JP2019204837A - 高周波コイル用電線及びコイル - Google Patents

高周波コイル用電線及びコイル Download PDF

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Abstract

【課題】受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率に対応できる高周波コイル用電線及びその高周波コイル用電線で作製されたコイルを提供する。【解決手段】中心導体1及びその中心導体1の外周に設けられた絶縁層2を有する絶縁素線3を複数本撚り合わせて一次撚り線11とし、その一次撚り線11をさらに撚って少なくとも二次撚り線とした集合撚り線構造からなる高周波コイル用電線であって、集合撚り線構造は、二次撚り線、三次撚り線及び四次撚り線から選ばれるいずれかが最外周撚り線となる構造であり、最外周撚り線の本数が3本以上6本以下の範囲内である。【選択図】図2

Description

本発明は、高周波コイル用電線及びコイルに関する。更に詳しくは、特に、機器の高周波化にともない、受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率に対応できる電線であって、モーター、インバータ、非接触給電用等のパワー半導体を使う高周波分野に絶縁電線を用いたコイル(リアクトル、インダクタ、チョークコイル、ノイズフィルター、IHヒータ、電源トランス等)として使用される高周波コイル用電線及びコイルに関する。
コイル部品には、複数の絶縁電線を撚り合わせたリッツ線や、そのリッツ線をさらにテープ巻き又は溶融押出しして得た複合絶縁電線等が用いられている。これらの絶縁電線は、数十kHz〜数百kHzの高周波領域における表皮効果による交流抵抗の上昇を抑えることができるので、高周波分野のコイル用電線として広く使用されている。特に近年、コイル部品の小型化が要請され、使用されるコイル用電線の細径化も要請されている。
こうした要請に対し、特許文献1には、直流重畳高周波回路、低周波重畳高周波回路等において損失を低減する電線及びコイルが提案されている。この技術は、銅線表面に磁性メッキ層を形成しその磁性メッキ層の表面に絶縁被覆を形成した絶縁被覆磁性材メッキ銅線と、銅線表面に絶縁被覆を形成した絶縁被覆銅線とを、断面全面について混在させて撚るか又は撚らずに集合させたことに特徴がある。そして、この技術は、全面に絶縁被覆磁性材メッキ銅線が配されているため、直流または低周波における抵抗を減らすことができるとともに、流れる電流が作り出す磁界は絶縁被覆磁性材メッキ銅線の磁性材メッキ層で遮断されて銅線部分まで入り難くなるため、高周波における近接効果による銅損の増加を抑制でき、従って、直流重畳高周波回路、低周波重畳高周波回路等での損失を低減できる、というものである。
特開2009−277396号公報
本発明は、機器の高周波化にともない、受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率に対応できる電線の提供を目的としたものであって、モーター、インバータ、非接触給電用等のパワー半導体を使う高周波分野に絶縁電線を用いたコイル(リアクトル、インダクタ、チョークコイル、ノイズフィルター、IHヒータ、電源トランス等)として使用される高周波コイル用電線、及びその高周波コイル用電線で作製されたコイルを提供することにある。
(1)本発明に係る高周波コイル用電線は、中心導体及び該中心導体の外周に設けられた絶縁層を有する絶縁素線を複数本撚り合わせて一次撚り線とし、前記一次撚り線をさらに撚って少なくとも二次撚り線とした集合撚り線構造からなる高周波コイル用電線であって、
前記集合撚り線構造は、二次撚り線、三次撚り線及び四次撚り線から選ばれるいずれかが最外周撚り線となる構造であり、前記最外周撚り線の本数が3本以上6本以下の範囲内であることを特徴とする。
この発明によれば、集合撚り線構造は二次撚り線、三次撚り線及び四次撚り線から選ばれるいずれかが最外周撚り線となる構造であり、その最外周撚り線の本数が3本以上6本以下の範囲内であるようにすることにより、電流の偏りが発生しないで、より一層抵抗損失効果を抑制することができる。その結果、この高周波コイル用電線でコイルを作製することにより、受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率化に寄与できる。
本発明に係る高周波コイル用電線において、前記集合撚り線構造を構成する各段階の撚り線のピッチは、下記計算式の範囲内であることが好ましい。下記式において、Yは撚りピッチ(mm)であり、Xは一次撚り線から四次撚り線までの各撚り段階の数(1〜4)である。
8.65X+22≧Y≧8.15X−3 ・・・(1)
4≧X≧1 ・・・(2)
この発明によれば、集合撚り線構造を構成する各段階の撚り線のピッチを上記計算式の範囲内とすることにより撚り段階を増す毎に総外径が増した場合において、好ましい撚りピッチとしてコイル巻き線性のよい高周波コイル用電線とすることができる。
本発明に係る高周波コイル用電線において、前記中心導体が直径0.04mm以上0.12mm以下の範囲内であり、前記絶縁素線の数が19本以上5000本以下の範囲内である。
本発明に係る高周波コイル用電線において、前記中心導体が、タフピッチ銅若しくは無酸素銅からなる銅線、又は前記銅線に磁性層が設けられた磁性線であることが好ましい。
本発明に係る高周波コイル用電線において、前記絶縁層が、エナメル被覆層又はイミダゾール化合物層であることが好ましい。
本発明に係る高周波コイル用電線において、前記集合撚り線構造の外周に絶縁被覆層が設けられ、前記絶縁被覆層が、絶縁性押出し樹脂、絶縁性テープ、又はそれらの組み合わせにより構成されていることが好ましい。
(2)本発明に係るコイルは、上記本発明に係る高周波コイル用電線を用いてなることを特徴とする。
本発明によれば、機器の高周波化にともない、受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率化に寄与できる高周波コイル用電線、及びその高周波コイル用電線で作製されたコイルを提供することができる。特に、集合撚り線構造として一次撚り線、一次撚り線を更に二次撚りした二次撚り線、二次撚り線を更に三次撚りした三次撚り線等の高次の撚り線は総断面積が大きい電流容量の大きな電線であるが、こうした電線において、機器の高周波化に対応できる省エネ・高効率のコイル用電線として好ましい。
本発明に係る高周波コイル用電線の例を示す断面模式図であり、(A)は一次撚り線と二次撚り線からなる2段階構造の集合撚り線構造であり、(B)は一次撚り線から三次撚り線からなる3段階構造の集合撚り線構造であり、(C)は一次撚り線から四次撚り線からなる4段階構造の集合撚り線構造である。 一次撚り線の一例を示す構成図である。 一次撚り線を構成する絶縁素線の例であり、(A)は銅線上に絶縁層を設けたものであり、(B)は磁性線上に絶縁層を設けたものである。 (A)は実施例2の高周波コイル用電線の断面写真であり、(B)は比較例1の電線の断面写真である。 本発明に係る高周波コイル用電線の一例を示す構成図であり、絶縁被覆層を三層で構成した例である。
本発明に係る高周波コイル用電線及びコイルについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
[高周波コイル用電線]
本発明に係る高周波コイル用電線20は、図1〜図5に示すように、中心導体1及びその中心導体1の外周に設けられた絶縁層2を有する絶縁素線3を複数本撚り合わせて一次撚り線11とし、その一次撚り線11をさらに撚って少なくとも二次撚り線12とした集合撚り線構造10からなる高周波コイル用電線である。そして、集合撚り線構造10は、二次撚り線12、三次撚り線13及び四次撚り線14から選ばれるいずれかが最外周撚り線となる構造であり、その最外周撚り線の本数が3本以上6本以下の範囲内であることに特徴がある。
こうした高周波コイル用電線20の集合撚り線構造10は、二次撚り線12、三次撚り線13及び四次撚り線14から選ばれるいずれかが最外周撚り線となる構造であり、その最外周撚り線の本数が3本以上6本以下の範囲内であるようにすることにより、電流の偏りが発生しないで、より一層抵抗損失効果を抑制することができる。その結果、この高周波コイル用電線20でコイルを作製することにより、受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率化に寄与できる。
以下、高周波コイル用電線の構成要素を説明する。
(中心導体)
中心導体1は、いわゆるリッツ線を構成する絶縁素線3の中心導体として使用されている各種の導体であれば特に限定されず、銅、銅合金、銅クラッド複合線、磁性線等を挙げることができる。好ましい中心導体1としては、タフピッチ銅、無酸素銅からなる銅線、又はそうした銅導体1aに磁性層1bが設けられた磁性線を挙げることができる。タフピッチ銅か無酸素銅であるかは、JIS H−3510に準拠した水素脆化試験によって判定することができる。磁性層2bが設けられているか否かは、ICP発光分光分析によって測定して定性及び定量分析することができる。
中心導体1として、図3(B)のように銅導体1a上に磁性層1bを設けた場合は、後述の実施例で示すように、特に高周波での抵抗変化率(交流抵抗/直流抵抗)を抑制することができるので好ましく適用される。磁性層1bは、上記特許文献1と同様、電気めっきや無電解めっきで形成することができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、又はそれらの合金(各種のパーマロイ合金を含む。)等を挙げることができる。特に、銅導体1a上に鉄めっき層とニッケルめっき層を順に設けた磁性層は、ニッケルめっき層の作用によりはんだ付けも可能になるので好ましく適用される。鉄めっき層の厚さは、0.2μm以上3.0μm以下の範囲内で設けられていることが好ましく、高周波コイル等に使用される場合に交流抵抗を低減して高周波特性が向上する。なお、交流抵抗を低減する等の効果を阻害しない範囲であれば、鉄めっき層に他の元素(例えばニッケル、コバルト、リン、ホウ素等)が含まれていてもよい。ニッケルめっき層は、鉄めっき層が作用する高周波特性を低下させないとともに、はんだ付けを容易にさせるので、好ましく適用される。ニッケルめっき層の厚さは特に限定されないが、例えば0.01〜0.5μm程度であることが好ましい。なお、磁性層1bを電気めっきや無電解めっきで形成する場合のめっき液組成や条件も特に限定されず、従来と同様の手段を適用できる。
中心導体1の直径は特に限定されないが、多くの本数で構成する本発明に係る高周波コイル用電線20の作製に好ましく適用できる程度の直径であればよく、例えば0.04〜0.12mm程度の範囲内であることが好ましい。
(絶縁層)
絶縁層2は、図3に示すように、中心導体1上に設けられている。絶縁層2を設けることにより、高周波コイル用電線20を、各種高周波コイル、高周コイル用の電線(撚り線、集合させた素線の外周を絶縁被覆により一体化した絶縁電線等)として有用に利用できる。絶縁層2は絶縁性を確保できるものであれば特に限定されず、各種のエナメル被覆層等を挙げることができる。例えば、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜と融着エナメル被膜の積層被覆層、イミダゾール化合物層等を挙げることができる。はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜は、例えば汎用ポリウレタン、変性ポリウレタン、ポリエステルイミド等のはんだ付け可能なエナメル塗料を塗布焼付けして形成できる。また、更にその外周に形成する融着エナメル被膜は、例えばナイロンやエポキシ等の融着エナメル塗料を塗布焼付けして形成できる。
イミダゾール化合物層は、中心導体1の構成成分である金属と錯体を形成することができるイミダゾール化合物を中心導体1に浸漬又は接触させ、その後乾燥させて形成される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、アミン有機酸塩等を挙げることができる。イミダゾールは、上市されているものから入手可能である。イミダゾールが、中心導体1を構成する銅、鉄又はニッケル等と反応することにより、金属イミダゾール錯体(銅イミダゾール錯体、鉄イミダゾール錯体、ニッケルイミダゾール錯体)が形成される。なお、イミダゾール化合物層の厚さは、0.05〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。この範囲内の厚さでイミダゾール化合物層が設けられることにより、中心導体1の酸化を防止でき、はんだ濡れ性を優れたものとすることができる。さらに、エナメル皮膜に比べ、皮膜厚さを1/10程度に抑えることができるので、最終的な高周波コイル用電線20の直径を小さくして断面積を約15%小さくでき、コイルの小型化に貢献できる。また、イミダゾール化合物層は、エナメル皮膜のように厚くないので、はんだ付け時の焼けカスが非常に微量であり、はんだ接続部における焼けカスに起因する問題が発生しにくいという利点もある。なお、イミダゾール化合物層の形成は、焼き付け工程が不要であり、直ぐ後に撚り合わせを行うことができるという利点もある。
(絶縁素線)
絶縁素線3は、図3に示すように、中心導体1上に絶縁層2を設けて構成される。この絶縁素線3は、後述の一次撚り線11を構成し、その一次撚り線11はその後にさらに撚られて最終的な集合撚り線構造10を構成する。最終的な集合撚り線構造10を構成する絶縁素線3は、二次撚り線12、三次撚り線13及び四次撚り線14から選ばれる構造形態となり、その本数は、19本以上5000本以下の範囲内となる。
(集合撚り線構造)
集合撚り線構造10は、図1,図2及び図4に示すように、絶縁素線3を複数本撚り合わせて一次撚り線11とし、その一次撚り線11をさらに撚って少なくとも二次撚り線12とした構造である。
この集合撚り線構造10においては、二次撚り線12、三次撚り線13及び四次撚り線14から選ばれるいずれかが最外周撚り線となる。そして、その最外周撚り線の本数が、3本以上6本以下の範囲内であることに特徴がある。最外周撚り線の本数を3本以上6本以下の範囲内とすることにより、電流の偏りが発生しないで、より一層抵抗損失効果を抑制することができる。その結果、この高周波コイル用電線でコイルを作製することにより、受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率化に寄与できる。後述の実施例と比較例で示すように、その本数が3本未満では、断面を丸形状に整えることが困難であり、次工程で設ける絶縁被覆層4の外径変動が大きく、その外径変動が抵抗変化率のばらつきを生じさせることがあり、一方、その本数が6本を超えると、抵抗変化率(交流抵抗/直流抵抗)の値が十分に抑制されないことがある。
図1において、(A)は一次撚り線11と二次撚り線12からなる2段階構造の集合撚り線構造10であり、(B)は一次撚り線11から三次撚り線13からなる3段階構造の集合撚り線構造10であり、(C)は一次撚り線11から四次撚り線14からなる4段階構造の集合撚り線構造10である。
集合撚り線構造10を構成する各段階の撚り線のピッチは、下記計算式の範囲内であることが好ましい。下記式において、Yは撚りピッチ(mm)であり、Xは一次撚り線から四次撚り線までの各撚り段階の数(1〜4)である。
8.65X+22≧Y≧8.15X−3 ・・・(1)
4≧X≧1 ・・・(2)
集合撚り線構造10を構成する各段階の撚り線のピッチYを上記計算式の範囲内とすることにより、撚り段階を増す毎に総外径が増した場合において、好ましい撚りピッチYとしてコイル巻き線性のよい高周波コイル用電線20とすることができる。ピッチYが上記範囲の下限未満である場合は、線速が遅くなり、それによって生産効率が低下してコストを押上げる要因となることがある。一方、ピッチYが上記範囲の上限を超える場合は、撚り線としての形状を保持し難く、撚り乱れが生じやすく、且つそのことによって抵抗変化率のばらつきや交流抵抗の増加に繋がることがある。
(絶縁被覆層)
絶縁被覆層4は、図4及び図5に示すように、集合撚り線構造10の外周に設けられる。図5は、絶縁被覆層4を三層(4a,4b,4c)で構成した三層絶縁電線の例である。この絶縁被覆層4は、絶縁性押出し樹脂、絶縁性テープ、又はそれらの組み合わせにより構成されていることが好ましい。絶縁被覆層4は、単層であってもよいし、図5に示すような積層であってもよい。また、絶縁被覆層4は、テープ巻きと押出しを組み合わせて積層してもよい。
(高周波コイル用電線及びコイル)
こうして構成された高周波コイル用電線20は、モーター、インバータ、非接触給電用等のパワー半導体を使う高周波分野に絶縁電線を用いたコイル(リアクトル、インダクタ、チョークコイル、ノイズフィルター、IHヒータ、電源トランス等)として使用される。この高周波コイル用電線20は、抵抗変化率の上昇を抑制でき、安定した高周波特性を示すことができ、低コストで製造可能な細径の高周波コイル用電線となる。
以上のように、本発明に係る高周波コイル用電線20は、機器の高周波化にともない、受動部品であるトランス等のコイル部品の省エネや高効率化に寄与できる。特に、集合撚り線構造として一次撚り線、一次撚り線を更に二次撚りした二次撚り線、二次撚り線を更に三次撚りした三次撚り線等の高次の撚り線は総断面積が大きい電流容量の大きな電線であるが、こうした電線において、機器の高周波化に対応できる省エネ・高効率のコイル用電線として好ましい。特に本発明は、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)等の電動化技術を支えるパワーエレクトロニクス技術のキーデバイスとして、パワー半導体関連部品に好ましく応用できる。こうした機器のスイッチング周波数が高周波化に移行している背景により、これら機器に使用される受動部品であるトランスやインダクタ等のコイル用巻線材料として好ましく適用される。
具体的な応用としては、抵抗変化率の上昇を抑制できるという効果より、例えば、DC/DCコンバータ効率を向上させることができる。特に、DCコンバータにおいて、インダクタの巻線用電線として適用することにより、インダクタの発熱及びDC/DCコンバータの効率を向上させることができる。
以下、実施例と比較例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
「実施例1」
中心導体1として、直径0.9mmのタフピッチ銅を冷間伸線加工した直径0.10mmのタフピッチ銅線を準備した。次に、その中心導体1を熱処理して加工歪を除去した後、ポリウレタン皮膜を塗布・焼付して絶縁層2を形成し、直径0.120mmの絶縁素線3Aを得た。この絶縁素線3Aを18本集合させ、20mmピッチで一次撚りして直径約0.585mmの一次撚り線11を得た。続いて、この一次撚り線11を3本集合させ、30mmピッチで二次撚りして直径約1.01mmの二次撚り線12を得た。なお、ここでは最外周撚り線は二次撚り線12であり、絶縁素線3Aの合計は54本である。さらに、この二次撚り線12の外周に、厚さ0.1mmでPFAを溶融押出しして、外径約1.21mmの絶縁電線20を作製した。
[実施例2]
実施例1において、絶縁素線3Aを14本集合させ、20mmピッチで一次撚りして直径約0.516mmの一次撚り線11を得た。続いて、この一次撚り線11を4本集合させ、30mmピッチで二次撚りして直径約1.03mmの二次撚り線12を得た。なお、ここでは最外周撚り線は二次撚り線12であり、絶縁素線3Aの合計は56本である。それ以外は実施例1と同様にして、外径約1.23mmの絶縁電線20を作製した。
[実施例3]
実施例1において、絶縁素線3Aを11本集合させ、20mmピッチで一次撚りして直径約0.458mmの一次撚り線11を得た。続いて、この一次撚り線11を5本集合させ、30mmピッチで二次撚りして直径約1.03mmの二次撚り線12を得た。なお、ここでは最外周撚り線は二次撚り線12であり、絶縁素線3Aの合計は55本である。それ以外は実施例1と同様にして、外径約1.22mmの絶縁電線20を作製した。
[実施例4]
実施例1において、絶縁素線3Aを9本集合させ、20mmピッチで一次撚りして直径約0.414mmの一次撚り線11を得た。続いて、この一次撚り線11を6本集合させ、30mmピッチで二次撚りして直径約1.01mmの二次撚り線12を得た。なお、ここでは最外周撚り線は二次撚り線12であり、絶縁素線3Aの合計は54本である。それ以外は実施例1と同様にして、外径約1.21mmの絶縁電線20を作製した。
[実施例5]
中心導体1として、直径0.9mmのタフピッチ銅を冷間伸線加工した直径0.10mmのタフピッチ銅導体1aを準備し、そのタフピッチ銅導体1aの表面を前処理した後に厚さ1μmの鉄めっき層(磁性層1b)と厚さ0.05μmのニッケルめっき層とを順次形成した。次に、その中心導体1を熱処理して加工歪を除去した後、ポリウレタン皮膜を塗布・焼付して絶縁層2を形成し、直径0.120mmの絶縁素線3Bを得た。それ以外は実施例1と同様にして、外径約1.21mmの絶縁電線20を作製した。
[実施例6]
実施例5で得た絶縁素線3Bを14本集合させて一次撚り線11とした他は、実施例2と同様にして、外径約1.23mmの絶縁電線20を作製した。
[実施例7]
実施例5で得た絶縁素線3Bを11本集合させて一次撚り線11とした他は、実施例3と同様にして、外径約1.22mmの絶縁電線20を作製した。
[実施例8]
実施例5で得た絶縁素線3Bを9本集合させて一次撚り線11とした他は、実施例4と同様にして、外径約1.21mmの絶縁電線20を作製した。
[比較例1]
実施例1において、絶縁素線3Aを8本集合させ、20mmピッチで一次撚りして直径約0.390mmの一次撚り線11を得た。続いて、この一次撚り線11を7本集合させ、30mmピッチで二次撚りして直径約1.03mmの二次撚り線12を得た。なお、ここでは最外周撚り線は二次撚り線12であり、絶縁素線3Aの合計は56本である。それ以外は実施例1と同様にして、外径約1.23mmの絶縁電線20を作製した。
[比較例2]
実施例5において、絶縁素線3Bを8本集合させ、20mmピッチで一次撚りして直径約0.390mmの一次撚り線11を得た。続いて、この一次撚り線11を7本集合させ、30mmピッチで二次撚りして直径約1.03mmの二次撚り線12を得た。なお、ここでは最外周撚り線は二次撚り線12であり、絶縁素線3Bの合計は56本である。それ以外は実施例5と同様にして、外径約1.23mmの絶縁電線20を作製した。
[比較例3]
実施例1において、絶縁素線3Aを28本集合させ、20mmピッチで一次撚りして直径約0.730mmの一次撚り線11を得た。続いて、この一次撚り線11を2本集合させ、30mmピッチで二次撚りして直径約1.08mmの二次撚り線12を得た。なお、ここでは最外周撚り線は二次撚り線12であり、絶縁素線3Aの合計は56本である。それ以外は実施例1と同様にして、外径約1.23mmの絶縁電線20を作製した。
[測定と結果]
実施例1〜8及び比較例1,2の絶縁電線20を用いて、抵抗変化率を測定した。直流抵抗は、YOKOGAWA抵抗計により測定した。各絶縁電線20でヘリカルコイルを作製(巻数:6ターン、巻枠直径65mm)し、インピーダンスアナライザにより、100kHzから1000kHzの範囲で測定した。抵抗変化率は、各周波数での交流抵抗を直流抵抗で割って算出した。これらの結果を表1及び表2に示した。
表1及び表2の結果より、実施例1〜8のように、いずれの絶縁素線3A,3Bを用いた場合であっても作製した絶縁電線20の抵抗変化率は比較例1,2に比べて抑制されているのがわかった。その傾向は特に高周波(例えば、300kHz以上)になればなるほど顕著であり、高周波帯域でより効果的であることがわかった。具体的には、200kHz以上では、実施例1〜8と比較例1,2とは、概ね20%程度の差が生じており、最外周撚り線の数が3〜6本の範囲内のものが、比較例1,2の7本のものと比較して優れていることが確認された。このことから、周波数200kHz以上では交流抵抗の上昇は近接効果が支配的になることが分かる。さらには、最外周撚り線(二次撚り線12)を7本とした場合は、中心に位置する一次撚り線11の子撚り1ユニット分がそのままの位置に留まってしまい、その外周に位置する6ユニット分の子撚りに、電流の偏りが発生していることが考えられる。また、実施例1〜4と実施例5〜8とを比較すると、磁性層が設けられた中心導体1を適用した実施例5〜8は、実施例1〜4に比べて、周波数300kHz以上でより差が生じており、周波数の上昇に伴い、その差はより顕著に現れた。最も差が顕著であった1MHzでは、両者に70%以上の抵抗損失を抑制できる効果の差が得られ、磁性層が設けられたものの高い効果が確認できた。なお、比較例3では、断面を丸形状に整えることが困難であり、絶縁被覆層4を設けた後の外径変動が大きく、抵抗変化率の大きなばらつきがみられた。
1 中心導体
1a 銅導体
1b 磁性層
2 絶縁層
3 絶縁素線
3A 銅線を中心導体としたもの
3B 磁性層を設けた導線を中心導体としたもの
4 絶縁被覆層
4a 一層目の絶縁被覆
4b 二層目の絶縁被覆
4c 三層目の絶縁被覆
10 集合撚り線構造
11 一次撚り線
12 二次撚り線
13 三次撚り線
14 四次撚り線
20 高周波コイル用電線

Claims (7)

  1. 中心導体及び該中心導体の外周に設けられた絶縁層を有する絶縁素線を複数本撚り合わせて一次撚り線とし、前記一次撚り線をさらに撚って少なくとも二次撚り線とした集合撚り線構造からなる高周波コイル用電線であって、
    前記集合撚り線構造は、二次撚り線、三次撚り線及び四次撚り線から選ばれるいずれかが最外周撚り線となる構造であり、前記最外周撚り線の本数が3本以上6本以下の範囲内である、ことを特徴とする高周波コイル用電線。
  2. 前記集合撚り線構造を構成する各段階の撚り線のピッチは、下記計算式の範囲内であることが好ましい。下記式において、Yは撚りピッチ(mm)であり、Xは一次撚り線から四次撚り線までの各撚り段階の数(1〜4)である、請求項1に記載の高周波コイル用電線。
    8.65X+22≧Y≧8.15X−3 ・・・(1)
    4≧X≧1 ・・・(2)
  3. 前記中心導体が直径0.04mm以上0.12mm以下の範囲内であり、前記絶縁素線の数が19本以上5000本以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の高周波コイル用電線。
  4. 前記中心導体が、タフピッチ銅若しくは無酸素銅からなる銅線、又は前記銅線に磁性層が設けられた磁性線である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波コイル用電線。
  5. 前記絶縁層が、エナメル被覆層又はイミダゾール化合物層である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波コイル用電線。
  6. 前記集合撚り線構造の外周に絶縁被覆層が設けられ、前記絶縁被覆層が、絶縁性押出し樹脂、絶縁性テープ、又はそれらの組み合わせにより構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高周波コイル用電線。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の係る高周波コイル用電線を用いてなる、ことを特徴とするコイル。

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