JP2015086096A - ガス発生剤組成物 - Google Patents

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和明 矢口
公昭 齊藤
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公昭 齊藤
智博 緒方
Tomohiro Ogata
智博 緒方
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Abstract

【課題】燃焼速度を維持しつつ燃焼温度を低下させることができる、車両のエアバッグ装置用のガス発生器等に使用できるガス発生剤組成物及びガス発生剤組成物の成形体を提供する。
【解決手段】燃料成分(A)として硝酸グアニジン(A−1)及び酒石酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、リンゴ酸、チオリンゴ酸及びこれらの塩から選択される1種以上の有機酸(A−2)、酸化剤成分(B)として塩基性金属硝酸塩を含有し、前記有機酸(A−2)の含有量が燃料成分(A)総量に対し5〜50質量%とすることを特徴とするガス発生剤組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用エアバッグに有用なガス発生剤組成物及びガス発生剤組成物の成形体に関する。
自動車の安全性向上の方策において、近年、火薬を利用した車両搭乗者安全装置としてエアバッグ、シートベルトプリテンショナーが広く採用されている。その原理は、センサーが衝突を検知することにより電気信号を発し、ガス発生器内に充填したガス発生剤を燃焼させてガスを生成し、そのガス圧力によりエアバッグを展開し、衝突による乗員の衝撃をやわらげる働きをする。シートベルトプリテンショナーにおいても同様であり、車両の衝突をセンサーが検知することにより電気信号を発し、ガス発生器内に充填したガス発生剤を燃焼させてガスを生成し、そのガス圧力によりシートベルト巻き取り機構を作動させ、そのシートベルトの拘束力を高めることにより乗員を保護するというものである。ガス発生器に要求される性能としては、有害物を含まないガスを発生すること、所望の時間内に必要十分なガスを発生させること等が挙げられる。
近年、アジ化金属化合物に代わり、含窒素有機化合物を燃料とし、これと無機酸化剤と組み合わされたガス発生剤が提案されている。これらはガス発生量が多く、製造工程における危険性が低いという利点を有している。しかしながら、これら含窒素有機化合物を燃料とするガス発生剤の多くは、2500J/g以上の高い燃焼熱を有しており、発生ガスが高温高圧であるために、ガス発生器内に多くの冷却材を必要とする。冷却材は金属線からなるものが汎用されているが、ガス発生器の重量増加の最大要因となっており、軽量化の観点から冷却材の減量化が求められている。
冷却材を小型減量化する方法として、ガス発生剤の燃焼熱を低下させることが考えられる。特許文献1または2は、含窒素有機化合物と無機酸化剤を用いたガス発生剤組成物において、アラントイン、シアヌル酸、またはメラミン等を添加することにより、燃焼熱が低下されることを記載している。
特許文献3は、DL−酒石酸にコハク酸等のカルボン酸類を併せ、無機酸化剤を用いた自己点火性組成物が開示されており、熱安定性およびガス収率が改善されることを記載している。
特表2013−500204 特開2008−115030 特開2007−314411
本発明は、燃焼速度を維持しつつ燃焼温度を低下させることができる、車両のエアバッグ装置用のガス発生器等に使用できるガス発生剤組成物及びガス発生剤組成物の成形体を提供することである。
本発明は、燃料成分として含窒素有機化合物と有機酸の2種類の燃料成分を用いることにより、燃焼速度を保ちつつ、燃焼温度を低下できることを見出した。本発明は、以下の内容を要旨とする。
[1]燃料成分(A)として硝酸グアニジン(A−1)及び酒石酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、リンゴ酸、チオリンゴ酸及びこれらの塩から選択される1種以上の有機酸(A−2)、酸化剤成分(B)として塩基性金属硝酸塩を含有し、前記有機酸(A−2)の含有量が燃料成分(A)総量に対し5〜50質量%とすることを特徴とするガス発生剤組成物。
[2]前記硝酸グアニジン(A−1)の含有量が10〜60質量%で、前記有機酸(A−2)の含有量が1〜30質量%で、前記塩基性金属硝酸塩の含有量が30〜75質量%であることを特徴とする前記[1]に記載のガス発生剤組成物。
[3]酸化剤成分(B)として金属硝酸塩をさらに含む前記[1]または[2]に記載のガス発生剤組成物。
[4]更に、バインダー剤を含むことを特徴とする前記[1]〜[3]の何れか一項に記載のガス発生剤組成物。
[5]前記[1]〜[4]の何れか一項に記載のガス発生剤組成物を押出し成型して得られる、ガス発生剤組成物成型体。
[6]前記[1]〜[4]の何れか一項に記載のガス発生剤組成物を圧縮成型して得られる、ペレット形状のガス発生剤組成物成型体。
[7]前記[5]又は[6]記載のガス発生剤成型体を用いるエアバッグ用インフレータ。
本発明のガス発生剤組成物は、含窒素有機化合物と有機酸の混合燃料成分を塩基性金属硝酸塩と用いることにより、ガス発生剤の燃焼熱を低下させ、かつ燃焼速度を維持と向上を実現することができる。更に、本発明のガス発生剤をガス発生器に用いることにより、ガス発生器の冷却材が減量でき、軽量のガス発生器の提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、燃料成分(A)として硝酸グアニジン(A−1)及び特定の有機酸(A−2)を含み、酸化剤成分(B)として塩基性金属硝酸塩を含有するガス発生剤組成物であって、前記有機酸(A−2)の含有量が燃料成分(A)総量に対し5〜50質量%とすることを特徴とするガス発生剤組成物に関する。本発明のガス発生剤は、車両搭乗者安全装置用ガス発生器への使用に好適である。
本発明のガス発生剤組成物の燃料成分(A)は、硝酸グアニジン(A−1)が用いられる。硝酸グアニジンは、分子中に酸素を含有するため酸化剤成分の配合量を低減でき、また良好な熱安定性を有し、更には低コスト、燃焼時の高いガス収率が期待できる等のメリットがあり、特に好ましい。
本発明において、硝酸グアニジン(A−1)は、取り扱いが容易であることから粉末若しくは顆粒状であることが好ましく、その50%粒径は、5〜80μmが好ましく、10〜50μmが更に好ましい。なお、含窒素有機化合物の50%粒径は、大き過ぎるとガス発生剤組成物成形体の強度が低下する一方で、小さ過ぎると粉砕に多大なコストを必要とする。本発明において50%粒径とは、測定粒子数基準の50%粒径を意味し、例えばレーザー回折・散乱法等で測定できる。
本発明のガス発生剤組成物中に占める硝酸グアニジン(A−1)の含有率(配合割合)は10〜60質量%が好ましく、10〜50質量%が更に好ましい。該硝酸グアニジンの含有率(配合割合)が10質量%未満では、ガス発生剤組成物100g当たりの発生ガスモル数が減少し、酸素過剰で窒素酸化物の発生が増加する傾向にある。一方、硝酸グアニジンの含有率(配合割合)が60質量%を超えると、該ガス発生剤の燃焼における燃焼熱を抑制することが困難となる。また、酸化剤成分が不足するために有毒な一酸化炭素が多く発生する傾向にある。併せて、有機物が多くなるためガス発生剤組成物の真比重が減少するため、ガス発生器に対して体積当たりの充填量が減少してしまう課題を生じる。
本発明は、燃料成分(A)として有機酸(A−2)を用いる。当該有機酸(A−2)とは、分子中に1以上のカルボン酸基を有する化合物である。本発明では、分子中に1以上のカルボン酸基を有し、融点が130℃以上の有機酸を用いることが好ましい。好ましい有機酸(A−2)としては、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、リンゴ酸、チオリンゴ酸、及びこれらの塩が挙げられ、これらの群から選択される1種又は2種以上の混合物で用いることができる。該有機酸の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができる。好ましくは、酒石酸、コハク酸及びリンゴ酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩から選択される1以上の有機酸を挙げることができる。特に好ましくはリンゴ酸及びその塩であり、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム塩、リンゴ酸カリウム塩、またはリンゴ酸アンモニウム塩を用いることが好ましい。
本発明のガス発生剤組成物中に占める有機酸(A−2)の含有量は1〜30質量%の範囲に設定することが好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
また、本発明は燃料成分(A)として、含窒素有機化合物(A−1)と有機酸(A−2)の2成分の燃料成分を用いるものであり、該有機酸(A−2)の燃料成分(A)中の含有量が5〜50質量%である燃料(A)を用いることを特徴とする。
本発明のガス発生剤組成物中に占める硝酸グアニジン(A−1)と有機酸(A−2)を含む燃料成分(A)の含有量は16〜65質量%の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、20〜65質量%である。燃料成分(A)が16質量%未満では、ガス発生剤組成物100g当たりの発生ガスモル数が減少し、酸素過剰で窒素酸化物の発生が増加する傾向にある。一方、燃料成分(A)が65質量%を超えると、該ガス発生剤の燃焼における燃焼熱を抑制することが困難となる。また、酸化剤成分が不足するために有毒な一酸化炭素が多く発生する傾向にある。併せて、有機物が多くなるためガス発生剤組成物の真比重が減少するため、ガス発生器に対して体積当たりの充填量が減少してしまう課題を生じる。
本発明は、酸化剤(B)として塩基性金属硝酸塩を用いる。該塩基性金属硝酸塩としては、具体的には、塩基性硝酸銅、塩基性硝酸コバルト、塩基性硝酸亜鉛、塩基性硝酸マグネシウム、塩基性硝酸鉄等が挙げられる。これらの中でも、燃焼温度が低く、熱安定性が良い塩基性硝酸銅が特に好ましい。
本ガス発生剤中の酸化剤(B)としての塩基性硝酸金属塩の配合割合は、用いられる硝酸グアニジン(A−1)と有機酸(A−2)の種類と量により異なるが、通常は当該ガス発生剤組成物に対して30〜75質量%の範囲が好ましく、特に発生ガス中の一酸化炭素と窒素酸化物濃度を低減させるために35〜75質量%の範囲に設定することがより好ましい。
また、上記塩基性金属硝酸塩は、取り扱いが容易であることから粉末若しくは顆粒状であることが好ましく、その50%粒径は、1〜80μmが好ましく、1〜50μmが更に好ましい。なお、塩基性金属硝酸塩の50%粒径は、大き過ぎるとガス発生剤組成物成形体の強度が低下する一方で、小さ過ぎると粉砕に多大なコストを必要とする。
本発明のガス発生剤組成物は、更に共酸化剤として金属硝酸塩を加えても良い。好ましい共酸化剤としては、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩であり、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム等を用いることでできる。なお、これら金属硝酸塩は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましくは、硝酸ストロンチウムであり、塩基性硝酸銅と硝酸ストロンチウムの混合酸化剤を用いることが好ましい。共酸化剤を用いる場合、塩基性金属硝酸塩と金属硝酸塩の混合比率は、10:1〜1:10で用いることが好ましく、より好ましくは、5:1〜1:5である。
本発明のガス発生剤組成物は、前記有機酸(A−2)の含有量が燃料成分(A)総量に対し5〜50質量%であることを前提に、前記硝酸グアニジン(A−1)の含有量が10〜60質量%で、前記有機酸(A−2)の含有量が1〜30質量%で、塩基性金属硝酸塩の含有量が35〜75質量%であることが好ましい。好ましくは、前記硝酸グアニジン(A−1)の含有量が10〜50質量%で、前記有機酸(A−2)の含有量が3〜30質量%で、前記塩基性金属硝酸塩の含有量が40〜75質量%である。
本発明に係るガス発生剤組成物の特に好ましい態様を示すと、硝酸グアニジンが10〜50質量%、酒石酸が1〜25質量%、塩基性硝酸銅が40〜60質量%を含有する組成物である。あるいは、硝酸グアニジンが10〜50質量%、コハク酸が1〜20質量%、塩基性硝酸銅が45〜70質量%を含有する組成物である。さらにあるいは、硝酸グアニジンが10〜50質量%、リンゴ酸が1〜20質量%、塩基性硝酸銅が45〜65質量%を含有する組成物である。
本発明のガス発生剤組成物は、更に任意の添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、一般的に車両搭乗者安全装置用ガス発生器用のガス発生剤組成物に使用可能な添加剤を用いることができる。例えば、好適な燃焼特性を維持するために成形性や形状保持性を付与するためのバインダー剤、燃焼残渣を容易にろ過することを可能にするためのスラグ形成剤、その他、滑剤、燃焼調整剤等の添加剤を用いることができる。これら添加剤を用いる場合、その含有量はその用途により異なるが、いずれの用途においても、添加剤の含有量が多くなり過ぎると、燃焼性等の性能が低下するため、ガス発生剤組成物中に占める添加剤の含有量は、0.1〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましい。
上記バインダー剤は、好適な燃焼特性を維持させるために成形性、形状保持性を付与する添加剤であり、インフレータが使用される過酷な環境下であってもガス発生剤の成形体形状が保たれることにより燃焼性能を保持することができる。該バインダー剤としては、ガス発生剤組成物の燃焼挙動に大幅な悪影響を与えなければ特に制限なく使用でき、例えば、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の多糖誘導体、ステアリン酸塩等の有機バインダー、二硫化モリブデン、合成ヒドロタルサイト、酸性白土、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、シリカ、アルミナ等の無機バインダーが好適に挙げられる。これらの中でも、セルロース系バインダー、酸性白土等が特に好ましい。本発明のガス発生剤組成物中におけるバインダー剤の含有量は、1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。バインダー剤の含有量が高いと、成形体の破壊強度を高めることができるが、組成物中の炭素元素及び水素元素の数が増大し、炭素元素の不完全燃焼生成物である一酸化炭素ガスの濃度が増大し、発生ガスの品質を低下させ、また燃焼を阻害してしまうおそれもあることから、ガス発生剤組成物の形状を維持できる最低量での使用が好ましい。特に、バインダー剤の含有量が10質量%を超えると、酸化剤成分の相対的存在割合の増大が必要となり、ガス発生剤組成物中における燃料成分の相対的存在割合が低下し、ガス発生器の実用化が困難になるおそれがある。
上記スラグ形成剤は、ガス発生剤組成物の燃焼後に生成する燃焼残渣を容易にろ過することを可能にする添加剤であり、インフレータの外に放出することを防ぐことを目的に添加される。該スラグ形成剤の具体例としては、例えば、窒化珪素、炭化珪素、二酸化珪素、珪酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸性白土、クレー等の天然鉱物等が挙げられる。本発明においてスラグ形成剤を用いる場合、ガス発生剤組成物中における含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。スラグ形成剤の含有量が高いと、燃焼性を低下させ、更には発生ガスのモル数を低下させることから、乗員保護性能が十分に発揮されないおそれがある。
上記滑剤は、ガス発生剤組成物の調製時において原料成分の混合性向上、流動性改善を目的として添加される。該滑剤の具体例としては、例えば、グラファイト、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、窒化ホウ素、高分散シリカ(二酸化珪素)、タルク等が挙げられる。これらの中でも、高分散シリカ(二酸化珪素)は、原料混合時の固着や凝集を抑制して均一に分散混合する機能を有しており、各成分の粒度特性・作用を維持する効果があり、特に有用である。本発明において滑剤を用いる場合、ガス発生剤組成物中における滑剤の含有量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましい。滑剤の含有量が高いと、燃焼性の低下、発生ガスのモル数の低下、更には発生ガス中の一酸化炭素の濃度の増大等が起きるおそれがある。
上記燃焼調整剤は、ガス発生剤組成物の燃焼を調整するための添加剤であり、具体例としては、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン等の金属酸化物、水酸化銅、水酸化コバルト、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、活性炭粉末、グラファイト、カーボンブラック等の炭素類等が挙げられる。本発明において燃焼調整剤を用いる場合、ガス発生剤組成物中における燃焼調整剤の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
本発明のガス発生剤組成物は、適当な形状を有する成形体として使用することが好ましい。以下、ガス発生剤組成物の成形体をガス発生剤とも称する。本発明のガス発生剤は、燃焼性能、ガス発生器の燃焼特性に合わせて様々な形状に成形することができる。本発明のガス発生剤の形状は、特に限定されず、ペレット状、ディスク状、球状、棒状、円柱状、円筒状、金平糖状、テトラポット状等が挙げられる。また、該成形体は、無孔のものでもよいし、単孔又は多孔といった有孔のもの(例えば、単孔円筒状又は多孔円筒状)でもよい。更に、ペレット状、ディスク状の成形体は、片面又は両面に1個乃至複数個程度の突起を設けてもよい。突起の形状は特に制限されず、例えば、円柱状、円筒状、円錐状、多角錘状等が挙げられる
本発明のガス発生剤の成形方法としては、加圧成形方法、押出成形方法が挙げられる。
本発明のガス発生剤の成形体の加圧成形方法による製造方法を例示する。加圧成形により、錠剤状、ペレット状又はディスク状にガス発生剤組成物を成形する場合、燃料成分、酸化剤成分、任意の各種添加剤をV型混合機又はロッキングミキサー等の乾式混合機にて混合する。混合の際には、該成分の混合物中に球体を分散し介在させることで、該成分の粉末が球体による力を細部にわたって受けるため、組成物中に各成分が均一に分散する。ロッキングミキサーのような回転と揺動運動を行う混合機を用いることで、各成分がより均一に分散したガス発生剤組成物を得ることができるため望ましい。得られたガス発生剤組成物(粉末)に、バインダー剤を含有する溶液(バインダー溶液)を添加し、撹拌造粒機等の湿式造粒機を用いて該ガス発生剤組成物を造粒する。バインダー溶液の添加量は、一概には言えないが、混合粉末に対して1〜10質量%添加することができる。その後、80〜100℃にて熱処理して顆粒を得る。熱処理後の顆粒の水分量は、1%を超えると流動性の低下が起こり、安定して次工程の加圧成形を行うことができないおそれがあるため、顆粒中の水分量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下が望ましい。次に、該顆粒をロータリー打錠機によって所望の形状に加圧成形する。加圧成形の際、通常使用されるステアリン酸マグネシウム等の滑剤を0.1〜5質量%の範囲で添加することも可能である。加圧成形された成形体は、100〜110℃で5〜20時間熱処理した後、ガス発生剤として使用できる。熱処理後のガス発生剤中の水分量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下が望ましい。
一方、押出成形方法により本発明のガス発生剤組成物の成形体を製造する場合には、燃料成分、酸化剤成分、各種添加剤を混合機にて混合し、得られた混合粉末に外割で10〜20質量%の水又は有機溶媒を加えて十分に混練し、粘性を有する湿薬にする。その後、所望の形状に押出成形可能なダイスに該湿薬を通し、押出成形体を適宜切断していく。押出成形体は柱状体であり、より好ましい形体としては長尺円柱状成形体である。
なお、上記熱処理では、50〜150℃の温度で10〜20時間程度熱処理を行うことにより、経時変化の少ないガス発生剤組成物の成形体を得ることができる。押出成形による製造方法では、水分を10〜20質量%含んだ成形体を熱処理するため、低温で長時間熱処理することが必要である。特に、107℃×400時間の過酷な耐熱老化試験に適合するためには、この熱処理が極めて有効である。なお、熱処理時間が10時間未満では、熱処理が不十分であり、一方、20時間を超える熱処理時間も意味が無いため、10〜20時間の範囲で適宜選択するのが良い。また、熱処理温度は、50℃未満では、成形体の品質を向上させる効果が小さく、80℃を超えると、水分の蒸発速度が速すぎるため、成形体内に気泡が生じ、成形体の強度不足、燃焼中の異常燃焼の原因となる。そのため、50〜70℃にて一次熱処理を行い、ガス発生剤中の水分量を7%以下、好ましくは5%以下とし、その後、80〜150℃にて二次熱処理を行い、ガス発生剤中の水分量を1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下にすることが望ましい。
本発明のガス発生剤はガス発生器に装填して使用される。好適なガス発生器としては、エアバッグ展開に用いられるインフレータである。したがって、本願は当該ガス発生剤を用いたエアバッグ用インフレータも本発明に含む。本発明のエアバッグ用インフレータは、通常、車両に搭載される構造のインフレータであれば特に限定されるものではなく採用することができる。しかしながら、本発明のガス発生剤は燃焼発熱量が低いことから、ガス冷却材を減量したエアバッグ用インフレータとすることができる。すなわち、冷却材であるフィルター材を減量した、軽量化及び/または小型化のエアバッグ用インフレータとすることができる。
実施例1
硝酸グアニジン45.8質量部、塩基性硝酸銅49.1質量部、酒石酸5.1質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
実施例2
硝酸グアニジン21.5質量部、塩基性硝酸銅57.0質量部、酒石酸21.5質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
実施例3
硝酸グアニジン42.8質量部、塩基性硝酸銅52.4質量部、コハク酸4.8質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
実施例4
硝酸グアニジン16.5質量部、塩基性硝酸銅66.9質量部、コハク酸16.6質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
実施例5
硝酸グアニジン44.5質量部、塩基性硝酸銅50.6質量部、リンゴ酸4.9質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
実施例6
硝酸グアニジン19.0質量部、塩基性硝酸銅62.0質量部、リンゴ酸19.0質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
比較例1
硝酸グアニジン53.4質量部、塩基性硝酸銅46.6質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して比較例1のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
比較例2
硝酸グアニジン45.6質量部、塩基性硝酸銅49.3質量部、シアヌル酸5.1質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して比較例2のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
比較例3
硝酸グアニジン21.1質量部、塩基性硝酸銅57.7質量部、シアヌル酸21.1質量部を混合し、更に脱イオン水を噴霧し、次いで、90℃で10時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.2質量部を添加し、直径3.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して比較例3のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
試験例1;燃焼熱測定
本発明のガス発生剤及び比較例のガス発生剤の燃焼熱量を測定するため、カロリーメーターを用いて、各ガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)1.0gを密閉容器で燃焼させて燃焼熱を測定した。試験結果を表1にまとめた。
試験例2;密閉容器内燃焼試験
本発明のガス発生剤及び比較例のガス発生剤の燃焼特性を評価するため、各ガス発生剤組成物(ガス発生剤剤)2.0gを容量18ccの燃焼用密閉容器内に充填してガス発生剤を燃焼させ、最大到達圧力および最大圧力への到達時間を計測し圧力上昇速度を算出した。点火具及び、伝火薬としてボロン硝石0.4gを使用して着火し、燃焼させた。圧力センサーを用いて、燃焼時に発生ガスによるタンク内圧力の変化を測定した。試験結果を表1にまとめた。
[表1]
Figure 2015086096

GN:硝酸グアニジン
BCN:塩基性硝酸銅
α:第二燃焼成分(酒石酸、コハク酸、リンゴ酸またはシアヌル酸)
実施例1〜6と比較例1を比べると、硝酸グアニジンに特定の有機酸を添加した混合燃料を用いることによって、燃焼熱量が低下することが認められた。また、有機酸の添加量が増大するに従い、燃焼熱量はより低下した。
一方、実施例1〜6と比較例2及び3を比べると、硝酸グアニジンと第二燃焼成分の重量比率が同じであるにもかかわらず、第二燃料成分として酒石酸、コハク酸、あるいはリンゴ酸を用いた実施例1〜6は圧力上昇速度が速いことが認められた。また、第二燃料成分として酒石酸あるいはコハク酸を用いた場合、添加量に応じた圧力上昇速度の変化率が小さいことも着目すべき点である。更に、第二燃料成分としてリンゴ酸を用いた場合、添加量に応じた圧力上昇速度は増大することが認められた。特に、リンゴ酸を第二燃料成分として用いることで、燃焼熱量を低減させた上で、燃焼性が向上することを可能にしている。以上の結果から、本発明のガス発生剤組成物は、低い燃焼熱でありながら十分な燃焼性を有していることが確認された。

Claims (7)

  1. 燃料成分(A)として硝酸グアニジン(A−1)及び酒石酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、リンゴ酸、チオリンゴ酸及びこれらの塩から選択される1種以上の有機酸(A−2)、酸化剤成分(B)として塩基性金属硝酸塩を含有し、前記有機酸(A−2)の含有量が燃料成分(A)総量に対し5〜50質量%とすることを特徴とするガス発生剤組成物。
  2. 前記硝酸グアニジン(A−1)の含有量が10〜60質量%で、前記有機酸(A−2)の含有量が1〜30質量%で、前記塩基性金属硝酸塩の含有量が30〜75質量%であることを特徴とする請求項1に記載のガス発生剤組成物。
  3. 酸化剤成分(B)として金属硝酸塩をさらに含む請求項1または2に記載のガス発生剤組成物。
  4. 更に、バインダー剤を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のガス発生剤組成物。
  5. 前記請求項1〜4の何れか一項に記載のガス発生剤組成物を押出し成型して得られる、ガス発生剤組成物成型体。
  6. 前記請求項1〜4の何れか一項に記載のガス発生剤組成物を圧縮成型して得られる、ペレット形状のガス発生剤組成物成型体。
  7. 前記請求項5又は6記載のガス発生剤成型体を用いるエアバッグ用インフレータ。


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