JP2019218726A - 補強アンカー - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、シールド掘削機で切削可能な切削壁に引張り材を貫通させて設置することによって、切削壁の壁面に所定の引張力が付与された状態で地盤に定着された補強アンカーが開示されている。この補強アンカーは、引張り材の引張力を受けて切削壁の壁面に圧接する受圧板を備えており、これらはシールド掘削機によって切削可能である。
受圧板は、受圧板当接部と滑り止め部材と受圧板本体とで形成されているため、引張り材の引張り力や緊張力を受圧板を通して壁面に無理なく伝達でき、しかも壁面と受圧板当接部との間で生じる滑りを抑制することができる。
受圧板当接部の壁面に当接する面に設けた繊維の配列方向によって曲げ性能を発現させることができると共に、滑り止め部材に設けた繊維の配列方向によって受圧板当接部の荷重方向の鉛直分力による圧縮に耐えることができる。
この場合、受圧板当接部を壁面に対して所定の姿勢で配置することができ、引張り材を緊張定着する際、受圧板当接部がずれて滑り易くなることを防ぐことができる。また、受圧板当接部と壁面の間に不陸調整部材を設けたため、壁面に不陸があっても緊張力を受圧板当接部から壁面に確実に伝達することができる。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態による補強アンカー1について、図1〜図10により説明する。
図1及び図2に示すように、本実施の形態による補強アンカー1は、例えばシールドトンネルの掘進工事で使用されるシールド掘削機2の発進部となる立坑30内の切削壁3に設置されている。補強アンカー1は、切削壁3を貫通させて所定の引張力や緊張力が付与された状態で地盤に定着されている。補強アンカー1は、シールド掘削機2によって切削可能な材料により構成されている。
また、切削壁3は、ポリエステル樹脂をガラス長繊維や炭素繊維で強化した複合材料からなる掘削可能な複数の補強アンカー1により補強されている。
芯材34は、シールド掘削機2のカッター21によって切削可能な材料である硬質ウレタン樹脂をガラス長繊維により強化した柱状複合材料34aを有する。柱状複合材料34aは、施工現場の地盤や立坑の大きさによって特に限定されないが、例えば、600×300mmの積水化学工業株式会社製エスロンネオランバーFFUからなる。しかも、芯材34は、柱状複合材料34aの上下にH形鋼34bが継手及びボルトナット等を介して固定されている。図3に示す芯材34において、二点鎖線で示す切削壁3内には柱状複合材料34aが配列されている。
アンカー材11は、立坑30内から受圧板4と切削壁3を貫通して地盤G内に向けて斜め下方に延びている。アンカー材11は、上端側の突出端11aを切削壁3から外側に突出させ、下端側の定着端11bが地盤G内に延びて定着材によって定着されている。グリップ部材12は、アンカー材11の突出端11aに引張力を超える摩擦力をもって一体的に外嵌し、外周面にねじ部12a(図7参照)を有する。押さえナット13は、グリップ部材12のねじ部12aに締め込まれて受圧板4を切削壁3側に押し付けて圧接させている。受圧板4は、グリップ部材12の外側に嵌合され、切削壁3の壁面3aを圧接している。
ここで、アンカー材11とグリップ部材12とは引張り材を構成している。
アンカー材11は、両端の突出端11a及び定着端11bを除く長手方向中間部分が、図7に示すように波付き硬質ポリエチレン管等のシース管15に挿通され、アンカー固定孔31に充填されるグラウト16に対して非定着の状態になっている。
受圧板4及び押さえナット13を装着させた状態において、グリップ部材12とアンカー材11の突出端11aとの間には定着用膨張モルタル14が注入され、膨張した状態で硬化している。定着用膨張モルタル14は硬化に伴い膨張するため、アンカー材11の突出端11aとグリップ部材12とがその膨張により一体に密接され、ひいては摩擦力によりグリップ部材12は受圧板4に定着する。なお、定着用膨張モルタル14は、一般のアンカー工法に使用される公知のものを使用できる。
受圧板本体40は、挿通孔40aの孔軸方向で滑り止め部材42及び積層板41を介して壁面3aに当接する第1端面40bが孔軸方向に対して斜めに交差し、孔軸方向で押さえナット13側の第2端面40cが孔軸方向に直交する平面となっている。第1端面40b及び第2端面40cは、それぞれ面方向に直交する方向から見て、例えば矩形状に形成されている。
芯材34に穿孔するボルト挿通孔52の変形例の配列として、後述するように図8(c)、(d)に示すものを採用してもよい。
図9(b)において、重ね板部43における積層板41に固定した滑り止め部材42は、本実施形態ではガラス繊維補強発泡ウレタン(例えば、積水化学工業株式会社製のエスロンネオランバーFFU)で形成されており、積層板41の鉛直分力による圧縮に耐えるように、含有されるガラス繊維の方向を受圧板4の荷重方向に一致させて配置されている。滑り止め部材42の繊維方向を荷重方向に配列させた第1板面42bは受圧板本体40側に配設されている。積層板41の第2板面41cと滑り止め部材42の第1板面42bの繊維の配列方向は直交していなくてもよく、交差する方向であればよい。
先ず、図1及び図2に示すように、施工された立坑30の切削壁3に、削孔機を使用して、所定長のアンカー固定孔31を縦横方向に所定間隔を開けて複数削孔する。各アンカー固定孔31は切削壁3を貫通して地盤Gに達する。具体的には、切削壁3の芯材34、34同士(図3参照)の間のセメント硬化部35に、削孔ドリルを用いて例えば斜め下向きに5〜45度の傾斜角度で穿孔する。アンカー固定孔31は、後述する重ね板部43の挿通孔41a、42aと同軸になる位置に穿孔する。
なお、重ね板部43は、予め工場等で滑り止め部材42と積層板41を一体に固着しておくことが好ましい。その際、積層板41の繊維の方向と滑り止め部材42の繊維の方向を交差する方向、好ましくは直交する方向に配設するものとする。
その後、アンカー材11が挿入されたアンカー固定孔31に定着材(グラウト16)を注入する。このとき、シース管15の内側にグラウト16が浸入しないようにする。これにより、アンカー材11の先端側の定着端11b(図1及び図2参照)は、グラウト16の硬化に伴いアンカー固定孔31内で地盤Gと一体に固定され、定着される。
このような補強アンカー1を切削壁3の領域内に縦横方向に間隔を開けて複数個施工する。これにより、複数の補強アンカー1によって切削壁3を補強することができ、切削壁3が完成した状態となる。
このように構成された切削壁3は、複数の補強アンカー1によって補強されているので、切削壁3が土水圧によって立坑30内側に撓んだりすることが抑えられる。
本実施の形態では、図7に示すように、ボルト51によって切削壁3に固定された積層板41及び滑り止め部材42を有する重ね板部43によって受圧板4が壁面3a当接されて支持されている。そのため、壁面3aに当接する重ね板部43の積層板41の第2板面41cに設けた繊維の配列方向によって曲げ性能を発現させることができる。しかも、アンカー材11を緊張定着する際に、切削壁3と積層板41との間で生じる滑りを滑り止め部材42によって受圧板本体40との間で抑制することができる。こうして、補強アンカー1を所定の位置に確実に打設することができ、補強アンカー1にアンカー材11の引張力(緊張力)が確実に付与されて切削壁3が補強される。
また、本実施形態の重ね板部43は、ボルト挿通孔52が複数組設けられ且つそれぞれの組が互いに上下方向にずれた位置に配置されているので、一対のボルト挿通孔52が横方向の直線上に形成された場合に比べて、重ね板部43の幅方向の断面欠損の小さな構造を実現することができる。
図11及び図12に示すように、第2の実施の形態による補強アンカー1Aは、受圧板4の積層板41及び滑り止め部材42からなる重ね板部43Aを、受圧板本体40の下側で固定した構成を有している。
すなわち、受圧板4の重ね板部43Aは、積層板41及び滑り止め部材42が受圧板本体40よりも下方に延長されて一体に形成され、例えば矩形板状に形成されている。重ね板部43Aは、受圧板本体40及び切削壁3の間に設置され、切削可能なボルト51により切削壁3に固定されている。重ね板部43Aには、受圧板本体40の左右両側の下方位置にそれぞれ上下に間隔をあけて2組のボルト挿通孔52、52が穿孔されている。更に切削壁3には、ボルト挿通孔52と同軸で延長上にボルト孔36が穿孔されている。
したがって、開口径が大きいシールド掘進用の立坑30への切削可能な補強アンカー1Aの打設を確実に行うことができる。
次に、第1変形例による補強アンカー1Bについて、図13及び図14を用いて説明する。
第1変形例による補強アンカー1Bは、第一実施形態による補強アンカー1において、受圧板4の積層板41と切削壁3の壁面3aとの間に不陸調整部材6が設けられている。不陸調整部材6は、例えば、布袋の中にグラウトを充填した材料が用いられ、切削壁3の構築時に生じる壁面3aの不陸(凹凸)を吸収することができる。
そのため、壁面3aに不陸があっても、受圧板4の積層板41を切削壁3の壁面3aに対して所定の姿勢で配置することができる。そのため、アンカー材11を緊張定着する際に、受圧板4がずれて滑り易くなることを防ぐことができる。また、アンカー力を受圧板4の背面の芯材34、34に確実に伝達することができる。
例えば、上述した第1の実施の形態の重ね板部43では、一対のボルト挿通孔52、52が上下方向に間隔をあけて配置された構成としているが、このような配置、数量であることに制限されることはない。例えば、シールド開口径が大きく、鉛直分力が大きくなる場合には、1つの重ね板部43、43Aにおけるボルト51の本数を増やす構成とすればよい。
また、図9(d)に示す第3変形例のように、4つのボルト挿通孔52及びボルト51が上下方向に互いにずれた位置にそれぞれ千鳥状に配置された構成を採用してもよい。
さらに、切削壁3の断面形状として、本実施の形態のように円形断面に限定されることはなく、例えば矩形断面などの他の形状であってもよい。
2 シールド掘削機
3 切削壁
3a 壁面
4 受圧板
6 不陸調整部材
11 アンカー材
12 グリップ部材
13 押さえナット
14 定着用膨張モルタル
30 立坑
31 アンカー固定孔
36 ボルト孔
40 受圧板本体
41 積層板(受圧板当接部)
42 滑り止め部材
43 重ね板部
51 ボルト
52 ボルト挿通孔
53 充填材
G 地盤
O 引張り軸
Claims (4)
- 壁面に圧接する受圧板当接部と、
前記受圧板当接部に対して前記壁面と反対側の面に固定された滑り止め部材と、
前記受圧板当接部及び前記滑り止め部材を前記壁面に固定する固定部材と、
前記受圧板当接部及び前記滑り止め部材を貫通して前記壁面内に固定させた引張り材と、
を備えたことを特徴とする補強アンカー。 - 前記受圧板当接部と、前記滑り止め部材と、前記滑り止め部材に対して前記受圧板当接部と反対側に固定された受圧板本体と、で受圧板を形成する請求項1に記載された補強アンカー。
- 前記受圧板当接部の前記壁面に当接する面の繊維の配列方向と前記滑り止め部材の繊維の配列方向とは、互いに交差する方向に配列されている請求項1または2に記載された補強アンカー。
- 前記受圧板当接部と前記壁面との間には、前記壁面の不陸を吸収する不陸調整部材が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載された補強アンカー。
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