JP2019188779A - 電子機器及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャリッジの速度制御において、振動抑制と追従性を両立する電子機器を提供する。【解決手段】対象物の移動を検出し、その検出信号に基づいて、第1の周期で対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する一方、その検出信号に基づいて、第1の周期より短い第2の周期で対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、対象物の第1状態量とその時間微分で得られる第2状態量を推定する。推定された制御量に基づいて、第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成し、推定された第1状態量と第2状態量とに基づいて、第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する。推定された対象物の第1状態量又は予め定められた目標値が第1閾値より大きい場合は、第1操作量との第2操作量とに基づき対象物への操作量を生成し、第1閾値未満の場合は、第1操作量のみを用いて対象物への操作量を生成する。【選択図】図1
Description
本発明は電子機器及びその制御方法に関し、特に、例えば、シリアル型の記録装置のキャリッジ等の移動物体の駆動制御の技術に関する。
シリアル型プリンタにおいてモータにより往復移動するキャリッジの駆動はエンコーダを用いたPID制御などのフィードバック制御が一般的である。シリアル型のインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する記録ヘッドを搭載するキャリッジの走査を行う駆動部では、インク着弾位置の安定化のためにキャリッジ走査時の速度変動が重視されている。このため、キャリッジの速度変動を安定化させる制御を実現することが求められている。
特許文献1に記載の印刷装置およびゲイン補正方法では、特定の制御対象を動作させた所定期間における速度変動量に基づいた補正比率に応じて、PID制御のための定数(ゲイン)を補正する。特許文献1によれば、速度変動量が大きいほどPID制御のための補正比率を小さくすることができ、その結果、過剰な変動が抑制され、制御対象の速度変動の収束を実現させることができる。
特許文献1の印刷装置およびゲイン補正方法では、制御対象の速度変動を収束させるために、制御対象の制御ゲインを結果的に下げることになる。このため、制御対象物の過剰な振動を抑制することは可能かもしれないが、制御対象物の応答性を損なうことになる。制御対象物の状態変化の中における振動抑制と追従性の両立が課題となる。
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、フィードバック制御の追従性と制御対象物の振動抑制を両立できる電子機器とその制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の電子機器は、以下の構成を備える。
即ち、対象物の移動を制御する電子機器であって、前記対象物の移動を検出する検出手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定手段と、前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、前記第2の推定手段により推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成手段と、前記対象物への操作量を生成する合成手段と、を備え、前記合成手段は、前記第2の推定手段によって推定された前記対象物の前記第1状態量又は予め定められた目標値が第1閾値より大きい場合は、前記第1操作量と前記第2操作量とに基づき前記対象物への操作量を生成し、前記対象物の前記第1状態量又は前記目標値が前記第1閾値未満の場合は、前記第1操作量と前記第2操作量のうち前記第1操作量のみを用いて前記対象物への操作量を生成することを特徴とする。
また本発明を別の側面から見れば、対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、前記対象物の移動を検出する検出工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定工程と、前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、前記第2の推定工程において推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成工程と、前記対象物への操作量を生成する合成工程と、を備え、前記合成工程では、前記第2の推定工程において推定された前記対象物の前記第1状態量又は予め定められた目標値が第1閾値より大きい場合は、前記第1操作量との前記第2操作量とに基づき前記対象物への操作量を生成し、前記対象物の前記第1状態量又は前記目標値が前記第1閾値未満の場合は、前記第1操作量と前記第2操作量のうち前記第1操作量のみを用いて前記対象物への操作量を生成することを特徴とする制御方法を備える。
本発明によれば、フィードバック制御の追従性と制御対象物の振動抑制を両立することができる。
本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
以下の説明においては、電子機器の代表的な例としてシリアル型記録装置のキャリッジを移動させるモータの駆動制御を例に挙げる。しかし、記録装置のキャリッジに限らず、モータの駆動により物体を移動させるものであれば、本発明のモータ制御を適用することが可能である。例えば、その記録装置において、記録用紙などの記録媒体を搬送するために用いる搬送モータの駆動制御に適用することもできる。さらには、CCDラインスキャナやCISなどをモータを駆動して移動させながら原稿の画像を光学的に読取るスキャナ装置のモータ駆動制御なども本発明に含まれる。
1.フィードバック制御の説明
図1は記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。図1において、(a)は一般的な制御構成を示す図であり、(b)はこの実施例において用いられる制御構成を示す図である。
図1は記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。図1において、(a)は一般的な制御構成を示す図であり、(b)はこの実施例において用いられる制御構成を示す図である。
まず、図1(a)を参照して一般的なフィードバック制御構成について説明する。
図1(a)に示すように、制御対象(例えば、キャリッジ)21の状態を検出した検出信号(キャリッジの位置、速度)が制御量推定部(例えば、CPU)23に出力され、位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部(例えば、キャリッジドライバ)22に出力され、制御対象21を目標値に収束させるための操作量が演算される。操作量が制御対象21に出力されることでフィードバック制御ループが構成される。
さて、制御対象を安定して動かすためには、制御対象の特性を鑑みつつ制御上の余裕度を確保して、諸々のパラメータ設定を行う必要がある。余裕度が足りないと振動が発生し、発振現象から制御不能に至る場合もある。一方、この余裕度を取りすぎると制御対象の追従性能が低下するが、振動抑制のために追従性能に制限をかけることは避けられない。
次に、図1(b)を参照してこの実施例で用いられるフィードバック制御構成について説明する。
図1(b)に示されているように、このフィードバック制御では、図1(a)で示したフィードバック制御ループに加えて、制御対象21からの検出信号を用いた別のフィードバック制御ループを形成する。即ち、制御対象21の状態を検出した検出信号が制御量推定部23に出力され、キャリッジの位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部22に出力され、第1制御部22で制御対象21を目標値に収束させるための第1操作量が演算される。次に、第1制御部21から第1操作量が出力され、合成部26を経て制御対象21に至ることで、第1のフィードバックループが形成される。
一方、制御対象21の状態を検出した検出信号は状態量推定部25にも出力され、状態量推定部25で第1状態量と第2状態量を推定する。第2状態量は第1状態量を時間微分した関係がある。具体的には、第1状態量と第2状態量は位置と速度の組み合わせ、もしくは速度と加速度の組み合わせからなる値となり、これらが第2制御部24に出力されるものとなる。そして、第2の制御部24で第2操作量が演算される。次に、第2制御部24から第2操作量が出力され、合成部26で第1操作量と第2操作量とが合成されて制御対象21に至る。このように、制御対象21→状態量推定部25→第2制御部24→合成部26→制御対象21という第2のフィードバックループが形成される。
さて、第1状態量と第2状態量は、例えば、キャリッジの位置(x)と速度(v)、又は、キャリッジの速度(v)と加速度(a)の関係になるので、これら2つの状態量(2変数)の関係を2次元座標空間で表現できる。
図2は第1状態量と第2状態量との関係を示す2次元座標空間の図である。図2では、横軸に第1状態量を、縦軸に第2状態量を定義している。
図2に示されるように、その平面において、予め2分割の領域が定義され、その平面が切り替え線と呼ばれる関数により2つの領域に分割されている状態を示している。この領域分割を領域1、領域2と呼ぶ。この切り替え線を表す関数は、第1状態量をS1、第2状態量をS2とすれば、S2=k×S1という関係で表現される一次関数である。ここで、kは切り替え係数である。
図2に示されるように、切り替え線の上部領域(白色)が領域1、下部領域(斜線)が領域2となっている。そして、第1状態量と第2状態量の関係が領域1にある場合には+符号の操作量を出力し、第1状態量と第2状態量の関係が領域2にある場合には−符号の操作量を出力する。なお。動作条件によっては、領域1が−符号、領域2が+符号の場合もありえる。この2つの領域をまたぐ毎に符号が切り替わることで操作量はスイッチング動作に相当する動きを実現するものとなる。この様な操作量が第2操作量として第2制御部24の出力となり、合成部26を経て制御対象21に至る。
第1操作量と第2操作量は非同期に更新されるものであり、これらのタイミングを調整しつつ合算するのが合成部26であり、合算値となる第3操作量を制御対象21に出力する。
この実施例では、第2制御部24は、制御対象21の速度(v)が予め定められた第1閾値より大きい場合(v>v1)に上述した処理に基づいて操作量を出力する。これに対して、速度(v)が第1閾値(v1)よりも小さい場合(v<v1)には操作量としてゼロ(0)を出力する。なお、この実施例では、速度が設定した第1閾値と同じ場合(v=v1)は、速度(v)が第1閾値より大きい場合(v>v1)と同様に、第2制御部24は上述した処理に基づいて操作量を出力する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、速度が第1閾値と同じ場合(v=v1)は、第2制御部24は操作量としてゼロを出力してもよい。
次に、このように動作させる理由について図面を参照して説明する。
図3は特定の外乱周波数が存在する際の速度変動の周波数特性を示す図である。
図3(a)は、実際の加速度と第2制御部24での演算に使用される算出加速度とが一致している場合の結果を示しており、その特性は図中の破線で示している。図3(a)に示すように、全周波数帯において、速度変動はほぼゼロとなっており、良好な結果となっている。
図3(b)は実際の加速度(a)と第2制御部24での演算に使用される算出加速度とに、一定の遅延が存在する場合の結果を示しており、その特性は図中の太実線で示している。演算に使用する加速度は速度の変化量(dv/dt)として算出されるので、この遅延は制御対象21の速度が遅いほどに大きい。図3(b)に示す結果では、外乱周波数における速度変動が残存するとともに、外乱周波数とは異なる高周波の速度変動が生じている。
図3(c)は、図3(b)よりも算出加速度の遅延が大きい、即ち、制御対象21の速度が遅い場合の結果を示している。この場合には、外乱周波数における速度変動が更に大きく残存するとともに、高周波の速度変動も大きくなっている。このように、制御対象21の速度が遅くなるとフィードバック制御性能は徐々に低下してしまうため、第2制御部24は、その効果が十分に得られるように制御対象21の速度が第1閾値以上の時に上述の動作を実行する。なお、第1閾値と比較される制御対象21の速度は、その目標速度を用いてもよいし、検出された速度を用いてもよい。
また、状態量推定部25での状態量算出は、制御対象21の速度(v)と第2閾値とに基づいて、その算出方法を変更する。速度が第2閾値よりも小さい場合には(v<v2)、速度が第2閾値より大きい場合(v>v2)よりも、制御対象21の変位量あたりの算出回数を増加させる。なお、第2閾値は第1閾値より大きいものとする(v2>v1)。この実施例では、例えば、リニアスケールとエンコーダセンサを用いて制御対象21の位置を検出して速度と加速度を算出する場合、制御対象21の速度が第2閾値よりも小さいときにはエンコーダ信号パルスのA相及びB相のそれぞれの両エッジを使用する。これに対して、制御対象21の速度が第2閾値より大きいときには、エンコーダ信号パルスのA相及びB相のうちいずれか一方の片エッジのみを使用する。なお、この実施例では、速度が第2閾値と同じ場合(v=v2)は、速度が第2閾値より大きい場合(v>v2)と同様に、状態量推定部25はエンコーダ信号パルスの片エッジのみを使用する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、速度が第2閾値と同じ場合(v=v2)は、状態量推定部25はエンコーダ信号パルスのA相及びB相のうちいずれか一方の片エッジのみを使用してもよい。
このように動作させる理由について図4を参照して説明する。
図4は制御対象21の速度に応じた速度変動の抑制率を示す図である。
図4において、横軸は制御対象21の速度(v)である。また、縦軸はエンコーダ信号パルスのA相及びB相のうちいずれか一方の片エッジのみで状態量算出をした場合に対するエンコーダ信号パルスのA相及びB相それぞれの両エッジで状態量算出をした場合の速度変動抑制率である。
図4において、抑制率0よりも下側の領域では、片エッジ時を用いた抑制制御よりも両エッジ時を用いた抑制制御の方が速度変動を抑制していることになり、抑制率0よりも上側の領域は両エッジ時よりも片エッジ時の方が速度変動を抑制していることを示す。
図4に示した特性からは、制御対象21がある速度までは両エッジ使用の方が制御性能が高く、それ以上の速度では片エッジ使用の方が制御性能が高いことが理解できる。これは、ある速度までは検出頻度を上げて算出による遅延を抑えた方がよいことを意味する。但し、検出頻度が上がり過ぎると速度や加速度を算出する際の微分要素によって検出誤差が増幅されて性能が劣化することを意味している。このように、制御対象21の速度が変化して制御対象21の状態検出頻度が変化すると制御性能に影響を及ぼすため、状態量推定部25は制御対象21の速度が第2閾値以上か否かで上述のように検出頻度を変更するように動作する。
なお、第2閾値と比較される制御対象21の速度(v)は、その目標速度を用いてもよいし、直前に検出された速度を用いてもよい。
ここで、図1(b)に示したフィードバック制御を、シリアル型記録装置において記録ヘッドを搭載して往復運動するキャリッジの速度制御に適用した例について説明する。
図5は制御対象としてキャリッジの速度プロファイルを示す図である。
図5において、横軸は時間(t)、縦軸はキャリッジの速度(v)である。図5はキャリッジがホームポジションからt=t1で移動開始し、加速して速度vcに達して定速移動に移行し、その後、減速してt=t2で停止する速度プロファイルを描かれている。しかしながら、現実のキャリッジ運動はそのような理想的なものではなく、定速移動中にも外乱などの影響でその速度は微小変動する。速度が微小変動するとは、非常に短い周期で+の加速度と−の加速度が発生することを意味する。
図5には破線で理想的な速度プロファイルを示し、太い実線で定速移動中の微小な速度変動を示している。
この実施例におけるフィードバック制御では、第1制御部22が破線で示す速度プロファイルの制御を担当し、制御対象のキャリッジを所望の加速度条件や速度条件に従って目標位置まで移動させる。第1制御部22は一般的に広く使われているPID制御演算を実行し、制御上の余裕度を鑑みつつ諸々のパラメータ設定が行われ、制御帯域が決定され、その制御帯域内において振動を抑えつつ、所望の動きを実現する。
一方、第2制御部24が太い実線で示す微小な速度変動を抑える制御を担当する。第2制御部24は、第1制御部22の制御帯域を超えた高周波帯域での微小な振動現象(速度変動)を抑制する。このような速度変動を抑制するためには、発生する+の加速度に対しては−の加速度を操作量として与える一方、発生する−の加速度に対しては+の加速度を操作量として与える動作を速度変動の周期に対応した短い周期で行うことが必要である。従って、その制御性能を実現するために十分に短い制御周期が要求されるので、第2制御部24は少なくとも第1制御部22の制御周期よりも短い制御周期で制御が実行される。
このように制御周期が十分に短いことで、第2制御部24では高速なスイッチング動作が実現でき、第1制御部22の制御帯域を超えた領域まで振動抑制(速度変動抑制)が可能になる。従って、制御対象としてのキャリッジの状態が変化して第1制御部22によるフィードバック制御だけでは振動現象が発生するような場合でも、第2制御部24で振動を抑制することが可能になり、追従性を損なうことなく、安定な制御系を構築することができる。
まとめると、加速、定速、減速からなる速度プロファイルをもつ制御対象としてのキャリッジを目標位置に収束させるのが従来のフィードバック制御を行う第1制御部22の役割となる。第1制御部22ではキャリッジの位置と速度の情報からなる制御量を用い、PID制御によるフィードバックループ(第1のフィードバックループ)を構成する。一方、第1制御部22では対応できないキャリッジの微小な速度変動を抑制するのが第2制御部24の役割となる。第2制御部24では、位置と速度、又は、速度と加速度の組み合わせからなる状態量を用い、高速なスイッチング制御によるフィードバックループ(第2のフィードバックループ)を構成する。このため、第2のフィードバックループの制御は、第1のフィードバックループの制御よりも短い演算周期で実行される。
図6はキャリッジモータの駆動制御部に対し、上記の制御構成を適用した際の伝達関数を示した図である。伝達関数は、制御対象としてのキャリッジへの外乱を与えた際の速度変動の抑制利得を出力としたものである。図6において、縦軸は伝達比となる利得(db)であり、横軸は周波数(Hz)である。
図6において、破線で示す曲線Aは第1制御部22のみを動作させた場合に得られる特性で特性である。一方、太い実線で示す曲線Bは第1制御部22と第2制御部24の両方を動作させ合成部26で第3操作量を生成した場合に得られる特性である。曲線Aと曲線Bとを比較すると分かるように、周波数f0よりも高い周波数領域で、曲線Bは小さい値を示し、外乱抑制効果が高いことを示している。周波数f0は、おおよそ第1制御部22の制御帯域を示す。従って、第2制御部24を第1制御部22と合わせて動作させることで、第1制御部22の制御帯域よりも高い周波数帯域(35Hz〜300Hz)で振動抑制効果を発揮する。
2.フィードバック制御の適用例の説明
ここでは、図1(b)を参照して説明したような2つのフィードバックループを形成する制御を適用するシリアル型の記録装置について説明する。
ここでは、図1(b)を参照して説明したような2つのフィードバックループを形成する制御を適用するシリアル型の記録装置について説明する。
<記録装置の説明(図7〜図8)>
図7は本発明の代表的な実施例であるインクジェット方式に従ってインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した記録装置の構成を示す外観斜視図である。
図7は本発明の代表的な実施例であるインクジェット方式に従ってインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した記録装置の構成を示す外観斜視図である。
記録ヘッド2を搭載するキャリッジ(移動物体)3はガイド軸4により摺動自在に支持されて、記録媒体(シート)1の上で往復移動する。キャリッジ3の移動範囲の一端にはプーリ付きのキャリッジモータ(DCモータ)5が配置され、他端にアイドルプーリ6が配置され、これらにタイミングベルト7が掛けまわされ、キャリッジ3とタイミングベルト7が連結されている。
また、ガイド軸4を中心としてキャリッジ3が回転するのを防ぐために、ガイド軸4と平行に延びて設置されたサポート部材8が設置され、キャリッジ3はサポート部材8によっても摺動自在に支持されている。また、記録ヘッド2には多数の記録素子が設けられており、記録装置の本体部から記録ヘッド2に記録素子の駆動信号を供給するためのFFC(フレキシブルフラットケーブル)11が配されている。FFC11は細長くかつ薄いフィルム形状をなしており、その内部または表面に駆動信号を伝達するための導体パターンが形成されており、キャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。
さらに、キャリッジ3の外にインクタンク(不図示)が配置され、インクタンク内に貯留されたインクを記録ヘッド2に供給するチューブ12が配されている。チューブ12はキャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。これらFFC11とチューブ12からなる接続部材10はキャリッジ3と記録装置本体の固定部9との間に接続されている。
また、キャリッジ3の位置情報を取得するために用いられるリニアスケール16は、キャリッジ移動方向(主走査方向)に沿って平行に配置され、キャリッジ3に取り付けられたエンコーダセンサ15で読取る構成となっている。さらに、記録媒体1の幅方向の両外側には記録ヘッド2の予備吐出したインクを回収する為のインク回収口14a、14bが設けられている。この予備吐出とは、記録開始直前もしくは記録実行中にノズル先端部に付着したインクを記録とは無関係な位置で排出する為の動作である。
このような構成により、キャリッジ3は矢印A方向(主走査方向)に往復移動する。また、記録媒体1は、搬送モータ(不図示)によってキャリッジ3と垂直に交差する矢印Bの方向(副走査方向)に搬送される。
図8は図7に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図8に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。なお、MPU601の代わりにCPUを使用してもよく、プログラムに基づき処理を実行可能なプロセッサであればよい。
ASIC603は、キャリッジモータ5の制御、搬送モータ20の制御、及び、記録ヘッド2の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
また、図8において、610は画像データの供給源となるホスト装置である。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等を、例えば、USB規格に基づくプロトコルを用いて送受信する。
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、印刷の開始指示などを行うプリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
630は装置状態を検出するためのセンサ群であり、エンコーダセンサ15、温度センサ632等から構成される。
さらに、640はキャリッジ3を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータ5を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータ20を駆動させる搬送モータドライバである。
ASIC603は、記録ヘッドによる記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して記録素子(吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される操作パネル18が備えられている。また、装置実装上は、スイッチ群620が操作パネル18に含まれていても良い。
ASIC603は画像処理やアクチュエータ制御を行うため演算処理部として動作し、MPU601から命令を受けて演算処理を実行する。詳細は後述するが、ループバック制御演算の一部はASIC29で実行される。MPU601はキャリッジのフィードバック制御のための演算の一部を担当し、印刷シーケンスに従って、キャリッジモータ5の駆動演算を実行する。インタフェース611を経由してホスト装置610からプリント命令が発行された際、記録動作のためにキャリッジ3が往復動作する。
3.記録装置のキャリッジ制御のためのフィードバック制御構成の詳細
ここでは、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御構成を、図7〜図8を参照して説明した記録装置のキャリッジ駆動制御への適用について詳細に説明する。
ここでは、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御構成を、図7〜図8を参照して説明した記録装置のキャリッジ駆動制御への適用について詳細に説明する。
図9は図7〜図8で示した記録装置におけるキャリッジ駆動制御の詳細を説明するブロック図である。
記録装置のキャリッジ制御には、記録ヘッド2による印刷品位を担保するために正確な位置にインクを着弾させるための精度が求められる。記録ヘッド2からのインク液滴の吐出タイミングはキャリッジ3の移動速度(v)から算出されるものであり、その速度変動を最小化することが重要になる。その為、この実施例に従うフィードバック制御における抑制すべき振動対象は、キャリッジ速度になる。従って、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御における第1状態量と第2状態量は、キャリッジの速度と加速度の組み合わせとなり、これらの状態量が第2制御部24に入力される。
また、フィードバック制御における制御対象はキャリッジ3となり、エンコーダセンサ15からエンコーダ信号が制御量推定部23と制御量推定部25に出力される。一般的にエンコーダ信号は、A相B相と呼ばれる位相が90度異なる2本のパルス信号が用いられる。この実施例においてもA相B相の2本のパルス信号をエンコーダ信号として用いる。
図10はA相B相のエンコーダ信号を示す図である。
制御量推定部23はこのパルス信号をカウントすることで位置情報を推定し、パルス信号のエッジ間隔を計測することで速度情報を推定する。この位置・速度情報等が制御量として、第1制御部22に相当するPID制御演算部36に出力される。
目標値演算部35は、キャリッジ3を所望の加速度条件や速度条件に従って目標位置まで移動させるための目標プロファイルを生成し、これを目標値として出力する。PID制御演算部35は、目標値演算部35からの目標値と制御量推定部23からの制御量とを用いてPID制御演算を行い、第1操作量として出力する。
エンコーダセンサ15からのエンコーダ信号は状態量推定部25にも出力される。状態量推定部25は、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値も入力される。レジスタ設定値は、目標値演算部35からの目標値を、前処理演算部38により状態量推定部内で使用する単位系に置換した値である。状態量推定部25は、エンコーダ信号から速度情報と加速度情報とを推定し、動作目標となるレジスタ設定値との誤差量を計算する。そして、その誤差量となる速度誤差量、加速度誤差量の2つが速度次元と加速度次元の状態量の組み合わせとして、第2制御部24に相当するスライディングモード制御演算部39に出力される。
既に述べたように、状態量推定部25では、制御対象21の速度(v)に応じて状態量を推定する頻度を変更する。この実施例では、制御対象21であるキャリッジ3の速度(v)が第2閾値未満(v<v2)の場合には頻度を高く、第2閾値以上の時には頻度を低くするように変更する。
具体的には、前者(v<v2)の場合はエンコーダ信号A相B相それぞれの立ち上がり、立ち下がりの両エッジ全てのタイミングで状態量を推定する。後者(v≧v2)の場合はエンコーダ信号のA相の立ち上がりエッジのタイミングのみで状態量を推定する。なお、この実施例では、後者(v≧v2)の場合に、閾値を複数設定し、上記2つの場合の中間として、A相のみの立ち上がり及び立ち下がりの両エッジのタイミングで状態量を算出するようにしてもよい。
スライディングモード制御演算部39では、速度誤差量、加速度誤差量の2変数からなる2次元平面空間が形成される。図2を参照して説明した2次元平面の領域判別は、
S = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 速度誤差量
から求められる。ここで、S>0であれば、現状態量は切り替え線の上部となる領域1に位置する。これに対して、S<0であれば、現状態量は切り替え線の下部となる領域2に位置する。S=0の場合は、S>0かS<0のどちらか一方と定義して扱うものとなる。そして、その領域判別結果に基づき操作量の符号が決定され、第2操作量として出力される。なお、切り替え係数も、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値により更新される。
S = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 速度誤差量
から求められる。ここで、S>0であれば、現状態量は切り替え線の上部となる領域1に位置する。これに対して、S<0であれば、現状態量は切り替え線の下部となる領域2に位置する。S=0の場合は、S>0かS<0のどちらか一方と定義して扱うものとなる。そして、その領域判別結果に基づき操作量の符号が決定され、第2操作量として出力される。なお、切り替え係数も、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値により更新される。
また、既に述べたように、第2制御部24は制御対象21の速度が第1閾値以上の場合にのみ演算処理に基づく操作量を出力するものなので、上記のスライディングモード制御演算部39は同様に構成される。制御対象21の速度が第1閾値よりも小さい場合には、スライディングモード制御演算部39はゼロを出力する。なお、この実施例では、速度が第1閾値よりも小さい場合には、スライディングモード制御演算部39は、操作量の生成を停止することにより、出力をゼロとしている。しかしながら、本発明はこの実施例に限定されない。例えば、速度が第1閾値よりも小さい場合において、スライディングモード制御演算部39は操作量の生成は行うが、出力はゼロとしてもよい。また、スライディングモード制御演算部39がゼロを出力するとは、ゼロという値を出力する場合だけでなく、出力しない場合も含むものとする。
ここで、第1操作量と第2操作量の更新タイミングについて説明する。
第1操作量はPID制御演算部36が実行される毎に更新される。図1(b)に示したフィードバック制御が適用される記録装置のキャリッジモータ駆動制御部(キャリッジモータドライバ)には、1KHz程度の周期で制御演算が実行されることが多い。これに対して、第2操作量はスライディングモード制御演算部39が実行される毎に更新される。ここでは、エンコーダ信号のパルス変化を想定しており、およそ数KHz〜20KHz程度の周期で制御演算が実行される。このような非同期な関係な入力に対し、合成部26ではタイミングを調整しつつ第1操作量と第2操作量とを合算する。合成部26では、操作量の合算結果に基づくPWM信号をモータドライバ640に出力する。そして、モータドライバ640によりキャリッジモータ5が回転し、タイミングベルト7を経由してキャリッジ3が移動する。
スライディングモード制御演算部39をエンコーダ信号のパルス変化に起因した高速演算を実現するため、ここではASIC等のハードウェアで実行することを想定している。
図7において、2点鎖線で囲まれた範囲がASIC603において実現される。図7から分かるように、ASIC603は、スライディングモード制御演算部39、状態量推定部23、状態量推定部25、合成部26の機能を担当する。これに対して、図7において、太い点線で囲まれた範囲はMPU601においてプログラムを実行することにより実現される。図7から分かるように、MPU601は、PID制御演算部36、目標値演算部35、前処理演算部38の機能を担当する。
このように、MPU601とASIC603とでフィードバック制御を分担するのは、ASIC603で実現される部分で扱われる情報の更新周期が、MPU601で実現される部分で扱われる情報の更新周期よりも短いためである。
目標値演算部35により目標値が更新される毎に前処理演算部38も実行され、ASIC603のレジスタ領域に、最新のレジスタ設定値が設定される。前処理部演算部38では、スライディングモード制御演算39で実行する位相切り替え線の演算や状態量推定部25の推定演算で時々刻々と変化する変数値の一部を、PID制御演算部36の演算周期の間のみパラメータ値として管理するための計算を行う。フィードバック制御全てをASICで実行することは集積回路の肥大化を招き、処理の柔軟性や融通性を欠くものとなるので、この実施例では、演算精度と回路規模で折り合いをつけ、計算の一部をMPUの前処理演算部38が更新タイミングで実行する。
また、スライディングモード制御演算部39で用いる制御パラメータを、キャリッジ3の動作状態により変更しても良い。その場合、目標値演算部35による目標値から、キャリッジ3が加速状態や定速状態や減速状態のうち、いずれの状態の区間にあるかの判別を行う。そして、その区間ごとに、位相切り替え線の算出に用いる切り替え係数を変更することで、キャリッジ動作条件に応じた適切な切り替え線を選択し、速やかな収束を実現できる。
図11はキャリッジを往復移動させるキャリッジモータ駆動制御を示すフローチャートである。
駆動制御が開始されると、まずステップS1では第2制御部24の出力をゼロ(0)に設定する。第2制御部24の出力がゼロであれば、キャリッジモータの駆動は第1制御部22によってのみフィードバック制御される。次のステップS2では、状態量推定部25の推定演算頻度が“高く”なるように状態推定演算に使用するエンコーダ信号パルスのエッジをA相B相の両エッジに設定する。そして、ステップS3ではキャリッジモータ5の駆動を開始する。
その後、キャリッジ3の速度(v)が目標値に追従するように第1制御部22によりフィードバック制御が行なわれ、ステップS4では、制御対象としてのキャリッジ3の速度(v)が第1閾値以上であるかどうかを調べる。ここで、キャリッジ3の速度(v)が第1閾値以上(v≧v1)であると判断されるまで、キャリッジモータ5の駆動を続ける。これに対して、キャリッジ3の速度(v)が第1閾値以上(v≧v1)であると判断されると処理はステップS5に進み、第2制御部24での処理と、操作量出力を開始する。
更に、ステップS6ではキャリッジ3の速度(v)が第1閾値より大きい第2閾値以上であるかどうかを調べる。ここで、キャリッジ3の速度(v)が第2閾値以上(v≧v2)であると判断されるまで、第2制御部24での処理と操作量出力を続ける。これに対して、キャリッジ3の速度(v)が第2閾値以上(v≧v2)であると判断されると処理はステップS7に進む。
ステップS7では、状態量推定部25の推定演算頻度が低くなるように状態推定演算に使用するエンコーダ信号エッジをA相の片エッジに設定する。これにより、状態量推定部25における推定頻度が“低く”なる。その後、ステップS8では、キャリッジ3の速度(v)が第2閾値未満であるかどうかを調べる。ここで、キャリッジ3の速度(v)が第2閾値未満(v<v2)であると判断されるまで、状態量推定部25での低頻度での推定を続ける。これに対して、キャリッジ3の速度(v)が第2閾値未満(v<v2)であると判断されると処理はステップS9に進む。
ステップS9では、状態量推定部25の状態推定演算に使用するエンコーダ信号エッジをA相B相の両エッジに設定する。これにより、状態量推定部25における推定頻度が“高く”なる。その後、ステップS10では、キャリッジ3の速度(v)が第1閾値未満(v<v1)となったかどうかを調べる。ここで、キャリッジ3の速度(v)が第1閾値未満(v<v1)であると判断されるまで、状態量推定部25での高頻度での推定を続ける。これに対して、キャリッジ3の速度(v)が第1閾値未満(v<v1)であると判断されると処理はステップS11に進み、第2制御部24での処理を停止して操作量出力をゼロに設定する。
その後、第1制御部22によりキャリッジ3が停止するまでキャリッジモータ5のフィードバック制御が行なわれ、ステップS12で、キャリッジモータ5の駆動を停止し、一回の駆動制御動作が終了する。
従って以上説明した実施例に従えば、第1制御部と第2制御部からなるフィードバック制御構成を記録装置のキャリッジ駆動制御に適用し、キャリッジ速度に従って第2制御部の処理と出力とを制御するとともに、状態量推定部の推定頻度を切替える。これにより、フィードバック制御の制御対象物であるキャリッジ振動抑制と追従性を両立できるので、キャリッジ駆動制御をより精確に行うことが可能になり、高品位な画像記録を実現することができる。
なお、以上説明した実施例では、キャリッジ速度に応じた第2制御部の動作・停止の制御と、状態推定部25の推定演算頻度の変更の両方を行うとしていたが、本発明はこれに限定されるものではない。いずれか一方のみ、例えば、キャリッジ速度に応じた第2制御部の動作・停止の制御のみを実行するようにしても良い。
また、上記実施例では、速度が第1閾値よりも小さい場合には、第2制御部の動作を停止して出力をゼロとすることにより、合成部26へは第1制御部からの出力(第1操作量)のみが入力された。よって結果的に、速度が第1閾値よりも小さい場合には、合成部26は、第1操作量のみを用いて対象物の操作量を生成した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、速度が第1閾値よりも小さい場合に、第2制御部は第2操作量を生成して出力するものの、合成部26は、入力された第2操作量は用いず、第1操作量のみを用いて対象物の操作量を生成してもよい。つまり、いずれの場合であっても、本発明の実施形態では、速度が第1閾値よりも小さい場合には、合成部26は、第1操作量と第2操作量とのうち第1操作量のみを用いて対象物の操作量を生成する。
図12はキャリッジ速度に応じて第2制御部のみを動作させてキャリッジを往復移動させるキャリッジモータ駆動制御を示すフローチャートである。なお、図12において、既に図11を参照して説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付して、その説明を省略する。
図12によれば、図11に示したフローチャートから状態推定部25に係る処理を省略し、ステップS1、S3、S4、S5、S10、S11、S12のみを実行する。
3.フィードバック制御の別の適用例の説明
本発明は上述のように、モータの駆動により物体を移動させるものであれば適用することが可能なので、例えば、多機能プリンタ(MFP)のスキャナユニットや単機能のスキャナ装置のCISやCCDセンサを移動させるスキャナモータの制御に適用できる。
本発明は上述のように、モータの駆動により物体を移動させるものであれば適用することが可能なので、例えば、多機能プリンタ(MFP)のスキャナユニットや単機能のスキャナ装置のCISやCCDセンサを移動させるスキャナモータの制御に適用できる。
スキャナユニットは、画像読取性能を担保するためにCISやCCDセンサの光源点灯タイミングとスキャナユニットの移動量を一致させて画像信号を取得する必要がある。通常、光源点灯タイミングは、スキャナユニットの移動速度が一定であることを前提としているので、スキャナユニットの速度変動を抑制することが重要である。このため、抑制すべき振動対象がスキャナユニットの移動速度になるので、速度と加速度の状態量の組み合わせを上述の第2制御部を適用する。そして、基本的には、図7を参照して説明したキャリッジ制御構成と同じ構成で制御すれば良い。
これにより、従来の制御のみでは抑えきれなかったスキャナユニットの高周波数での微小な振動を抑制するとともに、フィードバック制御追従性を改善することができる。その結果、高品位な画像読取が達成できる。
さらに本発明は図7〜図8で説明したような記録装置の搬送ローラ駆動制御にも適用できる。記録装置ではキャリッジ走査ごとに搬送ローラを回転させて、記録媒体を間欠搬送するが、このときの搬送量変動を抑制するために本発明のフィードバック制御を適用することができる。この場合、制御対象物は記録媒体の搬送量となるので、搬送ローラの回転量を第1状態量とし、搬送ローラの回転速度を第2状態量として上述の第2制御部に入力すればよい。
これにより、より高精度な搬送制御を実現することが可能になる。
1 記録媒体、2 記録ヘッド、3 キャリッジ、4 ガイド軸、
5 キャリッジモータ、6 アイドルプーリ、7 タイミングベルト、
8 サポート部材、9 固定部、10 接続部材、11 FFC、12 チューブ、
13 サブフレーム、14a、14b インク回収口、15 エンコーダセンサ、
16 リニアスケール
5 キャリッジモータ、6 アイドルプーリ、7 タイミングベルト、
8 サポート部材、9 固定部、10 接続部材、11 FFC、12 チューブ、
13 サブフレーム、14a、14b インク回収口、15 エンコーダセンサ、
16 リニアスケール
Claims (12)
- 対象物の移動を制御する電子機器であって、
前記対象物の移動を検出する検出手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定手段と、
前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、
前記第2の推定手段により推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成手段と、
前記対象物への操作量を生成する合成手段と、を備え、
前記合成手段は、前記第2の推定手段によって推定された前記対象物の前記第1状態量又は予め定められた目標値が第1閾値より大きい場合は、前記第1操作量と前記第2操作量とに基づき前記対象物への操作量を生成し、前記対象物の前記第1状態量又は前記目標値が前記第1閾値未満の場合は、前記第1操作量と前記第2操作量のうち前記第1操作量のみを用いて前記対象物への操作量を生成することを特徴とする電子機器。 - 前記第2の推定手段は、前記対象物の前記第1状態量が前記第1閾値より大きい値である第2閾値より大きい場合における前記第2状態量の推定頻度よりも、前記対象物の前記第1状態量が前記第2閾値未満の場合における前記第2状態量の推定頻度を高くすることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
- 前記対象物の前記第1状態量又は前記目標値が前記第1閾値未満の場合、前記第2の生成手段からの出力がゼロとなることにより、前記合成手段は、前記第1操作量と前記第2操作量のうち前記第1操作量のみを用いて前記対象物への操作量を生成することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
- 前記対象物の前記第1状態量又は前記目標値が前記第1閾値未満の場合、前記第2の生成手段が前記第2操作量の生成を行わないことにより前記第2の生成手段からの出力がゼロとなり、前記第1のフィードバック制御と前記第2のフィードバック制御とのうち前記第1のフィードバック制御のみを用いて前記対象物の移動が制御されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
- 前記第1状態量と前記第2状態量の組み合わせは、前記対象物の速度と加速度であることであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の電子機器。
- 前記電子機器は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であり、
前記対象物は前記キャリッジであることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電子機器。 - 前記第1状態量は、前記キャリッジの速度であり、
前記第2状態量は、前記キャリッジの加速度であることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。 - 前記検出手段は、前記キャリッジの位置を検出するエンコーダセンサを備え、
前記第2の推定手段は、前記エンコーダセンサから出力されるエンコーダ信号パルスのエッジ間隔を計測することで前記キャリッジの速度を推定することを特徴とする請求項6又は7に記載の電子機器。 - 前記第2の推定手段は、前記キャリッジの速度が前記第2閾値未満の場合は、前記エンコーダ信号パルスのA相とB相それぞれの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを用いて前記キャリッジの速度を推定し、前記キャリッジの速度が前記第2閾値より大きい場合は、前記エンコーダ信号パルスのエッジとしてA相とB相のうちいずれか一方の片エッジのみを用いて前記キャリッジの速度を推定することを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
- 前記第1の生成手段は、プログラムをプロセッサが実行することにより実現され、
前記第1の推定手段と、前記第2の推定手段と、前記第2の生成手段と、前記合成手段とはASICにより実現されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子機器。 - 前記電子機器は、CIS又はCCDセンサを搭載したスキャナユニットを移動させて前記スキャナユニットにより原稿の画像を読取るスキャナ装置、又は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置に該スキャナ装置を備えた多機能プリンタであり、
前記対象物は前記スキャナユニットであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子機器。 - 対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、
前記対象物の移動を検出する検出工程と、
前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、
前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定工程と、
前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、
前記第2の推定工程において推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成工程と、
前記対象物への操作量を生成する合成工程と、を備え、
前記合成工程では、前記第2の推定工程において推定された前記対象物の前記第1状態量又は予め定められた目標値が第1閾値より大きい場合は、前記第1操作量との前記第2操作量とに基づき前記対象物への操作量を生成し、前記対象物の前記第1状態量又は前記目標値が前記第1閾値未満の場合は、前記第1操作量と前記第2操作量のうち前記第1操作量のみを用いて前記対象物への操作量を生成することを特徴とする制御方法。
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