JP2019218007A - 車両 - Google Patents

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敬造 荒木
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昇太 久保
Shota Kubo
昇太 久保
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Abstract

【課題】傾斜トルクを出力する装置と回動トルクを出力する装置とを備える車両の走行安定性を向上する。【解決手段】車両は、車体と、左右に回動可能な1以上の回動輪と、傾斜トルクを車体に作用させるように構成された傾斜駆動装置と、回動輪支持部と、制御装置と、を備える。回動輪支持部は、1以上の回動輪を回転可能に支持する支持部材と、回動トルクを支持部材に印加するように構成された回動駆動装置と、を備える。制御装置は、目標傾斜角を決定し、目標傾斜角を用いて目標傾斜トルクと目標回動トルクとを決定するように構成されている。【選択図】 図12

Description

本明細書は、車体を傾斜させて旋回する車両に関する。
旋回時に車体を傾斜させる車両が、知られている。また、車体を旋回方向内側にスムーズに傾斜させるための種々の技術が提案されている。例えば、乗員がハンドルバーを操作し始めた時に、ハンドルバーを回した方向と反対の方向に、操舵輪の操舵角を変化させる技術が提案されている。この技術によれば、乗員の意図した旋回方向と逆の旋回方向への旋回が開始されるので、旋回によって発生する遠心力が、乗員の意図した旋回方向内側に車体を傾斜させる。従って、車体を旋回方向内側にスムーズに傾斜させることができる。
特開2013−23166号公報
ところで、車両は、車体の傾斜角を制御するための傾斜トルクを出力する装置と、車両の前進方向に対して左右に回動可能な回動輪を回動させる回動トルクを出力する装置と、を備え得る。このような車両の走行安定性を向上することに関しては、十分な工夫がなされていなかった。
本明細書は、傾斜トルクを出力する装置と回動トルクを出力する装置とを備える車両の走行安定性を向上できる技術を開示する。
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
車両であって、
車体と、
前記車両の前進方向に対して左右に回動可能な1以上の回動輪を含むN個(Nは2以上の整数)の車輪であって、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含む前記N個の車輪と、
前記車体の幅方向の傾斜角を測定するように構成された傾斜角センサと、
前記車体の前記傾斜角を制御するための傾斜トルクを前記車体に作用させるように構成された傾斜駆動装置と、
旋回方向と旋回の程度とを示す操作量を入力するために操作されるように構成された操作入力部と、
前記1以上の回動輪を支持する回動輪支持部と、
制御装置と、
を備え、
前記回動輪支持部は、
前記1以上の回動輪を回転可能に支持する支持部材と、
前記支持部材を前記車体に対して左右に回動可能に支持する回動装置と、
前記支持部材を回動させる回動トルクを前記支持部材に印加するように構成された回動駆動装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記操作量を含む1以上のパラメータを用いて前記車体の目標の傾斜角である目標傾斜角を決定し、
前記目標傾斜角を用いて、前記傾斜駆動装置の目標トルクである目標傾斜トルクと、前記回動駆動装置の目標トルクである目標回動トルクとを、決定し、
前記目標傾斜トルクに従って前記傾斜駆動装置を制御し、
前記目標回動トルクに従って前記回動駆動装置を制御する、
ように構成されている、
車両。
この構成によれば、目標傾斜トルクと目標回動トルクとの両方が、目標傾斜角を用いて決定されるので、傾斜駆動装置と回動駆動装置とを備える車両の走行安定性を向上できる。
[適用例2]
適用例1に記載の車両であって、
前記傾斜角が前記目標傾斜角に近づくように前記車体を幅方向に回動させる場合の回動方向であって、右方向と左方向とのいずれかである方向を目標方向とする場合に、
前記制御装置は、前記回動駆動装置の制御モードとして、前記目標回動トルクを前記目標方向とは反対の方向に前記支持部材を回動させるトルクである逆トルクに決定する制御モードである逆トルクモードを有している、
車両。
この構成によれば、逆トルクモードでは、目標回動トルクが目標方向とは反対の方向に支持部材を回動させるトルクに決定されるので、車体の傾斜角は、容易に、目標傾斜角に近づくことができる。
[適用例3]
適用例2に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、
前記目標傾斜角と前記車体の前記傾斜角との間の差である傾斜角差を用いて、前記目標傾斜トルクと前記目標回動トルクとを決定し、
前記傾斜角差の大きさが第1閾値よりも大きい場合の前記目標回動トルクの大きさが、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも小さい場合の前記目標回動トルクの前記大きさよりも大きくなるように、前記目標回動トルクを決定する、
ように構成されている、車両。
この構成によれば、傾斜角差の大きさが第1閾値よりも大きい場合には、逆トルクである目標回動トルクの大きさが大きいので、車体の傾斜角を容易に変化させることができる。傾斜角差の大きさが第1閾値よりも小さい場合には、逆トルクである目標回動トルクの大きさが小さいので、車体の傾斜角の意図しない変化を抑制できる。
[適用例4]
適用例3に記載の車両であって、
前記傾斜角差の大きさに対する前記逆トルクである前記目標回動トルクの大きさの割合を、逆回動トルク割合とする場合に、
前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも大きい場合の前記逆回動トルク割合が、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも小さい場合の前記逆回動トルク割合よりも大きくなるように、前記目標回動トルクを決定するように、構成されている、
車両。
この構成によれば、傾斜角差の大きさが第1閾値よりも大きい場合には、傾斜角差の大きさが第1閾値よりも小さい場合と比べて、適切に、逆トルクである目標回動トルクの大きさが大きくなる。従って、傾斜角差の大きさが大きい場合には、車体の傾斜角を容易に変化させることができ、傾斜角差の大きさが小さい場合には、車体の傾斜角の意図しない変化を抑制できる。
[適用例5]
適用例3または4に記載の車両であって、
前記傾斜角差の大きさに対する前記目標傾斜トルクの大きさの割合を、傾斜トルク割合とする場合に、
前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも大きい第1範囲内である場合の前記傾斜トルク割合が、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも小さい特定の範囲である第2範囲内である場合の前記傾斜トルク割合よりも小さくなるように、前記目標傾斜トルクを決定するように、構成されている、
車両。
この構成によれば、傾斜角差の大きさが第1閾値よりも大きい第1範囲内である場合に、目標傾斜トルクの大きさが過度に大きくなることが、抑制される。従って、逆トルクである目標回動トルクに従う回動駆動装置のトルクによって、車体の傾斜角を適切に変化させることができる。
[適用例6]
適用例5に記載の車両であって、
前記第1範囲は、前記第1閾値よりも大きく、かつ、前記第1閾値よりも大きい閾値である第2閾値よりも小さい範囲であり、
前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第2閾値よりも大きい場合の前記傾斜トルク割合が、前記傾斜角差の大きさが前記第1範囲内である場合の前記傾斜トルク割合よりも大きくなるように、前記目標傾斜トルクを決定するように、構成されている、
車両。
この構成によれば、傾斜角差の大きさが第2閾値よりも大きい場合には、回動駆動装置のトルクに加えて傾斜駆動装置のトルクを用いることによって、車体の傾斜角を容易に変化させることができる。
[適用例7]
適用例5または6に記載の車両であって、
前記第2範囲は、前記第1閾値よりも小さい閾値である第3閾値よりも大きく、かつ、前記第1閾値よりも小さい範囲であり、
前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第3閾値よりも小さい場合の前記傾斜トルク割合が、前記傾斜角差の大きさが前記第2範囲内である場合の前記傾斜トルク割合よりも小さくなるように、前記目標傾斜トルクを決定するように、構成されている、
車両。
この構成によれば、傾斜角差の大きさが第3閾値よりも小さい場合に、目標傾斜トルクの大きさが過度に大きくなることが、抑制される。そして、逆トルクである目標回動トルクに従う回動駆動装置のトルクによって、車体の傾斜角を適切に変化させることができる。
[適用例8]
適用例1から7のいずれかに記載の車両であって、
前記傾斜角差の大きさに対する前記逆トルクである前記目標回動トルクの大きさの割合を、逆回動トルク割合とする場合に、
前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記車速の大きさが第4閾値よりも小さい場合の前記逆回動トルク割合が、前記車速の大きさが前記第4閾値よりも大きい場合の前記逆回動トルク割合よりも大きくなるように、前記目標回動トルクを決定するように、構成されている、
車両。
この構成によれば、車速の大きさが第4閾値よりも小さい場合には、車速の大きさが第4閾値よりも大きい場合と比べて、逆トルクである目標回動トルクの大きさが大きくなる。従って、車速の大きさが小さい場合に、車体の傾斜角の変化の遅れを抑制できる。
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、車両、車両の制御装置、車両の制御方法、等の態様で実現することができる。
車両10の右側面図である。 車両10の上面図である。 車両10の下面図である。 車両10の背面図である。 (A)、(B)は、車両10の簡略化された背面図である。 (A)、(B)は、車両10の簡略化された背面図である。 旋回時の力のバランスの説明図である。 車輪角AFと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。 回転する前輪12Fに作用する力の説明図である。 車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。 制御処理の例を示すフローチャートである。 制御装置100のブロック図である。 第1制御の処理の例を示すフローチャートである。 (A)〜(D)は、回動トルクと傾斜トルクとの説明図である。 前輪12Fの斜視図である。 (A)、(B)は、速度Vと傾斜角差dTと第1PゲインKp1との関係の例を示すグラフである。(C)は、目標回動トルクTqTtの例を示すグラフである。 傾斜角差dTと第2PゲインKp2との関係の例を示すグラフである。
A1.車両10の構成:
図1〜図4は、一実施例としての車両10を示す説明図である。図1は、車両10の右側面図を示し、図2は、車両10の上面図を示し、図3は、車両10の下面図を示し、図4は、車両10の背面図を示している。図1〜図4には、水平な地面GL(図1)上に配置され、傾斜していない状態の車両10が、示されている。図2〜図4では、図1に示す車両10の構成のうち説明に用いる部分が図示され、他の部分の図示が省略されている。図1〜図4には、6つの方向DF、DB、DU、DD、DR、DLが示されている。前方向DFは、車両10の前進方向であり、後方向DBは、前方向DFの反対方向である。上方向DUは、鉛直上方向であり、下方向DDは、上方向DUの反対方向である。右方向DRは、前方向DFに走行する車両10から見た右方向であり、左方向DLは、右方向DRの反対方向である。方向DF、DB、DR、DLは、いずれも、水平な方向である。右と左の方向DR、DLは、前方向DFに垂直である。
本実施例では、この車両10は、一人乗り用の小型車両である。車両10(図1、図2)は、車体90と、1つの前輪12Fと、2つの後輪12L、12Rと、を有する三輪車である。前輪12Fは、左右方向に回動可能な回動輪の例であり、車両10の幅方向(すなわち、右方向DRに平行な方向)の中心に配置されている。後輪12L、12Rは、駆動輪であり、車両10の幅方向の中心に対して対称に、互いに離れて配置されている。
車体90(図1)は、本体部20を有している。本体部20は、前部20aと、底部20bと、後部20cと、支持部20dと、を有している。底部20bは、水平な板状の部分である。前部20aは、底部20bの前方向DF側の端部から上方向DU側に延びる板状の部分である。後部20cは、底部20bの後方向DB側の端部から上方向DU側に延びる板状の部分である。支持部20dは、後部20cの上端から後方向DBに向かって延びる板状の部分である。本体部20は、例えば、金属製のフレームと、フレームに固定されたパネルと、を有している。
車体90は、さらに、底部20b上に固定された座席11と、座席11の前方向DF側に配置されたアクセルペダル45とブレーキペダル46と、底部20bに固定された制御装置100とバッテリ120と、前部20aの上方向DU側の端部に固定された前輪支持装置41と、前輪支持装置41に取り付けられたシフトスイッチ47と、を有している。図示を省略するが、本体部20には、他の部材(例えば、屋根、前照灯など)が固定され得る。車体90は、本体部20に固定された部材を含んでいる。
シフトスイッチ47は、車両10の走行モードを選択するためのスイッチである。本実施例では、「ドライブ」と「ニュートラル」と「リバース」と「パーキング」との4つの走行モードから1つを選択可能である。「ドライブ」は、駆動輪12L、12Rの駆動によって前進するモードであり、「ニュートラル」は、駆動輪12L、12Rが回転自在であるモードであり、「リバース」は、駆動輪12L、12Rの駆動によって後退するモードであり、「パーキング」は、少なくとも1つの車輪(例えば、後輪12L、12R)が回転不能であるモードである。「ドライブ」と「ニュートラル」とは、通常は、車両10の前進時に利用される。
前輪支持装置41(図1)は、回動軸Ax1を中心に回動可能に前輪12Fを支持する装置である。前輪支持装置41は、前フォーク17と、軸受68と、操舵モータ65と、を有している。前フォーク17は、前輪12Fを回転可能に支持しており、例えば、サスペンション(コイルスプリングとショックアブソーバ)を内蔵したテレスコピックタイプのフォークである。軸受68は、本体部20(ここでは、前部20a)と、前フォーク17と、を連結している。軸受68は、回動軸Ax1を中心に、前フォーク17(ひいては、前輪12F)を、車体90に対して左右に回動可能に支持している。操舵モータ65は、前フォーク17を回動させるアクチュエータの例である電気モータである。操舵モータ65は、図示しないロータとステータとを含んでいる。ロータとステータとのうち、一方は、前フォーク17に固定され、他方は、本体部20(ここでは、前部20a)に固定されている。
車両10には、左右に回動可能なハンドル41aが、設けられている。ハンドル41aは、旋回方向と旋回の程度とを入力するために操作されるように構成された操作入力部の例である。所定の直進方向に対するハンドル41aの回動方向(右、または、左)は、ユーザの望む旋回方向を示している。直進方向に対するハンドル41aの回動角度(以下、「ハンドル角」とも呼ぶ)の大きさは、ユーザの望む旋回の程度を示している。本実施例では、「ハンドル角=ゼロ」は、直進を示し、「ハンドル角>ゼロ」は、右旋回を示し、「ハンドル角<ゼロ」は、左旋回を示している。このように、ハンドル角の正負の符号は、旋回方向を示している。また、ハンドル角の絶対値は、旋回の程度を示している。このようなハンドル角は、ハンドル41aに入力される旋回方向と旋回の程度とを表す操作量の例である。
なお、本実施例では、ハンドル41aには、ハンドル41aの回転軸に沿って延びる支持棒41axが固定されている。支持棒41axは、回転軸を中心に回転可能に前輪支持装置41に接続されている。
車輪角AF(図2)は、下方向DDを向いて車両10を見る場合に、前方向DFを基準とする、回転する前輪12Fの進行方向D12の角度である。進行方向D12は、前輪12Fの回転軸Ax2に垂直な方向である。本実施例では、「AF=ゼロ」は、「方向D12=前方向DF」を示している。「AF>ゼロ」は、方向D12が右方向DR側を向いていることを示している(旋回方向=右方向DR)。「AF<ゼロ」は、方向D12が左方向DL側を向いていることを示している(旋回方向=左方向DL)。
操舵モータ65は、制御装置100(図1)によって制御される。以下、操舵モータ65によって生成されるトルクを、回動トルクとも呼ぶ。回動トルクが小さい場合、前輪12Fの方向D12がハンドル角とは独立に左右に回動することが許容される。操舵モータ65の制御の詳細については、後述する。
図1中の角度CAは、鉛直上方向DUと、回動軸Ax1に沿って鉛直上方向DU側へ向かう方向と、のなす角度を示している(キャスター角とも呼ばれる)。本実施例では、キャスター角CAがゼロよりも大きい。キャスター角CAがゼロよりも大きい場合、回動軸Ax1に沿って鉛直上方向DU側へ向かう方向は、斜め後ろに傾斜している。
また、図1に示すように、本実施例では、前輪支持装置41の回動軸Ax1と地面GLとの交点P2は、前輪12Fの地面GLとの接触中心P1よりも、前方向DF側に位置している。これらの点P1、P2の間の後方向DBの距離Ltは、トレールと呼ばれる。正のトレールLtは、接触中心P1が交点P2よりも後方向DB側に位置していることを示している。なお、図1、図3に示すように、接触中心P1は、前輪12Fと地面GLとの接触領域Ca1の中心である。接触領域の中心は、接触領域の重心であり、具体的には、領域内に質量が均等に分布していると仮定する場合の重心の位置である。右後輪12Rと地面GLとの接触領域CaRの接触中心PbRと、左後輪12Lと地面GLとの接触領域CaLの接触中心PbLとも、同様に特定される。
2つの後輪12L、12R(図4)は、後輪支持部80に回転可能に支持されている。後輪支持部80は、リンク機構30と、リンク機構30の上部に固定されたリーンモータ25と、リンク機構30の上部に固定された第1支持部82と、リンク機構30の前部に固定された第2支持部83(図1)と、を有している。図1では、説明のために、リンク機構30と第1支持部82と第2支持部83のうちの右後輪12Rに隠れている部分も実線で示されている。図2では、説明のために、本体部20に隠れている後輪支持部80と後輪12L、12Rと連結棒75とが、実線で示されている。図1〜図3では、リンク機構30が簡略化して示されている。
第1支持部82(図4)は、後輪12L、12Rの上方向DU側において、右方向DRに平行に延びる板状の部分を含んでいる。第2支持部83(図1、図2)は、リンク機構30の前方向DF側の、左後輪12Lと右後輪12Rとの間に配置されている。
右後輪12R(図1)は、ホイール12Raと、ホイール12Raに装着されたタイヤ12Rbと、を有している。ホイール12Ra(図4)は、右電気モータ51Rに接続されている。右電気モータ51Rは、ステータとロータとを有している(図示省略)。ロータとステータとのうちの一方は、ホイール12Raに固定され、他方は、後輪支持部80に固定されている。右電気モータ51Rの回転軸は、ホイール12Raの回転軸と同じであり、右方向DRに平行である。左後輪12Lの構成は、右後輪12Rの構成と、同様である。具体的には、左後輪12Lは、ホイール12Laとタイヤ12Lbとを有している。左電気モータ51Lのロータとステータとのうちの一方は、ホイール12Laに固定され、他方は、後輪支持部80に固定されている。これらの電気モータ51L、51Rは、後輪12L、12Rを直接的に駆動するインホイールモータである。
図1、図4には、車体90が水平な地面GL上で傾斜せずに直立している状態(後述する傾斜角Tがゼロである状態)が、示されている。この状態で、左後輪12Lの回転軸ArL(図4)と右後輪12Rの回転軸ArRとは、同じ直線上に位置している。図1、図3に示すように、右後輪12Rの地面GLとの接触中心PbRの前方向DFの位置は、左後輪12Lの地面GLとの接触中心PbLの前方向DFの位置と、おおよそ同じである。
リンク機構30(図4)は、いわゆる、平行リンクである。リンク機構30は、右方向DRに向かって順番に並ぶ3つの縦リンク部材33L、21、33Rと、下方向DDに向かって順番に並ぶ2つの横リンク部材31U、31Dと、を有している。水平な地面GL上で車体90が傾斜せずに直立している場合、縦リンク部材33L、21、33Rは、鉛直方向に平行であり、横リンク部材31U、31Dは、水平方向に平行である。2つの縦リンク部材33L、33Rと、2つの横リンク部材31U、31Dとは、平行四辺形リンク機構を形成している。上横リンク部材31Uは、縦リンク部材33L、33Rの上端を連結している。下横リンク部材31Dは、縦リンク部材33L、33Rの下端を連結している。中縦リンク部材21は、横リンク部材31U、31Dの中央部分を連結している。これらのリンク部材33L、33R、31U、31D、21は、互いに回動可能に連結されており、回動軸は、前方向DFに平行である。左縦リンク部材33Lには、左電気モータ51Lが固定されている。右縦リンク部材33Rには、右電気モータ51Rが固定されている。中縦リンク部材21の上部には、第1支持部82と第2支持部83(図1)とが、固定されている。リンク部材33L、21、33R、31U、31Dと、支持部82、83とは、例えば、金属で形成されている。
本実施例では、リンク機構30は、複数のリンク部材を回動可能に連結するための軸受けを有している。例えば、軸受38は、下横リンク部材31Dと中縦リンク部材21とを回動可能に連結し、軸受39は、上横リンク部材31Uと中縦リンク部材21とを回動可能に連結している。説明を省略するが、複数のリンク部材を回動可能に連結している他の部分にも、軸受が設けられている。
リーンモータ25は、リンク機構30を作動させるアクチュエータの例であり、本実施例では、ステータとロータとを有する電気モータである。リーンモータ25のステータとロータのうちの一方は、中縦リンク部材21に固定され、他方は、上横リンク部材31Uに固定されている。リーンモータ25の回動軸は、軸受39の回動軸と同じであり、車両10の幅方向の中心に位置している。リーンモータ25のロータがステータに対して回動すると、上横リンク部材31Uが、中縦リンク部材21に対して、傾斜する。これにより、車両10が傾斜する。以下、リーンモータ25によって生成されるトルクを、傾斜トルクとも呼ぶ。傾斜トルクは、車体90の傾斜角を制御するためのトルクである。
図5(A)、図5(B)は、水平な地面GL上の車両10の状態を示す概略図である。図中には、車両10の簡略化された背面図が示されている。図5(A)は、車両10が直立している状態を示し、図5(B)は、車両10が傾斜している状態を示している。図5(A)に示すように、上横リンク部材31Uが中縦リンク部材21に対して直交する場合、全ての車輪12F、12L、12Rが、水平な地面GLに対して直立する。そして、車体90を含む車両10の全体は、地面GLに対して、直立する。図中の車両上方向DVUは、車両10の上方向である。車両10が傾斜していない状態では、車両上方向DVUは、上方向DUと同じである。本実施例では、車体90に対して予め決められた上方向が、車両上方向DVUとして用いられる。
図5(B)に示すように、背面図上で、中縦リンク部材21が上横リンク部材31Uに対して時計回り方向に回動している場合、右後輪12Rが車両上方向DVU側に移動し、左後輪12Lが反対側に移動する。この結果、全ての車輪12F、12L、12Rが地面GLに接触した状態で、これらの車輪12F、12L、12Rは、地面GLに対して右方向DR側に傾斜する。そして、車体90を含む車両10の全体は、地面GLに対して、右方向DR側に傾斜する。一般的には、上横リンク部材31Uが中縦リンク部材21に対して傾斜する場合、右後輪12Rと左後輪12Lとの一方が、車両上方向DVU側に移動し、他方は、車両上方向DVUとは反対方向側に移動する。すなわち、リンク機構30とリーンモータ25とは、幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪12L、12Rの間で、車輪12L、12Rの回転軸ArL、ArRに垂直な方向の相対位置を変化させる。この結果、車輪12F、12L、12R、ひいては、車体90を含む車両10の全体は、地面GLに対して傾斜する。後述するように、車両10が右方向DR側に旋回する場合に、車両10は、右方向DR側に傾斜する。車両10が左方向DL側に旋回する場合に、車両10は、左方向DL側に傾斜する。
図5(B)では、車両上方向DVUは、上方向DUに対して、右方向DR側に傾斜している。以下、前方向DFを向いて車両10を見る場合の、上方向DUと車両上方向DVUとの間の角度を、傾斜角Tと呼ぶ。ここで、「T>ゼロ」は、右方向DR側への傾斜を示し、「T<ゼロ」は、左方向DL側への傾斜を示している。車両10が傾斜する場合、車体90を含む車両10の全体が、おおよそ、同じ方向に傾斜する。従って、車体90の傾斜角Tは、車両10の傾斜角Tであると言うことができる。
また、図5(B)には、リンク機構30の制御角Tcが示されている。制御角Tcは、上横リンク部材31Uの向きに対する中縦リンク部材21の向きの角度を示している。「Tc=ゼロ」は、上横リンク部材31Uに対して中縦リンク部材21が垂直であることを、示している。「Tc>ゼロ」は、図5(B)の背面図において、中縦リンク部材21が、上横リンク部材31Uに対して、時計回りに回動したことを示している。図示を省略するが、「Tc<ゼロ」は、中縦リンク部材21が、上横リンク部材31Uに対して、反時計回りに回動したことを示している。図示するように、車両10が、水平な地面GL(すなわち、鉛直上方向DUに垂直な地面GL)上に位置している場合、制御角Tcは、傾斜角Tと、おおよそ同じである。
図5(A)、図5(B)に示すように、地面GL上には、傾斜軸AxLが配置されている。リンク機構30とリーンモータ25とは、車両10を、傾斜軸AxLを中心に、右と左とに傾斜させることができる。本実施例では、傾斜軸AxLは、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1を通り前方向DFに平行な直線である。後輪12L、12Rを回転可能に支持するリンク機構30とリーンモータ25とは、車体90を車両10の幅方向に傾斜させるように構成された傾斜装置89を構成する。
なお、横リンク部材31Uは、縦リンク部材33L、33Rとモータ51L、51Rとを介して車輪12L、12Rに接続されている。中縦リンク部材21は、第1支持部82とサスペンションシステム70(後述)とを介して、車体90に接続されている。リーンモータ25は、車輪12L、12Rに接続された部材31Uと、車体90に接続された部材21と、の相対的な位置を変化させる力(ここでは、部材31Uに対する部材21の向きを変化させるトルク)を、部材31Uと部材21とに印加する。
図6(A)、図6(B)は、図5(A)、図5(B)と同様に、車両10の簡略化された背面図を示している。図6(A)、図6(B)では、地面GLxは、鉛直上方向DUに対して斜めに傾斜している(右側が高く、左側が低い)。図6(A)は、制御角Tcがゼロである状態を示している。この状態では、全ての車輪12F、12L、12Rが、地面GLxに対して直立する。そして、車両上方向DVUは、地面GLxに対して垂直であり、また、鉛直上方向DUに対して左方向DL側に傾斜している。
図6(B)は、傾斜角Tがゼロである状態を示している。この状態では、上横リンク部材31Uは、地面GLxにおおよそ平行であり、中縦リンク部材21に対して反時計回りの方向に傾斜している。また、車輪12F、12L、12Rは、地面GLに対して傾斜している。
このように、地面GLxが傾斜している場合、車体90の傾斜角Tの大きさは、リンク機構30の制御角Tcの大きさと、異なり得る。
なお、リーンモータ25は、リーンモータ25を回動不能に固定する図示しないロック機構を有している。ロック機構を作動させることによって、上横リンク部材31Uは、中縦リンク部材21に対して回動不能に固定される。この結果、制御角Tcが固定される。例えば、車両10の駐車時に、制御角Tcはゼロに固定される。ロック機構としては、メカニカルな機構であって、リーンモータ25(ひいては、リンク機構30)を固定している最中に電力を消費しない機構が好ましい。
図2、図4に示すように、本実施例では、本体部20は、サスペンションシステム70と連結棒75とによって、後輪支持部80に連結されている。サスペンションシステム70(図4)は、伸縮可能な左サスペンション70Lと、伸縮可能な右サスペンション70Rと、を有している。本実施例では、各サスペンション70L、70Rは、コイルスプリング71L、71Rとショックアブソーバ72L、72Rとを内蔵するテレスコピックタイプのサスペンションである。サスペンション70L、70Rの上方向DU側の端部は、本体部20の支持部20dに、回動可能に連結されている(例えば、玉継ぎ手、ヒンジなど)。サスペンション70L、70Rの下方向DD側の端部は、後輪支持部80の第1支持部82に、回動可能に連結されている(例えば、玉継ぎ手、ヒンジなど)。
連結棒75は、図1、図2に示すように、前方向DFに延びる棒である。連結棒75は、車両10の幅方向の中心に配置されている。連結棒75の前方向DF側の端部は、本体部20の後部20cに、回動可能に連結されている(例えば、玉継ぎ手)。連結棒75の後方向DB側の端部は、後輪支持部80の第2支持部83に、回動可能に連結されている(例えば、玉継ぎ手)。
このように、本体部20(ひいては、車体90)は、サスペンションシステム70と連結棒75とを介して、後輪支持部80に連結されている。車体90は、サスペンション70L、70Rの伸縮によって、幅方向に回動可能である。図1の回転軸AxRは、車体90が後輪支持部80に対して右方向DRと左方向DLとに回動する場合の中心軸を示している。本実施例では、回転軸AxRは、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1と、連結棒75の近傍と、を通る直線である。なお、本実施例では、傾斜装置89による傾斜の傾斜軸AxLは、回転軸AxRと異なっている。
図5(A)、図5(B)には、回転軸AxRを中心に回動する車体90が、点線で示されている。図中の回転軸AxRは、サスペンション70L、70Rを含み前方向DFに垂直な平面上の回転軸AxRの位置を示している。図5(B)に示すように、車両10が傾斜した状態においても、車体90は、さらに、回転軸AxRを中心に、右方向DRと左方向DLとに回動可能である。
車体90は、後輪支持部80による回動と、サスペンションシステム70と連結棒75とによる回動と、によって、鉛直上方向DU(ひいては、地面GL)に対して、車両10の幅方向に回動し得る。このように、車両10の全体を総合して実現される車体90の幅方向の回動を、ロールとも呼ぶ。ロールは、車体90やタイヤ12Rb、12Lbなどの車両10の部材の変形によっても、生じ得る。なお、通常は、回転軸AxRを中心とする回動は、一時的な回動であり、その大きさは、傾斜装置89による回動の大きさと比べて、小さい。
図1、図5(A)、図5(B)には、重心90cが示されている。この重心90cは、満載状態での車体90の重心である。満載状態は、車両10が、車両10の総重量が許容される車両総重量になるように、乗員(可能なら荷物も)を積んだ状態である。例えば、荷物の最大重量は規定されず、最大定員数が規定される場合がある。この場合、重心90cは、車両10に対応付けられた最大定員数の乗員が車両10に搭乗した状態の重心である。乗員の体重としては、予め決められた基準体重(例えば、55kg)が採用される。また、最大定員数に加えて、荷物の最大重量が規定される場合がある。この場合、重心90cは、最大定員数の乗員と、最大重量の荷物と、を積んだ状態での、車体90の重心である。
図示するように、本実施例では、重心90cは、回転軸AxRの下方向DD側に配置されている。従って、車体90が回転軸AxRを中心に振動する場合に、振動の振幅が過度に大きくなることを抑制できる。本実施例では、重心90cを回転軸AxRの下方向DD側に配置するために、車体90(図1)の要素のうち比較的重い要素であるバッテリ120が、低い位置に配置されている。具体的には、バッテリ120は、車体90の本体部20のうちの最も低い部分である底部20bに固定されている。従って、重心90cを、容易に、回転軸AxRよりも低くできる。
図7は、旋回時の力のバランスの説明図である。図中には、旋回方向が右方向である場合の後輪12L、12Rの背面図が示されている。後述するように、旋回方向が右方向である場合、制御装置100(図1)は、後輪12L、12R(ひいては、車両10)が地面GLに対して右方向DRに傾斜するように、リーンモータ25と操舵モータ65とを制御する場合がある。
図中の第1力F1は、車体90に作用する遠心力である。第2力F2は、車体90に作用する重力である。ここで、車体90の質量をm(kg)とし、重力加速度をg(おおよそ、9.8m/s)とし、鉛直方向に対する車両10の傾斜角をT(度)とし、旋回時の車両10の速度をV(m/s)とし、旋回半径をR(m)とする。第1力F1と第2力F2とは、以下の式1、式2で表される。
F1 = (m*V)/R (式1)
F2 = m*g (式2)
ここで、*は、乗算記号(以下、同じ)。
また、図中の力F1bは、第1力F1の、車両上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F2bは、第2力F2の、車両上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F1bと力F2bとは、以下の式3、式4で表される。
F1b = F1*cos(T) (式3)
F2b = F2*sin(T) (式4)
ここで、「cos()」は、余弦関数であり、「sin()」は、正弦関数である(以下、同じ)。
力F1bは、車両上方向DVUを左方向DL側に回動させる成分であり、力F2bは、車両上方向DVUを右方向DR側に回動させる成分である。車両10が傾斜角T(さらには、速度Vと旋回半径R)を保ちつつ安定して旋回を続ける場合には、F1bとF2bとの関係は、以下の式5で表される
F1b = F2b (式5)
式5に上記の式1〜式4を代入すると、旋回半径Rは、以下の式6で表される。
R = V/(g*tan(T)) (式6)
ここで、「tan()」は、正接関数である(以下、同じ)。
式6は、車体90の質量mに依存せずに、成立する。ここで、式6の「T」を、左方向と右方向とを区別せずに傾斜角の大きさを表すパラメータTa(ここでは、傾斜角Tの絶対値)に置換することによって得られる以下の式6aは、車体90の傾斜方向に拘わらずに、成立する。
R = V/(g*tan(Ta)) (式6a)
図8は、車輪角AFと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。図中には、下方向DDを向いて見た車輪12F、12L、12Rが示されている。図中では、前輪12Fは、右方向DRに回動しており、車両10は、右方向DRに旋回する。図中の前中心Cfは、前輪12Fの中心である。前中心Cfは、前輪12Fの回転軸Ax2上に位置している。下方向DDを向いて車両10を見る場合、前中心Cfは、接触中心P1(図1)とおおよそ同じ位置に位置している。後中心Cbは、2つの後輪12L、12Rの間の中心である。車体90が傾斜していない場合、後中心Cbは、後輪12L、12Rの回転軸ArL、ArR上の、後輪12L、12Rの間の中央に位置している。下方向DDを向いて車両10を見る場合、後中心Cbの位置は、2個の後輪12L、12Rの接触中心PbL、PbRの間の中央の位置と、同じである。中心Crは、旋回の中心である(旋回中心Crと呼ぶ)。ホイールベースLhは、前中心Cfと後中心Cbとの間の前方向DFの距離である。図1に示すように、ホイールベースLhは、前輪12Fの回転軸Ax2と、後輪12L、12Rの回転軸ArL、ArRとの間の前方向DFの距離である。
図8に示すように、前中心Cfと後中心Cbと旋回中心Crとは、直角三角形を形成する。点Cbの内角は、90度である。点Crの内角は、車輪角AFと同じである。従って、車輪角AFと旋回半径Rとの関係は、以下の式7で表される。
AF = arctan(Lh/R) (式7)
ここで「arctan()」は、正接関数の逆関数である(以下、同じ)。
なお、現実の車両10の挙動と、図8の簡略化された挙動と、の間には、種々の差異が存在する。例えば、現実の車輪12F、12L、12Rは、地面GLに対して滑り得る。また、現実の前輪12Fと後輪12L、12Rは、傾斜する。従って、現実の旋回半径は、式7の旋回半径Rと異なり得る。ただし、式7は、車輪角AFと旋回半径Rとの関係を示す良い近似式として、利用可能である。
前進中に図5(B)のように車両10が右方向DR側へ傾斜した場合、車体90の重心90cが右方向DR側へ移動するので、車両10の進行方向は、右方向DR側へ変化する。また、前輪支持装置41(図1)(ひいては、回動軸Ax1(図5(B)))も、右方向DR側へ移動する。一方、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1は、摩擦によって、直ぐに右方向DR側へ移動することはできない。そして、本実施例では、図1で説明したように、前輪12Fは、正のトレールLtを有する。すなわち、接触中心P1は、回動軸Ax1と地面GLとの交点P2よりも、後方向DB側に位置している。これらの結果、前進中に車両10が右方向DR側へ傾斜した場合、前輪12Fの向き(すなわち、進行方向D12(図2))は、自然に、車両10の新たな進行方向、すなわち、傾斜方向(図5(B)の例では、右方向DR)に、回動可能である。図5(B)中の回動方向RFは、車体90が右方向DR側へ傾斜する場合の、回動軸Ax1を中心とする前輪12Fの回動方向を示している。操舵モータ65のトルクが小さい場合には、前輪12Fの向きは、傾斜角Tの変更開始に続いて、自然に、傾斜方向に回動する。そして、車両10は、傾斜方向に向かって、旋回する。
また、旋回半径が上記の式6(ひいては、式6a)で表される旋回半径Rと同じである場合には、力F1b、F2b(図7、式5)が釣り合うので、車両10の挙動の安定性が向上する。傾斜角Tで旋回する車両10は、式6で表される旋回半径Rで旋回しようとする。また、車両10が正のトレールLtを有するので、前輪12Fの進行方向D12は、自然に、車両10の進行方向と同じになる。従って、車両10が傾斜角Tで旋回する場合、前輪12Fの向き(すなわち、車輪角AF)は、式6で表される旋回半径Rと、式7と、から特定される車輪角AFの向きに、落ち着き得る。このように、車輪角AFは、車体90の傾斜に追随して、変化する。
また、本実施例では、車体90が傾斜する場合に、前輪12Fには、トレールLtに依存せずに、車輪角AFを傾斜方向に回動させる力が作用する。図9は、回転する前輪12Fに作用する力の説明図である。図中には、前輪12Fの斜視図が示されている。図9の例では、前輪12Fの方向D12は、前方向DFと同じである。回転軸Ax2は、前輪12Fの回転軸である。車両10が前進する場合、前輪12Fは、この回転軸Ax2を中心に、回転する。図中には、前輪支持装置41(図1)の回動軸Ax1と、前軸Ax3とが示されている。回動軸Ax1は、上方向DU側から下方向DD側に向かって延びている。前軸Ax3は、前輪12Fの重心12Fcを通り、前輪12Fの方向D12に平行な軸である。なお、前輪12Fの回転軸Ax2も、前輪12Fの重心12Fcを通っている。
本実施例では、前輪支持装置41が車体90に固定されている。従って、車体90が傾斜する場合には、前輪支持装置41が車体90とともに傾斜するので、前輪12Fの回転軸Ax2も、同様に、同じ方向へ傾斜しようとする。走行中の車両10の車体90が右方向DR側に傾斜する場合、回転軸Ax2を中心に回転する前輪12Fに、右方向DR側へ傾斜させるトルクTqxが作用する。このトルクTqxは、前軸Ax3を中心に前輪12Fを右方向DR側へ傾斜させようとする力の成分を含んでいる。このように、回転する物体に外部トルクが印加される場合の物体の運動は、歳差運動として知られている。例えば、回転する物体は、回転軸と外部トルクの軸とに垂直な軸を中心に、回動する。図9の例では、トルクTqxの印加によって、回転する前輪12Fは、前輪支持装置41の回動軸Ax1を中心に右方向DR側へ回動する。このように、回転する前輪12Fの角運動量に起因して、前輪12Fの方向D12(すなわち、車輪角AF)は、車体90の傾斜に追随して変化する。
以上、車両10が右方向DR側に傾斜する場合について説明した。車両10が左方向DL側に傾斜する場合も、同様に、前輪12Fの方向D12(すなわち、車輪角AF)は、車体90の傾斜に追随して左方向DL側へ回動する。
操舵モータ65のトルクが小さい場合、前輪支持装置41は、以下のように、前輪12Fを支持している。すなわち、前輪12Fは、ハンドル41aに入力される情報に拘わらず、車体90の傾斜の変化に追随して、車体90に対して左右に回動可能である。例えば、ハンドル41aが直進を示す所定方向を向いた状態に維持される場合であっても、車体90の傾斜角Tが右方向に変化する場合には、前輪12Fは、傾斜角Tの変化に追随して、右方向に回動し得る(すなわち、車輪角AFは、右方向に変化し得る)。前輪支持装置41がこのように前輪12Fを支持していることは、以下のように言い換えられる。すなわち、前輪支持装置41は、ハンドル41aに入力される1つの操作量に対する前輪12Fの車輪角AFが1つの車輪角AFに制限されないように、車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右に回動可能に、前輪12Fを支持している。
なお、図1に示すように、前輪支持装置41は、ハンドル41aの支持棒41axと前フォーク17とを連結する接続部50を、有している。接続部50は、支持棒41axに固定された第1部分51と、前フォーク17に固定された第2部分52と、第1部分51と第2部分52とを接続する第3部分53と、を含んでいる。接続部50は、ハンドル41aに、支持棒41axを介して間接的に接続され、前フォーク17に、直接的に接続されている。第3部分53は、本実施例では、粘性ダンパである。接続部50は、ハンドル41aの向きに対する前フォーク17(ひいては、前輪12F)の相対的な向きが急に変化する場合に、その変化を抑制する力をハンドル41aと前フォーク17とに印加する。操舵モータ65のトルクが小さい場合、路面の凹凸などの外部の要因によって、前輪12Fの方向D12が、意図せずに急に変化し得る。ユーザは、ハンドル41aを持つことによって、前輪12Fの方向D12の意図しない急な変化を、抑制できる。これにより、走行安定性を向上できる。
なお、接続部50は、ハンドル41aの向きに対する前フォーク17(ひいては、前輪12F)の相対的な向きの緩やかな変化を、許容する。このように、接続部50は、ハンドル41aと前フォーク17とを緩く接続する。このような接続部50は、操舵モータ65のトルクが小さい場合に、ハンドル41aに入力されるハンドル角に拘わらずに、前輪12Fが車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右に回動することを、許容する。従って、車輪角AFは傾斜角Tに適した角度に変化できるので、走行安定性が向上する。
A2.車両10の制御:
図10は、車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。車両10は、制御に関する構成として、車速センサ122と、ハンドル角センサ123と、車輪角センサ124と、鉛直方向センサ126と、アクセルペダルセンサ145と、ブレーキペダルセンサ146と、シフトスイッチ47と、制御装置100と、右電気モータ51Rと、左電気モータ51Lと、リーンモータ25と、操舵モータ65と、を有している。
車速センサ122は、車両10の車速を検出するセンサである。本実施例では、車速センサ122は、前フォーク17(図1)の下端に取り付けられており、前輪12Fの回転速度、すなわち、車速を検出する。
ハンドル角センサ123は、ハンドル41aの向き(すなわち、ハンドル角)を検出するセンサである。本実施例では、ハンドル角センサ123は、ハンドル41a(図1)に固定された支持棒41axに取り付けられている。
車輪角センサ124は、前輪12Fの車輪角AFを検出するセンサである。本実施例では、車輪角センサ124は、操舵モータ65(図1)に取り付けられている。
鉛直方向センサ126は、鉛直下方向DDを特定するセンサである。本実施例では、鉛直方向センサ126は、加速度センサ126aと、ジャイロセンサ126gと、制御部126cと、を含んでいる。
加速度センサは、任意の方向の加速度を検出するセンサであり、例えば、3軸の加速度センサである。以下、加速度センサ126aによって検出される加速度の方向を、検出方向と呼ぶ。車両10が停止している状態では、検出方向は、鉛直下方向DDと同じである。すなわち、検出方向の反対の方向が、鉛直上方向DUである。
ジャイロセンサ126gは、任意の方向の回転軸を中心とする角加速度を検出するセンサであり、例えば、3軸の角加速度センサである。
制御部126cは、加速度センサ126aからの信号とジャイロセンサ126gからの信号とを用いて鉛直下方向DDを特定する装置である。制御部126cは、例えば、コンピュータを含むデータ処理装置である。
加速度センサ126aとジャイロセンサ126gとは、車両10の種々の部材に固定されてよい。例えば、加速度センサ126aとジャイロセンサ126gは、同じ部材に固定される。図1の実施例では、加速度センサ126aとジャイロセンサ126g、ひいては、鉛直方向センサ126は、本体部20の後部20cに固定されている。
車両10の走行時には、検出方向は、車両10の動きに応じて、鉛直下方向DDからずれ得る。例えば、車両10が前進中に加速する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して後方向DB側に傾斜する方向に、ずれる。車両10が前進中に減速する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して前方向DF側に傾斜する方向に、ずれる。車両10が前進中に左方向に旋回する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して右方向DR側に傾斜する方向に、ずれる。車両10が前進中に右方向に旋回する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して左方向DL側に傾斜する方向に、ずれる。
鉛直方向センサ126の制御部126cは、車速センサ122によって特定される車速Vを用いることによって、車両10の加速度を算出する。そして、制御部126cは、加速度を用いることによって、車両10の加速度に起因する鉛直下方向DDに対する検出方向のずれを特定する(例えば、検出方向の前方向DFまたは後方向DBのずれが特定される)。また、制御部126cは、ジャイロセンサ126gによって特定される角加速度を用いることによって、車両10の角加速度に起因する鉛直下方向DDに対する検出方向のずれを特定する(例えば、検出方向の右方向DRまたは左方向DLのずれが、特定される)。制御部126cは、特定されたずれを用いて検出方向を修正することによって、鉛直下方向DDを特定する。このように鉛直方向センサ126は、車両10の種々の走行状態において、適切な鉛直下方向DDを特定できる。
制御部126cは、特定した鉛直下方向DDを示す鉛直下方向情報を、出力する。鉛直下方向情報は、鉛直方向センサ126の予め決められた基準方向に対する鉛直下方向DDを示している。本実施例では、鉛直方向センサ126は、車体90(具体的には、本体部20)に固定されている。従って、車体90の車両上方向DVUと、鉛直方向センサ126の基準方向と、の間の対応関係は、予め決められている(センサ方向関係と呼ぶ)。このセンサ方向関係を用いることによって、鉛直下方向情報によって示される鉛直下方向DDを、車体90の車両上方向DVUに対する鉛直下方向DDに、変換できる。
アクセルペダルセンサ145は、アクセルペダル45(図1)に取り付けられており、アクセル操作量を検出する。ブレーキペダルセンサ146は、ブレーキペダル46(図1)に取り付けられており、ブレーキ操作量を検出する。
各センサ122、123、124、145、146は、例えば、レゾルバ、または、エンコーダを用いて構成されている。
制御装置100は、主制御部110と、駆動装置制御部300と、リーンモータ制御部400と、操舵モータ制御部500と、を有している。制御装置100は、バッテリ120(図1)からの電力を用いて動作する。本実施例では、制御部110、300、400、500は、それぞれ、コンピュータを有している。具体的には、制御部110、300、400、500は、プロセッサ110p、300p、400p、500p(例えば、CPU)と、揮発性記憶装置110v、300v、400v、500v(例えば、DRAM)と、不揮発性記憶装置110n、300n、400n、500n(例えば、フラッシュメモリ)と、を有している。不揮発性記憶装置110n、300n、400n、500nには、対応する制御部110、300、400、500の動作のためのプログラム110g、300g、400g、500gが、予め格納されている。また、主制御部110の不揮発性記憶装置110nには、マップデータMT、MAFが、予め格納されている。操舵モータ制御部500の不揮発性記憶装置500nには、第1マップデータMp1が、予め格納されている。リーンモータ制御部400の不揮発性記憶装置400nには、第2マップデータMp2が、予め格納されている。プロセッサ110p、300p、400p、500pは、それぞれ、対応するプログラム110g、300g、400g、500gを実行することによって、種々の処理を実行する。
主制御部110のプロセッサ110pは、センサ122、123、124、126、145、146とシフトスイッチ47とからの信号を受信し、受信した信号に応じて車両10を制御する。主制御部110のプロセッサ110pは、駆動装置制御部300とリーンモータ制御部400と操舵モータ制御部500とに指示を出力することによって、車両10を制御する(詳細は後述)。
駆動装置制御部300のプロセッサ300pは、主制御部110からの指示に従って、電気モータ51L、51Rを制御する。リーンモータ制御部400のプロセッサ400pは、主制御部110からの指示に従って、リーンモータ25を制御する。操舵モータ制御部500のプロセッサ500pは、主制御部110からの指示に従って、操舵モータ65を制御する。これらの制御部300、400、500は、それぞれ、制御対象のモータ51L、51R、25、65にバッテリ120からの電力を供給する電力制御部300c、400c、500cを有している。電力制御部300c、400c、500cは、電気回路(例えば、インバータ回路)を用いて、構成されている。
以下、制御部110、300、400、500のプロセッサ110p、300p、400p、500pが処理を実行することを、単に、制御部110、300、400、500が処理を実行する、とも表現する。
図11は、制御装置100(図10)によって実行される制御処理の例を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、後輪支持部80と前輪支持装置41との制御の手順を示している。図11では、各処理に、文字「S」と、文字「S」に続く数字と、を組み合わせた符号が、付されている。
S100では、主制御部110は、センサ122、123、124、126、145、146とシフトスイッチ47とからの信号を取得する。そして、主制御部110は、速度Vとハンドル角と車輪角AFと鉛直下方向DDとアクセル操作量とブレーキ操作量と走行モードとを、特定する。
S110では、主制御部110は、「走行モードが「ドライブ」と「ニュートラル」とのいずれかである」という条件が満たされるか否かを判断する。S110の条件は、車両10が前進していることを、示している。S110の判断結果が、Yesである場合、主制御部110は、S130へ移行する。
S130では、制御装置100は、車両10がハンドル角に対応付けられた方向に進むように、リーンモータ25と操舵モータ65とを制御する。S130の概要は、以下の通りである。主制御部110は、ハンドル角と車速Vとを用いて、第1目標傾斜角T1を決定する。第1目標傾斜角T1は、傾斜角Tの目標値を示している。後述するように、第1目標傾斜角T1の絶対値は、ハンドル角の絶対値が大きいほど、大きい。ここで、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1に近づくように車体90を幅方向に回動させる場合の回動方向を、目標方向と呼ぶ。目標方向は、右方向と左方向とのいずれかである。リーンモータ制御部400は、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1に近づくように、リーンモータ25に目標方向の傾斜トルクを出力させる。また、操舵モータ制御部500は、目標方向とは反対の方向に前輪12Fを回動させるトルクを、操舵モータ65に出力させる。これにより、車両10は、ハンドル角に対応する方向に向かって、適切に、進行する。S130の処理の詳細については、後述する。
走行モードが「ドライブ」と「ニュートラル」とのいずれとも異なる場合(ここでは、走行モードが「リバース」と「パーキング」とのいずれかである場合)、S110の判断結果は、Noである。この場合、主制御部110は、S170へ移行する。
S170では、主制御部110は、S130と同じく、第1目標傾斜角T1を決定する。主制御部110は、リーンモータ制御部400に、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1となるようにリーンモータ25を制御するための指示を、リーンモータ制御部400に供給する。リーンモータ制御部400は、指示に従って、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1になるように、リーンモータ25を駆動する。リーンモータ制御部400は、傾斜角Tと第1目標傾斜角T1との差を用いるリーンモータ25のフィードバック制御を行う(例えば、いわゆるPID(Proportional Integral Derivative)制御)。
また、主制御部110は、ハンドル角と車速Vとを用いて、第1目標車輪角AFt1を決定する。第1目標車輪角AFt1とハンドル角と車速Vとの対応関係を表す情報は、主制御部110(図10)の不揮発性記憶装置110nに格納されているマップデータMAFによって、予め、決められている。主制御部110は、このマップデータMAFを参照し、ハンドル角と車速Vとの組み合わせに対応する第1目標車輪角AFt1を特定する。
本実施例では、ハンドル角と車速Vと第1目標車輪角AFt1との対応関係は、第1目標傾斜角T1と、車速Vと、上記の式6、式7とを用いて特定される車輪角AFと、の対応関係と同じである。従って、同じ第1目標車輪角AFt1は、第1目標傾斜角T1と車速Vとを用いて、特定可能である。例えば、マップデータMAFは、第1目標傾斜角T1と車速Vとの組み合わせと、第1目標車輪角AFt1と、の対応関係を規定してよい。そして、主制御部110は、第1目標傾斜角T1と車速Vとを用いて、第1目標車輪角AFt1を特定してよい。
主制御部110は、車輪角AFが第1目標車輪角AFt1となるように操舵モータ65を制御するための指示を、操舵モータ制御部500に供給する。操舵モータ制御部500は、指示に従って、車輪角AFが第1目標車輪角AFt1になるように、操舵モータ65を駆動する。操舵モータ制御部500は、車輪角AFと第1目標車輪角AFt1との差を用いる操舵モータ65のフィードバック制御を行う(例えば、いわゆるPID(Proportional Integral Derivative)制御)。
以上により、車両10は、ハンドル角に対応する方向に向かって、適切に、進行する。
S130、または、S170の処理が実行されたことに応じて、図11の処理が終了する。制御装置100は、図11の処理を繰り返し実行する。S130を実行するための条件が満たされる場合(S110:Yes)、制御装置100は、S130の処理を、継続して行う。S170を実行するための条件が満たされる場合(S110:No)、制御装置100は、S170の処理を、継続して行う。これらの結果、車両10は、ハンドル角に適した進行方向に向かって、走行する。
図示を省略するが、主制御部110(図10)と駆動装置制御部300とは、アクセル操作量とブレーキ操作量とに応じて電気モータ51L、51Rを制御する駆動制御部として機能する。本実施例では、アクセル操作量が増大した場合には、主制御部110は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを増大させるための指示を、駆動装置制御部300に供給する。駆動装置制御部300は、指示に従って、出力パワーが増大するように、電気モータ51L、51Rを制御する。アクセル操作量が減少した場合には、主制御部110は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを減少させるための指示を、駆動装置制御部300に供給する。駆動装置制御部300は、指示に従って、出力パワーが減少するように、電気モータ51L、51Rを制御する。
ブレーキ操作量がゼロよりも大きくなった場合には、主制御部110は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを減少させるための指示を、駆動装置制御部300に供給する。駆動装置制御部300は、指示に従って、出力パワーが減少するように、電気モータ51L、51Rを制御する。なお、車両10は、全ての車輪12F、12L、12Rのうちの少なくとも1つの車輪の回転速度を摩擦によって低減するブレーキ装置を有することが好ましい。そして、ユーザがブレーキペダル46を踏み込んだ場合に、ブレーキ装置が、少なくとも1つの車輪の回転速度を低減することが好ましい。
A3.制御処理:
S130(図11)の制御処理について、説明する。図12は、制御装置100のうち、リーンモータ25と操舵モータ65との制御の関連する部分のブロック図である。主制御部110は、傾斜角特定部112と、目標傾斜角決定部114と、加算点116と、を含んでいる。操舵モータ制御部500は、第1P制御部520と、第1Pゲイン制御部525と、第1D制御部530と、第1加算点590と、電力制御部500cと、を含んでいる。リーンモータ制御部400は、第2P制御部420と、第2Pゲイン制御部425と、第2D制御部430と、第2加算点490と、電力制御部400cと、を含んでいる。主制御部110の処理部112、114、116は、主制御部110(図10)のプロセッサ110pによって実現されている。リーンモータ制御部400の処理部420、425、430、490は、リーンモータ制御部400のプロセッサ400pによって実現されている。操舵モータ制御部500の処理部520、525、530、590は、操舵モータ制御部500のプロセッサ500pによって実現されている。以下、プロセッサ110p、400p、500pが、処理部112、114、116、420、425、430、490、520、525、530、590として処理を実行することを、処理部112、114、116、420、425、430、490、520、525、530、590が処理を実行する、とも表現する。
図13は、第1制御(図11:S130)の処理の例を示すフローチャートである。S200では、主制御部110は、センサ122、123、126から、車速V、ハンドル角Ai、鉛直下方向DDを示す情報を、それぞれ取得する。
S210では、傾斜角特定部112(図12)は、鉛直下方向DDを用いて、傾斜角Tを算出する。上述したように、車体90の車両上方向DVUと、鉛直方向センサ126の基準方向と、の間のセンサ方向関係は、予め決められている。傾斜角特定部112は、このセンサ方向関係を用いることによって、鉛直下方向DDの反対の方向である上方向DUと、車両上方向DVUと、の間の角度である傾斜角Tを、算出する。算出される傾斜角Tは、図5(B)のように、前方向DFを向いて車両10を見る場合の鉛直上方向DUと車両上方向DVUとの成す角度である。なお、制御装置100のうちの傾斜角特定部112として動作する部分と、鉛直方向センサ126と、の全体は、傾斜角Tを測定するように構成された傾斜角センサの例である。以下、傾斜角特定部112と鉛直方向センサ126との全体を、傾斜角センサ127とも呼ぶ。
S220では、目標傾斜角決定部114(図12)は、ハンドル角Aiと車速Vとを用いて、第1目標傾斜角T1を決定する。第1目標傾斜角T1は、傾斜角Tの目標値を示している。ハンドル角Aiと車速Vと第1目標傾斜角T1との対応関係は、主制御部110(図10)の不揮発性記憶装置110nに格納されている角度マップデータMTによって、予め、決められている。目標傾斜角決定部114は、この角度マップデータMTを参照することによって、ハンドル角Aiと車速Vとの組み合わせに対応する第1目標傾斜角T1を特定する。本実施例では、車速Vが一定である場合には、ハンドル角Aiの絶対値が大きいほど、第1目標傾斜角T1の絶対値が大きい。これにより、ハンドル角Aiの絶対値が大きいほど旋回半径Rが小さくなるので、車両10は、ハンドル角Aiに適した旋回半径Rで、旋回できる。また、ハンドル角Aiが一定である場合には、車速Vが速いほど、第1目標傾斜角T1の絶対値が小さい。これにより、車速Vが速い場合に、ハンドル角Aiの変化に起因する傾斜角Tの大きな変化が抑制されるので、車両10の走行安定性を向上できる。なお、第1目標傾斜角T1と車速Vとの関係としては、他の種々の関係が、採用されてよい。また、第1目標傾斜角T1の特定に用いられる情報は、ハンドル角Aiと車速Vとの組み合わせに代えて、ハンドル角Aiを含む任意の情報であってよい。
S230では、加算点116(図12)は、第1目標傾斜角T1から傾斜角Tを減算することによって差dTを算出する(傾斜角差dTとも呼ぶ)。
S240〜S280は、操舵モータ制御部500によって実行される。S300〜S340は、リーンモータ制御部400によって実行される。図14(A)〜図14(D)は、操舵モータ制御部500によって制御される操舵モータ65の回動トルクと、リーンモータ制御部400によって制御されるリーンモータ25の傾斜トルクとの、説明図である。図14(A)、図14(C)は、車両10の背面図を示し、図14(B)、図14(D)は、車両10の上面図を示している。
図14(A)、図14(B)は、直立する車両10が前進している状態で、ハンドル41aが右に回動された場合を示している。この状態で、車両上方向DVUは、上方向DUとおおよそ同じであり、傾斜角Tは、おおよそゼロである。また、ハンドル41aが右に回動されているので、第1目標傾斜角T1は、車体90が右方向DR側に傾斜した状態を示している。図中の目標方向DTgは、右方向と左方向とのうち、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1に近づくように車体90を幅方向に回動させる(すなわち、車体90をロールさせる)場合の回動方向を示している。図14(A)、図14(B)の例では、目標方向DTgは、右方向である。図14(A)中の方向DT1は、第1目標傾斜角T1によって示される方向であり、車両上方向DVUの目標の方向である。方向DT1は、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1である状態の車両上方向DVUを示している。図示するように、方向DT1は、上方向DUから右方向DR側に傾斜している。
この状態で、リーンモータ制御部400は、リーンモータ25(図14(A))に、上横リンク部材31Uに対して中縦リンク部材21を時計回り方向に回動させる傾斜トルクTqLを、出力させる(詳細は、後述)。この傾斜トルクTqLは、車体90を右方向DR側へ傾斜させる。この傾斜トルクTqLの方向(ここでは、右方向DR)は、目標方向DTgと同じである。
操舵モータ制御部500は、操舵モータ65に、前フォーク17(ひいては、前輪12F)を左方向DLに回動させる回動トルクTqT(図14(B))を、出力させる。回動トルクTqTの方向(ここでは、左方向DL)は、目標方向DTgとは反対の方向である(逆トルクTqTとも呼ぶ)。このように、操舵モータ制御部500は、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1と異なる場合に、目標方向DTg(すなわち、傾斜角Tを第1目標傾斜角T1に近づけるための車体90のロール方向)とは反対の方向のトルクを、操舵モータ65に出力させる。このような車輪の制御は、カウンタステアリングとも呼ばれる。本実施例では、傾斜角Tを第1目標傾斜角T1へ近づけるために、カウンタステアリングが利用される。
図14(B)に示すように、逆トルクTqTによって、前輪12Fは、左方向DL側に回動する。これにより、前輪12Fの進行方向D12が左方向DL側を向くので、車両10は、左方向DL側に向かって旋回する。この結果、車体90には遠心力F3が作用する。この遠心力F3は、右方向DR、すなわち、目標方向DTgを、向いている。従って、車体90は、遠心力F3を利用して、目標方向DTgへ回動できる。
また、前輪12Fの進行方向D12が左方向DL側を向くので、図14(A)、図14(B)の矢印ALで示すように、車両10のうちの前輪12Fを含む下方向DD側の部分(特に、重心90cよりも下方向DD側の部分)は、左方向DL側へ移動する。また、重心90cの移動は、車両10の一部分の移動と比べて、容易ではない。従って、図14(A)、図14(B)の矢印AHで示すように、車両10のうちの重心90cよりも上方向DU側の部分は、右方向DR側へ移動し易い。このように、車体90は、重心90cを中心とする回動を利用して、目標方向DTgへ回動できる。
また、車体90は、前輪12Fの歳差運動を利用して、目標方向DTgへ回動できる。図15は、図9と同様の前輪12Fの斜視図である。図中には、ハンドル41aも示されている。ハンドル41aが右に回動された場合、左向きの回動トルクTqTが、前輪12Fに印加される。このような逆トルクTqTに起因して、回転する前輪12Fには、右方向DR側へ傾斜するように前軸Ax3を中心に回動するトルクTqzが、作用する。このようなトルクTqzを受ける前輪12Fは、車体90を、右方向、すなわち、目標方向DTgへ、傾斜させる。
以上のように、逆トルクTqTは、遠心力F3(図14(B))と、重心90cを中心とする車体90の運動(図14(A))と、前輪12Fの歳差運動(図15)と、を利用して、車体90を目標方向DTgへ回動させ得る。これにより、傾斜角Tは、容易に、第1目標傾斜角T1に近づくことができる。また、車体90が遠心力F3の方向に回動する場合、車両10の搭乗者によって知覚される幅方向の加速度が抑制される。これにより、車両10の乗り心地が向上する。ハンドル41aが左に回動された場合も、同様である。なお、遠心力F3は、車速Vが速いほど、大きい。重心90cを中心とする車体90の回動は、車速Vが速いほど、大きい。前輪12Fの角運動量は、車速Vが速いほど、大きい。従って、逆トルクTqTによる車体90を目標方向DTgに回動させる力は、車速Vが大きいほど、大きい。
図14(C)、図14(D)は、図14(A)、図14(B)の後、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1になった状態を示している(傾斜角差dTは、おおよそゼロ)。この場合、リーンモータ25の傾斜トルクTqLは、おおよそゼロであり、また、操舵モータ65の回動トルクTqTも、おおよそゼロである。回動トルクTqTが小さい場合、前輪12Fは、ハンドル41aの方向とは独立に、左右に回動し得る。上述したように、車両10が傾斜角Tで走行する場合、前輪12Fの向きは、式6で表される旋回半径Rと、式7と、から特定される車輪角AFの向きに、落ち着き得る。図14(D)の例では、前輪12Fの進行方向D12は、ハンドル41aの方向と同じ右方向DR側を向いている。
本実施例では、傾斜角差dTの大きさが大きい場合には、大きな逆トルクTqTによって、車体90の傾斜角Tの変化が促進される。傾斜角差dTの大きさが小さい場合には、小さな逆トルクTqTによって、前輪12Fの自然な回動が許容される。以下、図13のS240〜S280とS300〜S340とについて、説明する。
S240では、第1Pゲイン制御部525(図12)は、車速Vと傾斜角差dTとを用いて、第1PゲインKp1を決定する。車速Vと傾斜角差dTと第1PゲインKp1との対応関係は、操舵モータ制御部500(図10)の不揮発性記憶装置500nに格納されている第1マップデータMp1によって、予め決められている。第1Pゲイン制御部525は、この第1マップデータMp1を参照することによって、車速Vと傾斜角差dTとの組み合わせに対応する第1PゲインKp1を特定する。
図16(A)、図16(B)は、速度Vと傾斜角差dTと第1PゲインKp1との関係の例を示すグラフである。図16(A)のグラフでは、横軸は、傾斜角差dTの絶対値(すなわち、傾斜角差dTの大きさ)を示し、縦軸は、第1PゲインKp1を示している。図16(A)には、3つのグラフG1〜G3が示されている。これらのグラフG1〜G3は、互いに異なる3つの車速Vの絶対値に対応する3つのグラフの例を示している。図示するように、車速Vが一定値である場合、傾斜角差dTの絶対値が大きいほど、第1PゲインKp1は大きい。第1PゲインKp1は、傾斜角差dTの変化に対して滑らかに変化している。また、車速Vの絶対値が小さいほど、第1PゲインKp1は大きい。図中には、ゼロよりも大きい予め決められた閾値Thaが、示されている。傾斜角差dTの絶対値が閾値Thaよりも大きい場合には、傾斜角差dTの絶対値が閾値Thaよりも小さい場合と比べて、第1PゲインKp1は大きい。
図16(B)のグラフでは、横軸は、車速Vの絶対値を示し、縦軸は、第1PゲインKp1を示している。図16(B)には、3つのグラフG11〜G13が示されている。これらのグラフG11〜G13は、互いに異なる3つの傾斜角差dTの絶対値に対応する3つのグラフの例を示している。図示するように、傾斜角差dTが一定値である場合、車速Vの絶対値が小さいほど、第1PゲインKp1は大きい。第1PゲインKp1は、車速Vの変化に対して滑らかに変化している。図中には、ゼロよりも大きい予め決められた閾値Thdが、示されている。車速Vの絶対値が閾値Thdよりも小さい場合には、車速Vの絶対値が閾値Thdよりも大きい場合と比べて、第1PゲインKp1は大きい。
速度Vと傾斜角差dTと第1PゲインKp1との関係が図16(A)、図16(B)のように構成されている理由については、後述する。
S250(図13)では、第1P制御部520(図12)は、傾斜角差dTと、第1Pゲイン制御部525によって決定された第1PゲインKp1と、を用いて、第1比例項Vp1を決定する。第1比例項Vp1の決定方法は、PID制御の比例項を決定するための公知の方法であってよい。例えば、傾斜角差dTに第1PゲインKp1を乗じて得られる値が、第1比例項Vp1として出力される。
S260では、第1D制御部530は、傾斜角差dTと第1DゲインKd1とを用いて、第1微分項Vd1を決定する。本実施例では、第1DゲインKd1は、予め決められている。第1微分項Vd1の決定方法は、PID制御の微分項を決定するための公知の方法であってよい。例えば、傾斜角差dTの微分値に第1DゲインKd1を乗じて得られる値が、第1微分項Vd1として出力される。傾斜角差dTの微分値の算出方法は、種々の方法であってよい。例えば、現行の傾斜角差dTから、現在から特定の時間差だけ過去の時点での傾斜角差dTを減算して得られる値を、微分値として採用してよい。傾斜角差dTの微分値を特定するための時間差は、予め決められていてよく、これに代えて、他のパラメータ(例えば、傾斜角差dT)に基づいて決定されてよい。後述する他のパラメータの微分値の算出方法も、同様に、種々の方法であってよい。なお、第1DゲインKd1は、他のパラメータ(例えば、傾斜角差dT)に応じて変化する可変値であってもよい。
なお、第1比例項Vp1を決定するためのS240、S250と、第1微分項Vd1を決定するためのS260とは、並列に実行される。
S270では、第1加算点590(図12)は、処理部520、530から項Vp1、Vd1を表す情報を、それぞれ取得する。そして、第1加算点590は、これらの項Vp1、Vd1の合計である回動駆動制御値Vc1を算出し、回動駆動制御値Vc1を示す情報を、電力制御部500cに出力する。S280では、電力制御部500cは、制御値Vc1に従って、操舵モータ65に供給される電力を制御する。
回動駆動制御値Vc1は、操舵モータ65の回動トルクの目標値を示している。以下、回動駆動制御値Vc1によって示されるトルクを、目標回動トルクとも呼ぶ。回動駆動制御値Vc1によって示される目標回動トルクの方向は、図14(B)で説明したように、目標方向DTgとは反対の方向である(すなわち、逆トルク)。回動駆動制御値Vc1は、例えば、操舵モータ65に供給すべき電流の向きと大きさとを示している。電力の大きさ(すなわち、操舵モータ65のトルクの大きさ)は、制御値Vc1の絶対値が大きいほど、大きい。S270では、操舵モータ制御部500(具体的には、第1加算点590)は、操舵モータ65の目標回動トルクを決定しているといえる。S280では、操舵モータ制御部500(具体的には、電力制御部500c)は、操舵モータ65のトルクを目標回動トルクとなるように制御しているといえる。また、各項Vp1、Vd1は、いずれも、回動駆動制御値Vc1の一部を形成している。従って、各項Vp1、Vd1も、操舵モータ65の回動トルクを示す制御値の一種である、といえる。
通常は、ユーザは、ハンドル41aを緩やかに操作する。第1PゲインKp1と第1DゲインKd1とは、ハンドル41aが緩やかに操作される場合に、第1比例項Vp1の大きさが第1微分項Vd1の大きさよりも大きくなるように、決定されている。すなわち、操舵モータ65の目標回動トルクの主な成分は、第1比例項Vp1によって示され得る。また、第1比例項Vp1は、逆トルクを示す制御値の例である。図16(C)は、目標回動トルクTqTtの例を示すグラフである。横軸は、傾斜角差dTの絶対値を示し、縦軸は、目標回動トルクTqTtの絶対値を示している。図16(C)には、3つのグラフG21〜G23が示されている。これらのグラフG21〜G23は、互いに異なる3つの車速Vの絶対値に対応する3つのグラフの例を示している。上述したように、第1比例項Vp1は、傾斜角差dTに第1PゲインKp1を乗じて得られる制御値である。従って、図示するように、車速Vが一定値である場合、傾斜角差dTの絶対値が大きいほど、第1比例項Vp1によって示されるトルクの大きさ、すなわち、目標回動トルクTqTtの絶対値は大きい。また、車速Vの絶対値が小さいほど、目標回動トルクTqTtの絶対値は大きい。図中の閾値Thaは、図16(A)の閾値Thaと同じである。傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも大きい場合の目標回動トルクTqTtの大きさは、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも小さい場合の目標回動トルクTqTtの大きさよりも大きい。
図14(A)、図14(B)のように傾斜角差dTの大きさが大きい場合には、目標回動トルクTqTtに基づいて、回動トルクTqTの大きさ(すなわち、逆トルクTqTの大きさ)が、大きくなる。大きな回動トルクTqT(すなわち、大きな逆トルクTqT)は、前輪12Fを、目標方向DTgとは反対の方向に回動させることができる。これにより、車体90は、容易に、目標方向DTgに回動できる。そして、傾斜角Tは、容易に、第1目標傾斜角T1に近づくことができる。
また、図14(C)、図14(D)のように傾斜角Tが第1目標傾斜角T1に近づき、そして、傾斜角差dTの大きさが小さくなった場合には、第1比例項Vp1の大きさが小さくなる。従って、目標回動トルクTqTtの大きさが小さくなる(図16(C))。この結果、車体90の傾斜角Tの意図しない変化を抑制できる。
また、第1PゲインKp1は、傾斜角差dTの大きさに対する目標回動トルクの大きさの割合である逆回動トルク割合と、おおよそ同じである。図16(A)に示すように、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも大きい場合の第1PゲインKp1は、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも小さい場合の第1PゲインKp1よりも大きい(特に、車速Vが一定である場合)。すなわち、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも大きい場合の逆回動トルク割合が、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも小さい場合の逆回動トルク割合よりも大きくなるように、第1比例項Vp1(ひいては、目標回動トルク)は決定される。従って、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも大きい場合の目標回動トルクの大きさは、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも小さい場合の目標回動トルクの大きさよりも大きい。この結果、傾斜角差dTの大きさが大きい場合には、車体90の傾斜角Tを容易に変化させることができる。傾斜角差dTの大きさが小さい場合には、車体90の傾斜角Tの意図しない変化を抑制できる。
また、図9等で説明したように、本実施例では、前輪支持装置41は、回動トルクTqTが小さい場合には、前輪12Fが傾斜角Tの変化に追随して車体90に対して左右に回動することを許容するように、構成されている。従って、図14(D)に示すように、傾斜角差dTの大きさが小さい場合には、前輪12Fの進行方向D12は、傾斜角Tに対応する方向を向く。この結果、車両10は、ハンドル角Aiに対応する方向に向かって、安定して旋回できる。
また、図16(B)に示すように、車両10の速度Vの大きさが閾値Thdよりも小さい場合の第1PゲインKp1は、速度Vの大きさが閾値Thdよりも大きい場合の第1PゲインKp1よりも大きい。上述したように、図14(A)、図14(B)、図15で説明した逆トルクTqTによる車体90を目標方向DTgに回動させる力は、車速Vが小さいほど、小さい。従って、車速Vの大きさが小さい場合に第1PゲインKp1を大きくすることによって、車速Vの大きさが小さい場合であっても、適切に、車体90を目標方向DTgに向かって回動させることができる。そして、車体90の傾斜角Tの変化の遅れを抑制できる。
S300では、第2Pゲイン制御部425(図12)は、傾斜角差dTを用いて、第2PゲインKp2を決定する。傾斜角差dTと第2PゲインKp2との対応関係は、リーンモータ制御部400(図10)の不揮発性記憶装置400nに格納されている第2マップデータMp2によって、予め決められている。第2Pゲイン制御部425は、この第2マップデータMp2を参照することによって、傾斜角差dTに対応する第2PゲインKp2を特定する。
図17は、傾斜角差dTと第2PゲインKp2との関係の例を示すグラフである。横軸は、傾斜角差dTの絶対値を示し、縦軸は、第2PゲインKp2を示している。図中には、傾斜角差dTの絶対値の3つの閾値Thc、Tha、Thbが示されている(ゼロ<Thc<Tha<Thb)。閾値Thaは、図16(A)の閾値Thaと同じである。閾値Thb、Thcは、予め決められている。図示するように、傾斜角差dTの絶対値がゼロから増大する場合に、第2PゲインKp2は、増大し、減少し、また、増大する。閾値Thaより大きく、閾値Thb未満の範囲である第1範囲RG1内と比べて、閾値Thcより大きく、閾値Tha未満の範囲である第2範囲RG2内では、第2PゲインKp2は、大きい。また、閾値Thc以下の範囲である小範囲RGS内では、第2範囲RG2内と比べて、第2PゲインKp2は、小さい。閾値Thb以上の範囲である大範囲RGL内では、第1範囲RG1内と比べて、第2PゲインKp2は、大きい。このように第2PゲインKp2が構成されている理由については、後述する。なお、第2PゲインKp2は、傾斜角差dTの変化に対して滑らかに変化している。
S310(図13)では、第2P制御部420(図12)は、傾斜角差dTと、第2Pゲイン制御部425によって決定された第2PゲインKp2と、を用いて、第2比例項Vp2を決定する。第2比例項Vp2の決定方法は、PID制御の比例項を決定するための公知の方法であってよい。例えば、傾斜角差dTに第2PゲインKp2を乗じて得られる値が、第2比例項Vp2として出力される。
S320では、第2D制御部430は、傾斜角差dTと第2DゲインKd2とを用いて、第2微分項Vd2を決定する。本実施例では、第2DゲインKd2は、予め決められている。第2微分項Vd2の決定方法は、PID制御の微分項を決定するための公知の方法であってよい。例えば、傾斜角差dTの微分値に第2DゲインKd2を乗じて得られる値が、第2微分項Vd2として出力される。傾斜角差dTの微分値を特定するための時間差は、予め決められていてよく、これに代えて、他のパラメータ(例えば、傾斜角差dT)に基づいて決定されてよい。なお、第2DゲインKd2は、他のパラメータ(例えば、傾斜角差dT)に応じて変化する可変値であってもよい。
なお、第2比例項Vp2を決定するためのS300、S310と、第2微分項Vd2を決定するためのS320とは、並列に実行される。
S330では、第2加算点490(図12)は、処理部420、430から項Vp2、Vd2を表す情報を、それぞれ取得する。そして、第2加算点490は、これらの項Vp2、Vd2の合計である傾斜駆動制御値Vc2を算出し、傾斜駆動制御値Vc2を示す情報を、電力制御部400cに出力する。S340では、電力制御部400cは、制御値Vc2に従って、リーンモータ25に供給される電力を制御する。
傾斜駆動制御値Vc2は、リーンモータ25の傾斜トルクの目標値を示している。以下、傾斜駆動制御値Vc2によって示されるトルクを、目標傾斜トルクとも呼ぶ。傾斜駆動制御値Vc2によって示される傾斜トルクの方向は、図14(A)で説明したように、目標方向DTg、すなわち、傾斜角Tを第1目標傾斜角T1へ近づけるための車体90の回動方向と、同じである。傾斜駆動制御値Vc2は、例えば、リーンモータ25に供給すべき電流の向きと大きさとを示している。電力の大きさ(すなわち、リーンモータ25のトルクの大きさ)は、制御値Vc2の絶対値が大きいほど、大きい。S330では、リーンモータ制御部400(具体的には、第2加算点490)は、リーンモータ25の目標傾斜トルクを決定しているといえる。S340では、リーンモータ制御部400(具体的には、電力制御部400c)は、リーンモータ25のトルクを目標傾斜トルクとなるように制御しているといえる。また、各項Vp2、Vd2は、いずれも、傾斜駆動制御値Vc2の一部を形成している。従って、各項Vp2、Vd2も、リーンモータ25の傾斜トルクを示す制御値の一種である、といえる。
以上のように、目標回動トルクと目標傾斜トルクとが、第1目標傾斜角T1を用いて決定される(図13:S240〜S270、S300〜S330)。従って、車両10が第1目標傾斜角T1で走行するための回動トルクと傾斜トルクとのバランスを、適切に調整できる。この結果、車両10の走行安定性を、向上できる。
また、通常は、ユーザは、ハンドル41aを緩やかに操作する。第2PゲインKp2と第2DゲインKd2とは、ハンドル41aが緩やかに操作される場合に、第2比例項Vp2の大きさが第2微分項Vd2の大きさよりも大きくなるように、決定されている。すなわち、リーンモータ25の目標傾斜トルクの主な成分は、第2比例項Vp2によって示され得る。第2比例項Vp2は、車体90を目標方向DTgへ回動させるトルクを示す制御値の例である。そして、第2PゲインKp2は、傾斜角差dTの大きさに対する目標傾斜トルクの大きさの割合である傾斜トルク割合と、おおよそ同じである。図17に示すように、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも大きい第1範囲RG1内である場合の第2PゲインKp2は、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも小さい第2範囲RG2内である場合の第2PゲインKp2よりも小さい。すなわち、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも大きい第1範囲RG1内である場合の傾斜トルク割合が、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも小さい第2範囲RG2内である場合の傾斜トルク割合よりも小さくなるように、第2比例項Vp2(ひいては、目標傾斜トルク)は決定される。また、図16(A)に示すように、目標回動トルクのための第1PゲインKp1は、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも大きい場合に、大きく、傾斜角差dTの大きさが閾値Thaよりも小さい場合に、小さい。このように、傾斜角差dTの大きさが大きい第1範囲RG1では、傾斜角差dTの大きさが小さい第2範囲RG2と比べて、リーンモータ25による傾斜トルクが過度に大きくなることが、抑制される。また、操舵モータ65の逆トルクである回動トルクを利用する車体90の幅方向の回動が促進されるので、車体の傾斜角を適切に変化させることができる。そして、搭乗者によって知覚される幅方向の加速度が抑制される。
また、図17に示すように、傾斜角差dTの大きさが閾値Thbよりも大きい場合の第2PゲインKp2は、第1範囲RG1内の第2PゲインKp2よりも、大きい。従って、傾斜角差dTの大きさが閾値Thbよりも大きい場合には、操舵モータ65の回動トルクに加えて、リーンモータ25の傾斜トルクを用いることによって、車体90の傾斜角Tを容易に変化させることができる。また、傾斜角差dTの大きさが大きい場合、搭乗者は、傾斜角Tの速やかな変化を望んでいる。このような場合に、ハンドル角の変化に対する傾斜角Tの遅れが、抑制される。
また、図17に示すように、傾斜角差dTの大きさが閾値Thcよりも小さい場合の第2PゲインKp2は、傾斜角差dTの大きさが第2範囲RG2内である場合の第2PゲインKp2よりも小さい。従って、傾斜角差dTの大きさが閾値Thcよりも小さい場合に、リーンモータ25による傾斜トルクが過度に大きくなることが、抑制される。また、操舵モータ65の逆トルクである回動トルクを利用する車体90の幅方向の回動が促進されるので、車体の傾斜角を適切に変化させることができる。そして、搭乗者によって知覚される幅方向の加速度が抑制される。
なお、操舵モータ65を制御するためのS240〜S280と、リーンモータ25を制御するためのS300〜S340とは、並列に実行される。以上により、図13の処理、すなわち、図11のS130の処理が終了する。
B.変形例:
(1)回動トルクの制御処理は、図12、図13、図16(A)〜図16(C)で説明した処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、図16(B)のグラフにおいて、第1PゲインKp1は、車速Vの大きさの変化に対して、階段状に変化してよい。また、第1PゲインKp1は、車速Vの変化に対して一定値に維持されてよい。この場合、第1Pゲイン制御部525(図12)は、車速Vを用いずに、傾斜角差dTを用いて、第1PゲインKp1を決定してよい。図16(A)のグラフにおいて、第1PゲインKp1は、傾斜角差dTの大きさの変化に対して、階段状に変化してよい。また、第1PゲインKp1は、傾斜角差dTの変化に対して一定値に維持されてよい。この場合、第1Pゲイン制御部525は、傾斜角差dTを用いずに、車速Vを用いて、第1PゲインKp1を決定してよい。また、第1PゲインKp1は、可変値ではなく、固定値であってよい。この場合も、傾斜角差dTの大きさが大きい場合には、傾斜角差dTの大きさが小さい場合と比べて、第1比例項Vp1によって示されるトルクの大きさは大きくなる。この結果、傾斜角差dTの大きさが大きい場合には、傾斜角差dTの大きさが小さい場合と比べて、目標回動トルクの大きさは大きくなる。
回動トルクの制御処理としては、傾斜角と目標傾斜角とを用いる種々のフィードバック制御を採用してよい。例えば、D制御(図13:S260)は、省略されてよい。ただし、D制御を利用すれば、回動トルクの安定性を向上できる。また、制御装置100は、1以上の種々の制御値を用いて、回動駆動制御値Vc1(ひいては、目標回動トルク)を決定してよい。例えば、制御装置100は、前輪12Fを目標方向DTgと同じ方向に回動させるトルクを示す順方向制御値を目標傾斜角を用いて決定し、順方向制御値を用いて、回動駆動制御値Vc1を決定してよい。ここで、制御装置100は、1以上の制御値の合計値を、回動駆動制御値Vc1として算出してよい。目標回動トルクの決定に用いられる1以上の制御値は、逆トルクを示す制御値(例えば、第1比例項Vp1)と、順方向制御値と、の少なくとも一方を含んでよい。また、目標回動トルクの決定に用いられる1以上の制御値は、逆トルクを示す制御値を含むことが好ましい。
(2)傾斜トルクの制御処理は、図12、図13、図17で説明した処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、図17のグラフにおいて、第2PゲインKp2は、傾斜角差dTの大きさの変化に対して、階段状に変化してよい。また、大範囲RGL内において、第2PゲインKp2は、第1範囲RG1内の第2PゲインKp2の最大値以下であってよい。小範囲RGS内において、第2PゲインKp2は、第2範囲RG2内の第2PゲインKp2の最小値以上であってよい。閾値Thcは、ゼロであってよい。すなわち、小範囲RGSは、省略されてよい。また、第2PゲインKp2は、傾斜角差dTの変化に対して一定また、駆動輪を駆動する駆動装置は、電気モータに代えて、車輪を回転させる任意の装置であってよい(例えば、内燃機関)。また、車両の最大定員数は、1人に代えて、2人以上であってもよい。値に維持されてよい。この場合、第2Pゲイン制御部425は、傾斜角差dTを用いずに、第2PゲインKp2を決定してよい。また、第2PゲインKp2は、可変値ではなく、固定値であってよい。傾斜トルクの制御処理としては、傾斜角と目標傾斜角とを用いる種々のフィードバック制御を採用してよい。例えば、D制御(図13:S320)は、省略されてよい。ただし、D制御を利用すれば、傾斜トルクの安定性を向上できる。制御装置100は、1以上の制御値を用いて、傾斜駆動制御値Vc2(ひいては、目標傾斜トルク)を決定してよい。例えば、制御装置100は、1以上の制御値の合計値を、傾斜駆動制御値Vc2として算出してよい。1以上の制御値は、車体90を目標方向DTgへ回動させるトルクを示す制御値(例えば、第2比例項Vp2)を含んでよい。
また、図14(A)、図14(B)で説明したように、傾斜トルクTqLは、直接的に、車体90を幅方向に回動させる。一方、回動トルクTqTは、前輪12Fの方向D12の動きを介して、間接的に、車体90を幅方向に回動させる。この結果、回動トルクによる車体90の幅方向の回動は、傾斜トルクによる車体90の幅方向の回動よりも、遅れて生じ得る。そこで、制御装置100は、傾斜トルクの制御を、回動トルクの制御よりも遅延させてよい。これにより、傾斜トルクのみに起因する車体90の幅方向の回動が抑制されるので、車両10の搭乗者によって知覚される幅方向の加速度が抑制される。なお、遅延時間は、1秒未満であることが好ましい。
(3)制御装置100の構成は、回動トルクを出力する装置(例えば、操舵モータ65)と、傾斜トルクを出力する装置(例えば、リーンモータ25)と、を制御する処理を実行するように構成された種々の構成であってよい。例えば、制御装置100は、1つのコンピュータを用いて構成されてもよい。制御装置100の少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアによって、構成されてよい。例えば、図12のリーンモータ制御部400と操舵モータ制御部500は、ASICによって構成されてよい。制御装置100は、種々の電気回路であってよく、例えば、コンピュータを含む電気回路であってよく、コンピュータを含まない電気回路であってもよい。また、マップデータMT、MAF、Mp1、Mp2によって対応付けられる入力値と出力値とは、他の要素によって対応付けられてよい。例えば、数学的関数、アナログ回路などの要素が、入力値と出力値とを対応つけてよい。
また、回動トルクと傾斜トルクとのそれぞれの制御に利用される傾斜角としては、鉛直上方向DUを基準とする傾斜角T(図5(B))に代えて、車体90の幅方向の傾斜の度合いを示す種々の角度を採用してよい。例えば、制御角Tcが、傾斜角として利用されてよい。この場合、車両10には、制御角Tcを測定するように構成されたセンサが設けられることが好ましい。このセンサは、傾斜角センサの例である。
(4)前輪12F(図2)は、車両10の前進方向DFに対して左右に回動可能な回動輪の例である。前輪支持装置41は、回動輪を支持する回動輪支持部の例である。回動輪支持部の構成は、前輪支持装置41の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、回動輪を回転可能に支持する支持部材は、前フォーク17に代えて、片持ちの部材であってよい。また、支持部材を車体90に対して左右に回動可能に支持する回動装置は、軸受68に代えて、他の種々の装置であってよい。例えば、回動装置は、車体と支持部材とを連結するリンク機構であってよい。
一般的には、回動輪支持部は、K個(Kは1以上の整数)の支持部材を備えてよい。そして、各支持部材は、1以上の回動輪を支持してよい。回動輪支持部は、K個の回動装置を備えてよい。K個の回動装置は、K個の支持部材を、それぞれ回動可能に支持してよい。回動輪支持部は、K個の回動駆動装置を備えてよい。K個の回動駆動装置とK個の支持部材とは、一対一に対応付けられる。そして、各回動駆動装置は、対応する1個の支持部材に回動トルクを印加するように、構成されてよい。これに代えて、回動輪支持部は、1個の回動駆動装置を備えてよい。1個の回動駆動装置は、K個の支持部材のそれぞれに回動トルクを印加するように構成されてよい。
いずれの場合も、回動輪支持部は、1以上の回動輪が、操作入力部(例えば、ハンドル41a)に入力される操作量に拘わらず、車体の傾斜の変化に追随して車体に対して左右に回動することを許容するように構成されていることが好ましい。例えば、車体に固定された回動装置が、支持部材を回動可能に支持することが好ましい。この場合、車体が傾斜する場合に、支持部材も車体と共に傾斜する。従って、図9等で説明したように、回動輪の方向(すなわち、車輪角AF(図2))は、車体の傾斜に追随して変化できる。
(5)操作入力部は、ハンドル41a(図1)のように左と右とに回動可能な装置に代えて、旋回方向と旋回の程度とを示す操作量を入力するために操作されるように構成された他の種々の装置であってよい。例えば、操作入力部は、予め決められた基準方向(例えば、直立方向)から左と右とに傾斜可能なレバーであってよい。
(6)傾斜装置の構成は、図4の傾斜装置89の構成に代えて、車体90を幅方向に傾斜させるように構成された他の任意の構成であってよい。例えば、リンク機構30が台に置換されてよい。台には、モータ51L、51Rが固定される。そして、台と第1支持部82とは、軸受によって、回動可能に連結される。リーンモータ25は、台に対して、第1支持部82を、右方向DR側と左方向DL側とのそれぞれに回動させる。これにより、車体90は、右方向DR側と左方向DL側とのそれぞれに、傾斜できる。
一般的には、傾斜装置は、「車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪の少なくとも一方に直接的または間接的に接続された第1部材」と、「車体に直接的または間接的に接続された第2部材」と、駆動装置と、を含んでよい。駆動装置は、第1部材と第2部材との相対的な位置を変化させる力(例えば、第1部材に対する第2部材の向きを変化させるトルク)を第1部材と第2部材とに印加する装置である。傾斜装置は、さらに、「第1部材を第2部材に可動に接続する接続装置」を含んでよい。接続装置は、例えば、第1部材を第2部材にスライド可能に接続する液圧シリンダであってよい。また、接続装置は、第1部材と第2部材とを回動可能に連結する軸受であってよい。軸受は、転がり軸受であってよく、これに代えて、滑り軸受であってもよい。駆動装置は、リーンモータ25のような電気モータであってよい。また、傾斜装置が、液圧シリンダを含む場合、駆動装置は、ポンプであってよい。
(7)操作入力部と回動輪支持部の支持部材とに接続されている接続部の構成は、図1の接続部50の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。接続部50の第3部分53は、粘性ダンパに代えて、弾性変形可能な弾性体であってよい(例えば、コイルバネ、トーションバネ、ゴム等)。第3部分53は、第1部分51と第2部分52とに接続され、第1部分51から第2部分52へトルクを伝達し、そして、第1部分51と第2部分52との間の相対位置の変化を許容する可動部分を含む、種々の装置であってよい。このような第3部分53は、第1部分51が動いていない状態で第2部分52が動くことを許容する、すなわち、ハンドル角Aiが変化していない状態で車輪角AFが変化することを許容する。この結果、前輪12Fの車輪角AFは、車体90の傾斜に追随して容易に変化できる。一般的には、接続部は、操作入力部と支持部材とに機械的に接続され、操作入力部の操作による操作入力部の機械的な動きに応じて操作入力部から支持部材へトルクを伝達することが好ましい。そして、接続部は、操作入力部に入力される操作量に拘わらず車体の傾斜の変化に追随して1以上の回動輪の方向が変化することを許容してよい。なお、このような接続部が、省略されてもよい。
(8)複数の車輪の総数と配置としては、種々の構成を採用可能である。例えば、前輪の総数が1であり、後輪の総数が1であってもよい。前輪の総数が2であり、後輪の総数が1であってもよい。前輪の総数が2であり、後輪の総数が2であってもよい。また、幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪が、前輪であってもよく、また、回動輪であってもよい。また、後輪が回動輪であってもよい。また、駆動輪が前輪であってもよい。
一般的には、車両は、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含むN個(Nは2以上の整数)の車輪を備えている。そして、N個の車輪は、左右に回動可能な1以上の回動輪を含んでいる。車輪の総数Nが2である場合、傾斜装置89のような傾斜装置は、省略される。ここで、車両は、車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪と、1個以上の他の車輪と、を含むN個の車輪を備えてよい。この場合、車輪の総数Nは、3以上である。一対の車輪は、前輪であってよく、これに代えて、後輪であってよい。ここで、一対の車輪と他の車輪との少なくとも一方が、車両の前進方向に対して左右に回動可能な1以上の回動輪として構成されていることが好ましい。すなわち、一対の車輪のみが回動輪であってよく、他の車輪のみが回動輪であってよく、一対の車輪と他の車輪とを含む3以上の車輪が回動輪であってよい。ここで、1以上の回動輪に含まれる他の車輪の総数は、任意の数であってよい。
(9)傾斜駆動装置は、傾斜トルクを車体に作用させるように構成された任意の装置であってよい。例えば、傾斜駆動装置は、車体に対して幅方向にスライド可能に接続された錘と、車体に対する錘の位置を制御する電気モータと、を備えてもよい。錘が車体の右側に移動すると、車体は右方向側に傾斜でき、錘が車体の左側に移動すると、車体は左方向側に傾斜できる。
(10)車両の制御方法は、図11等で説明した方法に代えて、他の種々の方法であってよい。例えば、S170では、第1目標傾斜角T1に代えて、第1目標傾斜角T1の絶対値よりも小さい絶対値を有する第2目標傾斜角T2が、利用されてよい。
(11)上記実施例では、制御装置100は、目標回動トルクを逆トルクに決定する制御モードで操舵モータ65を制御している(逆トルクモードとも呼ぶ)。制御装置100は、操舵モータ65を制御する制御モードとして、逆トルクモードに加えて、他の制御モードを有してよい。例えば、制御装置100は、目標回動トルクを、前輪12Fを目標方向DTgに回動させるトルクに決定する制御モードを有してよい(順トルクモードとも呼ぶ)。制御装置100は、操舵モータ65の制御モードを、車両10の走行状態に応じて、変更してよい。
図1に示す実施例では、前輪12Fは、正のトレールLtを有する。従って、回動軸Ax1と地面GLとの交点P2は、前輪12Fの地面GLとの接触中心P1よりも、前方向DF側に位置している。ここで、図14(A)の例のように傾斜トルクによって車体90が右方向DRに傾斜し始めると仮定する。この場合、車体90は、重心90cを中心に回転しようとする。従って、車体90の下部(特に、重心90cよりも下方向DD側の部分)は、左方向DLへ移動し得る。車体90の下部が左方向DLへ移動する場合、交点P2(図1)も、左方向DLへ移動する。この結果、前輪12Fの方向D12(図2)は、左方向DLへ回動する。このように、傾斜角Tが目標方向DTgに向かって変化する場合、前輪12Fには、目標方向DTgとは反対の方向に回動させるトルクが作用し得る。このようなトルクが過度に大きい場合、前輪12Fは、目標方向DTgとは反対の方向に、過度に回動し得る。このような場合に、制御装置100は、順トルクモードで操舵モータ65を制御してよい。車速Vが遅い場合には、前輪12Fの角運動量が小さいので、車体90の目標方向DTgへの回動に起因して、前輪12Fは、目標方向DTgとは反対の方向に回動し易い。そこで、制御装置100は、車速Vが閾値よりも遅い場合に、順トルクモードで操舵モータ65を制御し、車速Vが閾値よりも速い場合に、逆トルクモードで操舵モータ65を制御してよい。順トルクモードでの目標回動トルクの決定方法は、種々の方法であってよい。例えば、傾斜角Tと目標傾斜角との差を用いるフィードバック制御によって、目標回動トルクが決定されてよい。
また、制御装置100は、逆トルクモードを有さずに、順トルクモードを有してもよい。一般的には、制御装置100は、操舵モータ65(一般的には、回動駆動装置)の制御モードとして、1以上の制御モードを有してよい。そして、制御装置100は、車両10の走行状態に関連するパラメータを用いて、制御モードを変更してよい。いずれの制御モードにおいても、制御装置100は、目標傾斜角を用いて、目標傾斜トルクと目標回動トルクとを決定することが好ましい。ここで、制御装置100は、逆トルクモードを含む1以上の制御モードを有することが、好ましい。そして、制御装置100は、ハンドル角Ai(より一般的には、操作入力部に入力された操作量)が変化を開始した時に前輪12Fの方向D12が一時的に目標方向DTgとは反対の方向に向かって変化するように、目標回動トルク(例えば、回動駆動制御値Vc1)を決定することが好ましい。
(12)制御装置100(例えば、主制御部110)は、車速Vを用いずにハンドル角Aiを用いて第1目標傾斜角T1を決定してよい。一般的には、制御装置100は、ハンドル角Ai(より一般的には、操作入力部に入力された操作量)を含む1以上のパラメータを用いて、目標傾斜角を決定してよい。操作量以外のパラメータとしては、車速Vに限らず、他の種々のパラ−メータを採用可能である。
例えば、制御装置100は、ハンドル角Aiに加えて、車両10のヨーレートを用いて、第1目標傾斜角T1を決定してよい。車両10のヨーレートは、ヨー角の変化する速さであり、車両10の重心を通り鉛直上方向DUに平行な軸を中心とする回転の角速度である。現行のヨーレートは、ジャイロセンサ126gからの情報を用いて特定され得る。車両10は、風などの外部の要因から力を受ける。車両10の進行方向は、このような力から影響を受け得る。例えば、ハンドル角Aiがゼロであり、車両10が水平な道を直進していると仮定する。ここで、風が右から左に向かって吹く場合、車体90には、左方向DLの力が作用する。この結果、車体90は、左方向DL側へ傾斜し得、そして、車両10は、左方向DLに、旋回し得る。このような意図しない旋回を抑制するために、制御装置100(例えば、主制御部110)は、ハンドル角Aiと現行のヨーレートとを用いて、目標傾斜角を決定してよい。制御装置100は、ハンドル角Aiを用いて、目標ヨーレートを特定する。ハンドル角Aiと目標ヨーレートとの対応関係は、予め決定される。例えば、ゼロのハンドル角Aiには、ゼロの目標ヨーレートが、対応付けられる。右旋回を示すハンドル角Aiには、右旋回を示す目標ヨーレートが、対応付けられる。制御装置100は、この対応関係を参照して、ハンドル角Aiに対応する目標ヨーレートを特定する。そして、主制御部110は、目標ヨーレートと現行のヨーレートとの差を用いて、目標傾斜角を決定する。例えば、制御装置100は、目標ヨーレートと現行のヨーレートとの差であるヨーレート差に対応する修正値を、現行の傾斜角Tに加算することによって、目標傾斜角を算出する。ヨーレート差と修正値との対応関係は、予め実験的に決定されてよい。例えば、現行ヨーレートが目標ヨーレートと同じである場合(ヨーレート差=ゼロ)、修正値はゼロである。この場合、第1目標傾斜角T1は、現行の傾斜角Tと同じである。目標ヨーレートがゼロ(すなわち、直進)であり、現行のヨーレートが左旋回を示す場合、修正値は、第1目標傾斜角T1を、現行の傾斜角Tよりも右方向DR側に回動した角度に、修正する。例えば、ハンドル角Aiがゼロであるにも拘わらず左に向かって吹く風によって車両10が意図せずに左方向に旋回する場合、第1目標傾斜角T1は、車体90が右方向DR側に傾斜することを示す角度に、決定される。これにより、車両10は、風に抗って直進できる。このように、外部の要因に起因する車両10の進行方向のズレが、抑制される。
(13)上記実施例では、制御装置100は、目標傾斜トルクの決定(すなわち、リーンモータ25の制御)と、目標回動トルクの決定(すなわち、操舵モータ65の制御)とに、目標傾斜角を用いている。すなわち、制御装置100は、目標傾斜角に対応する値である目標値を用いて、目標回動トルクと目標傾斜トルクとを決定している。上記実施例では、目標値は、傾斜角Tと比較される値である。そして、回動駆動制御値Vc1の決定に用いられる目標値(回動目標値とも呼ぶ)は、傾斜駆動制御値Vc2の決定に用いられる目標値(傾斜目標値とも呼ぶ)と、同じである。
ここで、回動目標値は、傾斜目標値と異なっていてもよい。この理由は、以下の通りである。回動駆動制御値Vc1を用いて制御される回動駆動装置(ここでは、操舵モータ65)は、傾斜駆動制御値Vc2を用いて制御される傾斜駆動装置(ここでは、リーンモータ25)とは異なる装置である。さらに、操舵モータ65によって動かされる装置(ここでは、前輪12F)は、リーンモータ25によって動かされる装置(ここでは、車体90)とは異なる装置である。従って、目標傾斜角に対応付けられた目標値であって傾斜角Tを目標傾斜角に近づけるための制御に用いられる適切な目標値は、回動駆動制御値Vc1と傾斜駆動制御値Vc2との間で異なり得る。例えば、回動目標値は、傾斜目標値に1とは異なる係数を乗じて得られる値であってよい。このように、傾斜角Tを1つの目標傾斜角に近づけるために、互いに異なる回動目標値と傾斜目標値とを用いて操舵モータ65とリーンモータ25とが制御されてよい。例えば、第1比例項Vp1は、回動目標値を用いて決定され、第2比例項Vp2は、傾斜目標値を用いて決定されてよい。このように互いに異なる回動目標値と傾斜目標値は、同じ目標傾斜角に対応しているということができる。
車両10の走行安定性のためには、回動目標値と傾斜目標値との間の差によって示される角度差は、10度未満であることが好ましい。このような角度差は、例えば、以下のように特定可能である。傾斜目標値に従ってリーンモータ25が制御される場合の安定した傾斜角Tと、回動目標値と同じ値に設定された比較用の傾斜目標値に従ってリーンモータ25が制御される場合の安定した傾斜角Tと、の間の差が、角度差として採用されてよい。
いずれの場合も、制御装置100は、目標傾斜角に対応付けられた回動目標値と傾斜目標値とを、ハンドル角Ai(より一般的には、操作入力部に入力された操作量)を含む1以上のパラメータを用いて、決定してよい。
(14)回動目標値が傾斜目標値と異なる場合、回動駆動制御値Vc1(例えば、第1比例項Vp1)の決定に用いられる傾斜角差(例えば、図16(A)の傾斜角差dT)は、回動目標値から傾斜角Tを減算することによって、算出される(回動駆動角差と呼ぶ)。傾斜駆動制御値Vc2(例えば、第2比例項Vp2)の決定に用いられる傾斜角差(例えば、図17の傾斜角差dT)は、傾斜目標値から傾斜角Tを減算することによって、算出される(傾斜駆動角差と呼ぶ)。ここで、傾斜駆動角差は、回動駆動角差と異なり得る。このように互いに異なる傾斜駆動角差と回動駆動角差とは、目標傾斜角と傾斜角Tとの間の実際の差(すなわち、同じ差)に対応しているということができる。
ここで、傾斜駆動角差の大きさの基準を示す閾値Tha(図17)を、傾斜閾値と呼ぶ。また、回動駆動角差の大きさの基準を示す閾値Tha(図16(A))を、回動閾値と呼ぶ。傾斜閾値は、回動閾値と異なっていてよい。ただし、傾斜閾値と回動閾値とは、目標傾斜角と傾斜角Tとの間の実際の差に対する同じ閾値を示していることが好ましい。
(15)鉛直方向センサ126の制御部126cは、ジャイロセンサ126gと加速度センサ126aとからの情報に加えて、車両10の動きに関連する他の情報を用いて、鉛直下方向DDを検出してよい。他の情報としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて特定される車両10の位置が、用いられてよい。制御部126cは、鉛直下方向DDを、GPSによる位置の変化に応じて、補正してもよい。GPSによる位置の変化に基づく補正量は、予め実験的に決定されてよい。なお、制御部126cは、種々の電気回路であってよく、例えば、コンピュータを含む電気回路であってよく、コンピュータを含まない電気回路(例えば、ASIC)であってもよい。ジャイロセンサ126gは、角加速度に代えて、角速度を検出するセンサであってよい。
(16)車両の構成は、上記実施例と変形例とのそれぞれの構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、図4の実施例において、モータ51L、51Rは、サスペンションを介して、リンク機構30に接続されてもよい。駆動輪を駆動する駆動装置は、電気モータに代えて、車輪を回転させる任意の装置であってよい(例えば、内燃機関)。車両の最大定員数は、1人に代えて、2人以上であってよい。車両の制御に用いられる対応関係(例えば、マップデータMT、MAF、Mp1、Mp2によって示される対応関係)は、車両10が適切に走行できるように、実験的に決定されてよい。車両の制御装置は、車両の制御に用いられる対応関係を、車両の状態に応じて、動的に変更してよい。例えば、車両は、車体の重量を測定する重量センサをー備え、制御装置は、車体の重量に応じて対応関係を調整してよい。
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図12の制御装置100の機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
10…車両、11…座席、12F…前輪、12L…左後輪、12R…右後輪、12Fc…重心、12La…ホイール、12Lb…タイヤ、12Ra…ホイール、12Rb…タイヤ、17…前フォーク、20…本体部、20a…前部、20b…底部、20c…後部、20d…支持部、21…中縦リンク部材、25…リーンモータ、30…リンク機構、31D…下横リンク部材、31U…上横リンク部材、33L…左縦リンク部材、33R…右縦リンク部材、38…軸受、39…軸受、41…前輪支持装置、41a…ハンドル、41ax…支持棒、45…アクセルペダル、46…ブレーキペダル、47…シフトスイッチ、50…接続部、51…第1部分、52…第2部分、53…第3部分、51L…左電気モータ、51R…右電気モータ、65…操舵モータ、68…軸受、70…サスペンションシステム、70L…左サスペンション、70R…右サスペンション、71L、71R…コイルスプリング、72L、72R…ショックアブソーバ、75…連結棒、80…後輪支持部、82…第1支持部、83…第2支持部、89…傾斜装置、90…車体、90c…重心、100…制御装置、110…主制御部、110g、300g、400g、500g…プログラム、110n、300n、400n、500n…不揮発性記憶装置、110p、300p、400p、500p…プロセッサ、110v、300v、400v、500v…揮発性記憶装置、112…傾斜角特定部、114…目標傾斜角決定部、116…加算点、120…バッテリ、122…車速センサ、123…ハンドル角センサ、124…車輪角センサ、126…鉛直方向センサ、126a…加速度センサ、126c…制御部、126g…ジャイロセンサ、127…傾斜角センサ、145…アクセルペダルセンサ、146…ブレーキペダルセンサ、300…駆動装置制御部、300c…電力制御部、400…リーンモータ制御部、400c…電力制御部、420…第2P制御部、425…第2Pゲイン制御部、430…第2D制御部、490…第2加算点、500…操舵モータ制御部、500c…電力制御部、520…第1P制御部、525…第1Pゲイン制御部、530…第1D制御部、590…第1加算点

Claims (8)

  1. 車両であって、
    車体と、
    前記車両の前進方向に対して左右に回動可能な1以上の回動輪を含むN個(Nは2以上の整数)の車輪であって、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含む前記N個の車輪と、
    前記車体の幅方向の傾斜角を測定するように構成された傾斜角センサと、
    前記車体の前記傾斜角を制御するための傾斜トルクを前記車体に作用させるように構成された傾斜駆動装置と、
    旋回方向と旋回の程度とを示す操作量を入力するために操作されるように構成された操作入力部と、
    前記1以上の回動輪を支持する回動輪支持部と、
    制御装置と、
    を備え、
    前記回動輪支持部は、
    前記1以上の回動輪を回転可能に支持する支持部材と、
    前記支持部材を前記車体に対して左右に回動可能に支持する回動装置と、
    前記支持部材を回動させる回動トルクを前記支持部材に印加するように構成された回動駆動装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、
    前記操作量を含む1以上のパラメータを用いて前記車体の目標の傾斜角である目標傾斜角を決定し、
    前記目標傾斜角を用いて、前記傾斜駆動装置の目標トルクである目標傾斜トルクと、前記回動駆動装置の目標トルクである目標回動トルクとを、決定し、
    前記目標傾斜トルクに従って前記傾斜駆動装置を制御し、
    前記目標回動トルクに従って前記回動駆動装置を制御する、
    ように構成されている、
    車両。
  2. 請求項1に記載の車両であって、
    前記傾斜角が前記目標傾斜角に近づくように前記車体を幅方向に回動させる場合の回動方向であって、右方向と左方向とのいずれかである方向を目標方向とする場合に、
    前記制御装置は、前記回動駆動装置の制御モードとして、前記目標回動トルクを前記目標方向とは反対の方向に前記支持部材を回動させるトルクである逆トルクに決定する制御モードである逆トルクモードを有している、
    車両。
  3. 請求項2に記載の車両であって、
    前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、
    前記目標傾斜角と前記車体の前記傾斜角との間の差である傾斜角差を用いて、前記目標傾斜トルクと前記目標回動トルクとを決定し、
    前記傾斜角差の大きさが第1閾値よりも大きい場合の前記目標回動トルクの大きさが、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも小さい場合の前記目標回動トルクの前記大きさよりも大きくなるように、前記目標回動トルクを決定する、
    ように構成されている、車両。
  4. 請求項3に記載の車両であって、
    前記傾斜角差の大きさに対する前記逆トルクである前記目標回動トルクの大きさの割合を、逆回動トルク割合とする場合に、
    前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも大きい場合の前記逆回動トルク割合が、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも小さい場合の前記逆回動トルク割合よりも大きくなるように、前記目標回動トルクを決定するように、構成されている、
    車両。
  5. 請求項3または4に記載の車両であって、
    前記傾斜角差の大きさに対する前記目標傾斜トルクの大きさの割合を、傾斜トルク割合とする場合に、
    前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも大きい第1範囲内である場合の前記傾斜トルク割合が、前記傾斜角差の前記大きさが前記第1閾値よりも小さい特定の範囲である第2範囲内である場合の前記傾斜トルク割合よりも小さくなるように、前記目標傾斜トルクを決定するように、構成されている、
    車両。
  6. 請求項5に記載の車両であって、
    前記第1範囲は、前記第1閾値よりも大きく、かつ、前記第1閾値よりも大きい閾値である第2閾値よりも小さい範囲であり、
    前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第2閾値よりも大きい場合の前記傾斜トルク割合が、前記傾斜角差の大きさが前記第1範囲内である場合の前記傾斜トルク割合よりも大きくなるように、前記目標傾斜トルクを決定するように、構成されている、
    車両。
  7. 請求項5または6に記載の車両であって、
    前記第2範囲は、前記第1閾値よりも小さい閾値である第3閾値よりも大きく、かつ、前記第1閾値よりも小さい範囲であり、
    前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記傾斜角差の前記大きさが前記第3閾値よりも小さい場合の前記傾斜トルク割合が、前記傾斜角差の大きさが前記第2範囲内である場合の前記傾斜トルク割合よりも小さくなるように、前記目標傾斜トルクを決定するように、構成されている、
    車両。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の車両であって、
    前記傾斜角差の大きさに対する前記逆トルクである前記目標回動トルクの大きさの割合を、逆回動トルク割合とする場合に、
    前記制御装置は、前記逆トルクモードにおいて、前記車速の大きさが第4閾値よりも小さい場合の前記逆回動トルク割合が、前記車速の大きさが前記第4閾値よりも大きい場合の前記逆回動トルク割合よりも大きくなるように、前記目標回動トルクを決定するように、構成されている、
    車両。
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