通型蛋白質である。カリウムチャネルの幾つかの構造クラスが今日までに判明している。ATP感受性カリウムチャネル(KATP)、内向き整流カリウムチャネル(Kir)およびG蛋白結合カリウムチャネルは、2膜貫通ドメイン(2TM)含有蛋白質に属する。各サブユニットは、ポアループ(P−ループ)により連結された2つの膜貫通ヘリックス(M1、M2)から成る(Kuboら、Nature 1993、362:127−133)。N末端およびC末端は、細胞質に位置している。カリウム選択性の原因であるP−ループ(P−領域として知られている)は、構造的に高度に保存されている。機能的内向き整流カリウムチャネルは、4つの2TMサブユニットから成る。これらのチャネルは、同一のサブユニットで構成されている(Kir1、Kir2およびKir6チャネル)か、類似したサブユニットで構成されている(Kir3チャネル)。ヘテロメリックチャネルの形成は、莫大な多様性を生じさせ、このため、広範な生理特性およびユニークな能力を有する多岐にわたる種々のチャネルを生じさせる(Minor、Current Opinion Structural Biology 2001、11:408−414;Miller、Genome Biology 2000、1:1−5)。
カリウムイオンチャネルの1つのファミリーは、内向き整流カリウム(Kir)チャネルから成り、これらは、活動電位発生の際に細胞膜を横断するカリウムイオンの流れを媒介し、細胞膜の静止電位を安定させ、これによって、例えばニューロン興奮性ならびに心臓活動電位を調節する。Kirファミリーのカリウムチャネルは、電位が過分極してるときのほうが脱分極しているときより多くの電流を伝導することができる。内向き方向のほうが外向き方向より多くのカリウム電流を伝導する。Kir3ファミリーのカリウムチャネルは、G蛋白活性化され、これらは、G蛋白ベータ−ガンマ−サブユニットがこれらの細胞質ドメインに結合することにより開口される(Kofujiら、Proc.Natl.Acad.Science USA 1995、95:6542−6546)。
一般に、カリウムチャネルは、多数の生理機能に関与しており、心臓、ニューロンおよび神経分泌細胞における電気活性に重要な役割を果たしている。家族性新生児痙攣、一過性運動失調症、様々な形態の癲癇などの多くのニューロン性疾患が、カリウムチャネルにおける突然変異に関連付けられている(Bolandら、Neuroscience 1999、91:1557−1564;Charlierら、Nature Genetics 1998、18:53−55;Steinleinら、Human Molecular Genetics 1997、6:943−947;Wallaceら、Nature Genetics 1998、19:366−370)。内向き整流カリウムチャネルKir3は、脳全体にわたっておよび心臓において発現される。これらの活性は、ニューロン興奮性、シナプス伝達を調節し、心拍数を変調する。このため、これらは、神経系において重要な種々の役割を果たす。このため、ニューロン機能は、イオンチャネル特性それ自体による、特定のニューロン区画におけるこれらの位置および密度による、ならびにニューロン集団にわたる発現勾配による影響を受ける。
Liaouおよび共同研究者は、マウスからのニューロンにおいてG蛋白ゲート整流チャネルを形成するKir3.2およびKir3.1の共集合(coassembly)について報告しており(Liaouら、J.Neuroscience 1996、16:7137−7150;Kofujiら、Proc.Natl.Acad.Science USA 1995、95:6542−6546)、さらなるデータは、両方のチャネルが小脳におけるニューロンの分化中に発現されることを示している(Slesingerら、Neuron 1996、16:321−331;Ferrerら、J.Biology Chemistry 1995、270:26086−26091)。突然変異体Kir3.2チャネルは、マウスにおいてムスカリン受容体活性化(M2)への感受性低下を示し、G蛋白アルファサブユニットに応答しなかった。カリウムイオンに対する感受性低下と共にナトリウムイオン透過性増大が、膜の興奮性を変更させた(Navarroら、Science 1996、272:1950−1953;Rossiら、J.Neuroscience 1998、18:3537−3547)。Kir3.2における機能獲得型突然変異は、weaver表現型として知られている表現型を示すトランスジェニックマウスを導く。これらのマウスは、失調症、過敏症および震えに苦しむ。Kir3.2チャネルを欠くトランスジェニックマウスは、正常に小脳が発達している野生型マウスと形態学的に見分けがつかないが、発作を発現しやすい。(Signoriniら、Proc.Natl.Acad.Science USA 1997、94:923−927)。トランスジェニックweaverマウスは、黒質における細胞喪失、およびパーキンソン病に罹患している患者で観察される黒質細胞喪失に類似した小脳の顆粒層における細胞喪失を示す(Patilら、Nature Genetics 1995、11:126−129)ため、weaverマウスおよびパーキンソン病に共有の遺伝子欠損が論じられた(Yamadaら、Brain Research 1990、526:303−307;Gasparら、Neuroscience 1994、61:293−305;Abrahamら、FASEB Journal 1999、13:1901−1907)が、今までのところ、パーキンソン病に罹患している患者からのKir3.2遺伝子の突然変異は検出できていない(Bandmannら、Neuroscience 1996、72:877−879)。マウスKcnj6(ジェンバンクアクセッション番号NP_034736.1)は、ヒト配列(ジェンバンクアクセッション番号P48051)と非常に相同であり、98%より高い同一性を共有している。
Kirチャネルは、7つのサブファミリーから成る、別のファミリーに分類される。1つのサブファミリー、Kir3ファミリーは、Kir3.1、Kir3.2、Kir3.3およびKir3.4サブユニットから成る。約48.5kDaの分子量を有するアミノ酸数423のKir3.2(別名:BIR1、GIRK2、KATP2、hiGIRK2、KCNJ7、KCNJ6)サブユニットは、KCNJ6遺伝子によりコードされる。このKCNJ6は、当初はTsaurら(Dabete 1995、44:592−596)によりKCNJ7と呼ばれており、1995年にSakuraおよび共同研究者によりクローニングされたものである(ヌクレオチド数2598のmRNA、ジェンバンクアクセッション番号L78480;蛋白質ID:P48051;データベースID GDB:1518525、U52153)(Sakuraら、FEBS Letter 1995、367:193−197)。KCNJ6遺伝子(Kir3.2)は、染色体21q22.13にマッピングされた(Ohiraら、Genome Research 1997、7:47−58)。本発明者らが今日知る限り、アルツハイマー病とKCNJ6(Kir3.2)の関係は、これまで開示されていない。
本明細書および本クレームで用いる単数形「a」、「an」および「the」は、文脈による別様の指図がない限り、複数表示を包含する。例えば、「細胞(a cell)」は、多数の細胞も意味するなどである。本明細書および本クレームで用いる用語「および/または」は、この用語の前後のフレーズが、二者択一と考えてもよいし、組み合わせで考えてもよいことを意味する。例えば、「レベルおよび/または活性の判定」という表現は、レベルのみ、もしくは活性のみ、またはレベルと活性の両方を判定することを意味する。ここで用いる用語「レベル」は、転写産物、例えばmRNA、または翻訳産物、例えば蛋白質もしくはポリペプチドの、ゲージ、または量の測定値、または濃度を含む意味をもつ。ここで用いる用語「活性」は、生物学的効果を生じさせる転写産物もしくは翻訳産物の能力についての尺度、または生物活性分子のレベルについての尺度と理解するものとする。用語「活性」は、生物活性および/または薬理活性も指し、これは、カリウムチャネルまたはカリウムチャネルサブユニットの結合、拮抗、抑制、阻止、中和または離隔を指し、および配列番号1の新規カリウムチャネルポリペプチドを非限定的に含むカリウムチャネルまたはカリウムチャネルサブユニットの活性化、作動、アップレギュレーションを指す。「生物活性」は、カリウムイオンの膜貫通型輸送、および/または膜貫通型カリウムイオンフロー、および/またはこれらの調節を包含するが、これらに限定されない。「薬理活性」は、リガンド、化合物、薬剤、変調因子および/または別のカリウムチャネルサブユニットに結合するカリウムチャネルまたはカリウムチャネルサブユニットの能力を包含するが、これに限定されない。ここで用いる用語「レベル」および/または「活性」は、さらに、遺伝子発現レベルまたは遺伝子活性を指す。遺伝子発現は、遺伝子産物の生産を導くための、転写および翻訳による、遺伝子に含まれている情報の利用と定義することができる。「異常調節」は、遺伝子発現のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを意味するものとする。遺伝子産物は、RNAまたは蛋白質のいずれかを含み、遺伝子発現の結果である。遺伝子産物の量を用いて、遺伝子がどのように活性であるかを測ることができる。本明細書および本特許請求の範囲において用いる用語「遺伝子」は、コード領域(エクソン)と非コード領域(例えば、非コーディング調節要素、例えばプロモータもしくはエンハンサ、イントロン、リーダーおよびトレーラー配列)の両方を含む。用語「ORF」は、「オープンリーディングフレーム」の頭文字であり、少なくとも1つのリーディングフレームの中には停止コドンを有さず、従って、アミノ酸の配列に翻訳することができる核酸配列を指す。「調節要素」は、誘発性および非誘発性プロモータ、エンハンサ、オペレータ、および遺伝子発現を誘導し、調節する他の要素を含むものとする。ここで用いる用語「フラグメント」は、例えば、可変スプライシングされた、またはトランケートされた、または別様に切断された転写産物または翻訳産物を含む意味をもつ。ここで用いる用語「誘導体」は、突然変異もしくはRNA編集もしくは化学修飾もしくは別様に改変された転写産物、または突然変異もしくは化学修飾もしくは別様に改変された翻訳産物を指す。理解しやすいように、例えば、誘導転写産物は、核酸配列の変化、例えば単一または複数のヌクレオチドの欠失、挿入または交換、を有する転写産物を指す。例えば、誘導翻訳産物は、改変されたリン酸化もしくはグリコシル化もしくはアセチル化もしくは脂質化などのプロセスにより、または改変されたシグナルペプチド分解もしくは他のタイプの突然変異分解により生じさせることができる。これらのプロセスは、翻訳後に発生する場合もある。本発明および本特許請求の範囲で用いる用語「変調因子」は、遺伝子、または遺伝子の転写産物、または遺伝子の翻訳産物のレベルおよび/または活性を変化させるまたは変更することができる分子を指す。「変調因子」は、強化または阻害する能力、従って、カリウムチャネルサブユニットまたはカリウムチャネルの機能特性を「変調する」能力、カリウムチャネルまたはカリウムチャネルサブユニットの結合、拮抗、抑制、阻止、中和または離隔を「変調する」能力、および活性化、作動およびアップレギュレーションを「変調する」能力を有する分子を指す。「変調」は、細胞の生物活性に影響を及ぼすことができる能力を指すためにも用いられるであろう。好ましくは、「変調因子」は、遺伝子の転写産物または翻訳産物の生物活性を変化または変更することができる。例えば、前記変調は、生物活性および/もしくは薬理活性の増加もしくは減少、結合特性の変化、または遺伝子の前記翻訳産物の生物学的特性、機能的特性もしくは免疫原性特性における他の変化もしくは変更であってもよい。用語「薬剤」、「試薬」または「化合物」は、細胞、組織、体液、または文脈の中のあらゆる生物学的系、または試験されるあらゆるアッセイ系に対して正または負の生物学的効果を有する、あらゆる物質、化学物質、組成物または抽出物を指す。これらは、ターゲットの作動薬、拮抗薬、部分作動薬または逆作動薬であり得る。こうした薬剤、試薬または化合物は、核酸、天然もしくは合成ペプチドもしくは蛋白質複合体、または融合蛋白質であってもよい。これらは、抗体、有機または無機分子または組成物、小分子、薬物、およびあらゆる前記薬剤のあらゆる組み合わせであってもよい。これらは、試験のために、診断のためにまたは治療のために使用することができる。用語「オリゴヌクレオチドプライマー」または「プライマー」は、相補的塩基対のハイブリダイゼーションにより所定のターゲットポリヌクレオチドにアニールすることができる、およびポリメラーゼにより伸長することができる、短い核酸配列を指す。これらは、特定の配列に特異的であるように選択してもよく、またはランダムに選択してもよく、例えば、すべての可能な配列をミックスでプライミングするであろう。ここで使用するプライマーの長さは、10ヌクレオチドから80ヌクレオチドにわたって変化し得る。「プローブ」は、ここで説明および開示する核酸配列の短い核酸配列またはこれらに相補的な配列である。これらは、完全長配列、または所定の配列のフラグメント、誘導体、アイソフォームもしくは変異体を含むことができる。「プローブ」とアッセイサンプルとのハイブリダイゼーション複合体の特定により、このサンプルの中の他の類似した配列の存在を検出することができる。ここで用いる「相同体または相同性」は、あるヌクレオチドまたはペプチド配列と別のヌクレオチドまたはペプチド配列との相関性を説明するために当分野において用いられる用語であり、これは、比較される前記配列間の同一度および/または類似度によって判定される。当分野において、用語「同一性」および「類似性」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の相関度を意味し、これは、照会配列と好ましくは同じタイプの他の配列(核酸または蛋白質配列)とを互いにマッチングさせることによって判定される。「同一性」および「類似性」を計算および判定する好ましいコンピュータプログラム法としては、GCG BLAST(基本局所アラインメント検索ツール:Basic Local Alignment Search Tool)(Altschulら、J.Mol.Biol.1990、215:403−410;Altschulら、Nucleic Acids Res.1997、25:3389−3402;Devereuxら、Nucleic Acids Res. 1984、12:387)、BLASTN 2.0(Gish W.、http://blast.wustl.edu、1996−2002)、FASTA(Pearson and Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1988、85:2444−2448)、および最も長いオーバーラップを有する一対のコンティーグを決定し、アライメントするGCG GelMerge(Wilbur and Lipman、SIAM J.Appl.Math.1984、44:557−567;Needleman and Wunsch、J.Mol.Biol.1970、48:443−453)が挙げられるが、これらに限定されない。ここで用いる用語「変異体」は、本発明で開示するポリペプチドおよび蛋白質に関して、1つまたはそれ以上のアミノ酸が、本発明の天然ポリペプチドまたは蛋白質の天然アミノ酸配列のN末端および/もしくはC末端、および/または本発明の天然ポリペプチドまたは蛋白質の天然アミノ酸配列内、に追加されている、および/またはで置換されている、および/またはで欠失している、および/またはに挿入されているが、この本質的な特性を保持している、あらゆるポリペプチドまたは蛋白質を指す。さらに、用語「変異体」は、より短いまたはより長いあらゆるバージョンのポリペプチドまたは蛋白質を包含するものとする。「変異体」は、KCNJ6蛋白質のアミノ酸配列、配列番号1(Kir3.2)との少なくとも約80%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、および最も好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列も含むものとする。「変異体」は、例えば、高保存性領域における保存的アミノ酸置換を有する蛋白質を包含する。本発明の「蛋白質およびポリペプチド」は、KCNJ6蛋白質のアミノ酸配列、配列番号1(Kir3.2)を含む蛋白質の変異体、フラグメントおよび化学的誘導体を包含する。代替塩基配列のためあるコドンが別のコドンで置換されているが、DNA配列により翻訳されたアミノ酸配列は変わらないままでいる配列変異を含むであろう。当分野では公知であるこの現象は、特定のアミノ酸を翻訳するコドンセットの重複性と呼ばれる。官能基に影響を及ぼさないアミノ酸の交換、例えば、アルギニンからリジンへの、バリンからロイシンへの、アスパラギンからグルタミンへの置換を含むであろう。自然から単離できる、または組換えおよび/もしくは合成手段により生産できる蛋白質およびポリペプチドを含むことができる。天然蛋白質またはポリペプチドは、自然発生トランケート形または分泌形、自然発生変異形(例えば、スプライス変異体)および自然発生対立遺伝子変異体を指す。ここで用いる用語「単離された」は、改変された分子または物質、および/またはこれらの自然環境から取り出される、すなわち、これらが通常発生する細胞もしくは生体から単離される分子または物質、ならびにこれらが元々会合していることがわかっている共存成分から分離もしくは本質的に精製される分子または物質を指すものと考える。この概念は、こうした分子をコードする配列を、これらが自然な状態では結合しないポリヌクレオチドに人間の手で連結させることができること、ならびにこうした分子を組換えおよび/または合成手段によって生産することができること(これらは「非天然」であるとも言える)をさらに意味する。前記目的のために、当業者には公知の方法によりこれらの配列を生きているまたは生きていない生物に導入することができる場合、およびこれらの配列が前記生物体内にまだ存在する場合であっても、尚、これらは単離されていると考えられる。本発明において、用語「リスク」、「罹病性」および「素因」は、同等であり、神経変性疾患、好ましくはアルツハイマー病を発現する確率に関して用いられる。
用語「AD」は、アルツハイマー病を意味するものとする。ここで用いる「AD型神経病理」は、本発明で説明するような、および最先端の文献(Iqbal、Swaab、Winblad and Wisniewski、Alzheimer’s Disease and Related Disorders(Etiology、Pathogenesis and Therapeutics)、Wiley & Sons、New York、Weinheim、Toronto、1999;Scinto and Daffner、Early Diagnosis of Alzheimer’s Disease、Humana Press、Totowa、New Jersey、2000;Mayeux and Christen、Epidemiology of Alzheimer’s Disease:From Gene to Prevention、Springer Press、Berlin、Heidelberg、New York、1999;Younkin、Tanzi and Christen、Presenilins and Alzheimer’s Disease、Springer Press、Berlin、Heidelberg、New York、1998参照)から一般に知られているような、神経病理学的、神経生理学的、組織病理学的および臨床的特徴を指す。用語「Braak期(Braak stage)」または「Braak病期(Braak staging)」は、Braak and Braak(Braak and Braak、Acta Neurophathology 1991、82:239−259)によって提案された基準による脳の分類を指す。神経原線維変化およびニューロピルスレッドの分布に基づき、ADの神経病理進行は、6つの期(期0から6)に分けられる。本発明では、Braak期0から2は、対照健常者(「対照」)を表し、Braak期4から6は、アルツハイマー病に罹患している人(「AD患者」)を表す。前記「対照」から得られた値は、「健常と認められる状態」を表す「基準値」であり、前記「AD患者」から得られた値は、「疾病と認められる状態」を表す「基準値」である。Braak期3(Braak中期)は、対照健常者を表す場合もあり、AD患者を表す場合もある。高いBraak期ほど、ADの症状を提示する可能性が高い。神経病理評価、すなわちADの病理変化が痴呆の基礎原因である可能性の推定のために、推奨基準がBraak Hによって与えられている(www.alzforum.org)。
本発明の神経変性疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ピック病、前頭側頭性痴呆、進行性核性麻痺、皮質基底核変性、脳血管性痴呆、多系統萎縮症、嗜銀顆粒性痴呆および他のタウオパシー、ならびに軽度認知障害を含む。神経変性プロセスを伴うさらなる状態は、例えば、虚血性発作、加齢性黄斑変性、睡眠発作、運動ニューロン疾患、プリオン疾患、外傷性神経傷害および修復、ならびに多発性硬化症である。
本発明は、AD患者の特定の脳領域における、互いとの比較での、および/または同年齢の対照健常者との比較での、特定のサンプルにおけるATP感受性カリウムチャネルをコードする遺伝子、サブファミリーJ、KCNJ6(別名Kir3.2またはGIRK2)のG蛋白結合内向き整流カリウムイオンチャネルをコードする遺伝子、および前記遺伝子KCNJ6(別名Kir3.2またはGIRK2)の蛋白質産物についての同定、差次的発現、特異的調節、異常調節を開示する。本発明は、ADに罹患している脳ではKCNJ6(Kir3.2)についての遺伝子発現が変更される、異常調節される、すなわち、KCNJ6(Kir3.2)mRNAレベルが、前頭皮質と比較して側頭皮質では減少する、ダウンレギュレートされる、または側頭皮質と比較して、前頭皮質では上昇する、またはアップレギュレートされることを開示する。さらに、本発明は、KCNJ6(Kir3.2)の発現が、AD患者の前頭皮質と側頭皮質と比較すると、同年齢の対照健常者の前頭皮質と側頭皮質とが異なることを開示する。同年齢の健常対照から得られたサンプルを互いに比較したとき、こうした異常調節は観察されない。この異常調節は、ADに罹患している脳におけるKCNJ6(Kir3.2)の病的変化におそらく関係している。KCNJ6(Kir3.2)遺伝子発現の異常調節と神経変性疾患、特にADの病理との関係を実証する実験は、今までのところ記載されていない。同様に、KCNJ6(Kir3.2)遺伝子の突然変異が前記疾患に関連しているということも記載されていない。KCNJ6(Kir3.2)遺伝子をこうした疾患に結びつけることによって、中でも前記疾患の診断および治療のための新たな方法が得られる。本発明は、AD患者の特定の脳領域におけるKCNJ6(Kir3.2)をコードする遺伝子の異常調節を開示する。下側頭葉、嗅内皮質、海馬体および扁桃内のニューロンは、ADの変性プロセスに付される(Terryら、Annals of Neurology 1981、10:184−192)。これらの脳領域は、学習および記憶機能のプロセッシングに主として関与しており、ADにおけるニューロンの喪失および変性に対する選択的脆弱性を示す。対照的に、前頭皮質、後頭皮質および小脳内のニューロンは、主として無傷のままであり、神経変性プロセスから防護される。本明細書において開示する実施例には、AD患者および同年齢の対照健常者の前頭皮質(F)、側頭皮質(T)からの脳組織を使用した。従って、KCNJ6(Kir3.2)遺伝子ならびにこの対応する転写および/または翻訳産物は、ADで一般に観察される領域選択的ニューロン変性において原因的役割を果たす。または、KCNJ6(Kir3.2)は、生き残っている神経細胞に神経保護機能を付与することができる。これらの開示を基に、本発明は、診断評価および予後判定に、ならびに神経変性疾患、特にADの素因の特定に利用することができる。さらに、本発明は、こうした疾患の治療を受けている患者の診断モニター方法を提供する。
1つの側面において、本発明は、被検者において神経変性疾患を診断もしくは予後判定する、または被検者が、前記疾病を発現するリスクが増大した状態にあるかどうかを判定する方法を特徴とする。この方法は、前記被検者から得られたサンプルにおいて(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物の、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物の、および/または(iii)前記転写もしくは翻訳産物のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のレベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方を判定すること;ならびに前記転写産物および/または前記翻訳産物の前記レベルおよび/または活性を、疾病と認められる状態を表す基準値および/または健常と認められる状態(健常対照)を表す基準値と比較することを含み;ならびに前記レベルおよび/または前記活性が、健常と認められる状態を表す基準値と比較して変化している、変更されている、および/または疾病と認められる状態を表す基準値と類似しているもしくは同等であることによって、前記被検者の前記神経変性疾患を診断もしくは予後判定する、または前記被検者が、前記神経変性疾病を発現するリスクが増大した状態にあるかどうかを判定することを含む。「被検者における」という表現は、方法が被検者を苦しめている疾患、言い換えると被検者の「中」に存在する疾患、に関するかぎり、開示される当該方法の結果に関連している。
本発明は、本発明において開示するような核酸配列またはこれらのフラグメントもしくは変異体に独特であるプライマーおよびプローブの構築および使用にも関する。オリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブは、蛍光、生物発光、磁性または放射性物質で特異的に標識することができる。さらに、本発明は、前記特異的オリゴヌクレオチドプライマーを適切な組み合わせで使用することによる、前記核酸配列またはこれらのフラグメントとおよび変異体の検出および生産に関する。前記プライマーの組み合わせを用いてPCR分析(当業者には周知の方法)を行って、核酸を含有するサンプルから前記遺伝子特異的核酸配列を増幅させることができる。こうしたサンプルは、健常被検者または罹病被検者、いずれに由来するものであってもよい。増幅により、特異的核酸産物が生じるか否か、および異なる長さのフラグメントを得ることができるか否かは、神経変性疾患、特に、アルツハイマー病についての指標となり得る。このため、本発明は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病と関連があるかもしれない試験すべき核酸配列を含む所定のサンプルにおいてこの遺伝子突然変異および単一のヌクレオチド多様性を検出するために有用な、少なくとも塩基数10で全コードおよび遺伝子配列以下の長さの核酸配列、オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブを提供する。この特徴は、迅速なDNAベースの診断試験の開発、好ましくはキットの形態での開発に利用することができる。KCNJ6用のプライマーは、実施例(iv)において例示的に説明する。
さらなる側面において、本発明は、被検者における神経変性疾患の進行をモニターする方法を特徴とする。前記被検者から得られたサンプルにおいて(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または(iii)前記転写もしくは翻訳産物のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のレベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方を判定する。前記レベルおよび/または前記活性を、疾病または健常と認められる状態を表す基準値と比較する。これによって、前記患者における前記神経変性疾患の進行をモニターする。
なお、さらなる側面において、本発明は、神経変性疾患の治療を評価する方法を特徴とし、この方法は、前記疾患の治療を受けている前記被検者から得られたサンプルにおいて(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または(iii)前記転写もしくは翻訳産物のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のレベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方を判定することを含む。前記レベルもしくは前記活性または前記レベルと前記活性の両方を、疾病または健常と認められる状態を表す基準値と比較し、これによって前記神経変性疾患の治療を評価する。
ここで特許請求の範囲に記載する本発明の方法、キット、組換え動物、分子、アッセイおよび使用の好ましい実施態様において、前記KCNJ6(Kir3.2)遺伝子および蛋白質[G蛋白結合内向き整流カリウムイオンチャネルサブファミリーJメンバー6(以前はKCNJ7)、もしくはATP感受性カリウムチャネル(K(ATP)2という名でもある)、またはKir3.2、BIR1もしくはGIRK2とも呼ばれる]は、配列番号1(Kir3.2)(ジェンバンクアクセッション番号P48051)の蛋白質をコードするKCNJ6遺伝子によって表される。前記蛋白質のアミノ酸配列は、ジェンバンクアクセッション番号U52153(Kir3.2)のcDNA配列に対応する配列番号2(Kir3.2 cDNA)に対応するmRNA配列から導き出される。本発明において、KCNJ6は、配列番号1(ジェンバンクアクセッション番号P48051)の蛋白質をコードする配列番号2の核酸配列も指し、ならびにヒトKCNJ6のコード配列(cds)を表す核酸配列 配列番号4も指す。本発明において、前記配列は、本明細書でこの用語が用いられるとおり「単離」されている。さらに本発明において、前記KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子は、一般にはKCNJ6遺伝子もしくはKir3.2遺伝子、または単にKCNJ6もしくはKir3.2とも呼ばれる。KCNJ6またはKir3.2の蛋白質は、一般に、KCNJ6蛋白質またはKir3.2蛋白質とも呼ばれる。
ここで特許請求の範囲に記載する本発明の方法、キット、組換え動物、分子、アッセイおよび使用のさらなる好ましい実施態様において、前記神経変性疾患または障害は、アルツハイマー病であり、前記被検者は、アルツハイマー病に罹患している。
好ましくは、分析および判定されるサンプルは、脳組織もしくは他の組織または体細胞を含む群から選択される。サンプルは、脳脊髄液、または唾液、尿、血液、血清血漿もしくは粘液を含有する他の体液も含むことができる。好ましくは、本発明に従って神経変性疾患を診断する、予後判定する、または神経変性疾患の進行をモニターする、または神経変性疾患の治療を評価する方法は、体外で実施することができ、こうした方法は、好ましくは、被検者または患者または対照健常者から取り出された、採取されたまたは単離されたサンプル、例えば体液または細胞に関する。
さらなる好ましい実施態様において、前記基準値は、前記神経変性疾患に罹患していない被検者から得られたサンプル(対照健常者、対照サンプル、対照)中の、または神経変性疾患、特にアルツハイマー病に罹患している被検者から得られたサンプル(患者サンプル、患者)中の(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物の、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物の、および/または(iii)前記転写もしくは翻訳産物のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の、レベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方の基準値である。
好ましい実施態様において、健常と認められる状態を表す基準値(対照サンプル)を基準とした、前記被検者からのサンプル細胞または組織または体液におけるKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物の、および/またはKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物の、および/またはこれらのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のレベルおよび/または活性の変更は、神経変性疾患、特にADの診断もしくは予後判定、または神経変性疾患、特にADに罹病することとなるリスク増大を示す。
さらなる好ましい実施態様において、神経変性疾患、特にアルツハイマー病について疾病と認められる状態を表す基準値(AD患者サンプル)を基準にして、被検者から得られたサンプル細胞または組織または体液におけるKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物の、および/またはKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物の、および/またはこれらのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の、同等のまたは類似したレベルおよび/または活性は、前記神経変性疾患の診断もしくは予後判定、または神経変性疾患に罹病することとなるリスク増大を示す。
好ましい実施態様では、被検者から得られたサンプルにおけるKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物のレベルの測定は、被検者のサンプルから抽出したRNAの逆転写により得られたcDNAから前記遺伝子に特異的な配列を増幅するためにプライマーの組み合わせを使用する定量的PCR分析を用いて行う。プライマーの組み合わせ(配列番号5、配列番号6)は本発明の実施例(iv)において与えるが、本発明で開示する配列から作製される他のプライマーを使用することもできる。前記遺伝子に特異的なプローブでのノーザンブロットを適用することもできる。チップ利用マイクロアレイ法による転写産物の測定は、さらに好ましいであろう。これらの技法は、当業者には公知である(Sambrook and Russell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、2001;Schena M.、Microarray Biochip Technology、Eaton Publishing、Natick、MA、2000参照)。イムノアッセイの例は、特許出願国際公開第02/14543号パンフレットに開示および記載されているような酵素活性の検出および測定である。
さらに、KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物のおよび/または前記翻訳産物のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のレベルおよび/または活性、および/または前記翻訳産物のおよび/またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の活性のレベルは、イムノアッセイ、活性アッセイ、および/または結合アッセイを用いて検出することができる。これらのアッセイでは、抗蛋白質抗体または抗蛋白質抗体に結合する二次抗体のいずれかに結合する酵素標識、クロモ力学的標識、放射性標識、磁性標識または蛍光標識の使用により、前記蛋白質分子と抗蛋白質抗体との結合量を測定することができる。加えて、他の高親和性リガンドを使用してもよい。用いることができるイムノアッセイとしては、ELISA、ウエスタンブロット、および当業者には公知の他の技法が挙げられる(Harlow and Lane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1999、およびEdwards R、Immunodiagnostics:A Practical Approach、Oxford University Press、Oxford;England、1999参照)。これらすべての検出技法は、マイクロアレイ、プロテインアレイ、抗体マイクロアレイ、組織マイクロアレイ、または電子バイオチップもしくはプロテインチップに基づく技法(Schena M.、Microarray Biochip Technology、Eaton Publishing、Natick、MA、2000参照)の形式で利用することもできる。
好ましい実施態様では、一定の期間にわたって前記被検者から採取した一連のサンプルにおいて(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物の、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物の、および/または(iii)前記転写もしくは翻訳産物のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のレベルもしくは活性または前記レベルと活性の両方を比較して、前記疾病の進行をモニターする。さらなる好ましい実施態様では、前記被検者は、1つまたはそれ以上の前記サンプルの採取前に、治療を受ける。さらにもう1つの好ましい実施態様では、前記レベルおよび/または活性は、前記被検者の前記治療の前および後に判定する。
もう1つの側面において、本発明は、被検者において神経変性疾患、特にADを診断もしくは予後判定する、または神経変性疾患、特にADを発現する被検者の傾向もしくは素因を判定するためのキットを特徴とし、前記キットは、
(a)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物を選択的に検出する試薬、(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物を選択的に検出する試薬、から成る群より選択される少なくとも1つの試薬、ならびに
(b)−前記被検者から得られたサンプルにおいてKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の前記転写産物および/または前記翻訳産物のレベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の用量を検出すること、ならびに
−通常と認められる状態を示す基準値(対照)と比較して、前記転写産物および/または前記翻訳産物の変化または変更したレベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方が、および/または前記転写産物および/または前記翻訳産物のレベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方が疾病と認められる状態、好ましくはADの疾病状態、を表す基準値と類似しているか、同等であることが、神経変性疾患、特にADの診断もしくは予後判定、またはこうした疾患を発現する傾向もしくは素因の増大を示すことから神経変性疾患、特にADを診断もしくは予後判定すること、またはこうした疾患を発現する前記被検者の傾向または素因を判定すること
により、神経変性疾患、特にADを診断もしくは予後判定する、またはこうした疾患を発現する被検者の傾向もしくは素因を判定するためのインストラクションを含む。本発明のキットは、神経変性疾患、特にADを発現するリスクがある状態の個体の特定に特に有用であり得る。
さらなる側面において、本発明は、(i)前記被検者から得られたサンプルにおいて、KCNJ6をコードする遺伝子の転写産物および/または翻訳産物のレベルもしくは活性もしくは前記レベルと前記活性の両方を検出する工程、ならびに(ii)KCNJ6をコードする遺伝子の転写産物および/または翻訳産物の前記レベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方を、健常と認められる状態を表す基準値および/または疾病と認められる状態を表す基準値と比較する工程、ならびに前記転写産物および/または前記翻訳産物の前記レベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方が、健常と認められる状態を表す基準値と比較して変化している、および/または疾病と認められる状態を表す基準値と類似しているか同等であることによって被検者における神経変性疾患、特にアルツハイマー病を診断または予後判定する方法およびこうした疾患を発現する被検者の傾向または素因を判定する方法における、キットの使用を特徴とする。
従って、本発明のキットは、罹患してしまった疾病の経過とともに回復不能な障害を受けないうちに、疾病発症前の早期予防措置または治療的診療をするために個体を特定することを目的とする手段として役立ち得る。さらに、好ましい実施態様において、本発明を特徴とするキットは、被検者における神経変性疾患、特にADの進行のモニター、ならびに前記被検者のこうした疾患に対する治療的処置の成功または失敗のモニターに有用である。
もう1つの側面において、本発明は、被検者において神経変性疾患、特にADを治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または(iii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または(iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のレベルもしくは活性または前記レベルと前記活性の両方に直接または間接的に影響を及ぼす単数または複数の薬剤の治療有効量または予防有効量での前記被検者への投与を含む。前記薬剤は、小分子を含むことができ、またはペプチド、オリゴペプチドもしくはポリペプチドを含むこともできる。前記ペプチド、オリゴペプチドまたはポリペプチドは、KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物であるアミノ酸配列またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体を含むことができる。本発明の、神経変性疾患、特にADを治療または予防するための薬剤は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドからも成り得る。前記オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、センスの方向でまたはアンチセンスの方向いずれかのKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列を含むことができる。
好ましい実施態様において、この方法は、遺伝子療法および/またはアンチセンス核酸技術のこれ自体公知の方法を適用して、前記単数または複数の薬剤を投与することを含む。一般に、遺伝子療法は幾つかのアプローチを含む:突然変異遺伝子の分子置換、結果として治療用蛋白質を合成することとなる新たな遺伝子の付加の、および組換え発現法によるもしくは薬物による内因性細胞性遺伝子発現の調節。遺伝子導入技法は、詳細に説明されており(Behr、Acc Chem Res 1993、26:274−278、およびMulligan、Science 1993、260:926−931参照)、直接遺伝子導入技法、例えば、細胞へのDNAのメカニカルマイクロインジェクション、ならびに生物ベクター(例えば、組換えウイルス、特にレトロウイルス)もしくはモデルリポソームを利用する間接的技法、またはDNAでのトランスフェクション、ポリカチオンとの共沈、化学物質(溶媒、界面活性剤、ポリマー、酵素)もしくは物理的手段(機械衝的ショック、浸透圧ショック、熱ショック、電気ショック)による細胞膜通過に基づく技法を含む。中枢神経系への生後遺伝子導入は、詳細に説明されている(例えば、Wolff、Curr Opin Neurobiol 1993、3:743−748参照)。
特に、本発明は、アンチセンス核酸療法、すなわち一定の重要な細胞へのアンチセンス核酸またはこの誘導体の導入による不適切に発現されたまたは欠損した遺伝子のダウンレギュレーション(例えば、Gillespie、DN&P 1992、5:389−395;Agrawal and Akhtar、Trends Biotechnol 1995、13:197−199;Crooke、Biotechnology 1992、10:882−6参照)、によって、神経変性疾患を治療または予防する方法を特徴とする。ハイブリダイゼーション戦略は別として、疾病のメッセージを運ぶRNAを破壊するリボザイム、すなわち酵素として作用するRNA分子、の適用も説明されている(例えば、Barinaga、Science 1993、262:1512−1514参照)。好ましい実施態様において、治療すべき被検者は人間であり、治療用アンチセンス核酸またはこの誘導体は、KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物に対してのものである。被検者の中枢神経系、好ましくは脳の細胞をこうした方法で治療することが好ましい。細胞透過は、アンチセンス核酸およびこの誘導体と担体粒子のカップリングなどの公知の戦略、または上で説明した技法によって行うことができる。ターゲティングした治療用オリゴデオキシヌクレオチドを投与するための戦略は、当業者には公知である(例えば、Wickstrom、Trends Biotechnol 1992、10:281−287参照)。場合によっては、単なる局所適用により送達を行うことができる。さらなるアプローチは、アンチセンスRNAの細胞内発現に関する。この戦略では、ターゲット核酸の一定の領域に相補的なRNAの合成を指図する組換え遺伝子で、細胞をエクスビボで形質転換する。細胞内で発現されたアンチセンスRNAの治療使用は、遺伝子療法に手順が類似している。RNA干渉(RNAi)として様々に知られている2本鎖RNAの使用により遺伝子の細胞内発現を調節する最近開発された方法は、核酸療法のもう1つの有効なアプローチであり得る(Hannon、Nature 2002、418:244−251)。
さらなる好ましい実施態様において、Kir3.2サブユニットから成るカリウムチャネルに対する、またはKir3.2サブユニットとKir3.1および/もしくはKir3.3サブユニットおよび/もしくは他のカリウムチャネルサブユニットとから成るヘテロメリックカリウムチャネルに対する化合物および/または薬剤の効果を調査する方法を提供する。これによって、適切な細胞、例えばCHO−K1細胞、COS−7細胞もしくHEK293細胞において、または他のニューロン細胞系統において、単独で発現された、またはKir3.1および/もしくはKir3.3および/もしくは別のカリウムチャネルと共発現されたKir3.2によって媒介されるカリウム電流に対する化合物および/または薬剤の電気生理学的効果を試験する。前記試験を行うために、ヒト遺伝子産物Kir3.2をコードするcDNAを適切な発現ベクターにクローニングする。Kir3.1および/またはKir3.3を、および/または別のカリウムチャネルをコードするcDNAを別の適切な発現ベクターにクローニングする。上で述べたような適切な細胞系統を、好ましくはDMRIE−C(カチオン性脂質 1、2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド−コレステロールのリポソーム製剤)などの試薬を使用して、前記プラスミドでトランスフェクトする。電位固定モードでパッチクランプ試験を行うことができ(Hamillら、Pflugers Arch.1981、391:85−100)、全細胞電流を記録し、得られたシグナルは、適切なソフトウェア、例えば、Pulse/Pulsefit(ドイツ、ランブレヒト(Lambrecht)のHEKA)を使用して増幅し、デジタル化し、保存し、分析することとなる。電流の「ランダウン」または「ランナップ」が(Varnumら、Pro.Natl.Acad.Sci.USA 1993、90:11528−11532)化合物および/または薬剤効果の評価には強すぎるままである場合には、不特定の電流増幅変化を防止する穿孔パンチクランプ法(Dartら、J.Physiol.1995、483:29−39;Dinesh & Hablitz、Brain Res.1990、535:318−322)を用いて、前記カリウムチャネルの媒介電流の調査を行うことができる。単独のKir3.2に対する、またはKir3.1および/またはKir3.3および/または別のカリウムチャネルと共発現されたKir3.2に対する試験化合物の効果および可逆性を調査するための刺激プロトコルの例を下に示す。細胞は、例えば、−60mVの保持電位で固定することとなる。パルスサイクル速度は、15秒であり得る。化合物および/または薬剤を試験するために、安定的にトランスフェクトされた細胞を、例えば100ミリ秒または250ミリ秒または500ミリ秒間に−50mVの保持電位から、−10または−20mv刻みで例えば−160mVに過分極させ、この後、例えば+90mVに1秒脱分極させることができる。試験パルスの最終時点での+90mVへの電流増幅を分析に用いることとなろう。この方法は、単独のKir3.2の、またはKir3.1および/またはKir3.3および/または別のカリウムチャネルと共発現されたKir3.2の生物物理学的特性を開始させる、終了させる、活性化する、不活性化するまたは変調することができる化合物および/または薬剤の特定および試験にも適する。こうして特定および試験されたカリウムチャネル、特に内向き整流カリウムチャネルの変調因子は、学習および記憶機能に影響を及ぼす可能性があり得、例えば神経変性疾患、特にアルツハイマー病のための治療アプローチに用いることができる。
さらなる好ましい実施態様において、この方法は、前記被検者の中枢神経系、好ましくは脳に、ドナー細胞または好ましくは移植拒絶反応を最小化もしくは低減するように処理したドナー細胞を移植することを含み、前記ドナー細胞は、前記単数または複数の薬剤をコードする少なくとも1つのトランスジーンの挿入によって遺伝子修飾されている。前記トランスジーンは、ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターにより担持されていよう。トランスジーンは、トランスジーンをコードするDNAの非ウイルス性物理的トランスフェクションによって、特にマイクロインジェクションによって、ドナー細胞に挿入することができる。トランスジーンの挿入は、エレクトロポレーション、化学媒介トランスフェクション、特にリン酸カルシウムトランスフェクションまたはリポソーム媒介トランスフェクションによって行うこともできる(Mc Celland and Pardee、Expression Genetics:Accelerated and High−Throughput Methods、Eaton Publishing、Natick、MA、1999参照)。
好ましい実施態様において、神経変性疾患、特にADを治療および予防するための前記薬剤は、前記被検者に被検者細胞を導入することを含むプロセスによって前記被検者、好ましくは人間に投与することができる治療用蛋白質であり、前記被検者細胞は、前記治療用蛋白質をコードするDNAセグメントを挿入するためにインビトロで処理されており、前記被検者細胞は、前記被検者において前記治療用蛋白質の治療有効量をインビボで発現する。前記DNAセグメントは、ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターにより前記細胞にインビトロで挿入することができる。
本発明の治療方法は、以前に説明されている任意の細胞および遺伝子治療方法と併用での、治療的クローニング、移植、ならびに胚性幹細胞または胚性生殖細胞およびニューロン成熟幹細胞を使用する幹細胞療法を適用することを含む。幹細胞は、全能または多能性であり得る。これらは、器官特異的でもあり得る。罹病および/または損傷した脳細胞または組織を修復する戦略は、(i)成熟組織からドナー細胞を採取することを含む。これらの細胞の核を、遺伝物質を除去した無精卵細胞に移植する。胚性幹細胞を、体細胞核導入を受けた細胞の胚盤胞期から単離する。この後、分化因子の使用により、この幹細胞を分化した細胞タイプ、好ましくはニューロン細胞に、直接発達させる(Lanzaら、Nature Medicine 1999、9:975−977)。または(ii)インビトロでの増殖(expansion)およびこの後のグラフトおよび移植のために、中枢神経系から単離された成熟幹細胞もしくは骨髄から単離された成熟幹細胞(間葉幹細胞)を精製し、または(iii)内在性神経幹細胞を増殖する、移行する、および機能的ニューロンに分化するように直接誘導する(Peterson DA、Curr.Opin.Pharmacol.2002、2:34−42)。成熟神経幹細胞は、成熟脳の胚中心にはニューロンの損傷または機能不全がないので、損傷または罹病した脳組織を修復するための大きな可能性を秘めている(Colman A、Drug Discovery World 2001、7:66−71)。
好ましい実施態様において、本発明の治療または予防のための被検者は、ヒト、または非ヒト実験動物(例えば、マウスもしくはラット)、家畜、もしくは非ヒト霊長類であり得る。実験動物は、神経変性疾患のための動物モデル、例えば、AD型神経病理を有するトランスジェニックマウスおよび/またはノックアウトマウスであり得る。
さらなる側面において、本発明は、(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または(iii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または(iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体から成る群より選択される少なくとも1つの物質の活性もしくはレベルまたは前記活性と前記レベルの両方の変調因子を特徴とする。
追加の側面において、本発明は、前記変調因子および好ましくは医薬用担体を含む医薬組成物を特徴とする。前記担体は、前記変調因子と共に投与する、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。
もう1つの側面において、本発明は、神経変性疾患、特にADを治療または予防するための医薬品を調製するための、(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または(iii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または(iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体から成る群より選択される少なくとも1つの物質の活性もしくはレベルまたは前記活性と前記レベルの両方の変調因子の使用を提供する。
1つの側面において、本発明は、前記医薬組成物の治療または予防有効量が充填された1つまたはそれ以上の容器を含むキットも提供する。
さらなる側面において、本発明は、非天然KCNJ6遺伝子配列またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体を含む、組換え非ヒト動物を特徴とする。前記組換え非ヒト動物の産生は、(i)前記遺伝子配列および選択可能なマーカー配列を含む遺伝子ターゲティング構築物を提供する工程、(ii)前記ターゲティング構築物を非ヒト動物の幹細胞に導入する工程、(iii)前記非ヒト動物幹細胞を非ヒト胚に導入する工程、(iv)前記胚を偽妊娠非ヒト動物に移植する工程、(v)前記胚を満期まで発達させる工程、(vi)ゲノムが両方の対立遺伝子に前記遺伝子配列の修飾を含む遺伝子改変非ヒト動物を特定する工程、(vii)工程(vi)の遺伝子改変非ヒト動物を繁殖させて、ゲノムが前記内因性遺伝子の修飾を含む遺伝子改変非ヒト動物を得る工程を含み、前記遺伝子は、誤発現、または減少発現または過発現され、および前記破壊または変更が、神経変性疾患、特にADの症状を発現する素因を示す前記非ヒト動物を生じさせる。こうした動物の産生および構築のための戦略および技術は、当業者には公知である(例えば、Capecchi、Science 1989、244:1288−1292、およびHoganら、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1994、およびJackson and Abbott、Mouse Genetics and Transgenics:A Practical Approach、Oxford University Press、Oxford、England、1999参照)。神経変性疾患、特にアルツハイマー病を調査するために動物モデルとしてこうした組換え非ヒト動物を使用することは好ましい。こうした動物は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病を治療するための診断薬および治療薬の開発の際の化合物、薬剤および変調因子のスクリーニング、試験および評価に有用であり得る。
もう1つの側面において、本発明は、(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または(iii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または(iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体から成る群より選択される1つまたはそれ以上の物質の、神経変性疾患、特にAD、または関連疾患および障害の変調因子をスクリーニングするためのアッセイを特徴とする。このスクリーニング法は、(a)細胞を試験化合物と接触させる工程;(b)(i)から(iv)に列挙した1つまたはそれ以上の物質の活性もしくはレベルまたは活性とレベルの両方を測定する工程;(c)前記試験化合物と接触させていない対照細胞において、前記物質の活性もしくはレベルまたは活性とレベルの両方を測定する工程;ならびに(d)工程(b)および(c)の細胞における前記物質のレベルおよび/または活性を比較する工程を含み、接触させた細胞における前記物質の活性および/またはレベルの変更は、この試験化合物が前記疾患または障害の変調因子であることを示す。
1つのさらなる側面において、本発明は、(i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または(ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または(iii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または(iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体から成る群より選択される1つまたはそれ以上の物質の、神経変性疾患、特にAD、または関連疾患および障害の変調因子についてのスクリーニングアッセイを特徴とし、このアッセイは、(a)神経変性疾患または関連疾患もしくは障害の症状を発現する素因があるか、既に発現している非ヒト試験動物に試験化合物を投与する工程;(b)(i)から(iv)に列挙した1つまたはそれ以上の物質の活性および/またはレベルを測定する工程;(c)神経変性疾患の前記症状を発現する素因が同程度にあるか、又は既に発現していて、且つこうした試験化合物を投与されたことがない対応非ヒト対照動物において、前記物質の活性および/またはレベルを測定する工程;ならびに(d)工程(b)および(c)の動物における前記物質の活性および/またはレベルを比較する工程を含み、試験動物における物質の活性および/またはレベルの変更は、この試験化合物が前記疾患または障害の変調因子であることを示す。
好ましい実施態様において、前記試験動物および/または前記対照動物は、天然KCNJ6蛋白質遺伝子転写制御要素ではない転写制御要素の制御下で、KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくはこの誘導体を発現する組換え非ヒト動物である。
もう1つの実施態様において、本発明は、(i)上述のスクリーニングアッセイの方法によって神経変性疾患の変調因子を特定する工程、および(ii)この変調因子を医薬用担体と混合する工程を含む、医薬品の製造方法を提供する。しかし、前記変調因子は、他のタイプのスクリーニングアッセイによって同定することもできる。
もう1つの側面において、本発明は、リガンドとKCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体との結合を阻害する1つの化合物を試験するため、好ましくは多数の化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。前記スクリーニングアッセイは、(i)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の懸濁液を多数の容器に添加する工程;(ii)1つの化合物、または前記阻害についてスクリーニングされる多数の化合物を前記多数の容器に添加する工程;(iii)検出可能な、好ましくは蛍光標識されたリガンドを前記容器に添加する工程;(iv)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体、および前記化合物または多数の化合物、および前記検出可能な、好ましくは蛍光標識されたリガンドをインキュベートする工程;(v)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体に結合した好ましくは蛍光の量を測定する工程;ならびに(vi)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体への前記リガンドの結合に対する1つまたはそれ以上の前記化合物による阻害度を判定する工程を含む。リガンドと前記KCNJ6翻訳産物との結合に対する阻害を判定するために、前記KCNJ6転写産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体を人工リポソームに再構成して、対応するプロテオリポソームを作製することが好ましいこともある。
界面活性剤からリポソームにKCNJ6翻訳産物を再構成する方法が詳述されている(Schwarzら、Biochemistry 1999、38:9456−9464;Krivosheev and Usanov、Biochemistry−Moscow 1997、62:1064−1073)。一部の側面では、蛍光標識リガンドを利用する代わりに当業者には公知の任意の他の検出可能な標識、例えば放射標識を使用し、これを然るべく検出することが好ましいことがある。前記方法は、新規化合物の特定に、ならびにKCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体をコードする遺伝子の遺伝子産物へのリガンドの結合を阻害する能力が改善されたか、または別様に最適化された化合物の評価に有用であり得る。蛍光結合アッセイ(この場合、担体粒子の使用に基づくもの)の一例は、特許出願国際公開第00/52451号パンフレットにおいて開示され、説明されている。さらなる例は、特許国際公開第02/01226号パンフレットに記載されているような競合アッセイ法である。本発明のスクリーニングアッセイに好ましいシグナル検出方法は、以下の特許出願に記載されている:国際公開第96/13744号パンフレット、同第98/16814号パンフレット、同第98/23942号パンフレット、同第99/17086号パンフレット、同第99/34195号パンフレット、同第00/66985号パンフレット、同第01/59436号パンフレット、同第01/59416号パンフレット。
1つのさらなる実施態様において、本発明は、医薬品を製造するための方法を提供し、この方法は、(i)上述の阻害性結合アッセイによって、リガンドとKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の遺伝子産物との結合の阻害剤としての化合物を特定する工程;および(ii)前記化合物と医薬用担体を混合する工程を含む。しかし、前記化合物は、他のタイプのスクリーニングアッセイによって特定することもできる。
もう1つの側面において、本発明は、KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体への化合物の結合度を判定するために、1つの化合物を試験するための、好ましくは多数の化合物をスクリーニングするためのアッセイを特徴とする。前記スクリーニングアッセイは、(i)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の懸濁液を多数の容器に添加する工程;(ii)検出可能な、好ましくは蛍光標識された化合物、または前記結合についてスクリーニングされる、多数の検出可能な、好ましくは蛍光標識された化合物を、前記多数の容器に添加する工程;(iii)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体、および前記検出可能な、好ましくは蛍光標識された化合物(単数)または検出可能な好ましくは蛍光標識された化合物(複数)をインキュベートする工程;(iv)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体に結合する好ましくは蛍光の量を測定する工程;ならびに(v)前記KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体への1つまたはそれ以上の前記化合物による結合度を判定する工程を含む。このタイプのアッセイでは、蛍光標識の使用が好ましいだろう。しかし、任意の他のタイプの検出可能な標識を利用してもよい。また、このタイプのアッセイでは、本発明において説明するような人工リポソームへのKCNJ6翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の再構成が好ましいだろう。前記アッセイ方法は、新規化合物の特定に、ならびにKCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体に結合する能力が改善されたか、または別様に最適化された化合物の評価に有用であり得る。
1つのさらなる実施態様において、本発明は、医薬品を製造するための方法を提供し、この方法は、(i)上述の結合アッセイによって、KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の遺伝子産物への結合剤として化合物を特定する工程;および(ii)前記化合物と医薬用担体を混合する工程を含む。しかし、前記化合物は、他のタイプのスクリーニングアッセイによって特定することもできる。
もう1つの実施態様において、本発明は、ここで特許請求の範囲に記載するスクリーニングアッセイの方法のいずれかによって得ることができる医薬品を提供する。1つのさらなる実施態様において、本発明は、ここで特許請求の範囲に記載するスクリーニングアッセイの方法のいずれかによって得られる医薬品を提供する。
さらに、もう1つの側面において、本発明は、蛋白質分子、および神経変性疾患、特にアルツハイマー病を検出するための診断ターゲットとしての配列番号1を有する前記蛋白質分子の使用を特徴とし、Kir3.2の前記蛋白質分子は、KCNJ6をコードする遺伝子の翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体である。
本発明は、蛋白質分子、および神経変性疾患、特にアルツハイマー病を予防または治療または改善する薬剤および化合物のためのスクリーニングターゲットとしての配列番号1を有する前記蛋白質分子の使用をさらに特徴とし、前記蛋白質分子Kir3.2は、KCNJ6をコードする遺伝子の翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体である。
本発明は、免疫原と特異的に免疫反応する抗体を特徴とし、前記免疫原は、配列番号1を有するKir3.2蛋白質をコードする遺伝子KCNJ6の翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体である。この免疫原は、前記遺伝子の翻訳産物の免疫原性または抗原性エピトープまたは部分を含むことができ、翻訳産物の前記免疫原性または抗原性部分はポリペプチドであり、前記ポリペプチドは動物における抗体反応を惹起し、前記ポリペプチドに前記抗体が免疫特異的に結合する。抗体を産生させるための方法は、当分野では周知である(Harlowら、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1988参照)。本発明で用いる用語「抗体」は、当分野において公知のすべての形態の抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、組換え抗体、抗イディオタイプ抗体、ヒト化抗体または1本鎖抗体、ならびにこれらのフラグメントを包含する(Dubel and Breitling、Recombinant Antibodies、Wiley−Liss、New York、NY、1999参照)。本発明の抗体は、例えば、エンザイムイムノアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着分析、ELISA)、ラジオイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、ウエスタンブロット、免疫沈降法および抗体マイクロアレイなどの最先端技術に基づく様々な診断および治療方法(Harlow and Lane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1999 and Edwards R.、Immunodiagnostics:A Practical Approach、Oxford University Press、Oxford、England、1999参照)に有用である。これらの方法は、KCNJ6遺伝子の翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の検出を含む。
本発明の好ましい実施態様において、前記抗体は、被検者から得られたサンプル中の細胞の病的状態の検出に使用することができ、この検出は、前記抗体での前記細胞の免疫細胞化学的染色を含み、健常と認められる状態を表す細胞と比較したときの前記細胞細胞における染色度の変更または染色パタンの変更は、前記細胞の病的状態を示す。好ましくは、前記病的状態は、神経変性疾患、特にADと関係がある。細胞の免疫細胞化学的染色は、当分野では周知の多数の種々の実験法によって行うことができる。しかし、細胞の染色度の判定、または細胞もしくは細胞内染色パタンの判定、または細胞表面上の抗原の位相分布もしくは細胞内の細胞器官および他の細胞内構造中の抗原の位相分布を米国特許第6150173号に記載されている方法に従って行う、抗体結合の自動検出法を適用することが好ましいであろう。
本発明の他の特徴および利点は、後続の図および実施例の説明から明らかになろう。これらの説明は、単に実例となるものであり、いかなる点においても本開示の残りの部分を制限するためのものではない。
(i)AD患者からの脳組織摘出:
平均で、死後6時間以内にAD患者および同年齢の対照被検者から脳組織を採取し、ドライアイスで直ちに冷凍した。各組織からのサンプル切片を、診断の組織病理学的確認のために、パラホルムアルデヒドで固定した。差次的発現を分析するための脳領域を特定し、RNA抽出を行うまで−80℃で保存した。
(ii)全mRNAの単離:
RNeasyキット(Qiagen)をこの製造業者のプロトコルに従って使用することにより、死後脳組織から全RNAを抽出した。Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)を使用してDNA LabChipシステムで正確なRNA濃度およびRNAの質を決定した。調製したRNAの追加の品質検査、すなわち部分的分解の排除およびDNA汚染についての検査のために、特別に設計したイントロンGAPDHオリゴヌクレオチドおよび基準対照としてのゲノムDNAを利用して、LightCycler technologyで、この製造業者(Roche)による提供プロトコルに記載されているとおり溶融曲線を作製した。
(iii)蛍光ディフェレンシャルディスプレイ(FDD)による差次的発現遺伝子のcDNA合成および特定:
種々の組織における遺伝子発現の変化を特定するために、修正および改良ディフェレンシャルディスプレイ(DD)スクリーニング法を利用した。元のDDスクリーニング法は、当業者には公知である(Liang and Pardee、Science 1995、267:1186−7)。この技法は、RNAの2つの集団を比較し、一方の集団で発現されるが他方では発現されない遺伝子のクローンを生じさせる。幾つかのサンプルを同時に分析し、アップレギュレートされた遺伝子とダウンレギュレートされた遺伝子の両方を同じ実験で特定することができる。DD法における幾つかの工程を調整および洗練すること、ならびに技術的パラメータを修正すること、例えば重複性を増させること、全RNAの逆転写のための最適化された試薬および条件を評価すること、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を最適化しこの産物を分離することにより、非常に再現性がある高感度の結果を可能ならしめる技術が開発された。この応用改良DD法は、von der Kammerら(Nucleic Acids Research 1999、27:2211−2218)によって記載されている。64の特別設計ランダムプライマーのセット(標準セット)を開発して、すべての可能なRNA種の統計的総合分析を達成した。さらに、この方法を修正して、蛍光標識プライマーの使用に基づく分取DDスラブゲル法を作製した。本発明では、アルツハイマー病患者および同年齢の対照被検者の注意深く選択された死後脳組織(前頭および側頭皮質)からのRNA集団を比較した。
DD分析のための出発原料として、本発明者らは、上(ii)で説明したとおり抽出した全RNAを使用した。0.5mMの各dNTP、1μLのSensiscript Reverse Transcriptaseおよび1x RTバッファ(Qiagen)、10UのRNアーゼ阻害剤(Qiagen)ならびに1μMのいずれかの一塩基アンカー型オリゴヌクレオチド HT11A、HT11GまたはHT11C(Liangら、Nucleic Acids Research 1994、22:5763−5764;Zhaoら、Biotechniques 1995、18:842−850)を含有する20μLの反応物中のcDNAに、0.05μgの等量の各RNAは転写された。逆転写は、60分間、37℃で行い、最終変性工程は、93℃で5分間行った。得られた各cDNAの2μLは、対応する一塩基アンカー型オリゴヌクレオチド(1μM)と共にCy3標識ランダムDDプライマーのいずれか1つ(1μM)、1x GeneAmp PCRバッファ(Applied Biosystems)、1.5mMのMgCl( Applied Biosystems)、2μMのdNTP−Mix(dATP、dGTP、dCTP、dTTP Amersham Pharmacia Biotech)、5%のDMSO(Sigma)、1UのAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を利用する、最終体積20μLでのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に付した。PCR条件は、次のように設定した:変性のために94℃で30秒間、1℃/秒で40℃に冷却、プライマーの低ストリンジェンシーアニーリングのために40℃で4分間、1℃/秒で72℃まで加熱、伸長のために72℃で1分間を1ラウンド。このラウンドの後に39の高ストリンジェンシーサイクルを行った:94℃で30秒間、1℃/秒で60℃に冷却、60℃で2分間、1℃/秒で72℃まで加熱、72℃で1分間。72℃で5分間の1の最終段階を最終サイクルに加えた(PCRサイクラー:Multi Cycler PTC 200、MJ Research)。8μLのDNAローティングバッファを20μLのPCR産物試料に添加し、5分間変性し、これをゲルにローディングさせるまで氷上で保持した。2000V、60W、30mAで1時間40分間、スラブゲルシステム(Hitachi Genetic Systems)で0.4mm厚の6%ポリアクリルアミド(Long Ranger)/7M 尿素シーケンシングゲルを用いて、各3.5μLを分離した。電気泳動完了後、適切なFMBIO II Analysis 8.0ソフトウェアを用いて、FMBIO II 蛍光スキャナー(Hitachi Genetic Systems)でゲルをスキャンした。原寸大の写真をプリントし、差次発現されたバンドにしるしをつけ、ゲルから切り取り、1.5mL容器に移し、200μLの滅菌水をかぶせ、これを抽出まで−20℃で保存した。
DD産物の溶離および再増幅: 200μLのHO中で10分間沸騰させ、氷上で冷却し、エタノール(Merck)およびグリコーゲン/酢酸ナトリウム(Merck)の使用により−20℃で一晩、上清液から沈降させ、この後、13.000rpmで25分間、4℃で遠心分離することにより、ゲルから差次的バンドを抽出した。ペレットを氷冷エタノール(80%)で2回洗浄し、10mMのTris pH8.3(Merck)に再び懸濁させ、0.025μmのVSWP膜(Millipore)を用いて室温で1時間、10%グリセロール(Merck)で透析した。94℃で5分間の最初のラウンド、この後の、94℃で45秒間、60℃で45秒間、1℃/秒で70℃にして70℃で45秒間という15のサイクルおよび1回の72℃で5分間の最終工程を除き、DD PCR(上記参照)と同じ条件下で、DD PCRのために使用したような対応するプライマー対を含有する25μLのPCR混合物中において15回の高ストリンジェンシーサイクルによる再増幅をするために、テンプレートとして得られた試料を使用した。
DD産物のクローニングおよび配列決定: 再増幅したcDNAをDNA LabChipシステム(Agilent 2100 Bioanalyzer、Agilent Technologies)で分析し、製造業者のインストラクションに従って、pCR−Blunt II−TOPOベクターにライゲートし、大腸菌Top10F’細胞に形質転換した(Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit、Invitrogen)。クローニングしたcDNAフラグメントを、市販の配列決定プログラムにより配列決定した。KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子についてのこうしたFDD実験の結果を図1に示す。
(iv)定量的RT−PCRによる差次的発現の確認:
LightCycler technology(Roche)を使用して、差次的KCNJ6遺伝子発現の明確な実証を行った。この技法は、ポリメラーゼ連鎖反応の高速熱サイクリング、ならびに増幅中の蛍光シグナルの現時間測定を特徴とし、従って、終点読み出しではなく反応速度を利用することによりRT−PCR産物の非常に正確な定性を可能ならしめる。AD患者および同年齢対照健常者の側頭皮質からのKCNJ6 cDNAの比率、AD患者および同年齢の対照健常者の前頭皮質からのKCNJ6 cDNAの比率、ならびにAD患者および同年齢の対照健常者の側頭皮質および前頭皮質からのKCNJ6 cDNAそれぞれの比率を決定した(相対特定)。
KCNJ6の前頭皮質組織(F)と下側頭皮質組織(T)の間のmRNA発現プロファイリングを、1つのBraak期につき4個から9個までの組織で分析した。Braak 3病理を有する1人のドナーからの高品質な組織がなかったため、Braak 2病理を有する1人の追加ドナーの組織を含め、ならびにBraak 6病理を有する1人のドナーからの高品質な組織がなかったため、Braak 5病理を有する1人の追加ドナーの組織サンプルを含めた。
プロファイリングの分析には、2つの一般的なアプローチを適用した。AD生理へのKCNJ6の関連性の複雑な考察の一助となる両方の比較プロファイリング研究(下側頭皮質に対して前頭皮質、ならびにAD患者に対して対照)を下に詳説する。
1)対照およびAD患者それぞれの前頭皮質組織と下側頭皮質との間のmRNA発現の相対比較。
このアプローチによって、この特定された遺伝子KCNJ6が、易損性の低い方の組織(前頭皮質)の変性からの防護に関与している、または易損性の高いほうの組織(下側頭皮質)における変性プロセスの増進に関与していることを証明することができる。
先ず、標準曲線を作製して、KCNJ6をコードする遺伝子の特異的プライマーでのPCRの効率を判定する:プライマーA、配列番号5、5’−CATTTGTGGCCCAAGCCT−3’(配列番号2のヌクレオチド2148から2165)およびプライマーB、配列番号6、3’−ACCTGGGATATGACAAGCAAGG−5’(配列番号2のヌクレオチド2271から2292)。LightCycler−FastStart DNA Master SYBR Green I mix(FastStart Taq DNAポリメラーゼ、反応バッファ、dTTPではなくdUTPを伴うdNTPミックス、SYBR Green I色素、および1mMのMgClを含有する;Roche)、0.5μMのプライマー、2μLのcDNA稀釈系(最終濃度40、20、10、5、1および0.5ngのヒト全脳cDNA;Clontech)および使用するプライマーによっては追加で3mMのMgClを含有する20μLの体積で、PCR増幅(95℃および1秒、56℃および5秒、ならびに72℃および5秒)を行った。溶融曲線分析は、約81.5℃で単一ピークを示し、プライマー二量体は見えなかった。PCR産物の質およびサイズを、DNA LabChipシステム(Agilent 2100 Bioanalyzer、Agilent Technologies)で判定した。サンプルの電気泳動図では、KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子についての145bpの予測サイズで単一ピークが観察された。
類似に、PCRプロトコルを、定量のための標準試料として選択した1セットの標準遺伝子のPCR効率の判定に適用した。本発明では、5つのこうした標準遺伝子の平均値を決定した:(1)シクロフィリンB、MgClを除き(3mMではなく追加で1mMを添加した)、特異的プライマー 配列番号7、5’−ACTGAAGCACTACGGGCCTG−3’および配列番号8、5’−AGCCGTTGGTGTCTTTGCC−3’を使用。溶融曲線分析は、約87℃で単一のピークを示し、プライマー二量体は見えなかった。PCR産物のアガロースゲル分析は、予想サイズ(62bp)の単一バンドを1つ示した。(2)リボソーム蛋白S9(RPS9)、特異的プライマー 配列番号9、5’−GGTCAAATTTACCCTGGCCA−3’および配列番号10、5’−TCTCATCAAGCGTCAGCAGTTC−3’(例外:3mMではなく追加で1mMのMgClを添加した)。溶融曲線は、約85℃で単一ピークを示し、プライマー二量体は見えなかった。PCR産物のアガロースゲル分析は、予測サイズ(62bp)を有する単一バンドを1つ示した。(3)ベータ−アクチン、特異的プライマー 配列番号11、5’−TGGAACGGTGAAGGTGACA−3’および配列番号12、5’−GGCAAGGGACTTCCTGTAA−3’を使用。溶融曲線は、約87℃で単一ピークを示し、プライマー二量体は見えなかった。PCR産物のアガロースゲル分析は、予測サイズ(142bp)を有する単一バンドを1つ示した。(4)GAPDH、特異的プライマー 配列番号13、5’−CGTCATGGGTGTGAACCATG−3’および配列番号14、5’−GCTAAGCAGTTGGTGGTGCAG−3’を使用。溶融曲線は、約83℃で単一ピークを示し、プライマー二量体は見えなかった。PCR産物のアガロースゲル分析は、予測サイズ(81bp)を有する単一バンドを1つ示した。(5)トランスフェリン受容体 TRR、特異的プライマー 配列番号15、5’−GTCGCTGGTCAGTTCGTGATT−3’および配列番号16、5’−AGCAGTTGGCTGTTGTACCTCTC−3’を使用。溶融曲線は、約83℃で単一ピークを示し、プライマー二量体は見えなかった。PCR産物のアガロースゲル分析は、予測サイズ(80bp)を有する単一バンドを1つ示した。
値を計算するために、先ず、cDNA濃度の対数を、KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子および5つの標準試料遺伝子についての閾値サイクル数Cに対してプロットした。この標準曲線の傾きおよび切片(すなわち線形回帰)をすべての遺伝子について計算した。第二工程では、AD患者および対照健常者の前頭皮質からのcDNA、AD患者および対照健常者の側頭皮質からのcDNA、ならびにAD患者および対照健常者の前頭皮質および側頭皮質からのcDNA、それぞれを、並行して分析し、シクロフィリンBに正規化した。C値を測定し、対応する標準曲線:
10^(C値−切片)/傾き [ng全脳cDNA]
を用いてng全脳cDNAに変換した。
側頭および前頭皮質KCNJ6 cDNAについての値、ならびにAD患者(P)および対照者(C)の前頭皮質KCNJ6 cDNAについての値、ならびにAD患者(P)および対照者(C)の側頭皮質KCNJ6 cDNAについての値、それぞれを、シクロフィリンBに正規化し、式:
Figure 2007535959
Figure 2007535959
Figure 2007535959
に従って比を計算した。
第三工程では、標準曲線遺伝子のセットを並行して分析して、個々の脳サンプル各々についての標準試料遺伝子の発現レベルについて、AD患者対対照者側頭皮質比の平均値、AD患者対対照者前頭皮質比の平均値、ならびにAD患者および対照者それぞれの側頭対前頭比の平均値を決定した。シクロフィリンBを第二および第三工程で分析し、遺伝子間の比が異なるランで一定のままであったので、KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の値を、ある単一遺伝子のみに正規化するのではなく、標準試料遺伝子のセットの平均値に正規化することができた。計算は、上に示したそれぞれの比をすべてのハウスキーピング遺伝子の平均値からのシクロフィリンBの偏差で割ることによって行った。KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子についてのこうした定量的RT−PCR分析の結果を図2、3、11に示す。
2)対照とAD患者とのmRNA発現の比較
この分析のために、異なる時点での異なる実験間の現時間定量的PCRの絶対値(Lightcycler法)に、定量的比較に用いることができる十分な一貫性があり、較正の必要がないことを証明した。100を超える組織についてのENS qPCR実験のいずれにおいても、正規化のための標準物質としてシクロフィリンを使用した。中でも、これが、本発明者らの正規化実験において最も一貫して発現されるハウスキーピング遺伝子であることが判った。このため、シクロフィリンに対して生じさせた値を用いて概念の証明を行った。
最初の分析には、3人の異なるドナーからの前頭皮質および下側頭皮質組織のqPCR実験からのシクロフィリン値を用いた。各組織からの同じcDNA試料をすべての分析実験で用いた。デー多数が少なかったため、この分析の範囲内で値の正規分布を得ることができなかった。このため、中央値およびこの98%信頼レベルの方法を適用した。この分析は、絶対値の比較について中央値から8.7%の中央偏差、および相対比較について中央値からの6.6%の中央偏差を示した。
第二の分析には、2人の異なるドナー各々からの前頭皮質および下側頭皮質のqPCR実験からのシクロフィリン値を用いたが、異なる時点からの異なるcDNA試料を用いた。この分析は、絶対値の比較について中央値からの29.2%の中央偏差、および相対比較について中央値からの17.6%の中央偏差を示した。この分析から、qPCR実験からの絶対値を用いることができるが、中央値からの中央偏差をさらに考慮に入れなければならいという結論を下した。KCNJ6について絶対値の詳細な分析を行った。従って、KCNJ6の絶対レベルは、シクロフィリンでの相対正規化後に用いた。対照群(Braak 0からBraak 3)および患者群(Braak 4からBraak 6)、それぞれについて、中央値ならびに98%信頼レベルを計算した。同じ分析を行って、対照群(Braak 0からBraak 2)および患者群(Braak 3からBraak 6)を再定義し、ならびに対照群(Braak 0からBraak 1)および患者群(Braak 2からBraak 6)を再定義した。後者の分析は、対照とAD患者の間のmRNA発現の差異の早期発生を特定するためのものであった。この分析のもう1つの意図として、Braak期0から1、Braak期2から3およびBraak期4から6それぞれを含む3つの群を互いに比較して、遺伝子発現の調節ならびに差異の早期発生の傾向を特定した。上で説明した前記分析を図3に示す。
(v)免疫ブロッティング:
氷上、1mlのRIPAバッファ(150mMの塩化ナトリウム、50mMのtris−HCl(pH7.4)、1mMのエチレンジアミン四酢酸、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル、1% Triton X−100、1% デオキシコール酸ナトリウム、1% ドデシル硫酸ナトリウム、5μg/mLのアプロチニン、5μg/mLのロイペプチン)中で均一化することにより、Kir3.2−mycを安定的に発現しているH4APPsw細胞から全蛋白質抽出物を得た。5分間、3000rpm、4℃で2回、遠心分離した後、上清をSDS−ローディングバッファで5倍稀釈した。12μLの稀釈サンプルのアリコートをSDS−PAGE(8% ポリアクリルアミド)により分割し、PVDFウエスタンブロッティング膜(Boehringer Mannheim)に移した。ブロットをウサギポリクローナル抗Kir3.2抗体(Santa Cruz sc−16135、1:200)でプローブし、この後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗血清(Santa Cruz sc−2030、1:5000稀釈)でプローブし、ECL化学発光検出キット(Amersham Pharmacia)で現像した(図12)。
(vi)免疫蛍光分析:
細胞中のKir3.2蛋白質の免疫蛍光染色には、スウェーデン突然変異(K670N、M671L)を有するヒトAPP695アイソフォームを安定的に発現するヒト神経膠腫細胞系統(H4細胞)を使用した(H4APPsw細胞)。強力なCMVプロモータの制御下、Kir3.2のコード配列(Kir3.2 cds、1272bp、配列番号4)およびmycタグを含有するpFB−Neoベクター(Stratagene、#217561)(pFB−Neo−CMV−Kir3.2 cd−myc、Kir3.2−mycベクター、8542bp)をH4APPsw細胞に形質導入した。Kir3.2−mycベクターの作製のために、Kir3.2 cds−myc配列をpFB−Neoベクターの多重クローニング部位(MCS)に導入した。Kir3.2−mycベクターでのH4APPsw細胞の形質導入には、Stratageneからのレトロウイルス発現系ViraPortを使用した。
myc標識Kir3.2過発現細胞(H4APPsw−Kir3.2−myc)を細胞数5x10の密度で24ウエルプレートのカバーガラス(デンマーク、ロスキレ(Roskilde)のNunc、#143982)に接種し、37℃、5% COで一晩インキュベートした。カバーガラスに細胞を固定するために、培地を除去し、冷却メタノール(−20℃)を添加した。−20℃で15分のインキュベーション時間の後、メタノールを除去し、固定化した細胞を1時間、ブロッキング溶液(200μLのPBS/5% BSA/3%ヤギ血清)中、室温でブロックした。PBS/1%ヤギ血清中の一次抗体(ポリクローナル抗myc抗体、ウサギ、1:5000、MBL)およびDAPI(DNA染料、0.05μg/mL、1:1000)を添加し、1時間、室温でインキュベートした。一次抗体除去後、これらの固定化細胞をPBSで5分間、3回洗浄した。二次抗体(Cy3−コンジュゲート型抗ウサギ抗体、1:1000、ドイツのAmersham Pharmacia)をブロッキング溶液に適用し、1時間、室温でインキュベートした。これらの細胞をPBS中で5分間、3回洗浄した。Permafluor(Beckman Coulter)を使用してカバーガラスを顕微鏡スライドガラスに載せ、4℃で一晩保管して、封入剤を固まらせた。顕微鏡暗視野エピ蛍光および明視野位相差照明条件(1x81、オリンパス光学工業株式会社(現オリンパス株式会社)(Olympus Optical))を用いて細胞を視覚化した。顕微鏡画像(図13)をPCO SensiCamでデジタルコンピュータ処理し、適切なソフトウエア(AnalySiS、オリンパス光学工業株式会社)分析した。
(vii)免疫組織化学:
ヒトの脳におけるKCNJ6、それぞれKir3.2、の免疫蛍光染色のために、およびAD罹患組織と対照組織の比較のために、様々なBraak期のアルツハイマー病と臨床診断され神経病理学的に確認された患者(図14にBraak 5を例示する)ならびにアルツハイマー病に罹患していない同年齢対照者(図14にBraak 1を例示する)を含むドナーからの死後新鮮冷凍前頭および側頭前脳披検物を、クリオスタット(Leica CM3050S)を使用して14μm厚に切断した。これらの組織切片を空気乾燥させ、氷冷アセトン中で20分間、または4% PFA中で10分間、室温で固定化した。PBS中で洗浄後、これらの切片をブロッキングバッファ(PBS中、10% 正常ヤギ血清、0.2% Triton X−100)とともに30分間プレインキュベートし、この後、親和精製ウサギポリクローナル抗Kir3.2抗体(ブロッキングバッファで1:15稀釈;Upstate 06−792;アミノ酸18−49)と共に一晩、4℃でインキュベートした。0.1% Triton X−100/PBS中で3回すすいだ後、切片をFITC結合ヤギ抗ウサギIgG抗血清(Jackson/Dianova、No.111−096−045、1% BSA/PBS中で1:150稀釈)と共に2時間、室温でインキュベートし、この後、再びPBS中で洗浄した。核の染色は、PBS中5μMのDAPIと共に切片を3分間インキュベートすることによって行った。ニューロン細胞の染色は、ニューロン特異的マーカーNeuNに対するマウスモノクローナル抗体(Chemicon、MAB377、1:400稀釈)および二次Cy3コンジュゲート型ヤギ抗マウス抗体(Dianova、115−166−062、1:600希釈)を使用して行った(図14にニューロン免疫活性を示す)。神経膠星状細胞の染色は、神経膠星状細胞特異的マーカーGFAPに対する抗体(Abcam、AB7806、1:300稀釈)を使用することによって行い、小神経膠細胞の染色は、小神経膠細胞特異的マーカーCD68に対する抗体(DAKO、M0718、1:200希釈)を使用することによって行い、乏突起神経膠細胞特異的マーカーCNPアーゼに対する抗体(Sigma、C5922、1:400希釈)を使用することにより乏突起神経膠細胞を染色した。一般に、Kir3.2の免疫活性は、大脳皮質、ニューロン細胞体ならびに神経網および一部の近位樹状突起において主として観察される。Kir3.2免疫活性は、実際には神経膠星状細胞、CD68陽性小神経膠細胞、CNPアーゼ陽性乏突起神経膠細胞では検出されず、ミエリンとの関連はなかった。人間の脳におけるリポフスチンの自発蛍光を阻害するために、切片を70%エタノール中の1%スダンブラックBで2から10分間、室温で処理し、この後、70%エタノール、蒸留水及びPBSに順次浸漬した。「Vectashield」封入剤(カリフォルニア州、BurlingameのVector Laboratories)を用いてこれらの切片にカバーガラスを載せた。暗視野エピ蛍光および明視野位相差照明条件(1x81、オリンパス光学工業株式会社)を用いて、顕微鏡画像を得た。顕微鏡画像をPCO SensiCamでデジタルコンピュータ処理し、適切なソフトウエア(AnalySIS、オリンパス光学工業株式会社)を使用して分析した(図13、14参照)。
蛍光ディフェレンシャルディスプレイスクリーンにおけるKir3.2蛋白質をコードするKCNJ6遺伝子の差次的発現の最初の特定を開示する図である。この図は、大量の分取蛍光ディフェレンシャルディスプレイゲルのクリッピングを示す。2人の健常対照被検者および6人のAD患者の前頭皮質(F)および側頭皮質(T)からのPCR産物を二重重複で変性ポリアクリルアミドゲルに(左から右に)負荷した。PCR産物は、個々のcDNAを対応する一塩基アンカー型オリゴヌクレオチドおよび特異的Cy3標識ランダムプライマーで増幅することによって得た。矢印は、健常対照と比較してAD患者の前頭皮質および側頭皮質由来のKCNJ6遺伝子の転写産物にシグナル強度の有意な差が存在する泳動位置を示す。この差次的発現は、AD患者の前頭皮質と比較される側頭皮質におけるヒトKCNJ6遺伝子転写のダウンレギュレーション、発現減少を反映している。健常なADでない対照被検者の側頭皮質および前頭皮質由来のシグナルを互いに比較したところシグナル強度に差はなく、すなわち、発現レベルの変更は検出できなかった。 定量RT−PCR分析によるAD脳組織におけるヒトKCNJ6遺伝子の差次的発現の検証を図示する図である。AD患者の前頭皮質(F)および側頭皮質(T)から採取したRNAサンプル(図2a)ならびに健常な同年齢の対照者の前頭皮質(F)および側頭皮質からのサンプル(図2b)からのRT−PCR産物の定量は、LightCycler 高速熱サイクリング法によって行った。データは、遺伝子発現レベルに有意差を示さなかった標準遺伝子セットの総合平均値に正規化した。前記標準遺伝子セットは、シクロフィリンB、リボソーム蛋白S9、トランスフェリン受容体、GAPDHおよびベータ−アクチンについての遺伝子から成る。これらの図は、この蛍光によって測定されるような増幅材料の量に対してサイクル数をプロットすることにより増幅速度を図示している。反応の指数関数期中の正常な対照者の前頭および側頭皮質からのKCNJ6 cDNAの増幅速度は、並列であり(図2b、矢印の先)、これに対してアルツハイマー病(図2a、矢印の先)では、これらに対応する曲線が有意に離れていることに注目すべきであり、これは、分析したそれぞれの脳領域におけるKCNJ6をコードする遺伝子の差次的発現を示し、これは、異常調節、好ましくは、前頭皮質に対して側頭皮質でのヒトKCNJ6遺伝子の転写産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体のダウンレギュレーション、または側頭皮質に対して前頭皮質でのヒトKCNJ6遺伝子の転写産物のアップレギュレーションを示す。 98%信頼レベルでの中央値の統計的方法を用いる対照およびAD期の比較によるKCNJ6の絶対mRNA発現の分析を示す図である。Braak期0から1、Braak期0から2またはBraak期0から3のいずれかの被検者を含む対照群を定義することによりデータを計算した。これらを、それぞれBraak期2から6、Braak期3から6およびBraak期4から6を含む被定義AD患者群について計算したデータと比較する。加えて、Braak期0から1、Braak期2から3およびBraak期4から6の被検者をそれぞれ含む3つの群を互いに比較した。AD患者および健常な同年齢の対照者の前頭皮質(F)および下側頭皮質(T)を互いに比較すると、有意差が検出された。前記の差は、対照者の側頭皮質に対してAD患者の側頭皮質でのKCNJ6のダウンレギュレーション、およびAD患者の側頭皮質における自身の前頭皮質と比較したKCNJ6のダウンレギュレーションを反映している。 配列番号1;ヒトKCNJ6蛋白質Kir3.2のアミノ酸配列(ジェンバンクアクセッション番号P48051)を開示する図である。完全長ヒトKir3.2蛋白質は、432のアミノ酸を含む。 配列番号2;2598個のヌクレオチドを含む、Kir3.2蛋白質をコードするヒトKCNJ6 cDNAのヌクレオチド配列(ジェンバンクアクセッション番号U52153)を示す図である。 配列番号2;2598個のヌクレオチドを含む、Kir3.2蛋白質をコードするヒトKCNJ6 cDNAのヌクレオチド配列(ジェンバンクアクセッション番号U52153)を示す図である。 配列番号3;ディフェレンシャルディスプレイおよびこの後のクローニングによって特定され、得られた、57bpのKCNJ6 cDNAフラグメントのヌクレオチド配列(5’から3’方向での配列)を図示する図である。 配列番号4のヌクレオチド配列;1272個のヌクレオチドを含み、配列番号2のヌクレオチド652から1923を含有するヒトKCNJ6遺伝子のコード配列(cds)を示す図である。 KCNJ6 cDNAのヌクレオチド配列、配列番号2に対する配列番号3の配列アラインメントの略図である。 配列番号2、Kir3.2 cDNAの対応するクリッピングを伴う定量的RT−PCRによるKCNJ6転写レベルのプロファイリングに使用したプライマー(プライマーA、配列番号5、およびプライマーB、配列番号6)の配列アラインメントを図示する図である。 KCNJ6 cDNA 配列番号2、特定されたcDNAフラグメント 配列番号3、KCNJ6転写レベルのプロファイリングに使用した両方のプライマー配列(プライマーA、配列番号5、プライマーB、配列番号6)およびKCNJ6のコード配列(cds)のアラインメントの略図である。配列位置を右側に示す。 ここでは内部参照番号P010、P011、P012、P014、P016、P017、P019、P038、P040、P041、P042、P046、P047、P048、P049によって識別される、15人のAD患者および26人の同年齢対照者(ここでは、内部参照番号C005、C008、C011、C012、C014、C025、C026、C027、C028、C029、C030、C031、C032、C033、C034、C035、C036、C037、C038、C039、C041、C042、DE02、DE03、DE05、DE07によって識別される)における前頭皮質に対する側頭皮質におけるKCNJ6遺伝子発現レベルを列挙する図である。側頭皮質におけるアップレギュレーションについて示す値は、本明細書で説明する式(下記参照)に従って計算し、側頭皮質のアップレギュレーションの場合、逆数値をそれぞれ計算した。側頭皮質におけるダウンレギュレーション、前頭皮質におけるアップレギュレーションを反映する明らかな差を示す。棒グラフは、異なるBraak期(0から6)における前頭皮質に対する側頭皮質の個々の自然対数値、ln(IT/IF)、および側頭皮質調節因子に対する前頭皮質調節因子の自然対数値、ln(IF/IT)を視覚化するものである。 ポリクローナル抗Kir3.2抗体(Santa Cruz sc16135、1:200)で標識した全細胞蛋白質抽出物のウエスタンブロット画像を図示する図である。 レーンAおよびB:mycタグで標識したKir3.2を安定的に発現しているH4APPsw細胞(Kir3.2−myc、B)およびmyc標識対照H4APPsw細胞(A)の全細胞抽出物。矢印は、Kir3.2蛋白質の予測分子量に対応する約45kDa(レーンA)での主バンドを示す。 H4APPsw対照細胞、およびmyc標識Kir3.2蛋白質を安定的に過発現しているH4APPsw細胞(H4APPsw−Kir3.2 cds−myc)の免疫蛍光分析を示す図である。Kir3.2−myc蛋白質は、抗myc抗体(MBL)およびCy3コンジュゲート型抗ウサギ抗体(Amersham)で検出した(図13Aおよび13B)。細胞核は、DAPIで染色した(図13Cおよび13D)。オーバーレイ解析は、Kir3.2cds−myc蛋白質が、小胞体および小胞内の原型質膜に主として局在し(図13E)、ならびにH4APPsw対照細胞と比較すると、H4APPsw−Kir3.2 cds−myc形質導入細胞の90%より多くで過発現されること(図13F)を示す。 対照ドナー(対照Braak 1)からおよびアルツハイマー病に罹患している人(Braak 5)の患者からの下側頭回(IT、下のほうのパネル)および前頭皮質(F)の切片からデジタル撮影した電子顕微鏡写真を例示する図である。組織切片を親和精製ウサギポリクローナル抗Kir3.2抗体(Upstate、06−792、1:15、シグナル)で免疫標識する(倍率10倍)。ここで例示するデータは、Kir3.2免疫反応性の強度および量のレベルが、対照者(Brrak 1)からの下側頭皮質と比較して患者(Braak期5)からの下側頭皮質では低下していることを示している。これらの発見は、KCNJ6翻訳産物、すなわちKir3.2蛋白質、のレベルを表すニューロンKir3.2免疫反応性が、対照健常者の側頭皮質と比較すると、ADに罹患している患者からの側頭皮質では顕著に低下していることを示している。Kir3.2免疫活性のこのADに関連する減少は、Braak期が進むと共に顕著になり、これは、ADの経過、すなわちAD病理の進行が、AD神経変性変化を随伴する、またはAD神経変性変化の後に起こる、またはAD神経変性変化より先にでさえ起こるKir3.2発現の強い減少に反映されることを示している。側頭皮質(T)、前頭皮質(F)、対照健常者(対照)、アルツハイマー病患者(患者)。

Claims (12)

  1. 被検者においてアルツハイマー病を診断もしくは予後判定する、または被検者が、前記疾病を発現するリスクが増大した状態にあるかどうかを判定する方法であって、
    前記被検者から得られたサンプルにおいて、
    (i)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物の、および/または
    (ii)KCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物の、および/または
    (iii)前記転写もしくは翻訳産物のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体
    のレベルおよび/または活性を判定すること;ならびに前記転写産物および/または前記翻訳産物の前記レベルおよび/または前記活性を、疾病と認められる状態を表す基準値および/または健常と認められる状態を表す基準値と比較することを含み;ならびに前記レベルおよび/または前記活性が、健常と認められる状態を表す基準値と比較して変化している、および/または疾病と認められる状態を表す基準値と類似しているもしくは同等であることによって、前記被検者のアルツハイマー病を診断もしくは予後判定する、または前記被検者が、前記疾病を発現するリスクが増大した状態にあるかどうかを判定することを含む、前記方法。
  2. (i)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物および/またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体を検出する試薬、および/または(ii)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物および/またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体を検出する試薬、から成る群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、被検者において神経変性疾患、特にアルツハイマー病を診断もしくは予後判定する、またはこうした疾病を発現する被検者の傾向もしくは素因を判定するためのキット。
  3. (i)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または
    (ii)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または
    (iii)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または
    (iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体
    から成る群より選択される少なくとも1つの物質の活性および/またはレベルの変調因子。
  4. (i)遺伝子配列および選択可能なマーカー配列を含む遺伝子ターゲティング構築物を提供する工程、
    (ii)前記ターゲティング構築物を非ヒト動物の幹細胞に導入する工程、
    (iii)前記非ヒト動物幹細胞を非ヒト胚に導入する工程、
    (iv)前記胚を偽妊娠非ヒト動物に移植する工程、
    (v)前記胚を満期まで発達させる工程、
    (vi)ゲノムが両方の対立遺伝子に前記遺伝子配列の修飾を含む、遺伝子改変非ヒト動物を特定する工程、
    (vii)工程(vi)の遺伝子改変非ヒト動物を繁殖させて、ゲノムが前記内因性遺伝子の修飾を含む遺伝子改変非ヒト動物を得る工程(この場合、前記破壊が、神経変性疾患または関連疾患もしくは障害の症状を発現する素因を示す前記非ヒト動物を生じさせる)
    によって得られる、配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする非天然遺伝子配列またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体を含む組換え非ヒト動物。
  5. 神経変性疾患、特にアルツハイマー病、を治療するための診断薬および治療薬の開発の際に化合物、薬剤および変調因子をスクリーニング、試験および評価するための、請求項4に記載の組換え非ヒト動物の使用。
  6. (i)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または
    (ii)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または
    (iii)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または
    (iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体
    から成る群より選択される1つまたはそれ以上の物質の神経変性疾患、特にアルツハイマー病、または関連疾患もしくは障害の変調因子をスクリーニングするためのアッセイであって、
    前記方法が、
    (a)細胞を試験化合物と接触させる工程、
    (b)(i)から(iv)に列挙した1つまたはそれ以上の物質の活性および/またはレベルを測定する工程、
    (c)前記試験化合物と接触させていない対照細胞において、(i)から(iv)に列挙した1つまたはそれ以上の物質の活性および/またはレベルを測定する工程;ならびに工程(b)および(c)の細胞における前記物質のレベルおよび/または活性を比較する工程
    を含み、接触させた細胞における物質の活性および/またはレベルの変更が、この試験化合物が前記疾患または障害の変調因子であることを示すアッセイ。
  7. (i)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子、および/または
    (ii)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の転写産物、および/または
    (iii)配列番号1を有するKCNJ6蛋白質をコードする遺伝子の翻訳産物、および/または
    (iv)(i)から(iii)のフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体
    から成る群より選択される1つまたはそれ以上の物質の神経変性疾患、特にアルツハイマー病、または関連疾患もしくは障害の変調因子をスクリーニングする方法であって、
    (a)(i)から(iv)に列挙した物質に関して神経変性疾患または関連疾患もしくは障害の症状を発現する素因があるまたは既に発現している非ヒト試験動物に試験化合物を投与する工程;
    (b)(i)から(iv)に列挙した1つまたはそれ以上の物質の活性および/またはレベルを測定する工程;
    (c)(i)から(iv)に列挙した物質に関して神経変性疾患または関連疾患もしくは障害の症状を発現する素因があるまたは既に発現しおり、こうした試験化合物の投与を受けたことがない対応非ヒト対照動物において、(i)から(iv)に列挙した1つまたはそれ以上の物質の活性および/またはレベルを測定する工程;
    (d)工程(b)および(c)の動物において前記物質の活性および/またはレベルを比較する工程(この場合、非ヒト試験動物における物質の活性および/またはレベルの変更は、この試験化合物が前記疾患または障害の変調因子であることを示す)
    を含む方法。
  8. 前記非ヒト試験動物および/または前記非ヒト対照動物が、天然KCNJ6遺伝子転写制御要素でない転写制御要素の制御下で、配列番号1を有するKCNJ6またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体を発現する組換え動物である、請求項7に記載の方法。
  9. (i)KCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体の懸濁液を多数の容器に添加する工程;
    (ii)1つの検出可能な、特に、蛍光標識された化合物、または結合についてスクリーニングされる、多数の検出可能な、特に、蛍光標識された化合物を、前記多数の容器に添加する工程;
    (iii)前記KCNJ6蛋白質または前記フラグメントもしくは誘導体もしくは変異体、および前記検出可能な、特に、蛍光標識された化合物(単数)または検出可能な、特に、蛍光標識された化合物(複数)をインキュベートする工程;
    (iv)前記KCNJ6蛋白質に、または前記フラグメントもしくは誘導体もしくは変異体に結合する好ましくは蛍光の量を測定する工程;ならびに
    (v)前記KCNJ6蛋白質または前記フラグメントもしくは誘導体もしくは変異体への1つまたはそれ以上の前記化合物による結合度を判定する工程
    を含む、配列番号1を有するKCNJ6蛋白質またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体への化合物の結合度を判定するために化合物を試験する、好ましくは多数の化合物をスクリーングするためのアッセイ。
  10. 神経変性疾患、好ましくはアルツハイマー病を検出するための診断ターゲットとしての、配列番号1を有するKCNJ6をコードする遺伝子の翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体である、蛋白質分子の使用。
  11. 神経変性疾患、好ましくはアルツハイマー病を予防または治療または改善する試薬または化合物についてのスクリーニングターゲットとしての、配列番号1を有するKCNJ6をコードする遺伝子の翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体である、蛋白質分子の使用。
  12. 抗体での細胞の免疫細胞化学的染色を含み、健常と認められる状態を表す細胞と比較して変更された前期細胞の染色度または変化した染色パタンが、アルツハイマー病に関係する前記細胞の病的状態を示す、被検者から得たサンプルにおける細胞の病的状態を検出するための、免疫原と特異的に免疫反応する抗体(この場合、前記免疫原は、配列番号1を有するKCNJ6をコードする遺伝子の翻訳産物またはこのフラグメントもしくは誘導体もしくは変異体である)の使用。
JP2007512204A 2004-05-10 2005-05-09 アルツハイマー病のためのkcnj6の診断および治療使用 Withdrawn JP2007535959A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US56926804P 2004-05-10 2004-05-10
PCT/EP2005/052084 WO2005108999A2 (en) 2004-05-10 2005-05-09 Diagnostic and therapeutic use of kcnj6 for alzheimer’s disease

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007535959A true JP2007535959A (ja) 2007-12-13

Family

ID=35320848

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007512204A Withdrawn JP2007535959A (ja) 2004-05-10 2005-05-09 アルツハイマー病のためのkcnj6の診断および治療使用

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20080038730A1 (ja)
EP (1) EP1745296A2 (ja)
JP (1) JP2007535959A (ja)
WO (1) WO2005108999A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019513007A (ja) * 2016-02-29 2019-05-23 ジェニア・テクノロジーズ・インコーポレイテッド ナノポアシーケンシングのためのポリメラーゼ−鋳型複合体

Families Citing this family (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2009205956B2 (en) 2008-01-18 2015-07-02 President And Fellows Of Harvard College Methods of detecting signatures of disease or conditions in bodily fluids
JP2012508889A (ja) * 2008-11-13 2012-04-12 アビッド レディオファーマシューティカルズ、インク. 神経変性疾患の検出と診断のためのヒストグラムに基づいた分析方法
US20130045987A1 (en) * 2010-05-03 2013-02-21 Dignity Health Novel methods of use of tetrahydroberberine (thb)
CN103124795A (zh) 2010-07-23 2013-05-29 哈佛大学校长及研究员协会 利用吞噬细胞检测疾病或病症的方法
WO2012012717A1 (en) 2010-07-23 2012-01-26 President And Fellows Of Harvard College Methods of detecting prenatal or pregnancy-related diseases or conditions
US20120053073A1 (en) 2010-07-23 2012-03-01 President And Fellows Of Harvard College Methods for Detecting Signatures of Disease or Conditions in Bodily Fluids
EP2596116A4 (en) 2010-07-23 2014-03-19 Harvard College METHODS FOR DETECTION OF AUTOIMMUNE OR IMMUNE-RELATED DISEASES / PATHOLOGIES
WO2013188828A1 (en) 2012-06-15 2013-12-19 Harry Stylli Methods of detecting diseases or conditions using circulating diseased cells
US20150275298A1 (en) 2012-06-15 2015-10-01 Harry Stylli Methods of detecting diseases or conditions
NZ771629A (en) 2013-03-09 2022-12-23 Harry Stylli Methods of detecting cancer
US11585814B2 (en) 2013-03-09 2023-02-21 Immunis.Ai, Inc. Methods of detecting prostate cancer
EP3693742B1 (en) 2014-09-11 2022-04-06 Harry Stylli Methods of detecting prostate cancer
US11227692B2 (en) * 2017-12-28 2022-01-18 International Business Machines Corporation Neuron model simulation
WO2021204407A1 (en) * 2020-04-10 2021-10-14 Sorbonne Université G-protein-gated-k+ channel-mediated enhancements in light sensitivity in rod-cone dystrophy (rcd)
EP3892738A1 (en) * 2020-04-10 2021-10-13 Sorbonne Université G-protein-gated-k+ channel-mediated enhancements in light sensitivity in rod-cone dystrophy (rcd)

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20020137890A1 (en) * 1997-03-31 2002-09-26 Genentech, Inc. Secreted and transmembrane polypeptides and nucleic acids encoding the same
AU2002320500A1 (en) * 2001-07-10 2003-01-29 Millennium Pharmaceutical, Inc. 47619 and 47621, human ion channels, and uses thereof
WO2005054848A2 (en) * 2003-11-25 2005-06-16 Bayer Healthcare Ag Diagnostics and therapeutics for diseases associated with g-protein-coupled inwardly rectifying potassium channel (girk2)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019513007A (ja) * 2016-02-29 2019-05-23 ジェニア・テクノロジーズ・インコーポレイテッド ナノポアシーケンシングのためのポリメラーゼ−鋳型複合体

Also Published As

Publication number Publication date
EP1745296A2 (en) 2007-01-24
WO2005108999A2 (en) 2005-11-17
US20080038730A1 (en) 2008-02-14
WO2005108999A3 (en) 2006-03-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2007535959A (ja) アルツハイマー病のためのkcnj6の診断および治療使用
US20080269103A1 (en) Diagnostic and Therapeutic Use of the Kcne4 Gene and Protein for Alzheimer's Disease
US20080051334A1 (en) Diagnostic and Therapeutic Use of Kcnc1 for Neurodegenerative Diseases
WO2006125830A2 (en) Kcnn3 as diagnostic and therapeutic target for neurodegenerative diseases
EP1776591B1 (en) Diagnostic and therapeutic use of a plasma membrane atpase
US20060259991A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of scn2b protein for neurodegeneraative diseases
WO2004001422A2 (en) Diagnostic and therapeutic use of ras-gtpase-activating sh3-domain-binding protein 2 (g3bp2) for neurodegenerative diseases
WO2003091734A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of ensadin-0477 gene and protein for neurodegenerative diseases
EP1721008B1 (en) Diagnostic and therapeutic use of mal2 gene and protein for neurodegenerative diseases
US20060052280A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of a golgi protein for neurodegenerative diseases
JP2007508810A (ja) スルホトランスフェラーゼの神経変性疾患に関する診断的および治療的使用
US20070186290A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of the human hif3alpha gene and proteins for neurodegenerative diseases
EP1735626A2 (en) Diagnostic and therapeutic use of kcnc1 for neurodegenerative diseases
JP2006518199A (ja) 神経変性疾患に対するscn2bタンパク質の診断的かつ治療的使用
JP2005536224A (ja) 神経変性疾患のための、foap−13ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの診断的および治療的用法
US20050153295A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of human maguin proteins and nucleic acids for neurodegenerative diseases
US20060294602A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of a rab family gtp-binding protein for neurodegenerative diseases
US20060051757A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of ensadin-0477 gene and protein for neurodegenerative diseases
US20060160728A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of ensandin-0138 gene and protein for neurodegenerative diseases
WO2006008294A2 (en) Diagnostic and therapeutic use of slim3 for neurodegenerative diseases
EP1561117A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of arl7 for alzheimer's disease
WO2004020666A2 (en) Diagnostic and therapeutic use of thyroid hormone binding protein for neurodegenerative diseases
WO2003080661A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of human maguin proteins and nucleic acids for neurodegenerative diseases

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080417

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20090511

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090603