JP2019199951A - 低温液体貯蔵用タンク - Google Patents

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Abstract

【課題】液化水素のような低温液体を貯蔵することが可能な低温液体貯蔵用タンクにおいて、コンクリート部にひび割れが生じにくく、かつ、強度も確保することが可能な低温液体貯蔵用タンクを提供する。【解決手段】低温液体Lを貯蔵する内槽2と、内槽を囲繞して内包するように配設される外槽3と、内槽と外槽の間に設けられる真空断熱層4とを備え、且つ、外槽が、コンクリート部6と、コンクリート部の表面に設けられた不透気材であるライナー部7と、を備えるとともに、ライナー部をコンクリート部の真空断熱層と反対側の外面側に配設して構成され、コンクリート部に用いられるコンクリートは、プレキャストコンクリート部材で構成され、プレキャストコンクリート部材は、製造時においてコンクリート打ち込み後少なくとも28日間湿潤養生を行い、その後、加熱乾燥または真空曝露されたものが用いられている。【選択図】図1

Description

本発明は、液化水素などの低温液体の貯蔵に用いられる低温液体貯蔵用タンクに関する。
従来、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)等の低温液体を貯蔵するためのタンクとして、内槽と外槽を有する二重殻構造のタンクが用いられている。
また、この種のタンクは、例えば、コンクリート製の基礎版と、基礎版上に設置される金属製の内槽(貯槽)及び外槽と、内槽と外層の間に充填されて保冷機能、断熱機能を発揮するウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、パーライトなどの保冷材(断熱材)とを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−194256号公報
ここで、水素は、従来の化石燃料と異なり、様々な原料から大量に製造可能であるとともに、燃焼時に水しか発生せず温室効果ガスを全く排出しない究極のクリーン性能を実現できるため、水素をエネルギー源として発電等に利用することが注目されている。
水素発電等を実用化する上で、今後、LNGやLPGの貯蔵タンクのような万kLオーダーの大型の液化水素用の貯蔵タンクが必要になるが、−253℃の超低温の液化水素を従来の貯蔵タンクにそのまま貯蔵することは難しい。このため、超低温の液化水素を万kLオーダーで大量に貯蔵できるタンクが強く求められている。
超低温の液化水素を大量に貯蔵できるタンクとして、液化水素を貯蔵する内槽と、内槽を囲繞して内包するように配設される外槽と、内槽と外槽の間に設けられる真空断熱層とを備え、且つ、外槽が、コンクリート部と、該コンクリート部の表面に一体に不透気材を設けてなるライナー部(鋼板など)とを備えるとともに、該ライナー部をコンクリート部の外面側に配設した構造のタンクが知られている。
しかしながら、ライナー部を外槽の外面側に配設することにより、コンクリート部が真空層内に設置されることになる。その結果、コンクリート部は、コンクリートに含まれる水分が蒸発することによる収縮を引き起こし、コンクリート部(躯体)の外面の外部拘束による応力やひび割れが問題となる。また、真空曝露後は水和反応が進行しなくなることにより、本来起こるべきコンクリートの強度上昇が見られない虞があった。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、液化水素のような低温液体を貯蔵することが可能な低温液体貯蔵用タンクにおいて、コンクリート部にひび割れが生じにくく、かつ、強度も確保することが可能な低温液体貯蔵用タンクを提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の低温液体貯蔵用タンクは、低温液体を貯蔵する内槽と、内槽を囲繞して内包するように配設される外槽と、前記内槽と前記外槽の間に設けられる真空断熱層とを備え、且つ、前記外槽が、コンクリート部と、該コンクリート部の表面に設けられた不透気材であるライナー部と、を備えるとともに、前記ライナー部を前記コンクリート部の前記真空断熱層と反対側の外面側に配設して構成され、前記コンクリート部に用いられるコンクリートは、プレキャストコンクリート部材で構成され、前記プレキャストコンクリート部材は、製造時においてコンクリート打ち込み後少なくとも28日間湿潤養生を行い、その後、加熱乾燥または真空曝露されたものが用いられていることを特徴としている。
本発明の低温液体貯蔵用タンクによれば、真空断熱層を真空状態にすると、多孔体であるコンクリート部(コンクリート体)の間隙中の空気も抜け、コンクリート部の外側に設けられたライナー部(不透気材)にコンクリート部に吸着する力が働く。
よって、本発明の低温液体貯蔵用タンクにおいては、ライナー部の不透気材が真空断熱層を真空にするとともにコンクリート部の外面に密着することにより、コンクリート部の内側にライナー部を設けた場合と比較し、ライナー部の不透気材をコンクリート部に接合するためのアンカーなどの本数を大幅に削減することができるとともに、気密性を好適に確保することが可能になる。
また、真空断熱層を真空にするとともに、ライナー部(不透気材)がコンクリート部の外面に自然に密着するため、不透気材をコンクリート部の内面に接合する場合のように真空の負圧によってアンカーの間の部分が湾曲変形したり、座屈変形することがない。また、不透気材に剥がれが生じることもない。これにより、厚さが薄い鋼板を不透気材として採用しても信頼性の高いライナー部を形成することが可能になる。
さらに、本発明の低温液体貯蔵用タンクにおいては、コンクリート部がプレキャストコンクリート部材で構成され、該プレキャストコンクリート部材は、製造時にコンクリート打ち込み後少なくとも28日間湿潤養生を行い、その後、加熱乾燥または真空曝露されているため、真空状態にさらされたものと同じ収縮状態になるとともに、水中養生を続けたコンクリートと同等以上の強度を確保することができる。
また、本発明の低温液体貯蔵用タンクにおいては、前記不透気材が鋼板で構成されていることが好ましい。
また、コンクリート部の外面に鋼板製のライナー部を接合するため、コンクリート部の内面に鋼板などの不透気材を接合する場合と比較し、この不透気材の取り付け作業を容易にすることができ、施工性を大幅に向上させることも可能になる。
したがって、液化水素のような低温液体を貯蔵することが可能な低温液体貯蔵用タンクにおいて、コンクリート部にひび割れが生じにくく、かつ、強度も確保することが可能な低温液体貯蔵用タンクを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る低温液体貯蔵用タンクを示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る低温液体貯蔵用タンクを示す断面図であり、図1のA部を拡大した図である。 本発明の一実施形態に係る低温液体貯蔵用タンクのコンクリート部に用いられるプレキャストコンクリート部材の乾燥方法による影響を実験したグラフである。 本発明の一実施形態に係る低温液体貯蔵用タンクのコンクリート部に用いられるプレキャストコンクリート部材の真空曝露方法による影響を実験したグラフである。
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る低温液体貯蔵用タンクについて説明する。ここで、本実施形態は、例えば液化水素などの超低温液体の貯蔵に用いて好適なタンクに関するものである。
本実施形態の低温液体貯蔵用タンク1は、図1及び図2に示すように、低温液体Lを貯蔵する金属製(鋼板)の内槽2と、内槽2を囲繞するように設けられる外槽3と、内槽2と外槽3の間に設けられ、断熱性能を確保するための真空断熱層4と、を備えて構成されている。
真空断熱層4は、空気を吸引するなどして真空状態で保持されるとともに、例えば粉末/固体状の輻射シールド材5を充填して構成されている。なお、輻射シールド材5は、例えば低温液体Lが接触することによって内槽2の鋼板が原子/分子レベルで振動し、この振動に伴う伝熱作用(電磁波)を吸収/遮断して断熱性が低下することを防止するためのものである。
次に、本実施形態の外槽3は、例えば鉄筋コンクリート造の底版部、側壁部、屋根部を備えたコンクリート部(コンクリート体)6と、コンクリート部6の表面に、この表面全体を被覆するように一体に取り付けられた鋼板(不透気材)からなるライナー部7とを備えて構成されている。本実施形態では、コンクリート部6は、プレキャストコンクリート部材で構成されている。
ここで、内槽2とコンクリート部6(外槽3)との間に真空断熱層4を設ける場合には、外槽3のコンクリート部6が多孔体であるため、通常、このコンクリート部6の内面6a(真空断熱層4側の表面)に不透気材(気密部材)としての鋼板をアンカーなどの固定手段で固定してライナー部を設ける。
しかしながら、この場合には、真空断熱層4の負圧によってライナー部の鋼板に大きな吸引力が発生し、隣り合うアンカー間の鋼板部分が湾曲変形したり、座屈変形するおそれが生じる。また、鋼板の剥がれが生じるおそれもある。
これに対し、本実施形態の低温液体貯蔵用タンク1においては、図2(図1参照)に示すように、外槽3のコンクリート部6の外面6bに鋼板(不透気材)をアンカーなどの固定手段で固定してライナー部7を設けるようにする。なお、ライナー部7は、例えば複数の鋼板を溶接等によって接合し、内側の気密性を確保できるように形成する。
ここで、本実施形態に用いられたコンクリート部6はプレキャストコンクリート部材で構成されている。このプレキャストコンクリート部材を製造する際に、ひび割れの抑制および強度の確保をするためにコンクリートの養生方法について試行錯誤した結果、少なくとも28日間湿潤養生を行い、その後、加熱乾燥または真空曝露することで所望の性能を有したプレキャストコンクリート部材が得られることが解明された。
具体的に、図3、図4を用いて説明する。
図3は、乾燥方法の影響(モルタルの質量変化率)について実験した結果を示す。コンクリートの材料としては、セメント:普通ポルトランドセメント、水:水道水、骨材:豊浦標準砂を用いた。配合については、S(骨材)/C(セメント)=2、W(水)/C(セメント)=65%とした。供試体として、4cm×4cm×16cmの角柱供試体を用いた。また、曝露装置では、加熱乾燥温度:110℃、試験直前加熱乾燥:試験前24時間で110℃、真空度:1torr(0.133kPa)とした。
図3に示すように、5種類の養生方法によってそれぞれのモルタル質量変化率を測定した。線分W(実線)は、材令1日まで、3日まで、7日まで、28日まで、182日までそれぞれ水中養生し、その後質量変化率を試験した結果を表したものである。線分A(二点鎖線)は、材令28日まで水中養生して取り出し、その後材令182日まで気中乾燥した後に質量変化率を試験した結果を表したものである。線分D(一点鎖線)は、材令28日まで水中養生して取り出し、その後材令182日まで加熱乾燥した後に質量変化率を試験した結果を表したものである。線分S(点線)は、材令28日まで水中養生して取り出し、その後材令182日まで真空曝露した後に質量変化率を試験した結果を表したものである。線分B(破線)は、材令1日まで、3日まで、7日まで、28日まで、182日までそれぞれ水中養生したものを取り出し、試験直前加熱乾燥をした後に質量変化率を試験した結果を表したものである。なお、各試験体は、それぞれの試験後に廃棄し、水中には戻さない。
図3の結果から、線分B(破線)、線分D(一点鎖線)、および線分S(点線)の材令182日におけるモルタルの質量変化率(%)がほぼ同じであることが分かる。
つまり、プレキャストコンクリート部材を、28日間以上湿潤養生を行い、その後、加熱乾燥または真空状態で乾燥すれば、真空状態にさらされたものと同じ収縮状態になることが分かる。換言すれば、タンク完成後真空状態になった際も、更なる収縮が起こらないことが分かる。
また、図4は、コンクリートの真空曝露の影響(コンクリート圧縮強度)について実験した結果を示す。コンクリートの材料としては、セメント:普通ポルトランドセメント、水:水道水、細骨材:大井川産川砂(表乾比重2.60)、粗骨材:青梅産硬質砂岩砕石(Gmax20mm、表乾比重2.65)を用いた。配合については、s/a(細骨材率)=50%、W(水)/C(セメント)=55%とした。供試体として、φ10mm×20cmの円柱供試体を用いた。また、曝露装置では、真空度:1torr(0.133kPa)とした。
図4に示すように、28日間水中養生を行った後、真空状態にさらした場合(▽)のコンクリート圧縮強度が、水中養生を材令182日まで継続した場合(〇)のものよりも同等以上の強度を確保できていることが分かる。なお、材令1,3,7日まで水中養生を行い、その後真空曝露した場合は、材令28日までは強度が上昇しているが、その後強度の低下がみられることが分かる。
一般的にコンクリートの強度は材令28日で管理され、その時点で設計基準強度を満たしていることが規定されているため、材令28日以降に強度が低下することは好ましくない。通常の気中コンクリートでは材令28日以降もコンクリート内に在留している水分により水和反応が進み強度が上昇することはあっても減少するような問題は起こらないが、真空にさらされることにより望ましくない状態になる虞があることが分かる。
本実施形態の知見により得られたプレキャストコンクリート部材を用いることにより、真空状態にさらされる箇所に用いる場合であっても、ひび割れを抑制できるとともに所望の強度を確保することができる。
このように構成した本実施形態の低温液体貯蔵用タンク1においては、真空断熱層4を真空状態にすると、多孔体であるコンクリート部6の間隙中の空気も抜け、コンクリート部6の外側に設けられたライナー部7にコンクリート部6に吸着する力が作用する。また、コンクリート部6にひび割れが生じた場合であっても、ひび割れを通じてコンクリート部6の空気が抜け、ライナー部7にコンクリート部6に吸着する力が作用する。
これにより、真空断熱層4を真空にするとともに、ライナー部7の鋼板(不透気材)がコンクリート部6の外面6bに自然に密着することになる。
よって、本実施形態の低温液体貯蔵用タンク1においては、ライナー部7の鋼板が真空断熱層4を真空にするとともにコンクリート部6の外面6bに密着するため、コンクリート部6の内側にライナー部を設けた場合と比較し、ライナー部7の鋼板をコンクリート部6に接合するためのアンカーなどの本数を大幅に削減することができる。
また、外面6bに鋼板を接合することで、コンクリート部6の内面6aに鋼板を接合する場合と比較し、鋼板の取り付け作業を容易にすることができ、施工性を大幅に向上させることも可能になる。
また、真空断熱層4を真空にするとともに、ライナー部7の鋼板がコンクリート部6の外面6bに自然に密着するため、鋼板をコンクリート部6の内面6aに接合する場合のように真空の負圧によって隣り合うアンカーの間の部分が湾曲変形したり、座屈変形することがない。また、鋼板に剥がれが生じることもない。これにより、厚さが薄い鋼板を採用しても信頼性の高いライナー部7を形成することが可能になる。
さらに、本実施形態の低温液体貯蔵用タンク1においては、コンクリート部6をプレキャストコンクリート部材で構成し、該プレキャストコンクリート部材は、製造時にコンクリート打ち込み後少なくとも28日間湿潤養生を行い、その後、加熱乾燥または真空曝露したものを採用した。このようにして生成されたプレキャストコンクリート部材は、真空状態にさらされたものと同じ収縮状態になるとともに、水中養生を続けたコンクリートと同等以上の強度を確保することができる。
したがって、本実施形態の低温液体貯蔵用タンク1によれば、コンクリート部6にひび割れが生じにくく、かつ、強度も確保することが可能になる。
以上、本発明に係る低温液体貯蔵用タンクの一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、本発明に係る低温液体貯蔵用タンクが液化水素を貯蔵するものとして説明を行ったが、勿論、LNG、LPG等の他の低温液体の貯蔵に本発明に係る低温液体貯蔵用タンクを適用しても構わない。
また、真空断熱層4に粉末状又は固体状の輻射シールド材5を充填して輻射による伝熱を防止(抑止)するものとしたが、板状の輻射シールド材を真空断熱層4の中間部分に設置するようにしてもよい。
この場合には、内槽2に貯蔵した低温液体Lによって内槽2が冷却されることで原子/分子レベルの振動が発生し、この振動(電磁波)によって輻射が生じた場合であっても、真空断熱層4の中間部に配設された板状の輻射シールド材によって輻射を遮断することができる。これにより、確実に真空断熱層4によって伝熱作用を遮断することができ、信頼性の高い低温液体貯蔵用タンク1を実現することが可能になる。
また、板状の輻射シールド材を配設した状態の真空断熱層4の大部分が空間のままで保持され、この空間部分が真空状態になる。このため、従来の粉末状/固体状の輻射シールド材5を充填した場合と比較し、容易に真空断熱層4の真空度を高めることができ、且つ容易に真空度を維持することが可能になる。
さらに、板状の輻射シールド材を採用すると、真空断熱層4内に粉末状/固体状の輻射シールド材5を充填する場合と比較し、容易にメンテナンスを行うことが可能になる。
そして、本実施形態では、ライナー部7の不透気材が鋼板であるものとして説明を行ったが、不透気材は気密性を確保することが可能であれば特にその材質を限定する必要はなく、例えば樹脂などを材質としたもの(FRP板(樹脂繊維複合板)など)であってもよい。
1 低温液体貯蔵用タンク
2 内槽
3 外槽
4 真空断熱層
5 粉末状/固体状の輻射シールド材
6 コンクリート部
6a 内面
6b 外面
7 ライナー部
L 低温液体

Claims (2)

  1. 低温液体を貯蔵する内槽と、
    内槽を囲繞して内包するように配設される外槽と、
    前記内槽と前記外槽の間に設けられる真空断熱層とを備え、
    且つ、前記外槽が、コンクリート部と、該コンクリート部の表面に設けられた不透気材であるライナー部と、を備えるとともに、前記ライナー部を前記コンクリート部の前記真空断熱層と反対側の外面側に配設して構成され、
    前記コンクリート部に用いられるコンクリートは、プレキャストコンクリート部材で構成され、
    前記プレキャストコンクリート部材は、製造時においてコンクリート打ち込み後少なくとも28日間湿潤養生を行い、その後、加熱乾燥または真空曝露されたものが用いられていることを特徴とする低温液体貯蔵用タンク。
  2. 前記不透気材が鋼板で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の低温液体貯蔵用タンク。
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