本発明の一実施の形態に係る自動変速機は、摩擦クラッチおよび変速機を収納する変速機ケース本体と、摩擦クラッチと駆動力源との間に配置されるトルクコンバータを収納するトルクコンバータハウジングと、を有する変速機ケースを備え、トルクコンバータハウジングが、変速機ケース本体と連結される合わせ面を有する自動変速機であって、トルクコンバータハウジングは、トルクコンバータを外周側から囲む周壁と、周壁の内面に接続して設けられ、トルクコンバータと摩擦クラッチの間で回転軸を支持する隔壁とを有し、隔壁は、合わせ面の面を越えて変速機ケース本体の内部に膨出していることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る自動変速機は、変速機ケースの剛性を向上させて軽量化することができる。
以下、本発明の一実施例に係る自動変速機について、図面を用いて説明する。図1から図9は、本発明に係る一実施例の自動変速機を示す図である。図1から図9において、上下前後左右方向は、車両の搭載状態での方向であって、車両の進行する方向を前、後退する方向を後とし、車両の幅方向が左右方向、車両の高さ方向が上下方向である。また、車両の幅方向を車幅方向ともいう。
まず、構成を説明する。図1、図2において、車両1には自動変速機2が搭載されており、自動変速機2は、駆動力源および内燃機関としてのエンジン3に固定された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。すなわち、本実施例の自動変速機2は、回転軸(タービン軸11、入力軸21、出力軸22、カウンタ軸23)を車両の前後方向に沿って配置している。そして、車両1は、後輪駆動車両である。
自動変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、トルクコンバータハウジング(以下、単にトルコンハウジングという)5と、フロントケース6と、リヤケース7と、エクステンションケース8とを備えている。変速機ケース4の前端部(詳細には、トルコンハウジング5の前端部)は、図示しないボルトによってエンジン3に接続されている。変速機ケース4のうち、トルコンハウジング5を除くフロントケース6、リヤケース7及びエクステンションケース8は、変速機ケース本体40を構成する。すなわち、変速機ケース4は、トルコンハウジング5と変速機ケース本体40とからなる。
自動変速機2はシフトユニット100を備えており、このシフトユニット100は、自動変速機2のシフト操作およびクラッチ操作を行うように駆動する。ここで、シフト操作とは、自動変速機2の変速段を切り替える操作をいい、クラッチ操作とは、自動変速機2の摩擦クラッチ17(図3参照)を係合(接続)または解放(切断)する操作をいう。
図3において、トルコンハウジング5にはトルクコンバータ10が収容されている。トルクコンバータ10は、エンジン3の図示しないクランク軸に連結されるフロントカバー10Aと、フロントカバー10Aに連結されたシェル10Bとを備えており、エンジン3から自動変速機2にオイルを介して動力を伝達している。
シェル10Bの内面には、図示しないポンプインペラが固定されている。シェル10Bの内部には、図示しないタービンランナがポンプインペラに対向して設置されており、タービンランナは、タービン軸11に連結されている。ポンプインペラとタービンランナとの間には図示しないステータが設置されている。
エンジン3のクランク軸が回転すると、トルクコンバータ10において、フロントカバー10A、シェル10Bおよびポンプインペラが一体で回転する。このとき、ポンプインペラの回転による遠心力によって、トルクコンバータ10の内部の流体に、ポンプインペラからタービンランナに向かう流れが生じる。ステータは、タービンランナからの流体の流れをポンプインペラの回転方向に沿うように変換する。トルクコンバータ10は、エンジン3から受け取った動力をトルク増幅作用により増幅されてタービン軸11から出力する。
フロントカバー10Aの外周部にはドライブプレート10Cが設けられており、ドライブプレート10Cの外周面にはリングギヤが形成されている。ドライブプレート10Cは、エンジン3の始動時に図示しないスタータとリングギヤが噛み合うことにより、スタータの回転をエンジン3に伝達する。
トルコンハウジング5は、トルクコンバータ10を外周側から囲む周壁51と、この周壁51の内面に接続して設けられ、トルクコンバータ10と摩擦クラッチ17の間でタービン軸11を支持する隔壁55とを有している。周壁51にはスタータが装着される装着孔5Bが設けられている。
隔壁55は、トルコンハウジング5の内部でトルクコンバータ10を収容するトルコン室81とフロントケース6の内部で摩擦クラッチ17を収容するクラッチ室82とを仕切っている。タービン軸11は、隔壁55に形成された軸受部において軸受38Aを介して回転自在に支持されている。
トルコンハウジング5にはオイルポンプ12が取付けられている。オイルポンプ12は、トルコンハウジング5の内部空間に配置されており、オイルポンプ12は、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されている。オイルポンプ12はポンプハウジング12Aを備えており、ポンプハウジング12Aは第1ポンプハウジング13と第2ポンプハウジング14で構成されている。第2ポンプハウジング14は、図示しないボルトによって隔壁55に固定されている。第1ポンプハウジング13は、図示しないボルトによって第2ポンプハウジング14に締結されている。第1ポンプハウジング13および第2ポンプハウジング14はオイルポンプ12の筐体を構成している。第1ポンプハウジング13と第2ポンプハウジング14との間にはポンプ室15が形成されており、ポンプ室15には図示しないインナロータおよびアウタロータが配置されている。インナロータは、タービン軸11が貫通した状態で取付けられており、シェル10Bに係合してシェル10Bと一体で回転する。
アウタロータは、インナロータの周囲でインナロータの半径方向外方に配置されており、インナロータの回転に伴って回転する。トロコイド式のオイルポンプ12は、アウタロータに形成された内歯とインナロータに形成された外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間にオイルを収容する図示しない作動室を形成する。
エンジン3の動力がフロントカバー10Aを介してインナロータに伝達されると、オイルポンプ12において、インナロータとアウタロータとが一方向に回転する。このとき、作動室の容積増加および容積減少が連続して発生することにより、オイルが作動室に吸入され、作動室からオイルが吐出される。
タービン軸11の後端部には円盤状のフランジ部11Aが形成されており、フランジ部11Aは、タービン軸11の前端部や中央部よりも大径に形成されている。フランジ部11Aにはフライホイール16が取付けられている。フライホイール16は、フロントケース6に収容されている。
フロントケース6には摩擦クラッチ17も収容されており、摩擦クラッチ17は、前後方向(回転軸の軸方向)でフライホイール16に対向している。また、フロントケース6には、変速ギヤ対や変速機構が収容されている。(以下、変速ギヤ対や変速機構を、単に変速機という)
フロントケース6は、摩擦クラッチ17および変速機20を外周側から囲む周壁61と、この周壁61の内部を摩擦クラッチ17が収納されるクラッチ室82と変速機20が収納される変速機室83とに区画し、変速機20の回転軸の支持をする隔壁65と、を有する。
リヤケース7は、変速機20を外周側から囲む周壁71と、変速機20の回転軸を支持する隔壁75と、を有する。隔壁75はリヤケース7の後端部に形成されている。隔壁75には連通孔が形成されており、周壁71の前後の空間を連通している。
摩擦クラッチ17は、入力軸21が貫通した状態で配置され、入力軸21の軸方向の前端部21aの周囲に配置されている。入力軸21は、フロントケース6およびリヤケース7に収容されており、フロントケース6から前方に突出する軸方向の前端部21aにおいて軸受38Bを介してフランジ部11Aに回転自在に支持され、中央部付近が軸受38Cを介して隔壁65に回転自在に支持され、軸方向の後端部21bにおいて出力軸22に回転自在に支持されている。
出力軸22は、入力軸21と同軸に配置され、入力軸21の軸方向で入力軸21に連続して配置されている。出力軸22は、リヤケース7の後端部の隔壁75およびエクステンションケース8において軸受38D、38Eをそれぞれ介して回転自在に支持されている。出力軸22は入力軸21に対して相対回転する。
摩擦クラッチ17は、入力軸21がスプライン嵌合し入力軸21に一体回転自在、かつ入力軸21の軸方向に移動自在に設けられたクラッチディスク17Aと、クラッチディスク17Aの反フライホイール16側に当接するプレッシャプレート17Bと、プレッシャプレート17Bをフライホイール16側に付勢するダイヤフラムスプリング17Cとを備えている。
フロントケース6の隔壁65には、入力軸21が通過する筒状部66が形成されており、筒状部66は、隔壁65の中央付近から入力軸21の軸方向に沿って摩擦クラッチ17側に延びている。すなわち、筒状部66は隔壁65からクラッチ室82側に突出して形成されている。
筒状部66の周囲には環状のレリーズベアリング18が設けられており、レリーズベアリング18を貫通して筒状部66が配置されている。レリーズベアリング18は、筒状部66に沿って入力軸21の軸方向に移動してダイヤフラムスプリング17Cの半径方向内方部分に接触および離隔する。
レリーズベアリング18は、レリーズレバー19によって筒状部66に沿って入力軸21の軸方向で前方(摩擦クラッチ17側)に移動されると、ダイヤフラムスプリング17Cの中央付近(筒状部66の周辺付近)を前方に向かって押圧する。これにより、ダイヤフラムスプリング17Cによるプレッシャプレート17Bへの付勢が解除され、プレッシャプレート17Bの押圧力が無くなりクラッチディスク17Aがフライホイール16から離隔される。この結果、エンジン3のクランク軸の回転が入力軸21に伝達されなくなる。なお、エンジン3の動力を伝達するためにダイヤフラムスプリング17Cがプレッシャプレート17Bを付勢する力は強力であり、この付勢を解除するためにレリーズベアリング18に作用するレリーズレバー19からの操作力も大きな力が必要となる。この力はトルコンハウジング5の隔壁55にて受け止められる。
レリーズベアリング18は、レリーズレバー19によって入力軸21の軸方向に対して後方に移動されると、ダイヤフラムスプリング17Cの中央付近(筒状部66の周辺付近)から離れる。この状態では、ダイヤフラムスプリング17Cがプレッシャプレート17Bを付勢してクラッチディスク17Aをフライホイール16に押し付け、クラッチディスク17Aをプレッシャプレート17Bとフライホイール16にて挟持するので、エンジン3のクランク軸の回転を入力軸21に伝達する。このように摩擦クラッチ17は、エンジン3のクランク軸と入力軸21との間で動力伝達状態を伝達状態または遮断状態に切り替える。レリーズレバー19は、前述のシフトユニット100に連結されており、シフトユニット100によって操作される。
フロントケース6およびリヤケース7にはカウンタ軸23が収容されており、カウンタ軸23は、隔壁65、エクステンションケース8に回転自在に支持されている。カウンタ軸23は、入力軸21および出力軸22に対して平行に延びている。
入力軸21には、その軸方向に沿って摩擦クラッチ17側から出力軸22に向かって4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eが設置されている。
4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eは、入力軸21に相対回転自在に連結されている。
出力軸22の前端部には5速クラッチギヤ22Aが設けられており、5速クラッチギヤ22Aは、出力軸22の外周部に形成されたドグから構成される。
カウンタ軸23には、その軸方向に沿って摩擦クラッチ17側から後方に向かって4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eが設けられている。
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eは、カウンタ軸23に固定されている。
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dは、それぞれ4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dに噛み合って各変速段を構成する。
カウンタドライブギヤ26Eは、隔壁75の後方の位置でエクステンションケース8の内部空間に配置され、出力軸22のカウンタドリブンギヤ27に噛み合っている。カウンタドリブンギヤ27は、出力軸22と一体で回転するように出力軸22に固定されている。
フロントケース6およびリヤケース7には3速−4速用の同期装置28、1速−2速用の同期装置29およびリバース−5速用の同期装置30が収容されている。
3速−4速用の同期装置28は、入力軸21と一体で回転し、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。3速−4速用の同期装置28は、シフトアンドセレクト軸33が操作されたときに、いずれも図示しない3速−4速用のシフト軸、シフトヨークおよびシフトフォークを介して入力軸21の軸方向に移動される。
1速−2速用の同期装置29は、入力軸21と一体で回転し、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。1速−2速用の同期装置29は、シフトアンドセレクト軸33が操作されたときに、いずれも図示しない1速−2速用のシフト軸、シフトヨークおよびシフトフォークを介して入力軸21の軸方向に移動される。
リバース−5速用の同期装置30は、入力軸21と一体で回転し、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。リバース−5速用の同期装置30は、シフトアンドセレクト軸33が操作されたときに、図示しないリバース−5速用のシフト軸、シフトヨークおよびシフトフォークを介して入力軸21の軸方向に移動される。
3速−4速用の同期装置28は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、4速入力ギヤ24Aを入力軸21に連結して前進4速段を成立させ、入力軸21の動力を4速入力ギヤ24Aおよび4速カウンタギヤ26Aを介してカウンタ軸23に伝達する。
カウンタ軸23に伝達される動力は、カウンタドライブギヤ26Eからカウンタドリブンギヤ27を介して出力軸22に伝達される。出力軸22には図示しないプロペラ軸を介していずれも図示しないディファレンシャル装置、ドライブ軸および駆動後輪が連結されている。
これにより、出力軸22に伝達された動力は、プロペラ軸を介してディファレンシャル装置に伝達された後、ディファレンシャル装置によって左右のドライブ軸に分配され、ドライブ軸から駆動後輪に伝達される。この結果、車両1が走行される。
3速−4速用の同期装置28は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、3速入力ギヤ24Bを入力軸21に連結して前進3速段を成立させ、入力軸21の動力を3速入力ギヤ24Bおよび3速カウンタギヤ26Bを介してカウンタ軸23に伝達する。
1速−2速用の同期装置29は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、2速入力ギヤ24Cを入力軸21に連結して前進2速段を成立させ、入力軸21の動力を2速入力ギヤ24Cおよび2速カウンタギヤ26Cを介してカウンタ軸23に伝達する。また、1速−2速用の同期装置29は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、1速入力ギヤ24Dを入力軸21に連結して前進1速段を成立させ、入力軸21の動力を1速入力ギヤ24Dおよび1速カウンタギヤ26Dを介してカウンタ軸23に伝達する。
リバース−5速用の同期装置30は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、リバース入力ギヤ24Eを入力軸21に連結して後進段を成立させ、入力軸21の動力をリバース入力ギヤ24Eからいずれも図示しないリバースアイドラギヤ、リバース出力ギヤ、1速カウンタギヤ26Dを介してカウンタ軸23に伝達する。このとき、カウンタ軸23は、前進時の回転方向と逆方向に回転するので、車両1が後進される。
リバース−5速用の同期装置30は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、5速クラッチギヤ22Aを入力軸21に連結して前進5速段を成立させ、カウンタ軸23を介することなく入力軸21の動力を出力軸22に直接伝達する。
フロントケース6の上部にはシフトケース9が設けられており、シフトアンドセレクト軸33は、シフトケース9の内部に設けられてシフトケース9に軸支されている。シフトアンドセレクト軸33は、入力軸21の延びる方向と直交する車幅方向に延びている。
シフトアンドセレクト軸33は、シフトケース9に回転自在かつ、軸方向に移動自在に設けられており、シフトユニット100によって操作される。
フロントケース6の下部にはオイルパン41が取付けられており、オイルパン41の内部には、オイルを貯留するオイル貯留室43が形成されている。また、オイルパン41とフロントケース6の下部との間にはバルブボディ42が収容されており、バルブボディ42は、図示しないボルトによってフロントケース6の下部に締結されている。
バルブボディ42は、オイルポンプ12によってオイルパン41から吸い上げられて加圧されたオイルを調圧するとともに流れ方向を制御し、トルコンハウジング5の内部を通してトルクコンバータ10に供給する。
トルクコンバータ10に供給されるオイルは、トルクコンバータ10の図示しないロックアップクラッチを締結または解放するオイル、あるいは、ポンプインペラからタービンランナに流れるオイルとして用いられる。
また、バルブボディ42からトルクコンバータ10に供給されるオイルは、トルコンハウジング5の内部を通してタービン軸11を軸支する軸受38A等の潤滑が必要な部位に供給する。
図4に示すように、フロントケース6の下部には、バルブボディ42を収納するオイル貯留室43が設けられている。このため、フロントケース6の前後方向(軸方向)の長さは、バルブボディ42の前後方向の長さおよび位置によって決定されており、バルブボディ42よりも長く形成されている。つまり、バルブボディ42を収納するオイル貯留室43は、他の変速機ケース4には関係せずにフロントケース6の下部のみに形成されており、ケースを跨がって構成されることによるオイル漏れ問題の発生を抑制している。
また、トルコンハウジング5の隔壁55には、後述する膨出部57が形成されている。この膨出部57の内部には油路90が形成されており、油路90とバルブボディ42とは、クラッチ室82を通過する連結パイプ110により接続されている。本実施例では、油路90とバルブボディ42とを最短距離で接続させるため、トルコンハウジング5の隔壁55をフロントケース6内におけるオイル貯留室43の上方の位置まで後方に膨出させている。そして、膨出した隔壁55の後端部である膨出部57を、フロントケース6の内部であってオイル貯留室43の上方となる位置に配置している。
トルコンハウジング5の周壁51のエンジン3側の端縁は、エンジン3のクランクケースに締結により固定されている。周壁51のエンジン3側の端縁には、クランクケースとの合わせ面51Aが形成されている。
周壁51の摩擦クラッチ17側の端縁には、フロントケース6との合わせ面51Bが形成されている。周壁51の摩擦クラッチ17側の端縁は、合わせ面51Bにおいて、フロントケース6に対して締結により固定される。
周壁51の合わせ面51B側の端部の内周側には、隔壁55が設けられている。隔壁55は、その周囲が周壁51の摩擦クラッチ17側の端縁の内面に接続してトルコン室81とクラッチ室82とを仕切っている。隔壁55は、フロントケース6側にトルコン室81を拡大するように、周壁51の合わせ面51Bの面を越えてクラッチ室82側まで膨出している。換言すれば、隔壁55は、車両の前後方向で合わせ面51Bよりも後方に位置して、フロントケース6の内部空間(フロントケース6の周壁61に囲まれた空間)に入り込んでいる。
隔壁55は、フロントケース6の内部に位置する膨出部57と、この膨出部57と周壁51とを接続する接続部56と、を有する。接続部56は、後方に向かって縮径するテーパ状に形成されている。つまり、接続部56は、タービン軸11に垂直な断面が略円環状で、膨出部57に向かって縮径するテーパ状に形成されている。そして、接続部56の後端部を塞ぐように膨出部57が形成されている。膨出部57は、タービン軸11の軸線に直交する直交面に沿って平面状に延びている。
膨出部57の中央部には、タービン軸11が貫通する孔を有する軸受支持部57Aが形成されている。軸受支持部57Aは軸受38Aの外輪を保持している。軸受38Aは、軸受支持部57Aの孔にトルクコンバータ10側から挿入され、軸受支持部57Aと第2ポンプハウジング14(詳細には、第2ポンプハウジング14に圧入固定されたステータ筒)とで挟まれた状態で取り付けられている。
隔壁55の膨出部57とタービン軸11のフランジ部11Aとの間の空間は、後述するシール部材118を潤滑するオイルを貯留する第2空間122となっている。この第2空間122には、タービン軸11の軸心の油路11Cに連通する油路から軸受38Aおよびシールリング119を通過して流入したオイルが貯留される。
膨出部57のトルコン室81側にはオイルポンプ12が配置されており、膨出部57のトルクコンバータ10側の面にオイルポンプ12が固定されている。図5に示すように、隔壁55の膨出部57におけるトルクコンバータ10側の面には、ポンプハウジング固定部57Bが形成されており、このポンプハウジング固定部57Bにはオイルポンプ12(詳細には、第2ポンプハウジング14)が固定されている。
図5に示すように、ポンプハウジング固定部57Bは、軸受支持部57Aを囲むようにトルクコンバータ10側の壁面からトルクコンバータ10側に突出する同心円の環状に形成されており、オイルポンプ12との接合面を構成している。ポンプハウジング固定部57Bは、膨出部57の周縁に沿って膨出部57の面からトルコン室81側に突出する様に形成されており、膨出部57の面を補強している。
ポンプハウジング固定部57Bには環状のオーリング保持溝57Dが形成されおり、このオーリング保持溝57Dにはオーリング116が保持されている。
オイルポンプ12は、トルクコンバータ10側からボルトを締結することにより、隔壁55のポンプハウジング固定部57Bに対してオーリング116を挟み込んだ状態で固定される。オイルポンプ12(詳細には、第2ポンプハウジング14)がポンプハウジング固定部57Bに固定されるので、膨出部57の面をトルクコンバータ10側からさらに補強することができる。
ポンプハウジング固定部57Bにおけるオーリング保持溝57Dの径方向外側には、ポンプハウジング固定用ねじ孔57Eが形成されている。図5に示す本発明の一実施例では、オーリング保持溝57Dを取り囲む様に合計8か所のポンプハウジング固定用ねじ孔57Eが膨出部57の周縁に配置されている。
オイルポンプ12の筐体は、トルクコンバータ10側の第1ポンプハウジング13と、摩擦クラッチ17側で第1ポンプハウジング13と膨出部57との間に配置される第2ポンプハウジング14とから構成されている。第1ポンプハウジング13および第2ポンプハウジング14はロータを挟み込んだ状態で重ね合わされている。第1ポンプハウジング13は第2ポンプハウジング14よりも小径に形成されている。第1ポンプハウジング13は、第2ポンプハウジング14に嵌め込まれている。第1ポンプハウジング13の外周面にはオーリング117が保持されており、このオーリング117によって第1ポンプハウジング13と第2ポンプハウジング14との隙間からオイルが漏れないように閉じられている。
第1ポンプハウジング13と第2ポンプハウジング14は、第2ポンプハウジング14における隔壁55(詳細には、膨出部57)側の面から図示しないボルトにより締結されることで、オイルポンプ12として組み上がる。
隔壁55の膨出部57における第2ポンプハウジング14の取付面(トルクコンバータ10側の面)には、このボルトの頭部が干渉しないように摩擦クラッチ17側に窪む凹部57Fが形成されている。凹部57Fは、環状に配置されたポンプハウジング固定部57Bの内径側に配置されている。この凹部57Fにより、隔壁55と第2ポンプハウジング14の間に、ボルトの頭部が配置される第1空間121(図4参照)が形成されている。ポンプハウジング固定部57Bとオイルポンプ12とのオーリング116を介した接合部は、第1空間121のシール面を構成している。
第1ポンプハウジング13と第2ポンプハウジング14を締結するボルトの頭部に軸方向に対向する凹部57Fの部分は、さらに摩擦クラッチ17側に窪んでおり、ボルトの頭部との干渉が回避されている。なお、当該部分では、膨出部57の摩擦クラッチ17側の面に膨らんだ形状(膨出形状部57S)が現出している。凹部57Fにはリブ57Gがトルコン室81側に突出する様に形成されており、このリブ57Gは、軸受支持部57Aからポンプハウジング固定部57Bの締結部位(ポンプハウジング固定用ねじ孔57E)に向かって放射状に延びている。このリブ57Gによって、軸受支持部57Aとポンプハウジング固定部57Bの間の膨出部57(詳細には、凹部57F)が補強されている。
トルコンハウジング5は、スタータ装着部5Aを有しており、このスタータ装着部5Aには、図示しないスタータが挿入配置される装着孔5Bが形成されている。トルコンハウジング5の上部には、トルクコンバータ10で用いられるオイル(作動油)を冷却する図示しないオイルクーラが配置されており、オイルクーラは、トルコンハウジング5の上面に取り付けられる。
図6、図9に示すように、隔壁55の膨出部57における摩擦クラッチ17側の面には、円筒状のシール保持部57Kが形成されている。シール保持部57Kは、軸受支持部57Aを径方向外側から囲むように摩擦クラッチ17側の壁面から摩擦クラッチ17側に突出している。また、このシール保持部57Kとタービン軸11のフランジ部11Aは、軸方向で同じ位置に配置され、シール保持部57Kの内周面とフランジ部11Aの外周面とは径方向に対向している。シール保持部57Kの内周面とフランジ部11Aの外周面との間には、円環状のシール部材118が配置されている。シール部材118は、シール保持部57Kの内周面に圧入され、その外径をシール保持部57Kに保持されている。シール部材118は、その内径部がフランジ部11Aの外周面と液密に摺接することにより、第2空間122からクラッチ室82へのオイルの漏れ出しを防止している。つまり、第2空間122は、シール保持部57K、シール部材118、タービン軸11(フランジ部11A)、膨出部57にて囲まれた空間である。なお、図6に示すように、シール保持部57Kは、ポンプハウジング固定部57Bより径方向内側に形成されている。
隔壁55の膨出部57におけるシール保持部57Kの径方向内側には、膨出部57の表裏を貫通する2つの潤滑油流通孔57Lが設けられており、潤滑油流通孔57Lは、第1空間121と第2空間122とに連通している。両方の潤滑油流通孔57Lは、タービン軸11の軸受38Aの下端よりも高い位置に形成されている。潤滑油流通孔57Lがタービン軸11の軸受38Aの下端よりも高い位置に形成されているので、第2空間122に確実に潤滑油を貯留することができて、シール部材118とフランジ部11Aの摺接部分を確実に潤滑することができ、シール部材118の摩耗が抑制されて耐久性が向上する。
図6、図7、図8に示すように、膨出部57の摩擦クラッチ17側の面には、5つの油路90の開口部91、92、93、94、95が設けられている。油路90の開口部91、92、93、94、95は、下方に開口しており、前述の連結パイプ110(図4参照)を介してフロントケース6に接続されている。各油路90は、オイル貯留室43、バルブボディ42、オイルポンプ12、トルクコンバータ10等と連通している。
図6に示すように、膨出部57の内部に形成された各油路90の上部は、円環状のシール保持部57Kの下側半分の部位を外周側から囲むように配置されており、各油路90は、当該部位から上下方向に沿って下方に延びている。図8、図9に示すように、各油路90の上下方向に延びる部分は、摩擦クラッチ17側の壁面から摩擦クラッチ17側にほぼ同じ高さに突出させた油路形成部57Tの内部に形成されており、油路形成部57Tは上下方向に延びている。油路形成部57Tは、シール保持部57Kよりも摩擦クラッチ17側に突出しており、膨出部57の摩擦クラッチ17側の面を補強している。なお、図6、図9に示すように、左右端に配置された油路90の開口部91、95の位置は、膨出部57から接続部56の位置に達する様に配置されている。つまり、油路90の開口部91、95は、接続部56とも接続されて隔壁55を補強している。
油路形成部57Tは、油路90に対する必要肉厚を確保した円筒形状となっている。油路形成部57Tの下端部側は互いに接合されており、剛性が高められている。つまり、このように、円筒状の油路形成部57Tが並んで配列された状態となっているため、油路90を形成する油路形成部57Tを利用して隔壁55の剛性(特に、軸受支持部57Aの剛性)を高めることができ、効率よく剛性が高められている。
なお、開口部92を有する油路90と開口部93を有する油路90は、第2ポンプハウジング14に形成されたオイルポンプの吸入ポートと吐出ポートに連通する油路90であって、他の油路90と比較してその内径が大きい。このため、図8に示すように、これらの油路90の中心軸は、自動変速機2の軸方向において他の油路90よりもトルクコンバータ10に近い側に配置されている。つまり、軸受支持部57Aの直下では、開口部92を有する油路90と開口部93を有する油路90を形成する2つの太い柱状の油路形成部57Tがトルクコンバータ10側に突出するように配置されている。また、開口部91、92に対応する油路90を形成する油路形成部57Tの間には、オイルポンプ12を隔壁55に固定するためのねじ孔が形成されている。油路90を形成する油路形成部57Tは、シール保持部57Kで囲まれる領域の外の領域に配置されている。
油路90の開口部91、92、93、94、95は、摩擦クラッチ17側から見て右側から開口部91、92、93、94、95の順に設けられている。
開口部91を有する油路90は、バルブボディ42とトルクコンバータ10に連通する油路90の一部であり、タービン軸11中心の油路11Cに連通し、ロックアップクラッチを解放するときにトルクコンバータ10に向けてオイルが流れ、ロックアップクラッチを締結するときにトルクコンバータ10からオイルが流れ出す油路である。
開口部92を有する油路90は、オイル貯留室43内のストレーナとオイルポンプ12に連通する油路90の一部であり、オイルポンプ12の吸い込み側に連通している。
開口部93を有する油路90は、バルブボディ42とオイルポンプ12に連通する油路90の一部であり、オイルポンプ12の吐出側に連通している。
開口部94を有する油路90は、バルブボディ42とトルクコンバータ10に連通する油路90の一部であり、ポンプ筒とステータ筒の間を通過する油路90に連通し、ロックアップクラッチを締結するときにトルクコンバータ10に向けてオイルが流れ、ロックアップクラッチを解放するときにトルクコンバータ10からオイルが流れ出す油路である。
開口部95を有する油路90は、第1空間121に連通しており、第1空間121に溜ったオイルが流れ出す油路である。この油路90はオイル貯留室43に開口している。なお、この開口箇所の高さは、潤滑油流通孔57Lよりも低い位置となっている。
開口部95を有する油路90を除き、隔壁55に形成された各油路90は、隔壁55に沿って上下方向に延び、その上端となるシール保持部57Kの近傍でトルクコンバータ10側に屈曲して前後方向に延びる油路90となりトルクコンバータ10側のポンプハウジング固定部57Bに開口し、第2ポンプハウジング14の油路90に連通している。
隔壁55に形成された各油路90の下端は、互いに等しい高さ位置まで形成されており、膨出部57の下端縁近傍まで形成されている。隔壁55に形成された各油路90の下端は、下方に向けて開口しており、連結パイプ110が嵌合可能に内径加工されている。
図4において、油路90の軸方向で下端に対向するフロントケース6には、連結パイプ110により油路90と連結及び連通される上下方向に延びる油路96が形成されている。
油路90と油路96との連結は、クラッチ室82の内部空間で上下に離間して対向配置される隔壁55の油路90の下端部とフロントケース6の油路96に、両端にオーリングが取付けられた連結パイプ110を挿入することで行われる。つまり、隔壁55に形成された各油路90とフロントケース6の油路96とは、クラッチ室82の内部空間に露出した連結パイプ110にて連通されている。
この連結を可能とするために、隔壁55は合わせ面51Bの面を越えてフロントケース6(変速機ケース本体)の内部に膨出させ、各油路90の下方の位置のフロントケース6内には、オイル貯留室43が配置されている。ここで、油路90と油路96とを連結するには、トルコンハウジング5とフロントケース6との軸方向の合わせ面において連結する構造とすることも考えられるが、本実施例では上下方向に連結している。上下方向による連結のため、油路90を屈曲させる必要がなく、油路90を形成する加工を容易にでき、自動変速機2の軸方向長さを短縮することができる。
隔壁55には、メンテナンス時等においてトルクコンバータ10用のオイルの圧力を検出する為に、外部から接続可能なボス部57M、57Nが、摩擦クラッチ17側の面から摩擦クラッチ17側に突出した状態で左右方向に延びて形成されている。ボス部57M、57Nの内部には、左右方向に延びる連通路(油路90)がそれぞれ形成されており、この連通路(油路90)は、開口部91、94を有する油路90等と連通して、トルクコンバータ10に供給されるオイルの圧力を検出できるようになっている。つまり、圧力検出用のボス部57M、57Nの内部には左右方向に延びる連通路が形成されている。
図8に示すように、タービン軸11の軸方向において、圧力検出用のボス部57M、57Nの摩擦クラッチ17側への突出高さは、油路90が形成された油路形成部57Tの高さよりも低くなっている。
図8、図9に示すように、右側の圧力検出用のボス部57Mは、開口部91を有する油路90の油路形成部57Tの上端部に接続されており、油路形成部57Tから右側に延びて膨出部57の右側端を通過して接続部56の位置にまで達する様に配置されている。つまり、ボス部57Mは、接続部56とも接続されて隔壁55を補強している。その内部の連通路(油路90)は、シール保持部57Kの近傍で、開口部91を有する油路90の前後方向に延びる部分に連通している。
左側の圧力検出用のボス部57Nは、開口部95を有する油路90の油路形成部57Tの上下中央部に接続されており、油路形成部57Tから左側に延びて膨出部57の左側端を通過して接続部56の位置にまで達する様に配置されている。つまり、ボス部57Nは、接続部56とも接続されて隔壁55を補強している。その内部の連通路(油路90)は、開口部95を有する油路90のトルクコンバータ10側の側方(前方)を通過して、シール保持部57Kの近傍で、開口部94を有する油路90の前後方向に延びる部分に連通している。
圧力検出用のボス部57M、57Nの端部には、油圧検出用の接続孔112が形成されており、接続孔112の内周面にはねじ溝が形成されている。メンテナンス等のために油圧検出を行う際は、圧力検出用の図示しない配管が、ねじの螺合により接続孔112に接続される。油圧検出を行わない通常時では、この接続孔112は、盲栓により封止されている。
各油路形成部57T、各圧力検出用のボス部57M、57Nは、膨出部57の端縁からシール保持部57Kまで縦方向と横方向に形成されており、膨出部57、およびこの膨出部57を含む隔壁55を補強している。
膨出部57のポンプハウジング固定部57Bの裏側となる摩擦クラッチ17側の面には、ポンプハウジング固定用ボス57Rが形成されており、このポンプハウジング固定用ボス57Rには、オイルポンプ12を固定するねじ孔(ポンプハウジング固定用ねじ孔57E)が形成されている。ポンプハウジング固定用ボス57Rは膨出部57から摩擦クラッチ17側に突出して形成されている。
膨出部57の摩擦クラッチ17側の面には、シール保持部57Kと同心円状のリブ57Pが摩擦クラッチ17側に突出して形成されており、このリブ57Pは、ポンプハウジング固定用ボス57R同士を連結している。シール保持部57K、または、ポンプハウジング固定用ボス57R同士を連結しているリブ57Pによって、膨出部57が補強されている。本発明の一実施例では、シール保持部57K、および、リブ57Pの両方が形成されていることによって、膨出部57が効果的に補強されている。
膨出部57の摩擦クラッチ17側の端面部分には、第1ポンプハウジング13と第2ポンプハウジング14とを結合するボルトの頭部に対応する位置に、当該頭部との干渉を避けるために摩擦クラッチ17側に膨らんだ膨出形状部57Sが形成されており、シール保持部57Kは、この膨出形状部57S同士を連結している。膨出形状部57Sのトルコン室81側の面は凹んでいる。
膨出部57の摩擦クラッチ17側の端面部分には、シール保持部57Kから放射状に延びるリブ57Qが、ポンプハウジング固定用ボス57Rを通過するように形成されている。ポンプハウジング固定用ボス57Rとシール保持部57Kを連結する様に放射状に延びるリブ57Qによって、膨出部57が補強されている。
図3、図4に示すように、タービン軸11は、隔壁55に形成された軸受支持部57Aの孔を貫通している。タービン軸11は、そのタービン軸11にサークリップ111で取付けられた軸受38Aを介して隔壁55の軸受支持部57Aに支持されている。
タービン軸11の一端部(トルクコンバータ10側の端部)は、ステータ筒の内部から前方に突出し、トルクコンバータ10のタービンに対してスプライン嵌合により一体的に回転するように連結されている。タービン軸11の他端部(摩擦クラッチ17側の端部)は、トルコンハウジング5の隔壁55を貫通してフロントケース6内のクラッチ室82に突出している。また、タービン軸11の他端部には、径方向に広がるフランジ形状のフランジ部11Aが形成されている。フランジ部11Aには、摩擦クラッチ17の摩擦係合要素であるフライホイール16が締結により固定されている。
フライホイール16は、その中央部となる回転中心の近傍において、フランジ部11Aにボルトの締結により固定されている。なお、フライホイール16の外周部には凹凸形状が形成されており、その凹凸形状を図示しないセンサで検出することによりタービン軸11の回転数が検出される。
フライホイール16は、タービン軸11の軸方向において、フランジ部11Aへの締結部となる中央部がタービン軸11側に膨出し、周囲部がタービン軸11から離れる方向(後方)にオフセットされている。このオフセットによって隔壁55とフライホイール16の周囲部との間の空間を拡大し、この拡大された空間に隔壁55の油路形成部57Tが配置される。つまり、フライホイール16の中央部と油路形成部57Tは、軸方向で、同じ位置となる部分を有し、フライホイール16の中央部の下方に油路形成部57Tの一部が配置されている。また、油路形成部57Tがフランジ部11Aの位置よりも後方まで形成されていて、膨出部57が補強されている。
フライホイール16には摩擦クラッチ17が取付けられている。このため、摩擦クラッチ17の操作荷重(摩擦クラッチ17を切る時の操作荷重)は、レリーズレバー19、レリーズベアリング18、ダイヤフラムスプリング17C、クラッチカバー、フライホイール16、タービン軸11、軸受38Aを介して隔壁55に前向きの荷重として作用する。
次に、上記のように構成された自動変速機2の効果を説明する。
本実施例の自動変速機2は、摩擦クラッチ17および変速機20を収納する変速機ケース本体40と、摩擦クラッチ17とエンジン3との間に配置されるトルクコンバータ10を収納するトルコンハウジング5と、を有する変速機ケース4を備えており、トルコンハウジング5が、変速機ケース本体40と連結される合わせ面51Bを有する。
また、トルコンハウジング5は、トルクコンバータ10を外周側から囲む周壁51と、周壁51の内面に接続して設けられ、トルクコンバータ10と摩擦クラッチ17の間でタービン軸11を支持する隔壁55とを有し、隔壁55は、合わせ面51Bの面を越えて変速機ケース本体40の内部に膨出している。
このように、本実施例では、隔壁55を後方に膨出する膨出形状としたことにより、隔壁55の剛性を向上させることができる。特に、膨出方向をクラッチの操作荷重が作用する方向に対抗するように膨出させているので、効果的に補強することができている。詳しくは、隔壁55が単純な平板形状であった場合は厚みを増加させたりリブ等で補強を十分に行わない限りタービン軸11を支持するだけの十分な剛性を隔壁55に持たせることが難しいが、本実施例では隔壁55を膨出形状としたことにより、リブ等による補強を最小限として容易に隔壁55の剛性を確保することができる。
したがって、厚みを増加させたり、補強のみを目的とするリブを別途設けることなくトルコンハウジング5の強度を確保でき、変速機ケース本体40および変速機ケース4を軽量化することができる。
本実施例の自動変速機2において、隔壁55は、変速機ケース本体40の内部に位置する膨出部57を有し、膨出部57は、タービン軸11との間に配置される軸受38Aを支持する軸受支持部57Aと、オイルが流通する油路90と、を有する。
また、膨出部57は、油路90を膨出部57の内部に形成するように油路90に沿って表面から隆起する油路形成部57Tを有し、油路90および油路形成部57Tは、軸受支持部57Aの近傍から周方向に直線状に延びている。
このように、本実施例では、油路形成部57Tが軸受支持部57Aの近傍から周方向に直線状に延びているため、隔壁55の油路形成部57Tにおける軸受支持部57Aの周囲の強度を、油路形成部57Tにより補強することができる。
本実施例の自動変速機2において、膨出部57にオイルポンプ12のポンプハウジング12Aが固定されており、ポンプハウジング12Aは、膨出部57における軸受支持部57Aを取り囲む部位に締結により固定されている。
このように、本実施例では、隔壁55の膨出部57における軸受支持部57Aの周囲の強度をオイルポンプ12のポンプハウジング12Aで補強することができる。
本実施例の自動変速機2において、タービン軸11は、トルクコンバータ10の出力軸であり、タービン軸11の一端にトルクコンバータ10が連結され、タービン軸11の他端に摩擦クラッチ17の摩擦係合要素としてのフライホイール16が締結されている。
このように、本実施例では、隔壁55が膨出する形状であること、および隔壁55に油路形成部57Tが形成されていることにより隔壁55の強度を向上させることができるので、重量物であるフライホイール16の荷重を隔壁55に受け持たせることができる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。