JP2019081475A - 車両 - Google Patents

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JP2019081475A
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斉 神谷
Hitoshi Kamiya
斉 神谷
敬造 荒木
Keizo Araki
敬造 荒木
水野 晃
Akira Mizuno
晃 水野
茂木 幸治
Koji Mogi
幸治 茂木
昇太 久保
Shota Kubo
昇太 久保
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Abstract

【課題】車両の走行安定性を向上する。【解決手段】車両は、車体と、車体を傾斜させる傾斜機構と、操作入力部と、傾斜制御部と、左右に回動可能な1以上の回動輪を支持する回動輪支持部と、を備える。回動輪支持部は、1以上の回動輪を回転可能に支持する支持部材と、支持部材を左右に回動させるトルクを支持部材に印加する回動駆動装置と、回動駆動装置のトルクを、車体の傾斜の大きさに関連する傾斜パラメータと操作入力部の操作量との少なくとも一方と、車速とを用いて制御する回動制御部と、を含む。車速が基準速度を超える特定範囲内である場合、回動制御部は、回動駆動装置のトルクの最大の大きさを、1以上の回動輪が車体の傾斜の変化に追随して左右に回動することを許容するトルクの特定の大きさに設定する。車速が前記基準速度以下である場合、回動制御部は、回動駆動装置のトルクの最大の大きさを、車速が速いほど小さい大きさに設定する。【選択図】 図1

Description

本明細書は、車体を傾斜させて旋回する車両に関する。
旋回時に車体を傾斜させる車両が提案されている。例えば、前輪が自由にキャスター動作するように構成され、そして、運転者が制御デバイスを動かす方向によって示される方向に車体を傾斜させる技術が提案されている。
国際公開第2011/083335号
ところが、車両の走行安定性が低下する場合があった。例えば、車速が変化する場合に、左右に回動可能な車輪の方向が、不安定になる場合があった。
本明細書は、車両の走行安定性を向上できる技術を開示する。
本明細書は、例えば、以下の適用例を開示する。
[適用例1]
車両であって、
前記車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪と、1個以上の他の車輪と、を含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、前記一対の車輪と他の車輪との少なくとも一方が前記車両の前進方向に対して左右に回動可能な1以上の回動輪として構成されるとともに、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含む、N個の車輪と、
車体と、
前記車体を前記幅方向に傾斜させる傾斜機構と、
操作することで旋回方向と旋回の程度とを示す操作量が入力される操作入力部と、
前記操作入力部へ入力される前記操作量を用いて前記傾斜機構を制御する傾斜制御部と、
前記1以上の回動輪を支持する回動輪支持部と、
を備え、
前記回動輪支持部は、
前記1以上の回動輪を、回転可能に支持する支持部材と、
前記支持部材を、前記車体に対して左右に回動可能に支持する回動装置と、
前記支持部材を左右に回動させるトルクを、前記支持部材に印加する回動駆動装置と、
前記回動駆動装置のトルクを、前記車体の傾斜の大きさに関連する傾斜パラメータと前記操作量との少なくとも一方と、車速とを用いて制御する回動制御部と、
を備え、
前記回動制御部は、
前記車速が基準速度を超える特定範囲内である場合には、前記回動駆動装置のトルクの最大の大きさを、前記1以上の回動輪が前記操作量に拘わらず前記車体の傾斜の変化に追随して前記車体に対して左右に回動することを許容するトルクの特定の大きさに設定し、
前記車速が前記基準速度以下である場合には、
前記回動駆動装置のトルクの最大の大きさを、前記車速が速いほど小さい大きさに設定し、
前記回動駆動装置のトルクを、前記最大の大きさ以下の大きさのトルクであって、前記1以上の回動輪の方向を、前記操作量を用いて特定される目標の方向に近づけるトルクに設定する、
車両。
この構成によれば、車速が基準速度を超える特定範囲内である場合には、1以上の回動輪が操作量に拘わらず車体の傾斜の変化に追随して車体に対して左右に回動可能なので、走行安定性が向上する。また、車速が基準速度以下である場合には、回動駆動装置のトルクが、1以上の回動輪の方向を、操作量を用いて特定される目標の方向に近づけるトルクに設定されるので、操作量に適した走行が可能である。そして、トルクの最大の大きさは、車速が速いほど小さい大きさに設定されるので、車速が、基準速度以下の範囲と、基準速度を超える範囲との間で変化する場合に、回動駆動装置のトルクの変化が大きくなることが、抑制される。この結果、1以上の回動輪の方向の安定性が向上し、そして、走行安定性が向上する。
[適用例2]
適用例1に記載の車両であって、
前記回動制御部は、前記車速が前記基準速度以下である場合には、前記車速が前記基準速度に達した場合に前記最大の大きさが前記特定の大きさになるように、前記最大の大きさを、前記車速が速いほど小さい大きさに設定する、
車両。
この構成によれば、車速が、基準速度以下の範囲と、基準速度を超える範囲との間で変化する場合に、回動駆動装置のトルクが滑らかに変化するので、1以上の回動輪の方向の安定性が向上し、そして、走行安定性が向上する。
[適用例3]
適用例1または2に記載の車両であって、
前記特定の大きさは、ゼロである、車両。
この構成によれば、車速が基準速度を超える特定範囲内である場合には、1以上の回動輪が容易に左右に回動できるので、走行安定性が向上する。
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、車両、車両の制御装置、車両の制御方法、等の態様で実現することができる。
車両10の右側面図である。 車両10の上面図である。 車両10の下面図である。 車両10の背面図である。 車両10の状態を示す概略図である。 旋回時の力のバランスの説明図である。 車輪角AFと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。 回転する前輪12Fに作用する力の説明図である。 車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。 制御処理の例を示すフローチャートである。 制御装置110のうち操舵モータ65の制御に関連する部分のブロック図である。 操舵モータ65を制御する処理の例を示すフローチャートである。 車速VとPゲインKpとの対応関係を示すグラフと、車速VとDゲインKdとの対応関係を示すグラフと、車速Vと操舵モータ65のトルクの最大の大きさTQmaxと、の対応関係を示すグラフである。 車両の別の実施例の概略図である。
A.第1実施例:
A1.車両10の構成:
図1〜図4は、一実施例としての車両10を示す説明図である。図1は、車両10の右側面図を示し、図2は、車両10の上面図を示し、図3は、車両10の下面図を示し、図4は、車両10の背面図を示している。図2〜図4では、図1に示す車両10の構成のうち、説明に用いる部分が図示され、他の部分の図示が省略されている。図1〜図4には、6つの方向DF、DB、DU、DD、DR、DLが示されている。前方向DFは、車両10の前進方向であり、後方向DBは、前方向DFの反対方向である。上方向DUは、鉛直上方向であり、下方向DDは、上方向DUの反対方向である。右方向DRは、前方向DFに走行する車両10から見た右方向であり、左方向DLは、右方向DRの反対方向である。方向DF、DB、DR、DLは、いずれも、水平な方向である。右と左の方向DR、DLは、前方向DFに垂直である。
本実施例では、この車両10は、一人乗り用の小型車両である。車両10(図1、図2)は、車体90と、車体90に連結された1つの前輪12Fと、車体90に連結され車両10の幅方向(すなわち、右方向DRに平行な方向)に互いに離れて配置された2つの後輪12L、12Rと、を有する三輪車である。前輪12Fは、左右方向に回動可能であり、車両10の幅方向の中心に配置されている。後輪12L、12Rは、駆動輪であり、車両10の幅方向の中心に対して対称に配置されている。
車体90(図1)は、本体部20を有している。本体部20は、前部20aと、底部20bと、後部20cと、支持部20dと、を有している。底部20bは、水平な方向(すなわち、上方向DUに垂直な方向)に拡がる板状の部分である。前部20aは、底部20bの前方向DF側の端部から前方向DF側かつ上方向DU側に向けて斜めに延びる板状の部分である。後部20cは、底部20bの後方向DB側の端部から後方向DB側かつ上方向DU側に向けて斜めに延びる板状の部分である。支持部20dは、後部20cの上端から後方向DBに向かって延びる板状の部分である。本体部20は、例えば、金属製のフレームと、フレームに固定されたパネルと、を有している。
車体90(図1)は、さらに、底部20b上に固定された座席11と、底部20b上の座席11よりも前方向DF側に配置されたアクセルペダル45とブレーキペダル46と、座席11の座面の下に配置され底部20bに固定された制御装置110と、底部20bのうちの制御装置110よりも下の部分に固定されたバッテリ120と、前部20aの前方向DF側の端部に固定された前輪支持装置41と、前輪支持装置41に取り付けられたシフトスイッチ47と、を有している。なお、図示を省略するが、本体部20には、他の部材(例えば、屋根、前照灯など)が固定され得る。車体90は、本体部20に固定された部材を含んでいる。
アクセルペダル45は、車両10を加速するためのペダルである。アクセルペダル45の踏み込み量(「アクセル操作量」とも呼ぶ)は、ユーザの望む加速力を表している。ブレーキペダル46は、車両10を減速するためのペダルである。ブレーキペダル46の踏み込み量(「ブレーキ操作量」とも呼ぶ)は、ユーザの望む減速力を表している。シフトスイッチ47は、車両10の走行モードを選択するためのスイッチである。本実施例では、「ドライブ」と「ニュートラル」と「リバース」と「パーキング」との4つの走行モードから1つを選択可能である。「ドライブ」は、駆動輪12L、12Rの駆動によって前進するモードであり、「ニュートラル」は、駆動輪12L、12Rが回転自在であるモードであり、「リバース」は、駆動輪12L、12Rの駆動によって後退するモードであり、「パーキング」は、少なくとも1つの車輪(例えば、後輪12L、12R)が回転不能であるモードである。「ドライブ」と「ニュートラル」とは、通常は、車両10の前進時に利用される。
前輪支持装置41(図1)は、回動軸Ax1を中心に車両10の旋回方向に向けて前輪12Fを回動可能に支持する装置である。前輪支持装置41は、前輪12Fを回転可能に支持する前フォーク17と、回動軸Ax1を中心に前フォーク17(すなわち、前輪12F)を回動可能に支持する軸受68と、前フォーク17を回動させる操舵モータ65と、を有している。また、車両10には、ユーザによる操作によってユーザの望む旋回方向と旋回の程度とが入力される操作入力部としてのハンドル41aが、設けられている。ハンドル41aには、ハンドル41aの回転軸に沿って延びる支持棒41axが、固定されている。支持棒41axは、回転軸に沿って回転可能に、前輪支持装置41に接続されている。また、前輪支持装置41は、支持棒41axと前フォーク17とを連結する接続部50を、有している。接続部50の詳細については、後述する。
前フォーク17(図1)は、例えば、サスペンション(コイルスプリングとショックアブソーバ)を内蔵したテレスコピックタイプのフォークである。
軸受68は、本体部20(ここでは、前部20a)と、前フォーク17と、を連結している。また、軸受68は、前フォーク17を、前方向DFに対して左右に回動可能に支持している。操舵モータ65は、ロータ66と、ステータ67と、を含んでいる。ロータ66とステータ67とのうちの一方(本実施例では、ロータ66)は、前フォーク17に固定されている。ロータ66とステータ67とのうちの他方(本実施例では、ステータ67)は、本体部20(ここでは、前部20a)に固定されている。
ハンドル41a(図1)は、ハンドル41aの回転軸に沿って延びる支持棒41axを中心に回動可能である。ハンドル41aの回動方向(右、または、左)は、ユーザの望む旋回方向を示している。直進を示す所定方向からのハンドル41aの回動の程度(ここでは、回動角度。以下「ハンドル角」とも呼ぶ)は、ユーザの望む旋回の程度を示している。本実施例では、「ハンドル角=ゼロ」は、直進を示し、「ハンドル角>ゼロ」は、右旋回を示し、「ハンドル角<ゼロ」は、左旋回を示している。このように、ハンドル角の正負の違いは、旋回方向を示している。また、ハンドル角の絶対値は、旋回の程度を示している。このようなハンドル角は、ハンドル41aに入力される旋回方向と旋回の程度とを表す操作量の例である。
車輪角AF(図2)は、下方向DDを向いて車両10を見る場合に、前方向DFを基準とする、回転する前輪12Fの進行方向D12の角度である。この進行方向D12は、前輪12Fの回転軸に垂直な方向である。本実施例では、「AF=ゼロ」は、「方向D12=前方向DF」を示し、「AF>ゼロ」は、旋回方向が右方向DRであること(すなわち、方向D12が右方向DR側を向いている)を示し、「AF<ゼロ」は、旋回方向が左方向DLであること(すなわち、方向D12が左方向DL側を向いている)を示している。制御装置110(図1)は、ユーザによって操作されるハンドル41aの向きに合わせて、前フォーク17の向き(すなわち、前輪12Fの車輪角AF)を変更するように、操舵モータ65を制御する場合がある。
前輪支持装置41の動作モードは、操舵モータ65によって車輪角AFが制御される第1モードと、ハンドル41aに入力されるハンドル角に拘わらず前輪12Fの車輪角AFが左右方向に回動できる状態で前輪12Fを支持する第2モードと、を含んでいる。第1モードでは、前輪12Fの方向D12が操舵モータ65によって制御されるので、ハンドル角とは独立な前輪12Fの自由な回動は、禁止される。前輪支持装置41の動作モードが第1モードである場合、車輪角AFは、いわゆる操舵角に対応する。第2モードでは、操舵モータ65のトルクがおおよそゼロに設定されるので、前輪12Fの方向D12は、ハンドル角とは独立に、左右に回動できる。これらのモードの詳細については、後述する。
図1に示すように、本実施例では、車両10が水平な地面GL上に配置されている場合、前輪支持装置41の回動軸Ax1は、地面GLに対して斜めに傾斜しており、具体的には、回動軸Ax1に平行に下方向DD側へ向かう方向は、斜め前方を向いている。そして、前輪支持装置41の回動軸Ax1と地面GLとの交点P2は、前輪12Fの地面GLとの接触中心P1よりも、前方向DF側に位置している。図1、図3に示すように、接触中心P1は、前輪12Fと地面GLとの接触領域Ca1の中心である。接触領域の中心は、接触領域の重心の位置を示している。領域の重心は、領域内に質量が均等に分布していると仮定する場合の重心の位置である。これらの点P1、P2の間の後方向DBの距離Ltは、トレールと呼ばれる。正のトレールLtは、接触中心P1が交点P2よりも後方向DB側に位置していることを示している。また、鉛直上方向DUと、回動軸Ax1に沿って鉛直上方向DU側へ向かう方向と、のなす角度CAは、キャスター角とも呼ばれる。キャスター角CAがゼロよりも大きいことは、回動軸Ax1に沿って鉛直上方向DU側へ向かう方向が、斜め後ろに傾斜していることを、示している。
2つの後輪12L、12R(図4)は、後輪支持部80に回転可能に支持されている。後輪支持部80は、リンク機構30と、リンク機構30の上部に固定されたリーンモータ25と、リンク機構30の上部に固定された第1支持部82と、リンク機構30の前部に固定された第2支持部83(図1)と、を有している。図1では、説明のために、リンク機構30と第1支持部82と第2支持部83のうちの右後輪12Rに隠れている部分も実線で示されている。図2では、説明のために、本体部20に隠れている後輪支持部80と後輪12L、12Rと連結部75とが、実線で示されている。図1〜図3では、リンク機構30が簡略化して示されている。
第1支持部82(図4)は、リンク機構30の上方向DU側に配置されている。第1支持部82は、左後輪12Lの上方向DU側から、右後輪12Rの上方向DU側まで、右方向DRに平行に延びる板状の部分を含んでいる。第2支持部83(図1、図2)は、リンク機構30の前方向DF側の、左後輪12Lと右後輪12Rとの間に配置されている。
右後輪12R(図1)は、リムを有するホイール12Raと、ホイール12Raのリムに装着されたタイヤ12Rbと、を有している。ホイール12Ra(図4)は、右電気モータ51Rに接続されている。右電気モータ51Rは、ステータとロータとを有している(図示省略)。ロータとステータとのうちの一方は、ホイール12Raに固定され、他方は、後輪支持部80に固定されている。右電気モータ51Rの回転軸は、ホイール12Raの回転軸と同じであり、右方向DRに平行である。左後輪12Lの構成は、右後輪12Rの構成と、同様である。具体的には、左後輪12Lは、ホイール12Laとタイヤ12Lbとを有している。ホイール12Laは、左電気モータ51Lに接続されている。左電気モータ51Lのロータとステータとのうちの一方は、ホイール12Laに固定され、他方は、後輪支持部80に固定されている。これらの電気モータ51L、51Rは、後輪12L、12Rを直接的に駆動するインホイールモータである。
図1、図4には、車体90が傾斜せずに直立している状態(後述する傾斜角Tがゼロである状態)が、示されている。この状態で、左後輪12Lの回転軸ArLと右後輪12Rの回転軸ArRとは、同じ直線上に位置している。また、図1、図3には、右後輪12Rの地面GLとの接触中心PbRと、左後輪12Lの地面GLとの接触中心PbLと、が示されている。図3に示すように、右の接触中心PbRは、右後輪12Rと地面GLとの接触領域CaRの中心である。左の接触中心PbLは、左後輪12Lと地面GLとの接触領域CaLの中心である。図1の状態では、これらの接触中心PbR、PbLの前方向DFの位置は、おおよそ同じである。
リンク機構30(図4)は、いわゆる、平行リンクである。リンク機構30は、右方向DRに向かって順番に並ぶ3つの縦リンク部材33L、21、33Rと、下方向DDに向かって順番に並ぶ2つの横リンク部材31U、31Dと、を有している。縦リンク部材33L、21、33Rは、車体90が傾斜せずに直立している場合に、鉛直方向に平行である。横リンク部材31U、31Dは、車体90が傾斜せずに直立している場合に、水平方向に平行である。2つの縦リンク部材33L、33Rと、2つの横リンク部材31U、31Dとは、平行四辺形リンク機構を形成している。上横リンク部材31Uは、縦リンク部材33L、33Rの上端を連結している。下横リンク部材31Dは、縦リンク部材33L、33Rの下端を連結している。中縦リンク部材21は、横リンク部材31U、31Dの中央部分を連結している。これらのリンク部材33L、33R、31U、31D、21は、互いに回動可能に連結されており、回動軸は、前方向DFに平行である。左縦リンク部材33Lには、左電気モータ51Lが固定されている。右縦リンク部材33Rには、右電気モータ51Rが固定されている。中縦リンク部材21の上部には、第1支持部82と第2支持部83(図1)とが、固定されている。リンク部材33L、21、33R、31U、31Dと、支持部82、83とは、例えば、金属で形成されている。
本実施例では、リンク機構30は、複数のリンク部材を回動可能に連結するための軸受けを有している。例えば、軸受38は、下横リンク部材31Dと中縦リンク部材21とを回動可能に連結し、軸受39は、上横リンク部材31Uと中縦リンク部材21とを回動可能に連結している。説明を省略するが、複数のリンク部材を回動可能に連結する他の部分にも、軸受が設けられている。
リーンモータ25は、例えば、ステータとロータとを有する電気モータである。リーンモータ25のステータとロータのうちの一方は、中縦リンク部材21に固定され、他方は、上横リンク部材31Uに固定されている。リーンモータ25の回動軸は、これらのリンク部材31U、21の連結部分(ここでは、軸受39)の回動軸と同じであり、車両10の幅方向の中心に位置している。リーンモータ25のロータがステータに対して回動すると、上横リンク部材31Uが、中縦リンク部材21に対して、傾斜する。これにより、車両10が傾斜する。以下、リーンモータ25によって生成されるトルク(本実施例では、中縦リンク部材21に対して上横リンク部材31Uを傾斜させるトルク)を、傾斜トルクとも呼ぶ。傾斜トルクは、車体90を傾斜させるトルクである。
図5は、車両10の状態を示す概略図である。図中には、車両10の簡略化された背面図が示されている。図5(A)は、車両10が直立している状態を示し、図5(B)は、車両10が傾斜している状態を示している。図5(A)に示すように、上横リンク部材31Uが中縦リンク部材21に対して直交する場合、全ての車輪12F、12L、12Rが、平らな地面GLに対して直立する。そして、車体90を含む車両10の全体は、地面GLに対して、直立する。図中の車両上方向DVUは、車両10の上方向である。車両10が傾斜していない状態では、車両上方向DVUは、上方向DUと同じである。本実施例では、後輪支持部80のうちの車体90とともに傾斜する部材の向き(具体的には、中縦リンク部材21の向き)を、車両上方向DVUとして採用する。
図5(B)に示すように、上横リンク部材31Uが中縦リンク部材21に対して傾斜する場合、右後輪12Rと左後輪12Lとの一方が、車両上方向DVU側に移動し、他方は、車両上方向DVUとは反対方向側に移動する。すなわち、リンク機構30とリーンモータ25とは、幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪12L、12Rの間の回転軸に垂直な方向の相対位置を変化させる。この結果、全ての車輪12F、12L、12Rが地面GLに接触した状態で、これらの車輪12F、12L、12Rは、地面GLに対して傾斜する。そして、車体90を含む車両10の全体は、地面GLに対して、傾斜する。図5(B)の例では、右後輪12Rが車両上方向DVU側に移動し、左後輪12Lが反対側に移動している。この結果、車輪12F、12L、12R、ひいては、車体90を含む車両10の全体は、右方向DR側に、傾斜する。後述するように、車両10が右方向DR側に旋回する場合に、車両10は、右方向DR側に傾斜する。車両10が左方向DL側に旋回する場合に、車両10は、左方向DL側に傾斜する。
図5(B)では、車両上方向DVUは、上方向DUに対して、右方向DR側に傾斜している。以下、前方向DFを向いて車両10を見る場合の、上方向DUと車両上方向DVUとの間の角度を、傾斜角Tと呼ぶ。ここで、「T>ゼロ」は、右方向DR側への傾斜を示し、「T<ゼロ」は、左方向DL側への傾斜を示している。車両10が傾斜する場合、車体90も、おおよそ、同じ方向に傾斜する。車両10の傾斜角Tは、車体90の傾斜角Tということができる。
なお、リーンモータ25は、リーンモータ25を回動不能に固定する図示しないロック機構を有している。ロック機構を作動させることによって、上横リンク部材31Uは、中縦リンク部材21に対して回動不能に固定される。この結果、傾斜角Tが固定される。例えば、車両10の駐車時に、傾斜角Tはゼロに固定される。ロック機構としては、メカニカルな機構であって、リーンモータ25(ひいては、リンク機構30)を固定している最中に電力を消費しない機構が好ましい。
図5(A)、図5(B)には、傾斜軸AxLが示されている。傾斜軸AxLは、地面GL上に位置している。リンク機構30とリーンモータ25とは、車両10を、傾斜軸AxLを中心に、右と左とに傾斜させることができる。本実施例では、傾斜軸AxLは、地面GL上に位置しており、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1を通り前方向DFに平行な直線である。後輪12L、12Rを回転可能に支持するリンク機構30と、リンク機構30を作動させるアクチュエータとしてのリーンモータ25とは、車体90を車両10の幅方向に傾斜させる傾斜機構89を構成する。傾斜角Tは、傾斜機構89による傾斜角である。
車体90(具体的には、本体部20)は、図1、図5(A)、図5(B)に示すように、後方向DB側から前方向DF側に向かって延びるロール軸AxRを中心に回動可能に、後輪支持部80に連結されている。図2、図4に示すように、本実施例では、本体部20は、サスペンションシステム70と連結部75とによって、後輪支持部80に連結されている。
サスペンションシステム70(図4)は、左サスペンション70Lと、右サスペンション70Rと、を有している。左サスペンション70Lは、コイルスプリング71Lとショックアブソーバ72Lとを含み、右サスペンション70Rは、コイルスプリング71Rとショックアブソーバ72Rとを含んでいる。本実施例では、各サスペンション70L、70Rは、コイルスプリング71L、71Rとショックアブソーバ72L、72Rとを内蔵するテレスコピックタイプのサスペンションである。各サスペンション70L、70Rは、各サスペンション70L、70Rの中心軸70La、70Ra(図4)に沿って、伸縮可能である。
図4に示すように車両10が直立している状態では、各サスペンション70L、70Rの中心軸は、鉛直方向におおよそ平行である。サスペンション70L、70Rの上端部は、第1軸方向(例えば、前方向DF)に平行な回動軸を中心に回動可能に本体部20の支持部20dに連結されている。サスペンション70L、70Rの下端部は、第2軸方向(例えば、右方向DR)に平行な回動軸を中心に回動可能に後輪支持部80の第1支持部82に連結されている。なお、サスペンション70L、70Rと他の部材との連結部分の構成は、他の種々の構成であってもよい(例えば、玉継ぎ手)。
連結部75は、図1、図2に示すように、前方向DFに延びる棒である。連結部75は、車両10の幅方向の中心に配置されている。連結部75の前方向DF側の端部は、本体部20の後部20cに連結されている。連結部分の構成は、例えば、玉継ぎ手である。連結部75は、後部20cに対して、予め決められた範囲内で、任意の方向に動くことができる。連結部75の後方向DB側の端部は、後輪支持部80の第2支持部83に連結されている。連結部分の構成は、例えば、玉継ぎ手である。連結部75は、第2支持部83に対して、予め決められた範囲内で、任意の方向に動くことができる。
このように、本体部20(ひいては、車体90)は、サスペンションシステム70と連結部75とを介して、後輪支持部80に連結されている。車体90は、後輪支持部80に対して、動くことが可能である。図1のロール軸AxRは、車体90が後輪支持部80に対して右方向DRまたは左方向DLに回動する場合の中心軸を示している。本実施例では、ロール軸AxRは、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1と、連結部75の近傍と、を通る直線である。車体90は、サスペンション70L、70Rの伸縮によって、ロール軸AxRを中心に、幅方向に回動可能である。なお、本実施例では、傾斜機構89による傾斜の傾斜軸AxLは、ロール軸AxRと異なっている。
図5(A)、図5(B)には、ロール軸AxRを中心に回動する車体90が、点線で示されている。図中のロール軸AxRは、サスペンション70L、70Rを含み前方向DFに垂直な平面上のロール軸AxRの位置を示している。図5(B)に示すように、車両10が傾斜した状態においても、車体90は、さらに、ロール軸AxRを中心に、右方向DRと左方向DLとに回動可能である。
車体90は、後輪支持部80による回動と、サスペンションシステム70と連結部75とによる回動と、によって、鉛直上方向DU(ひいては、地面GL)に対して、車両10の幅方向に回動し得る。このように、車両10の全体を総合して実現される車体90の幅方向の回動を、ロールとも呼ぶ。本実施例では、車体90のロールは、主に、後輪支持部80とサスペンションシステム70と連結部75との全体を通じて引き起こされる。また、車体90やタイヤ12Rb、12Lbなどの車両10の部材の変形によっても、ロールは生じる。
図1、図5(A)、図5(B)には、重心90cが示されている。この重心90cは、満載状態での車体90の重心である。満載状態は、車両10が、車両10の総重量が許容される車両総重量になるように、乗員(可能なら荷物も)を積んだ状態である。例えば、荷物の最大重量は規定されず、最大定員数が規定される場合がある。この場合、重心90cは、車両10に対応付けられた最大定員数の乗員が車両10に搭乗した状態の重心である。乗員の体重としては、最大定員数に予め対応付けられた基準体重(例えば、55kg)が採用される。また、最大定員数に加えて、荷物の最大重量が規定される場合がある。この場合、重心90cは、最大定員数の乗員と、最大重量の荷物と、を積んだ状態での、車体90の重心である。
図示するように、本実施例では、重心90cは、ロール軸AxRの下方向DD側に配置されている。従って、車体90がロール軸AxRを中心に振動する場合に、振動の振幅が過度に大きくなることを抑制できる。本実施例では、重心90cをロール軸AxRの下方向DD側に配置するために、車体90(図1)の要素のうち比較的重い要素であるバッテリ120が、低い位置に配置されている。具体的には、バッテリ120は、車体90の本体部20のうちの最も低い部分である底部20bに固定されている。従って、重心90cを、容易に、ロール軸AxRよりも低くできる。
図6は、旋回時の力のバランスの説明図である。図中には、旋回方向が右方向である場合の後輪12L、12Rの背面図が示されている。後述するように、旋回方向が右方向である場合、制御装置110(図1)は、後輪12L、12R(ひいては、車両10)が地面GLに対して右方向DRに傾斜するように、リーンモータ25を制御する場合がある。
図中の第1力F1は、車体90に作用する遠心力である。第2力F2は、車体90に作用する重力である。ここで、車体90の質量をm(kg)とし、重力加速度をg(おおよそ、9.8m/s)とし、鉛直方向に対する車両10の傾斜角をT(度)とし、旋回時の車両10の速度をV(m/s)とし、旋回半径をR(m)とする。第1力F1と第2力F2とは、以下の式1、式2で表される。
F1 = (m*V)/R (式1)
F2 = m*g (式2)
ここで、*は、乗算記号(以下、同じ)。
また、図中の力F1bは、第1力F1の、車両上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F2bは、第2力F2の、車両上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F1bと力F2bとは、以下の式3、式4で表される。
F1b = F1*cos(T) (式3)
F2b = F2*sin(T) (式4)
ここで、「cos()」は、余弦関数であり、「sin()」は、正弦関数である(以下、同じ)。
力F1bは、車両上方向DVUを左方向DL側に回動させる成分であり、力F2bは、車両上方向DVUを右方向DR側に回動させる成分である。車両10が傾斜角T(さらには、速度Vと旋回半径R)を保ちつつ安定して旋回を続ける場合には、F1bとF2bとの関係は、以下の式5で表される
F1b = F2b (式5)
式5に上記の式1〜式4を代入すると、旋回半径Rは、以下の式6で表される。
R = V/(g*tan(T)) (式6)
ここで、「tan()」は、正接関数である(以下、同じ)。
式6は、車体90の質量mに依存せずに、成立する。ここで、式6の「T」を、左方向と右方向とを区別せずに傾斜角の大きさを表すパラメータTa(ここでは、傾斜角Tの絶対値)に置換することによって得られる以下の式6aは、車体90の傾斜方向に拘わらずに、成立する。
R = V/(g*tan(Ta)) (式6a)
図7は、車輪角AFと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。図中には、下方向DDを向いて見た車輪12F、12L、12Rが示されている。図中では、前輪12Fは、右方向DRに回動しており、車両10は、右方向DRに旋回する。図中の前中心Cfは、前輪12Fの中心である。前中心Cfは、前輪12Fの回転軸上に位置している。下方向DDを向いて車両10を見る場合、前中心Cfは、接触中心P1(図1)とおおよそ同じ位置に位置している。後中心Cbは、2つの後輪12L、12Rの中心である。車体90が傾斜していない場合、後中心Cbは、後輪12L、12Rの回転軸上の、後輪12L、12Rの間の中央に位置している。下方向DDを向いて車両10を見る場合、後中心Cbの位置は、2個の後輪12L、12Rの接触中心PbL、PbRの間の中央の位置と、同じである。中心Crは、旋回の中心である(旋回中心Crと呼ぶ)。ホイールベースLhは、前中心Cfと後中心Cbとの間の前方向DFの距離である。図1に示すように、ホイールベースLhは、前輪12Fの回転軸と、後輪12L、12Rの回転軸との間の前方向DFの距離である。
図7に示すように、前中心Cfと後中心Cbと旋回中心Crとは、直角三角形を形成する。点Cbの内角は、90度である。点Crの内角は、車輪角AFと同じである。従って、車輪角AFと旋回半径Rとの関係は、以下の式7で表される。
AF = arctan(Lh/R) (式7)
ここで「arctan()」は、正接関数の逆関数である(以下、同じ)。
なお、現実の車両10の挙動と、図7の簡略化された挙動と、の間には、種々の差異が存在する。例えば、現実の車輪12F、12L、12Rは、地面GLに対して滑り得る。また、現実の前輪12Fと後輪12L、12Rは、傾斜する。従って、現実の旋回半径は、式7の旋回半径Rと異なり得る。ただし、式7は、車輪角AFと旋回半径Rとの関係を示す良い近似式として、利用可能である。
前進中に図5(B)のように車両10が右方向DR側へ傾斜した場合、車体90の重心90cが右方向DR側へ移動するので、車両10の進行方向は、右方向DR側へ変化する。これにより、前輪支持装置41(図1)(ひいては、回動軸Ax1(図5(B)))も、右方向DR側へ移動する。一方、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1は、摩擦によって、直ぐに右方向DR側へ移動することはできない。そして、本実施例では、図1で説明したように、前輪12Fは、正のトレールLtを有する。すなわち、接触中心P1は、回動軸Ax1と地面GLとの交点P2よりも、後方向DB側に位置している。これらの結果、前進中に車両10が右方向DR側へ傾斜した場合、前輪12Fの向き(すなわち、進行方向D12(図2))は、自然に、車両10の新たな進行方向、すなわち、傾斜方向(図5(B)の例では、右方向DR)に、回動可能である。図5(B)中の回動方向RFは、車体90が右方向DR側へ傾斜する場合の、回動軸Ax1を中心とする前輪12Fの回動方向を示している。前輪支持装置41が第2モードで動作している場合には、前輪12Fの向きは、傾斜角Tの変更開始に続いて、自然に、傾斜方向に回動する。そして、車両10は、傾斜方向に向かって、旋回する。
また、旋回半径が上記の式6(ひいては、式6a)で表される旋回半径Rと同じである場合には、力F1b、F2b(図6、式5)が釣り合うので、車両10の挙動の安定性が向上する。傾斜角Tで旋回する車両10は、式6で表される旋回半径Rで旋回しようとする。また、車両10が正のトレールLtを有するので、前輪12Fの進行方向D12は、自然に、車両10の進行方向と同じになる。従って、車両10が傾斜角Tで旋回する場合、左右に回動できる前輪12Fの向き(すなわち、車輪角AF)は、式6で表される旋回半径Rと、式7と、から特定される車輪角AFの向きに、落ち着き得る。このように、車輪角AFは、車体90の傾斜に追随して、変化する。
また、本実施例では、車体90が傾斜する場合に、前輪12Fには、トレールLtに依存せずに、車輪角AFを傾斜方向に回動させる力が作用する。図8は、回転する前輪12Fに作用する力の説明図である。図中には、前輪12Fの斜視図が示されている。図8の例では、前輪12Fの方向D12は、前方向DFと同じである。回転軸Ax2は、前輪12Fの回転軸である。車両10が前進する場合、前輪12Fは、この回転軸Ax2を中心に、回転する。図中には、前輪支持装置41(図1)の回動軸Ax1と、前軸Ax3とが示されている。回動軸Ax1は、上方向DU側から下方向DD側に向かって延びている。前軸Ax3は、前輪12Fの重心12Fcを通り、前輪12Fの方向D12に平行な軸である。なお、前輪12Fの回転軸Ax2も、前輪12Fの重心12Fcを通っている。
図1等で説明したように、本実施例では、前輪12Fを支持する前輪支持装置41は、車体90に固定されている。従って、車体90が傾斜する場合には、前輪支持装置41が車体90とともに傾斜するので、前輪12Fの回転軸Ax2も、同様に、同じ方向へ傾斜しようとする。走行中の車両10の車体90が右方向DR側に傾斜する場合、回転軸Ax2を中心に回転する前輪12Fに、右方向DR側へ傾斜させるトルクTq1(図8)が作用する。このトルクTq1は、前軸Ax3を中心に前輪12Fを右方向DR側へ傾斜させようとする力の成分を含んでいる。このように、回転する物体に外部トルクが印加される場合の物体の運動は、歳差運動として知られている。例えば、回転する物体は、回転軸と外部トルクの軸とに垂直な軸を中心に、回動する。図8の例では、トルクTq1の印加によって、回転する前輪12Fは、前輪支持装置41の回動軸Ax1を中心に右方向DR側へ回動する。このように、回転する前輪12Fの角運動量に起因して、前輪12Fの方向D12(すなわち、車輪角AF)は、車体90の傾斜に追随して変化する。
以上、車両10が右方向DR側に傾斜する場合について説明した。車両10が左方向DL側に傾斜する場合も、同様に、前輪12Fの方向D12(すなわち、車輪角AF)は、車体90の傾斜に追随して左方向DL側へ回動する。
このように、第2モードで動作している前輪支持装置41は、以下のように、前輪12Fを支持している。すなわち、前輪12Fは、ハンドル41aに入力される情報に拘わらず、車体90の傾斜の変化に追随して、車体90に対して左右に回動可能である。例えば、ハンドル41aが直進を示す所定方向を向いた状態に維持される場合であっても、車体90の傾斜角Tが右方向に変化する場合には、前輪12Fは、傾斜角Tの変化に追随して、右方向に回動し得る(すなわち、車輪角AFは、右方向に変化し得る)。前輪支持装置41がこのように前輪12Fを支持していることは、以下のように言い換えられる。すなわち、前輪支持装置41は、ハンドル41aに入力される1つの操作量に対する前輪12Fの車輪角AFが1つの車輪角AFに制限されないように、車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右に回動可能に、前輪12Fを支持している。
なお、図1で説明したように、ハンドル41aに固定された支持棒41axと、前輪12Fを回転可能に支持する支持部材の例である前フォーク17とは、接続部50で連結されている。接続部50は、支持棒41axに固定された第1部分51と、前フォーク17に固定された第2部分52と、第1部分51と第2部分52とを接続する第3部分53と、を含んでいる。接続部50は、ハンドル41aに、支持棒41axを介して間接的に接続され、前フォーク17に、直接的に接続されている。第3部分53は、本実施例では、弾性体であり、具体的には、コイルバネである。ユーザがハンドル41aを右または左に回動させる場合、ハンドル41aにユーザによって印加された右向きまたは左向きの力は、接続部50を介して、前フォーク17へ伝達される。すなわち、ユーザは、ハンドル41aを操作することによって、前フォーク17、ひいては、前輪12Fに、右向きまたは左向きの力を、印加できる。これにより、ユーザは、前輪12Fが意図する方向を向いていない場合(すなわち、車輪角AFが意図する角度と異なる場合)、ハンドル41aを操作することによって、前輪12Fの向き(すなわち、車輪角AF)を修正できる。これにより、走行安定性を向上できる。例えば、路面の凹凸や風などの外部の要因に応じて、車輪角AFが変化する場合に、ユーザは、ハンドル41aを操作することによって、車輪角AFを修正できる。
なお、接続部50は、ハンドル41aと前フォーク17とを緩く接続する。例えば、接続部50の第3部分53のバネ定数は、十分に小さい値に設定されている。このような接続部50は、前輪支持装置41が第2モードで動作している場合に、ハンドル41aに入力されるハンドル角に拘わらずに、前輪12Fが車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右に回動することを、許容する。従って、車輪角AFは傾斜角Tに適した角度に変化できるので、走行安定性が向上する。なお、接続部50が、緩い接続を実現する場合、すなわち、前輪12Fの上記のような回動を許容する場合、車両10は、以下のように動作し得る。例えば、ハンドル41aが左方向に回動される場合であっても、車体90が右方向に傾斜する場合には、前輪12Fは、右方向に回動し得る。また、アスファルト舗装された平らで乾燥した道路上に車両10が停止している状態で、ハンドル41aを右と左とに回動させる場合に、ハンドル角と車輪角AFとの一対一の関係は維持されない。ハンドル41aに印加される力は、接続部50を介して、前フォーク17に伝達されるので、車輪角AFは、ハンドル角の変化に応じて、変化し得る。ただし、ハンドル角が1つの特定の値になるようにハンドル41aの向きが調整された時の車輪角AFは、1つの値に固定されず、変化し得る。例えば、ハンドル41aと前輪12Fとの両方が直進方向を向く状態で、ハンドル41aが右方向に回動される。これにより、前輪12Fは、右を向く。この後に、ハンドル41aが再び直進方向に戻される。ここで、前輪12Fは、直進方向を向かず、右を向いた状態に、維持され得る。また、ハンドル41aを右または左に回動させたとしても、車両10は、ハンドル41aの方向に旋回できない場合がある。また、車両10が停止している場合には、車両10が走行している場合と比べて、ハンドル角の変化量に対する車輪角AFの変化量の割合が小さい場合がある。
A2.車両10の制御:
図9は、車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。車両10は、制御に関する構成として、車速センサ122と、ハンドル角センサ123と、車輪角センサ124と、リーン角センサ125と、アクセルペダルセンサ145と、ブレーキペダルセンサ146と、シフトスイッチ47と、制御装置110と、右電気モータ51Rと、左電気モータ51Lと、リーンモータ25と、操舵モータ65と、を有している。
車速センサ122は、車両10の車速を検出するセンサである。本実施例では、車速センサ122は、前フォーク17(図1)の下端に取り付けられており、前輪12Fの回転速度、すなわち、車速を検出する。
ハンドル角センサ123は、ハンドル41aの向き(すなわち、ハンドル角)を検出するセンサである。本実施例では、ハンドル角センサ123は、ハンドル41a(図1)に固定された支持棒41axに取り付けられている。
車輪角センサ124は、前輪12Fの車輪角AFを検出するセンサである。本実施例では、車輪角センサ124は、操舵モータ65(図1)に取り付けられている。
リーン角センサ125は、傾斜角Tを検出するセンサである。リーン角センサ125は、リーンモータ25に取り付けられている(図4)。上述したように、上横リンク部材31Uに対する中縦リンク部材21の向きが、傾斜角Tに対応している。リーン角センサ125は、上横リンク部材31Uに対する中縦リンク部材21の向き、すなわち、傾斜角Tを検出する。
アクセルペダルセンサ145は、アクセル操作量を検出するセンサである。本実施例では、アクセルペダルセンサ145は、アクセルペダル45(図1)に取り付けられている。ブレーキペダルセンサ146は、ブレーキ操作量を検出するセンサである。本実施例では、ブレーキペダルセンサ146は、ブレーキペダル46(図1)に取り付けられている。
なお、各センサ122、123、124、125、145、146は、例えば、レゾルバ、または、エンコーダを用いて構成されている。
制御装置110は、主制御部100と、駆動装置制御部101と、リーンモータ制御部102と、操舵モータ制御部103と、を有している。制御装置110は、バッテリ120(図1)からの電力を用いて動作する。本実施例では、制御部100、101、102、103は、それぞれ、コンピュータを有している。具体的には、制御部100、101、102、103は、プロセッサ100p、101p、102p、103p(例えば、CPU)と、揮発性記憶装置100v、101v、102v、103v(例えば、DRAM)と、不揮発性記憶装置100n、101n、102n、103n(例えば、フラッシュメモリ)と、を有している。不揮発性記憶装置100n、101n、102n、103nには、対応する制御部100、101、102、103の動作のためのプログラムが、予め格納されている(図示省略)。また、主制御部100の不揮発性記憶装置100nには、後述する処理で参照されるマップを表すマップデータMT、MAFが、予め格納されている。プロセッサ100p、101p、102p、103pは、それぞれ、対応するプログラムを実行することによって、種々の処理を実行する。
主制御部100のプロセッサ100pは、センサ122、123、124、125、145、146とシフトスイッチ47とからの信号を受信し、受信した信号に応じて車両10を制御する。具体的には、主制御部100のプロセッサ100pは、駆動装置制御部101とリーンモータ制御部102と操舵モータ制御部103とに指示を出力することによって、車両10を制御する(詳細は後述)。
駆動装置制御部101のプロセッサ101pは、主制御部100からの指示に従って、電気モータ51L、51Rを制御する。リーンモータ制御部102のプロセッサ102pは、主制御部100からの指示に従って、リーンモータ25を制御する。操舵モータ制御部103のプロセッサ103pは、主制御部100からの指示に従って、操舵モータ65を制御する。これらの制御部101、102、103は、それぞれ、制御対象のモータ51L、51R、25、65にバッテリ120からの電力を供給する電気回路101c、102c、103c(例えば、インバータ回路)を有している。
以下、制御部100、101、102、103のプロセッサ100p、101p、102p、103pが処理を実行することを、単に、制御部100、101、102、103が処理を実行する、とも表現する。
図10は、制御装置110(図9)によって実行される制御処理の例を示すフローチャートである。図10のフローチャートは、後輪支持部80と前輪支持装置41との制御の手順を示している。図10の実施例では、制御装置110は、車速Vが、予め決められた基準速度Vthを超える場合には、前輪12Fの向きが車体90の傾斜に追随して変化するように前輪12Fを支持する第2モードで前輪支持装置41を動作させる。車速Vが基準速度Vth以下である場合、制御装置110は、前輪12Fの方向D12(すなわち、車輪角AF)を能動的に制御する第1モードで前輪支持装置41を動作させる。また、制御装置110は、車速Vが基準速度Vthを超える場合と基準速度Vth以下である場合とのそれぞれにおいて、車両10を傾斜させるリーン制御を行う。図10では、各処理に、文字「S」と、文字「S」に続く数字と、を組み合わせた符号が、付されている。
S100では、主制御部100は、センサ122、123、124、125、145、146とシフトスイッチ47とからの信号を取得する。これにより、主制御部100は、速度Vとハンドル角と車輪角AFと傾斜角Tとアクセル操作量とブレーキ操作量と走行モードとを、特定する。
S110では、主制御部100は、「走行モードが「リバース」と「パーキング」とのいずれかである」という条件が満たされるか否かを判断する。走行モードが「リバース」と「パーキング」とのいずれとも異なる場合(ここでは、走行モードが「ドライブ」と「ニュートラル」とのいずれかである場合)、S110の判断結果は、Noである。この場合、S115で、主制御部100は、車速Vが基準速度Vth以下であるか否かを判断する。
車速Vが基準速度Vth以下である場合(S115:Yes)、前輪支持装置41を第1モードで動作させることを含む処理S170、S180が、実行される。走行モードが「リバース」と「パーキング」とのいずれかである場合も(S110:Yes)、処理S170、S180が、実行される。このように、本実施例では、以下のいずれかの場合に、前輪支持装置41の動作モードが第1モードに制御される。
1)走行モードが「ドライブ」と「ニュートラル」のいずれかであり、かつ、速度Vが基準速度Vth以下である場合(S110:No、S115:Yes)。
2)走行モードが「パーキング」である場合(S110:Yes)。
3)走行モードが「リバース」である場合(S110:Yes)。
S170では、主制御部100は、ハンドル角に対応付けられた第1目標傾斜角T1を特定する。本実施例では、第1目標傾斜角T1は、ハンドル角(単位は、度)に所定の係数(例えば、30/60)を乗じて得られる値である。なお、ハンドル角と第1目標傾斜角T1との対応関係としては、比例関係に代えて、ハンドル角の絶対値が大きいほど第1目標傾斜角T1の絶対値が大きくなるような種々の関係を採用可能である。ハンドル角と第1目標傾斜角T1との対応関係を表す情報は、主制御部100の不揮発性記憶装置100nに格納されているマップデータMTによって、予め、決められている。主制御部100は、このマップデータMTを参照し、参照したデータによって予め決められた対応関係に従って、ハンドル角に対応する第1目標傾斜角T1を特定する。なお、第1目標傾斜角T1は、ハンドル角と他の情報(例えば、車速V)とに基づいて、決定されてもよい。
なお、上述したように、式6は、傾斜角Tと速度Vと旋回半径Rとの対応関係を示し、式7は、旋回半径Rと車輪角AFとの対応関係を示している。これらの式6、7を総合すれば、傾斜角Tと速度Vと車輪角AFとの対応関係が特定される。ハンドル角と第1目標傾斜角T1との対応関係は、傾斜角Tと速度Vと車輪角AFとの対応関係を通じて、ハンドル角と車輪角AFとを対応付けている、ということができる(ここで、車輪角AFは、速度Vに依存して変化し得る)。
主制御部100(図9)は、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1となるようにリーンモータ25を制御するための指示を、リーンモータ制御部102に供給する。リーンモータ制御部102は、指示に従って、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1になるように、リーンモータ25を駆動する。これにより、車両10の傾斜角Tが、ハンドル角に対応付けられた第1目標傾斜角T1に、変更される。本実施例では、リーンモータ制御部102は、傾斜角Tと第1目標傾斜角T1との差を用いるリーンモータ25のフィードバック制御を行う。例えば、いわゆるPID(Proportional Integral Derivative)制御が行われる。この制御により、傾斜角Tと第1目標傾斜角T1との差の絶対値が大きい場合に、リーンモータ25のトルクの大きさが大きくなり、傾斜角Tは、第1目標傾斜角T1に近づく。主制御部100とリーンモータ制御部102との全体は、車体90を傾斜させるリンク機構30とリーンモータ25とを制御する傾斜制御部として、機能する(傾斜制御部190とも呼ぶ)。
S180では、制御装置110は、第1モードで前輪支持装置41を動作させる処理を、実行する。図11は、制御装置110のうち、前輪支持装置41(具体的には、操舵モータ65)の制御に関連する部分のブロック図である。本実施例では、制御装置110は、車輪角AFが、後述する目標車輪角AFt1に近づくように、車輪角AFと目標車輪角AFt1との差dAFを用いる操舵モータ65のフィードバック制御を行う。具体的には、PD(Proportional Derivative)制御が行われる。この制御により、差dAFの絶対値が大きい場合に、操舵モータ65のトルクの大きさが大きくなり、車輪角AFは、目標車輪角AFt1に近づく。
このように、主制御部100と操舵モータ制御部103との全体は、操舵モータ65のトルクを制御する回動制御部として、機能する(回動制御部170とも呼ぶ)。また、図1、図9の符号180は、前輪12Fを支持する回動輪支持部180を示している。回動輪支持部180は、前輪12Fを回転可能に支持する支持部材の例である前フォーク17と、前フォーク17を左右に回動可能に支持する軸受68と、前フォーク17を左右に回動させるトルクを前フォーク17に印加する操舵モータ65と、操舵モータ65のトルクを制御する回動制御部170と、接続部50と、を含んでいる。
図11に示すように、操舵モータ制御部103は、第1加算点310と、Pゲイン制御部315と、P制御部320と、Dゲイン制御部335と、D制御部340と、第2加算点350と、電力制御部103cと、を含んでいる。処理部310、315、320、335、340、350は、操舵モータ制御部103のプロセッサ103pによって実現される。また、電力制御部103cは、操舵モータ65にバッテリ120からの電力を供給する電気回路(例えば、インバータ回路)を用いて、実現される。以下、操舵モータ制御部103が、処理部310、315、320、335、340、350、103cとして処理を実行することを、処理部310、315、320、335、340、350、103cが処理を実行する、とも表現する。
図12は、操舵モータ65を制御する処理の例を示すフローチャートである。この処理は、図10のS180の処理の例を示している。S200では、主制御部100は、車速センサ122とハンドル角センサ123と車輪角センサ124とから、車速Vを示す情報とハンドル角Aiを示す情報と車輪角AFを示す情報とを、それぞれ取得する。S210では、主制御部100は、第1目標車輪角AFt1を決定する。第1目標車輪角AFt1は、ハンドル角Aiと車速Vとに応じて決定される。第1目標車輪角AFt1とハンドル角Aiと車速Vとの対応関係を表す情報は、主制御部100(図9)の不揮発性記憶装置100nに格納されているマップデータMAFによって、予め、決められている。主制御部100は、このマップデータMAFを参照し、参照したデータによって予め決められた対応関係に従って、ハンドル角Aiと車速Vとの組み合わせに対応する第1目標車輪角AFt1を特定する。なお、本実施例では、ハンドル角Aiと車速Vと第1目標車輪角AFt1との対応関係は、図10のS170でハンドル角Aiを用いて特定される第1目標傾斜角T1と、車速Vと、上記の式6、式7とを用いて特定される車輪角AFと、の対応関係と同じである。
S220では、操舵モータ制御部103の第1加算点310は、主制御部100から第1目標車輪角AFt1を表す情報と車輪角AFを表す情報とを取得する。そして、第1加算点310は、第1目標車輪角AFt1から車輪角AFを引いて得られる差dAFを示す情報を、P制御部320とD制御部340とに、出力する。
S230では、Pゲイン制御部315は、主制御部100から車速Vを示す情報を取得し、車速Vを用いてPゲインKpを決定する。本実施例では、車速VとPゲインKpとの対応関係は、予め決められている(詳細は、後述する)。S235では、P制御部320は、差dAFとPゲインKpとを用いて、比例項Vpを決定する。比例項Vpの決定方法は、PID制御の比例項を決定するための公知の方法であってよい。例えば、差dAFにPゲインKpを乗じて得られる値が、比例項Vpとして出力される。
S245では、Dゲイン制御部335は、主制御部100から車速Vを示す情報を取得し、車速Vを用いてDゲインKdを決定する。本実施例では、車速VとDゲインKdとの対応関係は、予め決められている(詳細は、後述する)。S250では、D制御部340は、差dAFとDゲインKdとを用いて、微分項Vdを決定する。微分項Vdの決定方法は、PID制御の微分項を決定するための公知の方法であってよい。例えば、差dAFの微分値にDゲインKdを乗じて得られる値が、微分項Vdとして出力される。差dAFの微分値を特定するための時間差は、予め決められていてよく、これに代えて、他のパラメータ(例えば、DゲインKd)に基づいて決定されてよい。
なお、比例項Vpを決定するための処理S230、S235と、微分項Vdを決定するための処理S245、S250とは、並列に実行される。
S260では、第2加算点350は、制御部320、340から、項Vp、Vdを表す情報を、それぞれ取得する。そして、第2加算点350は、これらの項Vp、Vdの合計である制御値Vcを特定し、制御値Vcを示す情報を、電力制御部103cに出力する。S270では、電力制御部103cは、制御値Vcに従って、操舵モータ65に供給される電力を制御する。電力の大きさ(すなわち、操舵モータ65のトルクの大きさ)は、制御値Vcの絶対値が大きいほど、大きい。また、制御値Vcに基づいて生じる操舵モータ65のトルクの向きは、車輪角AFを第1目標車輪角AFt1に近づける向きである。このように、制御値Vcは、操舵モータ65のトルクを示している。制御値Vcは、例えば、操舵モータ65に供給すべき電流の向きと大きさとを示している。S260では、操舵モータ制御部103は、操舵モータ65のトルクを、決定しているといえる。また、各項Vp、Vdは、いずれも、制御値Vcの一部を形成している。従って、各項Vp、Vdも、操舵モータ65のトルクを制御するための制御値の一種である、といえる。
以上により、図12の処理、すなわち、図10のS180の処理が、終了する。制御装置110は、図10の処理を繰り返し実行する。S170、S180を実行するための条件が満たされる場合(S110:Yes、または、S110:No、S115:Yes)、制御装置110は、S170の傾斜角Tの制御と、S180の前輪支持装置41の制御(第1モード)を、継続して行う。この結果、車両10は、ハンドル角Aiに適した進行方向に向かって、走行する。
図13(A)は、車速VとPゲインKpとの予め決められた対応関係を示すグラフである。横軸は、車速Vを示し、縦軸は、PゲインKpを示している。図示するように、基準速度Vthを超える車速Vの特定範囲(本実施例では、基準速度Vthより大きく、車両10の予め決められた最高速度Vm以下の範囲)では、PゲインKpは、ゼロである。基準速度Vth以下の車速Vの範囲では、車速Vがゼロから基準速度Vthへ変化する場合に、PゲインKpは、予め決められたゲインKpm(Kpm>ゼロ)から、ゼロへ、直線的に変化する。このように、PゲインKpは、車速Vが大きいほど小さい。そして、PゲインKpは、車速Vの変化に対して、滑らかに変化している。図12のS230では、Pゲイン制御部315は、PゲインKpを、このような対応関係によって車速Vに対応付けられるPゲインKpに、決定する。速度VとPゲインKpとの対応関係は、不揮発性記憶装置103n(図9)に予め格納されているマップデータMpによって、予め、決められている。Pゲイン制御部315は、マップデータMpを参照して、車速Vに対応付けられたPゲインKpを特定する。
図13(B)は、車速VとDゲインKdとの予め決められた対応関係を示すグラフである。横軸は、車速Vを示し、縦軸は、DゲインKdを示している。図示するように、基準速度Vthを超える車速Vの特定範囲(本実施例では、基準速度Vthより大きく、車両10の最高速度Vm以下の範囲)では、DゲインKdは、ゼロである。基準速度Vth以下の車速Vの範囲では、DゲインKdは、予め決められたゲインKdmである(Kdm>ゼロ)。なお、このゲインKdmは、PゲインKpよりも十分に小さく、おおよそゼロである。図12のS245では、Dゲイン制御部335は、DゲインKdを、このような対応関係によって車速Vに対応付けられるDゲインKdに、決定する。速度VとDゲインKdとの対応関係は、不揮発性記憶装置103n(図9)に予め格納されているマップデータMdによって、予め、決められている。Dゲイン制御部335は、マップデータMdを参照して、車速Vに対応付けられたDゲインKdを特定する。
図13(C)は、車速Vと、操舵モータ65のトルクの最大の大きさTQmaxと、の対応関係を示すグラフである。横軸は、車速Vを示し、縦軸は、トルクの最大の大きさTQmaxを示している。トルクの最大の大きさTQmaxは、差dAFの絶対値が最大である場合に出力されるトルクの大きさである。例えば、車輪角AFが右方向の最大値であり、ハンドル角Aiが左方向の最大値である場合に出力され得るトルクの大きさが、トルクの最大の大きさTQmaxである。このようなトルクの最大の大きさTQmaxは、図12のS260で出力される制御値Vcの大きさ(ここでは、絶対値)の最大値に対応している。トルクの最大の大きさTQmaxは、PゲインKpが大きいほど、大きく、また、DゲインKdが大きいほど、大きい。
基準速度Vthを超える車速Vの特定範囲(本実施例では、基準速度Vthより大きく、車両10の最高速度Vm以下の範囲)では、PゲインKpとDゲインKdとがゼロであるので、トルクの最大の大きさTQmaxも、ゼロである。基準速度Vth以下の車速Vの範囲では、DゲインKdは、おおよそゼロである。従って、制御値Vc、すなわち、操舵モータ65のトルクは、主にPゲインKpに基づいて決まる。また、トルクの最大の大きさTQmaxも、主にPゲインKpに基づいて、決まる。具体的には、車速Vがゼロから基準速度Vthへ変化する場合に、トルクの最大の大きさTQmaxは、ゼロよりも大きいトルクTQmから、ゼロへ、直線的に変化する。このように、トルクの最大の大きさTQmaxは、車速Vが速いほど、小さい。この理由については、車速Vが基準速度Vthを超えている場合の処理の説明の後に、説明する。なお、PゲインKpは、車速Vの変化に対して、滑らかに変化しているので、トルクの最大の大きさTQmaxも、車速Vの変化に対して、滑らかに変化している。また、操舵モータ制御部103は、図12のS230、S245を実行することによって、PゲインKpとDゲインKd、ひいては、トルクの最大の大きさTQmaxを決定している、といえる。
図10のS115で、車速Vが基準速度Vthを超えている場合(S115:No)、前輪支持装置41を第2モードで動作させることを含む処理S130、S140が、実行される。このように、本実施例では、走行モードが「ドライブ」と「ニュートラル」のいずれかであり、かつ、速度Vが基準速度Vthを超えている場合に(S110:No、S115:No)、前輪支持装置41の動作モードが第2モードに制御される。
S130の処理は、S170の処理と、同じである。主制御部100は、ハンドル角に対応付けられた第1目標傾斜角T1を特定する。主制御部100は、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1となるようにリーンモータ25を制御するための指示を、リーンモータ制御部102に供給する。リーンモータ制御部102は、指示に従って、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1になるように、リーンモータ25を駆動する。これにより、傾斜角Tは、第1目標傾斜角T1に、制御される。
S140の処理は、S180の処理と、同じである。主制御部100(図11)と操舵モータ制御部103とは、図12の手順に従って、操舵モータ65を制御する。図13(A)に示すように、車速Vが基準速度Vthを超える場合、図12のS230で、PゲインKpは、ゼロに設定される。図13(B)に示すように、車速Vが基準速度Vthを超える場合、図12のS245で、DゲインKdは、ゼロに設定される。以上により、制御値Vcは、ゼロであり、トルクの最大の大きさTQmax(図13(C))は、ゼロである。電力制御部103c(図11)は、制御値Vcがゼロである場合には、操舵モータ65への電力の供給を停止する。以上により、操舵モータ65は、回動自在である。前輪支持装置41の動作モードは、第2モードである。そして、前輪12Fは、左右に自由に回動可能である。
前輪12Fは、式6で表される旋回半径Rと、式7と、から特定される車輪角AFの方向に、自然に、回動する。前輪12Fの回動は、傾斜角Tの変更開始の後に、自然に始まる。すなわち、車輪角AFは、車体90の傾斜に追随して変化する。そして、図10の処理が終了する。制御装置110は、図10の処理を繰り返し実行する。S130、S140を実行するための条件が満たされる場合(S110:No、S115:No)、制御装置110は、S130の傾斜角Tの制御と、S140の前輪支持装置41の制御(第2モード)を、継続して行う。この結果、車両10は、ハンドル角Aiに適した進行方向に向かって、走行する。
図示を省略するが、主制御部100(図9)と駆動装置制御部101とは、アクセル操作量とブレーキ操作量とに応じて電気モータ51L、51Rを制御する駆動制御部として機能する。本実施例では、具体的には、アクセル操作量が増大した場合には、主制御部100は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを増大させるための指示を、駆動装置制御部101に供給する。駆動装置制御部101は、指示に従って、出力パワーが増大するように、電気モータ51L、51Rを制御する。アクセル操作量が減少した場合には、主制御部100は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを減少させるための指示を、駆動装置制御部101に供給する。駆動装置制御部101は、指示に従って、出力パワーが減少するように、電気モータ51L、51Rを制御する。
ブレーキ操作量がゼロよりも大きくなった場合には、主制御部100は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを減少させるための指示を、駆動装置制御部101に供給する。駆動装置制御部101は、指示に従って、出力パワーが減少するように、電気モータ51L、51Rを制御する。なお、車両10は、全ての車輪12F、12L、12Rのうちの少なくとも1つの車輪の回転速度を摩擦によって低減するブレーキ装置を有することが好ましい。そして、ユーザがブレーキペダル46を踏み込んだ場合に、ブレーキ装置が、少なくとも1つの車輪の回転速度を低減することが好ましい。
以上のように、本実施例では、図10のS110の判断結果がNoである場合には、制御装置110は、車速Vに応じて、処理を切り替えている。ここで、S110の判断結果がNoであることは、通常は、車両10が前進していることを、示している。
車速Vが基準速度Vthを超える特定範囲(本実施例では、基準速度Vthを超え、最高速度Vm以下の範囲)内である場合(S115:No)、図10のS140で、回動制御部170(図9)は、PゲインKpとDゲインKdとをゼロに設定することによって、操舵モータ65のトルクを、ゼロに設定する(図13(C))。このようなゼロのトルクは、前輪12Fがハンドル41aに入力される操作量に拘わらず車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右に回動することを許容するトルクである。
車速Vが速い場合、種々の要因によって、前輪12Fの向きは、車体90の傾斜に追随して容易に変化できる。例えば、図8で説明したように、前輪12Fの方向は、回転する前輪12Fの角運動量に起因して、車体90の傾斜に追随して変化する。従って、前輪12Fの角運動量が大きいほど、すなわち、車速Vが速いほど、前輪12Fの向きは、車体90の傾斜に追随して容易に変化できる。本実施例では、車速Vが基準速度Vthを超える場合には、操舵モータ65のトルクがゼロであるので、車輪12Fの方向は、ハンドル41aの操作量に拘わらずに車体90の傾斜の変化に追随して変化できる。この結果、車輪角AFは傾斜角Tに適した角度に変化できるので、走行安定性が向上する。なお、基準速度Vthは、図10のS140で、前輪12Fの方向D12が傾斜角Tに適した方向を向くことができるように、予め、実験的に決定される(例えば、基準速度Vthは、時速15km)。
また、車速Vが基準速度Vth以下である場合(S115:Yes)、図10のS180で、回動制御部170は、操舵モータ65のトルクを、最大の大きさTQmax以下の大きさのトルクであって、前輪12Fの方向を、ハンドル41aの操作量を用いて特定される目標の方向(ここでは、目標車輪角AFt1に対応する方向)に近づけるトルクに設定する。これにより、車輪角AFは、目標車輪角AFt1に近づき、前輪12Fの方向は、目標の方向に近づく。この結果、前輪12Fの方向D12が、ハンドル41aの操作量に適した方向からずれることが抑制されるので、走行安定性が向上する。
また、図10のS180では、回動制御部170は、操舵モータ65のトルクの最大の大きさTQmaxを、車速Vが速いほど小さい大きさに設定する(図13(C))。トルクの最大の大きさTQmaxのこのような制御は、PゲインKpを、車速が速いほど小さいゲインに設定することによって、行われる(図13(A))。上述したように、車速Vが速いほど、前輪12Fの向きは、車体90の傾斜に追随して容易に変化できる。従って、車速Vが速いほど最大の大きさTQmaxが小さい値に設定される場合であっても、車両の良好な走行安定性は、維持される。また、車速Vが速い状態で、ハンドル41aが急に操作された場合であっても、車輪12Fの方向D12が急に変化することが抑制されるので、走行安定性が、向上する。
また、図13(C)で説明したように、回動制御部170は、車速Vが基準速度Vth以下である場合には、トルクの最大の大きさTQmaxを、以下のように制御する。すなわち、回動制御部170は、車速Vが基準速度Vthに達した場合に、トルクの最大の大きさTQmaxが、車速Vが基準速度Vthを超える場合のトルクの大きさ(ここでは、ゼロ)になるように、トルクの最大の大きさTQmaxを、車速Vが速いほど小さい大きさに設定する。これにより、車速Vが、基準速度Vth以下の範囲と基準速度Vthを超える範囲との間で変化する場合に、操舵モータ65のトルクが滑らかに変化するので、前輪12Fの方向D12の安定性が向上し、そして、走行安定性が向上する。
また、図13(C)で説明したように、車速Vが基準速度Vthを超える場合の操舵モータ65のトルクは、ゼロである。従って、前輪12Fは、容易に、左右に回動できるので、走行安定性が向上する。
また、図1で説明したように、接続部50は、ハンドル41aと前フォーク17とに接続されており、ハンドル41aから前フォーク17へ、力を伝達できる。これにより、ユーザは、ハンドル41aを操作することによって、前輪12Fの方向D12を修正できるので、走行安定性が向上する。また、接続部50は、ハンドル41aに入力される操作量に拘わらず車体90の傾斜の変化に追随して前輪12Fの方向D12が変化することを許容する(本実施例では、第3部分53のバネ定数が、小さい)。従って、車輪角AFは傾斜角Tに適した角度に変化できるので、走行安定性が向上する。
B.変形例:
(1)車速VとPゲインKpとの対応関係は、図13(A)に示す対応関係に代えて、他の種々の対応関係であってよい。例えば、車速Vが基準速度Vth以下である場合に、PゲインKpは、車速Vの変化に対して、曲線を描くように変化してもよい。また、車速Vが基準速度Vthを超える場合のPゲインKpは、ゼロよりも大きい値であってよい。
車速VとDゲインKdとの対応関係は、図13(B)に示す対応関係に代えて、他の種々の対応関係であってよい。例えば、車速Vが基準速度Vth以下である場合に、DゲインKdは、車速Vの変化に応じて、変化してもよい。また、車速Vが基準速度Vthを超える場合のDゲインKdは、ゼロよりも大きい値であってよい。
また、操舵モータ65の制御から、D制御が省略されてもよい。すなわち、図11のDゲイン制御部335とD制御部340とが省略され、図12のS245、S250が省略されてよい。また、操舵モータ65の制御は、PID(Proportional Integral Differential)制御であってもよい。
いずれの場合も、車速Vが基準速度Vthを超える場合には、PゲインKpとDゲインKdとIゲインとは、操舵モータ65のトルクの最大の大きさTQmaxが以下のように小さくなるように、小さい値であることが好ましい。具体的には、操舵モータ65のトルクの最大の大きさTQmaxが、ハンドル41aの操作量に拘わらず前輪12Fが車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右に回動することを許容するような、小さな大きさであることが好ましい。
また、車速Vが基準速度Vth以下である場合には、PゲインKpとDゲインKdとIゲインとは、それぞれ、以下のようなトルクの最大の大きさの変化を実現することが好ましい。すなわち、操舵モータ65のトルクの最大の大きさは、車速Vが速いほど小さくなる。そして、車速が基準速度Vthに達した場合に、操舵モータ65のトルクの最大の大きさは、車速Vが基準速度Vthを超える場合のトルクの最大の大きさになる。操舵モータ65に車輪角AFを目標車輪角に近づけるトルクを出力させるとともに、トルクの最大の大きさの上記のような変化を実現するためには、PゲインKpは、車速Vが速いほど小さい値に設定されることが好ましい。そして、速度Vが基準速度Vthに達した場合に、PゲインKpは、車速Vが基準速度Vthを超える場合のPゲインKpと同じ値になることが好ましい。DゲインKdとIゲインとについては、DゲインKdに起因する微分項VdとIゲインに起因する積分項とが比例項Vpに比べて小さくなるように、十分に小さい値に設定されることが好ましい。
ただし、車速Vが、基準速度Vth未満以下の速度から基準速度Vthに達した場合に、操舵モータ65のトルクの最大の大きさは、車速Vが基準速度Vthを超える場合のトルクの最大の大きさと異なっていてもよい。この場合も、基準速度Vth以下の車速Vの範囲において、操舵モータ65のトルクの最大の大きさが、車速Vが速いほど小さくなる場合には、基準速度Vthにおけるトルクの変化が小さくなる。従って、走行安定性が、向上する。
(2)図10のS140、S180で目標車輪角を特定する方法は、種々の方法であってよい。上述したように、ハンドル角Aiと車速Vと第1目標車輪角AFt1との対応関係は、図10のS170でハンドル角Aiを用いて特定される第1目標傾斜角T1と、車速Vと、上記の式6、式7とを用いて特定される車輪角AFと、の対応関係と同じである。従って、第1目標車輪角AFt1は、第1目標傾斜角T1と車速Vとの組み合わせを用いて、特定されてよい。例えば、マップデータMAFは、第1目標傾斜角T1と車速Vとの組み合わせと、第1目標車輪角AFt1と、の対応関係を定めてよく、主制御部100は、マップデータMAFを参照して、第1目標傾斜角T1と車速Vとの組み合わせに対応する第1目標車輪角AFt1を特定してよい。また、傾斜角Tは、第1目標傾斜角T1に近づくように、制御される。従って、第1目標傾斜角T1の代わりに、傾斜角Tが用いられてよい。例えば、マップデータMAFは、実際の傾斜角Tと車速Vとの組み合わせと、第1目標車輪角AFt1と、の対応関係を定めてよく、主制御部100は、マップデータMAFを参照して、傾斜角Tと車速Vとの組み合わせに対応する第1目標車輪角AFt1を特定してよい。なお、第1目標傾斜角T1と傾斜角Tとは、車体90の傾斜の大きさに関連する傾斜パラメータの例である。また、主制御部100は、ハンドル角Aiと傾斜パラメータとの両方と、車速Vと、を用いて、目標車輪角を決定してもよい。この場合、主制御部100は、目標車輪角を、ハンドル角Aiに適した車輪角と、傾斜パラメータに適した車輪角と、の間の車輪角に、決定してよい。
また、主制御部100は、ハンドル角Aiと傾斜角Tと第1目標傾斜角T1と車速Vとを含む制御パラメータと、操舵モータ65の目標トルクと、の対応関係を示す情報(例えば、マップデータ)を参照して、制御パラメータに対応付けられた目標トルクを特定してよい。そして、操舵モータ制御部103は、操舵モータ65に、目標トルクに対応する電力を供給してよい。対応関係を示す情報は、予め実験的に、決定されてよい。
このように、主制御部100(ひいては、回動制御部170)は、車体の傾斜の大きさに関連する傾斜パラメータと、ハンドル角Ai等のハンドル41aの操作量と、の少なくとも一方と、車速Vと、を含む制御パラメータを用いて、操舵モータ65のトルクを制御してよい。
(3)図10のS130、S170でリーンモータ25を制御する方法は、種々の方法であってよい。例えば、主制御部100は、ハンドル角Aiと、傾斜角Tと、を含む制御パラメータと、リーンモータ25の目標トルクと、の対応関係を示す情報(例えば、マップデータ)を参照して、制御パラメータに対応付けられた目標トルクを特定してよい。そして、リーンモータ制御部102は、リーンモータ25に、目標トルクに対応する電力を供給してよい。対応関係を示す情報は、予め実験的に、決定されてよい。
このように、主制御部100(ひいては、傾斜制御部190)は、傾斜角Tと、ハンドル角Ai等のハンドル41aの操作量と、を含む制御パラメータを用いて、リーンモータ25のトルクを制御してよい。
(4)車両10の制御処理は、図10等で説明した処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、基準速度Vthを第1基準速度Vthと呼び、第1基準速度Vthよりも大きい基準速度を、第2基準速度と呼ぶ。そして、車速Vが第2基準速度を超える場合に、前輪支持装置41の動作モードは、第1モードに制御されてもよい。前輪支持装置41の動作モードが第2モードに制御される車速Vの範囲は、第1基準速度Vthを超え、第2基準速度以下の範囲である。一般的に、前輪支持装置41の動作モードが第2モードに制御される車速Vの特定範囲は、基準速度Vthを超え、かつ、上限速度以下の種々の範囲であってよい。上限速度は、予め決められた速度であってよい。上限速度は、例えば、最高速度Vmであってよく、最高速度Vmよりも遅い第2基準速度であってよい。
また、低速時(例えば、速度Vが基準速度Vth以下である場合)には、傾斜角Tは、第1目標傾斜角T1よりも絶対値が小さい第2目標傾斜角T2に制御されてもよい。第2目標傾斜角T2は、例えば、以下の式8で表されてよい。
T2 = (V/Vth)T1 (式8)
式8で表される第2目標傾斜角T2は、ゼロから基準速度Vthまで車速Vに比例して変化する。第2目標傾斜角T2の絶対値は、第1目標傾斜角T1の絶対値以下である。この理由は、以下の通りである。低速時には、高速時と比べて、進行方向が頻繁に変更される。従って、低速時には、傾斜角Tの絶対値を小さくすることによって、進行方向の頻繁な変更を伴う走行を、安定化できる。なお、第2目標傾斜角T2と車速Vとの関係は、車速Vが大きいほど第2目標傾斜角T2の絶対値が大きくなるような、他の種々の関係であってよい。
また、低速時(例えば、車速Vが基準速度Vth以下である場合)には、車輪角AFは、第1目標車輪角AFt1よりも絶対値が大きい第2目標車輪角AFt2に制御されてもよい。例えば、第2目標車輪角AFt2は、ハンドル角Aiが同じ場合には、車速Vが小さいほど第2目標車輪角AFt2の絶対値が大きくなるように、決定されてよい。この構成によれば、速度Vが小さい場合の車両10の最小回転半径を小さくできる。いずれの場合も、第2目標車輪角AFt2は、車速Vが同じ場合には、ハンドル角Aiの絶対値が大きいほど第2目標車輪角AFt2の絶対値が大きくなるように、決定されることが好ましい。
いずれの場合も、基準速度Vth以下の車速Vと、基準速度Vthを超える車速Vと、の間で車速Vが変化する場合に、車輪角AFと傾斜角Tとが滑らかに変化するように、操舵モータ65とリーンモータ25とが制御されることが好ましい。
(5)車体90を幅方向に傾斜させる傾斜機構の構成としては、リンク機構30(図4)を含む傾斜機構89の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。図14は、車両の別の実施例の概略図である。図14の車両10aは、図4等で説明した車両10のリンク機構30をモータ台30aに置換して得られる車両である。後輪12L、12Rのモータ51L、51Rは、それぞれ、モータ台30aに固定されている。モータ台30aと第1支持部82とは、軸受38aによって、回動可能に連結されている。リーンモータ25aは、モータ台30aに対して、第1支持部82を、右方向DR側と左方向DL側とのそれぞれに回動させることができる。これにより、車体90は、右方向DR側と左方向DL側とのそれぞれに、傾斜できる。後輪12L、12Rは、車体90が傾斜しているか否かに拘わらずに、地面GLに対して、傾斜せずに、直立する。このように、傾斜機構89aとしては、車輪12L、12Rのモータ51L、51Rが固定された台30aと、車体90を支持する部材82と、台30aと部材82とを回動可能に連結する軸受38aと、台30aに対して部材82を傾斜させるリーンモータ25aと、を含む構成を採用してもよい。
また、一対の車輪12L、12R(図5(B))のそれぞれが、車体90を支持する部材82に上下方向にスライド可能に取り付けられ、そして、一対の車輪12L、12Rの間の回転軸に垂直な方向(すなわち、車体90の上下方向)の相対位置が、部材82と車輪12Lとを連結する第1液圧シリンダと、部材82と車輪12Rとを連結する第2液圧シリンダと、によって変更されてもよい。
また、傾斜機構は、車両の幅方向に互いに離れて配置された一対のアームと、各アームの一端部を車体に回動可能に連結する一対の軸受と、を含んでよい。各アームは、一端部から、後方向DB側かつ下方向DD側に向けて斜めに延びて、他端部に至る。軸受の回動軸は、右方向DRに平行であり、各アームは、軸受に接続された一端部を中心に、上下に回動可能である。一対のアームの他端部は、幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪を、それぞれ、回転可能に支持している。そして、各アームは、車体に対して独立に回動することによって、車輪と車体との距離を独立に変化させる。例えば、図5(B)実施例と同様に、右側の車輪と車体との距離が短くなり、左側の車輪と車体との距離が長くなる場合、車体は、右側に傾斜する。なお、車輪と車体との間の距離は、アームと車体とに接続された駆動装置(例えば、モータ、液圧シリンダとポンプなど)によって、制御されてよい。
一般的には、地面GLに対して車体90を傾斜させることが可能な種々の構成を採用可能である。傾斜機構は、例えば、「車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪の少なくとも一方に直接的または間接的に接続された第1部材」と、「車体に直接的または間接的に接続された第2部材」と、「第1部材を第2部材に可動に接続する接続装置」と、を含んでよい。接続装置は、例えば、第1部材を第2部材にスライド可能に接続する液圧シリンダであってよい。また、接続装置は、第1部材と第2部材とを回動可能に連結する軸受であってよい。軸受の回動軸の方向は、第1部材に接続された車輪と、車体と、の間の距離を変化させることが可能な任意の方向であってよい。例えば、図4、図14の軸受38、39、38aの回動軸のように、回動軸は、前方向DFに平行であってよい。なお、軸受は、転がり軸受であってよく、これに代えて、滑り軸受であってもよい。また、傾斜機構は、第1部材に対する第2部材の位置を変化させる力(例えば、第1部材に対する第2部材の向きを変化させるトルク)を第1部材と第2部材とに作用させる駆動装置を含んでよい。
図4の実施例では、横リンク部材31D、31Uは、リンク部材33L、33Rとモータ51L、51Rとを介して、間接的に、車輪12L、12Rに接続されており、第1部材の例である。中縦リンク部材21は、第1支持部82とサスペンションシステム70とを介して、間接的に、車体90に接続されており、第2部材の例である。そして、リーンモータ25は、駆動装置の例である。また、図14の実施例では、モータ台30aは、モータ51L、51Rを介して、間接的に、車輪12L、12Rに接続されており、第1部材の例である。第1支持部82は、サスペンションシステム70を介して、間接的に、車体90に接続されており、第2部材の例である。図14の傾斜機構89aは、モータ台30aと、第1支持部82と、モータ台30aと第1支持部82とを回動可能に連結する軸受38aと、駆動装置であるリーンモータ25aと、を含んでいる。
図4の実施例において、サスペンション70L、70Rが、単純なスペーサに置換されてよい。この場合、中縦リンク部材21は、第1支持部82とスペーサとを介して、間接的に、車体90に接続されており、傾斜機構の第2部材の例である。また、第1支持部82が省略され、軸受39は、サスペンション70L、70Rと上横リンク部材31Uとを、連結してよい。この場合、サスペンション70L、70Rは、車体90に直接的に接続されており、傾斜機構の第2部材の例である。また、図14の実施例において、モータ台30aが省略され、軸受38aは、第1支持部82とモータ51L、51Rとを、連結してよい。この場合、モータ51L、51Rは、車輪12L、12Rに直接的に接続されており、傾斜機構の第1部材の例である。
また、傾斜機構の駆動装置は、電気モータに代えて他の種類の駆動装置であってもよい。例えば、傾斜機構は、ポンプからの液圧(例えば、油圧)によって駆動されてもよい。図14の実施例において、リーンモータ25aが省略され、台30aに対する部材82の向きが、台30aと部材82とを接続する液圧シリンダによって変更されてもよい。
(6)操作入力部(例えば、ハンドル41a)へ入力される操作量を用いて傾斜機構を制御する傾斜制御部は、図9で説明した主制御部100とリーンモータ制御部102とのように、コンピュータを含む電気回路であってよい。代わりに、コンピュータを含まない電気回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))が、操作入力部へ入力される操作量に応じて、傾斜角Tが目標の傾斜角になるように、傾斜機構を制御してもよい。このように、傾斜制御部は、傾斜機構の駆動装置を制御する電気回路を含んでよい。
(7)操作することで旋回方向と旋回の程度とを示す操作量が入力される操作入力部は、ハンドル41a(図1)のように左と右とに回動可能な部材に代えて、種々の装置であってよい。例えば、操作入力部は、予め決められた基準方向(例えば、直立方向)から左と右とに傾斜可能なレバーであってよい。レバーの傾斜方向(右と左とのいずれか)は、旋回方向を示し、基準方向からのレバーの傾斜の角度は、旋回の程度を示している。操作入力部は、このようなハンドル41aとレバーのように、機械的な動き(例えば、回動と傾斜とのいずれか)によって操作量を受け付ける種々の装置であってよい。これに代えて、操作入力部は、電気的に操作量を受け付ける装置であってもよい。例えば、タッチパネルに、操作量が、入力されてもよい。
(8)左右に回動可能な車輪である回動輪を支持する回動輪支持部の構成は、図1、図9の回動輪支持部180の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。一般的には、回動輪支持部は、1以上の回動輪を回転可能に支持する支持部材と、車体に対して支持部材を左右に回動可能に支持する回動装置と、支持部材を左右に回動させるトルクを支持部材に印加する回動駆動装置と、操作量と車速とを用いて回動駆動装置のトルクを制御する回動制御部と、を含んでよい。このような回動輪支持部を採用する場合、車体が傾斜する場合に、支持部材も車体と共に傾斜する。従って、回動輪の方向(すなわち、車輪角)は、車体の傾斜に追随して変化できる。また、回動駆動装置は、支持部材にトルクを印加することにより、1以上の回動輪を支持する支持部材の方向、すなわち、1以上の回動輪の方向を、制御できる。
ここで、支持部材は、前フォーク17(図1)に代えて、他の構成の部材であってよい(例えば、片持ちの部材)。また、回動装置は、軸受68(図1)のように、支持部材を前方向DFに対して左右に回動可能に車体に接続する軸受を含んでよい。このような軸受は、車体と支持部材とを接続するとともに、支持部材を車両の前方向DFに対して左右に回動可能に支持する。なお、軸受は、転がり軸受であってよく、これに代えて、滑り軸受であってもよい。いずれの場合も、回動装置は、車体に直接的に接続されてよく、また、他の部材を介して間接的に、車体に接続されてよい。ここで、回動装置は、車体が傾斜する場合に支持部材も車体と共に傾斜するように、支持部材と車体とを接続していることが好ましい。また、回動駆動装置は、操舵モータ65(図1)のような電気モータに代えて他の種類の駆動装置であってもよい。例えば、回動駆動装置は、ポンプを含み、ポンプからの液圧(例えば、油圧)が、支持部材にトルクを印加してよい。また、回動制御部は、回動制御部170(図9)のようにコンピュータを含む電気回路であってよい。代わりに、コンピュータを含まない電気回路(例えば、ASIC、アナログ電気回路など)が、回動駆動装置を制御してもよい。このように、回動制御部は、回動駆動装置を制御する電気回路を含んでよい。また、回動駆動装置(例えば、操舵モータ65)のトルクを制御するために用いられる制御値(例えば、制御値Vc、比例項Vp、微分項Vdなど)は、上記実施例の制御値Vcのようにデジタル情報によって示されてよく、これに代えて、電圧値、電流値、抵抗値などの種々のアナログ情報によって示されてよい。
なお、1つの支持部材は、複数の回動輪を、回転可能に支持してよい。また、車両が複数の回動輪を備える場合、車両は、複数の支持部材を備えてよい。そして、複数の支持部材のそれぞれが、1以上の回動輪を回転可能に支持してよい。複数の支持部材のうちの1以上の支持部材のそれぞれが、複数の車輪を支持してよい。また、車両に設けられている支持部材の総数は、回動輪の総数に拘わらずに、1つであってよい。例えば、回動輪の総数がM個(Mは2以上の整数)である場合、1つの支持部材が、M個の回動輪のそれぞれを回転可能に支持してよい。また、支持部材の総数は、回動輪の総数と同じであってもよい。例えば、M個の支持部材が、それぞれ、M個の回動輪を回転可能に支持してよい。また、回動装置は、各支持部材に1つずつ、設けられていてよい。
いずれの場合も、図1で説明したトレールLtは、正値であることが好ましい。トレールLtが正値である場合、回動輪の車輪角は、容易に、車体90の傾斜の変化に追随して変化する。ただし、トレールLtは、ゼロであってもよい。また、キャスター角CAは、ゼロであってもよく、ゼロとは異なっていてもよい(キャスター角CAがゼロ以上であることが好ましい)。
(9)操作入力部と支持部材とに接続されている接続部の構成は、図1の接続部50の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。接続部の構成は、操作入力部と支持部材とに機械的に接続され、操作入力部の操作による操作入力部の機械的な動きに応じて操作入力部から支持部材へトルクを伝達し、操作入力部に入力される操作量に拘わらず車体の傾斜の変化に追随して1以上の回動輪の方向が変化することを許容する種々の構成であってよい。
例えば、接続部50(図1)の第1部分51は、ハンドル41aに直接的に固定されてよい。すなわち、接続部50は、ハンドル41aに、直接的に接続されてもよい。また、接続部50の第2部分52は、他の部材を介して、前フォーク17に接続されてよい。すなわち、接続部50は、他の部材を介して間接的に、前フォーク17に接続されてよい。また、接続部50の第3部分53は、弾性変形可能な他の種類の部材であってよい。第3部分53は、例えば、トーションバネ、ゴム等の種々の弾性体であってよい。また、第3部分53は、弾性体に限らず、他の種類の装置であってよい。例えば、第3部分53は、ダンパであってよい。また、第3部分53は、流体クラッチ、流体トルクコンバータなどの、流体を介してトルクを伝達する装置であってよい。このように、接続部50の第3部分53は、弾性体とダンパと流体クラッチと流体トルクコンバータとのうちの少なくとも1つを含んでよい。
第3部分53は、第1部分51と第2部分52とに接続され、第1部分51から第2部分52へトルクを伝達し、そして、第1部分51と第2部分52との間の相対位置の変化を許容する可動部分を含む、種々の装置であってよい。このような第3部分53は、第1部分51が動いていない状態で第2部分52が動くことを許容する、すなわち、ハンドル角Aiが変化していない状態で車輪角AFが変化することを許容する。この結果、前輪12Fの車輪角AFは、車体90の傾斜に追随して容易に変化できる。いずれの場合も、接続部50は、前輪支持装置41が第2モードで動作している場合に、ハンドル41aに入力されるハンドル角Aiに拘わらず、前輪12Fの車輪角AFが車体90の傾斜の変化に追随して変化することを許容する程度に緩い接続を実現していることが好ましい。ただし、そのような接続部50が省略されてもよい
(10)道路が傾斜する場合には、リーン角センサ125からの信号を用いて特定される傾斜角T(ここでは、上横リンク部材31Uに対する中縦リンク部材21の向きの角度)は、鉛直上方向DUに対する車体90の車両上方向DVUの傾斜角から、ずれ得る。そこで、傾斜角Tに代えて、道路の傾斜に依存せずに特定される鉛直上方向DU(図5(B))に対する車体90の上方向(例えば、車両上方向DVU)の傾斜角が利用されてよい(実傾斜角とも呼ぶ)。例えば、車両10、10aは、鉛直上方向DUを特定する鉛直方向検出装置を備えてよい。主制御部100は、鉛直方向検出装置によって特定された鉛直上方向DUを用いて、実傾斜角を特定してよい。鉛直方向検出装置の構成は、種々の構成であってよい。例えば、鉛直方向検出装置は、加速度センサと、ジャイロセンサと、信号処理部と、を含んでよい。加速度センサは、任意の方向の加速度を検出するセンサであり、例えば、3軸の加速度センサである。ジャイロセンサは、任意の方向の回転軸を中心とする角加速度を検出するセンサであり、例えば、3軸の角加速度センサである。加速度センサとジャイロセンサは、車両10、10aの種々の部材に固定されてよい。以下、加速度センサとジャイロセンサとが、車両10、10aの複数の部材のうちの共通の部材(センサ固定部材と呼ぶ)に固定されていることとする。
加速度センサは、加速度の方向を検出する。以下、加速度センサによって検出される加速度の方向を、検出方向と呼ぶ。車両10、10aが停止している状態では、検出方向は、鉛直上方向DUの反対の鉛直下方向DDと同じである。すなわち、検出方向の反対の方向が、鉛直上方向DUである。
車両10、10aの走行時には、検出方向は、車両10、10aの動きに応じて、鉛直下方向DDからずれ得る。例えば、車両10、10aが前進中に加速する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して後方向DB側に傾斜する方向に、ずれる。車両10、10aが前進中に減速する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して前方向DF側に傾斜する方向に、ずれる。車両10、10aが前進中に左方向に旋回する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して右方向DR側に傾斜する方向に、ずれる。車両10、10aが前進中に右方向に旋回する場合、検出方向は、鉛直下方向DDに対して左方向DL側に傾斜する方向に、ずれる。
鉛直方向検出装置の信号処理部は、車速センサ122によって特定される車速Vを用いることによって、車両10、10aの加速度を算出する。そして、信号処理部は、加速度を用いることによって、車両10、10aの加速度に起因する鉛直下方向DDに対する検出方向のずれを特定する(例えば、検出方向の前方向DFまたは後方向DBのずれが特定される)。また、信号処理部は、ジャイロセンサによって特定される角加速度を用いることによって、車両10、10aの角加速度に起因する鉛直下方向DDに対する検出方向のずれを特定する(例えば、検出方向の右方向DRまたは左方向DLのずれが、特定される)。以上により、信号処理部は、鉛直下方向DDに対する検出方向のずれを特定する。そして、信号処理部は、検出方向を、特定されたずれを用いて修正することによって、鉛直下方向DD、ひいては、鉛直上方向DUを特定する。そして、信号処理部は、特定した鉛直上方向DUを示す情報を、出力する。
特定される鉛直上方向DUは、センサ固定部材に対する鉛直上方向DUを示している。主制御部100は、鉛直方向検出装置によって検出された鉛直上方向DUと、センサ固定部材と車体90との間の位置関係と、を用いて、鉛直上方向DUと車体90の車両上方向DVUとの間の角度、すなわち、実傾斜角を、算出する。主制御部100(ひいては、傾斜制御部190)は、算出された実傾斜角を用いて、リーンモータ25を制御する。例えば、傾斜制御部190は、目標傾斜角に代えて目標実傾斜角を算出し、実傾斜角が目標実傾斜角に近づくようにリーンモータ25を制御する。この構成によれば、道路が左右に傾斜している場合であっても、傾斜制御部190は、実傾斜角を、適切に、制御できる。また、主制御部100(ひいては、回動制御部170)は、算出された実傾斜角を用いて、操舵モータ65を制御してよい。これにより、車輪角AFは、適切に制御される。
なお、鉛直方向検出装置の信号処理部は、ジャイロセンサと加速度センサとからの情報に加えて、車両10、10aの動きに関連する他の情報を用いて、鉛直上方向DUを検出してよい。他の情報としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて特定される車両10、10aの位置が、用いられてよい。信号処理部は、例えば、鉛直上方向DUを、GPSによる位置を用いて、補正してもよい。なお、GPSによる位置に基づく補正量は、予め実験的に決定されてよい。
鉛直方向検出装置の信号処理部は、種々の電気回路であってよく、例えば、コンピュータを含む電気回路であってよく、コンピュータを含まない電気回路(例えば、ASIC)であってもよい。ジャイロセンサは、角加速度に代えて、角速度を検出するセンサであってよい。
(11)車両の構成としては、上述の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、トレールLt(図1)が、ゼロ、または、ゼロ未満であってもよい。この場合も、図8で説明したように、回転する前輪12Fの角運動量を利用して、前輪12Fの方向(すなわち、車輪角AF)は、車体90の傾斜に追随して変化できる。また、図4、図14の実施例において、モータ51L、51Rは、サスペンションを介して、装置30、30aに接続されてもよい。主制御部100(図9)の機能のうちのリーンモータ25を制御するための機能の少なくとも一部が、リーンモータ制御部102によって実現されてもよい。主制御部100の機能のうちの操舵モータ65を制御するための機能の少なくとも一部が、操舵モータ制御部103によって実現されてもよい。制御装置110が、1つの制御部によって構成されてもよい。また、制御装置110(図9)のようなコンピュータが省略されてもよい。例えば、コンピュータを含まない電気回路(例えば、ASIC)が、センサ122、123、124、125、145、146とスイッチ47とからの信号に応じて、モータ51R、51L、25、65を制御してもよい。また、電気回路に代えて、油圧やモータの駆動力を利用して動作する機械が、モータ51R、51L、25、65を制御してもよい。また、入力値と出力値との対応関係(例えば、車速VとPゲインKpとの対応関係)を特定する方法は、マップデータ(例えば、マップデータMT、MAF、Mp、Md)を用いる方法に代えて、入力値を引数として用いて出力値を算出する関数を用いる方法などの他の種々の方法であってよい。また、車両の制御に用いられる対応関係(例えば、マップデータMT、MAF、Mp、Mdによって示される対応関係)は、車両10、10aが適切に走行できるように、実験的に決定されてよい。また、車両の制御装置は、車両の制御に用いられる対応関係を、車両の状態に応じて、動的に変更してよい。例えば、車両は、車体の重量を測定する重量センサをー備え、制御装置は、車体の重量に応じて対応関係を調整してよい。
また、複数の車輪の総数と配置としては、種々の構成を採用可能である。例えば、前輪の総数が2であり、後輪の総数が1であってもよい。また、前輪の総数が2であり、後輪の総数が2であってもよい。また、幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪が、前輪であってもよく、また、回動輪であってもよい。また、後輪が回動輪であってもよい。また、駆動輪が前輪であってもよい。いずれの場合も、車両は、車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪と、1個以上の他の車輪と、を含むN個(Nは3以上の整数)の車輪を備えることが好ましい。そして、車両のN個の車輪は、1個以上の前輪と、前輪よりも後方向DB側に配置された1個以上の後輪と、を含むことが好ましい。この構成によれば、車両の停止時に車両が自立できる。ここで、一対の車輪と他の車輪との少なくとも一方が、車両の前進方向に対して左右に回動可能な1以上の回動輪として構成されていることが好ましい。すなわち、一対の車輪のみが回動輪であってよく、他の車輪のみが回動輪であってよく、一対の車輪と他の車輪とを含む3以上の車輪が回動輪であってよい。ここで、1以上の回動輪に含まれる他の車輪の総数は、任意の数であってよい。また、駆動輪を駆動する駆動装置は、電気モータに代えて、車輪を回転させる任意の装置であってよい(例えば、内燃機関)。また、駆動装置を省略してもよい。すなわち、車両は、人力の車両であってもよい。この場合、傾斜機構は、操作入力部の操作に応じて動作する人力の傾斜機構であってよい。また、車両の最大定員数は、1人に代えて、2人以上であってもよい。
(12) 上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図9の制御装置110の機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
10、10a…車両、11…座席、12F…前輪、12L…左後輪(駆動輪)、12R…右後輪(駆動輪)、12Fc…重心、12Lb、12Rb…タイヤ、12La、12Ra…ホイール、17…前フォーク、20…本体部、20a…前部、20b…底部、20c…後部、20d…支持部、21…中縦リンク部材、25、25a…リーンモータ、30…リンク機構、30a…モータ台、31D…下横リンク部材、31U…上横リンク部材、33L…左縦リンク部材、33R…右縦リンク部材、38、38a、39…軸受、41…前輪支持装置、41a…ハンドル、41ax…支持棒、45…アクセルペダル、46…ブレーキペダル、47…シフトスイッチ、50…接続部、51…第1部分、52…第2部分、53…第3部分、51L…左電気モータ、51R…右電気モータ、65…操舵モータ、66…ロータ、67…ステータ、68…軸受、70…サスペンションシステム、70L…左サスペンション、70R…右サスペンション、70La、70Ra…中心軸、71L…コイルスプリング、71R…コイルスプリング、72L…ショックアブソーバ、72R…ショックアブソーバ、75…連結部、80…後輪支持部、82…第1支持部、83…第2支持部、89、89a…傾斜機構、90…車体、90c…重心、100p、101p、102p、103p…プロセッサ、100v、101v、102v、103v…揮発性記憶装置、100n、101n、102n、103n…不揮発性記憶装置、101c、102c…電気回路、103c…電力制御部(電気回路)、110…制御装置、100…主制御部、101…駆動装置制御部、102…リーンモータ制御部、103…操舵モータ制御部、120…バッテリ、122…車速センサ、123…ハンドル角センサ、124…車輪角センサ、125…リーン角センサ、145…アクセルペダルセンサ、146…ブレーキペダルセンサ、170…回動制御部、180…回動輪支持部、190…傾斜制御部、310…第1加算点、315…Pゲイン制御部、320…P制御部、335…Dゲイン制御部、340…D制御部、350…第2加算点、T…傾斜角、V…速度、R…旋回半径、m…質量、V…車速、Vth…基準速度、AFt1…第1目標車輪角、AFt2…第2目標車輪角、F1…第1力、T1…第1目標傾斜角、P1…接触中心、F2…第2力、T2…第2目標傾斜角、P2…交点、CA…キャスター角、RF…回動方向、AF…車輪角、DU…上方向(鉛直上方向)、DD…下方向、DL…左方向、DR…右方向、DF…前方向、DB…後方向、GL…地面、MT…マップデータ、Ta…傾斜角Tの絶対値、MAF…マップデータ、Vp…比例項、Vd…微分項、Vc…制御値、Cf…前中心、Cb…後中心、Lh…ホイールベース、Ai…ハンドル角、Vm…最高速度、Cr…旋回中心、Lt…トレール、D12…進行方向、dAF…差、Ca1…接触領域、F1b…力、F2b…力、Tq1…トルク、Ax1…回動軸、DVU…車両上方向、Ax2…回転軸、Ax3…前軸、CaL…接触領域、PbL…接触中心、CaR…接触領域、PbR…接触中心、TQm…トルク、ArL…回転軸、AxL…傾斜軸、ArR…回転軸、AxR…ロール軸、Kdm…ゲイン、Vth…基準速度(第1基準速度)、Kpm…ゲイン

Claims (3)

  1. 車両であって、
    前記車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪と、1個以上の他の車輪と、を含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、前記一対の車輪と他の車輪との少なくとも一方が前記車両の前進方向に対して左右に回動可能な1以上の回動輪として構成されるとともに、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含む、N個の車輪と、
    車体と、
    前記車体を前記幅方向に傾斜させる傾斜機構と、
    操作することで旋回方向と旋回の程度とを示す操作量が入力される操作入力部と、
    前記操作入力部へ入力される前記操作量を用いて前記傾斜機構を制御する傾斜制御部と、
    前記1以上の回動輪を支持する回動輪支持部と、
    を備え、
    前記回動輪支持部は、
    前記1以上の回動輪を、回転可能に支持する支持部材と、
    前記支持部材を、前記車体に対して左右に回動可能に支持する回動装置と、
    前記支持部材を左右に回動させるトルクを、前記支持部材に印加する回動駆動装置と、
    前記回動駆動装置のトルクを、前記車体の傾斜の大きさに関連する傾斜パラメータと前記操作量との少なくとも一方と、車速とを用いて制御する回動制御部と、
    を備え、
    前記回動制御部は、
    前記車速が基準速度を超える特定範囲内である場合には、前記回動駆動装置のトルクの最大の大きさを、前記1以上の回動輪が前記操作量に拘わらず前記車体の傾斜の変化に追随して前記車体に対して左右に回動することを許容するトルクの特定の大きさに設定し、
    前記車速が前記基準速度以下である場合には、
    前記回動駆動装置のトルクの最大の大きさを、前記車速が速いほど小さい大きさに設定し、
    前記回動駆動装置のトルクを、前記最大の大きさ以下の大きさのトルクであって、前記1以上の回動輪の方向を、前記操作量を用いて特定される目標の方向に近づけるトルクに設定する、
    車両。
  2. 請求項1に記載の車両であって、
    前記回動制御部は、前記車速が前記基準速度以下である場合には、前記車速が前記基準速度に達した場合に前記最大の大きさが前記特定の大きさになるように、前記最大の大きさを、前記車速が速いほど小さい大きさに設定する、
    車両。
  3. 請求項1または2に記載の車両であって、
    前記特定の大きさは、ゼロである、車両。
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