第1の発明は、炭化水素が主成分として含まれる原料を改質して水素含有ガスを生成する改質器と、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を酸化反応により低減すると共にアンモニアを分解可能な酸化触媒を備えるCO除去器と、改質器に原料を供給する原料供給器と、改質器に水を供給する水供給器と、CO除去器に酸化ガスを供給する酸化ガス供給器と、制御器と、を備え、制御器が、CO除去器に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に関するパラメータに応じて、原料中の炭化水素の炭素原子数と、改質器に供給される水の水分子数との比率であるS/Cを、原料中に窒素化合物が含まれていない場合の運転時のS/Cである第一設定値以下の範囲内の値で変化させるよう、水供給器と、原料供給器と、を制御することを特徴とする水素生成装置である。
これにより、S/Cを第一設定値以下の範囲内の値で変化させることで、改質器からCO除去器へ供給される水素含有ガス中の水蒸気分圧が、S/Cを第一設定値に設定した時に比べ低下して、酸化触媒表面の水蒸気吸着量が減少する。
また、酸化触媒表面に対し水蒸気と一酸化炭素とは競合して吸着するので、酸化触媒表面の水蒸気吸着量が減少することにより、一酸化炭素、及び水素の吸着量が増加する。このとき、酸化触媒表面で(化3)に示したニトロシルの生成反応に次いで、(化4)あるいは(化5)に示すニトロシルの還元反応が進行する。
(化4)および(化5)は平衡反応であり、(化4)では生成物である水蒸気の吸着量が減少し、(化5)では反応物である一酸化炭素の吸着量が増加することで、(化4)(化5)共に反応が右辺に進行し、ニトロシルの分解が促進される。
このように酸化触媒表面に吸着したニトロシルを分解することで、酸化触媒のアンモニア分解活性が向上し、アンモニア除去器を備えなくとも水素含有ガス中のアンモニア濃度を低減することができ、機器コストを低減することができる。
第2の発明は、特に、第1の発明における制御器が、パラメータが所定の閾値未満の場合には、S/Cを第一設定値に設定し、パラメータが所定の閾値以上の場合には、S/Cを第一設定値未満の第二設定値に設定するよう水供給器、原料供給器を制御することを特徴とするものである。
これにより、パラメータが所定の閾値を超えるまではS/Cの変化を行わず、運転を行うことができる。このため、S/Cを低い値に変化させることによる水素含有ガスの生成量低下、及び改質触媒での炭素析出を抑制しながら、アンモニア濃度を十分に低減した水素含有ガスを供給することが可能となる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明におけるパラメータが、原料中の窒素化合物の濃度に関連する情報を基に決定されることを特徴とするものである。
これにより、原料中の窒素化合物の濃度に関連する情報からCO除去器に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度を計算することができ、水素含有ガス中のアンモニア濃度に応じて適切なS/Cに変化させることが可能となる。このため、水素含有ガスの生成量の減少、及び改質触媒での炭素析出を抑制しながら、アンモニア濃度を十分に低減した水素含有ガスを供給することができる。
第4の発明は、特に、第3の発明における情報を取得する情報取得器を更に備えていることを特徴とするものである。
これにより、原料中の窒素化合物の濃度をより正確に把握することができるので、CO
除去器に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に応じて適切なS/Cに変化させ、アンモニア分解活性を向上することが可能となる。このため、水素含有ガスの生成量の減少、及び改質触媒での炭素析出を抑制しながら、アンモニア濃度を十分に低減した水素含有ガスを供給することができる。
第5の発明は、特に、第3または第4の発明における情報が、窒素化合物の濃度に係る情報、原料の種類に係る情報、位置情報、及び原料の供給主体に係る情報の何れかであることを特徴とするものである。
これにより、水素生成装置を設置する地域が如何なる地域であっても、原料の供給主体が如何なる供給主体であっても、原料中の窒素化合物の濃度を正確に把握することができる。
このため、原料中の窒素化合物の濃度に応じて酸化触媒のアンモニア分解活性を向上させることが可能となり、より確実にアンモニア濃度を十分に低減した水素含有ガスを供給することが可能となる。
第6の発明は、特に、第1から第5のいずれか1つの発明における制御器が、S/Cを変化させる際に、原料供給量を変化させるよう原料供給器を制御することを特徴とするものである。
これにより、S/Cの変化に応じて変動する、改質器での水素含有ガスの生成量の変化を抑制しながら、水素含有ガス中のアンモニア濃度を燃料電池に供給するのに適した濃度にまで低減することが可能となる。
第7の発明は、特に、第1から第6のいずれか1つの発明において、改質器を加熱する加熱器をさらに備え、制御器が、S/Cを第一設定値以下の値に変化させる際に、改質器の温度を、原料中に窒素化合物が含まれていない場合の改質器の温度である第一設定値よりも高い温度に上げるよう加熱器を制御することを特徴とするものである。
これにより、改質器での水蒸気改質反応を促進することで、改質器での水素含有ガス中の水素量が増加すると共に、改質器からCO除去器へ供給される水素含有ガス中の水蒸気分圧をさらに低下させることができる。この結果、水素生成量の減少を抑制しながら、酸化触媒のアンモニア分解活性をさらに向上することができ、アンモニア濃度を十分に低減した水素含有ガスを供給することが可能となる。
第8の発明は、特に、第1から第7のいずれか1つの発明の水素生成装置と、水素生成装置から供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備えた燃料電池システムである。
これにより、窒素化合物を含む原料を用いて発電を行ったとしても、アンモニア濃度を十分に低減した水素含有ガスを用いて発電することができるので、燃料電池の劣化を抑制することが可能となり、燃料電池システムの長寿命化が可能となる。
第9の発明は、炭化水素が主成分として含まれる原料を改質して水素含有ガスを生成する改質器と、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を酸化反応により低減すると共にアンモニアを分解可能な酸化触媒を備えるCO除去器と、改質器に原料を供給する原料供給器と、改質器に水を供給する水供給器と、CO除去器に酸化ガスを供給する酸化ガス供給器と、を備える水素生成装置の運転方法であって、CO除去器に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に関するパラメータに応じて、原料中の炭化水素の炭素原子数と、
改質器に供給される水の水分子数の比率であるS/Cを、原料中に窒素化合物が含まれていない場合の運転時のS/C以下の範囲内の値で変化させることを特徴とする水素生成装置の運転方法である。
これにより、改質器からCO除去器へ供給される水素含有ガス中の水蒸気分圧が低下して、酸化触媒表面の水蒸気吸着量が減少する。また、酸化触媒表面に対し水蒸気と一酸化炭素は競合して吸着するので、酸化触媒表面の水蒸気吸着量が減少することにより、一酸化炭素、及び水素の吸着量が増加する。このとき、酸化触媒表面で(化3)に示したニトロシルの生成反応に次いで、(化4)あるいは(化5)に示すニトロシルの還元反応が進行する。
(化4)および(化5)は平衡反応であり、(化4)では生成物である水蒸気の吸着量が減少し、(化5)では反応物である一酸化炭素の吸着量が増加することで、(化4)(化5)共に反応が右辺に進行し、ニトロシルの分解が促進される。
このように酸化触媒表面に吸着したニトロシルを分解することで、酸化触媒のアンモニア分解活性が向上し、アンモニア除去器を備えなくとも水素含有ガス中のアンモニア濃度を低減することができ、機器コストを低減することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における水素生成装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態の水素生成装置350は、原料、及び燃料ガスとして窒素化合物の一種である窒素を含有する天然ガスを用い、酸化ガスとして空気を用いて水素含有ガスを生成する水素生成装置350であって、天然ガスを改質して水素含有ガスを生成する改質器100と、改質器100の温度を検知する改質器温度検知器50と、改質器100に天然ガスを供給する原料供給器20と、水を蒸発させて改質器100に水蒸気を供給する蒸発器31と、蒸発器31に水を供給する水供給器30と、改質器100が生成する水素含有ガス中に含まれる一酸化炭素の濃度を酸化反応により低減させるCO除去器150と、CO除去器150に空気を供給する酸化ガス供給器40と、CO除去器150から外部に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給流路60と、改質器100を加熱する加熱器10と、天然ガスを加熱器10に供給する燃料ガス供給流路70と、情報入力器310と、水素生成装置350を制御する制御器300と、を備える。
改質器100は、天然ガス及び水蒸気の混合ガスから改質反応により水素含有ガスを生成する。改質器100は、ステンレス構造体で構成され、その内部に改質反応を進行させる改質触媒が充填されている。
本実施の形態では、改質触媒として、アルミナビーズを担体としてルテニウムを担持させたものを用いた。改質器100での改質反応には、550℃から660℃の反応熱が必要であり、本実施の形態では、改質器100に隣接配置させた加熱器10から伝わる熱で改質器100の改質触媒を550℃から660℃に加熱している。
蒸発器31は、水供給器30より供給された水を蒸発させて、改質器100に水蒸気を供給する。
改質器温度検知器50は、改質器100の温度を検知するものであり、ここでは改質器
100の内部に設けた鞘管に設置された熱電対を用いて、触媒温度を直接測定する。
原料供給器20は、原料としての天然ガスを改質器100に供給するものであり、ここでは、流量調節可能なポンプを用いる。
水供給器30は、水を蒸発器31に供給するものであり、ここでは、流量調節可能なポンプを用いる。
CO除去器150は、改質器100から排出された水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を、水素生成装置350の外部に接続された水素利用機器(図示せず)が利用するのに必要な濃度、例えば10ppm以下の濃度にまで、酸化反応により低減させるものであり、内部に酸化触媒が充填されている。ここでは、酸化触媒として、アルミナビーズを担体としてルテニウムを担持させたものを用いる。
酸化ガス供給器40は、CO除去器150に、酸化ガスとしての空気を供給するファンである。
水素含有ガス供給流路60は、CO除去器150で一酸化炭素の濃度を低減した水素含有ガスを水素生成装置350の外部に供給する流路である。
燃料ガス供給流路70は、加熱器10に、燃料ガスとしての天然ガスを供給する流路である。
加熱器10は、改質器100を加熱するものであり、ここでは、燃料ガス供給流路70から供給される天然ガスを燃料に用いる燃焼器である。
情報入力器310は、CO除去器150に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に関するパラメータを決定するために必要な情報を入力するものであり、制御器300に電気的に接続される。ここでは、水素生成装置350に供給される天然ガスの供給主体を入力するディップスイッチである。
制御器300は、水素生成装置350の運転を制御するものであり、ここでは、信号入出力部(図示せず)と、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)と、を備えるマイコンである。
以上のように構成された本実施の形態の水素生成装置350について、その動作、作用について説明する。
以下の動作は、制御器300が、加熱器10、原料供給器20、水供給器30、酸化ガス供給器40を制御することにより行われる。ここで、水供給器30は、S/Cの設定値と原料供給器20からの天然ガス供給量とによって求められる、必要な量の水を、蒸発器31を介して改質器100に供給する。
ここで、S/Cは、改質器100に供給される天然ガス中の炭化水素の炭素原子数と、改質器100に供給される水蒸気中の水分子数との比率である。
また、酸化ガス供給器40は、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度と、S/Cの設定値と、原料供給器20からの天然ガス供給量を基に、平衡計算によって求められた、CO除去器150に供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度に対し、十分な量の空気を供給するよう設定される。
図2は実施の形態1における水素生成装置350の運転動作を示すフローチャートである。
図2に示すように、まず、制御器300は、水素生成装置350の運転開始要求があるか否かを判定する(S11)。
このとき、水素生成装置350の運転開始要求があった場合は、制御器300の制御によって、加熱器10が、燃料ガス供給経路70を経由して加熱器10に供給された天然ガスを燃焼させる動作を行って、改質器100を加熱する(S12)。これにより、改質器100は、加熱器10によって、水蒸気改質反応に適した温度である660℃に加熱される。
(S11)において、水素生成装置350の運転開始要求が無い場合には、水素生成装置350の運転開始要求があるまで、制御器300は、水素生成装置350の運転開始要求があるか否かの判定を繰り返し実行する。
次に、制御器300は、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達したか否かを判定する(S13)。
このとき、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達していた場合は、原料供給器20、水供給器30、酸化ガス供給器40を、それぞれ供給動作させる(S14)。
(S13)において、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達していない場合には、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達するまで、制御器300は、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達したか否かの判定を繰り返し実行する。
次に、情報入力器310に入力された情報から、S/C設定値、および水供給器30からの水供給量、酸化ガス供給器40からの空気供給量を決定する(S15)。
本実施の形態において、制御器300の記憶部には、水素生成装置350に供給される天然ガスの供給主体が供給する天然ガス中の窒素濃度と、供給される天然ガス中の窒素濃度に対して改質器100が生成する水素含有ガス中のアンモニア濃度が記憶されている。
ここで、情報入力器310から入力された天然ガスの供給主体から供給される天然ガス中の窒素濃度が、平均15%であった場合を例にとり、S/C設定値の決定方法を説明する。
本実施の形態においては、原料供給器20からの天然ガス供給量は3.0L/minであり、天然ガス中の窒素濃度は平均15%であり、改質器温度検知器50が検知した改質器100の温度は660℃である。
この条件でのCO除去器150に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度は、予め実験的に求められ、6ppmであり、制御器300の記憶部に記憶されている。また、CO除去器150から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度の目標値は、1ppmとする。
以上の条件から、S/Cを設定する。S/Cの設定は、水素含有ガス中のアンモニア濃
度を目標濃度に低減できるよう、S/CとCO除去器150のアンモニア分解率との関係を基に決定する。
図3は、実施の形態1の水素生成装置350におけるS/Cと、CO除去器150のアンモニア分解率の関係を示す特性図である。
図3に示すように、本実施の形態におけるS/Cと、CO除去器150のアンモニア分解率とは、S/Cを低下させることにより、CO除去器150のアンモニア分解率が向上する関係にある。この関係から、S/Cの設定値を下記の(数1)により算出する。
ここで、aはS/Cの設定値、bはCO除去器150出口の水素含有ガス中のアンモニア濃度の目標値(ppm)、cはCO除去器150に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度(ppm)である。
本実施の形態では、上記のように、bは1ppm、cは6ppmであるので、(数1)にこれらの値を代入し、S/C設定値aを求めて、S/C設定値aは2.5と決定する。
また、水供給器30からの水供給量は、上記のように原料供給器20からの天然ガス供給量を3.0L/minとし、S/Cは2.5、天然ガス中の窒素濃度は15%であるため、天然ガス中の炭化水素の炭素原子数から、水供給器30からの水供給量は5.12mL/minに決定する。
また、酸化ガス供給器40からの空気供給量は、改質器100の温度とS/Cから計算される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度の理論値とを基に設定する。本実施の形態においては、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の分子数の2倍の酸素分子を供給するよう空気供給量を0.85L/minに決定する。
次に、原料供給器20、水供給器30、酸化ガス供給器40のそれぞれの供給量を(S15)で決定した値に調節することで、水素含有ガス生成を開始する(S16)。
改質器100は、改質器100に供給された天然ガスと水(水蒸気)から、水蒸気改質反応により水素含有ガスを生成させる。一方で、改質器100で生成された水素含有ガスには、天然ガスに含まれる窒素から生成した、アンモニアが含まれる。
生成した水素含有ガスは、CO除去器150に流入し、CO除去器150内の酸化触媒上において酸化ガス供給器40から供給された空気中の酸素との酸化反応によって、一酸化炭素が酸化される。
その際にアンモニアは、空気中の酸素によって、ニトロシルへと酸化されたのち、水素含有ガス中の水素、あるいは一酸化炭素によって窒素へと還元される。アンモニアを十分に低減した水素含有ガスは、水素含有ガス供給流路60を経由して水素生成装置350外部に供給される。
(S16)の後で、制御器300は、水素生成装置350に対する運転停止要求の有無を判定する(S17)。このとき、水素生成装置350に対する運転停止要求がある場合
は、制御器300によって、水素生成装置350は運転を停止する。一方、(S17)において、水素生成装置350に対する運転停止要求が発生しない場合は、水素生成装置350に対する運転停止要求が発生するまで、(S17)の判定動作を繰り返す。
上記のように情報入力器310に入力された情報を基にS/Cを設定し、水素生成装置350を運転した結果、水素含有ガス供給流路60を経由して水素生成装置350外部に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度は、0.87ppmとなる。
本実施の形態の水素生成装置350における、窒素が含まれていない場合のS/Cである第一設定値は、3.2である。S/Cを3.2としたとき、窒素が15%含有した天然ガスを用いて水素含有ガスを生成した場合の水素含有ガス中のアンモニア濃度は2.04ppmであり、S/Cを第一設定値以下の範囲内の値に設定することにより、水素含有ガス中のアンモニア濃度を低減することが可能となる。
これは、以下の理由による。S/Cを、天然ガス中に窒素が含まれていない場合の運転時のS/Cである第一設定値3.2より低い範囲内の値としたとき、改質器100からCO除去器150へ供給される水素含有ガス中の水蒸気分圧が通常運転時より低下し、酸化触媒表面の水蒸気吸着量が減少する。
また、酸化触媒表面に対し水蒸気と一酸化炭素とは競合して吸着するので、酸化触媒表面の水蒸気量が減少することにより、一酸化炭素、及び水素の吸着量が増加する。このとき、酸化触媒表面で(化3)に示したニトロシルの生成反応に次いで、(化4)あるいは(化5)に示すニトロシルの還元反応が進行する。
(化4)および(化4)は平衡反応であり、(化4)では生成物である水蒸気の吸着量が減少し、(化4)では反応物である一酸化炭素の吸着量が増加することで(化4)(化4)共に反応が右辺に進行し、ニトロシルの分解が促進される。
このように酸化触媒表面に吸着したニトロシルを分解することで、酸化触媒上でのアンモニア分解活性が向上し、アンモニア除去器を備えなくとも水素含有ガス中のアンモニア濃度を低減することができる。
以上のように、本実施の形態の水素生成装置350は、炭化水素が主成分として含まれる天然ガスを改質して水素含有ガスを生成する改質器100と、この水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を酸化反応により低減すると共にアンモニアを分解可能な酸化触媒を備えるCO除去器150と、改質器100に天然ガスを供給する原料供給器20と、水を蒸発させて改質器100に水蒸気を供給する蒸発器31と、蒸発器31に水を供給する水供給器30と、CO除去器150に酸化ガスを供給する酸化ガス供給器40と、天然ガスを燃焼して改質器100を加熱する加熱器10と、天然ガスを加熱器10に供給する燃料ガス供給流路70と、CO除去器150から外部に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給流路60と、改質器100の温度を検知する改質器温度検知器50と、CO除去器150に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に関するパラメータを決定するために必要な情報を入力するための情報入力器310と、制御器300と、を備える。
そして、制御器300は、CO除去器150に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に関するパラメータである天然ガスの供給主体の情報に応じて、改質器100に供給される天然ガス中の炭化水素の炭素原子数と、改質器100に供給される水の水分子数との比率であるS/Cを、天然ガス中に窒素が含まれていない場合の運転時のS/Cである第一設定値の3.2より低い範囲内の値である2.5とするよう水供給器30、原料供給器20を制御するように構成されている。
これにより、CO除去器150の酸化触媒のアンモニア分解反応を促進でき、窒素を含む天然ガスを用いて水素含有ガスを生成する際においても、アンモニア除去器を備えずにアンモニア濃度を低減した水素含有ガスが生成することができ、機器コストを低減することができる。
なお、本実施の形態では、上記の水素生成装置350の構成及び運転方法を用いたが、これに限るものでなく、下記のような構成及び運転方法を用いることができる。
本実施の形態においては、原料として窒素を含む天然ガスを水蒸気改質する場合を挙げたが、改質反応が部分酸化反応と水蒸気改質反応とが同時に進行するオートサーマル方式であってもよい。この場合、窒素を含まない炭化水素と共に窒素を含む空気を混合し、原料として改質器100に供給されたとしても本実施の形態と同様の効果を得られる。
改質触媒としては、ルテニウムを担持したものに限定されることはなく、例えば、ニッケルを担持したものとしてもよい。また、酸化触媒としては、ルテニウムを担持したものに限定されることはなく、例えば、白金やロジウム、パラジウムを担持したものであってもよい。
また、本実施の形態においては、酸化ガス供給器40からの空気供給量を、水素含有ガス中の一酸化炭素の分子数の2倍の酸素分子を供給するよう設定し、S/Cの変化に伴い変更したが、これに限るものではなく、CO除去器150から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度に応じて適宜設定してもよい。
また、本実施の形態においては、情報入力器310によって天然ガスの供給主体の情報を入力したが、これに限るものではなく、CO除去器150に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度を推定できるもの、例えば、天然ガス中の窒素の濃度に係る情報、天然ガスの種類に係る情報、位置情報であってもよい。
あるいは情報入力器310を持たず、加熱器10に供給される天然ガス量と加熱器10の発熱量との比、または原料供給器20からの天然ガス供給量と改質器100の改質反応での吸熱量との比などで推定してもよい。
また、本実施の形態においては、制御器300の記憶部に、情報入力器310に入力された供給主体から供給される天然ガス中の窒素濃度に対して改質器100が生成する水素含有ガス中のアンモニア濃度が記憶されている。
しかし、天然ガス供給量、及び改質器100の温度の値の変化によって水素含有ガス中のアンモニア濃度が変化するため、複数枚のテーブルあるいは計算式を用いて、水素含有ガス中のアンモニア濃度を算出してもよい。
また、本実施の形態においては、水素含有ガス中のアンモニア濃度の目標値を1ppmと設定したが、これに限るものではなく、水素含有ガスを利用する水素利用機器が必要とする濃度に応じて変更してもよい。
また、(数1)は実験的に求めた関係式であるので、CO除去器150のアンモニア分解能に応じて変更してもよい。
また、本実施の形態においては、第一設定値は3.2とし、変更後の目標値は2.5と設定したが、これに限定されることはなく、効果がある任意の値に設定しても構わない。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2における燃料電池システムの構成を示すブロック図である。図4に示す実施の形態2の燃料電池システム400において、図1に示す実施の形態1の水素生成装置350と同じ構成要素には同じ符号を付与し、説明は適宜省略する。
図4に示すように、本実施の形態の燃料電池システム400は、原料、及び燃料ガスとして窒素化合物の一種である窒素を含有する天然ガスを用い、酸化ガスとして空気を用いて生成した水素含有ガス用いて発電する燃料電池システム400であって、天然ガスを改質して水素含有ガスを生成する改質器100と、改質器100の温度を検知する改質器温度検知器50と、改質器100に天然ガスを供給する原料供給器20と、水を蒸発させて改質器100に水蒸気を供給する蒸発器31と、蒸発器31に水を供給する水供給器30と、改質器100が生成する水素含有ガス中に含まれる一酸化炭素の濃度を酸化反応により低減させるCO除去器150と、CO除去器150に空気を供給する酸化ガス供給器40と、CO除去器150から燃料電池200に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給流路61と、燃料電池200と、天然ガスを加熱器10に供給する燃料ガス供給流路70と、改質器100を加熱する加熱器10と、天然ガス中の窒素の濃度に関連する情報を取得する情報取得器311と、燃料電池システム400を制御する制御器301と、を備える。
水素含有ガス供給流路61は、CO除去器150から流出した水素含有ガスを燃料電池200に供給する流路である。
燃料電池200は、水素含有ガス供給流路61から供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池200であり、ここでは、高分子電解質膜を用いたPEFCである。
情報取得器311は、天然ガス中の窒素濃度に関連する情報を取得するものであり、ここでは、天然ガス中の窒素濃度を測定する窒素濃度センサーである。
制御器301は、燃料電池システム400の運転を制御するものであり、ここでは、信号入出力部(図示せず)と、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)と、を備えるマイコンである。
以上のように構成された本実施の形態の燃料電池システム400について、以下、実施の形態1と異なる点を中心に、その動作、作用を具体的に説明する。
図5及び図6は、実施の形態2における燃料電池システム400の運転動作を示すフローチャートである。
図5及び図6に示すように、まず、制御器301は、燃料電池システム400の運転開始要求があるか否かを判定する(S21)。
このとき、燃料電池システム400の運転開始要求があった場合は、制御器301の制御によって、加熱器10が、燃料ガス供給経路70を経由して加熱器10に供給された天然ガスを燃焼させる動作を行って、改質器100を加熱する(S22)。これにより、改質器100は、加熱器10によって、水蒸気改質反応に適した温度である660℃に加熱される。
(S21)において、燃料電池システム400の運転開始要求が無い場合には、燃料電池システム400の運転開始要求があるまで、制御器301は、燃料電池システム400の運転開始要求があるか否かの判定を繰り返し実行する。
次に、制御器301は、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達したか否かを判定する(S23)。
このとき、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達していた場合は、原料供給器20、水供給器30、酸化ガス供給器40を、それぞれ供給動作させる(S24)。
(S23)において、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達していない場合には、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達するまで、制御器301は、改質器温度検知器50により検知した改質器100の温度が660℃に到達したか否かの判定を繰り返し実行する。
次に、制御器301は、原料供給器20、水供給器30と、酸化ガス供給器40とを所定の値に調節することで、水素含有ガス生成を開始する(S25)。
本実施の形態においては、原料供給器20からの天然ガス供給量は3.0L/minとし、天然ガス中に窒素が含まれていない場合の運転時のS/Cである第一設定値は3.0とする。S/Cの第一設定値3.0は、水素生成量が減少する、改質触媒で炭素析出が発生する、等の問題を防止するために適切な値である。
このとき、水供給器30からの水供給量は、天然ガス供給量とS/C設定値とから求められる必要な水量である、8.43mL/minと設定する。また、酸化ガス供給器40からの空気供給量は、改質器100の温度とS/Cから計算される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度の理論値を基に設定する。
本実施の形態においては、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の分子数の2倍の酸素分子を供給するよう空気供給量を設定する。本実施の形態においては、0.81L/minと設定する。
次に、制御器301は、情報取得器311が検出した天然ガス中の窒素濃度に応じて、水供給器30、酸化ガス供給器40を調節し(S26)、水供給量は(数2)、空気供給量は(数3)により算出された値に変更する。これにより、天然ガス中の窒素濃度の変化により変化する天然ガス中の炭化水素量に応じて、水供給量を変更することにより、S/Cを第一設定値である3.0に維持する。
ここで、cは水供給器30からの水供給量(mL/min)、dは天然ガス中の窒素濃
度(%)、eは酸化ガス供給器40からの空気供給量(L/min)である。
改質器100で生成した水素含有ガスは、CO除去器150によって一酸化炭素を十分に低減され、水素含有ガス供給流路61を経由して燃料電池200に供給され、発電が開始される。
次に制御器301は、天然ガス中の窒素濃度が閾値である2.5%以上であるかどうかを判定し(S27)、窒素濃度が2.5%以上の場合は(S28)に移行し、窒素濃度が2.5%未満の場合は(S26)に戻る。
制御器301は、原料供給器20と、水供給器30と、酸化ガス供給器40とを調節して、天然ガス供給量を増加させ、S/Cを第二設定値に変更する(S28)。
本実施の形態においては、原料供給器20からの天然ガス供給量を3.2L/minに変更し、第一設定値のS/C以下の値である第二設定値は2.5とし、水供給器30からの水供給量は天然ガス供給量とS/C設定値とから求められる必要な水量である、7.50ml/minに変更する。
また、天然ガス供給量の増加、S/Cの変更によりCO除去器150に供給される水素含有ガス量が増加し、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度の濃度が増加するため、空気供給量を1.47L/minに変更する。
また制御器301は、加熱器10を調整し、改質器100の温度を680℃に変更する(S29)。
次に制御器301は、水供給器30からの水供給量と、酸化ガス供給器40からの空気供給量とを、情報取得器311が検出した天然ガス中の窒素濃度に応じて、(数4)(数5)により算出された値に変更する(S30)。これにより、天然ガス中の窒素濃度の変化により変化する天然ガス中の炭化水素量に応じて、水供給量を変更することにより、S/Cを第二設定値である2.5に維持する。
次に制御器301は、天然ガス中の窒素濃度が閾値である2.5%未満であるか否かを判定(S31)する。このとき、天然ガス中の窒素濃度が2.5%未満の場合は、(S32)に移行し、天然ガス中の窒素濃度が2.5%以上である場合は(S30)に戻る。
制御器301は、原料供給器20と、水供給器30と、酸化ガス供給器40とを調節して、天然ガス供給量を3.0L/minに調節し、S/Cを第一設定値である3.0に設定(S32)する。
水供給器30からの水供給量、及び酸化ガス供給器40からの空気供給量は、天然ガス
中に窒素が2.5%弱含まれているため、水供給器30からの水供給量は8.22mL/minと設定し、酸化ガス供給器40からの空気供給量も同様に、0.79L/minと設定する。
また制御器301は、加熱器10を調節し、改質器100の目標温度を660℃に変更する(S33)。
次に制御器301は、燃料電池システム400の運転停止要求の有無を判定する(S34)。このとき、運転停止要求がない場合は(S26)に戻って運転を継続し、運転停止要求がある場合は、燃料電池システム400は運転を停止する。
図7は、実施の形態2の燃料電池システム400における天然ガス中の窒素濃度と、CO除去器150の出口ガス中のアンモニア濃度、水素量の関係を示す特性図である。
図7に示すように、CO除去器150から水素含有ガス供給流路61を経由し、燃料電池200に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度は、天然ガス中の窒素濃度増加に伴い、徐々に増加し、窒素濃度2.5%では0.88ppmに到達する。
しかし、S/Cを第二設定値である2.5に変更し、改質器100の温度を660℃から680℃に変更することにより、燃料電池200に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度は0.34ppmに減少する。
また、CO除去器150から水素含有ガス供給流路61を経由し、燃料電池200に供給される水素含有ガス中の水素量は、天然ガス中の窒素濃度増加に応じて減少する傾向にあるが、S/Cを第二設定値に変更すると共に、天然ガス供給量を増加し、さらに改質器100の温度を680℃に上げるよう運転することで、S/Cを3.0から2.5に下げても、燃料電池200に供給される水素量は、ほぼ同量を確保できる。
これによって、燃料電池200の発電量への影響を抑えながら、アンモニアを低い濃度に低減した水素含有ガスを燃料電池200に供給することができる。
以上のように、本実施の形態の燃料電池システム400は、炭化水素および窒素を含む天然ガスを改質して水素含有ガスを生成する改質器100と、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を酸化反応により低減させるCO除去器150と、改質器100に天然ガスを供給する原料供給器20と、水を蒸発させて改質器100に水蒸気を供給する蒸発器31と、蒸発器31に水を供給する水供給器30と、CO除去器150に空気を供給する酸化ガス供給器40と、天然ガス中の窒素の濃度に関連する情報を取得する情報取得器311と、制御器301と、燃料電池200を備える燃料電池システム400である。
そして、制御器301は、CO除去器150に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に関するパラメータである天然ガス中の窒素濃度が所定の閾値以上になった際に、炭化水素に対する水の比率であるS/Cを、天然ガス中に窒素が含まれていない場合の運転時のS/Cである第一設定値3.0より低い第二設定値2.5に変更するよう水供給器30、原料供給器20を制御し、第二設定値に変更する際に天然ガス供給量を増加させ、改質器100の温度を上げるという制御動作を行う。
これによって、アンモニア除去器を備えなくとも、CO除去器150から燃料電池200にアンモニア濃度を十分に低減した水素含有ガスを、供給量を減少させることなく供給し、低コストで長寿命な燃料電池システム400を提供することが可能となる。
なお、本実施の形態2では、上記の燃料電池システム400の構成及び運転方法を用いたが、これに限るものでなく、下記のような構成及び運転方法を用いることができる。
本実施の形態においては、天然ガス供給量と、水供給量とを同時に変更し、S/Cを変更したが、どちらか一方でもよく、例えば天然ガス供給量のみ増加してS/Cを変更してもよい。
また、本実施の形態においては、酸化ガス供給器40からの空気供給量を、理論計算により求められた、水素含有ガス中の一酸化炭素の分子数の2倍の酸素分子を供給するよう設定したが、これに限るものではなく、CO除去器150出口から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度に応じて変更してもよい。
また、本実施の形態においては、CO除去器に供給される水素含有ガス中のアンモニア濃度に関するパラメータとして、天然ガス中の窒素濃度を用いたが、これに限るものではない。
例えば、改質器100から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度を直接測定してもよいし、改質器100から排出される水素含有ガス中の窒素濃度を測定してもよい。さらに、天然ガス中の窒素濃度を推定できるもの、例えば天然ガスの種類に係る情報、位置情報、及び、天然ガスの供給主体に係る情報を取得して推定を行ってもよい。
また、本実施の形態においては、天然ガス中の窒素濃度に対し、閾値を2.5%と設定したが、これに限るものではなく、CO除去器150から流出する水素含有ガス中のアンモニア濃度が、燃料電池200が要求するアンモニア濃度の上限値を超えないと推定できる範囲に設定すればよく、例えば、燃料電池の要求するアンモニアの上限値が2ppmである場合は高く設定してもよく、安全をみてより低い値に設定してもよい。
また、本実施の形態においては、天然ガス中の窒素濃度が閾値である2.5%以上で第一設定値以下のS/Cである第二設定値に変更し、2.5%未満で第一設定値に変更したが、これに限るものではなく、別の閾値を設定してもよい。
あるいは天然ガス中の窒素濃度における改質器100のアンモニア濃度を実験により求め、(数1)あるいは図3を参照して窒素濃度に対する適切なS/Cを設定し、天然ガス中の窒素濃度の変化に応じて変更してもよい。
また、本実施の形態においては、S/C設定値を変更した直後の(S29)、(S33)で改質器100の温度をそれぞれ680℃、660℃に変更したが、この温度、タイミングに限るものではなく、別の温度であってもよい。また、S/C変更に伴う改質器100の温度への影響を抑制するために、改質器100の温度変更とS/C変更のタイミングを変えてもよい。
また、本実施の形態においては、S/Cを第二設定値に変更する際に、天然ガス供給量を3.2L/minに変更したが、これに限るものではなく、燃料電池200が必要とする水素含有ガス量を生成するように天然ガス供給量を変更してもよい。
また、本実施の形態においては、(S25)、(S28)、(S32)において、天然ガス供給量をそれぞれ3.0L/min、3.2L/min、3.0L/minに設定して、閾値を跨ぐ際にのみ設定値の変更を行ったが、これに限るものではなく、天然ガス中の窒素濃度に応じて変更してもよい。