しかしながら、特許文献1に記載の筐体の取付構造では、コマが小さく、組み付け性が悪いという問題がある。なお、第1移動片の移動と第2移動片の移動とが連動せず、第1移動片に接続された第1操作部と、第2移動片に接続された第2操作部とを、それぞれ操作する取付構造の場合は、取付の操作性が低下する。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、筐体の取付構造において、構造が複雑になることを抑制しつつ、取付構造の組み付け性及び取付の操作性を向上させることを主たる目的とする。
上記課題を解決するための第1の手段は、
所定レールに筐体を取り付ける取付構造であって、
前記筐体には、前記所定レールに嵌合可能であり、前記所定レールの幅に対応する所定幅、及び前記所定レールの厚さに対応する所定深さで、前記所定レールの長さ方向が開放された凹部が形成されており、
前記所定幅の方向へ往復動可能に前記筐体に支持された第1本体、前記第1本体が往復動されることで前記所定レールの幅方向の第1端に係合及び離脱可能な第1爪部、及び、前記第1本体から前記所定深さの方向に突出する突出部、を有する第1移動片と、
前記所定幅の方向へ往復動可能に前記筐体に支持された第2本体、前記第2本体が往復動されることで前記所定レールの幅方向における前記第1端と反対側の第2端に係合及び離脱可能な第2爪部、及び、前記突出部に係合して前記所定幅の方向において、前記第1爪部と前記第2爪部との距離が、所定距離よりも長い場合に前記第1爪部と前記第2爪部との距離を長くする方向へ前記突出部を付勢する一方、前記所定距離よりも短い場合に前記第1爪部と前記第2爪部との距離を短くする方向へ前記突出部を付勢する可撓性の腕部、を有する第2移動片と、
前記第1本体及び前記第2本体の一方に接続された操作部と、
を備える。
上記構成によれば、筐体には、所定レールに嵌合可能な凹部が形成されている。凹部は、所定レールの幅に対応する所定幅、及び所定レールの厚さに対応する所定深さで形成されており、所定レールの長さ方向が開放されている。
第1移動片は、凹部の所定幅の方向へ往復動可能に筐体に支持された第1本体と、第1本体が往復動されることで所定レールの幅方向の第1端に係合及び離脱可能な第1爪部とを有している。また、第2移動片は、所定幅の方向へ往復動可能に筐体に支持された第2本体と、第2本体が往復動されることで所定レールの幅方向における第1端と反対側の第2端に係合及び離脱可能な第2爪部とを有している。このため、第1本体及び第2本体が所定幅の方向へ往復動されることにより、所定レールの幅方向の第1端に第1爪部が係合及び離脱させられ、所定レールの幅方向の第2端に第2爪部が係合及び離脱させられる。
ここで、第1移動片は、第1本体から凹部の所定深さの方向に突出する突出部を有している。第2移動片は、突出部に係合して所定幅の方向において、第1爪部と第2爪部との距離が、所定距離よりも長い場合に第1爪部と第2爪部との距離を長くする方向へ突出部を付勢する可撓性の腕部を有している。そして、第1本体及び第2本体の一方に操作部が接続されている。このため、ユーザが操作部を操作することにより、第1本体及び第2本体の一方を凹部の所定幅の方向へ往復動させることができる。そして、所定幅の方向において、第1爪部と第2爪部との距離を所定距離よりも長くすれば、第1爪部と第2爪部との距離を長くする方向へ可撓性の腕部により突出部が付勢される。したがって、1つの操作部に対する操作により、第1爪部及び第2爪部を所定レールから離脱させることができる。
一方、可撓性の腕部は、所定幅の方向において、第1爪部と第2爪部との距離が、所定距離よりも短い場合に第1爪部と第2爪部との距離を短くする方向へ突出部を付勢する。このため、ユーザが操作部を操作して、第1爪部と第2爪部との距離を所定距離よりも短くすれば、第1爪部と第2爪部との距離を短くする方向へ可撓性の腕部により突出部が付勢される。したがって、1つの操作部に対する操作により、第1爪部及び第2爪部を所定レールに係合させることができる。
さらに、特許文献1に記載の筐体の取付構造におけるコマを必要とせず、第1移動片、第2移動片、及び操作部により、筐体の取付構造を実現することができる。したがって、筐体の取付構造において、構造が複雑になることを抑制しつつ、取付構造の組み付け性及び取付の操作性を向上させることができる。
第2の手段では、前記腕部は、前記凹部の前記開放の方向に並んだ第1腕部と第2腕部とを含み、前記突出部は、前記凹部の前記開放の方向において第1腕部と第2腕部とで挟まれている。
上記構成によれば、腕部は、凹部の開放の方向に並んだ第1腕部と第2腕部とを含んでおり、突出部は、凹部の開放の方向において第1腕部と第2腕部とで挟まれている。このため、所定幅の方向における第1爪部と第2爪部との距離を変化させる方向へ第1腕部と第2腕部とが突出部を付勢する際に、第1腕部と第2腕部とから突出部に作用する凹部の開放の方向の力を、互いに弱め合わせることができる。したがって、第1移動片及び第2移動片の動作を安定させることができる。さらに、第1腕部及び第2腕部の一方が破損した場合であっても、残った他方により第1移動片及び第2移動片を動作させることができる可能性がある。
具体的には、第3の手段では、前記第1腕部は、前記所定幅の方向において、所定位置で前記第2腕部に最も近付き、前記所定位置から両側へ離れるほど前記第2腕部から離れるように傾斜した傾斜部を有し、前記第2腕部は、前記所定幅の方向において、前記所定位置で前記第1腕部に最も近付き、前記所定位置から両側へ離れるほど前記第1腕部から離れるように傾斜した傾斜部を有する。
第4の手段では、前記腕部は、前記凹部の前記開放の方向に並んだ第1腕部と第2腕部とを含み、前記突出部は、前記凹部の前記開放の方向において、前記第1腕部よりも外側に配置された第1突出部と、前記第2腕部よりも外側に配置された第2突出部とを含む。
上記構成によれば、腕部は、凹部の開放の方向に並んだ第1腕部と第2腕部とを含んでいる。そして、突出部は、凹部の開放の方向において、第1腕部よりも外側に配置された第1突出部と、第2腕部よりも外側に配置された第2突出部とを含んでいる。このため、所定幅の方向における第1爪部と第2爪部との距離を変化させる方向へ、第1腕部が第1突出部を付勢し、第2腕部が第2突出部を付勢する際に、第1腕部から第1突出部に作用する凹部の開放の方向の力と、第2腕部から第2突出部に作用する凹部の開放の方向の力とを、互いに弱め合わせることができる。さらに、第1腕部及び第2腕部の一方が破損した場合であっても、残った他方により第1移動片及び第2移動片を動作させることができる可能性がある。また、第1突出部及び第2突出部の一方が破損した場合であっても、残った他方により第1移動片及び第2移動片を動作させることができる可能性がある。
具体的には、第5の手段では、前記第1腕部は、前記所定幅の方向において、所定位置で前記第2腕部から最も離れ、前記所定位置から両側へ離れるほど前記第2腕部に近付くように傾斜した傾斜部を有し、前記第2腕部は、前記所定幅の方向において、所定位置で前記第1腕部から最も離れ、前記所定位置から両側へ離れるほど前記第1腕部に近付くように傾斜した傾斜部を有する。
第6の手段では、前記突出部は、長円柱状又は楕円柱状に形成されており、前記凹部の前記開放の方向における前記突出部の径は、前記所定幅の方向における前記突出部の径よりも長い。このため、所定幅の方向における突出部の径が長くなることを抑制しつつ、凹部の開放の方向における突出部の径を長くすることができる。したがって、所定幅の方向において、第1爪部と第2爪部との距離が、所定距離よりも長い状態と短い状態とで切り替わった場合に、突出部に作用する第1爪部と第2爪部との距離を長くする方向の力と短くする方向の力とを、互いに逆向きで大きくすることができる。その結果、第1爪部及び第2爪部が所定レールから離脱した状態と、第1爪部及び第2爪部が所定レールに係合した状態とを、明確に切り替えることができる。
例えば、第1本体及び第2本体のうち第1本体が操作部に接続され、第2本体は操作部に接続されていないとする。この場合、ユーザが操作部を操作することにより、第1移動片が凹部の所定幅の方向へ移動させられる。このとき、第2移動片の腕部が第1移動片の突出部により押されて第2移動片が移動すると、所定幅の方向における第1爪部と第2爪部との距離を変更することができないおそれがある。
この点、第7の手段では、前記第1本体及び前記第2本体のうち前記操作部に接続されていない一方が、前記所定幅の方向に移動可能な範囲を所定範囲内に規制する第1規制部及び第2規制部を備える。このため、例えば第2移動片の腕部が第1移動片の突出部により押されて第2移動片が移動したとしても、第1規制部及び第2規制部により第2移動片が所定幅の方向に移動可能な範囲が所定範囲内に規制される。したがって、第2移動片の移動が規制されることで、所定幅の方向において、第2移動片に対して第1移動片を移動させることができ、第1爪部と第2爪部との距離を変更することができる。その結果、第1爪部及び第2爪部が所定レールから離脱した状態と、第1爪部及び第2爪部が所定レールに係合した状態とを、確実に切り替えることができる。
以下、DINレール(所定レール)に機器の筐体を取り付ける取付構造に具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。機器としては、PLC(Programmable Logic Controller)や、計測機器、電源等を採用することができる。
図1〜3に示すように、機器20の筐体は、ケース本体22とケースカバー23とを備え、直方体状に形成されている。機器20の筐体を構成する6つの面のうち、DINレール10が嵌合する面は取付面21となっている。本明細書では、図1におけるDINレール10の長さ方向を左右方向と呼ぶことがある。また、DINレール10の幅方向、即ちこのDINレール10に取り付けられた機器20の長手方向を上下方向と呼び、両者に直交する方向を奥行き方向と呼ぶことがある。
取付面21の略中央部には、DINレール10の最も広い幅に合わせて凹部15が形成されている。凹部15は、DINレール10に嵌合可能であり、DINレール10の幅に対応する所定幅、及びDINレール10の厚さに対応する所定深さで形成されている。詳しくは、所定幅はDINレール10の幅よりも若干広く、所定深さはDINレール10の厚さと略等しい。DINレール10の長さ方向において、凹部15の両端は開放されている。
凹部15の上部及び下部に、それぞれ取付用の上爪32(第1爪部)と下爪42(第2爪部)とが配置されている。機器20の取付前には、上爪32と下爪42とは、それぞれ凹部15よりも上側及び下側のケース本体22内に収納されている。操作部50をユーザが操作することにより、上爪32と下爪42とは、DINレール10(凹部15)側に、つまり上爪32は下向きに、下爪42は上向きに、それぞれ突出する。この動作により、上爪32と下爪42とが、DINレール10の幅方向(上下方向)の張出部12,14(第1端,第2端)にそれぞれ係合する。この取付面21の凹部15には、ガイド板17,18が設けられている。ガイド板17,18は、上下に摺動する第1移動片30の動きをガイドする。
機器20の筐体は、樹脂成形されたケース本体22と、このケース本体22の一側面に嵌め合わされるケースカバー23とを備える。図4に示すように、機器20の筐体において、上記取付面21寄りの部分に、筐体の取付構造100が設けられている。取付構造100は、凹部15、第1移動片30、第2移動片40、及び操作部50により構成されている。第1移動片30及び第2移動片40は、上記ガイド板17,18やケース本体22における取付面21の裏面と、ケース本体22内側に立設された仕切り壁26との間に収納されている。なお、図示しないが、ケースカバー23にも、仕切り壁26に対応する仕切り壁が設けられており、ケースカバー23をケース本体22に嵌め合わせると、第1移動片30及び第2移動片40は、ケース本体22とケースカバー23とによって取付面21の内側に形成される空間に収納される。なお、図4は、主に機器20の外形と収納のための空間の様子を示すためのものなので、内蔵する電子基板などは図示を省略している。機器20は、実際には、プロセス制御のためのコントローラや、外部との入出力を図るインタフェース、あるいは各種物量を計測するセンサーモジュール等として機能するものであり、用途に応じた電子部品を基板上に実装して内蔵している。
ケース本体22内の仕切り壁26の中間部は、その立設方向に更に延びて、第1ストッパ24を形成している。仕切り壁26の端部は、その立設方向に更に延びて、第2ストッパ25を形成している。第1ストッパ24(第1規制部)及び第2ストッパ25(第2規制部)は、第2移動片40(詳しくは第2移動片40の本体)が、凹部15の所定幅の方向に移動可能な範囲を所定範囲内に規制している。また、ケース本体22には、取付面21の裏面から内側へ立設された第3ストッパ27が形成されている。第3ストッパ27は、凹部15の所定幅の方向において、第1移動片30が第2移動片40から離れる方向へ移動可能な範囲を規制している。
次に、第1移動片30及び第2移動片40について詳細に説明する。
図5に示すように、第1移動片30は、樹脂により形成されており、第1本体31、上記上爪32、及び突出部33を備えている。第1本体31は、矩形板状に形成されている。上爪32は、第1本体31において長手方向の中間部から張り出して、第1本体31の長手方向へ屈曲している。上爪32の張り出し量は、第1本体31と上爪32とで形成される溝35に、DINレール10の張出部12(幅方向の第1端)が係合できるように設定されている。
第1本体31の一端には、上記操作部50が接続されている。第1本体31において、操作部50が接続されていない側の端部(端部近傍)からは突出部33が突出している。突出部33は、第1本体31から上爪32と反対方向(凹部15の所定深さの方向)へ突出している。突出部33は、長円柱状に形成されている。凹部15の開放の方向(DINレール10の長さ方向)における突出部33の径は、凹部15の所定幅の方向(DINレール10の幅方向)における突出部33の径よりも長い。なお、突出部33は、楕円柱状に形成されていてもよい。
第1本体31は、凹部15の所定幅の方向へ往復動可能に、筐体の上記仕切り壁26等に支持されている。そして、第1本体31が往復動されることで、上爪32がDINレール10の張出部12に係合及び離脱する。
第2移動片40は、樹脂により形成されており、第2本体41、上記下爪42、第1腕部43、及び第2腕部44を備えている。第2本体41は、矩形枠状に形成されている。下爪42は、第2本体41において長手方向の端部から張り出して、第2本体41の長手方向へ屈曲している。下爪42の張り出し量は、第2本体41と下爪42とで形成される溝45に、DINレール10の張出部14(幅方向の第2端)が係合できるように設定されている。
第1腕部43及び第2腕部44(腕部)は、可撓性であり、第2本体41から凹部15の所定幅の方向(DINレール10の幅方向)へ延びている。第1腕部43と第2腕部44とは、凹部15の開放の方向(DINレール10の長さ方向)に並んでいる。図4に示すように、第1移動片30及び第2移動片40が筐体に組み付けられた状態において、突出部33は、凹部15の開放の方向において第1腕部43と第2腕部44とで挟まれている。
図5に戻り、第1腕部43は、凹部15の所定幅の方向において、所定位置Aで第2腕部44に最も近付き、所定位置Aから両側へ離れるほど第2腕部44から離れるように傾斜した傾斜部43aを有している。第2腕部44は、凹部15の所定幅の方向において、所定位置Aで第1腕部43に最も近付き、所定位置Aから両側へ離れるほど第1腕部43から離れるように傾斜した傾斜部44aを有している。
第2本体41は、凹部15の所定幅の方向へ往復動可能に、筐体の上記仕切り壁26等に支持されている。そして、第2本体41が往復動されることで、下爪42がDINレール10の張出部14に係合及び離脱する。
第1移動片30及び第2移動片40が筐体に組み付けられた状態において、第1腕部43及び第2腕部44は、突出部33に係合している。そして、第1腕部43及び第2腕部44は、凹部15の所定幅の方向において、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも長い場合に上爪32と下爪42との距離を長くする方向へ突出部33を付勢する。一方、第1腕部43及び第2腕部44は、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも短い場合に上爪32と下爪42との距離を短くする方向へ突出部33を付勢する。
図6は、DINレール10に上爪32及び下爪42を係合させる態様、すなわちDINレール10に筐体を取り付ける態様を示す模式図である。なお、同図では、DINレール10及び筐体の側面図と、第2移動片40及び突出部33の正面図とを併せて示している。
図6(a)は、ユーザが操作部50に下向きの力を加え始める状態を示している。ユーザが操作部50に下向きの力を加える前は、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも長い状態になっている。このため、第1腕部43及び第2腕部44は、上方向(上爪32と下爪42との距離を長くする方向)へ突出部33を付勢している。そして、上爪32が第3ストッパ27に当接し、下爪42が第2ストッパ25に当接している。なお、ユーザが操作部50に下向きの力を加える前において、第1腕部43及び第2腕部44が突出部33を支持しているだけでもよい。
そして、矢印F1で示すようにユーザが操作部50に下向きの力を加え始めると、突出部33が第1腕部43及び第2腕部44を下方向へ押す。このため、矢印F2で示すように第2移動片40に下方向の力が作用するが、下爪42の下方向への移動は第2ストッパ25により規制される。一方、第1移動片30は下方向へ移動し、上爪32と下爪42との距離が短くなる。なおこのとき、第2移動片40の第1腕部43及び第2腕部44が第1移動片30の突出部33により押されて第2移動片40が移動すると、上下方向における上爪32と下爪42との距離を変更することができないおそれがある。
図6(b)は、上爪32と下爪42との距離が、所定距離になった状態を示している。この状態では、第1腕部43及び第2腕部44は、突出部33を上下いずれの方向にも付勢しない。そして、ユーザが操作部50をさらに下方向へ移動させると、上爪32と下爪42との距離が所定距離よりも短くなる。その結果、第1腕部43及び第2腕部44は、下方向(上爪32と下爪42との距離を短くする方向)へ突出部33を付勢する。また、第1腕部43及び第2腕部44は、突出部33から反作用を受けて、上方向(上爪32と下爪42との距離を短くする方向)へ付勢される。ここで、突出部33は、長円柱状に形成されており、凹部15の開放の方向(左右方向)における突出部33の径は、凹部15の所定幅の方向(上下方向)における突出部33の径よりも長い。このため、第1腕部43及び第2腕部44が突出部33を押す方向が、上方向から下方向へ急激に切り替わる。
図6(c)は、ユーザが操作部50に下向きの力を加えることを終了した状態を示している。この状態では、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも短い状態になっている。このため、第1腕部43及び第2腕部44は、下方向へ突出部33を付勢している。また、第1腕部43及び第2腕部44は、突出部33から反作用を受けて、上方向へ付勢されている。そして、上爪32がDINレール10の張出部12(上端)に当接し、下爪42がDINレール10の張出部14(下端)に当接している。なお、ユーザが操作部50に下向きの力を加えることを終了した状態において、突出部33が第1腕部43及び第2腕部44を支持しているだけでもよい。
図7は、DINレール10から上爪32及び下爪42を離脱させる態様、すなわちDINレール10から筐体を取り外す態様を示す模式図である。なお、同図では、DINレール10及び筐体の側面図と、第2移動片40及び突出部33の正面図とを併せて示している。
図7(a)は、ユーザが操作部50に上向きの力を加え始める状態を示している。ユーザが操作部50に上向きの力を加える前は、図6(c)のユーザが操作部50に下向きの力を加えることを終了した状態になっている。
そして、矢印F3で示すようにユーザが操作部50に上向きの力を加え始めると、突出部33が第1腕部43及び第2腕部44を上方向へ押す。このため、矢印F4で示すように第2移動片40に上方向の力が作用するが、下爪42の上方向への移動は第1ストッパ24により規制される。一方、第1移動片30は上方向へ移動し、上爪32と下爪42との距離が長くなる。なおこのとき、第2移動片40の第1腕部43及び第2腕部44が第1移動片30の突出部33により押されて第2移動片40が移動すると、上下方向における上爪32と下爪42との距離を変更することができないおそれがある。
図7(b)は、上爪32と下爪42との距離が、所定距離になった状態を示している。この状態では、第1腕部43及び第2腕部44は、突出部33を上下いずれの方向にも付勢しない。そして、ユーザが操作部50をさらに上方向へ移動させると、上爪32と下爪42との距離が所定距離よりも長くなる。その結果、第1腕部43及び第2腕部44は、上方向(上爪32と下爪42との距離を長くする方向)へ突出部33を付勢する。また、第1腕部43及び第2腕部44は、突出部33から反作用を受けて、下方向(上爪32と下爪42との距離を長くする方向)へ付勢される。ここで、突出部33は、長円柱状に形成されており、凹部15の開放の方向(左右方向)における突出部33の径は、凹部15の所定幅の方向(上下方向)における突出部33の径よりも長い。このため、第1腕部43及び第2腕部44が突出部33を押す方向が、下方向から上方向へ急激に切り替わる。
図7(c)は、ユーザが操作部50に上向きの力を加えることを終了した状態を示している。この状態では、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも長い状態になっている。このため、第1腕部43及び第2腕部44は、上方向へ突出部33を付勢している。また、第1腕部43及び第2腕部44は、突出部33から反作用を受けて、下方向へ付勢されている。そして、上爪32がDINレール10の張出部12(上端)から離脱し、下爪42がDINレール10の張出部14(下端)から離脱している。なお、ユーザが操作部50に上向きの力を加えることを終了した状態において、第1腕部43及び第2腕部44が突出部33を支持しているだけでもよい。
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
・第1移動片30は、第1本体31から凹部15の所定深さの方向に突出する突出部33を有している。第2移動片40は、突出部33に係合して凹部15の所定幅の方向において、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも長い場合に上爪32と下爪42との距離を長くする方向へ突出部33を付勢する可撓性の腕部(第1腕部43及び第2腕部44)を有している。そして、第1本体31に操作部50が接続されている。このため、ユーザが操作部50を操作することにより、第1本体31を凹部15の所定幅の方向へ往復動させることができる。そして、所定幅の方向において、上爪32と下爪42との距離を所定距離よりも長くすれば、上爪32と下爪42との距離を長くする方向へ可撓性の腕部により突出部33が付勢される。したがって、1つの操作部50に対する操作により、上爪32及び下爪42をDINレール10から離脱させることができる。
・可撓性の腕部は、所定幅の方向において、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも短い場合に上爪32と下爪42との距離を短くする方向へ突出部33を付勢する。このため、ユーザが操作部50を操作して、上爪32と下爪42との距離を所定距離よりも短くすれば、上爪32と下爪42との距離を短くする方向へ可撓性の腕部により突出部33が付勢される。したがって、1つの操作部50に対する操作により、上爪32及び下爪42をDINレール10に係合させることができる。
・特許文献1に記載の筐体の取付構造におけるコマを必要とせず、第1移動片30、第2移動片40、及び操作部50により、筐体の取付構造100を実現することができる。したがって、筐体の取付構造100において、構造が複雑になることを抑制しつつ、取付構造100の組み付け性及び取付の操作性を向上させることができる。
・腕部は、凹部15の開放の方向に並んだ第1腕部43と第2腕部44とを含んでおり、突出部33は、凹部15の開放の方向において第1腕部43と第2腕部44とで挟まれている。このため、所定幅の方向における上爪32と下爪42との距離を変化させる方向へ第1腕部43と第2腕部44とが突出部33を付勢する際に、第1腕部43と第2腕部44とから突出部33に作用する凹部15の開放の方向の力を、互いに弱め合わせることができる。したがって、第1移動片30及び第2移動片40の動作を安定させることができる。さらに、第1腕部43及び第2腕部44の一方が破損した場合であっても、残った他方により第1移動片30及び第2移動片40を動作させることができる。
・突出部33は、長円柱状に形成されており、凹部15の開放の方向における突出部33の径は、所定幅の方向における突出部33の径よりも長い。このため、所定幅の方向における突出部33の径が長くなることを抑制しつつ、凹部15の開放の方向における突出部33の径を長くすることができる。したがって、所定幅の方向において、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも長い状態と短い状態とで切り替わった場合に、突出部33に作用する上爪32と下爪42との距離を長くする方向の力と短くする方向の力とを、互いに逆向きで大きくすることができる。その結果、上爪32及び下爪42がDINレール10から離脱した状態と、上爪32及び下爪42がDINレール10に係合した状態とを、明確に切り替えることができる。
・第2本体41が所定幅の方向に移動可能な範囲を所定範囲内に規制する第1ストッパ24及び第2ストッパ25を備える。このため、第2移動片40の腕部が第1移動片30の突出部33により押されて第2移動片40が移動したとしても、第1ストッパ24及び第2ストッパ25により第2移動片40が所定幅の方向に移動可能な範囲が所定範囲内に規制される。したがって、第2移動片40の移動が規制されることで、所定幅の方向において、第2移動片40に対して第1移動片30を移動させることができ、上爪32と下爪42との距離を変更することができる。その結果、上爪32及び下爪42がDINレール10から離脱した状態と、上爪32及び下爪42がDINレール10に係合した状態とを、確実に切り替えることができる。
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
・図8は、第1移動片30、及び第2移動片40の変更例の斜視図である。第2移動片140は、腕部として、第1腕部43のみを有しており、第2腕部44を有していない。こうした構成によっても、所定幅の方向において、上爪32と下爪42との距離を所定距離よりも長くすれば、上爪32と下爪42との距離を長くする方向へ可撓性の第1腕部43により突出部33が付勢される。したがって、1つの操作部50に対する操作により、上爪32及び下爪42をDINレール10から離脱させることができる。また、ユーザが操作部50を操作して、上爪32と下爪42との距離を所定距離よりも短くすれば、上爪32と下爪42との距離を短くする方向へ可撓性の第1腕部43により突出部33が付勢される。したがって、1つの操作部50に対する操作により、上爪32及び下爪42をDINレール10に係合させることができる。
・図9に示すように、第1突出部233A及び第2突出部233Bを有する第1移動片230と、可撓性の第1腕部243及び第2腕部244を有する第2移動片240を採用することもできる。第1腕部243と第2腕部244とは、凹部15の開放の方向(DINレール10の長さ方向)に並んでいる。第1腕部243は、凹部15の所定幅の方向(DINレール10の幅方向)において、所定位置Bで第2腕部244から最も離れ、所定位置Bから両側へ離れるほど第2腕部244に近付くように傾斜した傾斜部243aを有している。第2腕部244は、凹部15の所定幅の方向において、所定位置Bで第1腕部243から最も離れ、所定位置Bから両側へ離れるほど第1腕部243に近付くように傾斜した傾斜部244aを有している。第1腕部243,第2腕部244は、それぞれ突出部233A,233Bに係合する。
そして、第1腕部243,第2腕部244は、凹部15の所定幅の方向において、上爪32(第1爪部)と下爪42(第2爪部)との距離が、所定距離よりも長い場合に上爪32と下爪42との距離を長くする方向へ突出部233A,233Bをそれぞれ付勢する。一方、第1腕部243,第2腕部244は、凹部15の所定幅の方向において、上爪32と下爪42との距離が、所定距離よりも短い場合に上爪32と下爪42との距離を短くする方向へ突出部233A,233Bをそれぞれ付勢する。
上記構成によれば、凹部15のむ所定幅の方向における上爪32と下爪42との距離を変化させる方向へ、第1腕部243が第1突出部233Aを付勢し、第2腕部244が第2突出部233Bを付勢する際に、第1腕部243から第1突出部233Aに作用する凹部15の開放の方向の力と、第2腕部244から第2突出部233Bに作用する凹部15の開放の方向の力とを、互いに弱め合わせることができる。さらに、第1腕部243及び第2腕部244の一方が破損した場合であっても、残った他方により第1移動片230及び第2移動片240を動作させることができる。また、第1突出部233A及び第2突出部233Bの一方が破損した場合であっても、残った他方により第1移動片230及び第2移動片240を動作させることができる。なお、第2腕部244及び第2突出部233Bを省略することもできる。
・図10に示すように、第1移動片30が四角柱状に形成された突出部333を有しており、第1腕部43,第2腕部44が円弧状に形成された傾斜部343a,344aをそれぞれ有していてもよい。第1移動片30,第2移動片40のその他の構成は、図5と同様である。こうした構成によっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、図8においても、図10と同様の突出部333及び傾斜部343aを採用することができる。また、図9において、第1突出部233A,第2突出部233Bを四角柱状に形成し、傾斜部243a,244aを円弧状に形成してもよい。なお、図10において、第1腕部43,第2腕部44のいずれか一方を省略することもできる。
・第1移動片30(230)が下側に配置されており、第2移動片40(240)が上側に配置されていてもよい。その場合、操作部50を、第1本体31ではなく、第2本体41に接続してもよい。また、操作部50を、第1本体31及び第2本体41に、それぞれ接続することもできる。その場合も、ユーザがいずれか一方の操作部50を操作することにより、第1爪部及び第2爪部をDINレール10に係合させることができる。
・DINレール10の規格とは異なる規格(例えばJIS)の所定レールに、筐体を取り付ける取付構造に、上記実施形態及び上記変更例を適用することもできる。その場合は、所定レールの規格に合わせて、凹部15や、第1移動片30,230、第2移動片40,240の各部の寸法を変更すればよい。また、筐体において、取付面21の一部を突出させる突出部や、取付面21の一部を張り出させる張出部が形成されており、それらの突出部や張出部に凹部15が形成されていてもよい。その場合も、所定レールに嵌合可能な凹部15が筐体に形成されている構成に含まれる。