JP2019200151A - 細胞集塊の細胞増殖能評価方法 - Google Patents

細胞集塊の細胞増殖能評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】細胞の三次元構造体である細胞集塊を用いて、その形状をイメージングにより解析することによって当該細胞集塊の細胞増殖能を評価する方法の提供。【解決手段】細胞集塊の細胞増殖能を評価する方法であって、(a)少なくとも核酸と微小管を蛍光物質で標識された細胞集塊を、蛍光顕微鏡を用いて個々の細胞が識別可能な解像度で撮像し、前記蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像を焦点位置の異なる2枚以上取得する工程と、(b)前記工程(a)において取得された2枚以上の平面断層画像を重ね合わせることにより、前記細胞集塊の立体画像を構築する工程と、(c)前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊中の分裂期にある細胞を識別する工程と、(d)前記工程(c)において識別された分裂期にある細胞の数に基づき、前記細胞集塊の細胞増殖能を評価する工程と、を有する、細胞集塊の細胞増殖能評価方法。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞集塊(スフェロイド)の形状をイメージング(画像)により解析することによって当該細胞集塊の細胞増殖能を評価する方法に関する。
細胞の増殖能は、細胞の健全性の指標の1つであり、細胞増殖能を定量化することによって、がん化の有無や腫瘍の悪性度の指標としたり、薬効や細胞毒性を評価することができる。例えば、創薬において、細胞分裂をターゲットとしたタキサン系などを含む抗がん剤が多数開発されている。これらの抗がん剤の薬効評価に際して、細胞の増殖能に対する影響を評価することは重要である。
細胞の増殖能を測定する方法としては、例えば、BrdU(5-bromo-2'-deoxyuridine)、EdU(5-Ethynyl-2'-deoxyuridine)などの核酸アナログを使用する方法がある。これらの核酸アナログは、DNA合成を行う細胞に取り込まれる。このため、これらの核酸アナログの取り込みの有無をこれらの抗体を用いた免疫染色により検出することによって、当該細胞がDNAの複製期間にあたる細胞周期S期を経験したか否かが判別できる。
また、分裂期の細胞を検出することによって細胞増殖能を調べる方法として、例えば、サイクリンE型タンパク質等の細胞周期のうちの特定の期に特異的に発現するタンパク質の発現量を指標とする方法がある(例えば、特許文献1参照。)。当該方法では、検体を細胞ごとにばらばらにして、細胞周期特異的なタンパク質を蛍光標識し、フローサイトメーターにより蛍光強度ごとに細胞を分離し、当該タンパク質の発現量の多い細胞を分裂期の細胞として計数する。また、平面培養した幹細胞を、微速度撮影ホフマン・モジュレーション・コントラスト顕微鏡法によって観察し、細胞の形態を直接観察して分裂の有無を調べる方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
一方で、細胞が娘細胞を作る現象である細胞分裂は、細胞周期の中でもダイナミックな現象である。間期に染色体が倍になり、分裂期に核膜の消失・紡錘体の形成、染色体の分離、細胞質分裂が起こる。分裂期には紡錘体が形成されるが、この構造は主に微小管から成るため、微小管を染色することで、分裂期にいる細胞を可視化することができる。そこで、臨床現場においては、患者から腫瘍組織の細胞塊を採取し、この細胞塊から薄層切片を作製し、これを染色して得られた核分裂像(核分裂期にある細胞の画像)に基づいて増殖能を評価して病理診断する手法が一般的である。病理診断では、悪性度評価に組織標本上の単位視野あたりの核分裂像数(Mitotic Index:単位視野あたりの全細胞に占める分裂している細胞(M期)の細胞の比率)を用いることで、治療効果の予測や再発の危険性(再発リスク)の評価などがなされる。特にがんの悪性度診断において、核分裂像は重要な診断項目になっている。がん組織中で核分裂が多く見られるものほど、細胞分裂の速度が速く、がんの増殖が速く、悪性度が高いといえる。このため、がん細胞増殖能を示す核分裂指数や、細胞分裂の異常を示す異型核分裂像の検出は、臨床でも頻出している。
特表2004−529322号公報 特表2013−507643号公報
しかし、細胞塊の異なる部位で薄切された切片は、がん腫瘍のある一平面を見ているにすぎない。このため、切片ごとに増殖活性を示す細胞の数が違っており、細胞塊全体の病態や分裂期細胞の局在を把握することが難しい。特に、分裂期に形成される紡錘体の細胞内の配置と観察面(平面断層画像)の角度が適当でない場合には、分裂期細胞を単一の薄層切片又は平面断層画像から識別することは困難である。また、薄層切片の作製から核分裂像の取得までは、作業のステップが多く、時間も掛かる煩雑な作業である。
また、平面培養した細胞について細胞増殖能を測定する方法では、本来三次元構造を持つ生体組織中の細胞の増殖能を反映しているとは限らない、という問題がある。より生体内での増殖能を評価するためには、細胞集塊のような三次元構造の細胞の増殖能を評価することが好ましい。一方で、例えば、分裂期細胞数を特定するために、細胞集塊の細胞をばらばらにしてフローサイトメーターを用いる方法では、細胞集塊中の分裂期細胞が存在する位置の情報がなく、細胞集塊中の細胞の位置と増殖能の関連付けをすることが困難であった。
本発明は、細胞の三次元構造体である細胞集塊を用いて、その形状をイメージングにより解析することによって当該細胞集塊の細胞増殖能を評価する方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記の細胞集塊の細胞増殖能評価方法等を提供する。
[1] 細胞集塊の細胞増殖能を評価する方法であって、
(a)少なくとも核酸と微小管を蛍光物質で標識された細胞集塊を、蛍光顕微鏡を用いて個々の細胞が識別可能な解像度で撮像し、前記蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像を焦点位置の異なる2枚以上取得する工程と、
(b)前記工程(a)において取得された2枚以上の平面断層画像を重ね合わせることにより、前記細胞集塊の立体画像を構築する工程と、
(c)前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊中の分裂期にある細胞を識別する工程と、
(d)前記工程(c)において識別された分裂期にある細胞の数に基づき、前記細胞集塊の細胞増殖能を評価する工程と、
を有する、細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[2] 前記工程(a)において、核酸と微小管がそれぞれ蛍光特性の異なる蛍光物質で標識されており、各焦点位置について、核酸を標識した蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像と微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像とを取得する、前記[1]の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[3] さらに、前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊を構成する細胞の総数を計数する、前記[1]又は[2]に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[4] 前記工程(d)において、前記工程(c)において識別された分裂期にある細胞の数と、前記細胞集塊を構成する細胞の総数とに基づき、前記細胞集塊の細胞増殖能を評価する、前記[3]の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[5] さらに、前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊中の核異型の細胞を識別する、前記[1]〜[4]のいずれかの細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[6] 前記工程(c)において、分裂期にある細胞の識別を、微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の輝度値に基づいて行う、前記[1]〜[5]のいずれかの細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[7] 前記工程(c)において、分裂期にある細胞の識別を、微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の細胞当たりの蛍光強度の最大値に基づいて行う、前記[6]の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[8] 前記工程(c)において、分裂期にある細胞の識別を、微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の、細胞当たりの蛍光強度の最大値と、細胞当たりの総輝度値を細胞当たりの平均輝度値で除した値に基づいて行う、前記[6]の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
[9] 動物から採取された生体組織の細胞増殖能を、前記[1]〜[8]のいずれかの細胞集塊の細胞増殖能評価方法により評価し、得られた細胞増殖能の評価結果に基づき、前記生体組織の腫瘍の存在の有無又はその悪性度を判定する、腫瘍の判定方法。
[10] 薬効化合物の薬効を評価する方法であって、
薬効化合物で処理した細胞集塊の細胞増殖能を、前記[1]〜[8]のいずれかの細胞集塊の細胞増殖能評価方法により評価し、得られた細胞増殖能の評価結果と前記細胞集塊の大きさとを指標にして、前記薬効化合物の薬効を評価する、薬効評価方法。
本発明に係る細胞集塊の細胞増殖能評価方法では、細胞集塊を構成する細胞の少なくとも核酸と微小管を蛍光標識し、個々の細胞が識別可能な解像度で蛍光画像を撮像し、得られた蛍光画像をイメージング解析することにより、分裂期にある細胞を識別し、この識別された分裂期にある細胞の数に基づき、細胞増殖能を評価する。このため、本発明に係る細胞集塊の細胞増殖能評価方法により、立体的構造を形成している状態における細胞の細胞増殖能を定量的に、かつ細胞塊から薄層切片を作製してこれを染色する方法よりも簡便に評価することができる。
実施例1において、細胞集塊の核酸(青色蛍光)及び微小管(緑色蛍光)の蛍光標識画像を示す。 図2(a)は、図1中の分裂期細胞及び非分裂期細胞の拡大画像であり、図2(b)は、図2(a)の蛍光標識画像を模式的に示した図である。 実施例1において、各細胞を、横軸がLmax、縦軸がLmeanとしてプロットした散布図を示す。 実施例1において、各細胞集塊の分裂期細胞の数を測定した結果を示した図である。 実施例2において、各細胞を、横軸がLmax、縦軸がLmeanとしてプロットした散布図を示す。
本発明に係る細胞集塊の細胞増殖能評価方法(以下、「本発明に係る細胞増殖能評価方法」ということがある。)は、細胞集塊の細胞増殖能を評価する方法であって、下記(a)〜(d)の工程を有する。
(a)少なくとも核酸と微小管を蛍光物質で標識された細胞集塊を、蛍光顕微鏡を用いて個々の細胞が識別可能な解像度で撮像し、前記蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像を焦点位置の異なる2枚以上取得する工程。
(b)前記工程(a)において取得された2枚以上の平面断層画像を重ね合わせることにより、前記細胞集塊の立体画像を構築する工程。
(c)前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊中の分裂期にある細胞を識別する工程。
(d)前記工程(c)において識別された分裂期にある細胞の数に基づき、前記細胞集塊の細胞増殖能を評価する工程。
本発明に係る細胞増殖能評価方法では、細胞集塊を構成する細胞について、細胞ごとにばらばらにすることなく三次元構造を保ったまま、核酸と微小管を蛍光標識し、焦点位置の異なる2枚以上の平面断層画像を取得し、得られた蛍光画像をイメージング解析することにより、三次元の細胞集団のうち、分裂期にある細胞の数を測定する。得られた分裂期細胞数に基づき、細胞集塊の細胞増殖能を評価する。本発明に係る細胞増殖能評価方法により、細胞集塊を構成する細胞について、分裂期細胞か非分裂期細胞かの情報が、当該細胞集塊における位置情報と紐づいて取得できる。また、細胞集塊全体における分裂期細胞数を測定して細胞増殖能を評価することもでき、これにより、細胞集塊の極一部にすぎない薄層切片の細胞に基づいて細胞増殖能を評価する従来の方法よりも、より精度の高い評価が可能である。また、薄切する前の細胞塊の状態で細胞増殖活性を評価するため、本発明に係る細胞増殖能評価方法により、薄層切片の作製といった煩雑な作業を回避することができ、より効率的に細胞増殖能を評価することができる。
本発明において細胞増殖能が評価される対象の細胞集塊は、細胞集塊が構築可能な接着性細胞であれば特に限定されるものではない。当該細胞集塊を構築する接着性細胞としては、例えば、動物から採取された細胞そのものであってもよく、初代培養細胞であってもよく、さらに継代培養された細胞であってもよく、動物から採取された細胞やそれを培養した細胞に各種処理を施した細胞であってもよく、培養細胞株であってもよい。当該細胞集塊を構築する接着性細胞が由来する生物種は、動物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ヒトであってもよく、非ヒト動物であってもよい。非ヒト動物としては、サル等の霊長類、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ等の実験動物、家畜、又は愛玩動物である動物が好ましい。
当該細胞集塊を構築する接着性細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)、間葉系幹細胞(MSC)等の多分化能を備えた細胞であってもよく、多分化能を備えた細胞から分化誘導して得られた細胞であってもよい。また、生殖細胞であってもよく、上皮細胞、肝細胞、筋細胞などの分化後の成熟した体細胞であってもよい。
当該細胞集塊を構築する接着性細胞としては、正常細胞であってもよく、がん細胞のようにいずれかの生理機能に異常が生じている細胞であってもよく、いずれかの生理機能に異常が生じている細胞と正常細胞との両方であってもよい。
本発明において細胞増殖能が評価される対象の細胞集塊は、1種類の細胞のみから構築されていてもよく、2種類以上の細胞から構築されていてもよい。2種類以上の細胞から構築される場合、同種の生物種由来の細胞のみから構築された細胞集塊であってもよく、2種以上の生物種由来の細胞から構築された細胞集塊であってもよい。
本発明において細胞増殖能が評価される対象の細胞集塊は、常法により構築することができる。具体的には例えば、内壁表面が細胞低接着性のU底培養用容器に、所定の数の細胞を含む細胞懸濁液を注入し、所定時間静置することによって、細胞集塊を形成することができる。当該U底培養用容器としては、スフェロイド形成に一般的に用いられている市販の細胞培養用容器や、ウェルの底面及び内壁面を細胞低接着性物質でコートしたウェルプレート等を用いることができる。
本発明において細胞増殖能が評価される対象の細胞集塊は、動物から採取された生体組織自体又はこれを適当な大きさに切断したものであってもよい。動物、例えば、がん患者をはじめとするがんの発症が疑われる動物、担がんモデル動物、抗がん剤候補化合物による処理や発がん処理を行った実験動物等から採取された生体組織の細胞集塊の細胞増殖能を、本発明に係る細胞増殖能評価方法により評価し、得られた細胞増殖能の評価結果に基づき、当該生体組織の腫瘍の存在の有無又はその悪性度を判定することができる。細胞増殖能が高いと評価された場合には、当該生体組織には腫瘍が存在している、又は当該生体組織に存在している腫瘍の悪性度は高い、と判定される。一方で、細胞増殖能が低いと評価された場合には、当該生体組織には腫瘍が存在していない、又は当該生体組織に存在している腫瘍の悪性度は低い、と判定される。腫瘍の存在の有無やその悪性度の情報を得ることは、腫瘍の判定や抗がん剤の薬効評価において重要である。
本発明において細胞増殖能が評価される対象の細胞集塊は、予めゲルに包埋させておいてもよい。細胞集塊を包埋するゲルとしては、1種以上の細胞外マトリックスを構成する成分により構築されるゲルであることが好ましい。細胞集塊を細胞外マトリックスからなるゲルで包埋させることにより、生体内の細胞環境を模すことができ、より生体内に近い環境下での細胞増殖能を評価することができる。細胞外マトリックスを構成する成分としては、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、エンタクチン、ヘパリン硫酸塩等が挙げられる。細胞集塊のゲルへの包埋は、常法により行うことができる。例えば、構築された細胞集塊を含む細胞培養用容器に、溶融させた状態のゲルを当該細胞集塊全体が浸漬するために充分な量注入し、静置してゲルを硬化させることにより、細胞集塊をゲルに包埋させることができる。当該ゲルとしては、細胞外マトリックスを構成する成分を含み、細胞培養のための基材に使用される市販のゲルを用いることもできる。
細胞増殖能をより精度よく評価するため、本発明において細胞増殖能が評価される対象の細胞集塊は、予め一定期間培養したものであってもよい。細胞集塊の培養は、当該細胞集塊を構成する細胞と同種の細胞を平面培養する場合と同様にして培養することができる。例えば、細胞集塊は、細胞集塊を構成する細胞と同種の細胞を平面培養する場合に一般的に用いられる細胞培養用液体培地に浸漬させた状態で、二酸化炭素濃度又は酸素濃度が制御された環境下、25〜40℃、好ましくは28〜37℃で培養することができる。培養環境の二酸化炭素濃度及び酸素濃度は、培養する細胞の種類等を考慮して適宜調整することができる。培養環境としては、例えば、二酸化炭素濃度が4〜6容量%、酸素濃度が1〜22容量%の範囲内で制御されていることが好ましい。
本発明において細胞増殖能が評価される対象の細胞集塊は、少なくとも核酸と微小管が蛍光物質で標識されている。核酸を標識する蛍光物質と微小管を標識する蛍光物質は、同じ蛍光特性の蛍光物質であってもよいが、核酸と微小管をそれぞれ蛍光特性の異なる蛍光物質で標識する方が好ましい。なお、蛍光特性が異なるとは、励起光照射により発される蛍光の波長が、区別して検出し得るほど異なることを意味する。
細胞内の核酸を蛍光標識することにより、主に細胞核が蛍光染色される。つまり、核酸から発される蛍光画像を解析することにより、細胞核の形状、1細胞当たりに含まれている細胞核の数なども判別することができ、細胞のおおよその細胞周期を判別することもできる。また、細胞集塊の各局所領域における細胞密度を測定することもできる。
核酸の蛍光物質による標識は、細胞集塊を蛍光性核酸染色剤で染色することにより行うことができる。蛍光性核酸染色剤は、DAPI(4’,6−diamino−2−phenylindole)、PI(propidium iodide)、Hoechst33258、Hoechst33342、7−AAD(7Amino actinomycin D)等の公知の蛍光性核酸染色剤の中から、適宜選択して用いることができる。
微小管の蛍光物質による標識は、例えば、微小管を構成するチューブリンに対する抗体を用いて蛍光免疫染色することにより行うことができる。蛍光免疫染色は常法により行うことができる。
工程(a)においては、蛍光標識された細胞集塊を、蛍光物質の種類ごとに、それぞれの励起光の照射下の蛍光顕微鏡で撮像し、当該蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像を取得する。すなわち、各焦点位置について、細胞核を標識した蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像と微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像とを取得する。この際、個々の細胞が識別可能な解像度の平面断層画像を取得する。蛍光顕微鏡としては、例えば、光電子増倍管等の検出器が取り付けられた共焦点レーザー顕微鏡やライトシート顕微鏡等を用いることができる。各細胞が個別に識別可能な平面断層画像を画像解析することによって、分裂期か否かの判定がより明確に行うことができる。
工程(a)において取得する平面断層画像は、一顕微鏡視野につき、蛍光顕微鏡の焦点位置が異なる平面断層画像を2枚以上取得する。細胞集塊の焦点位置が最小となる位置から最大となる位置までを等間隔で順次焦点位置を移動させて一連の平面断層画像群を取得することが特に好ましい。例えば共焦点レーザー顕微鏡では、共焦点領域を細胞集塊の高さ方向(Z軸方向)へ少しずつずらしながら(対物レンズと細胞集塊とを光軸に対して直交する方向に相対的に移動させながら)、当該細胞集塊のZ軸方向に直交する断面の平面断層画像を順次撮像することによって、焦点位置の異なる複数枚の平面断層画像を取得することができる。
また、核酸と微小管に加えて、細胞の生理学的な状態や生理活性を解析するために有用な生体分子の蛍光標識も行い、それぞれの蛍光の平面断層画像を取得してもよい。具体的には、工程(a)において取得した平面断層画像と同一の顕微鏡視野について、それぞれの蛍光の励起光を順次照射し、各蛍光の平面断層画像を撮像する。取得された高解像度の平面断層画像の画像解析を行うことにより、それぞれの細胞の生理学的な状態や生理活性をも解析することができる。
この取得された一連の平面断層画像群を互いに重ね合わせることにより、細胞集塊の立体画像を構築することができる(工程(b))。この一連の平面断層画像群を取得する際の各平面断層画像の焦点位置の距離は、各平面断層画像をより滑らかに重ね合わせられるように、細胞集塊を構成する細胞よりも小さいことが好ましく、例えば、0.5〜5μmとすることができる。一連の平面断層画像群からの立体画像の構築は、例えば、CT(コンピュータ断層撮影法)等の技術分野において公知の画像構築法により行うことができる。
構築された細胞集塊の立体画像を解析して、前記細胞集塊中の分裂期にある細胞を識別する(工程(c))。分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞は、その核酸標識画像と微小管標識画像に基づき、常法により識別することができる。具体的には、非分裂期にある正常細胞は、細胞内に1個の細胞核が存在しているため、核酸標識画像ではこの球状の細胞核全体が染色されている。また、微小管は細胞全体に張り巡らされているため、微小管標識画像では、細胞質全体が薄く染色されているように観察される。一方で、分裂期にある細胞は、細胞核内にあった核酸は凝集して染色体が構成されており、微小管も紡錘体を構成する。つまり、核酸標識画像では染色体特有の形状の構造物が観察され、微小管標識画像では紡錘体特有の形状の構造物が観察される。この標識画像の相違により、分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞を識別できる。
分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞の識別は、目視でも可能であるが、画像解析により立体画像から両細胞を自動的に分類することが好ましい。なお、本発明において、標識画像の解析は、公知の画像解析の手法を適宜組み合わせることにより行うことができる。自動分類を行う場合、分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞の識別は、微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の細胞当たりの蛍光強度の最大値(以下、「最大輝度値(Lmax)」ということがある。)に基づいて行うことができる。
なお、ここでいう輝度とは、例えば濃淡画像においては濃淡を表す値であり、画像中の各ボクセルの明るさを表す値である。また、ここでいう体積とは、領域の正確な体積の数値のみならず、領域に含まれるボクセルの数を意味してもよい。
非分裂期にある細胞の微小管標識画像は、細胞質全体が薄く染色されている、言い換えると細胞質全体に輝度が分散している。これに対して、分裂期にある細胞の微小管標識画像は、核付近の紡錘体が強く染色されている、言い換えると輝度が核に集中している。このため、微小管標識画像において、分裂期にある細胞は、非分裂期にある細胞よりも、最大輝度値が大きい。このため、分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞は、Lmaxの値に基づいて識別することができる。例えば、Lmaxについて予め分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞を識別するための閾値を設定しておき、当該閾値よりもLmaxが大きい細胞を、分裂期にある細胞に分類する。当該閾値は、例えば、分裂期にあることが確認されている細胞と分裂期にないことが確認されている細胞について、同様にして取得した微小管標識蛍光画像から実験的に求めることができる。
また、微小管標識画像において、分裂期にある細胞は、非分裂期にある細胞よりも、細胞当たりの染色領域(ボクセル)が狭い。ここで、細胞当たりの微小管染色領域の体積(Sm:単位はボクセル)は、細胞当たりの総輝度値(Ltotal)を、細胞当たりの平均輝度値(Lmean)で除した値(Ltotal/Lmean)である。つまり、微小管標識画像において、分裂期にある細胞は、非分裂期にある細胞よりも、Ltotal/Lmeanが小さく、Lmaxが大きい。そこで、分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞の識別は、LmaxとLtotal/Lmeanの値に基づいて識別することもできる。LmaxとLtotal/Lmeanの両方について予め分裂期にある細胞と非分裂期にある細胞を識別するための閾値を設定しておき、Lmaxが設定された閾値よりも大きく、かつLtotal/Lmeanが設定された閾値よりも小さい細胞を、分裂期にある細胞に分類する。これらの閾値は、例えば、分裂期にあることが確認されている細胞と分裂期にないことが確認されている細胞について、同様にして取得した微小管標識蛍光画像から実験的に求めることができる。
Lmax、Ltotal、及びLmeanを求めるために、まず、核酸標識画像から、細胞核領域を決定し、この細胞核領域に基づいて細胞領域を決定する。具体的には、以下の方法で、細胞領域を決定することができる。
まず、立体画像の画素(ボクセル)当たりの蛍光輝度値に基づき、予め設定しておいた閾値(蛍光標識された領域と蛍光標識されていない領域を区別するための閾値)を用いて二値化処理を行う。当該閾値は、例えば、各標識画像中の細胞が存在していないことが明らかな領域(バックグラウンド)の1画素当たりの輝度値やその統計値等から決定してもよく、経験的に取得された閾値であってもよい。
得られた二値化画像から核酸標識領域や微小管標識領域を決定する画像解析は、例えば特開2011−75278号公報に記載の方法等の公知の画像解析方法を利用して行うことができる。具体的には、例えば、輝度値が設定された閾値より上の画素を1、それ以外を0というように二値化を行い、さらに1となった画素からなる一塊の領域をメインオブジェクトとして認識する。このオブジェクト中の各画素の輝度値の勾配から、当該オブジェクトの境界を分離し、閉じた領域を抽出し、これを個々の核酸標識領域や微小管標識領域として決定する。この決定された核酸標識領域を、各細胞の細胞核領域とする。
細胞密度が高く、細胞が込み合っているような場合には、領域分割を行う手法の一つとして知られているウォーターシェッド(Watershed)アルゴリズム手法を用いることが好ましい。該手法は、マークと呼ばれる領域の中心を隣接画素へと広げていくことによって領域を得るものであり、この機能を同時に使用することにより、個々の細胞を認識するよう設定する。
各細胞の細胞領域は、細胞核周辺の領域として推定し、決定された細胞核領域に対して膨張処理(Dilation)を行うことにより決定する。この決定された各細胞領域について、微小管標識画像から、Lmax、Ltotal、及びLmeanを求める。すなわち、細胞領域に含まれている全画素の輝度値の総量をLtotal、最高輝度値をLmax、平均輝度値をLmeanとして測定する。
Lmaxに基づいて、立体画像中の細胞集塊を構成する細胞から、予め設定された閾値よりもLmaxが大きい細胞を抽出し、これを分裂期にある細胞として分類する。LmaxとLtotal/Lmeanの両方に基づいて、立体画像中の細胞集塊を構成する細胞から、予め設定された閾値よりもLmaxが大きく、かつ予め設定された閾値よりもLtotal/Lmeanが小さい細胞を抽出し、これを分裂期にある細胞として分類することも好ましい。本発明に係る細胞増殖能評価方法では、各細胞の細胞集塊における位置情報も紐づいているため、細胞集塊中の分裂期にある細胞の数が計数できるだけではなく、その局在をも把握することができる。
細胞集塊においては、集塊の内部の細胞は、周辺部の細胞よりも蛍光輝度値が低くなる傾向にある。つまり、細胞集塊中の細胞は、その位置によって蛍光強度の輝度値がばらつく場合がある。そこで、例えば、LmaxをLmeanで規格化することによって、このばらつきの問題を解決してより評価精度を高めることができる。
例えば、以下の式(1)に基づき、LmaxをLmeanで規格化することができる。下記式中、「Lmax’」は、規格化されたLmaxである。
Lmax’=α*(Lmax −γ)/(Lmean −β) (1)
上記式(1)中、α、β、γは以下の通りに求められる。まず、各細胞を、横軸がLmax、縦軸がLmeanとしてプロットした散布図を作製し、この散布図について、最小二乗法で近似直線を求める。Lmax’が1の場合、式(1)は近似直線に乗る。すなわち、Lmeanから予想されるLmaxの値が実測値と等しい場合、Lmax’を1とする。このため、式(1)中、αは近似直線の傾きに等しく、βは0であり、α*γは近似直線の切片に−1を乗じた値である。
こうして得られたLmax’に閾値を設定し、Lmax’がこの閾値以下の細胞を、分裂期にある細胞として抽出して分類する。当該閾値は、Lmax’よりも小さい範囲内で、例えば、Otsuの方法(https://imagej.nih.gov/ij/plugins/otsu-thresholding.html)により自動的に取得することができる。これにより、抽出して分類された細胞集団に対する分裂期にある細胞の割合を高めることができ、分裂期にある細胞をより精度よく評価できる。
また、細胞集塊内では、紡錘体は様々な方向に形成されており、細胞集塊に対して一の角度の断面(一般的にはXY平面)に対してのみ解析する場合には、当該断面中の細胞において紡錘体が形成されている角度によっては、紡錘体が識別できず、分裂期細胞として認識できないおそれもある。これに対して、本発明に係る細胞増殖能評価方法では、構築された立体画像に対して解析することにより、様々な方向に形成された紡錘体を精度よく認識することができ、分裂期細胞の定量的解析の精度を改善することができる。
識別された分裂期にある細胞の数に基づき、細胞集塊の細胞増殖能を評価する(工程(d))。細胞集塊を構成する細胞の細胞増殖能が高いほど、当該細胞集塊に存在する分裂期にある細胞の数は多くなる。このため、分裂期にある細胞の数が多い細胞集塊を構成する細胞は、分裂期にある細胞の数が少ない細胞集塊を構成する細胞よりも、細胞増殖能が高いと評価できる。
また、工程(b)において構築された立体画像を解析して、当該細胞集塊を構成する細胞の総数を計数した上で、工程(c)において識別された分裂期にある細胞の数と、当該細胞集塊を構成する細胞の総数とに基づき、当該細胞集塊の細胞増殖能を評価することもできる。具体的には、細胞集塊を構成する細胞の細胞増殖能が高いほど、当該細胞集塊を構成する細胞の総数に対する分裂期にある細胞の数の割合(分裂期細胞比率)(%)が高くなる。このため、分裂期細胞比率が高い細胞集塊を構成する細胞は、分裂期細胞比率が低い細胞集塊を構成する細胞よりも、細胞増殖能が高いと評価できる。
例えば、細胞増殖能が所望の程度よりも高い細胞の存在の有無や存在量の評価を目的とする場合には、細胞集塊に含まれる分裂期にある細胞の数又は分裂期細胞比率が、予め設定した閾値よりも多い場合に、当該細胞集塊を構成する細胞は細胞増殖能が高いと評価することができる。逆に、細胞増殖能が所望の程度よりも低い細胞の存在の有無や存在量の評価を目的とする場合には、細胞集塊に含まれる分裂期にある細胞の数又は分裂期細胞比率が、予め設定した閾値よりも少ない場合に、当該細胞集塊を構成する細胞は細胞増殖能が低いと評価することもできる。これらの閾値は、評価の目的に応じて適宜実験的に求めることができる。
また、本発明に係る細胞増殖能評価方法では、個々の細胞が識別可能な解像度で撮像した平面断層画像から構築された立体画像を用いるため、個々の細胞について、その核酸標識画像から核異型の細胞を識別することもできる。細胞増殖能と核異型の細胞の比率との両方を用いることで、例えば、抗がん剤の薬効評価等をより効率よく行うことができる。
また、本発明において得られた立体画像から、細胞集塊の大きさ(体積)を測定することもできる。例えば、細胞集塊の立体画像から得られた二値化画像を、一画像に細胞集塊全体が収まる程度に縮小した画像を、細胞集塊の大きさの解析用画像とする。この縮小した解析用画像中の蛍光標識された領域を、細胞集塊領域として認識する。この縮小した解析用画像では、細胞集塊(蛍光標識された領域)は、略球体の一塊としてあらわされる。細胞増殖能と細胞集塊の大きさとの両方を用いることで、例えば、抗がん剤などの外部刺激による腫瘍サイズの変化と分裂期細胞数の変化との関連付けも可能になる。
細胞集塊を特定の環境下で培養し、培養後の細胞集塊に対して本発明に係る細胞増殖能評価方法を実施することにより、当該細胞集塊を構成する細胞の当該環境下における細胞増殖能を評価することができる。例えば、細胞集塊を外部から刺激した後に、当該細胞集塊を蛍光物質で標識し、この蛍光標識した細胞集塊に対して本発明に係る細胞増殖能評価方法を実施することにより、細胞集塊を外部から刺激した状態における細胞増殖能を評価することができる。この外部からの刺激は、一過性のものであってもよく、細胞を増殖させるために必要な培養の間中、継続してもよい。
外部からの刺激が生理活性物質の場合、例えば、細胞集塊を、生理活性物質を含む培養培地に浸漬させる、又は細胞集塊が浸漬している培養培地に生理活性物質を添加し、そのまま充分な時間培養することによって、細胞集塊を生理活性物質によって刺激することができる。培養時間によっては、生理活性物質を含む培養培地を、生理活性物質を含まない新たな培養培地に交換して培養を継続してもよい。
生理活性物質とは、種々の生体反応を制御に関与する物質を意味する。本発明において外部刺激として使用する生理活性物質としては、ビタミンやホルモン、抗体等のような生体内に本来存在する物質であってもよく、酵素阻害剤、医薬品の有効成分となる化学合成品等のような生体内には本来存在しない物質であってもよい。また、生理活性物質は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質等の複合タンパク質、糖類、多糖類、脂質、核酸、低分子化合物のいずれであってもよい。
本発明に係る細胞増殖能評価方法は、生体内の細胞の環境に近しい三次元構造体である細胞集塊を用いて細胞増殖能を評価する。このため、薬効化合物の薬効評価に対して本発明に係る細胞増殖能評価方法を用いることにより、平面培養された細胞を用いた場合よりも、より生体に投薬した場合得られる薬効に近い薬効評価が可能になる。当該薬効化合物としては、特に限定されるものではなく、抗がん剤をはじめとする各種医薬品の有効成分であってもよく、各種医薬品の候補化合物であってもよい。
例えば、がん患者から採取されたがん細胞を含む細胞集塊を抗がん剤を含む培養培地に浸漬させ、そのまま充分な時間培養した後に本発明に係る細胞増殖能評価方法を実施することにより、抗がん剤で処理された状態における当該がん患者のがん細胞の細胞増殖能を評価することができる。抗がん剤処理により、未処理のがん細胞よりも細胞増殖能が低下したと評価された場合には、当該抗がん剤によりがん細胞の細胞増殖が抑制されている、すなわち、当該がん患者のがん細胞は当該抗がん剤に対して感受性であり、よって当該がん患者に当該抗がん剤を投与することによって有効な抗がん効果が期待できる、と評価できる。
また、抗がん剤の候補化合物のスクリーニングにおいて、評価対象試料であるがん細胞からなる細胞集塊を、候補化合物を含む培養培地に浸漬させ、そのまま充分な時間培養した後に本発明に係る細胞増殖能評価方法を実施する。コントロールの細胞集塊よりも細胞増殖能が低下した場合には、当該候補化合物は抗がん効果があると評価することができる。一方で、コントロールの細胞集塊に対して細胞増殖能の低下が観察されなかった場合には、当該候補化合物は抗がん効果ないと評価することができる。
抗がん剤等の薬効化合物の薬効評価においては、細胞集塊の大きさに対する影響も重要な情報である。そこで、薬効化合物で処理した細胞集塊の細胞増殖能を、本発明に係る細胞増殖能評価方法により評価し、得られた細胞増殖能の評価結果と当該細胞集塊の大きさとを指標にして、当該薬効化合物の薬効を評価することも好ましい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ヒト結腸腺癌に由来する培養細胞株HT29細胞の細胞集塊に対してパクリタキセル処理し、分裂期にある細胞を識別した。
<細胞集塊の構築>
具体的には、HT29細胞(ATCCから入手)を、低吸着U底プレート(住友ベークライト社製)に各ウェルあたり250個ずつ播種し、1週間培養し、細胞集塊を形成させた。
<パクリタキセル処理>
次いで、得られた細胞集塊の培養培地に、紡錘体分裂阻害剤であるパクリタキセル(タキソール、BMS社製)を、終濃度が0、8、80、又は800nMとなるように添加し、48時間培養して処理した。なお、パクリタキセル処理により、細胞は分裂期が終了できなくなるため、分裂期細胞数が増加する。
<細胞集塊の蛍光標識>
次いで、得られた細胞集塊を、1% TritonX−100/4%パラホルムアルデヒドに浸漬させて4℃で一晩静置して固定した。次いで、メタノール濃度が25容量%、50容量%、75容量%、95容量%であるメタノール/PBSに、順次30分間ずつ、4℃で浸漬させた後、100%メタノールに5時間、4℃で浸漬させた。続いて、3% Normal Goat Serum/PBSで、4℃で一晩ブロッキングした。
ブロッキング後の細胞集塊を、1%NGS/PBSに200倍希釈したalexa Fluor 488標識抗Tubulin 抗体(eBioscience社製)に4℃で一晩浸漬させた後、希釈したHoechst33342に常温で6時間以上浸漬させた。その後、ScaleS4(透明化液)に浸漬させて37℃で一晩振とうさせた。
<立体画像の構築>
蛍光標識後の細胞集塊を、共焦点レーザー顕微鏡「FV1200」(オリンパス社製)で撮像した。20倍対物レンズ(LUCPLFLN×20)で、Zスライスの厚みが細胞核の大きさ以下となるようにして撮像した。それぞれの蛍光標識サンプルに対して撮像された一連の平面断層画像群を重ね合わせて立体画像を構築した。得られた立体画像に対して、二値化処理し、二値化画像を得た。
図1に、細胞集塊の核酸(青色蛍光)及び微小管(緑色蛍光)の蛍光標識画像を示す。図1中の分裂期細胞及び非分裂期細胞の拡大画像を図2(a)に示す。図2(b)は、図2(a)の蛍光標識画像を模式的に示した図である。図2(b)の微小管染色領域は、色が濃い領域が、図2(a)において蛍光強度が比較的強かった領域を示す。非分裂期細胞は、細胞の中心に細胞核が青く標識されており、その周囲が微小管で薄く緑色に標識されていた。分裂期細胞は、細胞の中心部の核酸で標識されている領域に、微小管から形成された紡錘体が強く緑色で蛍光標識されていた(図2(b)中、微小管染色領域中の濃色部分)。
<細胞領域の決定>
二値化画像から、一塊の領域をメインオブジェクトとして認識し、このオブジェクト中の各画素の輝度値の勾配から、当該オブジェクトの境界を分離し、閉じた領域を抽出し、これを個々の核酸標識領域や微小管標識領域として決定した。この決定された核酸標識領域を、各細胞の細胞核領域とした。各細胞の細胞領域に対して膨張処理(Dilation)を行うことにより細胞領域を決定した。
<Lmax、Ltotal、及びLmeanの測定>
決定された各細胞領域について、微小管標識画像から、細胞領域に含まれている全画素の輝度値の総量をLtotal、最高輝度値をLmax、平均輝度値をLmeanとして測定した。
図3に、各細胞を、横軸がLmax、縦軸がLmeanとしてプロットした散布図を示す。この散布図のうち、Lmaxが3000以上であり、かつLtotal/Lmeanが5×10以下である細胞(図中、四角で囲った領域)を分裂期細胞として抽出して分類した。分裂期細胞の数を図4に示す。この結果、図3の四角で囲われた領域の細胞の数は、パクリタキセルの濃度依存的に増大しており、当該領域により分裂期細胞を抽出できていることが確認された。
[実施例2]
ヒト結腸腺癌に由来する培養細胞株HT29細胞の細胞集塊中の分裂期にある細胞を識別した。
実施例1と同様にして構築した細胞集塊に対して、実施例1と同様にして、核酸と微小管を蛍光標識し、蛍光画像を取得して立体画像を構築した。実施例1と同様にして、構築された立体画像を二値化し、細胞領域を決定し、各細胞のLmax、Ltotal、及びLmeanを測定した。
図5に、各細胞を、横軸がLmax、縦軸がLmeanとしてプロットした散布図を示す。この散布図について、最小二乗法で近似直線を求めたところ、y=0.4634*x−67.721(x:Lmax、y:Lmean)であった。
次いで、下記式(1)に基づき、LmaxをLmeanで規格化した。下記式中、「Lmax’」は、規格化されたLmaxである。
Lmax’=α*(Lmax −γ)/(Lmean −β) (1)
Lmeanから予想されるLmaxの値が実測値と等しい場合、Lmax’を1とする。よって、上記式(1)中、αは0.4634、βは0、α*γは67.721であった。
こうして得られたLmax’に対して、(x:Lmax、y:Lmean)=(1500, 250)及び(4300, 770)の2点を通る直線を境界線とした。図中、斜め線がこの境界線を示す。なお、(1500, 250)はLmeanの最小値を示す細胞であり、(4300, 770)はLmaxの最大値を示す細胞である。
この境界線は、Lmax’が2.5の値の線である。そして、図5の散布図中、Lmax’≧2.5の細胞(図中、三角で囲まれた領域)を分裂期細胞として抽出し分類した。この領域の中から100個の細胞をランダムに抽出し、標識画像を目視で確認したところ、分裂期細胞の割合は87%であった。
一方で、図5の散布図から、Lmaxの値のみで分裂期細胞を抽出した場合、具体的には、Lmax≧4000の細胞を分裂期細胞として抽出し分類したところ、この領域の中から100個の細胞をランダムに抽出し、標識画像を目視で確認した結果、分裂期細胞の割合は11%であった。これらの結果から、規格化することにより、分裂期細胞の認識精度を改善できることが確認された。

Claims (10)

  1. 細胞集塊の細胞増殖能を評価する方法であって、
    (a)少なくとも核酸と微小管を蛍光物質で標識された細胞集塊を、蛍光顕微鏡を用いて個々の細胞が識別可能な解像度で撮像し、前記蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像を焦点位置の異なる2枚以上取得する工程と、
    (b)前記工程(a)において取得された2枚以上の平面断層画像を重ね合わせることにより、前記細胞集塊の立体画像を構築する工程と、
    (c)前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊中の分裂期にある細胞を識別する工程と、
    (d)前記工程(c)において識別された分裂期にある細胞の数に基づき、前記細胞集塊の細胞増殖能を評価する工程と、
    を有する、細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  2. 前記工程(a)において、核酸と微小管がそれぞれ蛍光特性の異なる蛍光物質で標識されており、各焦点位置について、核酸を標識した蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像と微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の平面断層画像とを取得する、請求項1に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  3. さらに、前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊を構成する細胞の総数を計数する、請求項1又は2に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  4. 前記工程(d)において、前記工程(c)において識別された分裂期にある細胞の数と、前記細胞集塊を構成する細胞の総数とに基づき、前記細胞集塊の細胞増殖能を評価する、請求項3に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  5. さらに、前記工程(b)において構築された立体画像を解析して、前記細胞集塊中の核異型の細胞を識別する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  6. 前記工程(c)において、分裂期にある細胞の識別を、微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の輝度値に基づいて行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  7. 前記工程(c)において、分裂期にある細胞の識別を、微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の細胞当たりの蛍光強度の最大値に基づいて行う、請求項6に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  8. 前記工程(c)において、分裂期にある細胞の識別を、微小管を標識した蛍光物質から発される蛍光の、細胞当たりの蛍光強度の最大値と、細胞当たりの総輝度値を細胞当たりの平均輝度値で除した値に基づいて行う、請求項6に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法。
  9. 動物から採取された生体組織の細胞増殖能を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法により評価し、得られた細胞増殖能の評価結果に基づき、前記生体組織の腫瘍の存在の有無又はその悪性度を判定する、腫瘍の判定方法。
  10. 薬効化合物の薬効を評価する方法であって、
    薬効化合物で処理した細胞集塊の細胞増殖能を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞集塊の細胞増殖能評価方法により評価し、得られた細胞増殖能の評価結果と前記細胞集塊の大きさとを指標にして、前記薬効化合物の薬効を評価する、薬効評価方法。
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