JP2019186251A - 薄膜コンデンサ及びそれを用いた半導体パワーモジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜等の樹脂誘電体層を備え、高温高湿環境下におけるコンデンサ容量の大幅な低下が抑制された薄膜コンデンサを提供すること。【解決手段】一対の電極層と、前記一対の電極層1の間に配置されている、O、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する一対のグラフェン化合物層2及び該一対のグラフェン化合物層2に挟持されている薄膜状樹脂誘電体層3と、を備えていることを特徴とする薄膜コンデンサ。【選択図】図1
Description
本発明は、薄膜コンデンサ及びそれを用いた半導体パワーモジュールに関する。
電源(電力)の制御や供給を行う半導体パワーモジュールには、電力供給のオン・オフ(スイッチング動作)を行う半導体スイッチング素子が搭載されている。この半導体スイッチング素子のスイッチング動作の際に、回路を構成するコンデンサや抵抗、配線のインダクタンス成分、半導体スイッチング素子自体のキャパシタンス成分といった様々な寄生成分が要因となってリンギングが起こり、ノイズが発生するという問題があった。このようなリンギングによるノイズの発生を抑制する方法として、半導体スイッチング素子と薄膜スナバコンデンサとを並列に接続して内蔵化する方法が採用されている。特に、半導体スイッチング素子として、SiCスイッチング素子やGaNスイッチング素子等の次世代半導体スイッチング素子においては、このリンギングによるノイズの発生を抑制することが非常に重要であると考えられている。
このようなリンギングによるノイズの発生を抑制するために用いられる薄膜スナバコンデンサには、絶縁破壊に対する信頼性の観点から、誘電体層として、例えば、高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜が用いられている。しかしながら、高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜等の樹脂誘電体層を備える薄膜コンデンサは、高温高湿環境下において外部から樹脂中に酸素や水が浸透すると、電極層表面が徐々に酸化されて、電極層と樹脂誘電体層との界面において低誘電率層が形成されるため、コンデンサ容量が大幅に低下するという問題があった。このようなコンデンサ容量の大幅な低下を抑制するために、従来は、白金等の酸化されにくい貴金属からなる電極層が用いられていたが、貴金属からなる電極層は樹脂誘電体層との密着性が低く、熱応力により剥離するという問題があった。また、貴金属が非常に高価なため、薄膜コンデンサの製造コストが上昇するという問題もあった。
一方、グラフェン層を備えるコンデンサとしては、特開2013−42110号公報(特許文献1)に、誘電層と内部金属電極層との間にグラフェンからなる導電層を備える積層セラミックコンデンサが記載されている。この積層セラミックコンデンサにおいて、グラフェンからなる導電層は、内部金属電極層の間の接触を防止してショート発生を低減するために配置されている。また、前記積層セラミックコンデンサにおいては、誘電層としてセラミックを使用しているため、高温高湿環境下において酸素や水は誘電層中に浸透しにくく、金属電極層の酸化が起こりにくいため、コンデンサ容量の経時変化はほとんどおこらない。さらに、グラフェンはセラミックとの密着性が比較的高いため、熱応力による剥離という問題も発生しにくい。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜等の樹脂誘電体層を備え、高温高湿環境下におけるコンデンサ容量の大幅な低下が抑制された薄膜コンデンサを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜等の樹脂誘電体層を備える薄膜コンデンサにおいて、前記樹脂誘電体層を、O、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する一対のグラフェン化合物層で挟持することによって、高温高湿環境下におけるコンデンサ容量の大幅な低下が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の薄膜コンデンサは、一対の電極層と、前記一対の電極層の間に配置されている、O、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する一対のグラフェン化合物層及び該一対のグラフェン化合物層に挟持されている薄膜状樹脂誘電体層と、を備えていることを特徴とするものである。
このような本発明の薄膜コンデンサにおいて、前記薄膜状樹脂誘電体層は、高誘電性樹脂のみからなる層又は樹脂中に高誘電体ナノ粒子が分散しているナノコンポジット材料からなる層であることが好ましく、また、前記電極層は、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、チタン、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する層であることが好ましい。
また、本発明の半導体パワーモジュールは、前記本発明の薄膜コンデンサをスナバコンデンサとして内蔵していることを特徴とするものである。
なお、本発明の薄膜コンデンサにおいて、高温高湿環境下におけるコンデンサ容量の大幅な低下が抑制される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の薄膜コンデンサは、高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜等の薄膜状樹脂誘電体層がO、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する一対のグラフェン化合物層で挟持されたものである。グラフェンは平坦な構造を有する化合物であるため、グラフェン化合物層と薄膜状樹脂誘電体層との界面が平坦となり、高い密着性が得られ、薄膜状樹脂誘電体層の絶縁耐電圧性が高くなる。さらに、前記グラフェン化合物層には、O、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素が含まれているため、グラフェン化合物層と薄膜状樹脂誘電体層との密着性が向上し、高温環境下においても熱応力による両者の剥離が抑制され、コンデンサ容量の大幅な低下が抑制される。また、グラフェン化合物層は耐酸化性に優れており、樹脂誘電体層に浸透した酸素や水により酸化されにくいため、電極層表面の酸化が防止される。このようなグラフェン化合物層による密着性の向上や電極層表面の酸化防止により、本発明の薄膜コンデンサにおいては、コンデンサ容量の大幅な低下が抑制されると推察される。
本発明によれば、高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜等の樹脂誘電体層を備え、高温高湿環境下におけるコンデンサ容量の大幅な低下が抑制された薄膜コンデンサを得ることが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合もある。
先ず、本発明の薄膜コンデンサについて説明する。図1は、本発明の薄膜コンデンサの好適な一実施態様を示す模式断面図である。本発明の薄膜コンデンサは、一対の電極層1と、O、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する一対のグラフェン化合物層2と、薄膜状樹脂誘電体層3とを備えるものであり、前記薄膜状樹脂誘電体層3は前記一対のグラフェン化合物層2に挟持されており、このグラフェン化合物層2に挟持された薄膜状樹脂誘電体層3は前記一対の電極層1の間に配置されている。
前記電極層としては特に制限はないが、導電性が高く、安価であるという観点から、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、チタン、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する層であることが好ましく、銅、アルミニウムがより好ましい。電極層の導電性が低くなると、薄膜コンデンサをスナバコンデンサとして使用した場合に、電極層だけでスナバ回路として所望の抵抗値以上の抵抗値となるため、スナバ特性が低下する傾向にある。
このような電極層の厚さとしては、通常、10nm〜10μmであり、100nm〜5μmであることが好ましく、300nm〜2μmであることがより好ましい。電極層の厚さが前記下限未満になると、薄膜コンデンサをスナバコンデンサとして使用した場合に、電極層だけでスナバ回路として所望の抵抗値以上の抵抗値となるため、スナバ特性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、電極層の形成に時間を要し、さらに、応力が大きくなるため、反りやクラックが発生する傾向にある。
このような電極層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、メタルマルク蒸着法等の蒸着法、フォトリソグラフィー法、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法、化学気相成長(CVD)法が挙げられる。また、前記電極層には、形成後、熱処理を施してもよい。これにより、電極層の導電率が向上する傾向にある。特に、印刷法により形成した電極層には、不活性雰囲気下又は還元雰囲気下において熱処理を施すことが好ましい。
また、前記電極層を基材上に形成した場合、電極層と基材との間の密着性を向上させるために、これらの層間に、タンタル、窒化タンタル、チタン等の密着性材料からなる密着層を配置したり、電極層に前記密着性材料を混合したりすることが好ましい。
前記グラフェン化合物層は、O、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有するグラフェン化合物からなるものである。前記グラフェン化合物としては、前記元素を含有する官能基で修飾されたグラフェン化合物、少なくとも1つの炭素が前記元素で置換された六員環を有するヘテロ元素ドープグラフェン化合物、前記元素が直接結合した炭素を含む六員環を有するグラフェン化合物等が挙げられる。より具体的には、Oを含有する官能基で修飾されたグラフェン化合物としては、還元型酸化グラフェン、3−グリドキシプロピルトリメトキシシラン修飾グラフェン、ヒドロキシ安息香酸修飾グラフェン等が挙げられ、Nを含有する官能基で修飾されたグラフェン化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾グラフェン、アスパラギン酸修飾グラフェン等が挙げられ、Pを含有する官能基で修飾されたグラフェン化合物としては、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルトリエトキシシラン修飾グラフェン、1,4−ブチレンジホスホン酸修飾グラフェン等が挙げられ、Sを含有する官能基で修飾されたグラフェン化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン修飾グラフェン、1,4−ブタンチオール修飾グラフェン等が挙げられる。また、少なくとも1つの炭素がOで置換された六員環を有するヘテロ元素ドープグラフェン化合物としては、CVD法等により形成されたOドープグラフェンが挙げられ、少なくとも1つの炭素がNで置換された六員環を有するヘテロ元素ドープグラフェン化合物としては、CVD法等により形成されたNドープグラフェンが挙げられ、少なくとも1つの炭素がPで置換された六員環を有するヘテロ元素ドープグラフェン化合物としては、CVD法等により形成されたPドープグラフェンが挙げられ、少なくとも1つの炭素がSで置換された六員環を有するヘテロ元素ドープグラフェン化合物としては、CVD法等により形成されたSドープグラフェンが挙げられる。さらに、Oが直接結合した炭素を含む六員環を有するグラフェン化合物としては、O2ガスプラズマ等のO含有ガスプラズマで処理したグラフェンが挙げられ、Nが直接結合した炭素を含む六員環を有するグラフェン化合物としては、NH3ガスプラズマ等のN含有ガスプラズマで処理したグラフェンが挙げられ、Pが直接結合した炭素を含む六員環を有するグラフェン化合物としては、PH3ガスプラズマ等のP含有ガスプラズマで処理したグラフェンが挙げられ、Sが直接結合した炭素を含む六員環を有するグラフェン化合物としては、H2Sガスプラズマ等のS含有ガスプラズマで処理したグラフェンが挙げられる。
このようなグラフェン化合物層の厚さとしては、通常、0.1nm〜10μmであり、1nm〜1μmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがより好ましい。
グラフェン化合物層の厚さが前記下限未満になると、電極層を完全に被覆できず、グラフェン化合物層による前記効果を十分に得ることができない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、グラフェン化合物層表面の凹凸が大きくなり、挟持する薄膜状樹脂誘電体層の絶縁耐電圧が低下する傾向にある。
グラフェン化合物層の厚さが前記下限未満になると、電極層を完全に被覆できず、グラフェン化合物層による前記効果を十分に得ることができない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、グラフェン化合物層表面の凹凸が大きくなり、挟持する薄膜状樹脂誘電体層の絶縁耐電圧が低下する傾向にある。
このようなグラフェン化合物層の形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法、スピンコート法やディップコート法等の塗布法、化学気相成長(CVD)法、転写法等が挙げられる。また、前記グラフェン化合物層には、形成後、熱処理を施してもよく、不活性雰囲気下又は還元雰囲気下において熱処理を施すことが好ましい。これにより、グラフェン化合物層の導電率やグラフェン化合物層と電極層及び薄膜状樹脂誘電体層との密着性が向上する傾向にある。
また、前記グラフェン化合物層と電極層及び薄膜状樹脂誘電体層との密着性を向上させるために、グラフェン化合物層に、シランカップリング剤、ポリビニルピロリドンやポリ酢酸ビニル等の密着性高分子材料を混合してもよい。シランカップリング剤や密着性高分子材料の混合量としては、通常、0.01〜20質量%であるが、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。シランカップリング剤や密着性高分子材料の混合量が前記下限未満になると、グラフェン化合物層と電極層及び薄膜状樹脂誘電体層との密着性を向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、グラフェン化合物層の導電性が低下し、薄膜コンデンサの容量が大幅に減少する傾向にある。
本発明の薄膜コンデンサにおいては、このようなグラフェン化合物層が一対となって薄膜状樹脂誘電体を挟持している。前記薄膜状樹脂誘電体層としては、高誘電性樹脂材料のみからなる層、樹脂中に高誘電体ナノ粒子が分散したナノコンポジット材料からなる層等が挙げられる。前記高誘電性樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、変性ポリフェニレンエーテル、変性ポリカーボネート、液晶ポリマー等が挙げられる。前記高誘電体ナノ粒子としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、酸化タンタル等が挙げられる。また、前記高誘電体ナノ粒子を分散させる樹脂としては、ポリイミド、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂のほか、前記高誘電性樹脂材料を用いることもできる。このような薄膜状樹脂誘電体層のうち、絶縁耐電圧及び誘電率が比較的高くなるという観点から、前記ナノコンポジット材料からなる層が好ましい。薄膜状樹脂誘電体層の絶縁耐電圧が低下すると、半導体パワーモジュールの信頼性が低下する傾向にあり、誘電率が低下すると、薄膜コンデンサをスナバコンデンサとして使用した場合に、コンデンサ容量が大幅に減少し、スナバ特性が低下する傾向にある。
このような薄膜状樹脂誘電体層の厚さとしては、通常、100nm〜100μmであり、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜20μmであることがより好ましい。薄膜状樹脂誘電体層の厚さが前記下限未満になると、絶縁破壊電圧が低下して短絡破壊が発生する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、応力が大きくなるため、クラックや反りが発生する傾向にある。
このような薄膜状樹脂誘電体層の形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法、スピンコート法やディップコート法等の塗布法、化学気相成長(CVD)法、転写法等が挙げられる。また、前記薄膜状樹脂誘電体層には、形成後、熱処理を施してもよい。これにより、薄膜状樹脂誘電体層の誘電率が向上する傾向にある。
本発明の薄膜コンデンサにおいては、このような一対のグラフェン化合物層により挟持されている薄膜状樹脂誘電体層が、前記一対の電極層の間に配置されている。このような本発明の薄膜コンデンサは、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、銅配線板やアルミニウム基板等の導電性の基板4上に第1の電極層1を形成する。このとき、基板4と第1の電極層1との密着性を向上させるために、基板4上にポリイミド等の樹脂材料からなる平坦化層5を形成した後、この平坦化層5上に第1の電極層1を形成することが好ましい。また、この平坦化層5は、基板4と第1の電極層1とが電気的に接続されるようにパターン形成する必要がある。
次に、第1の電極層1上に前記グラフェン化合物層2を形成し、さらに、このグラフェン化合物層2上に薄膜状樹脂誘電体層3を形成する。次いで、必要に応じて、薄膜状樹脂誘電体層3が形成されていない部分の前記グラフェン化合物層を酸化プラズマ処理等により除去した後、薄膜状樹脂誘電体層3が形成されていない部分にポリイミド等の絶縁性樹脂材料からなる絶縁層6を形成する。その後、薄膜状樹脂誘電体層3上に前記グラフェン化合物層2を形成し、さらに、グラフェン化合物層2上に第2の電極層1を形成する。このようにして、一対のグラフェン化合物層2により挟持されている薄膜状樹脂誘電体層3が一対の電極層1の間に配置されている本発明の薄膜コンデンサを得ることができる。
次に、本発明の半導体パワーモジュールについて説明する。本発明の半導体パワーモジュールは、前記本発明の薄膜コンデンサをスナバコンデンサとして内蔵したものである。このような本発明の半導体パワーモジュールにおいては、通常、前記薄膜コンデンサと半導体スイッチング素子とが電気回路的に並列に接続されている。また、ダイオード等の電子部品が前記薄膜コンデンサと電気回路的に並列に接続されていてもよい。これにより、半導体スイッチング素子のスイッチング動作によるリンギングノイズの発生を大幅に低減することができる。また、本発明の半導体パワーモジュールにおいては、前記薄膜コンデンサに薄膜抵抗や薄膜ヒューズが接続されていてもよい。
前記半導体スイッチング素子としては特に制限はなく、公知の半導体スイッチング素子を使用することができるが、前記本発明の薄膜コンデンサが高周波スイッチング動作時のスナバ特性に優れていることから、本発明の半導体パワーモジュールには、SiCスイッチング素子やGaNスイッチング素子等の次世代の高周波動作用半導体スイッチング素子も使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す薄膜コンデンサを作製した。先ず、無酸素銅からなる基板4(20mm×12mm×厚さ2mm)上に、感光性全芳香族ポリイミド前駆体溶液(東レ株式会社製「ポジ型フォトニースPW−1200」)を用いてフォトリソグラフィー法により、ポリイミドからなる厚さ5μmの平坦化層5をパターン形成して表面を平坦化した。得られた平坦化層5上に、メタルマスクを用いたスパッタリング法により、厚さ30nmのニッケル層及び厚さ1μmの銅層をパターン形成して第1の電極層1を作製した。なお、平坦化層5及び第1の電極層1は、基板4と第1の電極層1とが電気的に接続されるようにパターン形成した。
図1に示す薄膜コンデンサを作製した。先ず、無酸素銅からなる基板4(20mm×12mm×厚さ2mm)上に、感光性全芳香族ポリイミド前駆体溶液(東レ株式会社製「ポジ型フォトニースPW−1200」)を用いてフォトリソグラフィー法により、ポリイミドからなる厚さ5μmの平坦化層5をパターン形成して表面を平坦化した。得られた平坦化層5上に、メタルマスクを用いたスパッタリング法により、厚さ30nmのニッケル層及び厚さ1μmの銅層をパターン形成して第1の電極層1を作製した。なお、平坦化層5及び第1の電極層1は、基板4と第1の電極層1とが電気的に接続されるようにパターン形成した。
次に、第1の電極層1上に、還元型酸化グラフェン(アルドリッチ社製)を水−エタノール混合溶媒に1質量%の濃度で分散させたインクをスピンコート法により塗布し、得られた塗膜を80℃のホットプレート上で乾燥させて還元型酸化グラフェンからなる厚さ50nmのグラフェン化合物層2を作製した。このグラフェン化合物層2上に、チタン酸バリウムナノ粒子(堺化学工業株式会社製、平均粒子径:300nm)とポリイミド樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製「ネオプリム」)とN,N−ジメチルアセトアミド溶媒とを混合して調製したペーストを用いてスクリーン印刷法によりパターン形成し、得られた塗膜を80℃のホットプレート上で乾燥させた後、窒素雰囲気下、300℃で1時間加熱して厚さ2μmの薄膜状樹脂誘電体層3を作製した。なお、ペーストは、樹脂誘電体層中のチタン酸バリウムナノ粒子の含有量が30体積%となるように調製した。
次に、薄膜状樹脂誘電体層3が形成されていない部分のグラフェン化合物層を酸素プラズマ処理により除去した後、薄膜状樹脂誘電体層3が形成されていない部分に、感光性全芳香族ポリイミド前駆体溶液(東レ株式会社製「ポジ型フォトニースPW−1200」)を用いてフォトリソグラフィー法により、ポリイミドからなる厚さ5μmの絶縁層6をパターン形成した。その後、薄膜状樹脂誘電体層3上に、還元型酸化グラフェン(アルドリッチ社製)を水−エタノール混合溶媒に1質量%の濃度で分散させたインクをスピンコート法により塗布し、得られた塗膜を80℃のホットプレート上で乾燥させて還元型酸化グラフェンからなる厚さ50nmのグラフェン化合物層2を作製した。このグラフェン化合物層2上に、メタルマスクを用いたスパッタリング法により、厚さ1μmの銅層をパターン形成して第2の電極層1を作製し、薄膜状樹脂誘電体層が還元型酸化グラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを得た。
(実施例2)
還元型酸化グラフェンの代わりにPドープグラフェン(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層3がPドープグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを作製した。
還元型酸化グラフェンの代わりにPドープグラフェン(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層3がPドープグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを作製した。
(実施例3)
還元型酸化グラフェンの代わりにNドープグラフェン(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層3がNドープグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを作製した。
還元型酸化グラフェンの代わりにNドープグラフェン(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層3がNドープグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを作製した。
(実施例4)
還元型酸化グラフェンの代わりにSドープグラフェン(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層3がSドープグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを作製した。
還元型酸化グラフェンの代わりにSドープグラフェン(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層3がSドープグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを作製した。
(比較例1)
還元型酸化グラフェン層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、薄膜コンデンサを作製した。すなわち、実施例1と同様にして、無酸素銅からなる基板上にポリイミドからなる厚さ5μmの平坦化層をパターン形成し、この平坦化層上に厚さ30nmのニッケル層及び厚さ1μmの銅層からなる第1の電極層をパターン形成した。
還元型酸化グラフェン層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、薄膜コンデンサを作製した。すなわち、実施例1と同様にして、無酸素銅からなる基板上にポリイミドからなる厚さ5μmの平坦化層をパターン形成し、この平坦化層上に厚さ30nmのニッケル層及び厚さ1μmの銅層からなる第1の電極層をパターン形成した。
次に、この第1の電極層上に、実施例1と同様にして、厚さ2μmの薄膜状樹脂誘電体層をパターン形成し、薄膜状樹脂誘電体層が形成されていない部分にポリイミドからなる厚さ5μmの絶縁層をパターン形成した。その後、薄膜状樹脂誘電体層上に、実施例1と同様にして、厚さ1μmの銅層からなる第2の電極層をパターン形成し、薄膜状樹脂誘電体層の両面にグラフェン化合物層が配置されていない薄膜コンデンサを得た。
(比較例2)
還元型酸化グラフェン(アルドリッチ社製)を水−エタノール混合溶媒に1質量%の濃度で分散させたインクの代わりに、濃度1質量%のグラフェン分散液(アルドリッチ社製、N−メチルピロリドン溶媒)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層がグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを得た。
還元型酸化グラフェン(アルドリッチ社製)を水−エタノール混合溶媒に1質量%の濃度で分散させたインクの代わりに、濃度1質量%のグラフェン分散液(アルドリッチ社製、N−メチルピロリドン溶媒)を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜状樹脂誘電体層がグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサを得た。
(比較例3)
薄膜状樹脂誘電体層上の還元型酸化グラフェン層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、薄膜コンデンサを作製した。すなわち、実施例1と同様にして、無酸素銅からなる基板上にポリイミドからなる厚さ5μmの平坦化層をパターン形成し、この平坦化層上に厚さ30nmのニッケル層及び厚さ1μmの銅層からなる第1の電極層をパターン形成した。
薄膜状樹脂誘電体層上の還元型酸化グラフェン層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、薄膜コンデンサを作製した。すなわち、実施例1と同様にして、無酸素銅からなる基板上にポリイミドからなる厚さ5μmの平坦化層をパターン形成し、この平坦化層上に厚さ30nmのニッケル層及び厚さ1μmの銅層からなる第1の電極層をパターン形成した。
次に、この第1の電極層上に、実施例1と同様にして、還元型酸化グラフェンからなる厚さ50nmのグラフェン化合物層をパターン形成し、このグラフェン化合物層上に厚さ2μmの薄膜状樹脂誘電体層をパターン形成し、薄膜状樹脂誘電体層が形成されていない部分にポリイミドからなる厚さ5μmの絶縁層をパターン形成した。その後、薄膜状樹脂誘電体層上に、実施例1と同様にして、厚さ1μmの銅層からなる第2の電極層をパターン形成し、薄膜状樹脂誘電体層の一方の面のみに還元型酸化グラフェン層が配置されている薄膜コンデンサを得た。
<耐酸化性試験>
得られた薄膜コンデンサを65℃、95%RHの高温高湿雰囲気下で1000時間放置して酸化処理を行なった。酸化処理前後の薄膜コンデンサの容量を測定し、酸化処理によるコンデンサ容量の低下率を求めた。その結果を表1に示す。
得られた薄膜コンデンサを65℃、95%RHの高温高湿雰囲気下で1000時間放置して酸化処理を行なった。酸化処理前後の薄膜コンデンサの容量を測定し、酸化処理によるコンデンサ容量の低下率を求めた。その結果を表1に示す。
表1に示したように、薄膜状樹脂誘電体層がO、P、N及びSのうちの少なくとも1種の元素を含有するグラフェン化合物層で挟持されている薄膜コンデンサ(実施例1〜4)は、薄膜状樹脂誘電体層がグラフェン化合物層で挟持されていない薄膜コンデンサ(比較例1)並びに薄膜状樹脂誘電体層がグラフェン層で挟持されている薄膜コンデンサ(比較例2)に比べて、酸化処理によるコンデンサ容量の低下が少なかった。この結果から、薄膜状樹脂誘電体層をO、P、N及びSのうちの少なくとも1種の元素を含有するグラフェン化合物層で挟持することによって、高温高湿雰囲気下における電極の酸化によるコンデンサ容量の大幅な低下を抑制できることが確認された。なお、これは、O、P、N及びSのうちの少なくとも1種の元素を含有するグラフェン化合物層が耐酸化性及び密着性に優れており、薄膜状樹脂誘電体層が耐酸化性に優れたグラフェン化合物層によって保護されたためと考えられる。
また、表1に示したように、薄膜状樹脂誘電体層が還元型酸化グラフェン化合物層で挟持されている薄膜コンデンサ(実施例1)は、薄膜状樹脂誘電体層の一方の面のみに還元型酸化グラフェン化合物層が配置されている薄膜コンデンサ(比較例3)に比べて、酸化処理によるコンデンサ容量の低下が少なかった。この結果から、高温高湿雰囲気下における電極の酸化によるコンデンサ容量の大幅な低下を抑制するためには、薄膜状樹脂誘電体層の両面を耐酸化性に優れた前記グラフェン化合物層で保護する必要があることがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、高誘電性樹脂薄膜又は高誘電体ナノ粒子を分散させた樹脂薄膜等の樹脂誘電体層を備え、高温高湿環境下におけるコンデンサ容量の大幅な低下が抑制された薄膜コンデンサを得ることが可能となる。
したがって、本発明の薄膜コンデンサは、高温高湿環境下においてもコンデンサ容量の大幅な低下が起こりにくいため、ハイブリッド自動車や電気自動車等に用いられる半導体パワーモジュールのスナバコンデンサ等として有用である。
1:電極層
2:グラフェン化合物層
3:薄膜状樹脂誘電体層
4:基板
5:平坦化層
6:絶縁層
2:グラフェン化合物層
3:薄膜状樹脂誘電体層
4:基板
5:平坦化層
6:絶縁層
Claims (4)
- 一対の電極層と、
前記一対の電極層の間に配置されている、O、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する一対のグラフェン化合物層及び該一対のグラフェン化合物層に挟持されている薄膜状樹脂誘電体層と、
を備えていることを特徴とする薄膜コンデンサ。 - 前記薄膜状樹脂誘電体層が、高誘電性樹脂のみからなる層又は樹脂中に高誘電体ナノ粒子が分散しているナノコンポジット材料からなる層であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜コンデンサ。
- 前記電極層が、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、チタン、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜コンデンサ。
- 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の薄膜コンデンサをスナバコンデンサとして内蔵していることを特徴とする半導体パワーモジュール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018070941A JP2019186251A (ja) | 2018-04-02 | 2018-04-02 | 薄膜コンデンサ及びそれを用いた半導体パワーモジュール |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021157364A1 (ja) * | 2020-02-06 | 2021-08-12 | アズビル株式会社 | Co2センサ |
CN114974894A (zh) * | 2022-06-23 | 2022-08-30 | 国网经济技术研究院有限公司 | 一种能够快速散热的电容器复合薄膜 |
-
2018
- 2018-04-02 JP JP2018070941A patent/JP2019186251A/ja active Pending
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