JP2021066013A - 電子機器及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャリッジのフィードバック制御の追従性とキャリッジ速度の振動抑制を両立できる制御を提供する。【解決手段】駆動手段の駆動により移動される対象物を検出し、その検出により出力される検出信号に基づいて、第1の周期で対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する。これとともに、その検出信号に基づいて、第1の周期より短い第2の周期で対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、対象物の状態量を推定する。さらに、推定された制御量に基づいて、第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成し、推定された状態量とに基づいて、第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する。そして、生成された第1操作量と第2操作量に関する情報を切替えて転送し、その転送された第1操作量と第2操作量から対象物への第3操作量を生成し、第3操作量により駆動手段を駆動する。【選択図】図7
Description
本発明は電子機器及びその制御方法に関し、特に、例えば、シリアル型の記録装置のキャリッジ等の移動物体の駆動制御の技術に関する。
シリアル型プリンタにおいてモータにより往復移動するキャリッジの駆動はエンコーダを用いたPID制御などのフィードバック制御が一般的である。シリアル型のインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する記録ヘッドを搭載するキャリッジの走査を行う駆動部では、インク着弾位置の安定化のためにキャリッジ走査時の速度変動が重視されている。このため、キャリッジの速度変動を安定化させる制御を実現することが求められている。
特許文献1に記載の印刷装置およびゲイン補正方法では、特定の制御対象を動作させた所定期間における速度変動量に基づいた補正比率に応じて、PID制御のための定数(ゲイン)を補正する。特許文献1によれば、速度変動量が大きいほどPID制御のための補正比率を小さくすることができ、その結果、過剰な変動が抑制され、制御対象の速度変動の収束を実現させることができる。
特許文献1の印刷装置およびゲイン補正方法では、制御対象の速度変動を収束させるために、制御対象の制御ゲインを結果的に下げることになる。このため、制御対象物の過剰な振動を抑制することは可能かもしれないが、制御対象物の応答性を損なうことになる。制御対象物の状態変化の中における振動抑制と追従性の両立が課題となる。
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、フィードバック制御の追従性と制御対象物の振動抑制を両立できる電子機器とその制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の電子機器は、以下の構成を備える。
即ち、対象物の移動を制御する電子機器であって、前記対象物を移動させる駆動手段と、前記駆動手段の駆動により移動される前記対象物を検出する検出手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の状態量を推定する第2の推定手段と、前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、前記第2の推定手段により推定された前記状態量に基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成手段と、前記第1の生成手段により生成された前記第1操作量と前記第2操作量に関する情報を切替えて転送する転送手段と、前記転送手段により転送された前記第1操作量と前記情報に基づいた前記第2操作量から前記対象物への第3操作量を生成し、該第3操作量により前記駆動手段を駆動する合成手段とを有することを特徴とする。
また本発明を別の側面から見れば、駆動手段を駆動することで移動される対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、前記駆動手段の駆動により移動される前記対象物を検出する検出工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の状態量を推定する第2の推定工程と、前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、前記第2の推定工程において推定された前記状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成工程と、前記第1の生成工程において生成された前記第1操作量と前記第2操作量に関する情報を切替えて転送する転送工程と、前記転送工程において転送された前記第1操作量と前記情報に基づいた前記第2操作量から前記対象物への第3操作量を生成し、該第3操作量により前記駆動手段を駆動する合成工程とを有することを特徴とする制御方法を備える。
本発明によれば、フィードバック制御の追従性と制御対象物の振動抑制を両立することができるという効果がある。
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には、複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられても良い。さらに添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
以下の説明においては、電子機器の代表的な例としてシリアル型記録装置のキャリッジを移動させるモータの駆動制御を例に挙げる。しかし、記録装置のキャリッジに限らず、モータの駆動により物体を移動させるものであれば、本発明のモータ制御を適用することが可能である。例えば、その記録装置において、記録用紙などの記録媒体を搬送するために用いる搬送モータの駆動制御に適用することもできる。さらには、CCDラインスキャナやCISなどをモータを駆動して移動させながら原稿の画像を光学的に読取るスキャナ装置なども本発明に含まれる。
1.フィードバック制御の説明
図1は記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。図1において、(a)は一般的な制御構成を示す図であり、(b)はこの実施例において用いられる制御構成を示す図である。
図1は記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。図1において、(a)は一般的な制御構成を示す図であり、(b)はこの実施例において用いられる制御構成を示す図である。
まず、図1(a)を参照して一般的なフィードバック制御構成について説明する。
図1(a)に示すように、制御対象(例えば、キャリッジ)21の状態を検出した検出信号(キャリッジの位置、速度)が制御量推定部(例えば、CPU)23に出力され、位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部(例えば、キャリッジドライバ)22に出力され、制御対象21を入力される目標値に収束させるための操作量が演算される。操作量が制御対象21に出力されることでフィードバック制御ループが構成される。
さて、制御対象を安定して動かすためには、制御対象の特性を鑑みつつ制御上の余裕度を確保して、諸々のパラメータ設定を行う必要がある。余裕度が足りないと振動が発生し、発振現象から制御不能に至る場合もある。一方、この余裕度を取りすぎると制御対象の追従性能が低下するが、振動抑制のために追従性能に制限をかけることは避けられない。
次に、図1(b)を参照してこの実施例で用いられるフィードバック制御構成について説明する。
図1(b)に示されているように、このフィードバック制御では、図1(a)で示したフィードバック制御ループに加えて、制御対象21からの検出信号を用いた別のフィードバック制御ループを形成する。即ち、制御対象21の状態を検出した検出信号が制御量推定部23に出力され、キャリッジの位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部22に出力され、第1制御部22で制御対象21を目標値に収束させるための第1操作量が演算される。次に、第1制御部21から第1操作量が出力され、合成部26を経て制御対象21に至ることで、第1のフィードバックループが形成される。
一方、制御対象21の状態を検出した検出信号は状態量推定部25にも出力され、状態量推定部25で第1状態量と第2状態量を推定する。第2状態量は第1状態量を時間微分した関係がある。具体的には、第1状態量と第2状態量は位置と速度の組み合わせ、もしくは速度と加速度の組み合わせからなる値となり、これらが第2制御部24に出力されるものとなる。そして、第2の制御部24で第2操作量が演算される。次に、第2制御部24から第2操作量が出力され、合成部26で第1操作量と第2操作量とが合成されて制御対象21に至る。このように、制御対象21→状態量推定部25→第2制御部24→合成部26→制御対象21という第2のフィードバックループが形成される。
さて、第1状態量と第2状態量は、例えば、キャリッジの位置(x)と速度(v)、又は、キャリッジの速度(v)と加速度(a)の関係になるので、これら2つの状態量(2変数)の関係を2次元空間で表現できる。
図2は第1状態量と第2状態量との関係を示す2次元座標空間の図である。図2では、横軸に第1状態量を、縦軸に第2状態量を定義している。
図2に示されるように、その平面において、予め2分割の領域が定義され、その平面が切り替え線と呼ばれる関数により2つの領域に分割されている状態を示している。この領域分割を領域1、領域2と呼ぶ。この切り替え線を表す関数は、第1状態量をS1、第2状態量をS2とすれば、S2=k×S1という関係で表現される一次関数である。ここで、kは切り替え係数である。
図2に示されるように、切り替え線の上部領域(白色)が領域1、下部領域(斜線)が領域2となっている。そして、第1状態量と第2状態量の関係が領域1にある場合には+符号の操作量を出力し、第1状態量と第2状態量の関係が領域2にある場合には−符号の操作量を出力する。なお。動作条件によっては、領域1が−符号、領域2が+符号の場合もありえる。この2つの領域をまたぐ毎に符号が切り替わることで操作量はスイッチング動作に相当する動きを実現するものとなる。この様な操作量が第2操作量として第2制御部24の出力となり、合成部26を経て制御対象21に至る。
第1操作量と第2操作量は非同期に更新されるものであり、これらのタイミングを調整しつつ合算するのが合成部26であり、合算値となる第3操作量を制御対象21に出力する。
ここで、図1(b)に示したフィードバック制御を、シリアル型記録装置において記録ヘッドを搭載して往復運動するキャリッジの速度制御に適用した例について説明する。
2.フィードバック制御の適用例の説明
まず、図1(b)を参照して説明したような2つのフィードバックループを形成する制御を適用するシリアル型の記録装置について説明する。
まず、図1(b)を参照して説明したような2つのフィードバックループを形成する制御を適用するシリアル型の記録装置について説明する。
<記録装置の説明(図3〜図4)>
図3は本発明の代表的な実施例であるインクジェット方式に従ってインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した記録装置の構成を示す外観斜視図である。
図3は本発明の代表的な実施例であるインクジェット方式に従ってインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した記録装置の構成を示す外観斜視図である。
記録ヘッド2を搭載するキャリッジ(移動物体)3はガイド軸4により摺動自在に支持されて、記録媒体(シート)1の上で往復移動する。キャリッジ3の移動範囲の一端にはプーリ付きのキャリッジモータ(DCモータ)5が配置され、他端にアイドルプーリ6が配置され、これらにタイミングベルト7が掛けまわされ、キャリッジ3とタイミングベルト7が連結されている。
また、ガイド軸4を中心としてキャリッジ3が回転するのを防ぐために、ガイド軸4と平行に延びて設置されたサポート部材8が設置され、キャリッジ3はサポート部材8によっても摺動自在に支持されている。また、記録ヘッド2には多数の記録素子が設けられており、記録装置の本体部から記録ヘッド2に記録素子の駆動信号を供給するためのFFC(フレキシブルフラットケーブル)11が配されている。FFC11は細長くかつ薄いフィルム形状をなしており、その内部または表面に駆動信号を伝達するための導体パターンが形成されており、キャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。
さらに、キャリッジ3の外にインクタンク(不図示)が配置され、インクタンク内に貯留されたインクを記録ヘッド2に供給するチューブ12が配されている。チューブ12はキャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。これらFFC11とチューブ12からなる接続部材10はキャリッジ3と記録装置本体の固定部9との間に接続されている。
また、キャリッジ3の位置情報を取得するために用いられるリニアスケール16は、キャリッジ移動方向(主走査方向)に沿って平行に配置され、キャリッジ3に取り付けられたエンコーダセンサ15で読取る構成となっている。さらに、記録媒体1の幅方向の両外側には記録ヘッド2の予備吐出したインクを回収する為のインク回収口14a、14bが設けられている。この予備吐出とは、記録開始直前もしくは記録実行中にノズル先端部に付着したインクを記録とは無関係な位置で排出する為の動作である。
このような構成により、キャリッジ3は矢印A方向(主走査方向)に往復移動する。また、記録媒体1は、搬送モータ(不図示)によってキャリッジ3と垂直に交差する矢印Bの方向(副走査方向)に搬送される。
図4は図3に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図4に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。
ASIC603は、キャリッジモータ5の制御、搬送モータ20の制御、及び、記録ヘッド2の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
また、図4において、ホスト装置610は画像データの供給源となる。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等を、例えば、USB規格に基づくプロトコルを用いて送受信する。
さらに、スイッチ群620は、電源スイッチ621、印刷の開始指示などを行うプリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
装置状態を検出するためのセンサ群630は、エンコーダセンサ15、温度センサ632等から構成される。
さらに、モータドライバ640はキャリッジ3を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータ5を駆動するとともに、記録媒体Pを搬送するための搬送モータ20を駆動する。なお、モータドライバ640はキャリッジモータ5と搬送モータ20に加えて、記録媒体Pを積載したADF(不図示)から記録装置にフィードするためのフィードモータなど他のモータを駆動することもできる。
ASIC603は、記録ヘッドによる記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して記録素子(吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される操作パネル18が備えられている。また、装置実装上は、スイッチ群620が操作パネル18に含まれていても良い。
ASIC603は画像処理やアクチュエータ制御を行うため演算処理部として動作し、MPU601から命令を受けて演算処理を実行する。詳細は後述するが、ループバック制御演算の一部はASIC603で実行される。MPU601はキャリッジのフィードバック制御のための演算の一部を担当し、印刷シーケンスに従って、キャリッジモータ5の駆動演算を実行する。インタフェース611を経由してホスト装置610からプリント命令が発行された際、記録動作のためにキャリッジ3が往復動作する。
記録装置のモータドライバ640は複数のモータを制御可能であるが、ここでは説明を簡単にするため図1(b)を参照して説明したフィードバック制御構成を、図3〜図4を参照して説明した記録装置のキャリッジ駆動制御への適用について詳細に説明する。
3.記録装置のキャリッジ制御のためのフィードバック制御構成の詳細
図5は図3〜図4で示した記録装置におけるキャリッジ駆動制御の詳細を説明するブロック図である。
図5は図3〜図4で示した記録装置におけるキャリッジ駆動制御の詳細を説明するブロック図である。
記録装置のキャリッジ制御には、記録ヘッド2による印刷品位を担保するために正確な位置にインクを着弾させるための精度が求められる。記録ヘッド2からのインク液滴の吐出タイミングはキャリッジ3の移動速度(v)から算出されるものであり、その速度変動を最小化することが重要になる。その為、この実施例に従うフィードバック制御における抑制すべき振動対象は、キャリッジ速度になる。従って、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御における第1状態量と第2状態量は、キャリッジの速度と加速度の組み合わせとなり、これらの状態量が第2制御部24に入力される。
また、フィードバック制御における制御対象はキャリッジ3となり、エンコーダセンサ15からエンコーダ信号が制御量推定部23と制御量推定部25に出力される。一般的にエンコーダ信号は、A相B相と呼ばれる位相が90度異なる2本のパルス信号が用いられる。この実施例においてもA相B相の2本のパルス信号をエンコーダ信号として用いる。
図6はA相B相のエンコーダ信号を示す図である。
制御量推定部23はこのパルス信号をカウントすることで位置情報を推定し、パルス信号のパルス幅を計測することで速度情報を推定する。この位置・速度情報等が制御量として、第1制御部22に相当するPID制御演算部36に出力される。
目標値演算部35は、キャリッジ3を所望の加速度条件や速度条件に従って目標位置まで移動させるための目標プロファイルを生成し、これを目標値として出力する。PID制御演算部35は、目標値演算部35からの目標値と制御量推定部23からの制御量とを用いてPID制御演算を行い、第1操作量として出力する。
エンコーダセンサ15からのエンコーダ信号は状態量推定部25にも出力される。状態量推定部25は、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値も入力される。レジスタ設定値は、目標値演算部35からの目標値を、前処理演算部38により状態量推定部内で使用する単位系に置換した値である。状態量推定部25は、エンコーダ信号から速度情報と加速度情報とを推定し、動作目標となるレジスタ設定値との誤差量を計算する。そして、その誤差量となる速度誤差量、加速度誤差量の2つが速度次元と加速度次元の状態量の組み合わせとして、第2制御部24に相当するスライディングモード制御演算部39に出力される。
スライディングモード制御演算部39では、速度誤差量、加速度誤差量の2変数からなる2次元平面空間が形成される。図2を参照して説明した2次元平面の領域判別は、
位相切り替え線(S) = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 速度誤差量
から求められる。ここで、S>0であれば、現在の状態量は切り替え線の上部となる領域1に位置する。これに対して、S<0であれば、現在の状態量は切り替え線の下部となる領域2に位置する。また、S=0の場合は、S>0かS<0のどちらか一方と定義して扱うものとなる。そして、その領域判別結果に基づき操作量の符号が決定され、第2操作量として出力される。なお、切り替え係数も、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値により更新される。ただし、特別な場合として位相切り替え線は、加速度誤差量また速度誤差量の両方を使用せずに何れか1方のみであっても良い。
位相切り替え線(S) = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 速度誤差量
から求められる。ここで、S>0であれば、現在の状態量は切り替え線の上部となる領域1に位置する。これに対して、S<0であれば、現在の状態量は切り替え線の下部となる領域2に位置する。また、S=0の場合は、S>0かS<0のどちらか一方と定義して扱うものとなる。そして、その領域判別結果に基づき操作量の符号が決定され、第2操作量として出力される。なお、切り替え係数も、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値により更新される。ただし、特別な場合として位相切り替え線は、加速度誤差量また速度誤差量の両方を使用せずに何れか1方のみであっても良い。
ここで、第1操作量と第2操作量の更新タイミングについて説明する。
第1操作量はPID制御演算部36が実行される毎に更新される。図1(b)に示したフィードバック制御が適用される記録装置のキャリッジモータ駆動制御部(キャリッジモータドライバ)には、1KHz程度の周期で制御演算が実行されることが多い。これに対して、第2操作量はスライディングモード制御演算部39が実行される毎に更新される。ここでは、エンコーダ信号のパルス変化を想定しており、およそ数KHz〜20KHz程度の周期で制御演算が実行される。このような非同期な関係な入力に対し、合成部26ではタイミングを調整しつつ合算する。
合成部26は、モータドライバ640を含み、モータドライバ640において2つの操作量の合算結果に基づくPWM信号を生成する。そして、モータドライバ640によりキャリッジモータ5が回転し、タイミングベルト7を経由してキャリッジ3が移動する。
スライディングモード制御演算部39をエンコーダ信号のパルス変化に起因した高速演算を実現するため、ここではASIC等のハードウェアで実行することを想定している。
図5において、2点鎖線で囲まれた範囲がASIC603において実現される。図5から分かるように、ASIC603は、スライディングモード制御演算部39、状態量推定部23、状態量推定部25、合成部26の一部の機能を担当する。また、モータドライバ640では詳細は後述するが、合成部26の残りの機能を担当する。
これに対して、図5において、太い点線で囲まれた範囲はMPU601においてプログラムを実行することにより実現される。図5から分かるように、MPU601は、PID制御演算部36、目標値演算部35、前処理演算部38の機能を担当する。
このように、MPU601とASIC603とでフィードバック制御を分担するのは、ASIC603で実現される部分で扱われる情報の更新周期が、MPU601で実現される部分で扱われる情報の更新周期よりも短いためである。
目標値演算部35により目標値が更新される毎に前処理演算部38も実行され、ASIC603のレジスタ領域に、最新のレジスタ設定値が設定される。前処理部演算部38では、スライディングモード制御演算39で実行する位相切り替え線の演算や状態量推定部25の推定演算で時々刻々と変化する変数値の一部を、PID制御演算部36の演算周期の間のみパラメータ値として管理するための計算を行う。フィードバック制御全てをASICで実行することは集積回路の肥大化を招き、処理の柔軟性や融通性を欠くものとなるので、この実施例では、演算精度と回路規模で折り合いをつけ、計算の一部をMPUの前処理演算部38が更新タイミングで実行する。
また、スライディングモード制御演算部39で用いる制御パラメータを、キャリッジ3の動作状態により変更しても良い。その場合、目標値演算部35による目標値から、キャリッジ3が加速状態や定速状態や減速状態のうち、いずれの状態の区間にあるかの判別を行う。そして、その区間ごとに、位相切り替え線の算出に用いる切り替え係数を変更することで、キャリッジ動作条件に応じた適切な切り替え線を選択し、速やかな収束を実現できるようにしても良い。
図7は合成部26の詳細な構成を示すブロック図である。
図7に示されるように、制御量推定部25は演算タイミング生成部33と速度・加速度情報生成部34とから構成され、エンコーダセンサ15からのエンコーダ信号に基づいて演算タイミング生成部33は後述する演算タイミング信号(CTMG)を生成する。生成される演算タイミング信号(CTMG)は速度・加速度情報生成部34と後述するデューティ(Duty)ラッチ回路37に出力される。
一方、第1のフィードバックループの一部を構成する制御量推定部23ではエンコーダセンサ15から出力されるエンコーダ信号に基づいて制御量としてキャリッジ3の速度情報と位置情報とを生成し、MPU601に出力する。MPU601では、第1のフィードバックループの一部を構成するPID制御演算部36を動作させて、制御量に基づいて第1操作量を生成する。
さて、合成部26は、レジスタ46、シリアルデータ生成出力回路47、セレクタ48、加算/減算信号ラッチ回路55、加算/減算信号生成部56、Dutyラッチ回路37を含む。そして、セレクタ48からシリアル信号をキャリッジモータドライバ640に出力する。
具体的には、MPU601は、その制御量からPWM波形のデューティ値(PWM_Duty値)を計算し、これをレジスタ46に書込む。書込まれたPWM_Duty値はシリアルデータ生成出力回路47に出力される。ここで、シリアル通信でデューティ値を送信する方法は、記録ヘッドと記録装置との間で端子数を削減できるというメリットがある一方、パラレル送信でデューティ値を送信する場合に比べて、駆動周波数が高く放射ノイズのレベルが高くなるという問題がある。セレクタ48は、加算/減算信号ラッチ回路55からの入力とシリアルデータ生成出力回路47からの入力のいずれかを選択して、モータドライバ640に出力する。
図8はセレクタとその周辺部の構成を示すブロック図であり、図9はセレクタへの入出力信号を示すタイミングチャートである。
シリアルデータ生成出力回路47は、モータドライバ640がキャリッジモータ5を駆動するためのデューティ値を示す信号をクロック(CLK)・データ(DATA)・ストローブ(STB)からなる3本のシリアル信号で出力する。
また、シリアルデータ生成出力回路47は、図9に示すように、セレクタ切替信号(SEL)をそのシリアル信号が出力中だけHigh(H)レベルになるように出力する。つまり、セレクタ切替信号(SEL)がHレベルのときは、キャリッジモータ5を駆動するためのデューティ値を示す信号(Duty信号)をクロック(CLK)・データ(DATA)・ストローブ(STB)のシリアル信号で出力する。一方、セレクタ切替信号(SEL)がLow(L)レベルになると、セレクタ48は加算/減算信号ラッチ回路55が出力するキャリッジモータ5の加算・減算切替信号(ASM4)を出力する。
図9に示されているように、セレクタ切替信号(SEL)がLレベルになると、クロック(CLK)・データ(DATA)・ストローブ(STB)のシリアル信号を送信している信号線を用いてキャリッジモータ5の加算・減算切替信号(ASM4)を出力する。
なお、上述のように、モータドライバ640は複数のモータを制御可能であるので、これに対応して、スライディングモード制御演算部39、状態量推定部23、状態量推定部25、合成部26も複数のエンコーダセンサ信号を処理可能である。このため、図8〜図9では4つのモータ(4つのエンコーダセンサ信号)を処理可能な構成として描写しているが、ここではキャリッジモータ5のみを制御する構成を例として説明している。従って、加算/減算信号ラッチ回路55からは4つの加算・減算切替信号のうち、1つの加算/減算切替信号(ASM4)を出力し、その他の3つの加算・減算切替信号(ASM1〜3)は出力せず、使用しないものとしている。
加算・減算切替信号については、後述するが、加算・減算切替信号をパラレル出力することで、信号線のトグル周波数を低くすることが可能となる。
さて、図7に戻って、モータドライバ640内の動作について説明する。モータドライバ640は、キャリッジモータ5を駆動するときのPWM周期を格納するレジスタ640aとテーブル640bとDuty値判定部640cとを備える。テーブル640bは、モータドライバ640がキャリッジモータ5の加算・減算切替信号を受信した時、その信号値がHレベルであれば、テーブル内の加算値をデューティ値に加算し、信号値がLレベルであれば、テーブル内の減算値をデューティ値から減算する。Duty値判定部640cは、テーブル30を使用してデューティ値に対して加算した時、その値がレジスタ640aのPWM周期の値よりも大きくなった場合、加算又は減算する前のデューティ値を使用してキャリッジモータ5の駆動を行うよう判定する。
図10はモータドライバ640の動作を示すフローチャートである。
図10によれば、ステップS401では、モータドライバ640に加算・減算切替信号(ASM4)が入力されると、シリアル通信で送られてきたデューティ値に加算・減算切替信号(ASM4)とテーブル640bの内容に従って、加算又は減算を行なう。次に、ステップS402では、加算又は減算されたデューティ値とレジスタ640aの値を比較する。ここで、レジスタ640aの値が大きければ、処理はステップS403に進み、加算又は減算されたデューティ値を使用してキャリッジモータ5を駆動する。これに対して、レジスタ640の値の方が小さければ、処理はステップS404に進み、加算又は減算を行う前のレジスタ46の値を使用してキャリッジモータ5を駆動する。
なお、図10に示した処理はモータドライバ640内のハードウェアで実行されるが、CPU内蔵モータドライバであればソフトウェアで実行しても良い。
再び図7に戻り、ASIC603についての動作説明を続ける。
キャリッジモータ5の動作に応じてキャリッジ3が移動し、その移動に伴ってエンコーダ15からは図6に示すようなエンコーダ信号が、演算タイミング生成部33と制御量推定部(速度・位置情報生成部)23に入力される。そのエンコーダ信号に基づいて、制御量推定部(速度・位置情報生成部)23は、位置情報と速度情報を生成する。MPU601は、制御量推定部(速度・位置情報生成部)23から位置情報と速度情報を受け取り、制御対象21を目標値に収束させるための操作量を演算する。また、制御対象21、第1制御部22、制御量推定部23によって、一般的なモータ駆動制御部を構成していることは、図1を参照して述べた通りである。
演算タイミング生成部33は、エンコーダセンサ15からのエンコーダ信号入力を受けて、Dutyラッチ回路37、速度・加速度情報生成部34に対して演算タイミング信号(CTMG)を出力する。演算タイミング信号(CTMG)は図6を参照して説明したエンコーダ信号のA相・B相それぞれの立ち上がり、立下りエッジのタイミングで生成可能であるが、どのエッジを使用してタイミング信号を生成するかはMPU601により選択できる。
速度・加速度情報生成部34は、演算タイミング信号(CTMG)に基づいて、キャリッジ3の速度情報と加速度情報を推定し、動作目標との誤差量を計算する。その誤差量となる速度誤差量、加速度誤差量の2つがスライディングモード制御演算部39に出力される。そして、スライディングモード制御演算部35は、速度誤差量と加速度誤差量を2変数として、図2で示した領域の判別を行い、その領域判別結果に基づき符号を決定し、第2操作量が加算/減算信号生成部56に出力される。
図2を参照して説明した2次元平面の領域判別は、もう少し一般化して、
S = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 速度誤差量
から求められる。ここで、S>0であれば、現状態量は切り替え線の上部となる領域1に位置する。これに対して、S<0であれば、現状態量は切り替え線の下部となる領域2に位置する。また、S=0の場合は、S>0かS<0のいずれか一方と定義して扱うものとする。そして、その領域判別結果に基づき符号が決定される。その符号は加算/減算信号生成部56によって生成され、モータドライバ640において、テーブル30の値を使用して加算を行うべきか減算を行うべきかを示す符号となる。
S = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 速度誤差量
から求められる。ここで、S>0であれば、現状態量は切り替え線の上部となる領域1に位置する。これに対して、S<0であれば、現状態量は切り替え線の下部となる領域2に位置する。また、S=0の場合は、S>0かS<0のいずれか一方と定義して扱うものとする。そして、その領域判別結果に基づき符号が決定される。その符号は加算/減算信号生成部56によって生成され、モータドライバ640において、テーブル30の値を使用して加算を行うべきか減算を行うべきかを示す符号となる。
なお、切り替え係数はレジスタ設定値として保持され、MPU601により更新可能である。符号の決定をした加算/減算信号生成部56は、加算/減算信号ラッチ回路55に対して符号決定トリガを出力する。Dutyラッチ回路37は、演算タイミング生成部33からの演算タイミング信号(CTMG)の入力を受けて、レジスタ46に保持されたファームライト用Dutyの値をラッチし、ラッチ後の値を加算/減算信号ラッチ回路55に出力する。ここで、加算/減算信号ラッチ回路55は、セレクタ48にキャリッジモータ5の加算・減算切替信号(ASM4)を出力する機能を持つが、スライディングモード制御演算部39の演算とは非同期にMPU601によるレジスタ46の更新は行われる。従って、符号決定トリガを出力するタイミングでレジスタ46の設定値が書き換わっていると、MPU601のサーボ制御によるデューティ値と演算後の符号値に不整合が生じるという問題がある。
そこで、加算/減算信号ラッチ回路55は、加算/減算信号生成部56から符号決定トリガを受けて、ラッチ後DutyとファームライトDutyの比較を行う。その比較結果に基づいた動作については次のフローチャートを参照して説明する。
図11は加算/減算信号ラッチ回路55の動作を示すフローチャートである。
図11によれば、ステップS501で加算/減算信号生成部56から符号決定トリガが入力されると、処理はステップS502において、レジスタ46から出力されるデューティ値とDutyラッチ回路37が出力しているラッチ後デューティの値を比較する。ここで、比較した値が同じであれば、処理はステップS503に進み、符号決定トリガを受けて加算/減算信号をラッチする。これに対して、比較した値が同じではなかった場合は、処理はステップS504に進み、加算/減算信号のラッチを行わない。
従って以上説明した実施例に従えば、第1制御部とスライディングモード制御演算部からなる構成を記録装置のキャリッジ駆動制御に適用することで、従来では抑制できなかったキャリッジ速度振動を抑制することが可能になる。第1制御部のパラメータ設定では、制御対象の変動要因への対処領域を少なくできるので、フィードバック追従性の低下を最小限に抑えることができる。このように、この実施例によれば、フィードバック制御の制御対象物であるキャリッジ振動抑制と追従性を両立できるので、キャリッジ駆動制御をより精確に行うことが可能になり、高品位な画像記録を実現することができる。
また、スライディングモード制御演算部で演算を実行し、加減算処理をモータドライバで実行し、ASICからモータドライバへ転送する情報を加算/減算信号のみにすることで、スライディングモード制御による転送信号のトグル周波数を抑えることができる。これにより、放射ノイズを削減できる効果がある。
なお、以上説明した実施例は記録装置の記録ヘッドを搭載するキャリッジの往復動作を制御する例を説明したが、本発明はこれによって限定されるものではない。サーボ制御を行うDCモータを持つ構成に対して、本発明は適用可能であり、同様の効果を得ることができる。次に別の適用例について説明する。
4.フィードバック制御の別の適用例の説明
本発明は上述のように、モータの駆動により物体を移動させるものであれば適用することが可能なので、例えば、多機能プリンタ(MFP)のスキャナユニットや単機能のスキャナ装置のCISやCCDセンサを移動させるスキャナモータの制御に適用できる。
本発明は上述のように、モータの駆動により物体を移動させるものであれば適用することが可能なので、例えば、多機能プリンタ(MFP)のスキャナユニットや単機能のスキャナ装置のCISやCCDセンサを移動させるスキャナモータの制御に適用できる。
スキャナユニットは、画像読取性能を担保するためにCISやCCDセンサの光源点灯タイミングとスキャナユニットの移動量を一致させて画像信号を取得する必要がある。通常、光源点灯タイミングは、スキャナユニットの移動速度が一定であることを前提としているので、スキャナユニットの速度変動を抑制することが重要である。このため、抑制すべき振動対象がスキャナユニットの移動速度になるので、速度と加速度の状態量の組み合わせを上述の第2制御部を適用する。そして、基本的には、図5を参照して説明したキャリッジ制御構成と同じ構成で制御すれば良い。
そのようなスキャナユニットが原稿の両面に記録された画像を自動的に読取るために、表面の画像を読取るための構成と裏面の画像を読取るための構成の両方を備えるので、2つのスキャナモータを制御することが必要となる。
さらに本発明は図3〜図4で説明したような記録装置の搬送ローラ駆動制御にも適用できる。記録装置ではキャリッジ走査ごとに搬送ローラを回転させて、記録媒体を間欠搬送するが、このときの搬送量変動を抑制するために本発明のフィードバック制御を適用することができる。この場合、制御対象物は記録媒体の搬送量(位置変動)となるので、搬送ローラの回転量を第1状態量とし、搬送ローラの回転速度を第2状態量として上述の第2制御部に入力すればよい。
以上のことを考慮すると、例えば、原稿の両面画像を読取る構成を備えたMFPでは、キャリッジモータ、2つのスキャナモータ、搬送モータの4つのモータの駆動制御を行う構成が必要となる。
上述のように、モータドライバ640は複数のモータを駆動することができるので、それに対応してフィードバック構成を実現する状態推定部25やスライディングモード制御演算部39も合成部26も複数のモータの駆動制御を行うことができる。
図12は複数のモータの駆動制御を行う合成部と状態推定部とスライディングモード制御演算部の構成を示すブロック図である。なお、図12において、既に図7を参照して説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
この構成では、モータドライバ640は4つのモータを同時に駆動制御できるものとする。図12に示す例では、キャリッジモータ5に加えて、3つのモータ5a、5b、5cを駆動制御し、各モータの駆動に従って、エンコーダセンサ15に加えて、3つのエンコーダセンサ15a、15b、15cそれぞれからエンコーダ信号が出力される。これら4つのエンコーダセンサ15a、15b、15cからの出力信号は、演算タイミング生成部33と制御量推定部(速度・位置情報生成部)23に入力される。
そして、制御量推定部23は4つのモータそれぞれの速度情報と位置情報を生成し、これをMPU601に出力する。MPU601はこれらの情報を入力し、各モータに対して制御量を推定する。また、その制御量からPWM波形のデューティ値を計算し、レジスタ46に4つのモータそれぞれに対応した値を書込む。その書込まれたデューティ値はシリアルデータ生成出力部47に入力される。モータドライバ640内のレジスタ640aには、モータドライバ640が4つのモータを駆動するときのPWMの周期が格納されている。また、テーブル640bは、モータドライバ640が4つのモータの加算・減算切替信号を受信した時、その信号値がHレベルであれば、テーブル内の加算値をデューティ値に加算し、信号値がLレベルであれば、テーブル内の減算値をデューティ値から減算する。
図13は4つのモータを駆動する場合のセレクタとその周辺部の構成を示すブロック図であり、図14は4つのモータを駆動する場合のセレクタへの入出力信号を示すタイミングチャートである。
図13によれば、4つのモータを駆動する場合、加算/減算信号ラッチ回路55からは4つの加算・減算切替信号(ASM1〜4)を出力する。
また、シリアルデータ生成出力回路47は、図9を参照して説明したように、セレクタ切替信号(SEL)をそのシリアル信号が出力中だけHigh(H)レベルになるように出力する。即ち、セレクタ切替信号(SEL)がHレベルの時、4つのモータ5、5a、5b、5cそれぞれを駆動するためのデューティ値を示す信号(Duty信号)をクロック(CLK)・データ(DATA)・ストローブ(STB)のシリアル信号で時分割に出力する。一方、セレクタ切替信号(SEL)がLow(L)レベルになると、セレクタ48は加算/減算信号ラッチ回路55が出力する4つのモータ5、5a、5b、5cの加算・減算切替信号(ASM1〜4)を同時にパラレル出力する。
これにより、従来の制御のみでは抑えきれなかったスキャナユニットの高周波数での微小な振動を抑制するとともに、フィードバック制御追従性を改善することができる。その結果、高品位な画像読取が達成できる。さらに、より高精度な搬送制御を実現することが可能になる。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
1 記録媒体、2 記録ヘッド、3 キャリッジ、5 キャリッジモータ、
5a、5b、5c モータ、11 FFC、12 チューブ、13 サブフレーム、14a、14b インク回収口、15、15a、15b、15c エンコーダセンサ、
16 リニアスケール、21 制御対象、23 制御量推定部、25 状態量推定部、
33 演算タイミング生成部、37 Dutyラッチ回路、
39 スライディングモード制御演算部、46 レジスタ、
47 シリアルデータ生成出力回路、48 セレクタ、
55 加算/減算信号ラッチ回路、56 加算/減算信号生成部、
640 モータドライバ
5a、5b、5c モータ、11 FFC、12 チューブ、13 サブフレーム、14a、14b インク回収口、15、15a、15b、15c エンコーダセンサ、
16 リニアスケール、21 制御対象、23 制御量推定部、25 状態量推定部、
33 演算タイミング生成部、37 Dutyラッチ回路、
39 スライディングモード制御演算部、46 レジスタ、
47 シリアルデータ生成出力回路、48 セレクタ、
55 加算/減算信号ラッチ回路、56 加算/減算信号生成部、
640 モータドライバ
Claims (15)
- 対象物の移動を制御する電子機器であって、
前記対象物を移動させる駆動手段と、
前記駆動手段の駆動により移動される前記対象物を検出する検出手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の状態量を推定する第2の推定手段と、
前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、
前記第2の推定手段により推定された前記状態量に基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成手段と、
前記第1の生成手段により生成された前記第1操作量と前記第2操作量に関する情報を切替えて転送する転送手段と、
前記転送手段により転送された前記第1操作量と前記情報に基づいた前記第2操作量から前記対象物への第3操作量を生成し、該第3操作量により前記駆動手段を駆動する合成手段とを有することを特徴とする電子機器。 - 前記情報は、前記第2操作量の符号であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
- 前記状態量は、前記対象物の第1状態量である速度と第2状態量である加速度であり、
前記第2の生成手段は、前記速度と前記加速度との関係から前記第2操作量の符号を決定することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。 - 前記第2の生成手段はさらに、前記第1状態量と前記第2状態量の2つの変数で定義される2次元空間を2つの空間に分割し、前記第1状態量と前記第2状態量が該分割された2つの空間のいずれに位置するのかに従って、前記第2操作量の符号を決定することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
- 前記2つの空間への分割は、前記第1状態量と前記第2状態量との関係を一次関数で定義した関数を用いてなされることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
- 前記駆動手段は、前記対象物を移動させるモータを含むことを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
- 前記第1操作量、前記第2操作量、前記第3操作量は、前記モータを駆動するためのPWM信号のデューティ値であることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
- 前記合成手段は、
前記モータを駆動するためのPWM周期を格納するレジスタと、
前記第2操作量の符号に従って、前記第1操作量に対応するデューティ値に対する加算又は減算を行う値を格納するテーブルとを含み、
前記レジスタに格納されたPWM周期と、前記第1操作量に対応するデューティ値に対して前記テーブルに格納された値が加算又は減算されたデューティ値とを比較し、該比較の結果に従って、前記第3操作量を生成することを特徴とする請求項7に記載の電子機器。 - 前記第2の生成手段は、前記第2操作量の符号が決定されるタイミングの前と後での、前記第1の生成手段によって生成された前記第1操作量を比較し、該比較の結果に従って、前記第2操作量を生成することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の電子機器。
- 前記対象物は、複数であり、
複数の前記対象物を移動させるために、複数の前記モータが備えられ、
前記転送手段は、複数の前記モータそれぞれを駆動制御するための前記第1操作量を時分割でシリアルに転送する一方、前記第2操作量は同時に転送することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子機器。 - 前記電子機器は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であり、
前記対象物は前記キャリッジであることを特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載の電子機器。 - 前記第1状態量は、前記キャリッジの速度であり、
前記第2状態量は、前記キャリッジの加速度であることを特徴とする請求項11に記載の電子機器。 - 前記検出手段は、前記キャリッジの位置を検出するエンコーダセンサを備え、
前記エンコーダセンサから出力されるエンコーダ信号のパルス信号をカウントすることで前記キャリッジの位置を推定し、前記パルス信号のパルス幅を計測することで前記キャリッジの速度を推定することを特徴とする請求項11又は12に記載の電子機器。 - 前記電子機器は、CIS又はCCDセンサを搭載したスキャナユニットを移動させて前記スキャナユニットにより原稿の画像を読取るスキャナ装置と、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置とを備えた多機能プリンタであり、
前記対象物は、前記スキャナユニットと前記キャリッジと前記記録媒体を搬送する搬送ローラであることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。 - 駆動手段を駆動することで移動される対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、
前記駆動手段の駆動により移動される前記対象物を検出する検出工程と、
前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、
前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の状態量を推定する第2の推定工程と、
前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、
前記第2の推定工程において推定された前記状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成工程と、
前記第1の生成工程において生成された前記第1操作量と前記第2操作量に関する情報を切替えて転送する転送工程と、
前記転送工程において転送された前記第1操作量と前記情報に基づいた前記第2操作量から前記対象物への第3操作量を生成し、該第3操作量により前記駆動手段を駆動する合成工程とを有することを特徴とする制御方法。
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JP2019190457A JP2021066013A (ja) | 2019-10-17 | 2019-10-17 | 電子機器及びその制御方法 |
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