JP2019211592A - 反射防止フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】密着性に優れた反射防止層を備えた反射防止フィルムを提供することにある。【解決手段】電離放射線硬化型樹脂で形成された光学フィルムと、光学フィルムの少なくとも一方面に接して設けられた反射防止層と、を備え、反射防止層の少なくとも光学フィルムと接する側の面は、電離放射線硬化型樹脂を主体とする材料で構成され、光学フィルムに含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部と、反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部とが、ラジカル重合により結合している、反射防止フィルム。【選択図】図1
Description
本発明は、ディスプレイやタッチパネル等の表面を保護するフィルムに関し、より詳しくは、反射防止層を備えた表面保護用の反射防止フィルムに関する。
スマートフォン、タブレットPCなどのタッチパネル端末の最表面は、引っかき傷や擦り傷が付き易いため、表面を保護するフィルムを貼り付けて保護している。このフィルムは、基材となるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、ハードコート層が設けられたものなどが使用される。
また、端末のディスプレイ表面を保護するフィルムには、使用者の好みに合わせて、表面での反射や光の映り込みを防止する反射防止層が設けられたり、映り込みを防止し指紋をつきにくくするアンチグレア加工が施されたりする。
たとえば、特許文献1は、スパッタ法、蒸着法、あるいはCVD法により、基材上に反射防止層を形成したフィルムを開示している。
特許文献1では、基材と反射防止層との密着性について考慮されていたが、屋外で使用する入力デバイスではこの点でのさらなる改良が求められていた。
この発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、密着性の高い反射防止層を備えた反射防止フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するための反射防止フィルムにかかる本発明は、次の構成を採用する。
電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルムと、前記光学フィルムの少なくとも一方面に接して設けられた反射防止層と、を備え、前記反射防止層の少なくとも前記光学フィルムと接する側の面は、電離放射線硬化型樹脂を主体とする材料で構成され、前記光学フィルムに含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部と、前記反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部とが、ラジカル重合により結合している、反射防止フィルム。
電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルムと、前記光学フィルムの少なくとも一方面に接して設けられた反射防止層と、を備え、前記反射防止層の少なくとも前記光学フィルムと接する側の面は、電離放射線硬化型樹脂を主体とする材料で構成され、前記光学フィルムに含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部と、前記反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部とが、ラジカル重合により結合している、反射防止フィルム。
この構成によると、光学フィルムと、反射防止層と、の界面における結合が、電離放射線硬化型樹脂のラジカル重合による結合を含んでいる。電離放射線硬化型樹脂のラジカル重合による結合力は、蒸着、CVD、スパッタなどの化学的な結合が起こらない手法に比べて極めて高く、これにより光学フィルムと反射防止層との密着性に優れた反射防止フィルムを実現できる。
上記構成において、反射防止フィルムは、300〜400nmの照射強度が366W/m2(300〜400波長積算)である、JIS B7751に準拠した紫外線カーボンアーク灯式の耐光性試験を960時間実施した後に、JIS K5400に準拠したクロスカット法による膜密着試験を行った場合において、剥離マスを生じないものであることが好ましい。
本発明にかかる反射防止フィルムは、光学フィルムと、反射防止層と、の界面における結合が、電離放射線硬化型樹脂のラジカル重合による結合という化学的で強固な結合を含んでおり、これにより耐光性試験を行った後においても上記のような良好な密着性を実現できる。
ここで、光学フィルムに含まれる電離放射線硬化型樹脂が、多官能(メタ)アクリレートの重合物を含み、反射防止層の少なくとも光学フィルムと接する側の面近傍には、電離放射線硬化型樹脂として多官能(メタ)アクリレートの重合物が含まれ、光学フィルムと反射防止層との境界面を超えた多官能(メタ)アクリレートの重合物が形成されている構成とすることが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの重合物は、三次元的にランダムな架橋を形成し、この架橋が光学フィルムと反射防止層との境界面を超えて形成されることにより、光学フィルムと反射防止層との密着性や、それぞれの層の強度を高めるように作用する。
なお、多官能(メタ)アクリレートとは、メタクリロイル基、アクリロイル基を合計で3以上有するモノマー(硬化前の電離放射線硬化型樹脂)全般を意味し、その(メタ)アクリロイル基以外の骨格構造は特に限定されない。
反射防止フィルムの製造方法にかかる本発明の第1の態様は、次の構成を採用する。
第1基材と、前記第1基材上に積層された、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体と、前記光学フィルム前駆体上に接して積層された、少なくとも前記光学フィルム側の面には電離放射線硬化型樹脂を有する反射防止層と、前記反射防止層上に積層された第2基材と、を備える積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体に電離放射線を照射して、前記光学フィルム前駆体に含まれる電離放射線硬化型樹脂および前記反射防止層に含まれる、未硬化のまま残存した電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線照射工程と、電離放射線照射工程後の積層体から、前記第1基材および前記第2基材を剥離する剥離工程と、を備える反射防止フィルムの製造方法。
第1基材と、前記第1基材上に積層された、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体と、前記光学フィルム前駆体上に接して積層された、少なくとも前記光学フィルム側の面には電離放射線硬化型樹脂を有する反射防止層と、前記反射防止層上に積層された第2基材と、を備える積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体に電離放射線を照射して、前記光学フィルム前駆体に含まれる電離放射線硬化型樹脂および前記反射防止層に含まれる、未硬化のまま残存した電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線照射工程と、電離放射線照射工程後の積層体から、前記第1基材および前記第2基材を剥離する剥離工程と、を備える反射防止フィルムの製造方法。
この製造方法は、光学フィルム前駆体と、反射防止層と、を接して積層し、これらが第1基材、第2基材にサンドイッチされた状態で電離放射線を照射している。ここで、反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂は、その技術上全部が完全に硬化(重合)していることはなく、その一部が硬化前の状態で残存してしまう。よって、電離放射線を照射すると光学フィルム前駆体の電離放射線硬化型樹脂の一部と、反射防止層に残存した硬化前の電離放射線硬化型樹脂とがラジカル重合して結合し、光学フィルムと反射防止層とが強固に結合する。また、第1基材、第2基材にサンドイッチされた状態であるため、電離放射線による効果が、酸素の影響を受けることなく進行する。この結果、密着性に優れた反射防止層を備える反射防止フィルムを実現できる。
反射防止フィルムの製造方法にかかる本発明の第2の態様は、次の構成を採用する。
第1基材と、前記第1基材上に積層された、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体と、前記光学フィルム前駆体上に接して積層された、少なくとも前記光学フィルム側の面には未硬化の電離放射線硬化型樹脂を有する反射防止層と、を備える積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体に電離放射線を照射して、前記光学フィルム前駆体に含まれる電離放射線硬化型樹脂および前記反射防止層に含まれる、未硬化のまま残存した電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線照射工程と、電離放射線照射工程後の積層体から、前記第1基材を剥離する剥離工程と、を備える反射防止フィルムの製造方法。
第1基材と、前記第1基材上に積層された、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体と、前記光学フィルム前駆体上に接して積層された、少なくとも前記光学フィルム側の面には未硬化の電離放射線硬化型樹脂を有する反射防止層と、を備える積層体を作製する積層体作製工程と、前記積層体に電離放射線を照射して、前記光学フィルム前駆体に含まれる電離放射線硬化型樹脂および前記反射防止層に含まれる、未硬化のまま残存した電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線照射工程と、電離放射線照射工程後の積層体から、前記第1基材を剥離する剥離工程と、を備える反射防止フィルムの製造方法。
この製造方法は、光学フィルム前駆体と、反射防止層と、を接して積層した後に、電離放射線を照射している。本発明の第2の態様は、第2基材を必須構成要素としていない点で、本発明の第1の態様と相違する。この方法によっても、密着性に優れた反射防止層を備える反射防止フィルムを実現できる。ここで、積層体作製工程における反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂は、その一部を硬化前の状態で残存させている。一部を硬化前の状態で残存させた電離放射線硬化型樹脂は、硬化度が0.80〜1.30となる条件で硬化処理がなされていることが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂の硬化度は、FT−IR−ATR法にて求めることができ、硬化度は(−C=CHの帰属ピーク高さ)/(−CH2−の帰属ピーク高さ)で定義される。電離放射線硬化型樹脂を硬化度が0.80〜1.30となる条件で硬化処理することで、一部が硬化前の状態で残存したものとなる。この後、電離放射線を照射すると、光学フィルム前駆体の電離放射線硬化型樹脂の一部と、反射防止層に残存した硬化前の電離放射線硬化型樹脂とがラジカル重合して結合し、光学フィルムと反射防止層とが強固に結合する。
なお、本明細書において、特に明記しない場合には、電離放射線硬化型樹脂などの硬化型樹脂は「硬化後のもの」を意味し、硬化前のものは、「硬化前」、「未硬化」、「モノマー」などの修飾語を付すものとする。また、硬化後のものについて、「硬化後」、「重合後」などの修飾語が付される場合もある。
以上に説明したように、本発明によれば、密着性の高い反射防止層を備えた反射防止フィルムを実現できる。
以下、この発明を実施するための形態を説明する。
まず、本実施の第1の態様にかかる反射防止フィルムの製造方法について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルムの製造方法を示す図であり、図1(a)は塗布工程、図1(b)は積層体作製工程、図1(c)は電離放射線照射工程、図1(d)は剥離工程を示し、図2は、電離放射線照射前後の光学フィルムと反射防止層の電離放射線硬化型樹脂の状態を説明する図であって、図2(a)は照射前、図2(b)は照射後を示す。なお、各図において、同一又は相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
(光学フィルム前駆体材料の調製)
未硬化の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体材料を調製する。未硬化の電離放射線硬化型樹脂としては、光ラジカル重合を行う(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を3以上有する化合物であることがより好ましい。
未硬化の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体材料を調製する。未硬化の電離放射線硬化型樹脂としては、光ラジカル重合を行う(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を3以上有する化合物であることがより好ましい。
(反射防止フィルムの準備)
また、ベースフィルム(第2基材)7に反射防止層8が形成されたフィルムを用意する。この反射防止層8の、ベースフィルム7と反対側の表面近傍は、(メタ)アクリレート系のモノマーに電離放射線照射して光ラジカル重合させたものを主体としている。ベースフィルム7としては、たとえば市販のPETフィルムを用いることができ、表面が平滑なものやアンチグレアとするための加工が施されたものなどを用いることができる。
また、ベースフィルム(第2基材)7に反射防止層8が形成されたフィルムを用意する。この反射防止層8の、ベースフィルム7と反対側の表面近傍は、(メタ)アクリレート系のモノマーに電離放射線照射して光ラジカル重合させたものを主体としている。ベースフィルム7としては、たとえば市販のPETフィルムを用いることができ、表面が平滑なものやアンチグレアとするための加工が施されたものなどを用いることができる。
(塗布工程)
図1(a)に示すように、ベースフィルム(第1基材)6上に、上記光学フィルム前駆体材料を塗布し、光学フィルム前駆体3を形成する。ベースフィルム6は、市販のものを用いることができる。
図1(a)に示すように、ベースフィルム(第1基材)6上に、上記光学フィルム前駆体材料を塗布し、光学フィルム前駆体3を形成する。ベースフィルム6は、市販のものを用いることができる。
(積層体作製工程)
図1(b)に示すように、反射防止層8が形成されたベースフィルム7と、光学フィルム前駆体3が形成されたベースフィルム6とを、反射防止層8と光学フィルム前駆体3とが接するように積層し、ベースフィルム6、光学フィルム前駆体3、反射防止層8、ベースフィルム7が順に積層された積層体を得る。
図1(b)に示すように、反射防止層8が形成されたベースフィルム7と、光学フィルム前駆体3が形成されたベースフィルム6とを、反射防止層8と光学フィルム前駆体3とが接するように積層し、ベースフィルム6、光学フィルム前駆体3、反射防止層8、ベースフィルム7が順に積層された積層体を得る。
なお、積層体作製工程は、ベースフィルム7の上に反射防止層8を形成したものを用意し、その反射防止層8の上に光学フィルム前駆体3を塗布形成し、光学フィルム前駆体3の上にさらにベースフィルム6を積層する工程であってもよい。
(電離放射線照射工程)
図1(c)に示すように、この積層体10に電離放射線(たとえば紫外線)を照射して、光学フィルム前駆体材料に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂を硬化(光ラジカル重合)させる。
図1(c)に示すように、この積層体10に電離放射線(たとえば紫外線)を照射して、光学フィルム前駆体材料に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂を硬化(光ラジカル重合)させる。
なお、光学フィルム前駆体3と反射防止層8とを、2枚のベースフィルム6、7で挟まれた積層体の状態で紫外線硬化するのは、所定の膜厚のフィルムを平滑に形成し、また未硬化の電離放射線硬化型樹脂に酸素による影響を受けることを防ぐためである。
(剥離工程)
図1(d)に示すように、ベースフィルム6,7を剥離する。この一連の工程で、光学フィルム前駆体3を構成する未硬化の電離放射線硬化型樹脂は光ラジカル重合され、光学フィルム4となる。また、ベースフィルム7から光学フィルム4に反射防止層8が転写され、光学フィルム4と反射防止層8とを備えた反射防止フィルム1が得られる。光学フィルム4の膜厚は50〜300μm、より好ましくは80〜200μmになるように、光学フィルム前駆体材料の塗布量を調整する。
図1(d)に示すように、ベースフィルム6,7を剥離する。この一連の工程で、光学フィルム前駆体3を構成する未硬化の電離放射線硬化型樹脂は光ラジカル重合され、光学フィルム4となる。また、ベースフィルム7から光学フィルム4に反射防止層8が転写され、光学フィルム4と反射防止層8とを備えた反射防止フィルム1が得られる。光学フィルム4の膜厚は50〜300μm、より好ましくは80〜200μmになるように、光学フィルム前駆体材料の塗布量を調整する。
ここで、反射防止層8の光学フィルム前駆体3と接する表面近傍は、(メタ)アクリレート系のモノマーに電離放射線照射して光ラジカル重合させたものを主体としている。電離放射線による光ラジカル重合においては、ラジカルと二重結合とが反応する前にラジカル同士で反応(再結合や不均化による停止反応)するなどして、全ての二重結合が完全に反応することなく重合が終了してしまうため、完全な二重結合の消失は技術上不可能である。
つまり、光学フィルム前駆体3と、反射防止層8とを積層した段階(積層体には電離放射線を照射していない状態)においては、図2(a)に示すように、反射防止層8に含まれる電離放射線硬化型樹脂は、そのモノマーの骨格構造11がランダムに結合((メタ)アクリレートの光ラジカル重合による結合)し、且つ一部未反応の(メタ)アクリロイル基Rを有している。一方、光学フィルム前駆体3に含まれる電離放射線硬化型樹脂は全てモノマーの状態であり、そのモノマーは、骨格構造11に(メタ)アクリロイル基Rが結合している。
この状態で電離放射線を照射すると、光学フィルム前駆体に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂中の(メタ)アクリロイル基Rが光ラジカル重合して光学フィルム4となるとともに、光学フィルム前駆体に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂の(メタ)アクリロイル基Rと、反射防止層8の表面近傍に残存する未反応のまま残存した(メタ)アクリロイル基Rとが、お互いに光ラジカル重合して結合する(図2(b)参照)。これにより光学フィルム4から反射防止層8までつながったラジカル重合による架橋構造が形成され、光学フィルム4と反射防止層8との密着性が高く保たれるようになり、耐久性の高い反射防止フィルムを作製することができる。なお、この重合反応においても、上記と同様に、光学フィルム4、反射防止層8ともに、一部未反応の(メタ)アクリロイル基Rが残存すると考えられる。
ここで、反射防止層、光学フィルム前駆体ともに、材料として用いる電離放射線硬化型樹脂(未硬化の状態)は、多官能(骨格構造11・12に結合した(メタ)アクリロイル基Rの数が3以上)であることが好ましい。このように多官能のモノマーを材料として用いることにより、硬化後において電離放射線硬化型樹脂内に三次元的にランダムな架橋ネットワークが形成されるので、各層の強度が高くなる。さらに、多官能のモノマーを材料として用いることにより、反射防止層8の表面近傍に残存する未反応のアクリロイル基Rと、光学フィルム前駆体の電離放射線硬化型樹脂組成物中のアクリロイル基Rとが、近接配置される可能性が高まり、これらが重合して結合することによって反射防止層と光学フィルムとの密着性が高まる。加えて、反射防止層と光学フィルムの界面を超えた三次元的な架橋構造が形成されることにより、反射防止層と光学フィルムとの密着性をさらに高めることができる。
なお、反射防止層作製時に、酸素含有雰囲気で硬化を行う、電離放射線の照射時間を短くするなどして、反射防止層に含まれる硬化前の電離放射線硬化型樹脂量を多く確保する構成としてもよい。
反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂は、硬化度が0.80〜1.30となる条件で硬化処理がなされていることが好ましい。
光学フィルム前駆体材料に用いる電離放射線硬化型樹脂(モノマー)としては、メタクリロイル基、アクリロイル基を合計で3以上有する多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基以外の骨格構造は特に限定されず、たとえばシリコーン系、ウレタン系、エポキシ系、フッ素系、脂肪族系の骨格構造を有するものを用いることができる。
なかでも、表面硬度が高く且つ可撓性があって割れにくい基材フィルムを作製できることから、(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基がケイ素に結合した篭型ポリオルガノシルセスキオキサンを主成分とする多官能のシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。また、シリコーン系樹脂に代えて、多官能のウレタン系(メタ)アクリレート及び/又は多官能の脂肪族系(メタ)アクリレートを含有する重合性組成物を用いてもよい。さらに、シリコーン系樹脂に、上記のウレタン系(メタ)アクリレート及び/又は(メタ)アクリレートを混合してもよい。たとえば、シリコーン系樹脂100重量部に対して、100〜500重量部、好ましくは200〜400重量部のウレタン系(メタ)アクリレート及び/又は脂肪族系(メタ)系アクリレートを混合して用いることができる。
ポリオルガノシルセスキオキサンは、3官能性シランを加水分解することで得られる(RSiO1.5)nの構造を持つ化合物であり、本発明では、ポリオルガノシルセスキオキサンうち、篭型構造を有するものを用いることが好ましい。つまり、篭型ポリオルガノシルセスキオキサンは、その各シリコン(Si)原子が、平均1.5個の酸素(O)原子と1つの炭化水素基(R)と結合し、有機官能基とSi−O結合で出来たカゴ状骨格を有しているものである。このような構造であることで、硬化後の光学フィルムの硬度を高める。また、篭型ポリオルガノシルセスキオキサンは、ケイ素(Si)原子の数(上記n)が8、10、12であることが好ましい。
ウレタン系(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させてなることで、分子内のウレタン基の水素結合により適度な靭性を付与されて機械強度に優れるとともに、多官能であるので硬化して架橋構造を形成し、硬度が高い樹脂成形体を得ることができるため、好ましい。ウレタン系(メタ)アクリレートの数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。数平均分子量が200未満であると、硬化収縮が増大し、複屈折が発生しやすくなるおそれにある。数平均分子量が5000を超えると、架橋性が低下し、耐熱性が不十分となるおそれがある。
ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられるが、黄変を抑制できる点で脂肪族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。またポリイソシアネート化合物として、脂環構造を有しない化合物を用いると、特に表面硬度が優れた光学フィルム4を得ることができ、好ましい。脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有していれば限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート等が挙げられる。特に分子中に脂環構造を有しないものを用いることが、樹脂成形体の表面硬度、及び色目変化の抑制の点で好ましい。
脂肪族系(メタ)アクリレートとしては、脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレートを用いることができ、たとえば1,3,5−トリス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3,5−トリス(メタクリロイルオキシエチルオキシメチル)シクロヘキサンなどの3官能(メタ)アクリレートがあげられる。
反射防止層8は、反射を防止できるようなものであればどのようなものであってもよいが、好ましくは、ベースフィルム7側の低屈折率層と、積層後に光学フィルム前駆体3に接する高屈折率層と、を有する構成とすることが好ましい。
低屈折率層は、屈折率が1.5未満、好ましくは1.4未満(1.2以上)のものとすることが好ましい。また、低屈折率層は電離放射線硬化型樹脂を主体とし、これに低屈折率化の添加材やその他の添加材などが分散されているものであることが好ましい。たとえば、SiO2の微粒子などの低屈折率化剤を含有させた、電離放射線硬化型(メタ)アクリレートを硬化したものとすることができる。電離放射線硬化型(メタ)アクリレートは、脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレートであることが好ましい。低屈折率層の厚さは、好ましくは0.05〜0.2μm、より好ましくは0.07〜0.11μmである。
高屈折率層は、屈折率が1.5以上、好ましくは1.6以上のものとすることが好ましい。透明性に優れ、しかも塗膜形成後の鉛筆硬度がH以上のものであることが好ましい。また、高屈折率層は、電離放射線硬化型樹脂を主体とし、これに高屈折率化の添加材やその他の添加材などが分散されているものであることが好ましい。
たとえば、平均粒子径で0.03μm以下のTiO2、ZrO2、CeO2等の高屈折率化剤微粒子を含有させた、電離放射線硬化型(メタ)アクリレートを硬化したものとすることができる。電離放射線硬化型(メタ)アクリレートは、脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレートであることが好ましい。高屈折率層の厚さは、好ましくは0.05〜0.2μm、より好ましくは0.07〜0.15μmである。
低屈折率層と高屈折率層とを積層してなる反射防止層によって、反射防止性能が発現する。ここで、高屈折率層上(低屈折率層と反対の面に)にプライマー層や接着層を設けてもよい。
また、光学フィルム、反射防止層はそれぞれ、複数種類の電離放射線硬化型樹脂を含んでいてもよく、単一の電離放射線硬化型樹脂からなる構成であってもよい。また、光学フィルムに含まれる電離放射線硬化型樹脂と、反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂とは、一種類の場合、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも一方が複数種類からなる場合には、構成が完全一致、部分一致、不一致のいずれであってもよい。
(実施例1)
実施例1にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
実施例1にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
(光学フィルム前駆体の調製)
メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型ポリオルガノシルセスキオキサン:25重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート:10重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:60重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー:1.5重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2.5重量部を混合し、光学フィルム前駆体材料を調製した。
メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型ポリオルガノシルセスキオキサン:25重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート:10重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:60重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー:1.5重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2.5重量部を混合し、光学フィルム前駆体材料を調製した。
得られた光学フィルム前駆体材料を、硬化後の膜厚が100μmとなるように、ベースフィルム(東洋紡株式会社製A4100)の未処理面(易接着層が形成されていない面)上にテスター産業株式会社製のバーコーター(ROD#75)を用いて塗布し、ベースフィルム上に光学フィルム前駆体を形成した。
(積層体の作製)
離型性を有する平滑なフィルム面上に、反射防止層が形成されたフィルムを用意した。この反射防止層は、低屈折率化剤微粒子としてのSiO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる低屈折率層と、高屈折率化剤微粒子としてのZrO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる高屈折率層と、を有している。このフィルムの高屈折率層と、光学フィルム前駆体とが接するように両者を重ね合わせて、積層体を作製した。
離型性を有する平滑なフィルム面上に、反射防止層が形成されたフィルムを用意した。この反射防止層は、低屈折率化剤微粒子としてのSiO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる低屈折率層と、高屈折率化剤微粒子としてのZrO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる高屈折率層と、を有している。このフィルムの高屈折率層と、光学フィルム前駆体とが接するように両者を重ね合わせて、積層体を作製した。
(電離放射線の照射(重合))
紫外線硬化装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製:CV−110Q−G)を用いて、上記積層体に積算照射量1500mJ/cm2の紫外線を照射し、光学フィルム前駆体に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂および、反射防止層に含まれる、光重合時に重合せずに残った未硬化の電離放射線硬化型樹脂を光ラジカル重合させた。
紫外線硬化装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製:CV−110Q−G)を用いて、上記積層体に積算照射量1500mJ/cm2の紫外線を照射し、光学フィルム前駆体に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂および、反射防止層に含まれる、光重合時に重合せずに残った未硬化の電離放射線硬化型樹脂を光ラジカル重合させた。
(剥離工程)
光ラジカル重合後の積層体の両面のベースフィルムを剥離し、光学フィルムに反射防止層が転写形成された、実施例1にかかる反射防止フィルムを作製した。
光ラジカル重合後の積層体の両面のベースフィルムを剥離し、光学フィルムに反射防止層が転写形成された、実施例1にかかる反射防止フィルムを作製した。
(実施例2)
実施例2にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
実施例2にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
(光学フィルム前駆体の調製)
メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型ポリオルガノシルセスキオキサン:25重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:40重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:30重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー:1.5重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2.5重量部を混合し、光学フィルム前駆体材料を調製した。
メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型ポリオルガノシルセスキオキサン:25重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:40重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:30重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー:1.5重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2.5重量部を混合し、光学フィルム前駆体材料を調製した。
得られた光学フィルム前駆体材料を、硬化膜厚が100μmとなるように、ベースフィルム(東洋紡株式会社製A4100)の未処理面(易接着層が形成されていない面)上にテスター産業株式会社製のバーコーター(ROD#75)を用いて塗布し、ベースフィルム上に光学フィルム前駆体を形成した。
(積層体の作製)
アンチグレアコーティングを施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム面上に、反射防止層が形成されたフィルムを用意した。この反射防止層は、アンチグレアコーティングを施したフィル上に形成されていること以外は上記実施例1と同様である。このPETフィルムには、シリカなどのフィラーを含んだアンチグレアコーティングがなされ、この結果硬化後の表面粗さRaが0.05〜0.5μmとなるようになっている。このフィルムの高屈折率層と、光学フィルム前駆体とが接するように両者を重ね合わせて、積層体を作製した。
アンチグレアコーティングを施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム面上に、反射防止層が形成されたフィルムを用意した。この反射防止層は、アンチグレアコーティングを施したフィル上に形成されていること以外は上記実施例1と同様である。このPETフィルムには、シリカなどのフィラーを含んだアンチグレアコーティングがなされ、この結果硬化後の表面粗さRaが0.05〜0.5μmとなるようになっている。このフィルムの高屈折率層と、光学フィルム前駆体とが接するように両者を重ね合わせて、積層体を作製した。
上記実施例1と同様に電離放射線の照射、剥離を行って、実施例2にかかる反射防止フィルムを作製した。
(比較例1)
比較例1にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
比較例1にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
実施例1と同様にして得た光学フィルム前駆体材料を、ベースフィルムであるA4100(東洋紡株式会社製)の未処理面(易接着層が形成されていない面)に、バーコーター#75を用いて塗布した。A4100をもう一枚用意し、光学フィルム前駆体上に、A4100の未処理面が接するようにラミネートして、三層構造の積層体を調製した。
積層体に、積算照射量1500mJ/cm2の紫外線を照射し、光学フィルム前駆体材料に含まれる電離放射線硬化型樹脂を硬化させた後、両面のPETフィルムを剥離して、厚みが100μmの光学フィルムを得た。
得られたフィルムの一方面に対して、蒸着法により反射防止層を形成し、反射防止フィルムを作製した。反射防止層は、屈折率の異なる複数の無機誘電体薄膜が積層された層であって、各層は光学フィルムに接し、高屈折率材料であるTiO2からなる層(厚み270nm)と、低屈折材料であるSiO2からなる層(厚み175nm)と、により構成される。
(比較例2)
光学フィルム前駆体材料を塗布するベースフィルムとして、実施例2と同様のアンチグレアコーティングを施したPETフィルムを用いた以外は、比較例1と同様にして、比較例2にかかる反射防止フィルムを作製した。
光学フィルム前駆体材料を塗布するベースフィルムとして、実施例2と同様のアンチグレアコーティングを施したPETフィルムを用いた以外は、比較例1と同様にして、比較例2にかかる反射防止フィルムを作製した。
(反射率の測定)
実施例1、2、比較例1、2と同様にして反射防止フィルムを作製し、フィルムの裏面には反射をキャンセルして反射防止層面のみの反射率を測定できるように、黒テープを貼りつけた。日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計V−670に、絶対反射率測定ユニットARSN−733を取り付けて、黒テープを貼りつけた反射防止フィルムの5度の正反射率を測定した。得られたデータのうち可視光域にあたる380−780nmの値を平均し、反射率とした。
実施例1、2、比較例1、2と同様にして反射防止フィルムを作製し、フィルムの裏面には反射をキャンセルして反射防止層面のみの反射率を測定できるように、黒テープを貼りつけた。日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計V−670に、絶対反射率測定ユニットARSN−733を取り付けて、黒テープを貼りつけた反射防止フィルムの5度の正反射率を測定した。得られたデータのうち可視光域にあたる380−780nmの値を平均し、反射率とした。
(鉛筆硬度試験)
実施例1、2、比較例1、2にかかる反射防止フィルムに対して、JIS−K5600−5−4に準拠し、フィルムの低屈折率層の表面に750gの荷重をかけた鉛筆(三菱UNI)を用いて試験を行い、引っ掻きによる外観の変化を目視で評価した。
実施例1、2、比較例1、2にかかる反射防止フィルムに対して、JIS−K5600−5−4に準拠し、フィルムの低屈折率層の表面に750gの荷重をかけた鉛筆(三菱UNI)を用いて試験を行い、引っ掻きによる外観の変化を目視で評価した。
(耐光性試験)
実施例1、2、比較例1、2にかかる反射防止フィルムに対して、JIS B7751に準拠した紫外線カーボンアーク灯式の耐光性試験を960時間実施した。このとき、300〜400nmの照射強度が366W/m2(300〜400nm波長積算)とした。試験後の反射防止フィルムに対して、JIS K5400に準拠したクロスカット法により、残存マス数によって密着性を評価した。使用したテープは、ニチバン製セロテープ(登録商標)である。
実施例1、2、比較例1、2にかかる反射防止フィルムに対して、JIS B7751に準拠した紫外線カーボンアーク灯式の耐光性試験を960時間実施した。このとき、300〜400nmの照射強度が366W/m2(300〜400nm波長積算)とした。試験後の反射防止フィルムに対して、JIS K5400に準拠したクロスカット法により、残存マス数によって密着性を評価した。使用したテープは、ニチバン製セロテープ(登録商標)である。
(耐熱性試験)
実施例1、2、比較例1、2にかかる反射防止フィルムを、95℃の恒温層内で保存した。この保存前後のb*値を、コニカミノルタ社の分光測色計CM−3600dを用いて測定した。これらの試験結果を下記表1に示す。
実施例1、2、比較例1、2にかかる反射防止フィルムを、95℃の恒温層内で保存した。この保存前後のb*値を、コニカミノルタ社の分光測色計CM−3600dを用いて測定した。これらの試験結果を下記表1に示す。
以上の結果から、反射防止層を転写形成した実施例1、2では、保存後のクロスカットでの剥離マスがないのに対し、蒸着により反射防止層を形成した比較例1、2の、クロスカット残存マスが0と、実施例のほうが密着性に優れていることが分かる。
このことは、次のように考えられる。反射防止層と光学フィルム前駆体とを接触させた状態で紫外線照射を行うと、電離放射線硬化型樹脂中のアクリロイル基Rが光ラジカル重合するとともに、反射防止層の表面近傍に残存する未反応のアクリロイル基Rと、電離放射線硬化型樹脂組成物中のアクリロイル基Rとが、お互いに光ラジカル重合して結合が進行する。これにより、長時間光照射しても光学フィルムと反射防止層との密着性が高まる。これに対し、蒸着法では、反射防止層と光学フィルムとの間に化学的な結合が起こらず、強度が十分に高まらない。なお、比較例1、2は、耐光性試験が480時間の場合であっても、クロスカット残存マス数が0であることを確認している。
また、実施例1、2は、保存後のb*値が1,1.1で、反射率が1.6%,0.8%以下と、比較例1、2のb*値(1.7,1.8)、反射率(1.2%,0.7%)とほぼ同等であることが分かる。すなわち、転写法による反射防止層は、蒸着法による反射防止層と同等の性能を有することが分かった。
次に、本実施の第2の態様にかかる反射防止フィルムの製造方法について説明する。
(実施例3)
実施例3にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
実施例3にかかる反射防止フィルムを次のようにして作製した。
(積層体の作製)
離型性を有する平滑なフィルム面上に、反射防止層が形成されたフィルムを用意した。この反射防止層は、低屈折率化剤微粒子としてのSiO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる低屈折率層と、屈折率化剤微粒子としてのZrO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる膜厚100nmの高屈折率層と、を有している。
離型性を有する平滑なフィルム面上に、反射防止層が形成されたフィルムを用意した。この反射防止層は、低屈折率化剤微粒子としてのSiO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる低屈折率層と、屈折率化剤微粒子としてのZrO2微粒子を含んだ電離放射線硬化型アクリル系樹脂(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物)を光ラジカル重合してなる膜厚100nmの高屈折率層と、を有している。
(高屈折率層の硬化処理)
上記の高屈折率層は、ピーク照度:900mW/cm2、積算照度:500mJ/cm2の照射条件で紫外線を照射して形成されたものである。
上記の高屈折率層は、ピーク照度:900mW/cm2、積算照度:500mJ/cm2の照射条件で紫外線を照射して形成されたものである。
(高屈折率層の硬化度)
高屈折率層を構成するジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物からなる、未硬化の膜厚100nmのサンプルを用意した。このサンプルは高屈折率層と樹脂から構成され、同じ膜厚とした。このサンプルを、下記の条件で紫外線を照射した。
ピーク照度:900mW/cm2
積算照度:500mJ/cm2
高屈折率層を構成するジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物からなる、未硬化の膜厚100nmのサンプルを用意した。このサンプルは高屈折率層と樹脂から構成され、同じ膜厚とした。このサンプルを、下記の条件で紫外線を照射した。
ピーク照度:900mW/cm2
積算照度:500mJ/cm2
得られたサンプルの硬化度をFT−IR−ATRで測定した。硬化度=(986cm-1の−C=CHの帰属ピーク高さ)/(1468cm-1のCH2/CH3帰属ピーク)は、1.10であった。つまり、上記の高屈折率層に含まれる電離放射線硬化型樹脂は、硬化度が1.10となる条件で硬化処理がなされている。
(光学フィルム前駆体の調製)
実施例1と同様に、メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型ポリオルガノシルセスキオキサン:25重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート:10重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:60重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー:1.5重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2.5重量部を混合し、光学フィルム前駆体材料を調製した。
実施例1と同様に、メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型ポリオルガノシルセスキオキサン:25重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート:10重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:60重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー:1.5重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2.5重量部を混合し、光学フィルム前駆体材料を調製した。
得られた光学フィルム前駆体材料を、硬化後の膜厚が100μmとなるように、高屈折率層の上に塗布し、高屈折率層の上に光学フィルム前駆体層を形成した。
(電離放射線の照射(重合))
紫外線硬化装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製:CV−110Q−G)を用いて、上記積層体に積算照射量1500mJ/cm2の紫外線を照射し、光学フィルム前駆体に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂および、反射防止層に含まれる、光重合時に重合せずに残った未硬化の電離放射線硬化型樹脂を光ラジカル重合させた。
紫外線硬化装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製:CV−110Q−G)を用いて、上記積層体に積算照射量1500mJ/cm2の紫外線を照射し、光学フィルム前駆体に含まれる未硬化の電離放射線硬化型樹脂および、反射防止層に含まれる、光重合時に重合せずに残った未硬化の電離放射線硬化型樹脂を光ラジカル重合させた。
(剥離工程)
光ラジカル重合後の積層体のベースフィルムを剥離し、光学フィルムに反射防止層が転写形成された、実施例3にかかる反射防止フィルムを作製した。
光ラジカル重合後の積層体のベースフィルムを剥離し、光学フィルムに反射防止層が転写形成された、実施例3にかかる反射防止フィルムを作製した。
(実施例4,5)
高屈折率層の硬化条件(紫外線照射条件)を変更して、積層体作製工程における高屈折率層に含まれる電離放射線硬化型樹脂の硬化度を、下記表2に示すように変化させたこと以外は、上記実施例3と同様にして、実施例4、5にかかる反射防止フィルムを作製した。これらの実施例3〜5にかかる反射防止フィルムについて、実施例1に対するものと同じ条件で、保存後のクロスカット残存マス試験を行った。試験結果を表2に示す。
高屈折率層の硬化条件(紫外線照射条件)を変更して、積層体作製工程における高屈折率層に含まれる電離放射線硬化型樹脂の硬化度を、下記表2に示すように変化させたこと以外は、上記実施例3と同様にして、実施例4、5にかかる反射防止フィルムを作製した。これらの実施例3〜5にかかる反射防止フィルムについて、実施例1に対するものと同じ条件で、保存後のクロスカット残存マス試験を行った。試験結果を表2に示す。
以上の結果から、硬化度が0.80から1.30の範囲の硬化条件で高屈折率層を硬化処理し、この高屈折率層上に光学フィルム前駆体を積層、電離放射線を照射することで、密着性に優れた反射防止フィルムが得られることが分かる。
本発明によれば、反射防止層の密着性の高い反射防止フィルムが得られるので、産業上の意義は大きい。
1 反射防止フィルム
3 光学フィルム前駆体
4 光学フィルム
6 ベースフィルム
7 ベースフィルム
8 反射防止層
10 積層体
11 骨格構造
12 骨格構造
R (メタ)アクリロイル基
3 光学フィルム前駆体
4 光学フィルム
6 ベースフィルム
7 ベースフィルム
8 反射防止層
10 積層体
11 骨格構造
12 骨格構造
R (メタ)アクリロイル基
Claims (6)
- 電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルムと、
前記光学フィルムの少なくとも一方面に接して設けられた反射防止層と、
を備え、
前記反射防止層の少なくとも前記光学フィルムと接する側の面は、電離放射線硬化型樹脂を主体とする材料で構成され、
前記光学フィルムに含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部と、前記反射防止層に含まれる電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一部とが、ラジカル重合により結合している、反射防止フィルム。 - 前記反射防止フィルムは、300〜400nmの照射強度が366W/m2(300〜400波長積算)である、JIS B7751に準拠した紫外線カーボンアーク灯式の耐光性試験を960時間実施した後に、JIS K5400に準拠したクロスカット法による膜密着試験を行った場合において、剥離マスを生じないものである、
ことを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。 - 前記光学フィルムに含まれる電離放射線硬化型樹脂が、多官能(メタ)アクリレートの重合物を含み、
前記反射防止層の少なくとも前記光学フィルムと接する側の面近傍には、電離放射線硬化型樹脂として多官能(メタ)アクリレートの重合物が含まれ、
前記光学フィルムと前記反射防止層との境界面を超えた多官能(メタ)アクリレートの重合物が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の反射防止フィルム。 - 第1基材と、前記第1基材上に積層された、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体と、前記光学フィルム前駆体上に接して積層された、少なくとも前記光学フィルム側の面には電離放射線硬化型樹脂を有する反射防止層と、前記反射防止層上に積層された第2基材と、を備える積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体に電離放射線を照射して、前記光学フィルム前駆体に含まれる電離放射線硬化型樹脂および前記反射防止層に含まれる、未硬化のまま残存した電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線照射工程と、
電離放射線照射工程後の積層体から、前記第1基材および前記第2基材を剥離する剥離工程と、
を備える反射防止フィルムの製造方法。 - 第1基材と、前記第1基材上に積層された、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなる光学フィルム前駆体と、前記光学フィルム前駆体上に接して積層された、少なくとも前記光学フィルム側の面には未硬化の電離放射線硬化型樹脂を有する反射防止層と、を備える積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体に電離放射線を照射して、前記光学フィルム前駆体に含まれる電離放射線硬化型樹脂および前記反射防止層に含まれる、未硬化のまま残存した電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線照射工程と、
電離放射線照射工程後の積層体から、前記第1基材を剥離する剥離工程と、
を備える反射防止フィルムの製造方法。 - 前記積層体作製工程における前記反射防止層に含まれる前記電離放射線硬化型樹脂は、硬化度が0.80〜1.30となる条件で硬化処理がなされている、
ことを特徴とする請求項5に記載の反射防止フィルムの製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021084356A (ja) * | 2019-11-28 | 2021-06-03 | 尾池工業株式会社 | 加飾フィルム成形体 |
-
2018
- 2018-06-04 JP JP2018106989A patent/JP2019211592A/ja active Pending
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