以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「〜」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る化粧材シート10の構造を例示する斜視図である。本実施形態の化粧材シート10は、化粧層12とマグネット層14を有する。マグネット層14は、化粧層12の一方の面に設けられている。そして、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面における少なくとも一部の領域に粘着層50が形成されている。
化粧材シート10において、マグネット層14は、化粧層12の一方の面に一様に設けられていることが好ましいが、マグネット層14は化粧層12の一方の面の一部の領域のみに設けられていても良い。また、化粧材シート10は、マグネット層14の代わりに、塊状のマグネット部材を有していても良い。
本実施形態の化粧材シート10は、粘着層50を備えることにより、下地20に強く固定される。そして、仮に化粧材シート10の反り等によってマグネット層14が下地20から浮き上がる場合にも、化粧材シート10が下地20から脱落することがない。
化粧材シート10は、壁等と一体となって外観に美観を付与する部材である。本実施形態の化粧材シート10は、内装または外装に施工される。本実施形態の施工方法は、たとえば部屋や通路等の内壁または外壁を施工する方法である。内装または外装を施工する建物としては、特に限定されないが、ビルや住宅等が挙げられる。
図2および図3は、第1の実施形態に係る施工方法を説明するための図である。図2は本実施形態の方法で施工された壁の断面を示している。ただし、本図では、粘着層50が含まれていない断面を示している。図3は、本実施形態の方法で施工された壁の斜視図であり、下地20および化粧材シート10の一部は省略されている。本実施形態に係る施工方法は、強磁性体を含む下地20にマグネット層14を備える化粧材シート10を貼り付ける内装または外装の施工方法である。
化粧材シート10は下地20のほぼ全体を覆うように固定される。たとえば下地20のうち躯体30とは反対側の面の95%以上は化粧材シート10で覆われている。図2および図3の例において、下地20は複数の下地層を有する。下地層は壁の骨組みと化粧材シート10との間に位置する層である。または下地層は、化粧材シート10よりも壁の内側に位置するように壁の枠組みに嵌め込まれた層である。下地層は、単独でまたは複数が協働して、たとえば構造補強、断熱、防湿、防水、耐火等の機能を発揮する。図2および図3の例では、下地20は第1下地層22および第2下地層24を備える。ただし、下地20は、さらに他の下地層を備えても良い。下地20は躯体30に対して固定されている。
躯体30は、たとえば建物の躯体であり、建物の構造を支える骨組である。躯体30は、木材、金属、鉄筋コンクリート等である。なお、下地20は建物の躯体30に必ずしも固定されていなくてもよい。たとえば、下地20と化粧材シート10との積層体は、室内の空間を区切るパーテーションの一部であっても良い。また、化粧材シート10は、出隅入り隅材、見切り材、ジョイナー、掲示パネル等として機能してもよい。
下地20には強磁性体が含まれ、下地20にマグネットが引きつけられる。強磁性体としては、たとえば鉄、コバルト、ニッケル、及びこれらの合金が挙げられる。中でも、強磁性体が鉄であればコストと性能のバランスがよい。本実施形態において下地20は、強磁性体を含む強磁性層を含む。たとえば第2下地層24および第1下地層22の少なくとも一方は強磁性層である。ここで、下地20のうち最も化粧材シート10に近い下地層が強磁性層であることが好ましい。そうすれば、下地20に対する化粧材シート10の固定強度を向上させることができる。強磁性層以外の下地層としては、ケイカル(ケイ酸カルシウム)板、石膏ボード、火山性ガラス質複層板等の無機質板や木製合板等が挙げられる。
強磁性層は、たとえば強磁性材料を含む板材である。強磁性材料を含む板材は、たとえば鉄板等、強磁性体の板である。また、強磁性材料を含む板材は、強磁性体以外の材料と鉄粉や鉄箔等の強磁性材料との複合部材であっても良い。複合部材を用いることで、形状の自由度の向上、および軽量化が図れる。強磁性体以外の材料としては樹脂や木材、石膏、ケイ酸カルシウム、セメント、ガラス質材料等が挙げられる。複合部材において、強磁性体以外の材料と強磁性材料とは、混合されていても良いし、積層されていても良い。複合部材はたとえば、樹脂粒子や木材のチップ等と鉄粉を混合して板状に成形することで得られる。または、複合部材は、強磁性体以外の材料の板状部材と鉄箔とを積層し、接着することで得られる。また、下地層を土壁で形成する場合、強磁性材料を混合した土を用いて層を形成することで複合部材としても良い。強磁性層の厚さは特に限定されないが、たとえば1mm以上20mm以下である。
下地20は、主面に垂直な方向から見て、少なくとも一部の領域に強磁性体を含んでいれば良く、全体に強磁性体を含んでいる必要は無い。下地20全体の面積に対する、強磁性体を含む領域の面積は特に限定されないが、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。たとえば、下地20は、格子状にパターン化された強磁性層を含んでも良い。また、下地20のうち各化粧材シート10の外周に対向する領域には、強磁性体が含まれることが好ましい。
強磁性材料を含む板材は、一つの、または二つ以上の開口を有していても良い。板材が開口を有することで、下地20の重さを低減することができ、建物の耐震性を向上できる。ただし、耐火性向上の観点から、開口は他の下地層を構成する板材同士の境界と重ならないことが好ましい。
また、強磁性層は、強磁性材料を含む塗料の固化物であってもよい。塗料の固化物とは、塗料が固化、または硬化して得られる固体である。この場合、任意の下地層に強磁性材料を含む塗料を塗布し、固化または硬化させることにより強磁性層を形成することができる。
塗料は、強磁性材料およびバインダーを含む。強磁性材料はたとえば鉄粉等の強磁性粉末である。粒子の大きさは特に限定されないが、強磁性粉末のメディアン径D50は0.02mm以上0.2mm以下が好ましく、0.05mm以上0.1mm以下がより好ましい。そうすれば、塗料を均一に塗布しやすくなる。また、塗料の固形物における強磁性粉末の含有率は、50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。そうすれば、強磁性粉末を十分に固着させることができるとともに、化粧材シート10を下地20に充分な磁力で固定することができる。
塗料に含まれるバインダーとしては、マグネット層14に含まれるバインダーとして後述する樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
また、塗料は、強磁性材料およびバインダーに加えて、溶剤、可塑剤、分散材、増粘剤、その他の添加剤を含んでも良い。これらの添加剤の含有量の合計は、たとえば塗料の固化物に対して5重量%以下である。
塗料は、上記の各成分を混合することにより得られる。
以上のとおり、下地20に強磁性体が含まれることにより、マグネット層14が下地20に引きつけられ、化粧材シート10を下地20に固定することができる。そして、化粧材シート10は下地20に対して脱着可能であることから、化粧材シート10が汚れたり傷んだりした場合や、内装または外装のデザインを変更したい場合に下地20にダメージを与えることなく、短時間で容易に化粧材シート10の張り替えができる。また、化粧材シート10を下地20へ素早く容易に固定できることから、施工期間の短縮が図れる。さらに、施工現場において下地に化粧材シートを固定する際に、接着剤を使用する必要が無い。したがって、乾燥時に有機溶剤等による臭気が発生することがない。
図3に示す様に、第1下地層22および第2下地層24はそれぞれ複数の板材で形成されていても良い。ここで、第1下地層22における複数の板材の境界と、第2下地層24における複数の板材の境界とは、交差点を除いて互いに重ならないことが好ましい。そうすることで、火災時に境界部から火が漏れ広がることが避けられ、耐火性が向上する。
また、最も化粧材シート10側の下地層である第2下地層24において、複数の板材の境界はパテ201で埋められている。また、板材と板材との境界に生じる段差は、パテ201によっておよそ平らに均されている。
化粧材シート10は下地20に対し磁力で固定されている。一つの壁面には、複数の化粧材シート10が敷き詰められても良い。そうすれば、施工場所までの化粧材シート10の運搬が容易となる。化粧材シート10が可撓性を有する場合、ロール状に丸めて運搬することができる。化粧材シート10の巻回体については、詳しく後述する。また、壁面に複数の化粧材シート10を並べて固定する場合、化粧材シート10と化粧材シート10との間には隙間を設けても良い。そうすれば、化粧材シート10が水分等によって膨張・収縮する場合でも、化粧材シート10にたわみ等が生じにくい。ただし、化粧材シート10の全体が、樹脂などの膨張・収縮しにくい材料からなる場合には、化粧材シート10と化粧材シート10との間には隙間を設けなくても良い。
図4は、本実施形態に係る化粧材シート10の構成を例示する断面図である。本実施形態に係る化粧材シート10について以下に説明する。ただし、化粧材シート10は以下の構造に限定されない。
本実施形態の化粧材シート10は、化粧層12、接着層13、マグネット層14、および粘着層50を備える。化粧層12の構造は特に限定されないが、本実施形態において化粧材シート10は表面層120および芯材層129を含む。化粧層12は樹脂を含んで構成されることが好ましい。そうすれば、軽量化を図ることができるため、化粧材シート10の重量を所定の範囲に抑えつつマグネット層14を全面に設けることが可能となる。化粧層12の坪量はたとえば0.1kg/m2以上1.0kg/m2以下とすることが好ましい。化粧層12は、たとえばメラミン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、および(メタ)アクリル樹脂により構成される群から選択される一以上の樹脂と、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分との少なくともいずれかを含んで構成される。
本図の例において表面層120は芯材層129と接している。さらに表面層120は、印刷基材122、印刷部121、第1樹脂層123、および第2樹脂層124を含んで構成されている。化粧材シート10の第1面101には、表面層120が露出している。ただし、表面層120は印刷基材122および印刷部121を含んでいなくても良い。たとえば表面層120はエンボス加工により凹凸が施された樹脂層や金属層を含むことにより、意匠性を生じても良い。また、化粧材シート10の第1面101の表面に意匠が施されていても良い。
化粧材シート10は全体として可撓性を有することが好ましい。そうすれば湾曲した下地にも固定することができる。具体的には化粧材シート10は、25℃において10mmの曲げ半径で湾曲させたとき、亀裂が生じない程度の可撓性を有することが好ましい。
化粧層12は、内装および外装に意匠性を付与する部分である。化粧層12は、第1面101側から見て美観を起こさせる意匠性を有する。本図の例においては、化粧層12は第1面101側から印刷部121、すなわち印刷された模様等のデザインを視認可能に構成されている。
表面層120は、たとえば意匠面となる第1面101側にメラミン樹脂を含有する樹脂(第1樹脂層123)を担持し、芯材層129と接する第2面102側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(第2樹脂層124)を担持する印刷基材122からなる表面層材料で構成される。なお、第2面102は、化粧材シート10の第1面101とは反対側の面である。以下に詳しく説明する。
印刷基材122は、たとえばパルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維である。また、印刷基材122は、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙であってもよい。
本図の例において、印刷部121は化粧材シート10に意匠性を付与する。印刷部121は印刷により印刷基材122に担持されたインクである。印刷部121は、印刷基材122の表面に層状に形成されていてもよいし、少なくとも一部が印刷基材122に含浸していてもよい。印刷法は、特に限定されないが、グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を用いることができる。
第1樹脂層123は、樹脂(A)を含む層であり、印刷基材122の第1面101側に位置する透明な層である。樹脂(A)は、メラミン系樹脂を含む。樹脂(A)は中でもメラミン樹脂を含むことが好ましい。そして、化粧材シート10における第1面101、すなわちマグネット層14が設けられている側とは反対側の表面が、メラミン樹脂を含む材料により構成されていることが好ましい。これにより、化粧材シート10の表面がメラミン樹脂を含むこととなり、化粧層12の表面に好適な硬度を付与することができる。ひいては、化粧材シート10の耐久性を高めることができる。本図の例において、化粧材シート10の第1面101には、第1樹脂層123が露出している。
メラミン樹脂としては、特に限定されず、例えば、メラミンとホルムアルデヒドを中性または弱アルカリ下において反応させて得られるものを用いることができる。
また、メラミン樹脂としては、住友化学(株)製のメラミン樹脂等、市販のものを用いることもできる。
樹脂(A)を印刷基材122の第1面101側に担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂(A)を溶媒に溶解した樹脂ワニスを、例えば、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーター等の装置を用いて塗工した後、80〜130℃程度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。
樹脂(A)を溶解する溶剤としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール等が挙げられる。中でも水が好ましい。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。樹脂ワニスの固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、樹脂ワニスの30〜70質量%であるのが好ましく、45〜60質量%であるのがより好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を向上できる。
第2樹脂層124は、樹脂(B)を含む層である。樹脂(B)は、たとえば熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分である。なお、本明細書中おいて、熱可塑性エマルジョン樹脂とは、熱可塑性樹脂が溶剤に分散してエマルジョン状態となったものである。また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分とは、熱可塑性エマルジョン樹脂から溶剤を除いた成分を意味する。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、エマルジョン樹脂粒子として存在する成分を含み、金属や各種素材との接着特性を有し、化粧層12に柔軟性を付与する。したがって、表面層120の第2面102側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が担持されることにより、表面層120と芯材層129との接着強度を向上させることができるとともに、化粧層12の曲げ加工性を向上させることができる。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、たとえば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体、ウレタンアクリル複合粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等の熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子が挙げられる。これらの中でもウレタンアクリル複合粒子が好ましい。本明細書中において、ウレタンアクリル複合粒子とは、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するものを意味する。
ウレタン樹脂とアクリル樹脂は、各々が芯材層129との接着強度が高いため、ウレタンアクリル複合粒子を用いることで、芯材層129との良好な接着強度を発現することができる。さらに、ウレタン樹脂は、特に強靭性、弾性、柔軟性に優れ、アクリル樹脂は、特に透明性、耐久性、耐候性、耐薬品性、造膜性に優れる。
また、本明細書中において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。
なお、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、これらの中の1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分には、上記熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子以外にも、必要に応じて少量の増粘剤、浸透促進剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、平均粒径が30〜100nmのエマルジョン樹脂粒子を含むことが好ましく、エマルジョン樹脂粒子の平均粒径は、60〜90nmであることがより好ましい。これにより、印刷基材122の繊維間への含浸性が向上し、より印刷基材122の内部に含浸させることができるため、表面層120に良好な柔軟性を付与することができる。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を印刷基材122の第2面102側に担持させる方法としては、特に限定されず、樹脂(A)を印刷基材122の第1面101側に担持させる上述の方法と同様にして行うことができる。つまり、溶剤に溶解されたエマルジョン状態の熱可塑性エマルジョン樹脂を塗工、加熱乾燥する方法等が挙げられる。
熱可塑性エマルジョン樹脂に用いられる溶剤としては、特に限定されず、例えば、水等が挙げられる。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、熱可塑性エマルジョン樹脂の25〜60質量%であるのが好ましく、30〜45質量%であるのがより好ましい。これにより、熱可塑性エマルジョン樹脂の基材への含浸性を向上できる。
なお、第1樹脂層123および第2樹脂層124は単独で層を形成していなくてもよい。すなわち、樹脂(A)および樹脂(B)は印刷基材122に担持されていればよい。ここで、印刷基材122が樹脂を担持するとは、樹脂が基材(担体)の表面に付着し、または、基材内部の空隙部に含浸され、表面層材料の成形後に担持させた樹脂の性能を発現することを可能にする状態であることを意味する。第1樹脂層123および第2樹脂層124はたとえば、表面層120において層状の分布を有している。なお、樹脂は、基材の表面および基材の内部に均一に分布していなくてもよい。
芯材層129は、たとえばガラスクロス、またはガラスクロスを基材とするプリプレグを含んで構成されている。これにより、化粧層12に、耐熱性、不燃性、剛性などを付与することができる。
芯材層129の厚みは、50μm以上とすることが好ましい。これにより、化粧層12に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほど化粧層12の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、350μm以下にすることが好ましい。
マグネット層14は、化粧層12の第2面102側に固定されている。化粧材シート10がマグネット層14を備えることにより、強磁性体を含む下地20に化粧材シート10を脱着可能に取り付けることができる。また、施工場所で溶剤を用いることなく、化粧材シート10を下地20に取り付けることができる。化粧材シート10が下地20に十分強く固定されるためにマグネット層14の磁束密度は20mT以上であることが好ましい。また、マグネット層14は、化粧材シート10の主面に垂直な方向から見て75%以上の領域に設けられていることが好ましく、ほぼ全面に設けられていることがより好ましい。そうすれば、化粧材シート10の下地20からの浮き等が生じず、また、化粧材シート10の平面形状を加工した場合であっても化粧材シート10の下地20への着脱機能を確保できる。なお、マグネット層14が化粧材シート10のほぼ全面に設けられているとは、たとえば化粧材シート10の主面に垂直な方向から見て90%以上の領域に設けられていることをいう。
マグネット層14は、磁石粉末をバインダー(結合樹脂)で結合してなる層であり、たとえばマグネットシートである。磁石粉末は、優れた磁気特性を有するものが好ましい。このような磁石粉末としては、例えば、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)を含む合金、特にR(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)とB(ボロン)とを含む合金が挙げられる。
マグネット層14に含まれるバインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、ナイロン6T、ナイロン9T)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでもよい。
マグネット層14の厚さ(平均厚さ)は、磁力の強さおよび審美的な観点から適宜変更されるが、0.15〜6mmであるのが好ましく、0.6〜2mmであるのがより好ましい。マグネット層14の大きさ・形状は、化粧材シート10の形状等によって適宜変更することができる。
マグネット層14は、接着層13により化粧層12に固定されている。接着層13は特に限定されないが、たとえば、主として粘着剤で構成されている。この粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を挙げることができる。
アクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー成分、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー成分、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体よりなる。
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。
コモノマー成分としてはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
また、ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレン−ブタジエン系、再生ゴム系、ポリイソブチレン系のものや、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とするもの等を挙げることができる。
また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系、ジフェニルシロキサン系のもの等を挙げることができる。
以上のような粘着剤は、非架橋型、架橋型のいずれのものも使用可能である。後者の場合、必要に応じ、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等が挙げられる。このような粘着剤は、有機溶剤系、エマルション系のいずれでもよい。
また、接着層13には、例えば、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、充填材、老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、染料、顔料等の各種添加剤が必要に応じ添加されていてもよい。
なお、芯材層129に接着剤が含浸されている場合等、芯材層129が接着層13を兼ねていても良い。また、化粧層12は、さらに保護層を有していても良い。保護層は第1面101に露出するよう設けることができる。
粘着層50は、マグネット層14の露出面のうち少なくとも一部の領域に形成されている。粘着層50は両面粘着テープや粘着剤の塗布層であり得る。粘着層50が両面粘着テープである場合、粘着層50は支持層と、支持層の両面に積層された粘着膜とを含んでよい。支持層としては、不織布、発砲体、樹脂、紙等が挙げられる。
粘着性および耐久性の観点から、粘着層50はアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーンゴム系樹脂およびオレフィン系樹脂により構成される群から選択される一以上の樹脂成分を含むことが好ましい。なお、粘着層50のうちマグネット層14とは反対側の面には、紙や樹脂等からなる剥離可能な剥離フィルムが積層されていても良い。化粧材シート10を下地20に施工する際には、剥離フィルムを剥がして粘着層50を下地20に貼り付けることができる。
粘着層50は上記した樹脂成分に加えて、たとえば粘着付与剤、架橋剤等の添加剤を含んでも良い。
粘着層50の厚さはたとえば0.2mm以下である。したがって、施工後の化粧材シート10の表面を、ほぼ平らに保つことができる。
粘着層50は、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面から剥離可能に形成されていることが好ましい。具体的には90°剥離試験で測定される粘着層50の当該面からの剥離強度が、0.15N/mm以上0.8N/mm以下であることが好ましい。そうすれば、一度施工した化粧材シート10を剥がして再利用しようとする際に、粘着層50のみを交換することができる。なお、接着層13の化粧層12からの剥離強度、および接着層13にマグネット層14からの剥離強度は、それぞれ粘着層50のマグネット層14からの剥離強度よりも大きい。
また粘着層50は、下地20の表面から剥離可能に形成されていることが好ましい。具体的には90°剥離試験で測定される、粘着層50の下地20の表面からの剥離強度が、0.15N/mm以上0.8N/mm以下であることが好ましい。そうすれば、下地20にダメージを与えることなく化粧材シート10を剥がし、容易に新たな内装を施すことができる。
化粧材シート10における粘着層50の面積は特に限定されないが、化粧材シート10の主面に垂直な方向から見て、化粧材シート10全体の面積をS1とし、粘着層50の面積をS2としたとき、S2/S1で表される値は0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。そうすれば、下地20に対する化粧材シート10の脱着を容易にできる。
化粧材シート10の製造方法について以下に説明する。化粧材シート10は、化粧層12に接着層13を介してマグネット層14を固定し、さらに粘着層50を設けることにより形成される。具体的には、化粧層12に接着層13を構成する粘着剤等を塗布し、マグネット層14を積層する。ただし、粘着剤を塗布したマグネット層14を化粧層12に積層してもよい。そして、マグネット層14の表面に粘着層50を形成する。粘着層50は、たとえば市販の両面粘着テープをマグネット層14に貼り付けて形成することができる。または、マグネット層14の表面の所定の領域に、粘着剤を塗布することにより、粘着層50を形成することができる。
化粧層12は、表面層120と芯材層129とを重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。また、化粧層12の成形時に、所定の板材を重ねることにより、化粧材シート10の第1面101の表面粗さや光の反射率等を調整することができ、デザイン性を高めることができる。
表面層120は、以下の様にして得られる。まず、印刷基材122に模様等のデザインを印刷することにより印刷部121を形成する。次いで、印刷部121を設けた印刷基材122の一方の面に第1樹脂層123を形成し、他方の面に第2樹脂層124を形成する。
なお、化粧材シート10の製造方法は上記した方法に限定されない。たとえば、必要に応じて担体フィルムを使用してもよい。担体フィルムは製造時においていずれかの層を保護したり、製造を容易にしたりするために用いられる。担体フィルムは、その後除去されることにより、化粧材シート10には含まれない。
また、本図では、印刷部121が化粧層12の内部に位置する例を示したが、印刷部121は化粧層12の第1面101側の表面に位置していてもよい。
図5は、化粧材シート10の構造の変形例を示す断面図である。本変形例に係る化粧材シート10は、化粧層12の構造を除いて図4に例示した化粧材シート10と同じである。
本変形例において化粧層12は第1樹脂層123、第2樹脂層124、および印刷部121を備える。そして第2樹脂層124が印刷基材122として機能する。
第1樹脂層123は、透明な樹脂フィルムである。第1樹脂層123は、合成樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、又は(メタ)アクリル樹脂を含む。第1樹脂層123は、たとえばエンボス圧延加工によるラミネートによって、印刷部121が形成された第2樹脂層124に積層される。第1樹脂層123の厚さはたとえば10μm以上80μm以下である。
第2樹脂層124は、合成樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンポリエステル、ポリオレフィン樹脂、又は(メタ)アクリル樹脂を含む。第2樹脂層124は、さらに、不燃性の無機充填材を含んでもよい。無機充填材としては、CaCO3、Mg(OH)2、Al(OH)3、SiO2、粘土(例えば、モンモリロナイト又はカオリン)等が挙げられる。第2樹脂層124の厚さはたとえば60μm以上150μm以下である。第2樹脂層124はたとえばキャスティング、またはカレンダリングにより形成することができる。
本変形例に係る化粧材シート10は化粧層12の形成方法を除いて図4を用いて説明した化粧材シート10の製造方法と同じである。本実施形態において化粧層12は、第2樹脂層124のうち第1面101側となる面に印刷により印刷部121を形成し、次いで、印刷部121を覆うように第1樹脂層123を形成することで得られる。
なお、化粧材シート10の構造は上記した例に限定されない。化粧材シート10は、たとえば布、麻、綿、絹等のクロス、塩化ビニル・PET・ポリオレフィン等のプラスチック樹脂、SUS・アルミ等の金属(箔)、段ボール等の紙類、木材、竹、籐のうちの一以上の材料を含んで構成されることができる。
図6は、化粧材シート10がロール状に巻き取られたシート巻回体の構造を例示する斜視図である。化粧材シート10は、シート巻回体とすることで、広げた状態に比べて幅を小さくでき、容易に運搬および施工ができる。
化粧材シート10の巻き取り方は特に限定されないが、本図に示す様に、シート巻回体の外周面が、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面により構成されていることが好ましい。化粧層12に比べてマグネット層14は伸縮性が高いことから、マグネット層14を外側にすることで、巻き取りによる化粧材シート10へのダメージが小さくなる。また、化粧層12が内側になることで、意匠面を保護することができる。くわえて、後述するように、巻き取った状態から容易に施工できる。
本実施形態に係る内装または外装の施工方法は、化粧材シート10を、下地20に貼り付ける工程を含む。ここで、マグネット層14と下地20との間の少なくとも一部には、粘着層50が介在する。また、本施工方法は、躯体30等、壁の構造部材(骨組み)に下地20を固定する工程を含んでもよい。下地20を固定する工程では、構造部材に対し、ステイプラーやネジ等で、壁面のほぼ全体を覆うように複数の板材を取り付け、第1下地層22を形成する。次いで、第1下地層22に対し、第1下地層22のほぼ全体を覆うように複数の板材をステイプラーやネジ等で取り付け、第2下地層24を形成する。たとえば第2下地層24は強磁性層である。そして、第2下地層24を構成する複数の板材同士の境界にパテ201を塗って隙間を埋めるとともに段差を均す。次いで、下地20に複数の化粧材シート10を貼り付ける工程では、化粧材シート10のマグネット層14を下地20側に向け、化粧材シート10を下地20に貼り付ける。貼り付ける工程については詳しく後述する。
もし、化粧材シート10を交換したい場合には、化粧材シート10を下地20から剥がし、新たな化粧材シート10を下地20に貼り付ければよい。
なお、下地20の強磁性層と化粧材シート10との間には他のシート材が挟み込まれてもよい。そうすれば、やむを得ず化粧材シート10を取り外した状態としている間にも、意匠性を失わずに済む。シート材としてはたとえば、塩化ビニルシート等の樹脂シート、および紙が挙げられる。シート材は、下地20の一部としてたとえば下地20の最表面(最も化粧材シート10側の面)を形成するように張り付けられていてもよいし、下地20と化粧材シート10との間に挟み込まれてもよい。また、シート材を設ける代わりに、下地20の最表面に、塗料による塗装膜を形成しても良い。その場合でも同様の効果が得られる。
また、化粧材シート10の重量が大きい場合には、磁力での固定のみならず、物理的な支持手段をさらに用いて下地20に化粧材シート10を固定してもよい。
図7(a)および図7(b)は、本実施形態の施工方法における貼り付ける工程をさらに説明するための図である。
本実施形態において、化粧材シート10には予め粘着層50が設けられている。したがって、化粧材シート10は、下地20に対して粘着層50を貼り付けると共に、マグネット層14による磁力で化粧材シート10を下地20に固定する。
図7(a)および図7(b)では、シート巻回体の外周面が、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面により構成されている例を示している。すなわち、貼り付ける工程において下地20に対向させる側の面が巻回体の外側に露出している。この場合、施工を行う作業者は、巻き取られた方向と逆方向に化粧材シート10を広げつつ、端部から化粧材シート10を下地20に貼り付けることができる。具体的には、下地20のうち化粧材シート10を貼り付けようとする領域の端辺と、化粧材シート10の端辺とが揃うように位置を決めて化粧材シート10の端部を下地20に固定する。そして、化粧材シート10の残りの部分を、巻回体を広げながら下地20に貼り付けていく。
たとえば図7(a)に示す例では、化粧材シート10の端辺と下地20の上辺202とが揃うように、化粧材シート10を固定し、下に向かって巻回体を広げながら化粧材シート10の残りの部分を下地20に貼り付けていく。また、図7(b)に示す例では、化粧材シート10の端辺と下地20の下辺203とが揃うように、化粧材シート10を固定し、上に向かって巻回体を広げながら化粧材シート10の残りの部分を下地20に貼り付けていく。ここで、化粧材シート10を壁面に施工する場合において、上辺202は施工する領域の天井側の一辺であり、下辺203は床側の一辺である。なお、これらの例に限定されず、たとえば化粧材シート10を横方向に広げながら下地20に貼り付けても良い。
化粧材シート10における粘着層50の位置について以下に説明する。粘着層50の位置は特に限定されないが、粘着層50は、化粧材シート10の主面に垂直な方向から見て(以下、「上面視」ともいう。)、化粧材シート10の少なくともいずれかの端部に設けられていることが好ましい。そうすることで、反りなどにより化粧材シート10の端部が下地20から浮き上がることを防ぐことができる。なかでも、化粧材シート10が壁等に施工される場合、粘着層50は、化粧材シート10のうち下地20に貼り付けられた状態で上側となる端部に少なくとも設けられていることがより好ましい。そうすることにより、化粧材シート10と下地20の間にはたらく磁力が充分でなくなった場合でも、化粧材シート10が脱落することがない。
また、粘着層50は、化粧材シート10の主面に垂直な方向から見て、互いに反対側に位置する化粧材シート10の二つの端部に設けられていることが好ましい。そうすることにより、化粧材シート10と下地20の間にはたらく磁力が充分でなくなった場合でも、粘着層50の粘着力により下地20を化粧材シート10で覆っておくことができる。
たとえば化粧材シート10が長尺シートにより構成されており、化粧材シート10の長手方向を施工領域の上下方向とする場合について説明する。この場合、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面を上面視した際に、粘着層50が、化粧材シート10の長手方向における一方の端部に設けられていることが好ましい。また、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面を上面視した際に、粘着層50が、化粧材シート10の長手方向における他方の端部にも設けられていることがより好ましい。
ただし、上記の例に限定されず、化粧材シート10の長手方向を施工領域の左右方向としてもよい。この場合、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面を上面視した際に、粘着層50が、化粧材シート10の短手方向における一方の端部に設けられていることが好ましい。また、化粧材シート10のマグネット層14が設けられている側の面を上面視した際に、粘着層50が、化粧材シート10の短手方向における他方の端部にも設けられていることがより好ましい。
また、化粧材シート10はたとえば正方形であっても良い。また、化粧材シート10の外形は矩形に限らない。たとえば矩形の一部が切り取られたり、切り込みが入れられたりした形状であっても良い。また、化粧材シート10には開口が形成されていても良い。化粧材シート10は、施工する領域の形状にあわせて、容易に形状を加工することができる。そしてたとえば、壁面に設けられたスイッチやコンセント、窓、ドア等を避けて、化粧材シート10を貼り付けることができる。
化粧材シート10をシート巻回体とする場合、粘着層50は、シート巻回体における外周面に位置する化粧材シート10の端部に設けられていることが好ましい。そうすれば、化粧材シート10を下地20に貼り付ける工程において、化粧材シート10の端部を粘着層50でしっかりと下地20に貼り付けた後、巻回体を広げつつ化粧材シート10の残りの部分を下地20に貼り付けることができる。この場合、貼り付ける工程が、下地20と化粧材シート10に設けられた粘着層50とを接合させる工程、および下地20と化粧材シート10に設けられたマグネット層14とを接合させる工程をこの順で含むこととなる。なお、粘着層50の端辺は化粧材シート10の端辺に一致していても良いし、一致していなくても良い。
なお、シート巻回体における外周面に位置する化粧材シート10の端部とは反対側の端部に粘着層50が設けられている場合、貼り付ける工程は、下地20と化粧材シート10に設けられたマグネット層14とを接合させる工程、および下地20と化粧材シート10に設けられた粘着層50とを接合させる工程をこの順で含んでもよい。
また、巻回体において湾曲している化粧材シート10の端部、すなわち、巻き取り方向に平行な端部には、粘着層50が設けられていないことが好ましい。そうすれば、巻回体を広げつつ化粧材シート10を下地20に貼り付ける作業が容易かつ迅速に行える。また、化粧材シート10を張り替える際に容易に化粧材シート10を下地20から剥がすことができる。
本実施形態に係る施工方法は、たとえば強磁性体を含む下地材と、化粧材シート10と、を含む内装または外装の施工セットを用いて実現される。
また、本実施形態に係る施工方法によれば、強磁性体を含む下地20と、化粧材シート10とが厚み方向に積層してなる積層体であり、下地20と、化粧材シート10に設けられた粘着層50とが互いに接合するように配されている壁構造体が得られる。
なお、以上では主に内装の施工方法について説明したが、内装に限定されず、複数の化粧材シート10は外装に用いられても良い。化粧材シート10はたとえば外装用のパネル、シート、タイル等であり得る。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態の化粧材シート10によれば、内装または外装を容易に施工できる。また化粧材シート10は、粘着層50を備えることにより、下地20に強く固定される。そして、仮に化粧材シート10の反り等によってマグネット層14が下地20から浮き上がる場合にも、化粧材シート10が下地20から脱落することがない。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る化粧材シート10および施工方法は、化粧材シート10が予め粘着層50を備えない点を除いて第1の実施形態に係る化粧材シート10および施工方法と同じである。
本実施形態に係る施工方法は、化粧材シート10を、粘着層50を介して下地20に貼り付ける工程を含む。本施工方法では、貼り付ける工程において粘着層50を化粧材シート10と下地20の間に取り付ける。以下に詳しく説明する。
本実施形態の施工方法の第1例では、たとえば、化粧材シート10を下地20に位置決めし、マグネット層14の磁力で化粧材シート10を下地20に貼り付ける。その後、化粧材シート10の一部を下地20から剥がしてめくり上げ、粘着層50を化粧材シート10の下地20側の面、または下地20の表面に設ける。そして、化粧材シート10の剥がした部分を粘着層50で再度下地20に貼り付ける。
なお、化粧材シート10を下地20に位置決めする前に、下地20の表面の一部または化粧材シート10のマグネット層14側の表面の一部に予め剥離フィルム付きの両面粘着テープを粘着層50として取り付けてもよい。その場合、化粧材シート10を下地20に位置決めし、マグネット層14の磁力で化粧材シート10を下地20に貼り付けた後、粘着層50を設けた部分が露出するように化粧材シート10の一部を下地20から剥がしてめくり上げ、粘着層50の剥離フィルムを除去する。そして、化粧材シート10の剥がした部分を粘着層50で再度下地20に貼り付ける。
本実施形態に係る施工方法は、たとえば、化粧材シート10と両面粘着テープまたは粘着剤とを含む施工セットを用いて実現される。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。