JP2019203022A - 左室駆出率が保たれた心不全を治療するための方法及び組成物 - Google Patents

左室駆出率が保たれた心不全を治療するための方法及び組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)、拡張期心不全(DHF)又は拡張機能障害(DF)に罹患した人を治療するための医薬組成物を提供する。【解決手段】左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)、拡張期心不全(DHF)又は拡張機能障害(DF)に罹患した人を治療するための医薬組成物であって、心筋内の線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、心内膜細胞、及び心筋細胞上に存在するリラキシン受容体(RXFP1)に特異的に結合してより低い拡張末期圧において心臓の一回拍出量を増加させることができる化合物を治療有効量含む、医薬組成物。

Description

本発明は、心不全に罹患したヒトの対象を治療するための方法及び組成物に関する。
心不全は、一般に、心臓のどの機能が最も影響されているか、又は心臓のどちらの側が最も影響されているか、に基づいて分類される。「左心不全」は、肺からの酸素に富む血液を、左心房を通して左心室に移動させ、その後に体の残りの部分に移動させる、左心ポンピング作用の不全のことを表す。「右心不全」という用語は、静脈を通って心臓に戻ってくる血液を、右心房を通して右心室に送り込み、次に肺に戻して血液に酸素を補充する右心ポンピング作用の不全に対して使われる。心不全の症状は、急速に生じたか(急性心不全)又は時間をかけて徐々に生じたか(慢性心不全)によりさらに区別される。うっ血性心不全(CHF)は、心臓が身体の必要を満たすのに十分な血液を送り込むことができない状態一般を表す。心臓からの血流が遅くなると、静脈を通って心臓に戻る血液が滞り、組織にうっ血を引き起こす。その典型的な徴候は、脚又は足首のむくみ、疲労、呼吸困難、肺水腫、呼吸窮迫である。CHFは、冠動脈疾患、先天性及び原発性心疾患、心筋の感染(心筋症、心内膜炎及び/又は心筋炎)、心筋梗塞、高血圧、心臓弁膜症によって生じうる。CHFはまた、腎臓の機能に影響を及ぼす。CHFの治療に使用される薬物は、血管を拡張して抵抗を低下させるアンジオテンシン阻害剤及び血管拡張剤、左心室の機能を改善するためのβ遮断薬、心臓のポンピング作用を高めるジギタリス、及び過剰の塩と水を除くための利尿剤である。
本開示は、駆出率が正常な心不全又は単に拡張期心不全(DHF)とも呼ばれる、左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)に関する。より具体的には、心筋タンパク質の変化した化学的機械的特性を含むHFPEFサブグループに関する。拡張期とは、心臓が血液を身体、脳、肺に押し出すための収縮(systole)をしておらず、代わりに弛緩しており、下大静脈(IVC)及び上大静脈(SVC)を通って体から戻ってくる血液で満たされている、心周期における段階である。したがって、心不全のHFPEFサブグループは、心臓の左心室の拡張期性能の低下に関連する。心筋が硬化して弛緩能力を失った場合、左心室を収縮後に血液で満たすのは容易でなく、心拍出量が減少するか、あるいは本質的に正常な拡張末期容積(EDV)であるにも関わらず補うために上昇した心室拡張期圧が観察される。左室駆出率が保たれた心不全は、心筋細胞の肥大、間質性コラーゲン沈着の増加及び心筋内のカルシウム沈着によって組織学的に特徴づけられることが多く、これらは合わさって、低下した伸展性及びコンプライアンスにつながると考えられる。心筋タンパク質及び心筋細胞の化学的機械的特徴と、不全心臓の生物物理学的特性とは、未だ臨床的関連性を達成していない。
左室駆出率が保たれた心不全に対する利用可能な具体的治療法はない。慢性状態が患者によって許容される場合、治療は高血圧及び糖尿病などの悪化因子に対するものとしてもよい。利尿剤がしばしば投与される。カルシウムチャネル遮断薬及び/又はアンジオテンシンII受容体遮断薬の投与は、場合により、心室の硬化を減少させるのに有益であり得るが、死亡率に対する良好な効果はない。主な合併症は、肺水腫であり、利尿剤によるその治療はしばしば困難である。患者の硬くなった心臓及び血管が塩分及び水分排出後の降圧事象に対して非常に感受性であるためである。したがって、左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)の患者を治療するための手段及びツールはない。したがって、従来技術は問題を表している。
本発明は、心筋の線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、心内膜細胞、及び心筋細胞に存在するリラキシン受容体(RXFP1)に特異的に結合して、心臓のコンプライアンス及び一回拍出量を増加させ、左心室の拡張末期圧を低下させることが可能な治療有効量の化合物を含む、心筋の硬化を伴い、慢性的な、左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)に罹患した人を治療するための医薬組成物を提供する。提供される医薬組成物は、特に、心臓特異的なタイチンの不十分なリン酸化の影響、特に心臓特異的なタイチンN2Bの低リン酸化の影響、を処置するために、使用及び投与することができる。前記組成物は、皮下若しくは静脈内注射又は経口投与に適した医薬的に許容されるアジュバント、キャリア、希釈剤又は賦形剤と混合した、ヒトリラキシン分子又は薬学的に許容されるその誘導体若しくは前駆体を含んでもよい。
前記医薬組成物は、口腔粘膜又は胃腸管粘膜に送達するためのエマルジョン(水中油型又は油中水型)として製剤化してもよい。リラキシンは、ミセル、逆ミセル、リポソーム、キュボソーム及びそれらの混合物から選択される送達ビヒクル中に含まれてもよい。好ましい実施形態は、組成物が粘膜に吸着するか又は粘膜表面に保持されてリラキシンの全身送達を達成するために、粘膜付着性タンパク質が化学的又は物理的結合を介して前記送達ビヒクルと結びついている組成物に関する。
本開示の別の実施形態は、10pg/kg/日〜1000pg/kg/日の範囲の速度でヒトリラキシンを皮下に輸注(infusion)するための組成物、又は皮下輸注(infusion)で達成されるのと同等の血漿濃度を生じる経口投与用の組成物に関する。リラキシンは、好ましくは、30pg/kg/日〜100pg/kg/日の範囲の輸注(infusion)速度で投与される。
本開示はさらに、慢性拡張期心不全に罹患しており、心臓特異的なタイチンのリン酸化障害と診断された対象の治療のための医薬組成物を提供する。前記対象は、MDRDの式に従って見積もられたクレアチニンクリアランスが30〜75mL/分/1.73mの範囲である腎障害を有していてもよい。慢性拡張期心不全に罹患した前記対象は、さらに高血圧であってもよく、及び/又は糖尿病及び/又は酸化ストレス及び/又は炎症を患っていてもよい;これらはつまり、心臓特異的なタイチンのリン酸化障害に至る典型的な合併症及び慢性状態である。本開示の別の態様は、病理学的に減少した心臓流入血量を示す患者に、心筋におけるリラキシン受容体に特異的に結合し、心臓の拡張末期圧を低下させ、心臓の一回拍出量を増加させることのできる治療有効量の化合物を投与することによって心臓流入血量を増加させる方法に関する。
心筋タンパク質(特に、タイチン)の変化した化学的機械的特徴によって(より細かくは、タイチンの低リン酸化によって)引き起こされる、左室駆出率が保たれた慢性拡張期心不全(HFPEF)に罹患した人の治療のための医薬組成物であって、前記組成物は、心筋の線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、及び心筋細胞上に存在するリラキシン受容体(RXFP1)に特異的に結合することができ、それにより低い圧力で心臓の一回拍出量を増加させることができる治療有効量の化合物を含む。
本開示は、非経口投与に適した薬学的に許容されるアジュバント、キャリア、希釈剤又は賦形剤と混合された、ヒトリラキシンの受容体結合コア構造(最小活性構造)又は薬学的に許容されるその誘導体若しくは前駆体を、活性リラキシン薬剤又は成分として提供する。さらなる実施形態では、医薬組成物は、ヒトリラキシン−1、ヒトリラキシン−2、ヒトリラキシン−3及びそれらの類似体又は誘導体を含む群から選択される少なくとも1つを活性成分又は薬剤として含んでいてもよい。最も好ましい実施形態は、ヒトリラキシン−2と生物学的に等価である合成リラキシン分子を含む。合成ヒトリラキシン−2は、化学的に合成されてもよい。
述べたように、前記医薬組成物は、注射用であってもよく、好ましくは筋肉内注射、皮下注射、又は最も好ましくは静脈内注射用であってもよく、ヒトリラキシン−2の用量は、1pg/kg/日〜1000pg/kg/日の範囲であってもよい。リラキシンペプチド、好ましくはヒトリラキシン−2、の徐放性を得るためには、皮下注射が好ましい。静脈内点滴を介して静脈に直接送達する投与は、好ましくはリラキシン−2が5pg/kg/日から100pg/kg/日の範囲であってもよい。
インスリンの経口又は経鼻送達及び投与にも用いられる製剤に含ませてリラキシン剤を投与することもさらに考えられる。このようなガレヌス製剤は、機能的に活性な量の粘膜付着性タンパク質、前記リラキシン化合物、及び所望によって含まれてもよい送達のための追加の薬剤;並びにこれらの剤の送達ビヒクルを含んでいてもよい。前記組成物は、エマルジョン(水中油型又は油中水型)として、また、口腔又は消化管粘膜への送達のために製剤化されてもよい。粘膜付着性タンパク質は、免疫グロブリン、アルブミン、ムチンタンパク質及びトランスフェリンから選択されてもよい。組成物が粘膜に吸着するか又は粘膜表面上に保持されて薬剤の全身送達を達成するために、粘膜付着性タンパク質は化学的又は物理的結合を介して送達ビヒクルと結びついていてもよい。送達ビヒクルは、ミセル、逆ミセル、リポソーム、キュビソーム及びこれらの混合物から選択されてもよい。その種の標的化されたエマルジョン及び製剤は、例えば、EP1768647B1、US8,414,914に詳細に記載されている。リラキシンの経口投与のための例示的な製剤が記載されている。W02003/047494A2、US5,444,041及びWO02/094221A1は、エマルジョン/マイクロエマルジョン組成物に関連しており、WO96/37215A1は、油中水型ペプチドエマルジョンに関連しており、US2006/0210622A1は、表面改質粒子組成物に関連しており、WO03/030865A1、US5,206,219A及びUS2004/097410A1は、例えば、界面活性剤及び/又は脂質成分を含むペプチド組成物に関連しており、US2006/0182771A1は、自己乳化組成物に関連しており、そしてWO2008/145730A1、WO2008/145728A1及びMa Er−Liら、Acta Pharmacologica Sinica、October 2006、Vol.27(10):1382−1388は、マイクロエマルジョン又はエマルジョン前濃縮物に関連する。SMEDDS組成物は、シクロスポリン、インスリン及びリラキシンなどのポリペプチドの溶解性及び経口生体利用効率を改善することが知られている。しかし、SMEDDS及びSNEDDSにおけるヒトのインスリン又はリラキシンなどの親水性の水溶性ポリペプチドの溶解性及び生体利用効率が常に最適であるとは限らない。
前記医薬組成物は、好ましくは、左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)に罹患し、タイチンドメインのリン酸化に差次的変化を引き起こす少なくとも1つの症状を有すると診断された対象に投与される。リラキシンによって誘発されるタイチンドメインのリン酸化の変化は、心臓の拡張機能が回復できるように受動的な心筋硬さ(stiffness)をうまく調整する。
タイチンドメインのリン酸化に影響を与える症状は、糖尿病、高血圧、虚血、動脈硬化性血管疾患を含む非限定的疾患群のうちの少なくとも1つ、又は酸化ストレス及び/又は心臓への酸素及び栄養素の供給不足を引き起こす疾患群のいずれか1つ(例えば、喫煙)であってもよく、それらは不全心筋におけるタイチンドメインのリン酸化の変化をもたらす。不全心筋におけるタイチンのリン酸化の変化(タイチンN2Bアイソフォームの低リン酸化)は、例えば、タイチンN2Bを血清から単離、例えば、不全心筋から放出されたタイチンのエクソン49フラグメントを単離し、そのリン酸化を質量分析により測定することによって検出することができる。
ここに開示する医薬組成物は、糖尿病、アテローム性動脈硬化症及び/又は高血圧を含む群のうちの少なくとも1つを有し、心筋の変化した化学的機械的特徴により左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)を発症する危険性の高い患者に投与してもよい。最も好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、腎障害も有する、拡張期心不全又は左室駆出率が保たれた心不全に罹患している対象に投与してもよい。これは、例えば、対象が30〜75mL/分/1.73mの範囲のクレアチニンクリアランスを有する場合に当てはまる。拡張機能障害、拡張期心不全又は左室駆出率が保たれた心不全に罹患した対象がさらに高血圧である場合、ここに開示した有効成分は、記載にしたがって投与してよいが、好ましくは抗高血圧剤をさらに含む医薬組成物に含ませて投与してもよい。抗高血圧剤は、血管拡張薬、アドレナリン遮断薬、中枢作用性α−作動薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬及び利尿剤を含む抗高血圧剤の群から選択されてもよい。
別の態様は、病理学的に減少した心臓流入血量を示す患者に、患者がタイチンN2Bの非典型的な発現、例えば、タイチンアイソフォームのN2B及びN2Aの発現のシフト、又は心臓タンパク質タイチンN2Bのリン酸化障害若しくは低リン酸化、又はその両方、をさらに示す場合に、心筋内のリラキシン受容体に特異的に結合して心臓の一回拍出量を増加させることができる化合物を治療上有効量投与し、心臓流入血量を増加させる方法に関する。しかしながら、本発明は、タイチンの特定の誤ったリン酸化に限定されるものではなく、タイチンの翻訳後修飾一般に関するものである。なお、左室駆出率が保たれた心不全の治療におけるリラキシンの主要な生理学的効果は、リラキシンに関連する比較的非特異的な血管拡張効果のどれかというわけではなく、リラキシンによって誘導される心筋の化学的機械的特性の変化と、タイチンドメインの増加したリン酸化であり、これによって心臓コンプライアンス及び伸展性も増加する。したがって、本発明のこの態様に係る方法は、心筋の化学的機械的不全の結果である拡張機能障害、DHR又は左室駆出率が保たれた心不全に罹患している対象に、いずれかの請求項に記載の医薬組成物を投与する方法を含む。
本発明は、好ましい実施形態を例示する役割を果たす添付の図面と併せて読むと最もよく理解される。しかし、本発明は図面に開示された特定の実施形態に限定されるものではないことが理解される。
収縮機能障害(左)及び拡張機能障害(右)の場合の圧力−容積関係(ESPVR−収縮末期圧・容積関係、EDPVR−拡張末期圧・容積関係)及び一回拍出量(SV)を示す代表的な図である。 Paulus WJらの、European Heart Journal(2007)28(20):2539−2550「How to diagnose diastolic heart failure:a consensus statement by the Heart Failure and Echocardiography Associations of the European Society of Cardiology(拡張期心不全の診断方法:欧州心臓学会の心不全及び心エコー検査協会の合意文書)」による診断フローチャートである。 RXFP1受容体で安定的にトランスフェクトされたヒト胚腎臓細胞(HEK)−293Tを用いたユーロピウム標識ヒトリラキシン−2の生物学的同等性を示すcompletion結合実験のプロットである(Shabanpoor Fら、Biochem Biophys Res.Commun.(2012)420(2):253−6を参照のこと)。 RXFP1受容体で安定的にトランスフェクトされた細胞におけるcAMP活性(cAMPレポーター遺伝子アッセイ)と合成ヒトリラキシン−2との関係を示すプロットである(Yan Yら、Biochemistry、2008,47(26):6953−6968を参照のこと)。 拡張期心不全に罹患した患者及び対照における内因性静脈リラキシン−2の濃度を示す棒グラフである(対照に対してP<0.05、順位に関するマン・ホイットニーのU検定)。 拡張期心不全に罹患した患者及び対照における内因性リラキシン−2の冠動脈濃度勾配を示す棒グラフである(2要因分散分析で分析(要因:群、反復測定;P>0.05、有意差なし)。 心エコーマーカーE/E’によって決定された患者における拡張機能障害に対する内因性リラキシン−2の冠動脈濃度勾配を示すプロットであり、ここで、Eは組織ドップラーにより測定された早期僧帽弁血流速度を示し、E’は早期心筋弛緩速度を示す。 2つの独立した拡張期心不全動物モデル(SH及びZDFラット−SH:高血圧自然発症;ZDF:Zuckerの肥満型糖尿病(Zucker Diabetic Fatty)と適切な対照(Lean(痩せ型);Zucker lean)及び対照における左心室拡張末期圧LVEDP(mmHg)と酸化ストレスの血中マーカーである血漿ニトロチロシン(nmol/L)との相関及び線形回帰を示すプロットである。 図7の動物モデルにおいて合成リラキシン−2(5nmol/L)の30分間投与による左心室拡張末期圧の低下を示す棒グラフである(Plac:プラセボ;Rlx:リラキシン−2;SHR:高血圧自然発症ラット;ZDF:Zuckerの肥満型糖尿病ラット;Lean:Zucker lean(痩せ型)ラット;Control:SHRに対する対照ラット)。 図7の動物モデルにおける合成リラキシン−2(5nmol/L)30分間によるN2BからN2BAアイソフォームへのタイチンリン酸化におけるシフト(リン酸化されたタイチンP−N2BA/P−N2Bアイソフォーム比として表される)を示す棒グラフである(Plac:プラセボ;Rlx:リラキシン−2;SHR:高血圧自然発症ラット;ZDF:Zuckerの肥満型糖尿病ラット;Lean:Zucker lean(痩せ型)ラット;Control:SHRに対する対照ラット)。
本開示は、左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)及び拡張期心不全(DHF)に罹患した患者の治療に関する。より正確には、これらの患者の関連するサブグループは、コネクチンとしても知られる心筋タンパク質タイチンのリン酸化障害を患っており、このリン酸化障害は左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)につながる。タイチンは、大きな構造タンパク質−知られている中で最も大きいものの1つ−であり、ヒトにおいてはTTN遺伝子によってコードされている(Labeit Sら、A regular pattern of two types of 100−residue motif in the sequence of titin(タイチン配列における2つのタイプの100残基モチーフの規則的なパターン)、Nature(1990)345:273−6。doi:10.1038/345273a0.PMID2129545)。タイチンは、約27,000〜33,000個のアミノ酸長(スプライスアイソフォームに依存する)を有し、概ね200〜250個の個別にフォールディングしたタンパク質ドメインを含み、これらのドメインは、この巨大タンパク質が伸長したときにはアンフォールディングし、張力が取り除かれたときには再びフォールディングする。異なるタイプの筋肉(例えば、心筋又は骨格筋)の間でのタイチン配列のバリエーションは、これらの筋肉の機械的特性の差異と関係づけられた。このことは、本発明を、例えばVitovec Jら、Kardiol Rev 2013;15(2):113−117に記載されているような高血圧治療及び血管拡張を目的としたリラキシン又はセレラキシン(RLX030)の使用から区別するものである。これらの治療的適用は、本明細書中の本発明の背景技術の項で記載したような様々なタイプの急性心不全の治療のために設計されてきた。
心臓の横紋筋に関しては、タイチンは分子スプリングのように働くと考えられ、これは横紋筋組織の収縮において重要であるばかりでなく、筋肉の受動的弾性の原因ともなると考えられる。心臓特異的なタイチンのアイソフォームが存在する。より正確には、筋繊維の硬さ(stiffness)は、心臓のタイチンのアイソフォームであるN2B及びN2BAの発現レベルに依存し、弾性を有するタイチンドメインであるN2−Bのユニーク配列(N2−Bus)及びPEVKのリン酸化による。cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)又はcGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)によるN2−Busのリン酸化は、タイチンの硬さ(stiffness)を減少させるが、PKCによるPEVKドメインのリン酸化はタイチンの硬さを増加させる。したがって、N2−Busの低リン酸化及びPEVKドメインの高リン酸化は、相補的に作用してヒトの不全心臓における受動的緊張を高める(Mu(ウムラウト)ller EA らのCardiovasc Res(2013)、doi:10.1093/cvr/cvt144;2013年6月13日にオンラインで刊行)。
上記は、心筋細胞(筋細胞)が筋原繊維の束を含有し、さらに筋原繊維はミオシン及びアクチンを含む筋フィラメントからなるという一般的な技術的文脈に属する。筋原線維は、筋細胞の基本的な収縮単位を表すサルコメアと呼ばれる微小解剖学的単位から構成される。サルコメアは、筋フィラメント構造における2つのZ線の間の領域として定義される。Z線とZ線の間の距離(すなわち、サルコメアの長さ)はヒトの心臓においては約1.6pm〜2.2pmの範囲にあるが、筋細胞は直径が約25pm、長さが約100pmである。アクチンとミオシンとの間の化学的及び物理的相互作用により、サルコメアの長さが短くなり、筋細胞を収縮させる。したがって、一方では、収縮する摺動フィラメントが筋肉収縮を生じ、他方では、受動的な力の発生及びストレスの伝達のためにタイチンフィラメントが必要とされる。しかし、タイチンの硬さ(stiffness)は、心臓のサルコメアにおける2つの主要なタイチンアイソフォームであるN2BA(柔軟)及びN2B(より硬い)の発現比のシフトによって、心臓の発育及び疾患の過程で変化する。より硬いN2Bタイチンアイソフォームは、とりわけ、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ経路を活性化する甲状腺ホルモンによって引き起こされる。逆に、低甲状腺ホルモン(T3)は、柔軟なN2BA−タイチンを促進する。さらに、心臓特異的な1バンドのタイチンセグメントであるN2−Bドメインのプロテインキナーゼ(PK)A媒介性又はPKG媒介性のリン酸化により、タイチンの硬さ(stiffness)を急激に低下させることができる。したがって、β−アドレナリン作動性アゴニスト、一酸化窒素、又はナトリウム利尿ペプチドは、タイチン分子スプリングの硬さ(stiffness)を減少させる。したがって、ヒトの心臓の受動的硬さ(stiffness)の上昇は、心筋の機械的不全並びに左室駆出率が保たれた心不全及び拡張期心不全などの症候群に伴って起こり得るタイチンN2Bのリン酸化障害によって引き起こされる可能性がある(総説に関しては、Kru(ウムラウト)gerら、J Mol Cell Cardiol.(2009)46(4):490−8;Kellermayerら、J Muscle Res & Cell Motility(2002)23(5−6):499−511を参照のこと)。
本発明者らは、リラキシンの投与によって、タイチン−N2Busドメインのリン酸化障害が相殺され得ることを見出した。いかなる理論にも縛られるものではないが、リラキシンは心筋細胞(線維芽細胞、筋線維芽細胞、心筋細胞、心内膜細胞、内皮細胞)におけるNO−cGMPプロテインキナーゼG及び/又はcAMPプロテインキナーゼA経路を活性化するRLXFP1受容体に結合すると考えられる。増加したリン酸化活性は、次に、横紋筋の受動的コンプライアンスを増加させ、そして左心室拡張末期圧の低下をもたらす。リラキシンタンパク質スーパーファミリーは、インスリン、インスリン様成長因子I及びII、並びにインスリン様因子3、4、5及び6を含む。3つの異なる形態のリラキシンがヒトにおいて同定されており、そのうちリラキシン−2(H2)が主要な貯蔵形態であり、循環系に分泌されることが知られている唯一の形態である。リラキシンは、A鎖及びB鎖がジスルフィド架橋を介して連結された約6kDaのヘテロ二量体ペプチドホルモンである。ヒトリラキシン−1(H1)の生物学的役割は今日まで明らかではなく、リラキシン−3(H3)は脳においてのみ見られ、神経ペプチドとして作用する(Bathgateら、Physiological Reviews 2013)。
リラキシン受容体を同定する努力は、リラキシン−2に対する対応受容体(cognate receptor)としてのGタンパク質共役受容体LGR−7(現在RXFP1として分類されている)及び生理学的リラキシン−3受容体としてのGPCR−135(現在RXFP3として分類されている)の発見につながった。ヒトリラキシン−2は、また、ヒトグルココルチコイド受容体(GR)にも結合して活性化する(Dschietzig Tら、FASEB J 2004;18:1536e8)。ヒトリラキシン−1及びリラキシン−2は、さらに、受容体LGR8(現在RXFP2として分類されている)及びGPCR142(現在RXFP4として分類されている)に結合する。しかしながら、RXFP1は、ヒトリラキシン(H1、H2及びH3)のそれぞれと高親和性で結合する唯一の広く発現した受容体である。したがって、全てのヒトリラキシンは、RXFP1受容体を発現する細胞においてcAMP活性及び他のRXFP1関連経路を刺激する能力に関して類似の生物学的活性を示すと推定することができる(総説については、Bathgate RAら、Physiol.Rev 2013を参照のこと)。
ヒトにおけるリラキシンの内在的生理学的機能は、依然として不明である。リラキシンは元々、その妊娠ホルモンとしての活性によって同定された(Hisaw FLら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.1926;23:661−663を参照のこと)。それ以来、リラキシンは、腎臓、盲腸間膜、肺及び末梢血管系における血管の拡張(血管拡張)を引き起こす内分泌及びパラクリン因子として作用すること、そしてこれらの組織における血流及び灌流を増加させることが示されている(Dschietzig & Stangl、CMLS 2002;59:1−13(総説);Dschietzig Tら、Circ Res.2003;92:32−40)。これとは関係しない多くの活性の原因ともされており、そのような活性は、例えば、血管緊張、血漿浸透圧、血管新生、コラーゲン代謝回転、腎臓及び心筋機能、及び中枢神経プロセスの調節因子などである(Dschietzig Tら、Cell.Mol.Life Sci.2003;60:688−700;Dschietzig Tら、Pharmacol Ther 2006;112:38e56、Nistri Sら、Cardiovasc Hematol Agents Med Chem 2007;5:101e8を参照のこと)。異常なリラキシン活性及び/又は発現は、高血圧、飲酒、記憶関連機能、及び脳及び脳室周囲器官の受容体に結合することによる中毒性行為、並びに心血管疾患、腎臓疾患、線維性障害(心筋線維化及び気道リモデリングに関連する線維症を含む)、神経障害、免疫疾患、子宮内膜障害及び生殖障害などの多様な障害及び疾患に関与している。
したがって、リラキシン並びにリラキシンアゴニスト及びアンタゴニストを使用する多数の臨床応用が提案されてきており、特に、血管収縮(EP07008840)に関連する疾患の治療のため、インスリン補因子又は代替(EP1909809)として、動脈コンプライアンスを増加させるため(EP05731443)、腫瘍抑制のため(EP07719531)、幹細胞の分化におけるアジュバント(EP04806868)として、受精率を増加させるため(EP03005488)又は胎児の成長の管理のため(EP5780049、EP98932799)、アポトーシスを調節するため、神経変性障害を治療するため、血管新生を促進するため、また、さらには髪の成長を促進するため及び皮膚の老化を抑制するため、提案されている(EP0793505)。
しかしながら、硬くなった心筋の治療は、血管緊張又は他の腎臓及び心筋機能の調節とは明らかに独立した医学的効能である。本発明の薬学的組成物は、心筋(すなわち、異なる細胞型から構成される心筋全体)中の線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、心内膜細胞及び心筋細胞の上に存在するRXFP1受容体に結合するリラキシン分子、より好ましくはヒトリラキシン−2、を含む。以下の実験は、タイチンN2Bリン酸化障害及び硬くなった心筋を患う患者が、それによって、より低圧で心臓の一回拍出量を増加させることができることを示している。今日まで、心臓拡張という望ましくない状況無しに、心筋の伸展性及びコンプライアンスの増加につながる、拡張期の硬くなった心筋の治療法は存在していない。
より細かくいえば、拡張期心不全(HFPEF)における心筋は、収縮期心不全(HFREF、低下した駆出率を伴う心不全)における心筋と区別されなければならない。HFREFの拡張した心臓は、拡張期圧の量に対し相対的に増加した容積を有している。これとは対照的に、拡張期心不全(HFPEF)の心臓は、既に、正常あるいは僅かに減少した容積においてすら、増加した充満圧を示す(収縮期心不全[左]及び拡張期心不全[右]を示す図1のダイアグラムも参照のこと)。臨床的に、心不全の異なる疾患単位であるHFPEF及びHFREFは、類似の症状(浮腫、呼吸困難、うっ血、疲労)を呈しうる。収縮期心不全(HFREF)に罹患している患者の中には、拡張機能障害も検出される者もいるという事実は、基本的な相違を弱めるものではない:収縮期心不全(HFREF)では、拡張機能障害が起こることがあり、これは先んずる収縮期障害により引き起こされ、また収縮期障害に関連するものである。拡張期心不全(HFPEF)では、一般に硬くなった血管床と組み合わさった拡張機能障害が飛び抜けて多い。これらの病態生理学的考察は、臨床的及び治療的状況に対応する:現代医学は、収縮期の心不全の死亡率を低下させる実に様々な薬物(アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、β遮断薬、アルドステロンアンタゴニスト、イバブラジン)を利用可能であるが、左室駆出率が保たれた心不全に対しては、全く引けを取らず成長さえしている疫学的関連性にもかかわらず、そのような薬物は1つも存在しない(Yancyら、JACC 2006;Aurigemma GPら、NEJM(2004)351:1097−1105)。HFREFに有益な多くの薬剤は、拡張期心不全の大規模な臨床試験で既に失敗している:アンジオテンシン変換酵素阻害剤及びアンジオテンシン受容体遮断薬は、PEP−CHF試験(ペリンドプリルを使用)、CHARM−Preserved試験(カンデサルタン)及びI−PRESERVE試験(イルベサルタン)において不合格となっており、そしてβ遮断薬はELANDD試験(ネビボロール)で不合格となっている。アルドステロンアンタゴニストを用いた試験(エプレレノンを試験するRAAM−PEF、スピロノラクトンを評価するALDO−DHF)は、最近の第II相試験において入り交じった結果をもたらし、死亡率に関する何らかの利点を示すにはほど遠いものである。
左室駆出率が保たれた心不全(HFPEF)はまれな疾患ではない。心不全の臨床徴候を示す全患者の半分までが拡張期心不全に苦しみ、この特定の疾患単位は、駆出率が正常である(収縮機能が保持されている)が、左心室充満圧が増加しており且つ心不全の臨床徴候有することを特徴とする(Yancy CWら、J Am Coll Cardiol.(2006)47(1):76−84)。心不全のこの疾患単位における死亡率は、収縮期心不全における死亡率に匹敵し(Owanら、NEJM 2006,355:251−259)、このためリラキシン組成物を用いる治療処置は罹患率及び死亡率に良好な影響を与えるであろう。注目すべきことに、高齢患者(>70歳)及び高血圧又は糖尿病の患者は、タイチンのリン酸化障害及び硬くなった拡張期の心臓を患っている可能性があり、リラキシンの投与を含む治療処置の恩恵を受けるであろう。したがって、リラキシン治療の必要性は、私たちの社会において予想される人口の変化に伴って上昇している(Smith GLら、J Am Coll Cardiol(2003)41:1510−8)。
ここに開示される組成物は、好ましくは生理学的に活性な量のヒトリラキシン分子、最も好ましくは生理学的に活性な量のヒトのリラキシン−2(H2)又はRXFP1受容体に結合するヒトリラキシンの活性コアを有する融合タンパク質を含む。US4,758,516及びUS4,871,670(Hudsonら)は、ヒトリラキシンH1及びH2の遺伝子配列及びタンパク質配列を開示している。リラキシンを合成する方法は、US4,835,251(Burnierら)、WO2010/140060(Barlos)及びWO2013/17679(Dschietzig Tら)に記載されている。合成リラキシンH2及びその類似体を用いたバイオアッセイは、生物学的活性を有するリラキシンコア構造を明らかにした(Dschietzigら、Pharmacol Ther.2006;112:38−56)。したがって、好ましい実施形態は、RXFP1受容体に結合するリラキシンコアを有する化合物を活性成分として含む医薬組成物に関する。
組換えH2は、急性心血管治療において、そして神経変性疾患を治療するために既に試験されている(US5,166,191(Croninら)及びDschietzig Tら、Journal of Cardiac Failure(2009)15:182−190;Teerlinkら、Lancet 2012、pii:SO140−6736(12)61855−8;doi:10.1016/S0140−6736(12)61855−8を参照のこと)。リラキシン−2の心臓血管活性は、動物モデル(Perna AMら(2005)、FASE J、19:1525−1527;Bani、D.ら、Am.J.Pathol.(1998)152:1367−1376;Zhang J.ら、Peptides(2005)26:1632−1639)でさらに評価された。これらの研究は、心筋症、糖尿病性心筋症、心筋梗塞又はイソプレナリン誘発心臓毒性などの心機能障害を検討しており、これらに対しては、確立された治療、例えばアンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿剤、血管拡張剤、及びβ遮断薬の投与、が利用可能である。硬化した拡張期の心筋の治療は、これらの治療には属しない。また、左室駆出率が保たれた心不全の治療に関して成功した臨床データは存在せず、心臓線維症、弁膜機能障害(心臓弁の異常な肥厚)、及び/又は線維性心筋は付随し得るが、ただし関係は無い医学的徴候である。後者は、正常にではなく過度にコラーゲンを分泌し、心筋の柔軟性及び伸展性の喪失をもたらす、過剰に活性化された線維芽細胞及び筋線維芽細胞によって引き起こされる。しかし、構造的支持の低下は、セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン)受容体に結合する薬物についても観察されるように、「拡張」又は「リモデリング」された心臓につながる可能性がある。リラキシン−2の投与は過剰なコラーゲンの分泌及び蓄積を減少させるが、線維芽細胞及び筋線維芽細胞上のRXFP1受容体の活性化は健康な組織の基底コラーゲン含量に影響しないので、ヒトリラキシン−2などのRXFP1アゴニストの投与は心臓拡張をもたらさず、ヒトにおける治療的使用に対して安全である。
ヒトリラキシン−2はまた、糸球体濾過速度及び腎血流を増加させるため、及びエンドセリンB型受容体媒介性血管拡張及びエンドセリン−1クリアランスを増大させるための、末梢血管及び腎臓血管の拡張剤として試験されているが、ヒトリラキシン−2はまた心房性ナトリウム利尿ペプチドの放出も刺激する。他の研究者らは、ブタリラキシンの投与は、無傷ラットにおいて良好な血行力学的変化を誘発し、動脈圧の有意な低下なしに後負荷を減少させ、心係数を上昇させることを示した。さらに、リラキシンは、強皮症患者及び慢性収縮期心不全を有する患者のための治療上の選択肢として、ヒト臨床試験において試験されている(Seiboldら、Annals of Internal Medicine 2000,132:871−879;Dschietzigら、J of Cardiac Failure 2009,15:182−190)。リラキシンの血管拡張効果が急性非代償性心不全(ADHF)及び慢性収縮期心不全(CHF)を有する患者の研究においてさらに調べられている。これらは、他の治療法が利用可能な別の医学的適応症であり、酸化ストレス又は老化後の心筋におけるタンパク質(タイチン)の変化した化学的機械的特徴のために、慢性的なHFPEFという医学的サブグループには関連しない。
本開示は、保持された左室駆出率を有し、リラキシンの血管拡張活性を必要としない、心不全(HFPEF)に罹患した患者を治療するためのリラキシン−2の使用に関する。これにより、本発明は、リラキシンの血管拡張効果に基づく開示(WO2013/017679)と区別される。後者の活性は、例えば、大血管(大動脈)及び小動脈、細動脈、静脈の中膜層に、並びにリンパ管、膀胱、子宮(子宮平滑筋と呼ばれる)、男性及び女性の生殖管、胃腸管、気道、及び腎臓の糸球体の周囲などに存在する内皮細胞及び血管平滑筋の細胞(これらの特化した平滑筋様細胞はメサンギウム細胞と呼ばれる)に対する血管活性に由来する。
平滑筋細胞は異なる器官において基本的に同じ構造及び機能を有するが、心筋は一種の横紋筋であり、骨格筋や他の平滑筋とは異なる。したがって、本開示は、心筋内の線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、心内膜細胞、及び心筋細胞上に存在するリラキシン受容体(RXFP1)によって媒介されるヒトリラキシン−2の活性に関する。このような活性は、これまで示唆も記述もされていない。このことと合致するように、本開示におけるヒトリラキシン−2の治療標的であるタイチンN2Bアイソフォームは、絶対的に心臓特異的であり、他のいかなるタイプの筋肉にも見られない(総説については、Aronson and Krum、Pharmacol Therap 2012を参照のこと)。
さらに、Chagas心臓疾患は、収縮機能が損なわれない拡張期心不全のモデルを表すと言われている(Marin−Netoら、Evidence−Based Cardiology、第3版、Yusuf S、Cairns J、Camm Jら(編集者)、2010、823頁以下)。したがって、心筋の伸展性を保持し、拡張した心臓の形成に対抗するために、本明細書に記載されるリラキシンベースの組成物をChagas心筋炎、例えば、Trypanosoma cruziに対して血清反応陽性である患者、の治療に使用することが考えられる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、Trypanosoma寄生虫はリン酸化障害を引き起こし、そしてタイチンアイソフォームの構造特性を妨害すると考えられる。
拡張期心不全の診断(2013 ICD−10−CM 150.3+4)
患者が心不全の徴候及び症状を有するが、測定された左心室駆出率が正常に近いか又は60%超の場合、その患者は拡張機能障害(HFPEF)を有すると主に診断される。別の診断ツールは、正常な駆出率と組み合わせたBNPレベルの上昇である。心エコー検査法を用いて拡張機能障害を診断してもよいが、どの心エコーパラメーターも単独では、それぞれの診断を確認することはできない。僧帽弁流入速度パターン、肺静脈流パターン、E:Aの逆転、組織ドップラー測定(すなわち、E/E’比)、及びM−モードエコー測定(すなわち、左心房サイズの)を含む複数の心エコーパラメーターが、感度が高く特異的であるとして提案されている。複数の心エコーパラメーターを組み合わせるアルゴリズムがさらに開発されている。
拡張機能障害には4つの基本的な心エコーパターンがあり、それらはI〜IVに等級分けされる:最も軽度の形態は「弛緩異常パターン」又はグレードIの拡張機能障害と呼ばれる。僧帽弁流入ドップラー心エコー図では、正常なE/A比の逆転がある。このパターンは、患者によって通常は年齢と共に発現する可能性があり、多くのグレード1の患者は心不全の臨床的徴候又は症状を有しない。グレードIIの拡張機能障害は、「偽正常充満動態」と呼ばれる。これは中等度の拡張機能障害と考えられ、左心房充満圧の上昇に関連する。これらの患者は、より一般的には心不全の症状を有し、多くは左心臓の高い圧力のために左心房の拡大を有する。グレードIII及びIVの拡張機能障害は「拘束型充満動態」と呼ばれる。これらはいずれも重度の拡張機能障害の形態であり、患者は進行した心不全の症状を呈する傾向がある。クラスIIIの拡張機能障害患者は、バルサルバ手技を行うときに、心エコー図において患者の有する拡張期異常の逆転を示す。これは、「可逆的拘束型拡張機能障害」と呼ばれる。クラスIVの拡張機能障害患者は、彼らの心エコー図の異常の可逆性を示さないので、「固定拘束型拡張機能障害」に罹患していると言われる。クラスIII又はIVの拡張機能障害のいずれかの存在は、著しく不良な予後と関連する。これらの患者は、左心房の拡大を有することとなる。収縮期の心臓性能の、具現化された(imaged)容積測定的定義は、一般に駆出率として受け入れられている。収縮期における心臓の容積測定的定義は、最初にAdolph Fickによって心拍出量として記載された。Fickを心臓への拍入血量及びインジェクション率へと容易にかつ安価に反転でき、拡張機能障害を数学的に記述できる。E/A比の減少及びE/E’比の増加と対をなしたインジェクション率の減少は、拡張期心不全の数学的定義を支持する上でより強力な論拠であるように思われる。任意の収縮機能障害及び重症度に関わらず、心筋のコンプライアンス及び伸展性の低下が、関係するタイチンアイソフォームのリン酸化障害によって引き起こされる場合、拡張機能障害はリラキシンベースの組成物を用いて有益に治療することができる。
タイチンの変化したリン酸化パターン(タイチンN2Bアイソフォーム)の診断
タイチンのエクソン49アイソフォーム(Genbank AJ277892−Freiburg Aら、Circulation Research、86、1114−1121)は、損傷した心臓の場合には、例えば、循環血液中に放出される。他の骨格筋又は平滑筋ではこのようなアイソフォームは生じないので、タイチンのエクソン49のアミノ酸配列は心臓特異的である。心臓特異的なタイチンのエクソン49配列は、928個のアミノ酸(エクソン49)を含み、血清中で検出され、そこから単離され得る。血清タイチンN2Bタンパク質の検出限界は、約10pg/mLであり、血清からのタイチンN2Bの免疫学的精製のための捕捉抗体として使用できる、利用可能なモノクローナル抗体が存在する(DE 10 2012 017 566.3−Labeit Dら)。次いで、精製されたタイチンN2Bを、電気泳動(Borbely Aら、Circ.Res 2009,104(6):780−6)又は好ましくは質量分析法(Ko(ウムラウト)tter Sら、Cardiovasc Res 2013、doi:10.1093/cvr/cvt/44)を用いてそのリン酸化を調べてもよい。
タイチンリン酸化障害に対する他の間接的なマーカーは、血漿又は血清のニトロチロシン及びインターロイキン−6(両方とも酸化ストレスに対するマーカー)のレベルの上昇であってもよい。拡張期心不全の患者は、コントロールの対象と比較して、腫瘍壊死因子α並びにインターロイキン6及び8の血漿レベルも有意に上昇している。ニトロソ化/酸化ストレスの指標であるニトロチロシンの発現は、特に、心筋プロテインキナーゼG活性(PKG)及び下流の心筋細胞におけるタイチンリン酸化活性に相関する。心筋プロテインキナーゼG活性の修正が特定のHFPEF治療の標的となり得ることが既に推測されていたが、この効果に指向した医薬組成物は提案されていない。この文脈において、ヒトリラキシン−2は、一酸化窒素を増加させることによってcGMP−PKG経路を直接的に刺激する一方で、その抗酸化作用及び抗炎症作用により一酸化窒素の生体利用効率及び可溶性グアニル酸シクラーゼ(すなわち、一酸化窒素による刺激でcGMPを産生する酵素)の機能的完全性を間接的に保護するので、独特である(Dschietzig Tら、Cardiovasc Res 2012)。
実施例1−合成ヒトリラキシン−2及び生物学的同等性(従来技術)
Merrifield法(Merrifield RB、固相合成(ノーベル賞受賞講演)Angew.Chem Int.Ed.1985;24:799−810)の改変を用いて、WO2013/17679(Dschietzig Tら)に開示されているようにヒトリラキシン−2を調製した。本質的に、ヒトリラキシン−2を調製するためのプロセスには、以下のアミノ酸配列の固相合成が含まれていた:
配列番号:1−A鎖
pGlu−Leu−Tyr−Ser−Ala−Leu−Ala−Asn−Lys−Cys−Cys−His−Val−Gly−Cys−Thr−Lys−Arg−Ser−Leu−Ala−Arg−Phe−Cys
配列番号:2−B鎖:
Asp−Ser−Trp−Met−Glu−Glu−Val−Ile−Lys−Leu−Cys−Gly−Arg−Glu−Leu−Val−Arg−Ala−Gln−lle−Ala−Ile−Cys−Gly−Met−Ser−Thr−Trp−Ser
A鎖の内部鎖間(Cys−10とCys−15)及びA鎖とB鎖との組み合わせ(A鎖のCys−11とB鎖のCys−11、及びA鎖のCys−24とB鎖のCys−23)の結合に関して、A鎖及びB鎖は、トリチル基で保護されたシステイン(L−Cys(Trt)−OH)を用いて最初に合成された。個々のA鎖及びB鎖は、固相合成の後、クロマトグラフィーにより精製し、pH7.9〜8.4の炭酸水素アンモニウム緩衝液中で個々のA鎖及びB鎖のフォールディング及び組み合わせを同時に行い、その後形成されたリラキシン−2の精製を行った。
調製されたペプチドホルモンは、ヒトリラキシン−2及び組換えヒトリラキシン−2と構造的に同一で生物学的に同等であった。実験は、基礎的な受容体薬理学の確立された細胞株である、RXFP1受容体を過剰発現するHEK293T細胞、及び内在性RXFP1発現を有するヒトマクロファージ細胞株であるTHP−1細胞で行った。ポリ−L−リジンでプレコートされた白い壁と透明な底部を有する96穴IsoPlate(商標)のマイクロプレート(PerkinElmer)に播種したそれぞれの細胞を用いて、結合特性を測定した。比較結合は、ユーロピウムで標識されたヒトリラキシン−2をトレーサーとして、そして漸増濃度のヒト合成リラキシン−2(2つの異なるロット)を用いて測定した。非特異的結合は、過剰(500nM)の非標識ヒトリラキシン−2の存在下で測定した。各濃度点を三連で測定した。少なくとも3つの独立したアッセイでペプチドを試験して活性を確認した。曲線は、GraphPad Prism 4.0(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)のワンサイト結合モデルを用いて適合させた。ペプチド活性の尺度としての阻害定数(KI)を、Cheng−Prusoff式を用いてIC50値から決定した。
合成ヒトリラキシン−2(shRlx)の有するRXFP1関連シグナル伝達を活性化する能力を決定するために、RXFP1を安定的に発現するHEK−293T細胞及びpCRE−β−ガラクトシダーゼレポータープラスミドをさらに使用した(Halls MLら、Ann NY Acad Sci.2009;1160:108−11)。RXFP1受容体の刺激は、アデニル酸シクラーゼの活性化をもたらし、したがってcAMPの増加をもたらす。2つの異なるロットの合成ヒトリラキシン−2及び記された他の供給源からのリラキシンの濃度を高めながら、細胞を6時間インキュベートした。各濃度点は三連で行い、ペプチドは少なくとも三つの独立した実験で試験した。GraphPad Prism 4.0(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)を用いてデータを分析し、非線形回帰シグモイド用量応答(可変勾配)モデルを用いて曲線をプロットし、pEC50値を算出した。
合成ヒトリラキシン−2ペプチドは、組換えヒトリラキシン−2と同様に、ヒトリラキシン受容体RXFP1(リラキシンファミリーペプチド受容体1)に結合した;表1と図3Aを参照のこと。ヒトリラキシン−2について開発されたcAMPアッセイによって示されるように、シグナル伝達もまた同様であった;図3Bを参照のこと。ヒトTHP−1細胞では、合成及び組換えのヒトリラキシン−2は同等の生物活性を示した;詳細は下記表1を参照のこと。
さらに、心筋肥大の確立された細胞モデル(Dschietzig Tら、Pharmacol.Ther.2006;112:38−56)において、合成ヒトリラキシン−2は、組換えヒトリラキシン−2と同じくらい強力であることが判明した。本発明者らのモデルでは、合成ヒトリラキシン−2は、心臓の線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化及びこれらの細胞による成長因子の分泌を阻害した。合成ヒトリラキシン−2は、優れた安定性を有していた。B鎖のN末端アスパラギン酸を含まない生物学的に完全に活性な副産物が、37℃で80日後に観察された。
実施例2−安全性及び用量応答(最初の医療適応症−従来技術)
ヒトリラキシンは、生理学的にアップレギュレートされ、B型ナトリウム利尿ペプチドのようにヒト心不全において代償的役割を果たす。安定した心不全患者のヒトリラキシン(組換え産生ヒトリラキシン−2(rhRLX))に対する安全性及び用量応答を測定するために、16人の患者を3つの連続した用量コホートで静脈内投与したヒトリラキシン−2で処置し、24時間輸注(infusion)の間、及び輸注(infusion)後の期間、血行力学的にモニターした。
グループA(10pg、30pg及び100pgのヒトリラキシン−2/kg/日に相当する用量でそれぞれ8時間の処置)で示された安全性は、B群(240pg/kg/日、480pg/kg/日及び960pg/kg/日)への増量を可能にし、最大の安全用量960pg/kg/日をC群の24時間投与に選択した。
ヒトリラキシン−2は、関連する副作用を示さず、全身の血管拡張に合致する血行力学的効果、すなわち心指数の上昇傾向及び肺楔状圧の減少傾向を、低血圧を引き起こすことなく生み出した。したがって、ヒトリラキシン−2のこの示された血行力学的効果は、ヒトの心不全、特にうっ血性心不全、において静脈内投与されたヒトリラキシン−2の最初の治療的使用を表している(Dschietzigら、FASEB Journal 2001,15:2187−2195;ドイツ連邦医薬品・医療機器庁(BfArM)承認試験「A Pilot Safety and Dose−Finding Trial of Intravenous Recombinant Human Relaxin(rhRlx)in Compensated Congestive Heart Failure(代償性うっ血性心不全における静脈内投与の組換えヒトリラキシン(rhRlx)の安全性に関するパイロット試験及び用量設定試験)」、欧州連合臨床試験データベース(EudractCT)2005−001674−27、プロトコル番号RLX−CHF.001)。ヒトリラキシン−2の静脈内投与は、急性心不全の場合のその血行力学的効果に関して第III相臨床試験においても良好に試験されている(Teerlinkら、Relaxin for the treatment of patients with acute heart failure(急性心不全患者の治療のためのリラキシン)(Pre−RELAX−AHF):a multi−centre,randomised,placebo−controlled,parallel−group,dose−finding phase IIb study(多施設、無作為化、ランダム化、プラセボ対照、並行群間、用量設定第IIb相臨床試験)Lancet 2009,373:1429−1439;(6)Ponikowskiら,Design of the Relaxin in acute heart failure study(急性心不全研究におけるリラキシンの設計)、American Heart Journal 2012,163:149−155)。したがって、ヒトリラキシン−2が心不全の治療のために安全に投与され得るという十分なデータがある。
実施例3−リラキシンの皮下輸注(infusion)による拡張機能障害の治療
リラキシンは、線維芽細胞の筋線維芽細胞への形質転換、組織線維症の発生の初期段階、及び筋線維芽細胞によるマトリックスタンパク質の刺激された分泌を調節及び減弱する役割を果たすことが知られている(Samuelら、Endocrinology 2004,145:4125−4133)。したがって、リラキシンはまた、心筋肥大を緩和するために使用されてもよい(Dschietzigら、Annals of the NY Acad、Science 2005、1041:441−3;Mooreら、Endocrinol.2007、148:1582−1589;Samuelら、Endocrinology 2008,149:3286−3293;Lekgabeら、Hypertension 2005,46:412−418;Xioa−Jun Duら、Cardiovascular Res 2003,57:395−404)。しかし、これらの開示は、筋肉タンパク質の化学的機械的硬化とは無関係に、心筋の線維性硬化又は肥大性硬化によるプロセスに関連する。
したがって、本発明者らは、拡張期心不全、及び弛緩及び伸展性が不十分な硬くなった心筋の治療を試験するための動物モデルを使用した。以下の表は、対照と比較した拡張期心不全のタイプのマウスで得られたデータをまとめたものである。マウスに12週間にわたり、単離したブタリラキシンを皮下輸注(infusion)(ブタリラキシン50pg/kg/日)すると、拡張末期圧が低下し、結果的に、E/A比が改善された。E/A比は、心室充満の質を表す機能的パラメーターである。リラキシンの皮下輸注(infusion)は、連続的にブタリラキシンを放出する膜カプセルをマウスの首部分に移植することによって得られた。結果を以下の表2にまとめた。

データは、ブタリラキシンの皮下輸注(infusion)が、拡張期マウスについてのみ心機能に有益な効果を有したが、対照においては薬学的効果は認められなかったことを示す。したがって、リラキシンは、心臓の性能が硬化作用により既に危険にさらされている場合に有効であることが証明された。対照において、測定されたE/A比はいかなる影響も受けなかった(E/A=2.5又は2.6±0.2)。しかし、拡張機能障害の場合、E/A比の低下は、正常範囲に劇的にシフトし、リラキシンの投与がマウス心臓の拡張期機能を大きく改善したことを示した。したがって、データは、治療された心臓では伸展性及び弛緩性が向上したことを支持している。それにもかかわらず、リラキシンの効果及びこの観察結果の根底にあるメカニズムを理解する必要があった。
実施例4−心筋による内因性のヒトリラキシン−2産生
心房細動のアブレーションのために選択的なカテーテル法を受けている患者のうち、収縮期又は拡張期の心不全のない対照患者20名(閉経後女性5名、男性15名)及びPaulusらによる診断アルゴリズム(図2を参照)を用いて診断された拡張期心不全(DHF)を患う30名の患者(閉経後女性10名、男性20名)を採用した。
ELISAによるリラキシン−2の測定のための血液は、肘正中静脈、大動脈/左心室、及び冠状静脈洞から、アブレーション処置の直前に採血された。大動脈/左心室と冠状静脈洞との濃度差を冠状動脈勾配と称することとした。正の勾配(冠状動脈洞レベル>大動脈/左心室レベル)は、心筋によるリラキシン産生の尺度と考えられ、負の勾配は、血中リラキシンの心筋による消費を示すものであった。
血中(静脈)リラキシン−2は、対照と比較して拡張期心不全(DHF)を有する患者において有意に増加した;図4を参照のこと(対照に対してP<0.05;順位についてのマン・ホイットニーのU検定)。リラキシン−2の冠状動脈勾配に関して、対照と拡張期心不全患者との間に何らの有意差も認められなかった。図5を参照のこと(2要因分散分析(要因:群、反復測定)で分析;P>0.05、有意差なし)。しかし、拡張期心不全患者について冠動脈リラキシン−2勾配と拡張機能障害の心エコー指標(E/E’、下記を参照のこと)との関係を分析したところ、非常に有意な非線形逆相関が見られた。言い換えれば、高いリラキシン勾配(心筋による高い産生を反映する)を有する拡張期心不全患者の心臓は、低い又はさらに負の勾配を有する拡張期心不全患者の心臓よりも、拡張期において良好に機能する。この分析の結果を図6に示す:E/E’により評価された拡張期機能の関数である拡張期心不全患者におけるリラキシン−2の個人毎の冠状動脈勾配。E/E’は、拡張期心不全を分類及び診断するために使用される拡張機能障害の最も確立された心エコーマーカーである(Paulusら、Eur Heart J 2007;図2を参照のこと)。Eは早期僧帽弁血流速度を示し、E’は組織ドップラー法によって測定された早期心筋弛緩速度を示し、E/E’はその無次元の比である。95%信頼区間を有する3次関数回帰;ピアソン相関係数r=0.95。対照では、そのような相関は見られなかった。
これらの知見は、各個人での心筋リラキシン−2アップレギュレーションの欠如が、各個人の拡張機能障害の程度を悪化させるという結論を与える。逆に治療のためのリラキシン投与は、拡張期心不全を有意に改善すると予想される。最も重要なこととして、ヒトリラキシン−2は心臓の線維芽細胞及び筋線維芽細胞に影響を及ぼし、これらの有益な効果は血行力学的起源を有するものではなく、例えば、ヒトリラキシン−2の血管拡張効果に由来するものではないことに注目すべきである。
実施例5−炎症/酸化ストレスと左心室拡張末期圧との間の相関関係及びリラキシン−2の投与により変化したタイチンN2Bの低リン酸化
雄の5ヶ月齢の対照及び高血圧自然発症(SHR)ラットの心臓並びに12週齢のZuckerの痩せ型ラット(Lean)及びZuckerの肥満型糖尿病ラット(ZDF)の心臓を切除し、Langendorff心臓標本とした(それぞれn=16)。同様に、ヘテロ接合体(C57Blk6JxSJL)の親から生成した野生型(WT)及びヘテロ接合型β2−アドレナリン受容体トランスジェニック(TG)マウス(それぞれn=10)からも心臓を採取した。β2−アドレナリン受容体トランスジェニック(TG)マウスは、主に線維化関連の拡張機能障害を有するモデルである。
動物の事前の放血の過程で、血漿ニトロチロシン及びインターロイキン−6(IL−6)の測定のために血液が採取された。最大左室収縮期圧発生時(活性LVP)の左心室拡張末期圧(LVEDP)を測定した。その後、全ての心臓を5nmol/Lの合成ヒトリラキシン−2又はプラセボで30分間処置した(各サブグループについてn=8)。最後に、遊離した左心室壁のホモジネート中で、総和の及びリン酸化されたN2BA及びN2Bタイチンアイソフォームを検出及び定量した。
ベースライン:最大活性LVPにおいて、高血圧自然発症ラットの心臓は、対照の心臓と比較して有意に上昇した左心室拡張末期圧を示した:高血圧自然発症ラットでは14±2mmHg;対照では5±1mmHg。同様に、ZDFの心臓は、Leanの心臓よりも高い左心室拡張末期圧を有した:ZDFでは12±2mmHg;Leanでは6±1mmHg。P<0.01;及び前記トランスジェニック(TG)マウスは野生型マウスより有意に高い左心室拡張末期圧を有した:前記トランスジェニック(TG)では12.3±2mmHg;野生型では4.9±1.1mmHg(順位についてのクラスカル・ウォリスの分散分析、次いでマン・ホイットニーのU−検定)。
対照としての高血圧自然発症ラット及びラットのLean−ZDFコホートのどちらにおいても、ニトロチロシン及びIL−6の血漿レベルは、ベースライン左心室拡張末期圧と相関していた。図7は、ラット群におけるニトロチロシンと左心室拡張末期圧とのこの相関を示す;ピアソンの相関係数は全てのラット群においてr=0.89であった(P<0.01)。同様に、血漿IL−6と左心室拡張末期圧との間に正の相関が見られ、全てのラット群でr=0.91であった(P<0.01)。そのような相関は野生型及び前記トランスジェニック(TG)マウスで見られなかった。
左心室拡張末期圧に関するリラキシン−2の効果(治療)
プラセボと比較すると、5nmol/Lの合成ヒトリラキシン−2の30分間の投与は、高血圧自然発症ラット及びZDFの心臓において左心室拡張末期圧を著しく減少させたが、対照及びLeanの心臓においてはより小さな変化が見られた。野生型及び前記トランスジェニック(TG)マウスでは、合成ヒトリラキシン−2は、小さいとはいえ有意な左心室拡張末期圧の減少を誘発した。この左心室拡張末期圧の減少は、2つのラットモデルで得られたデータとは対照的に、対照(野生型)及び罹患動物(TG)の間で差異がなかった。図8の棒グラフは、異なる群における左心室拡張末期圧の平均減少の点で心臓に生じる生理学的効果をまとめたものである(は対プラセボでP<0.05であることを示し、**は、順位についてのクラスカル・ウォリスの分散分析、次いでマン・ホイットニーのU検定によってP<0.01であることを示す)。リラキシン−2の投与は、酸化ストレス及び変化した心筋の機械的特性を患ったZDF及びSHラットの心臓に対して明らかに実質的で有益な効果を有していた。
タイチンリン酸化に対するリラキシンの効果
プラセボとは対照的に、5nmol/Lの合成ヒトリラキシン−2の30分間の投与は、高血圧自然発症ラットの心臓及びZDFの心臓において見られる硬い(stiff)タイチンN2Bアイソフォームの相対的な低リン酸化(本明細書では比率P−N2BA/P−N2Bとして表される)を大きく逆転させた。対照的に、N2Bタイチンの相対的リン酸化状態は、野生型マウスと比較して前記トランスジェニック(TG)では変化せず(野生型及び前記トランスジェニック(TG)のプラセボ群同士の比較)、リラキシン効果は対照(野生型)及び疾患動物(TG)の間で差異が無かった。図9は、異なる群における平均のP−N2BA/P−N2B比をまとめたものである(は対プラセボでP<0.05であることを示し;**は順位についてのクラスカル・ウォリスの分散分析、次いでマン・ホイットニーのU検定によってP<0.01であることを示す)。
検討したラット群の全てにおいて、全ての群のプラセボ処置心臓のP−N2BA/P−N2B比とベースライン左心室拡張末期圧との間に有意な相関が見られた(全群に対するピアソンのr=0.75[P<0.01])が、マウスでは発見はされなかった。したがって、拡張期心不全を有する心臓において見られる増加したベースライン左心室拡張末期圧は、相対的なN2Bリン酸化障害(P−N2BA/P−N2B比)と相関し、そして、N2Bのリン酸化を増加させることによってP−N2BA/P−N2B比を減少させるリラキシン−2の投与によって、ベースライン左心室拡張末期圧は低下させることができる。
結果の考察
巨大タンパク質のタイチンは、心筋拡張期の硬さの主要な決定要因となる(Borbelyら、Circ Res 2009;104:780−786;Paulus and Tschoepe、JACC 2013;62:263−271)。左心室充満圧(LVEDP)が付随して増加している心筋拡張期の硬さの増大は、HFPEF(拡張期心不全、拡張機能障害)の存在の最も明白な診断的徴候であり、該HFPEF(左室駆出率が保たれた心不全、HFPEF)は、硬い(stiff)N2Bタイチンアイソフォームの低リン酸化に関連し得るのみならず、該障害されたタイチンリン酸化は、一酸化窒素の生体利用効率を減少させる酸化ストレスの増加に起因すると考えられる。後者は、cGMP−プロテインキナーゼGシグナル伝達及びN2Bリン酸化を減少させることが以前に示されている(Heerebeekら、Circulation 2012;126:830−839)。本発明者らは、合成ヒトリラキシン−2がRXFP1細胞におけるcAMP活性を増加させることができ、これによりタイチンアイソフォームのリン酸化障害を相殺することができ、このことはまた、拡張機能障害の独立した2つの動物モデルである高血圧自然発症ラット及びZDFにおける病理学的に上昇した左心室拡張末期圧を改善(低下)させる、という証拠をさらに提示した。さらに、リラキシンが有する左心室拡張末期圧を減少させる効果が、上昇したN2Bリン酸化を伴うことが初めて示された。本発明者らのモデルでは、酸化ストレス及び/又は炎症の血中マーカーであるニトロチロシン及びインターロイキン−6は、拡張機能障害の程度(左心室拡張末期圧の増加)及び相対的なN2B低リン酸化の程度と相関していた。一方、主に線維症に関係する拡張機能障害のモデルであるβ2−アドレナリン受容体トランスジェニックマウスにおいては、リラキシンの投与によって治療することができたN2Bタイチンのリン酸化障害は存在しない。したがって、合成リラキシン−2の効果は、対照動物と罹患動物との間で差異はなかった。したがって、合成ヒトリラキシン−2は、N2B低リン酸化のタイチンによる拡張期の心筋の増加した硬さを示す、酸化/炎症マーカーの高い血漿レベルを示す拡張期心不全に罹患している患者を治療する候補薬剤である。
実施例7−合成ヒトリラキシン−2を用いた拡張期心不全患者(臨床試験第II相)の試験。
臨床第II相の当局の承認は、Paulusらの記載(図2のダイアグラムを参照)に従って拡張期心不全と診断された患者について得られている。拡張期心不全試験に含める患者の基準は、次のとおりである:a)過去6ヶ月間以内の呼吸困難での入院;b)治療前の少なくとも4週間、安定した薬物療法;c)左心室駆出率(LVEF)−少なくとも50%の保持された左心室駆出率;d)Paulusらによる左室駆出率が保たれた心不全の確立した診断(図2の診断フローチャートのダイアグラムを参照のこと)。この試験から除外されたのは、何らかの関連する収縮機能障害を有する患者、又は過去4週間以内に急性冠動脈症候群を有した患者、又は過去6ヶ月以内に心臓手術を受けた若しくは急性心筋梗塞を有した患者、又は低血圧(収縮期血圧が100Hg未満)の患者、又は試験前過去6ヶ月以内において致命的な頻脈又は徐脈を有した患者、又は試験前に2mg/dlを超える血清クレアチニンを有する患者;肺疾患又は非心臓起源の呼吸困難を有する患者;又は何らかの悪性腫瘍を有する患者である。
12人の患者からなる3つの群に対しては、a)プラセボ、b)10pg/kg/日の低用量のヒトリラキシン−2、又はc)100pg/kg/日の高用量のリラキシンが、4週間のフォローアップモニタリングを含めて3ヶ月間投与される。この試験は、1つの病院で、二重盲検、前向き、無作為化で行われる。
以下の追加の評価が現在行われているか、又は検討されている:
・リラキシン投与後の拡張機能の心エコー検査(E/E’、LAVI)
・運動能力及び関連する拘束因子を評価するためのスパイロエルゴメトリー
・「コンパニオンマーカー」としての血清NT−proBNPの測定
・炎症マーカー及びコンパニオンマーカーとしての血中IL−6、IL−8、ニトロチロシンの測定
・コラーゲン代謝回転(PINP、PIIINP、MMP−2、TIMP−4、PIIINP、MM P−8)の測定
・生活の質(QOL)と呼吸困難のアンケート
・リラキシン投与の異なるモード(皮下投与又は静脈投与)の評価(乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)−ガレヌス製剤)
・「安全性/有効性」のモニタリング:7日目、30日目、60日目、90日目及び120日目
(付記)
<1> 慢性的な、左室駆出率が保持されている心不全(HFPEF)であって、心筋の硬化も有する心不全に罹患した人を治療するための医薬組成物であって、心筋内の線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、心内膜細胞、及び心筋細胞上に存在するリラキシン受容体(RXFP1)に特異的に結合して心臓コンプライアンス及び一回拍出量を増加させ、左心室の拡張末期圧を低下させることができる化合物を治療有効量含む、医薬組成物。
<2> 心臓特異的なタイチンのリン酸化障害の影響を治療するための、<1>に記載の医薬組成物。
<3> 心臓特異的なタイチンIM2Bの低リン酸化の影響を治療するための、<1>又は<2>に記載の医薬組成物。
<4> 皮下注射若しくは静脈注射又は経口投与に適した薬学的に許容されるアジュバント、キャリア、希釈剤又は賦形剤と混合したヒトリラキシン分子又はその薬学的に許容される誘導体若しくは前駆体を含む、<1>〜<3>のいずれかに記載の医薬組成物。
<5> ヒトリラキシン−1、ヒトリラキシン−2、ヒトリラキシン−3及びそれらの類似体又は誘導体を含む群から選択されるヒトリラキシン分子を含む、<1>〜<4>のいずれかに記載の医薬組成物。
<6> 口腔粘膜又は胃腸管粘膜に送達するためのエマルジョン(水中油型又は油中水型)として製剤化されている、<5>に記載の医薬組成物。
<7> 前記リラキシンが、ミセル、逆ミセル、リポソーム、キュボソーム及びそれらの混合物から選択される送達ビヒクル中に含まれる、<1>〜<6>のいずれかに記載の医薬組成物。
<8> 粘膜付着性タンパク質が、化学又はを介して前記送達ビヒクルと結びついている、<7>に記載の医薬組成物。
<9> 物理的結合を介して、前記リラキシンの全身送達を達成するために、前記組成物が粘膜に吸着するか又は粘膜表面に保持される。
<10> 前記組成物が、10pg/kg/日〜1000pg/kg/日の範囲の速度でヒトリラキシン−2を投与する皮下輸注(infusion)用であるか、又は皮下輸注(infusion)で達成されるものと同等の血漿濃度を生じる経口投与用である、<1>〜<3>のいずれかに記載の医薬組成物。
<11> H2リラキシンが、30pg/kg/日〜100pg/kg/日の範囲の輸注(infusion)速度で投与される、<1>〜<5>のいずれかに記載の医薬組成物。
<12> 慢性拡張期心不全に罹患している対象が、心臓特異的なタイチンの潜在的なリン酸化障害に罹患していると診断されている、<1>〜<11>のいずれかに記載の医薬組成物。
<13> 拡張機能障害及び拡張期心不全に罹患している前記対象がさらに腎障害を有する、<1>〜<12>のいずれかに記載の医薬組成物。
<14> 前記対象の、MDRD式に従って推定されるクレアチニンクリアランスが30〜75mL/分/1.73mの範囲である、<1>〜<13>のいずれかに記載の医薬組成物。
<15> 拡張機能障害及び拡張期心不全に罹患している前記対象が、高血圧であり、及び/又は糖尿病及び/又は酸化ストレス及び/又は炎症を患っている、<1>〜<14>のいずれかに記載の医薬組成物。
<16> 病理学的に減少した心臓流入血量を示す患者に、心筋内のリラキシン受容体と特異的に結合して前記心臓の拡張末期圧を低下させ、前記心臓の拍出量を増加させることのできる化合物を治療有効量投与することにより、心臓流入血量を増加させる方法。

Claims (13)

  1. 慢性的な左室駆出率が保持されている心不全(HFPEF)であって、心筋の硬化も有する心不全に罹患しており、心臓特異的なタイチンの潜在的なリン酸化障害に罹患していると診断されている人を治療するための医薬組成物であって、心筋内の線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、心内膜細胞、及び心筋細胞上に存在するリラキシン受容体(RXFP1)に特異的に結合して心臓コンプライアンス及び一回拍出量を増加させ、左心室の拡張末期圧を低下させることができるリラキシンを治療有効量含む、医薬組成物。
  2. 前記慢性的な心不全が心臓特異的なタイチンのリン酸化障害により生じたものである、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記慢性的な心不全が心臓特異的なタイチンN2Bの低リン酸化により生じたものである、請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 皮下投与、静脈注射又は経口投与に適した薬学的に許容されるアジュバント、キャリア、希釈剤又は賦形剤と混合したヒトリラキシン−2分子を含む、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. ヒトリラキシン−1、ヒトリラキシン−2、及びヒトリラキシン−3を含む群から選択されるヒトリラキシン分子を含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の医薬組成物。
  6. 口腔粘膜又は胃腸管粘膜に送達するためのエマルジョン(水中油型又は油中水型)として製剤化されている、請求項5に記載の医薬組成物。
  7. 前記リラキシンがミセル、逆ミセル、リポソーム、キュボソーム及びそれらの混合物から選択される送達ビヒクルに含まれる、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 粘膜付着性タンパク質が化学的又は物理的結合を介して前記送達ビヒクルと結びついており、前記リラキシンの全身送達を達成するために前記医薬組成物が粘膜に吸着するか又は粘膜表面に保持される、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 前記医薬組成物が、ヒトリラキシン−2を投与する皮下輸注(infusion)用であるか、又は皮下輸注(infusion)で達成されるものと同等の血漿濃度を生じる経口投与用である、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
  10. 前記慢性的な心不全に罹患している人が、さらに腎障害を有する、請求項1〜請求項9のうちいずれかに記載の医薬組成物。
  11. 前記人の、MDRD式に従って推定されるクレアチニンクリアランスが30〜75mL/分/1.73mの範囲である、請求項1〜請求項10のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
  12. 前記慢性的な心不全に罹患している人が、高血圧であり、及び/又は糖尿病及び/又は酸化ストレス及び/又は炎症を患っている、請求項1〜請求項11のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
  13. 前記リラキシンが心臓流入血量を増加させ、心臓の拡張末期圧を低下させ、心臓の拍出量を増加させる、請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
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