以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
また,本願明細書において,「長手方向」とは,吸収性物品のうち,着用者の腹部側に位置する前身頃と着用者の背部側に位置する後身頃とを結ぶ方向を意味する。また,「幅方向」とは,吸収性物品の長手方向に平面的に直交する方向を意味する。本願の図において,吸収性物品の長手方向はY軸で示されており,吸収性物品の幅方向はX軸で示されている。
また,本願明細書において,「肌対向面」とは,吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向する面を意味する。また,「肌非対向面」とは,吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向しない面を意味している。
[1.第1の実施形態]
まず,図1及び図2を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第1の実施形態について説明する。図1は,第1の実施形態に係る吸収性物品100を示した平面図である。また,図2は,図1に示したX1−X1線における吸収性物品100の断面構造を模式的に示した断面図である。なお,図2の断面図において,吸収性物品100の構成を分かりやすく示すために,各種の構成部材の間に隙間を設けて描画しているが,実際には構成部材の間には隙間はほとんど形成されない。
本実施形態に係る吸収性物品100は,吸収性パッドに関する。吸収性パッドは,単独でも使用することもできるし,パンツ型やテープ型の使い捨ておむつの内面側に重ねて使用することも可能である。図1に示されるように,吸収性物品100は,着用者の腹部側に位置する前身頃1と,着用者の背部側に位置する後身頃2と,これらの間に位置する股下部3とに,長手方向に区分することができる。具体的に説明すると,吸収性物品100は,その平面視において,ひょうたん型若しくは砂時計型と表現することのできる形状となっている。すなわち,吸収性物品100は,股下部3に,吸収性物品100の横幅が最も狭くなった部位であるくびれ部が存在する。他方で,吸収性物品100の前身頃1と後身頃2には,股下部3のくびれ部よりも幅方向の左右外側に延出する部位であるサイドフラップが存在する。つまり,サイドフラップが形成された部分において,前身頃1と後身頃2の横幅は,股下部3のくびれ部における横幅よりも広く形成されている。このように,吸収性物品100はひょうたん型(砂時計型)とすることができる。ただし,吸収性物品100の形状は適宜変更することができ,例えば単純な矩形状とすることも可能である。
また,図1及び図2に示されるように,吸収性物品100は,基本的に,液透過性のトップシート10と,液不透過性のバックシート20と,これらの間に介在する複数の吸収体30,40を有している。図2の断面図に示されるように,複数の吸収体30,40は厚み方向に重ねられている。また,トップシート10は,積層された吸収体30,40の肌対向面側を被覆しており,バックシート20は,積層された吸収体30,40の肌非対向面側を被覆している。図1及び図2に示されるように,吸収体30,40の周囲においては,トップシート10とバックシート20が互いに接合されている。これにより,吸収体30,40は,トップシート10とバックシート20の接合部によって周囲を囲われたものとなる。
トップシート10は,着用者の股下の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体30,40へ透過させるためのシート状の部材である。このため,トップシート10は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。トップシート10を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
バックシート20は,トップシート10透過して吸収体30,40に吸収された液体が,おむつの外部へ漏出することを防止するためのシート状の部材である。このため,バックシート20は,液不透過性材料によって構成される。バックシート20を構成する液不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,バックシート20としては,液不透過性を維持しつつ通気性を確保するために,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
吸収体30,40は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体30,40は,液透過性のトップシート10と,液不透過性のバックシート20の間に配置される。本実施形態に係る吸収性物品100は,トップシート10側に位置する上層吸収体30とバックシート20側に位置する下層吸収体40との2つの吸収体を備えている。上層吸収体30と下層吸収体40は,それぞれ,公知の吸収性材料により構成することができる。吸収性材料としては,例えば,針葉樹などの繊維材料を解砕してなるフラッフパルプや,高吸水性ポリマー(SAP),親水性シートを用いることとしてもよい。また,吸収性材料には,フラッフパルプ,高吸水性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を組合せて併用することとしてもよい。
本実施形態において,上層吸収体30は,フラッフパルプと高吸水性ポリマーを組み合わせたものであり,複数の粒状の高吸水性ポリマーがフラッフパルプによって担持された構成となっている。他方で,下層吸収体40は,フラッフパルプのみからなり,高吸水性ポリマーは分布していない。このように,複数の吸収体のうち,少なくとも着用者の肌に近い位置に位置する上層吸収体30に高吸水性ポリマーを含有させるとともに,この高吸水性ポリマーを含有しない下層吸収体40を設けることが,本発明の好ましい形態である。上層吸収体30が高吸水性ポリマーを含むものであることにより,尿などの液体をこの上層吸収体30によって迅速に吸収することができるため,吸収性物品100の表面がサラサラし,着用者に不快感を与えることを回避できる。他方,下層吸収体40においては,上層吸収体30によって吸収しきれなかった液体を吸収することになる。このとき,下層吸収体40に高吸水性ポリマーを設けて吸収速度を高めるよりは,むしろ高吸水性ポリマーを設けずに下層吸収体40の広い範囲で液体を吸収する方が,液体の吸収量を向上させるという観点において効果的である。このため,本実施形態では,上層吸収体30にのみ高吸水性ポリマーを散布し,下層吸収体40には敢えて高吸水性ポリマーを散布しない構成となっている。
図1及び図2に示されるように,本発明において,上層吸収体30には上側開口部31が形成されている。上側開口部31は,上層吸収体30の厚み方向に貫通した孔(スリット)である。上側開口部31は,少なくとも,上層吸収体30のうち,着用者が排泄した尿に最初に直接触れやすい部位に形成される。具体的には,図1に示されるように,上側開口部31は,上層吸収体30を長手方向に二つの領域に区分した場合に,着用者の腹側の領域に形成されることが好ましい。特に,図1に示されるように,上側開口部31は,少なくとも部分的に,吸収性物品100の前身頃1に形成されていることが好ましい。図1に示した実施形態において,上層開口部31は,前身頃1から股下部3にかけて形成されている。また,上側開口部31は,吸収性物品100の前身頃1にのみ形成され,股下部3や,後身頃2には形成されていないものであってもよい。ただし,上側開口部31の位置は,股下部3や,後身頃2に形成されていてもよいし,前身頃1から股下部3を通って後身頃2に至る長さで形成されていてもよい。また,上側開口部31は,幅方向の中心部分に位置していることが好ましい。例えば,上層吸収体30を幅方向に左部分,中央部分,及び右部分の3つの領域に等分した場合に,上側開口部31は,この幅方向の中央部分に位置していることが好ましい。
図1及び図2に示されるように,上側開口部31は,所定の長さL1(最大値)と所定の横幅W1(最大値)を有している。上側開口部31の長さL1と横幅W1は,吸収性物品100の大きさに合わせて適宜調節すればよい。例えば,吸収性物品100が大人用の吸収性パッドである場合,上側開口部31の長さL1は,10mm〜100mm,又は20mm〜60mmとすればよい。また,上側開口部31の横幅W1は,少なくとも長さL1よりも短いものであって,例えば,5mm〜30mm,又は10mm〜20mmとすればよい。このように,上側開口部31は,長手方向に長い形状となる。図1に示された例において,上側開口部31は,長手方向に延びる長方形状に形成されている。ただし,上側開口部31の形状は,図示されたものに限られず,例えば三角形や,五角形,その他の多角形,円形,楕円形など種々の形状を採用することも可能である。
また,図1及び図2に示されるように,本発明において,下層吸収体40には下側開口部41が形成されている。下側開口部41は,下層吸収体40の厚み方向に貫通した孔(スリット)である。図1に示されるように,下側開口部41は,長手方向に延びる形状であり,上側開口部31よりも長手方向に長く形成されている。具体的には,下側開口部41は,上側開口部31よりも長手方向の前端側に向かって長く形成された部位と,上側開口部31よりも長手方向の後端側に向かって長く形成された部位とを有している。本実施形態において,下側開口部41は,前身頃1から股下部3を超えて後身頃2に至る長さで,長手方向に延びるように形成されている。また,図1に示されるように,下側開口部41は,部分的に,上側開口部31よりも幅方向に広く形成された幅広部43を有している。
具体的に説明すると,図1及び図2に示されるように,下側開口部41は,所定の長さL2(最大値)と所定の横幅W2(最大値)を有している。ここで,図に示されるように,下層吸収体40の下側開口部41の長さL2と横幅W2は,それぞれ,上層吸収体30の上側開口部31の長さL1と横幅W1よりも長くなっている(L2>L1,W2>W1)。例えば,下側開口部41の長さL2は,上側開口部31の長さL1に対して,150%〜500%,又は200%〜400%であることが好ましい。また,下側開口部41の横幅W2は,上側開口部31の横幅W1に対して,110%〜300%,又は150%〜200%であることが好ましい。このように,下側開口部41の長さ及び横幅が上側開口部31の長さ及び横幅よりも長いため,基本的に,下側開口部41の開口面積は,上側開口部31の開口面積よりも大きくなる。図1に示されるように,下側開口部41の形状は,長方形状を基本として,幅広部43においてその横幅が部分的に広がった形状であることが好ましい。部分的な幅広部43は,長方形であってもよいし,その他の多角形でもよいし,円形や楕円形とすることもできる。
また,下層吸収体40の下側開口部41は,上層吸収体30の上側開口部31と少なくとも部分的に厚み方向に重畳する位置に形成されている。本願明細書においては,上側開口部31と下側開口部41とが厚み方向に重なった部位を,開口貫通部分42と称している。本実施形態において,下側開口部41は,上側開口部31よりも長さ及び幅が広がっている。この場合,上側開口部31は,その全体が,下側開口部41に重なっていることが好ましい。この場合,上側開口部31の全体が,上述した開口貫通部分42に相当する。また,上述したとおり,本実施形態において,上層吸収体30の上側開口部31は,前身頃1に形成されているため,上側開口部31と下側開口部41とが重なる開口貫通部分42も,前身頃1に形成されることとなる。ただし,上側開口部31は,下側開口部41と重ならない部分を有していてもよい。例えば,上側開口部31の全体の面積を100%とした場合に,上側開口部31は,その面積の50%〜100%又は90%〜100%が,下側開口部41と重なるものであることが好ましい。このように,上側開口部31の一部又は全部を下側開口部41と重ねることで,これらの2つの開口部31,41が厚み方向に連通するようになる。
上記のように,上層吸収体30と下層吸収体40に,上側開口部31と下側開口部41とを形成することで,着用者によって排泄された尿が,この上側開口部31と下側開口部41を通じて長手方向に拡散する。具体的には,上側開口部31よりも下側開口部41の方が長手方向に長く形成されているため,開口貫通部分42を通じて下側開口部41に流れ込んだ液体は,下側開口部41の中に封じ込められるようにして,吸収性物品100の長手方向に拡散する。また,上側開口部31と下側開口部41を形成することで上層吸収体30及と下層吸収体40の表面積が増えるため,尿などの液体を迅速に吸収することができる。さらに,上層吸収体30上に排泄された尿などの液体を,上側開口部31を通じて,下層吸収体40へと導くことができる。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40の両方によって,液体を効率的に吸収することが可能になる。
また,本実施形態において,下側開口部41の幅広部43が上側開口部31と重なっている。言い換えると,下側開口部41の幅広部43が,開口貫通部分42に相当している。このように,下側開口部41の幅広部43が上側開口部31と重なっていることで,この上側開口部31を通じて一度に大量の液体が下側開口部41へと流入した場合であっても,幅広部43において比較的多量の液体を貯留することができる。このため,一度に大量の液体が下側開口部41に流入した場合であっても,液体が溢れ出ることを回避できる。また,下側開口部41の幅広部43に貯留された液体は,下側開口部41に沿って徐々に長手方向に拡散されるため,液体の逆戻りを防止できる。
図1及び図2に示されるように,本実施形態において,上層吸収体30と下層吸収体40の形状は異なっている。つまり,上層吸収体30は,いわゆるひょうたん型又は砂時計型に成型されているのに対し,下層吸収体40は,長方形状に成型されている。このように,上層吸収体30と下層吸収体40の形状を異ならせることもできる。特に,上層吸収体30は,下層吸収体40上に重ねたときに,前身頃1及び後身頃2において,この下層吸収体40よりも幅方向外側に向かって広がる延出部32を有している。従って,本実施形態において,上層吸収体30は,延出部32の分だけ,下層吸収体40よりも大きく形成されている。このように,上層吸収体30のサイズを大きくすることで,尿などが排泄されたときに,この上層吸収体30の広い範囲で迅速に吸収することができるため,尿漏れの防止に繋がる。また,上層吸収体30の下方に配置する下層吸収体40も,上層吸収体30と同様に,ひょうたん型に成型することも考えられるが,吸収性物品100の着用感が低下するおそれがあるため,あまり好ましくはない。そこで,本実施形態のように,下層吸収体40の形状は上層吸収体30よりも小さい長方形状としておくことで,吸収性物品100全体の吸収量を増加させるととともに,着用感を良好に維持することができる。
図2の断面図に示されるように,本実施形態に係る吸収性物品100は,第1拡散シート61と第2拡散シート62を備えている。図2に示されるように,第1拡散シート61は,トップシート10と上層吸収体30の間に配置されている。また,第2拡散シート62は,下層吸収体40とバックシート20の間に配置されて,下層吸収体40の肌非対向面を被覆する部分を有するとともに,各吸収体30,40の側方を被覆する部分と,上層吸収体30の肌対向面の一部を被覆する部分とを有している。そして,第1拡散シート61と第2拡散シート62とは,上層吸収体30の肌対向面側の幅方向左右両側で重畳して,互いに接合されている。このように,第1拡散シート61と第2拡散シート62は,上層吸収体30と下層吸収体40との周囲を被包するように互いに接合されたものとなっている。第1拡散シート61及び第2拡散シート62は,液体を吸収して拡散可能な液拡散性を有するシート状の部材である。各拡散シート61,62は,例えば,ティッシュペーパのような薄葉紙であってもよいし,不織布であってもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
図1及び図2に示されるように,本実施形態に係る吸収性物品100は,さらに,SAP層50を有する。図2の断面図に示されるように,このSAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に形成されている。SAP層50は,複数の粒状の高吸水性ポリマー(SAP)が集まることによって形成された層である。基本的に,SAP層50は,高吸水性ポリマーのみからなる層である。SAP層50は,複数の高吸水性ポリマーが上層吸収体30と下層吸収体40によって挟み込まれることで,これらの吸収体30,40の間に保持されている。高吸水性ポリマー(SAP)としては公知の素材を用いればよい。例えば,高吸水性ポリマーは,自重の100倍〜1000倍程度の液体を吸収する。高吸水性ポリマーとしては,例えば,液体の吸収前の乾燥状態において0.1mm〜0.5mm程度の直径を有するものを採用すればよい。SAP層50の厚みは,適宜調整することができるが,例えば,0.1mm〜2mm,又は0.5mm〜1.5mm程度とすればよい。
また,図1の平面図に示されるように,SAP層50は,少なくとも,上側開口部31と下側開口部41とが重なる開口貫通部分42の幅方向の左右両側に形成される。また,本実施形態において,左右のSAP層50のそれぞれは,開口貫通部分42の左右両側に位置する部位だけでなく,開口貫通部分42よりも長手方向の前端側に延びる部分と,この開口貫通部分42よりも長手方向の後端側に延びる部分とを有している。具体的には,左右のSAP層50は,それぞれ,下側開口部41と同程度の長さ若しくは下側開口部41よりも長い長さで,この下側開口部41の左右両側に沿って形成されている。
上記のように,上層吸収体30と下層吸収体40の間であって,少なくとも開口貫通部分42の左右両側にSAP層50を設けておくことで,この開口貫通部分42を通じて下側開口部41へと流れ込んだ液体を,SAP層50によって吸収することができる。より具体的に説明すると,上述したとおり,上層吸収体30と下層吸収体40のそれぞれに上側開口部31及び下側開口部41が形成されているため,これらの開口部31,41に流入した液体は吸収性物品の長手方向に分散される。そして,少なくとも開口貫通部分42の両側にSAP層50を形成しておくことで,開口部31,41によって拡散された液体が,効率的にSAP層50によって吸収される。これにより,一度に大量の排尿がなされた場合であっても,SAP層50の広い範囲にわたって拡散して吸収されるようになるため,尿漏れを効果的に防止できる。また,上層吸収体30と下層吸収体40の間にSAP層50を介在させておくことで,上層吸収体30に浸透した液体や下層吸収体40に浸透した液体を,SAP層50へと移送することができる。これにより,液体を吸収したSAP層50は膨潤してゲル化し液体を離水しにくくなるため,液体の逆戻りを防止できる。さらに,一度に大量の液体がSAP層50に局所的に触れることを回避できるため,液体の吸収速度の遅いSAP層50であっても,広い範囲に亘って多くの液体を吸収できるようになり,尿漏れを防止することができる。
また,図2に断面図に示されるように,本実施形態において,SAP層50は,下側開口部41の幅方向の左右両側に形成されている。つまり,SAP層50は,下側開口部41と厚み方向に重なっていない。このように,SAP層50を下側開口部41に重ならない範囲に設けることで,SAP層50全体を完全に上層吸収体30と下層吸収体40とによって挟み込むことができる。このため,吸収性物品の着用者が大きく動いたような場合であっても,SAP層50を構成する高吸水性ポリマーが,下側開口部41の中に脱落することを防止できる。
[2.第2の実施形態]
次に,図3を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第2の実施形態について説明する。図2は,第2の実施形態に係る吸収性物品100を示した平面図である。第2の実施形態については,上述した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,第1の実施形態と異なる構成について説明する。
図3に示されるように,第2の実施形態に係る吸収性物品100では,上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41が重なった開口貫通部分42の幅方向左右両側にのみ,SAP層50が形成されている。具体的には,開口貫通部分42は,吸収性物品100の前身頃1に形成されているため,SAP層50も,吸収性物品100の前身頃1に形成されることとなる。このように,少なくとも開口貫通部分42の幅方向左右両側にSAP層50を形成しておけば,下側開口部41によって液体を長手方向に拡散できるとともに,開口貫通部分42の周囲において高吸水性ポリマー(SAP)によって液体を捕集できる。このため,SAP層50によって液体を効率的に吸収し,その逆戻りを防止できる。
また,第2の実施形態に係る吸収性物品100では,上述した第1の実施形態と異なり,上層吸収体30の上側開口部31が楕円形状に形成されている。また,下層吸収体40の下側開口部41は,その横幅が,全体的に,上側開口部31の横幅よりも広く形成されている。このように,下側開口部41の全体の横幅を,上側開口部31の横幅よりも広く形成してもよい。
[3.第3の実施形態]
続いて,図4及び図5を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第3の実施形態について説明する。図4は,第3の実施形態に係る吸収性物品100を示した平面図である。また,図5は,図4に示したX2−X2線における吸収性物品100の断面構造を模式的に示した断面図である。第3の実施形態については,上述した第1の実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図4の平面図に示されるように,下側開口部41は,長手方向に沿って直線状に延びる基幹部44と,この基幹部44から幅方向の左右外側に向かって延出した複数の分枝部45とを有している。具体的に説明すると,本実施形態において,下側開口部41の基幹部44は,上側開口部31よりも長手方向の長さが長くなっており,前身頃1から股下部3を通って後身頃2に至る長さで形成されている。また,下側開口部41の基幹部44の横幅は,上側開口部31の横幅よりも広くなっている。また,下側開口部41の基幹部44の左右両側には,SAP層50が形成されている。他方,本実施形態において,分枝部45は,長手方向の前端側の位置に左右1箇所ずつ形成され,長手方向の後端側の位置にも左右1箇所ずつ形成されており,合計4箇所に形成されている。このように,分枝部45は,それぞれ,基幹部44から幅方向の左右外側に向かって延出するように形成される。このため,分枝部45は,少なくとも部分的に,SAP層50と厚み方向に重なっている。また,図4に示されるように,分枝部45は,上側開口部31と下側開口部41とが重なる開口貫通部分42の幅方向の左右両側に形成されていることが好ましい。このように,開口貫通部分42の左右両側に分枝部45を設けておくことで,開口貫通部分42から流入した液体を幅方向外側へと素早く拡散させることができる。
図5は,下側開口部41の分枝部45が形成された位置における断面図を示している。図5に示されるように,下側開口部41の分枝部45には,SAP層50が厚み方向に重なっている。SAP層50は,複数の粒状の高吸水性ポリマー(SAP)が集積して形成されたものであるため,このSAP層50が分枝部45に重なっていると,高吸水性ポリマーがこの分枝部45に脱落するおそれがある。そこで,第3の実施形態においては,図5に示されるように,SAP層50と下層吸収体40との間に,下側開口部41を覆うようにして,液拡散性を有する第3拡散シート63を設けている。第3拡散シート63は,第1拡散シート61及び第2拡散シート62と同様に,液体を吸収して拡散可能な液拡散性を有するシート状の部材である。第3拡散シート63は,例えば,ティッシュペーパのような薄葉紙であってもよいし,不織布であってもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
図5に示されるように,下層吸収体40の肌対向面を全体的に覆うように第3拡散シート63を設けておくことで,この第3拡散シート63上に,SAP層50を形成することができる。これにより,SAP層50は,第3拡散シート63と上層吸収体30とに挟み込まれるように保持されるため,SAP層50を構成する高吸水性ポリマーが,下層吸収体40の下側開口部41へと脱落することを防止できる。また,第3拡散シート63によって下層吸収体40の下側開口部41を覆うことで,下側開口部41へと流れ込む液体を効率的に拡散させることができる。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40の広い範囲で液体が吸収されるため,2つの吸収体30,40の吸収能力を効果的に活用することができる。特に,上層吸収体30と下層吸収体40の隙間には液体が浸透しにくい。そこで,上層吸収体30と下層吸収体40の隙間に第3拡散シート63を設けておくことで,通常であれば液体を吸収しにくいとされる上層吸収体30と下層吸収体40の隙間の領域にも液体を浸透させることができる。さらに,SAP層50と下層吸収体40の間に第3拡散シート63を設けておくことで,この第3拡散シート63によって拡散された液体を,SAP層50によって迅速に吸収することができる。従って,開口貫通部分42に流れ込んだ液体を,第3拡散シート63によって広い範囲に拡散させながら,SAP層50によって確実に捕集できる。これにより,開口貫通部分42に大量の液体が排出されても,その液体が外部に漏洩することを防止することが可能である。また,SAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に配置されているため,このSAP層50が大量の液体を吸収して体積が膨張しても,その感触が着用者に伝わりにくい。従って,液体の排泄前と排泄後とで変わらない良好な装着感を,着用者に提供できる。
本実施形態においては,下側開口部41の形状として,基幹部44の前側と後側のそれぞれから左右両側に向かって分枝部45が延出している例を挙げて説明した。ただし,下側開口部41の形状はこれに限定されるものではなく,例えば,基幹部44の前端又は後端から2本の分枝部45が延出したY字型などとすることもできる。また,本実形態では,下側開口部41の分枝部45にSAP層50が重畳している例を説明した。ただし,SAP層50と下層吸収体40の間に第3拡散シート63を設けることとすれば,下側開口部41の基幹部44にもSAP層50を重畳して形成することが可能になる。
また,本実施形態においては,下側開口部41の分枝部45が,SAP層50と厚み方向に重なっている例を説明した。ただし,下側開口部41は,基幹部44が,左右のSAP層50の間の領域よりも幅広くなっており,この基幹部44の左右の側縁部がSAP層50と厚み方向に重なっていてもよい。また,下側開口部41の基幹部44がSAP層50と重なる形態において,下側開口部41には分枝部45が形成されていなくてもよい。この場合においても,下側開口部41とSAP層50の間に第3拡散シート63を配置することで,SAP層50を形成する高吸水性ポリマーが下側開口部41へと脱落することを防止できる。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。