JP2019500504A - 焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材及びその製造方法 - Google Patents

焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材及びその製造方法に関するもので、板材の製造時の溶体化処理後に65〜145℃の温度で3〜250分間の予備時効処理を行うことにより、板材の移送および保管中の自然時効による物性変化を抑制し、車体成形および塗装後の焼付硬化によって強度をさらに向上させることができ、高強度を有する軽量輸送機器車体を製造することができる利点がある。

Description

本発明は、焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材及びその製造方法に関するもので、詳細には、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造する工程(工程1)と、前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を溶体化処理する工程(工程2)と、前記溶体化処理したアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を65〜145℃で3〜250分間維持した後、常温に冷却させる予備時効処理を行なう工程(工程3)とを含む焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法に関するものである。
国内外で輸送機器部品の軽量化を介して、燃費効率を向上させようとする傾向にしたがって低密度および高強度を備えた素材に対する要求が高まっており、この中でアルミニウム合金は、優れた鋳造性、加工性、機械的特性などにより、その需要が急激に増加している。
現在、自動車に適用されるアルミニウム合金板材の場合には、強度が高く、成形性に優れた5000系(Al−Mg系)合金板材は、主に高加工性が要求される内板に用いられており、成形およびペイント塗装後のペイントを硬化させるために170〜190℃の範囲で20〜40分間実施する焼付硬化(paint bake-hardening)を介して、強度の向上を期待できる時効硬化型6000系(Al−Mg−Si系)合金板材は、強度および耐デント性(圧着抵抗性)が必要な外板用に用いられている。現在、自動車用アルミ合金板材に適用されている5000系、6000系アルミニウム合金板材の引張特性は、下記表1の通りである。
Figure 2019500504
一方、合金板材は、自動車外板に用いるためには、溶体化処理工程が終了したアルミ板材を自動車製作関連企業に移す時間が必要となり、このような時間遅延に伴う自然時効現象は、前記合金板材が有していた元来の機械的特性を変化させ、結果的にプレス成形時に不均一性を生じさせるだけではなく、自動車製作関連企業で行なう焼付硬化熱処理工程での機械的物性を低下させる問題がある。
これらの問題点を解決するために、韓国登録特許第10−0213678号では、高焼付硬化性および高成形性を有する6000系アルミニウム合金板材を製造する方法を開示している。詳細には、車体外板材用6000系(Al−Mg−Si系)合金板材に対して製造工程の中で溶体化処理直後に100〜160℃の温度で5秒〜15分間維持させる安定化熱処理を導入して板材を製作することにより、板材の搬送および保管時の自然時効現象による物性変化を抑制し、車体成形後の塗装焼付硬化熱処理時の強度が改善された高強度アルミニウム−マグネシウム−シリコン合金の製造方法が開示されている。
しかし、前記のような方法で製造された6000系アルミニウム合金板材は、焼付硬化後の強度を向上させた後でも、降伏強度275MPaおよび引張強度363MPa水準で低く、車体に用いるためには、剛性を確保するために厚さを補強しなければならないが、厚さを補強する場合には、軽量化の効果が減少するという問題点がある。
一方、アルミニウム合金中7000系アルミニウム合金であるAl−Zn−(Mg、Cu)系合金は、鉄に匹敵する非常に高い強度を有する高強度アルミニウム合金で、航空機、鉄道車両、スポーツ用品など、一般的に高い比強度が要求される構造材に用いられる熱処理合金で、輸送機器の軽量化のために、車体に用いることができるが、現在まで7000系アルミニウム合金を航空機およびその他の構造材に関する研究は活発に行われたのに対し、自動車車体に適用させるための研究は、不足しているのが実情である。
これに関連し、従来の技術では、米国公開特許第2014−0069557号では、高強度7000系アルミニウム合金板材の製造方法が開示されている。詳細には、亜鉛6.9〜8.0重量%、マグネシウム1.2〜2.4重量%、銅1.3〜2.4重量%、マンガン0.3重量%以下、0.05〜0.25重量%のクロムまたはジルコニウム、ケイ素0.3重量%以下、鉄0.35重量%以下、チタン0.1重量%以下およびアルミニウム残部を含むアルミニウム合金板材に対して、車体部品の成形および組立をした後、焼付硬化熱処理を行って、高強度7000系アルミニウム合金板材を製造している。
しかし、前記の製造方法で7000系アルミニウム合金を製造する場合、前記アルミ板材を自動車製作関連企業に移す時間によって発生する自然時効によって、焼付硬化熱処理後の強度上昇が微々たる問題がある。
つまり、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金は、時効硬化型合金であって、溶体化処理後、人工時効処理時に析出相の形成を介して強度を向上させることができるが、一般的にアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金の時効処理は、120℃で24時間維持することで行われるのに対し、自動車用アルミニウム合金の焼付硬化熱処理は、170〜190℃の範囲で20〜40分間実施されるため、前記の条件は、高温による過時効によって、前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金の機械的特性の低下を引き起こす問題がある。また、溶体化処理後に焼付硬化熱処理が行われるまで、室温で放置されている間に進行する自然時効により析出相の核生成サイトが不均一に形成されて焼付硬化熱処理時に十分な強度向上効果を得ることができない問題がある。
そこで、本発明者らは、前記問題点を解決し、焼付硬化熱処理後の強度がさらに向上した7000系アルミニウム合金板材を製造するために、溶体化処理後の予備時効処理を行なう方法で製造された7000系アルミニウム合金板材を開発し、本発明を完成した。
韓国登録特許第10−0213678号 米国公開特許第2014−0069557号
本発明の目的は、焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材およびその製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は、
アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造する工程(工程1)と、
前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を溶体化処理する工程(工程2)と、
前記溶体化処理したアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を65〜145℃で3〜250分間維持した後、常温に冷却させる予備時効処理を行なう工程(工程3)とを含む、焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法を提供する。
また、本発明は、
前記製造方法で製造されるアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板であり、焼付硬化熱処理後、400MPa以上の降伏強度の値を有することを特徴とする焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を提供する。
本発明のアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材の製造方法は、溶体化処理後に65〜145℃の温度で3〜250分間の予備時効処理を行うことにより、板材の搬送および保管中の自然時効による物性変化を抑制し、車体成形後の焼付硬化によって強度をさらに向上させることができ、高強度を有する軽量輸送機器車体を製造することができる利点がある。
本発明のアルミニウム合金板材の製造工程を示した図である。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例および比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の引張試験の結果を示したグラフである。 実施例および比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の引張試験の結果を示したグラフである。 比較例1に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化前の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。 比較例1に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化後の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。 比較例1に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化前の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。 比較例1に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化後の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。
本発明は、
アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造する工程(工程1)と、
前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を溶体化処理する工程(工程2)と、
前記溶体化処理したアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を65〜145℃で3〜250分間維持した後、常温に冷却させる予備時効処理工程(工程3)とを含む焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法を提供する。
前記高強度アルミニウム合金板材は、軽量化のための輸送機器、車体用アルミ合金板材として用いることができる。前記高強度アルミニウム合金板材を車体に用いるためには、板材製造後の成形、塗装および焼付硬化処理する過程を経ることになるが、前記の工程を経て、前記アルミニウム合金板材の機械的物性が低下する問題が発生し得る。そこで、本発明の製造方法は、焼付硬化熱処理の過程で機械的物性を向上させることができる板材を製造するための焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法である。
以下、本発明に係る焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法を図を参照して、各工程別に詳細に説明する。
本発明に係る焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法において、工程1は、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造する工程である。
前記アルミニウム合金板材は、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金インゴットを再溶解して薄板鋳造後の厚さ4.5mmで製造することができ、前記薄板鋳造されたアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を1次アニーリング、熱間圧延、二次アニーリングおよび冷間圧延を順次進めて、厚さ約1.0mmを有するアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造することができる。ここで、前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材の製造方法がこれに限定されるのではなく、金型鋳造、加圧鋳造などの他の形態の鋳造方法を適用することができ、圧延の代わりに押出、鍛造などの他の形態の加工方法を適用することもできる。
ここで、前記溶湯は、亜鉛4〜8重量%、マグネシウム0.5〜3.5重量%、銅0.5〜2.5重量%および残余成分はアルミニウムを含有することができる。前記亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)は、ともにアルミニウムにおいて高い固溶度を有し、同時添加時に強度上昇に寄与する析出相を形成し、銅(Cu)もまた、前記アルミニウム合金に強度をさらに増加させる役割をすることにより、前記の含有量の範囲でアルミニウム合金溶湯に、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)が含まれる場合には、溶湯から製造されるアルミニウム合金板材の強度が向上する効果がある。
本発明に係る焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法において、工程2は、前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金を溶体化処理する工程である。
前記溶体化処理は、合金を固溶体範囲まで加熱した後、急冷させて固溶体(solid solution)の状態を常温まで維持するようにする処理であり、前記の工程1のアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材の応力解消および過飽和固溶体(Super-saturated solid solution)の製造を目的として行うことができる。ここで、前記溶体化処理は、450〜510℃で5分〜2時間熱処理した後、常温に冷却させる方法で行うことができる。しかし、前記溶体化処理がこれに限定されるものではなく、アルミ合金が完全固溶体となる適切な温度と時間の範囲で行うことができる。
本発明に係る焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法において、工程3は、前記溶体化処理したアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を65〜145℃で3〜250分間維持した後、常温に冷却させる予備時効処理を行なう工程である。
前記の予備時効処理は、前記アルミニウム合金板材が、以後に車体に製造するために行なわれる焼付硬化熱処理時の機械的特性が低下する問題をなくすために行なわれる。
アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金は、時効硬化型合金であって、溶体化処理後、120℃で24時間維持することで時効処理して析出相の形成を介して強度を向上させることができる。しかし、前記のアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金を自動車車体用として用いる場合には、溶体化処理後焼付硬化熱処理が170〜190℃の範囲で20〜40分間行われ、高い温度により過時効されて機械的特性が低下する問題が発生し、溶体化処理後に焼付硬化熱処理が行われるまで、室温に放置されている間に進行する自然時効により臨界サイズ以下のGPゾーンが不均一に形成されて成形性の減少はもちろん焼付硬化熱処理時に十分な強度および耐デント性の向上を得ることができない問題が発生し得る。
そこで、本発明では、前記溶体化処理したアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を65〜145℃で3〜250分間維持した後、常温に冷却させることで、焼付硬化前析出相の核生成サイトを均一に生成し、焼付硬化後の硬度および降伏強度が改善されたアルミニウム合金を製造することができる。
ここで、前記予備時効処理を行なう温度が65℃未満である場合には、低い温度によって元素の拡散速度が低く析出相の核生成サイトを均一に生成させられない問題が発生することがあり、145℃を超える場合、高い温度によって元素の拡散速度が高く析出相の核生成サイトを粗大化したり析出相を析出させ、成形性が低下することが起こり得る。
一方、前記予備時効処理を65〜105℃で行なう場合には、熱処理時間を25〜250分間行なうことが好ましい。
万一、前記の65〜105℃の温度範囲で、前記の熱処理時間が25分未満で行なわれる場合には、析出相の核生成が行われないで、焼付硬化熱処理時の強度が向上する効果が小さくなり得、前記熱処理の時間が250分を超える場合には、強度向上の程度が大きく向上されず、製造における経済性が低下し得る。
また、前記予備時効処理を106〜145℃で行なう場合には、3〜70分間熱処理を行なうことが好ましい。
また、前記106〜145℃の温度範囲で、前記の熱処理時間が3分未満で行なわれる場合には、析出相の核生成がなされず、焼付硬化熱処理時の強度が向上する効果が小さくなり得、前記熱処理時間が70分を超える場合には、焼付硬化熱処理前延伸率が急激に減少して成形性が低下する問題がある。
一方、前記製造方法は、前記の工程3以降に前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を焼付硬化熱処理する工程をさらに含むことができ、また、前記焼付硬化熱処理する前、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を成形する工程をさらに含むことができる。
焼付硬化熱処理は、車体を製造する場合に行われる熱処理工程で、板材を溶接、接合および組立などの成形工程を経た後、塗装して、最終的にペイントを硬化させるために行われる工程である。前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を車体に製造する場合には、前記のような成形工程と塗装工程を経た後、最終的にペイントを硬化させる焼付硬化熱処理を経て最終製品が完成される。
ここで、前記焼付硬化熱処理は、170〜190℃で20〜40分間維持され得、予備時効処理工程後に行われることにより、前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材の硬度および降伏強度を向上させることができる。
本発明の製造方法によって、前記焼付硬化熱処理後の密度が8,000/μm〜15,000/μmで、サイズが2〜12nmである析出相を含む。
また、従来の溶体化処理後の予備時効処理を実行せずに焼付硬化熱処理を行なった場合に比べ、本発明の製造方法で製造されたアルミニウム合金板材は、前記焼付硬化熱処理後の降伏強度が1.26〜1.50倍向上した400MPa以上の降伏強度値を有する。
本発明はまた、
前記製造方法で製造されるアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板であって、焼付硬化熱処理後に400MPa以上の降伏強度値を有することを特徴とする焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を提供する。
自動車車体用として用いられるアルミニウム合金板材は、溶体化処理直後に成形工程を行なうことが現実的に不可能であるため、常温に放置されることによって、自然時効過程を経るようになり、自然時効された板材は、成形および塗装工程を経た後、最終的にペイントを硬化させる焼付硬化熱処理を170〜190℃で20〜40分間行われることになる。
アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金を自動車車体用として用いるために、従来の方法である溶体化処理後、自然時効を経て焼付硬化熱処理を行なう場合は、過時効による機械的特性の低下という問題がある一方、本発明の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材は、溶体化処理後に予備時効処理を行った板材であり、焼付硬化熱処理後の強度をさらに向上させることができる。
前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材は、焼付硬化熱処理を行った後、サイズが2〜12nmで密度が8,000/μm〜15,000/μmの析出相を含み、焼付硬化熱処理によって400MPa以上に強度が向上する効果を示す高強度アルミニウム合金板材であり、輸送機器の車体に用いることができ、これにより、強度が高く軽量の輸送機器車体を製造することができるという長所がある。
本発明に係る焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材は、焼付硬化前に所定の条件で予備時効処理を介してアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金の成形性を維持しつつ、焼付硬化後の硬度と降伏強度を最大化させることができるので、輸送機器分野から電子製品ケースなど、産業全般の部品軽量化に適用することができるという利点がある。
以下、実施例及び実験例を通じて本発明を詳細に説明する。
但し、下記の実施例及び実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
次のような工程によって焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
工程1:7075アルミニウム合金インゴットを再溶解して、水平型双ロール式鋳造装置を用いて厚さ約4.5mmのアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造し、前記双ロール鋳造されたアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を400℃で1時間アニール熱処理後に熱間圧延および冷間圧延を順次に行って厚さ約1.0mmを有するアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造した。
工程2:前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を500℃で1時間維持して溶体化処理した。
工程3:前記溶体化処理したアルミニウム合金板材を90℃で30分間熱処理した後、常温に冷却させる予備時効処理を行って、焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<実施例2>
前記実施例1の工程3の熱処理時間を60分にすることを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<実施例3>
前記実施例1の工程3の熱処理時間を120分にすることを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<実施例4>
前記実施例1の工程3の熱処理時間を240分にすることを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<実施例5>
前記実施例1の工程3の熱処理温度を120℃にして、熱処理時間を5分に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<実施例6>
前記実施例5の工程3の熱処理時間を10分にすることを除き、実施例5と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<実施例7>
前記実施例5の工程3の熱処理時間を30分にすることを除き、実施例5と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<実施例8>
前記実施例5の工程3の熱処理時間を60分にすることを除き、実施例5と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例1>
実施例1の工程3を行なわないことを除き、実施例1と同様の方法で行ってアルミニウム合金板材を製造した。
<比較例2>
前記実施例1の工程3の熱処理温度を60℃に変更して予備時効処理時間を5分にしたことを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例3>
前記比較例2の工程3の熱処理時間を10分にしたことを除き、比較例2と同じ方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例4>
前記比較例2の工程3の熱処理時間を30分にしたことを除き、比較例2と同じ方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例5>
前記比較例2の工程3の熱処理時間を60分にしたことを除き、比較例2と同じ方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例6>
前記比較例2の工程3の熱処理時間を120分にしたことを除き、比較例2と同じ方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例7>
前記比較例2の工程3の熱処理時間を240分にしたことを除き、比較例2と同じ方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例8>
前記実施例1の工程3の熱処理時間を5分に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例9>
前記実施例1の工程3の熱処理時間を10分に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例10>
前記実施例5の工程3の熱処理時間を120分に変更したことを除き、実施例5と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例11>
前記実施例5の工程3の熱処理時間を240分に変更したことを除き、実施例5と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例12>
前記実施例1の工程3の熱処理温度を150℃に変更して予備時効処理時間を5分にしたことを除き、実施例1と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例13>
前記比較例12の工程3の熱処理時間を10分に変更したことを除き、比較例12と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例14>
前記比較例12の工程3の熱処理時間を30分に変更したことを除き、比較例12と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例15>
前記比較例12の工程3の熱処理時間を60分に変更したことを除き、比較例12と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例16>
前記比較例12の工程3の熱処理時間を120分に変更したことを除き、比較例12と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
<比較例17>
前記比較例12の工程3の熱処理時間を240分に変更したことを除き、比較例12と同様の方法で行って焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材を製造した。
表2に前記実施例と比較例で行った熱処理条件を示した。
Figure 2019500504
<実験例1>焼付硬化熱処理前とその後の硬度比較(1)
本発明の製造方法で製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化熱処理前とその後の硬度の変化を確認するために以下のような実験を行った。
比較例2〜7によって製造されたアルミニウム合金板材を塗装した後、180℃で30分間維持して焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度をビッカース硬度計で測定した。ここで、荷重0.3kgで、維持時間5秒の試験条件を用いて11回の硬度測定を行った後、最大/最小値を除いた残りの9つの硬度の値の平均を求めて、その結果を図2に示した。
図2に示すように、比較例2〜7で焼付硬化熱処理を行う前には硬度値125〜135Hvを有し、焼付硬化熱処理を行った後は、硬度値130〜140Hvを有することが分かる。
これにより、工程3の熱処理を60℃で行った場合には、焼付硬化熱処理時硬度値の上昇が10Hv未満で微々であり、強度および耐デント性が向上される程度が小さいことが確認できる。
<実験例2>焼付硬化熱処理前とその後の硬度の比較(2)
本発明の製造方法で製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化熱処理前とその後の硬度の変化を確認するために以下のような実験を行った。
実施例1〜4、比較例8および9によって製造されたアルミニウム合金板材を塗装した後、180℃で30分間維持して焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度を、前記実験例1と同一の条件で測定し、その結果を図3に示した。
図3に示すように、比較例8および9の場合には、焼付硬化熱処理を行う前の硬度値は約130Hvを有し、焼付硬化熱処理を行った後の硬度値は約140Hvを有するのに対し、実施例1〜4の場合には、焼付硬化熱処理を行う前に硬度値は約135Hvを有し、焼付硬化熱処理を行った後の硬度値は155〜165Hvを有し、熱処理時間が増加するほど硬度値も向上することを知ることができる。
これにより、工程3の熱処理を90℃で行なう場合は、熱処理を10分以上行った場合には、焼付硬化熱処理後の硬度値が大幅に向上したことを知ることができる。
<実験例3>焼付硬化熱処理前とその後の硬度の比較(3)
本発明の製造方法で製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化熱処理前とその後の硬度の変化を確認するために以下のような実験を行った。
実施例5〜8、比較例10および11によって製造されたアルミニウム合金板材を塗装した後、180℃で30分間維持して焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度を、前記実験例1と同一の条件で測定し、その結果を図4に示した。
図4に示すように、実施例5〜8の場合には、焼付硬化熱処理を行う前の硬度値は約135〜140Hvを有し、焼付硬化熱処理を行った後の硬度値は160〜170Hvを有することを通じて焼付硬化熱処理後に硬度値が大きく改善されたのに対し、比較例10および11の場合には、焼付硬化熱処理前の硬度値が大きく向上することを知ることができ、これにより、比較例10および11によって製造されたアルミニウム合金板材は、低い成形性を示すことを予想し得る。
これにより、工程3の熱処理を120℃で行なう場合には、熱処理が120分を超える場合には、成形性が低下することが分かる。
<実験例4>焼付硬化熱処理前とその後の硬度の比較(4)
本発明の製造方法で製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化熱処理前とその後の硬度の変化を確認するために以下のような実験を行った。
比較例12〜17によって製造されたアルミニウム合金板材を塗装した後、180℃で30分間維持して焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度をビッカース硬度計で測定し、その結果を図5に示した。
図5に示すように、比較例12〜17で焼付硬化熱処理を行う前に硬度値135〜145Hvを有し、焼付硬化熱処理を行った後に硬度値140〜145Hvを有することが分かる。
これにより、工程3の熱処理を150℃で行った場合には、焼付硬化熱処理を行った後にも、硬度値が向上する程度が小さいことを確認することができる。
<実験例5>焼付硬化熱処理前とその後の引張特性評価
本発明の製造方法で製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化熱処理前とその後の引張特性を評価するために、ゲージ長25mm、ゲージ幅6mmの板状引張試験片を作製し、常温で引張試験を行った。
ここで、実施例1〜8、比較例8および11によって製造されたアルミニウム合金板材を前記引張試験を行い、前記アルミニウム合金板材を塗装した後、180℃で30分間熱処理した後に引張試験を行い、その結果を図6a及び6bに示した。
図6a及び6bに示すように、延伸率の場合、実施例1〜8の場合は、焼付硬化熱処理前に15.4〜22.9%水準の延伸率を示し、優れた成形性を示すものと判断され、焼付硬化熱処理後には18.95〜28.04Hv水準の硬度値の向上と401〜484MPa水準の降伏強度を示し、高い耐デント性および強度を示すことを予想し得る。このような結果は、比較例1によって製造されたアルミニウム合金の焼付硬化後の引張特性と比較して、100〜190MPa水準の降伏強度の向上を示す。
<実験例6>析出相の分析
本発明の製造方法で製造されたアルミニウム合金板材の自然時効前と焼付硬化熱処理後の析出相の微細構造を観察するために、下記のような実験を行った。
比較例1及び実施例7によって製造されたアルミニウム合金板材を焼付硬化熱処理した後、厚さ80μm以下の薄板に製造してジェット研磨を行って、透過電子顕微鏡用試料として作製し、加速電圧が160kVである透過電子顕微鏡を用いて微細構造を観察し、その結果を図7a〜図7dに示した。
図7a及び図7bに焼付硬化熱処理前と後をそれぞれ示すように、予備時効なしに焼付硬化熱処理を実施した比較例1の場合には、析出相の密度は、3200/μmであり、大きさは5〜16nmで、平均10nm水準を示したのに対し、図7cおよび7dに焼付硬化熱処理前および後をそれぞれ示すように、30分間の工程3の熱処理を介してGPゾーンを安定的に分布させた後、焼付硬化熱処理を実施した場合、実施例7の場合には、析出相の密度が10,500/μmに大きく増加しており、大きさは2〜12nmで、平均6nm水準を示した。これにより、予備時効処理した後に焼付硬化熱処理を行う場合、より一層高い機械的特性を示すことを予想し得る。
本発明のアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材の製造方法は、溶体化処理後に65〜145℃の温度で3〜250分間の予備時効処理を行うことにより、板材の搬送や保管中の自然時効による物性変化を抑制し、車体成形後の焼付硬化によって強度をさらに向上させることができ、高強度を有する軽量輸送機器の車体を製造することができる。
本発明のアルミニウム合金板材の製造工程を示した図である。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例と比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の硬度の測定結果を示したグラフである。 実施例および比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の引張試験の結果を示したグラフである。 実施例および比較例に基づいて製造されたアルミニウム合金板材に焼付硬化熱処理を行なう前と後の引張試験の結果を示したグラフである。 比較例1に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化前の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。 比較例1に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化後の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。 実施例7に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化前の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。 実施例7に基づいて製造されたアルミニウム合金板材の焼付硬化後の微細構造を示した透過電子顕微鏡写真である。

Claims (13)

  1. アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造する工程(工程1)と、
    前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を溶体化処理する工程(工程2)と、
    前記溶体化処理したアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を65〜145℃で3〜250分間維持した後、常温に冷却させる予備時効処理を行なう工程(工程3)とを含む焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  2. 前記予備時効処理が、65〜105℃で25〜250分間維持した後、常温に冷却させることを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  3. 前記予備時効処理が、106〜145℃で3〜70分間維持した後、常温に冷却させることを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  4. 前記製造方法が、前記工程3以降に前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を170〜190℃で20〜40分間焼付硬化熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  5. 前記製造方法が、前記焼付硬化熱処理を行う前に、前記アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金を成形する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  6. 前記製造方法が、前記焼付硬化熱処理後の密度が8,000/μm〜15,000/μmの析出相を含むアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造することを特徴とする請求項4に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  7. 前記製造方法が、前記焼付硬化熱処理後の大きさが2〜12nmの析出相を含むアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造することを特徴とする請求項4に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  8. 前記製造方法が、前記焼付硬化熱処理後、前記工程3の予備時効処理を実行せずに焼付硬化熱処理を行った場合に比べ降伏強度が1.26〜1.50倍向上したアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造することを特徴とする請求項4に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  9. 前記製造方法が、前記焼付硬化熱処理後、400MPa以上の降伏強度の値を有するアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板材を製造することを特徴とする請求項4に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
  10. 請求項1に記載の製造方法で製造されるアルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅系アルミニウム合金板であり、焼付硬化熱処理後、400MPa以上の降伏強度値を有することを特徴とする焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材。
  11. 前記アルミニウム合金板材が、焼付硬化熱処理後の密度が8,000/μm〜15,000/μmの析出相を含むことを特徴とする請求項10に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材。
  12. 前記アルミニウム合金板材が、焼付硬化熱処理後の大きさが2〜12nmの析出相を含むことを特徴とする請求項10に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材。
  13. 前記アルミニウム合金板材が、輸送機器の車体に用いられることを特徴とする請求項10に記載の焼付硬化性に優れた高強度アルミニウム合金板材。
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