JP2019215434A - 真空紫外光偏光素子、真空紫外光偏光装置、真空紫外光偏光方法及び配向方法 - Google Patents

真空紫外光偏光素子、真空紫外光偏光装置、真空紫外光偏光方法及び配向方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 光配向等の処理に使用できる真空紫外光偏光素子のより適切な構成を提示するとともに、真空紫外光による光配向の適切な技術構成を提供する。【解決手段】 真空紫外光に対して透明な基板上1に設けられたグリッド2は、平行に延びる多数の線状部3より成る。各線状部3は酸化ハフニウムで形成され、各線状部3の間は空間であって充填物が設けられていない。真空紫外光偏光素子6が配置された空間は雰囲気制御手段7により不活性ガスで置換される。光配向を行う場合、ワーク10は真空紫外光偏光素子6に対して1mm以上20mm以下の位置に配置され、真空紫外光の照射量は40mJ/mm2以上4000mJ/mm2以下とされる。【選択図】 図1

Description

本願の発明は、波長200nm以下の真空紫外光を偏光させる技術、及び分子構造に一定の方向性が与えられた配向層をワークに形成する技術に関するものである。
各種偏光素子の中でも、透明基板上に微細な縞状のグリッドを設けた構造のグリッド偏光素子は、比較的大きな照射エリアに対して偏光光を照射できることから、利用が広がっている。このうち、部材中の分子構造に一定の方向性を与える配向処理の分野では、偏光光の照射によりこれを行うことが実用化されており、一般に光配向と呼ばれる。
光配向では、よりエネルギーの高い波長を照射して処理の効率化を図るべく、偏光光の波長はより短いものになっている。即ち、当初は、可視の短波長域であったが、最近では紫外光が多く使用されるようになっており、365nmのような近紫外光も使用されるようになってきている。
このような短波長化のため、グリッド偏光素子も、以前はアルミのような金属をグリッド材料とした反射型のもの(ワイヤーグリッド偏光素子)が使用されていたが、短波長域での光の吸収を利用した吸収型のグリッド偏光素子が開発され、使用されている。
尚、グリッド偏光素子において、グリッドは、互いに平行に延びる多数の線状部より成る縞状である。各線状部の間の間隔(ギャップ幅)を光の波長に対して適切に短くすると、グリッドからは、各線状部の長さ方向に垂直な方向に電界成分を持つ直線偏光光が専ら出射する。このため、グリッド偏光素子の姿勢を制御し、グリッドの各線状部の長さ方向が所望の方向に向くようにすることで、偏光光の軸(電界成分の向き)が所望の方向に向いた偏光光が得られることになる。
以下、説明の都合上、電界がグリッドの各線状部の長さ方向に向いている直線偏光光をs偏光光と呼び、長さ方向に垂直な方向に電界が向いている直線偏光光をp偏光光と呼ぶ。通常、入射面(反射面に垂直で入射光線と反射光線を含む面)に対して電界が垂直なものをs波、平行なものをp波と呼ぶが、各線状部の長さ方向が入射面に対し垂直であることを前提とし、このように区別する。
このような偏光素子の性能を示す基本的な指標は、消光比ERと透過率Tである。消光比ERは、偏光素子を透過した偏光光の強度のうち、s偏光光の強度(Is)に対するp偏光光の強度(Ip)の比である(Ip/Is)。また、透過率Tは、入射するs偏光光とp偏光光の全エネルギーIinに対する出射p偏光光のエネルギーの比である(T=Ip/Iin)。理想的な偏光素子は、消光比ER=∞、透過率T=50%ということになる。
特開2015−125280号公報 特許4778958号公報
グリッド偏光素子は、光配向のような光処理に用いられる場合が多く、上記のように処理の効率化のため、より短波長化してきている。したがって、近紫外域よりもさらに短い真空紫外光(波長200nm以下)について偏光できるようにすることも考えられる。しかしながら、200nm以下の波長域ともなると、あまりにもエネルギーが高くなり過ぎ、対象物の分子構造を破壊してしまう等、所望の処理をする以前の問題を生じてしまう可能性がある。真空紫外光は、有害な有機物等を光照射により分解して除去する光洗浄の分野においてしばしば使用される波長域であり、このことからも、真空紫外光は、光配向のような光処理には使用できないと考えられる。
このようなことから、真空紫外光を偏光させるグリッド偏光素子は、これまでのところ意図されておらず、研究はされていない。このため、真空紫外光を偏光させるグリッド偏光素子については、適切なグリッド材料や特性等の点も含めて、具体的な教示をした文献は存在しない。
このような状況ではあるものの、適切な照射条件を設定すれば、真空紫外光ではあっても光配向等の処理に使用でき、その高いエネルギーによってより効率的に処理ができるのではないかと考えられる。発明者は、このような考えの下、真空紫外光偏光素子の適切な構成や真空紫外光偏光素子を使用した光配向技術について鋭意研究し、この出願の発明を想到するに至った。したがって、この発明が解決しようとする課題は、光配向等の処理に使用できる真空紫外光偏光素子のより適切な構成を提示するとともに、真空紫外光による光配向の適切な技術構成を提供することである。
上記課題を解決するため、この出願の請求項1記載の発明は、波長200nm以下の真空紫外光を偏光させる真空紫外光偏光素子であって、
真空紫外光に対して透明な基板と、基板上に設けられたグリッドとを備えており、
グリッドは平行に延びる多数の線状部より成るものであって、各線状部の間は空間であって充填物が設けられていない構造であり、
各線状部は酸化ハフニウムで形成されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、請求項1記載の真空紫外光偏光素子と、真空紫外光偏光素子が配置された空間を不活性ガスで置換する雰囲気制御手段とを備えている真空紫外光偏光装置であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、非偏光状態の波長200nm以下の真空紫外光を真空紫外光偏光素子に照射して偏光させる真空紫外光偏光方法であって、
真空紫外光偏光素子は、真空紫外光に対して透明な基板上に平行に延びる多数の線状部より成るグリッドが設けられた構造であって、グリッドは酸化ハフニウムで形成され、各線状部の間には充填物が設けられていない構造であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項3の構成において、前記真空紫外光偏光素子を、不活性ガスで置換された空間に配置しながら行うという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、分子構造に一定の方向性が与えられた配向層をワークに形成する配向方法であって、
波長200nm以下の真空紫外光を真空紫外光偏光素子に照射して得られた真空紫外域の偏光光をワークに照射することで配向層を形成する方法であり、
真空紫外光偏光素子は、真空紫外光に対して透明な基板上に平行に延びる多数の線状部より成るグリッドが設けられた構造であって、グリッドの各線状部は酸化ハフニウムで形成され、各線状部の間には充填物が設けられていない構造を有しており、
ワークを真空紫外光偏光素子に対して1mm以上20mm以下の位置に配置し、
ワークへの真空紫外光の照射量を40mJ/mm以上4000mJ/mm以下とするという構成を有する。
以下に説明する通り、この出願の請求項1又は3記載の発明によれば、グリッドが酸化ハフニウム製の各線状部より成り、各線状部の間は空間であって充填物が設けられていない構造であるので、真空紫外光について高い偏光性能を得ることができる上、真空紫外光の照射環境においても耐酸化性が高く、長期間安定して高い偏光性能を得ることができる。
また、請求項2又は4記載の発明によれば、上記請求項1又は3の発明の効果を得つつ真空紫外光の偏光ができる上、グリッドの酸化がさらに抑えられ、長期間安定して高い偏光性能を得る効果がさらに高くなる。
また、請求項5記載の発明によれば、真空紫外線の偏光光により光配向がなされるので、配向処理の効率がより高くなる。この際、高い偏光性能が長期間安定して得られるので、良好な配向処理を長期間安定して行うことができる。
実施形態に係る真空紫外光偏光素子の斜視概略図である。 第3族及び第4族の主要な元素の酸化物のエリンガム図である。 酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウムの紫外域での光学特性を示した図である。 実施形態の真空紫外光偏光素子の製造方法について示した概略図である。 実施形態の真空紫外光偏光装置の正面断面概略図である。 実施形態の真空紫外光偏光素子を搭載した光配向装置の正面概略図である。
次に、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1は、実施形態に係る真空紫外光偏光素子の斜視概略図である。図1に示す真空紫外光偏光素子は、透明基板1と、透明基板1上に設けられたグリッド2とを備えている。
透明基板1は、対象波長(偏光素子を使用して偏光させる光の波長)に対して十分な透過性を有するという意味で「透明」ということである。この実施形態では、200nm以下の真空紫外域の波長を対象波長として想定しているので、透明基板1の材質としては石英ガラス(例えば合成石英)が採用されている。透明基板1は、グリッド2を安定して保持する機械的強度や、光学素子としての取り扱いの容易性等を考慮し、適宜の厚さとされる。厚さは、例えば0.5〜10mm程度である。
グリッド2は、図1に示すように、平行に延びる多数の線状部3より成る縞状のものである。グリッド偏光素子は、光学定数が異なる領域が交互に且つ平行に配置されることで偏光作用を為すものである。各線状部3の間の空間4はギャップと呼ばれ、各線状部3と各ギャップ4とで偏光作用が得られる。各線状部3の幅wとギャップ4の幅とは、対象波長の光について偏光作用が得られるよう適宜定められる。具体的には、ギャップ4の幅は、概ね対象波長以下とされる。尚、この実施形態では、ギャップ4には特に充填物は設けられない。従って、ギャップ4の屈折率は、偏光素子が置かれた雰囲気の屈折率となる。通常は、空気(屈折率1)である。
実施形態の真空紫外光偏光素子は、吸収型のモデルで動作するものとなっている。即ち、s偏光光についてはグリッド2を形成する各線状部3の誘電率により電界が分断されて各線状部3内に局在して吸収により減衰しながら伝搬する一方、p偏光光については電界の分断、局在化は実質的に生じないので、大きく減衰することなく伝搬する。このため、透明基板1からは専らp偏光光が出射し、偏光作用が得られる。吸収型のグリッド偏光素子の動作モデルについては、特許文献1に詳説されているので、省略する。
このような実施形態の真空紫外光偏光素子において、各線状部3の材料には、真空紫外光の偏光のために特に最適化された材料が選定されている。以下、この点について説明する。
真空紫外光偏光素子の各線状部3の材料についてまず検討を要するのは、耐酸化性である。周知のように、真空紫外光は、空気中の酸素分子に多く吸収され、酸素ラジカル、オゾン、ヒドロキシラジカルといった高い酸化作用を持つ種を豊富に作り出す。このため、各線状部3の材料の耐酸化性が低いと、真空紫外光の偏光用に用いた場合、短期間のうちに各線状部3が酸化し、特性が変化してしまう。特性の変化は、透過率や消光比といった偏光特性が期待されたように得られなくなる、即ち劣化として現れる。
実施形態の真空紫外光偏光素子は、この点を考慮し、まず耐酸化性の高い材料をグリッド材料(各線状部3の材料)として選定する。この際、この実施形態では、吸収型のグリッド偏光素子であることを考慮して耐酸化性を捉え直している。即ち、吸収型のグリッド偏光素子では、対象波長の光を適度に吸収する材料がグリッド材料として使用され、紫外域では、酸化チタンのような金属酸化物がしばしば使用される。この点を考慮し、耐酸化性を、“酸化されにくい”という性質ではなく、“それ以上は酸化されない”という性質と捉え直している。つまり、酸化状態の安定性(酸化安定性)を耐酸化性として捉えている。
発明者の研究によると、一般的には、+2価〜+4価となり易い第3族、第4族の遷移金族が安定な酸化物を形成し易く、グリッド材料用の酸化物を形成する元素として適している。ただ、実際には、透明基板との関係も考慮する必要がある。石英、ジルコニア結晶、酸化マグネシウム結晶のような酸化物結晶も光透過性を有するので、グリッド偏光素子の透明基板の材料として使用され得る。この場合、透明基板を形成する酸化物に比べて酸化安定性が低いと、透明基板の側に酸素が取られて還元され易く、その後に雰囲気中の酸化種(酸素、酸素ラジカル、オゾン等)によって再酸化されることになり易い。このような透明基板の材料による還元と、空気中の酸化種による酸化が不安定に生じる結果、光学特性も変化し易くなる。このため、このような材料をグリッド材料として選定することは好ましくない。
金属酸化物の酸化安定性は、いわゆるエリンガム図として知られている。図2は、第3族及び第4族の主要な元素の酸化物のエリンガム図である。この実施形態では、透明基板2は石英製であるので、比較のため、酸化シリコンの標準化学ポテンシャルも書き加えられている。図2の横軸は絶対温度、縦軸は、標準ギプスエネルギーである。
図2に示すように、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウムは、酸化シリコンに比べて標準ギブスエネルギーが低くなっており、酸化安定度が高いことがわかる。したがって、これらの材料が、真空紫外光偏光素子のグリッド材料の候補となり得る。
一方、真空紫外光偏光素子のグリッド材料としては、単に酸化安定度が高いだけではだめで、偏光素子としての基本性能(透過率及び消光比)が十分に発揮される必要がある。発明者は、上記四つの候補材料についてさらに研究を進め、紫外光偏光素子のグリッド材料となり得るかどうか検討した。この結果、酸化チタンや酸化ジルコニウムは真空紫外光偏光素子のグリッド材料としては不向きで、酸化ハフニウム及び酸化イットリウムがグリッド材料として適していることが判った。以下、この点について説明する。
図3は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウムの紫外域での光学特性を示した図である。このうち、図3(1)は屈折率を示し、(2)は吸光係数を示す。
前述したように、グリッド偏光素子は、縞状構造において屈折率のコントラストが高いことが必要である。この実施形態では、各線状部の間(ギャップ)には充填部はなく、空気であるので、空気(屈折率≒1)に対してより大きな屈折率差を持つ材料であることが必要である。この点に関し、図3(1)に示すように、酸化チタンや酸化ジルコニウムは、200nm以下の真空紫外域において、屈折率はほぼ2以下であり、2を超えることはほぼない。
また、この実施形態の真空紫外光偏光素子では、吸収型のグリッド偏光素子であるので、真空紫外光を適度に吸収する材料であることが必要である。この点に関し、図3(2)に示すように、酸化ジルコニウムは、真空紫外域において吸光係数が0.5を下回っており、吸収が少なすぎてグリッド材料として不向きである。酸化ハフニウムについては、180〜200nm程度の範囲では吸光係数は0.5を下回るが、それより短い波長域では0.5を上回っている。特に、真空紫外域で重要なスペクトルである172nmにおいて0.5を上回っているので、好適に使用可能である。これらの結果から、真空紫外光偏光素子のグリッド材料としては、酸化ハフニウム及び酸化イットリウムが候補として残ると結論づけられる。
発明者は、上記二つの候補材料について、製造プロセスの観点から検討を加えた。以下、この点について説明する。
酸化ハフニウムや酸化イットリウムのような遷移金属酸化物は、金属・ハロゲン化合物となった際の揮発性が低く、また金属・酸素間結合が強いため、一般に難加工材として知られている。それでも、酸化ハフニウムは、半導体デバイスにおけるゲート絶縁膜の材料としても検討がされており、BCl系プラズマによりエッチングが可能である。今後、半導体デバイス製造用の装置として酸化ハフニウムエッチング装置が開発されれば、それを転用することも可能になると考えられる。一方、酸化イットリウムは、フルオロカーボンプラズマに対して高い耐性を示すとの報告もあり、プラズマエッチング装置内でプラズマに晒される部位の保護膜としての利用も検討されている。このため、酸化イットリウムは、加工性の点で酸化ハフニウムに比べて劣る状況は今後も続くと推測される。即ち、加工性の観点も付け加えると、酸化ハフニウムが真空紫外光偏光素子のグリッド材料の候補として残ることになる。
このような検討を踏まえ、実施形態の真空紫外光偏光素子は、酸化ハフニウムをグリッド材料として採用している。より具体的な寸法例を示すと、図1に示す透明基板1の厚さは0.7mm、各線状部3の幅Wは10〜50nm、高さhは50〜300nmであり、したがってアスペクト比は1〜30程度である。また、各線状部3のピッチpは80〜200nmであり、したがってギャップ4の幅は30〜190nm程度である。
このような実施形態の真空紫外光偏光素子の動作について説明する。以下の説明は、真空紫外光偏光方法の発明の実施形態の説明でもある。
真空紫外光偏光素子は、非偏光の真空紫外光の入射側にグリッド2が位置し、出射側に透明基板1が位置する姿勢で配置される。非偏光の真空紫外光は、グリッド2の各線状部3及び各ギャップ4を高さ方向に伝搬する過程で、s偏光光が選択的に吸収・減衰する。このため、透明基板1を透過して出射する真空紫外光は専らp偏光光のみとなる。
このような実施形態の真空紫外光偏光素子によれば、グリッド2が酸化ハフニウム製の各線状部3より成り、ギャップ4は空間であって充填物が設けられていない構造であるので、真空紫外光について高い偏光性能を得ることができる上、真空紫外光の照射環境においても耐酸化性が高く、長期間安定して高い偏光性能を得ることができる。
次に、このような真空紫外光偏光素子の製造方法について説明する。
図4は、実施形態の真空紫外光偏光素子の製造方法について示した概略図である。実施形態の真空紫外光偏光素子を製造する場合、中間的な構造として犠牲層を形成するプロセスが好適に採用される。図4は、このプロセスの一例となっている。
実施形態の真空紫外光偏光素子を製造する場合、透明基板1上にまず犠牲層用の膜51を作成する(図4(1))。犠牲層の材料としては、グリッド材料に対するエッチング選択比が高い材料が好適に採用され、例えばシリコンが犠牲層の材料として採用される。犠牲層用の膜51の作成方法としては種々のものを採用し得るが、例えばプラズマCVDが採用される。
次に、犠牲層の膜51の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりパターン化してレジストパターン52を形成する。レジストパターン52は、グリッド偏光素子の製造であるので、縞状(ラインアンドスペース状)である。但し、レジストパターン52のピッチ(図4(1)にp’で示す)は、最終的なグリッドのピッチの倍である。
次に、レジストパターン52をマスクにして膜51をエッチングし、その後レジストパターン52をアッシングして除去する。これにより、図4(2)に示すように犠牲層53が形成される。エッチングは、透明基板1に対して垂直な方向の異方性エッチングである。犠牲層53も縞状であり、平行に延びる多数の線状部で形成されている。
次に、グリッド用の膜54の作成工程を行う。グリッド用の膜54は、図4(3)に示すように、犠牲層53の各線状部の各側面及び各上面に形成される。膜54の作成は、ALD(Atomic Layer Deposition)によることが好ましい。例えば、酸化ハフニウム膜を膜54として作成する場合、プリカーサガスとしてTEMAH(テトラキスエチルメチルアミノハフニウム)が使用され、酸化剤として水(水蒸気)が使用される。透明基板1が載置されたサセプタの温度を200〜400℃(例えば250℃)程度とし、水蒸気と予め75〜95℃程度に加熱されたプリカーサとを200〜500ミリ秒のパルス間隔でチャンバー内に導入して酸化ハフニウム膜を作成する。チャンバー内の圧力は100mTorr〜500mTorr程度である。酸化剤としてオゾンが導入される場合もある。キャリアガスやパージガスとしては、窒素又はアルゴン等が使用される。
このようにして膜54を作成した後、図4(4)に示すように、膜54を部分的にエッチングする。「部分的」とは、犠牲層53の各上面に載っている部分と透明基板1に直接堆積している部分(ギャップの底部)のみを除去するエッチングである。このエッチングは、前述したように酸化ハフニウムの場合にはBCl系のプラズマエッチングにより行われる。例えばアルゴンをバッファガスとして使用したBClのECRプラズマ又はIC(容量結合)プラズマにより、膜54の部分エッチングが行われる。この際、基板バイアスを印加して透明基板1に垂直な電界を設定し、異方的にエッチングする。これは、犠牲層53の各側面に堆積した部分をエッチングしないようにするためである。尚、BClガスに酸素ガス又は塩素ガスを添加してプラズマエッチングを行う場合もある。これによりグリッドを構成する各線状部が形成される。
その後、犠牲層53を除去するエッチングを行う。この際、犠牲層53の材料のみを選択的にエッチングする。例えば、犠牲層53がシリコンである場合、CF等のガスを使用したプラズマエッチングにより選択的に犠牲層53のみをエッチングして除去することができる。犠牲層53の除去により、図4(5)に示すように、実施形態の真空紫外光偏光素子が出来上がる。出来上がった偏光素子における各線状部3のピッチpは、レジストパターン52のピッチp’の半分となる。
尚、上記製造方法において、中間において形成される犠牲層53の高さは、最終的なグリッド2の高さを決めるものとなるので、特に精度が必要である。また、犠牲層53のアスペクト比がグリッド2のアスペクト比を決める要因になり、高アスペクト比化のためには犠牲層53も高アスペクト比とする必要がある。このようなことから、犠牲層用の膜51の上にマスク層としてカーボン等の膜を形成してフォトリソグラフィによりパターン化し、このマスク層をマスクにして犠牲層用の膜51をエッチングする場合もある。マスク自体が高アスペクト比化するため、長時間の異方性エッチングに耐えることができ、均一な高さの犠牲層53を形成することができる。
次に、真空紫外線偏光装置の発明の実施形態、及び真空紫外線偏光方法の発明の実施形態について説明する。
図5は、実施形態の真空紫外光偏光装置の正面断面概略図である。図5に示す真空紫外光偏光装置は、真空紫外光偏光素子6と、真空紫外光偏光素子が配置された空間を不活性ガスで置換する雰囲気制御手段7とを備えている。
この実施形態では、雰囲気制御手段7は、内部に真空紫外光偏光素子6を収容した容器71と、容器71内に不活性ガスを導入するガス導入系72とを備えている。容器71は、入射側開口と出射側開口を有する形状である。入射側開口には、光入射窓73が嵌め込まれている。光入射窓73は、石英ガラスのような真空紫外光を良く透過する材料で形成されている。
真空紫外光偏光素子6は、出射側開口を塞ぐ状態で容器71に収容されており、不図示の固定具により容器71の内面に固定されている。尚、真空紫外光偏光素子6は、図5中に拡大して示すように、グリッド2が容器71の内部側になる姿勢で配置されている。従って、グリッド2は、容器3内の雰囲気に露出した状態となっている。
ガス導入系72は、容器71内の雰囲気を置換できる程度の流量で不活性ガスを導入できるものとなっている。光入射窓73や真空紫外光偏光素子6が配置された箇所には、微小な隙間が形成されっており、ガス導入系72が導入した不活性ガスは、容器71内に充満した後、これら隙間から漏出する。このため、容器71内の雰囲気が不活性ガスで置換される。この他、容器71を気密容器とし、不活性ガスを排出する排気系を別途設ける構成が採用されることもある。
装置の動作、即ち真空紫外光偏光方法について説明すると、このような真空紫外光偏光装置は、真空紫外光を放射する光源と、偏光光照射の対象物との間の光路上に配置される。光源からの真空紫外光は、光入射窓73を透過して容器71内の真空紫外光偏光素子6に達し、真空紫外光偏光素子6を透過した真空紫外光の偏光光が対象物に照射される。
前述したように、真空紫外光偏光素子6は、グリッド2が酸化ハフニウム製の各線状部3より成るので、真空紫外光について高い偏光性能を長期間安定して得ることができる。そして、真空紫外光偏光素子6のうち特にグリッド2は、不活性ガスで置換された雰囲気中に配置されるので、各線状部3が酸化により劣化するのが抑えられる。このため、経時的な偏光特性の変化がさらに小さくなる。
上記実施形態では、真空紫外光偏光素子6は、出射側開口を塞ぐ窓としても兼用されたが、出射窓を別途設けても良い。この場合には、真空紫外光偏光素子6が全体に不活性ガス置換の雰囲気に晒されることになる。但し、構造的には、出射窓を兼用させる方がシンプルである。
また、光源が容器71内に配置された構成、即ち光源と偏光装置とがセットになった構成が採用されることもある。この場合、容器71はいわゆるランプハウスに相当する部材となる。
次に、配向方法の発明の実施形態について説明する。
図6は、実施形態の真空紫外光偏光素子を搭載した光配向装置の正面概略図である。図6に示す光配向装置は、液晶ディスプレイ用の光配向層を得るための装置であり、対象物(ワーク)10に真空紫外光の偏光光を照射することで、ワーク10に光配向層を形成する装置である。この装置は、真空紫外光を放射する光源81を含むランプハウス8と、真空紫外光偏光素子6と、真空紫外光の照射領域Rにワーク10を搬送するワーク搬送系9とを備えている。
光源81としては、エキシマランプや低圧水銀ランプ等が使用できる。特に、エキシマランプは、単一波長とみなせる光を放射するランプであり、不必要にワーク10を加熱したり、反応を生じさせたりすることがないので好適である。例えば、キセノンを放電ガスとして封入した波長172nmのエキシマランプが使用される。光源81の背後には、一対の長尺なミラー82が配置される。
真空紫外光偏光素子6は、ランプハウス8の光出射側に搭載される。例えば、真空紫外光偏光素子6は、フレーム61に保持されてユニット化され、ランプハウス8の光出射口を塞ぐ状態で搭載される。尚、前述したように、ランプハウス6内を不活性ガスで置換する雰囲気制御手段が設けられることがある。
ワーク10は、この例では透明な板状である。ワーク搬送系9は、上面にワーク10が載置されるステージ91と、ステージ91を照射領域Rを通して直線移動させて搬送する機構とを備えたものとされる。具体的には、ワーク搬送系9は、ステージ71の直線移動をガイドするリニアガイド92や不図示の直線駆動源等を備えたものとされる。搬送ラインは、ランプハウス8の直下の照射領域Rを通過するよう設定される。照射領域Rの一方の側に設定されたロード位置には不図示のロード用ロボットが配置される。アンロード用の機構としては、ロード用ロボットを兼用するか、照射領域Rの他方の側にアンロード用ロボットが配置される。ワーク10としては、表面に光配向層となる膜材が被着したものが使用されることもある。
尚、ランプハウス8内は、真空紫外光の吸収を抑えるため、窒素ガスパージされる場合がある。窒素ガスは、真空紫外光偏光素子6の冷却や真空紫外光偏光素子6へのシロキサン等の異物付着防止の目的で流されることもある。
また、真空紫外光偏光素子6からワーク10までの照射距離(図6にLで示す)は、1〜40mm程度とすることが好ましい。40mmより長いと、雰囲気(空気)による真空紫外光の吸収のため、照度が限度以上に低下してしまう恐れがある。1mmより短いと、ワーク搬送系9による搬送位置に非常に高い精度が要求されてしまう等の問題が生じる。
次に、上記光配向装置の動作について説明する。以下の説明は、配向方法の発明の実施形態の説明でもある。
ワーク10は、不図示のロード用ロボットによりステージ91に載置され、ワーク搬送系9により搬送されて照射領域Rを通過する。照射領域Rには、真空紫外光の偏光光が照射されており、ワーク10は、この光により配向処理がされる。配向処理がされたワーク10は、ステージ91がロード位置に戻った際にロード用ロボットによりステージ91から取り去られるか、又は反対側に設置されたアンロード用ロボットによりステージから取り去られる。
上述した配向方法によれば、よりエネルギーの高い真空紫外光である偏光光により配向処理がされる。このため、より効率良く配向処理が行われる。この際、高い偏光性能が長期間安定して得られるので、良好な配向処理を長期間安定して行うことができる。
尚、ワーク10の幅(図6の紙面垂直方向の長さ)より長い照射領域Rに真空紫外光の偏光光が照射されるが、ワーク10への照射量は、搬送方向の照射領域Rの長さと照射領域Rを通過する際の速度、及び照度によって決まる。この照射量は、40mJ/mm〜4000mJ/mm程度とすることが好ましい。40mJ/mmより少ないと照射量が不足して光配向が不十分となる恐れがある。4000mJ/mmより多いと、真空紫外光の高いエネルギーによってワーク10が劣化してしまう恐れがある。
上記各実施形態において、真空紫外光偏光素子の構造としては、グリッド2の入射側に反射防止層や保護層が形成されたものが使用されることもある。例えば、グリッド2を覆うようにして保護層として酸化シリコン層が形成される場合もある。保護層は、シロキサン等の異物の付着を考慮して設けられる場合もあり、異物を拭き取り等の方法で除去できるように保護層が設けられる。
また、光配向装置については、シート状の膜材がワークとなる場合もある。この場合には、ロールツーロールの搬送方式によりワークを搬送する機構がワーク搬送系として採用され得る。
1 透明基板
2 グリッド
3 線状部
4 ギャップ
53 犠牲層
6 真空紫外光偏光素子
7 雰囲気制御手段
71 容器
72 不活性ガス導入系
8 ランプハウス
9 ワーク搬送系
10 ワーク

Claims (5)

  1. 波長200nm以下の真空紫外光を偏光させる真空紫外光偏光素子であって、
    真空紫外光に対して透明な基板と、基板上に設けられたグリッドとを備えており、
    グリッドは平行に延びる多数の線状部より成るものであって、各線状部の間は空間であって充填物が設けられていない構造であり、
    各線状部は酸化ハフニウムで形成されていることを特徴とする真空紫外光偏光素子。
  2. 請求項1記載の前記真空紫外光偏光素子と、
    前記真空紫外光偏光素子が配置された空間を不活性ガスで置換する雰囲気制御手段と
    を備えていることを特徴とする真空紫外光偏光装置。
  3. 非偏光状態の波長200nm以下の真空紫外光を真空紫外光偏光素子に照射して偏光させる真空紫外光偏光方法であって、
    真空紫外光偏光素子は、真空紫外光に対して透明な基板上に平行に延びる多数の線状部より成るグリッドが設けられた構造であって、グリッドは酸化ハフニウムで形成され、各線状部の間には充填物が設けられていない構造であることを特徴とする真空紫外光偏光方法。
  4. 前記真空紫外光偏光素子を、不活性ガスで置換された空間に配置しながら行うことを特徴とする請求項3記載の真空紫外光偏光方法。
  5. 分子構造に一定の方向性が与えられた配向層をワークに形成する配向方法であって、
    波長200nm以下の真空紫外光を真空紫外光偏光素子に照射して得られた真空紫外域の偏光光をワークに照射することで配向層を形成する方法であり、
    真空紫外光偏光素子は、真空紫外光に対して透明な基板上に平行に延びる多数の線状部より成るグリッドが設けられた構造であって、グリッドの各線状部は酸化ハフニウムで形成され、各線状部の間には充填物が設けられていない構造を有しており、
    ワークを真空紫外光偏光素子に対して1mm以上20mm以下の位置に配置し、
    ワークへの真空紫外光の照射量を40mJ/mm以上4000mJ/mm以下とすることを特徴とする配向方法。
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