[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係るコヒーレント光受信モジュールは、位相変調された信号光に局発光を干渉させることにより信号光に含まれる情報を復調する復調部と、復調部を収容する筐体と、筐体の外部から内部に導入され、復調部と光学的に結合される第1端面を有し、信号光を伝搬する第1光ファイバと、第1光ファイバと並んで筐体の外部から内部に導入され、復調部と光学的に結合される第2端面を有し、局発光を伝搬する第2光ファイバと、筐体内に収容され、第1光ファイバ及び第2光ファイバの各先端部を保持するキャピラリと、第1光ファイバの光軸上に配置されて信号光を平行化する第1レンズ、第2光ファイバの光軸上に配置されて局発光を平行化する第2レンズ、及び、第1レンズと第2レンズとを相互に固定する固定部を有するレンズアレイと、を備える。キャピラリは、レンズアレイと対向する端面を有し、該端面は、第1端面を含む第1領域及び第2端面を含む第2領域を含む。第1領域の法線ベクトルは第1光ファイバの光軸に対して傾斜しており、第2領域の法線ベクトルは第2光ファイバの光軸に対して傾斜している。そして、第1光ファイバの光軸及び第2光ファイバの光軸の双方と交差する仮想軸線に対する第1領域の傾斜の向きと第2領域の傾斜の向きとは、互いに逆向きである。
このコヒーレント光受信モジュールにおいては、第1光ファイバ及び第2光ファイバが筐体の外部から内部に導入されており、特許文献1に記載されたコネクタ構造に代えて、第1光ファイバ及び第2光ファイバの各先端部を保持するキャピラリが筐体内に収容されている。このような構成によれば、筐体側面から突出するコネクタ構造を省いてコヒーレント光受信モジュールを小型化することができる。また、第1光ファイバ及び第2光ファイバのそれぞれに対して設けられる第1レンズ及び第2レンズを固定部により一体化(アレイ化)しているので、第1レンズと第2レンズとの間隔を小さくすることができる。これにより、第1光ファイバと第2光ファイバとの間隔を小さくして、コヒーレント光受信モジュールを更に小型化することができる。
また、キャピラリにおいては、第1光ファイバの第1端面を含む第1領域の法線が第1光ファイバの光軸に対して傾斜しており、第2光ファイバの第2端面を含む第2領域の法線が第2光ファイバの光軸に対して傾斜している。これにより、第1端面及び第2端面における反射戻り光を抑制することができる。更に、第1光ファイバの光軸及び第2光ファイバの光軸の双方と交差する仮想軸線に対する第1領域の傾斜の向きと第2領域の傾斜の向きとは、互いに逆向きである。これにより、第1レンズと第1端面との距離、及び第2レンズと第2端面との距離を互いに等しくできるので、第1レンズ及び第2レンズの焦点距離が互いに等しい場合であっても、信号光及び局発光のいずれも拡散させることなく、共に平行化することができる。
上記のコヒーレント光受信モジュールにおいて、第1領域の法線ベクトルと第2領域の法線ベクトルとは互いに近づく向きを有してもよい。或いは、第1領域の法線ベクトルと第2領域の法線ベクトルとは互いに離れる向きを有してもよい。例えばこれらのうち何れかの構成によって、仮想軸線に対する第1領域の傾斜の向きと第2領域の傾斜の向きとを互いに逆向きとすることができる。また、第1領域の法線ベクトルと第2領域の法線ベクトルとが互いに近づく向きである場合、スネルの法則により、信号光及び局発光は互いに離れながらレンズアレイに達する。この場合、第1光ファイバと第2光ファイバとの間隔を更に小さくすることができ、コヒーレント光受信モジュールを更に小型化することができる。
上記のコヒーレント光受信モジュールにおいて、第1領域及び第2領域は、第1光ファイバ及び第2光ファイバの各光軸を含む仮想平面に対して垂直であってもよい。これにより、信号光及び局発光が該仮想平面に沿って進行でき、該仮想平面と交差する方向(例えば筐体の高さ方向)への信号光及び局発光の光路の移動(シフト)を抑制することができる。
上記のコヒーレント光受信モジュールにおいて、キャピラリ及びレンズアレイが、筐体に収容されたベース部材の搭載面上に配置され、搭載面と対向するキャピラリの面を基準とする第1光ファイバ及び第2光ファイバの各光軸の高さと、搭載面と対向するレンズアレイの面を基準とする第1レンズ及び第2レンズの各光軸の高さとが互いに等しくてもよい。これにより、高さ方向における各光ファイバと各レンズとの光軸調整を容易にすることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、各図面には、理解の容易のためXYZ直交座標系が示されている。
図1は、一実施形態に係るコヒーレント光受信モジュール(以下、単に光受信モジュールという)1Aの内部構造を示す平面図である。図2は、光受信モジュール1Aの光ファイバ導入部3を拡大した斜視図である。光受信モジュール1Aは、ICR(Integrated Coherent Receiver)と呼ばれ、位相変調された受信信号光(以下、信号光という)L1に局部発振光(以下、局発光という)L2を干渉させることにより、信号光L1に含まれる情報を復調する。復調された情報は、電気信号に変換され、光受信モジュール1Aの外部に出力される。
光受信モジュール1Aは、直方体状の中空の筐体2と、筐体2に固定される光ファイバ導入部3とを備える。筐体2及び光ファイバ導入部3は、互いに同一の材料によって構成されており、例えば、コバール製である。筐体2は4つの側壁を有する。筐体2の4つの側壁のうち、窓部2bを有する側壁2aには、Z方向に延びる中心軸を有する筒状の光ファイバ導入部3が設けられる。光ファイバ導入部3は、側壁2aから筐体2の外側に突出する。光ファイバ導入部3は、例えば、Z方向に延びる円筒状とされている。光ファイバ導入部3の側面3aには、Y方向を向く開口3bが設けられる。開口3bは、光ファイバ導入部3の内部に半田を入れるための孔であり、例えば、側面3aに対して傾斜する傾斜面3cを縁部に有する。
光ファイバ導入部3のZ方向を向く孔3d、及び側壁2aの窓部2bには、光ファイバアレイ5及び封止補材10が挿入されている。光ファイバアレイ5は、SMF7及びPMF8を含む。SMF7は、本実施形態における第1光ファイバであり、Z方向に沿って延在し、信号光L1を伝搬する。PMF8は、本実施形態における第2光ファイバであり、Z方向に沿って延在し、局発光L2を伝搬する。SMF7及びPMF8の光軸方向は、互いに平行である。SMF7は、窓部2bを介して筐体2の外部から内部に導入される。PMF8は、X方向にSMF7と並んで配置され、SMF7とともに窓部2bを介して筐体2の外部から内部に導入される。信号光L1及び局発光L2は、SMF7及びPMF8のそれぞれを介して筐体2の内部に入力される。
光受信モジュール1Aは、キャピラリ6A及びレンズアレイ25を更に備える。キャピラリ6Aは、筐体2の内部に収容され、SMF7及びPMF8の各先端部を保持する。キャピラリ6Aは、SMF7及びPMF8の光軸方向(Z方向)に沿って延在している。キャピラリ6Aの端面6aからは、SMF7及びPMF8の各端面が露出している。また、レンズアレイ25は、キャピラリ6Aに対してSMF7及びPMF8の光軸方向(Z方向)に位置し、キャピラリ6Aの端面6aと対向する。レンズアレイ25は、X方向に並ぶ2つのレンズを有する。一方のレンズは、SMF7と光学的に結合され、SMF7の端面から出力される信号光L1の光路上に配置され、信号光L1を平行化(コリメート)する。他方のレンズは、PMF8と光学的に結合され、PMF8の端面から出力される局発光L2の光路上に配置され、局発光L2を平行化(コリメート)する。キャピラリ6A及びレンズアレイ25は、筐体2の内部に収容されたベース部材39の平坦な搭載面39a上に搭載されている。なお、キャピラリ6A及びレンズアレイ25の詳細な構成については後述する。
光受信モジュール1Aは、信号光L1と局発光L2とを干渉させるマルチモード干渉(MMI:Multi-Mode Interference)素子21,22を更に備える。MMI素子21,22は、本実施形態における復調部の例であり、信号光L1に局発光L2を干渉させることにより信号光L1に含まれる情報を復調する。MMI素子21,22は、例えば、光90°ハイブリッドを内蔵する。MMI素子21,22は、共に筐体2の内部に収容されており、X方向に沿って互いに並置されている。
光受信モジュール1Aは、MMI素子21,22の各信号光入力端とSMF7とを光学的に結合する光部品として、上述したレンズアレイ25の他に、光分波器(Beam Splitter:BS)26と、偏波分離素子(Polarization Beam Splitter:PBS)23と、スキュー調整素子24と、全反射ミラー28と、半波長(λ/2)板27とを備える。BS26、PBS23、スキュー調整素子24、全反射ミラー28、及びλ/2板27は、筐体2の内部に収容され、ベース部材39の搭載面39a上に搭載されている。BS26は、レンズアレイ25の一方のレンズから信号光L1を受け、信号光L1を信号光L10とモニタ光M1に分離する。信号光L10はBS26を透過する。モニタ光M1は、BS26において反射され、信号光L1の進行方向と直交する方向に進む。モニタ光M1の光路上にはモニタ用PD34が設けられる。モニタ用PD34は、ベース部材39の搭載面39a上に搭載されたPDキャリア33の側面に固定されている。モニタ用PD34は、モニタ光M1を受光し、受光したモニタ光M1の強度に対応する電気信号を出力する。
PBS23は、BS26を透過した信号光L10の光路上に配置される。PBS23は、BS26と光学的に結合される光入射面を有し、信号光L10の一方の偏波成分(例えばX偏波成分であってXZ平面に含まれる成分)である信号光L11と、他方の偏波成分(例えばY偏波成分であってYZ平面に含まれる成分)である信号光L12とを分岐する。この分岐比は例えば50%である。一方の信号光L11は、PBS23を透過してMMI素子21の信号光入力端に向かう。他方の信号光L12は、進行方向をPBS23により90°変換され、全反射ミラー28に向かう。
スキュー調整素子24は、PBS23とMMI素子21の信号光入力端との間の光路上に配置されている。PBS23を透過した一方の信号光L11は、スキュー調整素子24を通過する。スキュー調整素子24は、例えば、Si製のブロック材である。スキュー調整素子24は、信号光L11の光路長を等価的に長くすることにより、光路長差に起因する一方の信号光L11に対する他方の信号光L12の位相遅れを補償する。信号光L11は、スキュー調整素子24を通過した後、レンズアレイ37によってMMI素子21の信号光入力端に集光される。PBS23によって分岐された他方の信号光L12は、全反射ミラー28によって進行方向を90°変換された後、MMI素子22の信号光入力端に向かう。
λ/2板27は、PBS23とMMI素子22の信号光入力端との間(本実施形態では全反射ミラー28とMMI素子22の信号光入力端との間)の光路上に配置されている。PBS23によって分岐された他方の信号光L12は、λ/2板27を通過する。λ/2板27は、信号光L12の偏光方向を90°回転する。よって、λ/2板27を通過した信号光L12の偏光方向は、PBS23を透過した信号光L11の偏光方向と一致する。信号光L12は、λ/2板27を通過した後、レンズアレイ38によってMMI素子22の信号光入力端に集光される。
光受信モジュール1Aは、MMI素子21,22の各局発光入力端とPMF8とを光学的に結合する光部品として、上述したレンズアレイ25の他に、偏光子31及び光分波器(Beam Splitter:BS)32を備える。また、上述したスキュー調整素子24及び全反射ミラー28は、更に、MMI素子21,22の各局発光入力端とPMF8とを光学的に結合する。偏光子31及びBS32は、筐体2の内部に収容され、ベース部材39の搭載面39a上に搭載されている。
偏光子31は、レンズアレイ25の他方のレンズと光学的に結合され、該他方のレンズから出力される局発光L2の光路上に配置されている。偏光子31は、局発光L2の偏光方向を整える。これにより、PMF8において維持されていた偏光方向が筐体2の組み立て時等にずれたとしても、0°又は90°の偏波成分のみを局発光L2として抽出できる。なお、局発光L2の光源が半導体LDである場合、通常では活性層に平行な成分の偏光が支配的な楕円偏光になる。しかしながら、半導体LDの発振安定性、材料的信頼性、所望の出力波長等を得るために、格子不整合による歪みが活性層に導入されていることがある。そのような半導体LDから出力されるレーザ光は、短軸長が比較的長い楕円偏光となる場合がある。そのような場合においても、偏光子31が、局発光L2を楕円偏光から所望の偏光方向(例えばXZ平面に含まれる方向)を有する直線偏光に変換する。
BS32は、偏光子31から出力される局発光L2を二分岐する。この分岐比は50:50である。分岐された一方の局発光L21は、BS32を透過してMMI素子21の局発光入力端に向かう。他方の局発光L22は、進行方向をBS32により90°変換された後、全反射ミラー28に向かう。スキュー調整素子24は、BS32とMMI素子21の局発光入力端との間の光路上に配置されている。BS32を透過した局発光L21は、スキュー調整素子24を通過する。スキュー調整素子24は、局発光L21の光路長を等価的に長くすることにより、光路長差に起因する局発光L21に対する局発光L22の位相遅れを補償する。局発光L21は、スキュー調整素子24を通過した後、レンズアレイ37によってMMI素子22の局発光入力端に集光される。
局発光L22は、進行方向を全反射ミラー28により90°変換された後、MMI素子22の局発光入力端に向かう。全反射ミラー28に反射された局発光L22は、レンズアレイ38によってMMI素子22の局発光入力端に集光される。
以上のように、筐体2の内部に入力された信号光L1及び局発光L2は、2つのMMI素子21,22のそれぞれに振り分けられる。MMI素子21,22は、例えば、インジウムリン(InP)製の半導体基板を用いたフォトダイオード(PD)集積型である。MMI素子21は、信号光L11と局発光L21とを互いに干渉させることにより、信号光L1の一方の偏波成分から、局発光L2の位相と同一である信号成分と、局発光L2とは位相が90°異なる信号成分とを抽出する。また、MMI素子22は、信号光L12と局発光L22とを互いに干渉させることにより、信号光L1の他方の偏波成分から、局発光L2の位相と同一である信号成分と、局発光L2とは位相が90°異なる信号成分とを抽出する。MMI素子21,22に集積されたPDは、これらの信号成分を電流信号に変換する。MMI素子21に集積されたPDは、筐体2の内部に設けられたアンプ35と電気的に接続されている。MMI素子21から出力された電流信号は、アンプ35によって電圧信号に変換される。また、MMI素子22に集積されたPDは、筐体2の内部に設けられたアンプ36と電気的に接続されている。MMI素子22から出力された電流信号は、アンプ36によって電圧信号に変換される。
キャピラリ6A及びレンズアレイ25の構造について詳細に説明する。図3は光ファイバアレイ5及びキャピラリ6Aを示す平面図であり、図4はキャピラリ6Aの端面6aを示す正面図である。図3に示されるように、SMF7及びPMF8は、Z方向に延びており、X方向に沿って並置されている。キャピラリ6Aは、SMF7及びPMF8の先端部を保持する。キャピラリ6Aは、例えばジルコニア又はガラス(ホウ珪酸ガラス若しくは石英等)によって構成されている。図4に示されるように、SMF7の光軸7b及びPMF8の光軸8bの方向から見たキャピラリ6Aの外形は、例えばX方向を長軸方向としY方向を短軸方向とする長円状である。そして、キャピラリ6Aの外周面は、Y方向に並ぶ一対の平坦面6b,6cを含む。平坦面6b,6cは、XZ平面に沿って延びており、互いに平行である。平坦面6bは、前述した搭載面39aと対向しており、接着剤を介して搭載面39aに固定される。
図4に示されるように、キャピラリ6Aには、Z方向に沿ってキャピラリ6Aを貫通する2つの貫通孔61,62が形成されている。貫通孔61,62は、X方向に沿って並んでいる。SMF7は貫通孔61に挿入されて樹脂接着剤により固定され、PMF8は貫通孔62に挿入されて樹脂接着剤により固定されている。キャピラリ6Aの端面6aからは、SMF7の端面7a、及びPMF8の端面8aが露出している。端面6aにおけるSMF7の端面7aの中心(光軸7b)とPMF8の端面8aの中心(光軸8b)との間隔D1は、例えば、250μm〜750μmの範囲内である。
端面6aは、2つの領域6a1及び6a2を含む。領域6a1は、本実施形態における第1領域である。領域6a2は、本実施形態における第2領域である。領域6a1及び6a2は、レンズアレイ25と対向しつつ、X方向に並んでいる。領域6a1は、SMF7の端面7aを含む平坦面からなる。領域6a1において、キャピラリ6Aの端面とSMF7の端面7aとは互いに面一である。また、領域6a2は、PMF8の端面8aを含む平坦面からなる。領域6a2において、キャピラリ6Aの端面とPMF8の端面8aとは互いに面一である。
図5は、キャピラリ6Aの端面6a付近を拡大して示す平面図である。図5には、SMF7の光軸7b及びPMF8の光軸8bの双方と交差する仮想軸線AXが示されている。一例では、仮想軸線AXは光軸7b,8bと直交しており、X方向に沿って延びている。領域6a1の法線ベクトルN1は、SMF7の光軸7bに対して傾斜している。言い換えると、領域6a1は仮想軸線AXに対して傾斜している。また、領域6a2の法線ベクトルN2は、PMF8の光軸8bに対して傾斜している。言い換えると、領域6a2は仮想軸線AXに対して傾斜している。法線ベクトルN1と光軸7bとの成す角(領域6a1と仮想軸線AXとの成す角)θ1、及び、法線ベクトルN2と光軸8bとの成す角(領域6a2と仮想軸線AXとの成す角)θ2は、0.1°〜10°の範囲内であり、例えば8°である。角度θ1及びθ2は、互いに等しい。
更に、仮想軸線AXに対する領域6a1の傾斜の向きと、領域6a2の傾斜の向きとは互いに逆向きとなっている。本実施形態では、領域6a1の法線ベクトルN1と領域6a2の法線ベクトルN2とは、互いに離れる向きを有する。すなわち、法線ベクトルN1,N2の各X方向成分は、Z方向に沿ったキャピラリの中心軸線とは反対側を向いている。従って、領域6a1の法線と、領域6a2の法線とのX方向における間隔は、端面6aから離れるに従って次第に大きくなる。その結果、端面6aは、Z方向に突出する、平面視で三角形状の凸部の表面を構成している。
また、領域6a1及び6a2は、2つの光軸7b,8bを含みXZ平面に沿った仮想平面AP(図4を参照)に対して垂直である。すなわち、領域6a1及び6a2は、平坦面6b及び6cに対して垂直である。その結果、領域6a1及び6a2は、ベース部材39の搭載面39aに対して垂直となる。
図6は、レンズアレイ25の正面図である。図6に示されるように、レンズアレイ25は、X方向に並ぶ2つのレンズ251,252と、レンズホルダ253とを有する。レンズ251は、本実施形態における第1レンズである。レンズ252は、本実施形態における第2レンズである。レンズ251,252は例えば凸レンズであり、樹脂、ガラス、若しくはシリコンからなる。レンズ251は、SMF7と光学的に結合され、信号光L1を平行化(コリメート)する。レンズ251の光軸251aと、SMF7の光軸7bとは互いに一致するように調整される。レンズ252は、PMF8と光学的に結合され、局発光L2を平行化(コリメート)する。レンズ252の光軸252aと、PMF8の光軸8bとは互いに一致するように調整される。レンズ251の中心(光軸251a)とレンズ252の中心(光軸252a)との間隔D2は、図4に示された間隔D1と等しい。
レンズホルダ253は、本実施形態における固定部の例であって、レンズ251とレンズ252とを相互に固定する。レンズホルダ253は、レンズ251,252と異なる材料により構成されてもよいし、或いは、レンズ251,252と同一の材料により構成され、レンズ251,252とともに一体成型されてもよい。レンズ251,252の各光軸251a,252aの方向から見たレンズホルダ253の外形は、例えばX方向を長軸方向としY方向を短軸方向とする長方形状である。そして、レンズホルダ253の外周面は、Y方向に並ぶ一対の平坦面25b,25cを含む。平坦面25b,25cは、XZ平面に沿って延びており、互いに平行である。平坦面25bは、前述した搭載面39aと対向しており、接着剤を介して搭載面39aに固定される。
図7は、キャピラリ6Aとレンズアレイ25とが互いに対向した状態を示す(a)平面図及び(b)側面図である。レンズ251とSMF7の端面7aとの距離は、レンズ251の焦点距離に等しい。同様に、レンズ252とPMF8の端面8aとの距離は、レンズ252の焦点距離に等しい。そして、レンズ251の焦点距離と、レンズ252の焦点距離とは互いに等しい。従って、レンズ251と端面7aとの距離と、レンズ252と端面8aとの距離とは互いに等しい。
SMF7を伝搬した信号光L1は、端面7aから出射する際、スネルの法則により、図5に示された角度θ1に応じた屈折角にて屈折する。同様に、PMF8を伝搬した局発光L2は、端面8aから出射する際、スネルの法則により、図5に示された角度θ2に応じた屈折角にて屈折する。上述した角度θ1,θ2が8°である場合、端面8aから出射した信号光L1及び局発光L2それぞれの光路は、SMF7の光軸7b及びPMF8の光軸8bに対して3.5°傾く。ここで、本実施形態では、領域6a1の法線ベクトルN1と領域6a2の法線ベクトルN2とが互いに離れる向きを有する。従って、信号光L1及び局発光L2の出射後の光路は、端面6aから離れるほど互いに近づく。そして、信号光L1及び局発光L2はレンズ251,252において再び屈折し、レンズ251,252通過後の信号光L1及び局発光L2は互いに平行となる。従って、レンズアレイ25を通過した後の信号光L1と局発光L2との中心間隔D3は、SMF7とPMF8との中心間隔D1よりも小さい。
また、前述したように、領域6a1及び6a2は、XZ平面に沿った仮想平面APに対して垂直である。従って、YZ平面内では、信号光L1及び局発光L2は端面7a,8aにおいて屈折せず、出射後もZ方向に沿って真っ直ぐに進む。なお、キャピラリ6Aの平坦面6bを基準とするSMF7,PMF8の各光軸7b,8bの高さH1と、レンズアレイ25の平坦面25bを基準とするレンズ251,252の各光軸251a,252aの高さH2とは、互いに等しい。これにより、平坦な搭載面39a上において、高さ方向(Y方向)のSMF7,PMF8とレンズ251,252との光軸調整を容易にすることができる。
以上に説明した本実施形態の光受信モジュール1Aによって得られる効果について説明する。この光受信モジュール1Aにおいては、SMF7及びPMF8が筐体2の外部から内部に導入されており、SMF7及びPMF8の各先端部を保持するキャピラリ6Aが筐体2内に収容されている。このような構成によれば、筐体2側面から突出するコネクタ構造を省いて光受信モジュール1Aを小型化することができる。また、SMF7及びPMF8のそれぞれに対して設けられるレンズ251及びレンズ252をレンズホルダ253により一体化(アレイ化)しているので、レンズ251とレンズ252との中心間隔D2を小さくすることができる。これにより、SMF7とPMF8との中心間隔D1を小さくして、光受信モジュール1Aを更に小型化することができる。また、キャピラリ6Aにおいては、SMF7の第1端面を含む領域6a1の法線がSMF7の光軸に対して傾斜しており、PMF8の第2端面を含む領域6a2の法線がPMF8の光軸に対して傾斜している。これにより、端面7a及び8aにおける反射戻り光を抑制することができる。
ここで、反射戻り光を抑制するために、例えば図12に示されるようにキャピラリ6Aの端面6aを仮想軸線AXに対して一方向に傾斜させることも考えられる。しかしながらこの場合、レンズ251と端面7aとの距離D4と、レンズ252と端面8aとの距離D5とが互いに異なることとなる。従って、レンズ251,252の焦点距離が互いに等しい場合には、図のように一方の光が発散してしまい、精度良く平行光とすることが困難となる。また、レンズ251,252の焦点距離を個別に設定することによりこのような問題を回避できるが、レンズアレイ25の加工が複雑化するとともに、レンズアレイ25を搭載面39a上に配置する際にレンズ251,252の位置関係を考慮しなければならず、組み立てが煩雑になる。これに対し、本実施形態では、仮想軸線AXに対する領域6a1の傾斜の向きと領域6a2の傾斜の向きとが、互いに逆向きとなっている。これにより、レンズ251と端面7aとの距離、及びレンズ252と端面8aとの距離を互いに等しくできるので、レンズ251,252の焦点距離が互いに等しい場合であっても、信号光L1及び局発光L2のいずれも拡散させることなく、共に平行化することができる。そして、レンズ251,252の焦点距離を互いに等しくすることにより、レンズアレイ25の加工が容易となり、また、レンズアレイ25を搭載面39a上に配置する際に2つのレンズの何れをレンズ251(252)としても良いので、組み立てを容易にできる。
また、反射戻り光を抑制するために、例えば図13の(a),(b)に示されるようにキャピラリ6Aの端面6aの法線を仮想平面APに対して傾斜させることも考えられる。しかしながらこの場合、信号光L1及び局発光L2は、端面7a,8aから出射する際にYZ面内において屈折する。その結果、レンズアレイ25を通過した後の信号光L1及び局発光L2の光路が、SMF7及びPMF8の各光軸7b,8bに対して仮想平面APと交差する方向すなわち筐体2の高さ方向(Z方向)に移動(シフト)してしまう。すると、レンズアレイ25の後段に配置される各光部品(図では光部品210として示す)の光軸も高さ方向に移動させる必要が生じ、筐体2の高さの増加、ベース部材39の分割による部品点数の増加、光軸設計の複雑化等の影響が生じる。これに対し、本実施形態によれば、領域6a1及び領域6a2を仮想平面APに対して垂直とすることができる。これにより、信号光L1及び局発光L2が仮想平面APに沿って進行でき、仮想平面APと交差する方向(筐体2の高さ方向)への信号光L1及び局発光L2の光路の移動(シフト)を抑制することができる。故に、筐体2の高さの増加を抑制し、また、ベース部材39の分割による部品点数の増加および光軸設計の複雑化を抑制することができる。
(変形例)
図8は、上記実施形態の一変形例に係る光受信モジュール1Bの内部構造を示す平面図である。光受信モジュール1Bは、上記実施形態のキャピラリ6Aに代えて、キャピラリ6Bを備える。光受信モジュール1Bの他の形態は上記実施形態と同様なので、詳細な説明を省略する。キャピラリ6Bと上記実施形態のキャピラリ6Aとの相違点は、端面6aの形状である。
図9は、本変形例のキャピラリ6Bの端面6a付近を拡大して示す平面図である。本変形例においても、領域6a1の法線ベクトルN1は、SMF7の光軸7bに対して傾斜している。また、領域6a2の法線ベクトルN2は、PMF8の光軸8bに対して傾斜している。そして、仮想軸線AXに対する領域6a1の傾斜の向きと、領域6a2の傾斜の向きとは互いに逆向きとなっている。法線ベクトルN1と光軸7bとの成す角θ1、及び法線ベクトルN2と光軸8bとの成す角θ2の大きさも、上記実施形態と同様である。領域6a1及び6a2は、2つの光軸7b,8bを含みXZ平面に沿った仮想平面AP(図4を参照)に対して垂直である。
但し、本変形例では、領域6a1の法線ベクトルN1と領域6a2の法線ベクトルN2とが、互いに近づく向きを有する。すなわち、法線ベクトルN1,N2の各X方向成分は、Z方向に沿ったキャピラリ6Bの中心軸線側を向いている。従って、領域6a1の法線と、領域6a2の法線とのX方向における間隔は、端面6aから離れるに従って次第に小さくなる。その結果、端面6aは、Z方向に窪む、平面視で三角形状の凹部の表面を構成している。
図10は、キャピラリ6Bとレンズアレイ25とが互いに対向した状態を示す(a)平面図及び(b)側面図である。本変形例においても、レンズ251とSMF7の端面7aとの距離は、レンズ251の焦点距離に等しい。同様に、レンズ252とPMF8の端面8aとの距離は、レンズ252の焦点距離に等しい。そして、レンズ251の焦点距離と、レンズ252の焦点距離とは互いに等しい。従って、レンズ251と端面7aとの距離と、レンズ252と端面8aとの距離とは互いに等しい。
SMF7を伝搬した信号光L1は、端面7aから出射する際、スネルの法則により、図9に示された角度θ1に応じた屈折角にて屈折する。同様に、PMF8を伝搬した局発光L2は、端面8aから出射する際、スネルの法則により、図9に示された角度θ2に応じた屈折角にて屈折する。本変形例では、領域6a1の法線ベクトルN1と領域6a2の法線ベクトルN2とが互いに近づく向きを有するので、信号光L1及び局発光L2の出射後の光路は、端面6aから離れるほど互いに離れる。そして、信号光L1及び局発光L2はレンズ251,252において再び屈折し、レンズ251,252通過後の信号光L1及び局発光L2は互いに平行となる。従って、レンズアレイ25を通過した後の信号光L1と局発光L2との中心間隔D3は、SMF7とPMF8との中心間隔D1よりも大きくなる。
本変形例によれば、上記実施形態による前述した効果に加えて、次の効果を奏することができる。すなわち、本変形例では、領域6a1の法線ベクトルN1と領域6a2の法線ベクトルN2とが互いに近づく向きを有するので、レンズアレイ25を通過した後の信号光L1と局発光L2との中心間隔D3を、SMF7とPMF8との中心間隔D1よりも大きくすることができる。レンズアレイ25を通過した後の信号光L1と局発光L2との間隔は、典型的にはMMI素子21の信号光入力端と局発光入力端との間隔に従う。故に、SMF7とPMF8との中心間隔D1を小さくすることができる。従って、光受信モジュールを更に小型化することができる。
また、光受信モジュール1Bを製造する際、PMF8において互いに直交する偏光方向のうち一方の偏光方向を平坦面6bと平行にすることが望ましいが、製造誤差等により、該偏光方向が平坦面6bに対して僅かに傾くことがある。図11の(a)は、端面6aの正面図であって、PMF8の偏光方向が平坦面6bに対して角度φだけ傾いた様子を示している。この場合、キャピラリ6Bをベース部材39に接着する際に該偏光方向が搭載面39aと平行になるように、キャピラリ6BをZ方向に沿った軸周りに角度φだけ回転させる(図11の(b))。すると、このキャピラリ6Bの回転により、SMF7の光軸7bの位置が変動してしまう。具体的には、光軸7bがY方向にD1・sinφだけ移動し、X方向にD1・(1−cosφ)だけ移動する。その結果、光軸7bとレンズ251の光軸251aとが僅かにずれてしまい、レンズ251とMMI素子21,22との光結合効率が低下してしまう。そして、SMF7とPMF8との中心間隔D1が大きいほど、SMF7の光軸7bの変動量が大きくなり、光結合効率がより低下する。本変形例によれば、上述したように中心間隔D1を小さくすることができるので、このような光結合効率の低下を小さく抑えることができる。
以上、本発明に係る光受信モジュールの実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。
上記実施形態及び変形例では、キャピラリ端面が第1領域及び第2領域のみによって構成される場合を例示したが、キャピラリ端面はこれら以外の領域(例えば仮想軸線AXに沿った領域)を含んでもよい。本発明では、第1領域は第1光ファイバの端面を含み、第2領域は第2光ファイバの端面を含んでいればよく、第1領域と第2領域との間若しくは第1領域及び第2領域の周辺に他の領域が設けられることを妨げない。他の領域は、平坦であってもよく、湾曲していてもよい。