JP2019500024A - 認知を改善するための方法 - Google Patents

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Abstract

UBE3Aの欠失により障害が生じた認知の改善における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、認知障害の被験者又は加齢被験者において、UBE3Aの欠失により障害が生じた認知を改善するための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)の使用に関する。特に、本発明は、アンジェルマン症候群及び/又はプラダー・ウィリー症候群を治療するためのMCTの使用に関する。
UBE3Aは、分解のための特異的タンパク質を標的とするユビキチンE3リガーゼをコードし(de Bie,P.and Ciechanover A.(2011)Cell Death Differ.18:1393−402)、シナプスにおける主要なユビキチン結合タンパク質としての役割による正常な認知機能に不可欠である。シナプスシグナル伝達タンパク質(例えば、Arc)を除去するUBE3Aの能力は、シナプス成長の恒常性制御を可能にする。UBE3A発現の喪失は、転写因子Arcを介する長期的な増強を妨げ、グルタメート受容体活性の制御不全も生じさせる。時間の経過とともに、UBE3Aの非存在が、シナプス分解及び発作を引き起こす。
UBE3Aの機能異常は、認知機能低下に関連している。特に、アンジェルマン症候群などの特定疾患の原因として関与している。
アンジェルマン症候群は、重度の言語障害、運動又は平衡障害、及び奇異行動により特徴づけられる、機能的に重度の発達遅滞となる遺伝子疾患である。
米国及びカナダだけで1000〜5000人のアンジェルマン症候群の症例があると推定される。
アンジェルマン症候群に付随した発作は、場合により、薬剤を使用して、又はケトン食を用いて制御してもよく、本文脈中では、修正アトキンズ食(modified Atkins diet)も試みたが、これらのアプローチの成功は不定である。
最近の研究では、特定の抗がん剤にUBE3Aを含んでもよいことが示されており、アンジェルマン症候群のマウスモデルにおいて特定の抗がん剤を使用すると、行動の改善を示した(Huang,H.S.ら(2011)Nature 481:185−9)。しかし、薬剤は脳には生物学的に利用可能ではなく、更にこのような抗がん剤は細胞分裂を阻害し、アンジェルマン症候群患者の長期間治療には適切ではない。
アンジェルマン症候群治療のためのいくつかの臨床試験は、抗生物質、メチル化栄養分、及び酸化防止剤を使用して実施されてきたが、これらは全て認知又は行動にほとんど効果がなかった。したがって、現在のところ、この疾患に対する信頼できる治療法は存在しない。
プラダー・ウィリー症候群は、アンジェルマン症候群に関連した遺伝子疾患である。プラダー・ウィリー症候群の患者は、重大な認知、神経性、内分泌及び行動異常を経験する。更に、患者は、筋緊張低下により、乳児期の哺乳において困難を有し得、成長の遅れにつながり得るが、後年で、食物への制御不可能な渇望により肥満になる。
プラダー・ウィリー症候群の患者は、世界中に約400,000人である。
行動療法及びその他の治療は、プラダー・ウィリー症候群の影響を低減し得るが、この疾患対する有効な治療法は存在しない。
したがって、認知機能を改善させるために、脳内でUBE3Aの発現を上方制御するための方法について有意なニーズが残っている。更に、アンジェルマン症候群及びプラダー・ウィリー症候群などの疾患の治療、特に、関連する認知障害に対処する治療のための方法について有意なニーズが残っている。
本発明者らは、予想外に中鎖トリグリセリド(MCT)食が、脳内においてUBE3Aの発現を増大させることを示した。更に、本発明者らは、MCT食が、認知能力を改善させることを示した。
具体的には、本発明者らは、C8及び/又はC10トリグリセリドを含む食事が、対照食と比較して皮質及び海馬において、UBE3Aタンパク発現を増大させることを見出した。MCT食は、加齢被験者のUBE3A発現レベルを、若年被験者で見られるレベルに匹敵するか、又は若年被験者で見られるレベルより優れているレベルまで改善させることを見出した。
重要なことに、本発明者らは、MCT食がラットモデルにおける認知機能改善を生じさせることを更に見出した。理論に縛られることを望むものではないが、認知において観察された改善は、脳におけるUBE3Aレベルの増大に起因し、転写因子Arcの基底レベルの下方制御、及び/又はArc恒常性制御の改善を引き起こし得る。
したがって、一態様では、本発明は、UBE3Aの欠失により障害が生じた認知の改善における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を提供する。
一態様では、本発明は、UBE3A発現を上方制御することによる認知の改善における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を提供する。
UBE3Aの欠失は、例えば、UBE3A発現の不適切なレベル、又はUBE3A酵素の不活性形態の発現によってもたらされる、例えば、脳内の不完全なUBE3A活性に起因し得る。UBE3A機能異常は年齢が増すにつれて生じうる、及び/又は、例えば、不十分な発現又は機能を示す分子遺伝学的試験を使用して、当業者は容易に評価することができる(例えば、本明細書に記載のように)。
一実施形態では、認知を、本発明のMCTの使用によって改善する。別の実施形態では、認知を、本発明のMCFAの使用によって改善する。
一実施形態では、MCT又はMCFAは、認知障害の被験者の認知を改善する。認知障害は、脳内の不十分なUBE3A活性を伴いうるか、又は脳内の不十分なUBE3A活性に起因し得る。
一実施形態では、MCT又はMCFAは、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の被験者の認知を改善する。
別の実施形態では、MCT又はMCFAは、加齢被験者の認知を改善する。加齢被験者は、例えば、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳又は100歳の年齢にわたるヒト被験者であってもよい。
別の態様では、本発明は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の治療における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を提供する。
MCT又はMCFAは、例えば、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の被験者の認知を改善、及び/又は発作の発生を低減し得る。
本発明による使用のためのMCTは、例えば、各々が独立して6〜12個、6〜11個、6〜10個、7〜12個、7〜11個、7〜10個、8〜12個、8〜11個、又は8〜10個の炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含んでもよい。好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、各々が独立して8〜10個の炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含む。
本発明による使用のためのMCTは、例えば、各々が独立して6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は12個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含んでもよい。好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、各々が独立して8個又は10個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含み、即ち、好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、C8及び/又はC10のみの脂肪酸部分を含む。好ましくは、脂肪酸部分は、オクタン酸及び/又はデカン酸部分である。
本発明による使用のためのMCTは、ホモトリグリセリド(即ち、MCTの脂肪酸部分の全てが、同じ同一性であってもよく、例えば、C8ホモトリグリセリドは、3つのオクタン酸部分を含んでもよい)であってもよい。
一実施形態では、本発明による使用のためのMCTは、8個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含む。好ましい実施形態では、3つ全ての脂肪酸部分がオクタン酸部分である。
別の実施形態では、本発明による使用のためのMCTは、10個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含む。好ましい実施形態では、3つ全ての脂肪酸部分がデカン酸部分である。
本発明による使用のためのMCFAは、例えば、6〜12個、6〜11個、6〜10個、7〜12個、7〜11個、7〜10個、8〜12個、8〜11個、又は8〜10個の炭素原子を有してもよい。好ましくは、本発明による使用のためのMCFAは、8〜10個の炭素原子を有する。
本発明による使用のためのMCFAは、例えば、6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は12個のみの炭素原子を有してもよい。好ましくは、本発明による使用のためのMCFAは、8個又は10個のみの炭素原子を有し、即ち、好ましくは、本発明による使用のためのMCFAは、C8及び/又はC10脂肪酸部分である。
一実施形態では、本発明による使用のためのMCFAは、8個のみの炭素原子を有する。好ましい実施形態では、MCFAはオクタン酸である。
別の実施形態では、本発明による使用のためのMCFAは、10個のみの炭素原子を有する。好ましい実施形態では、MCFAはデカン酸である。
本発明による使用のためのMCT又はMCFAは、経腸的又は非経腸的に投与されてもよい。好ましくは、MCT又はMCFAは、経腸的に投与される。例えば、MCT又はMCFAは、食料品又は補助食品の形態で投与されてもよい。
本発明による使用のためのMCT又はMCFAは、例えば、約1〜10重量/重量%、2〜10重量/重量%、3〜10重量/重量%、4〜10重量/重量%、5〜10重量/重量%、6〜10重量/重量%、7〜10重量/重量%、又は8〜10重量/重量%の本発明のMCT及び/又はMCFAを含む食事において投与されてもよい。本発明による使用のためのMCT又はMCFAは、例えば、約1.5〜8重量/重量%の本発明のMCT及び/又はMCFAを含む食事において投与されてもよい。好ましくは、本発明による使用のためのMCT又はMCFAは、約3〜8重量/重量%の本発明のMCT及び/又はMCFAを含む食事において投与される。
別の態様では、本発明は、UBE3Aの欠失により障害が生じた認知の改善における使用のための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)及び/又は中鎖脂肪酸(MCFA)を含む組成物を提供する。
UBE3Aの欠失は、例えば、UBE3A発現の不適切なレベル、又はUBE3A酵素の不活性形態の発現によってもたらされる、例えば、脳内の不完全なUBE3A活性に起因し得る。
一実施形態では、組成物は本発明のMCTを含む。別の実施形態では、組成物は本発明のMCFAを含む。
一実施形態では、組成物は、認知障害の被験者の認知を改善する。認知障害は、脳内の不十分なUBE3A活性を伴い得るか、又は脳内の不十分なUBE3A活性に起因し得る。
好ましくは、組成物は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の被験者の認知を改善する。
別の実施形態では、組成物は、加齢被験者の認知を改善する。加齢被験者は、例えば、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳又は100歳の年齢にわたるヒト被験者であってもよい。
別の態様では、本発明は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の治療における使用のための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を含む組成物を提供する。
組成物は、例えば、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の被験者の認知を改善、及び/又は発作の発生を低減し得る。
MCT又はMCFAは、本明細書に記載のとおりであってもよい。
一実施形態では、本発明の組成物は、C8脂肪酸部分(即ち、8個の炭素原子を有する脂肪酸)、好ましくはオクタン酸部分を含むホモトリグリセリドを含む。
一実施形態では、本発明の組成物は、C10脂肪酸部分(即ち、10個の炭素原子を有する脂肪酸)、好ましくはデカン酸部分を含むホモトリグリセリドを含む。
一実施形態では、組成物は、C8脂肪酸部分(即ち、8個の炭素原子を有する脂肪酸)、好ましくはオクタン酸部分を含むホモトリグリセリド、及びC10脂肪酸部分(即ち、10個の炭素原子を有する脂肪酸部分)、好ましくはデカン酸部分を含むホモトリグリセリドを含む。
一実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約90:10(重量/重量)〜約10:90(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約80:20(重量/重量)〜約20:80(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約70:30(重量/重量)〜約30:70(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約60:40(重量/重量)〜約40:60(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約50:50(重量/重量)〜約40:60(重量/重量)である。
一実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約90:10(重量/重量)、80:20(重量/重量)、70:30(重量/重量)、60:40(重量/重量)、50:50(重量/重量)、40:60(重量/重量)、30:70(重量/重量)、20:80(重量/重量)又は10:90(重量/重量)である。好ましくは、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約50:50(重量/重量)又は40:60(重量/重量)である。
本発明による使用のための組成物は、例えば、約1〜100重量/重量%、1〜50重量/重量%、1〜30重量/重量%、1〜10重量/重量%、2〜10重量/重量%、3〜10重量/重量%、4〜10重量/重量%、5〜10重量/重量%、6〜10重量/重量%、7〜10重量/重量%、又は8〜10重量/重量%の本発明のMCT及び/又はMCFAを含んでもよい。本発明による使用のための組成物は、例えば、約1.5〜8重量/重量%の本発明のMCT及び/又はMCFAを含んでもよい。好ましくは、本発明による使用のための組成物は、約3〜8重量/重量%の本発明のMCT及び/又はMCFAを含む。
一実施形態では、本発明による使用のための組成物は、粉末の形態である。粉末は、例えば、噴霧乾燥粉末又はフリーズドライ粉末であってもよい。
一実施形態では、本発明による使用のための組成物は、エマルジョンの形態である。エマルジョンは、例えば、水中油型エマルジョンであってもよい。
好ましくは、本発明による使用のための組成物は、食料品の形態である。好ましくは、食料品はヒト用の食料品である。食料品は、本発明のMCT及び/又はMCFAで富化されていてもよい。
一実施形態では、本発明による使用のための組成物は、飲料、マヨネーズ、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズ・スプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、液状エマルジョン、噴霧乾燥粉末、フリーズドライ粉末、UHTプリン、低温殺菌プリン、ゲル、ジェリー、ヨーグルト、又は脂肪ベースのフィリング若しくは含水フィリングを有する食品の形態である。
別の態様では、本発明は、UBE3Aの欠失により障害が生じた認知を改善するための薬剤又は組成物を製造するための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)の使用を提供する。本明細書に記載されるように、認知の改善は、認知障害の被験者;アンジェルマン症候群若しくはプラダー・ウィリー症候群の被験者;又は加齢被験者においてありうる。
別の態様では、本発明は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の治療用薬剤又は組成物を製造するための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)の使用を提供する。
別の態様では、本発明は、UBE3Aの欠失により障害が生じた被験者における認知を改善する方法であって、被験者に対して、有効量の本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)若しくは中鎖脂肪酸(MCFA)、又は本発明の組成物を投与することを含む、方法を提供する。本明細書に記載されるように、認知の改善は、認知障害の被験者;アンジェルマン症候群若しくはプラダー・ウィリー症候群の被験者;又は加齢被験者においてありうる。
別の態様では、本発明は、被験者におけるアンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群を治療する方法であって、被験者に対して、有効量の本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)若しくは中鎖脂肪酸(MCFA)、又は本発明の組成物を投与することを含む、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、被験者におけるUBE3Aの発現を増大させる方法であって、被験者に対して、有効量の本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)若しくは中鎖脂肪酸(MCFA)、又は本発明の組成物を投与することを含む、方法を提供する。
方法は、例えば、脳内においてUBE3Aの発現を増大させうるが、その他の組織、例えば、末梢においては、UBE3Aの発現を増大させない可能性がある。
24ヶ月齢ラットにおける、基準、及び長期的な中鎖トリグリセリド(MCT)補足食(5重量%)を8週間与えた後の社会認識。 認知能力は、対照食を与えられた群と比較してMCT治療群において上昇した(一元配置分散分析)。F=10.56;**,p<0.01対照(CON)に対するMCT10(カプリン酸トリグリセリド);,p<0.05対照(CON)に対するMCT8(カプリル酸トリグリセリド)。 24ヶ月齢ラットの皮質におけるUBE3aタンパク発現量(一元配置分散分析)。F=4.891;,p<0.05対照(CTL)と比較したMCT8又はMCT10。 中鎖トリグリセリド(MCT)治療群及び対照(CON)群における24ヶ月齢ラットの前頭葉前部皮質のUBE3A活性を伴う転写のmRNA発現;群:MCT10(カプリン酸トリグリセリド)、MCT8(カプリル酸トリグリセリド)、「混合」(MCT8とMCT10とが40:60の比)。Arc海馬については、MCT10治療群は対照群と比較して減少した。p<0.05(一元配置分散分析)。Snrpn海馬については、「混合」MCT8及びMCT10治療群は対照群と比較して増加した。p<0.05(一元配置分散分析)。 長期的(8週間)中鎖トリグリセリド(MCT)治療後の物体認識。認知能力は、(対照食を与えられた群と比較して)MCT治療群において上昇した(一元配置分散分析)。F=10.56;,p<0.05対照(con)に対するMCT10(カプリン酸トリグリセリド)。 17ヶ月齢ラットの皮質におけるUBE3aタンパク発現量。F=4.891;,p<0.05対照(CTL)と比較したMCT10。MCT10治療したラットにおけるUBE3Aタンパク発現量は、若年(6ヶ月齢)ラット(若年CTL)のものに匹敵する。 MCT補足食の母系摂取を介して(MCTの胎盤送達を介して、及び母乳を介して)新生児期に、MCTを供した1ヶ月齢マウスの皮質及び肝臓におけるUBE3aタンパク発現量の比較。研究者のt−検定分析:,p<0.05対照(Con)と比較して。 MCT補足食の母系摂取を介して(MCTの胎盤送達を介して、及び母乳を介して)新生児期に、MCTを供した2ヶ月齢マウスのモーリス水迷路の成績。プラットフォーム象限で費やした時間は、4日間の迷路トレーニング後の記憶保持のレベルを示す。雌C8−OTG(カプリル酸トリグリセリド)マウスは、ターゲット象限(プラットフォームがあった場所)で、25%チャンスレベルよりも有意に多くの時間を費やした。t(11)=3.533,p=0.005。 対照(DMSO)処理に関して、オクタン酸又はデカン酸で処理した後のヒトiCell神経細胞における、UBE3A及びグルタメート受容体、イオンチャネル型、N−メチル−D−アスパルテート1(GRIN1)レベルの倍率変化。p<0.05(一元配置分散分析)。 t−検定を使用して、MCT C8/C10は有意に、UBE3Aの発現を増大させた(β−アクチンに正規化);**=p<0.05。 オクタン酸/C8及びデカン酸/C10は、培地中のグルコース非存在下でUBE3Aの発現レベルを有意に増大させた(β−アクチンに正規化)。5μM及び50μMのデカン酸/C10は、4mMの低グルコースの存在下でUBE3Aの発現を有意に増加させた(β−アクチンに正規化)。一元配置分散分析;=p<0.1;**=p<0.05;***=p<0.01
本発明の種々の好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な例によって記述する。
本発明の実施は、特に指示がない限り、当業者の能力の範囲内である、化学、生化学、分子生物学、微生物学、及び免疫学の従来技術を使用する。このような技術は文献に説明されている。例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F、及びManiatis,T.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら(1995 and periodic supplements)Current Protocols in Molecular Biology,Ch.9,13及び16,John Wiley&Sons;Roe,B.,Crabtree,J.及びKahn,A.(1996)DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley&Sons;Polak,J.M.及びMcGee,J.O’D.(1990)In Situ Hybridization:Principles and Practice,Oxford University Press;Gait,M.J.(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;並びに、Lilley,D.M.及びDahlberg,J.E.(1992)Methods in Enzymology:DNA Structures Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA,Academic Pressを参照のこと。これらの一般的なテキストの各々は、本明細書に参照により組み込まれる。
一態様では、本発明は、UBE3Aの欠失により障害が生じた認知の改善における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を提供する。
別の態様では、本発明は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の治療における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を提供する。
中鎖トリグリセリド(MCT)及び中鎖脂肪酸(MCFA)
トリグリセリド(トリアシルグリセロール又はトリアシルグリセリドとしても知られている)は、グリセロール及び3つの脂肪酸由来のエステルである。
中鎖トリグリセリド(MCT)は、中の3つの脂肪酸部分全てが中鎖脂肪酸部分であるトリグリセリドである。中鎖脂肪酸(MCFA)は、6〜12個の炭素原子を有する脂肪酸である。好ましくは、脂肪酸部分は、脂肪族の脂肪酸部分である。したがって、MCTはグリセロール分子及び3つの中鎖脂肪酸分子から形成されるエステルである。
用語「脂肪酸部分」とは、グリセロールとのエステル化反応における脂肪酸に由来するMCTの一部を指す。例えば、グリセロールとオクタン酸のみとの間のエステル化反応は、オクタン酸部分を有するMCTをもたらす。
本発明による使用のためのMCTは、例えば、各々が独立して6〜12個、6〜11個、6〜10個、7〜12個、7〜11個、7〜10個、8〜12個、8〜11個、又は8〜10個の炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含んでもよい。好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、各々が独立して8〜10個の炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含む。
本発明による使用のためのMCTは、各々が独立して6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は12個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含んでもよい。好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、各々が独立して8個又は10個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含み、即ち、好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、C8及び/又はC10のみの脂肪酸部分を含む。好ましくは、脂肪酸部分は、オクタン酸及び/又はデカン酸部分である。
本発明による使用のためのMCTは、ホモトリグリセリド(即ち、MCTの脂肪酸部分の全てが、同じ同一性であってもよく、例えば、C8ホモトリグリセリドは、3つのオクタン酸部分を含んでもよい)であってもよい。
好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、8個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含む。好ましい実施形態では、3つ全ての脂肪酸部分がオクタン酸部分である。
好ましくは、本発明による使用のためのMCTは、10個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含む。好ましい実施形態では、3つ全ての脂肪酸部分がデカン酸部分である。
オクタン酸(カプリル酸としても知られる)は、式CH(CHCOOHの飽和脂肪酸である。
デカン酸(カプリン酸としても知られる)は、式CH(CHCOOHの飽和脂肪酸である。
MCTは、例えば、ヤシ油及びココナツ油中に少量存在する。デカン酸及びオクタン酸は、それぞれココナツ油の脂肪酸組成の約5〜8%及び4〜10%を構成する。
UBE3A
UBE3Aは、分解のための特異的タンパク質を標的とするユビキチンE3リガーゼをコードし(de Bie,P.and Ciechanover A.(2011)Cell Death Differ.18:1393−402)、シナプスにおける主要なユビキチン結合タンパク質としての役割による正常な認知機能に不可欠である。
シナプスシグナル伝達タンパク質(例えば、Arc)を除去するUBE3Aの能力は、シナプス成長の恒常性制御を可能にする。UBE3A発現の喪失は、転写因子Arcを介する長期的な増強を妨げ、グルタメート受容体活性の制御不全も生じさせる。時間の経過とともに、UBE3Aの非存在が、シナプス分解及び発作を引き起こす。
例示的なUBE3A配列は、NCBIアクセッション番号NP_000453.2の下に寄託されている。
例示的なUBE3A配列は、
MEKLHQCYWKSGEPQSDDIEASRMKRAAAKHLIERYYHQLTEGCGNEACTNEFCASCPTFLRMDNNAAAIKALELYKINAKLCDPHPSKKGASSAYLENSKGAPNNSCSEIKMNKKGARIDFKDVTYLTEEKVYEILELCREREDYSPLIRVIGRVFSSAEALVQSFRKVKQHTKEELKSLQAKDEDKDEDEKEKAACSAAAMEEDSEASSSRIGDSSQGDNNLQKLGPDDVSVDIDAIRRVYTRLLSNEKIETAFLNALVYLSPNVECDLTYHNVYSRDPNYLNLFIIVMENRNLHSPEYLEMALPLFCKAMSKLPLAAQGKLIRLWSKYNADQIRRMMETFQQLITYKVISNEFNSRNLVNDDDAIVAASKCLKMVYYANVVGGEVDTNHNEEDDEEPIPESSELTLQELLGEERRNKKGPRVDPLETELGVKTLDCRKPLIPFEEFINEPLNEVLEMDKDYTFFKVETENKFSFMTCPFILNAVTKNLGLYYDNRIRMYSERRITVLYSLVQGQQLNPYLRLKVRRDHIIDDALVRLEMIAMENPADLKKQLYVEFEGEQGVDEGGVSKEFFQLVVEEIFNPDIGMFTYDESTKLFWFNPSSFETEGQFTLIGIVLGLAIYNNCILDVHFPMVVYRKLMGKKGTFRDLGDSHPVLYQSLKDLLEYEGNVEDDMMITFQISQTDLFGNPMMYDLKENGDKIPITNENRKEFVNLYSDYILNKSVEKQFKAFRRGFHMVTNESPLKYLFRPEEIELLICGSRNLDFQALEETTEYDGGYTRDSVLIREFWEIVHSFTDEQKRLFLQFTTGTDRAPVGGLGKLKMIIAKNGPDTERLPTSHTCFNVLLLPEYSSKEKLKERLLKAITYAKGFGML
(配列番号1)である。
認知
本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)及び組成物は、認知を改善するために使用し得る。特に、本発明のMCT及び組成物は、認知障害に罹患した被験者若しくは罹患するリスクのある被験者、アンジェルマン症候群若しくはプラダー・ウィリー症候群、及び/又は加齢被験者における認知を改善するために使用し得る。
用語「認知」とは、知識、注意、長期記憶及び作業記憶、判断及び評価、推論及び「計算」、問題解決及び意思決定、言語の理解及び産出を含む、一連の全ての精神的能力及び過程を指す。
認知の水準及び改善は、情報処理速度、実行機能及び記憶を評価するように設計された認知検査を含む、当該技術分野において既知である任意の好適な神経学及び認知検査を用いて、当業者により容易に評価することができる。好適な例示的試験としては、ミニメンタルステート検査(MMSE)、ケンブリッジ神経心理学的自動検査(CANTAB)、アルツハイマー病評価尺度認知検査(ADAScog)、ウィシコンシンカードソーティングテスト、言語及び図形流暢性検査、並びにトレイルメイキングテスト、脳波計(EEG)、脳磁計(MEG)、ポジトロン放出型断層撮影(PET)、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)、磁気共鳴像画像(MRI)、機能的磁気共鳴画像(fMRI)、コンピュータ断層撮影並びに長期増強が挙げられる。
アンジェルマン症候群、及びプラダー・ウィリー症候群の子供を評価するための認知及び行動検査としては、Bayley Scales of Infant and Toddler Development,第3版(BSID−III),Bayley,H.(2005);Preschool Language Scale,第4版(PLS−4),Zimmerman,I.L.ら(2002);Vineland Adaptive Behavior Scales,第2版(VABS−II),Sparrow,S.S.ら(2005)などの、注意力、自己指向性行動、運動能力、及び記憶を測定する検査が挙げられる。
認知の改善は、例えば、好適な検査の(例えばBayley Scales of Infant and Toddler Developmentに基づく)基準能力との統計学的に有意な差として解釈されうる。
遺伝子検査
アンジェルマン症候群のための遺伝子検査
アンジェルマン症候群の診断は、母系遺伝したUBE3A対立遺伝子の発現又は機能が不十分であることを示唆する分子遺伝子検査により実施されてもよい。15番染色体のq11.2〜q13染色体領域における親特異的DNAメチル化刷り込みの解析は、欠失、片親性ダイソミー(UPD)、又は刷り込み欠損(ID)を有するものを含む、アンジェルマン症候群を有する個体の約80%を検出する。個体の1%未満が細胞遺伝学的に目に見える染色体転位(即ち、転座又は逆位)を有する。UBE3A配列解析は、更に約11%の個体における病原性変異を検出する。したがって、分子遺伝子検査(例えば、メチル化分析及びUBE3A配列解析)は、個体の約90%において変化を同定し得る。
プラダー・ウィリー症候群のための遺伝子検査
プラダー・ウィリー症候群のための遺伝子検査は、UBE3A転写を制御するSNRPN座位の5′CpGアイランドを、(SNRPN転写物にコードされたノンコーディングRNAを介して)評価してもよい。SNRPNのプロモーター、エクソン1とイントロン1の領域は、父系発現対立遺伝子ではメチル化されず、母系抑制対立遺伝子ではメチル化される。プラダー・ウィリー症候群の被験者は、母系メチル化対立遺伝子のみを有する。
生理学的試験
EEG、脳の電気的活動度の測定は、様々なランドマークで頭皮に電極を配置し、脳信号を大きく増幅して記録することによって達成される。MEGは、電場に関係する磁場を測定するという点で、EEGに類似している。MEGは、神経系における同期波を含む自発的な脳活動を測定するために使用される。
PETは、酸素利用及びグルコース代謝の測定を提供する。この技術では、放射性ポジトロン放出トレーサーを投与し、脳によるトレーサーの取り込みは脳の活動度と相関する。これらのトレーサーはガンマ線を放出し、頭を取り囲むセンサによって検出され、脳活動の3Dマップをもたらす。トレーサーが脳によって取り込まれるとすぐに、検出された放射能が局所的な脳血流量の関数として生じる。活性化の間、脳血流量及び神経グルコース代謝の増大を、数秒以内に検出することができる。
好適な分析はまた、神経心理学試験、臨床検査、及び認知機能喪失の個々の訴え(例えば、主観的記憶喪失)に基づくこともできる。
更に好適な検査は、運動、記憶及び注意、発作感受性、並びに社会的関わり合い及び/又は社会認識の評価をベースにしてもよい。これらの検査は、アンジェルマン症候群及び/又はプラダー・ウィリー症候群などの疾患を、並びにその治療の効果を評価するのに特に好適である。
認知障害
本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)及び組成物を使用して、認知障害の被験者における認知を改善し得る。
用語「認知障害」は、認知に障害を引き起こす障害を指し、特に、学習、記憶、知覚及び/又は問題解決に主に影響を及ぼす障害を指す。
本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)及び組成物を使用して、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の被験者における認知を改善し得る。
本発明のMCT、MCFA及び組成物を使用して、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群を治療し得る。
アンジェルマン症候群
アンジェルマン症候群は、重度の言語障害、運動又は平衡障害、知的障害、てんかん、及び奇異行動により特徴づけられる、機能的に重度の発達遅滞となる遺伝子疾患である。アンジェルマン症候群の子供の行動パターンの表出(behavioural signatures)としては、頻繁な笑い及び/又は微笑み、並びに手を叩くことの多い易興奮性が挙げられる。アンジェルマン症候群患者の大部分は発作を経験し、通常3歳になる前に発症する。ほとんど全てが、異常な脳波(EEG)を示し、診断中に使用されうる。アンジェルマン症候群の患者は、多くの場合、自閉症の診断基準を満たした様式で、社会性障害及びコミュニケーション障害を示す。
アンジェルマン症候群は、15番染色体のq11〜q13領域に位置する遺伝子である、UBE3Aの機能異常により引き起こされる。UBE3Aの変異は、自然発生であるか、又は母系遺伝であるかのどちらかでありうる。アンジェルマン症候群の患者の約80%では、UBE3A領域が母系染色体から欠失しているが、父系染色体は無傷である。UBE3Aは、妊娠中に両方の染色体から転写されるが、生涯で最初の1年間は、父系遺伝子が脳内でエピジェネティクス的にサイレンシングされている。その結果、アンジェルマン症候群患者は末梢にUBE3Aを発現するが、脳内にUBE3Aの発現は見られない。
プラダー・ウィリー症候群
プラダー・ウィリー症候群は、父系遺伝した15番染色体のq11〜q13領域から、多数の遺伝子の発現の欠損により引き起こされるアンジェルマン症候群に関連した遺伝子疾患である。
アンジェルマン症候群と同様に、15番染色体のq11〜q13領域が、刷り込みを通してエピジェネティクス的なサイレンシングを受ける。しかし、プラダー・ウィリー症候群の場合には、母系染色体上の遺伝子が通常は刷り込まれている。したがって、父系遺伝子が機能異常である場合、これが疾患の発症を引き起こす場合がある。
プラダー・ウィリー症候群の患者は、重大な認知、神経性、内分泌及び行動異常を経験する。更に、患者は、筋緊張低下により、乳児期の哺乳において困難を有し得、成長の遅れにつながり得るが、後年で、食物への制御不可能な渇望により肥満になる。
組成物
別の態様では、本発明は、UBE3Aの欠失により障害が生じた認知の改善における使用のための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を含む組成物を提供する。
別の態様では、本発明は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の治療における使用のための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を含む組成物を提供する。
組成物は、本明細書で定義されるような複数のMCT及び/又はMCFAを含んでもよい。
組成物は、約5g/L〜150g/Lの濃度の本発明のMCT及び/又はMCFAを含んでも良い。濃度は、約5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、175g/L、200g/L、225g/L、又は250g/Lの本発明のMCT及び/又はMCFAであってもよい。
組成物は、C8脂肪酸部分(即ち、8個の炭素原子を有する脂肪酸)、好ましくはオクタン酸部分を含むホモトリグリセリドを含んでもよい。
組成物は、C10脂肪酸部分(即ち、10個の炭素原子を有する脂肪酸)、好ましくはデカン酸部分を含むホモトリグリセリドを含んでもよい。
組成物は、C8脂肪酸部分(即ち、8個の炭素原子を有する脂肪酸)、好ましくはオクタン酸部分を含むホモトリグリセリド、及びC10脂肪酸部分(即ち、10個の炭素原子を有する脂肪酸)、好ましくはデカン酸部分を含むホモトリグリセリドを含んでもよい。
一実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約90:10(重量/重量)〜約10:90(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約80:20(重量/重量)〜約20:80(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約70:30(重量/重量)〜約30:70(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約60:40(重量/重量)〜約40:60(重量/重量)である。別の実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約50:50(重量/重量)〜約40:60(重量/重量)である。
一実施形態では、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約90:10(重量/重量)、80:20(重量/重量)、70:30(重量/重量)、60:40(重量/重量)、50:50(重量/重量)、40:60(重量/重量)、30:70(重量/重量)、20:80(重量/重量)又は10:90(重量/重量)である。好ましくは、C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比は、約50:50(重量/重量)又は40:6(重量/重量)である。
組成物は、モノ又は多価不飽和脂肪酸を含まない場合も、又は実質的に含まない場合もある。
組成物のケトジェニック比(ketogenic ratio)は0.2〜0.3:1であり得る。他の実施形態では、この比は0.5:1又は1:1〜5:1であり得る。用語「ケトジェニック比」とは、炭水化物及びタンパク質の合計重量に対する脂質重量を指す。
組成物は、錠剤、糖衣錠、カプセル、ジェルカプセル、散剤、顆粒剤、液剤、乳剤、懸濁剤、被覆パーティクル、噴霧乾燥パーティクル、又は丸剤の形態であってもよい。
組成物は、散剤の形態であってもよい。散剤は、例えば、噴霧乾燥散剤又はフリーズドライ散剤であってもよい。
組成物は、乳剤の形態であってもよい。乳剤は、例えば、水中油型乳剤であってもよい。組成物は、水に戻して使用可能なものであってよい。
組成物は、食品物質に挿入又は混ぜ込まれ得る。組成物は、食料品の形態であり得る。好ましくは、食料品はヒト用の食料品である。
組成物は、栄養補助食品の形態であってもよい。用語「栄養補助食品」とは、対象の普段の食生活を補助することを意図する製品を指す。
組成物は完全栄養製品の形態であってよい。用語「完全栄養製品」とは、対象により摂取される単独型の物品、又は食事、又は治療食を意図する製品を指す。
組成物は、飲料、マヨネーズ、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズ・スプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、液状エマルジョン、噴霧乾燥粉末、フリーズドライ粉末、UHTプリン、低温殺菌プリン、ゲル、ジェリー、ヨーグルト、又は脂肪ベースのフィリング若しくは含水フィリングを有する食品の形態であってもよい。
組成物は、乳児用調製粉乳であってもよい。
組成物は、本発明のMCT及び/又はMCFAで富化されていてもよい。
用語「富化」とは、MCT及び/又はMCFAが組成物に添加されていることを意味する。例えば、MCT及び/又はMCFAは組成物に混ぜ込まれ(即ち、内又は中に添加され)てもよい。
一実施形態では、食物又は食用エキスなどの組成物が、元々MCT及び/又はMCFAを含有している場合、「MCT又はMCFAで富化されている」は、富化組成物が、組成物中に元々生じるよりも多量のMCT又はMCFAを含むことを意味する。
例えば、富化組成物、食品、又は食用エキスは、同等の元の組成物、即ち富化させていない食品又は食用エキスの少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍より多い、本発明のMCT及び/又はMCFAを含んでもよい。
本発明は、UBE3Aの欠失により障害が生じた認知を改善するための薬剤又は組成物を製造するための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)の使用を提供する。本発明は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群を治療するための薬剤又は組成物を製造するための、本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)の使用もまた提供する。
用語「薬剤」は、栄養補助食品及び完全栄養製品を含む、本明細書に記載されるような組成物を包含する。薬剤は、好適な薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含んでもよい。
投与
本発明の中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)、及び組成物は、経腸的又は非経腸的に投与されてもよい。好ましくは、MCT、MCFA又は組成物は、経腸的に投与される。例えば、MCT又はMCFAは、食料品又は補助食品の形態で投与されてもよい。
一般論として、本発明のMCT、MCFA又は組成物の投与は、例えば、経口経路又は別の経路により胃腸管に投与するというものであってもよく、例えば、投与は胃経管栄養法によるものであってもよい。
治療方法
特定の態様では、本発明は、アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の治療に関する。治療は、例えば、アンジェルマン症候群若しくはプラダー・ウィリー症候群の被験者の認知を改善、及び/又は発作の発生を低減し得る。
本発明の文脈において、予防についての基準は、より一般的には、予防的治療に関連するが、治療についての本明細書の全基準は、治癒的、緩和的、予防的治療と理解される。治療に、疾患の重症度の進行を停止することもまた更に含んでもよい。
哺乳類、特にヒトの治療が好ましい。しかし、ヒト及び動物治療の両方が、本発明の範囲内である。
治療される対象は、例えば子供又は乳児であり得る。
実施例1
材料及び方法
動物
21ヶ月齢の雄のウィスターラットを、Janvier Labs(フランス)から注文入手し、場所に7日間順応させた。この期間、これらをペアでケージに収容した。
順応期間後、ラットを無作為に認知及び体重に従って4つの群に分けた。以下に記載の手順を使用して、社会認識による基準認知を試験した。
ラットを標準的なケージに1匹で収容し、食物及び水を自由に摂取させ、20〜24℃の温度、及び50〜60%の相対湿度にて、12時間の光サイクル期間に保った。ラットに、8週間の間特別に処方された動物用飼料により、5%中鎖トリグリセリド(MCT)食;カプリル酸トリグリセリド(C8)食;カプリン酸トリグリセリド(C10)食;40:60のC8及びC10トリグリセリドの組み合わせ食;又は対照(5%ヒマワリ油)食を与えた。
社会認識
ラットを、屠殺の3日前に、社会的関わり合いにより、MCTの行動効果について試験した。本試験は、不慣れな幼若ラットを、4分間、試験ラットのホームケージに導入することによった。幼若ラットの接触、嗅ぐ動作及び一般的探索の量を記録し、社会的関わり合いの合計時間を、社会性及び不安の指標として使用した。1時間後、先に探索した幼若ラットと新しい幼若ラットを、4分間、ホームケージに導入し、両方の幼若ラットの探索に費やす時間の合計量に対する、新しい幼若ラットの探索に費やす時間量(JNEW/(JNEW+JOLD))(「幼若ラットの新規探索量対合計探索量」と称される)により、社会認識を算定した。
ウェスタンブロット
NuPAGE Novex Midi Gels(4〜12%;Life Technologies)をタンパク質分離に使用した。以下の抗体を使用した。Synaptophysin(D35E4)XP(登録商標)Rabbit mAb(Cell Signaling,カタログ番号5461);Ube3a(Abgent,番号346954);β−チューブリン抗体(TUB 2.1,Santa Cruz,カタログ番号sc−58886);及びβ−アクチン抗体(Sigma,カタログ番号A1978)。
Li_COR Biosciencesからの対応する赤外蛍光二次抗体(番号926−32213 IRDye(登録商標)800CW Donkey 抗ウサギIgG、及び番号926−68072 IRDye(登録商標)680RD Donkey 抗マウスIgG)と共にインキュベートした後、Odyssey CLx imager(LI−COR)で、特異的なタンパク質のシグナルを検出し、定量した。
PCRによる遺伝子発現検出
全RNAを、RNAアドバンスティッシュキット(Agencourt,Beverly,MA,USA)で抽出及び精製した。RNA試料の品質を、Fragment Analyzer(Advanced Analytical Technologies,Inc,Ames,IA,USA)を使用して、検査した。逆転写を、Katara ClontechからのPrimeScript試薬キット(カタログ番号RR037A)を使用し、製造者の説明書に従い、500ngの各RNA試料を使用して、実施した。LightCycler(登録商標)1536 DNA Green Master(Roche,カタログ番号5573092001)を添加した後、遺伝子発現をRoche LightCycler480で定量した。以下の遺伝子用のプライマーをPCR反応に用いた。Arc、snrpn、ube3a1、及びβ−アクチンを内因性対照として使用した。
Rat−Arc−F:acagacacagcagatccagc(配列番号2);
Rat−Arc−R:tgagtcatggagccgaagtc(配列番号3)
Rat−Actin−F:gtcgtaccactggcattgtg(配列番号4);
Rat−Actin−R:ctctcagctgtggtggtgaa(配列番号5)
Rat−Snrpn−F:TTGGTTCTGAGGAGTGATTTGC(配列番号6)
Rat−Snrpn−R:CCTTGAATTCCACCACCTTG(配列番号7)
Rat−Ube3a−F:GGCACCCTTGTTTGAAACTT(配列番号8)
Rat−Ube3a−R:GCTCATGACCCTGTCCTTTC(配列番号9)
結果
基準、及び長期的MCT治療8週間後における社会認識の比較から、認知能力は、対照食を与えられた群と比較して、MCT治療群で上昇した(図1)。
更に、UBE3aタンパク発現量は、対照食を与えられた群と比較して、MCT治療群の24ヶ月齢ラットの皮質で増大が観察された(図2)。
mRNA発現分析は、対照群と比較して、MCT治療が転写因子Arcの下方制御、並びにノンコーディングRNAのsnrpn及びube3a1の併行する上方制御をもたらすことを示した(図3)。
要約すると、これらの研究では認知の改善が示され、UBE3A発現がArcの下方制御により役割を果たした可能性がある。UBE3A発現の増大は、ノンコーディングRNA、snrpn及びube3a1の変化による可能性がある。
実施例2
材料及び方法
動物
15ヶ月齢の雄のウィスターラット、及び6ヶ月齢の雄のラットを、Janvier Labs(フランス)から注文入手し、場所に7日間順応させた。この期間、これらをペアでケージに収容した。
順応期間後、ラットを無作為に認知及び体重に従って4つの群に分けた。実施例1に記載した手順を使用して、社会認識により、基準認知を試験した。
ラットを標準的なケージに1匹で収容し、食物及び水を自由に摂取させ、20〜24℃の温度、及び50〜60%の相対湿度にて、12時間の光サイクル期間に保った。ラットに、8週間、5%中鎖トリグリセリド(MCT)食;カプリル酸トリグリセリド(C8)食;カプリン酸トリグリセリド(C10)食;50:50のC8及びC10トリグリセリドの組み合わせ食;又は対照(ヒマワリ油)食を与えた。
結果
基準、及び長期的MCT治療後における物体認識の比較から、認知能力は、対照食を与えられた群と比較して、MCT治療群で上昇が観察された(図4)。
更に、UBE3aタンパク発現量は、対照食を与えられた群と比較して、MCT治療群の17ヶ月齢ラットの皮質で増大が観察された(図5)。
実施例3
UBE3A発現を、妊娠中及び離乳中(哺乳を介して)カプリル酸ホモトリグリセリド(MCT8)食を供した幼若マウスで分析した。
材料及び方法
動物
雌C57マウスを交配させ、膣スミアにより妊娠を追跡した。MCT8を動物用飼料に混合し(1.5%)、妊娠10日目〜生後28日目の間の妊娠マウスの雌に投与する一方で、1.5%のヒマワリ油を補足した飼料(対照)を妊娠マウスに与えた。
生後28日目で、子の脳及び肝臓を回収し、固定し、凍結し、UBE3A発現のために処理した。
治療の認知能力効果を評価するために、いくつかのマウスを生後60日目でモーリス水迷路課題にて試験した。行動に使用される装置は、象限の1つに配置されたプラットフォームを有するガロンタンクからなっていた。タンクを不透明にした温水(24℃)で満たした。ビデオカメラでタンク内の動物の動きを記録した。視覚的手がかりが、タンクのいくつかの象限に配置された。
各マウスには、プラットフォームを見つけるために1日当たり4回の試行を行った。試行は通算4日間行い、最終日に、精査試行を(プラットフォームを取り除いた所で)実施し、空間バイアス(ターゲット象限、即ちプラットフォームが最初に位置決めされていた場所における平均滞在時間%)を評価した。
結果
UBE3A発現は、MCT8治療後の脳において増大するが、肝臓では増大しないことが観察された(図6)。
これらの調査結果は、脳の父系UBE3A対立遺伝子が、MCT治療により有効化されたことを意味する。
モーリス水迷路の精査試行では、MCT8(C8−OTG)で治療された雌マウスは、ターゲット象限で、25%チャンスレベルよりも多くの時間を費やした(25%は、マウスがプラットフォーム象限の位置を記憶していない場合に予想される平均滞在時間%を意味する)(図7)。
実施例4
材料及び方法
ヒトiCell神経細胞(Cellular Dynamics International)を、24穴プレートに配置し、2週間培養することにより神経細胞の成熟まで増殖させた。次いで、細胞をオクタン酸又はデカン酸(100μM)で6日間処理し、新たな中鎖脂肪酸(MCFA)をウェルに2日毎に添加した。細胞を掻き取り、Trizolに保存し、mRNAを抽出した。UBE3A及びGRIN1レベルを精査するために、上記手順に従ってqPCRを実施した。
GRIN1 フォワード:TCTACAATGGCACCCACGTCATC(配列番号10)
GRIN1 リバース:GGTGCAGATCACCTTCTTGAC(配列番号11)
結果
オクタン酸及びデカン酸の両方で、シナプス可塑性のマーカーである、UBE3A及びグルタメート受容体、イオンチャネル型、N−メチル−D−アスパルテート1(GRIN1)サブユニットの発現の増大が観察された(図8)。
実施例5
雄のスプラーグドーリーラット(8匹のMCT治療ラット、及び8匹のヒマワリ油対照ラット)を、少なくとも5日間順応させた。全ての群の動物に、全研究の間に自由に水道水を与えた。標準食(RM1,SDS Dietex)もまた、全研究の間に動物に与えた。経口胃管栄養プローブを使用して、非麻酔動物に経口投与(P.O.)を実施した。
C8/C10の比が60/40のMCT(1.8g/kg体重)、又は標準のヒマワリ油(1.8g/kg体重)を、5日間、1日1回与えた。5日後、動物を屠殺し、脳を回収して、−80℃にて保存した。RNAを、解剖された脳組織(前頭前皮質/PFC)から抽出し、リアルタイムPCRのために処理した。t−検定によれば、MCT C8/C10の組み合わせは、UBE3Aの発現を有意に増大させた(β−アクチンに正規化)。図9にて示すように、**p<0.05。
実施例6
ヒトiCell神経細胞(Cellular Dynamics International)を、24穴プレートに配置し、2週間培養した。次いで、細胞を、異なる濃度(C8:0.25μM、2.5μM、25μM;C10:0.5μM、5μM、50μM)のオクタン酸(C8)又はデカン酸(C10)で、3つの異なるグルコース濃度(25mM、4mM、0mM)にて3日間処理した。
細胞を採取し、リアルタイムPCRのために処理した。以下のプローブ:UBE3A及びβ−アクチンを使用した。
オクタン酸/C8及びデカン酸/C10は、培地中のグルコース非存在下でUBE3Aの発現レベルを有意に増大させた(β−アクチンに正規化)。
5μM及び50μMのデカン酸/C10は、4mMの低グルコースの存在下でUBE3Aの発現を有意に増大させた(一元配置分散分析を用いて測定する場合のβ−アクチン9に正規化)。図10にて示すように、=p<0.1;**=p<0.05;***p<0.01。
上記明細書で言及した全ての出版物は、本明細書に参照により組み込まれる。本発明に記載する組成物又は使用の様々な修正及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明白であろう。本発明を特定の好適な実施形態とともに記載したが、請求される本発明は、こうした特定の実施形態に過度に限定されるべきではないということは理解すべきである。事実、記載された本発明を実施するための様態の様々な修正は、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の当業者に明らかであり、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。

Claims (15)

  1. UBE3Aの欠失により障害が生じた認知の改善における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)。
  2. 認知障害の被験者及び/又は加齢被験者における認知を改善する、請求項1に記載の使用のための、MCT又はMCFA。
  3. アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の被験者における認知を改善する、請求項1又は2に記載の使用のための、MCT又はMCFA。
  4. アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の治療における使用のための、又は加齢に伴う認知の低下を治療するための中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)。
  5. 前記MCTが、各々が独立して8個又は10個のみの炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含み、好ましくは前記脂肪酸部分がオクタン酸及び/若しくはデカン酸であり、又は前記MCFAがオクタン酸若しくはデカン酸である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用のための、MCT又はMCFA。
  6. ホモトリグリセリドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のためのMCT。
  7. 経腸的又は非経腸的に投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用のための、MCT又はMCFA。
  8. UBE3Aの欠失により障害が生じた認知の改善における使用のための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を含む組成物。
  9. 認知障害の被験者及び/又は加齢被験者における認知を改善する、請求項8に記載の使用のための組成物。
  10. アンジェルマン症候群又はプラダー・ウィリー症候群の被験者における認知を改善する、請求項8又は9に記載の使用のための組成物。
  11. アンジェルマン症候群若しくはプラダー・ウィリー症候群の治療における使用のための、又は加齢に伴う認知の低下を治療するための、中鎖トリグリセリド(MCT)又は中鎖脂肪酸(MCFA)を含む、組成物。
  12. C8脂肪酸、好ましくはオクタン酸を含むホモトリグリセリド、及び/又はC10脂肪酸、好ましくはデカン酸を含むホモトリグリセリドを含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  13. C8:C10の脂肪酸含有ホモトリグリセリドの比が、約50:50(重量/重量)〜約40:60(重量/重量)である、請求項12に記載の使用のための組成物。
  14. 食料品の形態である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  15. 飲料、マヨネーズ、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズ・スプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、液状エマルジョン、噴霧乾燥粉末、フリーズドライ粉末、UHTプリン、低温殺菌プリン、ゲル、ジェリー、ヨーグルト、又は脂肪ベースのフィリング若しくは含水フィリングを有する食品の形態である、請求項8〜14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
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