JP2019212615A - 正極合材、全固体電池、正極合材の製造方法および全固体電池の製造方法 - Google Patents

正極合材、全固体電池、正極合材の製造方法および全固体電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本開示は、不可逆容量が少ない正極合材を提供することを主目的とする。【解決手段】本開示においては、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有せず、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=15.5°の回折強度をI15.5とし、2θ=25°の回折強度をI25とし、2θ=40°の回折強度をI40とした場合に、下記式で定義される規格値が、1.2よりも大きい、正極合材を提供することにより、上記課題を解決する。規格値=(I15.5−I40)/(I25−I40)【選択図】図6

Description

本開示は、正極合材に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。
硫黄を正極活物質として用いた硫黄電池の開発が進められている。硫黄は、理論容量が1675mAh/gと非常に高いといった特徴を有する。非特許文献1には、硫黄(S)、Pおよびケッチェンブラックの混合物にメカニカルミリングを行い、正極合材を作製することが開示されている。
また、特許文献1には、硫黄及び/又はその放電生成物と、イオン伝導性物質と、導電材料で被覆された活性炭とを有する正極合材が開示されている。また、特許文献2には、硫黄および導電材を含有する正極と、リチウム金属を含有する負極と、正極と負極の間に介在する固体電解質の層とを有する全固体リチウム硫黄電池が開示されている。なお、特許文献3には、LiS−LiI−LiBrまたはLiS−LiIを正極活物質として用いた全固体二次電池が開示されている。
特開2015−176849号公報 特開2017−168434号公報 国際公開第2016/063877号 特開2011−029139号公報
電池の高性能化が求められている。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、不可逆容量が少ない正極合材を提供することを主目的とする。
本開示においては、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有せず、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=15.5°の回折強度をI15.5とし、2θ=25°の回折強度をI25とし、2θ=40°の回折強度をI40とした場合に、下記式で定義される規格値が、1.2よりも大きい、正極合材を提供する。
規格値=(I15.5−I40)/(I25−I40
本開示によれば、所定の規格値を有することから、不可逆容量が少ない正極合材とすることができる。また、正極合材がLi元素を実質的に含有しないことから、容量の低下を抑制した正極合材とすることができる。
上記開示においては、上記Li元素の割合が、0mol%以上、20mol%以下であってもよい。
上記開示においては、上記規格値が、1.5以上であってもよい。
上記開示においては、上記規格値が、2.2以下であってもよい。
上記開示においては、上記S元素に対する上記P元素のモル比(P/S)が、0.12以上、0.27以下であってもよい。
上記開示においては、上記正極合材が、上記導電助剤として炭素材料を含有していてもよい。
また、本開示においては、正極層と、固体電解質層と、負極層とをこの順に有し、上記正極層が、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有せず、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=15.5°の回折強度をI15.5とし、2θ=25°の回折強度をI25とし、2θ=40°の回折強度をI40とした場合に、上述した規格値が、1.2よりも大きい、全固体電池を提供する。
本開示によれば、正極層が所定の規格値を有することから、不可逆容量が少ない全固体電池とすることができる。また、正極層がLi元素を実質的に含有しないことから、容量の低下を抑制した全固体電池とすることができる。
また、本開示においては、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する硫化物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有しない原料混合物を準備する準備工程と、上記原料混合物に、メカニカルミリングを行うメカニカルミリング工程と、を有する正極合材の製造方法であって、上記正極合材は、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=15.5°の回折強度をI15.5とし、2θ=25°の回折強度をI25とし、2θ=40°の回折強度をI40とした場合に、上述した式で定義される規格値が、1.2よりも大きい、正極合材の製造方法を提供する。
本開示によれば、所定の規格値が得られるように製造条件を調整することにより、不可逆容量が少ない正極合材を得ることができる。
また、本開示においては、正極層と、固体電解質層と、負極層とをこの順に有する積層体を形成する積層体形成工程と、上記積層体に対して初期放電する初期放電工程と、を有し、上記積層体形成工程において、上記正極層は、上述した正極合材を用いて形成され、上記初期放電工程において、60℃以上の温度環境で放電する、全固体電池の製造方法を提供する。
本開示によれば、正極層が所定の規格値を有することから、不可逆容量が少ない全固体電池を得ることができる。また、正極層がLi元素を実質的に含有しないことから、容量の低下を抑制した全固体電池を得ることができる。さらに、上記積層体に対して高温で初期放電を行うことから、ハイレート特性が良好な全固体電池を得ることができる。
本開示における正極合材は、不可逆容量が少ないという効果を奏する。
本開示における全固体電池の一例を示す概略断面図である。 本開示における正極合材の製造方法の一例を示すフローチャートである。 本開示における全固体電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。 実施例1〜6および比較例1で得られた正極合材に対するXRD測定の結果である。 実施例1における原料(PおよびS)に対するXRD測定の結果である。 実施例1〜6、比較例1および参考例1で得られた全固体電池に対する充放電試験の結果である。 実施例1〜6、比較例1および参考例1で得られた全固体電池に対する充放電試験の結果である。 実施例7〜9で得られた全固体電池に対する交流インピーダンス測定の結果である。 実施例7〜9で得られた全固体電池に対する充放電試験の結果である。
以下、本開示における正極合材、全固体電池、正極合材の製造方法および全固体電池の製造方法について、詳細に説明する。
A.正極合材
本開示における正極合材は、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有する。さらに、本開示における正極合材は、Li元素を実質的に含有しない。また、本開示における正極合材は、XRD測定で測定される回折強度に基づく、所定の規格値を有する。
本開示によれば、所定の規格値を有することから、不可逆容量が少ない正極合材とすることができる。また、正極合材がLi元素を実質的に含有しないことから、容量の低下を抑制した正極合材とすることができる。
上述したように、非特許文献1には、硫黄(S)、Pおよびケッチェンブラックの混合物を原料として用いた正極合材が開示されている。しかしながら、後述する参考例1に記載するように、非特許文献1で合成した正極合材は、非晶質性が低く、不可逆容量が多い。これに対して、本開示における正極合材は、非晶質性が高い。言い換えると、正極活物質、含硫化合物および導電助剤が互いに高分散している。そのため、不可逆容量を少なくすることができる。
ここで、本開示においては、正極合材の非晶質性が高いことを、所定の規定値により特定する。後述する実施例に記載するように、本開示における正極材料は、非晶質性が高いほど、2θ=10°〜20°の範囲内に現れるブロードなピーク(ハローパターン)の回折強度が大きくなる。この点を表現するために、下記式で定義される規格値を用いる。
規格値=(I15.5−I40)/(I25−I40
15.5は、2θ=15.5°の回折強度であり、I25は、2θ=25°の回折強度であり、I40は、2θ=40°の回折強度である。なお、これらの回折強度は、CuKα線を用いたX線回折測定により求められる。後述する図4に示すように、I15.5は、2θ=10°〜20°の範囲内に現れるブロードなピークに関連する回折強度である。一方、I25は、2θ=20°〜30°の範囲内に現れるブロードなピークに関連する回折強度である。また、I40は、正極合材の非晶質性の影響を受けにくい位置での回折強度であり、I15.5およびI25の関係性を規定する基準である。
規格値は、通常、1.2よりも大きく、1.3以上であってもよく、1.4以上であってもよく、1.5以上であってもよい。一方、規格値は、特に限定されないが、例えば、3以下であり、2.5以下であってもよく、2.2以下であってもよく、1.8以下であってもよい。
また、本開示における正極合材は、Li元素を実質的に含有しないことから、容量の低下を抑制できる。ここで、Li元素を有するイオン伝導体(固体電解質)を含有する正極合材が知られている。例えば、原料としてLiSを用いたイオン伝導体を用いた場合、LiSは耐水性が低いため、このような正極合材を正極層に用いた電池は、容量が低くなる傾向がある。これに対して、本開示における正極合材は、Li元素(すなわち、LiS)を実質的に含有しないため、容量の低下を抑制できる。
「Li元素を実質的に含有しない」とは、正極合材に含まれる全ての元素に対するLi元素の割合が、20mol%以下であることをいう。Li元素の割合は、16mol%以下であってもよく、8mol%以下であってもよく、4mol%以下であってもよく、0mol%であってもよい。また、本開示における正極合材は、Na元素を実質的に含有しなくてもよい。「Na元素を実質的に含有しない」とは、正極合材に含まれる全ての元素に対するNa元素の割合が、20mol%以下であることをいう。Na元素の割合は、16mol%以下であってもよく、8mol%以下であってもよく、4mol%以下であってもよく、0mol%であってもよい。
1.正極活物質
正極活物質は、S元素を有する。中でも、正極活物質は、単体硫黄であることが好ましい。単体硫黄としては、例えばS硫黄が挙げられる。S硫黄は、α硫黄(斜方硫黄)、β硫黄(単斜硫黄)、γ硫黄(単斜硫黄)という3つの結晶形を有し、いずれの結晶形であってもよい。
正極合材が正極活物質として単体硫黄を含有する場合、正極合材は、XRD測定において、単体硫黄のピークを有していてもよく、有していなくてもよい。単体硫黄の典型的なピークは、CuKα線を用いたXRD測定において、2θ=23.05°±0.50°、25.84°±0.50°、27.70°±0.50°に現れる。これらのピーク位置は、それぞれ、±0.30°であってもよく、±0.10°であってもよい。
単体硫黄の一部または全部は、後述する含硫化合物に固溶していてもよい。言い換えると、正極合材は、単体硫黄と含硫化合物との固溶体を含有していてもよい。また、単体硫黄におけるS元素と、含硫化合物におけるS元素とは化学結合(S−S結合)を有していてもよい。なお、正極合材における正極活物質の含有量については、後述する原料混合物における正極活物質の含有量と同様であるので、ここでの記載は省略する。
2.含硫化合物
本開示における正極合材は、含硫化合物として、P元素およびS元素を有する含硫化合物を少なくとも含有する。正極合材は、P元素およびS元素を有する含硫化合物のみを含有していてもよく、他の元素(例えば、Ge、Sn、Si、BまたはAl)およびS元素を有する含硫化合物をさらに含有していてもよい。後者の場合、正極合材は、P元素およびS元素を有する含硫化合物を、含硫化合物の主体として含有することが好ましい。
一方、本開示における含硫化合物は、Li元素を実質的に含有しない。また、含硫化合物は、充放電時にイオン伝導パスとなることが好ましい。ここで、放電時に、Liイオンは負極層から固体電解質層を介して正極層に伝導するが、正極層に到達したLiイオンは、正極活物質と反応する。正極層に含硫化合物が存在しない場合、放電生成物(例えばLiS)のイオン伝導性が低いため、正極層内のイオン伝導パスが不足し、放電反応が進行しにくい。これに対して、正極層に含硫化合物が存在する場合、放電生成物(例えばLiS)のイオン伝導性が低くても、含硫化合物により正極層内のイオン伝導パスが確保されるため、放電反応が進行しやすい。
含硫化合物は、P元素のオルト構造体を含有することが好ましい。P元素のオルト構造体は、具体的には、PS構造体である。また、含硫化合物は、M元素(Mは、例えば、Ge、Sn、Si、BまたはAlである)のオルト構造体を含有していてもよい。M元素のオルト構造体としては、例えば、GeS構造体、SnS構造体、SiS構造体、BS構造体、AlS構造体が挙げられる。一方、含硫化合物は、P元素の硫化物(例えばP)を含有していてもよい。また、含硫化合物は、M元素の硫化物(M)を有していてもよい。ここで、xおよびyは、Mの種類に応じてSとの電気的中性を与える整数である。硫化物(M)としては、例えば、GeS、SnS、SiS、B、Alが挙げられる。また、これらの硫化物は、例えば、出発原料の残留物である。
正極合材は、XRD測定において、硫化物のピークを有していてもよく、有していなくてもよい。Pの典型的なピークは、CuKα線を用いたXRD測定において、2θ=25.84°±0.50°、30.35°±0.50°、31.32°±0.50°に現れる。GeSの典型的なピークは、CuKα線を用いたXRD測定において、2θ=15.43°±0.50°、26.50°±0.50°、28.60°±0.50°に現れる。また、SnSの典型的なピークは、CuKα線を用いたXRD測定において、2θ=15.02°±0.50°、32.11°±0.50°、46.14°±0.50°に現れる。また、SiSの典型的なピークは、CuKα線を用いたXRD測定において、2θ=18.36°±0.50°、29.36°±0.50°、47.31°±0.50°に現れる。これらのピーク位置は、それぞれ、±0.30°であってもよく、±0.10°であってもよい。
また、上述したように、含硫化合物におけるS元素と、単体硫黄(正極活物質)におけるS元素とは化学結合(S−S結合)を有していてもよい。特に、オルト構造体におけるS元素と、単体硫黄(正極活物質)におけるS元素とが化学結合(S−S結合)を有していることが好ましい。なお、正極合材における含硫化合物の含有量については、後述する原料混合物における硫化物の含有量と同様であるので、ここでの記載は省略する。
3.導電助剤
導電助剤は、正極合材の電子伝導性を向上させる機能を有する。また、導電助剤は、例えば原料混合物にメカニカルミリングを行う際に、単体硫黄を還元する還元剤として機能すると推測される。導電助剤は、正極合材において分散して存在することが好ましい。
導電助剤としては、例えば炭素材料、金属材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、気相成長カーボンファイバ(VGCF)、アセチレンブラック、活性炭、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラフェンが挙げられる。なお、正極合材における導電助剤の含有量については、後述する原料混合物における導電助剤の含有量と同様であるので、ここでの記載は省略する。
4.正極合材
本開示における正極合材は、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有する。正極合材は、正極活物質、含硫化合物および導電助剤のみを含有していてもよく、さらに他の材料を含有していてもよい。
正極合材において、S元素に対するP元素のモル比(P/S)は、特に限定されないが、例えば、0.03以上であり、0.06以上であってもよく、0.09以上であってもよく、0.12以上であってもよい。一方、モル比(P/S)は、例えば、0.5以下であり、0.3以下であってもよく、0.27以下であってもよい。なお、モル比(P/S)の分母は、正極合材に含まれる全てのS元素の量を意味する。本開示における正極活物質および含硫化合物は、ともにS元素を含有するため、両者のS元素の量を合計する。
また、本開示における正極合材は、M元素(Mは、Ge、Sn、Si、BまたはAlである)を含有していてもよく、M元素を含有していなくてもよい。
B.全固体電池
図1は、本開示における全固体電池の一例を示す概略断面図である。図1に示される全固体電池10は、正極層1と、固体電解質層2と、負極層3とをこの順に有する。さらに、全固体電池10は、正極層1の集電を行う正極集電体4と、負極層3の集電を行う負極集電体5とを有する。正極層1は、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有しない。さらに、正極層1は、XRD測定で測定される回折強度に基づく、所定の規格値を有する。
本開示によれば、正極層が所定の規格値を有することから、不可逆容量が少ない全固体電池とすることができる。また、正極層がLi元素を実質的に含有しないことから、容量の低下を抑制した全固体電池とすることができる。
1.正極層
正極層は、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有する。一方、正極層は、Li元素を実質的に含有しない。さらに、正極層は、所定の規定値を満たす。正極活物質、含硫化合物、導電助剤、所定の規定値およびその他の事項については、上記「A.正極合材」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
正極層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。また、正極層の目付量は、例えば、3mg/cmよりも大きく、4mg/cm以上であってもよく、5mg/cm以上であってもよい。また、正極層は、例えば、上述した正極合材をプレスすることにより、得ることができる。
2.負極層
負極層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。負極活物質は、Li元素を有することが好ましい。このような負極活物質としては、リチウム単体、リチウム合金が挙げられる。リチウム合金としては、例えば、Li−In合金が挙げられる。負極活物質は、Na元素を有することが好ましい。このような負極活物質としては、ナトリウム単体、ナトリウム合金が挙げられる。
負極層は、必要に応じて、固体電解質、導電助剤およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。導電助剤については、上述した正極層に記載した内容と同様である。バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系バインダーが挙げられる。また、負極層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。
3.固体電解質層
固体電解質層は、正極層および負極層の間に形成される層である。また、固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有する層であり、必要に応じて、バインダーを含有していてもよい。
固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質が挙げられ、中でも、硫化物固体電解質が好ましい。硫化物固体電解質は、Li元素と、A元素(Aは、P、Ge、Si、Sn、BおよびAlの少なくとも1種である)と、S元素とを有することが好ましい。硫化物固体電解質は、ハロゲン元素をさらに有していてもよい。ハロゲン元素としては、例えば、F元素、Cl元素、Br元素、I元素が挙げられる。また、硫化物固体電解質は、O元素をさらに有していてもよい。
硫化物固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−GeS、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−P−LiI−LiBr、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)が挙げられる。
固体電解質層に含まれる固体電解質の割合は、例えば50体積%以上であり、70体積%以上であってもよく、90体積%以上であってもよい。なお、固体電解質層に用いられるバインダーについては、上述した負極層に記載した内容と同様である。また、固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。
4.全固体電池
本開示における全固体電池は、上述した正極層、負極層および固体電解質層を有する。さらに通常は、正極層の集電を行う正極集電体、および負極層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンが挙げられる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボンが挙げられる。
本開示における全固体電池は、硫黄電池であることが好ましい。硫黄電池とは、正極活物質として単体硫黄を用いた電池をいう。本開示における全固体電池は、リチウム硫黄電池(LiS電池)あってもよく、ナトリウム硫黄電池(NaS電池)であってもよい。また、全固体電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、後者が好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。なお、二次電池には、二次電池の一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。
C.正極合材の製造方法
図2は、本開示における正極合材の製造方法の一例を示すフローチャートである。図2においては、まず、正極合材の原料混合物として、単体硫黄(S)、硫化物(P)および導電助剤(VGCF)を含有する混合物を準備する(準備工程)。次に、原料混合物にメカニカルミリングを行う(メカニカルミリング工程)。本開示においては、所定の規格値を有する正極合材を得られるように、製造条件を調整する。例えば、原料混合物の組成、メカニカルミリングの条件を調整することで、所定の規格値を有する正極合材が得られる。
本開示によれば、所定の規格値が得られるように製造条件を調整することにより、不可逆容量が少ない正極合材を得ることができる。また、Li元素を実質的に含有しない原料混合物を用いることにより、容量の低下を抑制可能な正極合材を得ることができる。また、メカニカルミリングを行うことにより、正極活物質と、イオン伝導パスとなる含硫化合物と、電子伝導パスとなる導電助剤が共存している良好な三相界面が形成される。これにより、充放電容量を向上させることができる。
1.準備工程
準備工程は、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する硫化物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有しない原料混合物を準備する工程である。原料混合物は、自ら作製してもよく、他者から購入してもよい。
原料混合物は、正極活物質、硫化物および導電助剤のみを含有していてもよく、さらに他の材料を含有していてもよい。また、原料混合物は、Li元素を実質的に含有しないことが好ましい。同様に、原料混合物は、Na元素を実質的に含有しないことが好ましい。
正極活物質は、単体硫黄であることが好ましい。単体硫黄は、純度が高いことが好ましい。一方、硫化物としては、例えば、Pが挙げられる。原料混合物は、硫化物として、P元素の硫化物のみを含有していてもよく、他の元素の硫化物をさらに含有していてもよい。他の元素の硫化物としては、例えば、GeS、SnS、SiS、B、Alが挙げられる。原料混合物は、他の元素の硫化物を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。導電助剤については、上記「A.正極合材」に記載した内容と同様である。
原料混合物における正極活物質の含有量は、例えば、10重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよく、25重量%以上であってもよい。正極活物質の含有量が少なすぎると、十分な容量を有する正極合材が得られない場合がある。一方、原料混合物における正極活物質の含有量は、例えば、80重量%以下であってもよく、70重量%以下であってもよく、60重量%以下であってもよい。正極活物質の含有量が多すぎると、正極層におけるイオン伝導性および電子伝導性が不足する場合がある。
原料混合物における硫化物(特に、P元素およびS元素を含有する硫化物)の含有量は、例えば、10重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。硫化物の含有量が少なすぎると、正極層におけるイオン伝導性が不足する場合がある。一方、原料混合物における硫化物の含有量は、例えば、80重量%以下であってもよく、70重量%以下であってもよい。硫化物の含有量が多すぎると、相対的に正極活物質の含有量が少なくなり、十分な容量を有する正極合材が得られない場合がある。
原料混合物における導電助剤の含有量は、例えば、5重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよい。導電助剤の含有量が少なすぎると、正極層における電子伝導性が不足する場合がある。一方、原料混合物における導電助剤の含有量は、例えば、50重量%以下であってもよく、40重量%以下であってもよい。導電助剤の含有量が多すぎると、相対的に正極活物質の含有量が少なくなり、十分な容量を有する正極合材が得られない場合がある。
原料混合物において、正極活物質に対する硫化物(特に、P元素およびS元素を含有する硫化物)の重量比は、例えば、0.4以上であり、0.5以上であってもよく、0.6以上であってもよい。一方、上記重量は、例えば、5以下であり、4以下であってもよく、3以下であってもよい。
2.メカニカルミリング工程
メカニカルミリング工程は、上記原料混合物に、メカニカルミリングを行う工程である。メカニカルミリングで原料混合物を非晶質化することにより、正極合材が得られる。
メカニカルミリングは、正極合材を、機械的エネルギーを付与しながら混合する方法であれば特に限定されるものではないが、例えばボールミル、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミルが挙げられ、特に遊星型ボールミルが好ましい。
メカニカルミリングは、乾式メカニカルミリングであってもよく、湿式メカニカルミリングであってもよい。湿式メカニカルミリングに用いられる液体としては、硫化水素が発生しない程度の非プロトン性を有していることが好ましく、具体的には、極性の非プロトン性液体、無極性の非プロトン性液体等の非プロトン性液体が挙げられる。
メカニカルミリングの条件は、所望の正極合材が得られるように適宜設定される。例えば、遊星型ボールミルを用いる場合、容器に原料混合物および粉砕用ボールを加え、所定の台盤回転数および時間で処理を行う。台盤回転数は、例えば200rpm以上であり、300rpm以上であってもよく、510rpm以上であってもよい。一方、台盤回転数は、例えば800rpm以下であり、600rpm以下であってもよい。また、遊星型ボールミルの処理時間は、例えば30分間以上であり、5時間以上であってもよい。一方、遊星型ボールミルの処理時間は、例えば100時間以下であり、60時間以下であってもよい。遊星型ボールミルに用いられる容器および粉砕用ボールの材料としては、例えばZrO、Alが挙げられる。粉砕用ボールの径は、例えば、1mm以上、20mm以下である。メカニカルミリングは、不活性ガス雰囲気(例えばArガス雰囲気)で行なうことが好ましい。
3.正極合材
上述した製造方法により得られる正極合材については、上記「A.正極合材」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、本開示においては、上述した
製造方法により得られることを特徴とする正極合材を提供することもできる。
D.全固体電池の製造方法
図3は、本開示における全固体電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3においては、正極層と、固体電解質層と、負極層とをこの順に有する積層体を形成する(積層体形成工程)。この際、上述した正極合材を用いて正極層を形成する。次に、積層体に対して、比較的高い温度環境で初期放電する(初期放電工程)。これにより、全固体電池が得られる。
本開示によれば、正極層が所定の規格値を有することから、不可逆容量が少ない全固体電池を得ることができる。また、正極層がLi元素を実質的に含有しないことから、容量の低下を抑制した全固体電池を得ることができる。さらに、上記積層体に対して高温で初期放電を行うことから、ハイレート特性が良好な全固体電池を得ることができる。具体的には、放電レートを高くした場合であっても、放電容量の低下を抑制した全固体電池を得ることができる。放電容量の低下を抑制できる理由としては、高温では電池全体のイオン伝導性が高くなり、そのような状態で初期放電を行うことで、正極層におけるイオン伝導パスの形成が促進されるためであると推測される。
1.積層体形成工程
本開示における積層体形成工程は、正極層と、固体電解質層と、負極層とをこの順に有する積層体を形成する工程である。さらに、正極層は、「A.正極合材」に記載された正極合材を用いて形成される。また、積層体は、正極層、固体電解質層および負極層を少なくとも有し、正極集電体および負極集電体をさらに有していてもよい。固体電解質層、負極層および他の部材については、上記「B.全固体電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
積層体を形成する方法としては、例えばプレス法が挙げられる。また、積層体を形成する順番は、特に限定されない。例えば、プレスにより固体電解質層を形成し、その後、プレスにより、固体電解質層の一方の表面側に正極層を形成し、その後、プレスにより、固体電解質層の他方の表面側に負極層を形成してもよい。また、プレスにより、正極層、固体電解質層および負極層の二層以上を同時に形成してもよい。また、正極層、固体電解質層および負極層を形成する際に、スラリーを用いてもよい。
プレス時の圧力は、例えば0.1ton/cm以上であり、0.5ton/cm以上であってもよく、1ton/cm以上であってもよい。一方、プレス時の圧力は、例えば10ton/cm以下であり、8ton/cm以下であってもよく、6ton/cm以下であってもよい。
2.初期放電工程
本開示における初期放電工程は、上記積層体に対して初期放電する工程である。初期放電は、通常、60℃以上の温度環境で行われる。温度環境は、80℃以上であってもよく、100℃以上であってもよい。一方、温度環境は、例えば200℃以下である。なお、通常は、上記積層体の表面温度が環境温度と同じ状態で、上記積層体に対して初期放電を行う。
本開示において、「初期」と「初回」とは明確に区別される。「初期」は「初回」を含む概念であるが、「初回」よりも広い概念である。例えば、初回放電は、文字通り、1回目の放電を意味するが、初期放電は、必ずしも1回目の放電である必要はない。例えば、権利侵害回避を目的として、上記条件に合致しない充放電を数回行った場合であっても、その後、上記条件に合致する放電を行った場合には、その工程が、本開示における初期放電工程に該当する。初期放電は、例えば、1回目以上、10回目以下の放電であることが好ましい。
初期放電における放電レートは、特に限定されないが、例えば0.01C以上であり、0.05C以上であってもよく、0.1C以上であってもよい。一方、初期放電における放電レートは、例えば0.5C以下であり、0.33C以下であってもよい。
また、本開示においては、初期放電工程の後に、初期放電工程よりも低い温度環境で放電する低温度環境放電工程を行ってもよい。この工程における温度環境は、例えば60℃未満であり、55℃以下であってもよく、50℃以下であってもよい。
3.全固体電池
上述した各工程により得られる全固体電池については、上記「B.全固体電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本開示における全固体電池は、使用時の温度環境が60℃未満である電池であることが好ましい。使用時の温度環境は、例えば55℃以下であり、50℃以下であってもよい。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本開示をさらに具体的に説明する。なお、特段の断りがない限り、秤量、合成、乾燥等の各操作は、Ar雰囲気下で行った。
[実施例1]
(正極合材の作製)
単体硫黄(正極活物質、高純度化学製)、P(硫化物)およびVGCF(導電助剤)を準備した。これらを、表1記載の重量比となるように秤量し、各原料をメノウ乳鉢で15分間混練し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を遊星ボールミルの容器(45cc、ZrO製)に投入し、さらにZrOボール(φ=4mm、96g)を投入し、容器を完全に密封した。この容器を遊星ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、1時間メカニカルミリング(台盤回転数510rpm)、15分停止、逆回転で1時間メカニカルミリング(台盤回転数510rpm)、15分停止のサイクルを繰り返し、合計48時間メカニカルミリングを行った。これにより、正極合材を得た。
(全固体電池の作製)
1cmのセラミックス製の型に固体電解質を100mg入れ、1ton/cmでプレスし、固体電解質層を得た。その片側に正極合材を7.8mg(目付量:7.8mg/cm)入れ、6ton/cmでプレスして正極層を作成した。その逆側に、負極層であるリチウム金属箔を配置して、1ton/cmでプレスすることで、発電要素を得た。正極層側にAl箔(正極集電体)、負極層側にCu箔(負極集電体)を配置した。これにより、全固体電池を得た。
[実施例2〜6および比較例1]
各原料を表1記載の重量比となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、正極合材および全固体電池を得た。
[評価]
(X線回折測定)
実施例1〜6および比較例1で得られた正極合材に対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。その結果を図4に示す。また、参考のため、図5に原料であるPおよびSに対するXRD測定の結果を示す。図4および図5に示すように、メカニカルミリング後の正極合材は、十分に非晶質化していることが確認された。また、図4に示す結果と、非特許文献1のFig. 1 (a)に記載された結果とを比較すると、実施例1〜6では、2θ=10°〜20°の範囲内にブロードなピーク(ハローパターン)が確認されたが、非特許文献1のFig. 1 (a)には、このようなピークは確認されなかった。このことから、実施例1〜6では、より非晶質性が高い正極合材が得られたことが確認された。
また、得られたXRDの結果から、2θ=15.5°の回折強度(I15.5)、2θ=25°の回折強度(I25)および2θ=40°の回折強度(I40)を求めて、下記式で定義される規格値を算出した。
規格値=(I15.5−I40)/(I25−I40
この規格値は、非晶質性の指標であり、規格値が大きいほど、非晶質性が高いことを意味する。また、参考例1として、非特許文献1のFig. 1 (a)に基づいて、同様に規格値を算出した。その結果を表2に示す。
(充放電試験)
実施例1〜6および比較例1で得られた全固体電池に対して、充放電試験を行った。充放電試験は、以下の手順で行った。まず、作製後1分以上経過した全固体電池の開回路電圧(OCV)を測定した。次に、60℃の環境下でC/10(456μA/cm)で1.5V(vs Li/Li)まで放電し、10分休止し、C/10で3.1Vまで充電した。これにより、初回放電容量および初回充電容量を測定した。また、初回放電容量と初回充電容量との差を、不可逆容量として求め、初回放電容量に対する初回充電容量の割合をクーロン効率として求めた。その結果を表2、図6および図7に示す。
また、参考例1として、非特許文献1のFig. 4に記載された充放電曲線の結果に基づき、初回放電容量、初回充電容量、不可逆容量およびクーロン効率を求めた。その結果も表2に示す。なお、参考例1の結果は、測定温度、正極層の目付量、電流値等が異なることから、実施例1〜6と直接の比較はできない。一方、参考例1における規格値は、比較例1における規格値と同じであることから、参考例1は、比較例1と同様の結果を示すことが推測される。
表2および図6に示すように、実施例1〜6は、比較例1よりも不可逆容量が少ないことが確認された。特に、実施例1における規格値と、比較例1における規格値は、近い値であるが、不可逆容量が急激に低下するという顕著な効果が得られた。また、表2および図7に示すように、実施例1〜6は、比較例1と同等以上の初回充電容量が得られることが確認された。特に、実施例1〜4では、比較例1よりも明らかに初回充電容量が増加した。
なお、比較例1および参考例1は、規格値が同じである。両者の目付量を比較すると、比較例1では厚い正極層が形成され、参考例1では薄い正極層が形成されている。初回充電容量については、両者は同程度であったが、不可逆容量は、比較例1が参考例1よりも顕著に増加した。このことは、放電時におけるLi脱離の抵抗が高いことを示唆している。すなわち、規格値が小さすぎると、Li脱離が生じにくくなり、不可逆容量が増加することが示唆された。これに対して、実施例1〜6のように、規格値を所定の値よりも大きくすることで、Li脱離が生じやすくなり、不可逆容量を低減することができたと推測される。
[実施例7]
まず、実施例3と同様にして正極合材を得た。次に、1cmのセラミックス製の型に硫化物固体電解質(LiIおよびLiBrを含むLiS−P系の硫化物固体電解質)を101.7mg入れ、1ton/cmでプレスし、固体電解質層を得た。その片側に正極合材を7.8mg(目付量:7.8mg/cm)入れ、6ton/cmでプレスして正極層を作成した。その逆側に、負極層であるリチウム金属箔を配置して、1ton/cmでプレスした。その後、正極層側にAl箔(正極集電体)、負極層側にCu箔(負極集電体)を配置した。得られた積層体に、電流値0.456mA/cm(0.1C)、温度環境60℃で、1.5Vまで初回放電を行った。これにより、全固体電池を得た。
[実施例8、9]
初回放電における環境温度を25℃、0℃に変更したこと以外は、実施例7と同様にして全固体電池を得た。
[評価]
(交流インピーダンス測定)
実施例7〜9で得られた全固体電池に対して、交流インピーダンス測定を行った。測定条件は、交流電圧:±10mV、測定範囲:10MHz〜100mHz、測定温度:25℃とした。得られたナイキストプロットを図8(a)に示す。また、得られたナイキストプロットから抵抗分離を行い、100Hzから0.1Hzまでのインピーダンス増加分を拡散抵抗とした。その結果を図8(b)に示す。図8(b)に示すように、初回放電時の温度環境が高いほど、抵抗拡散が低下しており、正極層のイオン伝導性が向上していることが示唆された。すなわち、高温で初回放電を行うことで、イオン伝導性が高い正極層が得られることが示唆された。
(充放電試験)
実施例7〜9で得られた全固体電池に対して、充放電試験を行った。充放電試験は、以下の手順で行った。なお、温度環境は25℃とし、1Cは4.56mA/cmに該当する。
(1)0.1Cで3.1Vまで充電、10分間休止、0.1Cで1.5Vまで放電、10分間休止し、これを合計5サイクル
(2)0.1Cで3.1Vまで充電、10分間休止、0.33Cで1.5Vまで放電、10分間休止、0.1Cで1.5Vまで放電、10分間休止
(3)0.1Cで3.1Vまで充電、10分間休止、1Cで1.5Vまで放電、10分間休止、0.1Cで1.5Vまで放電、10分間休止
(4)0.1Cで3.1Vまで充電、10分間休止、2Cで1.5Vまで放電、10分間休止、0.1Cで1.5Vまで放電、10分間休止
(5)0.1Cで3.1Vまで充電、10分間休止、0.1Cで1.5Vまで放電、10分間休止
上記の手順で得られた各放電容量の値から、放電容量比を求めた。具体的には、放電容量比の分母を、手順(1)で得られた放電容量(0.1Cでの放電容量)とし、放電容量比の分子を、それぞれ、手順(2)〜(4)で得られた放電容量(0.33C、1C、2Cでの放電容量)とした。その結果を図9に示す。図9に示すように、実施例7〜9では、いずれも放電レートが向上すると放電容量比が低下したが、初回放電時の温度環境が高いほど放電容量比の低下が抑制された。
参考例2として、実施例7で得られた全固体電池を用い、温度環境を25℃から60℃に変更して充放電試験を行った。その結果も図9に示す。図9に示すように、参考例2では、放電容量比の低下が最も抑制された。このように、電池使用時の温度環境が高温である場合は、放電容量比の低下という課題が生じないことが確認された。
また、充放電試験時の温度環境と、実施例7、8で得られた全固体電池における正極層のイオン伝導度との関係を求めた。実施例7(初回放電時の温度環境が60℃)では、充放電試験時の温度環境が25℃である場合は3.3×10−5S/cmであり、充放電試験の温度環境が60℃である場合は1.8×10−4S/cmであった。これに対して、実施例8(初回放電時の温度環境25℃)では、充放電試験時の温度環境が25℃である場合は1.3×10−5S/cmであり、充放電試験の温度環境が60℃である場合は4.4×10−5S/cmであった。
また、これらのイオン伝導度でLiイオンが50μm移動したと仮定した場合の抵抗値を計算した。その結果、実施例7(初回放電時の温度環境が60℃)では、充放電試験時の温度環境が25℃である場合は150Ωであり、充放電試験の温度環境が60℃である場合28Ωであった。これに対して、実施例8(初回放電時の温度環境25℃)では、充放電試験時の温度環境が25℃である場合は384Ωであり、充放電試験の温度環境が60℃である場合は40Ωであった。充放電試験の温度環境が60℃である場合、実施例7および実施例8の抵抗差は12Ωであった。これに対して、充放電試験の温度環境が25℃である場合、実施例7および実施例8の抵抗差は234Ωであった。このように、電池使用時の温度環境が比較的低温である場合は、放電容量比の抵抗低減効果が顕著であることが確認された。
1 … 正極層
2 … 固体電解質層
3 … 負極層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
10 … 全固体電池

Claims (9)

  1. S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有せず、
    CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=15.5°の回折強度をI15.5とし、2θ=25°の回折強度をI25とし、2θ=40°の回折強度をI40とした場合に、下記式で定義される規格値が、1.2よりも大きい、正極合材。
    規格値=(I15.5−I40)/(I25−I40
  2. 前記Li元素の割合が、0mol%以上、20mol%以下である、請求項1に記載の正極合材。
  3. 前記規格値が、1.5以上である、請求項1または請求項2に記載の正極合材。
  4. 前記規格値が、2.2以下である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の正極合材。
  5. 前記S元素に対する前記P元素のモル比(P/S)が、0.12以上、0.27以下である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の正極合材。
  6. 前記導電助剤として炭素材料を含有する、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の正極合材。
  7. 正極層と、固体電解質層と、負極層とをこの順に有し、
    前記正極層が、S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する含硫化合物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有せず、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=15.5°の回折強度をI15.5とし、2θ=25°の回折強度をI25とし、2θ=40°の回折強度をI40とした場合に、下記式で定義される規格値が、1.2よりも大きい、全固体電池。
    規格値=(I15.5−I40)/(I25−I40
  8. S元素を有する正極活物質と、P元素およびS元素を有する硫化物と、導電助剤とを含有し、Li元素を実質的に含有しない原料混合物を準備する準備工程と、
    前記原料混合物に、メカニカルミリングを行うメカニカルミリング工程と、
    を有する正極合材の製造方法であって、
    前記正極合材は、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=15.5°の回折強度をI15.5とし、2θ=25°の回折強度をI25とし、2θ=40°の回折強度をI40とした場合に、下記式で定義される規格値が、1.2よりも大きい、正極合材の製造方法。
    規格値=(I15.5−I40)/(I25−I40
  9. 正極層と、固体電解質層と、負極層とをこの順に有する積層体を形成する積層体形成工程と、
    前記積層体に対して初期放電する初期放電工程と、を有し、
    前記積層体形成工程において、前記正極層は、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の正極合材を用いて形成され、
    前記初期放電工程において、60℃以上の温度環境で放電する、全固体電池の製造方法。
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