JP2019204860A - レーザ装置及び加工装置 - Google Patents
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Abstract
Description
光学系レンズ及びミラーは、レーザ光の照射と共にレーザ光がもつエネルギを吸収して温度が上昇する。この温度上昇に起因して集光アセンブリで集光されるレーザ光の焦点距離が変化するという問題が生じ、レーザ装置が高出力であるほど温度上昇が大きくなる。焦点距離が変化することで、レーザ光を用いる加工装置では、加工される被加工部材の加工品質が低下する虞がある。
レーザ発振器から出力されたレーザ光を集光させる集光アセンブリと、
前記集光アセンブリを収容するためのカバーであって、前記レーザ光の光路に前記レーザ光が透過可能な保護ウインドウを有するカバーと、
を備えるレーザ装置であって、
前記保護ウインドウは、前記レーザ光の光路に沿って配置された屈折率の温度係数が正である少なくとも1枚の第1保護ウインドウと、屈折率の温度係数が負である少なくとも1枚の第2保護ウインドウとを含む。
本発明者等は、保護ウインドウをレーザ光が透過するときに、集光アセンブリと同様の焦点シフトが発生するため、集光アセンブリの焦点シフトを抑制しても、全体として焦点シフトを抑制できないという知見を得た。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの屈折率の温度係数の絶対値をA、
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの屈折率の温度係数の絶対値をB、とした場合に、
0.8B≦A≦1.2Bの関係を満たす。
上記(2)の構成によれば、第1保護ウインドウと第2保護ウインドウとは、屈折率の温度係数の絶対値がほぼ同等であるため、同一温度条件下では常に焦点シフトの発生を抑制できる。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの厚みをt1、
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの厚みをt2、とした場合に、
0.8t1≦t2≦1.2t1の関係を満たす。
上記(3)の構成によれば、第1保護ウインドウと第2保護ウインドウとは、厚みがほぼ同等であるため、ほぼ同等の熱容量を有する。従って、両者の昇温速度はほぼ同等となる。両者の屈折率の温度係数の絶対値がほぼ同等であるため、昇温過程中、常に焦点シフトの発生を抑制できる。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記第2保護ウインドウの枚数は、前記第1保護ウインドウの枚数よりも多くなるように構成される。
ここで、「温度拡散率」とは、後述するように、物質の熱伝導率、比熱及び密度によって定まる値であり、熱伝導率に比例し、比熱及び密度に反比例する。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウには、前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウよりも熱吸収率の大きなコーティングが施されている。
上記(5)の構成によれば、第1保護ウインドウは第2保護ウインドウより温度拡散率が小さいために、前述のように、第2保護ウインドウより昇温速度が大きくなり、屈折率の変化量も大きくなる。他方、第2保護ウインドウには第1保護ウインドウよりも熱吸収率の大きなコーティングが施されているため、このコーティングの熱吸収によって昇温速度が増加するため、第1保護ウインドウと第2保護ウインドウとの昇温速度の差は相殺される。従って、両者の屈折率の温度係数の絶対値がほぼ同等であるため、昇温過程中、常に焦点シフトの発生を抑制できる。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの枚数は、前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの枚数と同じであり、
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの厚みをt1
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの厚みをt2、とした場合に、
1.2t2≦t1の関係を満たす。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記レーザ発振器から所定時間連続して前記レーザ光が出力された後における、前記第1保護ウインドウの昇温による前記レーザ光の屈折率の変化を、前記第2保護ウインドウの昇温による前記レーザ光の屈折率の変化でキャンセルするように構成される。
上記(7)の構成によれば、第1保護ウインドウは第2保護ウインドウより温度拡散率が小さいために、同じ熱量の吸収でも昇温速度は小さくなるが、この昇温速度の差によって生じる焦点シフトを、他の要素でキャンセルするように構成するため、昇温過程中の焦点シフトを抑制できる。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウが石英を含んで構成され、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウが蛍石を含んで構成される。
上記(8)の構成によれば、第1保護ウインドウ及び第2保護ウインドウとして、レーザ光に対して屈折率や分散性が低く、かつ透過率が良い石英及び蛍石を用いることで、集光アセンブリにおけるレーザ光の集光性を向上できる。
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウは、前記カバーの外側の空間に面して配置され、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウは、前記カバーの内側の空間に面して配置される。
レーザ装置が溶接装置などの加工装置に用いられるとき、加工部から発生する煙やガスで、カバーの外側の空間に面して配置される保護ウインドウほど早くよごれるため、交換時期を早くする必要がある。
上記(9)の構成によれば、蛍石と比べて安価な石英を含む第1保護ウインドウを蛍石を含む第2保護ウインドウより外側に配置することで、第1保護ウインドウの交換頻度が大きくなっても、高コストとならない。
前記カバーは、前記レーザ光が前記集光アセンブリに入射する入口部に設けられる入口側保護ウインドウと、前記レーザ光が前記集光アセンブリから出射する出口部に設けられる出口側保護ウインドウとを含む。
上記(10)の構成によれば、上記入口側保護ウインドウ及び上記出口側保護ウインドウの両方でレーザ光の焦点シフトを抑制できるので、集光アセンブリを含めたレーザ装置全体の焦点シフトを効果的に抑制できる。
前記(1)〜(10)の何れかの構成を有するレーザ装置と、
前記レーザ装置から照射される前記レーザ光を用いて被加工部材を加工する加工部と、
を備える。
上記(11)の構成によれば、上記構成のレーザ装置を備えるため、レーザ装置から上記加工部に照射するレーザ光の焦点シフトを抑制できる。これによって、加工装置によって加工される被加工部材の品質低下を抑制できる。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1〜図4において、レーザ装置10(10A〜10D)は、レーザ光Rを発振するレーザ発振器12と、レーザ発振器12から発振されたレーザ光Rを集光させる集光アセンブリ14(14a、14b)と、を備える。集光アセンブリ14で集光されたレーザ光Rは、例えば、加工装置で被加工部材を加工するために用いられる。また、集光アセンブリ14を保護するためのカバー16を備え、集光アセンブリ14はカバー16に収容される。上記加工装置が例えば溶接装置であるとき、溶接部から煙やガスが発生する。カバー16は、集光アセンブリ14に近づく煙やガスから集光アセンブリ14を遮断し、集光アセンブリ14を保護する。カバー16は、カバー本体18と、レーザ光Rがカバー16を透過可能にするためにレーザ光Rの光路Opに設けられた保護ウインドウ20(20a、20b)とで構成される。
前述のように、本発明者等は、集光アセンブリ14を構成する光学系レンズ又はミラーなどの焦点シフトを抑制しても、焦点シフト量は意図したように抑制できなかった。
この実施形態によれば、レーザ光Rが保護ウインドウ20を透過するときの焦点シフトを抑制できるだけでなく、レーザ光Rが集光アセンブリ14(14a)を通るときの焦点シフトを抑制できる。
を反射して集光させるための第2ミラー44と、を含んで構成される。
こうして、レーザ光Rが保護ウインドウ20を透過するときの焦点シフトを抑制できるだけでなく、レーザ光Rが集光アセンブリ14(14b)を通るときの焦点シフトを抑制できる。
この実施形態によれば、第1保護ウインドウ22及び第2保護ウインドウ24は、屈折率の温度係数の絶対値がほぼ同等であるため、同一温度の条件下では、常に第1保護ウインドウ22の屈折率の変化によって生じる焦点シフトは、第2保護ウインドウ24の屈折率の変化によって相殺される。これによって、レーザ光Rが保護ウインドウ20を透過するときの焦点シフトを抑制できる。
この実施形態によれば、第1保護ウインドウ22と第2保護ウインドウ24とは、厚みがほぼ同等であるため、ほぼ同等の熱容量を有する。従って、レーザ光Rのエネルギを吸収して温度上昇する両者の昇温速度はほぼ同等となる。また、両者の屈折率の温度係数の絶対値がほぼ同等であるため、昇温過程中、第1保護ウインドウ22の屈折率の変化によって生じる焦点シフトは、常に第2保護ウインドウ24の屈折率の変化によって相殺されるため、レーザ光Rが保護ウインドウ20を透過するときの焦点シフトを抑制できる。
ここで、「温度拡散率」とは、伝熱現象において定常状態の温度勾配などを求めるときに用いられる物性値であり、次式で定義される(単位;m2/s)。次式から、温度拡散率αは熱伝導率kに比例し、密度ρ及び比熱cpに反比例する。
温度拡散率α=k/ρ・cp
ここで、k;熱伝導率(Js−1m−1K−1)
ρ;密度(kgm−3)
cp;比熱(Jkg−1K−1)
この実施形態によれば、第1保護ウインドウ22は第2保護ウインドウ24より温度拡散率が小さいために、前述のように、第2保護ウインドウ24より昇温速度が大きくなり、屈折率の変化量も大きくなる。他方、第2保護ウインドウ24には第1保護ウインドウ22よりも熱吸収率の大きなコーティングが施されているため、このコーティングの熱吸収によって昇温速度が増加する。従って、第1保護ウインドウ22と第2保護ウインドウ24との昇温速度の差は相殺される。両者の屈折率の温度係数の絶対値がほぼ同等であるため、昇温過程中、常に焦点シフトの発生を抑制できる。
図5に示すように、合成石英は正の屈折率の温度係数を有し、蛍石は負の屈折率の温度係数を有すると共に、両者の温度係数の絶対値はほぼ同等である。従って、合成石英を含む第1保護ウインドウ22の温度上昇による屈折率の変化を、蛍石を含み温度上昇した第2保護ウインドウ24の屈折率の変化によって補正し相殺できる。これによって、レーザ光Rが保護ウインドウ20を通過するときの焦点シフトを抑制できる。
この実施形態によれば、蛍石と比べて安価な石英を含む第1保護ウインドウ22を蛍石を含む第2保護ウインドウ24より外側に配置することで、第1保護ウインドウ22の交換頻度が大きくなっても、高コストとならない。
この実施形態によれば、保護ウインドウ20が集光アセンブリ14の入口部及び出口部に設けられるため、これら保護ウインドウ20(20a、20b)の両方でレーザ光Rの焦点シフトを抑制できるので、集光アセンブリ14を含めたレーザ装置全体の焦点シフトを効果的に抑制できる。
この実施形態によれば、溶接装置50の稼働中、レーザ装置10で焦点シフトを抑制できるため、焦点シフトを補正する必要がなくなるため、光ファイバ46と集光アセンブリ14とを一体化でき、レーザ装置10を簡素化できる。
<レーザ装置>
・IPG製シングルモードレーザ(出力10kW、波長1070nm)
・レーザ発振器12から入光されるビーム品質;M2=1.5
・レーザ発振器12から入光されるビームの径;20μm
・保護ウインドウ84を通過する際のビーム径;30〜50μm程度
保護ウインドウ84は、合成石英製及び蛍石製とも1070〜1080nm用のコーティングを施した。形状は直径60mm×厚さ3mmである。
図10に示す焦点シフト量は約1.4mmであり、図11に示す焦点シフト量は約0.9mmであった。従って、保護ウインドウ84として、合成石英製の保護ウインドウを用いた場合に対して蛍石製の保護ウインドウを用いた場合は、0.5mm程度の焦点シフト抑制効果があることが確認された。
12 レーザ発振器
14(14a、14b)、72 集光アセンブリ
16 カバー
18 カバー本体
20、82、84 保護ウインドウ
20(20a)、82(82a) 入口側保護ウインドウ
20(20b)、82(82b) 出口側保護ウインドウ
22 第1保護ウインドウ
24 第2保護ウインドウ
30 第1レンズ
32 第2レンズ
34、36、38、40、74、76,78,80 レンズ
42 第1ミラー
44 第2ミラー
46 光ファイバ
50 加工装置(溶接装置)
52 加工部
54 被加工部材(被溶接材)
56 溶接トーチ
58 溶接ワイヤ
60 ワイヤ供給装置
62 送給ロール
64 電源装置
70 実験装置
86 ビームウォッチャ
Op 光路
R レーザ光
w 溶接個所
Claims (11)
- レーザ発振器から出力されたレーザ光を集光させる集光アセンブリと、
前記集光アセンブリを収容するためのカバーであって、前記レーザ光の光路に前記レーザ光が透過可能な保護ウインドウを有するカバーと、
を備えるレーザ装置であって、
前記保護ウインドウは、前記レーザ光の光路に沿って配置された屈折率の温度係数が正である少なくとも1枚の第1保護ウインドウと、屈折率の温度係数が負である少なくとも1枚の第2保護ウインドウとを含む
レーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの屈折率の温度係数の絶対値をA、
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの屈折率の温度係数の絶対値をB、とした場合に、
0.8B≦A≦1.2Bの関係を満たす
請求項1に記載のレーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの厚みをt1
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの厚みをt2、とした場合に、
0.8t1≦t2≦1.2t1の関係を満たす
請求項2に記載のレーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記第2保護ウインドウの枚数は、前記第1保護ウインドウの枚数よりも多い
請求項3に記載のレーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウには、前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウよりも熱吸収率の大きなコーティングが施されている
請求項3に記載のレーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの枚数は、前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの枚数と同じであり、
前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの厚みをt1
前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの厚みをt2、とした場合に、
1.2t2≦t1の関係を満たす
請求項2に記載のレーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウの温度拡散率は、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウの温度拡散率よりも小さく、
前記レーザ発振器から所定時間連続して前記レーザ光が出力された後における、前記第1保護ウインドウの昇温による前記レーザ光の屈折率の変化を、前記第2保護ウインドウの昇温による前記レーザ光の屈折率の変化でキャンセルするように構成される
請求項1乃至6の何れか一項に記載のレーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウが石英を含んで構成され、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウが蛍石を含んで構成される
請求項1乃至7の何れか一項に記載のレーザ装置。 - 前記少なくとも1枚の第1保護ウインドウは、前記カバーの外側の空間に面して配置され、前記少なくとも1枚の第2保護ウインドウは、前記カバーの内側の空間に面して配置される
請求項8に記載のレーザ装置。 - 前記カバーは、前記レーザ光が前記集光アセンブリに入射する入口部に設けられる入口側保護ウインドウと、前記レーザ光が前記集光アセンブリから出射する出口部に設けられる出口側保護ウインドウとを含む
請求項1乃至9の何れか一項に記載のレーザ装置。 - 請求項1乃至10の何れか一項に記載のレーザ装置と、
前記レーザ装置から照射される前記レーザ光を用いて被加工部材を加工する加工部と、
を備える加工装置。
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