JP2019201503A - 電力変換装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】単独運転状態の検出精度を高めることが可能な電力変換装置を得ること。【解決手段】電力変換装置は、電力変換部3の出力電圧および出力電圧の周波数に基づいて電力変換部3を制御する制御部10を備え、制御部10は、電力変換部3が出力する無効電力の値を周波数に基づいて決定し、第1の無効電力指令値を生成する周波数フィードバック部15と、電力変換部3が出力する無効電力の値を出力電圧および周波数に基づいて決定し、第2の無効電力指令値を生成するステップ注入部16と、第1の無効電力指令値および第2の無効電力指令値に基づいて電力変換部3を制御する電流制御部17と、単独運転の予兆を検出した場合、フリッカ事象の発生の有無によらず、周波数フィードバック部が第1の無効電力指令値を出力するよう制御するとともに、ステップ注入部が第2の無効電力指令値を出力するよう制御する無効電力発振抑制制御部20と、を備える。【選択図】図2
Description
本発明は、電力系統に連系して動作し、分散型電源が発電した直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換装置に関する。
太陽電池、風力発電、燃料電池等の分散型電源が発電した直流電力を交流電力に変換する装置として、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)がある。
PCSは、電力系統が停電したときに単独運転状態とならないようにするための単独運転検出機能を有しており、単独運転の検出方式としては能動的方式と、受動的方式とがある。
受動的方式とは系統が停電し、単独運転状態になると発生する電圧位相変化、周波数急変などの現象を検出することで単独運転を検出する方式である。
一方、能動的方式とは、電力系統に対し、PCSが、電圧または周波数を変動させるための能動信号を出力し、電力系統の停電時に電圧または周波数の変動を増長させることで単独運転を検出する方式である。能動的方式の一例としては、PCSの出力電流に周波数バイアスを与えておき、単独運転移行時に現れる周波数変動を検出する方式である周波数シフト方式がある。
このような能動的方式は、電力系統に複数のPCSが接続されると、各PCSから出力される能動信号同士が干渉し、本来の性能が発揮できない問題がある。この問題を解決するため、非特許文献1に記載されているステップ注入付周波数フィードバック方式が規格化され、単独運転を検出する機能の能動的方式が標準化されている。
また、非特許文献1には、ステップ注入付周波数フィードバック方式を適用したPCSが電力系統に多数連系されることにより配電線の線路インピーダンスが大きくなる場合の問題、具体的には、位相急変などの系統変動が発生してステップ注入付周波数フィードバック方式による無効電力の注入動作が発振し、フリッカ事象が発生する問題を回避するための制御が記載されている。具体的には、非特許文献1に記載のフリッカ事象が発生する問題を回避するための制御において、PCSは、フリッカ事象の予兆と想定される系統電圧の周波数変動を検出すると、フリッカ事象の原因となる無効電力の注入動作を停止する。また、PCSは、無効電力の注入動作を停止している状態では、系統電圧の高調波成分の変化に基づいて単独運転状態の予兆を検出し、単独運転状態の予兆を検出すると、無効電力注入動作を再開して単独運転を検出可能な状態に復帰する。
日本電機工業会規格JEM1498「分散型電源用単相パワーコンディショナの標準形能動的単独運転検出方式(ステップ注入付周波数フィードバック方式)」2012.8.27制定
非特許文献1に記載のステップ注入付周波数フィードバック方式を適用したPCSと電力系統との間の配電線に回転機が負荷として接続されている場合、フリッカ事象が発生している状態であっても、PCSからの出力電力と負荷における消費電力とがほぼ平衡した状態、すなわち、系統から負荷への有効電力および無効電力がほぼゼロの状態では、単独運転状態となったときに系統周波数が変化しない。このため、フリッカ事象の予兆と判断されず無効電力の注入を停止しないので、単独運転状態を検出することができる。しかしながら、PCSからの出力電力と負荷における消費電力とが平衡していない状態で単独運転状態になると系統周波数に変化が生じるが、回転機の影響により系統周波数に変化がなくなると、PCSはこれをフリッカ事象の予兆と判断して無効電力の注入を停止してしまうので、単独運転を検出できなくなるという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単独運転状態の検出精度を高めることが可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電力変換装置は、分散型電源から供給される直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換部と、電力変換部の出力電圧および出力電圧の周波数に基づいて電力変換部を制御する制御部と、を備える。制御部は、電力変換部が出力する無効電力の値を周波数に基づいて決定し、決定した値を示す第1の無効電力指令値を生成する周波数フィードバック部と、電力変換部が出力する無効電力の値を出力電圧および周波数に基づいて決定し、決定した値を示す第2の無効電力指令値を生成するステップ注入部と、を備える。また、制御部は、周波数フィードバック部から出力される第1の無効電力指令値およびステップ注入部から出力される第2の無効電力指令値に基づいて電力変換部を制御する電流制御部と、出力電圧および周波数に基づいて、単独運転の予兆の有無およびフリッカ事象の発生の有無を判定し、単独運転の予兆を検出した場合、フリッカ事象の発生の有無によらず、周波数フィードバック部が第1の無効電力指令値を出力するよう制御するとともに、ステップ注入部が第2の無効電力指令値を出力するよう制御する無効電力発振抑制制御部と、を備える。
本発明にかかる電力変換装置は、単独運転状態の検出精度を高めることができるという効果を奏する。
以下に、本発明の実施の形態にかかる電力変換装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電力変換装置の構成例を示す図である。実施の形態1にかかる電力変換装置100は、電力変換部3、周波数検出部4、電圧検出部5、連系開閉器6および制御部10を備える。電力変換装置100は、分散型電源である太陽電池1が出力する直流電力を交流電力に変換して電力系統である系統2側に出力するPCSである。また、電力変換装置100は、単独運転の検出をステップ注入付周波数フィードバック方式により行う。電力変換装置100と系統2とを接続する配電線には負荷101が接続される。なお、図1に示した例では、電力変換装置100に接続される分散型電源を太陽電池1としたが、電力変換装置100に接続される分散型電源は風力発電、燃料電池等であってもよい。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電力変換装置の構成例を示す図である。実施の形態1にかかる電力変換装置100は、電力変換部3、周波数検出部4、電圧検出部5、連系開閉器6および制御部10を備える。電力変換装置100は、分散型電源である太陽電池1が出力する直流電力を交流電力に変換して電力系統である系統2側に出力するPCSである。また、電力変換装置100は、単独運転の検出をステップ注入付周波数フィードバック方式により行う。電力変換装置100と系統2とを接続する配電線には負荷101が接続される。なお、図1に示した例では、電力変換装置100に接続される分散型電源を太陽電池1としたが、電力変換装置100に接続される分散型電源は風力発電、燃料電池等であってもよい。
電力変換部3は、電力変換装置100に接続される太陽電池1から出力された直流電力を系統2に連系するために交流電力に変換するDC(Direct Current)/AC(Alternating Current)インバータ回路である。電力変換部3には、図示しないが、太陽電池1の出力電圧をインバータ回路により交流電圧に変換するために必要な電圧に昇圧、または降圧するためのコンバータ回路を具備するものもある。
連系開閉器6は、電力変換部3と系統2との間に接続される。また、制御部10から出力される制御信号により、開路、閉路が制御される。具体的には、連系開閉器6は、電力変換部3から出力された交流電力を系統2に連系するために制御部10より出力される閉路信号により閉路し、電力変換部3の電力変換動作が停止したとき、制御部10より出力される開路信号により開路する。閉路信号は制御部10が出力する制御信号であり、連系開閉器6に対して閉極を指示する信号である。開路信号は制御部10が出力する制御信号であり、連系開閉器6に対して開極を指示する信号である。なお、電力変換部3は、制御部10により制御される。制御部10が電力変換部3の電力変換動作を停止させる要因としては、電力変換部3の動作を停止するスイッチ(不図示)により電力変換動作を停止したとき、系統電圧が115V以上など通常より高い状態となったとき、系統電圧が80V未満など通常の状態より低い状態となったとき、系統電圧の周波数が51Hzなど通常より大きい状態となったとき、系統電圧の周波数が47Hzなど通常より小さい状態となったとき、系統電圧が停電したことに伴い電力変換装置100の単独運転を検出したとき、などが該当する。また、電力変換部3を構成する部品の故障を制御部10が検出したときにも電力変換部3の電力変換動作を停止する。
周波数検出部4は、電力変換部3の出力側と制御部10との間に接続され、電力変換部3の出力電圧の周波数を検出し、検出結果を制御部10へ出力する。
電圧検出部5は、電力変換部3の出力側と制御部10との間に接続され、電力変換部3の出力電圧を検出し、検出結果を制御部10へ出力する。
制御部10は、周波数検出部4の出力と電圧検出部5の出力とを入力とし、電力変換部3へ駆動信号を出力するとともに、連系開閉器6へ制御信号を出力する。制御部10は、周波数検出部4の出力信号に基づいてフリッカ事象を検出した場合、フリッカ事象を抑制する動作となるような駆動信号を電力変換部3へ出力する。
次に、制御部10の詳細について説明する。図2は、制御部10の構成例を示す図である。制御部10は、周波数偏差演算部11、高調波検出部12、無効電力発振抑制制御部20、単独運転検出部14、周波数フィードバック部15、ステップ注入部16および電流制御部17を備える。
周波数偏差演算部11は、周波数検出部4から出力される電力変換部3の出力電圧の周波数を入力とし、入力された周波数に基づいて、電力変換部3の出力電圧の周波数偏差を演算する。周波数偏差演算部11は、演算により求めた周波数偏差を周波数フィードバック部15、ステップ注入部16、無効電力発振抑制制御部20および単独運転検出部14へ出力する。
なお、周波数偏差演算部11が演算する周波数偏差は、周波数の変動を検出することを目的としており、さまざまな演算方法がある。例えば、系統周波数の1サイクルごとの差分を周波数偏差としてもよいし、非特許文献1に記載されているように所定期間の系統周波数の移動平均値の差分を周波数偏差としてもよい。本実施の形態の周波数偏差演算部11では非特許文献1に記載されている方法で周波数偏差を演算するものとする。非特許文献1に示す周波数偏差の演算方法を図3に示す。図3に示した演算方法では、系統電圧の1周期ごとに計測した系統電圧周期の最新周期から40ms間の移動平均と、最新周期より200ms前の系統電圧周期から520ms前の系統電圧周期の移動平均値との差分を周波数偏差とする。
高調波検出部12は、電圧検出部5により検出された電力変換部3の出力電圧を入力とし、出力電圧の周波数に対する基本波成分と、2次から7次までの各次数の高調波成分とを演算する。高調波検出部12は、演算により求めた基本波成分および各高調波成分をステップ注入部16へ出力する。また、高調波検出部12は、演算により求めた各高調波成分を無効電力発振抑制制御部20へ出力する。交流電圧の基本波成分および高調波電圧の演算方法については、高速フーリエ変換、離散フーリエ変換などが良く知られている。例えば、離散フーリエ変換を用いる場合、式(1)に従って高調波成分を演算することができる。
式(1)において、nはサンプリング点(M個)であり、n=0,1,2,…,M−1である。f1は基本周波数であり、f1=1/(MT)=fs/M、fsはサンプリング周波数である。Tはサンプリング間隔であり、T=1/fsである。hは高調波の次数であり、h=0,1,2,…,M/2である。また、x[nT]は系統電圧、A[h]はh次余弦の振幅、B[h]はh次正弦の振幅、Harm[h]はh次高調波電圧(ピーク電圧)である。
無効電力発振抑制制御部20は、周波数偏差演算部11にて演算された周波数偏差と、高調波検出部12にて演算された電力変換部3の出力電圧の高調波成分とを入力とし、フリッカ事象の検出を行うとともに、フリッカ事象抑制動作の設定および解除を行うために無効電力注入可否信号を周波数フィードバック部15およびステップ注入部16へ出力する。詳細については後述するが無効電力注入可否信号は、「無効電力注入可」または「無効電力注入不可」を示す信号である。
単独運転検出部14は、周波数偏差演算部11により演算された電力変換部3の出力電圧の周波数偏差を入力とし、周波数偏差の変化に基づいて、電力変換装置100が単独運転状態か否かを判定する。単独運転検出部14は、単独運転状態であることを検出した場合には、連系開閉器6へ開路信号を出力する。
周波数フィードバック部15は、電力変換部3の出力電圧の周波数に基づいて、電力変換部3が出力する無効電力の値を決定する。より詳細には、周波数フィードバック部15は、周波数偏差演算部11により演算された電力変換部3の出力電圧の周波数偏差と、無効電力発振抑制制御部20から出力された無効電力注入可否信号とを入力とし、周波数偏差に比例した無効電力指令値を演算する。周波数フィードバック部15は、無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入可」を示す場合、演算した無効電力指令値を電流制御部17へ出力する。以下の説明では、周波数フィードバック部15が出力する無効電力指令値を「第1の無効電力指令値」と称する。
無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入可」を示す場合に周波数フィードバック部15が出力する第1の無効電力指令値は、図4に示すような周波数偏差−無効電力指令値の特性を持つ。図4は、周波数フィードバック部15が出力する無効電力指令値の特性を示す図であり、周波数フィードバック部15に入力される周波数偏差と周波数フィードバック部15から出力される第1の無効電力指令値の関係を示している。図4は、横軸に周波数偏差[Hz]、縦軸に無効電力指令値[p.u.]を示す。なお、p.u.はPer Unitの略である。図4の縦軸に示した無効電力指令値が第1の無効電力指令値である。周波数偏差が−0.01Hzから+0.01Hzの範囲においては、周波数フィードバック部15が出力する第1の無効電力指令値は0[p.u.]となる。また、周波数偏差が−0.01Hzから+0.01Hzの範囲に含まれない場合、予め定められた無効電力指令値の最大値または最小値となるまで、周波数偏差に比例した第1の無効電力指令値が周波数フィードバック部15から出力される。本実施の形態においては、周波数偏差と第1の無効電力指令値の関係を0.25p.u./0.5Hzとするが、一例であり、この限りではない。この関係式は周波数偏差が0.5Hzのとき、第1の無効電力指令値を0.25p.u.とすることを示す。
一方、無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入不可」を示す場合、図4に示す周波数偏差−無効電力指令値の特性によらず、周波数フィードバック部15が出力する第1の無効電力指令値を0Varとする。すなわち、周波数フィードバック部15は、無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入不可」を示す場合、周波数偏差演算部11から入力される周波数偏差の値によらず、0Varを示す第1の無効電力指令値を出力する。
ステップ注入部16は、電力変換部3の出力電圧および出力電圧の周波数に基づいて、電力変換部3が出力する無効電力の値を決定する。より詳細には、ステップ注入部16は、周波数偏差演算部11により演算された電力変換部3の出力電圧の周波数偏差と、高調波検出部12から出力された電力変換部3の出力電圧の基本波成分および各高調波成分と、無効電力発振抑制制御部20から出力された無効電力注入可否信号とを入力とし、無効電力注入可否信号が「無効電力注入可」を示し、かつ後述するステップ注入条件を満たす場合に電流制御部17へ0Var以外の無効電力指令値を出力する。以下の説明では、ステップ注入部16が出力する無効電力指令値を「第2の無効電力指令値」と称する。
本実施の形態における上記のステップ注入条件について説明する。本実施の形態において、ステップ注入条件を満たす場合とは、周波数偏差演算部11が演算した周波数が−0.01Hz以上+0.01Hz以下であり、かつ、図5に示す条件または図6に示す条件を満たす場合である。図5および図6は、ステップ注入条件の一部を構成する条件を示す図である。なお、本実施の形態におけるステップ注入条件は、非特許文献1に記載されている「6.1 ステップ注入の開始条件」に相当する。ステップ注入部16は、無効電力注入可否信号が無効電力注入可を示し、かつステップ注入条件を満たす状態、具体的には、「無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が無効電力注入可を示し、周波数偏差演算部11が演算した周波数が−0.01Hz以上+0.01Hz以下であり、かつ図5に示す条件を満たす状態」および「無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が無効電力注入可を示し、周波数偏差演算部11が演算した周波数が−0.01Hz以上+0.01Hz以下であり、かつ図6に示す条件を満たす状態」の場合、0.1p.u.を第2の無効電力指令値として出力する。
一方、無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入不可」を示す場合、ステップ注入部16は、基本波電圧の変化がステップ注入条件を満たしているかどうかによらず、0Varを第2の無効電力指令値として出力する。なお、無効電力発振抑制制御部20から入力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入不可」を示す場合でも、高調波電圧がステップ注入条件を満たしていれば、ステップ注入部16は0.1p.u.を第2の無効電力指令値として出力する。
電流制御部17は、周波数フィードバック部15から出力される第1の無効電力指令値とステップ注入部16から出力される第2の無効電力指令値とを入力とし、第1の無効電力指令値と第2の無効電力指令値とを加算し、加算値に対応する無効電力を出力させるための駆動信号を生成して電力変換部3へ出力する。
次に、無効電力発振抑制制御部20の構成について説明する。図7は、無効電力発振抑制制御部20の構成例を示す図である。なお、図7では、無効電力発振抑制制御部20への入力信号を生成する周波数偏差演算部11および高調波検出部12についても記載している。
無効電力発振抑制制御部20は、フリッカ発生検出部21、単独運転予兆検出部22および無効電力注入判定部23を備える。
フリッカ発生検出部21は、周波数偏差演算部11により演算された電力変換部3の出力電圧の周波数偏差を入力とし、周波数偏差に基づいてフリッカ事象の発生の有無を判定する。フリッカ発生検出部21は、電力変換部3の出力電圧の周波数偏差がフリッカ事象発生の判定条件を満たしていればフリッカ事象の発生ありと判定し、そうでなければフリッカ事象の発生なしと判定する。フリッカ発生検出部21は、判定結果、すなわちフリッカ事象の発生の有無を無効電力注入判定部23へ出力する。フリッカ事象発生の判定条件は非特許文献1に記載の条件を用いてもよいし、他の条件を用いてもよい。非特許文献1に記載のフリッカ事象の判定条件を使用する場合、フリッカ発生検出部21は、周波数の急変を検知するか、低振幅の周波数変動の継続を検知すると、フリッカ事象の発生と判定する。
具体的には、フリッカ発生検出部21は、周波数偏差が±0.16Hzを超えた後、周波数偏差の極性が反転、または周波数偏差が0Hzになると、周波数が急変したと判断し、フリッカ事象の発生ありを示す判定結果を出力する。また、フリッカ発生検出部21は、±0.01Hzを超える周波数偏差を検出後、165ms以内に、検出した周波数偏差の極性と異なる極性の0.01Hzを超える周波数偏差を12回連続で検出すると、低振幅の周波数変動の継続が発生したと判断し、この場合もフリッカ事象の発生ありを示す判定結果を出力する。
単独運転予兆検出部22は、高調波検出部12から出力された電力変換部3の出力電圧の高調波成分を入力とし、入力された高調波成分に基づいて単独運転予兆信号を生成して無効電力注入判定部23へ出力する。なお、単独運転予兆検出部22は、高調波成分が急増したとき、単独運転の予兆と判断し、高調波成分の変化が少ない場合は単独運転が発生しない、すなわち単独運転の予兆ではないと判断する。単独運転予兆検出部22は、単独運転の予兆を検出した場合、後述する解除条件を満足するまで、「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆信号を出力し続ける。「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆信号は、予兆検出状態を示す単独運転予兆信号である。本実施の形態において、単独運転予兆検出部22は単独運転の予兆を高調波成分の変化に基づいて検出することとしたが、検出方法をこれに限定するものではない。単独運転予兆検出部22は、単独運転の予兆を電力変換部3の出力電圧の周波数偏差に基づいて検出するなど、その他の方法にて検出してもよい。
無効電力注入判定部23は、フリッカ発生検出部21より出力されたフリッカ事象の発生の有無を示す判定結果と、単独運転予兆検出部22より出力される単独運転予兆信号とを入力とし、入力された各信号に基づいて無効電力注入可否信号を生成して、周波数フィードバック部15およびステップ注入部16へ出力する。
次に無効電力発振抑制制御部20の具体的な動作について説明する。系統2と電力変換装置100との間に接続される配電線の線路インピーダンスが大きい場合、非特許文献1に記載のとおり、電力変換装置100から出力される無効電力の影響により電力変換部3の出力電圧の周波数が変動し、フリッカ事象が発生する。フリッカ発生検出部21は、出力電圧の周波数の変動を検出した場合、フリッカ事象の発生と判断し、フリッカ事象の発生を示す検出結果を無効電力注入判定部23へ出力する。この場合、無効電力注入判定部23は、単独運転予兆検出部22が出力する単独運転予兆信号が「単独運転予兆なし」を示していれば、無効電力注入可否信号として「無効電力注入不可」を周波数フィードバック部15およびステップ注入部16へ出力する。周波数フィードバック部15は、「無効電力注入不可」が入力されると、電流制御部17へ出力する第1の無効電力指令値を0Varとし、また、ステップ注入部16は、「無効電力注入不可」が入力されると、基本波電圧がステップ注入の条件を満たしても、電流制御部17へ出力する第2の無効電力指令値を0Varとして、フリッカ事象の発生を抑制する。なお、フリッカ発生検出部21が出力電圧の周波数の変動を検出した場合とは、周波数偏差演算部11から入力される周波数偏差が上述した「フリッカ事象発生の判定条件」を満足する場合である。
また、無効電力注入判定部23は、無効電力注入可否信号として「無効電力注入不可」を出力しているときに、単独運転予兆検出部22が単独運転発生の予兆を検出した場合、すなわち、単独運転予兆検出部22から入力される単独運転予兆信号が「単独運転予兆あり」を示す状態となった場合、無効電力注入可否信号として「無効電力注入可」を出力する。周波数フィードバック部15は、「無効電力注入可」が入力されると、電流制御部17へ出力する第1の無効電力指令値を周波数偏差に対応する値とする。ステップ注入部16は、「無効電力注入可」が入力されると、上述したステップ注入条件が満たされているか否かに応じた値の第2の無効電力指令値を電流制御部17へ出力する。なお、ステップ注入部16は、無効電力注入可否信号として「無効電力注入可」が入力され、かつステップ注入条件が満たされている場合、第2の無効電力指令値を0.1p.u.として電流制御部17へ系統周期3サイクル間出力する。
無効電力注入判定部23は、単独運転予兆検出部22が単独運転発生の予兆を検出したことに伴い「無効電力注入可」を示す無効電力注入可否信号の出力を開始した場合、単独運転予兆検出部22から入力される単独運転予兆信号が「単独運転予兆なし」を示す状態となるまでの間、「無効電力注入可」を出力し続ける。なお、単独運転予兆検出部22は、予兆状態を解除する解除条件を満足した場合、「単独運転予兆なし」を示す単独運転予兆信号を出力する。単独運転予兆検出部22が予兆状態を解除する解除条件は、単独運転検出部14が単独運転を検出する前に系統2が復電した場合、および、単独運転を検出した場合である。無効電力注入判定部23は、単独運転予兆検出部22から入力される単独運転予兆信号が「単独運転予兆なし」を示す状態になると、フリッカ発生検出部21からの入力信号の状態に応じて、「無効電力注入可」または「無効電力注入不可」を示す無効電力注入可否信号を出力する。上述したように、無効電力注入判定部23は、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出していない場合は「無効電力注入可」を示す無効電力注入可否信号を出力し、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出した場合は「無効電力注入不可」を示す無効電力注入可否信号を出力する。
単独運転予兆検出部22が、単独運転検出部14が単独運転を検出する前に系統2が復電したと判定する条件は、単独運転発生の予兆を検出してから実際に単独運転を検出するまでの経過時間を用いて定められる。具体的には、系統2が復電したと判定する条件は、単独運転の予兆を検出してから単独運転とならずに予め定められた時間が経過した場合とする。単独運転予兆検出部22は、単独運転の予兆を検出後、単独運転検出部14が単独運転を検出することなく、予め定められた時間が経過した場合、系統2が復電したと判断する。単独運転予兆検出部22は、単独運転検出部14が単独運転を検出したか否かを、単独運転検出部14から検出結果の通知を受けて判別するようにしてもよいし、電力変換部3の出力電圧の周波数偏差に基づいて判別するようにしてもよい。
ここで、PCSが単独運転状態となった場合にこれを検出して系統から解列するまでの時間が文献“一般社団法人日本電気協会「系統連系規程JEAC9701-2016」2017.3.10制定”で規定されている。この文献(以下、非特許文献2と称する)の54頁〜66頁の記載によれば、ステップ注入付周波数フィードバック方式の場合、単独運転状態を検出して解列するまでの所要時間である解列時限が「瞬時」とされている。よって、系統2が実際に停電した場合は瞬時に単独運転状態が検出されることになり、復電したと判断するための上記の経過時間を非特許文献2に記載の解列時限よりも長い値に設定すればよい。そのため、本実施の形態では、単独運転予兆検出部22が予兆状態を解除する解除条件を、単独運転発生の予兆を検出してから0.2sが経過した場合とする。ステップ注入付周波数フィードバック方式を適用した電力変換装置は、停電が発生した場合に単独運転状態を瞬時に検出するため、単独運転発生の予兆を検出してから実際に単独運転を検出するまでの時間は非常に短く、単独運転を検出するための無効電力を出力する時間の長さは0.2sで十分である。なお、予兆状態を解除するまでの経過時間を0.2sとするのは一例であり、この限りではない。
つづいて、本実施の形態にかかる電力変換装置100の動作について、図8に示すフローチャートに従い説明する。図8は、実施の形態1にかかる電力変換装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
配電線の線路インピーダンスが大きく、フリッカ事象が発生する場合、電力変換部3の出力電圧の周波数が変動し(ステップS1)、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出する(ステップS2)。
フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出すると、無効電力注入判定部23が、無効電力注入可否信号として「無効電力注入不可」を周波数フィードバック部15およびステップ注入部16へ出力する(ステップS3)。周波数フィードバック部15は第1の無効電力指令値を0Varとし、ステップ注入部16は基本波電圧による注入条件を満たしても、第2の無効電力指令値を0Varとする。この結果、第1の無効電力指令値および第2の無効電力指令値が入力される電流制御部17は、無効電力の出力を停止させる制御信号を電力変換部3へ出力し、電力変換部3は無効電力の出力を停止する(ステップS4)。
その後、系統2が停電する、または、電力変換部3の出力電圧の高調波成分が急増すると(ステップS5)、単独運転予兆検出部22が単独運転の予兆を検出し、単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」を無効電力注入判定部23へ出力する(ステップS6)。なお、系統2の停電以外で電力変換部3の出力電圧に高調波成分が発生するのは、電力変換装置100の出力端に接続される負荷101が、高調波成分を発生するコンデンサインプット負荷の場合、インバータ機器の場合などが考えられる。
単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」が入力された無効電力注入判定部23は、無効電力注入可否信号として「無効電力注入可」を周波数フィードバック部15およびステップ注入部16へ出力する(ステップS7)。周波数フィードバック部15は、第1の無効電力指令値を電力変換部3の出力電圧の周波数偏差に基づく値とし、ステップ注入部16は、ステップ注入条件を満たした場合、第2の無効電力指令値を0.1p.u.とする。この結果、第1の無効電力指令値および第2の無効電力指令値が入力される電流制御部17は、無効電力の出力を指示する制御信号を電力変換部3へ出力し、電力変換部3は無効電力の出力を再開する(ステップS8)。このように、単独運転中にフリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出しても、単独運転予兆検出部22が単独運転の予兆を検出すると、周波数フィードバック部15が第1の無効電力指令値を出力する状態に復帰するため、単独運転を0.2s以内に検出できる。
その後、単独運転検出部14が、単独運転を検出すると(ステップS9:Yes)、連系開閉器6へ開路信号を出力して電力変換装置100を系統2から解列させるとともに、電力変換部3へ動作停止信号を出力して電力変換部3を停止させる(ステップS10)。また、単独運転予兆検出部22が、単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」を出力する状態を解除し、「単独運転予兆なし」を出力する(ステップS11)。これに伴い、無効電力注入判定部23から出力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入可」となる。その後、系統2が停電状態から正常状態に復帰し、単独運転予兆検出部22が単独運転の予兆を検出していない状態で、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出すると、無効電力注入判定部23は、無効電力注入可否信号として「無効電力注入不可」を出力する。この結果、電力変換部3が無効電力の出力を停止し、フリッカ事象の発生が抑制される。なお、系統2が停電状態から正常状態に復帰した時点でステップS1に戻り、フリッカ発生検出部21が電力変換部3の出力電圧の周波数変動を監視する。
単独運転検出部14が単独運転を検出していない場合(ステップS9:No)、単独運転予兆検出部22は、単独運転の予兆を検出してから予め定められた時間が経過したか否かを確認する。予め定められた時間は本実施の形態では上述したように0.2sとする。単独運転予兆検出部22は、単独運転の予兆を検出してから0.2sが経過すると(ステップS12:Yes)、系統は停電ではない(復電した)と判断する。そして、単独運転予兆検出部22は、単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」を出力する状態を解除し、「単独運転予兆なし」を出力する(ステップS13)。なお、単独運転検出部14が単独運転を検出せず、かつ単独運転予兆検出部22が単独運転の予兆を検出してから0.2sが経過していない状態の場合(ステップS9:No,ステップS12:No)、ステップS9およびS12の処理を繰り返す。
ステップS13を実行した後はステップS1に戻り、フリッカ発生検出部21が電力変換部3の出力電圧の周波数変動を監視する。この状態で電力変換部3の出力電圧の周波数が急変し、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出すると、無効電力注入判定部23から出力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入不可」となる。この結果、電力変換部3が無効電力の出力を停止し、フリッカ事象の発生が抑制される。
本実施の形態においてはフリッカ事象が発生する配電線に電力変換装置100が接続されている状態で系統2が停電する場合の電力変換装置100の動作の例を説明したが、フリッカ事象が発生していない配電線に電力変換装置100が接続されている状態で系統2が停電する場合の動作も同様である。すなわち、系統2が停電すると、単独運転検出部14は、単独運転を検出し、連系開閉器6へ開路信号を出力して電力変換装置100を系統2から解列させるとともに、電力変換部3へ動作停止信号を出力して電力変換部3を停止させる。
以上のように、本実施の形態にかかる電力変換装置100は、フリッカ事象の発生を検出し、かつ単独運転の予兆を検出していない状態の場合、単独運転を検出するために無効電力を出力する動作を停止し、フリッカ事象の発生を検出している状態で単独運転の予兆を検出した場合、単独運転を検出するために無効電力を出力する動作を再開する。また、電力変換装置100は、単独運転の予兆を検出している状態では、フリッカ事象の発生を検出しても、単独運転を検出するために無効電力を出力する動作を継続する。これにより、フリッカ事象が発生している配電線において系統2が停電して単独運転が発生する場合であっても、フリッカ事象が発生していない場合と同様に単独運転を検出することが可能となり、単独運転状態の検出精度を高めることができる。また、フリッカ事象の発生を検出している状態で単独運転の予兆を検出した場合、予め定められた時間が経過するまでの間、単独運転を検出するための無効電力の出力を行う。これにより、フリッカ事象の発生の原因となる無効電力の出力量が必要以上に大きくなるのを防止できる。
実施の形態2.
実施の形態2にかかる電力変換装置について説明する。なお、実施の形態1にかかる電力変換装置と異なる部分についてのみ説明する。実施の形態2にかかる電力変換装置の構成は、実施の形態1と同様である。実施の形態2にかかる電力変換装置と実施の形態1にかかる電力変換装置との違いは、無効電力発振抑制制御部の動作である。以下、説明の便宜上、実施の形態2にかかる電力変換装置を電力変換装置100aと称する。
実施の形態2にかかる電力変換装置について説明する。なお、実施の形態1にかかる電力変換装置と異なる部分についてのみ説明する。実施の形態2にかかる電力変換装置の構成は、実施の形態1と同様である。実施の形態2にかかる電力変換装置と実施の形態1にかかる電力変換装置との違いは、無効電力発振抑制制御部の動作である。以下、説明の便宜上、実施の形態2にかかる電力変換装置を電力変換装置100aと称する。
図9は、実施の形態2にかかる電力変換装置100aが備える無効電力発振抑制制御部20aの構成例を示す図である。無効電力発振抑制制御部20aは、実施の形態1で説明した無効電力発振抑制制御部20の単独運転予兆検出部22を単独運転予兆検出部25に置き換えた構成となる。無効電力発振抑制制御部20の単独運転予兆検出部22は、単独運転を検出する前に系統2が復電したときの判断を単独運転発生の予兆を検出してからの経過時間(0.2s)としたが、無効電力発振抑制制御部20aの単独運転予兆検出部25は、単独運転を検出する前に系統2が復電したときの判断を高調波検出部12が検出した高調波成分の変化に基づいて行う。
単独運転予兆検出部25は、高調波検出部12から出力された電力変換部3の出力電圧の高調波成分を入力とし、入力された高調波成分に基づいて単独運転予兆信号を生成して無効電力注入判定部23へ出力する。単独運転予兆検出部25は、高調波成分が急増したとき、単独運転の予兆であると判断し、高調波成分の変化が少ない場合は単独運転が発生していない、すなわち単独運転の予兆ではないと判断する。単独運転予兆検出部25は、単独運転の予兆を検出した場合、後述する解除条件を満足するまで、「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆信号を出力し続ける。
また、単独運転予兆検出部25は、単独運転状態の予兆を検出した場合、予兆を検出する直前の高調波検出部12が検出した電力変換部3の出力電圧の高調波成分を保持する。単独運転予兆検出部25は、「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆信号を出力する状態において、高調波検出部12が検出した電力変換部3の出力電圧の高調波成分の平均値が、保持している高調波成分の平均値以下となった場合、単独運転を検出、または、誤検出したと判断し、「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆信号を出力する状態を解除し、「単独運転予兆なし」を示す単独運転予兆信号を出力する状態となる。このように、本実施の形態では、高調波検出部12が検出した電力変換部3の出力電圧の高調波成分の平均値が、保持している高調波成分の平均値以下となる場合が、「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆信号の出力を解除する条件である。
無効電力発振抑制制御部20aの具体的な動作について説明する。単独運転予兆検出部25は、常時、高調波検出部12が検出した電力変換部3の出力電圧の高調波成分を監視する。系統2が停電した場合は電力変換部3の出力電圧の高調波成分が急増し、単独運転予兆検出部25は単独運転の予兆を検出し、単独運転予兆検出信号として「単独運転予兆あり」を無効電力注入判定部23へ出力する。無効電力注入判定部23は、「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆検出信号が入力されると、無効電力注入信号として「無効電力注入可」を出力する。また、単独運転予兆検出部25は、単独運転の予兆を検出する直前の高調波検出部12が検出した電力変換部3の出力電圧の高調波成分を保持する。単独運転予兆検出部25は、「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆検出信号の出力を開始後、保持している出力電圧の高調波成分の平均値と現在の出力電圧の高調波成分の平均値とを比較し、現在の出力電圧の高調波成分の平均値が保持している出力電圧の高調波成分の平均値よりも大きい場合は「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆検出信号を出力する状態を保持する。系統2が停電した場合、単独運転検出部14が単独運転であることを検出し、電力変換部3は運転を停止する。このとき、単独運転予兆検出部25は「単独運転予兆あり」を示す単独運転予兆検出信号を出力する状態を解除し、「単独運転予兆なし」を示す単独運転予兆検出信号の出力を開始する。
また、電力変換部3の出力電圧の高調波成分が急増する原因として、系統2の停電ではなく、電力変換装置100aの出力端に、高調波成分を発生するコンデンサインプット負荷、インバータ機器などが接続される場合がある。この場合、単独運転予兆検出部25は、高調波成分の急増を単独運転発生の予兆と誤検出し、単独運転予兆検出信号として「単独運転予兆あり」を無効電力注入判定部23へ出力するとともに、高調波検出部12が検出した高調波成分を保持する。しかし、系統2は実際には停電していないので、単独運転検出部14は単独運転を検出せず、単独運転予兆検出部25は単独運転予兆検出信号として「単独運転予兆あり」を出力し続ける。出力電圧の高調波成分の変化は過渡的な現象のため、時間が経過すると、出力電圧の高調波成分は負荷接続前の状態に戻る。単独運転予兆検出部25は、高調波検出部12が検出した現在の高調波成分の平均値が保持している高調波成分の平均値よりも小さくなると、単独運転の予兆ではないと判断し、単独運転予兆検出信号として「単独運転予兆なし」を出力する。
つづいて、実施の形態2にかかる電力変換装置100aの動作について、図10に示すフローチャートに従い説明する。図10は、実施の形態2にかかる電力変換装置100aの動作の一例を示すフローチャートである。
配電線の線路インピーダンスが大きく、フリッカ事象が発生する場合、電力変換部3の出力電圧の周波数が変動し(ステップS21)、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出する(ステップS22)。
フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出すると、無効電力注入判定部23が、無効電力注入可否信号として「無効電力注入不可」を周波数フィードバック部15およびステップ注入部16へ出力する(ステップS23)。周波数フィードバック部15は第1の無効電力指令値を0Varとし、ステップ注入部16は第2の無効電力指令値を0Varとする。この結果、第1の無効電力指令値および第2の無効電力指令値が入力される電流制御部17は、無効電力の出力を停止させる制御信号を電力変換部3へ出力し、電力変換部3は無効電力の出力を停止する(ステップS24)。
その後、系統2が停電する、または、電力変換部3の出力電圧の高調波成分が急増すると(ステップS25)、単独運転予兆検出部25が単独運転の予兆を検出し、単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」を無効電力注入判定部23へ出力する(ステップS26)。なお、系統2の停電以外で電力変換部3の出力電圧に高調波成分が発生するのは、電力変換装置100aの出力端に接続される負荷101が、高調波成分を発生するコンデンサインプット負荷の場合、インバータ機器の場合などが考えられる。
次に、単独運転予兆検出部25が、高調波検出部12が検出した高調波成分を保持する(ステップS27)。このステップS27で単独運転予兆検出部25が保持する高調波成分は第1の高調波成分であり、単独運転の予兆を検出する直前の高調波成分となる。
単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」が入力された無効電力注入判定部23は、無効電力注入可否信号として「無効電力注入可」を周波数フィードバック部15およびステップ注入部16へ出力する(ステップS28)。周波数フィードバック部15は、第1の無効電力指令値を電力変換部3の出力電圧の周波数偏差に基づく値とし、ステップ注入部16は、第2の無効電力指令値をステップ注入条件に基づく値とする。この結果、第1の無効電力指令値および第2の無効電力指令値が入力される電流制御部17は、無効電力の出力を指示する制御信号を電力変換部3へ出力し、電力変換部3は無効電力の出力を再開する(ステップS29)。このように、単独運転中にフリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出しても、単独運転予兆検出部25が単独運転の予兆を検出すると、周波数フィードバック部15が第1の無効電力指令値を出力する状態に復帰するため、単独運転を0.2s以内に検出できる。
次に、単独運転予兆検出部25が、高調波検出部12が検出した高調波成分を保持する(ステップS30)。このステップS30で単独運転予兆検出部25が保持する高調波成分は第2の高調波成分であり、現在の高調波成分となる。
その後、単独運転検出部14が、単独運転を検出すると(ステップS31:Yes)、連系開閉器6へ開路信号を出力して電力変換装置100aを系統2から解列させるとともに、電力変換部3へ動作停止信号を出力して電力変換部3を停止させる(ステップS32)。また、単独運転予兆検出部25が、単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」を出力する状態を解除し、「単独運転予兆なし」を出力する(ステップS33)。これに伴い、無効電力注入判定部23から出力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入可」となる。その後、系統2が停電状態から正常状態に復帰し、単独運転予兆検出部25が単独運転の予兆を検出していない状態で、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出すると、無効電力注入判定部23は、無効電力注入可否信号として「無効電力注入不可」を出力する。この結果、電力変換部3が無効電力の出力を停止し、フリッカ事象の発生が抑制される。なお、系統2が停電状態から正常状態に復帰した時点でステップS21に戻り、フリッカ発生検出部21が電力変換部3の出力電圧の周波数変動を監視する。
単独運転検出部14が単独運転を検出していない状態の場合(ステップS31:No)、単独運転予兆検出部25は、保持している高調波と現在の高調波とを比較する。保持している高調波とは、上述した第1の高調波成分(単独運転の予兆を検出した時点の高調波成分)であり、現在の高調波とは、上述した第2の高調波成分である。単独運転予兆検出部25は、現在の高調波が保持している高調波以下の場合(ステップS34:Yes)、系統は停電ではない(復電した)と判断する。そして、単独運転予兆検出部25は、単独運転予兆信号として「単独運転予兆あり」を出力する状態を解除し、「単独運転予兆なし」を出力する(ステップS35)。
ステップS35を実行した後はステップS21に戻り、フリッカ発生検出部21が電力変換部3の出力電圧の周波数変動を監視する。この状態で電力変換部3の出力電圧の周波数が急変し、フリッカ発生検出部21がフリッカ事象の発生を検出すると、無効電力注入判定部23から出力される無効電力注入可否信号が「無効電力注入不可」となる。この結果、電力変換部3が無効電力の出力を停止し、フリッカ事象の発生が抑制される。
単独運転検出部14が単独運転を検出せず、かつ単独運転予兆検出部25が保持している高調波が現在の高調波よりも大きい状態の場合(ステップS31:No,ステップS34:No)、単独運転予兆検出部25がステップS30を再度実行し、保持している現在の高調波成分を更新する。そして、ステップS31以下の処理を再度実行する。
本実施の形態においてはフリッカ事象が発生する配電線に電力変換装置100aが接続されている状態で系統2が停電する場合の電力変換装置100aの動作の例を説明したが、フリッカ事象が発生していない配電線に電力変換装置100aが接続されている状態で系統2が停電する場合の動作も同様である。すなわち、系統2が停電すると、単独運転検出部14は、単独運転を検出し、連系開閉器6へ開路信号を出力して電力変換装置100aを系統2から解列させるとともに、電力変換部3へ動作停止信号を出力して電力変換部3を停止させる。
以上のように、本実施の形態にかかる電力変換装置100aは、実施の形態1にかかる電力変換装置100と同様に、フリッカ事象の発生を検出し、かつ単独運転の予兆を検出していない状態の場合、単独運転を検出するために無効電力を出力する動作を停止し、フリッカ事象の発生を検出している状態で単独運転の予兆を検出した場合、単独運転を検出するために無効電力を出力する動作を再開する。また、電力変換装置100aは、単独運転の予兆を検出している状態では、フリッカ事象の発生を検出しても、単独運転を検出するために無効電力を出力する動作を継続する。これにより、フリッカ事象が発生している配電線において系統2が停電して単独運転が発生する場合であっても、フリッカ事象が発生していない場合と同様に単独運転を検出することが可能となり、単独運転状態の検出精度を高めることができる。
また、実施の形態1にかかる電力変換装置100は単独運転の予兆を検出した場合、予め定められた時間(0.2s)が経過するまで、無効電力の出力を停止することができなかったが、実施の形態2にかかる電力変換装置100aは、高調波の変化に基づいて単独運転の予兆か否かを判別する。そのため、電力変換装置100aは、復電などにより、予め定められた時間が経過する前に単独運転の予兆状態が解消した場合に、電力変換装置100よりも早く、無効電力の出力を停止してフリッカ事象を抑制することができる。
なお、電力変換装置100aは、高調波の変化に基づいて単独運転の予兆か否かを判別する処理に加えて、電力変換装置100と同様に、単独運転の予兆を検出してからの経過時間に基づいて単独運転の予兆か否かを判別するようにしてもよい。すなわち、電力変換装置100aは、現在の高調波が単独運転の予兆を検出した時の高調波以下となるか、単独運転の予兆を検出してから予め定められた時間が経過した場合に、単独運転の予兆ではないと判定してもよい。
ここで、電力変換装置100および100aのハードウェア構成について説明する。電力変換装置100および100aの電力変換部3は、上述したように、DC/ACインバータ回路である。また、周波数検出部4は周波数検出器で実現でき、電圧検出部5は電圧検出器で実現できる。制御部10は、図11に示した処理回路により実現できる。図11に示した処理回路は、プロセッサ201およびメモリ202を備え、メモリ202は、プロセッサ201が制御部10として動作するためのプログラムを記憶する。すなわち、制御部10は、制御部10として動作するためのプログラムをプロセッサ201がメモリ202から読み出して実行することにより実現できる。ここで、プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ202は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の、不揮発性または揮発性のメモリである。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 太陽電池、2 系統、3 電力変換部、4 周波数検出部、5 電圧検出部、6 連系開閉器、10 制御部、11 周波数偏差演算部、12 高調波検出部、14 単独運転検出部、15 周波数フィードバック部、16 ステップ注入部、17 電流制御部、20,20a 無効電力発振抑制制御部、21 フリッカ発生検出部、22,25 単独運転予兆検出部、23 無効電力注入判定部、100 電力変換装置、101 負荷。
Claims (10)
- 分散型電源から供給される直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力電圧および前記出力電圧の周波数に基づいて前記電力変換部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記電力変換部が出力する無効電力の値を前記周波数に基づいて決定し、決定した値を示す第1の無効電力指令値を生成する周波数フィードバック部と、
前記電力変換部が出力する無効電力の値を前記出力電圧および前記周波数に基づいて決定し、決定した値を示す第2の無効電力指令値を生成するステップ注入部と、
前記周波数フィードバック部から出力される前記第1の無効電力指令値および前記ステップ注入部から出力される前記第2の無効電力指令値に基づいて前記電力変換部を制御する電流制御部と、
前記出力電圧および前記周波数に基づいて、単独運転の予兆の有無およびフリッカ事象の発生の有無を判定し、単独運転の予兆を検出した場合、フリッカ事象の発生の有無によらず、前記周波数フィードバック部が前記第1の無効電力指令値を出力するよう制御するとともに、前記ステップ注入部が前記第2の無効電力指令値を出力するよう制御する無効電力発振抑制制御部と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。 - 無効電力発振抑制制御部は、
単独運転の予兆を検出することなくフリッカ事象の発生を検出した場合、前記周波数フィードバック部が前記第1の無効電力指令値を出力しないよう制御するとともに、前記ステップ注入部が前記第2の無効電力指令値を出力しないよう制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。 - 前記無効電力発振抑制制御部は、
前記周波数に基づいて前記フリッカ事象の発生の有無を判定するフリッカ発生検出部と、
前記出力電圧に基づいて前記単独運転の予兆の有無を判定する単独運転予兆検出部と、
前記フリッカ発生検出部による判定結果である第1の判定結果および前記単独運転予兆検出部による判定結果である第2の判定結果に基づいて、前記周波数フィードバック部による前記第1の無効電力指令値の出力および前記ステップ注入部による前記第2の無効電力指令値の出力を許可するか否かを示す出力可否信号を生成し、前記周波数フィードバック部および前記ステップ注入部へ出力する無効電力注入判定部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。 - 前記無効電力注入判定部は、
前記第1の判定結果がフリッカ事象の発生検出を示し、かつ前記第2の判定結果が単独運転の予兆非検出を示す場合、出力不許可を示す前記出力可否信号を生成し、
前記第1の判定結果がフリッカ事象の発生検出を示し、かつ前記第2の判定結果が単独運転の予兆検出を示す場合、出力許可を示す前記出力可否信号を生成し、
前記第1の判定結果がフリッカ事象の発生非検出を示し、かつ前記第2の判定結果が単独運転の予兆検出を示す場合、出力許可を示す前記出力可否信号を生成し、
前記第1の判定結果がフリッカ事象の発生非検出を示し、かつ前記第2の判定結果が単独運転の予兆非検出を示す場合、出力許可を示す前記出力可否信号を生成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。 - 前記出力可否信号が出力不許可を示す場合、
前記周波数フィードバック部は、生成した前記第1の無効電力指令値の代わりにゼロを示す無効電力指令値を出力し、
前記ステップ注入部は、生成した前記第2の無効電力指令値の代わりにゼロを示す無効電力指令値を出力する、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の電力変換装置。 - 前記単独運転予兆検出部は、前記出力電圧の高調波成分の変化量に基づいて、前記単独運転の予兆の有無を判定する、
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の電力変換装置。 - 前記単独運転予兆検出部は、前記出力電圧の周波数偏差に基づいて、前記単独運転の予兆の有無を判定する、
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の電力変換装置。 - 前記単独運転予兆検出部は、前記単独運転の予兆を検出後、前記電力変換装置が単独運転状態となる前に前記電力系統が復電した場合、前記単独運転の予兆検出を示す検出結果の出力を停止し、前記単独運転の予兆非検出を示す検出結果の出力を開始する、
ことを特徴とする請求項3から7のいずれか一つに記載の電力変換装置。 - 前記単独運転予兆検出部は、前記単独運転の予兆を検出後、前記電力変換装置が単独運転状態となる前に予め定められた時間が経過した場合、前記電力系統が復電したと判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電力変換装置。 - 前記単独運転予兆検出部は、前記単独運転の予兆を検出後、前記電力変換装置が単独運転状態となる前に、現在の前記出力電圧の高調波の平均値が単独運転の予兆を検出した時の高調波の平均値以下となった場合、前記電力系統が復電したと判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電力変換装置。
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JP2018095462A JP2019201503A (ja) | 2018-05-17 | 2018-05-17 | 電力変換装置 |
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JP2018095462A JP2019201503A (ja) | 2018-05-17 | 2018-05-17 | 電力変換装置 |
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JP2021145402A (ja) * | 2020-03-10 | 2021-09-24 | 株式会社ダイヘン | 単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ |
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2018
- 2018-05-17 JP JP2018095462A patent/JP2019201503A/ja active Pending
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JP2021145402A (ja) * | 2020-03-10 | 2021-09-24 | 株式会社ダイヘン | 単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ |
JP7402718B2 (ja) | 2020-03-10 | 2023-12-21 | 株式会社ダイヘン | 単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ |
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