JP2019206473A - ガス発生剤組成物 - Google Patents

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和明 矢口
雄佑 田中
Yusuke Tanaka
雄佑 田中
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宰 ▲高▼原
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祐二 富奥
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祐二 富奥
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Abstract

【課題】排ガス中の一酸化炭素濃度と窒素酸化物を低減することができる、ガス発生剤組成物の提供。【解決手段】燃料(A)として硝酸グアニジン、酸化剤(B)として塩基性金属硝酸塩、並びにバインダー(C)としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を含有し、該カルボキシメチルセルロース塩は1%(w/w)水溶液の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が1,000mPa・s以上であることを特徴とするガス発生剤組成物。更に、当該ガス発生剤組成物は、燃焼調整剤(D)を含有しており、前記燃焼調整剤(D)はその含有量が4〜10質量%であるガス発生剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用エアバッグ用ガス発生器に用いられるガス発生剤組成物に関する。
自動車の搭乗者に対する安全装置として、エアバッグやシートベルトプリテンショナーが採用されている。エアバッグの作動原理は、交通事故による衝撃を検知するセンサーがガス発生器へ電気信号を送り、瞬時にガス発生剤を燃焼させてガスを生成し、そのガス圧力によりエアバッグを展開し、衝突による乗員の衝撃をやわらげる働きをする。シートベルトプリテンショナーも同様であり、車両の衝突をセンサーが検知してガス発生器へ電気信号を発し、ガス発生器内に充填したガス発生剤を燃焼させてガスを生成し、そのガス圧力によりシートベルト巻き取り機構を作動させ、そのシートベルトの拘束力を高めることにより乗員を保護するというものである。自動車安全装置に用いられるガス発生器に要求される性能としては、所望の時間内に必要十分なガス圧力を発生させることが第一の要求性能である。
車両に搭載されるエアバッグ用ガス発生器は、年々、増加している。このため、エアバッグ作動時に排出されるガスに有害な成分が含まれないことが要求されている。特に、乗員保護の観点から、ガス発生剤が燃焼することによって発生するガス中に、人体に対して有害な一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)が可能な限り少ないことが望まれている。
ガス発生剤の燃焼により生成するガス中の一酸化炭素を低減させる方法としては、燃料成分、酸化剤成分及びバインダー等の各種添加剤を含有したガス発生剤中の酸素バランスを、量論比よりもプラス(+)側へ設定することにより達成できるとされている。また、ガス発生剤の燃焼温度を低下させることで、一酸化炭素や窒素酸化物を低減する方法が報告されている。例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を添加する方法(特許文献1)、複合塩基性炭酸塩を添加する方法(特許文献2)、ガラス粉末を添加する方法(特許文献3)等、燃焼温度を低減させるための添加剤を用いることで生成ガス中の有害成分を低減できることが報告されている。
特開2005−154167号公報 特開2008−56500号公報 特表平10−502610号公報
本発明の課題は、ガス発生剤が燃焼時に発生するガス中の一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)等の有害ガス濃度を低減させたガス発生剤組成物を提供することを課題とする。更に、押出成形による成形性に優れ、耐熱性に優れたガス発生剤組成物をすることを課題とする。
本発明者らは、燃料成分として硝酸グアニジン、酸化剤として塩基性金属硝酸塩を主成分とするガス発生剤において、バインダー剤として特定物性のカルボキシメチルセルロース塩を用いることにより、押出成形性、耐熱性に優れ、且つ生成ガス中の有害ガス濃度を有意に低減できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下の内容を要旨とする。
[1] 燃料成分(A)、酸化剤(B)、バインダー剤(C)を含むガス発生剤組成物であって、前記燃料(A)が硝酸グアニジンを含有し、前記酸化剤(B)が塩基性金属硝酸塩を含有し、前記バインダー剤(C)がカルボキシメチルセルロース塩を含有し、該カルボキシメチルセルロース塩は1%(w/w)水溶液の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が1,000mPa・s以上であることを特徴とするガス発生剤組成物。
[2] 前記硝酸グアニジン(A)の含有量が20〜60質量%であり、前記塩基性金属硝酸塩(B)の含有量が35〜75質量%であり、前記カルボキシメチルセルロース塩(C)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする、前記[1]に記載のガス発生剤組成物。
[3] 更に、燃焼調整剤(D)として合成ヒドロタルサイト、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、三酸化二鉄、四酸化三鉄、水酸化酸化アルミニウム、カオリン、酸性白土からなる群から選択される1種以上を含有する、前記[1]または[2]に記載のガス発生剤組成物。
[4] 前記燃焼調整剤(D)が合成ヒドロタルサイトである、前記[1]〜[3]の何れか一項に記載のガス発生剤組成物。
[5] 前記燃焼調整剤(D)の含有量が4〜10質量%である、前記[1]〜[4]の何れか一項に記載のガス発生剤組成物。
[6] 前記請求項1〜5の何れか一項に記載のガス発生剤組成物を含有するガス発生器。
本発明のガス発生剤は、燃料成分として硝酸グアニジン、酸化剤として塩基性金属硝酸塩を主成分とするガス発生剤において、バインダー剤として特定物性のカルボキシメチルセルロース塩を用いることにより、押出成形性に優れ所望の形状のガス発生剤を得ることができる。得られたガス発生剤は、耐熱性に優れ、且つ生成ガス中の有害ガス濃度を有意に低減できる。したがって、エアバッグ用ガス発生器のガス発生剤に適用することにより耐環境性に優れたガス発生器を提供できると共に、COやNOx等の有害ガス生成量を有意に低減できることから、安全性の高いガス発生器を提供することができる。
以下に、本発明の詳細について説明する。
本発明は燃料成分(A)として硝酸グアニジンを含有し、酸化剤(B)として塩基性金属硝酸塩を含有し、バインダー剤(C)としてカルボキシメチルセルロース塩を含有するガス発生剤組成物に関する。
本発明のガス発生剤組成物は、燃料成分(A)として硝酸グアニジンが含まれる。硝酸グアニジンは、分子中に酸素を含有するため、酸化剤成分の配合量を低減でき、また良好な熱安定性を有し、更には低コスト、燃焼時の高いガス化率が期待できる等のメリットがある。
本発明において、硝酸グアニジンは、取り扱いが容易であることから粉末状若しくは顆粒状であることが好ましく、その50%粒径は、5〜80μmが好ましく、10〜50μmが更に好ましい。なお、硝酸グアニジンの50%粒径は、大き過ぎるとガス発生剤組成物成形体の強度が低下する一方で、小さ過ぎると粉砕に多大なコストを必要とする。なお、本発明において50%粒径とは、測定粒子数基準の50%粒径を意味し、例えばレーザー回折・散乱法等で測定できる。
本発明のガス発生剤組成物中に占める硝酸グアニジンの含有率(配合割合)は、20〜60質量%が好ましく、30〜55質量%が更に好ましい。硝酸グアニジンの含有率(配合割合)が20質量%未満では、ガス発生剤組成物100g当たりの発生ガスモル数が減少し、酸素過剰で窒素酸化物の発生が増加する傾向にある。一方、硝酸グアニジンの含有率(配合割合)が60質量%を超えると酸化剤成分が不足するために有害な一酸化炭素が多く発生する傾向にある。
本発明は燃料成分(A)として、他の含窒素有機化合物を共存させて用いてもよい。該含窒素有機化合物としては、特に限定されず、車両搭乗者安全装置用ガス発生器用ガス発生剤組成物に通常使用される含窒素有機化合物を好適に使用できる。用いることが好ましい例としては、グアニジン又はその誘導体、トリアゾール又はその誘導体、テトラゾール又はその誘導体、ビトリアゾール又はその誘導体、ビテトラゾール又はその誘導体、アゾジカルボンアミド又はその誘導体、ヒドラジン又はその誘導体、及びヒドラジド誘導体が挙げられる。
より具体的には、5−オキソ−1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、5−アミノテトラゾール、硝酸アミノテトラゾール、ニトロアミノテトラゾール、ビテトラゾール(5,5'−ビ−1H−テトラゾール)、5,5'−ビ−1H−テトラゾールジアンモニウム塩、アゾビステトラゾール、5,5'−アゾビステトラゾールジグアニジウム塩、グアニジン、ニトログアニジン、シアノグアニジン、トリアミノグアニジン硝酸塩、硝酸アミノグアニジン、ビウレット、アゾジカルボンアミド、カルボヒドラジド、カルボヒドラジド硝酸塩錯体、シュウ酸ヒドラジド、ヒドラジン硝酸塩錯体、アンミン錯体等が好適に挙げられる。これらの含窒素有機化合物の中でも、安価で反応性が良く比較的取り扱いが容易であることから、テトラゾール誘導体、ビテトラゾール誘導体及びグアニジン誘導体が好ましく、ニトログアニジン、ビテトラゾール、アゾビステトラゾール及び5−アミノテトラゾールが更に好ましい。
燃料成分(A)として、硝酸グアニジンと他の含窒素有機化合物の混合燃料系を用いる場合、ガス発生剤組成物中に占める燃料成分(A)の含有率(配合割合)は、20〜60質量%が好ましく、30〜55質量%がより好ましい。
本発明は、酸化剤(B)において塩基性金属硝酸塩を含有する。該塩基性金属硝酸塩としては、具体的には、塩基性硝酸銅、塩基性硝酸コバルト、塩基性硝酸亜鉛、塩基性硝酸マグネシウム、塩基性硝酸鉄等が挙げられる。これらの中でも、燃焼温度が低く、熱安定性が良い塩基性硝酸銅が特に好ましい。
本ガス発生剤中の酸化剤(B)としての塩基性硝酸金属塩の配合割合は、用いられる硝酸グアニジンと添加剤(C)の種類と量により異なるが、通常は当該ガス発生剤組成物に対して35〜75質量%の範囲が好ましく、特に発生ガス中の一酸化炭素と窒素酸化物濃度を低減させるために40〜75質量%の範囲に設定することがより好ましい。
上記塩基性金属硝酸塩は、取り扱いが容易であることから粉末若しくは顆粒状であることが好ましく、その50%粒径は、1〜80μmが好ましく、1〜50μmが更に好ましい。なお、塩基性金属硝酸塩の50%粒径は、大き過ぎるとガス発生剤組成物成形体の強度が低下する。一方で、粉体の粒径が小さ過ぎるものは、燃料成分との均一な混合が困難な場合がある。また小粒径の塩基性金属硝酸塩の調製には粉砕に多大なコストを必要とする問題もある。
本発明のガス発生剤組成物は、更に共酸化剤として硝酸塩や過塩素酸塩を加えても良い。該硝酸塩とは、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、硝酸アンモニウムであり、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム等を用いることでできる。また、硝酸アンモニウムはカリウム塩や銅塩を添加した相安定化硝酸アンモニウムを用いても良い。また、該過塩素酸塩とは、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウム等を用いることができる。なお、これら硝酸塩及び過塩素酸塩は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化剤(B)として、塩基性金属硝酸塩と併せて用いる好ましい共酸化剤としては、硝酸ストロンチウムであり、塩基性硝酸銅と硝酸ストロンチウムの混合酸化剤を用いることが好ましい。また、過塩素酸カリウムも好ましく、塩基性硝酸銅と過塩素酸カリウムの混合酸化剤を用いることが好ましい。
共酸化剤を用いる場合、塩基性金属硝酸塩と共酸化剤の混合比率(w/w)は、10:1〜1:10で用いることが好ましく、より好ましくは、5:1〜1:5である。
本発明のガス発生剤組成物はカルボキシメチルセルロース塩を含むバインダー剤(C)を用いる。ガス発生剤の燃焼特性は、ガス発生剤の成型体形状に影響を受ける。このため該バインダー剤(C)は、ガス発生剤が所望の燃焼特性を発揮させるために、成形性、形状保持性を付与する添加剤であり、ガス発生器が使用される過酷な環境下であってもガス発生剤の成形体形状を保たせることにより、燃焼性能を維持させる機能を担う。また、バインダー剤(C)として、カルボキシメチルセルロース塩を用いると、一酸化炭素や窒素酸化物等の有害ガスの生成を有意に抑制することができる。
本発明はバインダー剤(C)として用いられるカルボキシメチルセルロース塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を用いることができる。中でも、ナトリウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
本発明においてバインダー剤(C)として用いられるカルボキシメチルセルロース塩は、1%(w/w)水溶液にした場合に25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が1,000mPa・s以上であることが必要である。すなわち、バインダー剤(C)として用いる当該カルボキシメチルセルロース塩は、10mPa・sオーダー以上の粘度であることが必要である。好ましくは、粘度が1,500mPa・s以上のカルボキシメチルセルロース塩を用いることで、有害ガスの生成を抑制でき、ガス発生剤の成形性と耐熱性が得られる。特に好ましくは、粘度が2,000mPa・s以上のカルボキシメチルセルロース塩である。
前記粘度が1,000mPa・sより小さい場合、押出成形によりガス発生剤成型体を調製する際にバインダー剤として機能せず、所定の形状の成形体を調製できない。また、得られるガス発生剤は耐熱性が劣るものであり、自動車に搭載するエアバッグ用ガス発生剤に適用できる性能を充足できない。したがって、成型性が得られ所望の形状に成形出来て、耐熱性が保証されたガス発生剤を得るためには、前記粘度が1,000mPa・s以上のカルボキシメチルセルロース塩を用いる必要がある。
なお、前記粘度の上限は特に限定されるものではないが、燃料成分、酸化剤成分との混練性を考慮すると、1%(w/w)水溶液にした場合に25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が20,000mPa・s以下のカルボキシメチルセルロース塩を用いることが好ましい。
なお、前記粘度の測定方法は、カルボキシメチルセルロース塩の1%(w/w)水溶液を調製し、これを好ましくは12時間放置して試料溶液を調製する。この試料溶液を、口径約45mm、高さ約145mmの容器に移し、液温25℃に調温しB型粘度計にて回転開始3分後の回転トルクから該試料溶液粘度を測定する方法が用いられる。
本発明は、バインダー剤(C)として、カルボキシメチルセルロース塩に他のバインダー剤を共存させて用いても良い。共存させることができるバインダー剤としては、ガス発生剤組成物の燃焼挙動に大幅な悪影響を与えなければ特に制限なく使用できる。例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース等のセルロース類、グアガム、デンプン等の多糖誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の水溶性合成ポリマー類等の水溶性有機バインダー類が好ましい。その他、二硫化モリブデン、合成ヒドロタルサイト、酸性白土、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、シリカ、アルミナ等の無機バインダーも用いることができる。本発明のガス発生剤組成物は、水を媒体とした押出成形によるガス発生剤の調製に好適であることから、共使用するバインダー剤としては、水溶性のバインダー剤であることが好ましく、セルロース類、多糖誘導体、水溶性合成ポリマー類を用いることが好ましい。
本発明のガス発生剤組成物の有害ガスの生成を抑制するためには、バインダー剤(C)としてカルボキシメチルセルロース塩を用いることが重要である。このため、他の共存バインダー剤の使用は一酸化炭素や窒素酸化物の生成量に影響を与えない程度で使用することが望まれる。より好ましくは、本発明のバインダー剤(C)はカルボキシメチルセルロース塩のみであって、他のバインダー剤を含まないことが好ましい。
本発明のガス発生剤組成物中におけるバインダー剤(C)の含有量は0.1〜10質量%が好ましく、1〜8質量%であることがより好ましい。バインダー剤(C)の含有量が高いと、成形体の破壊強度を高めることができるが、組成物中の炭素元素及び水素元素の数が増大し、炭素元素の不完全燃焼生成物である一酸化炭素ガスの濃度が増大し、発生ガスの品質を低下させ、また燃焼を阻害してしまうおそれがある。このため、ガス発生剤組成物の形状を維持できる最低量での使用が好ましい。特に、バインダー剤の含有量が10質量%を超えると、酸化剤成分の相対的存在割合の増大が必要となり、ガス発生剤組成物中における燃料成分の相対的存在割合が低下し、ガス発生器の実用化が困難になるおそれがある。
本発明のガス発生剤組成物は、更に燃焼性を調整し、燃焼速度や生成ガス組成を制御するための任意の燃焼調整剤(D)を添加していてもよい。該燃焼調整剤(D)は、合成ヒドロタルサイト、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、三酸化二鉄、四酸化三鉄、水酸化酸化アルミニウム、はくとう土、酸性白土からなる群から選択される1種以上の添加剤である、該燃焼調整剤(D)を用いることで、生成ガスにおける一酸化炭素や窒素酸化物の生成量を更に低減させることができる。
本発明のガス発生剤組成物中における燃焼調整剤(D)の含有量は0〜15質量%が好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。4〜10質量%の含有量で用いることが特に好ましい。燃焼調整剤(D)の含有量が高いと、燃焼性能の低下や燃焼で生じる残渣量が増加する問題が生じる。
前記燃焼調整剤(D)としては、合成ヒドロタルサイトが一酸化炭素及び窒素酸化物生成量の抑制効果が高く、好ましい。
本発明のガス発生剤組成物は、スラグ形成剤、滑剤、他の燃焼調整剤等のガス発生剤で通常用いる添加剤を任意に含んでいてもよい。
スラグ形成剤とは、ガス発生剤組成物の燃焼後に生成する燃焼残渣を容易にろ過することを可能にする添加剤であり、インフレータの外に放出することを防ぐことを目的に添加される。該スラグ形成剤の具体例としては、例えば、窒化珪素、炭化珪素、二酸化珪素、珪酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸性白土、クレー等の天然鉱物等が挙げられる。
本発明においてスラグ形成剤を用いる場合、ガス発生剤組成物中における含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。スラグ形成剤の含有量が高いと、燃焼性を低下させ、更には発生ガスのモル数を低下させることから、乗員保護性能が十分に発揮されないおそれがある。
滑剤とは、ガス発生剤組成物の調製時において原料成分の混合性向上、流動性改善を目的として添加される。該滑剤の具体例としては、例えば、グラファイト、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、窒化ホウ素、高分散シリカ(二酸化珪素)、タルク等が挙げられる。これらの中でも、高分散シリカ(二酸化珪素)は、原料混合時の固着や凝集を抑制して均一に分散混合する機能を有しており、各成分の粒度特性・作用を維持する効果があり、特に有用である。
本発明において滑剤を用いる場合、ガス発生剤組成物中における滑剤の含有量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましい。滑剤の含有量が高いと、燃焼性の低下、発生ガスのモル数の低下、更には発生ガス中の一酸化炭素の濃度の増大等が起きるおそれがある。
他の燃焼調整剤の具体例としては、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン等の金属酸化物、水酸化銅、水酸化コバルト、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、活性炭粉末、グラファイト、カーボンブラック等の炭素類等が挙げられる。
本発明において燃焼調整剤を用いる場合、ガス発生剤組成物中における燃焼調整剤の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
本発明のガス発生剤組成物は、適当な形状を有する成形体として使用することが好ましい。以下、ガス発生剤組成物の成形体をガス発生剤とも称する。本発明のガス発生剤は、燃焼性能、ガス発生器の燃焼特性に合わせて様々な形状に成形することができる。
本発明のガス発生剤の形状は、特に限定されず、ペレット状、ディスク状、球状、棒状、円柱状、円筒状、金平糖状、テトラポット状等が挙げられる。また、該成形体は、無孔のものでもよいし、単孔又は多孔といった有孔のもの(例えば、単孔円筒状又は多孔円筒状)でもよい。更に、ペレット状、ディスク状の成形体は、片面又は両面に1個乃至複数個程度の突起を設けてもよい。突起の形状は特に制限されず、例えば、円柱状、円筒状、円錐状、多角錘状等が挙げられる。
本発明のガス発生剤の成形方法としては、加圧成形方法、押出成形方法が挙げられる。
初めに、本発明のガス発生剤の成形体の加圧成形方法による製造方法を例示する。加圧成形により、錠剤状、ペレット状又はディスク状にガス発生剤組成物を成形する場合、燃料成分(A)、酸化剤成分(B)、及び燃焼調整剤(D)等の任意の各種添加剤をV型混合機又はロッキングミキサー等の乾式混合機にて混合する。混合の際には、該成分の混合物中に球体を分散し介在させることで、該成分の粉末が球体による力を細部にわたって受けるため、組成物中に各成分が均一に分散する。ロッキングミキサーのような回転と揺動運動を行う混合機を用いることで、各成分がより均一に分散したガス発生剤組成物を得ることができるため望ましい。得られたガス発生剤組成物(粉末)に、バインダー剤(C)を含有する溶液(バインダー溶液)を添加し、撹拌造粒機等の湿式造粒機を用いて該ガス発生剤組成物を造粒する。バインダー溶液の添加量は、一概には言えないが、混合粉末に対して1〜100質量%添加することができる。
その後、80〜100℃にて熱処理して顆粒を得る。熱処理後の顆粒の水分量は、1%を超えると流動性の低下が起こり、安定して次工程の加圧成形を行うことができないおそれがあるため、顆粒中の水分量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下が望ましい。
次に、該顆粒をロータリー打錠機によって所望の形状に加圧成形する。加圧成形の際、通常使用されるステアリン酸マグネシウム等の滑剤を0.1〜5質量%の範囲で添加することも可能である。加圧成形された成形体は、100〜110℃で5〜20時間熱処理した後、ガス発生剤として使用できる。熱処理後のガス発生剤中の水分量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下が望ましい。
一方、押出成形方法により本発明のガス発生剤組成物の成形体を製造する場合には、燃料成分(A)、酸化剤成分(B)、バインダー剤(C)に更に燃焼調整剤(D)等の任意の各種添加剤を混合機にて混合し、得られた混合粉末に外割で1〜100質量%の水及び/又は有機溶媒を加えて十分に混練し、粘性を有する湿薬にする。その後、所望の形状に押出成形可能なダイスに該湿薬を通し、押出成形体を適宜切断していく。押出成形体は柱状体であり、より好ましい形体としては長尺円柱状成形体である。
その後、押出成形体を50〜150℃の温度で5〜50時間程度熱処理を行うことにより、経時変化の少ないガス発生剤組成物の成形体を得ることができる。
押出成形による製造方法では、水分を10〜20質量%含んだ成形体を熱処理するため、低温で長時間熱処理することが必要である。特に、107℃×400時間の過酷な耐熱老化試験に適合するためには、この熱処理が極めて有効である。なお、熱処理時間は、得られるガス発生剤の含水量が1質量%以下になるまで行えば任意に設定して良い。50〜150℃の温度で熱処理する場合、一般的には5時間未満では、熱処理が不十分であり、一方、50時間を超える熱処理時間も意味が無いが、熱処理時間は、ガス発生剤の形状や大きさに応じて、適宜、設定されるべきである。但し、熱処理温度は80℃を超える温度で急激に水分を蒸発させると、成形体内に気泡が生じ成形体の強度不足をもたらし、ガス発生剤が粉砕されて異常燃焼の原因となる。そのため、50〜70℃にて一次熱処理を行い、ガス発生剤中の水分量を7%以下、好ましくは5%以下とし、その後、80〜150℃にて二次熱処理を行い、ガス発生剤中の水分量を1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下にするような段階的な熱処理を施すことが望ましい。
本発明のガス発生剤はガス発生器に装填して使用される。好適なガス発生器としては、エアバッグ展開に用いられるインフレータである。したがって、本願は当該ガス発生剤を用いたエアバッグ用インフレータも本発明に含む。本発明のエアバッグ用インフレータは、通常、車両に搭載される構造のインフレータであれば特に限定されるものではなく採用することができる。
[実施例1]
硝酸グアニジン48.0質量部、塩基性硝酸銅48.0質量部、1%(w/w)水溶液にした場合の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が3,340mPa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩4.0質量部をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り20質量部の脱イオン水および3質量部のエタノールを加え均一に混練した。ダイスを備えた押出機にてストランド状に成形し、この成形体を引き取りベルトで引き取りながら、成形用歯車間に送り出し、成形用歯車の凸歯によって窪み部分を形成し、その窪み部分で折るようにして切断した。その後、55℃で8時間乾燥し、次いで110℃で8時間乾燥して実施例1のガス発生剤を得た。
[比較例1]
硝酸グアニジン44.27質量部、塩基性硝酸銅51.88質量部、1%(w/w)水溶液にした場合の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が4,850mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース3.85質量部%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り20質量部の脱イオン水および3質量部のエタノールを加え均一に混練した。ダイスを備えた押出機にてストランド状に成形し、この成形体を引き取りベルトで引き取りながら、成形用歯車間に送り出し、成形用歯車の凸歯によって窪み部分を形成し、その窪み部分で折るようにして切断した。その後、55℃で8時間乾燥し、次いで110℃で8時間乾燥して比較例1のガス発生剤を得た。
[比較例2]
硝酸グアニジン44.27質量部、塩基性硝酸銅51.88質量部、1%(w/w)水溶液の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が2,700mPa・sであるヒドロキシプロピルセルロース3.85質量部をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り20質量部の脱イオン水および3質量部のエタノールを加え均一に混練した。ダイスを備えた押出機にてストランド状に成形し、この成形体を引き取りベルトで引き取りながら、成形用歯車間に送り出し、成形用歯車の凸歯によって窪み部分を形成し、その窪み部分で折るようにして切断した。その後、55℃で8時間乾燥し、次いで110℃で8時間乾燥して比較例2のガス発生剤を得た。
[試験例1]生成ガス組成の評価
実施例1及び比較例1、2のガス発生剤の生成ガス組成を測定した。各ガス発生剤を、1.4モル相当の発生ガスとなるようにガス発生器に充填した。各ガス発生剤を充填したガス発生器を、内容積2,800リットルのタンク内に設置して、常温(23℃)で作動させた。
タンク内に排出された生成ガスを、ガステック株式会社製探知器GV−100を用いてガステック気体検知管(NO及びNO検知用:No.10、NH検知用:No.3La、CO検知用:No.1La)により、CO、NH、NO、NO濃度を測定した。濃度の値は、それぞれ、作動後1分、10分、20分の値を平均することにより得た。試験結果を表1に示した。
[表1]
Figure 2019206473
GN:硝酸グアニジン、BCN:塩基性硝酸銅
HPMC:ヒドロキプロピルメチルセルロース、HPC:ヒドロキシメチルセルロース、
CMCNa:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
試験例1の結果から、実施例1は比較例1及び2と比較して、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO及びNO)の生成量を大きく低減させることが明らかとなった。硝酸グアニジン及び塩基性硝酸銅を用いたガス発生剤のバインダー剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いることで、有害ガスの生成を抑制できることが明らかとなった。
[実施例2並びに比較例3〜5]
硝酸グアニジン48.0質量部、塩基性硝酸銅48.0質量部、1%(w/w)水溶液にした場合の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が3,000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩4.0質量部をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り20質量部の脱イオン水および3質量部のエタノールを加え均一に混練した。ダイスを備えた押出機にてストランド状に成形し、この成形体を引き取りベルトで引き取りながら、成形用歯車間に送り出し、成形用歯車の凸歯によって窪み部分を形成し、その窪み部分で折るようにして切断した。その後、55℃で8時間乾燥し、次いで110℃で8時間乾燥して実施例2のガス発生剤を得た。
上記実施例2において、1%(w/w)水溶液にした場合の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が15(比較例3)、20(比較例5)、239(比較例4)mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩4.0質量部を用いることで、比較例3〜5のガス発生剤を得た。
[試験例2]生成ガス組成の評価
前記[試験例1]と同様の試験条件により、実施例1及び2、並びに比較例3〜5のガス発生剤の生成ガス組成を評価した。評価結果を表2に示した。
[表2]
Figure 2019206473
[試験例3]成形性の評価
実施例1及び2、並びに比較例3〜5のガス発生剤の切断後の形状を観察して、以下の評価基準に従い成形性として評価した。評価結果を表3に示した。
○:所定の形状に成形可能
×:所定の形状に成形不可能(切断不良、成形不良)
[試験例4]耐熱性の評価
実施例1及び2、並びに比較例3〜5のガス発生剤各70gをガス発生器に充填し、110℃の恒温槽に2,000時間投入した。800時間、1,000時間、2,000時間で恒温槽からガス発生器を取り出し、充填されたガス発生剤の重量変化率を測定した。以下の評価基準にて、2,000時間の耐熱試験後における重量減少率から耐熱性を評価した。試験結果を表3に示した。
○:重量減少率が5%未満
△:重量減少率が5%以上9%未満
×:重量減少率が9%以上
[表3]
Figure 2019206473
試験例2の結果から、バインダー剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いたガス発生剤は、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO及びNO)の生成量を大きく低減させることできた。しかしながら、試験例3及び4の結果から、1%(w/w)水溶液にした場合の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が高いカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いた場合に、成形性も確保され、高温下での劣化も大きく抑えられることがわかった。
[実施例3〜10]
硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、1%(w/w)水溶液にした場合の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が3,340mPa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、及び燃焼調整剤を表3に示す組成で調製し、これをロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り20質量部の脱イオン水および3質量部のエタノールを加え均一に混練した。ダイスを備えた押出機にてストランド状に成形し、この成形体を引き取りベルトで引き取りながら、成形用歯車間に送り出し、成形用歯車の凸歯によって窪み部分を形成し、その窪み部分で折るようにして切断した。その後、55℃で8時間乾燥し、次いで110℃で8時間乾燥して実施例3〜10のガス発生剤を得た。
[試験例5]生成ガス組成の評価
前記[試験例1]と同様の試験条件により、実施例1及び実施例2〜10のガス発生剤の生成ガス組成を評価した。評価結果を表4に示した。
[表4]
Figure 2019206473
Al:酸化アルミニウム、SiO:二酸化ケイ素、Fe:四酸化三鉄、
Fe:三酸化二鉄、AlOOH:水酸化酸化アルミニウム、HTS:合成ヒドロタルサイト
表4の結果より、添加剤として酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、四酸化三鉄、三酸化二鉄、カオリン、酸性白土、水酸化酸化アルミニウム、合成ヒドロタルサイトを添加剤に使用することによって、有害成分である一酸化炭素及び一酸化窒素の発生を抑えることができることがわかった。
[実施例11〜15]
硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、1%(w/w)水溶液にした場合の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が3,340mPa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、及び合成ヒドロタルサイト(HTS)を表5に示す組成に調製し、これをロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り20質量部の脱イオン水および3質量部のエタノールを加え均一に混練した。ダイスを備えた押出機にてストランド状に成形し、この成形体を引き取りベルトで引き取りながら、成形用歯車間に送り出し、成形用歯車の凸歯によって窪み部分を形成し、その窪み部分で折るようにして切断した。その後、55℃で8時間乾燥し、次いで110℃で8時間乾燥して実施例11〜15のガス発生剤を得た。
[試験例6]生成ガス組成の評価
前記[試験例1]と同様の試験条件により、実施例1及び実施例11〜15のガス発生剤の生成ガス組成を評価した。評価結果を表5に示した。
[表5]
Figure 2019206473
試験例6の結果から、燃焼調整剤である合成ヒドロタルサイト(HTS)を添加したガス発生剤は、該HTSの添加量に依存して、有害成分である一酸化炭素(CO)の生成を抑制できることができ、さらに一酸化窒素(NO)の生成を大きく抑えることができることがわかった。

Claims (6)

  1. 燃料成分(A)、酸化剤(B)、バインダー剤(C)を含むガス発生剤組成物であって、前記燃料(A)が硝酸グアニジンを含有し、前記酸化剤(B)が塩基性金属硝酸塩を含有し、前記バインダー剤(C)がカルボキシメチルセルロース塩を含有し、該カルボキシメチルセルロース塩は1%(w/w)水溶液の25℃におけるB型粘度計で測定される粘度が1,500mPa・s以上であることを特徴とするガス発生剤組成物。
  2. 前記硝酸グアニジン(A)の含有量が20〜60質量%であり、前記塩基性金属硝酸塩(B)の含有量が35〜75質量%であり、前記カルボキシメチルセルロース塩(C)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載のガス発生剤組成物。
  3. 更に、燃焼調整剤(D)として合成ヒドロタルサイト、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、三酸化二鉄、四酸化三鉄、水酸化酸化アルミニウム、カオリン、酸性白土からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載のガス発生剤組成物。
  4. 前記燃焼調整剤(D)が合成ヒドロタルサイトである、請求項1〜3の何れか一項に記載のガス発生剤組成物。
  5. 前記燃焼調整剤(D)の含有量が4〜10質量%である、請求項1〜4の何れか一項に記載のガス発生剤組成物。
  6. 前記請求項1〜5の何れか一項に記載のガス発生剤組成物を含有するガス発生器。

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