以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
本実施形態では、電気ケトル100を例に挙げて説明する。図1には、電気ケトル100の外観を示す。電気ケトル100は、主として、ケトル本体200と電源台500とで構成されている。図2には、ケトル本体200の側面の構成を示す。
(電気ケトルの全体構成)
ケトル本体200は、電源台500に着脱自在に載置されている。電気ケトル100の使用者は、お湯を沸かしたいときにケトル本体200を電源台500上に載置し、お湯を使用するときにケトル本体200を電源台500から取り外すことができる。
ケトル本体200は、主として、本体ユニット300と蓋ユニット250とで構成されている。なお、ケトル本体200には、上方の一端部に湯などの液体の注ぎ口(吐出口)301が設けられている。また、ケトル本体200を上方側から見て、注ぎ口301と対向する位置に把持部401が設けられている。
ケトル本体200内の液体を注ぐ際には、使用者は把持部401を把持し、ケトル本体200を注ぎ口301が下方に向くように傾けることで、注ぎ口301から液体を吐出させることができる。なお、本明細書では、説明の便宜上、注ぎ口301が配置されている側をケトル本体200の前方側と呼び、把持部401が配置されている側をケトル本体200の後方側と呼ぶ。また、ケトル本体200を電源台500上に載置した状態で、蓋ユニット250が位置する側をケトル本体200の上方側と呼び、本体ユニット300の底部材331が位置する側をケトル本体200の下方側と呼ぶ(図2参照)。
蓋ユニット250は、本体ユニット300に着脱自在に装着されている。電気ケトル100の使用者は、蓋ユニット250の上部に設けられたロック機構252を解除状態にすることで、本体ユニット300から蓋ユニット250を取り外すことができる。そして、お湯を沸かすための水等を電気ケトル内の液体容器321(図4参照)に入れることができる。また、お湯を沸かす際には、蓋ユニット250を本体ユニット300に装着させて、液体容器321内を閉空間とする。
電源台500は、電気ケトル100へ電気を供給する給電部の役割を果たすともに、電気ケトル100の台座の役割を果たす。電源台500には、ケトル本体200内のヒータユニット340と電気的に接続される接続端子、電源コード、電源プラグなどが設けられている。電源台500については、従来公知の電気ケトルの電源台と同様の構成が適用できる。
以下、ケトル本体200の各構成部材の具体的な構成について説明する。図3には、ケトル本体200を上方側から見た図を示す。また、図4には、ケトル本体200の断面構成を示す。図4は、図3に示すケトル本体200のA−A線部分の断面構成を示す図である。
(本体ユニットについて)
本体ユニット300は、主な構成部材として、側壁部材310、液体容器321、ヒータユニット(加熱部)340、底部材331、および取っ手ユニット400などを備えている。
側壁部材310は、金属または樹脂で形成された部材であって、本体ユニット300の外周面を形成する。なお、本実施形態では、側壁部材310は、略円筒形状の部材の周面の一部が切り取られた形状を有している。そして、この切り取られた部分に、取っ手ユニット400の本体接続部402が嵌め込まれている。すなわち、本体ユニット300の外周面は、その大部分が側壁部材310で構成され、一部分が取っ手ユニット400の本体接続部402で構成されている。
また、側壁部材310の前方側の上部には、前側突出部311が設けられている。前側突出部311は、他の構成部材とともに注ぎ口301の一部を構成している。
液体容器321は、側壁部材310の内側に配置されている。液体容器321は、ステンレス鋼などの金属または樹脂で形成されており、その内部に水などの液体を溜めることができるような容器の形状となっている。液体容器321の内周面には、フッ素樹脂等の耐蝕性樹脂(図示せず)が塗装されていてもよい。液体容器321の底部の下側には、ヒータユニット340の一構成部品であるヒータが取り付けられている。液体容器321の底部は、ステンレス鋼などの金属で形成されている。
また、液体容器321の側壁の外周面には、リブ322が複数個設けられている。リブ322は、液体容器321の外周に沿って延びる環状体であるとともに、水平面(電気ケトル100の載置面)と平行な板状体である。図4に示すように、液体容器321の外周にリブ322が設けられていることによって、液体容器321の外周面と側壁部材310の内周面との間に所定の空間が形成される。これにより、液体容器321内の断熱性を高めることができる。
さらに、液体容器321の前方側の上部には、上方へ傾斜しながら前側に突出する吐出口形成部323が設けられている。吐出口形成部323の上端は、注ぎ口301の先端部323aとなっている。図4に示すように、注ぎ口301の先端部分は、液体容器321の吐出口形成部323と、側壁部材310の前側突出部311との二重構造となっている。このように、本実施形態では、注ぎ口301の最先端は、液体容器321の一部(すなわち、先端部323a)で形成されている。そして、先端部323aの下側の爪部分に、側壁部材310の上端部を噛みこませている。
ヒータユニット(加熱部)340は、液体容器321の下方に設けられている。ヒータユニット340は、例えば、シーズヒータ、プリントヒータなどのヒータ部、ヒータ部へ電気を供給する給電部などを備えている。給電部は、電源台500に設けられた接続端子と電気的に接続される。これにより、給電部には、電源台500を介して電気が供給される。ヒータユニット340については、従来公知の電気ケトルのヒータユニットと同様の構成が適用できる。
底部材331は、樹脂で形成された部材であって、本体ユニット300の底部を構成している。底部材331の上端部は、側壁部材310の下端部および取っ手ユニット400の本体接続部402の下端部と接続されている。底部材331の内部に、ヒータユニット340が収容されている。
取っ手ユニット400は、ケトル本体200の後方側を構成している。取っ手ユニット400は、主な構成部材として、把持部401、本体接続部402、および電源スイッチ機構420などを有している。
把持部401は、樹脂などで形成された部材であって、使用者がケトル本体200を持ち運ぶ際の持ち手となる部分である。把持部401は、本体接続部402から突出するように、本体接続部402と一体的に形成されている。把持部401の上方には、電源スイッチ機構420の一構成部品である電源ボタン421が配置されている。
本体接続部402は、上述したように、本体ユニット300の外周面の一部を構成している。言い換えると、取っ手ユニット400は、本体接続部402によって本体ユニット300の側壁部材310と連結されている。
電源スイッチ機構420は、主として、電源ボタン421、蒸気検知部422、電源スイッチ(図示せず)などを備えている。電源スイッチは、ケトル本体200の底部に設けられたヒータユニット340内の給電部と、電源台500内の接続端子との接続状態を切り換えるためのスイッチである。
電源ボタン421は、把持部401の上面から突出するように配置されている。電源ボタン421は、把持部401の内部で電源スイッチと連結されている。ケトル本体200を電源台500上に載置した状態で、使用者が電源ボタン421を押し下げると、把持部401内の電源スイッチはON(接続)状態となり、ヒータユニット340は電源台500と通電される。これにより、ヒータユニット340には電気が供給され、液体容器321内に貯められた水は温められる。
蒸気検知部422は、例えば、薄い板状のバイメタルスイッチを有している。蒸気検知部422は、液体容器321から発生した蒸気を検知すると、押し下げられている電源ボタン421を上方側へ押し返すように動作する。電源ボタン421が上方へ押し上げられると、把持部401内の電源スイッチはOFF(切断)状態となり、ヒータユニット340への通電が停止される。
なお、電源スイッチ機構420は、従来公知の電気ケトルの電源スイッチ機構の構成を適用することができる。
(蓋ユニットについて)
続いて、蓋ユニット250の具体的な構成について説明する。図5は、蓋ユニット250を構成する主要な部品を分解した状態で示す斜視図である。図6から図8は、蓋ユニット250を構成する底板部材260を、それぞれ異なる方向から見た斜視図である。図9は、蓋ユニット250の内部構成を示す断面図である。図9は、図3に示すA−A線部分に相当する位置での断面図である。図9は、開閉弁280が開の状態(すなわち、注水可能な状態)を示す。
蓋ユニット250は、本体ユニット300の上方を覆う着脱自在の略円柱形の蓋体である。蓋ユニット250は、主として、上面部材251、底板部材260、スチームカバー270、開閉弁280などで構成されている。
上面部材251は、蓋ユニット250の上面を形成している。上面部材251には、開閉ボタン253、ロック機構252などが設けられている。
開閉ボタン253は、後述する開閉弁280の軸部282と連結されている。また、開閉ボタン253は、軸部282を取り囲むように配置されたコイルスプリング289によって上方に向かって付勢されている。そして、電気ケトル100の使用者によってコイルスプリング289の付勢力に抗して開閉ボタン253が下方に向かって押圧されると、その押圧動作に連動して開閉弁280が下方に移動する。これにより、開閉弁280は、図9に示すような開状態となる。
開閉弁280が開状態になると、液体容器321から注ぎ口301までの液体流路が開放状態となる。なお、このとき、図示しない係止機構によって開閉弁280の開状態が維持される。そして、使用者は、このように液体流路が開放された状態でケトル本体200を注ぎ口301側に傾けることにより、液体容器321内部の液体を湯飲みや茶碗等の他の容器等に注ぐことができる。その後、使用者によって開閉ボタン253がもう一度押圧されると、係止機構による開閉弁280の係止が解除され、コイルスプリング289の付勢力によって開閉弁280および開閉ボタン253が上方に押し戻される。これにより、開閉弁280によって液体流路が閉状態とされる。このとき、使用者がケトル本体200を注ぎ口側に傾けても、液体容器321内部の液体は、開閉弁280によって堰き止められる。
ロック機構252は、蓋ユニット250を本体ユニット300に係止するための機構である。ロック機構252は、主として、一対のロックレバーと、各ロックレバーと連結されたコイルスプリングとで構成されている。ロックレバーは、電気ケトル100の使用者が本体ユニット300から蓋ユニット250を取り外す際に指を触れる操作部分として使用される。一対のロックレバーは、コイルスプリングによって左右外方に向かって付勢されている。そして、蓋ユニット250が本体ユニット300に装着されている状態では、ロックレバーの一部が本体ユニット300に嵌まり込んだ状態となり、蓋ユニット250は本体ユニット300に係止される。
使用者が本体ユニット300から蓋ユニット250を取り外したい場合には、使用者はコイルスプリングの付勢力に抗して一対のロックレバーを中央に寄せるように挟み込んで、本体ユニット300に対するロックレバーの嵌め込みを解除する。この状態で、蓋ユニット250を上方に引き上げることで、本体ユニット300から蓋ユニット250が取り外される。
底板部材260は、蓋ユニット250の下側の部分を主に構成している。図6などに示すように、底板部材260は、円筒形容器の概略形状を有する樹脂製の部材である。底板部材260の外形は、主に、略円環状の壁部261と底面部262とで形成されている。
壁部261は、蓋ユニット250の側面を主に構成する。壁部261の上端部に、上面部材251が載置される。壁部261の前方側には、流路形成部264が形成されている。流路形成部264は、ケトル本体200の注ぎ口301へ向かって開口している。流路形成部264によって、液体容器321内の液体を注ぎ口301へと導く吐出経路Aが形成される。
より具体的には、図6および図9に示すように、流路形成部264の内部は、分割壁269によって、大口径の空間と小口径の空間とに分割されている。大口径の空間は、吐出経路Aを形成しており、開閉弁280が開状態となったときに、液体流路の一部を構成する。図9では、吐出時の液体の流れを実線の矢印で示している。
小口径の空間は、大口径の空間の上方に位置する。小口径の空間は、後述する蒸気流通空間(気体流路)290と連通しており、液体の吐出時に外気を取り込む吸気口Bとなっている。液体容器321内の液体の吐出時に、吸気口Bから取り込まれた外気は、蒸気流通空間290内を流れた後、液体容器321内に到達する。図9では、吸気口Bから取り込まれた外気の流れを破線の矢印で示している。このような外気の流れによって、液体吐出時の脈動を抑え、液体容器321内の液体の流出をスムーズに行うことができる。なお、吸気口Bは、液体容器321内で発生した蒸気を排出するための蒸気口としても機能する。
壁部261の後方側(具体的には、流路形成部264との対向位置側)には、後方側蒸気口266が形成されている(図7参照)。後方側蒸気口266は、液体容器321内で発生した蒸気を蒸気検知部422側へ誘導する開口部である。
底面部262は、蓋ユニット250の下面を構成している。本体ユニット300に蓋ユニット250を取り付けた状態では、底面部262の下面(図8参照)は、液体容器321の内部空間の天面となる。
底面部262は、底面部262よりも一段盛り上がっている第2隆起部262bと、第2隆起部262bからさらに盛り上がっている第1隆起部262aとを有している。第1隆起部262aおよび第2隆起部262bは、開閉弁280に対応する位置に形成されている。開閉弁280が閉状態のとき、開閉弁280のパッキン285は、第2隆起部262bの下面に当接する。これにより、液体容器321の内部が閉空間となる。また、開閉弁280が開状態のとき、開閉弁280のパッキン285と第2隆起部262bの下面との間に隙間が形成される。これにより、第1隆起部262aの下面に液体が流入可能となり、液体流路の一部が形成される。
また、図8に示すように、底面部262には、中央開口部263、蒸気口265、および連通穴267などの開口部が形成されている。中央開口部263は、第1隆起部262aに形成されている。中央開口部263は、円筒形状を有しており、その内部を開閉弁280の軸部282が貫通している。蒸気口265は、蒸気流通空間290と液体容器321の内部との間に設けられた開口部である。蒸気口265は、底面部262の後方側の第2隆起部262bに形成されている。蒸気口265は、後方側蒸気口266とともに、液体容器321内で発生した蒸気を蒸気検知部422側へ誘導する開口部である。
連通穴267は、中央開口部263と蒸気口265との間に位置する。連通穴267は、底面部262の第1隆起部262aと第2隆起部262bとの境界部分に形成されている。蒸気口265と同様に、連通穴267は、蒸気流通空間290と液体容器321の内部との間に設けられ、各空間を連通している。なお、蒸気口265は、常時開状態となっているのに対して、連通穴267は、開閉弁280の動作に応じて開状態と閉状態との間で変化する。すなわち、開閉弁280が閉状態のとき、連通穴267の周囲は開閉弁280のパッキン285と当接し、閉じられた状態となる。
また、底面部262の上面上には、規制壁部268(具体的には、高壁部(迂回壁)268a、低壁部(液体障壁)268b)が設けられている。規制壁部268は、底面部262の上面に対して略垂直に立設している。このような規制壁部268が設けられていることで、ケトル本体200が転倒したときに蒸気口265から蒸気流通空間290内を経由して吸気口Bから漏れ出る湯など液体の量を減らしたり、漏れ出る液体の勢いを弱めたりすることができる。
スチームカバー270は、上面部材251と底板部材260との間に配置されている。スチームカバー270は、図5に示すような形状を有する樹脂成形部品である。スチームカバー270は、板状部271、空間形成部277、および中央開口部278などを有している。
板状部271は、スチームカバー270の外縁部および左右両側を主に形成している板状の部材である。
空間形成部277は、中央開口部278の周囲に、板状部271から盛り上がるように形成されている。底板部材260の底面部262上にスチームカバー270を重ねるように配置させると、主に底面部262と空間形成部277とで区画された空間が形成される。この空間が、蒸気流通空間290となる。
中央開口部278は、板状部271の中央部分に形成された開口部である。開閉弁280の軸部282および底板部材260の中央開口部263は、この中央開口部278内を貫通している。
開閉弁280は、蓋ユニット250の底板部材260と、ケトル本体200の液体容器321との境界付近に配置されている。上述したように、開閉弁280は、開閉ボタン253の押圧動作によって、上下方向に移動する。
開閉弁280が上方に位置しているときは、開閉弁280は閉状態となり、液体容器321の内部は閉空間となる。すなわち、液体流路は、遮断された状態となる(図4および図10参照)。一方、開閉弁280が下方に位置しているときは、開閉弁280は開状態となり、液体容器321の上部が開放された状態となる。これにより、液体流路が形成される(図9参照)。
図5に示すように、開閉弁280は、弁本体部281、軸部282、およびパッキン285などを有している。弁本体部281は、略円盤形状を有している。軸部282は、弁本体部281の上面から略垂直に突出する棒状の部材であり、弁本体部281と一体的に形成されている。軸部282の先端は、開閉ボタン253と接続されている。
パッキン285は、弁本体部281の外周を取り囲むように取り付けられている。開閉弁280が閉状態のときには、パッキン285が底板部材260の下面と密着した状態となる。これにより、液体容器321内は、概ね閉鎖された空間となる。そのため、開閉弁280が閉状態のときにケトル本体200が傾いても、開閉弁280と底板部材260の下面との間から吐出経路Aへ直接液体が流れることがなくなる。そのため、誤ってケトル本体200を転倒させてしまった場合に、大量の液体が注ぎ口301から漏れ出すことを抑制することができる。
なお、開閉弁280が閉状態のとき、液体容器321は、完全な密閉空間とはなっていない。これは、底板部材260には、常時開状態となっている蒸気口265が設けられているためである。すなわち、開閉弁280が閉状態のとき、液体容器321内の空間は、底板部材260に形成された蒸気口265のみで他の空間(すなわち、蒸気流通空間290)と連通している。
(液体吐出時の液体および気体の流れについて)
続いて、注ぎ口301から液体を注ぐとき(液体吐出時)の液体の流れと、そのときに外部からケトル本体200に取り込まれる気体の流れについて、図9を参照しながら説明する。図9では、開閉弁280が開の状態(すなわち、注水可能な状態)のときに蓋ユニット250の内部を通過する液体(実線)および気体(破線)の流れを矢印で示す。なお、図9では、コイルスプリング289などの比較的小さな部品の図示は省略している。
ケトル本体200内の湯をカップや湯飲みなどの容器に注ぐとき、使用者は、先ず開閉ボタン253を押し下げ、図9に示す状態にする。開閉ボタン253の押圧動作により、開閉弁280は下方に移動し、蓋ユニット250の底板部材260の下面と開閉弁280との間に隙間が形成される。このとき、連通穴267も開状態となる。
その後、使用者は、把持部401を持ってケトル本体200を電源台500から持ち上げ、容器に注ぎ口301を近づけるようにケトル本体200を傾ける。この動作により、液体容器321内の液体は、図9の実線矢印で示すように、開閉弁280と蓋ユニット250の底板部材260との隙間から、底面部262の第1隆起部262aの下面に形成された液体流路を流れる。そして、蓋ユニット250の前方側の流路形成部264内の吐出経路Aを通り、最終的には、液体容器321の上部の吐出口形成部323で形成された注注ぎ口301から吐出される。
なお、流路形成部264の内部の上方側には、吸気口Bを形成するための分割壁269が設けられている。これにより、液体吐出時、流路形成部264の内部の上方側には、液体が流れない空間が形成される。一方、液体吐出時、液体容器321内は、液体が流出することによって陰圧となる。
ここで、液体容器321の天面を構成する底板部材260には、底板部材260とスチームカバー270とで形成されている蒸気流通空間290に通じる連通穴267が形成されている。そのため、液体容器321内が陰圧になると、蒸気流通空間290も陰圧となる。また、蒸気流通空間290は、吐出経路Aに隣接して設けられた吸気口Bに通じている。
したがって、液体吐出時に、吐出経路Aの上方に設けられている吸気口Bからは、外気が流入する。吸気口Bから流入した外気は、蒸気流通空間290を通って連通穴267から液体容器321内に入る(図9の破線矢印参照)。
以上のように、注ぎ口301からの液体吐出時には、吸気口Bから液体容器321内へスムーズに気体を流入させることのできる流路が形成される。これにより、液体吐出時の脈動を抑えることができ、液体容器321内の液体をスムーズに吐出させることができる。
(非吐出時の蒸気の流れについて)
続いて、湯沸時および貯湯時などの開閉弁280が閉状態のときに、液体容器321内で発生した蒸気を排出する経路について、図10を参照しながら説明する。ここで、湯沸時および貯湯時などの開閉弁280が閉状態の場合を、非吐出時と呼ぶ。
図10は、開閉弁280が閉の状態(すなわち、注水できない状態)のときの蓋ユニット250の内部構成を示す断面図である。図10は、図3に示すA−A線部分に相当する位置での断面図である。なお、図10では、コイルスプリング289などの比較的小さな部品の図示は省略している。
図10に実線の矢印で示すように、非吐出時には、液体容器321内で発生した蒸気は、蒸気口265から蒸気流通空間290へ流入する。蒸気口265から蒸気流通空間290へ流入した蒸気の一部は、後方側蒸気口266から蒸気検知部422が配置されている取っ手ユニット400内の空間へ送出される。蒸気検知部422が、送出される蒸気の温度が所定温度以上となったことを検知すると、ヒータユニット340への通電が停止される。
また、蒸気口265から蒸気流通空間290へ流入した蒸気の一部は、前方側へ流れ、吐出経路Aに隣接している吸気口Bから排出される。このように、吸気口Bは、湯沸時および貯湯時などに蒸気を排出するための蒸気放出口としての役割も果たす。
なお、非吐出時にケトル本体200が誤って転倒したときに、液体容器321内の液体が吸気口Bなどを通じて漏出する可能性がある。このとき、この蒸気流通空間290の容積をある程度確保しておくことで、蒸気流通空間290が中間の液溜まりの役割を果たし、液体容器321内の液体が吸気口Bへ到達するまでの時間を遅らせることができる。またこのとき、連通穴267が開閉弁280によって閉じられていることで、液体容器321内の液体が蒸気流通空間290へ流入するまでの時間を遅らせることができる。
また、湯沸かし終了後に、蒸気流通空間290内の温度が低下するなどして蒸気流通空間290内に溜まった蒸気が結露する可能性がある。このときに発生した結露水は、液体吐出時に開閉ボタン253を押し下げることで、連通穴267が開状態となるため、連通穴267から液体容器321内へ落とすことができる。また、使用者が注水作業を行う際に、ケトル本体200を傾けることで、吸気口Bから排出することもできる。
(ケトル本体転倒時の液体の流れについて)
続いて、湯沸時および貯湯時などの開閉弁280が閉状態のときに、ケトル本体200が転倒した場合に蒸気流通空間290へ流入する液体の流れについて、図10および図11を参照しながら説明する。ここで、湯沸時および貯湯時などの開閉弁280が閉状態の場合を、非吐出時と呼ぶ。
図11には、ケトル本体200が転倒したときに蒸気流通空間290内に貯めることができる液体をWとして示す。また、図11では、蒸気流通空間290の後方側から侵入した液体Wが前方側へ流れるときの液体Wの経路を矢印Aで模式的に示す。
非吐出時にケトル本体200が転倒すると、液体容器321内の液体は、蒸気の流通経路に沿って蒸気口265から蒸気流通空間290へ流入する。すなわち、図10において実線の矢印で示すように、ケトル本体200の後方側に位置する蒸気口265から流入した液体は、ケトル本体200の前方側へと流れ、最終的に吸気口Bおよび吐出経路Aから外部へと漏れ出す。このとき、連通穴267は閉状態となっているため、連通穴267を介して液体容器321内の液体が蒸気流通空間290へ流入することはない。
なお、ケトル本体200は、一般的に、取っ手ユニット400が設けられている後方側の方が前方側に比べて高重量となっている。そのため、人が誤って接触するなどして転倒したケトル本体200は、最終的に図11に示すような状態で床面上に置かれる可能性が高い。
そして、蒸気口265から蒸気流通空間290内へ侵入した液体は、一旦、蒸気検知部422側へ流れた後に、図11において矢印Aで示すような経路で、前方側の吐出経路Aまで流れる。蒸気流通空間290の前方側へ流れた液体は、吐出経路Aに隣接する吸気口Bから外部へ流出する。
蒸気流通空間290内へ侵入した液体は、蒸気流通空間290内に許容量だけ溜まった後、許容量を超えた液体は、注ぎ口301から外部へ漏れ出すことになる。ここで、電気ケトルの信頼性および安全性をより高めるためには、転倒時に注ぎ口301から漏れ出す液体の量を減らしたり、転倒してから注ぎ口301から液体が漏れ出るまでの時間を遅らせたりすることが望まれる。
上述したように、電気ケトル100には、蒸気流通空間290の内部に、蒸気口265から前方側の注ぎ口301(具体的には、注ぎ口301と連通している吸気口B)へと流れる液体の流れを規制する規制壁部268が設けられている。本実施形態では、規制壁部268は、底板部材260に形成された高壁部268aおよび低壁部268bなどで構成されている。
そのため、蒸気口265から蒸気流通空間290内へ流入した液体Wは、例えば、図11の矢印Aで示すような経路で前方側へ流れるが、図11のBで示す高壁部268aの箇所では、吸気口Bなどが形成されている流路形成部264側の領域へ侵入することができず、上方側へ回り込むように流れる。そして、上方へ回り込んだ液体Wは、低壁部268bを乗り越えて流路形成部264側の領域へ侵入する。
このように、蒸気流通空間290内に規制壁部268が設けられていることで、蒸気口265から蒸気流通空間290内へ流入した液体を迂回させることができる。これにより、液体が流路形成部264まで到達するまでの時間を遅延させることができる。
なお、転倒したケトル本体200は、最終的に図11に示すような状態で床面上に置かれる可能性が高い。ケトル本体200の転倒姿勢では、外部に対して開口している吸気口Bは、吐出経路Aと略同じ高さにある。そして、ケトル本体200の転倒時に、蒸気流通空間290内には、吸気口Bと略同じ高さまで液体を溜めることができる。
以上のように、本実施形態にかかる電気ケトル100の構成によれば、蒸気放出口として機能する吸気口Bが吐出経路Aに隣接して配置されているため、例えば、蒸気放出口が蓋ユニット250の中央部などに設けられている構成と比較して、蒸気流通空間290内のより多くの領域を液貯め用の空間として利用することができる。
また、本実施形態にかかる電気ケトル100では、非吐出時には、開閉弁280によって連通穴267が閉じられている。これにより、非吐出時には、液体容器321と蒸気流通空間290とは蒸気口265のみで連通する。そのため、ケトル本体200が転倒したときに、液体容器321から蒸気流通空間290へと流入する液体の時間当たりの流入量を減らすことができる。
(まとめ)
以上のように、本実施形態にかかる電気ケトル100は、ケトル本体200と電源台500とを有している。ケトル本体200は、主として、本体ユニット300と蓋ユニット(蓋体)250とで構成されている。ケトル本体200には、液体容器321、注ぎ口(吐出口)301、ヒータユニット(加熱部)340、および把持部401などが備えられている。
蓋ユニット250には、液体容器321内の液体を注ぎ口301へと導く吐出経路Aを形成する流路形成部264が設けられている。また、蓋ユニット250の内部には、蒸気口265を介して液体容器321と連通している蒸気流通空間(気体流路)290が設けられている。そして、蒸気流通空間290と液体容器321の内部との間には、液体の吐出時に開状態となり、非吐出時には閉状態となる連通穴267が設けられている。
この構成によれば、非吐出時には、連通穴267が閉じられることによって、蒸気流通空間290内のより多くの領域をケトル転倒時の液貯め用の空間として活用することができる。また、ケトル転倒時に、液体容器321から蒸気流通空間290へと流入する液体の時間当たりの流入量を減らすことができる。
また、連通穴267は、吐出時には開状態となるため、蒸気流通空間290内の結露水や残水を効率よく液体容器321へ放出することができる。
また、本実施形態では、吐出経路Aの近傍(具体的には、吐出経路Aの上方側)には、蒸気流通空間290と連通し、液体容器321内で発生した蒸気が排出される蒸気放出口として機能する吸気口Bが設けられている。吐出経路Aの近傍に蒸気放出口が配置されていることで、蒸気放出口が蓋ユニット250の中央部などに設けられている構成と比較して、蒸気流通空間290内のより多くの領域を液貯め用の空間として利用することができる。
なお、本発明の別の態様では、吸気口Bは、吐出経路Aの上方側ではなく、吐出経路Aの左右両側に隣接して設けられていてもよい。すなわち、吸気口Bは、吐出経路Aの周囲の何れかの場所に配置することができる。
また、本実施形態にかかる電気ケトル100のように、連通穴267は、開閉弁280の動作に合わせて開閉されてもよい。この構成によれば、連通穴267を開閉させるための機構を別途設けることなく、液体容器321から注ぎ口301までの液体流路の開閉に連動させて連通穴267を開閉させることができる。これにより、液体の吐出時には、連通穴267も開放状態となり、吸気口Bから取り込まれた外気を液体容器321へ戻す気体の経路が形成される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。