JP2019202901A - 酸化ジルコニウム粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末及びその製造方法を提供する。【解決手段】ジルコニウム塩の水溶液に、所定のカルシウム化合物を、前記ジルコニウム塩のジルコニウム原子1モルに対して0.35モル以上0.90モル未満添加して加水分解反応を行うことにより、BET比表面積が100m2/g以上であり、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下である酸化ジルコニウム粉末を製造する。【選択図】なし
Description
本発明は、酸化ジルコニウム粉末及びその製造方法に関する。
セラミックコンデンサは、低誘電率系と高誘電率系とに大別される。低誘電率系は、温度による容量変化率が小さく、温度補償用とも呼ばれている。このような低誘電率系の誘電材料として、耐熱性や高周波特性に優れているジルコン酸カルシウム等が注目されている。
ジルコン酸カルシウムは、一般に、酸化ジルコニウム粉末と、炭酸カルシウム等のカルシウム含有化合物粉末との混合物を加熱することにより製造される。ジルコン酸カルシウムは、近年、セラミックコンデンサの小型化及び高性能化に対応すべく、微細化が求められている。これに伴い、その原料である酸化ジルコニウム粉末も、微細であり、かつ、結晶性にも優れていることが求められている。
また、微細かつ高結晶性の酸化ジルコニウム粉末は、セラミックコンデンサ以外にも、ファインセラミックス用途等における工業材料としての利用も期待されている。
また、微細かつ高結晶性の酸化ジルコニウム粉末は、セラミックコンデンサ以外にも、ファインセラミックス用途等における工業材料としての利用も期待されている。
酸化ジルコニウム微粉末の製法としては、ジルコニウム塩水溶液と過酸化水素水を常圧で加熱して加水分解することにより、単斜晶系の水和ジルコニア微粒子を生成させる方法が知られている(非特許文献1参照)。
工業的な製法としては、例えば、特許文献1に、ジルコニウム塩水溶液を加水分解して得られた水和ジルコニアを分離し、仮焼する方法が記載されている。また、特許文献2には、水和ジルコニア微粒子の懸濁液にアンモニアを添加して固形物を沈殿させ、該固形物を分離し、仮焼する方法が記載されている。さらにまた、特許文献3には、反応系内のpHを一定に維持しつつ、ジルコニウム塩水溶液と、アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液とを接触させて生じた沈殿物を、分離し、焼成する方法が記載されている。
工業的な製法としては、例えば、特許文献1に、ジルコニウム塩水溶液を加水分解して得られた水和ジルコニアを分離し、仮焼する方法が記載されている。また、特許文献2には、水和ジルコニア微粒子の懸濁液にアンモニアを添加して固形物を沈殿させ、該固形物を分離し、仮焼する方法が記載されている。さらにまた、特許文献3には、反応系内のpHを一定に維持しつつ、ジルコニウム塩水溶液と、アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液とを接触させて生じた沈殿物を、分離し、焼成する方法が記載されている。
「窯業協会誌」,92[2],1984,p.64-70
上記のような従来の製法においては、結晶性を高めるために、300℃以上で熱処理(仮焼)する工程を経ている。しかしながら、このような熱処理は、結晶粒成長や粒子の凝集を促進するものであり、粒子の微細化と結晶性の向上とは、トレードオフの関係にある。
このため、従来の製法によっては、ナノレベルの微細性及び高結晶性を兼ね備えた酸化ジルコニウム粉末を得ることは困難であった。
このため、従来の製法によっては、ナノレベルの微細性及び高結晶性を兼ね備えた酸化ジルコニウム粉末を得ることは困難であった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、ジルコニウム塩の加水分解反応を、所定のカルシウム化合物の存在下で行うことにより、微細性及び高結晶性を兼ね備えた酸化ジルコニウム粉末が得られることを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1]BET比表面積が100m2/g以上であり、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下である、酸化ジルコニウム粉末。
[2]平均一次粒子径が10.0〜30.0nmである、上記[1]に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[3]結晶構造の単位格子体積が0.1447nm3以下である、上記[1]又は[2]に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[1]BET比表面積が100m2/g以上であり、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下である、酸化ジルコニウム粉末。
[2]平均一次粒子径が10.0〜30.0nmである、上記[1]に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[3]結晶構造の単位格子体積が0.1447nm3以下である、上記[1]又は[2]に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[4]ジルコニウム塩の加水分解により酸化ジルコニウム粉末を製造する方法において、ジルコニウム塩の水溶液に、25℃における水への溶解度が2.0g/L以下であるカルシウム化合物を、前記ジルコニウム塩のジルコニウム原子1モルに対して0.35モル以上0.90モル未満添加して加水分解反応を行う、酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[5]前記カルシウム化合物が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上である、上記[4]に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[6]前記ジルコニウム塩の水溶液の濃度が0.02〜0.40モル/Lである、上記[4]又は[5]に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[7]前記加水分解反応を加熱還流下で行う工程と、前記工程で得られた反応生成液を中和して沈殿物を生成させる工程と、前記沈殿物を洗浄した後、乾燥する工程とを含む、上記[4]〜[6]のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[8]前記ジルコニウム塩が、オキシ塩化ジルコニウム八水和物及び硝酸ジルコニウム二水和物から選ばれる1種以上である、上記[4]〜[7]のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[9]前記カルシウム化合物が、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上である、上記[4]〜[8]のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[5]前記カルシウム化合物が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上である、上記[4]に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[6]前記ジルコニウム塩の水溶液の濃度が0.02〜0.40モル/Lである、上記[4]又は[5]に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[7]前記加水分解反応を加熱還流下で行う工程と、前記工程で得られた反応生成液を中和して沈殿物を生成させる工程と、前記沈殿物を洗浄した後、乾燥する工程とを含む、上記[4]〜[6]のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[8]前記ジルコニウム塩が、オキシ塩化ジルコニウム八水和物及び硝酸ジルコニウム二水和物から選ばれる1種以上である、上記[4]〜[7]のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
[9]前記カルシウム化合物が、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上である、上記[4]〜[8]のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
本発明によれば、ナノレベルの微細性及び高結晶性を兼ね備えた酸化ジルコニウム粉末を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を得ることができる。
以下、本発明の酸化ジルコニウム粉末及びその製造方法について、詳細に説明する。
[酸化ジルコニウム粉末]
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が100m2/g以上であり、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下であることを特徴とするものである。
上記要件を満たす酸化ジルコニウム粉末は、微細かつ結晶性に優れており、このような特性を活かして、セラミックスコンデンサ、圧電素子、研磨材、触媒等の種々の用途における原料として好適に用いることができる。特に、誘電材料として有用なジルコン酸カルシウム粉末の原料としても好適である。
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が100m2/g以上であり、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下であることを特徴とするものである。
上記要件を満たす酸化ジルコニウム粉末は、微細かつ結晶性に優れており、このような特性を活かして、セラミックスコンデンサ、圧電素子、研磨材、触媒等の種々の用途における原料として好適に用いることができる。特に、誘電材料として有用なジルコン酸カルシウム粉末の原料としても好適である。
(BET比表面積)
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が100m2/g以上であり、好ましくは120m2/g以上、より好ましくは130m2/g以上である。
従来の製法による300℃以上で熱処理(仮焼)された酸化ジルコニウムは、BET比表面積が100m2/g未満であるのに対して、本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が100m2/g以上であり、セラミックスコンデンサ等の誘電材料の原料において求められる微細性を有していると言える。
一方、BET比表面積の上限は、400m2/g以下であることが実際的であり、また、取り扱い上の観点から、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。
なお、本発明で言うBET比表面積とは、JIS R 1626:1996に準じて、吸着質として窒素ガスを用いたBET流動法(3点法)で測定された値である。具体的には、下記実施例に記載の全自動BET比表面積測定装置で測定した値である。このBET比表面積は、前記酸化ジルコニウム粉末の微細性を示す指標であり、このBET比表面積の値が大きいほど、前記酸化ジルコニウム粉末は微細であると言える。
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が100m2/g以上であり、好ましくは120m2/g以上、より好ましくは130m2/g以上である。
従来の製法による300℃以上で熱処理(仮焼)された酸化ジルコニウムは、BET比表面積が100m2/g未満であるのに対して、本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が100m2/g以上であり、セラミックスコンデンサ等の誘電材料の原料において求められる微細性を有していると言える。
一方、BET比表面積の上限は、400m2/g以下であることが実際的であり、また、取り扱い上の観点から、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。
なお、本発明で言うBET比表面積とは、JIS R 1626:1996に準じて、吸着質として窒素ガスを用いたBET流動法(3点法)で測定された値である。具体的には、下記実施例に記載の全自動BET比表面積測定装置で測定した値である。このBET比表面積は、前記酸化ジルコニウム粉末の微細性を示す指標であり、このBET比表面積の値が大きいほど、前記酸化ジルコニウム粉末は微細であると言える。
(半値幅)
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下であり、好ましくは1.93°以下、より好ましくは1.90°以下である。
前記主ピークは、単斜晶酸化ジルコニウムにおいて現れるピークであり、該ピークの半値幅は、酸化ジルコニウム粉末の結晶性を示す指標である。
前記ピークがシャープであり、該ピークの半値幅が1.96°以下であれば、セラミックスコンデンサ等の誘電材料の原料において求められる結晶性を有していると言える。前記半値幅の下限は、特に限定されるものではないが、通常、0.50°以上の値として測定される。
なお、本発明で言う半値幅は、具体的には、下記実施例に記載のX線回折装置で測定した粉末X線回折スペクトルについて、リートベルト解析により求めた値である。具体的には、後述する実施例で示すように、ソフトウェア「RIETAN−FP」を用いてリートベルト解析を行って求めた値である。
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下であり、好ましくは1.93°以下、より好ましくは1.90°以下である。
前記主ピークは、単斜晶酸化ジルコニウムにおいて現れるピークであり、該ピークの半値幅は、酸化ジルコニウム粉末の結晶性を示す指標である。
前記ピークがシャープであり、該ピークの半値幅が1.96°以下であれば、セラミックスコンデンサ等の誘電材料の原料において求められる結晶性を有していると言える。前記半値幅の下限は、特に限定されるものではないが、通常、0.50°以上の値として測定される。
なお、本発明で言う半値幅は、具体的には、下記実施例に記載のX線回折装置で測定した粉末X線回折スペクトルについて、リートベルト解析により求めた値である。具体的には、後述する実施例で示すように、ソフトウェア「RIETAN−FP」を用いてリートベルト解析を行って求めた値である。
(平均一次粒子径)
上述したように、本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が大きく、微細なものであるが、平均一次粒子径は5.0〜100.0nmであることが好ましく、より好ましくは10.0〜30.0nm、さらに好ましくは15.0〜25.0nmである。このような微細な酸化ジルコニウム粉末が、セラミックスコンデンサ等の誘電材料の好適な原料となり得る。
なお、本発明で言う平均一次粒子径は、試料粉末の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察画像において、任意の20個の粒子の、長径と短径の平均を粒子径とし、20点のデータのうち、値が大きい方から5点及び値が小さい方から5点のデータを除き、残りの10点の算術平均値として求めた値である。
上述したように、本発明の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が大きく、微細なものであるが、平均一次粒子径は5.0〜100.0nmであることが好ましく、より好ましくは10.0〜30.0nm、さらに好ましくは15.0〜25.0nmである。このような微細な酸化ジルコニウム粉末が、セラミックスコンデンサ等の誘電材料の好適な原料となり得る。
なお、本発明で言う平均一次粒子径は、試料粉末の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察画像において、任意の20個の粒子の、長径と短径の平均を粒子径とし、20点のデータのうち、値が大きい方から5点及び値が小さい方から5点のデータを除き、残りの10点の算術平均値として求めた値である。
(単位格子体積)
また、本発明の酸化ジルコニウム粉末は、単位格子体積が0.1447nm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.1446nm3以下、さらに好ましくは0.1440nm3以下である。前記単位格子体積は、前記粉末X線回折スペクトルのリートベルト解析で求められた格子定数a、b及びcから単斜晶系(α=β=90°、γ≠90°)の格子体積を求める下記式にて算出される値(V)である。
V=a・b・c(1−cos2 γ)1/2
単位格子体積が上記数値範囲を満たす酸化ジルコニウム粉末は、従来の製法によって得られる酸化ジルコニウム粉末よりも、単位格子体積が小さい。これは、後記にて詳述する本発明の製造方法で製造された酸化ジルコニウムは、カルシウム原子が結晶格子内に侵入してジルコニウム原子と置き換わることにより、酸素欠陥が生じることに起因するものと推測される。
また、本発明の酸化ジルコニウム粉末は、単位格子体積が0.1447nm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.1446nm3以下、さらに好ましくは0.1440nm3以下である。前記単位格子体積は、前記粉末X線回折スペクトルのリートベルト解析で求められた格子定数a、b及びcから単斜晶系(α=β=90°、γ≠90°)の格子体積を求める下記式にて算出される値(V)である。
V=a・b・c(1−cos2 γ)1/2
単位格子体積が上記数値範囲を満たす酸化ジルコニウム粉末は、従来の製法によって得られる酸化ジルコニウム粉末よりも、単位格子体積が小さい。これは、後記にて詳述する本発明の製造方法で製造された酸化ジルコニウムは、カルシウム原子が結晶格子内に侵入してジルコニウム原子と置き換わることにより、酸素欠陥が生じることに起因するものと推測される。
このため、本発明の酸化ジルコニウムは、後述する本発明の製造方法で得られるものであることが好ましく、不純物元素としてカルシウムを含んでいることが好ましい。前記カルシウムの含有量は、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜4.5質量%、さらに好ましくは0.1〜4.0質量%である。
なお、前記酸化ジルコニウム粉末中のカルシウムの含有量は、蛍光X線(XRF)分析により測定することができる。具体的には、下記実施例に記載の方法により求められる。
なお、前記酸化ジルコニウム粉末中のカルシウムの含有量は、蛍光X線(XRF)分析により測定することができる。具体的には、下記実施例に記載の方法により求められる。
[酸化ジルコニウム粉末の製造方法]
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下のような本発明の製造方法により、好適に製造することができる。
本発明の製造方法は、ジルコニウム塩の加水分解により酸化ジルコニウム粉末を製造する方法において、ジルコニウム塩の水溶液に、25℃における水への溶解度が5.0g/L以下であるカルシウム化合物を、前記ジルコニウム塩のジルコニウム原子1モルに対して0.35モル以上0.90モル未満添加して加水分解反応を行うことを特徴とするものである。
このように、水に対する溶解性が低い所定のカルシウム化合物を添加してジルコニウム塩の加水分解反応を行うことにより、水に溶けやすいアンモニア水や水酸化ナトリウム等の添加によりpHを調整して加水分解反応を行う場合と比較して、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を製造することができる。
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下のような本発明の製造方法により、好適に製造することができる。
本発明の製造方法は、ジルコニウム塩の加水分解により酸化ジルコニウム粉末を製造する方法において、ジルコニウム塩の水溶液に、25℃における水への溶解度が5.0g/L以下であるカルシウム化合物を、前記ジルコニウム塩のジルコニウム原子1モルに対して0.35モル以上0.90モル未満添加して加水分解反応を行うことを特徴とするものである。
このように、水に対する溶解性が低い所定のカルシウム化合物を添加してジルコニウム塩の加水分解反応を行うことにより、水に溶けやすいアンモニア水や水酸化ナトリウム等の添加によりpHを調整して加水分解反応を行う場合と比較して、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を製造することができる。
前記加水分解反応においては、前記ジルコニウム塩及び前記カルシウム化合物を含む水溶液を調製すればよく、前記ジルコニウム塩の水溶液を調製した後、前記カルシウム化合物又はその水溶液を添加してもよい。あるいはまた、前記ジルコニウム塩及び前記カルシウム化合物を同時に水に溶解して、水溶液を調製してもよい。
また、前記ジルコニウム塩の水溶液に前記カルシウム化合物又はその水溶液を逐次添加しながら、加水分解反応を進行させるようにしてもよい。操作の簡便性の観点からは、前記ジルコニウム塩の水溶液に、使用する前記カルシウム化合物の全量が予め添加された水溶液を調製しておくことが好ましい。
また、前記ジルコニウム塩の水溶液に前記カルシウム化合物又はその水溶液を逐次添加しながら、加水分解反応を進行させるようにしてもよい。操作の簡便性の観点からは、前記ジルコニウム塩の水溶液に、使用する前記カルシウム化合物の全量が予め添加された水溶液を調製しておくことが好ましい。
(ジルコニウム塩)
本発明の製造方法においては、ジルコニウム塩の加水分解により酸化ジルコニウム粉末を製造する。すなわち、酸化ジルコニウム粉末の製造原料として、ジルコニウム塩を用いる。
前記ジルコニウム塩としては、具体的には、オキシ塩化ジルコニウム八水和物、硝酸ジルコニウム二水和物、硫酸ジルコニウム四水和物、オキシ酢酸ジルコニウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、オキシ塩化ジルコニウム八水和物、硝酸ジルコニウム二水和物が好適に用いられる。
本発明の製造方法においては、ジルコニウム塩の加水分解により酸化ジルコニウム粉末を製造する。すなわち、酸化ジルコニウム粉末の製造原料として、ジルコニウム塩を用いる。
前記ジルコニウム塩としては、具体的には、オキシ塩化ジルコニウム八水和物、硝酸ジルコニウム二水和物、硫酸ジルコニウム四水和物、オキシ酢酸ジルコニウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、オキシ塩化ジルコニウム八水和物、硝酸ジルコニウム二水和物が好適に用いられる。
前記ジルコニウム塩の水溶液は、反応均一性、反応効率及び良好な結晶性の観点から、加水分解反応を行う水溶液中における前記ジルコニウム塩の濃度が0.02〜0.40モル/Lであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.35モル/L、さらに好ましくは0.10〜0.30モル/Lである。
(カルシウム化合物)
前記ジルコニウム塩の加水分解の際に添加されるカルシウム化合物は、25℃における水への溶解度が5.0g/L以下のものであり、好ましくは3.0g/L以下、より好ましくは3.0g/L以下である。具体的には、水酸化カルシウム(水(25℃)への溶解度1.7g/L)、酸化カルシウム(水(25℃)への溶解度1.2g/L)、過酸化カルシウム(水中で分解して水酸化カルシウムとなる)、炭酸カルシウム(水(25℃)への溶解度0.015g/L)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上が用いられる。
水に対する溶解性が低い又は水にほとんど溶けない、このようなカルシウム化合物を用いることにより、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を製造することができる。
これに対して、カルシウム化合物であっても、塩化カルシウム(水(25℃)への溶解度75g/L)等の水に溶けやすい化合物を用いた場合、微細な酸化ジルコニウム粉末が得られるものの、結晶性を向上させることは困難である。
前記ジルコニウム塩の加水分解の際に添加されるカルシウム化合物は、25℃における水への溶解度が5.0g/L以下のものであり、好ましくは3.0g/L以下、より好ましくは3.0g/L以下である。具体的には、水酸化カルシウム(水(25℃)への溶解度1.7g/L)、酸化カルシウム(水(25℃)への溶解度1.2g/L)、過酸化カルシウム(水中で分解して水酸化カルシウムとなる)、炭酸カルシウム(水(25℃)への溶解度0.015g/L)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上が用いられる。
水に対する溶解性が低い又は水にほとんど溶けない、このようなカルシウム化合物を用いることにより、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を製造することができる。
これに対して、カルシウム化合物であっても、塩化カルシウム(水(25℃)への溶解度75g/L)等の水に溶けやすい化合物を用いた場合、微細な酸化ジルコニウム粉末が得られるものの、結晶性を向上させることは困難である。
前記カルシウム化合物の添加量は、前記ジルコニウム塩のジルコニウム原子1モルに対して0.35モル以上0.90モル未満であり、好ましくは0.40〜0.88モル、より好ましくは0.45〜0.85モルである。
前記添加量を0.35モル以上とすることにより、微細かつ高結晶に優れた酸化ジルコニウム粉末を得ることができる。また、前記添加量が多いと、酸化ジルコニウム粉末の微細性が向上するものの、結晶性が低下する。前記添加量が0.90未満であれば、良好な結晶性を有する酸化ジルコニウム粉末を得ることができる。
前記添加量を0.35モル以上とすることにより、微細かつ高結晶に優れた酸化ジルコニウム粉末を得ることができる。また、前記添加量が多いと、酸化ジルコニウム粉末の微細性が向上するものの、結晶性が低下する。前記添加量が0.90未満であれば、良好な結晶性を有する酸化ジルコニウム粉末を得ることができる。
(工程)
前記製造方法は、前記加水分解反応を加熱還流下で行う工程(1)と、前記工程で得られた反応生成液を中和して沈殿物を生成させる工程(2)と、前記沈殿物を洗浄した後、乾燥する工程(3)とを経ることが好ましい。
このような工程を経ることにより、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を好適に得ることができる。本発明の製造方法は、従来のような熱処理(仮焼)を経ることによって、結晶性を向上させるものではなく、このような熱処理を行うことなく、効率的に、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を製造することができる。
前記製造方法は、前記加水分解反応を加熱還流下で行う工程(1)と、前記工程で得られた反応生成液を中和して沈殿物を生成させる工程(2)と、前記沈殿物を洗浄した後、乾燥する工程(3)とを経ることが好ましい。
このような工程を経ることにより、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を好適に得ることができる。本発明の製造方法は、従来のような熱処理(仮焼)を経ることによって、結晶性を向上させるものではなく、このような熱処理を行うことなく、効率的に、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を製造することができる。
<工程(1)>
前記工程(1)は、前記加水分解反応を行う工程であり、加熱還流下で行うことが好ましい。具体的には、前記ジルコニウム塩の水溶液に添加した前記カルシウム化合物を十分に溶解させて、沸点まで加熱して還流しながら、加水分解反応を行うことが好ましい。反応雰囲気は大気中でよく、また、常圧下で反応させることができる。反応時間は、結晶性の向上及び製造効率の観点から、24〜96時間であることが好ましく、より好ましくは36〜84時間、さらに好ましくは48〜72時間である。
前記工程(1)は、前記加水分解反応を行う工程であり、加熱還流下で行うことが好ましい。具体的には、前記ジルコニウム塩の水溶液に添加した前記カルシウム化合物を十分に溶解させて、沸点まで加熱して還流しながら、加水分解反応を行うことが好ましい。反応雰囲気は大気中でよく、また、常圧下で反応させることができる。反応時間は、結晶性の向上及び製造効率の観点から、24〜96時間であることが好ましく、より好ましくは36〜84時間、さらに好ましくは48〜72時間である。
<工程(2)>
前記工程(2)は、前記工程(1)で得られた反応生成液を中和する工程であり、中和により、沈殿物が生成する。
前記反応生成液は酸性であるため、塩基で中和する。ここで言う中和においては、25℃においてpHが7.5〜8.5の範囲になればよい。
使用する塩基は、特に限定されるものではないが、得られる酸化ジルコニウム粉末中に該塩基及びその塩が残存しないことが好ましいことから、中和により金属塩を生じないものが好ましい。また、pHの微調整の容易性の観点から、水溶液であることが好ましい。好ましくは、アンモニア水が用いられる。
前記工程(2)は、前記工程(1)で得られた反応生成液を中和する工程であり、中和により、沈殿物が生成する。
前記反応生成液は酸性であるため、塩基で中和する。ここで言う中和においては、25℃においてpHが7.5〜8.5の範囲になればよい。
使用する塩基は、特に限定されるものではないが、得られる酸化ジルコニウム粉末中に該塩基及びその塩が残存しないことが好ましいことから、中和により金属塩を生じないものが好ましい。また、pHの微調整の容易性の観点から、水溶液であることが好ましい。好ましくは、アンモニア水が用いられる。
<工程(3)>
前記工程(3)は、前記工程(2)で生成した沈殿物を洗浄し、乾燥する工程であり、この工程により、酸化ジルコニウムの乾燥粉末が得られる。
前記沈殿物の洗浄により、沈殿物中に残留する未反応の前記ジルコニウム塩や中和に用いる塩基に由来する成分等の不純物成分を除去し、酸化ジルコニウム粉末を精製する。洗浄は、これらの不純物成分を溶解する液体を用いて行うことが好ましく、通常、水が用いられる。このような液体による洗浄後は、遠心分離やろ過等の公知の固液分離方法により、洗浄された沈殿物と液体とに分離することができる。液体による洗浄は、十分に前記不純物成分を除去するため、複数回の繰り返し操作により行うことが好ましい。
前記工程(3)は、前記工程(2)で生成した沈殿物を洗浄し、乾燥する工程であり、この工程により、酸化ジルコニウムの乾燥粉末が得られる。
前記沈殿物の洗浄により、沈殿物中に残留する未反応の前記ジルコニウム塩や中和に用いる塩基に由来する成分等の不純物成分を除去し、酸化ジルコニウム粉末を精製する。洗浄は、これらの不純物成分を溶解する液体を用いて行うことが好ましく、通常、水が用いられる。このような液体による洗浄後は、遠心分離やろ過等の公知の固液分離方法により、洗浄された沈殿物と液体とに分離することができる。液体による洗浄は、十分に前記不純物成分を除去するため、複数回の繰り返し操作により行うことが好ましい。
前記乾燥は、前記洗浄に用いた液体を蒸発させることができればよく、乾燥方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて行うことができる。乾燥温度は、常温乾燥が好ましいが、製造効率の観点から加熱乾燥してもよい。例えば、水を加熱乾燥により除去する場合においても、比表面積の低下を抑制の観点から、120℃以下であることが好ましい。より高温で、例えば、200℃以上での熱処理(仮焼)は、得られる酸化ジルコニウム粉末の微細性が低下する場合もあるため、行わないことが好ましい。
得られた酸化ジルコニウム粉末は、その用途に応じて、公知の方法により、粉砕又は解砕し、分級して、所望の粒度の分級品を調製するようにしてもよい。
得られた酸化ジルコニウム粉末は、その用途に応じて、公知の方法により、粉砕又は解砕し、分級して、所望の粒度の分級品を調製するようにしてもよい。
[用途]
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム等の誘電材料、また、安定化ジルコニアやジルコニア系セラミックス等の原料として好適に用いることができる。
例えば、ジルコン酸カルシウムは、前記酸化ジルコニウム粉末及び炭酸カルシウム粉末の混合物を加熱して固相反応を行う公知の方法を用いて合成することができる。本発明の微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を用いることにより、誘電材料として有用なジルコン酸カルシウム粉末が得られる。
上記のように、本発明の酸化ジルコニウム粉末を用いて製造されたジルコン酸カリウム等の誘電材料は、セラミックスコンデンサのセラミックス層に好適に用いることができる。本発明の酸化ジルコニウム粉末は、それ以外にも、微細かつ優れた結晶性を活かして、研磨材、触媒、小型電子機器等に用いられる部品材料等の種々の用途に好適に適用することができる。
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム等の誘電材料、また、安定化ジルコニアやジルコニア系セラミックス等の原料として好適に用いることができる。
例えば、ジルコン酸カルシウムは、前記酸化ジルコニウム粉末及び炭酸カルシウム粉末の混合物を加熱して固相反応を行う公知の方法を用いて合成することができる。本発明の微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末を用いることにより、誘電材料として有用なジルコン酸カルシウム粉末が得られる。
上記のように、本発明の酸化ジルコニウム粉末を用いて製造されたジルコン酸カリウム等の誘電材料は、セラミックスコンデンサのセラミックス層に好適に用いることができる。本発明の酸化ジルコニウム粉末は、それ以外にも、微細かつ優れた結晶性を活かして、研磨材、触媒、小型電子機器等に用いられる部品材料等の種々の用途に好適に適用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[酸化ジルコニウム粉末の製造]
(実施例1)
500mLフッ素樹脂製ビーカーに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrCl2O・8H2O、関東化学株式会社製;以下、同じ。)25.6g(0.079モル)を入れ、純水200.0gを加え、撹拌して溶解した。
これに、撹拌しながら、水酸化カルシウム(Ca(OH)2、関東化学株式会社製)5.0g(0.067モル、Zr1モルに対し0.85モル)を純水200.0gに添加した懸濁液を加え、3時間撹拌して均一に混合した。pHは3.4であった。なお、pHは、ポータブルpHメーター(「D−74」、株式会社堀場製作所製、25℃)で測定した。
前記ビーカー上部を覆い、ジムロート冷却器を設置し、ビーカー内の液を撹拌しながら、マントルヒーターで沸点(約98℃)まで加熱して、加熱還流を72時間行った。
得られた反応生成液を25℃に冷却後、濃度25質量%のアンモニア水約40mLで中和(pH約8.2)した後、遠心分離装置(「H−2000B」、株式会社コクサン社製)にて、遠心力約7000×g、回転数3000rpm5分間の遠心分離を行い、沈殿物を生成させた。上澄み液を純水に置換して、撹拌混合した後、再度、遠心分離を行う操作を10回繰り返すことにより、前記反応生成液中のアンモニア及び塩素分の洗浄除去処理を行った。なお、アンモニア及び塩素分の洗浄除去が十分になされていることは、前記pHメーターを用いて、上澄み液の導電率が100μS/cm未満となっていることにより確認した。
得られた沈殿物を、オーブンにて、大気中、80℃で2日間乾燥し、酸化ジルコニウム粉末を得た。
(実施例1)
500mLフッ素樹脂製ビーカーに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrCl2O・8H2O、関東化学株式会社製;以下、同じ。)25.6g(0.079モル)を入れ、純水200.0gを加え、撹拌して溶解した。
これに、撹拌しながら、水酸化カルシウム(Ca(OH)2、関東化学株式会社製)5.0g(0.067モル、Zr1モルに対し0.85モル)を純水200.0gに添加した懸濁液を加え、3時間撹拌して均一に混合した。pHは3.4であった。なお、pHは、ポータブルpHメーター(「D−74」、株式会社堀場製作所製、25℃)で測定した。
前記ビーカー上部を覆い、ジムロート冷却器を設置し、ビーカー内の液を撹拌しながら、マントルヒーターで沸点(約98℃)まで加熱して、加熱還流を72時間行った。
得られた反応生成液を25℃に冷却後、濃度25質量%のアンモニア水約40mLで中和(pH約8.2)した後、遠心分離装置(「H−2000B」、株式会社コクサン社製)にて、遠心力約7000×g、回転数3000rpm5分間の遠心分離を行い、沈殿物を生成させた。上澄み液を純水に置換して、撹拌混合した後、再度、遠心分離を行う操作を10回繰り返すことにより、前記反応生成液中のアンモニア及び塩素分の洗浄除去処理を行った。なお、アンモニア及び塩素分の洗浄除去が十分になされていることは、前記pHメーターを用いて、上澄み液の導電率が100μS/cm未満となっていることにより確認した。
得られた沈殿物を、オーブンにて、大気中、80℃で2日間乾燥し、酸化ジルコニウム粉末を得た。
(実施例2〜5、比較例3〜5)
実施例1において、添加する水酸化カルシウムの量(カルシウム原子(Ca)量)を、オキシ塩化ジルコニウム八水和物1モル(ジルコニウム原子(Zr)1モル)に対して、下記表1に示す割合にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同様にして、各酸化ジルコニウム粉末を得た。
実施例1において、添加する水酸化カルシウムの量(カルシウム原子(Ca)量)を、オキシ塩化ジルコニウム八水和物1モル(ジルコニウム原子(Zr)1モル)に対して、下記表1に示す割合にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同様にして、各酸化ジルコニウム粉末を得た。
(実施例6)
実施例1において、添加する水酸化カルシウムの量をZr1モルに対して0.30モルとし、併せて、Zr1モルに対して0.30モルの割合で炭酸カルシウム(CaCO3、関東化学株式会社製;以下、同じ。)を添加し(Zr1モルに対する合計Ca量0.60モル)、それ以外は実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粉末を得た。
実施例1において、添加する水酸化カルシウムの量をZr1モルに対して0.30モルとし、併せて、Zr1モルに対して0.30モルの割合で炭酸カルシウム(CaCO3、関東化学株式会社製;以下、同じ。)を添加し(Zr1モルに対する合計Ca量0.60モル)、それ以外は実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粉末を得た。
(実施例7)
実施例1において、水酸化カルシウムに代えて、炭酸カルシウムをZr1モルに対して0.63モルの割合で添加し、それ以外は実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粉末を得た。
実施例1において、水酸化カルシウムに代えて、炭酸カルシウムをZr1モルに対して0.63モルの割合で添加し、それ以外は実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粉末を得た。
(実施例8)
実施例1において、添加する炭酸カルシウムの量をZr1モルに対して0.50モルの割合で添加し、それ以外は実施例7と同様にして、酸化ジルコニウム粉末を得た。
実施例1において、添加する炭酸カルシウムの量をZr1モルに対して0.50モルの割合で添加し、それ以外は実施例7と同様にして、酸化ジルコニウム粉末を得た。
(比較例1)
1Lのフッ素樹脂製ビーカーに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物25.6g(0.079モル)を入れ、純水400.0gを加えて、撹拌して溶解した。
これに、撹拌しながら、濃度25質量%のアンモニア水約20mL、及び濃度31質量%の過酸化水素水35mLを加えた。pHは3.4であった。
前記ビーカー上部を覆い、ジムロート冷却器を設置し、ビーカー内の液を撹拌しながら、マントルヒーターで80℃まで加熱して2時間保温した後、沸点(約100℃)まで加熱して、加熱還流を72時間行った。
室温(25℃)まで放冷後、得られた反応生成液を、濃度25質量%のアンモニア水でpH8.4に調整し、2時間静置して、沈殿を生じさせた。
上澄み液を純水に置換して、撹拌混合して静置する操作を10回繰り返すことにより、前記反応生成液中のアンモニア及び塩素分の洗浄除去処理を行った。
なお、アンモニア及び塩素分の洗浄除去が十分になされていることの確認は、実施例1と同様にして行った。
得られた沈殿物を、オーブンにて、大気中、80℃で2日間乾燥し、酸化ジルコニウム粉末を得た。
1Lのフッ素樹脂製ビーカーに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物25.6g(0.079モル)を入れ、純水400.0gを加えて、撹拌して溶解した。
これに、撹拌しながら、濃度25質量%のアンモニア水約20mL、及び濃度31質量%の過酸化水素水35mLを加えた。pHは3.4であった。
前記ビーカー上部を覆い、ジムロート冷却器を設置し、ビーカー内の液を撹拌しながら、マントルヒーターで80℃まで加熱して2時間保温した後、沸点(約100℃)まで加熱して、加熱還流を72時間行った。
室温(25℃)まで放冷後、得られた反応生成液を、濃度25質量%のアンモニア水でpH8.4に調整し、2時間静置して、沈殿を生じさせた。
上澄み液を純水に置換して、撹拌混合して静置する操作を10回繰り返すことにより、前記反応生成液中のアンモニア及び塩素分の洗浄除去処理を行った。
なお、アンモニア及び塩素分の洗浄除去が十分になされていることの確認は、実施例1と同様にして行った。
得られた沈殿物を、オーブンにて、大気中、80℃で2日間乾燥し、酸化ジルコニウム粉末を得た。
(比較例2)
比較例1で得られた酸化ジルコニウム粉末を、オーブンにて、大気中、400℃で2時間加熱処理した。
比較例1で得られた酸化ジルコニウム粉末を、オーブンにて、大気中、400℃で2時間加熱処理した。
(比較例6)
1Lのフッ素樹脂製ビーカーに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物25.6g(0.079モル)及び塩化カルシウム7.1g(0.064モル、Zr1モルに対し0.81モル)を入れ、純水400.0gを加えて、撹拌して溶解した。
これに、撹拌しながら、濃度31質量%の過酸化水素水35mLを加えた。
その後の操作は、比較例1と同様にして行い、酸化ジルコニウム粉末を得た。
1Lのフッ素樹脂製ビーカーに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物25.6g(0.079モル)及び塩化カルシウム7.1g(0.064モル、Zr1モルに対し0.81モル)を入れ、純水400.0gを加えて、撹拌して溶解した。
これに、撹拌しながら、濃度31質量%の過酸化水素水35mLを加えた。
その後の操作は、比較例1と同様にして行い、酸化ジルコニウム粉末を得た。
[粉末の分析測定]
上記実施例及び比較例で得られた酸化ジルコニウム粉末について、下記に示す方法により、BET比表面積及び平均一次粒子径を測定した。また、粉末X線回折測定により、所定のピークの半値幅、結晶格子定数、単位格子体積及びカルシウム含有量を求めた。これらの測定結果を、下記表1にまとめて示す。なお、下記表1において、各測定結果の欄の「−」の表記は、未測定であることを示している。
以下の各分析測定においては、上記実施例及び比較例で得られた酸化ジルコニウム粉末を、乳鉢解砕したものを試料粉末とした。
上記実施例及び比較例で得られた酸化ジルコニウム粉末について、下記に示す方法により、BET比表面積及び平均一次粒子径を測定した。また、粉末X線回折測定により、所定のピークの半値幅、結晶格子定数、単位格子体積及びカルシウム含有量を求めた。これらの測定結果を、下記表1にまとめて示す。なお、下記表1において、各測定結果の欄の「−」の表記は、未測定であることを示している。
以下の各分析測定においては、上記実施例及び比較例で得られた酸化ジルコニウム粉末を、乳鉢解砕したものを試料粉末とした。
(BET比表面積)
JIS R 1626:1996に準じて、全自動BET比表面積測定装置(「Macsorb(登録商標)HM model−1208」、株式会社マウンテック製)にて、BET3点法で吸着質として窒素ガスを用いて、BET比表面積を測定した。
JIS R 1626:1996に準じて、全自動BET比表面積測定装置(「Macsorb(登録商標)HM model−1208」、株式会社マウンテック製)にて、BET3点法で吸着質として窒素ガスを用いて、BET比表面積を測定した。
(平均一次粒子径)
SEM観察により、試料粉末の平均一次粒子径を求めた。
観察用試料片は、エタノール洗浄した3mm四方のシリコンウェーハ片上に粉末試料を載せ、前記シリコンウェーハ片を導電性の両面テープで試料台に固定することにより作製した。
SEM観察は倍率100,000倍で行い、観察画像において、任意の20個の粒子の長径と短径を計測し、その平均を粒子径とした。これらの粒子径の20点のデータのうち、値が大きい方から5点及び値が小さい方から5点のデータを除き、残りの10点の算術平均値を求め、この値を平均一次粒子径とした。
SEM観察により、試料粉末の平均一次粒子径を求めた。
観察用試料片は、エタノール洗浄した3mm四方のシリコンウェーハ片上に粉末試料を載せ、前記シリコンウェーハ片を導電性の両面テープで試料台に固定することにより作製した。
SEM観察は倍率100,000倍で行い、観察画像において、任意の20個の粒子の長径と短径を計測し、その平均を粒子径とした。これらの粒子径の20点のデータのうち、値が大きい方から5点及び値が小さい方から5点のデータを除き、残りの10点の算術平均値を求め、この値を平均一次粒子径とした。
(粉末X線回折測定)
X線回折装置(「X’pert PRO」、パナリティカル社製)にて、X線回折測定を行った。測定は、銅ターゲット、CuKα線(Cu−Kα1)、管電圧45kV、管電流40mAの条件にて、測定範囲2θ=18°〜80°、サンプリング幅0.0167°、走査速度3.3°/minで行った。
X線回折装置(「X’pert PRO」、パナリティカル社製)にて、X線回折測定を行った。測定は、銅ターゲット、CuKα線(Cu−Kα1)、管電圧45kV、管電流40mAの条件にて、測定範囲2θ=18°〜80°、サンプリング幅0.0167°、走査速度3.3°/minで行った。
得られた回折スペクトルにおける回折角2θ=28°±1°の範囲にある主ピーク(単斜晶酸化ジルコニウムにおいて現れるピーク)及びスペクトル全体から、上記実施例及び比較例の試料粉末がいずれも、酸化ジルコニウムであると同定した。
図1に、実施例1及び3並びに比較例1及び3の回折スペクトルを代表例として示す。
図1に、実施例1及び3並びに比較例1及び3の回折スペクトルを代表例として示す。
また、リートベルト解析(使用ソフトウェア:「RIETAN−FP」)により、前記主ピークの半値幅(FWHM:full width at half maximum)、結晶格子定数及び単位格子体積を求めた。解析においては、α及びβは90°に固定した。
なお、比較例3は、結晶性が十分ではないため、結晶格子定数は求めなかった。
なお、比較例3は、結晶性が十分ではないため、結晶格子定数は求めなかった。
(カルシウム含有量)
多元素同時蛍光X線分析装置「Simultix 14」(株式会社リガク製)にて、蛍光X線(XRF)スペクトルを測定し、ファンダメンタルパラメータ法でカルシウム(Ca)含有量を求めた。
多元素同時蛍光X線分析装置「Simultix 14」(株式会社リガク製)にて、蛍光X線(XRF)スペクトルを測定し、ファンダメンタルパラメータ法でカルシウム(Ca)含有量を求めた。
表1及び図1に示した結果から分かるように、実施例1〜8の酸化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が100m2/g以上であり、かつ、X線回折の2θ=28°±1°における半値幅が1.96°以下であった。また、平均一次粒子径が30.0nm以下であった。このことから、ジルコニウム塩の加水分解時に所定のカルシウム化合物を添加することにより、微細かつ結晶性に優れた酸化ジルコニウム粉末が得られることが認められた。
一方、アンモニア添加によりpH調整して加水分解する従来の方法で製造された酸化ジルコニウム粉末(比較例1)は、微細であるものの、結晶性に劣り、また、これを熱処理すると(比較例2)、結晶性が向上するものの、微細性が損なわれることが確認された。
なお、比較例3では、結晶性が十分ではないことから、実施例1よりも、添加したCa量が多いにもかかわらず、得られた酸化ジルコニウム粉末中のCa含有量が実施例1よりも少なかったものと推測される。
一方、アンモニア添加によりpH調整して加水分解する従来の方法で製造された酸化ジルコニウム粉末(比較例1)は、微細であるものの、結晶性に劣り、また、これを熱処理すると(比較例2)、結晶性が向上するものの、微細性が損なわれることが確認された。
なお、比較例3では、結晶性が十分ではないことから、実施例1よりも、添加したCa量が多いにもかかわらず、得られた酸化ジルコニウム粉末中のCa含有量が実施例1よりも少なかったものと推測される。
Claims (9)
- BET比表面積が100m2/g以上であり、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが28°±1°の範囲にある主ピークの半値幅が、1.96°以下である、酸化ジルコニウム粉末。
- 平均一次粒子径が10.0〜30.0nmである、請求項1に記載の酸化ジルコニウム粉末。
- 結晶構造の単位格子体積が0.1447nm3以下である、請求項1又は2に記載の酸化ジルコニウム粉末。
- ジルコニウム塩の加水分解により酸化ジルコニウム粉末を製造する方法において、
ジルコニウム塩の水溶液に、25℃における水への溶解度が5.0g/L以下であるカルシウム化合物を、前記ジルコニウム塩のジルコニウム原子1モルに対して0.35モル以上0.90モル未満添加して加水分解反応を行う、酸化ジルコニウム粉末の製造方法。 - 前記カルシウム化合物が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上である、請求項4に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
- 前記ジルコニウム塩の水溶液の濃度が0.02〜0.40モル/Lである、請求項4又は5に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
- 前記加水分解反応を加熱還流下で行う工程と、
前記工程で得られた反応生成液を中和して沈殿物を生成させる工程と、
前記沈殿物を洗浄した後、乾燥する工程とを含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。 - 前記ジルコニウム塩が、オキシ塩化ジルコニウム八水和物及び硝酸ジルコニウム二水和物から選ばれる1種以上である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
- 前記カルシウム化合物が、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種以上である、請求項4〜8のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末の製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111848161A (zh) * | 2020-08-05 | 2020-10-30 | 上海大学(浙江·嘉兴)新兴产业研究院 | 一种纳米氧化锆粉体的制备方法 |
-
2018
- 2018-05-21 JP JP2018097274A patent/JP2019202901A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111848161A (zh) * | 2020-08-05 | 2020-10-30 | 上海大学(浙江·嘉兴)新兴产业研究院 | 一种纳米氧化锆粉体的制备方法 |
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