JP2019187359A - 果物の高密度乳酸発酵方法、機能性食品の製造方法、および飼料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】柿等の果物を乳酸発酵させて乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させること。【解決手段】冷凍保存した果物を解凍した発酵原料を乳酸発酵させる果物の高密度乳酸発酵方法であって、乳酸発酵時に発酵液をpH調整する。発酵液のpH調整は、アルカリ剤および発酵原料を複数回に分けて発酵液に供給することによって行う。乳酸発酵時に、乳酸菌スターターとして、少なくともブクネリを含む乳酸菌を発酵液に添加する。また、発酵原料に、大豆等のアミノ酸補給剤や、ハナビラダケ等のβ−グルカン補給剤を添加する。【選択図】図1
Description
本発明は、果物を乳酸発酵させて乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させる果物の高密度乳酸発酵方法に関する。また、本発明は、この高密度乳酸発酵方法を用いた機能性食品の製造方法、および飼料の製造方法に関する。
従来より、乳酸菌は、様々な生理的効用を有することが知られており、例えば、整腸作用や免疫賦活作用等の生理活性を奏することが知られている。このような乳酸菌の作用は、近年、プロバイオティクス効果などへの期待から、広く関心を集めている。また、例えば、清酒製造における生もと系酒母では、酵母の増殖に先立ち乳酸菌群の遷移が起こることが知られており、生もと系酒母から分離された乳酸菌株には免疫調節機能や血中脂質の上昇抑制機能など様々な機能があることが知られている。また、乳酸発酵を利用した食品は独特の風味を呈し、多くの消費者から好まれている食品の1つである。このような乳酸発酵食品としては、チーズ、ヨーグルト、漬物といった伝統的なものから、プロバイオティクス効果を得るための乳酸菌飲料に至るまで、その種類は多岐に渡っている。
上述のような乳酸菌の作用、機能は、単位容積あたりの生菌数に依存するため、高密度に乳酸発酵を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には、乳酸菌の生菌数を、1×109cfu/mLとした固形状乳酸発酵飼料の製造方法が開示されている。
ところで、果物の中には、例えば軟化等による規格外品として市場に流通せず、廃棄処理されるものがある。例えば、柿の産地である和歌山県紀北地域では、年に約5万トンの柿が生産されるが、このうち約10%に相当する約5千トンの柿が軟化等の規格外品として処理されている。一方、柿には、カロテノイドやアスコルビン酸などのビタミン類、タンニンなどのポリフェノール類が豊富に含まれており、強い抗酸化作用を有する物質として、近年その機能性に関して多くの研究がなされている。したがって、規格外品とされた柿の再利用が求められている。同様に、柿以外の果物、例えばキュウイやミカンなども年に約300トン〜1万トンの果物が規格外品として処理されており、これらの果物の再利用も求められている。
そこで、本発明は、柿等の果物を乳酸発酵させて乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることが可能な果物の高密度乳酸発酵方法、機能性食品の製造方法、および飼料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、冷凍保存した果物を解凍した発酵原料を乳酸発酵させる果物の高密度乳酸発酵方法であって、乳酸発酵時に発酵液をpH調整することを特徴としている。
本発明によれば、乳酸発酵時に発酵液をpH調整することにより、pH調整を行わない場合に比べて、乳酸菌の生菌数(単位容積あたりの生菌数)を高密度に増殖(培養)させることができる。すなわち、発酵液の乳酸発酵が進むと、発酵液のpHが低下していき、発酵効率(発酵能力)が低下する。そこで、本発明では、発酵液の発酵効率を維持するために、pH調整を行って発酵液のpHをアルカリ側に戻すことによって、発酵液の発酵効率を維持するようにしている。これにより、pH調整を行わない場合に比べて、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができる。
また、発酵原料となる果物として、規格外品として市場に流通しない果物を用いることによって、規格外品の果物の再利用を図ることができる。また、乳酸発酵によって生産される発酵物の生産コストを低減できるとともに、規格外品の果物の廃棄処理が不要になる。発酵原料となる果物は、特に限定されないが、例えば、柿、リンゴ、ミカン、キュウイ、桃、トマトなど様々なものを用いることができる。特に、地域ごとに特産品となっている果物の規格外品を用いることによって、資源の有効利用を図りつつ、地域社会への貢献を図ることができる。
本発明において、前記発酵液のpH調整は、アルカリ剤および前記発酵原料を複数回に分けて前記発酵液に供給することによって行うことが好ましい。あるいは、前記発酵液のpH調整は、アルカリ剤および前記発酵原料を連続的に前記発酵液に供給することによって行うことが好ましい。本発明によれば、アルカリ剤を発酵液に供給して発酵液のpHをアルカリ側に戻すことによって、発酵液のpHを、例えば5〜6程度に維持することができる。これにより、pH調整を行わない場合に比べて、発酵液の発酵効率を維持することができ、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができ、例えば1×109cfu/mL以上の高密度の乳酸菌を安定的に得ることができる。
本発明において、乳酸発酵時に、周波数がテラヘルツ領域(周波数が300GHz〜3THz)の電磁波を前記発酵液に照射することが好ましい。遠赤外線の一種であるテラヘルツ領域の電磁波を発酵液に照射することによって、発酵液中の分子の振動が誘起されるので、発酵液の活性化が図られ、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができる。
本発明において、乳酸発酵時に、乳酸菌スターターとして、少なくともブクネリを含む乳酸菌を前記発酵液に添加することが好ましい。本発明によれば、乳酸菌スターターとしてブクネリを用いた場合、他の乳酸菌スターターを用いた場合よりも、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができ、しかも、長期間の貯蔵にも適した乳酸菌を得ることができる。
本発明において、前記発酵原料に、アミノ酸補給剤を添加することが好ましい。つまり、乳酸発酵の際の乳酸菌の栄養分となるアミノ酸補給剤として、例えば、大豆、おから、大豆エキス、豆乳等の植物性アミノ酸、酵母エキス等の発酵物由来アミノ酸、およびカツオエキス等の動物性アミノ酸のうち、少なくとも1つを発酵原料に添加することが好ましい。これにより、乳酸発酵の際の乳酸菌の栄養補給を安定して行うことができ、高密度の乳酸菌を安定的に得ることができる。
本発明において、前記発酵原料に、β−グルカン補給剤を添加することが好ましい。β−グルカンは、乳酸菌と相性が良いことが知られており、このようなβ−グルカン補給剤として、例えば、ハナビラダケ、マイタケ、アガリクス等のキノコ類のうち少なくとも1つを発酵原料に添加することによって、乳酸菌とβ−グルカンとの相乗効果により、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができる。
また、本発明は、機能性食品の製造方法であって、上述した本発明の果物の高密度乳酸発酵方法を製造工程の一部に含むことを特徴としている。したがって、本発明の機能性食品の製造方法によれば、上述した本発明の果物の高密度乳酸発酵方法と略同様の効果が得られる。これに加え、本発明の機能性食品の製造方法によって、高密度に乳酸菌を含む機能性食品が得られる。
また、本発明は、飼料の製造方法であって、上述した本発明の果物の高密度乳酸発酵方法を製造工程の一部に含むことを特徴としている。したがって、本発明の飼料の製造方法によれば、上述した本発明の果物の高密度乳酸発酵方法と略同様の効果が得られる。また、これに加え、本発明の飼料の製造方法によって、高密度に乳酸菌を含む飼料が得られる。
本発明によれば、冷凍保存した果物を解凍した発酵原料の乳酸発酵により、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることが可能になる。
次に、本発明の実施形態に係る果物の高密度乳酸発酵方法(単に、「発酵方法」とも言う。)について説明する。本実施形態の発酵方法では、冷凍保存した果物を解凍した発酵原料を乳酸発酵させる乳酸発酵時に、発酵液をpH調整することを特徴としている。以下では、果物として、柿を用いた場合について説明する。
本実施形態の発酵方法は、柿処理工程と、アミノ酸補給剤の混合工程と、乳酸菌スターターの添加工程と、発酵液のpH調整工程とを少なくとも含む。
柿処理工程は、柿を原料とする柿発酵原料を作製する工程である。具体的には、収穫した柿に対して脱渋処理を行い、脱渋処理後の柿を1週間程度、室内で貯蔵した後、所定期間、冷凍庫で冷凍保存する。柿は、例えば刀根早稲種の渋柿であるが、特に限定されず、これ以外の種類の柿を用いてもよい。脱渋処理は、例えば炭酸ガス暴露法によって行われるが、特に限定されず、これ以外の手法で脱渋処理を行ってもよい。冷凍保存の期間は、通常、10日以上であり、好ましくは30日以上であり、より好ましくは6ヶ月以上である。詳細な理由については、今のところ明らかでないが、冷凍日数が長くなるほど、本発明の効果が向上し、より乳酸菌が高密度になる傾向にある。また、柿は、未洗浄で皮を剥かない状態で冷凍することが好ましい。未洗浄で皮の付いた柿を使用することで、乳酸菌の増加率が高まる傾向にある。これは、柿を洗浄せずに冷凍することによって、皮の表面に付着している柿固有の乳酸菌が活用されるものと推測される。
次に、冷凍保存した柿を所定量、冷凍庫から取り出し室内で自然解凍を行い、解凍柿に対し、ヘタ取り処理、種取り処理などの前処理を行う。この前処理を行った解凍柿に対し、所定量の水を加えて粗破砕処理を行って柿発酵原料を作製する。なお、粗破砕処理は、柿発酵原料に、後述するアミノ酸補給剤や糖補給剤を添加した後に行ってもよい。
混合工程は、柿処理工程によって作成された柿発酵原料に対し、アミノ酸補給剤を混合(添加)する工程である。混合工程では、柿処理工程で粗破砕された冷凍柿(柿発酵原料)と、アミノ酸補給剤とを、例えば1:1の重量比で撹拌式発酵槽(発酵タンク)に投入し、さらに、所定量のグルコースを添加して、混合撹拌処理を行う。この際、安全性を確保するために、上記の混合物に対し、例えば30分間、70℃の加熱殺菌を行うことが好ましい。アミノ酸補給剤は、乳酸発酵の際の乳酸菌の栄養分として供給される。アミノ酸補給剤は、例えば豆乳であるが、特に限定されず、これ以外のアミノ酸補給剤を発酵原料に添加してもよい。つまり、アミノ酸補給剤として、大豆、おから、大豆エキス、豆乳等の植物性アミノ酸、酵母エキス等の発酵物由来アミノ酸、およびカツオエキス等の動物性アミノ酸のうち、少なくとも1つを柿発酵原料に添加することが好ましい。乳酸菌の発酵(増殖)を高密度に行う観点から、アミノ酸補給剤は液体状とすることが好ましく、大豆そのものよりも、大豆エキスや、豆乳を用いることが好ましい。大豆に含まれるアミノ酸を乳酸菌の増殖に有効利用する観点から、アミノ酸補給剤として豆乳を用いることが好適である。グルコースの添加量は、例えば柿発酵原料の2.5重量%程度である。グルコースは、アミノ酸補給剤と同様、乳酸発酵の際の乳酸菌の栄養素(糖補給剤)として添加されるが、グルコースの代わりに、その他の糖類(例えばグラニュー糖等)を添加してもよい。
本実施形態では、アミノ酸補給剤としての豆乳を作製する豆乳作製工程を、上述した柿処理工程と並行して行うようにしている。つまり、混合工程において、柿処理工程で作製された柿発酵原料と、豆乳作製工程によって作製された豆乳とが、撹拌式発酵槽内で混合される。豆乳作製工程では、例えば、所定量の大豆と水を混合し、1昼夜浸漬した後、蒸煮処理を行う。そして、蒸煮処理後の大豆と水の混合物に対し、ミキサー処理を行った後、ろ過により、豆乳と大豆粕とに分離する。この豆乳作製工程では、例えば、175kgの大豆および525Lの水から、約500kgの豆乳および約200kgの大豆粕を得ることができる。
添加工程は、混合工程によって作製された発酵原料(柿発酵原料および豆乳)に対し、所定量の乳酸菌スターター(乳酸菌種)を添加して発酵液を調整する工程である。つまり、添加工程では、所定量の乳酸菌スターターが撹拌式発酵槽内の発酵原料に供給される。上述した加熱殺菌を行った場合には、冷却後の発酵原料に対し、所定量の乳酸菌スターターを添加する。そして、撹拌式発酵槽内で発酵液の嫌気的な乳酸発酵、言い換えれば、乳酸菌の培養(増殖)を、例えば48時間、35℃の発酵条件で行う。なお、発酵液の発酵温度は、通常、20〜45℃程度、好ましくは、33〜37℃である。また、発酵液の発酵時間は、通常、24時間から48時間で乳酸菌の増殖量を考慮しながら適宜設定すればよい。
乳酸菌スターターとしては、少なくともブクネリ(L.buchneri)を含む乳酸菌を用いることが好ましい。つまり、乳酸菌スターターとして、ブクネリを単独で用いてもよいし、少なくともブクネリを含む複数の乳酸菌群を用いてもよい。ブクネリと組み合わせる乳酸菌としては、従来公知の乳酸菌を使用可能であるが、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、ペディオコッカス(Pediococcus)属等に属するものを挙げられる。例えば、ペロレンス(L.perolens)、ブレビス(L.brevis)、パラカゼイ(L.paracasei)、カゼイ(L.casei)、ジョンソニー(L.johnsonii)、アシドフィルス(L.acidophilus)、サケイ(L.sakei)等を使用できるが、特に限定されない。乳酸菌スターターとして、単独の乳酸菌よりも複数の乳酸菌群を使用する方が、高密度発酵が促進され、より高密度に乳酸菌が増加するが、特に、ブクネリを含む複数の乳酸菌群の場合、ブクネリと他の乳酸菌とのシナジー効果が大きく、高密度発酵をより促進される。
pH調整工程は、乳酸発酵時にアルカリ剤を用いて発酵液のpH調整を行う工程である。pH調整工程では、撹拌式発酵槽内の発酵液に所定量のアルカリ剤を供給することによって、発酵液のpHをアルカリ側に戻すようにしている。つまり、図1の破線(太線)で示すように、撹拌式発酵槽内で発酵液の乳酸発酵が進むと、発酵液のpHが徐々に低下していき、これに起因して、発酵液の発酵効率(発酵能力)が低下する。例えば図1の破線(太線)で示すように、乳酸発酵の開始時、6.0であった発酵液のpHが、48時間後、3.5まで低下している。この場合、図1の破線(細線)で示すように、48時間後の乳酸菌の生菌数は、例えば1×1010cfu/mL程度まで増加している。乳酸菌の生菌数は、MRS寒天培地を用いたコロニーカウント法によって測定した菌数を使用している(以下、同様)。
そこで、本実施形態では、アルカリ剤を発酵液に供給して発酵液のpHをアルカリ側に戻すpH調整工程を行っている。アルカリ剤は、例えば水酸化ナトリウム溶液(NaOH)であるが、特に限定されず、これ以外のアルカリ剤を用いてもよい。また、pH調整工程では、アルカリ剤とともに、発酵原料(柿発酵原料および豆乳)を撹拌式発酵槽内の発酵液に供給している。発酵原料は、主に、乳酸発酵の際の乳酸菌の栄養分として供給される。
pH調整の手法としては、アルカリ剤を複数回に分けて発酵液に供給する多段供給方式(多段調整)と、アルカリ剤を連続的に発酵液に供給する連続供給方式(連続調整)とがある。多段供給方式では、例えば所定時間おきにアルカリ剤の供給を行う。例えば、図1の実線(太線)で示すように、12時間おきにアルカリ剤の供給を行って、発酵液のpHをアルカリ側に戻すようにしている。つまり、アルカリ剤の供給を、予め設定された48時間の発酵時間のうち、12時間後、24時間後、36時間後の計3回、行っている。この場合、発酵原料を予め4分割しておき、乳酸発酵の開始時およびpH調整時に、発酵原料を1/4ずつ用いるようにすればよい。このpH調整によって、発酵液のpHを、5〜6程度に維持することができ、pH調整を行わない場合に比べて、発酵液の発酵効率を維持することができ、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができる。図1の実線(細線)で示すように、48時間後の乳酸菌の生菌数が、例えば1×1011cfu/mL程度まで増加しており、pH調整を行わない場合に比べて、菌数の増加が10倍程度になっている。なお、pH調整の回数や、pH調整を行うタイミングは一例であって、それ以外のものを採用してもよい。
連続供給方式では、例えば、図1の2点鎖線(太線)で示すように、48時間の発酵時間の間、アルカリ剤の供給を継続して行って、発酵液のpHをアルカリ側に戻すようにしている。このpH調整によって、発酵液のpHの低下が、pH調整を行わない場合に比べて緩やかになる。これにより、発酵液のpHを、5〜6程度に維持することができ、pH調整を行わない場合に比べて、発酵液の発酵効率を維持することができ、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができる。図1の2点鎖線(細線)で示すように、48時間後の乳酸菌の生菌数が、例えば1×1011cfu/mL程度まで増加しており、pH調整を行わない場合に比べて、菌数の増加が10倍程度になっている。なお、pH調整の開始タイミングや終了タイミングは一例であって、予め設定された発酵時間の開始時から終了時まで連続的にpH調整を行う必要はなく、乳酸発酵の開始時から所定時間経過後にpH調整を開始したり、予め設定された発酵時間終了前にpH調整を終了してもよい。
本実施形態によれば、上述したように、冷凍保存した果物を解凍した発酵原料の乳酸発酵時に発酵液のpH調整を行うことによって、pH調整を行わない場合に比べて、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができ、例えば1×109cfu/mL以上の高密度の乳酸菌を安定的に得ることができる。場合によっては、1×1010cfu/mL〜1×1011cfu/mLという非常に高密度の乳酸菌を得ることができる。
本実施形態において、発酵原料となる果物として、渋柿以外の果物を用いてもよい。1つの果物のみを用いてもよいし、複数の果物を組み合わせて用いてもよい。ここで、発酵原料となる果物として、規格外品として市場に流通しない果物を用いることによって、規格外品の果物の再利用を図ることができる。また、乳酸発酵によって生産される発酵物(発酵品)の生産コストを低減できるとともに、規格外品の果物の廃棄処理が不要になる。発酵原料となる果物は、特に限定されないが、例えば、柿、リンゴ、ミカン、キュウイ、イチゴ、桃、トマト、イチジク、梨、梅、サクランボ、スイカ、ブドウ、メロン、レモンなど様々なものを用いることができる。特に、地域ごとに特産品となっている果物の規格外品を用いることによって、資源の有効利用を図りつつ、地域社会への貢献を図ることができる。
また、発酵原料となる果物として、渋柿を用いる場合、上述したような脱渋処理を行うことが好ましい。つまり、脱渋処理を行わない場合、発酵原料にタンニンが多く含まれることになり、タンニンの殺菌作用によって乳酸菌の増殖が抑制される可能性がある。そこで、上述したような脱渋処理を行うことによって、渋柿中のタンニンが減少すると推測され、乳酸菌の増殖を効率よく行えるようになる。
なお、本実施形態において、乳酸発酵時に、周波数がテラヘルツ領域(周波数が300GHz〜3THz)の電磁波を発酵液に照射することが好ましい。遠赤外線の一種であるテラヘルツ領域の電磁波を、照射装置を用いて発酵液に照射することによって、発酵液中の分子の振動が誘起されるので、発酵液の活性化が図られ、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができる。
また、本実施形態において、発酵原料に、β−グルカン補給剤を添加することが好ましい。β−グルカンは、乳酸菌と相性が良いことが知られており、このようなβ−グルカン補給剤として、例えば、ハナビラダケ、マイタケ、アガリクス等のキノコ類のうち少なくとも1つを発酵原料に添加することによって、乳酸菌とβ−グルカンとの相乗効果により、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができる。この場合、例えば、ハナビラダケやマイタケ等の廃菌床を用いることによって、廃菌床の再利用が可能になり、好適である。
上述した本実施形態の発酵方法は、本発明の機能性食品の製造方法、および飼料の製造方法に利用可能である。すなわち、本発明の機能性食品の製造方法は、上述した本実施形態の発酵方法を製造工程の一部に含むことを特徴としている。また、本発明の飼料の製造方法は、上述した本実施形態の発酵方法を製造工程の一部に含むことを特徴としている。「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、栄養保険食品等、健康の維持の目的で摂取する食品(飲料を含む)を意味している。また、飼料における対象は、人以外の生物であり、動物、鳥類、魚類等、特に種類は限定されない。また、飼料の形態は、固形飼料や、液状飼料等、特に限定されない。機能性食品や飼料として製品化する場合には、機能性食品や飼料に添加剤(例えば、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、香料等)を添加していてもよい。
上述した本実施形態の発酵方法によって生産される発酵物(発酵品)を、ポットやビンなどの容器(例えば70mLのポット容器等)に注入する容器詰め処理を行って、機能性食品または飼料として製品化することが可能である。本発明の機能性食品の製造方法によれば、上述した本実施形態の発酵方法と略同様の効果が得られる。これに加え、本発明の機能性食品の製造方法によって、高密度に乳酸菌を含む機能性食品が得られる。また、本発明の飼料の製造方法によれば、上述した本実施形態の発酵方法と略同様の効果が得られる。これに加え、本発明の飼料の製造方法によって、高密度に乳酸菌を含む飼料が得られる。
本実施形態の発酵方法によって生産された発酵物(発酵品)を用いて、各種の実験を行ったところ、次のような結果が得られた。
(実験1:発酵物の乳酸菌数の測定)
実験1では、試験区1〜4の原料を用いて、本実施形態の発酵方法を用いて生産された発酵物の乳酸菌の生菌数を測定した。
実験1では、試験区1〜4の原料を用いて、本実施形態の発酵方法を用いて生産された発酵物の乳酸菌の生菌数を測定した。
試験区1では、果物として、1年間冷凍保存した刀根早稲種の渋柿を用い、アミノ酸補給剤として、豆乳を用い、糖補給剤として、グラニュー糖を用いた。解凍後の渋柿に対して脱渋処理を行った。そして、渋柿と豆乳とを1:1の重量比で混合し、グラニュー糖を渋柿の2.5重量%添加し、発酵原料を調製した。また、乳酸菌スターターとして、ブクネリ、ブレビス、ペロレンス、および混合菌(ブクネリ、ブレビス、カゼイ、パラカゼイの4種混合菌)の4種類を準備し、各乳酸菌スターターを発酵原料にそれぞれ添加して、4種類の発酵液を調整した。そして、各発酵液の乳酸発酵を、48時間、35℃の発酵条件でそれぞれ行った。乳酸発酵の際、発酵液のpH調整を上述した多段調整により行い、12時間おきにアルカリ剤および発酵原料を発酵液に供給した。そして、48時間の乳酸発酵によって生産された発酵物を所定期間、冷蔵庫に貯蔵した。
図2(a)では、試験区1で得られた発酵物の乳酸菌の生菌数を、「0時間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「48時間冷蔵」の例、「10日間冷蔵」の例、および「30日間冷蔵」の例の4つについて測定した測定結果を示している。
試験区2では、果物として、1年間冷凍保存した刀根早稲種の渋柿およびキュウイを9:1の重量比で用い、アミノ酸補給剤として、豆乳を用い、糖補給剤として、グラニュー糖を用いた。解凍後の渋柿に対して脱渋処理を行った。そして、果物(渋柿およびキュウイ)と豆乳とを1:1の重量比で混合し、グラニュー糖を果物の2.5重量%添加し、発酵原料を調製した。また、試験区1と同様、乳酸菌スターターとして、ブクネリ、ブレビス、ペロレンス、および混合菌(ブクネリ、ブレビス、カゼイ、パラカゼイの4種混合菌)の4種類を準備し、各乳酸菌スターターを発酵原料にそれぞれ添加して、4種類の発酵液を調整した。そして、各発酵液の乳酸発酵を、48時間、35℃の発酵条件でそれぞれ行った。乳酸発酵の際、発酵液のpH調整を上述した多段調整により行い、12時間おきにアルカリ剤および発酵原料を発酵液に供給した。そして、48時間の乳酸発酵によって生産された発酵物を所定期間、冷蔵庫に貯蔵した。
図2(b)では、試験区2で得られた発酵物の乳酸菌の生菌数を、「0時間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「48時間冷蔵」の例、「10日間冷蔵」の例、および「30日間冷蔵」の例の4つについて測定した測定結果を示している。
試験区3では、果物として、1年間冷凍保存した刀根早稲種の渋柿、キュウイ、およびミカンを9:0.5:0.5の重量比で用い、アミノ酸補給剤として、豆乳を用い、糖補給剤として、グラニュー糖を用いた。解凍後の渋柿に対して脱渋処理を行った。そして、果物(渋柿、キュウイ、およびミカン)と豆乳とを1:1の重量比で混合し、グラニュー糖を果物の2.5重量%添加し、発酵原料を調製した。また、試験区1と同様、乳酸菌スターターとして、ブクネリ、ブレビス、ペロレンス、および混合菌(ブクネリ、ブレビス、カゼイ、パラカゼイの4種混合菌)の4種類を準備し、各乳酸菌スターターを発酵原料にそれぞれ添加して、4種類の発酵液を調整した。そして、各発酵液の乳酸発酵を、48時間、35℃の発酵条件でそれぞれ行った。乳酸発酵の際、発酵液のpH調整を上述した多段調整により行い、12時間おきにアルカリ剤および発酵原料を発酵液に供給した。そして、48時間の乳酸発酵によって生産された発酵物を所定期間、冷蔵庫に貯蔵した。
図2(c)では、試験区3で得られた発酵物の乳酸菌の生菌数を、「0時間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「48時間冷蔵」の例、「10日間冷蔵」の例、および「30日間冷蔵」の例の4つについて測定した測定結果を示している。
試験区4では、果物として、1年間冷凍保存した刀根早稲種の渋柿、キュウイ、およびミカンを8:1:1の重量比で用い、アミノ酸補給剤として、豆乳を用い、糖補給剤として、グラニュー糖を用いた。解凍後の渋柿に対して脱渋処理を行った。そして、果物(渋柿、キュウイ、およびミカン)と豆乳とを1:1の重量比で混合し、グラニュー糖を果物の2.5重量%添加し、発酵原料を調製した。また、試験区1と同様、乳酸菌スターターとして、ブクネリ、ブレビス、ペロレンス、および混合菌(ブクネリ、ブレビス、カゼイ、パラカゼイの4種混合菌)の4種類を準備し、各乳酸菌スターターを発酵原料にそれぞれ添加して、4種類の発酵液を調整した。そして、各発酵液の乳酸発酵を、48時間、35℃の発酵条件でそれぞれ行った。乳酸発酵の際、発酵液のpH調整を上述した多段調整により行い、12時間おきにアルカリ剤および発酵原料を発酵液に供給した。そして、48時間の乳酸発酵によって生産された発酵物を所定期間、冷蔵庫に貯蔵した。
図2(d)では、試験区4で得られた発酵物の乳酸菌の生菌数を、「0時間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「48時間冷蔵」の例、「10日間冷蔵」の例、および「30日間冷蔵」の例の4つについて測定した測定結果を示している。
図2(a)〜図2(d)から分かるように、図2(a)の「48時間冷蔵」の例では、乳酸菌スターターとして混合菌を用いた場合、他の乳酸菌スターターを用いた場合よりも、乳酸菌の生菌数が増殖している。しかし、これ以外の全ての例では、乳酸菌スターターとしてブクネリを用いた場合、他の乳酸菌スターターを用いた場合よりも、乳酸菌の生菌数が増殖している。したがって、乳酸菌スターターとして、ブクネリを用いることが有効であることが分かる。特に、「10日間冷蔵」および「30日間冷蔵」の例において、乳酸菌の生菌数が高い値を示しており、長期間の貯蔵に適していることが分かる。これにより、乳酸菌スターターとしてブクネリを用いた場合、他の乳酸菌スターターを用いた場合よりも、乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させることができ、しかも、10日間〜30日間程度の長期間の貯蔵にも適した乳酸菌を得ることができる。
(実験2:発酵物の成分分析)
実験2では、実施例5として、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物の成分分析を行った。実験2の実施例5では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用いたが、それ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。発酵物の成分分析としては、ビタミンC、タンニン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンの含有量をHPLC(液体クロマトグラフ)を用いて分析した。また、実験2では、比較例6として、脱渋処理を行っていない渋柿を用いた場合(未脱の場合)についても、発酵物の成分分析を行った。なお、脱渋処理を行わない点以外の条件は、実施例5の場合と同様である。
実験2では、実施例5として、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物の成分分析を行った。実験2の実施例5では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用いたが、それ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。発酵物の成分分析としては、ビタミンC、タンニン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンの含有量をHPLC(液体クロマトグラフ)を用いて分析した。また、実験2では、比較例6として、脱渋処理を行っていない渋柿を用いた場合(未脱の場合)についても、発酵物の成分分析を行った。なお、脱渋処理を行わない点以外の条件は、実施例5の場合と同様である。
図3(a)では、実施例5(脱渋)で得られた発酵物中のビタミンCの含有量を、「0週間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「1週間冷蔵」の例、「2週間冷蔵」の例、「3週間冷蔵」、および「4週間冷蔵」の例の5つについて測定した測定結果を示している。図3(b)では、比較例6(未脱渋)で得られた発酵物中のビタミンCの含有量を、「0週間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「1週間冷蔵」の例、「2週間冷蔵」の例、「3週間冷蔵」、および「4週間冷蔵」の例の5つについて測定した測定結果を示している。図3(a)、図3(b)から分かるように、実施例5(脱渋)および比較例6(未脱渋)では、発酵物中のビタミンCの含有量は略同じであった。また、実施例5(脱渋)および比較例6(未脱渋)ともに、貯蔵期間が長くなると、発酵物中のビタミンCの含有量が1/2程度まで減少した。
図4(a)では、実施例5(脱渋)で得られた発酵物中のタンニンの含有量を、「0週間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「1週間冷蔵」の例、「2週間冷蔵」の例、「3週間冷蔵」、および「4週間冷蔵」の例の5つについて測定した測定結果を示している。図4(b)では、比較例6(未脱渋)で得られた発酵物中のタンニンの含有量を、「0週間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「1週間冷蔵」の例、「2週間冷蔵」の例、「3週間冷蔵」、および「4週間冷蔵」の例の5つについて測定した測定結果を示している。図4(a)、図4(b)から分かるように、実施例5(脱渋)では、発酵物中のタンニンの含有量は、比較例6(未脱渋)の1/4〜1/5程度にまで減少した。また、実施例5(脱渋)では、発酵物中のタンニンの含有量は、貯蔵期間が長くなっても、ほとんど変化しなかった。一方、比較例6(未脱渋)では、発酵物中のタンニンの含有量は、0〜3週間冷蔵の間、若干の増加傾向を示した。
図5(a)では、実施例5(脱渋)で得られた発酵物中のβ−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンのそれぞれの含有量を、「0週間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「1週間冷蔵」の例、「2週間冷蔵」の例、「3週間冷蔵」、および「4週間冷蔵」の例の5つについて測定した測定結果を示している。図5(b)では、比較例6(未脱渋)で得られた発酵物中のβ−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンのそれぞれの含有量を、「0週間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「1週間冷蔵」の例、「2週間冷蔵」の例、「3週間冷蔵」、および「4週間冷蔵」の例の5つについて測定した測定結果を示している。図5(a)、図5(b)から分かるように、実施例5(脱渋)では、発酵物中のβ−クリプトキサンチンの含有量は、増加傾向を示しており、特に、3〜4週間冷蔵の間、発酵物中のβ−クリプトキサンチンの含有量が顕著に高い値を示した。また、実施例5(脱渋)では、発酵物中のゼアキサンチンの含有量は、3〜4週間冷蔵の間、増加傾向を示した。一方、比較例6(未脱渋)では、発酵物中のβ−クリプトキサンチンの含有量は、0〜4週間冷蔵の間、増加傾向を示した。
(実験3:発酵物の成分分析)
実験3では、実施例7として、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物の成分分析を行った。実験3の実施例7では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用い、また、アミノ酸補給剤として、大豆エキスを用いて、渋柿と大豆エキスとを1:1の重量比で混合した。大豆エキスとしては、大豆をその5倍程度の重量の水に一昼浸漬した後、5時間程度、煮沸処理した浸出液を用いた。実験3の実施例7のそれ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。発酵物の成分分析としては、ビタミンC、タンニン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンの含有量をHPLC(液体クロマトグラフ)を用いて分析した。また、実験3では、比較例8として、脱渋処理を行っていない渋柿を用いた場合(未脱の場合)についても、発酵物の成分分析を行った。なお、脱渋処理を行わない点以外の条件は、実施例7の場合と同様である。
実験3では、実施例7として、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物の成分分析を行った。実験3の実施例7では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用い、また、アミノ酸補給剤として、大豆エキスを用いて、渋柿と大豆エキスとを1:1の重量比で混合した。大豆エキスとしては、大豆をその5倍程度の重量の水に一昼浸漬した後、5時間程度、煮沸処理した浸出液を用いた。実験3の実施例7のそれ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。発酵物の成分分析としては、ビタミンC、タンニン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンの含有量をHPLC(液体クロマトグラフ)を用いて分析した。また、実験3では、比較例8として、脱渋処理を行っていない渋柿を用いた場合(未脱の場合)についても、発酵物の成分分析を行った。なお、脱渋処理を行わない点以外の条件は、実施例7の場合と同様である。
図6では、実施例7(脱渋)および比較例8(未脱渋)で得られた発酵物中のビタミンC、タンニン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンのそれぞれの含有量を比較して示している。図6から分かるように、アミノ酸補給剤として大豆エキスを用いて、渋柿と大豆エキスとを1:1の重量比で混合した場合、実施例7(脱渋)では、発酵物中のビタミンC、タンニン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンの含有量が全て比較例8(未脱渋)よりも少なかった。
図7では、実施例7(脱渋)および比較例8(未脱渋)で得られた発酵物中のビタミンCおよびタンニンのそれぞれの含有量を比較して示している。この場合、「0時間冷蔵」(48時間発酵直後)の例、「24時間冷蔵」の例の2つについて測定した測定結果を示している。図7から分かるように、アミノ酸補給剤として大豆エキスを用いて、渋柿と大豆エキスとを1:1の重量比で混合した場合、実施例7(脱渋)では、発酵物中のビタミンCおよびタンニンの含有量がともに、24時間経過すると減少した。一方、比較例8(未脱渋)では、発酵物中のビタミンCの含有量が24時間経過すると減少したが、発酵物中のタンニンの含有量が24時間経過すると増加した。
(実験4:発酵物のマウスへの給与実験)
実験4では、実施例9として、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物をマウスに給与した場合の給与実験を行った。実験4の実施例9では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用いたが、それ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。給与飼料中に発酵物を2%添加して、マウスへ給与し、2週間飼育を行った。マウスの新鮮糞を回収し、市販のELISAキット(Bethyl Laboratories,Inc.,TX,USA)を用いて、糞中IgA濃度を測定した。
また、解剖時に小腸内容物を回収し、10%ホルマリンに固定した小腸に認められる全てのパイエル板の長径および短径をデジタルノギスで測定して、小腸パイエル板総面積を算出した。実験4の実施例9では、収穫時期の異なる3つの渋柿(柿A、柿B、柿C)について、糞中IgA濃度および小腸パイエル板総面積を測定した。また、実験4では、比較例10として、マウスの給与飼料中に発酵物を添加しなかった場合についても、糞中IgA濃度および小腸パイエル板総面積を測定した。
実験4では、実施例9として、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物をマウスに給与した場合の給与実験を行った。実験4の実施例9では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用いたが、それ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。給与飼料中に発酵物を2%添加して、マウスへ給与し、2週間飼育を行った。マウスの新鮮糞を回収し、市販のELISAキット(Bethyl Laboratories,Inc.,TX,USA)を用いて、糞中IgA濃度を測定した。
また、解剖時に小腸内容物を回収し、10%ホルマリンに固定した小腸に認められる全てのパイエル板の長径および短径をデジタルノギスで測定して、小腸パイエル板総面積を算出した。実験4の実施例9では、収穫時期の異なる3つの渋柿(柿A、柿B、柿C)について、糞中IgA濃度および小腸パイエル板総面積を測定した。また、実験4では、比較例10として、マウスの給与飼料中に発酵物を添加しなかった場合についても、糞中IgA濃度および小腸パイエル板総面積を測定した。
図8は、実施例9(給与)および比較例10(未給与)で得られた糞中IgA濃度を比較して示している。図8に示すように、実施例9(給与)のいずれもが、比較例10(未給与)よりも糞中IgA濃度(免疫グロブリン反応)が高い値を示しており、高密度の乳酸菌を含む発酵物を給与することにより免疫機能が向上したことが分かった。
図9は、実施例9(給与)および比較例10(未給与)で得られた小腸パイエル板総面積を比較して示している。図9から分かるように、実施例9(給与)の柿Bについて、小腸パイエル板総面積(免疫組織)が高い値を示した。パイエル板は乳酸菌菌体などの免疫性物質が白血球中のマクロファージにより分解され、サイトカイン(免疫情報伝達物質)を出すところであり、また、未分化B細胞がIgA分泌細胞にクラススイッチするところでもある。さらに、乳酸菌菌体がNK細胞、T細胞の免疫発動するところでもあることから、高密度の乳酸菌を含む発酵物を給与することにより免疫機能が向上したことが分かった。
(実験5:発酵物の豚および仔牛への給与実験)
実験5では、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物を豚および仔牛に給与した場合の給与実験を行った。実験5では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用いたが、それ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。発酵物を20倍程度に希釈した発酵リキッド飼料を調整し、養豚場において、豚への給与実験を行った。給与実験前、下痢の発症頭数は毎日5〜10頭であり、下痢を発症した豚は隔離されていた。また、肺炎は、下痢が治まった直後から発症し、同じように毎日5〜10頭の豚が隔離されていた。このたような下痢と肺炎の繰り返しが周年を通して見られていた。しかし、給与開始後、1週間程度から抗病性効果の兆候が現れ、下痢および肺炎が給与実験前の発症頭数の約1/10程度に減少した。図10に示すように、給与実験前、下痢および肺炎による病死豚は月平均4〜6頭であったのに対し、給与開始後、0〜1頭程度と大きく減少し顕著な抗病性効果を有することが分かった。このように、高密度の乳酸菌を含む発酵物を豚に給与することにより、豚に対する免疫効果(抗病性)が向上することが分かった
また、発酵物を20倍程度に希釈した発酵リキッド飼料を調整し、仔牛への給与実験を行った。仔牛の場合、生後14日目までの仔牛が下痢を発症しやすく、下痢を発症した仔牛は隔離されていた。下痢を発症した仔牛(24頭)に対し、給与実験を行った結果、全ての仔牛の下痢が治癒し、図11に示すように、平均治癒日数が3.5日であった。また、生後4日目〜14日目までの仔牛に対し、給与実験を行ったところ、下痢を発症した仔牛は現れなかった。同様に、生後4日目〜離乳する70日目までの仔牛に対し、給与実験を行ったところ、下痢を発症した仔牛は現れなかった。このように、仔牛の下痢への対策として、高密度の乳酸菌を含む発酵物を仔牛に給与することが非常に有効であることが分かった。
実験5では、実験1の試験区1と略同様にして生産された発酵物を豚および仔牛に給与した場合の給与実験を行った。実験5では、乳酸菌スターターとして、ブクネリを発酵原料に添加した発酵液のみを用いたが、それ以外の条件は実験1の試験区1と同様である。発酵物を20倍程度に希釈した発酵リキッド飼料を調整し、養豚場において、豚への給与実験を行った。給与実験前、下痢の発症頭数は毎日5〜10頭であり、下痢を発症した豚は隔離されていた。また、肺炎は、下痢が治まった直後から発症し、同じように毎日5〜10頭の豚が隔離されていた。このたような下痢と肺炎の繰り返しが周年を通して見られていた。しかし、給与開始後、1週間程度から抗病性効果の兆候が現れ、下痢および肺炎が給与実験前の発症頭数の約1/10程度に減少した。図10に示すように、給与実験前、下痢および肺炎による病死豚は月平均4〜6頭であったのに対し、給与開始後、0〜1頭程度と大きく減少し顕著な抗病性効果を有することが分かった。このように、高密度の乳酸菌を含む発酵物を豚に給与することにより、豚に対する免疫効果(抗病性)が向上することが分かった
また、発酵物を20倍程度に希釈した発酵リキッド飼料を調整し、仔牛への給与実験を行った。仔牛の場合、生後14日目までの仔牛が下痢を発症しやすく、下痢を発症した仔牛は隔離されていた。下痢を発症した仔牛(24頭)に対し、給与実験を行った結果、全ての仔牛の下痢が治癒し、図11に示すように、平均治癒日数が3.5日であった。また、生後4日目〜14日目までの仔牛に対し、給与実験を行ったところ、下痢を発症した仔牛は現れなかった。同様に、生後4日目〜離乳する70日目までの仔牛に対し、給与実験を行ったところ、下痢を発症した仔牛は現れなかった。このように、仔牛の下痢への対策として、高密度の乳酸菌を含む発酵物を仔牛に給与することが非常に有効であることが分かった。
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
本発明は、柿等の果物を乳酸発酵させて乳酸菌の生菌数を高密度に増殖させる果物の高密度乳酸発酵方法に利用可能であり、また、この高密度乳酸発酵方法を用いた機能性食品の製造方法、および飼料の製造方法に利用可能である。
Claims (9)
- 冷凍保存した果物を解凍した発酵原料を乳酸発酵させる果物の高密度乳酸発酵方法であって、
乳酸発酵時に発酵液をpH調整することを特徴とする果物の高密度乳酸発酵方法。 - 請求項1に記載の果物の高密度乳酸発酵方法であって、
前記発酵液のpH調整は、アルカリ剤および前記発酵原料を複数回に分けて前記発酵液に供給することによって行うことを特徴とする果物の高密度乳酸発酵方法。 - 請求項1に記載の果物の高密度乳酸発酵方法であって、
前記発酵液のpH調整は、アルカリ剤および前記発酵原料を連続的に前記発酵液に供給することによって行うことを特徴とする果物の高密度乳酸発酵方法。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の果物の高密度乳酸発酵方法であって、
乳酸発酵時に、周波数がテラヘルツ領域の電磁波を前記発酵液に照射することを特徴とする果物の高密度乳酸発酵方法。 - 請求項1〜4のいずれか1つに記載の果物の高密度乳酸発酵方法であって、
乳酸発酵時に、乳酸菌スターターとして、少なくともブクネリを含む乳酸菌を前記発酵液に添加することを特徴とする果物の高密度乳酸発酵方法。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の果物の高密度乳酸発酵方法であって、
前記発酵原料に、アミノ酸補給剤を添加することを特徴とする果物の高密度乳酸発酵方法。 - 請求項1〜6のいずれか1つに記載の果物の高密度乳酸発酵方法であって、
前記発酵原料に、β−グルカン補給剤を添加することを特徴とする果物の高密度乳酸発酵方法。 - 請求項1〜7のいずれか1つに記載の果物の高密度乳酸発酵方法を製造工程の一部に含むことを特徴とする機能性食品の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1つに記載の果物の高密度乳酸発酵方法を製造工程の一部に含むことを特徴とする飼料の製造方法。
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JP2018086532A JP2019187359A (ja) | 2018-04-27 | 2018-04-27 | 果物の高密度乳酸発酵方法、機能性食品の製造方法、および飼料の製造方法 |
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CN112515077A (zh) * | 2020-12-11 | 2021-03-19 | 上海植酵盛生物科技有限公司 | 功能性黑枸杞发酵饮品及其制备方法和应用 |
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2018
- 2018-04-27 JP JP2018086532A patent/JP2019187359A/ja active Pending
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