いくつかの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
まず、第1実施形態に係る電力変換システムについて図1乃至図19を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る電力変換システムの全体構成図である。
電力変換システム1000は、交流電力を供給する交流電源1と、交流電源1から供給される交流電力を所望の交流電力を変換して出力する電力変換装置100と、電力変換装置100から出力された交流電力により動作する電動機4とを含む。電力変換装置100と、電動機4とは、例えば、交流ケーブルを介して接続されている。
電力変換装置100は、交流電力を変圧する変圧器12と、変圧器12を介して交流電源1と連系して交流電源1からの交流電力を直流電力に変換するコンバータユニット(コンバータともいう)2と、コンバータユニット2が出力する直流電力を所望の交流電力に変換して電動機4に出力するインバータユニット(インバータともいう)3と、コンバータユニット2を制御するコンバータ制御装置5と、インバータユニット3を制御するインバータ制御装置6と、を備える。
コンバータユニット2は、中性点クランプ型の3レベルコンバータであり、交流電圧を、正の電位(第1電位)レベルと、中性点(ゼロ)電位(第2電位)レベルと、負の電位(第3電位)レベルとの直流電圧に変換する。インバータユニット3は、いわゆる3レベルインバータであり、正の電位(第1電位)レベルと、中性点(ゼロ)電位(第2電位)レベルと、負の電位(第3電位)レベルとの直流電圧を、電動機4用の交流電圧に変換する。コンバータユニット2と、インバータユニット3との正の電位レベルは、P配線40で接続され、中性点電位レベルは、C配線41で接続され、負の電位レベルは、N配線42で接続されている。
コンバータユニット2は、コンバータ電力変換部21と、直流電圧の変動を抑制するためのコンバータ2のP側の平滑コンデンサ22(第1平滑コンデンサ:コンバータ側第1平滑コンデンサ)と、コンバータ2のN側の平滑コンデンサ23(第2平滑コンデンサ、コンバータ側第2平滑コンデンサ)と、平滑コンデンサ22の端子間電圧を測定するための直流電圧検出器25(第1直流電圧検出器、コンバータ側第1直流電圧検出器)と、平滑コンデンサ23の端子間電圧を測定するための直流電圧検出器26(第2直流電圧検出器、コンバータ側第2直流電圧検出器)と、直流共振を抑制するためのコンバータ中性点抵抗24と、を備える。コンバータ中性点抵抗24は、C配線41に接続される。なお、図1においては、コンバータユニット2の1相用の構成のみ(コンバータ中性点抵抗24、直流電圧検出器25、直流電圧検出器26を除く)を示しているが、他の相用にも同様の構成を備えている。
インバータユニット3は、インバータ電力変換部31と、インバータ3のP側の平滑コンデンサ32(第1平滑コンデンサ、インバータ側第1平滑コンデンサ)と、インバータ3のN側の平滑コンデンサ33(第2平滑コンデンサ、インバータ側第2平滑コンデンサ)と、平滑コンデンサ32の端子間電圧を測定するための直流電圧検出器35(第1直流電圧検出器、インバータ側第1直流電圧検出器)と、インバータ3のN側の平滑コンデンサ33の端子間電圧を測定するための直流電圧検出器36(第2直流電圧検出器、インバータ側第2直流電圧検出器)と、直流共振を抑制するためのインバータ中性点抵抗34を備える。インバータ中性点抵抗34は、C配線41に接続される。なお、図1においては、インバータユニット3の1相用の構成のみ(インバータ中性点抵抗34、直流電圧検出器35、直流電圧検出器36を除く)を示しているが、他の相用にも同様の構成を備えている。
コンバータ制御装置5は、変換される直流電力が所望の値となるようにコンバータ電力変換部21を制御する。インバータ制御装置6は、電動機4の出力トルクや速度が所望の特性を満たすようにインバータ電力変換部31を制御する。
電力変換装置100は、コンバータユニット2と交流電源1との間に流れる電流を検出して出力する交流電流検出器の一例としての電流検出器7と、交流電源1の出力電圧を検出して出力する交流電圧検出器の一例としての電圧検出器11と、電動機4と直結され、電動機4の速度を検出して出力する速度検出器8と、インバータユニット3の出力電流を検出して出力する電流検出器9と、インバータユニット3の出力電圧を検出して出力する電圧検出器10と、異常判断部の一例としての異常判断器72と、表示器73とをさらに備える。
電流検出器7、及び直流電圧検出器(25、26)により検出された検出値の信号(出力信号)は、コンバータ制御装置5に入力される。コンバータ制御装置5は、入力された検出値に基づいて、各種演算処理を行い、コンバータ電力変換部21を制御する信号を出力する。
速度検出器8、電流検出器9、及び直流電圧検出器(35、36)により検出された検出値の信号(出力信号)は、インバータ制御装置6に入力される。インバータ制御装置6は、入力された検出値に基づいて、各種演算処理を行い、インバータ電力変換部31を制御する信号をインバータ電力変換部31へ出力する。
電流検出器7、速度検出器8、電流検出器9、電圧検出器11、直流電圧検出器(25、26)、直流電圧検出器(35、36)により検出された検出値の信号(出力信号)は、異常判断器72に入力される。
コンバータ制御装置5は、直流電圧指令発生器51と、直流電圧制御器52と、電流制御器53と、パルス生成器54と、コンバータ中性点制御装置の一例としての中性点電圧制御器55とを備える。
直流電圧指令発生器51は、コンバータユニット2から出力させる直流電圧の電圧値を示す直流電圧指令値を直流電圧制御器52に出力する。具体的には、直流電圧指令発生器51は、固定値であるコンバータ2の出力するP−N間電圧の指令値を出力する。
直流電圧制御器52は、直流電圧指令発生器51から入力される直流電圧指令値と、直流電圧検出器(25、26)から入力される直流電圧の検出値とに基づいて、コンバータ出力有効電流指令値を演算して、電流制御器53に出力する。具体的には、直流電圧制御器52は、直流電圧検出器(25、26)のそれぞれから入力される直流電圧の検出値の合計値が直流電圧指令値と一致するようにコンバータ出力有効電流指令値を演算する。
中性点電圧制御器55は、直流電圧検出器(25、26)のそれぞれから入力される直流電圧の検出値の差に基づいて、中性点電圧がゼロとなるような交流出力電圧補正値AVzROUT_Cを算出して電流制御器53に出力する。
電流制御器53は、電流検出器7から入力される検出値(コンバータ出力電流検出値)が、直流電圧制御器52から入力されるコンバータ出力有効電流指令値と一致するようにコンバータ交流電圧指令値を演算してパルス発生器54に出力する。この際、電流制御器53は、中性点電圧制御器55から入力される交流出力電圧補正値AVzROUT_Cを所定の電流制御演算の出力である交流出力電圧指令値に加算し、コンバータ交流電圧指令値を算出する。
パルス生成器54は、コンバータ電力変換部21による交流出力電圧が、電流制御器53から入力されるコンバータ交流電圧指令値に一致するように、搬送波である三角波とコンバータ交流電圧指令値とをパルス幅変調することでコンバータ電力変換部21の各スイッチング素子をオン・オフ制御するためのパルス信号を算出し、このパルス信号をコンバータ電力変換部21に出力する。
インバータ制御装置6は、速度指令発生器61と、速度制御器62と、電流制御器63と、パルス生成器64と、インバータ中性点制御装置の一例としての中性点電圧制御器65を備える。
速度指令発生器61は、電動機4を動作させる速度を示す速度指令値を速度制御器62に出力する。本実施形態では、速度指令値はあらかじめ設定された所定の値である。
速度制御器62は、速度検出器8から入力される検出値(速度検出値)が、速度指令発生器61から入力される速度指令値と一致するようにインバータ出力電流指令値を演算し、インバータ出力電流指令値を電流制御器63に出力する。
中性点電圧制御器65は、直流電圧検出器(35、36)のそれぞれから入力される直流電圧の検出値の差に基づいて、中性点電圧がゼロとなるような交流出力電圧補正値AVzROUT_Iを演算して電流制御器63に出力する。
電流制御器63は、電流検出器9から入力されるインバータ出力電流検出値が、速度制御器62から入力されるインバータ出力電流指令値と一致するようにインバータ交流電圧指令値を演算してパルス生成器64に出力する。この際、電流制御器63は、中性点電圧制御器65から入力される交流出力電圧補正値AVzROUT_Iを所定の電流制御演算の出力である交流出力電圧指令値に加算し、インバータ交流電圧指令値を算出する。
パルス生成器64は、インバータ電力変換部31による出力電圧が、電流制御器63から入力されるインバータ交流出力電圧指令値に一致するように、搬送波である三角波とインバータ交流電圧指令値をパルス幅変調することでインバータ電力変換部31の各スイッチング素子をオン・オフ制御するためのパルス信号を算出し、このパルス信号をインバータ電力変換部31に出力する。
異常判断器72は、各種検出器により検出された検出値と、変圧器12のインピーダンス値と、コンバータ制御装置5の演算器(52、53、54、55)からの入力値と、インバータ制御装置6の演算器(62、63、64、65)からの入力値とに基づいて、直流電圧検出器(25、26、35、36)の各々に異常があるか否かを判断し、判断結果を表示器73に送信する。ここで、各種検出器は、例えば、直流電圧検出器25、26、35、36、電流検出器7、速度検出器8、電流検出器9、電圧検出器10、電圧検出器11である。
異常判断器72は、直流電圧検出器の異常を検出した場合には、異常な直流電圧検出器を特定できる情報(例えば、デバイス番号)と、点検、交換等を推奨するメッセージとを表示器73に表示させる。なお、異常判断器72は、図示しないプロセッサが、メモリに格納されたプログラムを実行することにより構成されてもよい。表示器73は、例えば、液晶ディスプレイ等の情報を表示可能な表示装置である。
次に、異常判断器72を詳細に説明する。
図2は、第1実施形態に係る異常判断器の構成図である。
異常判断器72は、信号記憶部72aと、設定記憶部72bと、第1種指標算出部及び第2種指標算出部の一例としての指標作成部72cと、比較部72dと、異常判定部72eと、設定変更部72fとを備える。
信号記憶部72aは、各種検出器(25、26、35、36、7、8、9、10、11)から入力される検出値の信号と、コンバータ制御装置5の演算器(52、53、54、55)からの入力値と、インバータ制御装置6の演算器(62、63、64、65)からの入力値とを時系列データとして記憶する。
設定記憶部72bは、電圧検出器25、26、35、36の異常を判断するためのフィルタ定数及び基準値、異常判定表(図18参照)、及び変圧器12のインピーダンス値を記憶する。
設定変更部72fは、図示しないユーザインターフェースを備え、フィルタ定数、基準値を算出するアルゴリズムの変更をユーザから受け付け、受け付けたアルゴリズムに従ってフィルタ定数、基準値を算出して設定記憶部72bに格納する。
指標作成部72cは、電圧検出器25、26、35、36の異常を検出するために使用する複数の指標を作成する。具体的には、指標作成部72cは、信号記憶部72aから指標の算出に使用する信号を読み込み、この読み込んだ値に対して、設定記憶部72bから読み込んだ変圧器12のインピーダンス値を用いた演算や、読み込んだフィルタ定数を持つフィルタ演算等を行うことにより、複数の指標を算出する。
比較部72dは、指標作成部72cによって算出された指標と、設定記憶部72bに格納された基準値とを比較し、比較結果を出力する。
異常判定部72eは、設定記憶部72bの異常判定表を読み込み、この異常判定表を用いて、比較部72dから入力された指標の比較結果に基づいて、直流電圧検出器の異常判定を行う。異常判定部72eは、直流電圧検出器に異常があると判定した場合には、その結果を表示器73に出力させる。
次に、指標作成部72cについて説明する。
図3は、第1実施形態に係る指標作成部の構成図である。
指標作成部72cは、設定記憶部72bに記憶されたフィルタ定数を入力し、フィルタ定数を用いたローパスフィルタ演算を含む演算を実施することで、信号記憶部72aから読み込む各種信号から各指標を作成する。指標作成部72cは、指標201を作成する第1指標作成部721と、指標202を作成する第2指標作成部722と、指標203を作成する第3指標作成部723と、指標204を作成する第4指標作成部724と、指標205を作成する第5指標作成部725と、指標206を作成する第6指標作成部726と、指標207を作成する第7指標作成部727とを含む。各指標(201、202、203、204、205、206、207)と各指標作成部(721、722、723、724、725、726、727)との詳細については後述する。
各指標の説明を行う前に、直流電圧検出器(25、26、35、36)の各々の検出値を説明するとともに、各々の検出値の相互関係について説明する。
直流電圧検出器(25、26、35、36)による各々の検出値と、真値との関係は、以下の式(1)〜式(4)で表せる。
EFB_CP=GCP×ET_CP ・・・(1)
EFB_CN=GCN×ET_CN ・・・(2)
EFB_IP=GIP×ET_IP ・・・(3)
EFB_IN=GIN×ET_IN ・・・(4)
ここで、式におけるEFB_**は、添え字**に対応する位置の直流電圧検出器による検出値を示し、G**は、添え字**に対応する直流電圧検出器におけるゲインを示し、ET_**は、添え字**に対応する直流電圧検出値における真値を示す。添え字**におけるCは、コンバータ側を示し、Iは、インバータ側を示し、Pは、P側を示し、Nは、N側を示す。したがって、CPは、コンバータ側・P側の直流電圧検出器、すなわち、直流電圧検出器25を示し、CNは、コンバータ側・N側の直流電圧検出器、すなわち、直流電圧検出器26を示し、IPは、インバータ側・P側の直流電圧検出器、すなわち、直流電圧検出器35を示し、INは、インバータ側・N側の直流電圧検出器、すなわち、直流電圧検出器36を示している。
直流電圧検出器(25、26、35、36)のすべてが正常な場合には、各直流電圧検出器の検出値EFBと、真値ETとは等しいので、ゲインGの値は1となる。一方、直流電圧検出器(25、26、35、36)が異常な場合(例えば、ゲイン異常が発生した場合)には、検出値EFBと真値ETとが一致せず、ゲインGの値は1以外(例えば、0.9や1.1)となる。
各直流電圧検出器(25、26,35,36)の検出値(EFB_CP、EFB_CN、EFB_IP、EFB_IN)の相互関係は、以下に示すようになる。
コンバータ2の中性点電圧制御器55によって、中性点電位がゼロとなるようにコンバータ電力変換部21が制御されるため、定常的には、以下の式(5)の関係が成り立つ。また、インバータ3の中性点電圧制御器65によって、中性点電位がゼロとなるようにインバータ電力変換部31が制御されるため、定常的には、以下の式(6)の関係が成り立つ。
EFB_CP=EFB_CN ・・・(5)
EFB_IP=EFB_IN ・・・(6)
ここで、コンバータ2の直流電圧制御器52によって、検出値EFB_CPと検出値EFB_CNとの合計値は、直流電圧指令発生器51が出力する直流電圧指令値VDC_REFと一致するように、コンバータ電力変換部21が制御されるため、以下の式(7)に示す関係が成り立つ。
EFB_CP+EFB_CN=VDC_REF ・・・(7)
また、式(5)と、式(7)とによって、式(8)、式(9)が成り立つ。
EFB_CP=VDC_REF/2 ・・・(8)
EFB_CN=VDC_REF/2 ・・・(9)
また、図1に示すように、P配線40によって平滑コンデンサ22と平滑コンデンサ32とが接続され、また、N配線42によって平滑コンデンサ23と平滑コンデンサ33とが接続されているため、以下の式(10)が成り立つ。
ET_CP+ET_CN=ET_IP+ET_IN ・・・(10)
次に、第1指標作成部721について説明する。
図4は、第1実施形態に係る第1指標作成部の構成図である。
第1指標作成部721は、指標201(=DI1)を算出する。指標201は、直流電圧検出器の異常時に、コンバータ2側のP−N間直流電圧検出値と、インバータ3側のP−N間直流電圧検出値とに差が生じることを利用して、直流電圧検出器の異常を検出するための指標であり、コンバータ2側のP−N間直流電圧検出値と、インバータ3側のP−N間直流電圧検出値との際に関する指標(インバータ・コンバータ間電圧検出値差指標、第1種指標)である。
第1指標作成部721は、指標演算部7211と、フィルタ7212と、を含む。
指標演算部7211は、式(11)で示す演算を実行する。
DI1=(EFB_IP+EFB_IN)−(EFB_CP+EFB_CN) ・・・(11)
ここで、直流電圧検出器25が故障した(異常である)場合における指標201(DI1_25)について説明する。なお、異常である直流電圧検出器25のゲインGCPを1以外の値(例えば、0.9や1.1)とし、直流電圧検出器(26、35、36)のゲイン(GCN、GIP、GIN)は1とする。
式(11)に式(1)〜式(4)を代入し、さらに式(10)の関係を用いると、以下の式(12)が得られる。
DI1_25=(EFB_IP+EFB_IN)−(EFB_CP+EFB_CN)
=(GIP×ET_IP+GIN×ET_IN)−(GCP×ET_CP+GCN×ET_CN)
=(ET_IP+ET_IN)−(ET_CP+ET_CN)+(1−GCP)×ET_CP
=(1−GCP)×ET_CP
=(1−GCP)×EFB_CP/GCP ・・・(12)
式(12)によると、EFB_CP、GCPを正とすると、ゲインGCPが1より小さい(例えば、0.9)方向に変化したときは、指標201(DI1_25)は正となり、GCPが1より大きい(例えば、1.1)方向に変化したときは、指標201(DI1_25が)は負となる。
また、直流電圧検出器(26、35、36)のいずれかが故障した場合における指標201も、式(12)と同様に求めることができる。
いずれか一つの直流電圧検出器が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向(1より大きいか、1より小さいか)と、指標201の変化の方向との関係は、図14(a)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器25において、ゲインGCPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標201は、正となり(増加し)、ゲインGCPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標201は、負となる(減少する)。また、直流電圧検出器26において、ゲインGCNが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標201は、正となり(増加し)、ゲインGCNが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標201は、負となる(減少する)。また、直流電圧検出器35において、ゲインGIPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標201は、負となり(減少し)、ゲインGIPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標201は、正となる(増加する)。また、直流電圧検出器36において、ゲインGINが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標201は、負となり(減少し)、ゲインGINが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標201は、正となる(増加する)。
指標201は、直流電圧検出器25と、直流電圧検出器26とのいずれに異常が発生しても、ゲイン異常の方向が同じであれば、同じ方向の変化として現れる。また、この指標201は、直流電圧検出器35と、直流電圧検出器36とのいずれに異常が発生しても、ゲイン異常の方向が同じであれば、同じ方向の変化として現れる。なお、指標201は、直流電圧検出器25及び直流電圧検出器26と、直流電圧検出器35及び直流電圧検出器36との間では、ゲイン異常の方向が同じであれば、逆の方向の変化として現れる。
指標演算部7211に入力される直流電圧検出値には、スイッチングリプルやノイズが含まれ、これら変動成分による影響が、指標演算部7211から出力される値に及ぼされる。そこで、フィルタ7212は、指標演算部7212から出力された値に対して、変動成分による影響を低減するためのフィルタ処理を行う。フィルタ7212は、設定記憶部72bから入力されるフィルタ定数を時定数とする一次遅れフィルタであってもよい。なお、フィルタ7212は、一次遅れフィルタに限られず、例えば平均化フィルタ、ローパスフィルタであってもよい。また、回路の共振周波数を直流電圧検出器25、26、35、36の検出値の脈動などから推定し、共振周波数に応じてフィルタ定数を設定変更部72fにより変更するようにしてもよい。
次に、第2指標作成部722について説明する。
図5は、第1実施形態に係る第2指標作成部の構成図である。
第2指標作成部722は、指標202(=DI2)を算出する。指標202は、直流電圧検出器の異常時に、中性点電圧制御器55の交流出力電圧補正値AVzROUT_Cが変化することを利用して、直流電圧検出器(25,26)の異常を検出するための指標であり、直流電圧器の検出値の差ΔEFB_C(=EFB_CN―EFB_CP)をゼロにするための交流出力電圧補正値AVzROUT_Cを指標(コンバータ中性点電圧制御信号指標、第2種指標、コンバータ側指標)としている。直流電圧検出器の検出値の差ΔEFB_C(=EFB_CN―EFB_CP)をゼロにする様に、交流出力電圧補正値AVzROUT_Cを演算する方法は、例えば、特開2008−011606号公報に開示された技術を使用することができる。
第2指標作成部722は、フィルタ7221を備える。フィルタ7221は、中性点電圧制御器55から入力される交流出力電圧補正値AVzROUT_Cの変動成分を除去するためのフィルタ処理を実行する。フィルタ7221の機能は、図4に示すフィルタ7212と同じである。
指標202について説明する。
直流電圧検出器(25,26)が正常な場合は、検出値と真値とが略一致(EFB_CP=ET_CP、EFB_CN=ET_CN)となるので、中性点電圧((ET_CN―ET_CP)/2)は略ゼロとなる。一方、直流電圧検出器が異常である場合は、検出値と真値とが不一致(EFB_CP≠ET_CP、EFB_CN≠ET_CN)のため、中性点電圧VT_CZ((ET_CN―ET_CP)/2)は定常状態において正負のどちらかに偏る。
式(1)、式(2)、及び式(5)により、直流電圧検出器25のみが故障した場合の中性点電圧VT_CZは、以下の式(13)に示すようになり、直流電圧検出器26のみが故障した場合の中性点電圧VT_CZは、以下の式(14)に示すようになる。
VT_CZ=EFB_CP(1−1/GCP)/2 ・・・(13)
VT_CZ=EFB_CP(1/GCN−1)/2 ・・・(14)
直流電圧検出器25のゲイン異常が、式(15)に示す状態である場合には、式(13)より、中性点電圧VT_CZは負となる。また、直流電圧検出器25のゲイン異常が、式(17)に示す状態である場合には、式(13)より、中性点電圧VT_CZは正となる。
一方、直流電圧検出器26のゲイン異常が、式(16)に示す状態である場合には、式(14)より、中性点電圧VT_CZは負となる。また、直流電圧検出器26のゲイン異常が、式(18)に示す状態である場合には、式(14)より、中性点電圧VT_CZは正となる。
GCP<1 ・・・(15)
GCN>1 ・・・(16)
GCP>1 ・・・(17)
GCN<1 ・・・(18)
式(15)式から式(18)のいずれかに示す異常によりコンデンサの電圧の真値(ET_CP、ET_CN)が非対称となった場合、系統からはコンデンサ電圧の真値をバランスする充電電流が僅かに流れる。これに対して、中性点電圧制御器55は、故障した直流電圧検出器によるコンデンサ電圧検出値(EFB_CP、EFB_CN)をバランスするように交流出力電圧補正値AVzROUT_Cを継続出力する。例えば、中性点電圧VT_CZが負となる式(15)又は式(16)に示す異常時において、負の中性点電圧の真値VT_CZを維持するため、中性点電圧制御器55は、負の交流出力電圧補正値AVzROUT_Cを継続出力する。
直流電圧検出器25又は26のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標202の変化の方向との関係は、図14(b)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器25において、ゲインGCPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標202は、負となり(減少し)、ゲインGCPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標202は、正となる(増加する)。また、直流電圧検出器26において、ゲインGCNが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標202は、正となり(増加し)、ゲインGCNが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標202は、負となる(減少する)。なお、指標202は、直流電圧検出器35,36の異常に対しては変化しない。
指標202は、直流電圧検出器25と、直流電圧検出器26とのいずれかに異常が発生した場合には、ゲインの変化方向が同じであれば、異なる方向(逆方向)の変化として現れる。
次に、第3指標作成部723について説明する。
図6は、第1実施形態に係る第3指標作成部の構成図である。
第3指標作成部723は、指標203(=DI3)を算出する。指標203は、直流電圧検出器の異常時に、コンバータ2側の交流電流検出値IFB_Cに2次高調波成分が重畳することを利用して、直流電圧検出器の異常を検出するための指標であり、交流側接続点13での電流についての基準偶数次高調波波形を算出し、基準偶数次高調波波形と、電流検出器7により検出された電流値との積に基づく指標(コンバータ側偶数次高調波電流指標、第2種指標、コンバータ側指標)である。ここで、交流側接続点13は、変圧器12とコンバータ2との間の位置の点である。
まず、交流電流検出値IFB_Cに2次高調波電流IFB_C2が重畳する原理と、2次高調波電流IFB_C2の特徴を説明する。
図7は、第1実施形態に係る2次高調波を説明する第1の図である。図7(a)は、横軸を時間とした、直流電圧検出器25または26の故障によって、P側の直流電圧の真値ET_CPがN側の直流電圧の真値ET_CNより大きくなった(ET_CP>ET_CN)状態の交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの一例を示し、図7(b)は、交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの基本波VPWM_C1と、2次高調波VPWM_C2との合成波VPWM_C12の一例を示す。図8は、第1実施形態に係る2次高調波を説明する第2の図である。図8(a)は、横軸を時間とした、直流電圧検出器25または26に故障が発生し、P側の直流電圧の真値ET_CPがN側の直流電圧の真値ET_CNより小さくなった状態の交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの一例を示し、図8(b)は、図8(a)に示す場合における交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの基本波VPWM_C1と、2次高調波VPWM_C2との合成波VPWM_C12の一例を示す。
直流電圧検出器25又は26の異常によって、P側の直流電圧の真値ET_CPがN側の直流電圧の真値ET_CNより大きくなっている状態(ET_CP>ET_CN)においては、交流出力電圧VPWM_Cの時間波形は、図7(a)に示すようになる。電力変換部21の交流電圧指令値は、交流出力電圧をパルス幅変調して得られたスイッチング信号と、直流コンデンサ電圧の積とにより得られる。P側の直流電圧の真値ET_CPがN側の直流電圧の真値ET_CNと異なる場合(ET_CP≠ET_CNの場合)、交流出力電圧指令値が正負対称の波形であっても、電力変換部21より出力される交流電圧交流出力電圧VPWM_Cは正負非対称の波形となる。そのため、交流電圧交流出力電圧VPWM_Cには偶数次数波(2次、4次、6次など)が含まれる。
交流出力電圧VPWM_Cの基本波VPWM_C1と2次高調波VPWM_C2との合成波VPWM_C12(VPWM_C1+VPWM_C2)は、図7(b)に示すようになり、合成波VPWM_C12は、式(19)で表される。
VPWM_C12=VC1cos(ωt)+VC2cos(2ωt) ・・・(19)
ここで、VC1は、合成波VPWM_C12の電圧基本波成分であり、VC2は、合成波VPWM_C12の電圧2次高調波成分である。
式(19)によると、2次高調波VPWM_C2の位相は、基本波VPWM_C1と同位相となる。
一方、直流電圧検出器25又は26の異常によって、交流出力電圧VPWM_Cの時間波形は、図8(a)に示すようになる。交流出力電圧VPWM_Cの基本波VPWM_C1と2次高調波VPWM_C2との合成波VPWM_C12(VPWM_C1+VPWM_C2)は、図8(b)に示すようになり、合成波VPWM_C12は、式(20)で表される。
VPWM_C12=VC1cos(ωt)+VC2cos(2ωt+π)
=VC1cos(ωt)−VC2cos(2ωt) ・・・(20)
図7及び図8、式(19)及び式(20)によると、合成波VPWM_C12に含まれる2次高調波成分の位相が、P側の直流電圧の真値ET_CPがN側の直流電圧の真値ET_CNより大きくなっている状態(ET_CP>ET_CN)と、P側の直流電圧の真値ET_CPがN側の直流電圧の真値ET_CNより小さくなっている状態(ET_CP<ET_CN)とでは、180度異なることがわかる。
ET_CP>ET_CNとなる故障時(式(19)に示す状態)においては、交流電流検出値IFB_Cは、以下の式(21)に示すように表され、ET_CP<ET_CNとなる故障時(式(20)に示す状態)においては、交流電流検出値IFB_Cは、以下の式(22)で示すように表される。
IFB_C=IC1cos(ωt−φ1)+IC2cos(2ωt−φ2) ・・・(21)
IFB_C=IC1cos(ωt−φ1)―IC2cos(2ωt−φ2) ・・・(22)
ここで、IC1は、交流電流検出値IFB_C電流基本波成分であり、IC2は、交流電流検出値IFB_Cの電流2次高調波成分であり、φ1は、交流側接続点13の基本波電圧位相と、電流検出器7の基本波電流位相との位相差であり、φ2は、交流側接続点13の基本波電圧位相と、電流検出器7の2次高調波電流位相との位相差である。
位相差φ2は、交流電源1に含まれる電圧波形の2次高調波の大きさが無視できるほど小さい場合には、変圧器12のインピーダンスの実部と虚部により計算できる。例えば、変圧器12のインピーダンスは、インダクタンス成分が支配的であるため、φ2は、π/2となる。また、IC1は、交流側接続点13の基本波電圧の振幅と、変圧器12のインピーダンスから求められる。また、φ1は、交流側接続点13の基本波電圧の位相と、変圧器12のインピーダンスから求められる。また、IC2は、交流側接続点13に印加する2次高調波電圧振幅と、変圧器12のインピーダンスから求められる。
式(21)、式(22)より、ET_CP>ET_CNとなる故障時と、ET_CP<ET_CNとなる故障時とでは、2次高調波電流の位相がπだけ異なることがわかる
このため、2次高調波電流の位相差から、ET_CPとET_CNとの大小関係がわかり、且つIC2の大きさから、ET_CPとET_CNとの偏差を推定することができる。
なお、上記した例では、2次高調波を例に説明したが、2次以外の4次や6次の低次偶数次高調波電流についても、上記同様にET_CPとET_CNとが異なる値を持つ場合においては、2次高調波電流の位相が180度異なる。そのため、2次以外の偶数次数の高調波を用いても2次高調波と同様にET_CPとET_CNとの大小関係及び電圧偏差の推定ができる。
次に、第3指標作成部723について詳細に説明する。
第3指標作成部723は、基本波位相検出部7231と、基準2次高調波余弦波演算部7232と、積演算部7233と、移動平均演算部7234と、フィルタ7235とを含む。
基本波位相検出部7231は、電圧検出器11から入力される電圧の波形と、設定記憶部72bから取得される変圧器12のインピーダンスXcと、電流検出器7から入力される電流の波形とから交流側接続点13の基本波電圧の位相(基本波電圧位相)を求める。
具体的には、基本波位相検出部7231は、電圧検出器11から入力される検出値に対し、PLL(Phase Locked Loop)演算を施すことで交流電源1の基本波電圧位相を算出する。次いで、基本波位相検出部7231は、基本波位相を用いて電流検出器7の検出値をd−q変換して電流d−q変換値を算出し、電圧検出器11の検出値をd−q変換した電圧d−q変換値に、電流d‐q変換値と、インダクタンスXcとに基づいてベクトル合成することにより交流側接続点13の電圧ベクトルを算出する。次いで、基本波位相検出部7231は、電圧ベクトルから交流電源1の基本波電圧位相との位相差を算出することで交流側接続点13の電圧位相を算出する。ここで、変圧器12のインダクタンスXcが小さい場合、電圧検出値11の検出値VAC_Cの基本波電圧VAC_C1と、交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの基本波電圧VPWM_C1とは、略一致するため、電圧検出値11の検出値VAC_Cの波形のみから交流側接続点13の基本波電圧の位相を近似的に求めてもよい。また、交流側接続点13の基本波電圧の位相は、コンバータ制御装置5の電流制御器53から出力されるコンバータ交流電圧指令値から求めてもよい。
基準2次高調波余弦波演算部7232は、基準2次高調波余弦波αBASE_Cを演算する。例えば、交流側接続点13の基本波cos(ωt)と同位相の2次高調波cos(2ωt)を基準とすると、電流検出器7で検出される電流の2次高調波の位相は、交流側接続点13の位相と比べてφ2だけ遅れる。したがって、基準2次高調波余弦波αBASE_Cは、以下の式(23)で求められる。
αBASE_C=cos(2ωt−φ2) ・・・(23)
位相差φ2は、例えば、変圧器12のインピーダンスの実部と虚部により計算できる。なお、この例における基準2次高調波余弦波αBASE_Cの位相は、ET_CP>ET_CNとなる故障時に発生する電流の2次高調波の位相と等しい。なお、基準2次高調波余弦波αBASE_Cの位相φ2は、コンバータ制御装置5の直流電圧制御器52から出力されるコンバータ出力有効電流指令値の位相と、交流側接続点13の位相との位相差により求めてもよい。
積演算部7233は、電流検出器7の交流電流検出値IFB_Cに、基準2次高調波余弦波αBASE_Cを乗じる。ここで、交流電流IFB_Cは、ET_CP>ET_CNとなる故障時(図7に示す状態)においては、式(21)に示すようになり、ET_CP<ET_CNとなる故障時(図8に示す状態)においては、式(22)に示すようになる。したがって、積演算部7233による演算結果(αBASE_C×IFB_C)は、ET_CP>ET_CNとなる故障時においては、以下の式(24)に示すようになり、ET_CP<ET_CNとなる故障時においては、以下の式(25)に示すようになる。
αBASE_C×IFB_C=IC1cos(2ωt−φ2)cos(ωt−φ1)
+IC2cos(2ωt−φ2)cos(2ωt−φ2) ・・・(24)
αBASE_C×IFB_C=IC1cos(2ωt−φ2)cos(ωt−φ1)
−IC2cos(2ωt−φ2)cos(2ωt−φ2) ・・・(25)
移動平均演算部7234は、積演算部7233による演算結果(αBASE_C×IFB_C)、すなわち、式(24)又は式(25)の1周期分の移動平均(指標203)を計算する。ここで、式(24)、式(25)について、1周期分の移動平均を計算すると、三角関数の直交性より、式(24)、式(25)の第1項は、ゼロになる。したがって、式(24)についての移動平均は、正となり、式(25)の移動平均は、負となる。
フィルタ7235は、移動平均演算部7234では除去できないノイズを除去する。フィルタ7235の機能は、図4に示すフィルタ7212と同じである。
直流電圧検出器25又は26のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標203の変化の方向との関係は、図14(c)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器25において、ゲインGCPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標203は、正となり(増加し)、ゲインGCPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標203は、負となる(減少する)。また、直流電圧検出器26において、ゲインGCNが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標203は、負となり(減少し)、ゲインGCNが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標203は、正となる(増加する)。なお、指標203は、直流電圧検出器35,36の異常に対しては変化しない。
指標203は、直流電圧検出器25と、直流電圧検出器26とのいずれかに異常が発生した場合には、ゲインの変化方向が同じであれば、異なる方向(逆方向)の変化として現れる。
次に、第4指標作成部724について説明する。
図9は、第1実施形態に係る第4指標作成部の構成図である。
第4指標作成部724は、指標204(=DI4)を算出する。指標204は、直流電圧検出器の異常時に、コンバータ2側の電圧波形に2次高調波成分が重畳することを利用して、直流電圧検出器の異常を検出するための指標であり、交流側接続点13での電圧についての基準偶数次高調波波形を算出し、基準偶数次高調波波形と、電圧値との積に基づく指標(コンバータ側偶数次高調波電圧指標、第2種指標、コンバータ側指標)である。
第4指標作成部724は、波形演算部7241と、基本波形検出部7242と、基準2次高調波余弦波演算部7243と、積演算部7244と、移動平均7245と、フィルタ7246とを含む。なお、第4指標作成部724は、第3指標作成部723と一部が異なる処理を実行する。第4指標作成部724と、第3指標作成部723との異なる点は、積演算部7233では、交流側接続点13の交流出力電流を乗算するようにしていたものを、積演算部7244では、交流側接続点13の交流出力電圧を乗算するようにしている点である。指標204と、指標203との性質は、略同様であるので、詳細な説明は省略し、第3指標作成部724と異なる点について説明する。
波形演算部7241は、電圧検出器11の検出値と、電流検出器7の検出値と変圧器12のインピーダンスXcとの積により求まる電圧降下と、の差を求めることで交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの波形を算出する。なお、波形演算部7241による計算により交流出力電圧PWM_Cを算出する代わりに、交流側接続点13の電圧を検出する電圧検出器を備えて、交流側接続点13の電圧を直接計測してもよい。
基本波位相検出部7242は、交流側接続点13の電圧波形の基本波位相を波形演算部7241により算出された交流出力電圧VPWM_Cの波形に基づき検出する。具体的には、基本波位相検出部7242は、交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの値に対し、PLL演算を施すことで交流側接続点13の基本波電圧の位相を算出する。なお、変圧器12のインダクタンスが小さい場合、電圧検出器11の検出値VAC_Cの基本波電圧VAC_C1と、交流側接続点13の交流出力電圧VPWM_Cの基本波電圧VPWM_C1と、略一致するため、電圧検出器11の電圧波形のみから交流側接続点13の基本波位相を近似的に求めてもよい。また、交流側接続点13の電圧波形の基本波位相は、コンバータ制御装置5の電流制御器53から出力されるコンバータ電圧指令値から求めてもよい。
直流電圧検出器25又は26のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標204の変化の方向との関係は、図14(c)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器25において、ゲインGCPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標204は、正となり(増加し)、ゲインGCPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標204は、負となる(減少する)。また、直流電圧検出器26において、ゲインGCNが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標204は、負となり(減少し)、ゲインGCNが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標204は、正となる(増加する)。なお、指標204は、直流電圧検出器35,36の異常に対しては変化しない。
指標204は、直流電圧検出器25と、直流電圧検出器26とのいずれかに異常が発生した場合には、ゲインの変化方向が同じであれば、異なる方向(逆方向)の変化として現れる。なお、指標204の大きさは、交流側接続点13の電圧の2次高調波の大きさに比例する。
次に、第5指標作成部725について説明する。
図10は、第1実施形態に係る第5指標作成部の構成図である。
第5指標作成部725は、指標205(=DI5)を算出する。指標205は、直流電圧検出器の異常時に、中性点電圧制御器65の交流出力電圧補正値AVzROUT_Iが変化することを利用して、直流電圧検出器(35,36)の異常を検出するための指標であり、直流電圧器の検出値の差ΔEFB_I(=EFB_IN―EFB_IP)をゼロにするための交流出力電圧補正値AVzROUT_Iを指標(インバータ中性点電圧制御信号指標:第2種指標:インバータ側指標)としている。
第5指標作成部725は、フィルタ7251を備える。第5指標作成部725は、第2指標作成部722とは、入力される交流出力電圧補正値の出力先が異なるが、処理自体は同様である。フィルタ7251は、中性点電圧制御器65から入力される交流出力電圧補正値AVzROUT_Iの変動成分を除去するためのフィルタ処理を実行する。フィルタ7251の機能は、図4に示すフィルタ7212と同じである。
直流電圧検出器35又は36のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標205の変化の方向との関係は、図15(a)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器35において、ゲインGIPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標205は、負となり(減少し)、ゲインGIPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標205は、正となる(増加する)。また、直流電圧検出器36において、ゲインGINが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標205は、正となり(増加し)、ゲインGINが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標205は、負となる(減少する)。なお、指標205は、直流電圧検出器25,26の異常に対しては変化しない。
指標205は、直流電圧検出器35と、直流電圧検出器36とのいずれかに異常が発生した場合には、ゲインの変化方向が同じであれば、異なる方向(逆方向)の変化として現れる。
次に、第6指標作成部726について説明する。
図11は、第1実施形態に係る第6指標作成部の構成図である。
第6指標作成部726は、指標206(=DI6)を算出する。指標206は、直流電圧検出器の異常時に、インバータ3側の交流電流検出値IFB_Iに2次高調波成分が重畳することを利用して、直流電圧検出器35又は36の異常を検出するための指標であり、インバータ3の後段の接続点での電流についての基準偶数次高調波波形を算出し、基準偶数次高調波波形と、電流検出器9により検出された電流値との積に基づく指標(インバータ側偶数次高調波電流指標、第2種指標、インバータ側指標)である。インバータ3の後段の接続点としては、例えば、電流検出器9の位置であってもよい。
第6指標作成部726は、基本波位相検出部7261と、基準2次高調波余弦波演算部7262と、積演算部7263と、移動平均演算部7264と、フィルタ7265とを備える。第6指標作成部726の各部は、以下に示す点を除いて基本的には、第3指標作成部723の同名の部位と同様な機能を有する。以下に、第6指標作成部726の部位と、第3指標作成部723の部位との異なる点を説明する。
積演算部7263には、積演算部7233で入力される電流検出器7の検出値に代えて、電流検出器9の検出値(電流波形)が入力されて、乗算に使用される。
基本波位相検出部7261は、電流検出器9の検出値に基づいて基本波電流の位相を検出する。なお、基本波電流の位相は、速度制御器62から出力されるインバータ出力電流指令値の位相に基づいて検出してもよく、或いは、電流制御器63から出力されるインバータ電圧指令値の位相と、電動機4のインピーダンスによる位相差とに基づいて検出してもよい。
直流電圧検出器35又は36のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標206の変化の方向との関係は、図15(b)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器35において、ゲインGIPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標206は、正となり(増加し)、ゲインGIPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標206は、負となる(減少する)。また、直流電圧検出器36において、ゲインGINが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標206は、負となり(減少し)、ゲインGINが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標206は、正となる(増加する)。なお、指標206は、直流電圧検出器25,26の異常に対しては変化しない。
指標206は、直流電圧検出器35と、直流電圧検出器36とのいずれかに異常が発生した場合には、ゲインの変化方向が同じであれば、異なる方向(逆方向)の変化として現れる。
次に、第7指標作成部727について説明する。
図12は、第1実施形態に係る第7指標作成部の構成図である。
第7指標作成部727は、指標207(=DI7)を算出する。指標207は、直流電圧検出器の異常時に、U相とV相との間の交流線間電圧の検出値(VFB_IUV)と、V相とW相との間の交流線間電圧の検出値(VFB_IVW)との差分に正負の偏りが生じるタイミングがあることを利用して、直流電圧検出器35又は36の異常を検出するための指標(交流線間電圧指標、第2種指標、インバータ側指標)である。
指標207は、インバータ側の交流線間電圧の検出値(VFB_IUV、VFB_IVW)の差分であり、式(29)で表される。
DI7=VFB_IUV−VFB_IVW ・・・(29)
指標207によって、直流電圧検出器(35、36)の故障を判定する原理を説明する。
交流線間電圧の検出値(VFB_IUV、VFB_IVW)は、交流相電圧(U相電圧VFB_IU、V相電圧VFB_IV、W相電圧VFB_IW)で表すと、式(30)及び式(31)に示すようになる。
VFB_IUV=VFB_IU−VFB_IV ・・・(30)
VFB_IVW=VFB_IV−VFB_IW ・・・(31)
式(29)に、式(30)及び式(31)を代入すると、式(32)が得られる。
DI7=VFB_IUV−VFB_IVW=VFB_IU−2VFB_IV+VFB_IW ・・・(32)
ここで、インバータ3は、3レベルインバータである。このため、インバータ3の交流相電圧(VFB_IU、VFB_IV、VFB_IW)は、正の電位レベルVLV1_I(第1電位)、中性点電位レベルVLV2_I(第2電位)、負の電位レベルVLV3_I(第3電位)のいずれかの値となる。各電圧レベル(VLV1_I、VLV2_I、VLV3_I)は、平滑コンデンサ32の電圧の真値ET_IP、平滑コンデンサ33の電圧の真値ET_IN、及びインバータ側中性点14の中性点電位VT_IZ=(ET_IN―ET_IP)/2を用いて、式(33)〜式(35)で示すように表される。
VLV1_I=ET_IP+VT_IZ ・・・(33)
VLV2_I=VT_IZ ・・・(34)
VLV3_I=−ET_IN+VT_IZ ・・・(35)
交流相電圧(VFB_IU、VFB_IV、VFB_IW)は、それぞれVLV1_I、VLV2_I、VLV3_Iの3つの値を取り得るため、交流相電圧の組合せは27通り(=3の3乗)となる。この組合せの中で、交流線間電圧の検出値(VFB_IUV、VFB_IVW)の符号がともに正となる交流相電圧(VFB_IU、VFB_IV、VFB_IW)の組合せは、式(36)に示す場合のみである。また、交流線間電圧の検出値(VFB_IUV、VFB_IVW)の符号がともに負となる交流相電圧(VFB_IU、VFB_IV、VFB_IW)の組合せは、式(37)に示す場合のみである。ここで、∧は論理積(AND)である。
(VFB_IU=ET_IP+VT_IZ-)∧(VFB_IV=VT_IZ)
∧(VFB_IW=―ET_IN+VT_IZ) ・・・(36)
(VFB_IU=―ET_IN+VT_IZ)∧(VFB_IV=VT_IZ)
∧(VFB_IW=ET_IP+VT_IZ) ・・・(37)
式(36)が成り立つとき、交流線間電圧の検出値(VUV_I、VVW_I)は、式(38)に示すようになる。また、式(37)が成り立つとき、交流線間電圧の検出値(VUV_I、VVW_I)は、式(39)に示すようになる。
(VFB_IUV=ET_IP)∧(VFB_IVW=ET_IN) ・・・(38)
(VFB_IUV=−ET_IN)∧(VFB_IVW=−ET_IP) ・・・(39)
式(38)式が成り立つときには、指標207は、式(40)に示すようになる。また、式(39)が成り立つときも、指標207は、式(40)に示すようになる。
DI7=ET_IP―ET_IN ・・・(40)
ここで、電圧の真値(ET_IP、ET_IN)は、それぞれ式(3)及び式(4)により、式(41)及び式(42)に示すようになる。
ET_IP=EFB_IP/GIP ・・・(41)
ET_IN=EFB_IN/GIN ・・・(42)
式(40)に、式(41)及び式(42)を代入すると、式(43)となる。
DI7=(EFB_IP/GIP)―(EFB_IN/GIN) ・・・(43)
式(43)を、直流電圧検出器35,36の検出値の相互関係を示す式(6)を用いると、式(44)に示すように変形できる。
DI7=EFB_IP(1/GIP−1/GIN) ・・・(44)
式(44)によると、指標207は、直流電圧検出器35又は36のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標207の変化の方向との関係は、図15(b)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器35において、ゲインGIPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標207は、正となり(増加し)、ゲインGIPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標207は、負となる(減少する)。また、直流電圧検出器36において、ゲインGINが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標207は、負となり(減少し)、ゲインGINが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標207は、正となる(増加する)。なお、指標207は、直流電圧検出器25,26の異常に対しては変化しない。
指標207は、直流電圧検出器35と、直流電圧検出器36とのいずれかに異常が発生した場合には、ゲインの変化方向が同じであれば、異なる方向(逆方向)の変化として現れる。
第7指標作成部727は、判定断面抽出部7271と、指標演算部7272と、フィルタ7273とを備える。
判定断面抽出部7271は、式(36)又は式(37)が成り立つ時間断面(判定断面)を抽出する。
図13は、第1実施形態に係る判定断面の抽出を説明する図である。図13は、各相についてのパルス生成器64が出力するインバータ電力変換部31の各スイッチング素子をオン・オフ制御するためのパルス信号の時間変化を示す。
判定断面抽出部7271は、各相についてのパルス生成器64が出力するインバータ電力変換部31の各スイッチング素子をオン・オフ制御するためのパルス信号の時間変化の中から、式(36)又は式(37)が成り立つ時間断面を抽出する。なお、電圧検出器10の検出値より、式(38)又は式(39)が成り立つ時間断面を抽出してもよい。この場合、真値ET_IPと真値ET_INとは、ゲインGIPとゲインGINとに応じて変化するため、交流線間電圧の検出値VUV_Iと交流線間電圧の検出値VVW_Iは、式(38)、式(39)を使う代わりに、式(45)、式(46)に示すような一定範囲内とすればよい。
((EFB_IP×GL)<VFB_IUV<(EFB_IP×GH))
∧((EFB_IN×GL)<VFB_IVW<(EFB_IN×GH)) ・・・(45)
((−EFB_IN×GH)<VFB_IUV<(−EFB_IN×GL))
∧((−EFB_IP×GH)<VFB_IVW<(−EFB_IP×GL)) ・・・(46)
ここで、GH、GLは定数であり、GH>1、0<GL<1である。
指標演算部7272は、電圧検出器10から、判定断面抽出部7271が抽出した時間断面の交流線間電圧の検出値(VFB_IUV、VFB_IVW)を取得する。また、指標演算部7272は、式(29)に、取得した交流線間電圧の検出値(VFB_IUV、VFB_IVW)を代入することによって、指標207を算出する。フィルタ7273は、指標演算部7272により算出された指標207からノイズを除去する。フィルタ7273の機能は、図4に示すフィルタ7212と同じである。
次に、設定記憶部72bに記憶され、異常判定部72eにより使用される異常判定表720について説明する。なお、異常判定表720は、ユーザインターフェースにより、入力または変更できるようにしてもよい。
図18は、第1実施形態に係る異常判定表の構成図である。なお、図18には、指標201の比較結果、指標202の比較結果、指標205の比較結果を用いて、直流電圧検出器(25、26、35、36)の異常判定を行うための異常判定表を示している。
異常判定表720は、入力される指標201、指標202、指標205の比較結果の取りうる組合せと、これら各組合せが入力された場合において出力すべき判定結果とが対応付けられている。異常判定表720は、入力に対応するフィールドとして、指標201の比較結果のフィールドと、指標202の比較結果のフィールドと、指標205の比較結果のフィールドとを有し、出力する判定結果に対応するフィールドとして、異常個所のフィールドと、異常検出器のゲインのフィールドとを有する。異常個所のフィールドには、異常個所の情報としては、或る特定の一つの直流電圧検出器を示す情報(異常な直流電圧検出器名)や、いずれかの直流電圧検出器であることを示す情報、異常個所がないことを示す情報等が格納される。異常検出器のゲインのフィールドには、特定の1つの直流電圧検出器に異常がある場合におけるゲイン異常の内容の情報が格納される。
入力される指標の比較結果の組合せと、判定結果との対応関係は、図14(a)、(b)、(c)、図15(a)、(b)に示す指標の特性に基づいて決定することができる。
ここで、指標201の比較結果が「1」であり、指標202の比較結果が「1」であり、指標205の比較結果が「0」である組合せに対応する判定結果について説明する。
指標201の比較結果が「1」であるので、図14(a)に示すように、指標201の変化が増加(正)に対応する、直流電圧検出器が対応するゲイン異常がある可能性があることがわかる。具体的には、直流電圧検出器25のゲインが1より小さくなる異常であるか、直流電圧検出器26のゲインが1より小さくなる異常であるか、直流電圧検出器35のゲインが1より大きくなる異常であるか、直流電圧検出器36のゲインが1より大きくなる異常であるか、が考えられる。指標201のみでは、異常のある直流電圧検出器を特定の一つに絞り込むことができない。
また、指標202の比較結果が「1」である場合には、図14(b)に示すように、指標202の変化が増加(正)に対応する、直流電圧検出器が対応するゲイン異常がある可能性があることがわかる。具体的には、直流電圧検出器25のゲインが1より大きくなる異常であるか、直流電圧検出器26のゲインが1より小さくなる異常であるかのいずれかが考えられる。この指標202のみでは、異常のある直流電圧検出器を特定の一つに絞り込むことができない。
ここで、指標201の比較結果「1」と、指標202の比較結果「1」との組合せを満たす異常は、直流電圧検出器26のゲインが1より小さくなる異常であるということが特定できる。したがって、指標201の比較結果「1」と、指標202の比較結果「1」と、指標203の比較結果が「0」との組合せに対応する判定結果は、図18に示すように直流電圧検出器26が異常個所であり、そのゲインが1より小さいとして設定される。
上記同様にして、異常判定表720には、指標201の比較結果と、指標202の比較結果と、指標205の比較結果との組合せの中の可能性のある組合せに対応する判定結果が設定される。なお、いずれか一つの直流電圧検出器が異常であることを想定した場合には、指標202の比較結果と、指標205の比較結果とが、同時に0と異なる値を取ることはないので、指標202及び指標205の比較結果の両方が0と異なる組合せについては、可能性のない組合せとして異常判定表に設定しなくてもよく、或いは、異常であるとして設定してもよい。
指標201と指標202とによると、比較結果によって、直流電圧検出器25又は26のいずれかが異常である場合に、異常のある一つの直流電圧検出器を特定することができる場合があり、また、指標201と指標205とによると、比較結果によって、直流電圧検出器35又は36のいずれかが異常である場合に、異常のある一つの直流電圧検出器を特定することができる場合がある。
また、異常判定表720では、検出値が真値に対して大きく検出されるゲイン増加故障(検出値=真値×ゲイン、ゲイン>100%)と、検出値が真値に対して小さく検出されるゲイン減少故障(検出値=真値×ゲイン、ゲイン<100%)とを想定した例としているが、検出値にオフセット値が重畳されるオフセット故障や、検出値が固定値になる故障などの他の故障についても上記と同様の手法により異常検出器を特定できる。
なお、図18に示す異常判定表720は、指標201、指標202、及び指標205の比較結果の組合せと、判定結果とを対応付けていたが、本発明はこれに限られず、指標201の比較結果と、コンバータ側指標(指標202、指標203、指標204)の少なくとも一つの指標の比較結果と、インバータ側指標(指標205、指標206、指標207)の少なくとも1つの指標の比較結果との組合せに対して、判定結果を対応付けるようにしてもよく、また、コンバータ側の直流電圧検出器の異常のみ、又はインバータ側の直流電圧検出器の異常のみを検出すればよい場合には、指標201の比較結果と、コンバータ側指標(指標202、指標203、指標204)の少なくとも一つの指標の比較結果又はインバータ側指標(指標205、指標206、指標207)の少なくとも1つの指標の比較結果との組合せに対して、判定結果を対応付けるようにすればよい。
次に、第1実施形態に係る電力変換装置100による処理動作について説明する。
図16は、第1実施形態に係る指標比較処理のフローチャートである。なお、図16においては、指標201についての指標比較処理について説明するが、他の指標202〜207についても同様な処理が実行される。
指標比較処理は、比較部72dにより実行される処理であり、後述する図19のステップS21に対応する処理である。
比較部72dは、指標作成部72cにより作成された指標201と、設定記憶部72bに格納されている指標201の比較用の基準値301とを比較する(ステップS11)。この結果、指標201が基準値301より大きい場合(ステップS11:Yes)には、比較部72dは、指標201の判定結果を1(正(増加)異常)とし(ステップS15)、処理を終了する。
一方、指標201が基準値301以下である場合(ステップS11:No)には、比較部72dは、指標201と設定記憶部72bに格納されている指標201の比較用の基準値302(<基準値301)とを比較する(ステップS12)。
この結果、指標201が基準値302より小さい場合(ステップS12:Yes)には、比較部72dは、指標201の比較結果を−1(負(減少)異常)とし(ステップS14)、処理を終了する。一方、指標201が基準値302以上の場合(ステップS12:No)、指標201の比較結果を0(正常)とし(ステップS13)、処理を終了する。
図17は、第1実施形態に係る指標比較処理の一例を説明する図である。図17は、指標201を、基準値301および基準値302と比較した比較処理の具体例を示している。基準値301及び基準値302は、実験またはシミュレーションにより予め得られた値であって、設定記憶部72bに格納されている。なお、基準値をユーザインターフェースにより入力又は変更できるようにしてもよい。
指標比較処理においては、図17に示すように、指標201が基準値301と基準値302とで定めた範囲(基準値範囲)内である場合には、指標201の比較結果を0(異常なし)とし、指標201が基準値301より大きい場合には、指標201の比較結果を1(正(増加)方向への異常)とし、指標201が基準値302より小さい場合には、指標201の比較結果を−1(負(減少)方向への異常)とする。なお、図16及び図17には、指標201を、指標201についての基準値301及び基準値302と比較する処理の例を示しているが、指標202〜207の各々の指標についても、同様に、各々の指標用の基準値と比較する。
なお、インバータ3で消費される消費電力又はインバータ3側の周波数などの時間変化が大きいなどの過渡的な場合においては、指標201〜207のうち少なくとも1つが基準値範囲から外れている場合であっても、必ずしも直流電圧検出器の異常であるとは限らないこともあり得る。そこで、基準値を、設定変更部72fにより可変としてもよい。具体的には、例えば、速度検出器8から入力された回転数をωMとし、電流検出器9及び電圧検出器10の検出値より計算される有効電力をPとしたとき、dωM/dt、dP/dtで計算される時間変化が大きい場合に、基準値301及び基準値302とで定める基準値範囲を広げるように、dωM/dt、dP/dtと、2つの基準値との対応関係をテーブル関数により設定変更部72fが設定記憶部72bに基準値を設定するようにして、誤判定されないようにしたり、あるいは、dωM/dt、dP/dtで計算される時間変化が大きい場合に異常判定表720による出力の異常個所のフィールドを「異常検出器なし」に変更することで誤判定されないようにしたりしてもよい。
次に、異常判断処理について説明する。
図19は、異常判断器72による異常判断処理のフローチャートである。
異常判断処理は、電力変換装置100が動作中に異常判断器72により逐次実行される処理である。
異常判断器72は、指標比較処理(図16参照)を実行して、指標と基準値との比較結果を得る(ステップS21)。本実施形態では、異常判断器72は、電力変換装置100の運転中の全ての時点において、指標と基準値とを比較する。なお、一定時間間隔で比較するようにしてもよい。
次いで、異常判断器72は、得られた比較結果について、異常判定表720を参照して、判定結果を取得する異常判定処理を実行する(ステップS22)。
次いで、異常判断器72は、判定結果が異常である電圧電流検出器(異常検出器)があることを示しているか否かを判定する(ステップS23)。この結果、判定結果が、異常検出器があることを示していない場合(ステップS23:No)には、異常判断器72は、処理を終了する。
一方、判定結果が、異常検出器があることを示している場合(ステップS23:Yes)には、異常判断器72は、判定結果において異常検出器名を特定しているか否かを判定する(ステップS24)。
この結果、異常検出器名を特定している場合(ステップS24:Yes)には、異常判断器72は、直流電圧検出器に異常があることを示す情報(「直流電圧検出器異常」)及び異常検出器を特定する情報(例えば異常検出器名または異常検出器ID)を表示器73に表示させ(ステップS26)、処理をステップS27に進める。一方、異常検出器名を特定していない場合(ステップS24:No)には、異常判断器72は、直流電圧検出器に異常があることを示す情報(「直流電圧検出器異常」)を表示器73に表示させ(ステップS25)、処理をステップS27に進める。
ステップS27では、異常判断器72は、「異常箇所を点検および交換してください」との文章を表示器73に表示させて、処理を終了する。
以上説明したように、第1実施形態に係る電力制御装置100によると、複数の指標を用いて、直流電圧検出器の異常を判断でき、状況によっては、複数の直流電圧検出器の中の特定の一つの直流電圧検出器の異常を特定することができる。
なお、上記実施形態では、速度指令発生器61は所定の値を速度指令として出力するようにしていたが、例えば、外部から入力を受け付けるインターフェースを備えるようにし、外部からの入力に基づいて可変速運転をさせる速度指令を出力するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、コンバータ電力変換部21を、変圧器12を介して交流電源1と連系するようにしていたが、変圧器12の代わりにリアクトルまたは配線のインピーダンスを利用するものであってもよい。この場合、コンバータ電力変換部21側から見込んだリアクトル又はインピーダンスを上記した変圧器12のインダクタンスXcと置き換えるようにすればよい。
次に、第2実施形態に係る電力変換装置について図20乃至図21を用いて説明する。
図20は、第2実施形態に係る電力変換システムの全体構成図である。なお、図1に示す第1実施形態に係る電力変換システム1000と同様な構成については同一の符号を付す。
第2実施形態に係る電力変換システム1001の電力変換装置101は、第1実施形態に係る電力変換装置100において、新たに出力推定部の一例としての出力推定器74を備えるようにしたものである。
出力推定器74は、複数の直流電圧検出器25、26、35、36からの検出値に基づいて、異常となった直流電圧検出器の検出対象についての正確な検出値(本来検出されるべき検出値)を推定する。なお、出力推定器74は、図示しないプロセッサが、メモリに格納されたプログラムを実行することにより構成されてもよい。
ここで、異常となった直流電圧検出器の検出対象についての正確な検出値を推定する方法は、電力変換装置101においては、各直流電圧検出器が正常な状態であれば、コンバータ側の直流電圧検出器25、26との検出値を加算した合成直流電圧値は、インバータ側の直流電圧検出器35、36の検出値を加算した合成直流電圧値と一致するという関係を利用している。このような関係により、いずれか1つの直流電圧検出器が異常となった場合には、健全な側(コンバータ側又はインバータ側)の2つの直流電圧検出器の検出値を加算した合成直流電圧値から、他方側の健全な1つの直流電圧検出器の検出値を減算することにより、異常な直流電圧検出器の測定対象(電圧)の正確な検出値を推定することができる。
次に、出力推定器74の具体的な構成及び動作を説明する。
図21は、第2実施形態に係る電力変換装置の出力推定器を含む一部の構成図である。
図21において、直流電圧検出器25の検出値をEFB_CPとし、直流電圧検出器26の検出値をEFB_CNとし、直流電圧検出器35の検出値をEFB_IPとし、直流電圧検出器36の検出値をEFB_INとしている。また、図21は、直流電圧検出器26に異常がある場合の例を示している。
異常判断器72には、直流電圧検出器25の検出値(EFB_CP)と、直流電圧検出器26の検出値(EFB_CN)と、直流電圧検出器35の検出値(EFB_IP)と、直流電圧検出器36の検出値(EFB_IN)とが入力されており、いずれかの直流電圧検出器が異常であると判断すると、異常である直流電圧検出器を示す異常判断情報を出力推定器74に出力する。図21においては、異常判断器72は、直流電圧検出器26が異常であると判断し、直流電圧検出器26が異常であるとの情報(EFB_CN異常判断情報)を出力推定器74に出力する。
出力推定器74は、直流電圧検出器25の検出値(EFB_CP)と、直流電圧検出器26の検出値(EFB_CN)とを加算して、コンバータ側の合成直流電圧値(VDC_c)を算出する。また、出力推定器74は、直流電圧検出器35の検出値(EFB_IP)と、直流電圧検出器36の検出値(EFB_IN)とを加算して、インバータ側の合成直流電圧値(VDC_i)を算出する。
出力推定器74は、インバータ側の合成直流電圧値(VDC_i)から、直流電圧検出器25の検出値(EFB_CP)を減算して、正常であれば直流電圧検出器26に検出されると推定される推定値(EFBH_CN)を算出する。
出力推定器74の選択部74aは、直流電圧検出器26の検出値(EFB_CN)と、直流電圧検出器26の推定値(EFBH_CN)とを入力として、異常判断器72から直流電圧検出器26が異常であるとの情報(EFB_CN異常判断情報)の入力がある場合には、直流電圧検出器26の推定値(EFBH_CN)を選択して所定の送信先(この例では、コンバータ制御装置5)へ出力し、異常判断器72から直流電圧検出器26が異常であるとの情報(EFB_CN異常判断情報)の入力がない場合には、直流電圧検出器26の検出値(EFB_CN)を選択して所定の送信先へ出力する。
このような構成により、直流電圧検出器26に異常があった場合において、直流電圧検出器26の検出値に変えて、適切な推定値を出力することができる。なお、図21においては、直流電圧検出器26に異常があった場合において、関係する構成を示しているが、他の直流電圧検出器においても同様な構成で、異常がある場合に適切な推定値を出力することができる。
例えば、直流電圧検出器25については、直流電圧検出器26を直流電圧検出器25に読み替えた構成とすればいい。また、直流電圧検出器35、又は直流電圧検出器36の場合には、コンバータ側の合成直流電圧値(VDC_c)から、その直流電圧検出器の検出値を減算して、直流電圧検出器の推定値を算出して選択部74aに入力するようにし、選択部74aで選択された値をインバータ制御装置6に出力するようにすればよい。
以上説明したように、第2実施形態による電力変換装置101では、直流電圧検出器に異常があると判断した場合に、異常がある直流電圧検出器以外の健全な直流電圧検出器の検出値に基づいて、異常がある直流電圧検出器における検出対象の正常な検出値を推定するようにしたので、異常がある直流電圧検出器を交換せずに電力変換装置101を使用することができ、例えば、次の定期点検時まで電力変換装置を継続して運転させる、しのぎ運転を行うことができる。これにより、電力変換装置101を計画外停止させる必要がなく、稼働率を向上でき、効率的に電力変換器を運転させることができる。
次に、第3実施形態に係る電力変換システムについて図22乃至図28を用いて説明する。
図22は、第3実施形態に係る電力変換システムの全体構成図である。なお、図1に示す第1実施形態に係る電力変換システム1000と同様な構成については同一の符号を付す。
第3実施形態に係る電力変換システム1002の電力変換装置102と、第1実施形態に係る電力変換装置100の主回路構成の差は、コンバータ中性点抵抗24と、インバータ中性点抵抗34とが取り除かれた点である。電力変換装置102においては、主回路構成要素が削減されるが、ダンピング用抵抗器が無いために直流回路における共振を起こさないよう、スイッチング周波数の選定や回路要素の配置による配線インダクタンス設計に注意を要する。
電力変換装置102は、電力変換装置100における異常判断器72に代えて異常判断器75を備える。電力変換装置102では、コンバータ側直流回路とインバータ側直流回路が全て同電位となるため、コンバータ側の平滑コンデンサ22と、インバータ側の平滑コンデンサ32との電極間の電圧を検出する直流電圧検出器43と、コンバータ側の平滑コンデンサ23と、インバータ側の平滑コンデンサ33との電極間の電圧を検出する直流電圧検出器44とを備える。
ここで、直流電圧検出器43の検出値をEPFB_CIP、真値をEP_CIPとする。直流電圧検出器44の検出値をENFB_CIN、真値をEN_CINとする。以下においては、電圧検出器の故障の一例としてゲイン故障を考える。
直流電圧検出器43がゲインGP_CIPとなる故障をした場合、直流電圧検出器44がゲインGN_CINとなる故障をした場合の関係式は、それぞれ、以下の式(47)、式(48)に示すように表せる。
EFB_CIP=GP_CIP×EP_CIP ・・・(47)
EFB_CIN=GN_CIN×EN_CIN ・・・(48)
また、中性点電圧制御器55又は中性点電圧制御器65が理想的に動作している条件において、以下の式(49)が成り立つ。
EFB_CIP=EFB_CIN ・・・(49)
また、直流電圧制御器52が理想的に動作している条件において、以下の式(50)が成り立つ。
EFB_CIP+EFB_CIN=VDC_REF ・・・(50)
ここで、VDC_REFは指令値である。
次に、異常判断器75について説明する。
図23に、第3実施形態に係る異常判断器の構成図を示す。
異常判断器75は、信号記憶部75aと、設定記憶部75bと、指標作成部75cと、比較部75dと、異常判定部75eと、設定変更部75fとを備える。なお、これら構成は、第1実施形態に係る異常判断器72の同一名の構成とほぼ同様となっている。
次に、指標作成部75cについて説明する。
図24は、第3実施形態に係る指標作成部の構成図である。なお、第1実施形態に係る指標作成部72cと同様な構成については、同一符号を付している。
第3実施形態の電力変換装置102は、コンバータ側の電位とインバータ側の電位とを共通の直流電圧検出器43,44で検出するため、コンバータ側P−N間直流電圧検出値とインバータ側P−N間直流電圧検出値との差を利用した指標201を使用することができない。そこで、指標作成部75cは、指標201に代えて新たな指標208を用いるために、指標作成部72cにおける第1指標作成部721に代えて、指標208を作成する第8指標作成部758を備える。なお、指標作成部75cは、指標202を作成する第2指標作成部722と、指標203を作成する第3指標作成部723と、指標204を作成する第4指標作成部724と、指標205を作成する第5指標作成部725と、指標206を作成する第6指標作成部726と、指標207を作成する第7指標作成部727とは、指標作成部72cと同様である。
本実施形態においては、直流電圧検出器43又は44のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標202から指標207の変化の方向との関係は、図26及び図27に示すようになる。
図26は、第3実施形態に係る指標の検出器異常に伴う変化を説明する第1の図であり、(a)は、直流電圧検出器43又は44のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標202の変化の方向を示し、(b)は、直流電圧検出器43又は44のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標203,204の変化の方向を示し、(c)は、直流電圧検出器43又は44のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標205の変化の方向を示す。
図27は、第3実施形態に係る指標の検出器異常に伴う変化を説明する第2の図であり、(a)は、直流電圧検出器43又は44のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標206、207の変化の方向を示し、(b)は、直流電圧検出器43又は44のいずれか一方が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標208の変化の方向を示す。
次に、第8指標作成部について説明する。
図25は、第3実施形態に係る第8指標作成部の構成図である。
第8指標作成部758は、指標208(=DI8)を算出する。指標208は、直流電圧検出器の異常時に、直流電圧検出器の検出値とコンバータ電流とを用いて求められる通過電力(第1通過電力、第1推定電力)と、交流電圧検出器の検出値とコンバータ電流とを用いて求められる通過電力(第2通過電力、第2推定電力)とに差が生じることを利用して、直流電圧検出器(43,44)の異常を検出するための指標であり、例えば、第1通過電力と、第2通過電力との差に関する指標(第1種指標)である。
第8指標作成部758は、第1通過電力推定部7581と、第2通過電力推定部7582と、指標演算部7583と、フィルタ7584とを含む。
第1通過電力推定部7581は、電圧検出器11の検出値、電流検出器7の検出値、及び変圧器12のインピーダンスに基づいて交流側接続点13の電圧値を算出し、算出された電圧値と、電流検出器7の検出値(電流値)との積を計算することにより、交流側接続点13の通過電力(第1通過電力、第1推定電力)を推定する。
第2通過電力推定部7582は、直流電圧検出器43及び44の検出値と、パルス生成器54から出力されるパルス信号とに基づいて交流側接続点13の電圧値を算出し、算出された電圧値と、電流検出器7の検出値との積を計算することにより、交流側接続点13の通過電力(第2通過電力、第2推定電力2)を推定する。
指標演算部7583は、第1通過電力推定部7581で推定された第1通過電力と、第2通過電力推定部7582で推定された第2通過電力2との差(指標208)を算出する。
式(51)又は式(52)の条件では、ET_CIP+ET_CIN>VDC_REFとなり、第1通過電力が第2通過電力より大きくなるため、指標208は正になる。また、式(53)又は式(54)の条件では、ET_CIP+ET_CIN<VDC_REFとなり、第1通過電力が第2通過電力より小さくなるため、指標208は負になる。
GCIP<1 ・・・(51)
GCIN<1 ・・・(52)
GCIP>1 ・・・(53)
GCIN>1 ・・・(54)
したがって、いずれか一つの直流電圧検出器が故障した場合において、異常のある直流電圧検出器と、ゲイン異常の方向と、指標208の変化の方向との関係は、図27(b)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器43において、ゲインGCIPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標208は、正となり(増加し)、ゲインGCIPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標208は、負となる(減少する)。また、直流電圧検出器44において、ゲインGCINが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標208は、正となり(増加し)、ゲインGCINが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標208は、負となる(減少する)。
指標208は、直流電圧検出器43と、直流電圧検出器44とのいずれに異常が発生しても、ゲインの変化方向が同じであれば、同じ方向の変化として現れる。
フィルタ7584は、指標演算部7583により算出された指標208におけるノイズを除去する。フィルタ7584の機能は、図4に示すフィルタ7212と同じである。
次に、設定記憶部75bに記憶され、異常判定部75eにより使用される異常判定表750について説明する。なお、異常判定表750は、ユーザインターフェースにより、入力または変更できるようにしてもよい。
図28は、第3実施形態に係る異常判定表の構成図である。なお、図28には、指標208の比較結果、及び指標202の比較結果を用いて、直流電圧検出器(43、44)の異常判定を行うための異常判定表を示している。
異常判定表750は、入力される指標208及び指標202の比較結果の取りうる組合せと、これら各組合せが入力された場合において出力すべき判定結果とが対応付けられている。判定結果としては、異常個所の情報と、特定の1つの直流電圧検出器に異常がある場合におけるゲイン異常の内容との情報が含まれる。異常個所の情報としては、或る特定の一つの直流電圧検出器を示す情報(異常な直流電圧検出器名)や、いずれかの直流電圧検出器であることを示す情報、異常個所がないことを示す情報等がある。
入力される指標の比較結果の組合せと、判定結果との対応関係は、図26(a)、(b)、(c)、図27(a)、(b)に示す指標の特性に基づいて決定することができる。
指標208と指標202とによると、比較結果によって、直流電圧検出器43又は44のいずれかが異常である場合に、異常のある一つの直流電圧検出器を特定することができる場合がある。
なお、図28に示す異常判定表750は、指標208及び指標202の比較結果の組合せと、判定結果とを対応付けていたが、本発明はこれに限られず、指標202の比較結果と、第2種指標(指標202、指標203、指標204、指標205、指標206、指標207)の少なくとも一つの指標の比較結果との組合せに対して、判定結果を対応付けるようにしてもよい。
次に、第4実施形態に係る電力変換システムについて図29乃至図32を用いて説明する。
図29は、第4実施形態に係る電力変換システムの全体構成図である。なお、図1に示す第1実施形態に係る電力変換システム1000と同様な構成については同一の符号を付す。
第4実施形態に係る電力変換システム1003の電力変換装置103は、第1実施形態に係る電力変換装置100において、インバータ2を2レベルインバータとし、コンバータ3を2レベルコンバータとし、コンバータ側の平滑コンデンサ(22、23)の電極間の電位と、インバータ側の平滑コンデンサ32、33の電極間の電位とを共通の直流電圧検出器27で検出するようにしたものである。
次に、異常判断器76について説明する。
図30に、第4実施形態に係る異常判断器の構成図を示す。
異常判断器76は、信号記憶部76aと、設定記憶部76bと、指標作成部76cと、比較部76dと、異常判定部76eと、設定変更部76fとを備える。なお、これら構成は、第1実施形態に係る異常判断器72の同一名の構成とほぼ同様となっている。
次に、指標作成部76cについて説明する。
図31は、第4実施形態に係る指標作成部の構成及び指標の検出器異常に伴う変化を説明する図である。図31(a)は、指標作成部の構成を示し、図31(b)は、指標の検出器異常に伴う変化を説明する図である。
指標作成部76cは、第1種指標算出部の一例としての第9指標作成部769を備える。第9指標作成部769は、第1通過電力推定部7691と、第2通過電力推定部7692と、指標演算部7693と、フィルタ769とを含む。なお、これら構成は、第3実施形態に係る第8指標作成部758の同一名の構成とほぼ同様となっている。以下には、第8指標作成部758と異なる点を中心に説明する。
第9指標作成部769は、指標208と類似した指標209(=DI9)を作成する。指標209は、直流電圧検出器の異常時に、直流電圧検出器の検出値とコンバータ電流とを用いて求められる通過電力(第1通過電力、第1推定電力)と、交流電圧検出器の検出値とコンバータ電流とを用いて求められる通過電力(第2通過電力、第2推定電力)とに差が生じることを利用して、直流電圧検出器27の異常を検出するための指標であり、例えば、第1通過電力と、第2通過電力との差に関する指標(第1種指標)である。
第9指標作成部769の第2通過電力推定部7692は、第8使用作成部758の第2通過電力推定部7582とは、直流電圧検出器27の検出値と、パルス生成器54から出力されるパルス信号と、電流検出器7の検出値とにより交流接続点13の第2通過電力を推定する点が異なっている。
直流電圧検出器27が故障した場合において、ゲイン異常の方向と、指標209の変化の方向との関係は、図31(b)に示すようになる。
具体的には、直流電圧検出器27において、ゲインGCIPが1より小さくなる異常が発生した場合には、指標209は、正となり(増加し)、ゲインGCIPが1より大きくなる異常が発生した場合には、指標209は、負となる(減少する)。
次に、設定記憶部76bに記憶され、異常判定部76eにより使用される異常判定表760について説明する。なお、異常判定表760は、ユーザインターフェースにより、入力または変更できるようにしてもよい。
図32は、第4実施形態に係る異常判定表の構成図である。なお、図32には、指標209の比較結果を用いて、直流電圧検出器27の異常判定を行うための異常判定表を示している。
異常判定部76eは、異常判定表760を用いて、指標209により、直流電圧検出器27の異常を適切に判定することができる。
次に、第5実施形態に係る電力変換システムについて図33を用いて説明する。
図33は、第5実施形態に係る電力変換システムの全体構成図である。なお、図20に示す第2実施形態に係る電力変換システム1001と同様な構成については同一の符号を付す。
第5実施形態に係る電力変換システム1004の電力変換装置104は、第2実施形態に係る電力変換装置101において、複数のインバータユニット3(3a、3b、3c、・・・)を備えるようにしたものである。
本実施形態においては、出力推定器74は、複数の直流電圧検出器25、26、35(35a、35b、35c、・・・)、36(36a、36b、36c、・・・)からの検出値に基づいて、異常となった直流電圧検出器の検出対象についての正確な検出値を推定する。第5実施形態においては、1つの異常となった直流電圧検出器の検出対象についての正確な検出値を推定する方法が以下に示すように複数存在する。
電力変換装置104においては、各直流電圧検出器が正常な状態であれば、コンバータ側の直流電圧検出器25、26との検出値を加算した合成直流電圧値と、それぞれのインバータ側の直流電圧検出器35(35a、35b、35c、・・・)、36(36a、36b、36c、・・・)の検出値を加算した合成直流電圧値とのすべてが一致するという関係がある。このことは、検出値を推定するために必要となる合成直流電圧値を得られる候補が、複数存在していることを示している。このように、合成直流電圧値を得られる候補が増えるので、異常な直流電圧検出器の検出対象の検出値を推定できる可能性を向上することができる。
本実施形態における出力推定器74によると、いずれか1つの直流電圧検出器が異常となった場合には、コンバータ側又はいずれかのインバータ側の健全な2つの直流電圧検出器の検出値を加算した合成直流電圧値から、異常となった直流電圧検出器と同じ側に配置されている健全な1つの直流電圧検出器の検出値を減算することにより、異常な直流電圧検出器の測定対象の正確な検出値を推定することができる。
これにより、例えば、いずれかのインバータ側の1つの直流電圧検出器が異常である場合であって、コンバータ側の一方の直流電圧検出器が異常である場合であっても、いずれかのインバータ側の2つの直流電圧検出器が健全であれば、この2つの直流電圧検出器の検出値を加算した合成直流電圧値を用いて、インバータ側の1つの異常な直流電圧検出器の検出対象についての正確な検出値を推定することができる。
この電力変換装置104においても、上記第1実施形態に係る電力変換装置100と同様な処理により、直流電圧検出器の異常を適切に判断することができる。また、電力変換装置104においても、上記第2実施形態に係る電力変換装置101と同様に、複数の健全な直流電圧検出器の検出値から、異常な直流電圧検出器の検出対象の検出値を適切に推定することができる。
なお、上記第5実施形態では、電力変換装置104を、複数のインバータユニット3を備えるようにしていたが、例えば、コンバータユニット2を複数備えるようにしてもよく、このようにしても、上記同様に、直流電圧検出器の異常を適切に判断することができ、また、複数の健全な直流電圧検出器の検出値から異常な直流電圧検出器の検出対象の検出値を適切に推定することができる。また、異常な直流電圧検出器の検出対象の検出値を推定するために必要となる合成直流電圧値を得られる候補を、いずれかのコンバータ側の2つの直流電圧検出器にまで拡げることができ、異常な直流電圧検出器の検出対象の検出値を推定できる可能性を向上することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、上記実施形態において異常判断器72と、出力推定器74とが行っていた処理の一部又は全部を、ハードウェア回路で行うようにしてもよい。
また、上記第1実施形態及び第2実施形態においては、電力変換装置が、異常判定表による異常判定に使用しない指標を作成する構成を備えている例を示していたが、本発明はこれに限られず、異常判定に使用しない指標を作成する構成については備えないようにしてもよい。
また、上記したいずれかの実施形態において、異常判断器(72、75,76)が、複数の運転時における指標1〜指標9のうち少なくとも1つの履歴(例えば、実行日時と各種指標)を記憶し、指標の履歴に基づいて、指標の変化を把握し、指標の変化又は複数の指標の変化の組み合わせが異常を判断するための所定の基準値を超えるまでの期間、すなわち、異常発生までの期間を予測し、その予測結果を表示器73に表示させるようにしてもよい。このようにすると、異常発生の時期を前もって把握することができ、異常発生の予防や、異常発生時の対応の準備を予め行うことができる。