JP2019201080A - 光電変換素子用構造体及び光電変換素子とこれらの製造方法 - Google Patents

光電変換素子用構造体及び光電変換素子とこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換効率に優れる光電変換素子を及び光電変換効率に優れる光電変換素子が得られる光電変換素子用構造体を提供する。【解決手段】n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層1の凹凸構造とされた表面にシリコンシェル層2と透明導電層3が積層され、透明導電層3の表面が、平均高さL1aが100〜1100nmである多数の凸面を有する凹凸構造(III)とされ、裏面電極5と表面電極6が設けられた光電変換素子50。【選択図】図8

Description

本発明は太陽電池等の光電変換素子、及び光電変換素子用の構造体とこれらの製造方法に関する。
太陽電池には、シリコン系、化合物半導体系等の無機半導体系と有機半導体系があるが、シリコン系、中でも結晶シリコンを使用する結晶シリコン系が主流である。
結晶シリコン系の太陽電池は、n型又はp型にドープされたシリコンの2種以上の半導体から形成され、異なる半導体同士の接合面(pn接合)を利用して、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する。
結晶シリコン系の太陽電池においては、微細なワイヤー構造が櫛の歯状に多数立設したシリコン層の内部又は表面にpn接合を設けることが行われている(特許文献1)。
ワイヤー構造を有するシリコン層の内部にpn接合を設ける場合は、熱拡散によるドーピングによってpn接合を形成する。ドーピングにはpn接合に不対電子などからなる欠陥ができない利点があるが、熱拡散によるドーピング方法自体の熱コントロールが非常に困難であり、また、ワイヤー構造1本及びワイヤー構造層全体でドーピングドープ層の厚さにバラつきが生じるため、均一にp層又はn層を作製することが困難である。pn接合が形成されていない箇所が生じる場合もあり、その場合は、素子として機能しないので、生産には不向きである欠点がある。
一方、ワイヤー構造を有するシリコン層(シリコンコア層)の表面にpn接合を設ける場合は、蒸着やスパッタ等の薄膜製造法により、異なる半導体層(シリコンシェル層)を堆積することによってpn接合を形成する。この方法はドーピング方法とは異なり、シリコンシェル層の形成が安定的にコントロール可能である利点がある。しかし、シリコンシェル層を積層する際に、ワイヤー構造の形状によっては構造頂部にシリコンシェル層が堆積してワイヤー構造間を埋めてしまい、シェル形成ガスがワイヤー構造間の根元まで届かない可能性がある。その結果、均一なpn接合の形成ができず、素子としての機能が低下する恐れがある。
したがって、微細なワイヤー構造を設けると、pn接合の面積を増加させることができ変換効率を向上させる効果が期待できるものの、ワイヤー構造の特長を充分に活かし切れていなかった。
特許第5669830号公報
近年自然エネルギーの活用が望まれる中、太陽電池等の光電変換素子においては、さらなる変換効率の向上が求められている。
上記事情に鑑みて、本発明は、優れた光電変換効率が得られる光電変換素子、及び優れた光電変換効率が得られる光電変換素子を得るための光電変換素子用構造体を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層を備える光電変換素子用構造体であって、
前記シリコンコア層は、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する略板状とされ、
前記第1の表面が、多数の凸面を有する凹凸構造(I)とされており、
前記凹凸構造(I)における多数の凸面は、前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、各凸面の最下部を基準とする当該凸面の頂点の高さL1の平均である平均高さL1aが100〜1000nmであることを特徴とする光電変換素子用構造体。
[2]前記凹凸構造(I)における多数の凸面が、平均ピッチP1aが100〜1000nmの三角格子又は正方格子を成している[1]に記載の光電変換素子用構造体。
[3]前記凹凸構造(I)における多数の凸面が、下記条件Xを満たす[1]又は[2]に記載の光電変換素子用構造体。
(条件X)
前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、前記切断面から観察される多数の凸面の形状が下記式(1)〜(7)を満たす。
L1a/L2a=0.1〜10.0 ・・・(1)
L3a/L2a=0.7〜1.0 ・・・(2)
L4a/L2a=0.4〜0.9 ・・・(3)
L5a/L2a=0.15〜0.8 ・・・(4)
L6a/L2a=0.07〜0.7 ・・・(5)
L7a/L2a=0.03〜0.6 ・・・(6)
L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
ただし、L1aは前記と同じであり、L2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aはそれぞれ、L2、L3、L4、L5、L6、L7の平均であり、L2は前記L1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅、L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、当該凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅である。
[4]n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層と、前記シリコンコア層とpn接合を形成するように、p型又はn型にドープされたシリコンからなるシリコンシェル層を備える光電変換素子用構造体であって、
前記シリコンコア層は、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する略板状とされ、
前記シリコンシェル層は前記第1の表面に前記pn接合を形成するように設けられ、
前記シリコンシェル層の表面が、多数の凸面を有する凹凸構造(II)とされており、
前記凹凸構造(II)における多数の凸面は、前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、各凸面の最下部を基準とする当該凸面の頂点の高さL1の平均である平均高さL1aが100〜1000nmであることを特徴とする光電変換素子用構造体。
[5]前記凹凸構造(II)における多数の凸面が、平均ピッチP1aが100〜1000nmの三角格子又は正方格子を成している[4]に記載の光電変換素子用構造体。
[6]前記凹凸構造(II)における多数の凸面が、下記条件Xを満たす[4]又は[5]に記載の光電変換素子用構造体。
(条件X)
前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、前記切断面から観察される多数の凸面の形状が下記式(1)〜(7)を満たす。
L1a/L2a=0.1〜10.0 ・・・(1)
L3a/L2a=0.7〜1.0 ・・・(2)
L4a/L2a=0.4〜0.9 ・・・(3)
L5a/L2a=0.15〜0.8 ・・・(4)
L6a/L2a=0.07〜0.7 ・・・(5)
L7a/L2a=0.03〜0.6 ・・・(6)
L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
ただし、L1aは前記と同じであり、L2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aはそれぞれ、L2、L3、L4、L5、L6、L7の平均であり、L2は前記L1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅、L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、当該凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅である。
[7]前記シリコンコア層の前記第1の表面が凹凸構造とされており、前記凹凸構造(II)は、前記シリコンコア層の前記第1の表面の凹凸構造に略追従している[4]〜[6]のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体。
[8]n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層と、前記シリコンコア層とpn接合を形成するように、p型又はn型にドープされたシリコンからなるシリコンシェル層と、前記シリコンシェル層の表面を覆う透明導電層を備える光電変換素子用構造体であって、
前記シリコンコア層は、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する略板状とされ、
前記シリコンシェル層は前記第1の表面に前記pn接合を形成するように設けられ、
前記透明導電層の表面が、多数の凸面を有する凹凸構造(III)とされており、
前記凹凸構造(III)における多数の凸面は、前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、各凸面の最下部を基準とする当該凸面の頂点の高さL1の平均である平均高さL1aが100〜1100nmであることを特徴とする光電変換素子用構造体。
[9]前記凹凸構造(III)における多数の凸面が、平均ピッチP1aが100〜1000nmの三角格子又は正方格子を成している[8]に記載の光電変換素子用構造体。
[10]前記凹凸構造(III)における多数の凸面が、下記条件Xを満たす[8]又は[9]に記載の光電変換素子用構造体。
(条件X)
前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、前記切断面から観察される多数の凸面の形状が下記式(1)〜(7)を満たす。
L1a/L2a=0.1〜10.0 ・・・(1)
L3a/L2a=0.7〜1.0 ・・・(2)
L4a/L2a=0.4〜0.9 ・・・(3)
L5a/L2a=0.15〜0.8 ・・・(4)
L6a/L2a=0.07〜0.7 ・・・(5)
L7a/L2a=0.03〜0.6 ・・・(6)
L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
ただし、L1aは前記と同じであり、L2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aはそれぞれ、L2、L3、L4、L5、L6、L7の平均であり、L2は前記L1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅、L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、当該凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅である。
[11]前記シリコンコア層の前記第1の表面が凹凸構造とされており、前記シリコンシェル層の表面は、前記シリコンコア層の前記第1の表面の凹凸構造に略追従した凹凸構造とされており、前記凹凸構造(III)は、前記シリコンコア層の前記第1の表面の凹凸構造及び前記シリコンシェル層の表面の凹凸構造に略追従している[8]〜[10]のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体。
[12][8]〜[11]のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体と、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に設けられた裏面電極を備えることを特徴とする光電変換素子。
[13]さらに、前記透明導電層に、電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を備える[12]に記載の光電変換素子。
[14][4]〜[7]のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体と、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に設けられた裏面電極を備えることを特徴とする光電変換素子。
[15]さらに、前記シリコンシェル層に、電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を備える[14]に記載の光電変換素子。
[16][1]〜[3]のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体の前記第1の表面に、前記シリコンコア層と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層を形成することを特徴とする光電変換素子用構造体の製造方法。
[17]前記形成したシリコンシェル層の表面に、さらに透明導電材料を堆積させて透明導電層を形成する[16]に記載の光電変換素子用構造体の製造方法。
[18][1]〜[3]のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体の前記第1の表面に、前記シリコンコア層と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層を形成し、前記形成したシリコンシェル層の表面に、透明導電材料を堆積させて透明導電層を形成し、
さらに、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に裏面電極を設けることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
[19]さらに、前記透明導電層と電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を設ける[18]に記載の光電変換素子の製造方法。
[20][1]〜[3]のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体の前記第1の表面に、前記シリコンコア層と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層を形成し、
さらに、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に裏面電極を設けることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
[21]さらに、前記シリコンシェル層と電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を設ける[20]に記載の光電変換素子の製造方法。
本発明の光電変換素子は、光電変換効率に優れる。また、本発明の光電変換素子用構造体によれば、光電変換効率に優れる光電変換素子を得ることができる。
本発明の第1実施形態に係る光電変換素子用構造体の表面構造を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る光電変換素子用構造体の縦断面図である。 本発明における平均高さ等の求め方の説明図である。 本発明における条件Xの説明図である。 本発明の第2実施形態に係る光電変換素子用構造体の縦断面図である。 本発明の第3実施形態に係る光電変換素子用構造体の縦断面図である。 本発明の第4実施形態に係る光電変換素子用構造体の縦断面図である。 本発明の第5実施形態に係る光電変換素子用構造体の縦断面図である。 本発明の第6実施形態に係る光電変換素子用構造体の縦断面図である。 平均高さと平均ピッチの求め方に関する説明図である。 平均高さと平均ピッチの求め方に関する説明図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面では、説明の便宜上表面の凹凸を強調しており、凹凸部分とそれ以外の部分の比率は正確ではない。また、各層の厚さの比率も正確ではない。
[第1実施形態]
図1、2に第1実施形態に係る光電変換素子用構造体10を示す。本実施形態の光電変換素子用構造体10は、n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層1で構成されている。
n型にドープする場合のドーパントとしては、例えば、リン、ヒ素が挙げられる。p型にドープする場合のドーパントとしては、例えば、ホウ素が挙げられる。
シリコンコア層は、結晶シリコンで構成されていることが好ましい。中でも単結晶シリコンは変換効率に優れる光電変換素子が得られるため好ましい。一方、多結晶シリコンは、変換効率の点では単結晶シリコンに劣るが、低コストの光電変換素子用構造体を得られる点で好ましい。
シリコンコア層1の厚みは、100μm〜1000μmであることが好ましく、100μm〜525μmであることがより好ましく、100μm〜300μmが特に好ましい。
シリコンコア層1は、巨視的には第1の表面1Aと第1の表面1Aの反対側の第2の表面1Bを有する略板状とされているが、第1の表面1Aを微視的に観察すると図1、図2に示すように、多数の凸部1aを有している。凸部1aの表面を凸面1bと称する。図1、図2では、隣り合う凸面1bの間に、平坦面1cが存在する例を示している。すなわち、図1、図2の例では、第1の表面1Aは、複数の凸面1bと、それらの間に存在する平坦面1cとで構成されている。
本明細書において、平坦面とは、AFM(原子間力顕微鏡)の測定結果に基づき、その領域内の中点における表面高さと、その領域内における任意の点の表面高さとを結ぶ直線の、基板面に対する傾きが±10゜以下である領域である。なお、凸面1bは平坦面を含んでいてもよい。例えば、頂点付近が平坦面であってもよい。
本実施形態において、隣り合う凸面1bの間の全部又は一部には、平坦面1cが存在していなくてもよい。平坦面1cが全く存在しない場合の第1の表面1Aは、複数の凸面1bで構成される。
シリコンコア層1上に、凸面1bに追従する層を形成しやすいことから、第1の表面1Aには平坦面1cが存在することが好ましい。
本実施形態の光電変換素子用構造体10は、第1の表面1Aが多数の凸面1bを有する凹凸構造(I)とされている。凹凸構造(I)における凸面1bの平均高さL1aは100〜1000nmである。凹凸構造(I)における凸面の平均高さL1aは100〜800nmが好ましく100〜650nmがより好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、凸面1bの平均高さL1aが100〜1000nmの凹凸構造(I)を有することにより、光電変換効率に優れる光電変換素子を得ることができる。
凸面(本実施形態では凸面1b)の平均高さL1aは、次のように求める。
まず、構造体(本実施形態では光電変換素子用構造体10)を切断し、1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得る。
切断は、例えばミクロトームや集束イオンビーム装置(FIB)を用い、切断面が前記第2の表面1Bに対して垂直になるように切断する。
多数の凸面が格子状に配列している場合、小片サンプルを得るための切断方向は、格子方向と異なる方向であることが好ましい。格子方向と異なる方向とすることにより、複数の凸面の断面形状を観察しやすくなる。
例えば、多数の凸面1bが三角格子状に配列している場合、小片サンプルを得るための切断方向は、図10にs1〜s3として示す方向で切断することが好ましい。
また、多数の凸面1bが正方格子状に配列している場合、小片サンプルを得るための切断方向は、図11にs11〜s12として示す方向で切断することが好ましい。
そして、得られた小片サンプルの切断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、切断面から全体を観察できる凸面が1画像あたり約3個測定できる倍率で断面画像を得る。同様にして10枚以上の同じ倍率の断面画像を得て、計30個の凸面を選択し、これら各凸面の高さL1を求める。
なお、後述のL2〜L7も、高さL1を求めた各凸面を観察することにより求める。
各凸面1bの高さL1は、当該凸面の最下部を基準とする当該凸面1bの頂点Tの高さである。
切断面から観察できる当該凸面の最下部は、両隣の凸部の凸面との間において各々把握できるので、それらの中間高さが、当該凸面の最下部となる。
両隣の凸部の凸面との間における最下部は、隣の凸面との間に平坦面が存在する場合は、その平坦面と当該凸面との境目が、その隣の凸面との間における最下部である。隣の凸面との間に平坦面が存在しない場合は、隣の凸面との間で最も低い点が、その隣の凸面との間における最下部である。
例えば、図3に示すように、1つの凸部1aの凸面1b(図3の場合中央)と該凸面1bの隣の凸面1b(図3の場合右側)との間に平坦面1cが存在する場合は、平坦面1cと当該凸面1bとの境目である点Baが隣の凸面1bとの間における最下部である。隣の凸面1b(図3の場合左側)との間に平坦面1cが存在しない場合は、隣の凸面1bとの間で最も低い点Bbが、隣の凸面1bとの間における最下部である。
点Baを基準とする頂点Tの高さをLa、点Bbを基準とする頂点Tの高さをLbとすると、図3の中央の凸部1aの凸面1bの高さL1は、L1=(La+Lb)/2で求められる。
このようにして求めた30個の凸面の高さL1を平均したものが、平均高さL1aである。
凹凸構造(I)における凸面1bが三角格子又は正方格子を成す場合の平均ピッチP1aは100〜1000nmが好ましく、100〜800nmがより好ましく、100〜650nmが特に好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、平均ピッチP1aが好ましい範囲であることにより、可視光領域の波長において、反射防止機能を設けることができ、可視光領域の太陽光を多く取り込むことが可能となる。
凸面(本実施形態では凸面1b)の平均ピッチP1aは、次のように求める。
まず、構造体(本実施形態では光電変換素子用構造体10)を切断し、1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得る。
切断は、例えばミクロトームや集束イオンビーム装置(FIB)を用い、切断面が前記第2の表面1Bに対して垂直になるように切断する。
そして、得られた小片サンプルを上面から走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察できる凸面が1画像あたり20〜30個測定できる倍率で表面画像を得る。同様にして複数枚の同じ倍率の表面画像を得て、計30対の隣接する凸面を選択して各々の凸面の頂点Tの間の距離P1を求める。
隣接する凸面とは、格子方向に添って隣接する凸面である。
例えば、多数の凸面1bが三角格子状に配列している場合、隣接する凸面は、図10にt1〜t3として示す方向に添って隣接する凸面である。
また、多数の凸面1bが正方格子状に配列している場合、隣接する凸面は、図11にt11〜t12として示す方向に添って隣接する凸面である。
このようにして求めた30個の距離P1を平均したのが、平均ピッチP1aである。
凹凸構造(I)のアスペクト比(平均高さL1aを平均ピッチP1aで割った値)は0.1〜10が好ましく0.5〜5.0がより好ましく、0.7〜3.0が特に好ましい。
本実施形態の光電変換素子用構造体は、アスペクト比が好ましい範囲であることにより、反射防止効果が高くなり、太陽光を多く取り込むことが可能となる。また、シェル形成ガスがワイヤー構造の根元まで行き届き、シリコンシェル層はワイヤー構造間を埋めることなく均一に堆積することが可能となる。さらにpn接合面積が増加することによって変換効率の向上が期待できる。
凹凸構造(I)における多数の凸面は、また、下記条件Xを満たすことが好ましい。
(条件X)
前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、前記切断面から観察される多数の凸面の形状が下記式(1)〜(7)を満たす。
L1a/L2a=0.1〜10.0 ・・・(1)
L3a/L2a=0.7〜1.0 ・・・(2)
L4a/L2a=0.4〜0.9 ・・・(3)
L5a/L2a=0.15〜0.8 ・・・(4)
L6a/L2a=0.07〜0.7 ・・・(5)
L7a/L2a=0.03〜0.6 ・・・(6)
L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
ただし、L1aは前記と同じであり、L2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aはそれぞれ、L2、L3、L4、L5、L6、L7の平均であり、L2は前記L1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅、L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、当該凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅である。
条件Xは、下記式(1−1)〜(6−1)、(7)を満たすことがより好ましく、下記式(1−2)〜(6−2)、(7)を満たすことがさらに好ましい。
L1a/L2a=0.4〜7.5 ・・・(1−1)
L3a/L2a=0.75〜0.98 ・・・(2−1)
L4a/L2a=0.42〜0.89 ・・・(3−1)
L5a/L2a=0.25〜0.71 ・・・(4−1)
L6a/L2a=0.13〜0.59 ・・・(5−1)
L7a/L2a=0.05〜0.5 ・・・(6−1)
L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
L1a/L2a=0.7〜5.0 ・・・(1−2)
L3a/L2a=0.8〜0.96 ・・・(2−2)
L4a/L2a=0.5〜0.87 ・・・(3−2)
L5a/L2a=0.34〜0.63 ・・・(4−2)
L6a/L2a=0.2〜0.5 ・・・(5−2)
L7a/L2a=0.06〜0.4 ・・・(6−2)
L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
前述のように、各凸面(本実施形態では凸面1b)の高さL1は、当該凸面の最下部を基準とする当該凸面の頂点の高さである。
L2はL1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅である。前述のように、最下部は、両隣の凸面との間において各々把握できるので、それらの中間高さである。そのため、各々把握できる高さが完全に一致していない限り、最下部における凸面は一方にのみ存在し、他方の凸面は最下部よりも上方にしかない。そこで、他方の凸面の位置は、最下部まで外挿して求める。
例えば、図3の場合、凸面1bの最下部における一方の凸面1bの位置は1baであり、他方の凸面1bの位置は、凸面1bを点Bbから外挿し、最下部の位置まで達したときの位置1bbである。そして、位置1baと位置1bbとの距離がL2である。
L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、L1、L2を求めた凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅なので、図4に矢印で示す距離となる。
平均高さL1aを求めた際に選択した30個の各凸面について、このようにしてL2、L3、L4、L5、L6、L7を求め、これらを各々平均してL2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aを求める。
第1の表面1Aに平坦面1cが存在しない場合、L1a/L2aは、凹凸構造(I)のアスペクト比に略等しい。
各凸部1aは、第2の表面1Bに対して水平な任意の平面で切断した際、その断面における凸面1bが円形又は円形に近いことが好ましい。
第2の表面1Bに対して水平な任意の平面で切断した断面における凸面1bが円形又は円形に近い場合、条件Xを満たす凸面1bは、円柱状、円錐台状、釣り鐘状、円錐状、側面が窪んだ円錐状ないし円錐台状等の形状となる。
このような形状を有する場合、pn接合におけるキャリア収集が垂直方向だけでなく水平方向(半径方向)にも生じるため変換効率向上の点で好ましい。
多数の凸面1bは第1の表面1Aに二次元的に配列されている。多数の凸面1bの配列は、周期的であっても非周期的であってもよい。非周期的に配列する場合は、周期的に配列されているエリアが複数あり、エリア同士の配列は揃っていない多結晶構造体であることが特に好ましい。
「多数の凸面1bが周期的に二次元に配置」とは、多数の凸面1bが第1の表面1A上の少なくとも2方向に周期的に配置されている状態をいう。周期的な二次元構造の好ましい具体例として、配向方向が2方向で、その交差角度が90°であるもの(正方格子)、配向方向が3方向で、その交差角度が60°であるもの(三角格子、六方格子)等が挙げられる。
本実施形態の光電変換素子用構造体10は、予め、n型又はp型にドープされたシリコンウエハを、エッチングマスクを用いてドライエッチングすることにより製造できる。
エッチングマスクとしては、粒子マスク、フォトリソグラフィーやナノインプリントによるレジストマスクが挙げられる。中でも、適度な周期性を有する凹凸構造を安価に形成でき、かつ、大面積にも対応しやすいことから、粒子マスクを用いることが好ましい。
すなわち、本実施形態の光電変換素子用構造体は、予め、n型又はp型にドープされたシリコンウエハに粒子を配列させ(粒子配列工程)、配列させた粒子マスクとして、ドライエッチングすることにより製造(エッチング工程)することが好ましい。
マスクとして使用する粒子は無機粒子であることが好ましいが、条件によっては有機高分子材料なども使用できる。
無機粒子としては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物、硫化物、セレン化物及び金属等の化合物からなる粒子及び金属粒子等を使用することができる。有機粒子としては、ポリスチレン、PMMA等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が使用可能である。
粒子配列工程では、単層で均一な単粒子膜マスクを製膜することが好ましい。単層で均一な単粒子膜マスクを製膜する方法としては、水槽内の水の液面に水よりも比重が小さい溶剤中に粒子が分散した分散液を滴下する滴下工程と、前記溶剤を揮発させることにより前記粒子からなる単粒子膜を水の液面上に形成する単粒子膜形成工程と、前記単粒子膜をシリコンウエハ上に移し取る移行工程とを有する方法が挙げられる(例えば、特許第6036830号公報参照)。移行工程の後には、移行した単粒子膜をシリコンウエハに固定するための固定工程を行ってもよい。
単粒子膜形成工程は、超音波照射条件下で実施することが好ましい。下層水から水面に向けて超音波を照射しながら分散液の溶剤を揮発させると、粒子の最密充填が促進され、各粒子がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜が得られる。この際、超音波の出力は1W〜1200Wが好ましく、50W〜600Wがより好ましい。
移行工程においては、いわゆるLBトラフ法を採用することが好ましい(Journal of Materials and Chemistry, Vol.11, 3333 (2001)、Journal of Materials and Chemistry, Vol.12, 3268 (2002)など参照。)。
粒子配列工程では、以下の方法を採用してもよい。
1)シリコンウエハをコロイド粒子の懸濁液中に浸漬し、その後、基板と静電気的に結合した第1層目の粒子層のみを残し第2層目以上の粒子層を除去する(粒子吸着法)ことで、単粒子膜からなるエッチングマスクを基板上に設ける方法(特開昭58−120255号公報参照)。
2)シリコンウエハ上にバインダー層を形成し、その上に粒子の分散液を塗布し、その後バインダー層を加熱により軟化させることで、第1層目の粒子層のみをバインダー層中に包埋させ、余分な粒子を洗い落とす方法(特開2005−279807号公報参照)。
エッチング工程では、粒子よりもシリコンウエハが実質的にエッチングされにくい条件で粒子をドライエッチングし(粒子エッチング工程)、ある程度粒子を小さくしてから、シリコンウエハが実質的にエッチングされる条件でエッチング(ウエハエッチング工程)してもよい。これにより、平坦面1cが存在する凹凸構造とすることが容易になる。
粒子エッチング工程で、シリコンウエハが粒子よりも実質的にエッチングされにくい条件としては、下記式(9)のドライエッチング選択比が100%以下の条件であることが好ましく、90%以下の条件であることが好ましく、80%以下の条件であることが、さらに好ましい。
ドライエッチング選択比[%]=シリコンウエハのドライエッチング速度/粒子のドライエッチング速度×100・・・(9)
ウエハエッチング工程はシリコンウエハのドライエッチング速度が粒子のエッチング速度を上回る方が、凹凸構造作製の形状コントロールが容易となるため、前記式(9)のドライエッチング選択比が100%より大きいことを要する。ウエハエッチング工程の前記式(9)のドライエッチング選択比は、150%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましい。
ドライエッチング選択比は、エッチングガスを適切に選択することにより調整できる(例えば、特許第6036830号公報参照)。
ドライエッチング後は、凹凸構造の表面に発生しているダメージを取り除くことが好ましい。シリコン表面のダングリングボンドを取り除く場合は、終端処理を行うことが好ましい。また、凹凸構造表面が荒れている場合は、化学研磨エッチングを行うことが好ましい。
終端処理としては、窒素又は水素によるアニールを行う方法が挙げられる。
アニールの温度は、700〜1000℃が好ましく800〜950℃がより好ましい。また、アニールの時間は、アニール温度にもよるが、5〜60分が好ましく10〜45分がより好ましい。
ドライエッチング後、シリコンウエハ表面には、約1〜2nmの厚さの自然酸化膜が形成されているが、窒素又は水素によるアニールは、この自然酸化膜を除去せずに行う。自然酸化膜があることで、窒素又は水素によるスライトエッチングによって凹凸構造が脆く壊れやすくなることを防止できる。特に、水素は自然酸化膜の層を拡散透過してSiO/Si界面に到達するので、自然酸化膜があっても終端処理に支障は生じない。
化学研磨エッチング(CPE:Chemical polishing etching)は、例えばフッ酸と硝酸の混合液で行う。化学研磨エッチングを行うと、凸面1bと凸面1bの間及び凸面1bの表面がエッチングされるため、凸部1a自体は細くなり、また凸面1b間の距離も広がる。
化学研磨エッチングの前には、フッ酸や、硫酸と過酸化水素の混合溶液(ピラニア溶液)等により構造体表面のデポ物を除去してもよい。
[第2実施形態]
図5に第2実施形態に係る光電変換素子用構造体20を示す。本実施形態の光電変換素子用構造体20は、n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層1と、シリコンコア層1の第1の表面Aに形成されたシリコンシェル層2を備えている。
シリコンコア層1は、第1実施形態の光電変換素子用構造体10のシリコンコア層1と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
シリコンシェル層2は、シリコンコア層1とpn接合を形成するように、p型又はn型にドープされたシリコンから構成されている。すなわち、シリコンコア層1がn型にドープされている場合、シリコンシェル層2はp型にドープされている。また、シリコンコア層1がp型にドープされている場合、シリコンシェル層2はn型にドープされている。
シリコンシェル層2のドーパントとしては、シリコンコア層1のドーパントとして挙げたものと同様のものが使用できる。
本実施形態の光電変換素子用構造体20は、シリコンシェル層2の表面2Aが多数の凸面2bを有する凹凸構造(II)とされている。凹凸構造(II)は、複数の凸面2bと、隣り合う凸面2bの間の平坦面2cとから構成されている。凹凸構造(II)における凸面2bの平均高さL1aは100〜1000nmである。平均高さL1aは150〜900nmが好ましく200〜750nmがより好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、凸面2bの平均高さL1aが100〜1000nmの凹凸構造(II)を有することにより、光電変換効率に優れる光電変換素子を得ることができる。
平均高さL1aの求め方は、第一の実施形態の凹凸構造(I)の平均高さの求め方と同様にして、当該凸面2bの最下部を基準とする当該凸面2bの頂点の高さL1を平均することにより求める。
本実施形態において、隣り合う凸面2bの間の全部又は一部には、平坦面2cが存在していなくてもよい。平坦面2cが全く存在しない場合のシリコンシェル層2の表面2Aは、複数の凸面2bで構成される。
シリコンシェル層2上に、凸面2bに追従する層を形成しやすいことから、シリコンシェル層2の表面2Aには平坦面2cが存在することが好ましい。
凹凸構造(II)における凸面2bが三角格子又は正方格子を成す場合の平均ピッチP1aは100〜1000nmが好ましく、100〜800nmがより好ましく、100〜650nmが特に好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、平均ピッチP1aが好ましい範囲であることにより、可視光領域の波長において、反射防止機能を設けることができ、可視光領域の太陽光を多く取り込むことが可能となる。
平均ピッチP1aの求め方は、第一の実施形態の凹凸構造(I)における凸面1bの平均ピッチP1aの求め方と同様にして、三角格子又は正方格子を成している隣り合う凸面2bの頂点の間の距離P1を平均することにより求める。
凹凸構造(II)のアスペクト比(平均高さL1aを平均ピッチP1aで割った値)は、0.1〜10が好ましく0.3〜7がより好ましく、0.5〜5が特に好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、アスペクト比が好ましい範囲であることにより、垂直方向のキャリアの移動距離が短くなり、再結合の確率を低下させることができる。
凹凸構造(II)における多数の凸面2bは、また、前記条件Xを満たすことが好ましい。条件Xにおける好ましい態様は第1の実施形態と同様である。
シリコンコア層1の第2の表面1Bに対して水平な任意の平面で切断した際、その断面における凸面2bは円形又は円形に近いことが好ましい。
凸面2bは二次元的に配列されている。凸面2bの配列に関する好ましい態様は、第1の実施形態における凸面1bの配列に関する好ましい態様と同様である。
シリコンコア層1のシリコンシェル層2側の表面(第1の表面A)には凹凸構造が形成されており、シリコンシェル層2は、シリコンコア層1の凹凸構造に略追従するように、略均質な厚みで形成されている。シリコンシェル層2の厚みは、20〜300nmが好ましく50〜200nmがより好ましい。
シリコンシェル層2の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって求めることができる。
シリコンコア層1のシリコンシェル層2側の表面の凹凸構造は、第1実施形態の凹凸構造(I)であることが好ましく、凹凸構造(I)の好ましい態様も第1実施形態と同様である。
本実施形態の光電変換素子用構造体20は、第1の実施形態の光電変換素子用構造体10に、シリコンシェル層2を形成することにより製造することが好ましい。
光電変換素子用構造体10に、シリコンシェル層2を形成する方法としては、下記(i)、(ii)の方法が挙げられ、下記(i)の方法が好ましい。
(i)光電変換素子用構造体10の第1の表面1Aに、光電変換素子用構造体10と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層2を形成する方法、
(ii)光電変換素子用構造体10の第1の表面1Aに、光電変換素子用構造体10と反対のドープ型のドーパントをドライブイン拡散させてシリコンシェル層2を形成する方法。
前記(i)の方法における光電変換素子用構造体10と反対のドープ型のシリコン材料の堆積は、ドライプロセスによることが好ましい。ドライプロセスには化学気相成長法(CVD法:化学的蒸着)と物理気相成長法(PVD法:物理的蒸着)とあるが、CVD法によることが好ましい。
CVD法は、汎用性が高く、制御がしやすいため、均一なシリコンシェル層を安定的に形成しやすい。
前記(i)の方法を行う際は、その直前に、光電変換素子用構造体10の第1の表面1Aにある自然酸化膜を必ず除去しなければならない。
光電変換素子用構造体10と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層2を形成した後は、シリコンシェル層2の凹凸構造の表面に発生しているダメージ(シリコン表面のダングリングボンド)を取り除く、終端処理を行うことが好ましい。
なお、後述のBSF処理によってもアニール効果を得られるため、この段階での終端処理は省略してもよい。
終端処理としては、窒素又は水素によるアニールを行う方法が挙げられる。
窒素又は水素によるアニールの温度は、700〜1000℃が好ましく800〜950℃がより好ましい。また、水素アニールの時間は、アニール温度にもよるが、5〜60分が好ましく10〜45分がより好ましい。
形成したシリコンシェル層2の表面には、約1〜2nmの厚さの自然酸化膜が形成されているが、窒素又は水素によるアニールは、この自然酸化膜を除去せずに行う。自然酸化膜があることで、窒素又は水素によるスライトエッチングによって凹凸構造が脆く壊れやすくなることを防止できる。特に、水素は自然酸化膜の層を拡散透過してSiO/Si界面に到達するので、自然酸化膜があっても終端処理に支障は生じない。
一方、前記(ii)の方法は、pn接合部に不対電子などからなる欠陥ができない点が有利である。ただし、ドライブイン拡散させる際の熱のコントロールが難しいため、慎重な調整が必要である。
[第3実施形態]
図6に第3実施形態に係る光電変換素子用構造体30を示す。本実施形態の光電変換素子用構造体30は、n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層1と、シリコンコア層1の第1の表面に形成されたシリコンシェル層2と、シリコンシェル層2のシリコンコア層1と反対側の表面を覆う透明導電層3を備えている。
シリコンコア層1は、第1実施形態の光電変換素子用構造体10のシリコンコア層1と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
シリコンシェル層2は、第2実施形態の光電変換素子用構造体20のシリコンシェル層2と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
透明導電層3は、透明導電材料により形成された層である。透明導電材料としては、公知のものが使用できる。例えばインジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide(ITO))、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide(IZO))、酸化亜鉛(ZincOxide(ZnO))、亜鉛−スズ酸化物(Zinc Tin Oxide(ZTO))等が挙げられる。
本実施形態の光電変換素子用構造体30は、透明導電層3の表面3Aが多数の凸面3bを有する凹凸構造(III)とされている。凹凸構造(III)における凸面3bの平均高さL1aは100〜1100nmである。平均高さL1aは200〜1000nmが好ましく250〜800nmがより好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、凸面3bの平均高さL1aが100〜1100nmの凹凸構造(III)を有することにより、光電変換効率に優れる光電変換素子を得ることができる。
平均高さL1aの求め方は、第一の実施形態の凹凸構造(I)の平均高さの求め方と同様にして、当該凸面3bの最下部を基準とする当該凸面3bの頂点の高さL1を平均することにより求める。
本実施形態において、隣り合う凸面3bの間の全部又は一部には、平坦面が存在していてもよい。
反射防止効果を高め、pn接合の面積を増やす観点から、透明導電層3の表面3Aには平坦面が存在しない方が好ましい。
凹凸構造(III)における凸面2bが三角格子又は正方格子を成す場合の平均ピッチP1aは100〜1000nmが好ましく100〜800nmがより好ましく、100〜650nmが特に好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、平均ピッチP1aが好ましい範囲であることにより、可視光領域の波長において、反射防止機能を設けることができ、可視光領域の太陽光を多く取り込むことが可能となる。
平均ピッチP1aの求め方は、第一の実施形態の凹凸構造(I)の平均ピッチP1aの求め方と同様にして、三角格子又は正方格子を成している隣り合う凸面3bの頂点の間の距離P1を平均することにより求める。
凹凸構造(III)のアスペクト比(平均高さL1aを平均ピッチP1aで割った値)は0.1〜10が好ましく0.3〜7がより好ましく、0.5〜5が特に好ましい。本実施形態の光電変換素子用構造体は、アスペクト比が好ましい範囲であることにより、反射防止効果が高くなり、太陽光を多く取り込むことが可能となる。
凹凸構造(III)における多数の凸面3bは、また、前記条件Xを満たすことが好ましい。条件Xにおける好ましい態様は第1の実施形態と同様である。
シリコンコア層1の第2の表面1Bに対して水平な任意の平面で切断した際、その断面における凸面3bは円形又は円形に近いことが好ましい。
凸面3bは二次元的に配列されている。凸面3bの配列に関する好ましい態様は、第1の実施形態における凸面1bの配列に関する好ましい態様と同様である。
シリコンコア層1のシリコンシェル層2側の表面(第1の表面)には凹凸構造が形成されており、シリコンシェル層2は、シリコンコア層1の凹凸構造に略追従するように、略均質な厚みで形成されている。シリコンシェル層2の厚みは、20〜300nmが好ましく50〜200nmがより好ましい。透明導電層3は、シリコンシェル層2の凹凸構造に略追従するように、略均質な厚みで形成されている。透明導電層3の厚みは、10〜200nmが好ましく20〜100nmがより好ましい。
透明導電層3の厚みは、走査電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって求めることができる。
シリコンコア層1のシリコンシェル層2側の表面の凹凸構造は、第1実施形態の凹凸構造(I)であることが好ましく、凹凸構造(I)の好ましい態様も第1実施形態と同様である。
シリコンシェル層2の透明導電層3側の表面の凹凸構造は、第2実施形態の凹凸構造(II)であることが好ましく、凹凸構造(II)の好ましい態様も第2実施形態と同様である。
本実施形態の光電変換素子用構造体30は、第2の実施形態の光電変換素子用構造体20に、透明導電層3を形成することにより製造することが好ましい。
透明導電層3の形成は、ドライプロセスによることが好ましい。ドライプロセスには化学気相成長法(CVD法:化学的蒸着)と物理気相成長法(PVD法:物理的蒸着)とあるが、CVD法によることが好ましい。
透明導電層3を形成する際は、その直前に、光電変換素子用構造体20の表面2Aにある自然酸化膜を必ず除去しなければならない。
[第4実施形態]
図7に第4実施形態に係る光電変換素子40を示す。本実施形態の光電変換素子40は、n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層1と、シリコンコア層1の第1の表面に形成されたシリコンシェル層2と、シリコンシェル層2のシリコンコア層1と反対側の表面を覆う透明導電層3と、シリコンコア層1の第2の表面1Bに順次形成された裏面障壁層(BSF層)4と裏面電極5を備えている。
シリコンコア層1は、第1実施形態の光電変換素子用構造体10のシリコンコア層1と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
シリコンシェル層2は、第2実施形態の光電変換素子用構造体20のシリコンシェル層2と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
透明導電層3は、第3実施形態の光電変換素子用構造体30の透明導電層3と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
裏面障壁層4は、変換効率を改善するためにシリコンコア層1と裏面電極5との間に設けられる層である。
シリコンコア層1がn型にドープされている場合、裏面障壁層4は、高密度にドープされたn層であり、n−n間の障壁によってホールをブロックし、裏面電極5付近での再結合を抑える役割を果たす。
シリコンコア層1がp型にドープされている場合、裏面障壁層4は、高密度にドープされたp層であり、p−p間の障壁によって電子をブロックし、裏面電極5付近での再結合を抑える役割を果たす。
裏面電極5は、シリコンコア層1がn型にドープされている場合は、電子を取り出すn電極であり、シリコンコア層1がp型にドープされている場合は、ホールを取り出すp電極である。
裏面電極5の材質としては、アルミニウム、銀、チタン、又はそれぞれの合金が挙げられる。
第4実施形態において、裏面障壁層4は必須ではなく省略してもよい。すなわち、裏面電極5は、シリコンコア層1の第2の表面1Bに直設形成されていてもよい。
本実施形態の光電変換素子40は、第3の実施形態の光電変換素子用構造体30にBSF処理を施して裏面障壁層4を形成し、その後裏面電極5を形成することにより製造することが好ましい。
層とするBSF処理としては、シリコンコア層1の第2の表面1Bにリン系の濃溶液をスピンコートし、焼結させた後に、窒素アニールする方法が挙げられる。リン系の濃溶液としては、例えば、東京応化製OCD溶液を用いることができる。窒素アニールの温度は、700〜1000℃が好ましく800〜950℃がより好ましい。また、窒素アニールの時間は、アニール温度にもよるが、5〜60分が好ましく10〜45分がより好ましい。
層とするBSF処理としては、シリコンコア層1の第2の表面1Bをアルミニウム又は銀を含む導電ペーストを塗布し焼結する方法が挙げられる。導電ペーストとしては、例えば、東洋アルミ製のアルソーラーを用いることができる。窒素アニールの温度は、700〜1000℃が好ましく800〜950℃がより好ましい。また、窒素アニールの時間は、アニール温度にもよるが、5〜60分が好ましく10〜45分がより好ましい。
裏面電極5は、蒸着やスパッタ等の方法で形成することができる。
[第5実施形態]
図8に第5実施形態に係る光電変換素子50を示す。本実施形態の光電変換素子50は、n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層1と、シリコンコア層1の第1の表面に形成されたシリコンシェル層2と、シリコンシェル層2のシリコンコア層1と反対側の表面を覆う透明導電層3と、シリコンコア層1の第2の表面1Bに順次形成された裏面障壁層(BSF層)4と裏面電極5と、透明導電層3と電気的に導通可能な状態で接触する表面電極6を備えている。
シリコンコア層1は、第1実施形態の光電変換素子用構造体10のシリコンコア層1と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
シリコンシェル層2は、第2実施形態の光電変換素子用構造体20のシリコンシェル層2と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
透明導電層3は、第3実施形態の光電変換素子用構造体30の透明導電層3と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
裏面障壁層4及び裏面電極5は、第4実施形態の光電変換素子40裏面障壁層4及び裏面電極5と同じであることが好ましく、好ましい態様も同一であるため、その詳細な説明を省略する。
表面電極6は、シリコンコア層1がn型にドープされている場合は、ホールを取り出すp電極であり、シリコンコア層1がp型にドープされている場合は、電子を取り出すn電極である。
表面電極6は、細い格子状の線で構成することが好ましい。これにより、pn接合面への光の到達を妨げることなく、透明導電層3との電気的導通を充分にとることができる。
裏面電極6の材質としては、アルミニウム、銀、チタン、又はそれぞれの合金が挙げられる。
第5実施形態において、裏面障壁層4は必須ではなく省略してもよい。すなわち、裏面電極5は、シリコンコア層1の第2の表面1Bに直設形成されていてもよい。
本実施形態の光電変換素子50は、第4の実施形態の光電変換素子40に、表面電極6を形成することにより製造することが好ましい。
また、第3の実施形態の光電変換素子用構造体30に表面電極6を形成し、その後BASF処理を施して裏面障壁層4を形成し、さらに裏面電極5を形成することにより製造してもよい。
表面電極6は、蒸着やスパッタ等の方法で形成することができる。
[第6実施形態]
図9に第6実施形態に係る光電変換素子60を示す。本実施形態の光電変換素子60は、透明導電層3を有しない他は、第5実施形態に係る光電変換素子50と同様である。
本実施形態の光電変換素子60は、透明導電層3を形成しない他は、第5実施形態に係る光電変換素子50と同様にして製造することができる。
[作用機序]
本発明の光電変換素子及び本発明の光電変換素子用構造体を用いた光電変換素子は、pn接合を構成するシリコンコア層とシリコンシェル層との界面が、充分な高さを有する凸面とされていることにより、pn接合におけるキャリア収集が垂直方向だけでなく水平方向(半径方向)にも生じるため変換効率を向上させることができる。特に凸面が条件Xを満たす場合、キャリア収集が、より効率的に水平方向(半径方向)に生じるものと考えられる。
さらに、前記凸面の高さが比較的低いことにより、垂直方向のキャリアの移動距離が短くなり、再結合の確率を低下させることができたものと考えられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、%は特に断りのない限り質量%である。また、原料の「質量部」は、分散媒体を含む質量である。
[実施例1]
平均粒径が600nmで、粒径の変動係数が1.72%である球形コロイダルシリカの20質量%水分散体を用意した。なお、平均粒径及び粒径の変動係数は、粒子動的光散乱法により求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから求めた。測定器としては、動的光散乱法によって、粒径10nm以下〜3μm程度の粒子を測定することが出来るMalvern Instruments Ltd社製 Zetasizer Nano-ZSを使用した。
この水分散体を孔径1.2μmφのメンブランフィルターでろ過した。メンブランフィルターを通過した水分散体に、濃度1.0質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物水溶液を加え、約40℃で3時間反応させて反応液を得た。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.02質量倍となるように水分散体と加水分解水溶液とを混合した。
得られた反応液に、この反応液の体積の4倍の体積のメチルイソブチルケトンを加えて十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出し、濃度0.91質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を得た。
こうして得られた疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01mL/秒で滴下した。水槽の下層水にはあらかじめ、基板として、表面が平坦なSi基板(15mm×15mm、厚さ:0.525mm)を略鉛直方向に浸漬しておいた。
その後、超音波(出力300W、周波数950kHz)を下層水中から水面に向けて10分間照射して粒子が二次元的に最密充填するのを促しつつ、分散液の溶剤であるメチルイソブチルケトンを揮発させ、単粒子膜を形成させた。
ついで、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が25mNm−1になるまで圧縮し、基板を5mm/分の速度で引き上げ、基板の片面上に移し取り、単粒子膜付き基板を得た。
ついで、前記単粒子膜付き基板に対して、ドライエッチングを行った。具体的には、粒子縮小工程としてCF,Oの混合ガスBCl、Arの混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1700W、バイアス電力1500W、ガス流量150sccm、エッチング選択比90%、エッチング時間250秒とした。その後、BCl、Arの混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1700W、バイアス電力700W、ガス流量150sccm、エッチング選択比120%、エッチング時間280秒であった。
その後、構造体表面に発生しているダメージ(Si表面のダングリングボンド)を取り除く(終端処理)ため、電気炉でH2アニール処理(900℃/10分)を行った。さらに、化学研磨エッチングとして、硝酸とフッ酸の混合溶液(1:1)で30秒間処理し、三角格子を成す多数の凸面1bを有する凹凸構造(I)が、第1の表面1Aに形成された実施例1の構造体(1)を得た。
実施例1の構造体(1)の一部を、ミクロトームを用いて表面に対して垂直に切断して1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得て、その切断面と表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を各々複数枚得た。これらの画像から、前記した方法で、30個の凸面1bのL1〜L7、及び30対の凸面1bピッチP1を求めた。これらの値を平均して求めたところ以下のような凹凸構造(I)が形成されていた。
平均ピッチP1a:600nm
平均高さL1a:620nm
L2a:420nm
L1a/L2a=1.48
L3a/L2a=0.81
L4a/L2a=0.62
L5a/L2a=0.38
L6a/L2a=0.24
L7a/L2a=0.14
こうして得られた実施例1の構造体(1)の凹凸構造(I)の上に、CVDにてシリコンシェル層2を成膜し、三角格子を成す多数の凸面2bを有する凹凸構造(II)が形成された実施例1の構造体(2)を得た。CVD条件は、原料ガスとしてシランガスとジボランを使用し、流量を20sccm、チャンバー内圧力を800Pa、成膜時間を3分間とした。
実施例1の構造体(2)は、シリコンコア層1とシリコンシェル層2の間に、良好なp/n接合界面を有していた。
実施例1の構造体(2)の一部を、ミクロトームを用いて表面に対して垂直に切断して1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得て、その切断面と表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を各々複数枚得た。これらの画像から、前記した方法で、30個の凸面1bのL1〜L7、及び30対の凸面1bピッチP1を求めた。これらの値を平均して求めたところ以下のような凹凸構造(II)が形成されていた。
平均ピッチP1a:600nm
平均高さL1a:720nm
L2a:580nm
L1a/L2a=1.24
L3a/L2a=0.96
L4a/L2a=0.80
L5a/L2a=0.57
L6a/L2a=0.40
L7a/L2a=0.28
その後、実施例1の構造体(2)のシリコンコア層1の第2の表面1Bに、Ti/Agのスパッタを行って裏面電極5を形成し、実施例1の太陽電池を作製した。
作成した太陽電池をソーラーシミュレーター、ソースメーターを使用して評価したところ、変換効率7.4%が得られた。
[実施例2]
実施例1の構造体(2)と同様な処理・手法で実施例2の構造体(2)を得た。その後、シリコンコア層1の第2の表面1Bに東京応化製OCD溶液をスピンコートし、450℃で30分間焼結し、さらに窒素雰囲気下で850℃30分アニール処理し、裏面障壁層4(BSF層)を形成した。さらに、実施例1と同様な処理方法で、裏面電極5を形成し、実施例2の太陽電池を作製した。
実施例2の太陽電池を実施例1と同様に評価したところ、変換効率8.2%が得られた。
[実施例3]
実施例1の構造体(2)と同様な処理・手法で実施例3の構造体(2)を得た。その後、ITOをスパッタにて堆積し透明導電層3を形成し、三角格子を成す多数の凸面3bを有する凹凸構造(III)が形成された実施例3の構造体(3)を得た。
実施例3の構造体(3)の一部を、ミクロトームを用いて表面に対して垂直に切断して1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得て、その切断面と表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を各々複数枚得た。これらの画像から、前記した方法で、30個の凸面1bのL1〜L7、及び30対の凸面1bピッチP1を求めた。これらの値を平均して求めたところ以下のような凹凸構造(III)が形成されていた。
平均ピッチP1a:600nm
平均高さL1a:760nm
L2a:690nm
L1a/L2a=1.10
L3a/L2a=0.92
L4a/L2a=0.77
L5a/L2a=0.58
L6a/L2a=0.43
L7a/L2a=0.33
得られた、実施例3の構造体(3)に対し、実施例2と同様な処理方法で、裏面障壁層4(BSF層)と裏面電極5を形成し、実施例3の太陽電池を作製した。
実施例3の太陽電池を実施例1と同様に評価したところ、変換効率10.1%が得られた。
[実施例4]
厚さの異なるSi基板(厚さ:0.280mm)を使用した以外、実施例1と同様な手法で単粒子膜付の基板を得た。その後、粒子縮小工程としてCF,Oの混合ガスBCl、Arの混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1700W、バイアス電力1500W、ガス流量150sccm、エッチング選択比90%、エッチング時間300秒とした。その後、BCl、Arの混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1700W、バイアス電力500W、ガス流量150sccm、エッチング選択比120%、エッチング時間240秒とした。
その後、構造体表面に発生しているダメージ(Si表面のダングリングボンド)を取り除く(終端処理)ため、電気炉でH2アニール処理(900℃/10分)を行った。さらに、化学研磨エッチングとして、硝酸とフッ酸の混合溶液(1:1)で30秒間処理し、三角格子を成す多数の凸面1bを有する凹凸構造(I)が、第1の表面1Aに形成された実施例4の構造体(1)を得た。
その後、実施例1と同様な処理・手法でシリコンシェル層2を成膜し、実施例3と同様な処理・手法にて透明導電層3を成膜し、実施例4の構造体(3)を得た。
実施例4の構造体(3)の一部を、ミクロトームを用いて表面に対して垂直に切断して1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得て、その切断面と表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を各々複数枚得た。これらの画像から、前記した方法で、30個の凸面1bのL1〜L7、及び30対の凸面1bピッチP1を求めた。これらの値を平均して求めたところ以下のような凹凸構造(III)が形成されていた。
平均ピッチP1a:600nm
平均高さL1a:540nm
L2a:690nm
L1a/L2a=0.78
L3a/L2a=0.93
L4a/L2a=0.75
L5a/L2a=0.55
L6a/L2a=0.40
L7a/L2a=0.30
得られた、実施例4の構造体(3)に対し、実施例2と同様な処理方法で、裏面障壁層4(BSF層)と裏面電極5を形成し、実施例4の太陽電池を作製した。
実施例4の太陽電池を実施例1と同様に評価したところ、変換効率13.7%が得られた。
[実施例5]
厚さの異なるSi基板(厚さ:0.280mm)を使用し、平均粒径が300nmで、粒径の変動係数が3.44%である球形コロイダルシリカを使用した以外、実施例1と同様な手法で単粒子膜付の基板を得た。その後、BCl、Cl混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1500W、バイアス電力700W、ガス流量100sccm、エッチング選択比160%、エッチング時間230秒とした。
その後、構造体表面に発生しているダメージ(Si表面のダングリングボンド)を取り除く(終端処理)ため、電気炉でH2アニール処理(900℃/10分)を行った。さらに、化学研磨エッチングとして、硝酸とフッ酸の混合溶液(1:1)で30秒間処理し、三角格子を成す多数の凸面1bを有する凹凸構造(I)が、第1の表面1Aに形成された実施例5の構造体(1)を得た。
その後、実施例1と同様な処理・手法でシリコンシェル層2を成膜し、実施例3と同様な処理・手法にて透明導電層3を成膜し、三角格子を成す多数の凸面3bを有する凹凸構造(I)が形成された実施例5の構造体(3)を得た。
実施例5の構造体(3)の一部を、ミクロトームを用いて表面に対して垂直に切断して1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得て、その切断面と表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を各々複数枚得た。これらの画像から、前記した方法で、30個の凸面1bのL1〜L7、及び30対の凸面1bピッチP1を求めた。これらの値を平均して求めたところ以下のような凹凸構造(III)が形成されていた。
平均ピッチP1a:300nm
平均高さL1a:540nm
L2a:295nm
L1a/L2a=1.83
L3a/L2a=0.94
L4a/L2a=0.79
L5a/L2a=0.58
L6a/L2a=0.46
L7a/L2a=0.36
得られた、実施例5の構造体(3)に対し、実施例2と同様な処理方法で、裏面障壁層4(BSF層)と裏面電極5を形成し、実施例5の太陽電池を作製した。
実施例5の太陽電池を実施例1と同様に評価したところ、変換効率11.7%が得られた。
[比較例1]
平均粒径が300nmで、粒径の変動係数が3.44%である球形コロイダルシリカを使用した以外、実施例1と同様な手法で単粒子膜付の基板を得た。その後、CHF、Clの混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1700W、バイアス電力700W、ガス流量100sccm、エッチング選択比460%、エッチング時間260秒とした。
その後、構造体表面に発生しているダメージ(Si表面のダングリングボンド)を取り除く(終端処理)ため、電気炉でH2アニール処理(900℃/10分)を行った。さらに、化学研磨エッチングとして、硝酸とフッ酸の混合溶液(1:1)で30秒間処理し、三角格子を成す凸面1bを有する凹凸構造(I’)が、第1の表面1Aに形成された比較例1の構造体(1)を得た。
こうして得られた比較例1の構造体(1)の凹凸構造(I’)の上に、CVDにてシリコンシェル層2を成膜し、三角格子を成す多数の凸面2bを有する凹凸構造(II’)が形成された比較例1の構造体(2)を得た。CVD条件は、原料ガスとしてシランガスとジボランを使用し、流量を20sccm、チャンバー内圧力を800Pa、成膜時間を6分間とした。
比較例1の構造体(2)は、シリコンコア層1とシリコンシェル層2の間に、良好なp/n接合界面を有していた。
比較例1の構造体(2)の一部を、ミクロトームを用いて表面に対して垂直に切断して1辺が10mm程度の略正方形の小片サンプルを得て、その切断面と表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を各々複数枚得た。これらの画像から、前記した方法で、30個の凸面1bのL1〜L7、及び30対の凸面1bピッチP1を求めた。これらの値を平均して求めたところ以下のような凹凸構造(II’)が形成されていた。
平均ピッチP1a:300nm
平均高さL1a:1400nm
L2a:300nm
L1a/L2a=1.24
L3a/L2a=0.96
L4a/L2a=0.91
L5a/L2a=0.82
L6a/L2a=0.74
L7a/L2a=0.67
その後、比較例1の構造体(2)のシリコンコア層1の第2の表面1Bに、Ti/Agのスパッタを行って裏面電極5を形成し、比較例1の太陽電池を作製した。
比較例1の太陽電池を実施例1と同様に評価したところ、変換効率3.2%が得られた。
本発明の光電変換素子及び本発明の光電変換素子用構造体を用いた光電変換素子は、太陽電池、pn接合を利用したセンサー、分子吸着識別用の高感度センサー等として利用可能である。
1…シリコンコア層、2…シリコンシェル層、3…透明導電層、4…裏面障壁層、
5…裏面電極、6…表面電極、
10、20、30…光電変換素子用構造体、40、50、60…光電変換素子

Claims (21)

  1. n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層を備える光電変換素子用構造体であって、
    前記シリコンコア層は、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する略板状とされ、
    前記第1の表面が、多数の凸面を有する凹凸構造(I)とされており、
    前記凹凸構造(I)における多数の凸面は、前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、各凸面の最下部を基準とする当該凸面の頂点の高さL1の平均である平均高さL1aが100〜1000nmであることを特徴とする光電変換素子用構造体。
  2. 前記凹凸構造(I)における多数の凸面が、平均ピッチP1aが100〜1000nmの三角格子又は正方格子を成している請求項1に記載の光電変換素子用構造体。
  3. 前記凹凸構造(I)における多数の凸面が、下記条件Xを満たす請求項1又は2に記載の光電変換素子用構造体。
    (条件X)
    前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、前記切断面から観察される多数の凸面の形状が下記式(1)〜(7)を満たす。
    L1a/L2a=0.1〜10.0 ・・・(1)
    L3a/L2a=0.7〜1.0 ・・・(2)
    L4a/L2a=0.4〜0.9 ・・・(3)
    L5a/L2a=0.15〜0.8 ・・・(4)
    L6a/L2a=0.07〜0.7 ・・・(5)
    L7a/L2a=0.03〜0.6 ・・・(6)
    L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
    ただし、L1aは前記と同じであり、L2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aはそれぞれ、L2、L3、L4、L5、L6、L7の平均であり、L2は前記L1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅、L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、当該凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅である。
  4. n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層と、前記シリコンコア層とpn接合を形成するように、p型又はn型にドープされたシリコンからなるシリコンシェル層を備える光電変換素子用構造体であって、
    前記シリコンコア層は、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する略板状とされ、
    前記シリコンシェル層は前記第1の表面に前記pn接合を形成するように設けられ、
    前記シリコンシェル層の表面が、多数の凸面を有する凹凸構造(II)とされており、
    前記凹凸構造(II)における多数の凸面は、前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、各凸面の最下部を基準とする当該凸面の頂点の高さL1の平均である平均高さL1aが100〜1000nmであることを特徴とする光電変換素子用構造体。
  5. 前記凹凸構造(II)における多数の凸面が、平均ピッチP1aが100〜1000nmの三角格子又は正方格子を成している請求項4に記載の光電変換素子用構造体。
  6. 前記凹凸構造(II)における多数の凸面が、下記条件Xを満たす請求項4又は5に記載の光電変換素子用構造体。
    (条件X)
    前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、前記切断面から観察される多数の凸面の形状が下記式(1)〜(7)を満たす。
    L1a/L2a=0.1〜10.0 ・・・(1)
    L3a/L2a=0.7〜1.0 ・・・(2)
    L4a/L2a=0.4〜0.9 ・・・(3)
    L5a/L2a=0.15〜0.8 ・・・(4)
    L6a/L2a=0.07〜0.7 ・・・(5)
    L7a/L2a=0.03〜0.6 ・・・(6)
    L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
    ただし、L1aは前記と同じであり、L2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aはそれぞれ、L2、L3、L4、L5、L6、L7の平均であり、L2は前記L1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅、L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、当該凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅である。
  7. 前記シリコンコア層の前記第1の表面が凹凸構造とされており、前記凹凸構造(II)は、前記シリコンコア層の前記第1の表面の凹凸構造に略追従している請求項4〜6のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体。
  8. n型又はp型にドープされたシリコンからなるシリコンコア層と、前記シリコンコア層とpn接合を形成するように、p型又はn型にドープされたシリコンからなるシリコンシェル層と、前記シリコンシェル層の表面を覆う透明導電層を備える光電変換素子用構造体であって、
    前記シリコンコア層は、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する略板状とされ、
    前記シリコンシェル層は前記第1の表面に前記pn接合を形成するように設けられ、
    前記透明導電層の表面が、多数の凸面を有する凹凸構造(III)とされており、
    前記凹凸構造(III)における多数の凸面は、前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、各凸面の最下部を基準とする当該凸面の頂点の高さL1の平均である平均高さL1aが100〜1100nmであることを特徴とする光電変換素子用構造体。
  9. 前記凹凸構造(III)における多数の凸面が、平均ピッチP1aが100〜1000nmの三角格子又は正方格子を成している請求項8に記載の光電変換素子用構造体。
  10. 前記凹凸構造(III)における多数の凸面が、下記条件Xを満たす請求項8又は9に記載の光電変換素子用構造体。
    (条件X)
    前記第2の表面に対して垂直な平面で切断したときに、前記切断面から観察される多数の凸面の形状が下記式(1)〜(7)を満たす。
    L1a/L2a=0.1〜10.0 ・・・(1)
    L3a/L2a=0.7〜1.0 ・・・(2)
    L4a/L2a=0.4〜0.9 ・・・(3)
    L5a/L2a=0.15〜0.8 ・・・(4)
    L6a/L2a=0.07〜0.7 ・・・(5)
    L7a/L2a=0.03〜0.6 ・・・(6)
    L2a≧L3a≧L4a≧L5a≧L6a≧L7a ・・・(7)
    ただし、L1aは前記と同じであり、L2a、L3a、L4a、L5a、L6a、L7aはそれぞれ、L2、L3、L4、L5、L6、L7の平均であり、L2は前記L1を求めた凸面の最下部における当該凸面の底部幅、L3、L4、L5、L6、L7はそれぞれ、当該凸面の最下部を基準とする高さがL1の1/4、1/2、3/4、7/8、15/16における当該凸面の幅である。
  11. 前記シリコンコア層の前記第1の表面が凹凸構造とされており、前記シリコンシェル層の表面は、前記シリコンコア層の前記第1の表面の凹凸構造に略追従した凹凸構造とされており、前記凹凸構造(III)は、前記シリコンコア層の前記第1の表面の凹凸構造及び前記シリコンシェル層の表面の凹凸構造に略追従している請求項8〜10のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体。
  12. 請求項8〜11のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体と、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に設けられた裏面電極を備えることを特徴とする光電変換素子。
  13. さらに、前記透明導電層に、電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を備える請求項12に記載の光電変換素子。
  14. 請求項4〜7のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体と、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に設けられた裏面電極を備えることを特徴とする光電変換素子。
  15. さらに、前記シリコンシェル層に、電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を備える請求項14に記載の光電変換素子。
  16. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体の前記第1の表面に、前記シリコンコア層と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層を形成することを特徴とする光電変換素子用構造体の製造方法。
  17. 前記形成したシリコンシェル層の表面に、さらに透明導電材料を堆積させて透明導電層を形成する請求項16に記載の光電変換素子用構造体の製造方法。
  18. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体の前記第1の表面に、前記シリコンコア層と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層を形成し、前記形成したシリコンシェル層の表面に、透明導電材料を堆積させて透明導電層を形成し、
    さらに、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に裏面電極を設けることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  19. さらに、前記透明導電層と電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を設ける請求項18に記載の光電変換素子の製造方法。
  20. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子用構造体の前記第1の表面に、前記シリコンコア層と反対のドープ型のシリコン材料を堆積させてシリコンシェル層を形成し、
    さらに、前記シリコンコア層の前記第2の表面に、直接又は間接的に裏面電極を設けることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  21. さらに、前記シリコンシェル層と電気的に導通可能な状態で接触する表面電極を設ける請求項20に記載の光電変換素子の製造方法。
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