JP2019191126A - 光レーダ装置 - Google Patents
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Abstract
Description
(光レーダ装置)
図1〜図11に基づき、本発明の実施形態1に係る光レーダ装置100の構成について説明する。以下では光レーダ装置100の前方方向をY軸、紙面垂直方向をZ軸とする右手座標系を用いて説明する。図1に示すように、光レーダ装置100は、対象物3にスポット状のパルス光1を照射するパルス光照射部110と、対象視野10内の対象物3からの反射光2を受光する受光系140からなる。
パルス光照射部110は、発光素子121と、駆動回路120(電源を含む)と、コリメータレンズ122と、スキャン部123とを有している。発光素子121はパルス光を発するものである。駆動回路120(電源を含む)はパルス発光素子121をパルス駆動するものである。コリメータレンズ122はパルス発光素子121が発するパルス光をスポット状に整形するものである。スキャン部123はスポット状のパルス光1を、X方向、Z方向に2次元的にスキャンすることで、垂直照射角θv、水平照射角θhの対象視野10全体を照射する為のものである。一般的にはX方向が水平方向、Z方向が垂直方向であるが、それに限定されない。
θz=―θv/2+Δθz・t (Δθz・Tm=θv)
光レーダ装置100から、対象物3までの距離をL、パルス光1の対象物3上での照射領域4の径をφ(L)とする。パルス光1の径φ(L)は、パルス発光素子121が実際に光を発する発光領域の大きさP(ニアフィールドで見た発光領域の最大径)と、パルス発光素子121の発散角ηと、コリメータレンズ122の焦点距離fcとによって、以下の様に記述できる。但し、ここでは、スキャン部123による、パルス光1の発散の変化は無視できると考える。
φ0=P+2・fc・tan(η/2)(=3.7mm)―(1式)
光レーダ装置100から遠方の距離Lの対象物3上でのパルス光1の照射領域4の径:
φ(L)=P・L/fc+φ0(=1003.7mm)―(2式)
括弧内はfc=20mm、η=10度、P=200μm、L=100mでの値を、一例として示した数字である。
パルス発光素子121の発する光は、遠方まで強度を落とさずに届く必要が有り、φ(L)は出来る限り小さいことが好ましい。遠方ではφ(L)の第1項が支配的である為、Pが小さく、焦点距離fcが長いことが好ましい。尚、遠方であるとは、2式の第2項が第1項に比べて十分小さい場合であることから、ここではφ0・fc/P/L<1/10が満たされる場合(第2項が第1項の1/10より小さく、第2項を無視しても誤差は10%程度である)と考える。上記例では、L>3.7mとなる。
駆動回路120は所定のタイミングでパルス発光素子121に、所定の電流を流し、パルス発光素子121をパルス発光させる。発光タイミングは制御部160からの信号によって決定される。電流量は可変であっても良く、制御部160によって制御しても良い。パルス光の発光時間を決定する電流の時間変化も同様である。パルス光1の発光強度は、対象視野内において、一般的には均一であるが、光強度が強い場所の検出感度が高くなる為、対象視野10内において、特に注視する必要が有る場所がある場合は、その付近において、強度を強くすることも可能である。例えば、道路の前方に当たる部分だけ、駆動電流を増やして、より遠方まで対象物3を検出すると言ったことが可能である。
スキャン部123は、ガルバノミラーや他の機械的ミラースキャン方式でも可能であるが、MEMS(Micro-Electro-Mechanical-System)ミラー素子、光学位相配置アンテナ素子、液晶偏向グレーティング等による非機械的スキャン方式を用いる事が好ましい。光レーダ装置100の耐衝撃性を改善する事で長期信頼性を向上し、小型化が容易となると言う利点が有る。スキャン部の具体的な構成に関しては、既に公知の技術である為、詳細は記述しない。以下では、MEMSミラー素子を例として説明する。MEMSミラー素子は、例えば電磁式であり、制御部160により流す電流量を制御することで、ミラーの振れ角を変更する。静電式や圧電式では、制御部160により印加する電圧を制御することで、ミラーの振れ角を変更できる。制御部160は、パルス光1が照射された対象物3からの信号を検出できる様に、ミラーの振れ角と受光系140を同期制御する。スキャン部123が他の方式であっても同様である。MEMSミラー素子では、ミラー面が平坦である限り、パルス光1の発散が大きくなることは無い。
受光系140は、少なくともToFセンサ153と、結像光学素子151と、光学バンドパスフィルター152と、制御部160と、受光系電源141とを含む。ToFセンサ153は飛行時間測定によって対象物までの距離を計測するものである。制御部160はToFセンサ153やパルス光照射部110を制御し、外部システム400とコミュニケーションするものであり、受光系電源141により受光系140に電源を供給する。
結像光学素子151は反射鏡でも構成できるが、一般的にはレンズである為、以下ではレンズの場合について説明する。結像光学素子151の焦点距離をfd、F値をFとする。結像光学素子151の有効開口径はfd/Fとなる。対象視野10の全体に対して、距離測定を行う為には、結像光学素子151によって、対象視野10全体が受光部154上に投影されなければならない。対象視野10が受光部154上に投影される大きさをIx、Izとすると、以下の関係がある
Ix=2・fd・tan(θh/2)
Iz=2・fd・tan(θv/2)
例えば、fd=24mm、θh=24度、θv=12度の場合には、Ix=10.2mm、Iz=5.0mmである。受光部154はX,Z方向にそれぞれ、Ix,Izより大きいことが好ましい(受光部154の好ましい大きさに関しては後述)。
=P・fd/fc + φ0・fd/L−(3式)(=0.24mm)
括弧内の数値はη=10度、fc=20mm、P=0.2mm、L=100m、fd=24mmの場合の値である。遠方では、Iφ(L)の第2項が無視できる為、Iφ(L)≒P・fd/fcである。即ち、遠方の対象物に関しては、距離Lに関係無く、パルス発光素子121の発光領域の大きさPと、結像光学素子151とコリメータレンズ122の焦点距離の比(fd/fc)で決まる一定値となる。従って、焦点距離fd、fcが桁違い違わない場合は、Iφ(L)は大凡Pのオーダーだと考えることが出来る。
z=−fd・tanθz−(5式)
ここで、4式の第2項は短距離では無視できない大きさである。例えば、D=20mm、fd=24mmとすれば、L=10mでW=48μm、L=2mでは、240μmであり、3式で示されたIφ(L)と同じオーダーの大きさとなる。即ち、図2に示す様に、同じパルス光1a(B(s,t))を照射しても、距離Lが異なる対象物3aと3dからの反射光2aと2dは、受光部154上では、異なる場所に投影領域4Aaと4Adを形成することとなる。
Z方向:Iz+Iφ(Lmin)+2・Rz−(7式)
Lminは最短測定距離である。Ix、Izはスキャンによって、投影領域4Aの中心が動く範囲を表し、Iφ(Lmin)は投影領域4Aの最大サイズを表し、D・fd/Lminは、最短距離での投影領域4Aの位置ずれを表している。2・Rxと2・Rzは光レーダ装置100の組立誤差を補正する為のマージンである。即ち、スキャン部123のスキャン中心軸と結像光学素子151の光軸の組立誤差が、X方向には±Rx、Z方向には±Rzである場合には、受光部154はX方向には2・Rx、Z方向には2・Rzだけ大きくして、マージンを持たせる必要がある。
受光部154の全面積は、投影領域4Aの面積に比べれば、遥かに大きい為、受光部154全体が活性化されていると、投影領域4A以外の部分に入射する光も検出してしまう。投影領域4A以外の部分に入射する光とは、照射領域4以外から来る、背景光の反射光であり、ノイズである。従って、SN比を高める為には、受光部154の内、投影領域4Aと重なる部分のみを活性化しなければならない。投影領域4Aに対して、受光部154内の活性化される領域を活性化領域5と呼ぶ。
光学バンドパスフィルター152は、受光部154の前面に設置されることが好ましい。パルス光1の波長を透過帯の中心波長として、数nmから数十nmの波長透過帯幅を持つ光学バンドパスフィルター152を加えることで、反射光2の内、パルス光1とは異なる背景光によって発生する成分を削減し、SN比を向上することが出来る。結像光学素子151に組み込んでも良いし、その前面に置いても良い。ToFセンサ153のパッケージ内に配置しても良い。
光レーダ装置100におけるToFセンサ153の構成を図4に示す。受光部154は、n行m列のアレイ状に配置されたSPAD(i,j)(SPAD:Single Photon Avalanche Diode:単光子雪崩増倍フォトダイオード)からなる。その詳細は後述するが、本実施形態では、個々のSPAD(i,j)は行単位、列単位で選択される。換言すれば、活性化領域5は、アレイ状の行と列単位で設定される。受光部154はパルス光1のスキャンに合わせて、投影領域4Aと重なる活性化領域5内のSPAD(i,j)のみを活性化することで、常に投影領域4Aを必要最低限のSPAD(i,j)でカバーできる。従って、不要な背景光を受光すること無く、SN比を高く保つことができ、最大測定距離を伸ばすことが出来る。
ToFセンサ153は活性化領域5に含まれる行、及び列を選択する回路として、列選択回路91及び行選択回路90を有している。SPAD(i、j)は、列選択線Cjによって、列選択回路91と接続し、行選択線Riによって、行選択回路92と接続している。活性化された列選択線Cjと行選択線Riに繋がるSPAD(i,j)のみが測定可能となり、入射するフォトンを検知するが、他のSPAD(i,j)は検知しない為、測定には全く寄与しない。従って、余分な背景光を検知することが避けられる。SPAD(i、j)は列信号線OCjによって、列カウンタCTjに接続されている。列カウンタCTjは接続されたSPAD(i,j)がフォトンを検知した際に発生するパルス数を加算するバイナリーカウンタであり、測定期間にj列のSPADが検知したフォト数の和Njを出力する。列カウンタCT1〜CTmは総和回路92に接続し、総和回路92の出力はToF計測ユニット93に接続している。測定期間が終わると個々の列カウンタCTjの出力が総和回路92に読み出される。総和回路92は各CTjの出力Njの総和ΣNj=N1+N2+・・・・Nmを計算し、結果をToF計測ユニット93へ出力する。この読み出し毎に、列カウンタCT1〜CTmと総和回路92はリセットされる。
SPAD(i,j)は図5に示す様に、フォトダイオードPD、トランジスタTr、パルス出力回路96を含む。フォトダイオードPDへは、行選択線Riより電源が供給される。Trのゲート電極には列選択線Cjが接続されており、Riが電源に接続し、CjがONに設定されたSPAD(i,j)のみが、フォトン検出モードとなり、活性化される。本実施例では非能動クエンチング方式であり、トランジスタTrのON抵抗がクエンチング用の抵抗を兼用している。能動クエンチングの場合は、別の回路構成となる。パルス出力回路96は、PDがフォトンを検出した場合に、一定時間幅のパルスをOCj上に出力する回路である。また図5では、トランジスタTrがPDのGND側に配置しているが、PDと高電圧電源の間に配置しても良い。TrもNMOSに限定されず、PMOSでも良い。
活性化すべきSPAD(i,j)の選択について、ある一定距離に置かれた試験体に対して行う場合について、図7〜9に示すフローに従って説明する。既に説明した様に、遠距離と短距離では、受光部154上での投影領域4Aの位置が異なる為、短距離と遠距離に於いて、活性化すべきSPAD(i,j)の選択を行い、両者の和領域を活性化領域とすることも出来る。しかし、短距離での投影領域4A全体をカバーしようとすると、活性化領域が広くなり、遠距離では背景光ノイズが増し、最大測定距離が短くなる場合が有る。従って、活性化領域5の設定は、最大測定距離を伸ばすことを重視するのか、短距離での対象部の測定精度をどの程度重視するか、等の要因に応じて、最適化しなければならない。
ステップF4では主に暗時のSPAD特性を評価する。詳細は図8に示す。
・まずユーザにより光レーダ装置100が組み立てられ(ステップF401)、電源が投入される(ステップF402)。G(1)〜G(m)は1ビットのメモリであり、G(j)=0であれば、j列は使用可能、G(j)=1であれば、使用不可を示す。後述のように、G(j)はメモリ95に格納される。
・次に光レーダ装置100において、初期状態では全てのG(j)が0に設定され、選択行を表すiは1に設定される(ステップF403)。
・次に行選択回路90によって、Siをオンとする(ステップF404)。
・まずステップF405において列選択回路91により列1を選択する。
・次にステップF406、F407において、G(j)=0であれば、列選択回路91によって、列選択線Cjが活性化される。
・次にステップF408からF411において、上記処理によりSPAD(i、j)が活性化され、暗時のパルス出力がCTjに積算される。そして光レーダ装置100において、積算数DCjが仕様値より大きいか、小さいかが判定される。大きい場合には、SPAD(i,j)は使用できない為、G(j)=1に設定される。小さければ問題無い為、選択列番号jに1を加算してF406へジャンプする。
・ステップF405からF411のループによって、i行について、全ての列がテストされると、次にステップF412からF413において、選択行iに1を加算して、次の行に移る為に、ステップF404へジャンプする。iがnより大きくなった時点で、ステップF413の分岐によって、テストが終了する。
続いて、B(s,t)に対応する、活性化領域5を選択するステップF5について、図9を基に説明する。各s、tの組について、Xa(s、t)、Xb(s、t)、Za(s、t)、Zb(s、t)を決定する。ここで、Xa(s、t)≦j≦Xb(s、t)のj列、及び、Za(s、t)≦i≦Zb(s、t)のi行が、B(s,t)照射時の活性化領域5となる。換言すると、ToFセンサ153は、活性化領域5を、スキャン方向毎(パルス光B(s,t)毎)に、1領域に設定する。
・まずユーザにより光レーダ装置100の電源を投入(ステップF501)後、各s、tについて、以下のフローが実行される。
・そしてステップF504からF507において、ステップF4の結果得られたG(j)を基に、G(j)=0を満たすj列についてのみ、列選択回路91がCjを活性化する。換言すれば、活性化領域5は不良部を含まない。行選択回路90は全てのスイッチSiをオンとする。この状態で、試験体にパルス光B(s,t)を照射し、反射光2を受光する。この時、活性化されたj列の列カウンタCTjには、反射光2によるフォトン検出数が記録されている。
・まずステップF508ではj=1、Xa(s,t)=0に初期設定する。
・次にステップF509ではステップF4のテストをパスしたj列のみが選択される。
・次にステップF510ではCTjのカウント数Njが読み出される。
・次にステップF511ではNjが仕様値より小さい場合には、次のF512において、Xa(s、t)=0か否かの判定を受ける。Yesの場合は、まだまだ活性化すべき列に達していない為、F515に進み次の列へ進む。Noの場合には、活性化すべき列に達した後に、再度、活性化すべきでない列に達したと見做せる為、F517でXb(s,t)を設定し、F520へ進む。F511ではNjが仕様値より大きい場合には、次のF513において、Xa(s、t)=0か否かの判定を受ける。Yesの場合は初めて活性化すべき列に達したと考えられる為、F514でXa(s、t)=jと設定し、F515を経て、次の列に進む。Noの場合は、活性化領域5内にあると見做せる為、F515を経て、次の列に進む。F515では選択列番号jに1を加えて、選択列番号jがm以下の場合(F516)には、F509へジャンプする。この様にして、ダークカウント数の所定の数よりも多いことが無く、反射光2を検知できる列の範囲がj=Xa(s、t)から、j=Xb(s、t)までと定められる。
・まずステップF520において行選択回路90により初期設定で選択行i=1、Za(s,t)=0と設定する。
・次にステップF521において行選択回路90によりこれまでのテストで得られたG(j)、Xa(s、t)、Xb(s、t)を基に、G(j)=0を満たし、Xa(s、t)≦j≦Xb(s、t)である列のみを活性化する。
・まずステップF522からF524において、行選択回路90によって、選択されたi行のスイッチSiのみをオンし、試験体にパルス光B(s,t)を照射し、反射光2を受光する。
・次にステップF525において、各列の列カウンタCTjの積算値Njを読み出し、総和回路92によってΣNjを計算する。
・次にステップF526においてΣNjが仕様値より大きいか、小さいかを判定する。ΣNjが仕様値より小さい場合には、次のF527において、Za(s,t)=0か否かの判定を受ける。Yesの場合は、まだまだ活性化すべき行に達していない為、F530に進み次の行へ進む。Noの場合には、活性化すべき行に達した後に、活性化すべきでない行に、再度達した見做せる為、F533においてXb(s,t)を設定し、F534へ進む。F526ではΣNjが仕様値以上である場合には、次のF528において、Za(s,t)=0か否かの判定を受ける。Yesの場合は初めて活性化すべき行に達したと考えられる為、F529でZa(s,t)=iと設定し、F530を経て、次の行に進む。Noの場合は、活性化領域5内であると見做せる為、F530を介して、次の行に進む。F530では行択列番号iに1を加えて、選択行番号iがn以下の場合(F531)には、F522へジャンプする。この様にして、反射光2を検知できる行の範囲がi=Za(s,t)から、i=Zb(s,t)までと定められる。
次に、ToF計測ユニット93による飛行時間(ToF)の決定方法の一例を説明する。1回のパルス光B(s,t)の発光に対して、パルス光B(s,t)の発光から、ΔT毎に計測した反射光2の測定値N(0)、N(1)、・・・・N(lm)がToF計測ユニット93にメモリされる。ここで、ΔTはパルス光B(s,t)のパルス幅の半分に設定されているとする。N(l)の一例を図11に示す。N(l)の大半は背景光による信号であり、背景光による信号レベルNbを超えた信号が対象物3よりのパルス光1の反射光である。但し、測定値N(l)は図11に示される様に、ポアソン分布に従う為、バラツキが大きく、背景光の信号レベルNbを決定するには注意を要する。Nbは次の様に決定される。N(l)の平均値<N>をまず求める。ポアソン分布では分散が平均値の平方根に等しい為、Nbは<N>+α・√<N>とすることが出来る。αは3から5程度の定数であり、図11の例では、<N>=4.0であり、最大値14はα=5に対応する。一方で、例えばα=3とすれば、Nb=11となり、信号数12以上の2点が排除できない。しかし、パルス光1の反射光2の信号強度が弱く、信号強度が12しかない対象物3に対しても、対象物と認識できる。従って、多少ノイズを拾っても、対象物の可能性が有る物を、幅広く検出しようとする場合と、ノイズの可能性が有るものは出来る限り排除し、確実に対処物である物だけを検出しようとする場合では、αの値を変更すれば良い。この様に、ToF計測ユニット93はメモリされた一連のN(l)から、背景光レベルNbを決定し、Nbを越える信号を対象物として抽出し、その飛行時間を求める機能を有する。上記説明では、1回のパルス発光について説明したが、複数回のパルス発光の測定を積算し、その結果をN(l)とする場合も同様である。
これらの部分に関しては、公知の技術が適用できる為、詳述しない。
以下の構成で、効果を検証した。パルス発光素子121の発光波長905nm、ピークパワー31W、パルス幅6nsecである。端面発光レーザチップの発光領域の大きさは、P=200μm、U=10μmであった。ニアフィールドでの光の発散角度をX方向10度、Z方向共に25度であった。コリメータレンズ122の焦点距離は20mm(fc)である。コリメータレンズ122を出たパルス光の発散角は、Z軸方向に±0.014度、X方向に±0.286度であった。そこで、θh=24度、θv=12度、Δθz=Δθx=0.6度として、Sm=40、Tm=20とした。
次に、光レーダ装置100から、20m離れた点に、白色の壁を対象物として、パルス光B(s,t)を、s=0〜40、t=0〜20の範囲で照射し、図9に示す列、行の選択工程を各s、tの組合せについて行った。尚、試験体の設置位置は、出来る限り遠方であることが好ましい。可能で有れば、最大測定距離に近いことが好ましい。そうすることで、最大測定距離付近で有効な活性化領域5を特定できる。この工程は暗所で行う。
前記試験体を光レーダ装置100から200mの位置に置き、飛行時間を測定した結果を図11に示す。測定は7月の良く晴れた日に行ており、背景光は非常に強い。背景光によるフォトンカウント数は最大14個、平均は4.0個であった。200mの距離に於いても、最大背景光信号より、十分大きな信号が得られた。繰り返し測定では、試験体からの信号は、平均26.7個、最大36個、最少16個であった。従って、本構成での最大測定距離として、大凡200mが可能である。また、2mの最短距離でも、問題無く対象物を検出することが出来た。
本実施形態は、実施形態1に対して、ToFセンサ153の構成が異なり、それ以外は実施形態1と同じである。
本構成におけるToFセンサ153aは、ToFセンサ153と同様に、図4の構成を有しており、SPADa(i,j)及びそのアレイ構成、特に行選択部90aの構成が異なる。本実施例のアレイ構成は図12に示す様に、SPADa(i,j)が電源線VSPAD、行選択線Ri、列選択線Cj、列信号線OCjに接続されている。SPADa(i,j)は図13に示す様に、フォトダイオードPD、トランジスタTr、パルス出力回路96を含む点において、実施形態1(図5のSPAD(i,j))と同じである。大きな相違点は、フォトダイオードPDを検出モードにするトランジスタTrのゲート電極の制御法にある。
図14はF4に相当する暗時SPAD特性評価である。
・まずユーザにより光レーダ装置100aが組み立てられ(ステップFa401)、電源が投入される(ステップFa402)。K(i,j)は1ビットのメモリであり、K(i,j)=0であれば、SPADa(i,j)は使用可能、K(i,j)=1であれば、使用不可を示す。また、K(i、j)ははメモリ95に格納される。
・次に光レーダ装置100aにおいて、初期状態で選択行を表すiは1に設定される(ステップFa403)。
・次に行選択回路90によって、行選択線Riを活性化する(ステップFa404)。
・まずステップFa405において列選択回路91により列1を選択する。
・次にステップFa406からFa414において、列選択回路91によって、列選択線Cjが活性化される(Fa406)。これによりSPADa(i,j)が活性化され、暗時のパルス出力がCTjに積算される(Fa407)、積算数DCjが仕様値より大きいか、小さいかが判定される(Fa408)。大きい場合には、SPADa(i,j)は使用できない為、K(i,j)=1に設定される(Fa409)。小さければ問題無い為、K(i,j)=0に設定される(Fa410)。選択列番号jに1を加算して(Fa411)、Fa406へジャンプする。Fa404からFa412のループによって、i行について、全ての列がテストされると、選択行iに1を加算して(Fa413)、次の行に移る為に、Fa404へジャンプする。iがnより大きくなった時点で、Fa414の分岐によって、テストが終了する。
活性化領域5aを設定するフローF5について、図15を基に説明する。試験体等の配置や測定条件は、実施形態1と同じである。パルス光B(s,t)に対応する活性化領域5aを設定する為にパラメータQ(i,j,s,t)を用いる。例えば、Q(i,j,s,t)=1であれば、パルス光B(s,t)において、SPADa(i,j)は活性化領域5aに含まれ、Q(i,j,s,t)=0であれば、含まれないことを示す。
・まずユーザにより光レーダ装置100aの電源を投入し(ステップF701)、以下の工程が全てのs、tの組合せについて、実行される。
・そしてステップF704からF706において、初期状態で選択行を表すiは1に設定され(F704)、j=1に設定し(F705)、更にQ(i、j、s、t)=1に設定し(F706)、全てのjについて、受光量のチェックを行う。
・そして、ステップF4の結果得られたK(i,j)を基に、K(i,j)=1であるj列のSPADcについては、ダークカウント不良が有る為、受光量のチェックは行わず、F713へジャンプし、Q(i、j、s、t)=0に設定される。K(i,j)=0の場合には、行選択回路90と列選択回路91により、行選択線Riと列選択線Cjを活性化する(F708)。この状態で、試験体にパルス光B(s,t)を照射し(F709)、反射光2を受光する(F710)。この時活性化されたj列の列カウンタCTjには、反射光2によるフォトン検出数が記録されている。
・次にステップF711ではCTjのカウント数Ljが読み出され、F712ではLjが仕様値より小さい場合には、活性化領域5aに属さない為、Q(i、j、s、t)=0とする(F713)。これにより反射光2が到達しないSPADa(i,j)を除外することが出来る。
・次にステップF714でjに1を加え(F714)、選択列番号jがm未満の場合(F715)には、F706へジャンプする。この様にして、ダークカウント数の所定の数よりも多いことが無く、反射光2を検知できる列が選択され、Q(i、j、s、t)にその結果が記録される。
・次に全てのj列のチェックが終了すると、行番号iに1を加え(F716)、i<nである限り、F705へジャンプする。この様にして、全てのSPADa(i,j)の受光量が測定され、仕様で定められた値以上の受光量のあるSPADa(i,j)だけが選び出される。Q(i、j、s、t)はメモリ95に蓄えられ、B(s,t)が発光する前に、記憶回路M(i,j)に書き込まれる。
z=−fd・tanθz
(実施例及び効果の説明)
実施形態1の構成と類似の構成によって効果を検証した。相違点のみ記す。まず、パルス発光素子121の直ぐ前方にロッドレンズを配置し、発散角を10度に抑え、光レーダ装置100aの直近では、パルス光1bの断面形状は円形に近付けた。その結果、投影領域4AのZ軸方向の広がりが減少した。
次に、光レーダ装置100aから、20m離れた点に、白色の壁を対象物として、パルス光B(s,t)を、s=0〜40、t=0〜20の範囲で照射し、図15に示す列、行の選択工程を各s、tの組合せについて行った。平均的な受光結果例を図16に示す。ハッチングした部分が、ピーク強度に対して30%以上の強度を有するSPAD(i,j)である。これに対して、活性化領域5は黒枠線の内部とした。右側に拡大し、左側を拡大しなかった理由は実施形態と1と同様である。活性化領域5に含まれる平均的なSPAD数は108個であった。
本実施形態は、実施形態1に対して、ToFセンサ153bの構成が異なり、それ以外は実施形態1と同じである。
本構成におけるToFセンサ153bは、図18の構成を有している。図18に示すように、本実施形態では、受光部の活性化領域が2個に分割されている。即ち、互いに重ならない遠距離測定に適した活性化領域5fと、近距離測定に適した活性化領域5nとが各パルス光B(s,t)に対応して設定される。換言すれば、遠距離測定に適した活性化領域5fと、近距離測定に適した活性化領域5nとがスキャン方向に応じて設定される。活性化領域を規定するパラメータQ(i、j、s、t)が2組設定される。例えば、Q(i、j、s、t、u)と記し、u=f又はnによって、活性化領域5fと5nを区別する。パルス光B(s,t)の活性化領域5fと5nは互いに重ならない。即ち、Q(i、j、s、t、f)=Q(i、j、s、t、n)=1となることは無い。
(効果の説明)
2個の活性化領域と2個のToF測定系を並列して動かすことで、対象物が遠方にある場合も、近傍にある場合にも、高精度の飛行時間測定が可能となる。特に、遠距離と短距離の信号処理を分割することで、それぞれの飛行時間測定アルゴリズムを最適化することで、測定パフォーマンスを向上することが出来る。
受光部154上での活性化領域5fと5nの関係を図17及び18に示す。ここでは、水平方向の分解能を高める為に、端面発光レーザ素子の活性層をZ軸と平行に配置し、照射領域4及び投影領域4AがZ軸方向に伸びた楕円状になる場合を示している。また、光レーダ装置100bの近傍でのパルス光1はほぼ円形に整形されている場合を扱っている。図17に示す様に、最大測定距離Lmaxにある対象物3fからの反射光2fは、投影領域4Afとして投影される。その径と中心座標は下記の様に表される。Iφf(L、z)とIφf(L、x)は、それぞれ、長径の長さ(Z軸方向)、短径の長さ(X軸方向)を表している。
Iφf(Lmax、x)≒U・fd/fc−(3式より)
xf≒−fd・tanθx−(4式より)
zf=−fd・tanθz−(5式より)
一方、最小測定距離Lminにある対象物3nからの反射光2nは、投影領域4Anとして投影され、その径と中心座標は下記の様に表される。
Iφn(Lmin、x)=U・fd/fc + φ0・fd/Lmin−(3式より)
xn=−fd・tanθx−D・fd/Lmin−(4式より)
zn=−fd・tanθz−(5式より)
即ち、投影領域4Afに対して、投影領域4AnはX軸負方向(受光系140に対して、パルス光照射部110がある方向の反対方向)にD・fd/Lminだけシフトし、径はφ0・fd/Lminだけ大きくなっている。対象物3が最大測定距離Lmaxから最小測定距離Lminまで動くとすると、投影領域4Aの中心は、投影領域4Afの中心から、投影領域4Anの中心まで移動する。移動距離は、大凡、D・fd/Lminである。投影領域4Aの径は、φ0・fd/Lminだけ拡大する。
ΔXn=α・U・fd/fc+D・fd/Lmin―D・fd/Lb−(9式)
ここでαは1から3程度の、定数である。投影領域4Aの大きさは半値幅である為、活性化領域は投影領域4Aの半値幅よりは大きくなる為、その差を補正する為の定数である。実際の活性化領域5fと5nの幅は、SPAD(i,j)の大きさの整数倍に合せなければならない為、ΔXfとΔXnの値はSPAD(i,j)サイズの整数倍に調整される。αの値は、投影領域4Aの光強度分布やSPAD(i,j)の大きさによって決まるが、ここではα=1.75とする。Lbとしては、例えば、最大測定距離Lmaxに対して、受光強度が1桁上がる距離Lb=Lmax/√10を設定する。Lmax=100m、Lmin=1m、U=10μm、fd=24mm、fc=20mm、D=20mmの場合、Lb=31.6m、ΔXf=35μm、ΔXn=483μmとなる。
活性化領域5fと5nの設定方法の一例を以下に説明する。まず最大測定距離に試験体を置き、パルス光B(s,t)を照射し、実施形態2で述べた方法に従って、活性化領域5pを決定する。その後、距離Lbに試験体を置き、同様に活性化領域5qを決定する。更にその後、距離Lminに試験体を置き、同様に活性化領域5rを決定する。そして、活性化領域5fとしては、活性化領域5p全体を含み、活性化領域5qの中央までを含む様に設定する。活性化領域5nは活性化領域5qの中央から、活性化領域5rの中央まで含む様に設定する。
本発明の態様1における光レーダ装置(100)は、対象視野(10)内に対して、パルス光(1)をスキャンするように照射するパルス光照射部(110)と、対象視野(10)に存在する対象物(3)に反射されるパルス光(1)の反射光(2)を受光する受光系(140)とを備える光レーダ装置(100)であって、受光系(140)は、少なくとも結像光学素子(151)と、受光部(154)を有するToFセンサ(153)とを有し、結像光学素子(151)により対象視野(10)が受光部(154)に投影され、ToFセンサ(153)は、パルス光(1)のスキャンに応じて、受光部(140)の一部に活性化領域(5)を設定し、活性化領域(5)からの信号を用いて対象物(3)までの距離を測定する。
2、2a、2b、2c、2d 反射光
3,3a、3b、3c、3d 対象物
4、4a、4b、4c,4d 照射領域
4A、4Aa、4Ab、4Ac、4Ad、4An,4Af 投影領域
5、5a、5n、5f 活性化領域
10 対象視野
90 行選択部
91 列選択部
92、92b、92c 総和回路
93、93b、93c ToF計測ユニット
94 制御回路
95 メモリ
100、100a、100b 光レーダ装置
110 パルス光照明部
120 駆動回路
121 パルス発光素子
122 コリメータレンズ
123 スキャン部
141 受光系電源
151 結像光学素子
152 光学バンドパスフィルター
153 ToFセンサ
154 受光部
160 制御回路
400 外部システム
Claims (13)
- 対象視野内に対して、パルス光をスキャンするように照射するパルス光照射部と、
前記対象視野に存在する対象物に反射される前記パルス光の反射光を受光する受光系とを備える光レーダ装置であって、
前記受光系は、
少なくとも結像光学素子と、
受光部を有するToFセンサと
を有し、
前記結像光学素子により前記対象視野が前記受光部に投影され、
前記ToFセンサは、
前記パルス光のスキャンに応じて、前記受光部の一部に活性化領域を設定し、
前記活性化領域からの信号を用いて前記対象物までの距離を測定する
ことを特徴とする光レーダ装置。 - 前記パルス光照射部は、前記対象視野内に対して、前記パルス光を二次元的にスキャンするように照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の光レーダ装置。 - 前記パルス光照射部は、非機械的なスキャン部を有している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光レーダ装置。 - 前記ToFセンサは、前記活性化領域を、スキャン方向毎に、1領域に設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光レーダ装置。 - 前記ToFセンサは、前記活性化領域を、各スキャン方向に対して複数設定し、前記複数の活性化領域は互いに重複しない
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光レーダ装置。 - 前記ToFセンサは、前記複数の活性化領域に一対一に対応する、複数のToF測定系を有している
ことを特徴とする請求項5に記載の光レーダ装置。 - 前記ToFセンサにより設定される前記複数の活性化領域は、少なくとも遠距離用と近距離用の2種類を含む
ことを特徴とする請求項5または6に記載の光レーダ装置。 - 前記ToFセンサは前記活性化領域を予め記憶している
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光レーダ装置。 - 前記活性化領域は不良部を含まない
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光レーダ装置。 - 前記受光部は、アレイ状に配置されたSPADからなる
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光レーダ装置。 - 前記活性化領域は、前記アレイ状の行と列単位で設定される
ことを特徴とする請求項10に記載の光レーダ装置。 - 前記活性化領域は、前記SPAD毎に設定される
ことを特徴とする請求項10に記載の光レーダ装置。 - 前記ToFセンサは前記SPADからのパルス出力を加算するバイナリーカウンタを有している
ことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の光レーダ装置。
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