以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「接触」とは、特に明示がない限り、言及している二者が直接的に接触する場合の他に、他の部材を介して間接的に接触する場合も含む。
(第1の実施の形態)
まず、第1実施形態の水洗大便器10の第1の工夫点を説明する。図1は、第1実施形態の水洗大便器10に用いられる便器本体12の斜視図である。図2は、便器本体12の平面図である。図3は、便器本体12の側面断面図である。図4は、図3のA−A線断面図である。
水洗大便器10は、便器本体12と、洗浄水供給装置14と、を備える。図4に示すように、本実施形態の洗浄水供給装置14は、貯水タンク(不図示)、分配器16等を用いて構成される。
本実施形態の便器本体12は陶器を素材とするが、樹脂等を素材としてもよい。本実施形態の便器本体12は洋風大便器である。本実施形態の便器本体12は、トイレ室の床面Fs(図3参照)上に設置される床置き式である。
以下、水洗大便器10の構成要素の位置関係に関して、互いに直交する三つの方向を用いて説明する。この方向とは、便器本体12の前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zである。前後方向X、左右方向Yは水平方向であり、便器本体12に取り付けられる便座(不図示)に通常の姿勢で座る着座者の前後左右と対応する。上下方向Zは鉛直方向である。
また、本明細書では、水洗大便器10の構成要素の位置関係に関して、便器本体12の便鉢部18の周方向、径方向を用いて説明する。ここでの「周方向」とは、便器本体12を上方から見て、その便鉢部18の上端内縁部18aの中心Cp(図2参照)周りを回る方向をいう。また、「径方向」とは、その中心Cpを通る鉛直線に直交する方向をいう。
図2、図3を参照する。便器本体12は便鉢部18を有する。便鉢部18の上端内縁部18aは、便器本体12の上面部20に連なり、その上面部20の後部には便座を取り付けるための取付孔22が設けられる。
便鉢部18は、汚物を受けるための鉢状の汚物受け面24と、汚物受け面24の下端縁から下方に窪む溜水部26と、を備える。汚物受け面24は、平面視での曲率半径が前端部24aにおいて最小となる形状である。
便鉢部18は、左右一方側となる左側(図2では紙面の右側)の左側方部分18b(第1側方部分)と、左右他方側(図2では紙面の左側)の右側方部分18c(第2側方領域)とを有する。左側方部分18bは、便鉢部18の左右中心線Lcに対して左右一方側に配置される便鉢部18の一部分であり、右側方部分18cは、その左右中心線Lcに対して左右他方側に配置される便鉢部18の一部分である。左右中心線Lcとは平面視において、便鉢部18の内面部分の左右方向Yに沿った寸法を二等分し、前後方向Xに沿って延びる直線をいう。
図4に示すように、便器本体12は、便鉢部18内に洗浄水を吐き出すための吐水部28A、28Bを備える。吐水部28A、28Bには、便鉢部18の右側方部分18cに形成される第1吐水孔30Aを有する第1吐水部28Aと、便鉢部18の左側方部分18bに形成される第2吐水孔30Bを有する第2吐水部28Bとが含まれる。本実施形態の第1吐水孔30Aや第2吐水孔30Bは、溜水部26より後方にて便鉢部18の後部に形成される。本実施形態の第1吐水孔30Aは、溜水部26より左右他方側となる右側に形成され、本実施形態の第2吐水孔30Bは、溜水部26より左右一方側となる左側に形成される。
第1吐水孔30Aは前方に向けて開放しており、便鉢部18内に周方向の一方側(図9の紙面では反時計回り方向。以下、単に反時計回り方向ともいう)に洗浄水を吐き出す。第2吐水孔30Bは、左右他方側となる右側に向けて開放しており、便鉢部18内に反時計回り方向に洗浄水を吐き出す。
第1吐水部28Aは、第1吐水孔30Aに洗浄水を供給するための第1通水路32Aを有する。第2吐水部28Bは、第2吐水孔30Bに洗浄水を供給するための第2通水路32Bを有する。第1通水路32Aは便器本体12の右側の側方部分に設けられ、第2通水路32Bは便器本体12の左側の側方部分に設けられる。第1通水路32Aや第2通水路32Bには、洗浄水供給装置14から洗浄水が供給される。
図5は、図2のB−B線断面の一部を示す図である。図6は、図5のC−C線端面の一部を主に示す図である。便鉢部18は、便鉢部18の上端内縁部18aから垂下する垂下壁部34を有する。垂下壁部34の内周面は便鉢部18の上端内縁部18aから汚物受け面24の外周端部24bまで下方に連続している。垂下壁部34の内周面には、便鉢部18の上端内縁部18aから汚物受け面24の外周端部24bまでの範囲で水平面が設けられていないということである。これにより、垂下壁部34の内周面に水平面が設けられる場合と比べ、垂下壁部34の内周面を拭き易くなる。
垂下壁部34の内周面は、本実施形態において、上端内縁部18aから下方に向かうにつれて径方向内側に延びるように形成される。この他にも、垂下壁部34の内周面は、上端内縁部18aから下方に向かうにつれて径方向外側に延びるようなオーバーハング形状に形成されてもよい。
本実施形態の垂下壁部34は、図1に示すように、便鉢部18の全周に亘る範囲に設けられる。本実施形態の垂下壁部34の内周面は、略全周に亘る範囲において、吐水孔30A、30B以外の箇所で、滑らかに連なっている。垂下壁部34は、便鉢部18の周方向の全周に亘る範囲のうち周方向の半分以上の範囲に少なくとも設けられていてもよい。この他にも、垂下壁部34は、便鉢部18の周方向の全周に亘る範囲のうち周方向の大部分の範囲に少なくとも設けられていてもよい。ここでの大部分とは、たとえば、便鉢部18の周方向の全周に亘る範囲のうち80%以上の範囲をいう。
以下、第1吐水部28Aと第2吐水部28Bは多くの構成が共通するため、その共通する構成に関して第1吐水部28Aを示す図面を参照しながら説明する。図5、図6を参照する。第1吐水部28Aの第1吐水孔30Aは垂下壁部34を貫通している。第1吐水孔30Aの内下面30aは、第1通水路32Aの内下面32aと、便鉢部18の内面としての汚物受け面24とを滑らかに連ねている。本明細書での「滑らかに」とは、言及している面にでこぼこや段差がなく、すべすべしているさまをいう。第1吐水孔30Aの内上面30bは、第1通水路32Aの内上面32bより下方に設けられる。
垂下壁部34は、第1吐水孔30Aを形成するとともに第1吐水孔30Aより上方に設けられる第1孔形成部36Aを有する。第1孔形成部36Aの内周面は、便鉢部18の上端内縁部18aから第1吐水孔30Aまでの範囲で滑らかに連なっている。第1孔形成部36Aの内周面は、第1孔形成部36Aと周方向両側に隣接する垂下壁部34の他部分の内周面と滑らかに連なっている。
これにより、第1吐水孔30Aを形成する垂下壁部34の第1孔形成部36Aの内周面が便鉢部18の上端内縁部18aに滑らかに連なった箇所に設けられる。よって、便鉢部18の上端内縁部18aから奥まった箇所に第1吐水孔30Aを形成する壁部が配置される場合と比べ、便鉢部18の上端内縁部18aとともに垂下壁部34の第1孔形成部36Aの内周面を拭き易くなり、良好な清掃性を得られる。
また、便鉢部18の上端内縁部18aが第1吐水孔30Aを形成する場合と比べ、第1吐水孔30Aの大きさが小さくなり、良好な意匠性を得られる。また、便鉢部18の上端内縁部18aが第1吐水孔30Aを形成する場合と比べ、第1吐水孔30Aから吐き出された洗浄水が上端内縁部18aを伝って、便器本体12の上面部20まで伝う事態を避け易くなる。また、便鉢部18の上端内縁部18aが第1吐水孔30Aを形成する場合と比べ、便鉢部18内を流れる洗浄水の高さを抑えられ、洗浄水の飛沫が便鉢部18の外部に飛散する事態を避け易くなる。
以上の効果を得る観点からは、次の条件を満たすと好ましい。垂下壁部34の第1孔形成部36Aの高さHaは、便鉢部18の上端内縁部18aの上端から第1吐水孔30Aの内上面30bまでの高さで定義される。また、便鉢部18の上端内縁部18aの上端から第1吐水孔30Aの内下面30aまでの高さをHbという。このとき、垂下壁部34の第1孔形成部36Aの高さHaは、高さHbの半分以上の大きさに設定されると好ましい。この条件は、本発明者による実験的な検討に基づき導き出したものである。これにより、垂下壁部34の第1孔形成部36Aの内周面が拭き掃除するうえで適度な大きさとなり、その内周面をより拭き易くなり、より良好な清掃性を得られる。
また、第1吐水孔30Aの大きさが小さくなり、より良好な意匠性を得られる。また、第1吐水孔30Aから吐き出された洗浄水が上端内縁部18aまで伝わり難くなり、その洗浄水が便器本体12の上面部20まで伝う事態をより避け易くなる。また、便鉢部18内を流れる洗浄水の高さをより抑えられ、洗浄水の飛沫が便鉢部18の外部に飛散する事態をより避け易くなる。
また、第1吐水孔30Aの内下面30aは、第1通水路32Aの内下面32aと、便鉢部18の内面としての汚物受け面24とを滑らかに連ねている。よって、第1通水路32A内の水が、第1通水路32A内にとどまることなく、第1吐水孔30Aの内下面30aを伝って便鉢部18内に流れ易くなり、良好な衛生性を得られる。
ここまで第1吐水部28Aに関して詳細に説明したが、第2吐水部28Bでも多くの点で共通する。つまり、第2吐水部28Bの第2吐水孔30Bも垂下壁部34を貫通している。図示はしないが、第2吐水孔30Bの内下面も、第2通水路32Bの内下面と、便鉢部18の汚物受け面24とを滑らかに連ねている。垂下壁部34は、第2吐水孔30Bを形成するとともに第2吐水孔30Bより上方に設けられる第2孔形成部36Bを有する。第2孔形成部36Bは第1孔形成部36Aと同様の構成になるため、その説明を省略する。
次に、水洗大便器10の他の特徴を説明する。図7は、便器本体12の分解斜視図である。図1、図5、図7に示すように、本実施形態の便器本体12は、上面側部分38A、38Bと、上面側部分38A、38Bより下側の便鉢側部分40とを接合して構成される。上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40とは接着等により接合される。上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40は、陶器製の便器本体12を得るために必要な便器本体12の半製品であり、鋳込み成形により得られる鋳込み成形品である。本実施形態の便器本体12は、未焼成状態にある鋳込み成形品としての上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40を接合した後、それらを焼成することで得られる。
上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40は、便器本体12を分割した形状を持つ。上面側部分38A、38Bは、便器本体12の上面部20の少なくとも一部を含む部分である。本実施形態の上面側部分38A、38Bには、第1吐水部28Aに対応する第1上面側部分38Aと、第2吐水部28Bに対応する第2上面側部分38Bとが含まれる。便鉢側部分40は、便器本体12の上面側部分38A、38Bより下側の部分であり、便鉢部18の大部分を含む部分である。以下、第1上面側部分38Aと第2上面側部分38Bは多くの構成が共通するため、その共通する構成に関して第1上面側部分38Aを示す図面を参照しながら説明する。
図8は、図3のD−D線断面図である。図5、図8に示すように、上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40の境界位置は、上面側部分38A、38Bに対応する吐水部28A、28Bを形成する壁部を上下に分割する位置に設定される。図5等では、説明の便宜のため、上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40との境界位置を二点鎖線で示すが、これらは外観に現われなくともよい。便鉢側部分40の吐水孔30A、30Bや通水路32A、32Bを形成する箇所は上側に開放した形状となる。上面側部分38A、38Bは、便鉢側部分40の吐水孔30A、30Bや通水路32A、32Bを形成する箇所を上側から塞ぐように配置される。
図5、図7、図8に示すように、第1上面側部分38Aは、第1通水路32Aの内上面32bを構成する第1上壁部42Aと、垂下壁部34の第1孔形成部36Aを少なくとも構成する第1垂下側壁部44Aとを有する。第1上壁部42Aは、便器本体12の上面部20の一部を構成する。第1垂下側壁部44Aは、第1吐水孔30Aの内上面30bを構成する。第1垂下側壁部44Aの両側部44aは、第1孔形成部36Aと周方向両側に隣接する垂下壁部34の他部分を構成する。
便鉢側部分40は、第1通水路32Aの内側面32cを構成する一対の第1側壁部46Aと、第1通水路32Aの内下面32aを構成する第1下壁部48Aとを有する。一対の第1側壁部46Aは、第1吐水孔30Aを形成する入側開口部50を有する。第1下壁部48Aは第1吐水孔30Aの内下面30aも構成する。
図9は、図5のE−E線断面の一部を示す図である。図7〜図9に示すように、第1側壁部46Aは、第1段部52と、第1段部52の上面52aより低位置に形成される第2段部54とを有する。第2段部54は、第1側壁部46Aの入側開口部50に形成される。第1段部52の上面52aや第2段部54の上面54aは汚物受け面24の外周端部24bより高位置に形成される。第1段部52と第2段部54のそれぞれは、便器本体12の上面部20より低位置に形成される。
第1段部52の上面52aは、第1上面側部分38Aの第1上壁部42Aの側端部と接触して第1上壁部42Aを支持する。第2段部54の上面54aは、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aの両側部と接触して第1垂下側壁部44Aを支持する。
第2段部54は、第2段部54の上面54aから立ち上がる側面54bを有する。第2段部54は、第1通水路32Aの内側面や垂下壁部34の内周面から水平方向に凹むように形成される。第2段部54の側面54bには、第1垂下側壁部44Aの両側部が接触している。
以上の水洗大便器10の効果を説明する。かりに、便鉢側部分40と接触していない場合、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aは、その第1上壁部42Aからぶら下がった状態となる。よって、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aは、未焼成状態にあるときに自重により下向きの力成分が付与され、下向きに伸びる恐れがある。
この点、本実施形態によれば、便鉢側部分40は、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aと接触して第1垂下側壁部44Aを支持している。よって、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aに付与される自重による下向きの力成分を便鉢側部分40に伝達できる。この結果、未焼成状態にあるとき、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aに作用する下向きの力成分を低減でき、その第1垂下側壁部44Aが伸びてしまう事態を避けられる。これに伴い、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aにより目的とする形状の第1吐水孔30Aを精度よく得やすくなる。
また、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aは、第2段部54の側面54bと接触している。よって、便鉢側部分40に第1上面側部分38Aを接合する際、第1上面側部分38Aの第1垂下側壁部44Aと第2段部54の側面54bとの接触によって、便鉢側部分40に対する水平方向での第1上面側部分38Aの相対移動を規制できる。これに伴い、便鉢側部分40に対する第1上面側部分38Aの位置決め作業が容易になる。
なお、この他にも、第1上面側部分38Aの第1上壁部42Aと第1段部52の側面52b(図7、図8参照)との接触によっても、便鉢側部分40に対する水平方向での第1上面側部分38Aの相対移動を規制できる。
便器本体12を製造する方法として、鋳込み成形により得られる単数の鋳込み成形品により便器本体12を構成し、その鋳込み成形品の一部を切除して吐水孔30A、30Bを形成する手法がある。このような手法を採る場合、鋳込み成形品の一部の切除に伴いバリが発生してしまい、目的とする形状の吐水孔30A、30Bを精度よく形成できないという問題がある。
この点、本実施形態のように、上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40により便器本体12を構成する場合、上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40により吐水孔30A、30Bを形成できる。よって、鋳込み成形品の一部の切除を伴い吐水孔30A、30Bを形成する手法と比べ、目的とする形状の吐水孔30A、30Bを精度よく形成できる利点がある。また、この他にも、単数の鋳込み成形品により便器本体12を構成する場合と比べ、便器本体12の通水路32A、32Bの高さを容易に小さくできる。これに伴い、吐水孔30A、30Bから洗浄水を吐き出すために通水路32A、32B内に供給すべき水量を低減できる利点もある。
ここまで第1上面側部分38Aに関する構成の詳細を説明したが、第2上面側部分38Bでも多くの点で共通する。つまり、第2上面側部分38Bは、第2通水路32Bの内上面を構成する第2上壁部42Bと、垂下壁部34の第2孔形成部36Bを少なくとも構成する第2垂下側壁部44Bと、を有する。
便鉢側部分40は、第2通水路32Bの内側面32cを構成する一対の第2側壁部46Bと、第2通水路32Bの内下面32aを構成する第2下壁部48Bとを有する。第2側壁部46Bも、第1側壁部46Aと同様、第1段部52と第2段部54を有する。第1段部52の上面は、図示しないが、第2上面側部分38Bの第2垂下側壁部44Bと接触して第2垂下側壁部44Bを支持する。第2段部54の上面は、図示しないが、第2上面側部分38Bの第2垂下側壁部44Bと接触して第2垂下側壁部44Bを支持する。
次に水洗大便器10の第2の工夫点を説明する。図2、図3を参照する。便器本体12は、便鉢部18の他に、便鉢部18の底部に接続される便器排水路56を備える。便器排水路56は、便鉢部18内から下水側水路(不図示)に排出される汚物や水の通り道となる。
溜水部26は、便鉢部18の底部を形成するとともに有底状をなす。溜水部26は、底壁面26aと、底壁面26aから立ち上がる複数の立壁面26b〜26dと、を有する。底壁面26aの後部には便器排水路56の入口56aが開口する。溜水部26には溜水が溜められる。
立壁面26b〜26dには、溜水部26の左右一方側となる左側(図2の紙面では右側)に設けられる左側立壁面26b(第1立壁面)と、溜水部26の左右他方側となる右側(図2の紙面では左側)に設けられる右側立壁面26c(第2立壁部)とが含まれる。また、立壁面26b〜26dには、溜水部26の後側に設けられる後側立壁面26dが含まれる。左側立壁面26bと右側立壁面26cは、後述する誘導流Fwf(図15参照)を形成するため、前方に向かうにつれて先細りする形状であり、その前端部が第1凹曲面26eを介して滑らかに連なっている。本実施形態の左側立壁面26bは、第2凹曲面26fを介して後側立壁面26dに滑らかに連なっている。本実施形態の右側立壁面26cは、第3凹曲面26gを介して後側立壁面26dに滑らかに連なっている。
図10は、便器本体12の他の平面図である。汚物受け面24は、平面視において、溜水部26と前後方向Xに重なり溜水部26より後方に設けられる後側領域60と、溜水部26及び後側領域60と左右方向Yに重なる一対の横側領域62A、62Bとを有する。また、汚物受け面24は、平面視において、溜水部26や横側領域62A、62Bと前後方向Xに重なり溜水部26より前方に設けられる前側領域64を有する。
図11は、便器本体12の更に他の平面図である。便鉢部18は、吐水孔30A、30Bから吐き出された洗浄水を便鉢部18の内周面に沿って旋回させるように導くための棚面66を有する。本実施形態の棚面66は、第1吐水孔30Aの内下面に連なるように形成され、かつ、第2吐水孔30Bの内下面に連なるように形成される。
図12は、図3の一部の拡大図である。図13は、図2のB−B線端面の一部を主に示す図である。図11〜図13に示すように、棚面66は、汚物受け面24の外周端部24bから径方向内側に向かう範囲の一部が構成している。棚面66は、便鉢部18の径方向に沿った切断面での形状が平坦面である。図12、図13では、このような径方向に沿った切断面の形状を示す。
棚面66は、汚物受け面24の後側領域60から横側領域62A、62Bにかけて連続するように形成される。本実施形態の棚面66は、汚物受け面24の後側領域60から一対の横側領域62A、62Bのそれぞれにかけて連続するように形成される。本実施形態の棚面66は、汚物受け面24の横側領域62A、62Bから前側領域64にはみ出るように形成される。本実施形態の棚面66は、汚物受け面24の後側領域60にて左右方向Xの全範囲に亘り形成される。
本実施形態の棚面66は、平面視において、溜水部26と前後方向Xに重なる位置で溜水部26の前方には形成されない。汚物受け面24の前側領域64には、溜水部26と前後方向Xに重なる位置で溜水部26の前方にて、下方に窪むような凹曲面部68が設けられる。これにより、汚物受け面24は、後述するが、汚物受け面24から溜水部26に前方から流入する水流として第1分流Fwb(図15参照)を形成するように構成される。
便鉢部18は、棚面66と溜水部26の立壁面26b〜26dを連結する連結面70を有する。連結面70は、便鉢部18の径方向に沿った切断面において、棚面66の内周端66aに連なる単数の曲率半径を持つ凸曲面状の部分である。棚面66に連なる連結面70は、汚物受け面24の後側領域60に少なくとも設けられる。本実施形態の連結面70は、汚物受け面24の後側領域60から横側領域62A、62Bに連続するように設けられる。連結面70は、汚物受け面24の横側領域62A、62Bにも設けられることになる。本実施形態の連結面70は、汚物受け面24の後側領域60にて左右方向Yの全範囲に亘り形成される。
以上の水洗大便器10による洗浄方法を説明する。本実施形態の水洗大便器10は、水の落差を用いて汚物を押し流す洗い流し式の洗浄方式によって汚物を排出する。洗浄水供給装置14は、所定の洗浄開始条件を満たすと、所定の水量の洗浄水を通水路32A、32Bに供給する供給動作を行う。洗浄開始条件は、たとえば、レバー等の操作部材、または、リモートコントローラ、スマートフォン等の電気機器に対する操作を通じて洗浄水供給装置14が洗浄開始指令を受けることである。
図14は、第1段階での洗浄水の流れ方を示す図である。ここでの第1段階とは、便鉢部18内に洗浄水が流れ始めた段階をいう。本図では、洗浄水の流れ方向に矢印を付して示す。
洗浄水は、洗浄水供給装置14から通水路32A、32Bを通して各吐水孔30A、30Bに供給され、各吐水孔30A、30Bから吐き出される。第1吐水部28Aは、第1吐水孔30Aから吐き出された洗浄水によって、便鉢部18の右側方部分18cにて汚物受け面24を前方に向かい、汚物受け面24の前端部24aを経由して、便鉢部18の左側方部分18bにて汚物受け面24を後方に向かう第1旋回流Fwaを形成する。第1旋回流Fwaは、汚物受け面24の右側の横側領域62Bや左側の横側領域62Aを伝うときに、それらの棚面66を通るように形成される。第1旋回流Fwaは主流として形成される。本明細書での「主流」とは、洗浄水の一部が部分的に集まった状態で流れるすじ状の流れのことをいう。
第1旋回流Fwaを形成する洗浄水の一部は、便鉢部18の左側方部分18bにて汚物受け面24の前部で第1分流Fwbに分かれる。第1分流Fwbは、汚物受け面24から溜水部26側に向けて流れ落ちる主流として形成される。
便鉢部18の左側方部分18bにて第1分流Fwbに分かれずに汚物受け面24を後方に向かう第1旋回流Fwaの一部Fwcは、第1分流Fwbより流量が多くなる。
第2吐水部28Bは、第2吐水孔30Bから広角な範囲に洗浄水を吐き出すことによって、溜水部26に後方から流入する第1水流Fwdと、第1水流Fwdより後方にて汚物受け面24を反時計回り方向に伝う第2水流Fweとを形成する。第1水流Fwdと第2水流Fweは主流として形成される。第1水流Fwdは、第2水流Fweより流量が多くなる。第1水流Fwdは、第1旋回流Fwaの一部Fwcと合流していないとき、主に、便鉢部18の左側方部分18bにて溜水部26に後方から流入する。このとき、第1水流Fwdは、便鉢部18の右側方部分18cにおいて溜水部26の後方から流入する流量より、便鉢部18の左側方部分18bにおいて溜水部26の後方から流入する流量が多くなるように形成される。このとき、便鉢部18の右側方部分18cにおいて溜水部26の後方から流入する第1水流Fwdの流量は零でもよい。
図15は、第2段階での洗浄水の流れ方を示す図である。ここでの第2段階とは、第1段階より時間が経過した後の段階をいう。第1旋回流Fwa、第1分流Fwbの流れ方は第1段階と同様である。
第2段階では、第2吐水孔30Bから吐き出される洗浄水が形成する第1水流Fwdや第2水流Fweは、第1旋回流Fwaの一部Fwcと合流する。これにより、これら第1水流Fwdや第2水流Fweは、第1旋回流Fwaの一部Fwcとの合流前に流れていた位置よりも、汚物受け面24の後側領域60で汚物受け面24の外周端部24b寄りの箇所を通るように形成される。
このとき、第1水流Fwdや第2水流Fweのいずれもが、汚物受け面24の後側領域60を反時計回り方向に向けて伝うように形成される。第1吐水部28Aや第2吐水部28Bは、第1吐水孔30Aや第2吐水孔30Bから洗浄水を吐き出すことによって、汚物受け面24の後側領域60を反時計回り方向に伝う第1水流Fwdを形成しているといえる。この第1水流Fwdは、汚物受け面24の後側領域60で棚面66や連結面70を反時計回り方向に伝うように形成される。
第1水流Fwdは、第1旋回流Fwaの一部Fwcと合流しているとき、主に、溜水部26の右側立壁面26cに接触しつつ落ち込むように便鉢部18の右側方部分18cにて溜水部26内に後方に流入する。このとき、第1水流Fwdは、便鉢部18の左側方部分18cにおいて溜水部26内に後方から流入する流量より、便鉢部18の右側方部分18bにおいて溜水部26内に後方から流入する流量が多くなるように形成される。このとき、便鉢部18の左側方部分18bにおいて溜水部26の後方から流入する第1水流Fwdの流量は零でもよい。この第1水流Fwdは、汚物受け面24から溜水部26内に流入する水流のなかで最も流量が多い主流となる。
図16は、第2段階での洗浄水の流れ方を示す他の図である。図15、図16に示すように、溜水部26内に後方から流入する第1水流Fwdは、溜水部26の右側立壁面26cに接触しつつ下向きに流れる。この第1水流Fwdは、溜水部26の底壁面26aや左側立壁面26bに衝突することで上方かつ後方に向きを変えた後、溜水部26内で上昇したうえで自重により下降する縦旋回流となる誘導流Fwfを形成する。この誘導流Fwfは、溜水部26内で後方に向けて上昇してから下降することで、便器排水路56の入口56aに汚物を押し込むような流れとなる。このように溜水部26は、右側立壁面26cに接触しつつ溜水部26内に後方から流入する流れによって、便器排水路56に汚物を押し込む誘導流Fwfを形成するように構成されている。
なお、このような誘導流Fwfには、前述した溜水部26内に前方から流入する第1分流Fwbが合流する。これにより、誘導流Fwfの水勢が増幅される。
第2水流Fweは、汚物受け面24の後側領域60を反時計回り方向に伝うとともに、汚物受け面24の右側の横側領域62Bを前方に向けて伝う。第2水流Fweは、汚物受け面24の右側の横側領域62Bで第1旋回流Fwaと合流し、その第1旋回流Fwaの水勢を増幅させる。
このように第1水流Fwdは、第1旋回流Fwaの一部Fwcと合流してから、溜水部26の右側立壁面26cに接触しつつ溜水部26内に後方から流入するように形成される。これにより、第1旋回流Fwaの一部Fwcと合流させない場合よりも、溜水部26の後方から流入する第1水流Fwdの流量を増大でき、汚物排出能力の向上を図れる。
特に、第1水流Fwdは、第1旋回流Fwaの一部Fwcと合流しないときも、溜水部26に後方から流入するように形成される。よって、第1水流Fwdに対して第1旋回流Fwaが合流したとき、その第1旋回流Fwaの流れ方向が溜水部26を向くように、その流れ方向を変え易くなる。これに伴い、溜水部26に後方から流入せずに汚物受け面24の後側領域60を伝う水流の第1旋回流Fwaの全流量に対する割合を減少させ、その分、溜水部26に後方から流入する水流の第1旋回流Fwaの全流量に対する割合を増大できる。この結果、溜水部26の後方から流入する第1水流Fwdの流量をより増大でき、汚物排出能力の更なる向上を図れる。
ここで、本実施形態の水洗大便器10では、このような溜水部26に後方から流入する第1水流Fwdの流量を増大させるため、次の工夫をしている。図17は、棚面66の径方向での勾配を示すグラフである。ここでの「径方向での勾配」とは、便鉢部18の径方向に沿った切断面での棚面66の勾配(以下、単に勾配ともいう)を意味する。図17の位置A〜Cは、図11の位置A〜Cに対応する。
図11〜図13、図17に示すように、前述の後側領域60での棚面66の勾配は、横側領域62A、62Bでの棚面66の勾配より大きくなるように設定される。本実施形態の棚面66の勾配は、平面視において、便鉢部18の左右中心線Lcと重なる位置Aで最も大きくなるように設定される。棚面66の勾配は、左右中心線Lcと重なる位置Aから周方向に離れるにつれて、連続的に小さくなるように設定される。横側領域62A、62Bでの棚面66の勾配は、後側領域60から周方向に離れるにつれて、連続的に小さくなるように設定されるとも捉えられる。
これにより、後側領域60での棚面66の勾配を横側領域62A、62Bでの棚面66の勾配以下にする場合と比べ、後側領域60の棚面66を反時計回り方向に伝う洗浄水の一部を適度に溜水部26に流し落とし易くなる。よって、溜水部26の後方からの洗浄水の流入量を増大でき、汚物排出能力の向上を図れる。
また、後側領域60の棚面66により洗浄水を便鉢部18の内周面に沿って導けるため、後側領域60に対して反時計回り方向に連なる右側の横側領域62Bの汚物受け面24にも適度な量の洗浄水を伝わせられる。よって、溜水部26への後方からの洗浄水の流入量を増大しつつ、右側の横側領域62Bでの汚物受け面24の洗浄能力の向上も図れる。
図18は、連結面70の径方向での曲率半径を示すグラフである。ここでの「径方向での曲率半径」とは、便鉢部18の径方向に沿った切断面での曲率半径(以下、単に曲率半径ともいう)を意味する。図18の位置A〜Eは、図11の位置A〜Eに対応する。
図11〜図13、図18に示すように、前述の後側領域60での連結面70の曲率半径は、横側領域62A、62Bでの連結面70の曲率半径より大きくなるように設定される。本実施形態の連結面70の曲率半径は、平面視において、溜水部26の後方にて便鉢部18の左右中心線Lcと重なる位置Aで最も大きくなるように設定される。連結面70の曲率半径は、左右中心線Lcと重なる位置Aから周方向に離れるにつれて、連続的に小さくなるように設定される。横側領域62A、62Bでの連結面70の曲率半径は、後側領域60から周方向に離れるにつれて、連続的に小さくなるように設定されるとも捉えられる。
これにより、後側領域60での連結面70の曲率半径を横側領域62A、62Bでの連結面70の曲率半径以下にする場合と比べ、凸曲面状の連結面70が形成されている径方向での範囲を広くできる。これに伴い、後側領域60で連結面70上を通る洗浄水の量を増やすことができ、連結面70から溜水部26に流し落とせる洗浄水の量を増やし易くなる。この結果、溜水部26への後方からの洗浄水の流入量をさらに増大でき、汚物排出能力の向上を図れる。
かりに、溜水部26への後方からの洗浄水の流入量を増大させるうえで、汚物受け面24の後側領域60の広範囲に凹曲面を設け、その凹曲面により溜水部26に洗浄水を誘導する方策が考えられる。この点、本実施形態によれば、汚物受け面24の後側領域60には、平坦面である棚面66と凸曲面状の連結面70が設けられ、少なくとも棚面66の勾配により溜水部26への後方からの洗浄水の流入量を増大できる。よって、溜水部26への後方からの洗浄水の流入量を増大させるうえで、汚物受け面24の後側領域60の広範囲に凹曲面を設けずともよくなる。これに伴い、汚物受け面24の後側領域60をつっかえずに拭き易くなり、良好な清掃性を得られる。
なお、連結面70は、平面視において、溜水部26の周りで全周に亘り連なるように設けられる。連結面70は、後側領域60以外では棚面66の内周端66aに連ならない箇所もある。連結面70の曲率半径は、平面視において溜水部26の前方にて便鉢部18の左右中心線Lcと重なる位置Eで最も小さくなるように設定される。
次に、水洗大便器10の他の特徴を説明する。図19は、図4の一部の拡大図である。便鉢部18は、便鉢部18の内周面を構成し、第1吐水孔30Aの内側面30cに連なるとともに、第1吐水孔30Aの中心軸線Ldに沿った吐出方向Paに延びる面部分18dを有する。本実施形態の面部分18dは前述の垂下壁部34が構成している。
第1吐水孔30Aの中心軸線Ldを平面視において吐出方向Paに延長した線を延長線Leという。本実施形態において、この延長線Leは、平面視において、溜水部26を避けた箇所を通るように設けられる。
便鉢部18の面部分18dは、第1吐水孔30Aの内側面30cから吐出方向Paに向かうにつれて、平面視において、前述の延長線Leを挟んで溜水部26とは反対側(図19の紙面の左側)に向けて延びるように形成される。このような面部分18dは、第1吐水孔30Aの内側面30cとの間で、平面視において鈍角の角部30dを形成している。面部分18dは、吐出方向Paに向かうにつれて、前述の延長線Leから溜水部26とは反対側に離れてから近づくように湾曲している。
これにより、第1吐水孔30Aから吐き出される洗浄水は、第1吐水孔30Aから吐き出された直後、便鉢部18の面部分18dに沿って流れ難くなり、その面部分18dに沿って流れる水の流量を抑えられる。この利点を説明する。
第1吐水孔30Aから吐き出される洗浄水に対して、平面視において、前述の延長線Leに対して溜水部26側から第2水流Fweが合流したときを考える。このとき、第1吐水孔30Aから吐き出される洗浄水には、第2水流Fweと合流することによって、便鉢部18の面部分18dに近づくような力成分Faが付与される。この場合に、本実施形態によれば、便鉢部18の面部分18dに沿って流れる水の流量を抑えられる。よって、便鉢部18の面部分18dに近づくような力成分Faが付与されても、第1吐水孔30Aから吐き出される洗浄水の多くが便鉢部18の面部分18dに勢いよくぶつかる事態を避けられ、飛沫の発生を抑えられる。
図20(a)は、図3のF−F線断面図であり、図20(b)は、図3のG−G線断面図であり、図20(c)は、図3のH−H線断面図である。
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。次に、各構成要素の変形例を説明する。
便器本体12は、床置き式である例を説明したが、壁掛け式でもよい。水洗大便器10は、洗い落し式以外の他の洗浄方式を用いて洗浄してもよい。この洗浄方式とは、たとえば、サイホン式である。洗浄水供給装置14は、その具体例について特に限定されない。洗浄水供給装置14は、たとえば、フラッシュバルブ等を用いて構成されてもよい。
(第1の工夫点に関して)
垂下壁部34の孔形成部36A、36Bの高さHaは、前述の高さHbの半分未満の大きさに設定されてもよい。
便器本体12は、上面側部分38A、38Bと便鉢側部分40とを接合せずに、単数の鋳込み成形品により構成されてもよい。
上面側部分38A、38Bの垂下側壁部44A、44Bは、便鉢側部分40の第2段部54とは異なる箇所に接触して支持されてもよい。たとえば、便鉢側部分40の汚物受け面24の外周端部24bに連なる箇所に接触して支持されてもよい。上面側部分38A、38Bの垂下側壁部44A、44Bは、便鉢側部分40の第2段部54の側面54bに接触していなくともよい。
(第2の工夫点に関して)
便器本体12は第1吐水部28Aのみを有し、第2吐水部28Bを有していなくともよい。この場合、第1吐水部28Aは、第1吐水孔30Aから吐き出される洗浄水によって、汚物受け面24の後側領域60を周方向に伝う水流を形成していればよい。この水流とは、たとえば、前述の第1水流Fwdである。この場合、第1吐水部28Aの第1吐水孔30Aの位置は特に限定されない。たとえば、第1吐水孔30Aは、実施形態で第2吐水孔30Bのある位置に形成されていてもよい。
第1吐水孔30A、第2吐水孔30B、第1旋回流Fwa、第1分流Fwb、第1水流Fwd、第2水流Fwe、誘導流Fwf等は、実施形態での位置に対して左右で逆の位置に設けてもよい。たとえば、第1吐水部28Aは、便鉢部18内に時計回り方向に向けて第1吐水孔30Aから洗浄水を吐き出すことによって、汚物受け面24の後側領域60を時計回り方向に伝う第1水流Fwdを形成してもよい。この場合、溜水部26は、溜水部26の左右片側となる左側立壁面26bに接触しつつ溜水部26に後方から流入する水流によって誘導流Fwfを形成するように構成されていればよい。
汚物受け面24の棚面66は、汚物受け面24の後側領域60からいずれかの横側領域62A、62Bにかけて連続するように形成されていればよい。
汚物受け面24の後側領域60での棚面66の勾配は、便鉢部18の周方向に連続的に変化するように設定される例を説明した。この他にも、後側領域60での棚面66の勾配は、便鉢部18の周方向に段階的に変化してもよいし、後側領域60で周方向に一定に設定されてもよい。いずれにしても、後側領域60での棚面66の勾配は、横側領域62A、62Bでの棚面66の勾配より大きくなるように設定されていればよい。また、後側領域60での棚面66の勾配は、一対の横側領域62A、62Bのうちいずれかの横側領域62A、62Bでの棚面66の勾配より大きくなるように設定されていればよい。
汚物受け面24の後側領域60の連結面70は凹曲面状をなしていてもよい。
汚物受け面24の後側領域60での連結面70の曲率半径は、便鉢部18の周方向に連続的に変化するように設定される例を説明した。この他にも、後側領域60での連結面70の曲率半径は、便鉢部18の周方向に段階的に変化してもよいし、後側領域60で周方向に一定に設定されてもよい。いずれにしても、後側領域60での連結面70の曲率半径は、横側領域62A、62Bでの曲率半径より大きくなるように設定されていればよい。また、後側領域60での連結面70の曲率半径は、一対の横側領域62A、62Bのうちいずれかの横側領域62A、62Bでの連結面70の曲率半径より大きくなるように設定されていればよい。
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の項目に記載の発明が含まれているともいえる。
(第1項目)
便鉢部と、
前記便鉢部内に周方向の一方側に向けて第1吐水孔から洗浄水を吐き出すための第1吐水部と、を備え、
前記便鉢部は、前記便鉢部の内周面を構成し、前記第1吐水孔の内側面から前記第1吐水孔の中心軸線に沿った吐出方向に延びる面部分を有し、
前記面部分は、前記第1吐水孔の内側面から前記吐出方向に向かうにつれて、平面視において前記中心軸線を挟んで前記溜水部とは反対側に向けて延びるように形成される便器本体。
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
第2態様の便器本体は、第1態様において、前記垂下壁部は、前記吐水孔を形成するとともに前記吐水孔より上方に設けられる孔形成部を有し、前記孔形成部の高さは、前記上端内縁部の上端から前記吐水孔の内下面までの高さの半分以上の大きさに設定されてもよい。
この態様によれば、垂下壁部の孔形成部の内周面が拭き掃除をするうえで適度な大きさとなり、その内周面をより拭き易くなり、より良好な清掃性を得られる。
第3態様の便器本体は、第1または第2態様において、本便器本体は、上面側部分と、前記上面側部分より下側の便鉢側部分とを接合して構成され、前記上面側部分は、前記通水路の内上面を構成する上壁部と、前記吐水孔より上方に設けられる前記垂下壁部の一部を少なくとも構成する垂下側壁部と、を有し、前記便鉢側部分は、前記垂下側壁部と接触して前記垂下側壁部を支持していてもよい。
この態様によれば、未焼成状態にあるとき、上面側部分の垂下側壁部に作用する下向きの力成分を低減でき、その垂下側壁部が伸びてしまう事態を避けられる。
第4態様の便器本体は、第3態様において、前記便鉢側部分は、前記通水路の内側面を構成する側壁部と、前記側壁部に形成される段部と、を有し、前記段部の上面は、前記内側壁部と接触して前記側壁部を支持していてもよい。
第5態様の便器本体は、第3または第4態様において、前記段部は、前記第1段部の上面から立ち上がる側面を有し、前記側壁部は、前記第1段部の前記側面に接触していてもよい。
この態様によれば、便鉢側部分に上面側部分を接合する際、上面側部分の垂下側壁部と段部の側面との接触によって、便鉢側部分に対する水平方向での上面側部分の相対移動を規制できる。