以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1乃至図3を参照して、本実施形態におけるモールド装置(樹脂成形装置)について説明する。図1は、モールド装置10の概略構成図であり、上面視における各機構部の配置を示している。図2は、モールド装置10のシステムブロック図である。図3は、組み付け工程中のモールド装置10の要部断面図であり、図1中のA−A線で切断した断面を示している。
図1に示されるように、モールド装置10は、主に、モールド装置10の正面側(図1の下側)に配置される供給部12、複数(本実施形態では2つ)のプレス部14、および、収納部16と、主にモールド装置10の背面側(図1の上側)に配置される搬送部20とを備えて構成される。供給部12は、プレス部14へ供給されるワークW(被成形品)および樹脂を収容する。プレス部14は、モールド金型50(樹脂成形金型)を備え、モールド金型50によって挟み込まれたワークWに対して樹脂モールド(樹脂成形)を行う。図1に示されるモールド装置10では、プレス部14を複数(2つ)設けているが、1つだけ設けてもよい。収納部16は、モールド後のワークW(成形品P)を収納する。そして、搬送部20は、ローダハンド22(搬送機構)および各機構部に跨るレール24を備え、ローダハンド22をレール24上で移動させて、供給部12、プレス部14、収納部16の順にワークWを搬送する。
本実施形態において、モールド装置10は、プレス部14のモールド金型50において、ポットからプランジャによって樹脂を押し出してキャビティへ注入・充填して成形されるトランスファ成形に適用される。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、モールド装置10は、モールド金型50の型開閉によってキャビティ内の樹脂を圧縮して成形される圧縮成形に適用されてもよい。
プレス部14のモールド金型50(図3参照)は、キャビティを有する型開閉される一対の金型(例えば合金工具鋼からなる複数の金型ブロックが組み付けられたもの)を備える。本実施形態では、一対の金型のうち、鉛直方向において上方側の一方の金型を上型52とし、下方側の他方の金型を下型54とする。このモールド金型50は、上型52と下型54とが離れたり、近づいたりすることで型開閉される。このため、鉛直方向が型開閉方向でもある。なお、以下の説明においては、このモールド金型50全体、上型52と下型54のいずれか、又は、これらを構成する個別の金型ブロック(チェイス、ベース、プランジャ等)を含めた交換の対象となるものを「金型部品」という。
本実施形態において、プレス部14は、モールド金型50を収納するが、モールド金型50の型開閉を行う公知の型開閉機構56(プレス機構)を備える。例えば、型開閉機構56は、一対のプラテンと、複数のタイバー62と、駆動源(例えば電動モータ)および駆動伝達機構(例えばトグルリンク)とを備える。一対のプラテンは、固定プラテン58および可動プラテン60から構成される。複数のタイバー62は、固定プラテン58および可動プラテン60を貫通して設けられる。ここで、固定プラテン58は、複数のタイバー62に固定して設けられる。可動プラテン60は、複数のタイバー62に可動可能に設けられ、駆動源および駆動伝達機構によって可動(昇降)される。
型開閉機構56では、一対のプラテン(固定プラテン58と可動プラテン60)の間にモールド金型50が設けられる。本実施形態では、固定型となる上型52が固定プラテン58に組み付けられ、可動型となる下型54が可動プラテン60に組み付けられる。なお、モールド金型50の型開閉においては、上型52を可動型、下型54を固定型としたり、上型52と下型54とも可動型としたりしてもよい。
ところで、上型52は、モールド面52a(例えばキャビティが設けられる面であってパーティング面ともいう)を有するチェイス64U(金型ブロック)を備える。また、上型52には、チェイス64Uに対応した情報などが記録されるチップユニット66Uが取り付けられている。チップユニット66は、コントローラIC(integrated circuit)やメモリICなどの機能が組み込まれたチップ100(半導体デバイス)と、チップ100と電気的に接続されるアンテナ102(ループアンテナなどの微小アンテナ)とを備え、チップ100およびアンテナ102は樹脂により封止されている。チップユニット66Uは、チップユニット66Uとは分離して設けられた後述のアンテナ90(ブースターアンテナ)と共に、RFIDタグ150(電磁結合型RFIDタグ)を構成する。
RFIDタグ150の一部を構成するチップユニット66Uを設けることで、モールド金型50のチェイス64Uに関する情報を、モールド金型50に付帯して記録・保持させることができる。また、チェイス64Uの表面の汚れなどに関係なく、チップユニット66UのメモリICに記録・保持されたID情報からチェイス64Uを識別することができる。本実施形態において、チップユニット66Uを金属製の金型ブロックから離間させた位置で通信(無線通信)可能とすることで、金属面による電磁波の乱反射や吸収を抑制して通信距離を向上させることができる。
チップユニット66Uは、インサート成形作業上、チェイス64Uが有する加圧面において突起しないように設けられるのが望ましいが、加圧面より突起する場合は、反対面を凹形状の逃げを設けることで、接触しないようにすることも可能である。図3では、チェイス64Uの加圧面が型閉じした状態で加圧される上下面であるため、この面(図3ではモールド装置10の下面側の主面)において凹んだ位置にチップユニット66Uが設けられる。これによれば、型閉じされた状態でチップユニット66U自体が加圧されて破損してしまうことを防止することができる。
また、チップユニット66Uは、例えばボルトなどの留め具(後述の取付部31)を用いてチェイス64Uに着脱可能に設けるのが好ましい。固体識別の観点において接着剤等で完全に固定する場合もある。また、チェイス64Uがモールド金型50として組み付けられる前にはチップユニット66Uを取り付け、組み付け後(使用時)にはチップユニット66Uを取り外しておくこともできる。また、取付部31として、留め具(ボルト)に代えてマグネットを設け、金属製の金型部品(チェイス64U)に容易に取り付け及び取り外しができるような構成とすることもできる。なお、上述の理由によりチップユニット66Uの本体部30とマグネット(取付部31)との間には所定の間隔を空けるのが好ましい。この場合、例えば別部材を介在させることで非金属の部材であって高温に耐えるエンジニアリングプラスチックのような樹脂材料や繊維強化プラスチックや非磁性の金属などを介在させることもできる。また、留め具を用いてチップユニット66Uを着脱可能に設けることは、チップユニット66Uが任意に交換可能である点では好ましい。
上型52は、チェイス64Uとベース68U(金型ブロック)とを含んで構成される。ベース68Uは、例えば、下面側で開口する方形の枡状(ボックス状)であって、チェイス64Uを収納可能に構成される。ここで、ベース68Uは、その外周が断熱されて構成され、チェイス64Uを囲む複数のエンドブロック70Uを備える。複数のエンドブロック70Uは、チェイス64Uが平面視(モールド面視)矩形状であればその四方を囲む4つの金型ブロックから構成される。例えば、モールド装置10の正面を除く他の3つのエンドブロックが組み付けられた状態では、チェイス64Uを正面側から挿入して組み付けた後、正面側のエンドブロック70を組み付けることで、チェイス64Uをベース68Uに収納することができる。後述のように、チップユニット66Uは、チェイス64Uに形成された空間(凹部)に設けられている(図4(C)参照)。このような配置により、チップユニット66Uが外部に突き出ることを防止し、型閉じされた状態でチップユニット66U自体が加圧されて破損してしまうことを防止することができる。
また、ベース68Uは、内蔵されるヒータ72Uを備える。ヒータ72Uによって、チェイス64Uなど上型52が所定温度(例えば180℃)に調整されて加熱される。前述したようにベース68Uがチェイス64Uを収納するため、チェイス64Uはベース68Uに対して着脱(交換)可能な構成であっても十分に加熱される。また、チェイス64Uにチップユニット66Uを設けることにより、例えばチェイス64Uが取り外されて保管されていたとしても、常にチェイス64UのID情報を付帯させて記録させておくことができる。
本実施形態において、チップユニット66Uとして、ヒータ72Uによりチップユニット66Uが間接的に加熱される温度以上において情報を保持可能な温度(情報保持可能温度)のものを用いることができる。これにより、チェイス64Uにチップユニット66Uが取り付けられた状態でモールド金型50が成形動作を行うことで加熱されても、チップユニット66Uに記録された情報を保持し続けることができる。また、モールド金型50が断熱材(不図示)を備え、この断熱材を介してチップユニット66Uをモールド金型50に取り付けてもよい。これにより、熱に対してチップユニット66Uを保護することができる。また、チェイス64Uの金属加熱部から離れた位置にチップユニット66Uが設けられており、結果として、チップユニット66Uをヒータ72Uから離した位置に配置することができるため、チップユニット66Uの過熱防止という観点から好ましい。
また、チップユニット66Uを留め具によりチェイス64Uに対して着脱可能に取り付ける構成とすることで、チェイス64Uをベース68Uに収納する前にチップユニット66Uを取り外すこともできる。この場合、チップユニット66Uはモールド金型50の外周の断熱された面に一時的に取り付けておけばよい。これにより、チップユニット66Uがモールド金型50内で加熱されるのを防止することもできる。また、チェイス64Uをベース68Uから取り外すときには、モールド金型50の外周面に取り付けておいたチップユニット66Uをチェイス64Uに取り付け直すことができる。これによれば、仮にチップユニット66Uの耐熱温度が金型内の温度よりも低い場合であっても、チェイス64Uに紐付けられた情報を保持し続けることができる。また、この場合には金型内に収容されていないので、チップユニット66Uの情報の読み書きを行うこともできる。
図2に示されるように、モールド装置10は、アンテナ90(ブースターアンテナ)を介してチップユニット66Uと通信する通信装置78として、アンテナ74およびリーダライタ76を備える。リーダライタ76は、アンテナ74、および、RFIDタグ150を構成するアンテナ90を介して、チップユニット66Uに対して読み書きする。通信装置78は、モールド金型50の外部に設けられる。このため、モールド金型50の内部のような高温下に通信装置78が曝されるのを防止することができる。なお本実施形態において、通信装置78はアンテナ74とリーダライタ76とを一体的に備えて構成されているが、これに限定されるものではなく、アンテナ74Uとリーダライタ76とが互いに分離した通信装置を用いてもよい。
また本実施形態では、アンテナ90Uは、ワークW等の搬送を行うローダハンド22の上面に設けられる。具体的には、アンテナ90Uは、ローダハンド22の上方または下方に適宜設けることができる。例えば図3に示されるように、アンテナ90Uは、ローダハンド22の上面において先端付近に設けられ、ローダハンド22がモールド金型50に近接した際(上型52の下方位置に移動した際)に、アンテナ90Uがチップユニット66Uに近接し電磁結合が行われて、ブースターとして機能することで、リーダライタとの所定の通信距離を確保する。これにより、後述する動作によって記録された情報を読み取ったり、チップユニット66Uへ例えばモールド金型50の情報を書き込んだりすることができる。ここで、チップユニット66Uとアンテナ90(ブースターアンテナ)の電磁結合は極近い距離で行われるため、金型のような金属体の影響を受け難く、また、アンテナ90の電磁波放射部(端部)を対象金属体の外側に設けることができ、金属の影響を受け難くすることが可能となる。また、チップユニット66Uに対する情報の読み書きの別途の作業がワークW等の搬送動作に併せて行うことで、読み書きのための別途の作業が不要となるため、効率的かつ確実にチップユニット66Uに対する情報の読み書きを行うことも可能である。
ここまで、上型52のチェイス64Uに設けられるチップユニット66Uに関して説明したが、下型54のチェイス64Lに設けられるチップユニット66Lに関しても同様である。具体的には、下型54は、モールド面54aを有するチェイス64L(金型ブロック)と、チェイス64Lに対応した情報などが記録されるチップユニット66Lと、ベース68L(金型ブロック)とを備える。チップユニット66Lは、インサート成形上、チェイス64Lが有する加圧面において突起しないように設けられることが望ましい。加圧面より突起する場合は、反対面を凹形状の逃げを設けることで、接触しないようにすることも可能である。ベース68Lは、チェイス64Lを収納可能に構成されると共に、内蔵されるヒータ72Lを備える。またモールド装置10には、ローダハンド22の下面にアンテナ90Lが取り付けられている。これにより、モールド金型50に関する情報を下型54のチェイス64Lに付帯させて記録することができる。
モールド装置10は、図2に示されるような制御系システムを備える。具体的には、モールド装置10は、モールド金型50、RFIDタグ150(モールド金型50に設けられたチップユニット66とモールド金型50から分離して設けられたアンテナ90)、リーダライタに加えて、制御部80、記憶部82、表示部84、検出部86、および、入力部87を備える。制御部80は、リーダライタ76、記憶部82および表示部84と通信可能に接続される。以下では、モールド装置10の制御系システムを上型52に設けられるチップユニット66Uに対応させて説明する。下型54に設けられるチップユニット66Lについては、チップユニット66Uと同様であるので説明を省略する。また、以下の説明において、上型52に設けられるチップユニット66Uと、下型54に設けられるチップユニット66Lとを区別しないときは、単に「チップユニット66」と称する。
制御部80は、一例として、ローダハンド22をモールド金型50に近接させる際に、チップユニット66Uに記録されたモールド金型50のチェイス64Uに関するID情報やその他の情報(成形回数など)を、アンテナ90(ブースターアンテナ)とアンテナ74とを介してリーダライタ76が読み取るように、通信装置78(リーダライタ76)を制御する。そして、制御部80は、その情報に基づき記憶部82から対応する情報を読み出し、チップユニット66Uに記録された情報を記憶部82に記憶させることができる。また、制御部80は、表示部84にその情報を表示させることでモールド装置10の作業者に通知したりする。これにより、例えば、モールド金型50を構成する金型ブロックの組み合わせ(例えば、チェイス64Uとベース68Uとの組み合わせ)が適正であるかを表示部84に表示させることができ、作業者はこれを確認することで、金型のラベルの目視などによらずに金型のセットミスを防止できる。したがって、セットミスに起因する不良品(成形品P)の生産を防止することができる。
また、チェイス64Uとチェイス64Lとの組み合わせが適正であるかなど、上述した組み合わせに拘わらずモールド金型50を構成する各部材の組み合わせの適否を確認することができる。なお、上型52のチェイス64Uに設けられるチップユニット66Uと、下型54のチェイス64Lに設けられるチップユニット66Lとが設けられることで、上述したような効果(例えばセットミスの防止)をより確実に奏することができる。しかしながら、上型52と下型54とは基本的に一体に取り扱われるため、いずれかの型のみにチップユニット66を設けてもよい。
記憶部82としては、メモリ装置やディスク装置が挙げられ、装置制御用の制御プログラムや各種の情報が記録される。記憶部82では、例えばリレーショナルデータベース形式などの各種のデータベース形式やファイル形式などの各種の記録方式により後述する各種の情報を対応させて記録する。例えば、図7に示されるように、記憶部82では、任意数のドライブ821に複数のデータファイル形式やテーブル形式により個別の情報822としてID情報等が記録される。したがって、記憶部82には、チップユニット66に付されたID情報や、このID情報に対応する金型部品を用いたモールド工程に関わるモールド関連情報が記録されることになる。これらの情報は、ファイル名やラベルやインデックスなどにより連携して参照可能に収容される。このため、各ID情報に基づきモールド関連情報を記憶部82から参照する場合には、対応する1以上のモールド関連情報として、後述する金型部品に関する情報などが記憶部82から読み出される。
ID情報としては、各チップユニット66に対応して固有に設定された複数行の文字列などを用いることができる。ただし、以下に示すようなモールド関連情報自体やそれらも含めてID情報として保持させることも可能である。
一方、モールド関連情報としては、一例として、チップユニット66に付されたID情報に対応する金型部品に関する情報が記録される。この金型部品に関する情報としては、その金型部品の製造情報、その金型部品を用いて行われるモールド工程のレシピを示すレシピ情報、及び、その金型部品の使用履歴情報などが挙げられる。また、モールド関連情報としては、個別の金型部品ごとの固有の情報だけでなく、その他のモールド成形のプロセスとして関連する情報も記録される。具体的には、モールド装置に関する情報として、モールド装置10の動作状況等に関する装置情報、モールド装置10において成形に用いられる材料やワークWに関する材料情報、モールド装置10において成形された成形品Pについての成形品情報、装置を構成する各部からの出力に基づく情報(入力部87の入力等)、及び、そのモールド装置10の操作を行う作業者の情報などが挙げられる。さらに、記憶部82には、これら以外にも成形品Pに紐付けられる各種の情報についても適宜記録されることになる。
本実施形態に示す構成例として、例えば、チップユニット66UのID情報に紐付けして記憶部82に記録・保持されるチェイス64Uの情報としては、モールド装置10で使用される対応レシピ情報、使用履歴情報(使用時間、交換・修理履歴)、製造情報(会社名、製造日、製造番号情報、図面情報、型寸法、型材質、メッキ条件)などが挙げられる。この場合、制御部80によって、チップユニット66Uに記録・保持されたID情報がアンテナ90とアンテナ74とを介してリーダライタ76に読み出され(受信され)、ID情報に紐付けられた上述の情報を記録した記憶部82から読み出すことで、モールド装置10内における制御やその他の解析処理に利用可能となる。なお、上述の通り、チップユニット66のメモリICにこれらの情報を記録しておき、直接読み出す構成とすることもできる。
一方、チップユニット66には、ID情報のみならず記憶部82に記録される各種の情報を保持させるような構成としてもよい。このように、モールド装置10側の記憶部82と、金型部品に取り付けられたチップユニット66のメモリICとの両方に金型部品に関する各種情報を記録することで、金型部品の交換をより効率的に行いながら金型部品に紐付けられる情報を確実に残して利用することができる。一例として、チップユニット66のメモリICには、上述した金型の製造情報も記録しておくことが好ましい。これによれば、その金型の製造情報として、製造した会社名、製造日、製造番号情報、図面情報、型寸法、型材質、メッキ条件などを読み出すことができ、簡易にメンテナンスすることが可能となる。
また、モールド装置10は、モールド金型50に関する状態やモールド装置10内のその他の状態(例えば稼動情報)を検出値として検出する検出部86を備える。また、モールド装置10は、作業者からの操作を受け付けたり、所定の数値や文字列等が打ち込まれたりすることで入力が行われる入力部87を備える。制御部80は、検出部86や入力部87等により検出・入力されたそのものとして出力されるアナログデータ又はデジタルデータの検出値や、その検出値に基づいて演算して算出した所定の物理量等としての算出値を記憶部82に記憶する。また、制御部80は、必要に応じて、通信装置78(リーダライタ76)を介して、チップユニット66のメモリICに通信し記録する。
検出部86としては、例えば、装置内における任意の時間や時刻を測定するタイマ、モールド金型50の温度やモールド装置10内部の温度を測る温度計、成形回数としてのプレスや公知のトランスファユニット(不図示)の開閉(昇降)回数等をショット数としてカウントするショットカウンタ、又は、モールド装置10やモールド金型50内部における任意の位置(キャビティ内、プレスタイバー、プランジャ面)の圧力を測る圧力計などが挙げられる。また、装置の搬送系などの移動速度なども検出することで、装置の駆動情報(稼動情報)として利用できるため、検出部86においてはこれらを算出する元になるモータなどの動力源の駆動状況についても検出しておくことが好ましい。
具体的には、タイマとしての検出部の出力する時間や時刻に基づき成形の各工程(モールドの各工程や、搬送、予熱等)に要した時間やその工程の行われた時刻などを記録することができる。また、ショットカウンタとしての検出部86の検出値に基づき、各プレス部においてモールド成形が行われた回数や、各金型部品を用いて行われたモールド成形の回数などを記録することができる。また、圧力計や温度計によって出力される温度情報や圧力情報と、時間や成形回数とを紐付けることで、各成形時における成形条件を記録することもできる。
このように、検出部86の検出値に基づく情報を利用することで、モールド成形の回数や加熱状態などによりモールド金型50を含む金型部品の管理に用いることができる。また、成形条件を成形品Pに紐付けして、製品情報として出力することで、トレーサビリティを確保して、成形条件の修正なども容易となる。
次に、図4および図5を参照して、本実施形態におけるRFIDタグ150の構成およびRFIDタグ150を用いた情報読み取り方法について説明する。図4および図5は、RFIDタグ150の説明図である。
図4(a)は、RFIDタグ150の一部を構成するチップユニット66の平面図である。図4(b)は、チップユニット66の断面図である。図4(a)は、図4(b)中のB−B線で切断した断面に相当する。チップユニット66は、コントローラICやメモリICなどの機能が組み込まれたチップ100と、チップ100と電気的に接続されるアンテナ102(ループアンテナ)とを備え、チップ100およびアンテナ102は樹脂からなるパッケージ104により封止されている。なお、チップユニット66は、チップユニット66とは分離して設けられた後述のアンテナ90(ブースターアンテナ)と共に、RFIDタグ150(電磁結合型RFIDタグ)を構成する。アンテナ102は、例えば0.15mm程度の厚さを有する銅系又は鉄系の金属薄板からなる。チップ100は、アンテナ102の端子(不図示)の上に実装されている。
図4(b)に示されるように、チップユニット66は本体部30と取付部31とを備えている。本体部30の内部には、パッケージ104が設けられていると共に、空間32(空気領域)が形成されている。チップユニット66のアンテナ102は、アンテナ90(ブーストアンテナ)と電気的に導通することなく電気的に結合(電磁結合)されるが、チップユニット66の本体部30に空間32(空気領域)を設けることにより、モールド金型(金属構造体)によって生じる電波に対する悪影響を低減してこの電磁結合を効率化することができる。また、加熱された金型からの断熱効果を発揮することもできる。パッケージ104は本体部30を構成する樹脂部材で囲われて保持されている。取付部31は、情報を記録したチップユニット66を後述の管理対象となるモールド金型(チェイス)等の管理対象物に取り付ける部位(留め具)であり、本体部30と同様に樹脂で構成可能である。
図4(c)は、チップユニット66をモールド金型50のチェイス64に取り付けた状態を示す断面図である。チェイス64の所定の箇所には凹部64aが設けられている。凹部64aのサイズ(縦方向及び横方向の両方の長さ)は、チップユニット66に内蔵したアンテナ102(ループアンテナ)とアンテナ90(ブースターアンテナ)の電磁結合を阻害しない程度(チップユニットの外形に対して5mm〜10mm程度離した)の凹空間を備える。チップユニット66の本体部30をチェイス64の凹部64aに入れてチップユニット66の取付部31をチェイス64に取り付ける。これにより、チップユニット66はチェイス64に固定される。このとき、チップユニット66の本体部30はチェイス64の凹部64aの内部に配置されており、チップユニット66が凹部64aの外側へ突出することはない。このため、チェイス64にチップユニット66を取り付けた場合でも、チェイス64からチップユニット66が突起して加圧されて破損してしまうことを防止することができる。また、上述したように実質的に通信を行うアンテナ102(ループアンテナ)を含むパッケージ104を、凹部64aの内周面から所定の距離だけ離して配置できる構造としたことで、ループアンテナのような通信距離の短いアンテナ102を備えた小型のチップユニット66であっても、別体構造としたアンテナ90(ブーストアンテナ)と確実に通信を可能とすることができる。チップユニット66がチェイスより突出する場合は、凹部に搭載するよりも通信環境は良いが、対面する金属面に逃げの凹部を設ける必要がある。
図5(a)、(b)は、チップユニット66を取り付けたチェイス64とアンテナユニット94とを示す断面図である。ここで、アンテナユニット94に設けられるブースターアンテナ90は、チップユニット66に近接してアンテナ102(ループアンテナ)と電磁結合する第1アンテナ部901と、第1アンテナ部と接続されて外部と通信する第2アンテナ部902とを備える。
図5(a)はチップユニット66とアンテナユニット94とが離れた状態、図5(b)はチップユニット66とアンテナユニット94とが近接した状態(情報読み取り時)をそれぞれ示している。アンテナユニット94(ブーストアンテナユニット、主アンテナユニット)は、アンテナ90(ブーストアンテナ、主アンテナ)と、アンテナ90を所定形状に保持するアンテナ保持部材92とからなる。アンテナ封止部材92は例えば樹脂部材として構成できるが、アンテナ90による通信機能を阻害しない誘電特性を持つ材質(低誘電率材料)であれば他の材料でもよく、これに限定されるものではない。また本実施形態において、アンテナ90の形状はモノポール形状であるが、これに限定されるものではなく、チップユニット66と電磁結合しうる他のアンテナ形状であってもよい。
図5(a)に示されるように、アンテナユニット94は、通常、チップユニット66から離れた位置において相対的に移動可能に設けられている。そしてアンテナユニット94は、チップユニット66に書き込まれている情報を読み取る際に、アンテナユニット94のアンテナ90とチップユニット66のアンテナ102とを電磁結合させるため、図5(b)に示されるように、アンテナ90とアンテナ102との間が所定の距離になるように移動してチップユニット66に近接する。例えば、ローダハンド22にアンテナユニット94を備えた構成とする場合であれば、ローダハンド22がアンテナユニット94をチップユニット66の直上に移動する。
続いて、ローダハンド22が型面に近づく方向に移動することでアンテナユニット94とチップユニット66とを所定の位置関係で重ねた状態とすることができる。この場合、チップユニット66のアンテナ102(ループアンテナ)がブースターアンテナ90の中央の第1アンテナ部901と近接させられることになる。これにより、アンテナ102(ループアンテナ)とブースターアンテナ90の第1アンテナ部901とが電磁結合される。一方、第1アンテナ部901に接続されてアンテナ90の端部側に設けられた第2アンテナ部902がモールド金型に固定されたチップユニット66と通信可能になった状態(電磁結合された状態)で、外部(リーダライタ76)と通信する。
このとき、所望の電磁結合を行うには、アンテナ90とアンテナ102との間の空間的な距離(間隔)をできるだけ短い距離とするこが好ましいが、一定の距離よりも近づけた位置に保つ必要がある。一方、RFIDタグ150は、アンテナ90(アンテナユニット94)とアンテナ102(チップユニット66)とが物理的に分離して、チップユニット66の小型化を図っている。このため本実施形態において、チップユニット66の上面は、アンテナユニット94を用いてチップ100に書き込まれている情報を読み取る際にチップユニット66とアンテナユニット94とを位置合わせする(アンテナユニット94を所定の位置でチップユニット66に接触させる)ための接触部66a(第2接触部)を構成する。また、アンテナユニット94のアンテナ90の一部は、アンテナ封止部材92から露出させた構成とすることができる。この露出部は、所定の凹み形状を構成することで、チップユニット66とアンテナユニット94とを位置合わせする(所定の位置で接触させる)ための接触部90a(第1接触部、位置合わせ部)を構成する。接触部90aの形状(大きさ)は、接触部66aの形状(大きさ)に対応しており、略同一である。図5(b)に示されるように、情報読み取りの際にアンテナユニット94の接触部90aとチップユニット66の接触部66aとが互いに接触することにより、アンテナ90とアンテナ102(チップ100)との間の空間的な距離dを一定にすることができる。また、アンテナ90の一部が露出していることで、両アンテナ間距離を短縮することもできる。なお本実施形態において、接触部90aはアンテナ90の露出面であるが、これに限定されるものではない。例えば、アンテナ90の全てをアンテナ封止部材92で覆い、アンテナ封止部材92の一部に、チップユニット66の接触部66aとの位置合わせを行う接触部を設けてもよい。このような接触部は、例えばアンテナ封止部材92の一部を、チップユニット66の接触部66aに対応する形状とする等により実現可能である。また、アンテナ90は、アンテナ保持部材92で囲われた状態で保持する構成のみならず、所定の位置(例えば端部)のみを保持することでローダ22(移動体)に固定してもよい。
このように本実施形態において、アンテナ102(ループアンテナ)は、アンテナ90(ブースターアンテナ)を有するアンテナユニット94から分離して設けられ、アンテナ90と直接的に導通接続することなく電気的に結合可能(電磁結合可能)に構成されている。また、チップ100およびアンテナ102は、封止部材(例えば樹脂部材)により封止されたパッケージ104が本体部30に組み付けられて構成されている。また、本体部30には、アンテナユニット94の所定の位置に設けられた接触部90a(第1接触部)と接触する接触部66a(第2接触部)が設けられている。また好ましくは、本実施形態では、樹脂からなる本体部30の内部には、空間(32)が形成されている。好ましくは、接触部90aは、アンテナ90がアンテナ封止部材92から露出した部位である。これに代えて、アンテナユニット94は、アンテナ90の全体を封止するアンテナ封止部材を有していてもよい。この場合、アンテナ封止部材は、所定の位置において、接触部66aとの位置合わせを行うための形状(位置合わせ部)を有することが好ましい。接触部90aと接触部66aとが接触することにより、アンテナ102とアンテナ90との間の距離が一定になるように保持される。
このように本実施形態において、アンテナ102(ループアンテナ)を含むチップユニット66とアンテナ90(ブースターアンテナ)を含むアンテナユニット94とは、互いに物理的に分離して設けられているが、情報読み取りの際には、これらが互いに近接してこれらの間隔を一定に保つことができる。このため本実施形態によれば、低コストかつ小型であって信頼性の高いRFIDタグを提供することができる。
なお本実施形態において、RFIDタグ150の設置箇所は、加圧面におけるチェイス64の凹部64aに限定されるものではなく、モールド金型を構成するよう組み付けられる金型ブロックであって、一時的にでも露出する部分であればチェイス64の側面や複数のピラー88間のような他の位置であってもよい。
また本実施形態において、アンテナユニット94の設置箇所は、ローダハンド22に限定されるものではなく、タイバー62やチップユニット66が設置される金型ブロックの近傍(できる限り金型等のヒータからの受熱を避けた低温位置が好ましい)であって、着脱時などでデータ読み書きできる金型ブロックの通過位置や、モールド装置の外側にある例えばハンディタイプとすることで、チップユニット66と通信できればよい。
また本実施形態において、モールド金型を構成する各金型ブロック(構成部材)のそれぞれにRFIDタグ150を設けることもできる。具体的には、チェイスとこれに組み付けられるインサートや、チェイス(インサート)や、ベースとチェイスのように、1個のモールド金型内において組み合わされる金型ブロックの確認だけでなく、1個のプレス部に配置した上型と下型との対応が適正かも確認することができる。また、モールド装置内では、プレス部ごとに設置されたモールド金型がどのような金型ブロックで構成されるかを確認することができる。また、モールド金型の組み付けミス(セットミス)が発生するのを防止することができる。
次に、図6(a)、(b)を参照して、 本実施形態におけるモールド装置の変形例について説明する。図6(a)、(b)は、変形例としてのモールド装置10aの要部断面図である。モールド装置10aは、前述したモールド装置10に対して、チップユニット66U、66Lの設置箇所が相違する。このように、チップユニット66Uは加圧や過熱による破損を考慮しながらも、任意の位置に設置することが可能である。
図6(a)、(b)に示すように、チップユニット66Uは、上型52において、着脱されるチェイス64Uがプレス部14内で移動される移載経路の近傍に設けられる。具体的には、アンテナ90は、チェイス64Uの移載経路に対する側方や上方などに適宜設けることができる。例えば図6(a)、(b)に示されるように、アンテナ90Uは、チェイス64Uの移載経路におけるモールド装置10の正面側のタイバー62付近に設けられる。このため、チェイス64Uの着脱の際に、チップユニット66Uに記録された情報を読み取ったり、チップユニット66Uへ例えばモールド金型50の情報を書き込んだりすることができる。
ここで、チェイス64Uが組み付けされる工程において、チェイス64Uの移載経路について説明する。チェイス64Uは、モールド装置10の正面を一方、モールド装置10の背面を他方とする移載経路(移載方向)で移動される(図6参照)。チェイス64Uをベース68Uに取り付ける(収納する)には、まず、図6(a)に示すように、モールド装置10の正面側(図6(a)の左側)にチェイス64Uを配置する。チェイス64Uは、ベース68Uと同じ水平面上にあることが好ましく、移載経路の近傍にあればよい。
続いて、図6(b)に示されるように、モールド金型50の内部にチェイス64Uを挿入(進入)させる。具体的には、ベース68Uの内面にチェイス64Uを接触させながらチェイス64Uを移動させる。このとき、アンテナ90Uが移載経路の近傍におけるモールド装置10の正面側のタイバー62付近に設けられているため、チェイス64Uの挿入時にチップユニット66Uがアンテナ90U前を通過する際に、前述したアンテナ90とアンテナ102(ループアンテナ)との近接動作が行われる。この際にアンテナ90を介してリーダライタ76によって読み書きされる。このため、チップユニット66Uをチェイス64Uの正面側の側面に設けている。ここで、チップユニット66Uの設置箇所として、型面同士がすり合わされないチェイス64Uの装置正面側の他には装置背面側が好ましい。更に、チップユニット66Uの設置箇所は、チェイス64Uの装置側面側であってもよい。
続いて、チェイス64Uをベース68Uに組み付け、金型セットが完了する。このようにして、チェイス64Uは、正面側を一方、背面側を他方とする移載経路(移載方向)で移動される。なお、これら工程の順番を逆にすることで、ベース68Uからチェイス64Uを取り外すことができる。また、チェイス64Uの取り付け、取り外し工程において、チップユニット66Uを取り外して一時的に金型外に取り付けておくこともできる。
ここまで、上型52のチェイス64Uに設けられるチップユニット66Uに関して説明したが、下型54のチェイス64Lに設けられるチップユニット66Lに関しても同様である。具体的には、下型54は、モールド面54aを有するチェイス64L(金型ブロック)と、チェイス64Lに対応した情報などが記録されるチップユニット66Lと、ベース68L(金型ブロック)とを備える。チップユニット66Lは、チェイス64Lにおいてチップユニット66Uと対応する位置に設けられる。ベース68Lは、チェイス64Lを収納可能に構成されると共に、内蔵されるヒータ72Lを備える。またモールド装置10には、チェイス64Lの移載経路における正面側のタイバー62に設けられるアンテナ90Lが取り付けられている。これにより、モールド金型50に関する情報を下型54のチェイス64Lに付帯させて記録することができる。
ここで、図8を参照して、上述したようなRFID150を用いた本実施形態における生産支援システムについて説明する。図8は、生産支援システム400のブロック図である。生産支援システム400に稼働情報を提供するときには、モールド装置10を使用する半導体の生産者からすればモールド金型50などを提供する生産支援者であっても全ての情報を提供できるわけではない。このため、ID情報やモールド関連情報や、検出値などについては、生産支援者に提供可能か否かについて判別して記憶しておくことが好ましい。例えば、レシピ情報や材料情報などのように秘匿すべきであり生産支援者に提供すべきでないものを除外して、検出部86の検出値や動力源の駆動状況など装置の稼動状態を診断するうえで有効性の高い情報のみを生産支援者に稼動情報として生産支援者に提供することも可能である。
更に、検出部86の検出値に基づく情報により、チップユニット66自体のメンテナンスも可能である。すなわち、チップユニット66自体が加熱によって劣化して寿命となってしまうような場合には、寿命に達する前にチップユニット66を交換することで、チップユニット66に確実にID情報等を保持させることができる。すなわち、例えばチップユニット66のメモリが所定の温度で所定の時間加熱され続けたときには情報の保持が困難になるような保持条件が分かっているときには、その保持条件を超える前に、チップユニット66自体を交換するような構成とすることもできる。
この場合、記憶部82に保存されているチップユニット66に保持されるべき情報と、チップユニット66に実際に保持され読み込める情報とを、適宜のタイミングで照合して情報の欠損などを検証することで、寿命へ達したか否かを判断することもできる。これにより、所定の読み取り条件においてチップユニット66に保持されるべき情報が保持されていないと判断したときには、記憶部82に記憶しているチップユニット66に保持されるべき情報を読み出し、新しいチップユニット66に情報を書き込んで対応する金型部品に取り付けることで、その金型部品に保持されるべき情報を確実に保持させ続けることができる。また、新しいチップユニット66に記録されたID情報をその金型に紐付けられたID情報として記憶部82に記録させることもできる。
また、本実施形態に基づく別の具体的な利用形態としては、チップユニット66U、66Lに使用時間の履歴を記録・保持しておけば、モールド装置10側の記憶部82から各種の情報を読み出さなくても、これらの情報の利用が可能である。このため、例えば、モールド装置10からの情報が取り出せない場合(例えば図8に示す収容位置301にある場合など)においてもメンテナンスが可能である。このため、再度使用する際に、事前にチェイス64Uの消耗度を推定して診断してから利用することができる。また、チップユニット66U、66Lに使用時間の履歴を記録・保持しておけば、これらを記憶部82に記録していない場合又は削除したり欠損してしまった場合でも、寿命経過後の使用による不具合の発生を予測して回避したり、交換時期を通知したりすることもできる。この場合、表示部84などにより、使用停止の推奨を通知したり、部材交換、メッキ付け直し、寸法手直しなどの修理を提案したりすることもできる。更に、ネットワークを介して寿命経過後や、交換時期となった金型部品のID情報を金型部品の製造元である生産支援者500(図8参照)に転送するなどして、金型部品の交換部品の注文も簡易に行うことができる。もちろん、本発明によれば、これらの利用は特に限定している場合を除いて、記憶部82に記録しているときにも同様の効果を得ることができる。
更に、チップユニット66に適切なID情報を記録・保持しておくことで、金型部品の真正製品と模造製品との識別も容易になり、模造製品使用による不具合の発生も防止することができる。また、チップユニット66にID情報だけでなくモールド関連情報まで記録しておくことにより、このID情報が紐付けられるモールド金型50が中古品として市場に流通したときに、以前の使用の程度を検証することができるため、適切に利用することができる。
また本実施形態において、記憶部82の代わりとして、モールド装置10の外部に設置されるサーバを用いることもできる。図8は、変形例としての記憶部82を用いたモールド装置10と、モールド装置10を含む半導体工場の生産システム(生産支援システム)を含むシステムブロックを示す。半導体工場300では、上述したようなモールド装置10を複数備えて、モールド金型50が収容位置301(棚など)と、モールド装置10内とで適宜移載されることになる。また、各モールド装置10は、図示しない半導体工場300毎のゲートウェイ、スイッチ又はルータなどを介して、インターネットなどのネットワークINに接続される。これにより、各モールド装置10は、管理システム200に接続され管理されることになる。この管理システム200は、データの通信や演算等のデータの処理を行うデータ処理部201や上述した記憶部82に変わって情報を記録するストレージ202を備える。
このような生産システムでは、モールド装置10からのID情報やモールド関連情報をモールド装置10の記憶部82ではなく、例えば、管理システム200のストレージ202に記録しておくことができる。これによれば、生産調整などにより、モールド金型50を別の半導体工場300に移動してそこで生産を行うようなときには、モールド装置10を替えても過去の履歴などを参照しながらモールド金型50を利用することができる。また、管理システム200のデータ処理部201は、各半導体工場300の生産量の調整などを含めた全体的な管理を行うことも可能であるため、生産量の予測に基づき、適宜のメンテナンス時期の算出を行い、チップユニット66により管理されている金型の寿命に基づき、計画的な交換部品の手配も行うことができるため、効率的な生産や管理が可能となる。
なお、モールド金型50のチップユニット66にID情報だけでなくモールド関連情報まで記録しておけば、上述した管理システム200のような一括的に情報を管理するシステムが存在していなくてもモールド金型50のチップユニット66に記録されたモールド関連情報に基づき生産を行うことができる。
また、チップユニット66によるモールド金型50における金型部品の管理を行うことにより、モールド装置10単位、半導体工場300単位、又は、これらを管理する管理システム200(生産システム)単位における生産支援を行うことができる。
このように、半導体の生産に供される金型部品又は装置部品を提供し半導体の生産を支援するための生産支援システム400としては、生産支援管理システム501(制御部)と、金型部品又は前記装置部品の寿命情報を記憶するデータサーバ502(記憶部)と、半導体の生産者のシステムと通信する通信システム503(通信部)とを有する。ここで、通信システム503は、金型部品又は装置部品に割り当てられるID情報(例えば、前述のチップユニット66に保持されたID情報)を半導体の生産者側の管理システム200から稼動状態に関する情報(稼動情報)として受信する。この際に、生産支援管理システム501は、通信システム503が受信した稼動情報とデータサーバ502における寿命情報に基づき、金型部品又は装置部品の寿命を診断する。この場合、生産支援管理システム501は、寿命に近づいた金型部品又は装置部品があるときには、管理システム200に対し装置部品の交換を推奨する処理を通信システム503を用いて実行することができる。又は、生産支援管理システム501は、交換用の金型部品又は装置部品の製造処理を実行することもできる。これによれば、半導体工場300における生産に必要な金型部品又は装置部品をタイムリーに提供することができ、生産における装置の稼働率を向上することができる。
また、このような生産を支援する生産支援システム400では、上述したようなID情報やこれに紐付けられたモールド関連情報などの情報(データ)を収集、分析したうえで、生産支援者500に対して稼動情報として提供することも可能である。これによれば、例えばモールド装置10やモールド金型50を供給する生産支援者500は、分析を行いモールド関連情報に基づくモールド装置10の診断またはモールド装置10やモールド金型50における不具合の発生を予測し予防保全のための対応を行うことが可能となる。さらに、不具合(トラブル)が仮に発生したときには迅速な指示および復旧アドバイスを行うなどの対応が可能にもなる。
具体的には、生産システムにおける管理システム200からモールド関連情報において生産支援者500に提供可能な稼動情報を生産支援者500の生産支援管理システム501(具体的には通信システム503)に送信する。この際に、生産支援管理システム501では、ID情報やこれに紐付けられたモールド関連情報に基づき、例えば金型部品や装置部品の使用時間などの情報を算出し、使用時間と故障率の相関数式等に基づき診断をすることで、寿命に近づいた金型部品や装置部品を交換するように、生産システムにおける管理システム200に提案通知を行う。また、検出部86における圧力や温度の情報が稼動情報として提供されたときには、これが所定値を超えたときなどにも適宜対応(交換、修理、通知など)を紐付けしておくことで、交換時判断等をすることもできる。ここで、生産システムにおける管理システム200から必要に応じてその金型部品や装置部品の交換を希望する通知がなされたときには、生産支援者500の在庫504から交換用の金型部品(例えばモールド金型50の金型ブロック等)や装置部品などを半導体工場300に提供する。これにより、金型部品や装置部品の交換を適切に行うことで生産における不具合の発生を予防し、半導体工場300における工場稼働率の向上を図ることができる。また、生産支援システム400では、提供された情報に基づき、交換時を予測し、金型部品や装置部品の製造の開始や、生産の準備のような製造処理を実行することもできる。
このように、本発明における生産支援システム400によれば、交換される金型部品や装置部品に対して少なくともID情報を用いた管理を行うことで、加熱等による劣化や消耗に応じた交換などの支援を行うことができ、半導体の生産を行う生産システムにおける工場稼働率の向上に貢献することができる。
また、生産支援システム400によれば、例えばID情報及びモールド関連情報に基づいて、管理システム200に用いられるコンピュータハードウェアの保守及び修理、データ処理部201として実現される電子データ処理システム用のコンピュータハードウェアの設置工事・保守及び修理、及び、モールド装置10を含む半導体製造装置、これに関連する電気通信機械器具、測定機械器具並びにプラスチック加工機械器具の修理や保守を効率化の支援にも用いることができる。また、ID情報及びモールド関連情報は、制御部80や管理システム200のデータ処理部201のデータネットワークにおけるコンピュータプログラムやデータベース構造についての作成、設計、保守、助言、バックアップ、回復などによっても支援にも用いることもできる。
本実施形態によれば、低コストかつ小型で信頼性の高いチップユニット、ブースターアンテナ、RFIDタグ、モールド装置、および、生産支援システムを提供することができる。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。ただし、本発明は、上記実施形態にて説明した事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
例えば本実施形態において、モールド金型50のチェイス64にチップユニット66を取り付けて管理する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、チップユニット66を取り付けて管理する管理対象物は、他の種類の対象物であってもよい。この対象物として、モールド金型50以外の他の成形金型であってもよい。また、このような対象物が、小型なチップユニット66を搭載する必要がある対象物であって、そのものによって電波が乱反射や吸収されることで通信が困難になるようなものであれば対象物に小型のチップユニット66を取り付け、影響を受けにくい外側(離れた位置)で電磁波放射をするブースターとすることを適用できる。また、チップユニット66を取り付ける対象は金型以外のものでもよい。このような対象物として、例えば、金属以外の生体や液体であってもよく、具体的には図9に示すように、ワイン200や高級魚300等の水分を含む対象物であってもよい。
例えば、図9(A)に示されるように、ワイン200のような液体を含んだ容器であれば、チップユニット66を取り付けておき、チップユニット66とアンテナ90とを接触させることで、上述したような構成により、チップユニット66に記録させた情報を外部と通信することで、水分を多く含む対象物である容器でも小型のチップユニット66を取り付けておくだけでRFIDとして機能させることができる。
また、図9(B)に示されるように、高級魚300のようなほぼ水分の物体であれば、チップユニット66をヒレのような部分に取り付けておき、チップユニット66とアンテナ90とを接触させることで、チップユニット66に記録させたその魚300の情報を外部と通信することで、ほぼ水分であるような物体でも小型のチップユニット66を取り付けておくだけでRFIDとして機能させることができる。
また本実施形態において、アンテナ102は、アンテナ(ブースターアンテナ)90と誘電結合している微小ループ形状のループアンテナ(微小ループアンテナ)であるが、これに限定されるものでない。アンテナ102として、ループアンテナに代えて、電波エネルギーで起電可能なアンテナ(微小アンテナ)などの他のアンテナを用いることもできる。