以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る吸収性パッド1(本願でいう「吸収性物品」の一例である)を肌対向面側から見た平面図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、装着時において装着者の腹部側に位置する前身頃領域3、股下に位置する股下領域5、及び背部側に位置する後身頃領域7を備えている。吸収性パッド1は、長手方向に見て、前身頃領域3、股下領域5及び後身頃領域7に区分される。なお、長手方向に直交する方向が吸収性パッド1の幅方向(短手方向)となる。吸収性パッド1は、平面視において、股下領域5に最も狭い横幅を有しおり、股下領域5がくびれた瓢箪形状を有している。
なお、以下では、吸収性パッド1を長手方向に見た場合に、相対的に前身頃領域3側を「前」や「前側」や「前方」や「腹部側」と称し、相対的に後身頃領域7側を「後」や「後側」や「後方」や「背部側」と称し、後側から前側に向かって相対的に左側を「左」や「左側」や「左方」と称し、後側から前側に向かって相対的に右側を「右」や「右側」や「右方」と称する。なお、吸収性パッド1の前後方向は長手方向となり、吸収性パッド1の左右方向は幅方向となる。また、前後左右方向に直交する方向が吸収性パッド1の厚さ方向(高さ方向)となる。
図1に示すように、吸収性パッド1は、装着時(装着状態)における肌対向面側に配置されたトップシート11を備えている。トップシート11は、吸収性パッド1の装着時において装着者の肌に接する部分(肌対向面)であり、尿等の液体を透過する液透過性の材料で形成されている。トップシート11には、具体的には、織布、不織布、多孔性フィルム等が用いられる。なお、不織布には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理したものを用いてもよいし、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等を用いてもよい。
また、吸収性パッド1は、装着時における肌対向面の反対側に配置されたバックシート13を備えている。バックシート13は、肌対向面と反対の肌非対向面(外表面)となる
部分であり、尿等の液体を透過しない液不透過性の材料で形成されている。バックシート13には、具体的には、ポリエチレン樹脂で形成された液不透過性のフィルムが用いられる。なお、バックシート13には、液不透過性を維持しつつ装着状態での蒸れを防ぐための通気性を得るために、0.1~4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
トップシート11とバックシート13とは、夫々の周縁部が互いに接合されている。また、吸収性パッド1は、トップシート11とバックシート13との間に配置され、尿等の液体を吸収する吸収体14を備えている。吸収体14は、トップシート11側に配置された上層吸収体15と、バックシート13側に配置された下層吸収体17とを有している。上層吸収体15は、平面視において、吸収性パッド1と概ね同じ瓢箪形状を有している。下層吸収体17は、トップシート11側から見て上層吸収体15の下方に配置されており、平面視において、吸収性パッド1の長手方向が長辺となる長方形状を有している。また、平面視において、上層吸収体15は、下層吸収体17よりも大きく形成されている。吸収性パッド1は、尿等の液体が排泄されたときに相対的に大きく、トップシート11側に配置された上層吸収体15により尿を迅速に吸収することができる。なお、吸収体14の長手方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の長手方向であって、吸収性パッド1の長手方向と一致している。また、吸収体14の幅方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の幅方向であって、吸収性パッド1の幅方向と一致している。
上層吸収体15及び下層吸収体17には、針葉樹等の繊維材料を解砕して得られるフラッフパルプ(以下、「パルプ」と称する)や、高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)、親水性シート等やこれらを組み合わせたものが用いられる。また、SAPは、自重の10~100倍程度の液体を吸収する。SAPには、例えば、液体吸収前の状態において0.1~0.5mm程度の直径を有する粒状のものが用いられる。本実施形態において、上層吸収体15は、パルプを有している。
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15を厚さ方向に貫通して形成された上層肉抜き溝21を備えている。上層肉抜き溝21は、上層吸収体15の長手方向に延びるように形成されている。また、上層肉抜き溝21は、上層吸収体15の幅方向略中央に形成されている。平面視において、上層肉抜き溝21は、前後の両端が円弧状に形成された長方形状を有している。上層肉抜き溝21の前側の端部は、前身頃領域3の中程に位置し、上層肉抜き溝21の後側の端部は、後身頃領域7の前部に位置している。また、上層肉抜き溝21は、一定の幅w1を有している。例えば、幅w1は、25mmである。また、上層肉抜き溝21の長さは、例えば、260mmである。このサイズの上層肉抜き溝21を備える吸収性パッド1は大人用尿パッドに適している。
また、吸収性パッド1において、図1に示す円で囲んだ領域37を装着者の尿道口が当接する尿道口当接位置に規定する。領域37は、股下領域5内であって且つ吸収性パッド1の幅方向中央部であり、トップシート11上に規定される。また、吸収性パッド1を厚さ方向に見て、領域37と重なる部分が尿道口に対応する部位である。言い換えると、尿道口に対応する部位は、排尿位置である。上層肉抜き溝21は、装着者が排泄した尿が流入し易いように、尿道口に対応する部位を含んで形成されている。吸収性パッド1を平面視した場合、尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位は同じ位置であって、上層吸収体15の後側端部から前方に上層吸収体15の長手方向の長さの60%の位置に規定される。例えば、上層吸収体15の長手方向の長さが500mmである場合、上層吸収体15の後側端部から前方に300mmの位置が尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位に規定される。なお、股下領域5の左右両端部に円弧状に切り抜いたRカットが形成されており、Rカット形成部の前後方向の長さが30mm以内であって、上層吸収体15の幅方向の最狭部が当該Rカットの形成された部分である場合には、当該最狭部の左端と右端とを結
ぶ直線と上層吸収体15の幅方向中央部を通る直線との交点を尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位に規定してもよい。なお、本実施形態においては、尿道口に対応する部位は、装着者の陰部を覆う股下領域5内に配置されている。
なお、上層肉抜き溝21は、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
装着者によって排泄された尿等の液体は、上層肉抜き溝21内を流れて拡散される。また、上層吸収体15上に排泄された尿等の液体を、上層肉抜き溝21を介して下層吸収体17に導くことができる。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収体15及び下層吸収体17を有する吸収体14によって、液体を吸収して保持することができる。
また、上層吸収体15は、上層肉抜き溝21を画定する縁から少なくとも5mmの範囲に他の領域15bよりもパルプの坪量が大きい補強部15aが形成されている。ここで、他の領域15bとは、上層吸収体15のうち補強部15a以外の領域である。また、他の領域15bは、補強部15aと比較して補強されていない非補強部である。なお、補強部15aは、上層肉抜き溝21を画定する縁から5mm以上10mm以内の範囲に形成されていてもよい。図1及び後述する図2において、幅w2は、上層肉抜き溝21を画定する縁から補強部15aが形成されている領域の幅であり、本実施形態では、幅w2は、5mm以上10mm以内である。
また、本実施形態において、補強部15aは、密度が0.07g/cm3以上であって、パルプ坪量が300g/m2以上であり、他の領域15bは、密度が0.06g/cm3以下であって、パルプ坪量が299g/m2以下である。
また、補強部15aが固すぎると装着者に違和感を与えてしまうため、補強部15aを吸収体14の一部として適度な柔軟性を持たせるために、補強部15aは、密度が0.11g/cm3以下であって、パルプ坪量が340g/m2以下であることが好ましい。
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15と下層吸収体17との間に配置されたSAP層23L、23Rを有している。SAP層23L、23Rは、高吸収性重合体(SAP)の粒子が複数集まって形成されている。SAP層23L、23Rは、SAPの粒子を複数含み、上層吸収体15と下層吸収体17との間に導かれた液体を吸収して保持することができる。図1に示すように、上層肉抜き溝21の左方にはSAP層23Lが配置され、上層肉抜き溝21の右方にはSAP層23Rが配置されている。このように、SAP層23L、23Rは、上層肉抜き溝21の長手方向に沿うように上層肉抜き溝21の両側に配置されている。また、平面視において、SAP層23L、23Rは、長方形状に形成されている。なお、SAP層23L、23Rは、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。吸収性パッド1は、SAP層23L、23Rを設けることにより、全体として液体の吸収量を増加させることができる。
例えば、SAP層23Lは、上層肉抜き溝21の左側端部より10mm外側から上層吸収体15の左側端部より10mm内側までに配置されている。同様に、SAP層23Rは、上層肉抜き溝21の右側端部より10mm外側から上層吸収体15の右側端部より10mm内側までに配置されている。このように、SAP層23L、23Rは、上層肉抜き溝21の両端部より10mm外側から上層吸収体15の幅方向の端部より10mm内側までに配置されている。また、SAP層23L、23Rは、上層肉抜き溝21よりも長く、SAP層23L、23Rの長手方向における長さ内に上層肉抜き溝21の長手方向における長さが含まれている。また、吸収性パッド1が大人用の尿取りパッドである場合、SAP
層23L、23Rの各幅は43mm~45mmであり、SAP層23L、23Rの各長さは470mm~555mmである。
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収体15、下層吸収体17、上層肉抜き溝21、SAP層23L、23Rを備えている。上層吸収体15、下層吸収体17、上層肉抜き溝21及びSAP層23L、23Rの長手方向は一致している。また、上層肉抜き溝21とSAP層23L、23Rとは、互いに略平行に配置されている。
また、吸収性パッド1は、肌対向面側から見て下層吸収体17の左右端部に沿って立体ギャザー(不図示)が配置されている。立体ギャザーは、トップシート11に接合されており、液体の横漏れを抑制する。
図2は、図1に示す吸収性パッド1をA-A線で切断した断面図である。なお、図2において、吸収性パッド1の各構成要素を分かりやすくするために、各構成要素間に隙間を設けて図示しているが、実際には各構成要素間には隙間はほとんど形成されない。
図2に示すように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体を包むコアラップシート30(図1において不図示)を備えている。コアラップシート30は、上層吸収体15側に配置された上層シート31と、下層吸収体17側に配置された下層シート33と、を有している。上層シート31は、トップシート11と上層吸収体15との間に配置されており、下層シート33は、バックシート13と下層吸収体17との間に配置されている。また、下層シート33は、上層吸収体15及び下層吸収体17の側面部を被覆する部分を有して、トップシート11と上層吸収体15との間まで引き回されており、トップシート11と上層吸収体15との間において上層シート31に接合されている。このように、上層シート31と下層シート33は互いに接合されて一体的となっており、上層吸収体15及び下層吸収体17の全体を包んでいる。上層シート31、下層シート33には、例えば、ティッシュペーパーのような薄葉紙や不織布等が用いられる。なお、上層シート31と下層シート33は、一体的に形成されていてもよいし、上層吸収体15や下層吸収体17の側面や、バックシート13と下層吸収体17との間で接合されていてもよい。本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体をコアラップシート30で包むことにより、尿等の液体を吸収体14の表面全体に拡散して吸収体14全体で吸収することができる。
SAP層23L、23Rは、下層吸収体17上にSAPの粒子を散布することにより形成される。また、SAP層23L、23Rは、上層吸収体15と下層吸収体17との間に挟持されている。このため、装着者の動作と伴に吸収性パッド1が動かされた場合であってもSAP層23L、23Rに含まれるSAPの粒子が上層肉抜き溝21の下方に移動したり、下層吸収体17外に落ちたりするのを防ぐことができる。
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌対向面側から厚さ方向に見て、トップシート11、上層シート31、下層シート33の一部、上層吸収体15、SAP層23L、23R、下層吸収体17、下層シート33の一部、バックシート13の順に積層された構造を有している。また、トップシート11及びバックシート13の各周縁部が互いに接合されることにより、上層シート31、下層シート33、上層吸収体15、SAP層23L、23R及び下層吸収体17がトップシート11及びバックシート13により周囲が囲まれて封止されている。
上層吸収体15は、補強部15aと他の領域15bとで同じ厚さを有する。これにより、上層吸収体15は、補強部15aが他の領域15bと比較して押し固められすぎず、装着感の低下を防ぐことができる。
ところで、上記特許文献1に記載された吸収性パッドにおいては、上層吸収体及び下層吸収体に形成された肉抜き溝の型崩れが防止されておらず、肉抜き溝が型崩れしてしまう虞がある。吸収性物品において、肉抜き溝が型崩れしてしまうと、肉抜き溝に液体を導入して吸収体全体に拡散させることができなくなる。一方、本実施形態に係る吸収性パッド1によれば、上層吸収体15は、上層肉抜き溝21の周囲に補強部15aが形成されているため、上層肉抜き溝21の型崩れが防止されている。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層肉抜き溝21の型崩れを防止し、上層肉抜き溝21に液体を導入して吸収体14の全体に拡散させることができる。
本実施形態では、吸収性パッドを装着した状態で脚をバタバタさせる試験(脚バタバタ試験、以下では単に「試験」と称する)により肉抜き溝の型崩れ防止について評価した。本試験では、風船人形に吸収性パッドを装着してネットパンツで吸収性パッドを風船人形に固定し、風船人形の脚を外側に50回開閉させる。次いで、吸収性パッドを風船人形から外し、吸収性パッドに人工尿を目安吸収量の60%分注入し、再度、吸収性パッドを風船人形に装着してネットパンツで固定し、風船人形の脚を外側に50回開閉させる。そして、吸収性パッドを風船人形から外し、吸収性パッドの上層肉抜き溝(図1及び図2における上層肉抜き溝21に相当)が潰れていないか確認する。
図3は、本試験の結果を示す表である。本試験では、12個の吸収性パッドを作製し、各吸収性パッドに「1」~「12」の番号を付した。図3の表中の「No.」の列は、各吸収性パッドに付した番号を示している。図3の表に示すように、「1」~「3」の吸収性パッドは、他の領域(図1及び図2における他の領域15bに相当)における密度を0.05g/cm3、パルプ坪量を299g/m2にした。そして、「1」の吸収性パッドは、補強部(図1及び図2における補強部15aに相当)における密度を0.06g/cm3、パルプ坪量を299g/m2にし、「2」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.06g/cm3、パルプ坪量を300g/m2にし、「3」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.06g/cm3、パルプ坪量を304g/m2にした。また、「4」~「6」の吸収性パッドは、他の領域における密度を0.06g/cm3、パルプ坪量を299g/m2にした。そして、「4」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.07g/cm3、パルプ坪量を299g/m2にし、「5」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.07g/cm3、パルプ坪量を300g/m2にし、「6」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.07g/cm3、パルプ坪量を304g/m2にした。また、「7」~「9」の吸収性パッドは、他の領域における密度を0.06g/cm3、パルプ坪量を300g/m2にした。そして、「7」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.07g/cm3、パルプ坪量を299g/m2にし、「8」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.07g/cm3、パルプ坪量を300g/m2にし、「9」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.07g/cm3、パルプ坪量を304g/m2にした。また、「10」~「12」の吸収性パッドは、他の領域における密度を0.07g/cm3、パルプ坪量を299g/m2にした。そして、「10」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.08g/cm3、パルプ坪量を299g/m2にし、「11」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.08g/cm3、パルプ坪量を300g/m2にし、「11」の吸収性パッドは、補強部における密度を0.08g/cm3、パルプ坪量を304g/m2にした。
図3の表中の「試験結果」の列は、本試験の結果を示している。試験後の吸収性パッドにおいて、上層肉抜き溝が潰れていない場合には当該列に「〇」が表記され、上層肉抜き溝が潰れている場合には当該列に「×」が表記されている。図3の表に示すように、「5」及び「6」の吸収性パッドは上層肉抜き溝が潰れておらず、「1」~「4」及び「7」~「12」の吸収性パッドは上層肉抜き溝が潰れていた。この試験結果から分かるように、補強部における密度が0.07g/cm3以上であってパルプ坪量が300g/m2以
上であり、他の領域における密度が0.06g/cm3以下であってパルプ坪量が299g/m2以下である吸収性パッドによれば、上層肉抜き溝の型崩れを防止できる。
吸収体に肉抜き溝を形成すると、肉抜き溝近傍の吸収体が型崩れをしてしまう虞がある。本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層肉抜き溝21の周囲に補強部15aが形成されており、補強部15aは、密度が0.07g/cm3以上であって、パルプ坪量が300g/m2以上であり、他の領域15bは、密度が0.06g/cm3以下であって、パルプ坪量が299g/m2以下である。このような構成を備えた吸収性パッド1によれば、上層肉抜き溝21の型崩れを防止できる。
次に、吸収性パッドについて官能試験を行った。この官能試験では、補強部の密度及びパルプ坪量が異なる各吸収性パッドの装着感について評価した。官能試験において、成人30人を被験者とし、各被験者が衣服を身に着けない状態で吸収性パッドを装着してアウターパンツで吸収性パッドを固定し、次いで各被験者は補強部15a(図1及び図2における補強部15aに相当)を臀部で押し潰すようにして仰向けに寝た状態になり、各被験者による補強部の違和感の有無を評価する。30人の被験者のうち25人以上が補強部に違和感なしと判定した場合には官能試験の結果を違和感なしとする。一方、30人の被験者のうち25人以上が補強部に違和感ありと判定した場合には官能試験の結果を違和感ありとする。
図4は、官能試験1の結果を示す表である。官能試験1では、6つの吸収性パッドを作製し、各吸収性パッドに「1」~「6」の番号を付した。図4の表中の「No.」の列は、各吸収性パッドに付した番号を示している。図4の表に示すように、「1」の吸収性パッドの補強部は、密度が0.09g/cm3であり、パルプ坪量が345g/m2である。「2」の吸収性パッドの補強部は、密度が0.09g/cm3であり、パルプ坪量が330g/m2である。「3」の吸収性パッドの補強部は、密度が0.10g/cm3であり、パルプ坪量が320g/m2である。「4」の吸収性パッドの補強部は、密度が0.11g/cm3であり、パルプ坪量が340g/m2である。「5」の吸収性パッドの補強部は、密度が0.13g/cm3であり、パルプ坪量が335g/m2である。「6」の吸収性パッドの補強部は、密度が0.14g/cm3であり、パルプ坪量が345g/m2である。
図4の表中の「官能試験結果」の列は、官能試験の結果を示している。官能試験の結果が違和感なしである場合には当該列に「〇」が表記され、官能試験の結果が違和感ありである場合には当該列に「×」が表記されている。図4の表に示すように、「2」~、「4」の吸収性パッドの官能試験の結果が違和感なしであり、「1」、「5」及び「6」の吸収性パッドの官能試験の結果が違和感ありである。
補強部の密度及びパルプ坪量が大きいほど補強部が固くなるので装着者にとって違和感ありとなりやすい。官能試験の結果から分かるように、補強部において、密度を0.11g/cm3以下にし、パルプ坪量が340g/m2以下にすることで違和感をなしとできる。
本実施形態に係る吸収性パッド1において、補強部15aは、密度が0.11g/cm3以下であって、パルプ坪量が340g/m2以下である。このような構成の吸収性パッド1によれば、装着時の補強部15aの違和感を低減しつつ、上層肉抜き溝21の型崩れを防止できる。
<実施形態2>
図3は、実施形態2に係る吸収性パッド1を肌対向面側から見た平面図である。本実施
形態に係る吸収性パッド1は、下層吸収体17を厚さ方向に貫通して形成された下層肉抜き溝22を備えている。なお、図1及び図2に示した上記実施形態1に係る吸収性パッド1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。なお、図3では上層吸収体15における補強部15a及び他の領域15bの図示は省略する。本実施形態に係る吸収性物品は、下層吸収体17に下層肉抜き溝22が形成されており、下層肉抜き溝22を画定する縁から少なくとも5mmの範囲に他の領域よりもパルプ坪量が大きい補強部17aが形成されている。
本実施形態において、下層吸収体17は、パルプを備え、下層肉抜き溝22が形成されている。下層肉抜き溝22は、下層吸収体17を厚さ方向に貫通して形成され、上層肉抜き溝21と重なって吸収体14の長手方向に延びている。下層肉抜き溝22は、下層吸収体17の幅方向略中央に形成されている。また、下層肉抜き溝22は、上層肉抜き溝21と同様に、装着者が排泄した尿が流入し易いように、尿道口に対応する部位を含んで形成されている。図5に示すように、平面視において、下層肉抜き溝22は、長手方向の各端部が円弧状に形成された長方形状を有している。下層肉抜き溝22の幅方向の中心は、上層肉抜き溝21の幅方向の中心と略一致している。また、下層肉抜き溝22の前側の端部は、前身頃領域3の中程に位置し、下層肉抜き溝22の後側の端部は、後身頃領域7の前部に位置している。また、下層肉抜き溝22は、一定の幅w3を有している。下層肉抜き溝22の幅w3は、上層肉抜き溝21の幅w1(図1、図2参照)よりも狭く、例えば、20mmである。このように下層肉抜き溝22は、上層肉抜き溝21よりも幅が狭く形成されている。また、下層肉抜き溝22の長さは、例えば、255mmである。下層肉抜き溝22は、上層肉抜き溝21よりも短く、長手方向に見て、上層肉抜き溝21に含まれている。また、上記のようなサイズの上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22を備えた吸収性パッド1は大人用尿パッドに適している。
また、下層吸収体17は、上層肉抜き溝21を画定する縁から少なくとも5mmの範囲に他の領域17bよりもパルプ坪量が大きい補強部17aが形成されている。ここで、他の領域17bとは、下層吸収体17のうち補強部17a以外の領域である。また、他の領域17bは、補強部17aと比較して補強されていない非補強部である。なお、補強部17aは、下層肉抜き溝22を画定する縁から5mm以上10mm以内の範囲に形成されていてもよい。図5及び後述する図6において、幅w3は、下層肉抜き溝22を画定する縁から補強部17aが形成されている領域の幅であり、本実施形態では、幅w3は、5mm以上10mm以内である。
また、本実施形態において、補強部17aは、密度が0.07g/cm3以上であって、パルプ坪量が300g/m2以上であり、他の領域17bは、密度が0.06g/cm3以下であって、パルプ坪量が299g/m2以下である。
また、補強部17aが固すぎると装着者に違和感を与えてしまうため、補強部17aを吸収体14の一部として適度な柔軟性を持たせるために、補強部17aは、密度が0.11g/cm3以下であって、パルプ坪量が340g/m2以下であることが好ましい。
本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌対向面側から見て、上層肉抜き溝21と下層肉抜き溝22とが重なっており、上層肉抜き溝21と下層肉抜き溝22とで吸収体14を厚さ方向に貫通する貫通型の肉抜き溝が形成されている。なお、上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22は、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
装着者によって排泄された尿等の液体は、上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22内を流れて吸収体14の全体に拡散される。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は
、上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22により液体を吸収体14の全体に拡散し、吸収体14によって液体を吸収して保持することができる。
また、図5に示すように、上層吸収体15、下層吸収体17、上層肉抜き溝21、下層肉抜き溝22及びSAP層23L、23Rの長手方向は一致している。また、上層肉抜き溝21と下層肉抜き溝22とSAP層23L、23Rとは、互いに略平行に配置されている。
また、吸収性パッド1は、肌対向面側から見て下層吸収体17の左右端部に沿って立体ギャザー(不図示)が配置されている。立体ギャザーは、トップシート11に接合されており、液体の横漏れを抑制する。
図6は、図5に示す吸収性パッド1をB-B線で切断した断面図である。なお、図6において、吸収性パッド1の各構成要素を分かりやすくするために、各構成要素間に隙間を設けて図示しているが、実際には各構成要素間には隙間はほとんど形成されない。
図6に示すように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌対向面側から厚さ方向に見て、トップシート11、上層シート31、下層シート33の一部、上層吸収体15、SAP層23L、23R、下層吸収体17、下層シート33の一部、バックシート13の順に積層された構造を有している。また、トップシート11及びバックシート13の各周縁部が互いに接合されることにより、上層シート31、下層シート33、上層吸収体15、SAP層23L、23R及び下層吸収体17がトップシート11及びバックシート13により周囲が囲まれて封止されている。
下層吸収体17は、補強部17aと他の領域17bとで同じ厚さを有する。これにより、下層吸収体17は、補強部17aが他の領域17bと比較して押し固められすぎず、装着感の低下を防ぐことができる。
吸収体に肉抜き溝を形成すると、肉抜き溝近傍の吸収体が型崩れをしてしまう虞がある。本実施形態に係る吸収性パッド1は、下層肉抜き溝22の周囲に補強部17aが形成されており、補強部17aは、密度が0.07g/cm3以上であって、パルプ坪量が300g/m2以上であり、他の領域17bは、密度が0.06g/cm3以下であって、パルプ坪量が299g/m2以下である。上記実施形態1と同様にこのような構成を備えた吸収性パッド1によれば、下層肉抜き溝22の型崩れを防止できる。
また、補強部17aが固すぎると装着者に違和感を与えてしまうため、補強部17aを吸収体14の一部として適度な柔軟性を持たせるために、補強部17aは、密度が0.11g/cm3以下であって、パルプ坪量が340g/m2以下であることが好ましい。本実施形態に係る吸収性パッド1において、補強部17aは、密度が0.11g/cm3以下であって、パルプ坪量が340g/m2以下である。上記実施形態1と同様にこのよう
な構成の吸収性パッド1によれば、装着時の補強部17aの違和感を低減しつつ、下層肉抜き溝22の型崩れを防止できる。
なお、上記実施形態では、吸収性パッド1が例示されていたが、その他の形態の吸収性物品においても上記構成を適用可能である。上記構成を適用可能な吸収性物品としては、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ、尿パッド、軽失禁パッドといったギャザー付きの各種形態の吸収性物品や、ギャザーの無いフラットな吸収性物品を挙げることができる。